<<< §1. 本発明の第1の実施の形態による力覚センサ >>>
< 1−1. 基本構造の構成 >
添付の図面を参照して、本発明の第1の実施の形態による力覚センサについて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による力覚センサの基本構造100を示す概略正面図であり、図2は、その概略上面図である。ここでは、図1及び図2に示すようにXYZ三次元座標系を定義して以下の説明を行うこととする。
図1及び図2に示すように、基本構造100は、受力部14と固定部15とを有し、受力部14に作用した力により弾性変形を生じる変形体10と、変形体10に接続され、当該変形体10に生じる弾性変形により変位を生じる変位体20と、を備えている。受力部14は、検出対象となる力を受けるための部位であり、固定部15は、受力部14に力が作用しても変位しない部位である。
本実施の形態において、図1及び図2に示すように、変形体10は、Z軸と平行な長手方向lを有し受力部14と固定部15との間に配置された傾動部13と、受力部Pと傾動部13とを接続する第1変形部11と、固定部15と傾動部13とを接続する第2変形部12と、を有している。図示されるように、第1変形部11は、傾動部13の一方の側(図1及び図2における左方)で長手方向lと交差する方向に延在している。一方、第2変形部12は、傾動部13の他方の側(図1及び図2における右方)で長手方向lと交差する方向に延在している。図示される例では、長手方向lと交差する方向とは、X軸方向である。
更に、第1変形部11と傾動部13との接続部位R1と、第2変形部12と傾動部13との接続部位R2とは、傾動部13の長手方向lにおいて位置が異なっている。具体的には、接続部位R1は、傾動部13のZ軸負側の端部(図1における下端部)の近傍に位置しており、接続部位R2は、傾動部13のZ軸正側の端部(図1における上端部)の近傍に位置している。
図1及び図2に示すように、受力部14及び固定部15は、共にZ軸と平行に延在している。受力部14、傾動部13及び固定部15の各上端部は、Z軸方向の位置が互いに同一である。また、受力部14及び傾動部13の各下端部も、Z軸方向の位置が互いに同一である。そして、受力部14、の下端部と傾動部13の下端部とが、X軸と平行に延在する第1変形部11によって接続されており、傾動部13の上端部と固定部15の上端部とが、X軸と平行に延在する第2変形部12によって接続されている。更に、固定部15は、その下端部が、所定の間隔を空けて傾動部13に対向配置された支持体50に接続されている。
変位体20は、図1及び図2に示すように、傾動部13の下端に取り付けられた接続体22を介して当該傾動部13に接続された梁21を有している。この梁21は、傾動部13の長手方向lと直交する方向に延在しており、Y軸方向から見て、左右対称の形状を有している。梁21は、変形体10の固定部15及び受力部14から離間しており、当該梁21の傾動(回動)が固定部15及び受力部14によって妨げられないようになっている。梁21には、当該梁21と接続体22との接続部位に関して対称的に、第1変位部D1及び第2変位部D2が規定されている。後述されるように、これら第1変位部D1及び第2変位部D2にそれぞれ容量素子が配置され、受力部14に作用した力が検出されることになる。
< 1−2. 基本構造の作用 >
次に、以上のような基本構造100の作用について説明する。
図3は、受力部14に対してX軸正方向の力+Fxが作用したときの基本構造100の変形状態を示す概略正面図であり、図4は、受力部14に対してX軸負方向の力−Fxが作用したときの基本構造100の変形状態を示す概略正面図であり、図5は、受力部14に対してZ軸負方向の力−Fzが作用したときの基本構造100の変形状態を示す概略正面図であり、図6は、受力部14に対してZ軸正方向の力+Fzが作用したときの基本構造100の変形状態を示す概略正面図である。
(1−2−1.力+Fxが作用した場合)
受力部14に対してX軸正方向の力+Fxが作用すると、傾動部13の下端近傍の接続部位R1にはX軸正方向(図3における右方向)に力が作用し、傾動部13の上端近傍の接続部位R2には、作用した力+Fxの反作用として、X軸負方向(図3における左方向)に力が作用する。これらの力の作用によって、図3に示すように、傾動部13は、反時計回りに傾動する。もちろん、作用した力+Fxの作用によって、第1変形部11及び第2変形部12は共に圧縮変形されるため、傾動部13は、全体として、わずかにX軸正方向に変位する。
このような傾動部13の傾動によって、図3に示すように、傾動部13の下端に接続された梁21も反時計回りに傾動する。これにより、梁21の第1変位部D1は、支持体50との間の離間距離が減少する方向(図3における下方)に変位し、第2変位部D2は、支持体50との間の離間距離が増大する方向(図3における上方)に変位する。
(1−2−2.力−Fxが作用した場合)
次に、受力部14に対してX軸負方向の力−Fxが作用すると、傾動部13の下端近傍の接続部位R1にはX軸負方向(図4における左方向)に力が作用し、傾動部13の上端近傍の接続部位R2には、作用した力−Fxの反作用として、X軸正方向(図4における右方向)に力が作用する。これらの力の作用によって、図4に示すように、傾動部13は、時計回りに傾動する。もちろん、作用した力−Fxの作用によって、第1変形部11及び第2変形部12は共に引張変形されるため、傾動部13は、全体として、わずかにX軸負方向に変位する。
このような傾動部13の傾動によって、図4に示すように、傾動部13の下端に接続された梁21も、時計回りに傾動する。これにより、梁21の第1変位部D1は、支持体50との間の離間距離が増大する方向(図4における上方)に変位し、第2変位部D2は、支持体50との間の離間距離が減少する方向(図4における下方)に変位する。
(1−2−3.力−Fzが作用した場合)
次に、受力部14に対してZ軸負方向の力−Fzが作用すると、傾動部13の左下端の接続部位R1にはZ軸負方向(図5における下方向)に力が作用し、傾動部13の右上端の接続部位R2には、作用した力−Fzの反作用として、Z軸正方向(図5における上方向)に力が作用する。これらの力の作用によって、図5に示すように、傾動部13は、反時計回りに傾動する。更に、作用した力−Fzの作用によって、第1変形部11を介して傾動部13がZ軸負方向へ引き下げられるため、当該傾動部13は、全体として、わずかにZ軸負方向に変位する。
傾動部13の傾動によって、図5に示すように、傾動部13の下端に接続された梁21も、反時計回りに傾動する。これにより、梁21の第1変位部D1は、支持体50との間の離間距離が減少する方向(図5における下方)に変位し、第2変位部D2は、支持体50との間の離間距離が増大する方向(図5における上方)に変位する。
なお、梁21の長さによっては、第2変位部D2のZ軸正方向への変位が梁21全体のZ軸負方向への変位よりも小さくなり、第2変位部D2も、支持体50との間の離間距離が減少する、ということも想定される。しかしながら、ここでは、梁21は十分な長さを有しており、そのような状況は生じないものとする。
(1−2−4.力+Fzが作用した場合)
次に、受力部14に対してZ軸正方向の力+Fzが作用すると、傾動部13の左下端の接続部位R1にはZ軸正方向(図6における上方向)に力が作用し、傾動部13の右上端の接続部位R2には、作用した力+Fzの反作用として、Z軸負向(図6における下方向)に力が作用する。これらの力の作用によって、図6に示すように、傾動部13は、時計回りに傾動する。もちろん、作用した力+Fzの作用によって、第1変形部11を介して傾動部13がZ軸正方向へ引き上げられるため、当該傾動部13は、全体として、わずかにZ軸正方向に変位する。
このような傾動部13の傾動によって、図6に示すように、傾動部13の下端に接続された梁21も、時計回りに傾動する。これにより、梁21の第1変位部D1は、支持体50との間の離間距離が増大する方向(図6における上方)に変位し、第2変位部D2は、支持体50との間の離間距離が減少する方向(図6おける下方)に変位する。
なお、梁21の長さによっては、第2変位部D2のZ軸負方向への変位が梁21全体のZ軸正方向への変位よりも小さくなり、第2変位部D2も、支持体50との間の離間距離が増大する、ということも想定される。しかしながら、ここでは、梁21は十分な長さを有しており、そのような状況は生じないものとする。
以上のいずれの場合においても、第1変位部D1及び第2変位部D2に生じる変位は、傾動部13の下端に生じる変位よりも大きい。すなわち、梁21の存在によって、傾動部13の下端部に生じる変位が、梁21の各変位部D1、D2においてZ軸方向の変位として増幅されて取り出されることになる。
< 1−3. 力覚センサの構成 >
次に、1−1、1−2において説明した基本構造100を有する力覚センサ100cの構成について説明する。
図7は、図1に示す基本構造100を採用した力覚センサ100cの例を示す概略正面図である。
図7に示すように、力覚センサ100cは、上述した基本構造100と、基本構造100の梁21の第1変位部D1及び第2変位部D2に生じる変位に基づいて、作用した力を検出する検出回路40と、を有している。本実施の形態の検出回路40は、図7に示すように、第1変位部D1に配置された第1容量素子C1と、第2変位部D2に配置された第2容量素子C2と、これらの容量素子C1、C2に接続され、当該容量素子C1、C2の静電容量値の変動量に基づいて、作用した力を計測する計測部41と、を有している。
図7に示すように、第1容量素子C1は、梁21の第1変位部D1上に絶縁体を介して配置された第1変位電極Em1と、支持体50上に絶縁体を介して第1変位電極Em1と対向するように配置された第1固定電極Ef1と、を有している。また、第2容量素子C2は、梁21の第2変位部D2上に絶縁体を介して配置された第2変位電極Em2と、支持体50上に絶縁体を介して第2変位電極Em2と対向するように配置された第2固定電極Ef2と、を有している。これらの容量素子C1、C2は、図7には明確には図示されていないが、所定の回路によって計測部41に接続されており、各容量素子C1、C2の静電容量値が計測部41に提供されるようになっている。
