以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図において、X、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向を第1の方向X、第2の方向Y、及び第3の方向Zとして説明する。また、第3の方向Zは鉛直方向を示し、鉛直方向下側をZ1側、鉛直方向上側をZ2側と称する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る流路部材の一例である弁装置の斜視図であり、図2は、弁装置の平面図であり、図3及び図4は、図2のA−A′線断面図、図5及び図6は、図2のB−B′線断面図であり、図7は、弁装置の圧力調整室を示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態の流路部材の一例である弁装置10は、インク等の液体が流れる流路の途中に設けられて当該流路を開閉するものであり、装置本体20と、装置本体20の第2の方向YのY2側の面に熱溶着や接着剤等によって接合された可撓性のフィルム30と、を具備する。すなわち、装置本体20とフィルム30との積層方向である第2の方向Yが、特許請求の範囲に記載の第1方向となっている。
図2及び図3に示すように、装置本体20には、流路の上流側に連通する収容室21と、収容室21に連通路22を介して連通すると共に流路の下流側に連通する圧力調整室23と、が設けられている。
収容室21は、装置本体20の第2の方向YのY1側に開口する凹部を蓋部材24で封止することで形成されている。また、収容室21には、第1流路25の一端が連通して設けられている。この収容室21に一端が連通する第1流路25の他端には、チューブや他の流路部材等を介して上流流路(図示なし)が接続される。
圧力調整室23は、装置本体20の第2の方向YのY2側に開口する凹形状を有する凹部である。本実施形態では、圧力調整室23の底面、すなわち、第2の方向YのY1側の面は、第3の方向Zに水平な第1底面23aと、第1底面23aの周囲に亘って設けられて、外側に向かって深さが徐々に漸小する斜面である第2底面23bと、を有する。すなわち、圧力調整室23は、外周側に向かって第2の方向Yの深さが徐々に漸小して設けられている。
また、装置本体20の圧力調整室23が開口するY2側の面には、フィルム30が貼付されており、圧力調整室23の開口はフィルム30によって塞がれている。また、圧力調整室23の底面には、第2流路26が開口して設けられている。この第2流路26の圧力調整室23における開口を、第2の開口26aと称する。本実施形態では、第2の開口26aは、第2底面23bに開口して設けられている。このように第2底面23bを斜面とし、第2底面23bに第2の開口26aを開口することで、圧力調整室23の外周側の周方向に沿って第2の開口26aに向かう液体の流れにおいて、流れが澱む部分を低減することができる。ちなみに、圧力調整室23に第2底面23bを設けずに、第1底面23aのみを設けた場合、第1底面23aと内壁面とで形成された角部において液体の澱みが発生し、気泡や液体に含まれる成分が滞留するなどの不具合が生じる。
このような圧力調整室23に一端が連通する第2流路26の他端には、弁装置10から液体が供給されるヘッド本体等の部材の流路が接続される。
ここでフィルム30は、液体に対して耐性を有する可撓性材料を用いることができる。また、フィルム30としては、水分透過率や液酸素や窒素等のガス透過率の低い材料を用いるのが好ましい。フィルム30の材料としては、例えば、高密度ポリエチレンフィルムあるいはポリプロピレン(PP)フィルムに、塩化ビニリデン(サラン)をコーティングしたナイロンフィルムを接着ラミネートした構成が挙げられる。また、他の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを使用してもよい。また、フィルム30の接合方法は、熱溶着に限定されず、振動溶着や接着剤を用いるようにしてもよい。
フィルム30の圧力調整室23の壁面の一部を構成する部分は、ダイヤフラム30aとなっている。本実施形態では、圧力調整室23を開口が円形となるように設けたため、圧力調整室23の開口を封止するダイヤフラム30aは円形となっている。
また、ダイヤフラム30aのY1側である圧力調整室23側の面には、受圧板31が設けられている。受圧板31は、ダイヤフラム30aよりも小さな外径を有する円盤形を有し、ダイヤフラム30aのY1側の面に略中心位置に貼付されている。受圧板31とフィルム30との接着方法は特に限定されず、例えば、熱溶着、振動溶着、接着剤を用いた接着等であってもよい。このような受圧板31は、連通路22を開閉する弁体50が直接フィルム30に当接するのを避けるために設けられたものであり、ダイヤフラム30aよりも剛性の高い材料、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。
また、受圧板31には、詳しくは後述するコイルバネである第2バネ40を受けるバネ受け32が設けられている。バネ受け32は、圧力調整室23側の面に円環形に突出して設けられており、第2バネ40の一端部が内部に収容される。
ここで、バネ受け32は、第2の方向Yから平面視した際の第2バネ40の径方向の一方側の面32a、すなわち、バネ受け32の内側の面32aは、第2バネ40と当接する面32aとなっている。本実施形態では、第2バネ40が当接する面32aは、第2の方向Yに沿って設けられている。
これに対して、バネ受け32の第2バネ40の径方向の他方側の面32b、すなわち、第2の方向Yから平面視した際のバネ受け32の外側の面32bは、第2の方向Yに対して傾斜した斜面となっている。言い換えると、バネ受け32は、第2バネ40の動作方向である第2の方向Yに突出して設けられており、第2バネ40の径方向において第2バネ40から離れるにつれて、受圧板31からの第2の方向Yの突出量が漸小して設けられている。このように、バネ受け32の外側の面32bを斜面とすることで、バネ受け32の外側において液体の流れが澱むのを低減することができる。すなわち、バネ受け32の外側でバネ受け32に引っかかる気泡を低減することができる
また、受圧板31には、バネ受け32を分割する溝33が設けられている。溝33は、第2の方向Yから見て、連通路22の開口である第1の開口22aに対して、少なくとも詳しくは後述する第2スリット29側、本実施形態では、Z2側に設けられていればよい。本実施形態では、溝33は、第3の方向ZのZ2側に1つと、Z1側であってX1側とX2側とのそれぞれにずれた位置に1つずつ、合計3つを設けるようにした。このようにバネ受け32に溝33を設けることによって、詳しくは後述する連通路22からバネ受け32内に供給された液体に含まれる気泡が、浮力によってZ2側に上昇した際に、溝33を通過することでバネ受け32の外側に移動すると共に第2スリット29から排出することができる。すなわち、バネ受け32内で引っかかる気泡を低減することができる。
