以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1〜図4に示す物体Mは、ひび割れ角度判定装置4によってひび割れCの角度θが判定される判定対象物である。物体Mは、コンクリートを主要材料に用いたコンクリート構造物のような固定構造物(土木構造物)である。物体Mは、例えば、山腹などの地中を貫通して列車などの移動体を通過させるトンネルにおいて、地山の変形及び崩落を抑制及び防止するとともに漏水を防止して、トンネル内の主要断面及び機能を維持するトンネル覆工である。物体Mは、この物体Mの深さ方向にひび割れCが発生している。表面M1は、物体Mの内側表面である。表面M1は、例えば、トンネル覆工の内空側の表面である。
ひび割れCは、物体Mに発生するき裂である。ひび割れCは、物体Mの表面M1からこの物体Mの内部に進展、又は物体Mの内部からこの物体Mの表面M1に進展している。ひび割れCは、例えば、物体Mの内面側に圧縮応力が作用して縮み、この物体Mの外面側に引張応力が作用して伸びることによって、斜め方向に進展する斜めひび割れである。開口部C1は、物体Mの表面M1側のひび割れCの端部である。ひび割れ角度θは、物体Mの深さ方向のひび割れCとこの物体Mの表面M1とがなす角度である。
図1に示すひび割れ角度判定システム1は、ひび割れ角度θを判定するシステムである。ひび割れ角度判定システム1は、加振装置2と、振動検出装置3と、ひび割れ角度判定装置4などを備えている。ひび割れ角度判定システム1は、加振装置2によって物体Mを加振したときに発生する振動を振動検出装置3によって検出し、この振動検出装置3の検出結果に基づいてひび割れ角度判定装置4によってひび割れ角度θを評価する。ひび割れ角度判定システム1は、ひび割れC上を加振装置2によって打撃したときに発生する振動を振動検出装置3によって検出し、いくつかの特定の固有振動数でスペクトルのピークを持つ計測結果を得る。
図1〜図3に示す加振装置2は、物体Mを加振する装置である。加振装置2は、物体Mの表面M1に打撃を加えてこの物体Mを振動させる。加振装置2は、使用者の操作によって物体Mを打撃して、この物体Mに打撃力(加振力)Fを作用させる。加振装置2は、例えば、物体Mに作用させた打撃力Fを把握可能なインパクトハンマー(インパルスハンマー)のような加振器である。加振装置2は、図1に示すように、ひび割れC上の物体Mの表面M1を複数の打撃箇所P1,…,PNで打撃する。加振装置2は、物体Mに衝撃を加えたときに発生する打撃力Fを検出する荷重検出部(ロードセル)を備えており、物体Mを加振する打撃力Fに応じた打撃力検出信号(打撃力情報)をひび割れ角度判定装置4に出力する。
図1〜図4に示す振動検出装置3は、物体Mに発生する振動を検出する装置である。振動検出装置3は、加振装置2によって物体Mが加振されたときに、この物体Mに発生する振動を検出する。振動検出装置3は、加振装置2によって物体Mの表面M1を複数の打撃位置P1,…,PNで打撃したときに、各打撃箇所P1,…,PNで発生する振動をそれぞれ検出する。振動検出装置3は、例えば、物体Mの振動による加速度を検出する加速度センサである。振動検出装置3は、物体Mの表面M1に着脱自在に装着される。振動検出装置3は、物体Mの表面M1に発生する振動に応じた振動検出信号(振動情報)をひび割れ角度判定装置4に出力する。