なお、図面においては、第1変位電極Em1、第2変位電極Em2、第1固定電極Ef1及び第2固定電極Ef2は、それぞれ個別の電極によって構成されているが、他の実施の形態においては、第1変位電極Em1及び第2変位電極Em2、または、第1固定電極Ef1及び第2固定電極Ef2は、共通の電極で構成されていても良い。このことは、§2以降で説明する他の実施の形態においても同様である。
< 1−4. 力覚センサの作用 >
次に、1−3.で説明した力覚センサ100cの作用について説明する。
(1−4−1.力Fxが作用した場合)
力覚センサ100cの受力部14にX軸正方向の力+Fxが作用すると、1−2.において図3を参照して説明した梁21の挙動から理解されるように、第1容量素子C1においては、第1変位電極Em1と第1固定電極Ef1との離間距離が減少し、第2容量素子C2においては、第2変位電極Em2と第2固定電極Ef2との離間距離が増大する。すなわち、第1容量素子C1の静電容量値は増大し、第2容量素子C2の静電容量値は減少する。
本実施の形態では、第1変位部D1及び第2変位部D2の配置から理解されるように、第1容量素子C1と第2容量素子C2とが梁21の傾動の中心から互いに等距離に配置されている。このため、第1容量素子C1の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC1|)と、第2容量素子C2の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC2|)とは、互いに等しい。このため、|ΔC1|=|ΔC2|=ΔCとすると、力+Fxが作用したときの第1容量素子C1及び第2容量素子C2の各静電容量値C1a、C2aは、次の[式1]で表される。
[式1]において、C1及びC2は、力が作用していないときの第1及び第2容量素子C1、C2の静電容量値をそれぞれ示している。なお、このことは、以下の各式において同様である。
[式1]
C1a=C1+ΔC
C2a=C2−ΔC
このような静電容量値の変動に基づいて、計測部41は、作用した力+Fxを次の[式2]により計測する。[式2]において、力と静電容量値とが「=」で結ばれているが、これらは互いに異なる物理量であるため、実際には所定の変換がなされた上で力+Fxが計測される。この表記法については、[式2]に限られず、これ以降の各式において共通している。
[式2]
+Fx=C1−C2
次に、力覚センサ100cの受力部14にX軸負方向の力−Fxが作用すると、1−2において図4を参照して説明した梁21の挙動から理解されるように、第1容量素子C1においては、第1変位電極Em1と第1固定電極Ef1との離間距離が増大し、第2容量素子C2においては、第2変位電極Em2と第2固定電極Ef2との離間距離が減少する。すなわち、第1容量素子C1の静電容量値は減少し、第2容量素子C2の静電容量値は増大する。結局、ここでは、先に説明した力+Fxが作用した場合において、符号を全て逆にして考えればよい。
したがって、計測部41は、作用した力−Fxを次の[式2]により計測する。
[式3]
−Fx=C2−C1
結局、[式2]と[式3]は同じ演算式であり、いずれの場合も、作用した力Fxは、Fx=C1−C2で計測される。
(1−4−2.力Fzが作用した場合)
次に、力覚センサ100cの受力部14にZ軸負方向の力−Fzが作用すると、1−2において図5を参照して説明した梁21の挙動から理解されるように、第1容量素子C1においては、第1変位電極Em1と第1固定電極Ef1との離間距離が減少し、第2容量素子C2においては、第2変位電極Em2と第2固定電極Ef2との離間距離が増大する。すなわち、第1容量素子C1の静電容量値は増大し、第2容量素子C2の静電容量値は減少する。
より詳細には、力−Fzが作用したときに第1変位部D1に生じる変位は、前述した傾動部13の全体的なZ軸負方向への変位と、梁21の傾動によるZ軸負方向への変位と、の和であり、第2変位部D2に生じる変位は、傾動部13の当該変位と、梁21の傾動によるZ軸正方向への変位と、の和である。つまり、各容量素子C1、C2の静電容量値の変動についてより正確に記述すれば、第1容量素子C1においては、梁21の傾動による変位に傾動部13の全体的なZ軸負方向への変位が加わるため、第1変位電極Em1と第1固定電極Ef1との離間距離は大きく減少する。一方、第2容量素子C2においては、梁21の傾動による変位が傾動部13の全体的なZ軸負方向への変位によって相殺されるため、第2変位電極Em2と第2固定電極Ef2との離間距離が僅かに増大する。
但し、前述したように、簡単のため、傾動部13のZ軸方向の長さ(高さ)に対して梁21のZ軸方向の長さが十分に大きいものとしているため、第1容量素子C1の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC1|)と、第2容量素子C2の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC2|)とは、実質的に等しいと考えて良い。このため、|ΔC1|=|ΔC2|=ΔCとすると、力−Fzが作用したときの第1容量素子C1及び第2容量素子C2の各静電容量値C1b、C2bは、次の[式4]で表される。
[式4]
C1b=C1−ΔC
C2b=C2+ΔC
このような静電容量値の変動に基づいて、計測部41は、作用した力−Fzを次の[式5]により計測する。
[式5]
−Fz=C1−C2
次に、力覚センサ100cの受力部14にZ軸正方向の力+Fzが作用すると、1−2において図6を参照して説明した梁21の挙動から理解されるように、第1容量素子C1においては、第1変位電極Em1と第1固定電極Ef1との離間距離が増大し、第2容量素子C2においては、第2変位電極Em2と第2固定電極Ef2との離間距離が減少する。すなわち、第1容量素子C1の静電容量値は減少し、第2容量素子C2の静電容量値は増大する。ここでも、力−Fzが作用した場合と同様に、第1容量素子C1の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC1|)と、第2容量素子C2の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC2|)とは、実質的に等しいと考えて良い。
このため、以上の静電容量値の変動に基づいて、計測部41は、作用した力+Fzを次の[式6]により計測する。
[式6]
+Fz=C2−C1
結局、[式5]と[式6]は同じ演算式であり、いずれの場合も、作用した力Fzは、Fz=C2−C1で計測される。
以上の[式2]、[式3]、[式5]及び[式6]を比較すると、[式2]の右辺と[式5]の右辺とが同一であり、[式3]の右辺と[式6]の右辺とが同一である。従って、[式2]及び[式5]に関しては、計測部41は、作用した力が+Fxであるのか−Fzであるのかを判別することができない。同様に、[式3]及び[式6]に関しては、計測部41は、作用した力が−Fxであるのか+Fzであるのかを判別することができない。しかしながら、作用する力がX軸方向またはZ軸方向の一方向のみに限定されている環境では、計測部41は、作用した力の向き(符号)とその大きさとを、差分演算によって計測することができる。
以上のような本実施の形態によれば、傾動部13の傾動によって各変位部D1、D2が変位することにより、傾動部13に生じる傾動を効果的に増幅させることができる。このことにより、低価格且つ高感度の力覚センサ100cが提供され得る。更に、計測部41は、第1変位部D1に配置された第1容量素子C1の静電容量値と、第2変位部D2に配置された第2容量素子C2の静電容量値と、の差分によって作用した力を計測するため、使用環境の温度変化や同相ノイズの影響を受けにくい力覚センサ100cを提供することができる。
また、変位体20の第1変位部D1及び第2変位部D2は、梁21に接続体22と梁21との接続部位に関して対称的に配置されている。このため、第1変位部D1に生じる変位と第2変位部D2に生じる変位とが、同じ大きさで互いに異符号となるため、作用した力を簡易な演算によって検出することができる。
<<< §2. 本発明の第2の実施の形態による力覚センサ >>>
< 2−1. 基本構造の構成 >
次に、本発明の第2の実施の形態による力覚センサについて説明する。
図8は、本発明の第2の実施の形態による力覚センサ200cの基本構造200を示す概略上面図である。図9は、図8のY軸正側から見た基本構造200を示す概略正面図であり、図10は、図8のX軸正側から見た基本構造200を示す概略側面図である。ここでは、図8乃至図10に示すようにXYZ三次元座標系を定義して以下の説明を行うこととする。なお、図8では、説明の便宜上、受力体260の図示が省略されている。
図8乃至図10に示すように、基本構造200は、閉ループ状の変形体であって、2つの受力部218、219と、閉ループ状の経路に沿って当該2つの受力部218、219と交互に配置された2つの固定部216、217と、閉ループ状の経路に沿って隣接する受力部218、219及び固定部216、217によって挟まれた4つの間隙に1つずつ配置され、受力部218、219に作用した力ないしモーメントにより弾性変形を生じる4つの変形要素210A〜210Dと、を有する変形体と、各変形要素210A〜210Dに接続され、当該変形要素210A〜210Dに生じる弾性変形により変位を生じる4つの変位体220A〜220Dと、を備えている。
本実施の形態では、図8に示すように、一方の受力部218は正のX軸上に、他方の受力部219は負のX軸上に、互いに原点Oに関して対称的に配置されている。また、一方の固定部216は正のY軸上に、他方の固定部217は負のY軸上に、互いに原点Oに関して対称的に配置されている。これら受力部218、219及び固定部216、217を含む閉ループ状の変形体は、本実施の形態では、原点Oを中心とする円形の環状変形体210として構成されている。
図8乃至図10に示すように、Z軸方向から見てXY平面の第2象限に配置された第1変形要素210Aは、X軸負側に配置された受力部219とY軸正側に配置された固定部216との間に弧状に配置されており、Z軸方向(図8における奥行き方向)を長手方向とする第1傾動部213Aと、受力部219と第1傾動部213Aとを接続する第1−1変形部211Aと、固定部216と第1傾動部213Aとを接続する第1−2変形部212Aと、を有している。図9に示すように、第1−1変形部211Aは、XY平面と平行に延在し、第1傾動部213AのZ軸負側の端部(下端)にて、当該第1傾動部213Aに接続されている。第1−2変形部212Aは、XY平面と平行に延在し、第1傾動部213AのZ軸正側の端部(上端)にて、当該第1傾動部213Aに接続されている。
