JP6805221B2 - 有機el表示パネル、有機el表示装置、および、その製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた有機EL表示パネル、及び、それを用いた有機EL表示装置に関する。
近年、表示装置に有機EL素子を利用したものが普及しつつある。
有機EL素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも発光層が挟まれた構造を有している。現在、発光層や機能層を効率よく形成する方法として、機能性材料を含むインクをインクジェット法等のウェットプロセスで塗布して形成することが行われている。ウェットプロセスでは、真空蒸着装置と比較して製造装置が小型化することができ、また、機能性材料を蒸着する際に使用するシャドウマスクを使用する必要がない。そのため、シャドウマスクの位置合わせ等の作業が必要なく、大型パネルの生成や量産性を考慮したパネルサイズを混合したような大型基板の製造も容易となり、効率の良いパネル生成に適した特徴がある。また蒸着法と異なり、インクジェット法では、高価な発光材料等の機能性材料の使用効率が向上することより、パネル製造コストの低減が可能となる。
一方、発光層および機能層を形成するための発光材料や機能性材料を溶解したインクを塗り分け印刷するためにはバンクと呼ばれるサブピクセルごとに形成した隔壁が必要となる。機能性材料を含むインクが隔壁を乗り越えることによる混合、特に、発光材料を含むインクの場合、発色の異なるインクの混合による混色が発生すると、パネル不良の原因となるため、隔壁頂部表面には撥液性が付与されている。
特開2016−181498号公報
一般には、隔壁頂部のみならず、それに続く側壁部の上部においても、撥液性が付与されることとなる。しかしながら、側壁部の上部に撥液性が付与されていると、側壁部分のうち親液部分がインクで濡れる一方、撥液部分にはインクが付着しない。そして、インクが乾燥するとき、親液部分に付着したインクは液面の高さに係らず移動しないため、側壁部の親液部分と撥液部分との界面に機能層の端部がピンニングされる現象が生じる。このピンニング位置と機能層中央部の高さとの間に段差が存在していると、機能層の膜厚むらが発生する。ピンニング位置の調整方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、隔壁の側壁部に撥液部分を付加する方法がある。しかしながら、この方法では、隔壁の形成後に撥液部分を後付けする必要があり、また、隔壁の高さがピンニング位置に係らず一定となるため、隔壁の高さが必ずしも機能層の膜厚やインクの量に対して適切であるとは限らない。
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、発光層と機能層とのうち少なくとも1層を塗布法で形成する有機EL表示パネルにおいて好適な膜厚制御がなされた有機EL表示パネル、および、その製造方法を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、前記基板の上方に行列状に配される複数の画素電極と、前記基板の上方に配され、行方向における前記画素電極の間隙上に列方向に延伸する複数の隔壁と、行方向に隣接する前記隔壁間の複数の間隙から選択される第1間隙において、前記画素電極の上方に配される第1発光層と、前記第1間隙に行方向に隣接する第2間隙において、前記画素電極の上方に配される第2発光層と、前記第1発光層の上方および前記第2発光層の上方に配される対向電極とを備え、前記第1発光層の膜厚は、前記第2発光層の膜厚より厚く、前記第1間隙と前記第2間隙との間に存在する隔壁のうち、前記第1間隙側にある第1隔壁部分の高さは、前記第2間隙側にある第2隔壁部分の高さより高く、前記第1隔壁部分の側壁部と前記第1発光層とが接する第1ピンニング位置は、前記第2隔壁部分の側壁部と第2発光層とが接する第2ピンニング位置よりも高い。
上記態様の有機EL表示パネルによれば、第1発光層、第2発光層のいずれも、膜厚に応じたピンニング位置を有する構成となるため、好適な膜厚制御がなされた有機EL表示パネルを実現できる。
実施の形態に係る有機EL表示パネル100の構成を模式的に示す断面図である。 実施の形態に係る有機EL表示パネル100の構成を模式的に示す平面図である。 実施の形態および比較例のそれぞれにおいて発光層が形成された状態を示す部分断面図である。 実施の形態に係る隔壁141、142、143の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図である。 実施の形態に係る隔壁141、142、143の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図である。 実施の形態に係る隔壁141、142、143の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図である。 実施の形態に係る隔壁141、142、143の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図である。 実施の形態に係る隔壁141、142、143の製造過程を示すフローチャートである。 実施の形態に係る有機EL表示パネル100の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、基材上にTFT層が形成された状態を示す部分断面図である。(b)は、TFT層上に層間絶縁層が形成された状態を示す部分断面図である。(c)は、層間絶縁層上に画素電極材料層が形成された状態を示す部分断面図である。(d)は、画素電極材料層がパターニングされて画素電極が形成された状態を示す部分断面図である。(e)は、画素電極および層間絶縁層上に隔壁が形成された状態を示す部分断面図である。 実施の形態に係る有機EL表示パネル100の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、隔壁の開口部内に正孔注入層が形成された状態を示す部分断面図である。(b)は、隔壁の開口部内に正孔輸送層が形成された状態を示す部分断面図である。(c)は、隔壁の開口部内において発光層が形成された状態を示す部分断面図である。 実施の形態に係る有機EL表示パネル100の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、隔壁上および発光層上に電子輸送層が形成された状態を示す部分断面図である。(b)は、電子輸送層上に電子注入層が形成された状態を示す部分断面図である。(c)は、電子注入層上に対向電極が形成された状態を示す部分断面図である。(d)は、対向電極上に封止層が形成された状態を示す部分断面図である。 実施の形態に係る有機EL表示パネル100の製造過程を示すフローチャートである。 変形例に係る隔壁141、142、143の構造を模式的に示す部分断面図である。 実施の形態に係る有機EL表示装置の概略構成を示す模式ブロック図である。
