JP6809045B2 - 車両の運動制御方法及び車両の運動制御装置 - Google Patents
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Description
まず、構成を説明する。
実施例1における車両の運動制御方法及び運動制御装置は、外界認識と自車両状態認識とに基づいて車両運動を支援するシステムを搭載した運転支援車両に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体システム構成」、「車両制動制御処理構成」に分けて説明する。
図1は、実施例1の車両の運動制御方法及び運動制御装置が適用された車両運動支援システムを示す全体システム構成図である。以下、図1に基づき、実施例1の全体システム構成を説明する。
この外界認識装置1としては、一般的に使用されているレーザレンジファインダや、超音波を利用するクリアランスソナー、画像を撮影して撮影画像情報を取得する単眼カメラ、複数の撮影部を有するステレオカメラ等を用いる。なお、レーザレンジファインダは、赤外線レーザーを目標物に照射し、その反射の度合いで目標物までの距離を測定できる装置であり、検出物体のまでの距離情報をポイントクラウド情報として取得できるようになっている。更に、外界認識装置1は、測距センサを含み、自車両と周囲の障害物等との距離を計測し、距離データを生成する。
外界認識装置1によって認識された車両周囲の交通環境情報は、車両制御演算装置3に出力される。
この自車状態認識装置2としては、例えば車輪速センサや、操舵角センサ、ヨーレートセンサを用いる。なお、車速センサは、車軸の回転数を検出することで、車速を検出する。また、操舵角センサは、操舵用アクチュエータの回転軸を検出することで、操舵角(車両前後方向に対する車輪の傾き)を検出する。ヨーレートセンサは、ヨーレート(旋回方向への回転角の変化速度)を検出する。
自車状態認識装置2によって認識された自車状態情報は、車両制御演算装置3に出力される。
このリスクポテンシャルは、周囲車両に対する定常状態を表す指標としての車間時間THW(time headway)と、先行車両に対する過渡状態を表す指標としての余裕時間TTC(time to collision)とを用いて、下記式(1)から算出される。
RP = 1/THW + k・1/TTC
= Vh/d + k・(Vp−Vh)/d …(1)
ここで、THW= 車間距離/自車両速度
TTC= 車間距離/相対速度
Vh=自車両速度
Vp=先行車両速度
d=車間距離
k=重みづけ係数 である。
ここで、「制動統制が必要な状態」とは、自車両前方の障害物である先行車両の存在によってリスクポテンシャルが急激に高まり、減速が必要な状態である。また、「制動統制」とは、リスクポテンシャルの変動を一定に抑制するために自車両の減速度をコントロールすることである。なお、「閾値」は、リスクポテンシャルの増加度合いと、減速の必要度合いとのバランスを基準に実験等に基づいて設定する。
ここで、「制動制御目標値」は、環境・車両状態認識部31にて算出されたリスクポテンシャルと予め設定されたリスクポテンシャル上限値との差であるリスクポテンシャル乖離幅と、RP変化量演算部31aにて演算されたリスクポテンシャル微分値と、をパラメータとして設定されたデータベース(テーブル)に基づき、リスクポテンシャルがリスクポテンシャル上限値を超えない値に設定される。つまり、リスクポテンシャル微分値が同一であっても、リスクポテンシャル乖離幅が大きいほど、制動制御目標値は大きい値(減速度が大きくなる値)に設定される。
なお、「リスクポテンシャル上限値」とは、ドライバーが運転行動の切り替わり(ブレーキ・アクセル・ハンドルの操作)を生じさせるリスクポテンシャルの上限値であり、実験等により設定される。
すなわち、図2に示すように、まず、制動制御目標値を目標値として目標設定部101に入力する。一方、自車両の減速による車速変化と、車間距離の変化に基づき、実RP変化量算出部102にて実際のリスクポテンシャル微分値を算出する。そして、目標値である制動制御目標値と、実際のリスクポテンシャル微分値との差分(偏差)を演算し、この差分をdRP/dt調整部103に入力する。
dRP/dt調整部103では、入力された差分に応じたゲインにより、制動制御目標値と実際のリスクポテンシャル微分値との差分を減ずるように自車両の減速度を制御するための減速度制御値が演算される。そして、減速度算出部104において、減速度制御値に外乱の影響を加え、自車両の減速による速度を算出する。なお、自車両の速度を制御することで周囲車両との車間距離も変化する。
そして、減速によって変化した車速、周囲車両と車間距離を用いて、実RP変化量算出部102にて実際のリスクポテンシャル微分値を再度算出し、算出された値を用いて減速度をフィードバック制御することによって、実際のリスクポテンシャル微分値が制動制御目標値を超えず、リスクポテンシャル微分値を制動制御目標値に一致(収束)させる減速度(制動量)が求められる。
図3は、実施例1の車両制御演算装置にて実行される車両制動制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、車両制動制御処理構成を表す図3の各ステップについて説明する。
