以下、本発明の一実施形態に係る水処理装置及び水処理方法について説明する。なお、以下の各図において共通する構成については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水処理装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る水処理装置100は、原水路1と、濁度センサ(水質センサ)2と、膜分離槽(水槽)3と、膜モジュール4と、送気管5と、ブロワb1と、濾過水流量センサ6と、濾過水流量調整弁(流量調整弁)7と、濾過水路8と、濾過水ポンプP1と、排水流量センサ9と、排水路10と、排水ポンプ(流量調整装置)P2と、濾過水槽12と、逆洗水供給管13と、逆洗ポンプP3と、脱気槽14と、脱気管15と、真空ポンプP4と、制御部20と、を備えている。
水処理装置100は、水位差を利用して膜濾過を行う浸漬型の膜分離装置(膜モジュール4)により、濁質を含んでいることがある原水を濾過処理する装置である。原水としては、例えば、水源から取水された水や、濁質を凝集させる凝集沈殿処理、鉄、マンガン等の金属を除去する脱金属処理、硬水を軟化する軟化処理等の前処理が施された水が用いられる。原水の水源としては、例えば、河川、湖沼、地下水、工業用水、灌漑用水、生活用水等が利用される。
原水は、水源や前処理設備等から原水路1を通じて膜分離槽3に導入される。原水路1には、原水の濁度を計測する濁度センサ2が設置されており、原水に含まれている濁質の量が濁度センサ2によって計測される。水処理装置100においては、原水に含まれている濁質の量に応じて、濾過水ポンプP1や、排水ポンプP2や、ブロワb1が制御され、膜モジュール4の運転圧力の維持と水位差の利用が図られる。
膜分離槽3は、膜モジュール4を収容している。膜分離槽3に導入された原水は、槽内で水位を保って一時的に滞留し、膜モジュール4は、膜分離槽3に水中に浸漬された状態で保持される。膜分離槽3に滞留する原水(滞留水)が、膜モジュール4に流入することで濾過処理される。なお、膜分離槽3は、開放型及び密閉型のいずれの槽形式であってもよい。また、膜モジュール4は、膜分離槽3に単一器が収容されていてもよいし、複数器が収容されていてもよい。
膜モジュール4は、原水を濾過処理して溶存物質の量が低減した濾過水を作る膜分離装置である。膜モジュール4は、例えば、微細孔を有する膜濾過用の分離膜と、分離膜を透過して作られた濾過水を集水する集水管と、分離膜や集水管を支持する支持材とを備えて構成される。膜モジュール4は、クロスフロー濾過式及びデッドエンド濾過式のいずれであってもよい。分離膜としては、通常、精密濾過膜や限外濾過膜が備えられる。
膜モジュール4が備える分離膜は、例えば、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン等の有機膜や、アルミナ、ジルコニア、ガラス等の無機膜によって形成される。分離膜は、中空糸型、平膜型、チューブ型等の適宜の形態とされる。分離膜の組み込み方は、シート型、スパイラル型、チューブラ型、モノリス型等の適宜の方式を分離膜の形態に応じて用いることが可能である。
膜モジュール4は、分離膜の一次側が槽内の滞留水と接しており、上端部に分離膜で濾過された濾過水が流出する流出口を有している。上端部の流出口は、膜モジュール4で作られた濾過水を回収するための濾過水路8に通じている。濾過水路8は、膜モジュール4と濾過水槽12との間を接続しており、分離膜の二次側に透過して作られた濾過水が濾過水槽12に向けて通流するようになっている。
膜モジュール4の下部には、送気管5が接続された散気部5aを備えている。送気管5には、空気を供給するブロワb1が備えられており、膜モジュール4が備える分離膜の膜面が散気によって物理洗浄(エアスクラビング)されるようになっている。エアスクラビングが行われることにより、分離膜の膜面に付着した濁質が剥離し、膜面に濁質が堆積するのが抑制される。そのため、分離膜の目詰まりが生じ難くなり、膜モジュール4の運転圧力の上昇が抑制される。尚、膜モジュール4は上記のような浸漬型に限られず、ケーシングの内部に膜モジュールを納め、当該ケーシングを加圧することで透過水を得る加圧型を用いることも可能である。
濾過水路8は、脱気槽14を備えている。脱気槽14は、濾過水に混入している気体を分離除去するための処理槽である。脱気槽14は、真空ポンプP4が備えられた脱気管15と接続されている。脱気槽14は、濾過水に混入した気体を捕集し、真空ポンプP4によって減圧され、エアスクラビング等で濾過水に混入した気体が除去されるようになっている。
また、濾過水路8は、中間部が分岐して複線状の流路(図1に破線で示す。)を形成しており、途中部のそれぞれに、濾過水流量調整弁7と、濾過水ポンプP1と、を備えている。濾過水流量調整弁7は、濾過水路8を流れる濾過水の流量を調整可能に設けられている。一方、濾過水ポンプP1は、濾過水路8を流れる濾過水を濾過水槽12に向けて圧送可能に設けられている。濾過水路8には、濾過水流量センサ6が設置されており、膜モジュール4から回収される濾過水の流量が計測されるようになっている。
濾過水槽12は、膜モジュール4で作られた濾過水を受ける槽である。濾過水槽12は、膜分離槽3よりも低い高さに位置しており、高低差による水位が膜分離槽3に対して設けられている。濾過水槽12と膜分離槽3との高低差としては、例えば、膜分離槽3の槽内に滞留している滞留水が最低水位であるときに、滞留水と濾過水槽12に受けられた濾過水との間に水位差を生じ、動力を使用すること無く、水位差のみで膜濾過を駆動することが可能な高さが確保される。
