以下、実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
<画像形成装置全体の構成>
図1は、実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
この画像形成装置100は、複数色のトナーを用いて画像を形成するカラー画像形成装置(デジタルフルカラープリンター)である。画像形成装置100は、画像の濃度むらを補正するために、光走査位置の主走査方向の位置ずれを検出するためのチャート印字部と、画像位置を補正するフィルタ処理演算部を備えている。
図1において、画像形成装置100は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像を形成する4つの画像形成部(画像形成手段)101Y、101M、101C、101Bkを備えている。画像形成部101Y、101M、101C、101Bkは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーを用いて画像を形成する。画像形成部101Y、101M、101C、101Bkは、それぞれ感光体として感光体ドラム102Y、102M、102C、102Bkを備えている。感光体ドラム102Y、102M、102C、102Bkの周りには、それぞれ帯電装置103Y、103M、103C、103Bk、光走査装置104Y、104M、104C、104Bk、現像装置105Y、105M、105C、105Bkが配置されている。また、感光体ドラム102Y、102M、102C、102Bkの周りには、それぞれ対応するドラムクリーニング装置106Y、106M、106C、106Bkが配置されている。
感光体ドラム102Y、102M、102C、102Bkの下方には無端ベルト状の中間転写ベルト107が配置されている。中間転写ベルト107は、駆動ローラ108と、従動ローラ109及び110とに張架され、画像形成中は、図1中、矢印B方向に回転する。中間転写ベルト107(中間転写体)を介して、感光体ドラム102Y、102M、102C、102Bkに対向する位置にはそれぞれ一次転写装置111Y、111M、111C、111Bkが設けられている。
また、中間転写ベルト107を介して従動ローラ110に当接するように二次転写ローラ112が設けられている。従動ローラ110と二次転写ローラ112との当接部が二次転写部Teとなる。二次転写部Teは、中間転写ベルト107上のトナー像を用紙(記録媒体)Sに転写する。
画像形成装置100の下部には、給紙カセット115が配置されている。また、画像形成装置100の側壁には、手差し給送カセット114が設けられている。給紙カセット115及び手差し給紙カセット114から二次転写部Teまで用紙Sを搬送する搬送路117が設けられている。二次転写部Teの下流側には、用紙Sに転写されたトナー像を該用紙Sに定着するための定着装置113が設けられている。
このような構成の画像形成装置100において、帯電工程から現像工程までの画像形成プロセスは、以下のように行われる。なお、各画像形成部における画像形成プロセスは同様であるため、以下、画像形成プロセスを画像形成部101Yを例にして説明し、画像形成部101M、101C、101Bkにおける画像形成プロセスについては説明を省略する。
まず、画像形成部101Yの帯電装置103Yによって、回転駆動される感光体ドラム102Yの表面が帯電される。帯電された感光体ドラム102Yの表面(感光体表面)は、光走査装置104Yから出射されるレーザ光によって露光される。これによって、回転する感光体ドラム102Y上に静電潜像が形成される。その後、静電潜像は現像装置105Yによってイエローのトナー像として現像される。
以下、転写工程以降の画像形成プロセスについて、全ての画像形成部を用いて説明する。
一次転写装置111Y〜111Bkが中間転写ベルト107に転写バイアスを印加することによって各画像形成部の感光体ドラム102Y〜102Bk上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像はそれぞれ中間転写ベルト107に転写される。中間転写ベルト107に転写された各色のトナー像は、中間転写ベルト107上で重ね合わされてカラー画像となる。中間転写ベルト107上に形成されたカラー画像は、2次転写部Teまで移動し、手差し給送カセット114又は給紙カセット115から2次転写部Teに搬送されてきた用紙S上に転写(2次転写)される。カラー画像が転写された用紙Sは、定着装置113に搬入され、ここで、加熱、加圧されることによってカラー画像が用紙Sに定着される。カラー画像が定着された用紙Sは、排紙部116上に排紙される。
<感光体ドラム102と光走査装置104>
次に、画像形成装置100に内蔵される光走査装置について説明する。
図2は、図1の画像形成装置の画像形成部に適用される光走査装置の概略構成を示す図である。なお、各画像形成部における感光体ドラムと光走査装置の構成は同様であるので、以下の説明では色を示す添え字Y、M、C、Bkを省略する。
光走査装置104は、複数のレーザ光(光ビーム)を発生するマルチビームレーザ光源201と、レーザ光を平行光に整形するコリメータレンズ202を備えている。また、光走査装置104は、コリメータレンズ202を通過したレーザ光を副走査方向(感光体の回転軸に直交する方向)へ集光するシリンドリカルレンズ203と、ポリゴンミラー(回転多面鏡)204を備える。なお、本実施の形態では、レーザ光源201として複数のビームを配列したマルチビーム光源を適用する。これによって画像形成速度が向上する。なお、単一の光源を用いることもでき、この場合も同様に動作するものとする。