圧力調整室23の第1底面23aには、第2の方向Yに貫通して、圧力調整室23と収容室21とを連通する連通路22が設けられている。この連通路22によって収容室21内のインクは、圧力調整室23に供給される。すなわち、本実施形態では、連通路22の圧力調整室23における開口が、液体の供給に用いられる第1の開口22aとなっている。このような連通路22は、圧力調整室23の略中央、すなわち、受圧板31の略中央に相対向して設けられている。
また、連通路22には、弁体50が挿通されている。弁体50は、連通路22に挿通された軸部51と、軸部51の収容室21内の端部に設けられたフランジ部52と、フランジ部52に嵌着されたシール部材53と、を具備する。
軸部51は、連通路22よりも若干小さな外径を有し、軸部51の圧力調整室23内における一端部が受圧板31の中央部に当接する。また、軸部51の受圧板31に当接する一端部とは反対側の他端部は収容室21内に配置されており、収容室21内の他端部には、フランジ部52が一体的に形成されている。
フランジ部52は、円形の板状部材からなる。また、フランジ部52には、シール部材53が嵌着されている。シール部材53は、ゴム又はエラストマー等からなり、中央に貫通孔を有するドーム形状を有する。シール部材53は、貫通孔が軸部51を挿通する配置となるようにフランジ部52に嵌着されている。
このような弁体50のフランジ部52と収容室21を画成する蓋部材24との間には、コイルバネである第1バネ41が介装されており、第1バネ41の付勢力により、弁体50は、軸部51の軸方向である第2の方向Yを移動軸方向として圧力調整室23側に付勢されている。なお、第1バネ41は、フランジ部52の軸部51とは反対面側に設けられた第1凸部54と、蓋部材24に設けられた第2凸部24aとに嵌合されることで保持されている。この第1バネ41がフランジ部52を連通路22側に向かって、すなわち、Y1側からY2側に向かって付勢することで、シール部材53が連通路22の開口縁部に当接し、連通路22を閉口、すなわち、閉弁する。
また、圧力調整室23内の受圧板31と、圧力調整室23の受圧板31に相対向する底面との間には、コイルバネである第2バネ40が介装されている。第2バネ40は、軸部51の外周に配置されており、受圧板31を圧力調整室23の底面とは反対側、すなわち、Y1側からY2側に向かって付勢する。
ここで、弁体50に働く力には、フィルム30の反力と、圧力調整室23の液体圧を受けて受圧板31とダイヤフラム30aとに働く力と、第1バネ41の付勢力と、第2バネ40の付勢力と、液体の供給圧を受けて弁体50に働く力と、がある。
フィルム30の反力とは、撓み変形したダイヤフラム30aが元の形状に復元しようとする力である。ダイヤフラム30aの変形量、すなわち、撓み量が大きいほど、フィルム30の反力は大きくなる。このようなフィルム30の反力は受圧板31を介して軸部51に伝達される。
圧力調整室23の液体圧を受けて受圧板31とダイヤフラム30aとに働く力とは、液体圧を受ける受圧板31とダイヤフラム30aとの受圧面積と液体圧との積で表される。圧力調整室23内の液体が第2の開口26aから下流に流されて、圧力調整室23内の液体が減少すると、液体圧と大気圧との差圧が大きくなり、受圧板31とダイヤフラム30aとに働く力は大きくなる。この受圧板31とダイヤフラム30aとに働く力は、軸部51を介して弁体50に開弁方向、すなわち、Y2からY1に向かう力として働く。
第1バネ41の付勢力は、弁体50をZ2側である閉弁方向であるY1からY2に向かって付勢する力である。また、第2バネ40の付勢力は、受圧板31をY2側である大気側に押圧する力、すなわち閉弁方向であるY1からY2に向かう力である。このように、本実施形態では、弁体50は、第1バネ41及び第2バネ40によって、圧力調整室23の液体の圧力によって受圧板31とダイヤフラム30aとに働く力とは反対向きの力を受圧板31に与えるので、受圧板31を弁体50が開弁位置に達するまで変位させるためには、第1バネ41及び第2バネ40の付勢力に相当する分だけ、圧力調整室23内の液体をより低い圧力まで減圧させる必要がある(動作圧)。このように、本実施形態では、動作圧を設定するためのバネを、第1バネ41及び第2バネ40に分けて、それぞれを収容室21と圧力調整室23とに収容することで、バネを収容室21又は圧力調整室23の一方のみに収容する場合に比べて、弁装置10の薄型化を図ることができる。
そして、このような弁装置10では、図4及び図6に示すように、圧力調整室23内の液体が下流に流されて圧力調整室23内が大気圧よりも負圧に減圧されることで、ダイヤフラム30aが圧力調整室23の底面側に移動し、受圧板31が弁体50を第1バネ41及び第2バネ40の付勢力に抗してY1側に押圧することで弁体50のシール部材53と連通路22の開口縁部との間に隙間が生じて、連通路22が開口、すなわち開弁する。また、この開弁によって収容室21から圧力調整室23内にインクが供給されることで、圧力調整室23内の減圧が解消されると、図3及び図5に示すように、ダイヤフラム30aが第1バネ41及び第2バネ40の付勢力によって元の位置に戻り、閉弁する。
このような弁装置10の圧力調整室23の底面には、圧力調整室23内の液体を下流流路に流すための第2流路26の一端が開口して設けられている。本実施形態では、第2流路26の圧力調整室23の開口を第2の開口26aと称する。また、本実施形態の第2の開口26aは、圧力調整室23の第3の方向ZにおいてZ2側に設けられている。なお、本実施形態では、鉛直方向が第3の方向Zであり、鉛直方向下がZ1、鉛直方向上がZ2となっている。このため、フィルム30の面方向が鉛直方向の第3の方向Zを含むように配置されている。そして、第2の開口26aは、圧力調整室23の鉛直方向の上側の端部、すなわち、第3の方向ZのZ2側の端部に配置されている。これにより、圧力調整室23内の気泡が浮力によって鉛直方向の上側に移動したとしても、気泡を第2の開口26aから確実に排出させることができる。また、液体を圧力調整室23に最初に充填する初期充填において、圧力調整室23内の気体を第2の開口26aから排出して、圧力調整室23内の気体や気泡の残留を減少させることができる。ちなみに、初期充填は、例えば、液体を弁装置10に供給する第1流路25に連通する部分を閉塞(チョーク)した状態で、第2流路26側から気体及び液体を吸引することで行うことができる。この初期充填時のチョークを解放した際に圧力調整室23に残留する気体の量は、第2の開口26aの鉛直方向の位置で決まる。つまり、第2の開口26aが圧力調整室23の鉛直方向上側にあればあるほど、初期充填時に圧力調整室23内に残留する気体を減少することができる。