ここで、外界認識装置1からは、移動障害物(例えば周囲車両等)の位置と移動速度、移動方向を読み込む。また、地図情報と照合された移動障害物の座標、車両周囲の静止障害物の種類と座標、道路形状情報としての区画線(レーン、通行帯)情報を読み込む。
ここで、自車状態認識装置2からは、自車両の走行速度、地図情報と照合された走行位置、地図上での走行方向を読み込む。
ここで、リスクポテンシャル微分値は、リスクポテンシャルを微分することで求める。
ここで、「リスクポテンシャル乖離幅」は、リスクポテンシャル上限値から、リスクポテンシャルを差し引くことで算出する。
ここで、「制動制御目標値」は、予め設定されたデータベース(テーブル)に基づいて、リスクポテンシャルがリスクポテンシャル上限値を超えない値に設定される。
ここでは、実際のリスクポテンシャル微分値と制動制御目標値との差分(偏差)を減ずる値に減速度を設定し、実際のリスクポテンシャル微分値の大きさに拘らず、このリスクポテンシャル微分値が制動制御目標値に一致(収束)するように、フィードバック制御により減速度を求める。
つまり、リスクポテンシャル微分値が制動制御目標値よりも大きい値であれば、リスクポテンシャル微分値を抑制する減速度とし、リスクポテンシャル微分値が制動制御目標値よりも小さい値であれば、リスクポテンシャル微分値を増大させる減速度とする。
まず、「リスク最小の行動方略の課題」を説明し、続いて、実施例1の車両の運動制御方法及び運動制御装置の作用を、「リスクポテンシャル微分値による運動制御作用」、「リスクマネジメント実行制限作用」、「その他の特徴的作用」に分けて説明する。
自動運転車両の走行行動を計画する際、リスクの低いエリアを選んで走行する計画や、リスクの積算値が低くなる計画を選択する、いわゆるリスク最小の行動方略が一般的に行われている。
実施例1の車両の運動制御装置では、走行中、図3に示す車両制動制御処理を実行する。すなわち、ステップS101→ステップS102へと進み、外界認識装置1からの情報により自車両の周囲の交通環境を認識すると共に、自車状態認識装置2からの情報により自車両の走行状態を認識する。そして、ステップS103へと進んで、リスクポテンシャル微分値を算出する。
リスクポテンシャル微分値が閾値以上であれば、障害物が存在するためにリスクポテンシャルが急に高くなり、減速が必要である(制動統制が必要である)として、ステップS105→ステップS106へと進み、リスクポテンシャル乖離幅及びリスクポテンシャル微分値に応じた制動制御目標値を設定する。
実施例1の車両の運動制御装置では、上述のように、リスクポテンシャル微分値が予め設定した閾値以上であるか否かを判断し、リスクポテンシャル微分値が閾値以上のときにリスクポテンシャル微分値が目標値となるように制動量の制御を実行する(ステップS104〜ステップS107)。なお、リスクポテンシャル微分値が閾値未満のときには、リスクポテンシャル微分値が目標値となるような制動量の制御を実行せず、例えばリスクポテンシャルの絶対値を所定の目標値となるように車両運動を制御する。
実施例1では、自車両を制動する際の目標値である制動制御目標値を、リスクポテンシャルと予め設定されたリスクポテンシャル上限値との差であるリスクポテンシャル乖離幅と、リスクポテンシャル微分値と、に応じて設定し、このリスクポテンシャル乖離幅が大きいほど制動制御目標値も大きい値に設定する。
すなわち、制動応答性の向上と、安定感のある制動制御とのバランスの向上を図ることができる。
そのため、制動時のリスクポテンシャル微分値が、制動制御目標値よりも低い状態のときには、制動を緩和することができ、例えば速度の低い低速走行での前方車追従走行時において、減速が早すぎると感じる不適合な感覚を解消することができる。これにより、走行効率を優先したキビキビとした運転感覚を実現することができる。
実施例1の車両の運動制御方法及び車両の運動制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
自車両と、前記自車両の周囲に存在する障害物との物理的相対関係から算出されたリスクポテンシャルの単位時間当たりの変化量であるリスクポテンシャル微分値を算出し(ステップS103)、
前記リスクポテンシャル微分値が目標値となるように、前記自車両の車両運動を制御する(ステップS107〜ステップS108)構成とした。
これにより、走行計画に一貫性を持たせ、リスクが変化し続ける状況であっても、車両運動を安定させてドライバーの安心感の向上を図ることができる。
前記リスクポテンシャル微分値が前記閾値以上と判断されたとき、制動制御目標値を設定し(ステップS105〜ステップS106)、
前記車両運動を制御する際(ステップS107〜ステップS108)、前記リスクポテンシャル微分値が前記制動制御目標値を超えないように、前記自車両の制動量を制御する構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、リスクポテンシャルが高くなりつつあると共に、自車両の前方に障害物が存在するときに限って、リスクポテンシャル微分値が目標値となるように制動量を制御することができ、ドライバーのリスクに対する感度の高い状況のときに適切にリスクポテンシャルの統制を図ることができる。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、制動応答性の向上と、安定感のある制動制御とのバランスの向上を図ることができる。
