[実施形態1]
以下に、本開示に係る実施形態1を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係る加工装置の概略構成図である。図2は、図1におけるA−A矢視図である。図3は、図1におけるB−B断面図である。
図1に示すように、本実施形態の加工装置1は、水中において被加工物100を加工するものである。加工としては、例えば、溶接、切断があり、加工方法としては、例えば、図1に示すTIG溶接がある。本実施形態では、TIG溶接による肉盛溶接を主として説明する。
本実施形態の加工装置1は、図1に示すように、加工ヘッド2、加工用ノズル3、ガス供給部4、水供給部5を備えている。
加工ヘッド2は、溶接トーチ2Aを備える。溶接トーチ2Aは、加工用ノズル3のトーチ挿入ノズル3Aを貫通して設けられている。また、加工装置1は、溶接トーチ2Aの先端部に対応する位置に溶接ワイヤ2Bを備える。溶接ワイヤ2Bは、加工用ノズル3を貫通して支持されている。
加工用ノズル3は、円柱形状に形成されて加工ヘッド2に設けられた溶接トーチ2Aの先端部を、水中の被加工物100の加工部位100Aの加工に適した距離で設置するように図示しない保持手段(例えば、マニピュレータ)により水中にて保持される。この加工用ノズル3は、トーチ挿入ノズル3A、ガス噴射ノズル3B、水噴射ノズル3Cを備えている。
トーチ挿入ノズル3Aは、加工用ノズル3の中央に設けられて加工ヘッド2の溶接トーチ2Aを挿通させる穴であって溶接トーチ2Aを被加工物100の加工部位100Aに配置するための開口3Aaを有する。
ガス噴射ノズル3Bは、アシストガス(アルゴンガスや窒素ガスなど)を噴射するもので、図1に示すように、トーチ挿入ノズル3Aの周囲を取り囲むように配置され、溶接トーチ2Aの先端部側に噴射口3Baを向けて開口する穴として形成されている。本実施形態において、ガス噴射ノズル3Bは、図2に示すように、トーチ挿入ノズル3Aの周囲を取り囲むように加工用ノズル3の円柱形状の中心軸Cの周りに環状に形成された穴として形成されている。その他、ガス噴射ノズル3Bは、図には明示しないが、トーチ挿入ノズル3Aの周囲を取り囲むように配置された複数の穴として形成されていてもよい。なお、本実施形態において、ガス噴射ノズル3Bは、図1に示すように、トーチ挿入ノズル3Aの開口3Aaと同じ平面上に噴射口3Baが形成されている。その他、ガス噴射ノズル3Bは、図には明示しないが、トーチ挿入ノズル3Aの開口3Aaに対してトーチ挿入ノズル3Aの向きの後側(溶接トーチ2Aの先端部とは反対側)に窪んだ位置に噴射口3Baが設けられていてもよく、トーチ挿入ノズル3Aの開口3Aaに対してトーチ挿入ノズル3Aの向きの前側(溶接トーチ2Aの先端部側)に突出した位置に噴射口3Baが設けられていてもよい。
水噴射ノズル3Cは、水を噴射するもので、図1〜図3に示すように、ガス噴射ノズル3Bの周囲を取り囲むように配置され、ガス噴射ノズル3Bの向きに沿う方向に向けて開口する穴として形成されている。本実施形態において、水噴射ノズル3Cは、図2および図3に示すように、ガス噴射ノズル3Bの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。
水噴射ノズル3Cは、図1〜図3に示すように、水供給通路3Caと、キャビティ3Cbと、ノズル部3Ccと、を有する。
水供給通路3Caは、水供給部5が接続されるもので、環状の穴として構成された水噴射ノズル3Cにおいて、環状ではなく少なくとも1つの通路穴として構成されている。図3において、水供給通路3Caは、周方向に等間隔で4つ設けられている。また、水供給通路3Caは、図1に示すように、接続口3Caaを介してキャビティ3Cbに接続される。
キャビティ3Cbは、図2および図3に示すように、ガス噴射ノズル3Bの周囲を取り囲むように環状の空洞部として形成され、かつガス噴射ノズル3Bの向きに沿う方向に向けて開口して形成されている。キャビティ3Cbは、上述したように、水供給通路3Caが接続口3Caaを介して接続される。
ノズル部3Ccは、図2および図3に示すように、ガス噴射ノズル3Bの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。ノズル部3Ccは、図1に示すように、接続口3Ccaを介してキャビティ3Cbに接続される。また、ノズル部3Ccは、図1に示すように、ガス噴射ノズル3Bの向きに沿う方向に向けて噴射口3Ccbが開口して形成されている。このノズル部3Ccは、図1に示すように、接続口3Ccaから噴出口3Ccbに至り、中心軸Cから離れるように形成されている。なお、本実施形態において、ノズル部3Ccは、図1に示すように、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baと同じ平面上に噴射口3Ccbが形成されている。その他、ノズル部3Ccは、図には明示しないが、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baに対してガス噴射ノズル3Bの向きの後側(アシストガスが噴射される向きの反対側)に窪んだ位置に噴射口3Ccbが設けられていてもよく、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baに対してガス噴射ノズル3Bの向きの前側(アシストガスが噴射される側)に突出した位置に噴射口3Ccbが設けられていてもよい。
このような水噴射ノズル3Cは、水供給部5により供給された水が水供給通路3Ca、キャビティ3Cb、ノズル部3Ccの順で加工用ノズル3内を通過し、ノズル部3Ccの噴射口3Ccbから噴射される。また、水噴射ノズル3Cは、ノズル部3Ccが接続口3Ccaから噴出口3Ccbに至り、前記中心軸Cから離れるように形成されていることから、噴射口3Ccbから噴射される水が中心軸Cから離れるように斜めに放射状に噴射される。