図1及び図2に示すひび割れ角度判定装置4は、ひび割れ角度θを判定する装置である。ひび割れ角度判定装置4は、加振装置2が加える打撃力Fの大きさと、振動検出装置3が検出する振動の大きさとに基づいて、物体Mに発生しているひび割れ角度θを評価する。ひび割れ角度判定装置4は、物体Mのひび割れ角度θに基づいてこの物体Mのはく落の危険性を評価する。ひび割れ角度判定装置4は、図4に示すように、スペクトル強度(スペクトルのピーク)I1,…,I4が打撃位置P1,…,P4におけるひび割れ深さh1,…,h4と相関があるため、打撃位置P1,…,PN毎にひび割れ深さh1,…,hNを求め、このひび割れ深さh1,…,hNからひび割れ角度θ1,…,θNを求める。ひび割れ角度判定装置4は、図2に示すように、打撃力情報入力部5と、打撃力情報記憶部6と、振動情報入力部7と、振動情報記憶部8と、スペクトル強度演算部9と、スペクトル強度情報記憶部10と、正射影長さ演算部11と、正射影長さ情報記憶部12と、相関関係情報記憶部13と、ひび割れ深さ演算部14と、ひび割れ深さ情報記憶部15と、打撃距離設定部16と、打撃距離情報記憶部17と、ひび割れ角度演算部18と、ひび割れ角度情報記憶部19と、はく落危険度評価部20と、評価結果情報記憶部21と、ひび割れ角度判定プログラム記憶部22と、表示部23と、制御部24などを備えている。ひび割れ角度判定装置4は、例えば、パーソナルコンピュータなどによって構成されており、ひび割れ角度判定プログラムに従って所定の処理を実行する。
図3に示すひび割れ深さHは、物体Mの表面M1からひび割れCまでの深さである。ひび割れ長さLは、ひび割れCの一方の端部から他方の端部までの距離である。正射影長さDは、物体Mの表面M1にひび割れCを正射影したときのこのひび割れCの長さである。正射影長さDは、ひび割れCの各点を物体Mの表面M1に下した垂線の足の集まりである。ひび割れ先端位置P0は、ひび割れCの開口部C1側の端部である。打撃位置Pは、加振装置2によって物体Mの表面M1に打撃力Fを作用させる位置である。打撃距離dは、ひび割れ先端位置P0から打撃位置Pまでの距離である。ひび割れ深さhは、打撃位置Pにおける物体Mの表面M1からひび割れCまでの深さである。図3に示すように、複雑な形状ではないひび割れ角度θのひび割れCは、ひび割れCの正射影長さDに相当する物体Mの浮いている範囲であれば、打撃位置Pによらず同じ固有振動数f0でスペクトルのピークを持つ。この固有振動数f0のスペクトル強度Iとひび割れ深さhとの間には相関関係がある。ひび割れ角度判定装置4は、このような固有振動数f0のスペクトル強度Iとひび割れ深さhとの相関関係を利用して物体Mのひび割れ角度θを同定する。
図2に示す打撃力情報入力部5は、加振装置2が出力する打撃力情報が入力する手段である。打撃力情報入力部5は、加振装置2が出力する打撃力情報を制御部24に出力する。打撃力情報入力部5は、例えば、加振装置2から制御部24に打撃力検出信号を入力させるインタフェース(I/F)回路などである。打撃力情報記憶部6は、打撃力情報入力部5が出力する打撃力情報を記憶する手段である。打撃力情報記憶部6は、例えば、加振装置2によって物体Mに作用させた打撃力Fを打撃力情報として記憶するメモリなどである。
振動情報入力部7は、振動検出装置3が出力する振動情報が入力する手段である。振動情報入力部7は、振動検出装置3が出力する振動情報を制御部24に出力する。振動情報入力部7は、例えば、振動検出装置3から制御部24に振動検出信号を入力させるインタフェース(I/F)回路などである。振動情報記憶部8は、振動情報入力部7が出力する振動情報を記憶する手段である。振動情報記憶部8は、図4に示すように、打撃位置P1,…,PN毎に振動情報を記憶する。振動情報記憶部8は、例えば、加振装置2が出力する振動情報を記憶するメモリなどである。