これにより、 (3)の効果に加え、走行効率を優先したキビキビした運転感覚を実現することができる。
前記コントローラ(車両制御演算装置3)は、
自車両と、前記自車両の周囲に存在する障害物との物理的相対関係から算出されたリスクポテンシャルの単位時間当たりの変化量であるリスクポテンシャル微分値を算出するリスクポテンシャル微分値算出部(RP変化量演算部31a)と、
前記リスクポテンシャル微分値が目標値となるように、前記自車両の車両運動を制御する車両運動制御部35と、
を有する構成とした。
これにより、走行計画に一貫性を持たせ、リスクが変化し続ける状況であっても、車両運動を安定させてドライバーの安心感の向上を図ることができる。
実施例2は、リスクポテンシャル微分値が制動制御目標値以上のときのみ、リスクポテンシャル微分値が制動制御目標値に一致するように自車両の制動量を制御する例である。
ここでは、リスクポテンシャル微分値が制動制御目標値よりも大きいため、実際のリスクポテンシャル微分値と制動制御目標値との差分(偏差)に基づいて、リスクポテンシャル微分値を抑制するように減速度を設定する。
ここで、「リスクポテンシャルの目標値」は、車両運動に対してドライバーが感じる安心感と、走行効率を優先したキビキビとした運転感覚とのバランスを基準として実験等に基づいて任意の値に設定される。リスクポテンシャルの目標値に基づいて自車両の減速度を設定する場合、実際のリスクポテンシャルの絶対値(大きさ)が所定の目標値に一致するように減速度が制御される。
そのため、例えば速度の低い低速走行での前方車追従走行時において、減速が早いと感じさせる状態であっても、その状態が維持される。この結果、ドライバーに対してより安心感を与える車両挙動(車両運動)になり、安全マージンを多く確保することを好むドライバーに適した運転感覚を実現することができる。
2 自車状態認識装置
3 車両制御演算装置(コントローラ)
31 環境・車両状態認識部
31a RP変化量演算部(リスクポテンシャル微分値演算部)
32 制動制御判断部
33 制動制御目標値設定部
34 車両走行計画演算部
34a フィードバック制御部
35 車両運動制御部
4 車両駆動装置
Claims (5)
- 外界認識と自車両状態認識とに基づいて車両運動を制御する車両の運動制御方法において、
自車両と、前記自車両の周囲に存在する障害物との物理的相対関係から、前記障害物への前記自車両の接近リスクの高さを表す指標値としてのリスクポテンシャルを算出し、
前記リスクポテンシャルの単位時間当たりの変化量であるリスクポテンシャル微分値を算出し、
前記リスクポテンシャル微分値が、前記自車両の制動統制が必要な状態を判定する閾値以上であるか否かを判断し、
前記リスクポテンシャル微分値が前記閾値以上と判断されたとき、前記リスクポテンシャルと予め設定されたリスクポテンシャル上限値との乖離幅及び前記リスクポテンシャル微分値に基づいて、前記リスクポテンシャル微分値の目標値である制動制御目標値を設定し、
前記リスクポテンシャル微分値が前記制動制御目標値を超えないように、前記自車両の車両運動を制御する
ことを特徴とする車両の運動制御方法。
- 請求項1に記載された車両の運動制御方法において、
前記制動制御目標値を設定する際、前記リスクポテンシャルと、前記リスクポテンシャル上限値との乖離幅が大きいほど、前記制動制御目標値を大きい値に設定する
ことを特徴とする車両の運動制御方法。 - 請求項1又は請求項2に記載された車両の運動制御方法において、
前記車両運動を制御する際、前記リスクポテンシャル微分値の大きさに拘らず、前記リスクポテンシャル微分値が前記制動制御目標値に一致するように前記自車両の制動量を制御する
ことを特徴とする車両の運動制御方法。 - 請求項1又は請求項2に記載された車両の運動制御方法において、
前記車両運動を制御する際、前記リスクポテンシャル微分値が前記制動制御目標値以上のときのみ、前記リスクポテンシャル微分値が前記制動制御目標値に一致するように前記自車両の制動量を制御する
ことを特徴とする車両の運動制御方法。 - 外界認識と自車両状態認識とに基づいて車両運動を制御するコントローラを搭載した車両の運動制御装置において、
前記コントローラは、
自車両と、前記自車両の周囲に存在する障害物との物理的相対関係から算出された前記障害物への前記自車両の接近リスクの高さを表す指標値としてのリスクポテンシャルの単位時間当たりの変化量であるリスクポテンシャル微分値を算出するリスクポテンシャル微分値算出部と、
前記リスクポテンシャル微分値が、前記自車両の制動統制が必要な状態を判定する閾値以上であるか否かを判断する制動制御判断部と、
前記リスクポテンシャル微分値が前記閾値以上と判断されたとき、前記リスクポテンシャルと予め設定されたリスクポテンシャル上限値との乖離幅及び前記リスクポテンシャル微分値に基づいて、前記リスクポテンシャル微分値の目標値である制動制御目標値を設定する制動制御目標値設定部と、
前記リスクポテンシャル微分値が前記制動制御目標値を超えないように、前記自車両の車両運動を制御する車両運動制御部と、
を有することを特徴とする車両の運動制御装置。
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