<本開示の一態様に至った経緯>
塗布方式で発光層や機能層を形成する場合、材料を溶解したインクを、隔壁間隙に塗布する。上述したように、隔壁の頂部や側壁部の上部は、インクの乗り越えを防ぐために撥液性が付与されているため、側壁部のうち撥液部分には塗布されたインクが付着しない。一方で、側壁部の親液部分に付着したインクは乾燥後も下がることなく残るため、発光層や機能層と、側壁部との接点が、撥液部分と親液部分の界面に固定される(ピンニングされる)こととなる。
隔壁を形成する際、一般に、親液部分と撥液部分が同時に形成される。具体的には、フッ素系やシリコーン系の撥液性を有する界面活性剤を、親液性のアクリル系、メタクリル系、ポリイミド系、フェノール系などのフォトレジストに添加し、これを塗布、マスク露光、現像、焼成する。このような形成工程により、撥液性を有する界面活性剤の濃度は上部が高く下部が低くなるため、頂部を含む隔壁上部が撥液性を、隔壁下部が親液性を、それぞれ有することとなる。撥液部分と親液部分の界面、すなわち、ピンニング位置は、隔壁の高さと、撥液性を有する界面活性剤の添加量に依存する。
一方で、発光層や機能層の膜厚は、発光層の発光機能、機能層のキャリア注入機能や輸送機能、ブロック機能などといった機能の発揮、光透過性、光共振器構造を実現するための厚みなどといった各種の要件により定まる。そのため、発光層の発光色が異なる有機EL素子については最適な膜厚も異なることが多い。他方、上述したようにピンニング位置の高さと発光層や機能層の上面の高さとの間に段差があると発光層や機能層の膜厚にむらが発生する。したがって、発光色ごとにピンニング位置を変える必要が生じる。例えば、図3(a)の模式断面図に示すように、同一の材料を用いて同一の高さの隔壁814を形成すると、撥液部分842が形成される高さの範囲が同一となる。そうすると、発光層の膜厚に係らずピンニングの位置が同一となるため、発光層の膜厚にむらが発生する。具体的には、発光層917aの膜厚に対してピンニングの位置が高いため、発光層917aの上面が凹面状となる、発光層917bの膜厚に対してピンニングの位置が低いため、発光層917bの上面が凸面状となる、といった事態が発生する。
この問題を解決する方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、撥液部分の高さの制御を行うことが考えられる。しかしながら、隔壁の高さを変えずにピンニング位置のみを制御する場合、ピンニング位置が隔壁に対して高すぎるとインクの乗り越えを抑止できないため、図3(b)の模式断面図に示すように、膜厚が最も厚い発光層927bに合わせて隔壁824a、824b、824cの高さを設定する必要がある。そうすると、発光層927aを区画する2つの隔壁824a、824bは発光層927aの膜厚に対して高すぎることとなる。また、隔壁824aの撥液部分843a、隔壁824bの撥液部分843b、隔壁824cの撥液部分843cはいずれも、隣接する2つの発光層に対して同一構造となっていないため、隔壁の親液部分と撥液部分の一体形成が困難である。
発明者は、隔壁の親液部分と撥液部分の一体形成を行いつつ、ピンニング位置および隔壁の高さを適切に設計できた有機EL表示パネルについて検討し、本開示に至ったものである。
<開示の態様>
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、前記基板の上方に行列状に配される複数の画素電極と、前記基板の上方に配され、行方向における前記画素電極の間隙上に列方向に延伸する複数の隔壁と、行方向に隣接する前記隔壁間の複数の間隙から選択される第1間隙において、前記画素電極の上方に配される第1発光層と、前記第1間隙に行方向に隣接する第2間隙において、前記画素電極の上方に配される第2発光層と、前記第1発光層の上方および前記第2発光層の上方に配される対向電極とを備え、前記第1発光層の膜厚は、前記第2発光層の膜厚より厚く、前記第1間隙と前記第2間隙との間に存在する隔壁のうち、前記第1間隙側にある第1隔壁部分の高さは、前記第2間隙側にある第2隔壁部分の高さより高く、前記第1隔壁部分の側壁部と前記第1発光層とが接する第1ピンニング位置は、前記第2隔壁部分の側壁部と第2発光層とが接する第2ピンニング位置よりも高い。
また、本開示の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板を準備する工程と、前記基板の上方において、行列状に複数の画素電極を形成する工程と、前記基板の上方において、行方向に前記画素電極を区画するように、列方向に沿って隔壁を複数形成する工程と、行方向に隣接する前記隔壁間の複数の間隙から選択される第1間隙に、発光材料を含むインクを塗布して第1発光層を形成する工程と、前記第1間隙に行方向に隣接する第2間隙に、発光材料を含むインクを塗布して、前記第1発光層の膜厚より薄い膜厚を有する第2発光層を形成する工程と、前記第1発光層および前記第2発光層の上方に対向電極を形成する工程とを含み、前記隔壁を複数形成する工程において、前記第1間隙に隣接する第1隔壁部分の高さを、前記第2間隙に隣接する第2隔壁部分の高さより高く形成し、前記第1隔壁部分の前記第1間隙に面する側壁部と、前記第2隔壁部分の前記第2隔壁に面する側壁部とに、それぞれ、頂部から続く撥液部分を形成する。
上記態様の有機EL表示パネル、または、上記態様の製造方法によれば、第1発光層、第2発光層のいずれも、膜厚に応じたピンニング位置を有する構成となるため、好適な膜厚制御がなされた有機EL表示パネルを実現できる。
また、上記態様に係る有機EL表示パネル、または、上記態様の製造方法において、以下のようにしてもよい。
前記第1ピンニング位置は前記第1隔壁部分の高さに依拠した高さを有し、前記第2ピンニング位置は前記第2隔壁部分の高さに依拠した高さを有する、としてもよい。
これにより、間隙ごとに隔壁部分の高さとピンニングの位置とを連動して間隙内に形成される発光層や機能層に合わせて最適化することができ、発光層や機能層の膜厚を均一化させることができる。
また、前記第1ピンニング位置の高さは、前記第1隔壁部分の高さに第1の係数を乗算した高さであり、前記第2ピンニング位置の高さは、前記第2隔壁部分の高さに第2の係数を乗算した高さである、としてもよい。
これにより、間隙ごとに、その両側の隔壁部分の高さを制御することにより、ピンニングの位置を合わせて制御することができる。
また、前記第1の係数と、前記第2の係数とは異なる、としてもよい。
これにより、間隙ごとに、その両側の隔壁部分の高さとピンニング位置の高さの範囲との関係を、間隙内に形成される発光層や機能層に合わせて最適化することができる。
また、前記第1ピンニング位置の高さは、前記第1隔壁部分の高さから所定の厚みを減算した高さであり、前記第2ピンニング位置の高さは、前記第2隔壁部分の高さから前記所定の厚みを減算した高さであるとしてもよい。
これにより、ピンニング位置と隔壁頂部との高さの差を均一化することができる。