図2に示すスペクトル強度演算部9は、複数の打撃箇所P1,…,PNで打撃したときに発生する振動の固有振動数f0のスペクトル強度I1,…,INを演算する手段である。スペクトル強度演算部9は、図5に示すように、振動情報入力部7が出力する振動検出信号に基づいてスペクトル波形Wを生成し、振動の固有振動数f0のスペクトル強度Iを演算する。ここで、図5に示すスペクトル波形Wは、物体Mに打撃力Fを作用させたときに発生する振動検出信号の波形(振動波形)を周波数分析したときのフーリエスペクトルを示す波形である。固有振動数f0は、物体Mの振動波形を周波数分析したときに振幅スペクトルが極大となる卓越周波数である。スペクトル強度演算部9は、例えば、振動情報入力部7が出力する振動検出信号を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation(以下、FFTという))処理して、振動の固有振動数f0のスペクトル強度(スペクトルの大きさ)Iを演算する。スペクトル強度演算部9は、例えば、物体Mを加振したときの加速度応答をFETアナライザによって周波数分析し、振動の固有振動数f0のスペクトル強度Iを演算する。スペクトル強度演算部9は、演算後の振動の固有振動数f0のスペクトル強度Iをスペクトル強度信号(スペクトル強度情報)として制御部24に出力する。スペクトル強度情報記憶部10は、スペクトル強度演算部9が演算したスペクトル強度Iを記憶する手段である。スペクトル強度情報記憶部10は、例えば、スペクトル強度演算部9が出力するスペクトル強度情報を記憶するメモリなどである。
図2に示す正射影長さ演算部11は、ひび割れC上の物体Mの表面M1を複数の打撃位置P1,…,PNで打撃したときに発生する振動に基づいて、正射影長さDを演算する手段である。正射影長さ演算部11は、振動検出装置3の検出結果に基づいて正射影長さDを演算する。正射影長さ演算部11は、振動検出装置3が出力する振動情報を解析することによって正射影長さDを演算する。正射影長さ演算部11は、物体Mの内部のひび割れCによる空洞部の有無によって振動が相違するため、各打撃位置P1,…,PNにおける振動情報に基づいて正射影長さDを演算する。正射影長さ演算部11は、物体Mの内部のひび割れCが存在する領域の振動と、ひび割れCが存在しない領域の振動とが相違するのを利用して、各打撃位置P1,…,PNにおける振動情報に基づいて正射影長さDを演算する。正射影長さ演算部11は、演算後の正射影長さDを正射影長さ信号(正射影長さ情報)として制御部24に出力する。正射影長さ情報記憶部12は、正射影長さ演算部11が演算した正射影長さDを記憶する手段である。正射影長さ情報記憶部12は、例えば、正射影長さ演算部11が出力する正射影長さ情報を記憶するメモリなどである。
図2に示す相関関係情報記憶部13は、振動の固有振動数f0のスペクトル強度Iとひび割れ深さhとの相関関係を相関関係情報として記憶する手段である。相関関係情報記憶部13は、振動の固有振動数f0のスペクトル強度Iとひび割れ深さhとの相関関係を正射影長さD1,…,DM毎に相関関係情報として記憶する。相関関係情報記憶部13は、図6に示すようなスペクトル強度I−ひび割れ深さhとの関係を表す相関関係を記憶する。ここで、図6に示す縦軸は、ひび割れ深さhであり、横軸はスペクトル強度Iである。相関関係情報記憶部13は、スペクトル強度Iとひび割れ深さhとの関係を正射影長さD1,…,DM毎に予めデータベース化して記憶する。相関関係情報記憶部13は、例えば、様々なひび割れ角度θ、正射影長さDの試験片を予め作製しておき、各打撃距離d1,…,dNで打撃力F1,…,FNによって打撃したときのスペクトル強度I1,…,INの関係を整理してデータベース化した相関関係情報を記憶する。相関関係情報記憶部13は、振動の固有振動数f0のスペクトル強度Iとひび割れ深さhとの相関関係を相関関係情報として記憶するメモリなどである。