ポリゴンミラー204は、回転動作するモータ部とモータ軸に取り付けられた反射ミラーを備えている。光走査装置104は、ポリゴンミラー204によって偏向されたレーザ光(走査光)が入射するfθレンズ205と、fθレンズ206を備える。さらに、ポリゴンミラー204によって偏向されたレーザ光を検知し、レーザ光を検知したことに応じて水平同期信号(以下、「BD信号」という。)を出力する信号生成手段としてのBeam Detector207(BD207)を備える。
光走査装置104から出射されたレーザ光は、感光体ドラム102上を走査露光する。レーザ光の走査方向は、感光体ドラム102の回転軸に対して平行に走査するように、光走査装置104と感光体ドラム102の位置決めがなされている。ポリゴンミラー204のミラー面が感光体ドラム102上を一回走査する度に、マルチビームレーザのレーザ素子数分の走査ラインが同時に形成される。
本実施の形態では、ポリゴンミラー204のミラー面数は、例えば、5面であり、マルチビームレーザ光源201は、例えば、8つのレーザ素子を有する。従って、1回の走査で8ライン分の画像形成が行われる。ポリゴンミラー204は一回転あたり5回走査して、40ライン分の画像形成を行う。
感光体ドラム102は、回転軸にロータリーエンコーダ301を備えており、ロータリーエンコーダ301によって感光体ドラム102の回転速度が検出される。ロータリーエンコーダ301は、感光体ドラム102が一回転する度に、例えば、1000発のパルスを発生し、内蔵のタイマーを用いてパルスの時間間隔を測定した結果を基に回転速度データを後述するCPU303に出力する。なお、感光体ドラム102の回転速度を検知することができれば、エンコーダ以外の公知の速度検知装置を用いてもよい。エンコーダ以外の装置を用いる方法として、例えば、レーザドップラー等で感光体ドラムの表面速度を検出する方式が挙げられる。
次に、光走査装置104の制御部(CPU303)について説明する。
CPU303は、図示省略した画像データを生成する画像コントローラと接続されており、画像コントローラから画像データを入力する。CPU303は、また、ロータリーエンコーダ301、BDセンサ207、メモリ302、マルチビームレーザ駆動部304、ポリゴンミラー駆動部305とそれぞれ接続されている。
CPU303は、BDセンサ207から出力されるBD信号をもとに走査ラインの書き出し位置を検知し、BD信号の時間間隔をカウントすることによってポリゴンミラー204の回転速度を検知する。CPU303は、また、ポリゴンミラー204が所定の速度となるようにポリゴンミラー駆動部305に加速減速を指示する。ポリゴンミラー駆動部305は、入力された加速減速信号に対応して、ポリゴンミラー204のモータ部に駆動電流を供給してモータを駆動する。
ポリゴンミラー204には、図示省略したホームポジションセンサが搭載されており、ホームポジションセンサは、ポリゴンミラー204の回転動作中に所定角度になったタイミングで、CPU303に対してHP信号を送信する。CPU303は、HP信号を検知したタイミングで走査中のポリゴンミラー面を特定する。CPU303は、一度、ポリゴンミラー面を特定したら、それ以降はBD信号をもとにポリゴンミラー面を特定し続けることができる。任意のポリゴンミラー面が1回走査する度に、BD信号は1パルスを出力するので、BD信号をカウントすることでポリゴンミラー面を特定し続けることが可能となる。メモリ302には、ポリゴンミラー面毎の位置情報と、マルチビームレーザの位置情報が各々格納されており、CPU303によって各情報が読み出される。
CPU303は、各走査ラインの位置の算出を行い、算出された各走査ラインの位置と入力された画像データから、各走査ラインの位置を補正する情報を加味した画像データを算出し、マルチビームレーザ駆動部304に発光光量を指示する。なお本実施の形態では、マルチビームレーザ駆動部304は、指示された発光光量データに基づき、PWM(パルス幅変調)制御により画素毎の点灯時間を制御することで光量制御を行う。但し、必ずしもPWM制御を適用する必要はなく、例えば、画素毎にピーク光量を制御するAM(振幅変調)制御によって光量を制御することもできる。
次に、図2のメモリ302に格納される走査位置情報について説明する。
図3は、図2の光走査装置に起因する走査ラインの位置ずれの様子を示す図である。
図3において、8つの発光点を有するマルチビームレーザの各レーザが走査する走査ラインを、LD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8とする。ここで、各走査ラインの理想的な間隔は解像度によって決まる。例えば、解像度1200dpiの画像形成装置の場合、走査ラインの理想的な間隔は、21.16μmとなる。LD1を基準位置とした場合、LD1からのLD2〜LD8までの理想距離D2〜D8は、下記(式1)で算出される。
Dn = (n−1)×21.16μm (n=2〜8) ・・・(式1)
ここで、マルチビームレーザの素子間隔の誤差やレンズの倍率のばらつき等によって、走査ライン間隔は誤差を有する。理想距離D2〜D8によって決まる理想位置に対するLD2〜LD8の走査ライン位置の位置ずれ量を、それぞれX1〜X7とする。