なお、第2の開口26aが鉛直方向で下側に配置されていると、初期充填時に第2の開口26aよりも鉛直方向上側に気体が残留し、残留した気体は浮力によって第2の開口26aまで下がることがないため、圧力調整室23の液体を収容する容積が減少してしまうと共に、ダイヤフラム30aの挙動が変わってしまう。また、圧力調整室23に気泡が残留すると、気泡が予期せぬタイミングで下流側に流れて不具合が生じてしまう虞がある。また、液体に含まれる気泡やフィルム30を透過した気体は浮力によって鉛直方向上側に溜まるため、気泡が成長してしまうと共に成長した気泡を第2の開口26aから排出することが困難になってしまう。そして、気泡を排出するためには、例えば、液体を気泡と共に第2流路26側から吸引するクリーニング動作を行うことで排出させることができるが、クリーニング動作に要する液体の消費量が増大してしまう。本実施形態では、第2の開口26aを圧力調整室23の鉛直方向上側の端部に配置することで、初期充填時の気体の残留を抑制することができると共に、圧力調整室23内の液体に含まれる気泡やフィルム30を透過した気体が第2の開口26aから排出し易くして、気泡の成長や残留を排出するための液体の消費を抑制することができる。なお、第2の開口26aは、少なくとも連通路22よりも鉛直方向上側に配置されていれば、気体の残留や気泡の滞留を抑制することができる。
図3及び図5に示すように、このような圧力調整室23の底面、本実施形態では、第1底面23aには、壁27が設けられている。すなわち、壁27は、圧力調整室23のダイヤフラム30aに相対向する壁面に、Z1側からZ2側であるダイヤフラム30a側に突出して設けられている。
壁27は、図7に示すように、第2の方向Yから平面視した際に、圧力調整室23の周壁から離れた位置、すなわち、第2底面23bの外周側の端部から内側に離れた位置、本実施形態では、第1底面23aに、連通路22の第1の開口22aの周囲を囲むように設けられている。言い換えると、連通路22の第1の開口22aが底面に開口する第1凹部27aと、第1凹部27aの周囲に亘って連続して設けられて、第2の開口26aが底面に開口する第2凹部27bとが設けられており、第1凹部27aと第2凹部27bとの間にはこれらを区画する壁27が設けられている。つまり、圧力調整室23は、第1凹部27aと第2凹部27bとによって形成されているとも言える。
そして、壁27は、第2の方向Yから平面視した際に、第1の開口22aを挟む一方側に第1スリット28を有し、他方側に第2スリット29を有する。これら第1スリット28及び第2スリット29は、壁27の内側の第1凹部27aと壁27の外側の第2凹部27bとを連通するものであり、本実施形態では、壁27を第2の方向Yに完全に除去することで、つまり、壁27の第2の方向Yの高さと同じ深さで形成されている。
なお、第1スリット28と第2スリット29とが第1の開口22aを挟んで設けられているとは、第2の方向Yから平面視した際に、第1の開口22aの中心を通る線によって分かれる2つのエリアのうち、一方のエリアに第1スリット28が設けられ、他方のエリアに第2スリット29が設けられていることをいう。すなわち、第2の方向Yからの平面視において、第1スリット28と、第1の開口22aと、第2スリット29とが、直線上に配置されたものに限定されず、第1の開口22aと第1スリット28とを結ぶ線と、第1の開口22aと第2スリット29とを結ぶ線とが、鈍角となる配置を含むものである。本実施形態では、第1スリット28と第2スリット29とは、第1の開口22aを挟んで対称となる位置、すなわち、第1スリット28と、第1の開口22aと、第2スリット29とが、直線上に配置されるようにした。そして、壁27は、第1の開口22aの周囲に第1スリット28と第2スリット29とによって不連続となる環状に設けられている。ちなみに、本実施形態の壁27は、第2の方向Yから平面視した際に、円環部分と、円環部分からZ1側に向けて延長された部分とが一体的に形成された、いわゆる馬蹄形を基本形として、第1スリット28及び第2スリット29によって不連続となった形となっている。
また、本実施形態では、第1スリット28は、第1の開口22aよりも第2の開口26aとは反対側に設けられ、第2スリット29は、第1の開口22aよりも第2の開口26a側に設けられている。また、本実施形態では、第2の開口26aは、壁27の外側であって、鉛直方向上側である第3の方向ZのZ2側に設けられているので、第1スリット28は、第1の開口22aよりも鉛直方向下側、すなわち、第3の方向ZのZ1側に設けられ、第2スリット29は、第1の開口22aよりも鉛直方向上側、すなわち、第3の方向ZのZ2側に設けられている。
このような第1スリット28の開口面積は、第2スリット29の開口面積よりも広い。本実施形態では、第1スリット28及び第2スリット29は、図3に示すように、第2の方向Yにおいて同じ深さで形成されているため、図7に示すように、第1スリット28の開口幅w1を、第2スリット29の開口幅w2よりも広くすることで(w1>w2)、第1スリット28の開口面積を第2スリット29の開口面積よりも広くするようにした。
なお、壁27は、第2の方向Yから平面視した際に、第1の開口22aを中心として、360度未満に設けられている。つまり、壁27は、第1の開口22aを中心として、180度以上となるように設けられているのが好ましい。これにより、詳しくは後述するが、第1スリット28によって圧力調整室23に液体の流れを形成する際に、液体が滞留する領域を減らして、液体に含まれる異物や成分の沈降を効果的に抑制することができる。
なお、図4及び図6に示すように、壁27の内側、すなわち、第1凹部27aは、受圧板31のバネ受け32が挿入される大きさの開口で設けられており、ダイヤフラム30aが圧力調整室23の底面側に撓み変形した際に、バネ受け32は、第1凹部27a内に挿入される。また、壁27の内側の第1凹部27aの外径は、受圧板31の外周よりも小さく、壁27の外側、すなわち、第2凹部27bの内径は、受圧板31よりも大きい。つまり、壁27は、受圧板31の外側まで達する大きさで設けられている。これにより、受圧板31が壁27側に移動した際に、受圧板31がフィルム30の第1の方向X及び第3の方向Zの面方向にずれたとしても、受圧板31を壁27に確実に当接させることができる。