図2に示すひび割れ深さ演算部14は、ひび割れC上の物体Mの表面M1を複数の打撃位置P1,…,PNで打撃したときに発生する振動に基づいて、各打撃位置P1,…,PNにおけるひび割れ深さh1,…,hNを演算する手段である。ひび割れ深さ演算部14は、複数の打撃位置P1,…,PNで打撃したときに発生する振動の固有振動数f0のスペクトルのピークに基づいて、ひび割れ深さh1,…,hNを演算する。ひび割れ深さ演算部14は、振動の固有振動数f0のスペクトルのピークとひび割れ深さh1,…,hNとの相関関係に基づいて、ひび割れ深さh1,…,hNを演算する。ひび割れ深さ演算部14は、相関関係情報記憶部13が記憶する相関関係情報と、スペクトル強度演算部9が演算する振動の固有振動数f0のスペクトル強度I1,…,INと、正射影長さ演算部11が演算する正射影長さD1,…,DMとに基づいて、ひび割れ深さh1,…,hNを演算する。ひび割れ深さ演算部14は、図6に示すように、正射影長さ演算部11が演算する正射影長さD1,…,DMに対応する相関関係情報を選択し、スペクトル強度演算部9が演算するスペクトル強度情報に対応するひび割れ深さh1,…,hNをこの相関関係情報から特定する。ひび割れ深さ演算部14は、演算後のひび割れ深さh1,…,hNをひび割れ深さ信号(ひび割れ深さ情報)として制御部24に出力する。ひび割れ深さ情報記憶部15は、ひび割れ深さ演算部14が演算したひび割れ深さh1,…,hNを記憶する手段である。ひび割れ深さ情報記憶部15は、例えば、ひび割れ深さ演算部14が出力するひび割れ深さ情報を記憶するメモリなどである。
打撃距離設定部16は、打撃距離d1,…,dNを設定する手段である。打撃距離設定部16は、ひび割れ先端位置P0から各打撃位置P1,…,PNまでの打撃距離d1,…,dNを打撃距離情報として設定する。打撃距離設定部16は、例えば、使用者の手動操作によって打撃距離d1,…,dNを入力する入力装置又は補助入力装置などである。打撃距離設定部16は、設定後の打撃距離d1,…,dNを打撃距離信号(打撃距離情報)として制御部24に出力する。打撃距離情報記憶部17は、打撃距離設定部16が設定した打撃距離設定情報を記憶する手段である。打撃距離情報記憶部17は、例えば、打撃距離設定部16が出力する打撃距離情報を記憶するメモリなどである。
ひび割れ角度演算部18は、ひび割れ深さ演算部14の演算結果に基づいて、ひび割れ角度θを演算する手段である。ひび割れ角度演算部18は、各打撃位置P1,…,PNとひび割れ先端位置P0との間の打撃距離d1,…,dNと、各打撃位置P1,…,PNにおけるひび割れ深さh1,…,hNとに基づいて、ひび割れ角度θを演算する。ひび割れ角度演算部18は、打撃距離dとひび割れ深さhとに基づいて、以下の数1によってひび割れ角度θを演算する。
ひび割れ角度演算部18は、演算後のひび割れ角度θ1,…,θNをひび割れ角度信号(ひび割れ角度情報)として制御部24に出力する。ひび割れ角度情報記憶部19は、ひび割れ角度演算部18が演算したひび割れ角度θ1,…,θNを記憶する手段である。ひび割れ角度情報記憶部19は、例えば、ひび割れ角度演算部18が出力するひび割れ角度情報を記憶するメモリなどである。
はく落危険度評価部20は、物体Mのはく落の危険度を評価する手段である。はく落危険度評価部20は、ひび割れ角度演算部18が演算するひび割れ角度θを評価基準として、物体Mのはく落の危険度の有無を評価する。はく落危険度評価部20は、例えば、ひび割れ角度θが所定値を超えるときには物体Mにはく落が発生する危険度が低いと評価し、ひび割れ角度θが所定値以下であるときには物体Mにはく落が発生する危険が高いと評価する。はく落危険度評価部20は、評価後のはく落の危険度の有無を評価結果信号(評価結果情報)として制御部24に出力する。評価結果情報記憶部21は、はく落危険度評価部20の評価結果を記憶する手段である。評価結果情報記憶部21は、例えば、はく落危険度評価部20が出力する評価結果情報を記憶するメモリなどである。
ひび割れ角度判定プログラム記憶部22は、ひび割れ角度θを判定するためのひび割れ角度判定プログラムを記憶する手段である。ひび割れ角度判定プログラム記憶部22は、情報記録媒体から読み取ったひび割れ角度判定プログラム又は電気通信回線を通じて取り込まれたひび割れ角度判定プログラムなどを記憶するメモリなどである。