Z軸方向から見てXY平面の第1象限に配置された第2変形要素210Bは、X軸正側に配置された受力部218とY軸正側に配置された固定部216との間に弧状に配置され、Z軸方向(図8における奥行き方向)を長手方向とする第2傾動部213Bと、受力部218と第2傾動部213Bとを接続する第2−1変形部211Bと、固定部216と第2傾動部213Bとを接続する第2−2変形部212Bと、を有している。図9に示すように、第2−1変形部211Bは、XY平面と平行に延在し、第2傾動部213BのZ軸負側の端部(下端)にて、当該第2傾動部213Bに接続されている。第2−2変形部212Bは、XY平面と平行に延在し、第2傾動部213BのZ軸正側の端部(上端)にて、当該第2傾動部213Bに接続されている。
更に、詳細には図示されていないが、XY平面の第3象限及び第4象限に配置された第4変形要素210D及び第3変形要素210Cは、環状変形体210のY軸正側(図8の環状変形体210の上半分)の部分を原点まわりに180°回転させたときの、上述した第2変形要素210B及び第1変形要素210Aの構成に、それぞれ対応している。このため、ここでは、その詳細な説明は省略する。図8乃至図10において、第3変形要素210Cの構成要素には符号の末尾に「C」が付され、第4変形要素210Dの構成要素には符号の末尾に「D」が付されている。更に、基本構造200の各固定部216、217は、その下端部が、後述される第1〜第4梁221A〜221Dに所定の間隔を空けて対向配置された支持体250に接続されている。
図8乃至図10に示すように、前述した4つの変位体220A〜220Dは、第1〜第4変形要素210A〜210Dの各傾動部213A〜213Dの下端(Z軸負側の端部)に1つずつ接続されている。各変位体220A〜220Dは、それぞれ、対応する傾動部213A〜213Dの傾動によって変位する変位部を有している。この変位部は、図8乃至図10に示すように、各傾動部213A〜213Dの下端に接続体222A〜222Dを介してそれぞれ取り付けられた第1〜第4梁221A〜221Dである。
これらの梁221A〜222Dは、対応する傾動部213A〜213Dの長手方向(Z軸方向)と直交する方向に延在しており、環状変形体210の径方向から見て、いずれも、左右対称の形状を有している。いずれの梁221A〜222Dも、固定部216、217及び受力部218、219から離間しており、当該梁221A〜222Dの傾動(回動)が妨げられないようになっている。そして、第1梁221Aには、当該第1梁221Aと第1接続体222Aとの接続部位に関して対称的に、第1−1変位部D11及び第1−2変位部D12が規定されている。同様に、第2梁221Bには、当該第2梁221Bと第2接続体222Bとの接続部位に関して対称的に、第2−1変位部D21及び第2−2変位部D22が規定されており、第3梁221Cには、当該第3梁221Cと第3接続体222Cとの接続部位に関して対称的に、第3−1変位部D31及び第3−2変位部D32が規定されており、第4梁221Dには、当該第4梁221Dと第4接続体222Dとの接続部位に関して対称的に、第4−1変位部D41及び第4−2変位部D42が規定されている。後述されるように、これら第11〜第42変位部D11〜D42のそれぞれに容量素子が配置され、受力部218、219に作用した力及びモーメントが検出されることになる。結局、基本構造200は、第1〜第4変形要素210A〜210Dとして、§1で説明した基本構造100を4つ、円環状に配置して構成されている。
更に、図9及び図10に示すように、環状変形体210のZ軸正側には、検出対象の力を受けるための受力体260が配置されている。受力体260は、Z軸方向から見て、環状変形体210とぴったり重なる円環の形状を有する受力体本体261と、受力体本体261のうち、環状変形体210の受力部218、219に面する部位に設けられた受力部接続体262、263と、を有している。これらの受力部接続体262、263が、対応する受力部218、219に接続され、受力体本体261に作用した力及びモーメントが、各受力部218、219に伝達されるようになっている。
< 2−2. 基本構造の作用 >
次に、以上のような基本構造200の作用について説明する。
(2−2−1.力+Fxが作用した場合)
図11は、受力部218、219にX軸正方向の力+Fxが作用したときに、図8の基本構造200の各変位体220A〜220Dに生じる変位を説明するための図である。図8において、受力部218、219に作用する力は、黒塗りの太い矢印で示されている。
また、力が作用したときに、各変形要素210A〜210Dの傾動部213A〜213Dに生じる傾動は、弧状の細い矢印で示されている。この矢印は、原点Oから観測したときの、各傾動部213A〜213Dの傾動の向き(時計回りか、反時計回りか)を表している。更に、各傾動部213A〜213Dの傾動によって変位体220A〜220Dの梁221A〜221Dの各変位部D11〜D42に生じるZ軸方向の変位は、ドットを丸で囲んだ記号と、×印を丸で囲んだ記号と、によって示されている。ドットを丸で囲んだ記号は、奥側から手前側への変位(Z軸正方向への変位)を示しており、×印を丸で囲んだ記号は、手前側から奥側への変位(Z軸負方向への変位)を示している。なお、このような図示の方法は、後述される各実施の形態においても共通である。なお、受力部218、219に作用する力は、その向きによっては、ドットを丸で囲んだ記号と、×印を丸で囲んだ記号と、によって示してある。これらの記号の意味は、前述した通りである。
受力体260を介して受力部218、219にX軸正方向の力+Fxが作用すると、図11に示すように、受力部218、219がX軸正方向へ変位する。このことにより、第1変形要素210Aは、図3に示すような圧縮力の作用を受ける。この場合、第1傾動部213Aが反時計回りに傾動するため、第1梁221Aも反時計回りに傾動する。この結果、第1−1変位部D11はZ軸負方向に変位し、第1−2変位部D12はZ軸正方向に変位する。
第2変形要素210Bは、受力部218のX軸正方向への変位によって、図4に示すような引張力の作用を受ける。この場合、第2傾動部213Bが反時計回りに傾動するため、第2梁221Bも反時計回りに傾動する。この結果、第2−1変位部D21はZ軸負方向に変位し、第2−2変位部D22はZ軸正方向に変位する。
第3変形要素210Cは、受力部218のX軸正方向への変位によって、図4に示すような引張力の作用を受ける。この場合、第3傾動部213Cが時計回りに傾動するため、第3梁221Cも時計回りに傾動する。この結果、第3−1変位部D31はZ軸正方向に変位し、第3−2変位部D32はZ軸負方向に変位する。
更に、第4変形要素210Dは、受力部219のX軸正方向への変位によって、図3に示すような圧縮力の作用を受ける。この場合、第4傾動部213Dが時計回りに傾動するため、第4梁221Dも時計回りに傾動する。この結果、第4−1変位部D41はZ軸正方向に変位し、第4−2変位部D42はZ軸負方向に変位する。
(2−2−2.力+Fyが作用した場合)
次に、図12は、受力部218、219にY軸正方向の力+Fyが作用したときに、図8の基本構造200の各変位体220A〜220Dに生じる変位を説明するための図である。
受力体260を介して受力部218、219にY軸正方向の力+Fyが作用すると、図12に示すように、受力部218、219がY軸正方向へ変位する。このことにより、第1変形要素210Aは、図3に示すような圧縮力の作用を受ける。この場合、前述したように、第1傾動部213A及び第1梁221Aが反時計回りに傾動するため、第1−1変位部D11はZ軸負方向に変位し、第1−2変位部D12はZ軸正方向に変位する。
第2変形要素210Bは、受力部218のY軸正方向への変位によって、図3に示すような圧縮力の作用を受ける。この場合、第2傾動部213B及び第2梁221Bが時計回りに傾動するため、第2−1変位部D21はZ軸正方向に変位し、第2−2変位部D22はZ軸負方向に変位する。
第3変形要素210Cは、受力部218のY軸正方向への変位によって、図4に示すような引張力の作用を受ける。この場合、第3傾動部213C及び第3梁221Cが時計回りに傾動するため、第3−1変位部D31はZ軸正方向に変位し、第3−2変位部D32はZ軸負方向に変位する。
第4変形要素210Dは、受力部219のY軸正方向への変位によって、図4に示すような引張力の作用を受ける。この場合、第4傾動部213D及び第4梁221Dが反時計回りに傾動するため、第4−1変位部D41はZ軸負方向に変位し、第4−2変位部D42はZ軸正方向に変位する。
(2−2−3.力+Fzが作用した場合)
次に、図13は、受力部218、219にZ軸正方向の力+Fzが作用したときに、図8の基本構造200の各変位体220A〜220Dに生じる変位を説明するための図である。
受力体260を介して受力部218、219にZ軸正方向の力+Fzが作用すると、図13に示すように、受力部218、219がZ軸正方向へ変位する。このことにより、第1〜第4変形要素210A〜210Dは、いずれも、図6に示すような上向きの力の作用を受ける。この場合、第1傾動部213A及び第3傾動部213Cが時計回りに傾動するため、第1梁221A及び第3梁221Cも時計回りに傾動する。この結果、第1−1変位部D11及び第3−1変位部D13はZ軸正方向に変位し、第1−2変位部D12及び第3−2変位部D32はZ軸負方向に変位する。
一方、第2傾動部213B及び第4傾動部213Dは、反時計回りに傾動するため、第2梁221B及び第4梁221Dも反時計回りに傾動する。この結果、第2−1変位部D21及び第4−1変位部D41はZ軸負方向に変位し、第2−2変位部D22及び第4−2変位部D42はZ軸正方向に変位する。
(2−2−4.モーメント+Mxが作用した場合)