ポリゴンミラーは各ミラー面の製造のばらつきにより、回転軸に対するミラー面の角度が正確に平行にはならず、ミラー面毎に角度のばらつきがある。各ポリゴンミラー面(鏡面)における理想位置に対する位置ずれ量は、ポリゴンミラー面数が5面の場合Y1〜Y5で表わされる。図3中の例では、1面目のLD1の走査ラインの理想位置からのずれ量をY1、2面目以降のLD1の走査ラインの理想位置からのずれ量をそれぞれY2〜Y5とする。
ポリゴンミラー面m面目、レーザn番目の走査ラインの位置ずれ量をZmnとすると、Zmnは各レーザの位置ずれ成分X1〜X7と、各ミラー面の走査位置Y1〜Y5とを用いて(式2)で表わされる。
Zmn = Ym + X(n−1) (m=1〜5、n=1〜8)・・・(式2)
(ただし、X(0)=0とする)
(式2)の演算で位置ずれ量を算出する場合、位置ずれ量の算出に用いるデータは、ポリゴンミラーのミラー面数とマルチビームのレーザ素子数に対応したデータ数を持てばよい。
図4は、メモリ302に格納された位置ずれデータのアドレスマップである。図4において、LD2〜LD8の位置情報X1〜X7、及びポリゴンミラーの1面目〜5面目の位置情報Y1〜Y5が、アドレス0〜アドレス11に格納されている。
本実施の形態では、各ポリゴンミラー面の位置ずれによって、各レーザの走査光が一律にずれるケースを前提に説明する。ポリゴンミラー面毎に各レーザの走査光の位置ずれ量がばらつく場合、各ポリゴンミラー面と各レーザの走査光の組み合わせの分だけ位置ずれデータを保持することもできる。この場合は、ミラー面数5面、レーザ数8レーザで40個の位置情報がメモリ302に保持される。
メモリ302に格納される位置ずれデータは、工場での光走査装置の調整工程で測定されたデータとする。なお、画像形成装置100の内部に走査光位置を検知する手段を設けて、メモリ302のデータをリアルタイムに更新させることもできる。走査光の副走査方向の位置検出手段としては、公知の技術を用いることができる。例えば、光走査装置内部や感光体ドラム近傍に配置したCMOSセンサやPSD(Position Sensitive Detector)によって位置検出を行う方法を用いることができる。また、PD(photo diode)面上に三角スリットを配置してPDの出力パルス幅から位置検出を行う方法を用いることもできる。
なお、本実施の形態において、主走査方向とは、感光体ドラムの回転軸に沿った方向を言い、副走査方向は、主走査方向と直交する方向であって、感光体ドラムの回転軸と直交する方向を言う。
(チャートによる位置ずれ方向の判定)
このような構成の画像形成装置100において、雰囲気温度又は装置の内部温度の変化等に起因して濃度むら又はバンディング量(以下、単に「濃度むら」という。)が初期状態から変化することがある。濃度むら量が化した場合、ユーザ又はサービスマン(以下、単に「ユーザ」という。)は、先ず、UI(ユーザインターフェイス)を介して画像形成装置100のCPU303を制御して調整用チャートを印字させる。そして、ユーザは、得られた調整用チャートに基づいて調整データを決定し、決定した調整データをUIを介して画像形成装置100に入力する。CPU303は、UIからの入力に基づいて走査ビームの走査位置の位置ずれ(以下、「走査ビームの位置ずれ」という。)を補正する。
以下、走査ビームの位置ずれ補正処理について具体的に説明する。
濃度むら量が変化した場合、ユーザは、先ず、UIを介して画像形成装置100のCPU(印字手段)303に対し、主走査方向の位置ずれと副走査方向の位置ずれを切り分けるための第1のチャート(画像)を出力するよう制御する。
図5は、主走査方向の位置ずれと、副走査方向の位置ずれを切り分けるための第1のチャートを示す図である。
図5において、第1のチャート50は、主走査方向(図中、左右方向)に対して所定角度、例えば、45度で交叉するラインを有する第1のラインスクリーン画像を有する。また、第1のチャート50は、副走査方向(図中、上下方向)に所定角度、例えば45度で交叉するラインを有する第2のラインスクリーン画像を有する。第1のチャート50が、主走査方向に対して所定角度で交叉する第1のラインスクリーン画像と、副走査方向に対して所定角度で交叉する第2のラインスクリーン画像を有することによって、以下のことが分かる。すなわち、第1のラインスクリーン画像と第2のラインスクリーン画像との差が大きい場合は、走査ビームの位置ずれが、主走査方向の位置ズレ成分の影響を強く受けていることが分かる。
第1のラインスクリーン画像(第1のパッチ)(1)と第2のラインスクリーン画像(第2のパッチ)(2)は、主走査方向に線対称の関係にある。これによって、主走査方向の位置ズレ成分が、より顕著に表されるようになる。
ポリゴンミラー面の加工精度上のばらつきに起因して発生する位置ずれであるポリゴン面倒れは、ポリゴンミラー面ごとに発生する。ここで、ポリゴンミラーの第1面で反射した光は、主走査方向及び副走査方向の位置ずれにより、図5中、右下方向に画像位置が移動するものとする。また、ポリゴンミラー第2面で反射した光には位置ずれがなく、画像が理想位置にあるものとする。さらに、ポリゴンミラー第3面で反射した光は、主走査方向及び副走査方向の位置ずれにより、図5中、左上方向に画像位置が移動するものとする。
ところで、ポリゴンミラーの面倒れに起因して副走査方向の位置ずれが発生した場合、BDセンサ207の位置が正規の位置からずれて傾いていると、副走査方向の位置ずれに伴って主走査方向の位置ずれが発生する。