ガス供給部4は、ガス噴射ノズル3Bにアシストガスを供給するものである。ガス供給部4は、ガス噴射ノズル3Bに対してガス供給管4Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しないガス貯留タンクを備え、このガス貯留タンクからガス供給管4Aにガスをコンプレッサなどで圧送することでガス噴射ノズル3Bにアシストガスを供給し、ガス噴射ノズル3Bからアシストガスを噴射させる。
水供給部5は、水噴射ノズル3Cに水を供給するものである。水供給部5は、水噴射ノズル3Cに対して水供給管5Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しない水貯留タンクを備え、この水貯留タンクから水供給管5Aに水をポンプなどで圧送することで水噴射ノズル3Cに水を供給し、水噴射ノズル3Cから水を噴射させる。なお、水供給部5は、加工用ノズル3が配置される水をポンプなどで圧送することで水噴射ノズル3Cに水を供給し、水噴射ノズル3Cから水を噴射させる構成であってもよい。また、水噴射ノズル3Cにおいて水供給通路3Caが複数設けられていることから、水供給部5は、水供給管5Aが各水供給通路3Caに対応して複数に分岐して構成されている。
ところで、図4は、本実施形態に係る加工装置の他の例の概略構成図である。図4に示す加工装置1は、レーザ加工を行うもので、上述した加工ヘッド2に代えて加工ヘッド6を有する。加工ヘッド6は、レーザビーム6Aを照射するもので加工用ノズル3に取り付けられている。加工ヘッド6が取り付けられる加工用ノズル3は、加工ヘッド6から照射されたレーザビーム6Aを、水中の被加工物100の加工部位100Aの加工に適した距離で照射するように図示しない保持手段(例えば、マニピュレータ)により水中にて保持される。この加工用ノズル3は、上述したトーチ挿入ノズル3Aに代えてレーザ照射ノズル3Dを備える。レーザ照射ノズル3Dは、加工用ノズル3の中央に設けられて加工ヘッド6から照射されたレーザビーム6Aを通過させる穴であってレーザビーム6Aを被加工物100の加工部位100Aに照射するための照射口3Daを有する。その他の構成は、図1に示す加工装置1と同様であるため、同等部分に同一符号を付して説明を省略する。
上述した加工装置1は、図1(または図4)に示すように、加工用ノズル3が、水中の被加工物100の加工部位100Aに対して所定間隔をおいてトーチ挿入ノズル3Aの開口3Aa(またはレーザ照射ノズル3Dの照射口3Da)を向けた形態で保持される。そして、加工装置1は、ガス供給部4により供給されたアシストガスがガス噴射ノズル3Bから噴射される。ガス噴射ノズル3Bから噴射されたアシストガスは、溶接トーチ2A(またはレーザビーム6A)により溶接される周囲で被加工物100の加工部位100Aの一部に至り、当該部分のガス噴射領域が気体領域であるドライスポットDとして形成される。加工ヘッド2(6)は、ガス噴射ノズル3Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられる。また、加工装置1は、水供給部5により供給された水が水噴射ノズル3Cから噴射される。水噴射ノズル3Cから噴射された水は、ドライスポットDの周囲で被加工物100に至り、ドライスポットDの周囲に水流により水カーテンWSを形成する。この水カーテンWSによりドライスポットDへの水の流入を防ぐ。
このように構成された加工装置1に適用される加工用ノズル3において、水噴射ノズル3Cは、キャビティ3Cbの中心軸Cに沿う方向の通路断面積が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaの開口面積よりも大きく形成されている。キャビティ3Cbの中心軸Cに沿う方向の通路断面積とは、通路の断面積であって、キャビティ3Cbは環状の通路をなすものであるから、図1および図4に示す中心軸Cの両側の2つの断面形状のうちの一方の断面積となる。また、接続口3Ccaの開口面積は、環状のノズル部3Ccにおいて環状に連続した接続口3Ccaの開口面積である。
さらに、加工用ノズル3において、水噴射ノズル3Cは、図1、図3および図4に示すように、キャビティ3Cbの通路径方向寸法D1が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaの開口寸法D2よりも大きく形成されている。径方向とは、中心軸Cに直交する方向である。
この加工用ノズル3によれば、キャビティ3Cbの中心軸Cに沿う方向の通路断面積が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaの開口面積よりも大きく形成されていることで、水噴射ノズル3Cにおいて水供給通路3Caからキャビティ3Cbに供給された水は、キャビティ3Cb内において流速が低下して静圧が回復することで、キャビティ3Cbの環状の周方向の各位置における流れの圧力(周方向全体の圧力)の偏差が低減される。しかも、キャビティ3Cbの通路径方向寸法D1が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaの開口寸法D2よりも大きく形成されていることで、キャビティ3Cbからノズル部3Ccに水が流れる際に縮流が生じて抵抗となるため、キャビティ3Cbの環状の周方向の各位置における流れの圧力(周方向全体の圧力)の偏差が低減される。これらの結果、環状に形成されたノズル部3Ccから噴射される水の流量分布を周方向で均一化することができる。従って、周方向で水の噴射の弱い箇所が発生を抑制し、気体領域であるドライスポットDに周囲の水が浸入する事態を防ぐことができる。
また、本実施形態の加工用ノズル3では、キャビティ3Cbの通路断面積S1と、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaの開口面積S2との比が、0.01≦S2/S1≦0.15の範囲を満たすことが好ましい。