表示部23は、ひび割れ角度判定装置4に関する種々の情報を表示する手段である。表示部23は、例えば、打撃力情報記憶部6が記憶する打撃力情報、振動情報記憶部8が記憶する振動情報、スペクトル強度情報記憶部10が記憶するスペクトル強度情報、正射影長さ情報記憶部12が記憶する正射影長さ情報、相関関係情報記憶部13が記憶する相関関係情報、ひび割れ深さ情報記憶部15が記憶するひび割れ深さ情報、ひび割れ角度情報記憶部19が記憶するひび割れ角度情報、及び評価結果情報記憶部21が記憶する評価結果情報などを表示画面上に表示する。
制御部24は、ひび割れ角度判定装置4に関する種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部24は、ひび割れ角度判定プログラム記憶部22からひび割れ角度判定プログラムを読み出して、このひび割れ角度判定プログラムに従って所定のひび割れ角度判定処理を実行する。制御部24は、例えば、打撃力情報入力部5が出力する打撃力情報の記憶を打撃力情報記憶部6に指令したり、振動情報入力部7が出力する振動情報の記憶を振動情報記憶部8に指令したり、振動情報記憶部8から振動情報を読み出して正射影長さ演算部11及びスペクトル強度演算部9に出力したり、スペクトル強度演算部9にスペクトル強度Iの演算を指令したり、スペクトル強度演算部9が出力するスペクトル強度情報の記憶をスペクトル強度情報記憶部10に指令したり、スペクトル強度情報記憶部10からスペクトル強度情報を読み出してひび割れ深さ演算部14に出力したり、正射影長さ演算部11に正射影長さDの演算を指令したり、正射影長さ演算部11が出力する正射影長さ情報の記憶を正射影長さ情報記憶部12に指令したり、正射影長さ情報記憶部12から正射影長さ情報を読み出してひび割れ深さ演算部14に出力したり、相関関係情報記憶部13から相関関係情報を読み出してひび割れ深さ演算部14に出力したり、ひび割れ深さ演算部14にひび割れ深さhの演算を指令したり、ひび割れ深さ演算部14が出力するひび割れ深さ情報の記憶をひび割れ深さ情報記憶部15に指令したり、ひび割れ深さ情報記憶部15からひび割れ深さ情報を読み出してひび割れ角度演算部18に出力したり、打撃距離設定部16が出力する打撃距離情報の記憶を打撃距離情報記憶部17に指令したり、打撃距離情報記憶部17から打撃距離情報を読み出してひび割れ角度演算部18に出力したり、ひび割れ角度演算部18にひび割れ角度θの演算を指令したり、ひび割れ角度演算部18が出力するひび割れ角度情報の記憶をひび割れ角度情報記憶部19に指令したり、ひび割れ角度情報記憶部19からひび割れ角度情報を読み出してはく落危険度評価部20に出力したり、はく落危険度評価部20にはく落危険度の評価を指令したり、はく落危険度評価部20が出力する評価結果情報の記憶を評価結果情報記憶部21に指令したり、表示部23に種々の情報の表示を指令したりする。制御部24には、打撃力情報入力部5、打撃力情報記憶部6、振動情報入力部7、振動情報記憶部8、スペクトル強度演算部9、スペクトル強度情報記憶部10、正射影長さ演算部11、正射影長さ情報記憶部12、相関関係情報記憶部13、ひび割れ深さ演算部14、ひび割れ深さ情報記憶部15、打撃距離設定部16、打撃距離情報記憶部17、ひび割れ角度演算部18、ひび割れ角度情報記憶部19、はく落危険度評価部20、評価結果情報記憶部21、ひび割れ角度判定プログラム記憶部22及び表示部23が相互に通信可能に接続されている。
次に、この発明の実施形態に係るひび割れ角度判定方法について説明する。
以下では、制御部24の動作を中心として説明する。
図7に示すひび割れ角度判定方法#100は、物体Mの深さ方向のひび割れCとこの物体Mの表面M1とがなすひび割れ角度θを判定する方法である。ひび割れ角度判定方法#100は、打撃工程#110と、振動検出工程#120と、スペクトル強度演算工程#130と、正射影長さ演算工程#140と、ひび割れ深さ演算工程#150と、ひび割れ角度演算工程#160と、はく落危険度評価工程#170と、評価結果表示工程#180などを含む。