また、前記第1隔壁部分と、前記第2隔壁部分とは、それぞれ、絶縁性の樹脂材料からなり、撥液性を有する界面活性剤を含んでなる、としてもよい。
また、前記界面活性剤は、フッ素系化合物、または、シリコーン系化合物である、としてもよい。
また、前記隔壁を複数形成する工程において、前記隔壁の材料として、撥液性を有する界面活性剤を含む樹脂材料を用いる、としてもよい。
また、前記界面活性剤として、フッ素系化合物、または、シリコーン系化合物を用いる、としてもよい。
これにより、隔壁部分を一体成型することができ、隔壁の形成工程を単純化することができる。
また、前記第1隔壁部分の前記第1発光層に面する側壁部において、前記第1ピンニング位置より高い部分は、前記第1ピンニング位置より低い部分より、前記界面活性剤の含有率が高く、前記第2隔壁部分の前記第2発光層に面する側壁部において、前記第2ピンニング位置より高い部分は、前記第2ピンニング位置より低い部分より、前記界面活性剤の含有率が高い、としてもよい。
また、前記隔壁を複数形成する工程において、前記隔壁の材料として前記界面活性剤を含む樹脂材料を用い、前記隔壁のうち前記界面活性剤の含有率が所定の割合以上の部分を前記撥液部分とする、としてもよい。
これにより、隔壁部分の上部表面を撥液部分とすることができ、隔壁の形成工程を単純化することができる。
また、前記第2隔壁部分の高さは、前記第1隔壁部分の高さより高く、前記隔壁を複数形成する工程において、前記第1隔壁部分の形成を行った後、前記第2隔壁形成部分の形成を行う、としてもよい。
これにより、隔壁部分を形成する際、高さが低い他の隔壁部分の影響を小さくすることができる。
<実施の形態>
1.有機EL表示パネルの概略構成
本発明の一態様である有機EL表示パネルについて説明する。
図1は、実施の形態に係る有機EL表示パネル100の部分断面図である。有機EL表示パネル100は、3つの色(赤色、緑色、青色)を発光する有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)で構成される画素を複数備えている。
有機EL表示パネル100において、各有機EL素子1は、前方(図1における紙面上方)に光を出射するいわゆるトップエミッション型である。
有機EL素子1(R)と、有機EL素子1(G)と、有機EL素子1(B)は、ほぼ同様の構成を有するので、区別しないときは、有機EL素子1として説明する。
図1に示すように、有機EL素子1は、基板11、層間絶縁層12、画素電極13、隔壁141、142、143、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20、および、封止層21を備える。なお、基板11、層間絶縁層12、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20、および、封止層21は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル100が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
図2は、有機EL表示パネル100の模式平面図である。図2に示すように、実施の形態に係る有機EL表示パネル100は、所謂ラインバンク構造を採用している。すなわち、有機EL表示パネル100は、各々がY方向に長尺で、X方向に互いに間隔をあけて配置された複数条の隔壁141、142、143と、各々がX方向に長尺で、Y方向に互いに間隔をあけて配置された複数の副壁14bとを備える。なお、図1は、図2のA−A断面図に相当する。
隣接する一対の隔壁141、142、143と、隣接する一対の副壁14bとで規定される領域に、有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)のいずれかが形成され、そのそれぞれがサブピクセルとなる。各サブピクセルのY方向の長さは、例えば、300μmである。
以下、有機EL表示パネル100の各部構成について説明する。
<基板>
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSu)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。これらよりプロセス温度に対して耐久性を有するように選択し、1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
<層間絶縁層>
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。また、図1の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
<画素電極>
画素電極13は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素ごとに設けられ、層間絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
本実施形態においては、画素電極13は、陽極として機能する。
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
<隔壁>
隔壁141、142、143は、画素電極13の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で画素電極13上に形成されている。画素電極13上面において隔壁141、142、143で被覆されていない領域(以下、「開口部」という)は、サブピクセルに対応している。すなわち、隔壁141、142、143は、サブピクセルごとに設けられた開口部14aを有する。以下、区別する必要がある場合は、有機EL素子1(R)の開口部を開口部14aR、有機EL素子1(G)の開口部を開口部14aG、有機EL素子1(B)の開口部を開口部14aB、と表記する。
本実施の形態において、隔壁141、142、143は、画素電極13が形成されていない部分では、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、画素電極13が形成されていない部分では、隔壁141、142、143の底面は層間絶縁層12の上面と接している。
隔壁141、142、143は、正孔注入層15や正孔輸送層16、発光層17を塗布法で形成する際、塗布されたインクが隣接するサブピクセルのインクと接触しないようにするための構造物として機能する。隔壁141、142、143は、頂部とそれに続く側壁部の上部が撥液部分146、147、148であり、側壁部のうち撥液部分を除く部分が親液部分である。隔壁141、142、143は、絶縁性の樹脂材料からなる母材に、フッ素系化合物やシリコーン系化合物などの撥液性の界面活性剤が添加されてなる。絶縁性の樹脂材料である母材としては、例えば、ポジ型の感光性材料を用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。なお、母材はポジ型の感光性材料に限られず、例えば、ネガ型の感光材料を用いてもよいし、感光性でない材料を用いてもよい。
