JP6816941B2 - 免震建物の基礎構造 - Google Patents

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本発明は、免震建物に関し、さらに詳しくは、基礎梁として複合梁を用いた免震建物の基礎構造に関する。
特許文献1には、免震建物として、上部構造体の基礎構造が、互いに切り離された複数の基部(連結部)と、それら基部を連結する複数の基礎梁とで構成され、複数の基部が免震装置を介して下部構造体上で免震支持されたものが知られている。
このような免震建物の基礎構造においては、基礎梁を鉄筋コンクリート造(RC造)の梁とすることが一般的である。このため、建物のスパンの長さが鉄筋コンクリート造梁で可能なスパン長となってしまう。しかしながら、物流施設や病院などのような建物でスパンが長く、鉄筋コンクリート造梁の適用が不可能な場合、梁にプレストレスを導入するか、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の梁とすることが多い。
特開2008−285952号公報
しかしながら、基礎梁を鉄筋コンクリート造梁や鉄骨鉄筋コンクリート造梁とした場合、鉄筋工や型枠大工などの労務が不足している中で、労務の手配が難しく、施工が困難である。特に、少人数の労務で施工した場合、基礎工事の工期が長くなり、全体工程が従来よりも長くなる。
また、鉄筋コンクリート造梁や鉄骨鉄筋コンクリート造梁の場合は、型枠材や支保工などの仮設材が増えてしまい、免震ピットからの解体・搬出は手間がかかる。
また、建物のスパンが大きい場合に、プレストレスを導入した梁を用いることがあるが、プレストレスを導入するには専門業者を要し、専門業者によるプレストレスの導入は躯体工事のコストアップになる。
また、従来の鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造からなる基礎梁の場合、免震ピットを大きく確保する上で不利となり、免震装置のメンテナンスを効率良く行なう上で不利となる。
また、設備配管を収めるため、免震ピットの根切り深さが深くなり、残土が増えて躯体工事のコストの低減化を図る上で不利となる問題もある。
また、建物のスパンが大きい場合には、基礎梁を鉄骨造とすることも考えられるが、鉄骨造の梁は剛性が弱く、床振動に起因し、居住性が低下するという問題がある。
上記の課題により、免震建物を構築中の各作業所において施工性が悪くなり、作業の効率を低下させることになる。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、施工性及び経済性に優れ免震装置のメンテナンスを効率良く行なう上で有利な免震建物の基礎構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、上部構造体の基礎構造が、互いに切り離されそれぞれ柱が立設される複数の基部と、それら基部を連結する複数の基礎梁とを含んで構成され、前記複数の基部は、免震装置を介して下部構造体から離れた箇所で免震支持された免震建物の基礎構造であって、前記複数の基礎梁は前記下部構造体から離れた箇所に位置し、その長手方向の中央部が鉄骨造であり、その長手方向の両側部が鉄骨鉄筋コンクリート造であり、前記鉄骨造を構成する鉄骨の両端がそれぞれ前記基部に至っている複合梁を含んで構成され、前記鉄骨造の長さは、前記両側部の各鉄骨鉄筋コンクリート造の長さよりも大きいことを特徴とする。
本発明の免震建物の基礎構造によれば、基礎梁を複合梁とすることにより、鉄筋コンクリート造梁や鉄骨鉄筋コンクリート造梁に比べて労務不足の課題が緩和できる。
鉄筋工や型枠大工による作業は複合梁の端部の鉄骨鉄筋コンクリート造の部分のみなので、少人数の労務でも施工が可能となる。また、複合梁の中央部分が鉄骨造のため、スピーディーな建方で工期短縮ができる。
鉄筋コンクリート造梁や鉄骨鉄筋コンクリート造梁に比べて型枠材や仮設材が削減できるので、免震ピットからの解体・搬出の手間が省ける。
