以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とはアクリレートとメタクリレートとの総称であり、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を意味するものであり、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」についても同様である。また、本発明において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
〔ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー〕
本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、少なくとも下記化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)を反応させて得られ、ウレタン結合量が5.2×10−3〜10.0×10−3eq/g、(メタ)アクリロイル基量が0.8×10−3〜3.0×10−3eq/gであるものである。
化合物(A):ポリイソシアネート
化合物(B):炭素数2〜5の鎖状脂肪族ジオール
化合物(C):水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート
本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び後述する本発明の硬化性組成物は、硬化後の塗膜外観、未硬化時のタック感がなくハンドリング性に優れ、また、耐摩耗性、硬化後及び硬化・延伸後の耐汚染性、3次元加工時の変形に追従可能な硬化後の延伸性に優れたものである。特に、ハンドリング性においては前記特許文献1、2に記載されている硬化性組成物と比較して顕著に優れ、3次元加工時の変形に追従可能な延伸性においては前記特許文献2に記載されている硬化性組成物と比較して顕著に優れたものである。
本発明の硬化性組成物が上記のような優れた効果を奏する理由は定かではないが、ハンドリング性については次の理由によるものと考えられる。即ち、本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、原料として用いる化合物(B)として鎖長の短い鎖状脂肪族ジオール(炭素数2〜5の鎖状脂肪族ジオール)を用いることにより、分子内でのウレタン結合間距離が短くなり、分子間においてウレタン結合由来の強固な水素結合が形成され、未硬化の塗工膜の硬さ、剛性が得られることによるものと考えられる。前記特許文献1、2に記載されているウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーでも同様の水素結合が形成されるものの、ウレタン結合量が低い分、得られる硬さ、剛性が不足しているものと推定される。
また、硬化後の延伸性については、高温下において水素結合が緩和し、延伸性(硬化物の伸び)は(メタ)アクリロイル基間での架橋密度が支配的になるものと考えられる。前記特許文献2に記載されているウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと比較して(メタ)アクリロイル基量が高いため、延伸性が不足するものと推定される。
更に、硬化後の耐汚染性については、成分(C)が複数の(メタ)アクリロイル基を有することにより、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを硬化させた際の分子間の架橋性が高められ、分子間ネットワークがより強固になることに起因するものと考えられる。特に、硬化・延伸後の耐汚染性については、本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのウレタン結合量が高いことにより、延伸工程を経た際の加熱により、緩和されたウレタン結合が、除熱時には規則正しい分子間ネットワークに再構築されることによるものと推定される。
[化合物(A)]
本発明に用いる化合物(A)は、ポリイソシアネートである。ポリイソシアネートは、イソシアネート基及び/又はイソシアネート基を含む置換基を1分子中に合計2個以上有する化合物である。化合物(A)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。なお、本発明において、イソシアネート基及びイソシアネート基を含む置換基を総称して「イソシアネート基類」と称することがある。また、化合物(A)において、イソシアネート基類は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
イソシアネート基を含む置換基としては、例えば1個以上のイソシアネート基を含む、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルケニル基又は炭素数1〜5のアルコキシル基が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、特に炭素数は1〜3のアルキル基が好ましい。
ポリイソシアネートとしては、その種類は特に制限されないが、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられ、これらのうちの1種を用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも成分(A)としては得られる硬化物の耐候性と硬度を高める観点から脂環式ポリイソシアネートを含むことが好ましい。
鎖状脂肪族ポリイソシアネートは、鎖状脂肪族構造とそれに結合する2個以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。鎖状脂肪族ポリイソシアネートは、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜の耐候性を高め、かつ延伸性を付与する観点から好ましい。鎖状脂肪族ポリイソシアネートにおける鎖状脂肪族構造は、特に限定されないが、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基であることが好ましい。このような鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、及び、トリス(イソシアネートヘキシル)イソシアヌレート等の脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ポリイソシアネートは、芳香族構造とそれに結合する2個以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。芳香族ポリイソシアネートにおける芳香族構造は、特に限定されないが、炭素数6〜13の芳香族構造であることが好ましい。このような芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネートは、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜の機械的強度を高める観点から好ましく、このような芳香族ポリイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環式ポリイソシアネートは、脂環式構造と2個以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。化合物(A)における脂環式構造は、特に限定されないが、炭素数5〜15であることが好ましく、炭素数6以上であることがさらに好ましい。また、炭素数14以下であることがさらに好ましく、炭素数13以下であることが特に好ましい。さらに、脂環式構造としては、シクロアルキレン基であることが好ましい。脂環式構造を有するポリイソシアネートとしては、例えば、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート等の脂環式構造を有するジイソシアネート及びトリス(イソシアネートイソホロン)イソシアヌレート等の脂環式構造を有するトリイソシアネートが挙げられる。これらの中でもイソホロンジイソシアネートを含むことが好ましい。
[化合物(B)]
本発明に用いる化合物(B)は炭素数2〜5の鎖状脂肪族ジオールである。化合物(B)における鎖状構造は直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
化合物(B)としては例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオールの少なくとも一方を含むことが硬化後の耐汚染性、耐摩耗性、未硬化時のハンドリング性に優れた硬化性組成物を得ることができるために好ましく、これらの中でもエチレングリコールを含むことが特に好ましい。