隔壁141は、開口部14aRに面する隔壁部分と、開口部14aGに面する隔壁部分とからなり、同様に、隔壁142は、開口部14aGに面する隔壁部分と、開口部14aBに面する隔壁部分からなる。同様に、隔壁143は、開口部14aBに面する隔壁部分と、開口部14aRに面する隔壁部分とからなる。隔壁部分のそれぞれは、それぞれ四角錐台状もしくはそれに類似した形状であり、断面は上方を先細りとする順テーパーの台形状もしくは上に凸のお椀状である。また、1つの開口部に面する2つの隔壁部分は、高さ、および、撥液部分の高さの範囲が同じである。
<副壁>
副壁14bは、画素電極13の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で画素電極13上に形成されている。副壁14bの延伸する方向は、隔壁141、142、143が延伸する方向と直交している。副壁14bのそれぞれは、複数の開口部14aにわたって形成されており、開口部14a内において、隣接する画素電極13を区画している。
本実施の形態において、副壁14bは、画素電極13が形成されていない部分では、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、画素電極13が形成されていない部分では、副壁14bの底面は層間絶縁層12の上面と接している。
副壁14bは、正孔注入層15や正孔輸送層16、発光層17を塗布法で形成する際、塗布されたインクの列方向(Y方向)への流動を規制するためのものである。副壁14bの形状は、四角錐台状もしくはそれに類似した形状であり、断面は上方を先細りとする順テーパーの台形状もしくは上に凸のお椀状である。また、層間絶縁層12からの副壁14bの高さは、層間絶縁層12からの隔壁141、142、143の高さよりも低い。副壁14bは、樹脂材料からなり、例えば、ポジ型の感光性材料を用いることができる。このような感光性材料として、具体的には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。なお、樹脂材料はポジ型の感光性材料に限られず、例えば、ネガ型の感光材料を用いてもよいし、感光性でない材料を用いてもよい。
<正孔注入層>
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔(ホール)の注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。正孔注入層15の材料の具体例としては、例えば、PEDOT/PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料が挙げられる。
なお、正孔注入層15は、遷移金属の酸化物で形成してもよい。遷移金属の具体例としては、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などである。遷移金属は複数の酸化数を取るため、複数の準位を取ることができ、その結果、正孔注入が容易になり、駆動電圧の低減に寄与するからである。この場合、正孔注入層15は、大きな仕事関数を有することが好ましい。
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有し、正孔を正孔注入層15から発光層17へと効率よく輸送するため、正孔移動度の高い有機材料で形成されている。正孔輸送層16の形成は、有機材料溶液の塗布および乾燥により行われる。正孔輸送層16を形成する有機材料としては、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物を用いることができる。
また、正孔輸送層16はトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンゼン誘導体を用いて形成されてもよい。特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物等を用いてもよい。この場合、正孔輸送層16は、真空蒸着法により形成される。なお、正孔輸送層16の材料および製造方法は上述のものに限られず、正孔輸送機能を有する任意の材料を用いてよく、正孔輸送層16の製造に用いることのできる任意の製造方法で形成されてよい。
<発光層>
発光層17は、開口部14a内に形成されている。発光層17は、正孔と電子の再結合によりR、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層17の材料としては、公知の材料を利用することができる。
発光層17に含まれる有機発光材料としては、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質を用いることができる。また、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の公知の燐光物質を用いることができる。また、発光層17は、ポリフルオレンやその誘導体、ポリフェニレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物等、もしくは前記低分子化合物と前記高分子化合物の混合物を用いて形成されてもよい。
<電子輸送層>
電子輸送層18は、複数の画素に共通して発光層17および隔壁141、142、143上に形成されており、対向電極20から注入された電子を発光層17へと輸送する機能を有する。電子輸送層18は、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
<電子注入層>
電子注入層19は、電子輸送層18上に複数の画素に共通して設けられており、対向電極20から発光層17への電子の注入を促進させる機能を有する。
電子注入層19は、例えば、電子輸送性を有する有機材料に、電子注入性を向上させる金属材料がドープされてなる。ここで、ドープとは、金属材料の金属原子または金属イオンを有機材料中に略均等に分散させることを指し、具体的には、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相を形成することを指す。なお、それ以外の相、特に、金属片や金属膜など、金属材料のみからなる相、または、金属材料を主成分とする相は、存在していないことが好ましい。また、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相において、金属原子または金属イオンの濃度は均一であることが好ましく、金属原子または金属イオンは凝集していないことが好ましい。金属材料としては、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属から選択されることが好ましく、BaまたはLiがより好ましい。本実施の形態では、Baが選択される。また、電子注入層19における金属材料のドープ量は5〜40wt%が好ましい。本実施の形態では、20wt%である。電子輸送性を有する有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
