JP6818703B2 - きのこ栽培用培地及びそれを用いたきのこ栽培方法 - Google Patents
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Description
又、このバイオマスボイラーとして利用にあっては、燃焼後に焼却灰が生じるものであるが、この焼却灰については利用の方途がなく、廃棄処分されるしかないのが現状である。
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、この廃棄されていた焼却灰について研究を重ね、この焼却灰の有効な利用の途を見いだすと共に、バイオマスボイラーで産生される燃焼熱を同一施設内におけるきのこ栽培の温度調整用の熱源として循環的に利用するきのこ栽培方法を開発したものである。
該培地作製を、廃菌床をバイオマスボイラーの燃料として利用した後に生じた少なくともリン酸(P2O5)、石灰(CaO)、加里(K2O)、苦土(MgO)を含む焼却灰を、培地全体に対して0.1〜1.0wt%の割合で添加して行い、
該きのこ栽培を、廃菌床をバイオマスボイラーの燃料として生じた燃焼熱をきのこ栽培の温度調整用の熱源に利用して実施し、
前工程で生じた上記焼却灰と廃菌床とを、同一施設内における後工程での培地作製及びきのこ栽培へのバイオマスボイラーの燃料として利用することを特徴とする。
これによって、処理に困っていた廃棄焼却灰にあらたな活用の途を見いだすものとなった。
そして、該培地でシイタケ、ナメコ、ヒラタケ等のきのこ栽培を行うと、種菌接種、発菌、菌糸蔓延、原基形成、きのこ生育等の工程を経てきのこが生産され、一方でその後に廃棄すべき菌床が発生する。
この廃菌床は、バイオマスボイラーの燃料としての利用が可能であり、本発明ではこれを指して、木質系基材を主原料としたきのこ栽培による廃菌床という。
そこで、その焼却灰の成分が本発明のオガコ等の木質系基材を主原料とした場合に、如何なるものとなるかを検討した。
木質系基材を主原料としたきのこ栽培による廃菌床の焼却灰(農事組合法人サンエスファームより提供のもの)を例にとり、これに含まれる成分の分析を公益財団法人日本肥糧検定協会に依頼した。
その結果は表1の通りであった。
そこで、きのこ栽培の培地に添加の配合割合を区分けし、その割合できのこを栽培した際の、菌糸伸長の観察及びpH測定を行なった。
配合割合の区分けは、(C)対照区として無添加の0wt%区を設定し、これに対し試験区として、培地全体に対して0.1wt%の(1)区、0.3wt%の(2)区、0.5wt%の(3)区、1.0wt%の(4)区をそれぞれ設定した。
そして、種菌接種25日後の菌糸伸長状態の観察を行なった。
即ち、0wt%である(C)区での容器下端部を基準として基準線を引いたとき、(1)区〜(3)区では伸長する菌糸の先端部が下方に向かって基準線をはるかに越えて伸びており、明らかに菌糸伸長速度が速いことが分かった。(4)区では菌糸伸長速度への影響が小さくなるが、(C)区とほぼ同水準であった。このことから、(1)区〜(3)区で特に菌糸伸長速度が速く、(1)区〜(4)区全体としても菌糸伸長に対し焼却灰の添加が有効であることが確認された。
その結果は表2のとおりであった。
具体的には、シイタケ菌床栽培において、従来配合の対照区に(C)を設定した。培地組成として、広葉樹オガコとチップ混合材(樹種はシイ:カシ:その他=45:10:45wt%)に栄養体を約10wt%(仕上がり重量比)になるように加えて(フスマ、コメヌカ)、さらに廃菌床灰を0wt%(C区)、0.1wt%(1区)、0.3(2区)、0.5wt%(3区)、1.0wt%(4区)それぞれ添加して含水率を60wt%に調整後、栽培袋(タイベック40、(有)サンポリマー工芸社)に2.7kg充填した。つづいて、高圧殺菌釜で118℃・45分間殺菌を行なった。冷却後、シイタケHS715(株式会社北研)の種菌を20cc/菌床接種した。その後、23℃設定の培養室で100〜120日間培養を行なった。培養完了後の菌床は、栽培袋を取り除き、19℃設定の発生室で芽出しを行なった後、16℃できのこを育成し、収穫を行なった。収穫後の菌床は、24℃設定の休養室で休養を行なった後、浸水処理による発芽刺激を付与したのち、一回目発生と同様の条件できのこを芽出し、育成、収穫した。二回目、三回目発生も同様の処理を繰り返すことで得た。初回から三回目までのきのこの発生個数、生重、平均個重を測定した。