本発明において、化合物(B)はウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの原料として用いられる全ジオール成分に対し、40重量%以上で用いられることが、硬化後の耐汚染性、耐摩耗性、未硬化時のハンドリング性を向上させる観点好ましい。また、この効果をより高めるため、化合物(B)は60重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが更に好ましく、90重量%以上であることが特に好ましく、一方、上限は通常、100重量%である。
[化合物(C)]
本発明に用いる化合物(C)の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートは、1個以上の水酸基と2個以上の(メタ)アクリロイル基と炭化水素基とを有する化合物である。水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートは硬化膜を得る際の硬化反応において複数の(メタ)アクリロイル基が関与することにより、良好な架橋構造を形成し、耐汚染性、耐摩耗性等の物性を良好なものとすることができる。
化合物(C)としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルジアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基と水酸基との間に炭素数が2〜4のアルキレン基を有するヒドロキシアルキルポリ(メタ)アクリレートが、得られる硬化膜の機械的強度の観点から特に好ましい。
化合物(C)の分子量は、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。一方、化合物(C)の分子量は、得られる硬化膜の機械的強度の観点から800以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。なお、化合物(C)が前記の付加反応体や重合体である場合には、前記分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー測定(GPC測定)による数平均分子量を意味する。
[その他の原料化合物]
本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの原料化合物において、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、前記化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)以外のその他の原料化合物を用いてもよい。このようなその他の原料化合物としては、例えば、炭素数6〜16の鎖状脂肪族ジオール、脂環式構造を有するジオール、ポリアルキレングリコール、これら以外の高分子量ポリオール(以下、「その他の高分子量ポリオール」と称する。)、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、鎖延長剤等が挙げられる。
炭素数6〜16の鎖状脂肪族ジオールとしては、例えば3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール,1−10デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環式構造を有するジオールとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリオレフィンポリオール、及びシリコンポリオール等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応物、グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコールのモノ(メタ)アクリレート体等が挙げられる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリロイル基と水酸基との間に炭素数が2〜4のアルキレン基を有するヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートが、得られる硬化膜の機械的強度の観点から好ましい。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
鎖延長剤は、イソシアネート基と反応する二以上の活性水素を有する化合物である。鎖延長剤としては、数平均分子量500未満の低分子量ジアミン化合物等が挙げられ、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;及び、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリシクロデカンジアミン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの物性]
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのウレタン結合量は、5.2×10−3〜10.0×10−3eq/gである。ウレタン結合量が上記5.2×10−3以上であると硬化膜の耐汚染性、未硬化膜のハンドリング性が向上し、10.0×10−3eq/g以下であると溶液安定性、ハンドリング性が向上する。また、これらの効果をより良好なものとする観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのウレタン結合量は、5.3×10−3eq/g以上であることが好ましく、5.5×10−3eq/g以上であることがより好ましく、5.8×10−3eq/g以上であることが更に好ましく、一方、9.0×10−3eq/g以下であることが好ましく、8.0×10−3eq/g以下であることがより好ましい。なお、上記のウレタン結合量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの原料配合を調整することにより制御することができる。
また、本発明において、上記のウレタン結合量は次のようにして算出される。本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、少なくとも化合物(A)のポリイソシアネート、化合物(B)の炭素数2〜5の鎖状脂肪族ジオール、化合物(C)の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを原料として用いるものであり、得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおける構成単位は用いた原料組成がそのまま保たれているものとみなすことができる。このことから、ウレタン結合数(イソシアネート基(ポリイソシアネートのモル数にイソシアネート基官能基数を乗した値の合計値)の総当量数とヒドロキシル基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の総当量数との少ない方の値)をウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの構成成分の総量(過剰に加えている成分量を除いた各原料成分量の合計(仕込み量ではない。))で除して算出される。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの(メタ)アクリロイル基量は、0.8×10−3〜3.0×10−3eq/gである。(メタ)アクリロイル基量が0.8×10−3eq/g以上であると硬化後の耐汚染性、耐摩耗性が向上し、3.0×10−3eq/g以下であると3次元加工時の変形に追従可能な硬化後の延伸性が向上する。また、これらの効果をより良好なものとする観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの(メタ)アクリロイル基量は、0.9×10−3eq/g以上であることが好ましく、1.0×10−3eq/g以上であることがより好ましく、一方、2.7×10−3eq/g以下であることが好ましく、2.5×10−3eq/g以下であることがより好ましい。なお、上記の(メタ)アクリロイル基量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの原料配合を調整することにより制御することができる。