打撃工程#110において、複数の打撃箇所P1,…,PNで物体Mを打撃する。図1及び図4に示すように、ひび割れ先端位置P0の近傍に振動検出装置3を使用者が設置する。加振装置2によって打撃を加える複数の打撃位置P1,…,PNからひび割れ先端位置P0までの各打撃距離d1,…,dNを打撃距離設定部16によって使用者が設定する。各打撃距離d1,…,dNに関する打撃距離情報が打撃距離設定部16から制御部24に出力されると、打撃距離情報記憶部17に制御部24がこの打撃距離情報を出力し、打撃距離情報記憶部17に打撃距離情報が記憶される。物体Mの表面M1上の複数の打撃位置P1,…,PNに加振装置2によって打撃を加えると、打撃力F1,…,FNに応じた打撃力情報が加振装置2から打撃力情報入力部5に出力される。加振装置2から打撃力情報入力部5を通じて制御部24に打撃力情報が入力し、打撃力情報記憶部6に制御部24がこの打撃力情報を出力し、打撃力情報記憶部6に打撃力情報が記憶される。
振動検出工程#120において、複数の打撃箇所P1,…,PNで物体Mを打撃したときに発生する振動を検出する。図1、図2及び図4に示すように、加振装置2によって物体Mが加振されると、打撃位置P1,…,PN毎に振動に応じた振動情報が振動検出装置3から振動情報入力部7に出力される。振動検出装置3から振動情報入力部7を通じて制御部24に振動情報が入力し、振動情報記憶部8に制御部24がこの振動情報を出力し、振動情報記憶部8に振動情報が記憶される。
スペクトル強度演算工程#130において、複数の打撃箇所P1,…,PNで打撃したときに発生する振動の固有振動数f0のスペクトル強度I1,…,INを演算する。振動情報記憶部8から振動情報を制御部24が読み出して、この振動情報を制御部24がスペクトル強度演算部9に出力するとともに、スペクトル強度演算部9にスペクトル強度Iの演算を制御部24が指令する。図4に示すように、ひび割れC上の物体Mの表面M1に打撃力F1,…,FNを作用させたときに、打撃位置P1,…,PNにかかわらず同じ固有振動数f0でスペクトルのピークが現れる。打撃位置P1,…,PN毎に振動のスペクトル波形Wをスペクトル強度演算部9が生成し、このスペクトル波形Wのピーク(強度レベル)をスペクトル強度I1,…,INとしてスペクトル強度演算部9が演算する。スペクトル強度演算部9がスペクトル強度情報を制御部24に出力すると、このスペクトル強度情報をスペクトル強度情報記憶部10に制御部24が出力し、スペクトル強度情報記憶部10にスペクトル強度情報が記憶される。
図7に示す正射影長さ演算工程#140において、正射影長さDを演算する。正射影長さ演算工程#140では、振動検出装置3が出力する振動情報に基づいて正射影長さDが演算される。振動情報記憶部8から振動情報を制御部24が読み出して、この振動情報を制御部24が正射影長さ演算部11に出力するとともに、正射影長さ演算部11に正射影長さDの演算を制御部24が指令する。物体Mの内部にひび割れCが存在するか否かは、打撃位置P1,…,PNに打撃力F1,…,FNを作用させたときに発生する振動によって識別することができる。このため、物体Mの表面M1を打撃したときのひび割れ領域と非ひび割れ領域の振動情報に基づいて、打撃位置P1,…,PNの内部にひび割れCが存在するか否かを正射影長さ演算部11が判定し、ひび割れ先端位置P0を始点とする正射影長さDを正射影長さ演算部11が演算する。正射影長さ演算部11が正射影長さ情報を制御部24に出力すると、この正射影長さ情報を正射影長さ情報記憶部12に制御部24が出力し、正射影長さ情報記憶部12に正射影長さ情報が記憶される。