このことから、焼却灰を添加した場合には、添加のない対照区と比較してきのこの収量に対して正の影響を及ぼすことが明らかとなり、特に一回目にあっては、(2)区の215%を始めとして、(1)区〜(4)区が160%を越えるという頗る優れた効果を発揮することが確認された。これは全体を捉えた合計が(1)区〜(4)区ですべて正の影響をもたらすと共に、一回目で特に高い収穫が得られることから、二回目以上においては、必要に応じて繰り返しの回数を減らし、より少ない回数としても高い収穫が得られるものとなり、作業の効率化が図られることが確認された。
上記条件下において本発明きのこ栽培用培地は、従来不要物として廃棄され処理に困っていた焼却灰に対し、これをしいたけ等栽培に施すことできのこの増収が図られるという画期的活用の途を見いだしたものである。
従来、廃菌床はチップ或いはペレット化してバイオマスボイラーで燃焼させ熱エネルギーとして使用する方法が知られているが、現実的には、周辺の栽培施設から廃菌床を集め、且つ、それを専用施設でチップ化又はペレット化しており、その専用施設を要すると共に、その施設まで運搬・集積しなければならず、手間と費用のかかるものであった。
これは上記の如く、この少なくともリン酸(P2O5)、石灰(CaO)、加里(K2O)、苦土(MgO)を0.1〜1.0wt%の範囲で含む焼却灰は、きのこ収量を大きく増加させるからであり、本栽培方法にあってもこれを促すためである。
即ち、不特定の廃菌床によらず、同一施設内であって、前の工程で生じた廃菌床をバイオマスボイラーの熱源として利用することで、周辺の施設等から集めた廃菌床によらず、運搬の要なく利用することを狙いとする。
例えば、30×15×15cm程度の大きさの廃菌床を、野外に一週間放置し、含水率を45%まで低下させたものを用いる。そして、チップ化する必要のない形態とは、栽培容器から廃菌床を外したそのままの形態、又は、それらを数個に分割した形態等を指す。
斯くして、チップ化のための専用施設等を要することなく、且つ、その作業手間も必要とせず、生じた廃菌床をバイオマスボイラーの熱源として利用することが可能となる。
そして再び焼却灰の発生(e)が続くが、これも後工程図2(ハ)での培地の作製に利用される。
尚、前工程と後工程との関係における前工程とは、その工程にとって直前の工程だけを意味するのでなく、2回以上前の工程をも含む意である。
Claims (5)
- 木質系基材を主原料としたきのこ栽培による廃菌床をバイオマスボイラーの燃料として利用した後に生じた少なくともリン酸(P2O5)、石灰(CaO)、加里(K2O)、苦土(MgO)を含む焼却灰を、培地全体に対して0.1〜1.0wt%の割合で添加して殺菌後のpH値を5.20〜5.96の弱酸性としたことを特徴とするきのこ栽培用培地。
- 請求項1記載のきのこ栽培用培地において、焼却灰を培地全体に対して0.1〜0.5wt%の割合で添加して殺菌後のpH値を5.20〜5.70の弱酸性としたことを特徴とするきのこ栽培用培地。
- 木質系基材を主原料とする培地を作製し、きのこ栽培を実施し、その実施後に廃菌床が発生し、該廃菌床をバイオマスボイラーの燃料として利用し、バイオマスボイラーの燃料として利用した後に焼却灰が発生する工程からなるきのこ栽培にあって、
該培地作製を、廃菌床をバイオマスボイラーの燃料として利用した後に生じた少なくともリン酸(P2O5)、石灰(CaO)、加里(K2O)、苦土(MgO)を含む焼却灰を、培地全体に対して0.1〜1.0wt%の割合で添加して行い、
該きのこ栽培を、廃菌床をバイオマスボイラーの燃料として生じた燃焼熱をきのこ栽培の温度調整用の熱源に利用して実施し、
前工程で生じた上記焼却灰と廃菌床とを、同一施設内における後工程での培地作製及びきのこ栽培へのバイオマスボイラーの燃料として利用することを特徴とするきのこ栽培方法。 - 請求項3記載のきのこ栽培方法において、前工程で生じた廃菌床を乾燥させ、且つ、ペレット化を要することのない形態で、同一施設内における後工程での培地作製及びきのこ栽培へのバイオマスボイラーの燃料として利用することを特徴とするきのこ栽培方法。
- 請求項3又は4記載のきのこ栽培方法において、焼却灰を培地全体に対して0.1〜0.5wt%の割合で添加したことを特徴とするきのこ栽培方法。
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