また、本発明において、上記の(メタ)アクリロイル基量は次のようにして算出される。本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、少なくとも化合物(A)のポリイソシアネート、化合物(B)の炭素数2〜5の鎖状脂肪族ジオール、化合物(C)の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを原料として用いるものであり、得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおける構成単位は用いた原料組成がそのまま保たれているものとみなすことができる。このことから、(メタ)アクリロイル基数(過剰に加えている成分量を除いた水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートのモル数に(メタ)アクリロイル基官能基数を乗した値の合計値)をウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの構成成分の総量(過剰に加えている成分量を除いた各原料成分量の合計(仕込み量ではない。))で除して算出される。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は1,500以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、一方、19,000以下であることがより好ましく、8,000以下であることが更に好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量が上記下限値以上であると、得られる硬化膜の3次元加工適性が良好となる傾向にある。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量が上記上限値以下であると、硬化性組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となる傾向にある。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量がこれを用いて得られる硬化膜の3次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に関係があり、重量平均分子量が小さいほど架橋点間の距離は短く、また、重量平均分子量が大きいほど架橋点間の距離は長くなる傾向にある。重量平均分子量が3次元加工適正及び耐汚染性に影響する理由は架橋点間距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり3次元加工適性がより良好となり、一方、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐擦傷性、耐汚染性、耐摩耗性がより良好となるものと推定される。なお、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー測定(GPC測定)により、求めることができ、より詳細な測定方法を後掲の実施例において示す。
[ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造方法]
本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、前記化合物(A)に、前記化合物(B)と前記化合物(C)を付加反応させることにより製造することができる。また、その際の各原料化合物の仕込み比は通常、目的とするウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの組成と実質的に同等、又は同一とする。
これらの付加反応は、公知のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造方法におけるいずれの方法を用いても行うことができる。このような方法としては、例えば、以下の(1)〜(3)の方法が挙げられる。
(1)前記化合物(A)と化合物(B)とを、イソシアネート基が過剰となるような条件下で反応させてイソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーを得て、次いで該イソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーと前記化合物(C)とを反応させる方法。(2)全原料化合物を同時に一括添加して反応させる方法。
(3)前記化合物(A)と前記化合物(C)とを先に反応させ、分子中に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを同時に有するウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーを合成した後、得られたプレポリマーに、化合物(B)を反応させる方法。
これらのうち、(1)の方法によれば、前記ウレタンプレポリマーが化合物(A)と化合物(B)とをウレタン化反応させることにより得られる。目的とするウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと化合物(C)とウレタン化反応させてなる構造となる。(1)の方法によれば、分子量の制御が容易であり、また、両末端に(メタ)アクリロイル基が導入することができるために硬化膜を容易に得ることができるために好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおける全イソシアネート基の量とヒドロキシル基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の量は、通常、理論的に当モルである。このため、原料として用いる化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)及びその他の原料化合物の使用量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおける全イソシアネート基の量とそれと反応する全官能基の量とが等当量又はイソシアネート基に対する当該全官能基の当量%で50〜200当量%になる量である。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを製造する際は、化合物(C)の使用量を、化合物(C)及びその他の原料におけるイソシアネート基と反応する官能基を含む化合物の総使用量に対して、3モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、一方、70モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、30モル%以下が特に好ましい。この割合により、得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの分子量を制御することができる。化合物(C)の割合が多いと、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの分子量は小さくなる傾向となり、割合が少ないと分子量は大きくなる傾向となる。
更に、鎖延長剤を用いる場合には、化合物(B)、化合物(B)以外のジオール成分、及びその他のポリオール成分の全ポリオール(アルコール性ヒドロキシル基を2個以上有する化合物)と鎖延長剤とを合わせた化合物の総使用量に対して全ポリオールの使用量を、70モル%以上とすることが好ましく、80モル%以上とすることがより好ましく、90モル%以上とすることが更に好ましく、95モル%以上とすることが特に好ましい。前記全ポリオール量が前記の下限値以上であると、液安定性が向上する傾向にある。
なお、上記の使用原料割合は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを製造する際の目安となるものである。実際には、所望の物性により、原料配合割合を上記の範囲において微調整することが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造において、粘度の調整を目的に有機溶媒を使用することができる。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。有機溶媒としては、本発明の効果が得られる範囲において公知の有機溶媒のいずれも使用することができる。好ましい有機溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。有機溶媒は、通常、反応系内の固形分100重量部に対して300重量部以下で使用することができる。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造において、生成するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びその原料化合物の総含有量は、反応系の総量に対して20重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。なお、この総含有量の上限は通常、100重量%である。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びその原料化合物の総含有量が上記下限値以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に際しては触媒を用いることができる。