JP6806445B2 - 配管支持構造及びその形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主に屋外の化学プラントなどで使用される配管支持構造及びその形成方法に関するものである。
化学プラントなどで使用される配管は、用途に応じて複雑な形状をしている場合がある。また、設置される場所も、設置、修理、点検などの作業が困難な狭い場所である場合がある。一方で、プラントにおける配管構造には、高い安全性が求められるため、様々な場所に配管を支持する支持部材を設置する必要がある。
図5に、一般的な配管101を、支柱102によって支持した配管支持構造110を示している。一般に、支柱102のような支持部材は、多くの場合、溶接によって配管に溶接される。本例においても、支柱102の上端外周は、配管101に溶接されている。
また、このような配管には、ステンレス鋼を材料として用いる場合が多い。ステンレス鋼は、成分中のクロム(Cr)が空気中の酸素と結合し、表面に厚さ数nmの緻密で密着性の高い膜(不動態皮膜)を形成する。そのため、この膜が鋼材内部への腐食の進行を防ぎ、その他の鉄鋼材料と比較して錆びにくい性質を持つためである。
しかしながら、ステンレス鋼においても、応力条件、材料成分、環境条件、の3つの因子が揃った場合には、応力腐食という特異な態様の腐食が発生することがある。この特異な腐食によって発生する割れは、応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)と呼ばれる。
応力腐食割れを防ぐためには、上記した3つの因子のうち、少なくともいずれか1つの因子を排除すればよい。例えば、鋼材に約850℃以上の熱を加え、残留応力を除去することで、応力の条件を緩和し、応力因子を排除する方法がある。しかしながら、この方法は、プラント内の狭い場所に設置された配管に適用するには困難である場合が多い。また、この方法では、加熱処理の際に周囲に約450℃〜約850℃となる領域(HAZ:Heat Affected Zone)が生じることがある。この場合は、ステンレス鋼の結晶粒中のクロムが、結晶粒界にクロム炭化物として析出し、結晶粒界近傍のクロム濃度が低下することで、耐食性が低下(鋭敏化)してしまうことがある。
また、上述した因子のうち、環境因子を排除する方法として、例えば、特許文献1(特開平8−254594号公報)では、ステンレス鋼の電位を制御することで、電気的防食を施す方法が挙げられている。しかしながら、この方法は、電位の測定及び制御をするための別途の構成が必要となる。
特開平8−254594号公報
以上のような事情に対して、本発明の目的は、応力腐食に対する耐食性の高い配管支持構造及びその形成方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明に係る配管支持構造は、配管と、前記配管の外側に接続した中空の柱状支持部材とを備え、前記支持部材は、一端の外周が前記配管に接続しており、前記配管と前記柱状支持部材は、鋳造により一体に成型されている。
また、本発明に係る配管支持構造は、他の形態で、配管と、前記配管の外側に接続した中空の柱状支持部材とを備え、前記支持部材は、一端の外周が前記配管に溶接されており、前記溶接された溶接部は、溶体化処理が成されるようにしてもよい。
また、前記柱状支持部材は、前記配管の接合部から少なくとも50mmの長さを有する形態とすることができる。
本発明は、別の側面で配管支持構造の形成方法であり、該形成方法は、配管と、前記配管の外側に接続した中空の柱状支持部材とを備え、前記支持部材は、一端の外周が前記配管に接続している配管支持構造の、前記配管と前記柱状支持部材とを鋳造により一体に成型する。
また、本発明に係る配管支持構造の形成方法は、配管の外側に、中空の柱状支持部材の一端の外周を溶接し、前記溶接された溶接部に、さらに溶体化処理を施すものであってもよい。
本発明によれば、応力腐食に対する耐食性の高い配管支持構造及びその形成方法が提供される。
本発明に係る配管支持構造の、第1の実施形態を示す模式図である。 本発明に係る配管支持構造の、第2の実施形態、及びその形成方法を示す模式図である。 本発明に係る配管支持構造の、第3の実施形態、及びその形成方法を示す模式図である。 本発明に係る配管支持構造の、第4の実施形態、及びその形成方法を示す模式図である。 一般的な配管支持構造の形態を示す模式図である。 一般的な配管支持構造における配管を示す模式図である。 一般的な配管支持構造における配管に発生した亀裂を、拡大して示す模式図である。