S2/S1が0.15を超えると、キャビティ3Cbが比較的小さくなることから、ノズル部3Ccで流速を低下させる作用が得難くなる。一方、S2/S1が0.01未満であると、キャビティ3Cbが比較的大きくなることから、水噴射ノズル3Cに供給する必要圧力が増大し、かつ加工用ノズル3の大型化を招く。従って、0.01≦S2/S1≦0.15の範囲を満たすことで、環状に形成された水噴射ノズル3Cから噴射される水の流量分布を周方向で均一化する効果を顕著に得ることができる。
図5および図6は、本実施形態に係る加工用ノズルの他の例の概略構成図である。図5および図6に示すように、本実施形態の加工用ノズル3では、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaから外れて設けられることが好ましい。
水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向は、水供給通路3Caの向きであって、水供給通路3Caからキャビティ3Cbに流入する水の流入方向である。
図5に示す例では、水供給通路3Caが中心軸Cに沿う向きで設けられてノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaから外れて設けられている。また、図6に示す例では、水供給通路3Caが中心軸Cに交差する向きで設けられていることで、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaから外れて設けられる構成としてもよい。
従って、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaから外れて設けられていることで、水供給通路3Caからキャビティ3Cbに流入する水が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaに直接向かわずに、キャビティ3Cbの内壁面に一旦衝突する。このため、水供給通路3Caからキャビティ3Cbに流入する水のエネルギー(動圧)が抑制されてから、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaに流入することから、ノズル部3Ccに水を流入させる圧力の周方向分布を均一化することができる。この結果、環状に形成された水噴射ノズル3Cから噴射される水の流量分布を周方向で均一化する効果を顕著に得ることができる。
図7および図8は、本実施形態に係る加工用ノズルの他の例の概略構成図である。図7および図8に示すように、本実施形態の加工用ノズル3では、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaと、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaとの間に仕切部材3Cdが設けられることが好ましい。
仕切部材3Cdは、図7および図8に示すように、キャビティ3Cbの内部に設けられキャビティ3Cbの環状に沿って環状に形成されている。仕切部材3Cdは、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に存在してキャビティ3Cbの内部の一部を仕切るように設けられ、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaに至り連通する開口3Cdaが設けられている。開口3Cdaは、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に存在しない。仕切部材3Cdは、図7や図8に示すように、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に存在し、開口3Cdaが水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に存在しなければ、その配置に限定はない。つまり、図7や図8に示す形態は一例である。また、仕切部材3Cdは、複数設けられていてもよい。また、図6に示す例のように、水供給通路3Caが中心軸Cに交差する向きで設けられていてもよい。
従って、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に仕切部材3Cdが設けられていることで、水供給通路3Caからキャビティ3Cbに流入する水が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaに直接向かわずに、仕切部材3Cdに一旦衝突する。このため、水供給通路3Caからキャビティ3Cbに流入する水のエネルギー(動圧)が抑制されてから、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaに流入することから、ノズル部3Ccに水を流入させる圧力の周方向分布を均一化することができる。この結果、環状に形成された水噴射ノズル3Cから噴射される水の流量分布を周方向で均一化する効果を顕著に得ることができる。
図9および図10は、本実施形態に係る加工用ノズルの他の例の概略構成図である。図9および図10に示すように、本実施形態の加工用ノズル3では、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaと、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaとの間に流動抵抗部材3Ceが設けられることが好ましい。
