JP6819997B2 - スパッド係船設備 - Google Patents
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Description
一方、浚渫船の場合、スパッドによって移動しながらの作業であるため、スパッドの昇降頻度は一日に100回以上にもなり、そのために使用されるエネルギが桁外れに大きくなる。多くの場合、発電機によって発生させた電力でモータを回し、油圧ポンプを駆動させた油圧を使用している。そして、上記スパッドの昇降装置は、ワイヤとウインチによる吊り下げ方式とラックアンドピニオン方式の二種類存在するが、いずれもスパッドの重量が大になると、スパッドを落下させる際の衝撃が激しくなる。例えば、吊り下げ方式ではスパッドが落下する際のウインチドラムの回転が速く、危険を感じるくらいの衝撃が走る。こうしたことから、これを改善する発明が提案されている(例えば特許文献1)。
また、スパッド係船設備は、浚渫作業中、浚渫位置に作業船をつなぎ止めた後は稼働させる必要がない。にもかかわらず、発電機は次の移動に備えて運転を継続するのが一般的で、エネルギが無駄に消費されていた。
さらに、浚渫機用エンジンとスパッド係船に使用する船体側発電機が別箇独立に存在し、船体側発電機が浚渫機用エンジンを支援する構造のものは存在しなかった。
(1)実施形態1
図1〜図8は本発明のスパッド係船設備の一形態で、図1はスパッド引上げ状況のスパッド係船設備周りの概略説明図、図2はスパッドの自重落下で突き立て状況にあるスパッド係船設備周りの概略説明図、図3は浚渫作業中で蓄圧下にあるスパッド係船設備周りの概略説明図、図4は浚渫機のアシスト状況下のスパッド係船設備周りの概略説明図、図5は浚渫作業中と歩行スパッド上昇と歩行スパッド傾転と歩行スパッド下降の各説明図、図6は固定スパッド上昇と歩行スパッド傾転による船体移動と固定スパッド下降と歩行スパッド上昇の各説明図、図7は垂直位置までの歩行スパッドの傾転と歩行スパッド下降による移動完了の各説明図、図8は横軸を時間軸にして、浚渫作業とスパッド操作の各行程下における浚渫機と各スパッドでの消費エネルギ量又は回生エネルギ量の変化を表す関係説明図である。各図は判り易くするためスパッド1,昇降装置2等の要部を強調図示し、本発明に直接関係しない機器,部品等を省略する。各図のウインチ21のドラム軸211や支持ドラム82の回転支軸821は紙面垂直方向になるが、第一クラッチ31,第二クラッチ41を判り易く図示するため、便宜的にウインチ21や支持ドラム82から水平方向に突き出すように配設する。
スパッド1は、作業船の移動を止めるべく船体Dから海底Bへ突き立てる断面円形又は角形で重量のある金属製柱状体である。スパッド1には、図5のように作業船(浚渫船)の位置決めを行う固定用スパッド装置の固定スパッド1と船体Dの移動に用いる歩行用スパッド装置の歩行スパッド1Bがあるが、本実施形態は固定スパッド1(以下、単に「スパッド」ともいう。)に昇降装置2と位置エネルギ回収装置32とスパッド油圧モータ42とを備えたスパッド係船設備とする。例えば浚渫作業水域で、スパッド1を海底Bに突き立てて固定し作業船をつなぎ止めて浚渫作業を行い、作業を終えると、該スパッド1を昇降装置2で引上げて、歩行スパッド1Bを使って移動し、またスパッド1を海底Bに突き立てて固定し作業船を止めた後、浚渫作業を順次行っていく(図5〜図7)。
その後、歩行スパッド1Bはそのままにして、固定スパッド1を図6左上のごとく引上げる。固定スパッド1を引上げる時は、第二クラッチ41を閉じて、図1のごとく蓄圧器33Aに蓄積した油圧エネルギ、さらに船体側発電機51によるスパッド駆動用油圧ポンプ52の油圧エネルギを用いて、スパッド油圧モータ42がウインチ21を巻上げ、スパッド1を中黒矢印のように引上げる。
続いて、図6右下のごとく歩行スパッド1Bを引上げ、図7左上のごとく歩行スパッド1Bを鉛直方向に整えた後、図7左下のごとく歩行スパッド1Bを自重落下で海底Bに突き立てる。浚渫船が所定海域につなぎ止められる。船体の移動が完了し、そうして、最初の図5左上の浚渫作業が始まり、上述した各工程動作が繰り返されていく。