複合梁は建物のスパンが大きい部分に適用可能なため、プレストレスの手間が省けるので、躯体工事のコストが低減できる。
複合梁の中央部分が鉄骨のため、免震ピットを大きく確保する上で有利となり、免震装置のメンテナンスを効率良く行なう上で有利となる。
また、免震ピット内での設備配管の収まりも容易になり、免震ピットの根切り深さを抑えることができることから、掘削量を削減して躯体工事のコストの低減化を図る上で有利となる。
複合梁は端部が鉄骨鉄筋コンクリート造のため、梁の剛性が高く、床振動を押さえ、居住性が改善される。
複合梁を適用することで施工性が改善されるので、作業所においての省力化が図れる。
実施の形態に係る免震建物の縦断面図である。 図1のAA線断面図である。 図1のBB線断面図である。 基礎梁の構成を示す断面図である。 基礎梁の変形例を示す断面図である。 複数種類の梁を混合して設けた上部構造の断面図である。 柱を連結する複合梁の断面図である。 柱を連結する複合梁の変形例を示す断面図である。 ブレースおよび耐力壁が設けられた免震建物の正面図である。 (A)〜(C)は別実施例の説明図である。 鉄筋コンクリート造の基礎梁を示す図である。 鉄骨鉄筋コンクリート造の基礎梁を示す図である。 複数種類の基礎梁が用いられた免震建物の縦断面図である。 図13のAA線断面図である。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1、図2に示すように、免震建物10は、上部構造体12が免震装置16を介して下部構造体14上で免震支持されたものである。
下部構造体14は、地盤に設けられた不図示の基礎を含み、この基礎上に設けられ水平面に沿って延在する底盤1502と、底盤1502の外周に沿って起立する不図示の周壁(土留め壁)とを備えている。
そして、底盤1502上で周壁(土留め壁)の内側が免震ピット15となっている。
図4に示すように、免震装置16は、互いに間隔をおいて配置された複数の免震用積層ゴム1602を含んで構成されている。本実施の形態では、免震用積層ゴム1602は、平面視、縦横に所定の間隔をおいて格子状に配置されている。
免震用積層ゴム1602は、多数のゴムシートと多数の鋼板とが交互に重ね合わせて接合された積層体を含んで構成されている。免震用積層ゴム1602は、積層体の内部に、振動のエネルギを吸収する鉛の柱が挿入されているものや挿入されていないものなど従来公知の様々な構造が採用可能である。
積層体の下側のフランジプレート1604Aは、底盤1502にボルトで取着されている。
積層体の上側のフランジプレート1604Bは、基礎構造18の基部20にボルトで取着されている。
基部20は、柱22の断面形状よりも大きな断面形状を呈し、鉄筋コンクリート製であり、本実施の形態では、断面が矩形を呈している。
上部構造体12は、図1〜図3に示すように、基礎構造18と、複数の柱22と、複数の梁28とを含んで構成されている。
基礎構造18は、複数の基部20と、それら基部20の側面間を連結する複数の基礎梁24とを含んで構成されている。
図4に示すように、複数の基礎梁24は、両端が鉄骨鉄筋コンクリート造2602であり中央部が鉄骨造2604である複合梁26で構成されている。
すなわち、複合梁26の両端の鉄骨鉄筋コンクリート造2602は、基部20の側面に接合されている。
この場合、複合梁26は、図5(A)に示すように、中央部が鉄骨造2604であり、中央部の両側が鉄骨鉄筋コンクリート造2602であり、両端が鉄筋コンクリート造2606であってもよく、あるいは図5(B)に示すように、中央部が鉄骨造2604であり、中央部の両側が鉄骨鉄筋コンクリート造2602であってもよい。
図5(A)、(B)の何れの場合も、鉄骨造2604の両側の鉄骨鉄筋コンクリート造2602または鉄骨造2604の両側の鉄骨鉄筋コンクリート造2602および鉄筋コンクリート造2606は、現場打ちコンクリート造またはプレキャストコンクリート造により構成することができる。プレキャストコンクリート造とした場合、フルプレキャストあるいはハーフプレキャストの何れを用いても良い。