膜分離槽3は、排水ポンプP2が備えられた排水路10と接続されている。排水路10は、膜分離槽3に滞留する滞留水を排水ポンプP2の作動によって排水可能に設けられている。一方、排水ポンプP2は、排水路10を通じて排水される滞留水の流量を調整可能に設けられている。排水ポンプP2が膜分離槽3に滞留する滞留水を引き抜くことにより、膜濾過によって膜分離槽3に濃縮された濁質が排出され、膜モジュール4の運転圧力の上昇が抑制される。排水路10には、排水流量センサ9が設置されており、膜分離槽3から排水される滞留水の流量が計測されるようになっている。なお、排水は排水ポンプP2に代えて排水路10に自動弁を設置し、膜分離槽の水位を利用した自然流下方式を採用することも可能である。自動弁の場合、弁の開閉で排水操作を行う。
濾過水路8を流れる濾過水の流量は、水処理装置100の通常運転時には、濾過水流量調整弁7の開度の調節によって所定の流量に調整される。原水の流量や濾過水の流量が調整されることにより、膜分離槽3の水位が保たれ、膜分離槽3の側と濾過水槽12の側との間に適切な水位差が維持される。その水位による圧力差によって、滞留水は、膜モジュール4に流入して濾過処理される。また、造水された濾過水は、濾過水路8を濾過水槽12に向けて自然流下する。
膜モジュール4が備える分離膜は、膜モジュール4で作られた濾過水や、膜洗浄用の薬品を添加した濾過水によって逆洗されるようになっている。濾過水槽12には、逆洗ポンプP3が備えられた逆洗水供給管13が接続されている。逆洗水供給管13は、膜モジュール4と濾過水槽12との間を、濾過水流量調整弁7や濾過水ポンプP1を迂回して接続している。逆洗ポンプP3は、逆洗用の濾過水を、濾過水槽12から膜モジュール4が備える分離膜の二次側に揚水可能に設けられている。
制御部20は、CPU、ROM、RAM、記憶装置等によって構成される。制御部20は、濾過水流量調整弁7、ブロワb1、濾過水ポンプP1、排水ポンプP2、逆洗ポンプP3等を制御する機能を有し、所定の運転プログラムにしたがって各種の処理を実行し、水処理装置100の運転を制御する。例えば、濁度センサ2、濾過水流量センサ6、排水流量センサ9、膜分離槽3の水位を計測する不図示の水位センサ、分離膜の一次側や二次側の圧力を計測する不図示の圧力センサ等による計測に基いて膜分離槽3や膜モジュール4の状態を監視し、濾過水流量調整弁7の開度や、ブロワb1、濾過水ポンプP1、排水ポンプP2及び逆洗ポンプP3について、起動、停止、作動時の出力等の制御を行う。
次に、水処理装置100の具体的な運転方法に基き、本発明の一実施形態に係る水処理方法について説明する。
水処理装置100は、膜モジュール4による濾過処理と、膜モジュール4を逆洗する逆洗処理とが、所定の時間毎に交互に繰り返し行われるように運転される。濾過処理を行う通常運転時には、膜分離槽3に所定の流量で原水を導入し、膜分離槽3に滞留する滞留水を所定の水位に維持しつつ水位差を利用して原水を濾過処理する。一方、逆洗処理を行う逆洗運転時には、膜分離槽3に滞留する滞留水を所定の流量で引き抜いて排水し、膜分離槽3に濃縮される濁質の量を低減させる。
図2は、本発明の一実施形態に係る水処理装置の滞留水に関わる運転方法を示すフロー図である。
図2に示すように、水処理装置100においては、膜モジュール4により濾過処理を行う通常運転時に原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)を計測し、膜モジュール4を逆洗する逆洗運転時に膜分離槽3から引き抜いて排水する滞留水の流量(排水引抜量F1)を、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)に基いて調整する。また、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)に基いて、膜モジュール4をエアスクラビングするブロワb1の作動を制御する。
制御部20は、操作者又は運転プログラムからの指令により、膜分離槽3に向けて新たな原水の導入を開始し、膜モジュール4により濾過処理を行う通常運転を開始する(ステップS11)。なお、通常運転の開始時において、濾過水流量調整弁7は、任意の初期開度で開いた状態とされる。一方、濾過水ポンプP1及び排水ポンプP2は停止した状態である。
そして、制御部20は、膜分離槽3に原水が導入されている間に、膜分離槽3に導入される原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)を計測する(ステップS12)。原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)は、濁度センサ2によって所定の周期で計測され、制御部20に入力される。
次いで、制御部20は、ブロワb1が作動しているか否かを判定する(ステップS13)。なお、ブロワb1は、現在の通常運転よりも前に逆洗運転が行われており、且つ、前回の逆洗運転時にエアスクラビングが行われているときには、作動した状態である。一方、前回の逆洗運転時にエアスクラビングが行われていないときには、停止した状態である。
制御部20は、ステップS13において、ブロワb1が作動していないと(ステップS13;NO)、処理をステップS16に進める。
一方、制御部20は、ステップS13において、ブロワb1が作動していると(ステップS13;YES)、処理をステップS14に進める。
次いで、制御部20は、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th3)未満か否かを判定する(ステップS14)。閾値(Th3)としては、後記する通常出力運転時の閾値(Th1)よりも低い濁度値が、制御部20に予め設定される。