また、第1凹部27aの深さ、すなわち、壁27の第2の方向Yの高さは、バネ受け32が第1凹部27aの底面に当接しない深さで形成されている。すなわち、受圧板31が壁27に当接して弁体50が開弁した際に、第1凹部27a内において、受圧板31のバネ受け32と、第1底面23aとは、離間して配置される。
さらに、図7に示すように、壁27の第1スリット28が開口する角は、曲面となるように面取りされており、第1凹部27aから第1スリット28を介して第2凹部27bに液体が流れる際に、壁27の角部に異物や気泡が引っかかるのを抑制している。
このような弁装置10では、圧力調整室23内の液体が第2の開口26aから流れ出て、圧力調整室23内の圧力が減圧されると、ダイヤフラム30aがY1側に移動し、受圧板31が弁体50を第1バネ41及び第2バネ40の付勢力に抗してY1側に押圧する。
このとき、圧力調整室23内の液体の減圧が小さい(大気圧と液体の圧力との差が小さい)場合には、受圧板31が壁27に当接しない状態で、開弁する。また、圧力調整室23内の液体の減圧が大きい、すなわち、大気圧と液体の圧力との差が大きい場合には、図4及び図6に示すように、受圧板31が壁27に当接する。すなわち、壁27は、フィルム30の変位により壁27を介してフィルム30と装置本体20との当接及び離間を切り替える機能を有する。
ここで、図4、図6及び図7に示すように、受圧板31が壁27に当接した状態では、連通路22の第1の開口22aから供給された液体は、バネ受け32の内側から、壁27の内側の第1凹部27aに供給される。本実施形態では、バネ受け32の少なくとも第2スリット29側、すなわち、鉛直方向上側であるZ2側には溝33が設けられているため、溝33を通る液体の流れによって気泡は第1凹部27a内に移動する。また、液体に含まれる気泡が浮力によって溝33を通る液体の流れに抗して上昇したとしても、溝33は、少なくと鉛直方向上側であるZ2側に設けられているため、気泡に働く浮力の方向と溝33を通る液体の流れる方向とを同じ方向にして、バネ受け32内に気泡が滞留するのを抑制することができる。
そして、バネ受け32から第1凹部27aに供給された液体は、バネ受け32と壁27との間を通って第1スリット28及び第2スリット29を介して壁27の外側の第2凹部27bに供給される。バネ受け32の外側の面32b、すなわち、壁27に対向する面32bは斜面となっているため、バネ受け32の面32bに周方向に沿って液体が流れた際に、液体が澱むのを抑制することができる。すなわち、バネ受け32の面32bが第2の方向Yに沿った面で角が形成されていると、この角で液体の澱みが生じ易く、気泡が滞留、付着しやすいが、面32bを斜面とすることで、液体の澱みを抑制して、気泡を移動し易くすることができる。
また、第1スリット28の開口面積は、第2スリット29の開口面積よりも広いため、第1凹部27aから第2凹部27bへの液体は、第2スリット29よりも流路抵抗が低い第1スリット28に流れ易い。このため、第1凹部27aから第2凹部27bへの液体は、第1スリット28を流れる量が多く、第2スリット29を流れる量が少ない。そして、第1スリット28を介して第2凹部27bに供給された液体は、壁27の外周に沿って第2凹部27bを通って、第2の開口26aから排出される。すなわち、第1凹部27aから第2凹部27bへは第1スリット28を介してZ1側に液体が供給され、Z1側から第2の開口26aが設けられたZ2側に向かって第2凹部27bに沿った液体の流れが発生する。このため、圧力調整室23で液体の澱みが生じ難く、液体に含まれる異物や成分が沈降し難い。また、液体に含まれる異物や成分が重力によってZ1側に沈降したとしても、第1スリット28を通る流れによって液体に含まれる成分が攪拌されるため、液体に含まれる異物や成分の沈降を抑制することができる。
ちなみに、壁27及び第1スリット28が形成されていない場合、連通路22の第1の開口22aから圧力調整室23に供給された液体は、第2の開口26aに向かって直線的に多く流れる。このため、第1の開口22aからZ1側に向かう液体の流れが形成され難く、液体に含まれる気泡や異物、液体に含まれる成分などがZ1側に滞留する。特に、本実施形態のように、第3の方向Zを鉛直方向となるように配置し、気泡排出性を考慮して第2の開口26aを鉛直方向の上側であるZ2側に配置した場合には、鉛直方向の下側であるZ1側に液体の滞留が生じる領域が発生するため、液体に含まれる異物や成分が圧力調整室23の鉛直方向の下側に多く沈降してしまう。
本実施形態では、圧力調整室23の液体に含まれる異物や成分が滞留し易い領域に向かって流路抵抗の小さな第1スリット28によって液体の流れを形成することで、第2の開口26aとは反対側の液体の滞留を抑制して、液体に含まれる異物や成分の沈降を抑制することができる。
また、受圧板31が壁27に当接した状態では、第1凹部27aから第2スリット29を介して第2凹部27bへ液体が流れる。ここで、図7に示すように、第1凹部27aに供給された液体に含まれる気泡100は、浮力によって鉛直方向上側、すなわち、Z2側に上昇する。このとき、本実施形態では、第2スリット29が壁27の鉛直方向上側であるZ2側に設けられているため、気泡100の浮力が働く方向と、第2スリット29を通る液体の流れとを同じ方向とすることができ、浮力によって上昇した気泡100を、第2スリット29を通って第2凹部27bに移動させることができる。つまり、液体に含まれる気泡100は、第1凹部27aから第1スリット28を通って第2凹部27bに向かう流れ、すなわちZ1に向かう流れに乗って移動するものと、このZ1に向かう流れよりも気泡100の浮力が高く、Z2に向かって上昇するものとがある。Z1に向かう流れに乗った気泡100は、第1スリット28から第2凹部27bに移動する。これに対して、Z1への流れに抗してZ2側に向かって上昇した気泡100は、第2スリット29から第2凹部27bに移動する。このように、第2スリット29を設けることで、液体に含まれる気泡100を第1凹部27aに留まらせることなく、第2凹部27bに移動させることができる。したがって、気泡排出性を向上して、気泡100やこの気泡100が成長することによってフィルム30の挙動が変化するのを抑制して、フィルム30を安定して動かすことができる。また、気泡100が成長して予期せぬタイミングで下流側に流れて、下流側において気泡100による不具合、例えば、インクジェット式記録ヘッドでは、気泡によるインクの吐出不良などが発生するのを抑制することができる。さらに、気泡100を排出するために気泡100を液体と共に排出するクリーニング動作を行わせる回数を低減して、液体の無駄な消費量が増大するのを抑制することができる。