なお、電子注入層19は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される金属のフッ化物層を発光層17側に有していてもよい。
<対向電極>
対向電極20は、複数の画素に共通して電子注入層19上に形成されており、陰極として機能する。
対向電極20は、透光性と導電性とを兼ね備えており、金属材料で形成された金属層、金属酸化物で形成された金属酸化物層のうち少なくとも一方を含んでいる。透光性を確保するため、金属層の膜厚は1nm〜50nm程度である。金属層の材料としては、例えば、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム−銀合金(MgAg)、インジウム−銀合金が挙げられる。Agは、基本的に低抵抗率を有し、Ag合金は、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できる点で好ましい。Al合金としては、マグネシウム−アルミニウム合金(MgAl)、リチウム−アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。その他の合金として、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金が挙げられる。金属酸化物層の材料としては、例えば、ITO(酸化インジウム錫)、IZO(酸化インジウム亜鉛)が挙げられる。
陰極は、金属層単独、または、金属酸化物層単独で構成してもよいが、金属層の上に金属酸化物層を積層した積層構造、あるいは金属酸化物層の上に金属層を積層した積層構造としてもよい。
<封止層>
対向電極20の上には、封止層21が設けられている。封止層21は、基板11の反対側から不純物(水、酸素)が対向電極20、電子注入層19、電子輸送層18、発光層17等へと侵入するのを防ぎ、不純物によるこれらの層の劣化を抑制する機能を有する。封止層21は、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
本実施の形態においては、有機EL表示パネル100がトップエミッション型であるため、封止層21は光透過性の材料で形成されることが必要となる。
<その他>
なお図1には示されないが、封止層21の上に、封止樹脂を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。上部基板を貼り合せることによって、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20を水分および空気などから保護できる。
<実施の形態に係る隔壁の効果>
以下、模式図を用いて、実施の形態に係る隔壁141、142と、他の構造を有する隔壁との差異について説明する。図3は、実施例および比較例における発光層材料の塗布過程を示す模式断面図である。なお、図中の左右方向はX方向、上下方向はZ方向に対応する。
図3(a)は、全ての隔壁814について高さを同じくし、撥液部分842が形成される高さの範囲を同一とした場合の模式断面図である。全ての隔壁814について同一の材料を用い、同一の工程で形成すると、このような隔壁の構成となる。このとき、発光層の膜厚に係らずピンニングの位置が同一となる。したがって、発光層917aの膜厚に対してピンニングの位置が高いと、図3(a)の発光層917aのように、上面が凹面状となり、膜厚が隔壁に近づくほど厚くなる。一方で、発光層917aの膜厚に対してピンニングの位置が低いと、図3(b)の発光層917bのように、上面が凸面状となり、膜厚が隔壁に近づくほど薄くなる。したがって、発光層の膜厚を均一にするためには、ピンニングの位置と発光層の膜厚が一致している必要があり、発光色に合わせて膜厚を調整することができない。
図3(b)は、全ての隔壁824a、824b、843cについて高さを同じくする一方で、撥液部分843a、843b、843cが形成される高さの範囲を、各開口部に形成される発光層の膜厚に合わせて制御した場合の模式断面図である。このとき、ピンニングの位置は開口部ごとに制御することが可能であるため、発光層の膜厚を任意に設計しつつ、かつ、発光層の膜厚を均一にすることができる。その一方で、例えば隔壁824bに着目した場合、発光層927a側の側壁部における撥液部分843bの範囲と、発光層927b側の側壁部における撥液部分843bの範囲が異なる。隔壁824bと撥液部分843bの一体形成ではこのような構造を作るのは困難である。また、全ての開口部においてインクの溢れを抑止するためには、隔壁の高さを最もインク量の多い開口部に合わせて設計する必要があるため、インク量の少ない開口部では、隔壁が過度に高くなる課題も存在する。
これに対し、実施の形態に係る隔壁では、図3(c)の模式断面図に示すように、隔壁141、142において、発光層17aが形成される開口部に面する隔壁部分14pと、発光層17bが形成される開口部に面する隔壁部分14qとの高さが異なる。したがって、発光層17aが形成される開口部については、開口部に面する2つの隔壁部分14pの高さ、および、撥液部分146p、147pの高さの範囲を、発光層17aに合わせて設計することができる。一方で、発光層17bが形成される開口部については、開口部に面する2つの隔壁部分14qの高さ、および、撥液部分146q、147qの高さの範囲を、発光層17bに合わせて設計することができる。したがって、いずれの開口部に対しても、隔壁の開口部に面する側壁部は、開口部に形成される発光層または機能層の特性に合わせて設計が可能となる。さらに、1つの開口部に面する2つの隔壁部分は、隔壁部分の高さも撥液部分の高さの範囲も同一であるため、同種の発光層または機能層に面する複数の隔壁部分を、撥液部分を含めて一度に成型することができる。また、2つの隔壁部分14p、14qはそれぞれ、材料の塗布、パターニング、現像の処理を隔壁部分の高さの種類だけ繰り返すだけで形成できるため、親液部分を形成した後に撥液部分をパターニング形成するよりも作成工程を単純化することができる。
以上説明したように、実施の形態に係る隔壁は、発光層および/または機能層を塗布法で形成時、インクをあふれ出させない構造物として好適である上、膜厚を均一化して有機EL素子の特性向上においても好適である。
2.有機EL表示パネル100の製造方法
<隔壁の製造方法>
次に、有機EL表示パネル100の製造方法について、図面を用い説明する。
まず、隔壁141、142、143の製造方法について、詳細に説明する。図4から図7は、隔壁141、142、143の製造における各工程での状態を示す模式断面図である。図8は、隔壁141、142、143の製造方法を示すフローチャートである。
なお、本実施の形態では、発光層の膜厚は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層の順に膜厚が大きくなるものとする。