制御部20は、ステップS14において、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th3)未満でないと(ステップS14;NO)、エアスクラビングの中止により膜モジュール4の運転圧力が上昇する可能性が高いので、ブロワb1を作動した状態に維持して、処理をステップS16に進める。
一方、制御部20は、ステップS14において、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th3)未満であると(ステップS14;YES)、エアスクラビングの中止により膜モジュール4の運転圧力が上昇する可能性が低いので、エアスクラビングを中止させるために、処理をステップS15に進める。
そして、制御部20は、ブロワb1を停止させて、膜モジュール4のエアスクラビングを中止する(ステップS15)。このように、ブロワb1の作動及び停止を、濾過処理と逆洗処理との切り替えとは独立に制御し、原水に含まれている濁質の量が閾値(Th3)の程度の低い量に減少したとき、膜モジュール4の膜面の物理洗浄を終了する水処理方法とすると、膜モジュール4の運転圧力を適正な範囲に常に維持しながらも、ブロワb1の動力コストを最小限に抑制することができる。
次いで、制御部20は、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th1)以上か否かを判定する(ステップS16)。閾値(Th1)としては、例えば、分離膜が目詰まりを生じて、安定した濾過処理の継続が困難になると見込まれる濁度値が、制御部20に予め設定される。
制御部20は、ステップS16において、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th1)以上でないと(ステップS16;NO)、膜分離槽3に過度に濁質が濃縮するのを通常の排水引抜量F1で防止できるので、処理をステップS17に進める。
そして、制御部20は、排水ポンプP2を通常の出力に切り替える制御を行う(ステップS17)。膜分離槽3に濃縮されている濁質の量が少ない状態であれば、濁質を含んでいる滞留水を膜分離槽3から多量に引き抜いて濾過水の回収率を下げる必要は無い。そのため、排水ポンプP2は、余力を残した通常出力の運転が行われるように制御され、排水路10を通じて排水される滞留水の流量(排水引抜量F1)は、所望の回収率に応じた通常の量とされる。
続いて、制御部20は、原水の導入を停止する一方、逆洗ポンプP3を作動させて、膜モジュール4を逆洗する逆洗処理を開始する(ステップS18)。この逆洗運転時において、排水ポンプP2は、膜分離槽3に滞留する滞留水を通常の出力で排水し、濁質が濃縮されている可能性がある滞留水は、通常の引抜量で排水される。その後、所定時間の逆洗処理が行われると、逆洗運転は終了し、次回の濾過処理が実施される。
一方、制御部20は、ステップS16において、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th1)以上であると(ステップS16;YES)、膜分離槽3に過度に濁質が濃縮するのを通常の排水引抜量F1で防止できないので、処理をステップS19に進める。
次いで、制御部20は、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th2)以上か否かを判定する(ステップS19)。閾値(Th2)としては、通常出力運転時の閾値(Th1)よりも高い濁度値が、制御部20に予め設定される。
制御部20は、ステップS19において、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th2)以上でないと(ステップS19;NO)、膜分離槽3に過度に濁質が濃縮するのを排水引抜量F1の調整のみで防止できるので、処理をステップS20に進める。
そして、制御部20は、排水ポンプP2を高出力に切り替える制御を行う(ステップS20)。膜分離槽3に濃縮されている濁質の量が多い状態であれば、濁質を含んでいる滞留水を膜分離槽3から多量に引き抜いて膜モジュール4の運転圧力を下げる必要がある。そのため、排水ポンプP2は、通常の出力よりも高い高出力の運転に切り替えられ、排水路10を通じて排水される滞留水の流量(排水引抜量F1)は、通常よりも多い量に増量される。
続いて、制御部20は、原水の導入を停止する一方、逆洗ポンプP3を作動させて、膜モジュール4を逆洗する逆洗処理を開始する(ステップS21)。この逆洗運転時において、排水ポンプP2は、膜分離槽3に滞留する滞留水を、通常よりも多い高引抜量で排水させる。原水に含まれている濁質の量が増加したとき、排水路10を通じて排水される滞留水の流量(排水引抜量F1)を増加させる水処理方法とすると、膜分離槽3に滞留する濁質が、通常の量よりも増量された排水引抜量F1で引き抜かれるので、膜モジュール4が備える分離膜が目詰まりを生じ難くなる。そのため、膜モジュール4の運転圧力を適正な範囲に維持して、水位による圧力差を利用した膜濾過を続けることができる。その後、所定時間の逆洗処理が行われると、逆洗運転は終了し、次回の濾過処理が実施される。
一方、制御部20は、ステップS19において、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th2)以上であると(ステップS19;YES)、膜分離槽3に過度に濁質が濃縮するのを排水引抜量F1の調整のみで防止できないので、処理をステップS22に進める。