図6は、BDセンサと走査光の入射状態との関係を示す図である。図6において、(a)は、BDセンサ207が理想位置に配置されている場合の走査光の入射状態を示し、(b)は、BDセンサ207が傾いて配置されている場合の走査光の入射状態を示す。なお、図6において、各ポリゴンミラー面が走査する走査光は、ミラー面毎に走査方向に対して垂直方向(副走査方向)に位置ずれしているものとする。
副走査方向の位置ずれは、主にポリゴンミラー面の加工精度上のばらつき(面倒れ)によりミラー面の角度が回転軸に対して誤差を有することにより発生する。
図6(a)に示すように、BDセンサ207が理想位置に配置されている場合、ポリゴン面倒れにより走査位置が副走査方向にずれても、BDセンサ207の受光面208に入射する光スポットの入射タイミングは、ミラー面によらず一定となる。一方、図6(b)に示すように、BDセンサ207が傾いて配置されている場合、面倒れにより走査位置が副走査方向にずれると、受光面208に入射する光スポットの入射タイミングはミラー面毎にずれてしまう。図6(b)において、BDセンサ207が傾くことにより、ミラー2面目で反射した光が受光面208に入射するタイミングは、ミラー1面目で反射した光の走査位置に比べて時間Tだけ書き出し位置がずれている。このように画像書き出しタイミング、すなわち、主走査方向位置はミラー面毎にずれてしまう。
図7は、光走査位置の基準位置に対する主走査方向の位置ずれの様子を示す図である。図7において、ミラー面毎の位置ずれは、ポリゴンミラーが1回転する度に繰り返えされるために、周期的に位置ずれが発生し、濃度むらの原因となる。
BDセンサ207の傾きは、装置温度の昇温等に起因して光走査装置が変形した際に発生するので、工場出荷時に取り付け位置の調整が行われていても稼働中に取り付け位置は変化する。また、BDセンサ207の傾き以外にも、BDセンサ207へポリゴンミラーの反射光を導光するための経路に反射ミラーやレンズ等の光学部品を配置した光学系においては、昇温によって光学部品の取り付け角度が変化すると、同様の位置ずれの原因となる。
図8は、BDセンサ207が傾いている場合のポリゴンミラー各面における副走査方向の位置ずれと主走査方向の位置ずれとの関係を示す図である。図8において、主走査方向の位置ずれは、副走査方向の位置ずれと略比例関係で発生していることが分かる。すなわち、BDセンサ207が正規の位置から傾いている場合、副走査方向の位置ずれがあると、該副走査方向の位置ずれに伴って主走査方向の位置ずれが発生する。従って、走査ビームの位置ずれを是正するためには、副走査方向の位置だけでなく、主走査方向の位置ずれを補正する必要がある。
図5に戻り、第1のパッチの拡大図(1)において、ポリゴンミラーの第1面目の画像は第2面目の画像に対して図中左上方向に連続している。そして、第1面目の画像の位置ずれによって、第1面目の画像と第2面目の画像は、副走査方向に近づき、かつ主走査方向にも近づくように位置ずれしている。また、ポリゴンミラーの第3面目の画像は第2面目の画像に対して図中右下方向に連続している。そして、第3面目の画像の位置ずれによって、第2面目の画像と第3面目の画像は、副走査方向に近づき、かつ、主走査方向にも近づくように位置ずれしている。すなわち、第1のパッチ(1)では、位置ずれによってポリゴンミラー面間の画素間隔は、副走査方向に近づき、かつ主走査方向にも近づく関係にある。従って、ポリゴンミラー面間の濃度は、理想的な画素間隔の場合と比べて、大きな濃度変動を引き起こすことが分かる。
一方、第2のパッチの拡大図(2)において、ポリゴンミラーの第1面目の画像は第2面目の画像に対して図中右上方向に連続している。そして、第1面目の画像の位置ずれによって、第1面目の画像と第2面目の画像は、副走査方向に近づくが、主走査方向には遠ざかるように位置ずれしている。また、ポリゴンミラーの第3面目の画像は第2面目の画像に対して図中左下方向に連続している。そして、第3面目の画像の位置ずれによって、第2面目の画像と第3面目の画像は、副走査方向に近づき、主走査方向には遠ざかるように位置ずれしている。すなわち、第2のパッチ(2)では、位置ずれによって、ポリゴンミラー面間の画素間隔は、副走査方向に近づき、かつ主走査方向に遠ざかる関係にある。従って、ポリゴンミラー面間の濃度は、理想的な画素間隔の場合と比べて、それほど大きな濃度変動を発生しないことが分かる。
このように、主走査方向の位置ずれと、副走査方向の位置ずれが同時に発生すると、第1のパッチ(1)と第2のパッチ(2)との間で、濃度むらレベルに大きな差が発生する。一方、主走査方向の位置ずれがない場合は、ポリゴンミラー面間の画素の間隔は、第1のパッチ(1)、第2のパッチ(2)がほぼ等しくなるため、濃度むらレベルはほぼ変化しない。従って、第1のパッチ(1)と第2のパッチ(2)とを比較して両者の差が大きい場合は、主に主走査方向の位置ずれに起因して濃度むらが発生しており、両者の差が小さい場合は、主に副走査方向の位置ずれに起因して濃度むらが発生しているということができる。
すなわち、本実施の形態において、ユーザは、主走査方向の位置ずれと、副走査方向の位置ずれを切り分けるための第1のチャートを取得し、第1のパッチ(1)と第2のパッチ(2)の濃度むらのレベル差を確認する。そして、両者にレベル差が発生している場合は、主として主走査方向の位置ずれに起因して濃度むらが発生していると認定し、先ず、主走査方向の位置ずれ補正を行い、その後、副走査方向の位置ずれ補正を行う。
なお、チャートの画像の読み取り装置を有する画像形成装置(例えば、複写機)においては、上述した第1のチャート画像を画像形成装置内で読み取り、濃度むらレベルの差を自動検出する構成をとってもよい。この場合、読み取った画像のパッチ部分に対してFFT(高速フーリエ変換)解析を行い、ポリゴンミラー面周期の周期成分の量を抽出することで、濃度むらレベルの検出を行うことも可能となる。