図1、図2に示すように、複数の柱22は各基部20から立設されている。
複数の梁28は、複数の柱22を各階毎に接続している。
本実施の形態では、柱22は鉄筋コンクリート造柱2202であり、梁28は鉄骨造梁2802である。
なお、上部構造体12は、上記の構造に限定されず、図6に平面図で示すように、必要に応じて、鉄骨造梁2802、鉄骨鉄筋コンクリート造梁2804、鉄筋コンクリート造梁2806を混合して用いるようにしてもよく、図7に示す両端が鉄骨鉄筋コンクリート造3002であり中央部が鉄骨造3004である複合梁30、あるいは、図8に示す、中央部が鉄骨造3004であり、中央部の両側が鉄骨鉄筋コンクリート造3002であり、両端が鉄筋コンクリート造3006である複合梁30を用いても良い。
また、柱22も必要に応じて鉄骨造柱、鉄骨鉄筋コンクリート造柱、鉄筋コンクリート造柱を混合して用いるようにしてもよい。
また、柱22は、現場打ちコンクリートで構築してもよいし、プレキャストコンクリート柱で構築してもよい。柱22をプレキャストコンクリート柱で構築した場合、フルプレキャストを用いてもよく、あるいは、柱22を中空断面形状としてもよい。
また、階毎に複数の梁28の構成、複数の柱22の構成がそれぞれ異なっていてもよい。
さらに、図9に示すように、必要に応じて、上下で隣り合う梁28の間に、一対の型鋼等からなる補強材を互いに略V字形をなすように組んだ複数の耐震や制振機能のあるブレース32を掛け渡すようにしてもよい。
また、上部構造体12は、図1〜図3に示すような純ラーメン構造の他、必要に応じて、図9に示すように、柱22および梁28で囲まれた空間に耐力壁33を設けても良い。
また、図10(A)に示すように、複合梁26が基部20に連結される部分の梁幅W1を、柱22の幅W2よりも大きく形成すると、複合梁26が基部20に連結される部分の梁成を小さくでき、免震ピット15を大きく確保する上で有利となり、免震装置16のメンテナンスを効率良く行なう上で有利となる。
すなわち、複合梁26が基部20に連結される部分の梁幅W1を、柱22の幅W2よりも大きく形成すると、複合梁26が基部20に連結される部分、例えば、図10(B)に示すように鉄骨鉄筋コンクリート造2602および鉄筋コンクリート造2606の梁成Hや図10(C)に示すように鉄骨鉄筋コンクリート造2602の梁成Hを小さくでき、免震ピット15を大きく確保する上で有利となり、免震装置16のメンテナンスを効率良く行なう上で有利となる。
本実施の形態によれば以下の効果が奏される。
(1)基礎梁24を両端が鉄骨鉄筋コンクリート造2602または鉄筋コンクリート造2606であり中央部が鉄骨造2604である複合梁26で構成したので、基礎梁24を鉄筋コンクリート造梁や鉄骨鉄筋コンクリート造梁で構成する場合に比べて労務不足の課題が緩和できる。
すなわち、複合梁26を施工するにあたっては、鉄筋工や型枠大工による作業が複合梁26の両端の鉄骨鉄筋コンクリート造2602または鉄筋コンクリート造2606の部分のみなので、少人数の労務でも施工が可能となる。また、複合梁26の中央部分が鉄骨造2604のため、スピーディーな建方で工期短縮ができる。
(2)基礎梁24を鉄筋コンクリート造梁や鉄骨鉄筋コンクリート造梁で構成する場合に比べて、型枠材や仮設材が複合梁26の両端部分のみで足りることから、型枠材や仮設材を削減できるので、それら型枠材や仮設材を解体し免震ピット15から搬出する際の手間が省ける。
(3)複合梁26は建物のスパンが大きい部分に適用可能なため、プレストレスの手間が省けるので、躯体工事のコストが低減できる。
(4)複合梁26の中央部分が鉄骨のため、免震ピット15を大きく確保する上で有利となり、免震装置16のメンテナンスを効率良く行なう上で有利となる。
また、免震ピット15内での設備配管の収まりも容易になることから、免震ピット15の根切り深さを抑える上で有利となり、掘削量を削減して躯体工事のコストの低減化を図る上で有利となる。