そして、制御部20は、排水ポンプP2を高出力に切り替えると共に、ブロワb1を作動させる制御を行う(ステップS22)。膜分離槽3に濃縮されている濁質の量が特に多い状態においては、膜モジュール4が備える分離膜が極めて目詰まりを生じ易いため、排水引抜量F1を増量するだけでは、膜モジュール4の運転圧力を十分に下げることができない。そのため、排水ポンプP2が、通常の出力よりも高い高出力の運転に切り替えられると共に、膜モジュール4をエアスクラビングするためのブロワb1が起動される。
続いて、制御部20は、原水の導入を停止する一方、逆洗ポンプP3を作動させて、膜モジュール4を逆洗する逆洗処理を開始する(ステップS23)。この逆洗運転時において、排水ポンプP2は、膜分離槽3に滞留する滞留水を、通常よりも多い高引抜量で排水させる。ブロワb1は、膜モジュール4が備える分離膜の膜面に散気してエアスクラビングを行う。原水に含まれている濁質の量が特に増加したとき、膜モジュール4の膜面の物理洗浄を開始する水処理方法とすると、膜モジュール4が備える分離膜に付着した濁質が剥離して除去されるので、膜モジュール4が備える分離膜が目詰まりを生じ難くなる。そのため、膜モジュール4の運転圧力を適正な範囲に維持して、水位による圧力差を利用した膜濾過を続けることができる。その後、所定時間の逆洗処理が行われると、逆洗運転は終了し、次回の濾過処理が実施される。
以上の水処理装置100の運転方法によると、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された第1閾値(Th1)以上となったとき、排水路10を通じて排水される滞留水の流量を増加させる制御が行われる。そのため、原水の水質が変動し、原水に含まれている濁質の量が上昇したとしても、膜分離槽3に滞留している濁質を排出して、膜モジュール4が備える分離膜の目詰まりを低減することができる。つまり、分離膜の透過抵抗の上昇が抑制されるので、水位による圧力差を利用した低コストな膜濾過を続けることが可能である。よって、この運転方法によると、浸漬型の膜濾過を低コストで安定的に継続することができる。
また、以上の水処理装置100の運転方法によると、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された第2閾値(Th2)以上となったとき、ブロワb1が始動して、膜モジュール4のエアスクラビングが開始される。そのため、原水の水質が変動し、原水に含まれている濁質の量が極端に上昇したとしても、膜モジュール4が備える分離膜の目詰まりを低減することができる。すなわち、エアスクラビングが適時に実施されるため、水位による圧力差を常に安定して確保することができると共に、ブロワb1の動力コストも最低限に抑えることができる。
図3は、本発明の一実施形態に係る水処理装置の濾過水に関わる運転方法を示すフロー図である。
図3に示すように、水処理装置100においては、濾過処理を行う通常運転時に、濾過水路8を流れる濾過水を圧送する濾過水ポンプP1の作動を、膜モジュール4から流出して濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)に基いて制御する。濾過水ポンプP1が制御されることにより、濾過水路8における濾過水の通流は、水位による自然流下から、ポンプによる強制的な移送に切り替えられる。
制御部20は、水処理装置100の運転が操作者又は運転プログラムからの指令により開始されると、濾過水流量調整弁7を初期開度とし、膜分離槽3に滞留する滞留水を排水しつつ水位差を利用して原水を濾過処理する(ステップS31)。水処理装置100の運転開始時は、膜分離槽3に濃縮されている濁質の量が少ない状態であり、排水路10を通じて排水される滞留水の流量(排水引抜量F1)は、所望の回収率に応じた通常の量とされる。そのため、濾過水流量調整弁7は、例えば、前回の濾過処理の終了時の開度に一致し、開放方向及び閉鎖方向に調節可能な中程度の開度とされる。そして、濾過水路8における濾過水の通流は、所望の回収率に応じた初期の流量で自然流下による流れとなる。
そして、制御部20は、濾過処理が行われている間に、膜分離槽3に導入されて濾過処理される原水の量を参照する(ステップS32)。なお、原水の量は、原水路1に設置される不図示の流量センサ、膜分離槽3に設置される不図示の水位センサ等によって所定の周期で計測され、制御部20に入力される。
次いで、制御部20は、濾過水流量調整弁7の開度を調整する制御を行う(ステップS33)。例えば、膜分離槽3に導入されて濾過処理される原水の量が通常の量であれば、濾過水流量調整弁7の開度を初期開度に保って運転圧力を維持する。一方、高い回収率で濾過水を造水する要求がある場合は、濾過水流量調整弁7の開度を開放方向に開けてもよい。
続いて、制御部20は、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)を計測する(ステップS34)。濾過水の流量(濾過水流量F2)は、濾過水流量センサ6によって所定の周期で計測され、制御部20に入力される。
次いで、制御部20は、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が、予め設定された流量下限(FL)(第3閾値)未満か否かを判定する(ステップS35)。流量下限(FL)としては、例えば、水位のみによる圧力差で膜濾過を行える範囲にある任意の流量値が、制御部20に予め設定される。
制御部20は、ステップS35において、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が、予め設定された流量下限(FL)未満でないと(ステップS35;NO)、水位のみによる圧力差で膜濾過を継続することができるので、処理をステップS36に進める。