流動抵抗部材3Ceは、図9および図10に示すように、キャビティ3Cbの内部に設けられキャビティ3Cbの環状に沿って環状に形成されている。流動抵抗部材3Ceは、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に存在してキャビティ3Cbの内部の一部を仕切るように設けられた多孔板であり、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaに至り連通する多数の小孔が形成されている。流動抵抗部材3Ceは、図9や図10に示すように、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に存在していれば、その配置に限定はない。つまり、図9や図10に示す形態は一例である。また、多孔板としての流動抵抗部材3Ceは、複数設けられていてもよい。また、図6に示す例のように、水供給通路3Caが中心軸Cに交差する向きで設けられていてもよい。
また、流動抵抗部材3Ceは、図9および図10に示す多孔板に限らず、図には明示しないが、多孔質材をなす金属材やセラミックスやガラスや樹脂であってもよく、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaと、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaとの間であって、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に存在して設けられる。また、流動抵抗部材3Ceは、図には明示しないが、ワイヤブラシであってもよく、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaと、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaとの間であって、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に存在して設けられる。
従って、水供給通路3Caにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Caaの開口方向に流動抵抗部材3Ceが設けられていることで、水供給通路3Caからキャビティ3Cbに流入する水が、ノズル部3Ccにおけるキャビティ3Cbとの接続口3Ccaに至る以前に流動抵抗部材3Ceにより流動抵抗を付与される。このため、キャビティ3Cb内において相対的に流量分配にかかる流動抵抗の割合が減少され、周方向の全流量抵抗が均一化されることから、ノズル部3Ccに水を流入させる圧力の周方向分布を均一化することができる。この結果、環状に形成された水噴射ノズル3Cから噴射される水の流量分布を周方向で均一化する効果を顕著に得ることができる。
図11は、本実施形態に係る加工用ノズルの他の例の概略構成図である。図11に示すように、本実施形態の加工用ノズル3では、ノズル部3Ccは、キャビティ3Cbとの接続口3Ccaから噴射口3Ccbに向けて断面積が漸次小さく形成されることが好ましい。
従って、ノズル部3Ccの水の流れ方向に向かって流路面積が小さくなるため、流れの縮流による整流効果により流れの流速偏差(流量偏差)を低減することができ、水噴流の周方向の水流量の偏差が抑制できる。この結果、環状に形成された水噴射ノズル3Cから噴射される水の流量分布を周方向で均一化する効果を顕著に得ることができる。
なお、図5〜図11に示す形態は、適宜組み合わせて用いることで、環状に形成された水噴射ノズル3Cから噴射される水の流量分布を周方向で均一化する効果を顕著に得ることができる。また、図6に示す例のように、水供給通路3Caが中心軸Cに交差する向きで設けられていてもよい。
また、本実施形態の加工用ノズル3が適用された加工装置1にあっては、加工用ノズル3と、ガス噴射ノズル3Bにガスを供給するガス供給部4と、水噴射ノズル3Cの水供給通路3Caに水を供給する水供給部5と、ガス噴射ノズル3Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられた加工ヘッド2,6と、を備える。
この加工装置1によれば、環状に形成された水噴射ノズル3Cから噴射される水の流量分布を周方向で均一化する効果を得ることができ、周方向で水の噴射の弱い箇所の発生を抑制し、加工領域であるドライスポットDに周囲の水が浸入する事態を防ぐことができることから、水中での加工性を向上することができる。
ところで、上述した実施形態において、加工用ノズル3は、水噴射ノズル3Cにおいて水供給通路3Caが設けられているが、水供給部5の水供給管5Aをキャビティ3Cbに直接接続して水供給通路3Caの代わりとしてもよい。
[実施形態2]
以下に、本開示に係る実施形態2を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図12は、本実施形態に係る加工装置の概略構成図である。図13は、図12におけるA’−A’矢視図である。図14は、図12におけるB’−B’断面図である。
図12に示すように、本実施形態の加工装置11は、水中において被加工物1100を加工するものである。加工としては、例えば、溶接、切断があり、加工方法としては、例えば、図12に示すTIG溶接がある。本実施形態では、TIG溶接による肉盛溶接を主として説明する。
本実施形態の加工装置11は、図12に示すように、加工ヘッド12、加工用ノズル13、シールドガス供給部14、水供給部15を備えている。
加工ヘッド12は、溶接トーチ12Aを備える。溶接トーチ12Aは、加工用ノズル13のトーチ挿入ノズル13A(図13および図14では省略している)を貫通して設けられている。また、加工装置11は、溶接トーチ12Aの先端部に対応する位置に溶接ワイヤ12Bを備える。溶接ワイヤ12Bは、加工用ノズル13を貫通して支持されている。
加工用ノズル13は、円柱形状に形成されて加工ヘッド12に設けられた溶接トーチ12Aの先端部を、水中の被加工物1100の加工部位1100Aの加工に適した距離で設置するように図示しない保持手段(例えば、マニピュレータ)により水中にて保持される。この加工用ノズル13は、トーチ挿入ノズル13A、シールドガス噴射ノズル13B、水噴射ノズル13Cを備えている。