(主走査方向の補正)
以下、第1のパッチ(1)と第2のパッチ(2)との間で、濃度むらレベルに大きな差が発生した際に実行される主走査方向の位置ずれ補正について説明する。
ユーザは、第1のチャートにおける第1のパッチ(1)と第2のパッチ(2)の濃度むらのレベル差を確認し、所定のレベル差があると判定した場合、UIを介してCPU303に対し、主走査方向の位置ずれ補正を実行するよう指示する。
図9は、主走査方向の位置ずれ補正処理の手順を示すフローチャートである。主走査方向の位置ずれ補正処理は、画像形成装置100のCPU303がメモリ302に格納された主走査方向の位置ずれ補正処理プログラムに従って実行する。
図9において、主走査方向の位置ずれ補正処理が開始されると、CPU303は、先ず、BD信号が検出されたか否かを判定し、検出されるまで待機する(ステップS701)。BD信号が検出された後(ステップS701で「YES」)、CPU303は、入力されるCLK(クロック信号)に基づいてカウント動作を開始する(ステップS702)。
次いで、CPU303は、ポリゴンミラー204のホームポジションセンサから入力されるホームポジションセンサの信号出力(HP信号)をモニターし、HP信号が検出されたか否かを判定する(ステップS703)。ステップS703の判定の結果、HP信号が信号が検出された場合(ステップS703で「YES」)CPU303は、ポリゴンミラー面番号Nを初期化して1とし、走査中のポリゴンミラー面が第1面目と認識する(ステップS704)。
ポリゴンミラー面の第1面目を認識した後、CPU303は、書き出し補正時間を設定する(ステップS706)。これによって、主走査方向の書き出しタイミングを最適補正量で補正することができる。
図10は、書き出し補正時間を設定する際に用いられる第2のチャートを示す図である。
図10において、第2のチャートは、ポリゴンミラー面に対応して主走査方向の書き出し補正量が異なる、例えば、5つのパッチ(2−1)〜(2−5)が印字されている。これによって、ユーザは、5つのパッチのうち、最も位置ズレが補正されているパッチを選択して位置ズレを補正するための補正量を決定することができる。
各パッチ(2−1)〜(2−5)のラインスクリーンは、第1のチャートにおいて大きな濃度ずれが発生していたパッチ(1)と同じ方向で同じ傾きを有するラインスクリーン画像からなる。パッチ(1)は走査ビームの位置ずれが、主走査方向の位置ずれ成分を含んでいると判定される根拠となったパッチである。これによって、ユーザによるどのパッチが主走査方向の位置ずれを補正するために最適であるか否かの判定が容易となる。なお、初期の位置補正量は、工場出荷時に測定されており、各ポリゴンミラー面に対して一律の比率で補正量が調整されるものとする。
図11は、図10の第2のチャートにおけるパッチ(2−1)とパッチ(2−5)に対応する主走査方向の補正量の一例を示す図である。なお、その他のパッチ(2−2)〜(2−4)については、パッチ(2−1)とパッチ(2−5)の補正量の間を段階的に変化させた量で補正量が決定されている。
図12は、ポリゴンミラー面における書き出し位置補正後のタイミングチャートである。図12において、HP信号が検出されたポリゴンミラー面を第1面目とすると、各ポリゴンミラー面における書き出しタイミング補正量は、Tofset1〜Tofset5で表される。図示するように、各ポリゴンミラー面の走査期間において、ポリゴンミラー面毎に補正時間(Tofset1〜Tofset5)分だけ画像データの転送開始タイミングが調整される。
ユーザは、図10の第2のチャートを参照し、濃度むらが最も解消されているパッチ番号を選択し、選択したパッチ番号の補正量をUIを介して入力することによって書き出し補正時間を設定する。なお、主走査方向の位置ずれは、ポリゴンミラー面毎に補正される。
図9に戻り、書き出し補正時間を設定した後、CPU303は、カウント値がステップS706で設定された書き出し補正時間と等しいか否かを判別し、等しくなるまで待機する(ステップS707)。カウント値がステップS706で設定された書き出し補正時間と等しくなった後(ステップS707で「YES」)、CPU303は、1走査分の画像データをレーザ駆動回路304に送信する(ステップS708)。このとき、画像データは、走査開始位置に対応した画像データから、各画素の印字時間に対応した時間間隔で1画素分ずつ順次送信されるものとする。
次いで、CPU303は、書き出し補正後の画像形成が終了したか否かを判定する(ステップS709)。そして、CPU303は、画像形成が終了した場合(ステップS709で「YES」)、主走査方向の位置ずれ補正処理を終了し、UIを介して入力されたパッチ番号に対応した主走査方向の補正量を、次回以降の画像形成に用いる補正量とする。
一方、ステップS709の判定の結果、書き出し補正後の画像形成が終了していない場合(ステップS709で「NO」)、CPU303は、処理をステップS701に戻す。
また、ステップS703の判定の結果、HP信号が検出されなかった場合(ステップS703で「NO」)、CPU303は、ポリゴンミラー面番号Nに1を加算し(ステップS705)、その後、処理をステップS706に進める。