そして、制御部20は、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が流量下限(FL)未満となっている時間(流量未満時間t1)について、経過時間のカウンタを加算せずリセットする(ステップS36)。その後、制御部20は、処理をステップS32に戻す。
一方、制御部20は、ステップS35において、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が、予め設定された流量下限(FL)未満であると(ステップS35;YES)、水位のみによる圧力差で膜濾過を継続することができない可能性があるので、処理をステップS37に進める。
そして、制御部20は、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が流量下限(FL)未満となっている時間(流量未満時間t1)について、経過時間のカウンタを加算する(ステップS37)。その後、制御部20は、処理をステップS38に進める。
次いで、制御部20は、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が流量下限(FL)未満となっている時間(流量未満時間t1)についてのカウンタの積算が、予め設定された閾値(Th4)以上か否かを判定する(ステップS38)。閾値(Th4)としては、例えば、流量未満時間t1についてのカウンタの積算が、実時間で数秒間から数十秒間に相当するカウントとなる値が、制御部20に予め設定される。流量未満時間t1についてのカウンタの積算が数秒間から数十秒間に達した場合には、濾過水の流量(濾過水流量F2)の低下が一時的な現象では無く、必要な運転圧力を水位のみで確保することができない状態になっていると判断できるためである。
制御部20は、ステップS38において、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が流量下限(FL)未満となっている時間(流量未満時間t1)についてのカウンタの積算が、予め設定された閾値(Th4)以上でないと(ステップS38;NO)、濾過水の流量(濾過水流量F2)の低下が一時的である可能性が高いので、処理をステップS32に戻す。
一方、制御部20は、ステップS38において、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が流量下限(FL)未満となっている時間(流量未満時間t1)についてのカウンタの積算が、予め設定された閾値(Th4)以上であると(ステップS38;YES)、濾過水の流量(濾過水流量F2)の低下が持続的である可能性が高いので、処理をステップS39に進める。
そして、制御部20は、濾過水ポンプP1を作動させて濾過水路8を流れる濾過水の圧送を開始する(ステップS39)。このように、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が流量下限(FL)未満となっている時間(流量未満時間t1)の積算が、所定値以上となったとき、濾過水ポンプP1を作動させる水処理方法とすると、濾過水の流量(濾過水流量F2)の低下が明らかに生じた場合に、濾過水路8における濾過水の通流を、水位による自然流下から、ポンプによる強制的な移送に切り替えることができる。そのため、濾過水ポンプP1の動力コストを最低限に抑えて、膜モジュール4の運転圧力を適正な範囲に維持することができる。
続いて、制御部20は、濾過水ポンプP1が作動している間に、膜モジュール4の運転圧力(P)を計測する(ステップS40)。膜モジュール4の運転圧力(P)は、分離膜の一次側及び二次側の圧力を計測する不図示の圧力センサによって所定の周期で計測され、制御部20に入力される。
次いで、制御部20は、膜モジュール4の運転圧力(P)が、予め設定された圧力下限(PL)以上か否かを判定する(ステップS41)。圧力下限(PL)としては、例えば、水位のみによる圧力差で膜濾過を行うことが可能な最小水位差付近における圧力の値、或いは、膜モジュール4の性能に応じて−80kPa以上の値が、制御部20に予め設定される。
制御部20は、ステップS41において、膜モジュール4の運転圧力(P)が、予め設定された圧力下限(PL)以上でないと(ステップS41;NO)、濾過水ポンプP1で運転圧力を補完し続ける必要があるので、処理をステップS42に進める。
そして、制御部20は、膜モジュール4の運転圧力(P)が圧力下限(PL)以上となっている時間(圧力超過時間t2)について、経過時間のカウンタを加算せずリセットする(ステップS42)。その後、制御部20は、処理をステップS40に戻す。
一方、制御部20は、ステップS41において、膜モジュール4の運転圧力(P)が、予め設定された圧力下限(PL)以上であると(ステップS41;YES)、濾過水ポンプP1で運転圧力を補完し続ける必要に乏しいので、処理をステップS43に進める。
そして、制御部20は、膜モジュール4の運転圧力(P)が圧力下限(PL)以上となっている時間(圧力超過時間t2)について、経過時間のカウンタを加算する(ステップS43)。その後、制御部20は、処理をステップS44に進める。
次いで、制御部20は、膜モジュール4の運転圧力(P)が圧力下限(PL)以上となっている時間(圧力超過時間t2)についてのカウンタの積算が、予め設定された閾値(Th5)以上か否かを判定する(ステップS44)。閾値(Th5)としては、例えば、圧力超過時間t2についてのカウンタの積算が、実時間で数秒間から数時間に相当するカウントとなる値が、制御部20に予め設定される。圧力超過時間t2についてのカウンタの積算が数秒間から数時間に達した場合には、水位のみによる圧力差で安定的に膜濾過を行える状態に回復していると判断できるためである。