(5)複合梁26は両端が鉄骨鉄筋コンクリート造2602または鉄筋コンクリート造2606のため、梁の剛性が高く、床振動を押さえ、居住性が改善される。
(6)複合梁26を適用することで施工性が改善されるので、作業所においての省力化が図れる。
(7)上述の効果から施工性及び経済性に優れた免震建物10を提供する上で有利となる。
なお、本実施の形態では、複数の基礎梁24を全て複合梁26で構成する場合について説明したが、必要に応じて複数の基礎梁24の一部を図11に示す鉄筋コンクリート造梁34、図12に示す鉄骨鉄筋コンクリート造梁36、プレストレス梁の何れか1種類の梁で構成し、あるいは、2種類以上の梁を組み合わせて構成してもよいことは無論である。
すなわち、スパンが大きい箇所や設備配管が配置される箇所を複合梁26とし、さらにスパンが大きい箇所を鉄骨造梁34あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造梁36あるいはプレストレス梁とし、スパンが小さい箇所を鉄筋コンクリート造梁としてもよい。
図13、図14は、必要に応じて複数の基礎梁24の一部を、必要に応じて鉄筋コンクリート造梁34、鉄骨鉄筋コンクリート造梁36に置き代えて用いている。
また、本実施の形態では、下部構造体14が、建物が構築される地盤であり、上部構造体12が建物である場合について説明したが、上部構造体12と下部構造体14とが共に建物である場合にも本発明は同様に適用可能である。
10 免震建物
12 上部構造体
14 下部構造体
15 免震ピット
16 免震装置
18 基礎
20 基部
22 柱
24 基礎梁
26 複合梁
2602 鉄骨鉄筋コンクリート造
2604 鉄骨造
2606 鉄筋コンクリート造
28 梁
2802 鉄骨造梁
2804 鉄骨鉄筋コンクリート造梁
2806 鉄筋コンクリート造梁
30 複合梁
3002 鉄骨鉄筋コンクリート造
3004 鉄骨造
3006 鉄筋コンクリート造
32 ブレース
33 耐力壁
34 鉄骨造梁
36 鉄骨鉄筋コンクリート造梁

Claims (6)

  1. 上部構造体の基礎構造が、互いに切り離されそれぞれ柱が立設される複数の基部と、それら基部を連結する複数の基礎梁とを含んで構成され、
    前記複数の基部は、免震装置を介して下部構造体から離れた箇所で免震支持された免震建物の基礎構造であって、
    前記複数の基礎梁は前記下部構造体から離れた箇所に位置し、その長手方向の中央部が鉄骨造であり、その長手方向の両側部が鉄骨鉄筋コンクリート造であり、前記鉄骨造を構成する鉄骨の両端がそれぞれ前記基部に至っている複合梁を含んで構成され、
    前記鉄骨造の長さは、前記両側部の各鉄骨鉄筋コンクリート造の長さよりも大きい、
    ことを特徴とする免震建物の基礎構造。
  2. 前記複合梁が前記基部に連結される部分の梁幅は、前記柱の幅よりも大きく形成されている、
    ことを特徴とする請求項記載の免震建物の基礎構造。
  3. 前記複合梁の前記鉄骨鉄筋コンクリート造の部分は、現場打ちコンクリート造またはプレキャストコンクリート造である、
    ことを特徴とする請求項1記載の免震建物の基礎構造。
  4. 前記複数の基礎梁は全て、その長手方向の中央部が鉄骨造であり、前記鉄骨造の両端に続く箇所が鉄骨鉄筋コンクリート造である複合梁で構成されている、
    ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項記載の免震建物の基礎構造。
  5. 前記複数の基礎梁は、前記複合梁に加えて、鉄筋コンクリート造梁、鉄骨鉄筋コンクリート造梁、プレストレス梁の少なくとも1つの梁を含む、
    ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項記載の免震建物の基礎構造。
  6. 前記複合梁の前記鉄骨造の部分の上面は床スラブと接している、
    ことを特徴とする請求項1記載の免震建物の基礎構造。
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