トーチ挿入ノズル13Aは、加工用ノズル13の中央に設けられて加工ヘッド12の溶接トーチ12Aを挿通させる穴であって溶接トーチ12Aを被加工物1100の加工部位1100Aに配置するための開口13Aaを有する。
シールドガス噴射ノズル13Bは、シールドガス(アルゴンガスや窒素ガスなど)を噴射するもので、図12に示すように、溶接トーチ12Aの周囲を取り囲むように配置され、溶接トーチ12Aの先端部側に噴射口13Baを向けて開口する穴として形成されている。本実施形態において、シールドガス噴射ノズル13Bは、図13に示すように、加工用ノズル13の円柱形状の中心軸Cの周りに環状に形成された穴として形成されている。その他、シールドガス噴射ノズル13Bは、図には明示しないが、加工用ノズル13の円柱形状の中心軸Cの周りに環状に配置された複数の穴として形成されていてもよい。なお、本実施形態において、シールドガス噴射ノズル13Bは、図12に示すように、トーチ挿入ノズル13Aの開口13Aaと同じ平面上に噴射口13Baが形成されている。その他、シールドガス噴射ノズル13Bは、図には明示しないが、トーチ挿入ノズル13Aの開口13Aaに対してトーチ挿入ノズル13Aの向きの後側(溶接トーチ12Aの先端部とは反対側)に窪んだ位置に噴射口13Baが設けられていてもよく、トーチ挿入ノズル13Aの開口13Aaに対してトーチ挿入ノズル13Aの向きの前側(溶接トーチ12Aの先端部側)に突出した位置に噴射口13Baが設けられていてもよい。
水噴射ノズル13Cは、水を噴射するもので、図12〜図14に示すように、シールドガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲むように配置され、シールドガス噴射ノズル13Bの向きに沿う方向に向けて開口する穴として形成されている。本実施形態において、水噴射ノズル13Cは、図13および図14に示すように、シールドガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。
水噴射ノズル3Cは、図12〜図14に示すように、水供給通路13Caと、環状通路13Cbと、ノズル部13Ccと、を有する。
水供給通路13Caは、水供給部15が接続されるもので、環状の穴として構成された水噴射ノズル13Cにおいて、環状ではなく少なくとも1つの通路穴として構成されている。図14において、水供給通路13Caは、周方向に等間隔で4つ設けられている。また、水供給通路13Caは、図12に示すように、環状通路13Cbに接続される。
環状通路13Cbは、図13および図14に示すように、シールドガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲むように環状の穴として形成され、かつシールドガス噴射ノズル13Bの向きに沿う側に向けて開口して形成されている。環状通路13Cbは、上述したように、水供給通路13Caが接続される。
ノズル部13Ccは、図13に示すように、シールドガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。ノズル部13Ccは、図12に示すように、接続口13Ccaを介して環状通路13Cbに接続される。また、ノズル部13Ccは、図12に示すように、シールドガス噴射ノズル13Bの向きに沿う方向に向けて噴射口13Ccbが開口して形成されている。このノズル部13Ccは、図12に示すように、接続口13Ccaから噴出口13Ccbに至り、中心軸Cから離れるように形成されている。なお、本実施形態において、ノズル部13Ccは、図12に示すように、シールドガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baと同じ平面上に噴射口13Ccbが形成されている。その他、ノズル部13Ccは、図には明示しないが、シールドガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baに対してシールドガス噴射ノズル13Bの向きの後側(シールドガスが噴射される向きの反対側)に窪んだ位置に噴射口13Ccbが設けられていてもよく、シールドガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baに対してシールドガス噴射ノズル13Bの向きの前側(シールドガスが噴射される側)に突出した位置に噴射口13Ccbが設けられていてもよい。
このような水噴射ノズル13Cは、水供給部15により供給された水が水供給通路13Ca、環状通路13Cb、ノズル部13Ccの順で加工用ノズル13内を通過し、ノズル部13Ccの噴射口13Ccbから噴射される。また、水噴射ノズル13Cは、ノズル部13Ccが接続口13Ccaから噴出口13Ccbに至り、前記中心軸Cから離れるように形成されていることから、噴射口13Ccbから噴射される水が中心軸Cから離れるように斜めに放射状に噴射される。
シールドガス供給部14は、シールドガス噴射ノズル13Bにシールドガスを供給するものである。シールドガス供給部14は、シールドガス噴射ノズル13Bに対してガス供給管14Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しないガス貯留タンクを備える。そして、ガス貯留タンクからガス供給管14Aにシールドガスをコンプレッサなどで圧送することでシールドガス噴射ノズル13Bにシールドガスを供給し、シールドガス噴射ノズル13Bからシールドガスを噴射させる。