制御部20は、ステップS44において、膜モジュール4の運転圧力(P)が圧力下限(PL)以上となっている時間(圧力超過時間t2)についてのカウンタの積算が、予め設定された閾値(Th5)以上でないと(ステップS44;NO)、運転圧力が十分に上昇して安定していない可能性が高いので、処理をステップS41に戻す。
一方、制御部20は、ステップS44において、膜モジュール4の運転圧力(P)が圧力下限(PL)以上となっている時間(圧力超過時間t2)についてのカウンタの積算が、予め設定された閾値(Th5)以上であると(ステップS44;YES)、運転圧力が十分に上昇して安定している可能性が高いので、処理をステップS45に進める。
そして、制御部20は、濾過水ポンプP1を停止させて、濾過水路8を流れる濾過水の圧送を終了する(ステップS45)。このように、膜モジュール4の運転圧力(P)が圧力下限(PL)以上となっている時間(圧力超過時間t2)の積算が、所定値以上となったとき、濾過水ポンプP1を停止させる水処理方法とすると、膜モジュール4の運転圧力(P)が安定した場合に、濾過水路8における濾過水の通流を、ポンプによる強制的な移送から、水位による自然流下に切り替えることができる。そのため、膜モジュール4の運転圧力を適正な範囲に維持しながらも、濾過水ポンプP1の動力コストを抑制することができる。
その後、制御部20は、濾過水ポンプP1が停止されると、処理を戻し、水位のみによる圧力差で膜濾過による濾過処理を継続する。膜モジュール4による濾過処理は、操作者又は運転プログラムから指令された運転停止指令を制御部20が受け付けると終了する。そして、膜モジュール4の逆洗処理が実行された後に次回の濾過処理が実施されるか、或いは、水処理装置100の運転が停止される。
以上の水処理装置100の運転方法によると、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)が、予め設定された流量下限(FL)(第3閾値)未満となったとき、濾過水ポンプP1を作動させる制御が行われる。そのため、原水の水質が変動し、原水に含まれている濁質の量が上昇したり、原水の水温が低下したりする等して、膜モジュール4が備える分離膜の透過抵抗が上昇することにより濾過水の流量が減少したとしても、水位のみによる圧力差を利用した膜濾過から、動力を利用した膜濾過に速やかに移行することができる。つまり、水位による圧力差を利用した低コストな膜濾過を行っている間に、運転圧力の低下を来す事態が生じたとしても、水処理装置100の運転を停止すること無く、膜濾過を続けることが可能である。よって、この運転方法によると、浸漬型の膜濾過を低コストで安定的に継続することができる。
また、以上の水処理装置100の運転方法によると、膜モジュール4の運転圧力(P)が、予め設定された圧力下限(PL)以上となったとき、濾過水ポンプP1を停止させる制御が行われる。すなわち、濾過水路8における濾過水の通流が、ポンプによる強制的な移送から水位による自然流下に切り替えられる時期が、運転圧力(P)によって判断される。そのため、膜モジュール4が備える分離膜の透過抵抗が許容できる範囲にあること、及び、分離膜が損傷等していない健全な状態であることを、運転圧力(P)に基いて保証して、膜濾過を安定的に継続することができる。
図4は、本発明の一実施形態に係る水処理装置の濾過水に関わる運転方法の他の例を示すフロー図である。
図4に示すように、水処理装置100の運転においては、濾過処理を行う通常運転時に、濾過水路8を流れる濾過水を圧送する濾過水ポンプP1の作動を、濾過水路8を流れる濾過水の流量(濾過水流量F2)に代えて、膜モジュール4の運転圧力(P)に基いて制御することもできる。
制御部20は、水処理装置100の運転が操作者又は運転プログラムからの指令により開始されると、図3に示す運転方法と同様に、濾過水流量調整弁7を初期開度として濾過処理を開始し(ステップS31)、膜分離槽3に導入されて濾過処理される原水の量を参照し(ステップS32)、濾過水流量調整弁7の開度を調整する制御を行う(ステップS33)。
続いて、制御部20は、濾過水流量調整弁7の開度が制御された後、膜モジュール4の運転圧力(P)を計測する(ステップS54)。膜モジュール4の運転圧力(P)は、分離膜の一次側及び二次側の圧力を計測する不図示の圧力センサによって所定の周期で計測され、制御部20に入力される。
次いで、制御部20は、膜モジュール4の運転圧力(P)が、予め設定された圧力下限(PL)未満か否かを判定する(ステップS55)。圧力下限(PL)としては、例えば、水位のみによる圧力差で膜濾過を行うことが可能な最小水位差付近における圧力の値、或いは、膜モジュール4の性能に応じて−80kPa以上の値が、制御部20に予め設定される。
制御部20は、ステップS55において、膜モジュール4の運転圧力(P)が、予め設定された圧力下限(PL)未満でないと(ステップS55;NO)、水位のみによる圧力差で膜濾過を継続することができるので、処理をステップS32に戻す。
一方、制御部20は、ステップS55において、膜モジュール4の運転圧力(P)が、予め設定された圧力下限(PL)未満であると(ステップS55;YES)、水位のみによる圧力差で膜濾過を継続することができないので、処理をステップS39に進める。