この触媒としては、本発明の効果が得られる範囲から選ぶことができ、例えばジブチルスズラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、及びジオクチルスズジオクテート等のスズ系触媒;ビスマストリス(2−エチルヘキサネート9等のビスマス系触媒等が挙げられる。触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。触媒は、これらのうち、ジオクチルスズジラウレート、ビスマストリス(2−エチルヘキサネート)であることが、環境適応性及び触媒活性、保存安定性等の観点から好ましい。触媒の使用量は、原料化合物の総含有量に対して、上限が通常2,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下であり、下限が通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上で用いられる。なお、前記(1)の方法により製造する場合、特に、前記化合物(A)と化合物(B)とを反応させてウレタンプレポリマーを得る反応、及びウレタンプレポリマーに対して前記化合物(C)を付加反応させる際の両方の反応においてに上記触媒を用いることが好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造時に、反応系に化合物(C)のような(メタ)アクリロイル基を含む化合物を用いる場合には、重合禁止剤を併用することが好ましい。このような重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。重合禁止剤の使用量は、その原料化合物の総含有量に対して、上限が通常3,000ppm以下、好ましくは1,000pp
m以下であり、特に好ましくは500ppm以下であり、一方、下限が通常50ppm以上、好ましくは100ppm以上である。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造において、反応温度は20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。反応温度が上記下限値以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。また、反応温度は120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記上限値以下であると、アロハナート化反応等の副反応が起きにくくなるために好ましい。また、反応系に有機溶媒を含む場合には、反応温度はその有機溶媒の沸点以下であることが好ましく、化合物(C)等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が含まれる場合には(メタ)アクリロイル基が過剰に反応することを防ぐ観点から70℃以下であることが好ましい。反応時間は通常5〜20時間である。
〔硬化性組成物〕
本発明の硬化性組成物は、少なくとも前述の本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと有機溶剤とを含むものである。
<有機溶媒>
本発明の硬化性組成物は、有機溶剤を含む。有機溶剤を用いることにより、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを良好に溶解し、後述するようにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに活性エネルギー線を照射して硬化する際に、塗膜を形成するための粘度を調整し、均一な硬化膜を得ることができる。
有機溶剤は本発明の効果が得られる範囲において公知の有機溶剤のいずれも使用することができる。好ましくは溶解度パラメーター(以下、「SP値」と称する。)が、8.0〜11.5である有機溶剤である。SP値が8以上であるとウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの溶解性の観点で好ましく、一方、11.5以下であると溶液の透明性の観点で好ましい。上記範囲の有機溶剤としては、例えば、トルエン(SP値:9.1)、キシレン(SP値:9.1)、酢酸エチル(SP値:8.7)、酢酸ブチル(SP値:8.7)、シクロヘキサノン(SP値:9.8)、メチルエチルケトン(SP値:9.0)、及びメチルイソブチルケトン(SP値:8.7)、N−メチルピロリドン(SP値:11.2)等が挙げられる。なお、本発明において、SP値は、溶解度パラメーターを表し、その値はFedorsらが提案した方法によって計算されるものである。具体的には「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(147〜154頁)」を参照して求められる値である。また、SP値は、分子の疎水性基や親水性基の含有量により決まる物性値であり、混合溶媒を用いる場合は、混合物としての値を意味する。
有機溶剤は、通常、硬化性組成物の固形分濃度が5〜90重量%で使用可能であり、固形分濃度は、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上であり、一方、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは70重量部%以下であり、更に好ましくは60重量%以下である。なお、ここでいう「固形分」とはウレタンアクリレート(メタ)アクリレートオリゴマーのみならず、溶媒を除いた全成分を意味し、固体状態のものだけではなく、半固形や粘稠な液状物をも含むものとする。
<その他の成分>
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲において、更に、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び前記有機溶剤以外の成分(本発明において
、「その他の成分」と称することがある。)を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、活性エネルギー線反応性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー(本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを除く。)、重合開始剤、光増感剤、エポキシ化合物及びその他の添加剤等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、前記活性エネルギー線反応性成分等、硬化性組成物中の溶媒を除く全成分の総量に対して40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量が上記下限値以上であると、硬化性が良好となり、硬化膜とした際の機械的強度が高くなりすぎることなく、3次元加工適性が向上する傾向にあるため好ましい。なお、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量の上限値は100重量%である。
また、本発明の硬化性組成物において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む前記活性エネルギー線反応性成分の総含有量は、組成物としての硬化速度及び表面硬化性に優れ、タックが残らない等の面から、該組成物全量に対して、60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。なお、この含有量の上限は100重量%である。
前記活性エネルギー線反応性モノマーとしては、本発明の効果が得られる範囲において、公知のいずれの活性エネルギー線反応性モノマーも用いることができる。これらの活性エネルギー線反応性モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの親疎水性や、得られる組成物を硬化膜とした際の硬化膜の硬度、伸度等の物性を調整する目的等で使用される。活性エネルギー線反応性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
このような活性エネルギー線反応性モノマーとしては、例えばビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド類、及び(メタ)アクリレート類が挙げられ、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等の単官能(メタ)アクリレート;及び、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(n=3〜16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1−メチルブチレングリコール)(n=5〜20)、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルジアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエポキシジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;が挙げられる。