ひび割れ深さ演算工程#150において、ひび割れ角度θを演算する。ひび割れ深さ演算工程#150では、ひび割れC上の物体Mの表面M1を複数の打撃位置P1,…,PNで打撃したときに発生する振動に基づいて、各打撃位置P1,…,PNにおけるひび割れ深さh1,…,hNを演算する。ひび割れ深さ演算工程#150では、複数の打撃位置P1,…,PNで打撃したときに発生する振動の固有振動数f0のスペクトルのピークに基づいて、ひび割れ深さh1,…,hNを演算する。ひび割れ深さ演算工程#150では、振動の固有振動数f0のスペクトルのピークとひび割れ深さh1,…,hNとの相関関係に基づいてひび割れ深さh1,…,hNを演算する。スペクトル強度情報記憶部10からスペクトル強度情報を制御部24が読み出して、このスペクトル強度情報を制御部24がひび割れ深さ演算部14に出力するとともに、正射影長さ情報記憶部12から正射影長さ情報を制御部24が読み出して、この正射影長さ情報を制御部24がひび割れ深さ演算部14に出力する。また、相関関係情報記憶部13から相関関係情報を制御部24が読み出して、この相関関係情報を制御部24がひび割れ深さ演算部14に出力する。ひび割れ深さhの演算をひび割れ深さ演算部14に制御部24が指令すると、図6に示すような正射影長さD1,…,DMに対応する相関関係情報をひび割れ深さ演算部14が抽出して、図4に示すように打撃位置P1,…,PN毎のスペクトル強度I1,…,INに対応するひび割れ深さh1,…,hNをひび割れ深さ演算部14が演算する。ひび割れ深さ演算部14がひび割れ深さ情報を制御部24に出力すると、このひび割れ深さ情報をひび割れ深さ情報記憶部15に制御部24が出力し、ひび割れ深さ情報記憶部15にひび割れ深さ情報が記憶される。
図7に示すひび割れ角度演算工程#160において、ひび割れ深さ演算工程#130における演算結果に基づいて、ひび割れ角度θを演算する。ひび割れ角度演算工程#160では、各打撃位置P1,…,PNとひび割れ先端端部P0との間の打撃距離d1,…,dNと、各打撃位置P1,…,PNにおけるひび割れ深さh1,…,hNとに基づいて、ひび割れ角度θを演算する。ひび割れ深さ情報記憶部15からひび割れ深さ情報を制御部24が読み出して、このひび割れ深さ情報を制御部24がひび割れ角度演算部18に出力するとともに、相関関係情報記憶部13から相関関係情報を制御部24が読み出して、この相関関係情報を制御部24がひび割れ深さ演算部14に出力する。ひび割れ角度θの演算をひび割れ角度演算部18に制御部24が指令すると、打撃位置P1,…,PN毎のひび割れ深さh1,…,hNに対応するひび割れ角度θ1,…,θNをひび割れ角度演算部18が数1によって演算する。ひび割れ角度演算部18がひび割れ角度情報を制御部24に出力すると、このひび割れ角度情報をひび割れ角度情報記憶部19に制御部24が出力し、ひび割れ角度情報記憶部19にひび割れ角度情報が記憶される。
図7に示すはく落危険度評価工程#170において、物体Mのはく落の危険度を評価する。はく落危険度の評価をはく落危険度評価部20に制御部24が指令する。ひび割れ角度情報記憶部19からひび割れ角度情報を制御部24が読み出して、このひび割れ角度情報を制御部24がはく落危険度評価部20に出力する。その結果、各打撃位置P1,…,PNのひび割れ角度θ1,…,θNが所定値を超えているか否かをはく落危険度評価部20が評価し、物体Mのはく落危険性の有無を評価する。はく落危険度評価部20が評価結果情報を制御部24に出力すると、この評価結果情報を評価結果情報記憶部21に制御部24が出力し、評価結果情報記憶部21に評価結果情報が記憶される。
評価結果表示工程#180において、はく落危険度評価工程#150における評価結果を表示部23が表示する。はく落危険度の評価結果の表示を表示部23に制御部24が指令すると、評価結果情報記憶部21から評価結果情報を制御部24が読み出して、この評価結果情報を制御部24が表示部23に出力する。その結果、物体Mのはく落危険性の有無を表示部23が表示画面上に表示する。