その後、制御部20は、図3に示す運転方法と同様に、濾過水ポンプP1を作動させて濾過水路8を流れる濾過水の圧送を開始し(ステップS39)、膜モジュール4の運転圧力(P)に応じて濾過水ポンプP1を停止し(ステップS45)、膜濾過による濾過処理を継続する。なお、濾過水ポンプP1を作動させるとき(ステップS55)の圧力下限(PL)と、濾過水ポンプP1を停止するとき(ステップS41)の圧力下限(PL)は、互いに同一の値としてもよいし、互いに異なる値としてもよい。
以上の水処理装置100の運転方法によると、膜モジュール4の運転圧力(P)が、予め設定された圧力下限(PL)未満となったとき、濾過水ポンプP1を作動させる制御が行われる。そのため、原水の水質が変動し、原水に含まれている濁質の量が上昇したり、原水の水温が低下したりする等して、膜モジュール4が備える分離膜の透過抵抗が上昇したとしても、原水の導入量や滞留水の排水引抜量にかかわらず、水位のみによる圧力差を利用した膜濾過から、動力を利用した膜濾過に速やかに移行することができる。つまり、水位による圧力差を利用した低コストな膜濾過を行っている間に、運転圧力の低下を来す事態が生じたとしても、水処理装置100の運転を停止すること無く、膜濾過を続けることが可能である。よって、この運転方法によると、浸漬型の膜濾過を低コストで安定的に継続することができる。
次に、本発明の変形例に係る水処理装置及び水処理方法について説明する。
図5は、本発明の変形例に係る水処理装置の概略構成を示す模式図である。
図5に示すように、変形例に係る水処理装置200は、前記の水処理装置100と同様に、膜分離槽(水槽)3、膜モジュール4等を備えている。なお、図5においては、濾過水路8の下流側の構成について、図示を省略している。変形例に係る水処理装置200が前記の水処理装置100と異なる点は、膜分離槽3に原水を供給するための原水路(1)が、凝集沈殿処理系1aと、バイパス路1bとによって構成されており、原水に含まれている濁質の量に応じて、凝集沈殿処理の実施及び不実施を切り換え可能とされている点である。
凝集沈殿処理系1aは、水源から供給される原水を受ける着水井21の下流、且つ、膜分離槽3の上流に、混和池22と、フロック形成池23と、沈殿池24と、が順に設けられて構成されている。一方、バイパス路1bは、着水井21と膜分離槽3とを凝集沈殿処理系1aをバイパスして接続している。着水井21の下流には、切替弁V1が備えられており、原水が膜分離槽3に流入するまでの経路が、凝集沈殿処理系1aを通る経路及びバイパス路1bのいずれかに切り替えられるようになっている。
混和池22は、濁質を凝集させる凝集剤を原水に混和するための処理槽である。混和池22には、原水を急速攪拌する攪拌装置22aと、凝集剤を原水に添加可能な凝集剤タンク22bと、が備えられている。混和池22に流入した原水に多量の濁質が含まれている場合、凝集剤タンク22bから凝集剤が添加され、攪拌装置22aで急速攪拌されて、凝集沈殿分離を可能にするための微小なフロックが形成される。凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等のアルミ系凝集剤や、塩化鉄、硫酸鉄等の鉄系凝集剤や、高分子凝集剤が用いられる。
フロック形成池23は、原水に含まれている濁質に粗大なフロックを形成させるための処理槽である。フロック形成池23には、例えば、原水を緩速攪拌する攪拌装置が備えられる。フロック形成池23に流入した原水が緩速攪拌されることにより、微小なフロック同士が凝集した沈降し易い粗大なフロックが形成される。なお、原水を緩速攪拌する手段としては、攪拌装置に代えて、原水を迂流させる迂流壁、整流板等が備えられてもよい。
沈殿池24は、原水から粗大なフロックを沈降させて沈殿分離するための処理槽である。沈殿池24には、例えば、沈降したフロックを掻き寄せる掻寄機、沈降面積を拡大して沈降を促進させる傾斜板や傾斜管等が備えられる。沈殿池24に流入した原水からは、粗大なフロックが沈降して分離され、沈殿池24の底部に沈殿したフロックは、掻寄機によって掻き寄せられて廃棄される。一方、フロックが除去された上澄みの原水は、集水トラフから集水され、濁質の量が低減された状態で膜分離槽3に導入される。
図6は、本発明の変形例に係る水処理装置の滞留水に関わる運転方法を示すフロー図である。
図6に示すように、水処理装置200においては、濾過処理を行う通常運転時に、切替弁V1による流路の方向を、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)に基いて制御する。切替弁V1が制御されることにより、膜分離槽3に導入される原水の経路は、凝集沈殿処理系1aを通る経路か、バイパス路1bのいずれかに切り替えられる。
制御部20は、水処理装置200の運転が操作者又は運転プログラムからの指令により開始されると、図2に示す運転方法と同様に、膜分離槽3に向けて新たな原水の導入を開始する(ステップS11)。
そして、制御部20は、原水が導入されている間に、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)を計測する(ステップS61)。原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)は、濁度センサ2によって所定の周期で計測され、制御部20に入力される。
なお、図6において、濁度センサ2は、膜分離槽3の直前に設置されているが、着水井21の槽内や、着水井21よりも上流側に設置してもよい。また、膜分離槽3の直前と、着水井21の槽内、着水井21よりも上流側の両方に設置して使い分けてもよい。膜分離槽3の直前に設置すれば、滞留水の流量(排水引抜量F1)の調整について、また、着水井21の槽内や、着水井21よりも上流側に設置すれば、切替弁V1の切り替えについて、濁度の変動に対する即時応答性がよくなる。