これらの中で、特に、本発明の組成物に塗布性を要求される用途では、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリルアミド等の、分子内に環構造を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、また、一方、得られる硬化膜の機械的強度が求められる用途では、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルジアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタ
エリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが好ましく、得られる硬化膜の延伸性が求められる用途では、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(n=3〜16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1−メチルブチレングリコール)(n=5〜20)等のポリエーテル(メタ)アクリレート類が好ましい。
本発明の硬化性組成物において、前記活性エネルギー線反応性モノマーの含有量は、組成物の粘度調整及び得られる硬化膜の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることがさらに好ましく、10重量%以下であることがさらに一層好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びアクリル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート(前記活性エネルギー線反応性モノマーに記載されているものを除く。)が挙げられる。本発明の硬化性組成物において、前記活性エネルギー線反応性オリゴマーの含有量は、得られる硬化膜の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
前記重合開始剤は、主に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射で進行する重合反応の開始効率を向上させる等の目的で用いられる。重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物である光ラジカル重合開始剤が一般的であり、本発明の効果が得られる範囲で公知の何れの光ラジカル重合開始剤でも使用可能である。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。更に、光ラジカル重合開始剤と光増感剤とを併用してもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
これらの中で、硬化速度が速く架橋密度を十分に上昇できる点から、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオ
キシド、及び、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンがより好ましい。
また、硬化性組成物に、ラジカル重合性基と共にエポキシ基等のカチオン重合性基を有する化合物が含まれる場合は、重合開始剤として、上記した光ラジカル重合開始剤と共に光カチオン重合開始剤が含まれていてもよい。光カチオン重合開始剤も、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で公知のいずれのものも使用することができる。
本発明の硬化性組成物におけるこれらの重合開始剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が上記上限値以下であると、開始剤分解物による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記光増感剤は、重合開始剤と同じ目的で用いることができる。光増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。光増感剤としては、本発明の効果が得られる範囲で公知の光増感剤のいずれをも使用することができる。このような光増感剤としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、及び4−ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物において、前記光増感剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。光増感剤の含有量が上記上限値以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記添加剤は、本発明の効果が得られる範囲において任意であり、同様の用途に用いられる組成物に添加される種々の材料を添加剤として用いることができる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。このような添加剤としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、雲母、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、金属酸化物、金属繊維、鉄、鉛、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料類(フィラー類、炭素材料類を総称して「無機成分」と称することがある);酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、耐指紋剤、表面親水化剤、帯電防止剤、滑り性付与剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類;及び、モノマー又は/及びそのオリゴマー、又は無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類;等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物において、前記添加剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が上記上限値以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
本発明の硬化性組成物に、前述の添加剤等の任意成分を含有させる方法としては、特に
限定はなく、従来公知の混合、分散方法等が挙げられる。なお、前記任意成分をより確実に分散させるためには、分散機を用いて分散処理を行うことが好ましい。具体的には、例えば、二本ロール、三本ロール、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、遊星式攪拌機、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機等で処理する方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物の粘度は、硬化性組成物の用途や使用態様等に応じて適宜調節し得るが、取り扱い性、塗工性、成形性、立体造形性等の観点から、E型粘度計(ローター1°34’×R24)における25℃での粘度が、10mPa・s以上であることが好ましく、30mPa・s以上であることがより好ましく、一方、50,000mPa・s以下であることが好ましく、10,000mPa・s以下であることがより好ましく、5,000mPa・s以下であることが更に好ましく、2,000mPa・s以下であることが特に好ましい。硬化性組成物の粘度は、例えば本発明にかかるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量や、前記の任意成分の種類や、その配合割合等によって調整することができる。
本発明の硬化性組成物の塗工方法としては、バーコーター法、アプリケーター法、カーテンフローコーター法、ロールコーター法、スプレー法、グラビアコーター法、コンマコーター法、リバースロールコーター法、リップコーター法、ダイコーター法、スロットダイコーター法、エアーナイフコーター法、ディップコーター法等の公知の方法を適用可能であるが、その中でもバーコーター法及びグラビアコーター法が好ましい。