なお、受圧板31が壁27に当接しない程度に開弁した状態と、図4及び図6に示すように、受圧板31が壁27に当接するまで開弁した状態とは、選択的に制御できることが好ましい。
例えば、第1流路25に連通する部分を閉塞(チョーク)した状態で、第2流路26側から吸引する場合に、図4及び図6に示すように、受圧板31が壁27に当接した状態とすることで、圧力調整室23の全体に液体の流れを形成し、圧力調整室23内の気体及び液体に加え沈降物も、第2の開口26aから効果的に排出することができる。
なお、このような図4及び図6に示す状態は、特に限定されないが、例えば、第2流路26側から液体を気泡と共に排出するクリーニング動作や、初期充填時など行うことができる。
また、第1流路25に連通する部分を閉塞(チョーク)せずに圧力調整室23内の液体を下流に流す場合に、特に図示しないが、受圧板31が壁27に当接しない程度に開弁することで、受圧板31と壁27との間に隙間が形成され、この隙間を介して第1スリット28とは別に液体を第2の開口26aに向けて流すことができる。このとき、受圧板31と壁27との隙間に気泡が引っかかったとしても、図4及び図6に示すように、受圧板31が壁27に当接した際の衝撃や液体の流れなどによって気泡が浮力によって上昇することで、第2スリット29から第2凹部27bに気泡を移動させることができ、気泡の排出性を向上することができる。
以上説明したように、本実施形態では、第1の開口22aの周囲に壁27を設け、第2の開口26aを壁27の外側に設け、壁27は、第1の開口22aを挟む一方側に第1スリット28を、他方側に第2スリット29を有し、第1スリット28の開口面積を第2スリット29の開口面積よりも広くした。このため、壁27の第1スリット28に多くの液体を流し、第2スリット29に第1スリット28よりも少ない液体を流すように制御することができる。このため、第1スリット28によって凹部である圧力調整室23内の全体に亘って液体を流して攪拌することができ、液体に含まれる異物や成分の沈降を低減することができる。また、第1スリット28だけでなく、第2スリット29を設けることで、壁27の内側である第1凹部27aと外側である第2凹部27bとの通り道を増やすことができ、液体に含まれる気泡を壁27の内側から外側に又は外側から内側に移動することができる。特に、液体に含まれる気泡が、第1スリット28側の流れに逆らって移動したとしても、気泡を第1スリット28の第1の開口22aを挟んで反対側に設けられた第2スリット29から排出することができ、気泡排出性を向上することができる。
また、本実施形態では、第2の開口26aを鉛直方向上側であるZ2側に設けることで、凹部である圧力調整室23の気泡排出性を向上することができる。そして、第1スリット28をZ1側に設け、第2スリット29をZ2側に設けることで、液体に含まれる異物や成分が重力によってZ1側に沈降したとしても、第1スリット28を通る液体の流れによって液体を攪拌して、沈降を抑制することができる。また、液体に含まれる気泡が、浮力によってZ2側に上昇したとしても第2スリット29を通る液体の流れによって気泡を壁27の内側である第1凹部27aから外側の第2凹部27bに移動することができ、気泡排出性を向上することができる。
また、本実施形態では、図4及び図6に示すように、壁27に受圧板31を当接させるようにしたため、フィルム30の貼り付けを高精度に行って流路を形成する必要がない。すなわち、受圧板31を壁27に当接させて第1スリット28及び第2スリット29を流れる液体の流れを形成することで、たとえ装置本体20へのフィルム30の貼り付け精度が低く、フィルム30に皺が生じたとしても、第1スリット28及び第2スリット29を流れる液体の流れに影響を及ぼし難い。
また、本実施形態では、受圧板31に第2バネ40を受けるバネ受け32を設け、第2バネ40の径方向、すなわち、第1の方向X及び第2の方向Yを含む面方向における一方側の面32aは、第2バネ40と当接し、他方側の面32bは、斜面とした。このように、フィルム30に受圧板31を設けることで、フィルム30の姿勢を安定させることができる。また、受圧板31にバネ受け32を設けることで、第2バネ40のズレを抑制することができると共に、第2バネ40が直接フィルム30に接触することによるフィルム30の破壊を抑制することができる。また、バネ受け32の他方側の面32bを斜面とすることで、バネ受け32の面32b側において液体の澱みが生じ難く、気泡排出性を向上することができる。特に、壁27と受圧板31とを当接させた際に、面32bを斜面とすることで壁27とバネ受け32との間の液体の流れの澱みを抑制して、液体の気泡が壁27内に滞留するのを抑制して気泡排出性を向上することができる。
もちろん、バネ受け32の面32bは、斜面に限定されず、第2の方向Yに沿った面であってもよい。
また、本実施形態では、受圧板31は、バネ受け32を分割する溝33を備え、溝33は、第2の方向Yから見て、第1の開口22aに対して第2スリット29側に設けるようにした。このように溝33を設けることで、バネ受け32内に供給された液体は、溝33を介して第2スリット29側に供給される。したがって、バネ受け32内に供給された液体に含まれる気泡を溝33及び第2スリット29によって壁27の外側に移動することができる。
なお、このような弁装置10は、液体を噴射する液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドに用いられる。ここで、本実施形態の弁装置を有する液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドについて図8を参照して説明する。なお、図8は、インクジェット式記録ヘッドの要部断面図である。
図8に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド110(以下、単に記録ヘッドとも言う)は、液体としてインクを供給する弁装置10と、弁装置10から供給されたインクをインク滴として吐出するヘッド本体120と、を具備する。
また、ヘッド本体120は、インク滴を噴射する吐出部130と、吐出部130にインクを供給するホルダー140と、を具備する。
吐出部130は、アクチュエーターユニット131と、アクチュエーターユニット131を内部に収容可能なケース132と、ケース132の一方面に接合された流路ユニット133と、ケース132の他方面に固定された配線基板134と、を具備する。