以下に、本発明に係る配管の支持構造の実施の形態を、添付図面を参照しながら説明する。
まず、先に参照した図5を用いて、化学プラントなどで用いられる配管支持のための一般的な構造110についてより詳しく説明する。
配管101は、垂直方向から水平方向に管の方向が屈曲している。このような形状の配管は、一般にエルボー管とも呼ばれる。また、支柱102は中空の円柱形状をしている。支柱102の上端は、配管101の屈曲部外壁の形状に沿う形状となっている。そのため、支柱102の上端面は、外周が、その全周にわたって配管101の屈曲部の外側に密着している。尚、配管101及び支柱102の材質には、一般的にステンレス鋼を採用することが多い。
また、このような配管の支持構造の形成方法としては、溶接部103において、配管101と中空の支柱102とを溶接することが行われている。尚、この溶接は支柱102の上端全周にわたって施している。
次に、本発明が対象とする、配管101と中空の支柱102との溶接部で生じる特殊な応力腐食割れとその解決方法について説明する。
本発明に係る配管支持構造を採用する化学プラントは、海岸に近い沿岸部などに建設することを想定することがある。このような環境下においては、海塩粒子を含んだ雨水やごみが配管に蓄積することがある。特に、配管の屈曲部のような複雑な形状の箇所には、比較的これらが蓄積しやすい傾向にある。また、図5に示すように、配管の屈曲部に支柱を溶接しているような場合には、形状がより複雑になることで、より雨水やごみなどがたまり易くなる。さらに、図5に示すようにエルボー形状の配管の下部に支柱を接合した場合は、配管上部から外周を伝って、雨水やごみが溶接部103に集まる傾向がある。
一般に、配管の外壁に一旦蓄積した汚れや海塩などの粒子のうち大半は、より強い雨や風などによって流されることが多いため、長期間蓄積し続けることは少ない。しかしながら、配管の溶接部には、溶接工程やプラントの稼働に伴う配管の温度変化等で、微細な隙間や割れ、傷などができることがある。この隙間に入り込んだ海塩粒子などは、雨や風によって流されず、その場に蓄積し続ける場合がある。
さらに、図5に示すような配管支持構造110においては、支柱102が中空形状であるため、中空内部に海塩粒子などが入り込むことがある。この場合、中空内部に入り込んだ海塩粒子は、支柱102の内側壁面や、支柱102の内部に位置する配管101の外壁面に付着し、雨や風によって流されることなく蓄積し続けることがある。
また、このような配管101と支柱102とは、一般に、プラントの建設現場において溶接されることが多い。この場合、複雑な溶接を作業性の悪い環境で行う場合があり、溶接状態の不良や、これによる残留応力の発生などの不具合が生じるおそれがある。このようにして配管に生じた残留応力は、配管101の応力腐食割れを発生させる応力因子となり得る。また、接合部103付近には、溶接時に温度ムラが発生することで、ステンレス鋼の組織が鋭敏化することがある。この鋭敏化した組織は、応力腐食割れを発生させる材料因子となり得る。
ここで、図6には、図5において示した配管支持構造110から、支柱102を外した後の配管101を示している。溶接位置111は支柱102の上端面が溶接されていた部分である。また、空洞位置112は、支柱102を配管101に溶接した際に、支柱102の内部の空洞部に位置していた部分である。
図7は、一般的な配管支持構造における配管101に発生した亀裂を、拡大して示す模式図である。図7で示す範囲は、配管101における支柱102の溶接部である。なお、本図においては、支柱102は図示していない。
図7に示す亀裂107及び亀裂108は、沿岸部の屋外プラントにおいて、約2年程度使用した配管支持構造に発生した亀裂を示している。溶接位置111付近に発生する亀裂107は、亀裂状の割れが多く、また、空洞位置112の中央付近に発生する亀裂108は、亀甲状の割れが多い。
[第1の実施形態]
次に、図1を用いて、第1の実施形態に係る配管支持構造について説明する。
図1において、配管1と支柱2とは、ステンレス鋼(例えばSUS321、SUS316、SUS304、などのオーステナイト系ステンレス鋼)を材料とし、鋳造により一体に成型されている。尚、支柱2は中空形状となっている。
このように、配管1と支柱2とをあらかじめ鋳造により一体に成型して配管支持構造10を形成した場合、溶接工程で生じるような部材間の微細な隙間は発生しない。これにより、海塩粒子が隙間に入り込んで蓄積すること防ぐことができる。また、中空の支柱2の空洞内(図5における空洞位置112に該当)に海塩粒子が流れ込むことも防止できる。したがって、応力腐食割れの原因となる、環境因子を排除することができる。