図9の処理によれば、ユーザは、第1のチャートを用いて画像の濃度むらの原因となる位置ずれを主走査方向の位置ずれと副走査方向の位置ずれに切り分ける。そして、濃度むらが主として主走査方向の位置ずれに起因している場合、主走査方向の補正量を変化させた第2のチャート(図10)を作成させ、濃度むらレベルを最小化させることができるパッチ番号に基づいて補正時間を設定する(ステップS706)。そして、CPU303は、設定された補正時間に基づいて書き出し位置をポリゴンミラーの各鏡面毎に補正する。これによって、主走査方向の書き出し位置が補正され、濃度むらが解消された良好な画像を形成することができる。
(副走査位置の補正)
本実施の形態では、光走査位置の主走査方向の位置ずれを補正した後、副走査方向の位置ずれを補正する。これによって、走査ビームの位置ずれをより精度よく補正することができる。
図13は、副走査方向の位置ずれ補正処理の手順を示すフローチャートである。副走査方向の位置ずれ補正処理も画像形成装置100のCPU303がメモリ302に格納されたプログラムに従って実行する。
図13において、副走査方向の位置ずれ補正処理が開始されると、CPU303は、先ず、メモリ302から副走査方向の補正情報を受け取る(ステップS3601)。本実施の形態においては、副走査方向の位置ずれを補正するための補正情報を基にして入力画像の副走査方向の画素位置に対して補正をかけた後、出力画素データを出力する。
一般に、光走査位置の位置ずれの状態は、略4つに分類できる。すなわち、走査ビームが、(a)進み方向にシフトする場合、(b)戻り方向にシフトする場合、(c)間隔が密になる場合、(d)間隔が疎になる場合である。
副走査方向の位置ずれに対応付けて、その具体例を図14(a)〜(d)を用いて説明する。
図14は、副走査方向の位置ずれを説明するための図である。図14中、破線は走査位置を示し、(1)〜(5)は、走査の順番を示す。
本実施の形態において、8ビームが同時に走査されるが、副走査方向に順に並ぶ1ビームずつに順番を振ったものとして5ビームについて説明する。図14(a)〜(d)において、左側の列が理想の走査位置、右側の列が感光体ドラム上の走査位置を示す。走査番号(1)〜(5)に対して、S1〜S5は、理想の走査位置からの位置ずれ量を示す。位置ずれ量の単位は、理想のビーム間隔を1とした時を基準に表し、副走査の進み方向を正の値としている。また、画像の様子を説明するために副走査方向に並ぶ1画素を走査線上に丸で示した。丸の色は濃度を表す。
上述した4つの分類に対応して図14中、(a)は、+0.2ラインのシフト量、(b)は、−0.2ラインのシフト量、(c)は、(1−0.2)ラインの間隔で密、(d)は、(1+0.2)ラインの間隔で疎になった状態を示している。
(c)は、位置ずれに加えて、ドラム上の走査による画素が密集し、面積あたりの画素値が増えて濃度が濃くなっている。逆に、(d)は、画素が疎のため面積あたりの画素値が減少して濃度が薄くなっている。電子写真プロセスにおいては、潜像電位の深さと現像特性の関係により濃淡差がさらに強調されることがある。また、(c)と(d)のパターンが交互に連続すれば周期的な濃淡はモアレとして認識され、空間周波数によっては視覚的に強調されることがある。
図13に戻り、補正情報を受け取った後(ステップS3601)、CPU303は、入力画像の各画素に対する補正用属性情報を生成する(ステップS3602)。入力画像の副走査方向の画素位置を予め座標変換してから補間することにより、位置ずれの補正と共に、入力画像の濃度を保存しながら局所的な濃淡の補正が行われる。
以下、座標変換方法について説明する。図15は、入力画像の副走査方向の画素位置を座標変換する座標変換方法を説明するための図である。
図15(a)〜(d)において、各グラフの横軸は画素番号nを示し、縦軸は副走査方向の画素位置yを示し、単位をラインとした。
図15(a)〜(d)における走査ラインの位置ずれの状態は、それぞれ、図14の(a)〜(d)と対応している。また、図15(a)〜(d)において、左側のグラフが座標変換前、右側のグラフがy軸について座標を変換した座標変換後を示す。各図(a)〜(d)中、プロットした四角のドットは走査線位置を表し、丸のドットは理想位置を表す。
(a)の左のグラフから順に説明する。変換前の座標において、丸でプロットした理想位置は画素番号nとy座標が等しい傾き1の直線である。
y=n ・・・(式301)
これに対して、四角でプロットした走査位置は、進み方向にS(=0.2)ラインだけシフトしているので、傾きは1のまま、オフセットした次の式であらわされる。
y=n+S ・・・(式302)
本実施の形態において、実際の走査位置が理想位置に変換されるよう座標変換するためには、(a)の例では、以下の式で座標変換すればよい。
y’=y+C ・・・(式303)
従って、補正量Cはシフト量Sと以下の関係式で表される。
C=−S ・・・(式304)
座標変換するための(式303)と補正量を求める(式304)により、(式301)(式302)は、それぞれ以下のように変換される。
y’=n−S ・・・(式305)
y’=n ・・・(式306)
次に、図15(b)について、S=−0.2とすれば、(式301)〜(式306)が成立して、図15(a)と同様に説明できる。
ここで、走査線位置の疎密が発生する図15の(c)、(d)、及びシフト(a)、(b)と疎密(c)、(d)の組み合わせのケースにも適用できる座標変換を考える。
図16は、座標変換方法における画素番号と走査位置の関係の一例を示す図である。図16(a)において、横軸は画素番号n、縦軸は副走査方向の位置yを示し、四角ドットはドラム上の走査位置をプロットしたものである。画素番号n≦2の範囲ではドラム上の走査線が密、画素番号n≧2の範囲ではドラム上の走査線が疎になっている。