本実施形態のアクチュエーターユニット131は、複数の圧電アクチュエーター310がノズル開口334の並設方向に沿って並設された圧電アクチュエーター形成部材311と、圧電アクチュエーター形成部材311の先端部(一端部)側が自由端となるようにその基端部(他端部)側が固定端として接合される固定板312とを有する。
圧電アクチュエーター形成部材311は、圧電材料313と、電極形成材料314及び315とを交互に挟んで積層することにより形成されている。
この圧電アクチュエーター形成部材311には、例えば、ワイヤーソー等によって複数の図示しないスリットが形成され、その先端部側が櫛歯状に切り分けられて圧電アクチュエーター310が並設されている。本実施形態では、圧電アクチュエーター310の並設方向は、ノズル開口334の並設方向であって、詳しくは後述するインクジェット式記録装置1に搭載された際に、第1の方向Xとなるように配置される。もちろん、ヘッド本体120は、インクジェット式記録装置1に搭載された際に、ノズル開口334の並設方向が第1の方向Xと一致する方向ではなくてもよく、特に限定されるものではない。
ここで、圧電アクチュエーター310の固定板312に接合される領域は、振動に寄与しない不活性領域となっており、圧電アクチュエーター310を構成する電極形成材料314及び315間に電圧を印加すると、固定板312に接合されていない先端部側の領域のみが振動する。そして、圧電アクチュエーター310の先端面が、後述する振動板331に固定される。
また、アクチュエーターユニット131の各圧電アクチュエーター310には、当該圧電アクチュエーター310を駆動するための駆動IC等の駆動回路317が搭載されたCOF等の回路基板318が接続されている。
流路ユニット133は、流路形成基板330、振動板331及びノズルプレート332を具備する。
流路形成基板330には、複数の圧力発生室333が並設され、流路形成基板330の両側は、各圧力発生室333に対応してノズル開口334を有するノズルプレート332と、振動板331とにより封止されている。また、流路形成基板330には、圧力発生室333毎にそれぞれインク供給路335を介して連通されて複数の圧力発生室333の共通のインク室となるマニホールド336が形成されている。
そして、流路形成基板330の振動板の各圧力発生室333に対向する領域にそれぞれ圧電アクチュエーター310の先端が固定されている。
また、振動板331のマニホールド336に対応する領域は、コンプライアンス部337が設けられている。なお、このコンプライアンス部337は、マニホールド336内に圧力変化が生じた時に、このコンプライアンス部337が変形することによって圧力変化を吸収し、マニホールド336内の圧力を常に一定に保持する役割を果たす。
ケース132は、流路ユニット133に接合されて、弁装置10からの液体であるインクをマニホールド336に供給するインク導入路321が設けられている。そして、弁装置10からホルダー140を介してインク導入路321に供給されたインクは、マニホールド336に供給され、インク供給路335を介して各圧力発生室333に分配される。
また、ケース132には、圧力発生室333に対応して、収容部322が設けられている。収容部322内にアクチュエーターユニット131が固定されている。
さらに、ケース132の流路ユニット133とは反対側には、配線基板134が設けられており、アクチュエーターユニット131に一端が接続された回路基板318の他端部が配線基板134に接続されている。
このような吐出部130では、圧電アクチュエーター310及び振動板331の変形によって各圧力発生室333の容積を変化させて所定のノズル開口334からインク滴を吐出させるようになっている。
また、ホルダー140には、Z2側の面に弁装置10が固定されて、Z1側の面に固定された吐出部130に弁装置10からのインクを供給する。
具体的には、ホルダー140には、インク連通路141が設けられており、インク連通路141が開口する一方面には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を除去するフィルター142と、フィルター142上に設けられた供給針143とが設けられている。
供給針143は、弁装置10の第2流路26に挿入されるものである。弁装置10からのインクは、供給針143の内部を通過してフィルター142で異物が除去された後、インク連通路141を介して吐出部130に供給される。なお、弁装置10の第2流路26の内部には、接続用シール部材26bが設けられており、ホルダー140の供給針143は、接続用シール部材26bに密着することで第2流路26との接続部分が密封されている。
本実施形態では、ホルダー140と弁装置10との接続を、ホルダー140及び弁装置10の一方側に他方の流路内に挿入される供給針143を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、ホルダー140及び弁装置10の一方の流路の開口に液体を吸収する吸収体を設け、他方の流路の開口にフィルターを設けて、吸収体とフィルターとの液面同士を接続するようにしてもよい。
また、このような記録ヘッド110は、インクジェット式記録装置に用いられる。ここで、本実施形態の液体噴射装置の一例について図9を参照して説明する。なお、図9は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す平面図である。
図9に示すように、インクジェット式記録装置1は平面視矩形状をなす本実施形態の装置本体である本体フレーム2を備えている。この本体フレーム2内には被噴射媒体(図示略)を支持する媒体支持部材3が主走査方向となる第1の方向Xに沿って延設されている。媒体支持部材3上には、図示しない紙送り機構により紙などの被噴射媒体が副走査方向となる第1の方向Xに直交する第2の方向Yに沿って給送されるようになっている。また、本体フレーム2内における媒体支持部材3の上方には、媒体支持部材3の第1の方向Xと平行に延びる棒状のガイド軸4が架設されている。
ガイド軸4には、記録ヘッド110を保持したキャリッジ5がガイド軸4に沿って第1の方向Xに往復移動可能な状態で支持されている。キャリッジ5は、本体フレーム2に設けられた一対のプーリー6a間に掛装された無端状のタイミングベルト6を介して本体フレーム2に設けられたキャリッジモーター7に連結されている。これにより、キャリッジ5は、キャリッジモーター7の駆動によってガイド軸4に沿って往復移動される。
本体フレーム2の第1の方向Xの一端側にはタンクホルダー9が設けられており、タンクホルダー9には液体貯留手段であるインクタンク8が着脱可能に装着されている。本実施形態ではインクタンク8は、1個設けられている。もちろん、インクタンク8の数は特に限定されず、2個以上の複数が設けられていてもよい。