次に、図14は、受力部218、219にX軸正まわりのモーメント+Mxが作用したときに、図8の基本構造200の各変位体220A〜220Dに生じる変位を説明するための図である。なお、本願では、所定の座標軸の正方向に右ネジを進める場合の当該右ネジの回転方向を、当該座標軸まわりの正のモーメントと定義することにする。
受力体260を介して受力部218、219にX軸正まわりのモーメント+Mxが作用すると、各受力部218、219のうち、Y軸正側(図14における上側)の部位がZ軸正方向(手前側)に変位し、Y軸負側(図14における下側)の部位がZ軸負方向(奥側)に変位する。すなわち、第1変形要素210A及び第2変形要素210Bには、図13と同じ方向に力が作用する。したがって、2−2−3.で説明したように、第1−1変位部D11はZ軸正方向に変位し、第1−2変位部D12はZ軸負方向に変位し、第2−1変位部D21はZ軸負方向に変位し、第2−2変位部D22はZ軸正方向に変位する。
一方、第3変形要素210Cは、受力部219から、図5に示すような下向きの力の作用を受ける。この場合、第3傾動部213Cが反時計回りに傾動するため、第3梁221Cも反時計回りに傾動する。この結果、第3−1変位部D31はZ軸負方向に変位し、第3−2変位部D32はZ軸正方向に変位する。
第4変形要素210Dは、受力部218から、図5に示すような下向きの力の作用を受ける。この場合、第4傾動部213Dが時計回りに傾動するため、第4梁221Dも時計回りに傾動する。この結果、第4−1変位部D41はZ軸正方向に変位し、第4−2変位部D42はZ軸正方向に変位する。
(2−2−5.モーメント+Myが作用した場合)
次に、図15は、受力部218、219にY軸正まわりのモーメント+Myが作用したときに、図8の基本構造200の各変位体220A〜220Dに生じる変位を説明するための図である。
受力体260を介して受力部218、219にY軸正まわりのモーメント+Myが作用すると、X軸負側に位置する受力部218は、Z軸正方向(図15における奥から手前に向かう方向)に変位し、X軸正側に位置する受力部219は、Z軸負方向(図15における手前から奥に向かう方向)に変位する。すなわち、第1変形要素210A及び第4変形要素210Dには、図13と同じ方向に力が作用する。したがって、2−2−3.で説明したように、第1−1変位部D11はZ軸正方向に変位し、第1−2変位部D12はZ軸負方向に変位し、第4−1変位部D41はZ軸負方向に変位し、第4−2変位部D42はZ軸正方向に変位する。
一方、図15に示すように、第2変形要素210B及び第3変形要素210Cは、Z軸負方向の力の作用を受ける(図5参照)。このような力の作用により、第2変形要素210Bでは、第2傾動部213Bが時計回りに傾動するため、第2梁221Bも時計回りに傾動する。この結果、第2−1変位部D21はZ軸正方向に変位し、第2−2変位部D22はZ軸負方向に変位する。第3変形要素210Cでは、図14と同様に、第3傾動部213Cが反時計回りに傾動することにより、第3−1変位部D31はZ軸負方向に変位し、第3−2変位部D32はZ軸正方向に変位する。
(2−2−6.モーメント+Mzが作用した場合)
次に、図16は、受力部218、219にZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用したときに、図8の基本構造200の各変位体220A〜220Dに生じる変位を説明するための図である。
受力体260を介して受力部218、219にZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用すると、X軸負側に位置する受力部219がY軸負方向へ変位し、X軸正側に位置する受力部218がY軸正方向へ変位する。X軸正側に位置する受力部218の変位は、力+Fyが作用した場合と同じ向きであるため(図12参照)、X軸正側に配置された第2変形要素210B及び第3変形要素210Cには、図12と同じ弾性変形が生じる。すなわち、第2−1変位部D21はZ軸正方向に変位し、第2−2変位部D22はZ軸負方向に変位し、第3−1変位部D41はZ軸正方向に変位し、第3−2変位部D32はZ軸負方向に変位する。
一方、第1変形要素210Bは、受力部219のY軸負方向への変位によって、図4に示すような引張力の作用を受ける。この場合、第1傾動部213A及び第1梁221Aが時計回りに傾動するため、第1−1変位部D11はZ軸正方向に変位し、第1−2変位部D12はZ軸負方向に変位する。
また、第4変形要素210Dは、受力部219のY軸負方向への変位によって、図3に示すような圧縮力の作用を受ける。この場合、第4傾動部213D及び第4梁221Dが時計回りに傾動するため、第4−1変位部D41はZ軸正方向に変位し、第4−2変位部D42はZ軸負方向に変位する。
以上のまとめとして、図17には、受力部218、219にXYZ三次元座標系の各軸方向の力+Fx、+Fy、+Fz及び各軸まわりのモーメント+Mx、+My、+Mzが作用したときに図8の基本構造200の各傾動部213A〜213Dに生じる傾動の向きと、各変位体220A〜220Bの各変位部D11〜D42に生じる変位とが、一覧で示されている。図17において、各傾動部213A〜213Dの欄に記された回動の向き(時計回り/反時計回り)は、原点Oから観測したときの向きである。また、各変位部D11〜D42の欄に記された「+」の記号は、対応する変位部と支持体250との離間距離が増大することを意味し、「−」の記号は、対応する変位部と支持体250との離間距離が減少することを意味している。
なお、受力体260に作用する力及びモーメントが負方向及び負まわりである場合には、上述した各場合において、傾動部213A〜213Dの傾動の向きが全て逆になる。この結果、各変位体220A〜220Dの変位部D11〜D42に生じる変位の向きも逆になり、図17に一覧で示した傾動の向き、及び、各変位部D11〜D42と支持体250との離間距離の増減(+/−)が、全て逆になる。
< 2−3. 力覚センサの構成 >
次に、2−1、2−2において説明した基本構造200を有する力覚センサ200cの構成について説明する。
図18は、図8に示す基本構造200を採用した力覚センサ200cの一例を示す概略上面図であり、図19は、Y軸正側から見た、図18に示す力覚センサ200cを示す概略正面図である。
図18及び図19に示すように、力覚センサ200cは、上述した基本構造200と、基本構造200の変位体220A〜220Dの各変位部D11〜D42に生じる変位に基づいて、作用した力及びモーメントを検出する検出回路240と、を有している。本実施の形態の検出回路240は、図18及び図19に示すように、各変位体220A〜220Dの各変位部D11〜D42に1つずつ配置された、合計8つの容量素子C11〜C42と、これらの容量素子C11〜C42に接続され、当該容量素子C11〜C42の静電容量値の変動量に基づいて、作用した力を計測する計測部241と、を有している。
8つの容量素子C11〜C42の具体的な構成は、次の通りである。すなわち、図19に示すように、第1−1容量素子C11は、第1梁221Aの第1−1変位部D11上に絶縁体(不図示)を介して配置された第1−1変位電極Em11と、支持体250上に絶縁体(不図示)を介して第1−1変位電極Em11と対向するように配置された第1−1固定電極Ef11と、を有している。また、第1−2容量素子C12は、第1梁221Aの第1−2変位部D12上に絶縁体(不図示)を介して配置された第1−2変位電極Em12と、支持体250上に絶縁体(不図示)を介して第1−2変位電極Em12と対向するように配置された第1−2固定電極Ef12と、を有している。
同様に、図19に示すように、第2−1容量素子C21は、第2梁221Bの第2−1変位部D21上に絶縁体(不図示)を介して配置された第2−1変位電極Em21と、支持体250上に絶縁体(不図示)を介し第2−1変位電極Em21と対向するように配置された第2−1固定電極Ef21と、を有しており、第2−2容量素子C22は、第2梁221Bの第2−2変位部D22上に絶縁体(不図示)を介して配置された第2−2変位電極Em22と、支持体250上に絶縁体(不図示)を介して第2−2変位電極Em22と対向するように配置された第2−2固定電極Ef22と、を有している。
更に、図示されていないが、第3−1容量素子C31は、第3梁221Cの第3−1変位部D31上に絶縁体を介して配置された第3−1変位電極Em31と、支持体250上に絶縁体を介し第3−1変位電極Em31と対向するように配置された第3−1固定電極Ef31と、を有しており、第3−2容量素子C32は、第3梁221Cの第3−2変位部D32上に絶縁体を介して配置された第3−2変位電極Em32と、支持体250上に絶縁体を介して第3−2変位電極Em32と対向するように配置された第3−2固定電極Ef32と、を有している。
同様に第4−1容量素子C41は、第4梁221Dの第4−1変位部D41上に絶縁体を介して配置された第4−1変位電極Em41と、支持体250上に絶縁体を介し第4−1変位電極Em41と対向するように配置された第4−1固定電極Ef41と、を有しており、第4−2容量素子C42は、第4梁221Dの第4−2変位部D42上に絶縁体を介して配置された第4−2変位電極Em42と、支持体250上に絶縁体を介して第4−2変位電極Em42と対向するように配置された第4−2固定電極Ef42と、を有している。
これらの容量素子C11〜C42は、図18及び図19には明確には図示されていないが、所定の回路によって計測部241に接続されており、各容量素子C11〜C42の静電容量値が計測部241に提供されるようになっている。
< 2−4. 力覚センサの作用 >
次に、2−3.で説明した力覚センサ200cの作用について説明する。
(2−4−1.X軸正方向の力+Fxが作用した場合)
力覚センサ200cの受力部218,219に受力体260を介してX軸正方向の力+Fxが作用すると、図17に示すように、第1−1容量素子C1においては、第1−1変位電極Em11と第1−1固定電極Ef11との離間距離が減少する一方、第1−2容量素子C12においては、第2変位電極Em2と第2固定電極Ef2との離間距離が増大する。すなわち、第1−1容量素子C11の静電容量値は増大し、第1−2容量素子C12の静電容量値は減少する。同様に、図17から理解されるように、第2−1容量素子C21の静電容量値は増大し、第2−2容量素子C22の静電容量値は減少する。第3−1容量素子C31の静電容量値は減少し、第3−2容量素子C32の静電容量値は増大する。