図16(a)では、四角ドットを通る走査位置の変化を表す関数をft(n)とし、実線で表す。
y=ft(n) ・・・(式101)
y軸の座標変換後の関数をft’で表す。
y=ft’(n) ・・・(式102)
本実施の形態において、走査位置が均等になるようy軸を伸縮、シフトして座標変換するので、以下の条件を満たす。
ft’(n)=n ・・・(式103)
図16(a)と図16(b)間を結ぶ点線は左から右へ、y軸の元の座標から座標変換後の座標位置との対応を示し、変換前後でy軸の下半分が伸長し、上半分は縮小している。
以下、図16(a)から図16(b)へのy軸の座標変換により、入力画像の各画素の変換後の座標を求める手順を図17を用いて説明する。
図17は、座標変換方法を説明するための図である。図17において、図16と同様、横軸は画素番号n、縦軸は副走査方向の位置yを示し、(a)は座標変換前、(b)は座標変換後を示す。
入力画像の画素番号nと座標位置yの関係を以下に示す。
y=fs(n) ・・・(式104)
また、本実施の形態において、入力画像の副走査方向の画素の間隔は均等なので、以下の式で表される。
fs(n)=n ・・・(式105)
入力画像の注目する画素番号nsの変換後のy座標を次の3ステップで求める。
入力画像の画素番号nsに対応するy座標ysを求める(ステップ1)。
ys=fs(ns) ・・・(式106)
ドラム上で変換前の走査位置が等しい画素番号ntを求める(ステップ2)。
nt=ft−1(ys) ・・・(式107)
ドラム上の走査位置の画素番号ntに対応する変換後のy座標を求める(ステップ3)。
yt=ft’(nt) ・・・(式108)
nsは任意に選んでも成立するので、nsからytを求める式が入力画像の画素番号から演算上のy座標を求める関数fs’(n)に相当する。
従って、(式106)〜(式108)から以下のように一般式が導かれる。
fs’(n)=ft’( ft−1(fs(n))) ・・・(式109)
また、入力画像の画素間隔、及び変換後の走査位置の間隔を均等で、距離1とした(式105)、(式103)を代入すると(式109)は画素番号から走査位置を導くft(n)の逆関数として導く形式で表せる。
fs’(n)= ft−1(n) ・・・(式110)
上述した図15(a)(b)に示した走査位置が進み方向、戻り方向に一律シフトした(式302)と入力画像の座標を求める(式305)も逆関数の関係にあり、(式110)の成立を確認できる。
また、図15(c)(d)の走査位置に疎密が発生する場合に当てはめると、走査位置を表す関数yは、(n0、y0)を通過して、傾きkとする場合、以下で表せる。
y=k(n − n0)+y0 ・・・(式307)
入力画像のy座標変換後の画素位置を求めるために、(式109)から逆関数を求めれば良いので、以下が導かれる。
y=(1/k)(n − y0)+n0 ・・・(式308)
図15(c)、(d)において、n0=y0=3、(c)k=0.8、(d)k=1.2である。また、疎密やシフトが混在していても、(式109)又は(式110)で座標位置を求めることができる。
このようにして、入力画像の副走査方向の画素位置を座標変換して補正用属性情報が生成される。
図13に戻り、補正用属性情報を生成した後(ステップS3602)、CPU303は、補正用属性情報に基づいて元画像への畳込み処理と再サンプリングを実行し(ステップS3603)その後、本副走査方向の位置ずれ補正処理を終了する。
以下に、図13のステップS3603で実行される畳込み処理について説明する。
図18は、図13のステップS3603で実行される畳み込み処理の手順を示すフローチャートである。この畳み込み処理は、画像形成装置100のCPU303が、メモリ302に格納されたプログラムに従って実行する。
図18において、畳込み処理が開始されるとCPU303は、出力の副走査位置を初期化して、例えば、1にセットする(S3701)。出力の副走査位置を初期化した後、CPU303は、畳込み関数の拡がりをLとした時、注目する出力画像のラインynの副走査位置の前後±Lの範囲に含まれる入力画像のラインを抽出する(ステップS3702)。
ここで、Lは、畳込み関数の+L〜−Lの範囲外は畳込み関数値が0になる最小の値と定義する。例えば、後述する図19の線形補間ではL=1、図20のバイキュービックにおける(a)ではL=2、(b)ではL=3である。
上述の(式110)より、対応する入力画像の範囲ymin〜ymaxのymin、ymaxは以下の条件を満たす。
ft−1(ymin)=yn−L、ft−1(ymax)=yN+L ・・・(式34)
(式34)を変形してymin、ymaxは直ちに求まる。
ymin=ft(yn−L)、ymax=ft(yn+L) ・・・(式35)
従って、注目する出力画像のラインynに対する入力画像のラインのリストはymin〜ymaxの範囲の全ての整数のラインである。
入力画像のラインを抽出した後(ステップS3702)、CPU303は、入力画像のラインの位置と畳込み関数から係数を求める(ステップS3703)。すなわち、注目する出力画像のラインynに対する畳込み演算の対象になる入力画像のラインをymとした時、距離dnmは以下の式で表される。
dnm=yn − ft−1(ym) ・・・(式36)
従って、畳込み関数g(y)として係数knmは、以下の式で求められる。
knm=g(dnm) ・・・(式37)