タンクホルダー9に装着されたインクタンク8は、内部に供給路が設けられたチューブ等の供給管9aを介して記録ヘッド110の弁装置10に接続されている。弁装置10は、インクタンク8から各供給管9aを介して供給されるインクをそれぞれ一時貯留するようになっており、一時貯留したインクはヘッド本体120に供給される。なお、本実施形態では、特に図示していないが、タンクホルダー9又は供給管9aの途中等には、インクタンク8のインクを記録ヘッド110に向かって圧送する圧送手段が設けられている。圧送手段としては、例えば、インクタンク8を外部から押圧する押圧手段や、加圧ポンプ等が挙げられる。なお、圧送手段として、記録ヘッド110とインクタンク8との鉛直方向の相対位置を調整して発生する水頭圧差を用いるようにしてもよい。
本体フレーム2内における第1の方向Xの一端部寄りの位置であって、キャリッジ5のホームポジション領域には、ヘッド本体120のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット11が設けられている。このメンテナンスユニット11は、ヘッド本体120の各ノズル開口を囲うように該ヘッド本体120に当接したり各ノズル開口334からフラッシングによって吐出されるインクを受容したりするためのキャップ12と、キャップ12内を吸引可能な吸引ポンプ(図示略)とを備えている。
そして、ヘッド本体120の各ノズル開口334を囲うようにヘッド本体120にキャップ12を当接した状態でキャップ12内を吸引ポンプ(図示略)によって吸引することで、各ノズル開口334から増粘したインクや気泡などをキャップ12内に強制的に排出させる、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。
このようなインクジェット式記録装置1では、被噴射媒体を第2の方向Yに沿って給送しつつ、キャリッジ5がガイド軸4に沿って移動されると共に記録ヘッド110からインクがインク滴として吐出されて被噴射媒体に着弾されることで、印刷が行われる。
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係る流路部材の一例である弁装置の圧力調整室を示す平面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図10に示すように、圧力調整室23には、壁27が設けられており、壁27の内側には、第1凹部27aが設けられ、壁27の外側には第2凹部27bが設けられている。
このような壁27には、上述した実施形態1と同様の第1スリット28及び第2スリット29が設けられている。さらに、本実施形態では、壁27の第1スリット28及び第2スリット29の間には、複数のスリットが設けられている。本実施形態では、第1の開口22aに対して壁27のX1側に第3スリット29aを設け、X2側に第4スリット29bを設けるようにした。このような第3スリット29a及び第4スリット29bは、第1スリット28の開口面積よりも小さい開口面積を有する。本実施形態では、第3スリット29a及び第4スリット29bは、第2スリット29と同じ開口面積となるように設けた。なお、第3スリット29aと第4スリット29bは、第1スリット28及び第2スリット29と第2の方向Yの深さが同じ深さを有する。このため、第2の方向Yから平面視した際の第3スリット29aと第4スリット29bを第2スリット29と同じ幅となるように設けた。
このように第1スリット28と第2スリット29との間に、複数のスリット、本実施形態では、第3スリット29a及び第4スリット29bを設けることで、第1凹部27a内の気泡が第2凹部27bに移動し易く、気泡排出性を向上することができる。特に、気泡が壁27の内側に引っかかった場合であっても、複数のスリットから気泡の排出を促すことができるため、気泡排出性を向上することができる。
なお、本実施形態では、第3スリット29aと第4スリット29bとを設けるようにしたが、第1スリット28と第2スリット29との間のスリットの数は、特にこれに限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、第1スリット28と第2スリット29との間のスリットの位置についても特に限定されないが、第1スリット28と第2スリット29との間に均等な配置となるようにスリットを設けるのが好ましい。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態では、第1スリット28と第2スリット29とを第2の方向Yにおいて同じ深さで形成し、第1スリット28の開口幅を、第2スリット29の開口幅よりも広くすることで、第1スリット28の開口面積を第2スリット29の開口面積よりも広くするようにしたが、特にこれに限定されず、第1スリット28と第2スリット29とで第2の方向Yの深さを調整するようにしてもよい。何れにしても、第1スリット28の開口面積を第2スリット29の開口面積よりも広くすることで、第1の開口22aから供給された液体が第2スリット29に比べて第1スリット28を通る量を多くすることができ、液体に含まれる成分の沈降等を抑制することができる。
例えば、上述した各実施形態では、流路部材として弁装置10について説明したが、流路部材は、弁装置10に限定されるものではなく、例えば、弁体が設けられていない流路部材であってもよい。このような流路部材としては、例えば、インクに含まれる気泡やゴミなどの異物を捕捉するフィルターが設けられたフィルター室を有するものが挙げられる。すなわち、流路部材は、凹部と、凹部の開口を塞ぐフィルターとを有し、凹部が流路として機能するものであれば、特に限定されるものではない。
また、上述した各実施形態では、フィルム30に受圧板31を設け、受圧板31にバネ受け32を設けるようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、バネ受けの変形例を図11を参照して説明する。なお、図11は、他の実施形態の弁装置を示す断面図である。
図11に示すように、弁装置10の装置本体20側には、第2バネ40を受けるバネ受けである本体側バネ受け35が設けられている。本体側バネ受け35は、装置本体20の受圧板31に相対向する面から受圧板31に向かって、すなわち、第2の方向YのY1側からY2側に向かって突出して設けられている。このような本体側バネ受け35は、第2バネ40の内径よりも若干小さな外径を有し、内部に連通路22が設けられている。
このように装置本体20側に第2バネ40を受ける本体側バネ受け35を設けることで、第2バネ40の装置本体20に対する位置ずれを抑制することができる。