そして、第4−1容量素子C41の静電容量値は減少し、第4−2容量素子C42の静電容量値は増大する。
図20は、受力部218、219にXYZ三次元座標系における各軸方向の力+Fx、+Fy、+Fzまたは各軸まわりのモーメント+Mx、+My、+Mzが作用したときの各容量素子の静電容量値の増減を一覧で示す図表である。上述した各容量素子C11〜C42の静電容量値の増減は、図20のFxの欄に纏めて示してある。なお、図中の「+」の記号は、静電容量値が増大することを示しており、「−」の記号は、静電容量値が減少することを示している。
本実施の形態では、各梁221A〜221Dにおいて、第1変位部D11、D21、D31、D41と第2変位部D12、D22、D32、D42とが、対応する梁221A〜221Dの傾動の中心から互いに等距離に配置されている。このため、各梁221A〜221Dにおいて、第1変位部D11、D21、D31、D41に配置された容量素子C11、C21、C31、C41の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC11|、|ΔC21|、|ΔC31|、|ΔC41|)と、第2変位部D12、D22、D32、D42に配置された容量素子C12、C22、C32、C42の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC12|、|ΔC22|、|ΔC32|、|ΔC42|)とは、互いに等しい。このため、|ΔC11|=|ΔC12|=|ΔC21|=|ΔC22|=|ΔC31|=|ΔC32|=|ΔC41|=|ΔC42|=ΔCとすると、力+Fxが作用したときの第1−1〜第4−2容量素子C11〜C42の各静電容量値C11a〜C42aは、次の[式7]で表される。
[式7]
C11a=C11+ΔC
C12a=C12−ΔC
C21a=C21+ΔC
C22a=C22−ΔC
C31a=C31−ΔC
C32a=C32+ΔC
C41a=C41−ΔC
C42a=C42+ΔC
このような静電容量値の変動に基づいて、計測部241は、作用した力+Fxを次の[式8]により計測する。
[式8]
+Fx=C11−C12+C21−C22−C31+C32−C41+C42
(2−4−2.Y軸正方向の力+Fyが作用した場合)
次に、力覚センサ200cの受力部218,219に受力体260を介してY軸正方向の力+Fyが作用すると、図17から理解されるように、第1−1容量素子C11の静電容量値が増大し、第1−2容量素子C12の静電容量値が減少し、第2−1容量素子C21の静電容量値が減少し、第2−2容量素子C22の静電容量値が増大する。更に、第3−1容量素子C31の静電容量値が減少し、第3−2容量素子C32の静電容量値が増大し、第4−1容量素子C41の静電容量値が増大し、第4−2容量素子C42の静電容量値が減少する。これらの容量素子C11〜C42の静電容量値の増減は、図20のFyの欄に纏めて示してある。
ここでも、各梁221A〜221Dにおいて、第1変位部D11、D21、D31、D41に配置された容量素子C11、C21、C31、C41の静電容量値の変動の大きさと、第2変位部D12、D22、D32、D42に配置された容量素子C12、C22、C32、C42の静電容量値の変動の大きさとが、互いに等しいと見なせる。このため、前述した[式7]と同様にして各容量素子C11〜C42の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部241は、作用した力+Fyを次の[式9]により計測する。
[式9]
+Fy=C11−C12−C21+C22−C31+C32+C41−C42
(2−4−3.Z軸正方向の力+Fzが作用した場合)
次に、力覚センサ200cの受力部218,219に受力体260を介してZ軸正方向の力+Fzが作用すると、図17から理解されるように、第1−1容量素子C11の静電容量値が減少し、第1−2容量素子C12の静電容量値が増大し、第2−1容量素子C21の静電容量値が増大し、第2−2容量素子C22の静電容量値が減少する。更に、第3−1容量素子C31の静電容量値が減少し、第3−2容量素子C32の静電容量値が増大し、第4−1容量素子C41の静電容量値が増大し、第4−2容量素子C42の静電容量値が減少する。これらの容量素子C11〜C42の静電容量値の増減は、図20のFzの欄に纏めて示してある。
より詳細には、力+Fzが作用すると、各傾動部213A〜213Dが全体的にZ軸正方向に変位する。したがって、第1−1変位部D11に生じる変位は、この第1傾動部213Aの全体的なZ軸正方向への変位と、梁221Aの傾動によるZ軸正方向への変位と、の和であり、第1−2変位部D12に生じる変位は、傾動部213Aの全体的な変位と、梁221Aの傾動によるZ軸負方向への変位と、の和である。つまり、各容量素子C11、C12の静電容量値の変動についてより正確に記述すれば、第1−1変位電極Em11と第1−1固定電極Ef11との離間距離は、第1傾動部213Aの全体的なZ軸正方向への変位の分だけ大きく増大する。一方、第1−2容量素子C12においては、第1梁221Aの傾動による変位が第1傾動部213Aの全体的なZ軸正方向への変位によって相殺されるため、第1−2変位電極Em12と第1−2固定電極Ef12との離間距離は僅かに増大する。このような傾動部213A〜213Dの全体的なZ軸正方向への変位による影響は、残りの容量素子C21〜C42においても、同様に現れる。
但し、ここでは、簡単のため、各傾動部213A〜221DのZ軸方向の長さ(高さ)に対して各梁221A〜221DのZ軸方向の長さが十分に大きいため、各梁221A〜221Dの第1変位部D11、D21、D31、D41に設けられた容量素子C11、C21、C31、C41の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC11|、|ΔC21|、|ΔC31|、|ΔC41|)と、第2変位部D12、D22、D32、D42に設けられた容量素子C12、C22、C32、C42の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC12|、|ΔC22|、|ΔC32|、|ΔC42|)とは、互いに等しいと考えて良い。
このため、前述した[式7]と同様にして各容量素子C11〜C42の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部241は、作用した力+Fzを次の[式10]により計測する。
[式10]
+Fz=−C11+C12+C21−C22−C31+C32+C41−C42
(2−4−4.X軸正まわりのモーメント+Mxが作用した場合)
次に、力覚センサ200cの受力部218,219に受力体260を介してX軸正まわりのモーメント+Mxが作用すると、図17から理解されるように、第1−1容量素子C11の静電容量値が減少し、第1−2容量素子C12の静電容量値が増大し、第2−1容量素子C21の静電容量値が増大し、第2−2容量素子C22の静電容量値が減少する。
更に、第3−1容量素子C31の静電容量値が増大し、第3−2容量素子C32の静電容量値が減少し、第4−1容量素子C41の静電容量値が減少し、第4−2容量素子C42の静電容量値が増大する。これらの容量素子C11〜C42の静電容量値の増減は、図20のMxの欄に纏めて示してある。
この場合も、Z軸正方向の力+Fzが作用する場合と同様に、各傾動部213A〜213Dが全体的にZ軸方向へ変位するため、正確には、当該変位を加味して各変位部D11〜D42の変位を評価する必要がある。但し、前述したように、各傾動部213A〜221DのZ軸方向の長さ(高さ)に対して各梁221A〜221DのZ軸方向の長さが十分に大きいため、各傾動部213A〜213DのZ軸方向への全体的な変位は無視することができる。すなわち、ここでも、各梁221A〜221Dの一方の変位部D11、D21、D31、D41に設けられた容量素子C11、C21、C31、C41の静電容量値の変動の大きさと、他方の変位部D12、D22、D32、D42に設けられた容量素子C12、C22、C32、C42の静電容量値の変動の大きさとは、互いに等しいものとする。なお、このことは、後述されるY軸正まわりのモーメント+Myが作用した場合でも同様とする。
このため、前述した[式7]と同様にして各容量素子C11〜C42の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部241は、作用したモーメント+Mxを次の[式11]により計測する。
[式11]
+Mx=−C11+C12+C21−C22+C31−C32−C41+C42
(2−4−5.Y軸正まわりのモーメント+Myが作用した場合)
次に、力覚センサ200cの受力部218,219に受力体260を介してY軸正まわりのモーメント+Myが作用すると、図17から理解されるように、第1−1容量素子C11の静電容量値が減少し、第1−2容量素子C12の静電容量値が増大し、第2−1容量素子C21の静電容量値が減少し、第2−2容量素子C22の静電容量値が増大する。
更に、第3−1容量素子C31の静電容量値が増大し、第3−2容量素子C32の静電容量値が減少し、第4−1容量素子C41の静電容量値が増大し、第4−2容量素子C42の静電容量値が減少する。これらの容量素子C11〜C42の静電容量値の増減は、図20のMyの欄に纏めて示してある。
このため、前述した[式7]と同様にして各容量素子C11〜C42の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部241は、作用したモーメント+Myを次の[式12]により計測する。
[式12]
+My=−C11+C12−C21+C22+C31−C32+C41−C42
(2−4−6.Z軸正まわりのモーメント+Mzが作用した場合)
次に、力覚センサ200cの受力部218,219に受力体260を介してZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用すると、図17から理解されるように、第1−1容量素子C11の静電容量値が減少し、第1−2容量素子C12の静電容量値が増大し、第2−1容量素子C21の静電容量値が減少し、第2−2容量素子C22の静電容量値が増大する。