本発明の硬化性組成物は、これを用いて測定された引張弾性率が2,000〜6,000MPaであることが好ましい。この引張弾性率が2,000〜6,000MPaであると優れた硬度を得ることができる。引張弾性率が2,000MPa以上であると耐擦傷性、耐汚染性、耐摩耗性等の観点で好ましい。一方、6,000MPa以下であると3次元加工適性の観点で好ましい。この引張弾性率は上記の効果をより良好なものとする観点から、より好ましくは2,500〜5,500MPa、さらに好ましくは3,000〜5,000MPaである。なお、この引張弾性率を測定する際の製膜方法・測定方法は後掲の実施例に示した通りである。
〔硬化物・積層体〕
前述の本発明の硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することにより、硬化物を得ることができる(以下、「本発明の硬化物」と称することがある。)。硬化性組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等が挙げられる。装置コストや生産性の観点から電子線又は紫外線を利用することが好ましく、光源としては、電子線照射装置、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He−Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波誘導水銀ランプ、太陽光等が好適である。
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線の種類に応じて適宜に選ぶことができる。例えば、電子線照射により硬化する場合には、その照射量は1〜15Mradであることが好ましい。また、紫外線照射により硬化する場合には、50〜1,500mJ/cm2であることが好ましい。
硬化する際には、空気、窒素やアルゴン等の不活性ガスのいずれの雰囲気下であってもよい。また、フィルムやガラスと金属金型との間の密閉空間で照射してもよい。
本発明の硬化膜の厚さは、目的とされる用途に応じて適宜決められるが、下限は好ましくは1μm、更に好ましくは2μmである。また、上限は好ましくは100μm、更に好ましくは50μm、特に好ましくは20μmである。膜厚が上記下限値以上であると3次元加工後の意匠性や機能性の発現が良好となる傾向にあり、一方、膜厚が上記上限値以下であると内部硬化性、3次元加工適性が良好となる傾向にある。
また、前述の硬化物を基材上に形成することにより、積層体を得ることができる(以下、「本発明の積層体」と称することがある。)。本発明の積層体は、本発明の硬化物からなる層を有していれば特に限定されず、基材及び本発明の硬化物以外の層を基材と本発明の硬化物との間に有していてもよいし、その外側に有していてもよい。また、前記積層体は、基材や本発明の硬化物を複数層有していてもよい。
複数層の硬化物を有する積層体を得る方法としては、全ての層を未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法、下層を活性エネルギー線にて硬化、あるいは半硬化させた後に上層を塗布し、再度活性エネルギー線で硬化する方法、それぞれの層を離型フィルムやベースフィルムに塗布した後、未硬化あるいは半硬化の状態で層同士を貼り合わせる方法等の公知の方法を適用可能であるが、層間の密着性を高める観点から、未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法が好ましい。未硬化の状態で積層する方法としては、下層を塗布した後に上層を重ねて塗布する逐次塗布や、多重スリットから同時に2層以上の層を重ねて塗布する同時多層塗布等の公知の方法を適用可能であるが、この限りではない。
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂等の種々のプラスチック、ガラス、金属等が挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらの基材の形状についてはフィルム状、シート状等の平坦なものであっても、また、種々の形状に成形されたものであってもよい。
本発明の積層体は特に、次のような方法により、硬化フィルムとして製造することが好ましい。硬化フィルムの好ましい製造方法は、本発明の硬化性組成物を基材上に塗布する工程、該硬化性組成物に活性エネルギー線を照射して硬化物を得る工程、該硬化物を延伸する工程を経ることによるものである。本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、3次元加工時の変形に追従可能な硬化後の延伸性を有することから、上記の硬化物を延伸する工程において、良好な延伸性を示すものであり、得られる硬化フィルムの3次元加工時の変形に対しても特に良好な適性を有するものである。
本発明においては、上記の硬化フィルムを製造する方法において、硬化性組成物を基材上に塗布する工程と該硬化性組成物に活性エネルギー線を照射して硬化物を得る工程のそれぞれについては、前述の条件で行うことができる。また、この硬化フィルムの製造方法において、硬化物を延伸する工程は、通常、60〜200℃、好ましくは100〜180℃の条件で加熱して延伸することができる。この延伸方法としては、公知の方法を用いることが可能であり、例えば、インサート成形、インモールド成形、オーバーレイ成形、ブロー成形、真空成形等の方法をいずれも用いることができる。
本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、硬化性組成物を用いて得られる硬化物及び積層体は、塗装代替用フィルムとして好適に用いることができる。例えば内装・外装用の建装材や自動車、家電、情報電子材料等の各種部材等に有効に適用することが可能である。特に、本発明の硬化膜は、これをトップコート層とする加飾フィルムとして有用である。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[物性・特性の測定方法]
以下の実施例及び比較例における、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び硬化膜の物性、特性の測定・評価方法は以下の通りである。
<ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの物性>
1−1)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
GPC(東ソー社製「HLC−8120GPC」)で、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)、標準サンプルにポリスチレン、カラムにTSKgel superH1000+H2000+H3000を使用して、送液速度0.5mL/分、カラムオーブン温度40℃にて、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量、数平均分子量(GPC測定値)を測定した。
<硬化膜の物性>
2−1)ハンドリング性(未硬化)の評価
硬化性樹成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターで塗工して塗膜を形成した後、120℃で30秒間乾燥させて得られた塗膜を用いて未硬化時のハンドリング性をフィルム重ね合わせ時の貼り付き度合い(耐ブロッキング性)にて評価した。この塗膜を、23℃、相対湿度55%下で12時間以上静置した。次いで、塗膜の表面にポリエチレンテレフタレートフィルム(未処理タイプ)を重ね合わせ、1kg/cm2の荷重を23℃、相対湿度55%下で12時間かけ、塗膜とポリエチレンテレフタレートフィルムの未処理面とをブロッキングさせた。除荷後、加圧した全面積に対するブロッキングの生じた面積の割合を目視にて以下の基準で評価した。
○:ブロッキングしている部分無し
○−:ブロッキング面積割合≦10%
△:10%<ブロッキング面積割合≦30%
△−:30%<ブロッキング面積割合≦50%
×:50%<ブロッキング面積割合
2−2)塗膜外観(硬化後)の評価
後述する製膜方法Iで得られたポリエチレンテレフタレート上に積層された硬化膜の塗膜外観を、目視にて以下の基準で評価した。
○:均一な膜厚で、塗膜表面に異物、皺、ユズ肌等の異常が見られない
△:積層体の角度を変えたり、光を当てて凝視すると、塗膜表面に異物、皺、ユズ肌等の異常が見られる
×:塗膜表面に異物、皺、ユズ肌等の異常が見られる
2−3)耐摩耗性の評価
後述する製膜方法Iで得られたポリエチレンテレフタレート上に積層された硬化膜について、耐擦傷試験前に測定したヘーズ値をH1とした。一方、23℃、55%RHの雰囲気下、乾布(綿−JIS L 0803準拠染色堅ろう度試験用)に200gf(面積4cm2あたり)の錘を載せ、上記製膜方法Iで得られたポリエチレンテレフタレート上に積