(1)第1隔壁材料層140Rの形成
図9(a)〜(d)に示すように、基板11上に層間絶縁層12、画素電極13を形成する(詳細は後述する)。
次に、図4(a)に示すように、層間絶縁層12と画素電極13とを覆うように、第1隔壁材料層140Rを形成する(ステップS210)。第1隔壁材料層140Rは、例えば、ネガ型の感光性材料であるアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂に、撥液性を有する界面活性剤であるフッ素化合物が添加されて用いられる。具体的には、例えば、隔壁用樹脂であるフェノール樹脂とフッ素化合物とを溶媒(例えば、PGMEAや乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を画素電極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。
(2)第1隔壁材料層140Rの成形
次に、図4(b)に示すように、フォトマスク201を用いて第1隔壁材料層140Rをパターン露光する(ステップS220)。続けて、図4(c)に示すように、現像によって未硬化の第1隔壁材料層140Rを取り除くことで(ステップS230)、開口部14aRに面する隔壁部分143Rを形成する。
(3)第2隔壁材料層140Gの形成
次に、図5(a)に示すように、層間絶縁層12と画素電極13とを覆うように、第2隔壁材料層140Gを形成する(ステップS240)。第2隔壁材料層140Gの材料としては、例えば、第1隔壁材料層140Rの材料と同様の材料を用いることができる。
(4)第2隔壁材料層140Gの成形
次に、図5(b)に示すように、フォトマスク202を用いて第2隔壁材料層140Gをパターン露光する(ステップS250)。続けて、図5(c)に示すように、現像によって未硬化の第2隔壁材料層140Gを取り除くことで(ステップS260)、開口部14aGに面する隔壁部分143Gを形成する。
(5)第3隔壁材料層140Bの形成
次に、図6(a)に示すように、層間絶縁層12と画素電極13とを覆うように、第3隔壁材料層140Bを形成する(ステップS270)。第3隔壁材料層140Bの材料としては、例えば、第1隔壁材料層140Rの材料と同様の材料を用いることができる。
(6)第3隔壁材料層140Bの成形
次に、図6(b)に示すように、フォトマスク203を用いて第3隔壁材料層140Bをパターン露光する(ステップS280)。続けて、図6(c)に示すように、現像によって未硬化の第3隔壁材料層140Bを取り除くことで(ステップS290)、開口部14aBに面する隔壁部分143Bを形成する。
(7)隔壁層の焼成
最後に、焼成を行うことで、隔壁141、142、143が完成する(ステップS295)。焼成は、例えば、150℃以上250℃以下の温度で60分間行う。
なお、ここでは、第1隔壁材料層140R、第2隔壁材料層140G、第3隔壁材料層140B全ての成形が終了してから一括して焼成を行うとしたが、成形の都度、すなわち、上記(2)の終了後(3)の開始前、(4)の終了後(5)の開始前、(6)の終了後のそれぞれにおいて焼成を行う、としてもよい。このようにすることで、焼成プロセスの回数が増加する反面、例えば、未焼成の隔壁部分143Rが第2隔壁部分143Gを形成するときの現像プロセスによる影響を受けることを抑止することができる。
以上の工程により、図7に示すように、隔壁141、142、143が完成する。このとき、隔壁141の撥液部分146は、開口部14aRに面する撥液部分146Rと開口部14aGに面する撥液部分146Gとを含む。同様に、隔壁142の撥液部分147は、開口部14aGに面する撥液部分147Gと開口部14aBに面する撥液部分147Bとを含む。同様に、隔壁143の撥液部分148は、開口部14aBに面する撥液部分148Bと開口部14aRに面する撥液部分148Rとを含む。開口部14aRに面する両側の撥液部分に着目すると、撥液部分148Rと撥液部分146Rとは、いずれも隔壁部分143Rの一部として形成されたものであるため、その高さの範囲は同一となる。同様に、開口部14aGに面する撥液部分146Gと撥液部分147Gとは、いずれも隔壁部分143Gの一部として形成されたものであるため、その高さの範囲は同一となる。同様に、開口部14aBに面する撥液部分147Bと撥液部分148Bとは、いずれも隔壁部分143Bの一部として形成されたものであるため、その高さの範囲は同一となる。
なお、上記説明では隔壁部分143R、143G、143Bの順で形成したが、隔壁部分の形成時の順はこれに限られない。
このように、本実施形態に係る有機EL表示パネル100においては、隔壁のうち開口部に面する隔壁部分の高さが開口部ごとに異なり、かつ、隔壁部分の側壁部は頂部に続く撥液部分を有することを特徴とする。この特徴により、隔壁部分の高さも、撥液部分の高さの範囲によって規定されるピンニング位置も開口部ごとに設計されるため、均質な膜厚の機能層や発光層を形成することができる。
<有機EL表示パネルの製造方法>
次に、有機EL表示パネル100全体の製造方法について、図面を用い説明する。図9から図11は、有機EL表示パネル100の製造における各工程での状態を示す模式断面図である。また、図12は、有機EL表示パネル100の製造方法を示すフローチャートである。
(1)基板11の作成
まず、図9(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成する(ステップS1)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
次に、図9(b)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(ステップS2)。層間絶縁層12は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
次に、層間絶縁層12における、TFT層のソース電極上の箇所にドライエッチングを行い、コンタクトホールを生成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出されるように形成される。
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
(2)画素電極13の作成
次に、図9(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する(ステップS3)。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
そして、図9(d)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の画素電極13を形成する(ステップS4)。
(3)副壁14bの作成