図8は各工程での固定スパッド1,歩行スパッド1B,浚渫機8の変化を示すタイムチャートである。横軸が時間軸を示しており、縦軸の最上段が浚渫作業の1サイクルを時間経過で表し、その下方に第一固定スパッド1,第二固定スパッド1等の機器項目を示して、同図はそれらの機器項目が時間経過で変化する様子を表す。浚渫機は当然、浚渫作業工程で大きな消費エネルギが発生する。一方、第一固定スパッド1や第二固定スパッド1は大きな消費エネルギがスパッド上昇(スパッド引上げ)工程で発生する。浚渫作業中を含めて他はエネルギ消費がない。ただ船体を動かすことはないが、船室の照明やGPS用パソコン等にも使用しており、船体側発電機51は稼働している。そこで、船体Dが停止中の余剰電力を回収して、蓄圧器33Aに供給するスパッド駆動用油圧ポンプ52を駆動させるモータ521を備えるようにしている。そして、船体側発電機51(ジーゼル発電機)は各工程中、専らその作業時回転数における燃費効率の良好域で、ほぼ一定負荷で運転される。尚、図8は歩行スパッド1Bも、固定スパッド1と同じような第一クラッチ31,位置エネルギ回収油圧ポンプ32A等を有するスパッド係船設備を備え、歩行スパッド1Bの自重落下に伴う位置エネルギを回収した回生エネルギを蓄圧器33Aに供給する図になっている。図中、符号D2は甲板で、櫓20は電気配線75と区別するため、破線図示する。
本実施形態のスパッド係船設備は、実施形態1の吊り下げ方式2Aに代え、ラックアンドピニオン方式2Bの昇降装置2を採用する。
昇降装置2が、図9のごとく、スパッド1の一側面でその長さ方向(鉛直方向)に設けたラック25と該ラック25に噛合するピニオン26とを備える。そして、位置エネルギ回収油圧ポンプ32Aが該ピニオン26に第一クラッチ31を介して接続し、スパッド1を船体Dから海底Bへ突き立てる際の自重落下に伴う位置エネルギを回収し、油圧エネルギ(回生エネルギ)にして蓄圧器33Aに供給する構成とする。
角柱状スパッド1の一側面でその上半部にラック25を一体形成する。一方、船体D側に取付けた位置エネルギ回収油圧ポンプ32Aの回転軸に主部たるピニオン26を固着し、該ピニオン26をラック25と噛合させる。
また、図9は図1に対応させた説明図で、スパッド1を引上げる際の各装置,部材の動きを表す。第二クラッチ41を介して、ピニオン26にスパッド油圧モータ42の出力軸が固着されている。同図の白抜矢印のごとく、蓄圧器33Aからの油圧エネルギによりスパッド油圧モータ42の駆動軸が回転すると共に、第二クラッチ41がつながると、ピニオン26も回転し、同図の中黒矢印のごとくスパッド1を上動させる(引上げる)。そして、蓄圧器33Aからの油圧エネルギの不足分を、船体側発電機51の出力エネルギで補って支援する構成とする。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
一方、図11のスパッド1の吊り上げ時は、船体側発電機51によるスパッド駆動用油圧ポンプ52の油圧エネルギを用いてスパッド油圧モータ42を回転させ、ウインチ21を巻上げることによってスパッド1を引上げられるようにするが、さらにバッテリ33Bに蓄えられた電力によって位置エネルギ回収発電機兼アシスト電動機32Dがウインチ21の巻上げをアシストする。スパッド1引上げ動作の初期段階にあたる「地切り」の段階において、本アシストが特に有効となる。
図11,図12は昇降装置2を吊り下げ方式2Aに頼ったが、ラックアンドピニオン方式2Bも採用できる。斯かる場合、スパッド1降ろしの際は、ラック25によってピニオン26が回転させられ、さらにピニオン軸に取付けた位置エネルギ回収発電機兼アシスト電動機32Dが回転させられ、発電する。
他の構成は実施形態1,2と同様で、その説明を省く。実施形態1,2と同一符号は同一又は相当部分を示す。
このように構成したスパッド係船設備は、昇降装置2に第一クラッチ31を介して接続し、スパッド1を船体Dから海底Bへ突き立てる際の自重落下に伴う位置エネルギを、回収してエネルギ貯蔵装置33に供給する位置エネルギ回収装置32を備えることで、位置エネルギ回収動作によって、ウインチドラムの回転を抑えるので、ウインチドラムの危険を感じるくらいあった高速回転速度は落ち、従来の衝撃音等が和らぎ危険を回避できる。安全性を確保できる。そして、昇降動作が頻繁にして重量が大のスパッドの位置エネルギを有効に回収できる。ウインチ21のブレーキや作動油の絞り弁等で熱エネルギとして捨てられていたのを有効活用できる。