層された硬化膜面を学振磨耗試験機(東洋精機製)で50往復擦り、直後に測定したヘーズ値をH2とした。H2とH1との差(ΔH(ΔH=H2−H1))を求めて、以下の基準で評価した。なお、上記において、ヘーズ値は、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所(株)社製「HAZE METER HM−65W」)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
○ :ΔH≦2.5
○−:2.5<ΔH≦4.5
△ :4.5<ΔH≦6.5
△−:6.5<ΔH≦8.5
× :8.5<ΔH
2−4)耐汚染性(硬化後)の評価
後述する製膜方法I又は製膜方法IIIで得られた硬化膜及び硬化後延伸膜を用い、日焼け止めクリーム(ニベア花王社製ニベアSUNプロテクトフェイスエッセンスミルク)(以下、汚染物と称する)を接触させ、静置した後、水を含んだ脱脂綿で汚染物を拭き取った後の汚染度を目視により評価した。評価膜とその接触条件及び評価基準は以下の通りである。
(1)製膜作成方法Iで得られた硬化膜に0.005g/cm2を接触させ、80℃にて1時間静置
(2)製膜方法IIIで得られた硬化後延伸膜に0.005g/cm2を接触させ、23℃にて4時間静置
(3)製膜方法IIIで得られた硬化後延伸膜に0.005g/cm2を接触させ、40℃にて4時間静置また、評価基準は以下の通りである。
○ :汚染している部分がない
○−:(汚染部面積割合)≦10%
△ :10%<(汚染部面積割合)≦30%
△−:30%<(汚染部面積割合)≦50%
× :50%<(汚染部面積割合)
2−5)弾性率(硬化後)の評価
後述する製膜方法IIの硬化膜を10mm幅に切断し、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製「RTC−1210A」)を用いて、温度23℃、湿度55%RH、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張試験を行って引張弾性率を測定した。より具体的には、上記の条件で引張試験を行って得られた応力−ひずみ曲線(SSカーブ)の0%伸び時と0.5%伸び時の応力とを結んだ直線を延長し、100%伸び時に換算した応力を引張弾性率とした。2,000〜6,000MPaであれば機械的強度が良好であるものと評価した。
2−6)延伸性(硬化後)の評価
後述する製膜方法IIの硬化膜を10mm幅に切断し、テンシロン引張試験機((株)イマダ製「MX2−500N」)を用いて、温度140℃、引張速度40mm/分、チャック間距離40mmの条件で延伸して破断伸度を測定し、以下の基準で評価した。
◎:伸び100%以上
○:伸び60%以上100%未満 ×:伸び60%未満
[原料・溶媒]
以下に実施例及び比較例において用いた原料及び溶媒とその略称は以下の通りである。(化合物(A):ポリイソシアネート)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(エボニック デグサ ジャパン社製 商品名「VESTANAT IPDI」)
(化合物(B):炭素数2〜5の鎖状脂肪族ジオール)
EG:エチレングリコール
(化合物(B)の対比用:炭素数6の鎖状脂肪族ジオール)
1,6−HD:1,6−ヘキサンジオール
(化合物(C):水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート)
V−300:大阪有機社製 商品名ビスコート(登録商標)300(ペンタエリスリトールトリアクリレート40〜45重量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート35〜40重量%の混合物(カタログ値)(OH価:120mgKOH/g))
なお、OH価:120mgKOH/gよりOH基当量(ヒドロキシル基1個当たりの分子量)468を算出し、全成分がペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET4A)から成るとして、PET3A/PET4A=298/(468−298)=64/36(重量比)と算出した。
(化合物(C)の対比用:水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート)
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
(有機溶剤)
MEK:メチルエチルケトン(SP値:9.0)
IPA:イソプロピルアルコール(SP値:11.5)
[実施例1]
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度計を取り付けた4つ口フラスコに、IPDIを163g、エチレングリコールを40g入れ、更にメチルエチルケトン203g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.02gを入れてオイルバスにて80℃に加熱しながら9時間反応させた。反応終了後60℃まで冷却した後、更にビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.25g、メチルハイドロキノン0.15g、メチルエチルケトン96gを加え、V−300を96g(PET3A:61g/PET4A:35g)滴下して反応を開始させた。反応はオイルバスにて70℃に加熱しながら10時間行い、赤外吸収スペクトルでのイソシアネート(NCO)基に由来したピークの消失により反応の終点を確認した後、メチルエチルケトン400gを加え、硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーについて、前記1−1)の方法にて重量平均分子量、数平均分子量を測定した。得られた結果を表−1に示す。
(ウレタン結合量の計算)
上記ウレタンアクリレートオリゴマーのウレタン結合量は以下の値を用いて計算した。・IPDIのモル数:0.73モル(=163g(IPDIの仕込量)/222(IPDIの分子量))
・EGのモル数:0.64モル(=40g(EGの仕込み量)/62(EGの分子量))・PET3Aのモル数:0.20モル(=61g(PET3Aの仕込み量)/298(PET3Aの分子量))
・イソシアネート基数:1.47eq(=0.73モル(IPDIのモル数)×2(イソシアネート基官能基数)
・ヒドロキシル基数:1.49eq(=0.64モル(EGのモル数)×2(ヒドロキシル基官能基数)+0.20(PET3Aのモル数)×1(ヒドロキシル基官能基数)
過剰なヒドロキシル基数(0.02eq(=1.49eq−1.47eq))においてPET3Aはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの構成成分に含まれないため、ウ
レタン結合量の計算にはPET3A:0.18モル((0.20eq−0.02eq)/ヒドロキシル基官能基数:1)を用いて計算した。
(ウレタン結合量)
=1.47eq(イソシアネート基の総当量数とヒドロキシル基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の総当量数との少ない方の値)/(163g+40g+0.18モル×298)
≒5.8×10−3eq/g
((メタ)アクリロイル基量の計算)
上記ウレタンアクリレートオリゴマーの(メタ)アクリロイル基量は次のようにして計算した。
((メタ)アクリロイル基量)
=0.18eq(0.20モル(過剰に加えている成分量を除いたヒドロキシアルキルポリ(メタ)アクリレートのモル数)−0.02モル×3((メタ)アクリロイル基数))/(163(IPDIの構成成分量)+40(EGの構成成分量)+0.18モル×298(PET3Aの構成成分量))
≒2.1×10−3eq/g
(製膜方法I)
硬化性樹成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターで塗工して塗膜を形成した後、120℃で30秒間乾燥させ、電子線照射装置(CB175、アイグラフィック社製)を用いて、加速電圧165kV、照射線量5Mradの条件で電子線を乾燥塗膜に照射し、更に23℃で1日養生して硬化膜を形成して膜厚約5μmの硬化膜がポリエチレンテレフタレート上に積層された硬化膜を得た。得られた硬化膜について、前記2−2)〜2−4)の物性評価を行った。これらの結果を表−1に示す。
(製膜方法II)
硬化性組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターで塗工して塗膜を形成した後、120℃で30秒間乾燥させ、電子線照射装置(CB175、アイグラフィック社製)を用いて、加速電圧165kV、照射線量5Mradの条件で電子線を乾燥塗膜に照射し、更に23℃で1日養生して硬化膜を形成した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化膜を剥離して膜厚約30μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜について、前記2−5)、2−6)の物性評価を行った。これらの結果を表−1に示す。