更に、第3−1容量素子C31の静電容量値が減少し、第3−2容量素子C32の静電容量値が増大し、第4−1容量素子C41の静電容量値が減少し、第4−2容量素子C42の静電容量値が増大する。これらの容量素子C11〜C42の静電容量値の増減は、図20のMzの欄に纏めて示してある。
このため、前述した[式7]と同様にして各容量素子C11〜C42の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部241は、作用したモーメント+Mzを次の[式13]により計測する。
[式13]
+Mz=−C11+C12−C21+C22−C31+C32−C41+C42
なお、力覚センサ200cの受力体260に各軸方向の負の力−Fx、−Fy、−Fzまたは各軸の負まわりのモーメント−Mx、−My、−Mzが作用した場合は、前述したように、各容量素子C11〜C42の電極間の離間距離の増減が図17とは逆になる。このため、力−Fx、−Fy、−Fzまたはモーメント−Mx、−My、−Mzを検出するには、[式8]〜[式13]の右辺について、C11〜C42の符号を全て逆にすればよい。
< 2−5. 力覚センサの他軸感度 >
次に、図21を参照して、本実施の形態による力覚センサ200cの他軸感度について説明する。図21は、図18に示す力覚センサ200cにおける、各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸まわりのモーメントMx、My、Mzの他軸感度VFx〜VMzを一覧で示す図表である。
説明の便宜のため、改めて、[式8]〜[式13]をまとめて示すと、次の[式14]の通りである。なお、[式14]において、力及びモーメントが正であることを示す「+」の記号は省略してある。
[式14]
式8:Fx=C11−C12+C21−C22−C31+C32−C41+C42
式9:Fy=C11−C12−C21+C22−C31+C32+C41−C42
式10:Fz=−C11+C12+C21−C22−C31+C32+C41−C42
式11:Mx=−C11+C12+C21−C22+C31−C32−C41+C42
式12:My=−C11+C12−C21+C22+C31−C32+C41−C42
式13:Mz=−C11+C12−C21+C22−C31+C32−C41+C42
図21の図表中に配された数字は、図20に示す図表の各力Fx、Fy、Fz及び各モーメントMx、My、Mzについて、「+」の記号が付された容量素子を+1とし、「−」の記号が付された容量素子を−1として、上述した[式14]([式8]〜[式13])のそれぞれの右辺に代入して得られた値である。すなわち、列Fxと行VFxとが交わるマス目に記された「8」という数字は、Fxを示す式([式8])において、図20のFxの行に基づき、C11=C21=C32=C42=+1とし、C12=C22=C31=C41=−1として得られた値である。また、列FxとVFyとが交わるマス目に記された「0」という数字は、Fxを示す式([式8])において、図20のFyの行に基づき、C11=C22=C32=C41=+1とし、C12=C21=C31=C42=−1として得られた値である。その他のマス目の数字についても同様である。
図21によれば、FxとMyの他軸感度、及び、FyとMxの他軸感度が100%となっている。確かに、[式8]と[式12]とは、右辺の符号が互いに逆の関係にあり、[式9]と[式11]とは、右辺の符号が互いに逆の関係にある。このため、本実施の形態による力覚センサ200cは、FxとMyとを区別することができず、FyとMxとを区別することもできない。すなわち、力覚センサ200cは、各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸まわりのモーメントMx、My、Mzの全てを検出することはできない。しかしながら、Fx及びFyが作用しない用途、あるいは、Mx及びMyが作用しない用途に限定して用いることにより、力覚センサ200cを有用に活用することができる。
以上のような本実施の形態によれば、傾動部213A〜213Dの傾動によって変位する梁221A〜221Dの作用により、傾動部213A〜213Dに生じる変位を容易に増幅させることができる。更に、第1−1〜第4−2容量素子C11〜C42を用いて、それらの静電容量値の変動量の差分によって作用した力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzのうちの4成分を検出することができる。すなわち、本実施の形態によれば、低価格かつ高感度であり、更には、[式8]〜[式13]で算出されるFx〜Mzの全ての成分が差分で検出されることから、使用環境の温度変化や同相ノイズによる影響を受けにくい力覚センサ200cを提供することができる。
また、各変位体220A〜220Dは、それぞれ、対応する傾動部213A〜213Dと梁221A〜221Dとを接続する接続体222A〜222Dを有しており、各変位体220A〜220Dの第1変位部D11、D21、D31、D41及び第2変位部D12、D22、D32、D42は、接続体222A〜222Dと対応する梁221A〜221Dとの接続部位に関して対称的に配置されている。このため、第1変位部D11、D21、D31、D41に生じる変位と第2変位部D12、D22、D32、D42に生じる変位とが、同じ大きさで互いに異符号となるため、作用した力及びモーメントを簡易な演算によって検出することができる。
また、力覚センサ200cは、変形体210の2つの受力部218、219に接続され、作用する力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzを受けるための受力体260と、各変位体220A〜220Dに対向配置され、変形体210の2つの固定部216、217に接続された支持体250と、を備えている。このため、作用する力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzを確実に変形体210に伝達することができる。
更に、変形体210は、円環の形状を有しており、2つの受力部218、219は、X軸上に原点Oに関して対称に位置付けられており、2つの固定部216、217は、Y軸上に原点Oに関して対称に位置付けられている。このため、作用した力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzを検出するための演算が容易である。
<<< §3. 本発明の第3の実施の形態による力覚センサ及びその変形例 >>>
< 3−1. 本発明の第3の実施の形態による力覚センサ >
§2で説明した力覚センサ200cは、各軸方向の力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzのうち4つの成分を検出することが可能であった。ところで、これら4つの成分を検出するためには、力覚センサに必ずしも8つの容量素子を設ける必要は無い。ここでは、上述した力覚センサ200cの変形例として、より少ない容量素子によって4つの成分を検出可能な第3の実施の形態による力覚センサについて説明する。
図22は、本発明の第3の実施の形態による力覚センサ300cを示す概略上面図である。
図22に示すように、力覚センサ300cは、梁321A〜321Dが片持ち梁として構成されている点において、第2の実施の形態による力覚センサ200cとは異なっている。具体的には、力覚センサ300cの各梁321A〜321Dは、力覚センサ200cの各梁221A〜221Dのうち、図18の時計回りに進んだ方に位置する部位を削除した片持ち梁構造となっている。したがって、力覚センサ300cでは、各梁321A〜321Dに各1つの変位部D11、D21、D31、D41が規定されている。そして、これら4つの変位部D11、D21、D31、D41に各1つの容量素子C11、C12、C31、C41が配置されている。各容量素子C11〜C41の構成は、第2の実施の形態と同じである。
これらの4つの容量素子C11〜C41は、図22には図示されていないが、所定の回路によって検出回路340の計測部341に接続されており、各容量素子C11〜C41の静電容量値が当該計測部341に提供されるようになっている。そして、後述するように、計測部341は、各容量素子C11〜C41の静電容量値の変動量に基づいて、力覚センサ300cに作用した力を検出するようになっている。
力覚センサ300cのその他の構成については、第2の実施の形態と同様である。このため、第2の実施の形態と共通する構成要素には略同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
次に、本実施の形態による力覚センサ300cの作用について説明する。ここでは、XYZ三次元座標系における各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸周りのモーメントMx、My、Mzのうち、Fz、Mx、My及びMzの4つの成分を検出する場合について説明を行う。なお、これら4つの成分は、第2の実施の形態による力覚センサ200cが検出可能な4つの成分でもある。
上述したように、本実施の形態による力覚センサ300cは、梁321A〜321Dが片持ち梁として構成されている点を除いて、第2の実施の形態による力覚センサ200cと略同様の構造を有している。したがって、受力体360を介して受力部318、319に力またはモーメントが作用すると、各梁321A〜321Dの各検出部D11、D21、D31、D41には、第2の実施の形態による力覚センサ200cの対応する各検出部D11、D21、D31、D41と同じ変位が生じる。
以上から、力覚センサ300cに力及びモーメントの4つの成分Fz、Mx、My、Mzが作用すると、各容量素子C11〜C41の静電容量値は、図23に一覧で示すように変動する。図20と同様に、図中の「+」の記号は、静電容量値が増大することを示しており、「−」の記号は、静電容量値が減少することを示している。なお、図23の図表は、図20における、力Fz及びモーメントMx、My、Mzが作用したときの4つの容量素子C11、C21、C31、C41の静電容量値の増減と、同一である。