水供給部15は、水噴射ノズル13Cに水を供給するものである。水供給部15は、水噴射ノズル13Cに対して水供給管15Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しない水貯留タンクを備えている。そして、水貯留タンクから水供給管15Aに水をポンプなどで圧送することで水噴射ノズル13Cに水を供給し、水噴射ノズル13Cから水を噴射させる。なお、水供給部15は、加工用ノズル13が配置される水をポンプなどで圧送することで水噴射ノズル13Cに水を供給し、水噴射ノズル13Cから水を噴射させる構成であってもよい。また、水噴射ノズル13Cにおいて水供給通路13Caが複数設けられていることから、水供給部15は、水供給管15Aが各水供給通路13Caに対応して複数に分岐して構成されている。
ところで、図15は、本実施形態に係る加工装置の他の例の概略構成図である。図15に示す加工装置11は、レーザ加工を行うもので、上述した加工ヘッド12に代えて加工ヘッド16を有する。加工ヘッド16は、レーザビーム16Aを照射するもので加工用ノズル13に取り付けられている。加工ヘッド16が取り付けられる加工用ノズル13は、加工ヘッド16から照射されたレーザビーム16Aを、水中の被加工物1100の加工部位1100Aの加工に適した距離で照射するように図示しない保持手段(例えば、マニピュレータ)により水中にて保持される。この加工用ノズル13は、上述したトーチ挿入ノズル13Aに代えてレーザ照射ノズル13Dを備える。レーザ照射ノズル13Dは、加工用ノズル13の中央近傍に設けられて加工ヘッド16から照射されたレーザビーム16Aを通過させる穴であってレーザビーム16Aを被加工物1100の加工部位1100Aに照射するための照射口13Daを有する。その他の構成は、図12に示す加工装置11と同様であるため、同等部分に同一符号を付して説明を省略する。
上述した加工装置11は、図12(または図15)に示すように、加工用ノズル13が、水中の被加工物1100の加工部位1100Aに対して所定間隔をおいてトーチ挿入ノズル13Aの開口13Aa(またはレーザ照射ノズル13Dの照射口13Da)を向けた形態で保持される。そして、加工装置11は、シールドガス供給部14により供給されたシールドガスがシールドガス噴射ノズル13Bから噴射される。シールドガス噴射ノズル13Bから噴射されたシールドガスは、溶接トーチ12A(またはレーザビーム16A)により溶接される周囲で被加工物1100の加工部位1100Aの一部に至り、当該部分のガス噴射領域が気体領域であるドライスポットDとして形成される。加工ヘッド12(16)は、シールドガス噴射ノズル13Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられる。また、加工装置11は、水供給部15により供給された水が水噴射ノズル13Cから噴射される。水噴射ノズル13Cから噴射された水は、ドライスポットDの周囲で被加工物1100に至り、ドライスポットDの周囲に水流により水カーテンWSを形成する。この水カーテンWSによりドライスポットDへの水の流入を防ぐ。
図16は、本実施形態に係る加工用ノズルの概略構成図である。
加工装置11に適用される加工用ノズル13において、図16に示すように、流動抵抗体17を備える。
流動抵抗体17は、筒状に形成されて、シールドガス噴射ノズル13Bの環状に配置された噴射口13Baに囲まれる環状の内側であって、トーチ挿入ノズル13Aの開口13Aa(またはレーザ照射ノズル13Dの照射口13Da)を囲むように、基端部17aが加工用ノズル13に取り付けられ、先端部17bが開放して設けられている。この流動抵抗体17は、多孔質材、多孔板、ブラシなどで構成されて筒状の内外にガスを通過させつつガスの流動抵抗となる。なお、流動抵抗体17は、その筒状の形態として、基端部17aと先端部17bの径が同様のもの、基端部17aより先端部17bの径が大きいもの、基端部17aより先端部17bの径が小さいもの、基端部17aと先端部17bと途中の径が変化するもの、などがある。
従って、流動抵抗体17は、シールドガス噴射ノズル13Bに囲まれる内側において、その筒状で加工部位1100Aを囲むように配置される。そして、流動抵抗体17は、シールドガス噴射ノズル13Bから噴射されたシールドガスに流動抵抗を付与するため、シールドガスが加工部位1100Aに流入し難くなる。これにより、水カーテンWSからドライスポットDへの水の流入を防ぐシールド性の向上のためにシールドガス噴射ノズル13Bから噴射されるシールドガスのガス噴出流量を増加させても、加工部位1100Aにおけるガス流速の上昇を抑制できる。この結果、本実施形態の加工用ノズル13によれば、溶接品質を確保しつつシールド性能を向上することができる。
図17は、本実施形態に係る加工用ノズルの他の例の概略構成図である。
本実施形態の加工用ノズル13では、シールドガス噴射ノズル13Bは、図16に示すように、流動抵抗体17の外周に沿う側または、図17に示すように、離れる側に噴射口13Baを向けて配置されていることが好ましい。
すなわち、シールドガス噴射ノズル13Bは、噴射口13Baから噴射されるシールドガスが流動抵抗体17の外周に沿って流動し、または流動抵抗体17の外周から離れるように流動する。従って、この加工用ノズル13によれば、シールドガス噴射ノズル13Bから噴射されるシールドガスが流動抵抗体17に直接衝突することを防ぐ。この結果、シールドガスを加工部位1100Aに流入し難くすることができる。
図18は、本実施形態に係る加工用ノズルの他の例の概略構成図である。
本実施形態の加工用ノズル13では、図18に示すように、流動抵抗体17は、先端部17bが外側に反り返って形成されることが好ましい。
この加工用ノズル13によれば、流動抵抗体17の先端部17bが外側に反り返って形成されることで、加工用ノズル13を移動させながら加工部位1100Aの加工を行う場合に、この移動に追従して流動抵抗体17の先端部17bを加工部位1100Aの周囲に接触させることができる。この結果、シールドガスを加工部位1100Aに流入し難くすることができる。なお、加工用ノズル13の移動に追従して流動抵抗体17の先端部17bを加工部位1100Aの周囲に接触させる効果を顕著に得るため、少なくとも流動抵抗体17の先端部17bが可撓性を有していることが好ましい。