この発明の実施形態に係るひび割れ角度判定装置及びひび割れ角度判定方法には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、ひび割れC上の物体Mの表面M1を複数の打撃位置P1,…,PNで打撃したときに発生する振動に基づいて、各打撃位置P1,…,PNにおけるひび割れ深さh1,…,hNをひび割れ深さ演算部14が演算し、このひび割れ深さ演算部14の演算結果に基づいて、ひび割れ角度θをひび割れ角度演算部18が演算する。このため、複数回の打撃からひび割れ角度θを簡易に演算することができる。その結果、ひび割れ角度θがはく落の危険性に大きく影響するため、ひび割れ角度θをはく落危険性の判定指標として利用することができる。
(2) この実施形態では、複数の打撃位置P1,…,PNで打撃したときに発生する振動の固有振動数f0のスペクトルのピークに基づいて、ひび割れ深さhをひび割れ深さ演算部14が演算する。このため、物体Mの振動を周波数解析して振動の固有振動数f0のスペクトル強度Iを演算し、ひび割れ深さhを簡単に演算することができる。また、ある打撃に対するスペクトルの出力にばらつきが生ずる場合があっても、打撃回数を多くすることによってひび割れ角度θの判定精度を向上させることができる。
(3) この実施形態では、振動の固有振動数f0のスペクトルのピークとひび割れ深さhとの相関関係に基づいて、ひび割れの深さhをひび割れ深さ演算部14が演算する。このため、振動の固有振動数f0のスペクトルのピークを相関関係と照合することによって、ひび割れ深さhを簡単に演算することができる。例えば、相関関係のデータベースを予め作成しておき、未知のひび割れCに対して打撃の結果が何度のひび割れ角度θに近いかを容易に判定することができる。
(4) この実施形態では、各打撃位置P1,…,PNとひび割れ先端位置P0との間の距離d1,…,dNと、各打撃位置P1,…,PNにおけるひび割れ深さh1,…,hNとに基づいて、ひび割れ角度θ1,…,θNをひび割れ角度演算部18が演算する。このため、ひび割れ角度θを指標として物体Mのはく落の危険性を評価することができる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、物体Mがコンクリート構造物である場合を例に挙げて説明したが、コンクリート構造物以外の岩石などについても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、物体Mがトンネル覆工である場合を例に挙げて説明したが、トンネル覆工以外のコンクリート構造物についても、この発明を適用することができる。
(2) この実施形態では、振動検出装置3が物体Mの振動を検出する加速度センサである場合を例に挙げて説明したが、物体Mの振動によって放射する騒音を検出する騒音計、物体Mの振動による変位を検出する変位計についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、物体Mの表面M1に打撃力Fを作用させたときに発生する振動に基づいて正射影長さDを演算する場合を例に挙げて説明したが、物体Mの表面M1に打撃力Fを作用させたときに発生する騒音に基づいて正射影長さDを演算することもできる。この場合には、物体Mの表面M1を打撃したときのひび割れ領域と非ひび割れ領域の騒音(打撃音)に基づいて、打撃位置P1,…,PNの内部にひび割れCが存在するか否かを正射影長さ演算部11が判定し、ひび割れ先端位置P0を始点とする正射影長さDを正射影長さ演算部11が演算する。さらに、この実施形態では、打撃位置P1,…,PN毎にひび割れ角度θ1,…,θNをひび割れ角度演算部18が演算する場合を例に挙げて説明したが、ひび割れ角度θ1,…,θNを平均化してひび割れ角度θを演算する場合についても、この発明を適用することができる。