続いて、制御部20は、図2に示す運転方法と同様に、ブロワb1が作動しているか否かを判定し(ステップS13)、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された閾値(Th3)未満であるか否かを判定する(ステップS14)。閾値(Th3)未満でないと(ステップS14;NO)、ブロワb1は作動した状態に維持され、閾値(Th3)未満であると(ステップS14;YES)、ブロワb1は停止される。
次いで、制御部20は、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された濁度上限(TUU)(第4閾値)以上か否かを判定する(ステップS62)。濁度上限(TUU)としては、例えば、エアスクラビング運転時の閾値(Th3)よりも高い濁度値が、制御部20に予め設定される。
制御部20は、ステップS62において、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された濁度上限(TUU)以上でないと(ステップS62;NO)、原水を凝集沈殿処理系1aで前処理する必要に乏しいので、処理をステップS63に進める。
そして、制御部20は、切替弁V1を制御して、凝集沈殿処理系1aへの流路を閉鎖し、バイパス路1bへの流路を開放する(ステップS63)。その後、制御部20は、処理をステップS12に進める。
一方、制御部20は、ステップS62において、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された濁度上限(TUU)以上であると(ステップS62;YES)、原水を凝集沈殿処理系1aで前処理する必要があるので、処理をステップS64に進める。
そして、制御部20は、切替弁V1を制御して、凝集沈殿処理系1aへの流路を開放し、バイパス路1bへの流路を閉鎖する(ステップS64)。その後、制御部20は、処理をステップS65に進める。
次いで、制御部20は、凝集沈殿処理系1aにおいて凝集沈殿処理を実施するための制御を実行する(ステップS65)。例えば、攪拌装置22a、凝集剤タンク22b等を作動させると共に、凝集沈殿処理に供される被処理水を移送する不図示のポンプ等を作動させる。その後、制御部20は、処理をステップS12に進める。
その後、制御部20は、図2に示す運転方法と同様に膜濾過による濾過処理を継続する。膜モジュール4による濾過処理は、操作者又は運転プログラムから指令された運転停止指令を制御部20が受け付けると終了する。そして、膜モジュール4の逆洗処理が実行された後に次回の濾過処理が実施されるか、或いは、水処理装置100の運転が停止される。
以上の水処理装置200の運転方法によると、原水に含まれている濁質の量(原水濁度TU)が、予め設定された濁度上限(TUU)(第4閾値)以上となったとき、原水が凝集沈殿処理系1aで凝集沈殿処理され、濁度上限(TUU)(第4閾値)未満となったとき、凝集沈殿処理系1aがバイパスされる。そのため、原水の水質が変動し、原水に含まれている濁質の量が極度に上昇したとしても、原水に含まれている濁質を凝集沈殿処理によって低減した後、水位による圧力差を利用した低コストな膜濾過を行うことが可能となる。また、排水ポンプP2の高出力運転や、ブロワb1によるエアスクラビング運転の頻度が少なくなるため、動力コストが低く抑えられる。よって、この運転方法によると、浸漬型の膜濾過を低コストで安定的に継続することができる。
以上、本発明について説明したが、本発明は、前記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態や変形例が備える全ての構成を備えるものに限定されない。実施形態や変形例の構成の一部を他の構成に置き換えたり、実施形態や変形例の構成の一部を他の形態に追加したり、実施形態や変形例の構成の一部を省略したりすることができる。
例えば、前記の水処理装置100,200においては、原水に含まれている濁質の量が、原水路1に設置された濁度センサ2により計測され、濁質の量についての判定が濁度値により行われている。しかしながら、濁度センサ2は、膜分離槽3の槽内に設置されてもよい。また、濁質の量についての判定は、透過光又は散乱光の光強度値、原水を撮像して得た画像解析値等で行ってもよい。また、計測された瞬間値、及び、所定期間の積算値のうちのいずれで行ってもよい。
また、前記の水処理装置100,200においては、原水に含まれている濁質の量が、原水の濁度(原水濁度TU)として計測されている。しかしながら、原水に含まれている濁質の量は、有機体炭素量(Total Organic Carbon;TOC)、マンガン若しくはマンガン化合物の濃度、鉄若しくは鉄化合物の濃度、全窒素量、全燐量、溶存酸素量、化学的酸素要求量、生物学的酸素要求量、酸化還元電位(Oxidation Reduction Potential;ORP)等として間接的に計測されてもよい。但し、濁質の量との相関性や、計測の容易性の観点からは、原水に含まれている濁質の量は、濁度又は有機体炭素量として計測されることが好ましい。
また、前記の水処理装置100,200においては、膜分離槽3は、排水ポンプP2が備えられた排水路10と接続され、排水路10は、膜分離槽3に滞留する滞留水を排水ポンプP2の作動によって排水可能に設けられている。しかしながら、膜分離槽3は、高低差を利用した自然流下によって滞留水を排水するように構成されてもよい。自然流下によって滞留水を排水する排水路10には、流量調整装置として、排水ポンプP2に代えて、滞留水の流量を調整可能な滞留水流量調整弁を設置すればよい。