このような静電容量値の変動に基づいて、計測部341は、作用した力Fz及びモーメントMx、My、Mzを次の[式15]により計測する。[式15]は、[式14]のFz、Mx、My及びMzの式から、C12、C22、C32、C42を削除したものである。
[式15]
Fz=−C11+C21−C31+C41
Mx=−C11+C21+C31−C41
My=−C11−C21+C31+C41
Mz=−C11−C21−C31−C41
[式15]に基づき、力Fz及びモーメントMx、My、Mzの他軸感度を求めると、図24に一覧で示す通りとなる。他軸感度は、図21と同様に、図23に示す図表の力Fz及びモーメントMx、My、Mzについて、「+」の記号が付された容量素子を+1とし、「−」の記号が付された容量素子を−1として、上述した[式15]のそれぞれの右辺に代入して得られた値である。図24に示すように、力Fz及びモーメントMx、My、Mzの他軸感度は、ゼロである。但し、[式15]によれば、Z軸まわりのモーメントMzがC11〜C41の和によって求められる。このため、モーメントMzについては、力覚センサ300cの使用環境における温度変化や同相ノイズの影響を受けやすい点に注意が必要である。
以上のような本実施の形態によれば、傾動部313A〜313Dの傾動によって変位する梁321A〜321Dの作用により、傾動部313A〜313Dに生じる変位を容易に増幅させることができる。更に、Z軸まわりのモーメントMzを除いて、4つの容量素子C11〜C41の静電容量値の変動量の差分によって、作用した力Fz及びモーメントMx,Myを検出することができる。すなわち、本実施の形態によれば、低価格かつ高感度であり、力Fz及びモーメントMx,Myについて、使用環境の温度変化や同相ノイズによる影響を受けにくい力覚センサ300cを提供することができる。
また、力覚センサ300cは、変形体310の2つの受力部318、319に接続され、作用する力Fz及びモーメントMx、My、Mzを受けるための受力体360と、各変位体320A〜320Dに対向配置され、変形体310の2つの固定部316、317に接続された固定体350と、を備えている。このため、作用する力Fz及びモーメントMx、My、Mzを確実に変形体310に伝達することができる。
更に、変形体310は、円環の形状を有しており、2つの受力部318、319は、X軸上に原点Oに関して対称に位置付けられており、2つの固定部316、317は、Y軸上に原点Oに関して対称に位置付けられている。このため、作用した力Fz及びモーメントMx、My、Mzを検出するための演算が容易である。
< 3−2. 変形例による力覚センサ >
上述したように、力覚センサ300cは、Z軸まわりのモーメントMzを計測する際に、使用環境における温度変化の影響や同相ノイズの影響を受けやすいものであった。このため、当該モーメントMzを計測する際に、それらの影響を受けにくくできればより好ましい。ここでは、そのような力覚センサとして、6つの容量素子を備えた変形例について説明する。
図25は、第3の実施の形態の変形例による力覚センサ301cを示す概略上面図である。
図25に示すように、力覚センサ301cは、第1及び第2梁321A、321Bが片持ち梁として構成されている点において、第2の実施の形態による力覚センサ200cとは異なっている。具体的には、本変形例による力覚センサ301cの第1及び第2梁321A、321Bは、第3の実施の形態による力覚センサ300cの第1及び第2梁321A、321Bと同様であり、力覚センサ301cの第3及び第4梁321、321Dは、図18に示す第2の実施の形態による力覚センサ200cの第3及び第4梁221C、221Dと同様である。したがって、力覚センサ301cでは、第1梁321Aに第1−1変位部D11が、第2梁321Bに第2−1変位部D21が、それぞれ規定されており、第3梁321Cに第3−1変位部D31及び第3−2変位部D32が、第4梁321Dに第4−1変位部D41及び第4−2変位部D42が、それぞれ規定されている。第3−1変位部D31、第3−2変位部D32、第4−1変位部D41及び第4−2変位部D42の配置は、第2の実施の形態による力覚センサ200cの対応する変位部D31〜D42の配置と同一である。そして、これら6つの変位部D11、D21、D31、D32、D41、D42に各1つの容量素子C11、C21、C31、C32、C41、C42が配置されている。各容量素子の構成は、第2の実施の形態と同じである。
図25には明確には図示されていないが、これらの6つの容量素子C11、C21、C31、C32、C41、C42は、所定の回路によって計測部341に接続されており、各容量素子の静電容量値が計測部341に提供されるようになっている。そして、後述するように、計測部341は、各容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、力覚センサ301cに作用した力を検出するようになっている。
力覚センサ301cのその他の構成については、第2の実施の形態と同様である。このため、第2の実施の形態と共通する構成要素には略同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
次に、本実施の形態による力覚センサ301cの作用について説明する。ここでは、第3の実施の形態と同様に、XYZ三次元座標系における各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸周りのモーメントMx、My、Mzのうち、Fz、Mx、My及びMzの4つの成分を検出する場合について説明を行う。
本実施の形態による力覚センサ301cは、受力体360を介して受力部318、319に力またはモーメントが作用すると、6つの検出部D11、D21、D31、D32、D41、D42には、それぞれ、第2の実施の形態による力覚センサ200cの対応する検出部D11、D21、D31、D32、D41、D42と同じ変位が生じる。
したがって、力覚センサ301cに力及びモーメントが作用すると、各容量素子の静電容量値は、図20のうち対応する容量素子と同様に変動する。このような静電容量値の変動に基づいて、計測部341は、作用した力Fz及びモーメントMx、My、Mzを次の[式16]により計測する。[式16]に示す4つの式のうち、Fz、Mx及びMyの式は、[式15]の対応する式とそれぞれ同一である。もちろん、[式16]において、力Fz及びモーメントMx、My、Mzの他軸感度は、いずれもゼロである。
[式16]
Fz=−C11+C21−C31+C41
Mx=−C11+C21+C31−C41
My=−C11−C21+C31+C41
Mz=−C11−C21+C32+C42
以上のような本実施の形態によれば、第3の実施の形態において説明した効果に加え、Z軸まわりのモーメントMzを差分によって演算することができるため、力覚センサ301cの使用環境における温度変化や同相ノイズの影響を排除して、高精度に当該モーメントMzを計測することができる。
< 3−3. 更なる変形例による力覚センサ >
(3−3−1.変形例1)
力Fz及びモーメントMx、My、Mzを検出するための力覚センサ300cとして、図22においては、4つの容量素子C12、C22、C32、C42を削除したものを示したが、このような態様には限定されない。他の例による力覚センサとしては、4つの容量素子C11、C22、C31、C42を削除したものが考えられる。すなわち、この力覚センサは、4つの容量素子C12、C21、C32、C41を有している。
この力覚センサに対して、力及びモーメントが作用したときの各容量素子C12、C21、C32、C41の増減は、図20に示す容量素子C12、C21、C32、C41の増減と同一である。したがって、この力覚センサの計測部341は、作用した力Fz及びモーメントMx、My、Mzを次の[式17]により計測する。[式17]は、[式14]のFz、Mx、My及びMzの式から、C11、C22、C31、C42を削除したものである。
[式17]
Fz=C12+C21+C32+C41
Mx=C12+C21−C32−C41
My=C12−C21−C32+C41
Mz=C12−C21+C32−C41
各容量素子C12、C21、C32、C41の増減及び[式17]に基づき、力Fz及びモーメントMx、My、Mzの他軸感度を求めると、図24と同一になる。したがって、力Fz及びモーメントMx、My、Mzの他軸感度は、ゼロである。但し、[式17]によれば、Z軸方向の力Fzは、C12、C21、C32、C41の和に基づいて求められる。このため、力Fzについては、力覚センサの使用環境における温度変化や同相ノイズの影響を受けやすい点に注意が必要である。
(3−3−2.変形例2)
あるいは、力Fz及びモーメントMx、My、Mzを検出するための力覚センサ300cとして4つの容量素子C12、C21、C32、C41を削除したものも考えられる。
すなわち、この力覚センサは、4つの容量素子C11、C22、C31、C42を有している。
この力覚センサに対して、力及びモーメントが作用したときの各容量素子C12、C21、C32、C41の増減は、図20に示す容量素子C11、C22、C31、C42の増減と同一である。したがって、この力覚センサの計測部341は、作用した力Fz及びモーメントMx、My、Mzを次の[式18]により計測する。[式18]は、[式14]のFz、Mx、My及びMzの式から、C12、C21、C32、C41を削除した式に一致する。
[式18]
Fz=−C11−C22−C31−C42
Mx=−C11−C22+C31+C42
My=−C11+C22+C31−C42
Mz=−C11+C22−C31+C42
各容量素子C11、C22、C31、C42の増減及び[式18]に基づき、力Fz及びモーメントMx、My、Mzの他軸感度を求めると、図24と同一になる。したがって、力Fz及びモーメントMx、My、Mzの他軸感度は、ゼロである。但し、[式18]によれば、Z軸方向の力Fzは、C11、C22、C31、C42の和に基づいて求められる。このため、本変形例においても、力Fzについては、力覚センサの使用環境における温度変化や同相ノイズの影響を受けやすい点に注意が必要である。
<<< §4. 本発明の第4の実施の形態による力覚センサ及びその変形例 >>>
< 4−1. 本発明の第4の実施の形態による力覚センサ >