次に、画素電極13および層間絶縁層12上に、副壁14bの材料である副壁用樹脂を塗布し、副壁材料層を形成する(ステップS5)。副壁樹脂には、例えば、ポジ型の感光性材料であるフェノール樹脂が用いられる。副壁材料層は、フェノール樹脂を溶媒に溶解させた溶液を画素電極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。そして、副壁材料層にパターン露光と現像を行うことで副壁14bを形成する。
(4)隔壁141、142、143の作成
次に、図9(e)に示すように、画素電極13および層間絶縁層12上に、隔壁141、142、143を形成する(ステップS6)。詳細については図8のステップS210から295として上述したのでここでは説明を省略する。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。
なお、ここでは副壁14bの焼成は、隔壁141、142、143の焼成工程(ステップ6、詳細には図8のステップS295)で行うとしたが、(3)の終了後(4)の開始前に、副壁14bのみを焼成してもよい。都度焼成を行うとプロセス回数が増える反面、形成済みかつ未焼成の隔壁141、142、143や副壁14bが現像プロセス等の影響を受けづらくすることができる。
(5)正孔注入層の成膜
次に、図10(a)に示すように、隔壁141、142、143および副壁14bが規定する開口部14aに対し、正孔注入層15の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド401のノズル4030から吐出して開口部14a内の画素電極13上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔注入層15を形成する(ステップS7)。
(6)正孔輸送層の成膜
次に、図10(b)に示すように、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド402のノズル4031から吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔輸送層16を形成する(ステップS8)。
(7)発光層の成膜
次に、図10(c)に示すように、発光層17の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド403のノズル4032から吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、発光層17を形成する(ステップS9)。
(8)電子輸送層の成膜
次に、図11(a)に示すように、発光層17上および隔壁141、142、143上に、電子輸送層18を構成する材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して成膜し、電子輸送層18を形成する(ステップS10)。
(9)電子注入層の成膜
次に、図11(b)に示すように、電子輸送層18上に、電子注入層19を構成する材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して成膜し、電子注入層19を形成する(ステップS11)。
(10)対向電極の成膜
次に、図11(c)に示すように、電子注入層19上に、対向電極20を構成する材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して成膜し、対向電極20を形成する(ステップS12)。
(11)封止層の成膜
最後に、図11(d)に示すように、対向電極20上に、封止層を形成する材料をCVD法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して成膜し、封止層21を形成する(ステップS13)。
以上の工程を経ることにより有機EL表示パネル100が完成する。
なお、封止層21の上にカラーフィルタや上部基板を載置し、接合してもよい。
3.有機EL表示装置の全体構成
図14は、有機EL表示パネル100を備えた有機EL表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。図14に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを含む構成である。駆動制御部200は、4つの駆動回路210〜240と、制御回路250とから構成されている。
なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
4.変形例
(1)上記実施の形態においては、全ての隔壁を同様の材料で形成する場合について説明した。しかしながら、以下のような実施の形態であってもよい。例えば、各隔壁部分の材料について、隔壁部分の体積が大きいほど界面活性剤の含有率が少なくなるように、隔壁部分の材料における界面活性剤の添加量を変化させる。このようにすると、図13(a)の模式断面図に示すように、各隔壁部分の高さがhR、hG、hBと変化させる一方で、いずれの隔壁部分においても撥液部分の高さの範囲をhaと一定とすることができる。
また、例えば、隔壁部分ごとに、形成する材料や添加物の比率を変化させることで、それぞれの高さおよび撥液部分の高さを任意に設計することができる。例えば、図13(b)の模式断面図に示すように、開口部14aRに面する隔壁部分の高さhRおよび撥液部分の高さの範囲hr、開口部14aGに面する隔壁部分の高さhGおよび撥液部分の高さの範囲hg、開口部14aBに面する隔壁部分の高さhBおよび撥液部分の高さの範囲hb、を、それぞれ独立に設計してもよい。
(2)上記実施の形態においては、R、G、Bのそれぞれに発光する3種類の発光層を設けた有機EL表示パネルについて説明したが、発光層の種類は2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。ここで、発光層の種類とは発光層や機能層の膜厚のバリエーションを指すものであり、同一の発光色であっても発光層や機能層の膜厚が異なる場合は、種類が異なる発光層と考えてよい。また、発光層の配置についても、RGBRGB…の配置に限られず、RGBBGRRGB…の配置であってもよいし、画素と画素との間に補助電極層やその他の非発光領域を設けてもよい。このとき、両側の発光層の種類が同一である隔壁については、一方の開口部に面する隔壁部分と他方の開口部に面する隔壁部分とが同一構造である、従来構成の隔壁であってもよい。また、片側のみに発光層が設けられる隔壁については、従来構成の隔壁であってもよいし、または、発光層が設けられる開口部に面する隔壁部分のみを有し、発光部が設けられない側の構造を有さない隔壁であってもよい。
(3)上記実施の形態においては、有機EL素子1において正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17は全て塗布法により形成されるとしたが、少なくとも1つが塗布法で形成されればよく、それ以外の層は他の方法、例えば、蒸着法、スパッタリング法などにより形成されるとしてもよい。