また、このように、配管1と支柱2とを、あらかじめ鋳造により一体に成型することにより、温度ムラや冷却工程によって発生する、溶接部付近の残留応力の発生を抑制することができる。したがって、応力腐食割れの原因となる、応力因子を排除することができる。
尚、鋳造により一体成型して形成される配管支持構造10においても、鋳造工程における冷却によって残留応力が発生する場合がある。これを除去するために、一体成型した配管支持構造1を、850℃以上の炉内で再度熱処理をしてもよい。これにより、残留応力をより効果的に排除することができる。
これらの結果として、本実施形態における配管支持構造10においては、環境因子及び応力因子が排除され、特殊な態様の応力腐食割れの発生を防ぐことができる。すなわち、前述した一般的な配管支持構造110の使用時においては、溶接位置111及び空洞位置112の領域には、雨水などにより流れてきた海塩粒子などが堆積及び濃縮することがある。しかしながら、本実施の形態によれば、海塩粒子などの接合部への入り込みを防止することで、このような応力因子を解消することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る配管支持構造及びその形成方法について、図2を用いて説明する。
本実施形態に係る配管支持構造を形成するためには、まず、配管1aと支柱2aとを、溶接部3において溶接する。さらにその後、炉4において全体を熱し、溶体化処理を施し、これによって配管支持構造10aを形成することができる。
配管1及び支柱2を溶接により接合した場合、溶接部3の周囲にはステンレス鋼が鋭敏化した組織が発生することがある。本実施の形態によれば、溶体化処理を施すことにより配管支持構造10aを形成するので、ステンレス鋼から析出したクロム炭化物を、結晶粒内に再度溶け込ませることができる。この処理の結果、鋭敏化した組織の耐食性を再度回復することができる。
溶体化処理における加熱の条件としては、例えば、SUS304を用いた厚さ約2.5mmの配管に、SUS304を用いた厚さ約2.5mmの支柱を溶接した配管支持構造の場合、1000℃から1200℃の温度で約60分程度加熱することが望ましい。また、溶体化処理の冷却過程においては、SUS304が鋭敏化する温度領域である450℃〜850℃を極力早く脱するために、ブロワ―などを設けて強制的に冷却することが好ましい。
[第3の実施形態]
図3を用いて、第3の実施形態に係る配管支持構造について説明する。尚、本第3の実施形態は、第1の実施形態(図1)の変形例であるため、同一部分、又は、類似部分については、同一符号を付して、重複する説明を省略する。
図3は、第3の実施形態における、配管支持構造20と、その形成方法を示している。
まず、図3の形態では、配管21と支柱22を鋳造により一体に成型している。このとき、支柱22の長さLは、少なくとも50mmより長くなっている。ここでいう「長さ」とは、配管21との接続部分から、支柱22の軸方向の端部までの距離を意味している。また、ここでいう接続部分とは、配管21の外壁と支柱22の境界のうちすべての箇所を意味している。
本実施形態に係る配管支持構造20は、支柱22における配管とは逆の端部25に、例えばさらに支柱の延長部材26を溶接することを想定している。本実施の形態では、長さLを少なくとも50mmとすることで、配管21への熱の伝わりを緩和している。この場合、この延長部材の溶接時に、熱が支柱22を伝って配管21に到達することを緩和できる。これにより、ステンレス組織の鋭敏化を防ぎ、応力腐食割れの材料因子を排除することができる。
[第4の実施形態]
図4を用いて、第4の実施形態に係る配管支持構造について説明する。尚、本第4の実施形態は、第2の実施形態(図2)及び図3の実施形態(図3)の変形例であるため、同一部分、又は、類似部分については、同一符号を付して、重複する説明を省略する。
図4は、第4の実施形態における、配管支持構造30と、その形成方法を示している。
まず図4では、配管31と支柱32を、溶接部33において、溶接により接合している。このとき、支柱32の長さLは、図3の場合と同様、少なくとも50mmより長くなっている。さらに、炉4内で、溶体化処理を施している。これにより、形成した配管支持構造30から、溶接により生じた残留応力を除去している。
配管31と支柱32との溶接時に、大きな熱エネルギーが、溶接部3の周囲に伝わった場合、溶接部3付近で部材の変形が生じてしまうことがある。この変形により、材料の内部に応力が発生してしまい、応力腐食割れの応力因子となってしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態のように、溶体化処理を施すことにより、変形により生じた応力を除去することができるため、応力因子を解消することができる。