スパッド油圧モータ42が、第二クラッチ41を介して昇降装置2に接続し、蓄圧器33Aに蓄積した油圧エネルギと船体側発電機51によるスパッド駆動用油圧ポンプ52の油圧エネルギを用いて、スパッド1を引上げられるようにすると、蓄圧器33Aと船体側発電機51との双方を活用して効率運転ができる。
加えて、旋回体から突き出すジブ87に設けたシーブ88を介してワイヤロープ83の先端側にグラブバケット86を吊設し、ワイヤロープ83の基端側を巻回する支持ドラム82に浚渫機用エンジン81が接続して回転駆動させて、グラブバケット86の巻上、巻下を可能にする浚渫機8が搭載される場合があるが、前記支持ドラム82に、第三クラッチ84を介して接続し、船体側発電機51の出力エネルギを用いて、浚渫機用エンジン81による支持ドラム82の巻上時における回転運動を支援する巻上アシストモータ85を、さらに具備すると、前記浚渫機用エンジン81の小型化も可能になる。
このように本発明のスパッド係船設備は、上述した数々の優れた効果を発揮し、極めて有益である。
2 昇降装置
20 櫓
21 ウインチ
22 ワイヤ
25 ラック
26 ピニオン
31 第一クラッチ
32 位置エネルギ回収装置
32A 位置エネルギ回収油圧ポンプ
33 エネルギ貯蔵装置
33A 蓄圧器
41 第二クラッチ
42 スパッド油圧モータ
51 船体側発電機
52 スパッド用油圧ポンプ
8 浚渫機
84 第三クラッチ
85 巻上アシストモータ
B 海底
D 船体
Claims (6)
- 作業船をつなぎ止めるスパッド係船設備において、
船体から海底へ突き立てる柱状のスパッドと、
主部を船体側に取付けて、前記スパッドを上下方向に移動させる昇降装置と、
該昇降装置に第一クラッチを介して接続し、前記スパッドを船体から海底へ突き立てる際の自重落下に伴う位置エネルギを、回収してエネルギ貯蔵装置に供給する位置エネルギ回収装置と、
第二クラッチを介して前記昇降装置に接続し、前記エネルギ貯蔵装置に蓄積したエネルギと船体側発電機の出力エネルギとを用いて、前記スパッドを引上げられるようにしたスパッド油圧モータと、を具備し、
さらに、前記エネルギ貯蔵装置が蓄圧器であり、且つ前記位置エネルギ回収装置が、前記昇降装置に前記第一クラッチを介して接続し、前記スパッドを船体から海底へ突き立てる際の自重落下に伴う位置エネルギを、回収して前記蓄圧器に供給する位置エネルギ回収油圧ポンプであることを特徴とするスパッド係船設備。 - 前記スパッド油圧モータが、前記第二クラッチを介して前記昇降装置に接続し、前記蓄圧器に蓄積した油圧エネルギと前記船体側発電機によるスパッド駆動用油圧ポンプの油圧エネルギを用いて、前記スパッドを引上げられるようにした請求項1記載のスパッド係船設備。
- 前記昇降装置が、船体に立設する櫓と、該櫓に設けたヘッドシーブを介してワイヤの先端側で前記スパッドを吊設し、ワイヤの基端側を巻き取るウインチと、を備えて、
前記位置エネルギ回収油圧ポンプが、該ウインチに前記第一クラッチを介して接続し、前記スパッドを船体から海底へ突き立てる際の自重落下に伴う位置エネルギを回収して前記蓄圧器に供給する請求項2記載のスパッド係船設備。 - 前記昇降装置が、前記スパッドの一側面でその長さ方向に設けたラックと該ラックに噛合するピニオンとを備えて、
前記位置エネルギ回収油圧ポンプが、該ピニオンに第一クラッチを介して接続し、前記スパッドを船体から海底へ突き立てる際の自重落下に伴う位置エネルギを回収して前記蓄圧器に供給する請求項2記載のスパッド係船設備。 - 前記作業船が浚渫船であり、且つ浚渫作業時間帯に稼働する前記船体側発電機の出力エネルギで、前記スパッド駆動用油圧ポンプを駆動させて、前記蓄圧器に蓄圧させるようにした請求項2乃至4のいずれか1項に記載のスパッド係船設備。
- 前記浚渫船に、旋回体から突き出すジブに設けたシーブを介してワイヤロープの先端側にグラブバケットを吊設し、ワイヤロープの基端側を巻回する支持ドラムに浚渫機用エンジンが接続して回転駆動させて、前記グラブバケットの巻上、巻下を可能にする浚渫機が搭載され、さらに前記支持ドラムに、第三クラッチを介して接続し、前記船体側発電機の出力エネルギを用いて、前記浚渫機用エンジンによる前記支持ドラムの巻上時における回転運動を支援する巻上アシストモータを、さらに具備する請求項5記載のスパッド係船設備。
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