また、正孔注入層15、正孔輸送層16、電子輸送層18、電子注入層19は必ずしも上記実施の形態の構成である必要はない。いずれか1以上を備えないとしてもよいし、さらにほかの機能層を備えていてもよい。また、例えば、電子輸送層18と電子注入層19に替えて、単一の電子注入輸送層を備える、としてもよい。
(4)上記実施の形態においては、有機EL表示パネルはトップエミッション型であるとして、画素電極が光反射性を有し、対向電極が光透過性を有する場合について説明した。しかしながら、本開示に係る有機EL表示パネルは、いわゆるボトムエミッション型であるとしてもよい。
(5)以上、本開示に係る有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
本発明は、発光層、機能層のうち少なくとも1つを塗布法で形成する有機EL表示パネルにおいて、発光層、機能層の膜厚を均一化することにより、発光特性の優れた有機EL表示パネルを製造するのに有用である。
1 有機EL素子
11 基板
111 基材
112 TFT層
12 層間絶縁層
13 画素電極
141、142、143 隔壁
146、147、148 撥液部分
14a 開口部
14b 副壁
14p、14q 隔壁部分
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
18 電子輸送層
19 電子注入層
20 対向電極
21 封止層
100 有機EL表示パネル
1000 有機EL表示装置

Claims (13)

  1. 基板と、
    前記基板の上方に行列状に配される複数の画素電極と、
    前記基板の上方に配され、行方向における前記画素電極の間隙上に列方向に延伸する複数の隔壁と、
    行方向に隣接する前記隔壁間の複数の間隙から選択される第1間隙において、前記画素電極の上方に配される第1発光層と、
    前記第1間隙に行方向に隣接する第2間隙において、前記画素電極の上方に配される第2発光層と、
    前記第1発光層の上方および前記第2発光層の上方に配される対向電極と
    を備え、
    前記第1発光層の膜厚は、前記第2発光層の膜厚より厚く、
    前記第1間隙と前記第2間隙との間に存在する隔壁は、前記第1間隙に行方向に隣接する第1隔壁部分と、前記第2間隙に行方向に隣接する第2隔壁部分とが行方向に互いに隣接してなり、前記第1隔壁部分の高さは、前記第2隔壁部分の高さより高く、
    前記第1隔壁部分の側壁部と前記第1発光層とが接する第1ピンニング位置は、前記第2隔壁部分の側壁部と第2発光層とが接する第2ピンニング位置よりも高い
    ことを特徴とする有機EL表示パネル。
  2. 前記第1ピンニング位置は前記第1隔壁部分の高さに依拠した高さを有し、
    前記第2ピンニング位置は前記第2隔壁部分の高さに依拠した高さを有する
    請求項1に記載の有機EL表示パネル。
  3. 前記第1ピンニング位置の高さは、前記第1隔壁部分の高さに第1の係数を乗算した高さであり、
    前記第2ピンニング位置の高さは、前記第2隔壁部分の高さに第2の係数を乗算した高さである
    請求項2に記載の有機EL表示パネル。
  4. 前記第1の係数と、前記第2の係数とは異なる
    請求項3に記載の有機EL表示パネル。
  5. 前記第1ピンニング位置の高さは、前記第1隔壁部分の高さから所定の厚みを減算した高さであり、
    前記第2ピンニング位置の高さは、前記第2隔壁部分の高さから前記所定の厚みを減算した高さである
    請求項2に記載の有機EL表示パネル。
  6. 前記第1隔壁部分と、前記第2隔壁部分とは、それぞれ、絶縁性の樹脂材料からなり、撥液性を有する界面活性剤を含んでなる
    請求項1から5のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  7. 前記界面活性剤は、フッ素系化合物、または、シリコーン系化合物である
    請求項6に記載の有機EL表示パネル。
  8. 前記第1隔壁部分の前記第1発光層に面する側壁部において、前記第1ピンニング位置より高い部分は、前記第1ピンニング位置より低い部分より、前記界面活性剤の含有率が高く、
    前記第2隔壁部分の前記第2発光層に面する側壁部において、前記第2ピンニング位置より高い部分は、前記第2ピンニング位置より低い部分より、前記界面活性剤の含有率が高い
    請求項6または7に記載の有機EL表示パネル。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルを備える有機EL表示装置。
  10. 基板を準備する工程と、
    前記基板の上方において、行列状に複数の画素電極を形成する工程と、
    前記基板の上方において、行方向に前記画素電極を区画するように、列方向に沿って隔壁を複数形成する工程と、
    行方向に隣接する前記隔壁間の複数の間隙から選択される第1間隙に、発光材料を含むインクを塗布して第1発光層を形成する工程と、
    前記第1間隙に行方向に隣接する第2間隙に、発光材料を含むインクを塗布して、前記第1発光層の膜厚より薄い膜厚を有する第2発光層を形成する工程と、
    前記第1発光層および前記第2発光層の上方に対向電極を形成する工程と
    を含み、
    前記隔壁を複数形成する工程において、
    前記第1間隙に行方向に隣接する第1隔壁部分と、前記第2間隙に行方向に隣接する第2隔壁部分とを、行方向に互いに隣接するように、かつ、前記第1隔壁部分の高さを前記第2隔壁部分の高さより高く形成することにより前記第1間隙と前記第2間隙との間の隔壁を形成し
    前記第1隔壁部分の前記第1間隙に面する側壁部と、前記第2隔壁部分の前記第2間隙に面する側壁部とに、それぞれ、頂部から続く撥液部分を形成する
    ことを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
  11. 前記隔壁を複数形成する工程において、前記隔壁の材料として撥液性を有する界面活性剤を含む樹脂材料を用い、前記隔壁のうち前記界面活性剤の含有率が所定の割合以上の部分を前記撥液部分とする
    ことを特徴とする請求項10に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  12. 前記界面活性剤として、フッ素系化合物、または、シリコーン系化合物を用いる
    ことを特徴とする請求項11に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  13. 前記隔壁を複数形成する工程において、前記第1隔壁部分の形成を行った後、前記第2隔壁部分の形成を行う
    ことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
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