係数を求めた後、CPU303は、主走査位置xを初期化して、例えば、1にセットする(ステップS3704)。次いで、CPU303は、ステップS3702でリストアップした副走査位置、及び注目する主走査位置xの画素データを取得する(ステップS3705)。画素データを取得した後、CPU303は、対応する係数knmと入力画素データPinmを積和演算して、畳込み演算によって注目画素の値Poutnを求める(ステップS3706)。
以下、フィルタ関数による畳込み処理(畳込み演算)について具体的に説明する。
(フィルタ処理)
本実施の形態においては、入力画像の副走査方向の画素位置を座標変換した後、フィルタ処理が行われる。ただし、入力画像の画素の副走査位置の補正による入力画素の副走査画素位置と、均等に変換された出力画素の副走査位置との位置関係に基づいて、フィルタ関数による畳込み処理が行われる。
畳込み関数は、図19に示す線形補間及び図20に示すバイキュービック補間から選択される。図19並びに図20(a)及び(b)において、縦軸は副走査位置yを示し、単位は、画素である(副走査方向なのでラインとしても良い)。また、横軸は係数kの大きさを示す。
図19の式は、以下で表される。
図20の式は、以下の2つの式で表される。
ここで、a=−1、図20(a)では、w=1、図20(b)はw=1.5としている。但し、電子写真的な特性に応じて、a、wをそれぞれ調整しても良い。入力画像の粗密の状態によらず、同じ畳込み関数を適用して、理想の走査位置でサンプリングすることで、入力画像の濃度を保存している。
座標変換後の座標位置に基づいて、(式31)のフィルタ関数で畳込みする具体例を図21を用いて説明する。
図21は、畳込み処理を説明するための図である。図21において、(a)〜(d)は、図14の(a)〜(d)と対応する。すなわち、走査ビームが、(a)は、進み方向にシフトする場合、(b)は、戻り方向にシフトする場合、(c)は、間隔が密になる場合、(d)間隔が疎になる場合である。
図21(a)〜(d)において、左側の列は、それぞれ座標変換後の入力画素を示し、右側の列は、それぞれ座標変換後のドラム上の走査位置を示す。また、画素値の大きさを丸の濃淡で示している。また、括弧内の数字は走査の番号であり、図14における画素番号に対応する番号である。中央のグラフは、横軸が濃度、縦軸が副走査位置であって、畳込み処理は入力画素の各座標位置を中心にフィルタ関数に画素値を乗算した波形(画素(1)〜(5)に対する(W1〜W5)を展開し、重ね合わせて加算したのと同じである。
図21(a)において、画素(1)と(5)は濃度0のため、W1=0、W5=0である。画素(2)、(3)、(4)の濃度は、W2、W3、W4の波形の最大値と等しく、画素位置を中心にフィルタ関数を展開した波形である。畳込み演算の結果は全ての波形の総和(ΣWn、n=1〜5)である。出力の画素値は、座標変換後のドラム上の走査位置でサンプルするので、例えば、ドラム上の走査位置に対応する画素値(1)は、波形W2と点P0で交わるので、濃度D1と演算される。また、(2)は、W2の波形と点P2、波形W3と点P1で交わるので、濃度D1+D2である。
以下、同様に(a)の(3)〜(5)、(b)〜(d)の(1)〜(5)の画素値を演算した結果が各右側の列の画素の濃淡で示されている。
入力画素の位置ずれは、(a)〜(d)の縦軸に各画素に対応して示されている。この位置ずれは、入力画像の画素の副走査位置の補正に従い、逆関数で求めた位置ずれ情報である。
(a)は副走査進み方向に走査位置がずれているが、画素値は逆の遅れ方向に重心がずれているので、位置ずれが補正されている様子を示している。(b)はその逆方向に位置ずれが補正されている様子を示している。(c)は走査位置が密な場合で、座標変換後の畳込み処理によって濃度の分布が拡がり、濃度の局所的な集中がキャンセルされている様子を示している。また、(d)は逆に走査位置が疎な場合で、濃度の分散をキャンセルして局所的な濃度変化が補正されている様子を示している。特に、(3)の画素値は100%より濃い100+α%の濃度を利用している。
このようにして、畳込み演算によって注目画素の画素値を求めた後、CPU303は、主走査位置に1を加算する(ステップS3707)。主走査位置に1を加算した後、CPU303は、1ラインの最後の画素まで畳込み演算が終了したか否かを判定する(ステップS3708)。
ステップS3708の判定の結果、主走査の1ラインの最後の画素まで畳込み演算が終了していた場合(S3708で「YES」)、CPU303は、副走査位置に1を加算する(ステップS3709)。次いで、CPU303は、副走査の最後のラインまで畳込み演算が終了したか否かを判定する(ステップS3710)。ステップS3710の判定の結果、副走査の最後のラインまで畳込み演算が終了していた場合(ステップS3710で「YES」)、CPU303は、本処理を終了し、副走査方向の位置ずれ補正処理を終了する。
一方、ステップS3710の判定の結果、副走査の最後のラインまで畳込み演算が終了していなかった場合(ステップS3710で「NO」)、CPU303は、処理をステップS3702に戻し、以下、同様の処理を繰り返す。これによって、副走査方向の位置ずれをより確実に補正することができる。また、ステップS3708の判定の結果、1ラインの最後の画素まで畳込み演算が終了していなかった場合(ステップS3708で「NO」)、CPU303は、処理をステップS3705に戻し、以下、同様の処理を繰り返す。
図13の処理によれば、副走査方向の全てのラインの全ての画素について畳込み演算によって画素位置を補正するので、副走査方向の位置ずれを補正して良好な画像を形成することができる。