図19は、本実施形態に係る加工用ノズルの他の例の概略構成図である。
本実施形態の加工用ノズル13では、図19に示すように、アシストガス噴射ノズル13Eをさらに備えることが好ましい。アシストガス噴射ノズル13Eは、アシストガス(アルゴンガスや窒素ガスなど)を噴射するもので、図には明示しないが、溶接トーチ12Aの近傍に配置され、流動抵抗体17の筒状内部で流動抵抗体17の先端部17bの開口する側に噴射口13Eaを向けて開口する穴として形成されている。このアシストガス噴射ノズル13Eは、単一または複数の穴として形成される。なお、本実施形態において、アシストガス噴射ノズル13Eは、トーチ挿入ノズル13Aの開口13Aaと同じ平面上に噴射口13Eaが形成されるように図示しているが、トーチ挿入ノズル13Aの開口13Aaに対してトーチ挿入ノズル13Aの向きの後側(溶接トーチ12Aの先端部とは反対側)に窪んだ位置に噴射口13Eaが設けられていても、トーチ挿入ノズル13Aの開口13Aaに対してトーチ挿入ノズル13Aの向きの前側(溶接トーチ12Aの先端部側)に突出した位置に噴射口13Eaが設けられていてもよい。
また、本実施形態の加工装置11では、図19に示すように、アシストガス噴射ノズル13Eを備える場合、アシストガス供給部18を備える。アシストガス供給部18は、アシストガス噴射ノズル13Eにアシストガスを供給するものである。アシストガス供給部18は、アシストガス噴射ノズル13Eに対してガス供給管18Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しないガス貯留タンクを備える。そして、ガス貯留タンクからガス供給管18Aにアシストガスをコンプレッサなどで圧送することでアシストガス噴射ノズル13Eにアシストガスを供給し、アシストガス噴射ノズル13Eからアシストガスを噴射させる。
このように、本実施形態の加工用ノズル13では、流動抵抗体17の筒状内部で流動抵抗体17の先端部17bの開口する側に噴射口13Eaを向けて配置されるアシストガス噴射ノズル13Eをさらに備えることが好ましい。
この加工用ノズル13によれば、流動抵抗体17の筒状内部にアシストガスを供給できる。このため、気体領域内である流動抵抗体17の筒状内部のドライスポットDaと、気体領域内である流動抵抗体17の筒状外部のドライスポットDbと、ドライスポットDの外部(気体領域の外部)の水中領域Wとの各領域の圧力を、Da>Db>Wとすることが可能になる。この結果、流動抵抗体17の筒状内部のドライスポットDaでは、ガス噴出流量を抑えてガス圧力を高めてアシストガスを加工部位1100Aに流入し難くすることができ、流動抵抗体17の筒状外部のドライスポットDbではガス噴出流量を増加させて水中領域Wからの水の流入を防ぐことができる。この結果、溶接品質を確保しつつシールド性能を向上することができる。
図20〜図23は、本実施形態に係る加工用ノズルの他の例の概略構成図である。
本実施形態の加工用ノズル13は、図20〜図23に示すように、遮蔽部材19をさらに備えることが好ましい。
遮蔽部材19は、図20に示すように、シールドガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baと水噴射ノズル13Cの噴射口13Ccbとの間で、シールドガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baの周囲を取り囲むように環状に形成されている。遮蔽部材19は、基端部19aが水噴射ノズル13Cの径方向内側に取り付けられて先端部19bが基端部19aよりも径方向外側に位置して設けられ、かつ水噴射ノズル13Cの噴射口13Ccbの向きに対して交差して配置されることが好ましい。径方向とは、中心軸Cに直交する方向であり、径方向内側は中心軸Cに近づく側で、径方向外側は中心軸Cから遠ざかる側である。この遮蔽部材19は、加工時に先端部19bが被加工物1100の面に接触される。
この遮蔽部材19は、先端部19bが被加工物1100の面に接触し、トーチ挿入ノズル13Aの開口13Aa(またはレーザ照射ノズル13Dの照射口13Da)であって加工部位1100Aを囲むように配置される。そして、加工装置11は、シールドガス供給部14により供給されたシールドガスがシールドガス噴射ノズル13Bから噴射される。シールドガス噴射ノズル13Bから噴射されたシールドガスは、溶接トーチ12A(またはレーザビーム16A)により溶接される周囲で被加工物1100の加工部位1100Aの一部に至り、遮蔽部材19が囲むガス噴射領域が気体領域であるドライスポットDとして形成される。加工ヘッド12は、シールドガス噴射ノズル13Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられる。遮蔽部材19が囲むドライスポットDは、シールドガス噴射ノズル13Bから噴射されるシールドガスにより遮蔽部材19の外側の水中よりも高い圧力とされる。また、加工装置11は、水供給部15により供給された水が水噴射ノズル13Cから噴射される。水噴射ノズル13Cから噴射された水は、遮蔽部材19が水噴射ノズル13Cの噴射口13Ccbの向きに対して交差して配置されている場合に遮蔽部材19に衝突し、その水流により遮蔽部材19をドライスポットD側に押圧する。これにより、遮蔽部材19の先端部19bと被加工物1100の面との隙間の周方向の偏差を抑制でき、周方向で局所的な遮蔽効果の低下を抑制できる。従って、遮蔽部材19を備えることで、気体領域であるドライスポットDへの水の流入を遮断し、水中加工を行う際の気体領域の内側への水の浸入を防止することができる。
本実施形態の加工用ノズル13では、このように機能する遮蔽部材19に対し、シールドガス噴射ノズル13Bが、遮蔽部材19の内面に沿う方向に噴射口13Baを向けて配置されていることが好ましい。