本実施形態における配管支持構造30においても、支柱32における配管とは逆の端部35に、例えばさらに支柱の延長部材36を溶接することを想定している。この場合、この延長部材の溶接時に、熱が支柱32を伝って配管32に到達することがある。これにより、ステンレス組織の鋭敏化が生じてしまい、応力腐食割れの材料因子となりうるため、望ましくない。しかしながら、本実施形態のように、長さLを少なくとも50mmとすることで、配管31への熱の伝わりを緩和することで、これを防ぐことができる。
[その他の態様]
前述した実施形態の説明は、本発明に係る配管支持構造を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は前述した実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態では、配管の曲折部の外側に支柱を取り付けたが、曲折部の内側に取り付ける構成であっても良い。また、支柱は垂直に取り付けるものに限らず、水平方向や斜め方向に取り付けたものでもよい。また、本実施形態では、支柱は配管を下方向から支持する構成を用いて説明しているが、上方向から支える構成であってもよい。
また、配管及び支柱の断面形状は、円形に限らず、角形等、その他の形状であってもよい。尚、中空の支柱の代わりに内部に空洞を持たない支柱を取り付けてもよい。また、配管の肉厚は、約1mmから約50mm程度であってもよく、同様に、支柱の肉厚は約1mmから約500mm程度であってもよい。
1 配管
1a 配管
2 支柱
2a 支柱
3 溶接部
4 炉
10 配管支持構造
10a 配管支持構造
20 配管支持構造
20a 配管支持構造
21 配管
22 支柱
25 端部
26 延長部材
30 配管支持構造
31 配管
32 支柱
33 溶接部
35 端部
36 延長部材
100 配管支持構造
101 配管
102 支柱
103 溶接部
107 亀裂
108 亀裂
111 溶接位置
112 空洞位置
L 長さ

Claims (6)

  1. 海塩粒子が存在する屋外プラント用の配管支持構造であって、屋外の配管と、前記配管を下方向から支持し、前記配管の曲折部の外側に接続した中空の柱状支持部材とを備え、前記支持部材は、一端の外周が前記配管の曲折部に接続しており、前記配管と前記柱状支持部材は、鋳造により一体に成型されており、前記配管及び柱状支持部材がオーステナイト系ステンレス鋼からなり、前記配管の肉厚が1〜50mmであり、前記支持部材の肉厚が1〜500mmであり、前記柱状支持部材が前記配管との接続部分の最下部から下方向に少なくとも50mmの長さを有する配管支持構造。
  2. 海塩粒子が存在する屋外プラント用の配管支持構造であって、屋外の配管と、前記配管を下方向から支持し、前記配管の曲折部の外側に接続した中空の柱状支持部材とを備え、前記支持部材は、一端の外周が前記配管の曲折部に溶接されており、前記溶接された溶接部は、溶体化処理が成されており、前記配管及び柱状支持部材がオーステナイト系ステンレス鋼からなり、前記配管の肉厚が1〜50mmであり、前記支持部材の肉厚が1〜500mmであり、前記柱状支持部材が前記配管との溶接部の最下部から下方向に少なくとも50mmの長さを有する配管支持構造。
  3. 前記柱状支持部材の他端に溶接された延長部材を更に備え、前記延長部材がオーステナイト系ステンレス鋼からなる請求項1又は請求項2に記載の配管支持構造。
  4. 前記配管と前記柱状支持部材とを鋳造により一体に成型する、請求項1に記載の配管支持構造の形成方法。
  5. 海塩粒子が存在する屋外プラント用の配管支持構造を形成する方法であって、屋外の配管の曲折部の外側に、前記配管を下方向から支持するための中空の柱状支持部材の一端の外周を溶接し、前記溶接された溶接部に、さらに溶体化処理を施し、前記配管及び柱状支持部材がオーステナイト系ステンレス鋼からなり、前記配管の肉厚が1〜50mmであり、前記支持部材の肉厚が1〜500mmであり、前記柱状支持部材が前記配管との溶接部の最下部から下方向に少なくとも50mmの長さを有する、配管支持構造の形成方法。
  6. 前記溶体化処理の後、前記柱状支持部材の他端に延長部材を溶接する処理を更に備え、前記延長部材がオーステナイト系ステンレス鋼からなる請求項5に記載の配管支持構造の形成方法。
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