また、本体側バネ受け35には、本体側バネ受け35を分割する溝である本体側溝36が設けられている。本体側溝33は、第2の方向Yから見て、連通路22の開口である第1の開口22aに対して、少なくとも第2スリット29側、本実施形態では、Z2側に設けられていればよい。本実施形態では、本体側溝36は、特に図示していないが、実施形態1で上述した受圧板31のバネ受け32に設けられた溝33と同様に、第3の方向ZのZ2側に1つと、Z1側であってX1側とX2側とのそれぞれにずれた位置に1つずつ、合計3つを設けるようにした。このように装置本体20に本体側溝36を設けることによって、連通路22から本体側バネ受け35内に供給された液体に含まれる気泡が、浮力によってZ2側に上昇した際に、本体側溝36を通過することで本体側バネ受け35の外側に移動すると共に第2スリット29から排出することができる。すなわち、バネ受け32内で引っかかる気泡を低減することができる。なお、図11に示す例では、受圧板31のバネ受け32には、溝33を設けないようにしたが、特にこれに限定されず、受圧板31のバネ受け32に、上述した実施形態1と同様の溝33を設けるようにしてもよい。すなわち、受圧板31及び装置本体20の少なくとも一方は、バネ受け及びバネ受けを分割する溝を備え、溝は、第1の方向Xから見て、第1の開口22aに対して第2スリット29側に設けられていればよい。
また、上述した実施形態1では、フィルム30の面方向が、鉛直方向である第3の方向Zを含む方向となるように弁装置10を配置するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、フィルム30の面方向が、鉛直方向に対して垂直な水平方向、すなわち、第1の方向X及び第2の方向Yを含む方向に配置されていてもよい。この場合であっても、液体の滞留を低減して、滞留によって成分の異なる液体が生じるのを抑制することができると共に、気泡排出性を向上することができる。すなわち、液体の滞留が発生すると滞留した部分の液体は新たな液体に置換されずに、液体に含まれる成分に偏りが生じてしまう。このような滞留は、フィルム30の面方向を鉛直方向に対して垂直な水平方向に配置した場合であっても発生する。このため、第1スリット28を設けることで、液体の滞留を抑制して、液体を攪拌することができる。また、フィルム30を水平方向に配置したとしても、第1スリット28だけでなく、第2スリット29を設けることで、壁27の内側である第1凹部27aと外側である第2凹部27bとの通り道を増やすことができ、液体に含まれる気泡を壁27の内側から外側に又は外側から内側に移動することができる。特に、液体に含まれる気泡が、第1スリット28側の流れに逆らって移動したとしても、気泡を第1スリット28の第1の開口22aを挟んで反対側に設けられた第2スリット29から排出することができ、気泡排出性を向上することができる。
また、上述した各実施形態では、連通路22の第1の開口22aから圧力調整室23に液体が供給され、圧力調整室23の液体は第2の開口26aから第2流路26に排出されるようにしたが、特にこれに限定されず、第2流路26の第2の開口26aから圧力調整室23に液体が供給され、圧力調整室23の液体は、第1の開口22aから連通路22に排出されるようにしてもよい。すなわち、液体の流れが、壁27の内側である第1凹部27aから外側である第2凹部27bへ向かう流れであっても、壁27の外側である第2凹部27bから内側である第1凹部27aへ向かう流れであっても、何れの流れであっても本発明は適用することができる。
また、上述した実施形態1及び2では、バネとしての第1バネ41、第2バネ40を共に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、弁体50をZ2側に付勢できれば、バネは、第1バネ41、第2バネ40の何れか一方のみでもよい。
また、上述した実施形態1及び2では、受圧板31にバネ受け32を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、受圧板31にバネ受け32を設けられていなくても、バネが弁体50をZ2側に付勢できればよい。受圧板31にバネ受け32が設けられている場合には、受圧板31とこれを付勢するバネとの接続を安定させることができる。また、バネ受け32に、スリットを設けるようにしたが、バネ受けにはスリットが設けられていなくてもよい。なお、開弁した際にバネ受け32と圧力調整室の底面との間に十分なスペースがあれば、連通路からバネ受け32の外側への液体の流れが規制されるのを抑制することができる。
また、壁27は、第2の方向Yから平面視した際に、第3の方向Zを中心軸とした線対称となる形状としたが、特にこれに限定されず、例えば、壁27は、線対称でなくてもよい。また、壁27は、第2の方向Yから平面視した際に、円形部分と、円形部分からZ1側に向けて延長された部分とが一体的に形成されたいわゆる馬蹄形としたが、特にこれに限定されず、円形状に形成されたものであってもよい。
なお、上述したインクジェット式記録装置1では、記録ヘッド110がキャリッジ5に搭載されて主走査方向である第1の方向Xに移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド110が本体フレーム2に固定されて、被噴射媒体を副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、上述した実施形態1では、流路部材である弁装置10を有する記録ヘッド110を具備するインクジェット式記録装置1を例示したが、特にこれに限定されず、本発明の弁装置10に代表される流路部材が、インクジェット式記録装置1の記録ヘッド110以外の部分に設けられていてもよい。例えば、本発明の流路部材が、フィルターを有する流路部材の場合には、タンクホルダー9や供給管9aの途中などに設けられていてもよい。
また、上述した例では、インクジェット式記録装置1は、貯留手段であるインクタンク8が本体フレーム2に固定された構成を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクカートリッジ等の貯留手段を記録ヘッド110と共にキャリッジ5に搭載するようにしてもよい。
なお、本発明は、広く液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を具備する液体噴射装置にも適用することができる。
また、本発明は、液体噴射装置に搭載される弁装置に限定されず、流路を有する装置全般に用いることができるものである。