この加工用ノズル13によれば、遮蔽部材19の内面に沿う方向に噴射口13Baを向けてシールドガス噴射ノズル13Bが配置されていることで、シールドガス噴射ノズル13Bから噴射されたシールドガスが、気体領域であるドライスポットDにおいて加工部位1100Aから最も離れた遮蔽部材19の内面に沿って流動するため、加工部位1100Aに向けたシールドガスのガス流量を低減することができる。これにより、ドライスポットDへの水の流入を防ぐシールド性の向上のためにシールドガス噴射ノズル13Bから噴射されるシールドガスのガス噴出流量を増加させても、加工部位1100Aにおけるガス流速の上昇を抑制できる。この結果、溶接品質を確保しつつシールド性能を向上することができる。
本実施形態の加工用ノズル13では、図21に示すように、シールドガス噴射ノズル13Bは、遮蔽部材19の基端部19aとの間に段部13Bbをおいて噴射口13Baが配置されていることが好ましい。
この加工用ノズル13によれば、遮蔽部材19の基端部19aと噴射口13Baとの間に設けた段部13Bbにより、図21に矢印Gで示すように、噴射口13Baから噴射されたシールドガスによって循環流れが発生し、この循環流れによるコアンダ効果で噴射口13Baから噴射されたシールドガスの主流が遮蔽部材19側に引き寄せられ、遮蔽部材19の内面に付着するように遮蔽部材19の内面に沿って流動する。これにより、ドライスポットDへの水の流入を防ぐシールド性の向上のためにシールドガス噴射ノズル13Bから噴射されるシールドガスのガス噴出流量を増加させても、加工部位1100Aにおけるガス流速の上昇を抑制できる効果が顕著になる。この結果、溶接品質を確保しつつシールド性能を向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル13では、流動抵抗体17は、先端部17bが遮蔽部材19の先端部19bの位置よりも延出して形成されていることが好ましい。すなわち、遮蔽部材19は環状に形成されているため先端部19bを基準として環状に囲む面が形成される。この先端部19bの位置よりも流動抵抗体17の先端部17bを延出させることで、先端部19bを基準として環状に囲む面から遮蔽部材19が囲む領域の外側に流動抵抗体17の先端部17bが突出する。従って、加工の際には、流動抵抗体17の先端部17bを加工部位1100Aの周囲に対して十分に接触させることができる。この結果、シールドガスを加工部位1100Aに流入し難くする効果が顕著になる。この結果、本実施形態の加工用ノズル13によれば、溶接品質を確保しつつシールド性能を向上することができる。
ところで、本実施形態の加工用ノズル13では、図20に示すように、遮蔽部材19は、先端部19bが外側に反り返って形成されることが好ましい。遮蔽部材19は、先端部19bが、設置時に被加工物1100の面から遠ざかるように延在方向とは逆であって径方向外側に折り返し状に反り返って形成されている。これにより、遮蔽部材19は、先端部19bが水噴射ノズル13Cの噴射口13Ccbの向きに対して交差して配置される。
従って、遮蔽部材19の先端部19bが外側に反り返って形成されることで、水噴射ノズル13Cから噴射された水は、遮蔽部材19の先端部19bで転向する。このため、水噴射ノズル13Cの噴射方向であって被加工物1100の面に向けて押圧する反力が遮蔽部材19の先端部19bに働き、遮蔽部材19の先端部19bと被加工物1100の面との隙間の周方向の偏差を抑制でき、周方向で局所的な遮蔽効果の低下をさらに抑制できる。この結果、気体領域であるドライスポットDへの水の流入を遮断し、水中加工を行う際の気体領域の内側への水の浸入を防止する効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態の加工用ノズル13では、図20に示すように、支持部材20を備えることが好ましい。支持部材20は、遮蔽部材19に沿って径方向に延在して遮蔽部材19の環状の内側に沿って設けられる。支持部材20は、基端部20aが水噴射ノズル13Cの径方向内側に取り付けられ、先端部20bが遮蔽部材19の先端部19bよりも短く形成されている。この支持部材20は、周方向に複数設けられている。
従って、支持部材20を備えることで、遮蔽部材19が水噴射ノズル13Cから噴射された水により径方向内側に変形しないように補強することができる。なお、支持部材20の基端部20aは、加工用ノズル13に支承されて中心軸Cに沿って揺動可能に取り付けられていることが好ましく、シールドガス噴射ノズル13Bから噴射されるシールドガスの圧力や、水噴射ノズル13Cから噴射された水の圧力による遮蔽部材19の移動に追従することができる。また、支持部材20の先端部20bは、球状に形成されていることが好ましく、加工用ノズル13を被加工物1100に沿って移動させた際の移動を妨げることなく支持部材20を円滑に被加工物1100の面に添わせることができる。
また、本実施形態の加工用ノズル13では、遮蔽部材19は、可撓性を有することが好ましい。
可撓性を有する構成は、遮蔽部材19を形成する材料として、例えば、ゴム、樹脂、金属で撓むことが可能なものを選択することで実現できる。また、可撓性を有する構成は、図22に示すように、遮蔽部材19が基端部19aから先端部19bに向かって山谷が交互に形成された蛇腹状に形成されることで実現できる。また、可撓性を有する構成は、図23に示すように、遮蔽部材19が周方向に山谷が交互に形成された蛇腹状に形成されることで実現できる。
従って、遮蔽部材19が可撓性を有することで、シールドガス噴射ノズル13Bから噴射されるシールドガスの圧力や、水噴射ノズル13Cから噴射された水の圧力により遮蔽部材19が追従して撓むため、遮蔽部材19の先端部19bを被加工物1100の面に常に添わせることができる。
なお、上述した実施形態2の加工用ノズル13の構成を実施形態1の加工用ノズル3に適用することも可能であり、実施形態1の加工用ノズル3の効果に加えて実施形態2の加工用ノズル13の効果を得ることができる。