(製膜方法III)
前述の製膜方法Iの硬化膜を10mm幅に切断し、テンシロン引張試験機((株)イマダ製「MX2−500N」)を用いて、温度140℃、引張速度40mm/分、チャック間距離40mmの条件で20mm(50%伸び)延伸して、硬化後延伸膜を得た。得られた硬化後延伸膜について、前記2−4)の物性評価を行った。この結果を表−1に示す。
[実施例2]
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度計を取り付けた4つ口フラスコに、IPDIを184g、エチレングリコールを45g入れ、更にメチルエチルケトン230g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.02gを入れてオイルバスにて80℃に加熱しながら9時間反応させた。反応終了後60℃まで冷却した後、更にビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.25g、メチルハイドロキノン0.15g、メチルエチルケトン70gを加え、HEAを11g、V−300を59g(PET3A:38g/PET4A:21g)滴下して反応を開始させた。反応はオイルバスにて70℃に加熱しながら10時間行い、赤外吸収スペクトルでのイソシアネート(NCO)基に由来したピークの消失により反応の終点を確認した後、メチルエチルケトン400gを加え、硬化性組
成物を得た。
得られた硬化性組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーについて、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量を測定し、ウレタン結合量、(メタ)アクリロイル基量を算出した。また、硬化性組成物を実施例1と同様に製膜して前記2−1)〜2−6)の物性評価を行った。これらの結果を表−1に示す。
[実施例3]
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度計を取り付けた4つ口フラスコに、IPDIを190g、エチレングリコールを50g入れ、更にメチルエチルケトン240g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.02gを入れてオイルバスにて80℃に加熱しながら9時間反応させた。反応終了後60℃まで冷却した後、更にビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.25g、メチルハイドロキノン0.15g、メチルエチルケトン60gを加え、V−300を60g(PET3A:38g/PET4A:22g)滴下して反応を開始させた。反応はオイルバスにて70℃に加熱しながら10時間行い、赤外吸収スペクトルでのイソシアネート(NCO)基に由来したピークの消失により反応の終点を確認した後、メチルエチルケトン200g、イソプロピルアルコール200gを加え、硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーについて、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量を測定し、ウレタン結合量、(メタ)アクリロイル基量を算出した。また、硬化性組成物を実施例1と同様に製膜して前記2−1)〜2−6)の物性評価を行った。これらの結果を表−1に示す。
[比較例1]
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度計を取り付けた4つ口フラスコに、IPDIを140g、エチレングリコールを31g入れ、更にメチルエチルケトン170g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.02gを入れてオイルバスにて80℃に加熱しながら9時間反応させた。反応終了後60℃まで冷却した後、更にビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.25g、メチルハイドロキノン0.15g、メチルエチルケトン130gを加え、V−300を130g(PET3A:83g/PET4A:47g)滴下して反応を開始させた。反応はオイルバスにて70℃に加熱しながら10時間行い、赤外吸収スペクトルでのイソシアネート(NCO)基に由来したピークの消失により反応の終点を確認した後、メチルエチルケトン400gを加え、硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーについて、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量を測定し、ウレタン結合量、(メタ)アクリロイル基量を算出した。また、硬化性組成物を実施例1と同様に製膜して前記2−1)〜2−6)の物性評価を行った。これらの結果を表−1に示す。
[比較例2]
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度計を取り付けた4つ口フラスコに、IPDIを214g、エチレングリコールを51g入れ、更にメチルエチルケトン265g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.03gを入れてオイルバスにて80℃に加熱しながら9時間反応させた。反応終了後60℃まで冷却した後、更にビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.06g、メチルハイドロキノン0.15g、メチルエチルケトン35gを加え、HEAを35g滴下して反応を開始させた。反応はオイルバスにて70℃に加熱しながら10時間行い、赤外吸収スペクトルでのイソシアネート(NCO)基に由来したピークの消失により反応の終点を確認した後、メチルエチルケトン400gを加え、硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーについて、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量を測定し、ウレタン結合量、(メタ)アクリロイル基量を算出した。また、硬化性組成物を実施例1と同様に製膜して前記2−1)〜2−6)の物性評価を行った。これらの結果を表−1に示す。
[比較例3]
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度計を取り付けた4つ口フラスコに、IPDIを142g、1,6−ヘキサンジオールを65g入れ、更にメチルエチルケトン207g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.02gを入れてオイルバスにて80℃に加熱しながら9時間反応させた。反応終了後60℃まで冷却した後、更にビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.25g、メチルハイドロキノン0.15g、メチルエチルケトン93gを加え、V−300を93g(PET3A:59g/PET4A:34g)滴下して反応を開始させた。反応はオイルバスにて70℃に加熱しながら10時間行い、赤外吸収スペクトルでのイソシアネート(NCO)基に由来したピークの消失により反応の終点を確認した後、メチルエチルケトン400gを加え、硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーについて、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量を測定し、ウレタン結合量、(メタ)アクリロイル基量を算出した。また、硬化性組成物を実施例1と同様に製膜して前記2−1)〜2−6)の物性評価を行った。これらの結果を表−1に示す。
[評価結果]
表−1に示した結果より、実施例1〜3と比較例1〜3とを対比すると以下のことがわ
かる。まず、比較例1は、本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおけるウレタン結合量よりもその値が小さく、また、(メタ)アクリロイル基量の値が大きい例であるが、実施例1〜3と比較してハンドリング性(未硬化時)及び延伸性が悪かった。また、比較例2は、化合物(C)を使用せず、その代わりに「HEA」を使用した例であるが、実施例1〜3と比較して耐摩耗性、硬化後の耐汚染性が悪かった。更に、比較例3は、本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおけるウレタン結合量よりもその値が小さいものを用いた例であるが、実施例1〜3と比較してハンドリング性(未硬化時)、硬化・延伸後の耐汚染性及び延伸性が悪かった。