§3では、第3の実施の形態及びその変形例として、特にモーメントMx、My、Mzを重点的に計測するのに適した力覚センサについて説明を行った。ここでは、力Fx、Fy、Fzを重点的に計測するのに適した第4の実施の形態による力覚センサについて説明する。
図26は、本発明の第4の実施の形態による力覚センサ400cを示す概略上面図である。
本実施の形態による力覚センサ400cは、第3の実施の形態と同様に4つの容量素子を有する力覚センサ300cであるが、それらの配置が異なっている。具体的には、力覚センサ400cの各梁421A〜421Dは、力覚センサ200cの各梁221A〜221Dのうち、固定部216、217側の部位をそれぞれ削除した片持ち梁構造となっている。したがって、力覚センサ400cでは、各梁421A〜421Dに各1つの変位部D11、D22、D31、D42が規定されている。そして、これら4つの変位部D11、D22、D31、D42に各1つの容量素子C11、C22、C31、C42が配置されている。各容量素子の構成は、第2の実施の形態と同じである。
これらの4つの容量素子C11、C22、C31、C42は、図26には明確には図示されていないが、所定の回路によって計測部441に接続されており、各容量素子の静電容量値が計測部441に提供されるようになっている。そして、後述するように、計測部441は、各容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、力覚センサ400cに作用した力を検出するようになっている。
力覚センサ400cのその他の構成については、第2及び第3の実施の形態と同様である。このため、第2及び第3の実施の形態と共通する構成要素には略同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
次に、本実施の形態による力覚センサ400cの作用について説明する。ここでは、XYZ三次元座標系における各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸周りのモーメントMx、My、Mzのうち、Fx、Fy、Fz及びMzの4つの成分を検出する場合について説明を行う。なお、これら4つの成分は、第2の実施の形態による力覚センサ200cが検出可能な4つの成分でもある。
図27は、図26に示す力覚センサ400cに力及びモーメントの4つの成分Fx、Fy、Fz、Mzが作用したときの、各容量素子の静電容量値の変動を一覧で示す図表である。上述したように、本実施の形態による力覚センサ400cは、梁421A〜421Dが片持ち梁として構成されている点を除いて、第2の実施の形態による力覚センサ200cと同様の構造を有している。したがって、受力体460を介して受力部418、419に力またはモーメントが作用すると、各梁421A〜421Dの各検出部D11、D22、D31、D42には、それぞれ、第2の実施の形態による力覚センサ200cにおける対応する検出部D11、D22、D31、D42と同じ変位が生じる。
したがって、力覚センサ400cに力及びモーメントの4つの成分Fx、Fy、Fz、Mzが作用すると、各容量素子の静電容量値は、図27に一覧で示すように変動する。図20と同様に、図中の「+」の記号は、静電容量値が増大することを示しており、「−」の記号は、静電容量値が減少することを示している。なお、図27の図表は、図20における、力Fx、Fy、Fz及びモーメントMzが作用したときの4つの容量素子C11、C22、C31、C42の静電容量値の増減と、同一である。
このような静電容量値の変動に基づいて、計測部441は、作用した力Fx、Fy、Fz及びモーメントMzを次の[式19]により計測する。[式19]は、[式14]のFz、Mx、My及びMzの式から、C12、C21、C32、C41を削除した式に一致する。
[式19]
Fx=C11−C22−C31+C42
Fy=C11+C22−C31−C42
Fz=−C11−C22−C31−C42
Mz=−C11+C22−C31+C42
[式19]に基づき、力Fx、Fy、Fz及びモーメントMzの他軸感度を求めると、図24に一覧で示す通り、いずれもゼロである。他軸感度の算出方法は、他の実施の形態と同様である。但し、[式19]によれば、Z軸方向の力FzがC11、C22、C31、C42の和によって求められる。このため、力Fzについては、力覚センサ400cの使用環境における温度変化や同相ノイズの影響を受けやすい点に注意が必要である。
以上のような本実施の形態によれば、傾動部413A〜413Dの傾動によって変位する梁411A〜411Dの作用により、傾動部413A〜413Dに生じる変位を容易に増幅させることができる。更に、Z軸方向の力Fzを除いて、4つの容量素子C11、C22、C31、C42の静電容量値の変動量の差分によって、作用した力Fx、Fy及びモーメントMzを検出することができる。すなわち、本実施の形態によれば、低価格かつ高感度であり、力Fx、Fy及びモーメントMzについて、使用環境の温度変化や同相ノイズによる影響を受けにくい力覚センサ400cを提供することができる。
また、力覚センサ400cは、変形体410の2つの受力部418、419に接続され、作用する力Fx、Fy、Fz及びモーメントMzを受けるための受力体460と、各変位体420A〜420Dに対向配置され、変形体410の2つの固定部416、417に接続された固定体450と、を備えている。このため、作用する力Fx、Fy、Fz及びモーメントMzを確実に変形体410に伝達することができる。
更に、変形体410は、円環の形状を有しており、2つの受力部418、419は、X軸上に原点Oに関して対称に位置付けられており、2つの固定部416、417は、Y軸上に原点Oに関して対称に位置付けられている。このため、作用した力Fx、Fy、Fz及びモーメントMzを検出するための演算が容易である。
< 4−2. 変形例による力覚センサ >
上述したように、力覚センサ400cは、Z軸方向の力Fzを計測する際に、使用環境における温度変化の影響や同相ノイズの影響を受けやすいものであった。このため、当該力Fzを計測する際に、それらの影響を受けにくくできればより好ましい。ここでは、そのような力覚センサとして、6つの容量素子を備えた変形例について説明する。
図28は、第4の実施の形態の変形例による力覚センサ401cを示す概略上面図である。
図28に示すように、力覚センサ401cは、第1及び第2梁421A、421Bが片持ち梁として構成されている点において、第2の実施の形態による力覚センサ200cとは異なっている。具体的には、力覚センサ401cの第1及び第2梁421A、421Bは、第3の実施の形態による力覚センサ400cの第1及び第2梁421A、421Bと同様であり、力覚センサ401cの第3及び第4梁421、421Dは、図18に示す第2の実施の形態による力覚センサ200cの第3及び第4梁221C、221Dと同様である。したがって、力覚センサ401cでは、第1梁421Aに第1−1変位部D11が、第2梁421Bに第2−2変位部D22が規定されており、第3梁421Cに第3−1変位部D31及び第3−2変位部D32が、第4梁421Dに第4−1変位部D41及び第4−2変位部D42が、それぞれ規定されている。第3−1変位部D31、第3−2変位部D32、第4−1変位部D41及び第4−2変位部D42の配置は、第2の実施の形態による力覚センサ200cの対応する変位部D31〜D42の配置と同一である。そして、これら6つの変位部D11、D22、D31、D32、D41、D42に各1つの容量素子C11、C22、C31、C32、C41、C42が配置されている。各容量素子の構成は、第2の実施の形態と同じである。
図28には明確には図示されていないが、これらの6つの容量素子C11、C22、C31、C32、C41、C42は、所定の回路によって計測部441に接続されており、各容量素子の静電容量値が計測部441に提供されるようになっている。そして、後述するように、計測部441は、各容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、力覚センサ401cに作用した力を検出するようになっている。
力覚センサ401cのその他の構成については、第2の実施の形態と同様である。このため、第2の実施の形態と共通する構成要素には略同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
次に、本実施の形態による力覚センサ401cの作用について説明する。ここでは、第4の実施の形態と同様に、XYZ三次元座標系における各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸周りのモーメントMx、My、Mzのうち、Fx、Fy、Fz及びMzの4つの成分を検出する場合について説明を行う。
本実施の形態による力覚センサ401cは、受力体460を介して受力部418、419に力またはモーメントが作用すると、6つの検出部D11、D22、D31、D32、D41、D42には、第2の実施の形態による力覚センサ200cの対応する検出部D11、D22、D31、D32、D41、D42と同じ変位が生じる。
したがって、力覚センサ401cに力及びモーメントが作用すると、各容量素子の静電容量値は、図20のうち対応する容量素子と同様に変動する(C11、C22、C31、C42については、図27と同じである)。このような静電容量値の変動に基づいて、計測部441は、作用した力Fx、Fy、Fz及びモーメントMzを次の[式20]により計測する。[式20]に示す4つの式のうち、Fx、Fy及びMzの式は、[式19]の対応する式とそれぞれ同一である。もちろん、[式20]において、力Fz及びモーメントMx、My、Mzの他軸感度は、いずれもゼロである。
[式20]
Fx=C11−C22−C31+C42
Fy=C11+C22−C31−C42
Fz=−C11−C22+C32+C41
Mz=−C11+C22−C31+C42
以上のような本実施の形態によれば、第4の実施の形態において説明した効果に加え、Z軸方向の力Fzを差分によって演算することができるため、力覚センサ401cの使用環境における温度変化や同相ノイズの影響を排除して、高精度に当該力Fzを計測することができる。
以上から、§3及び§4で説明したように、図1に示す力覚センサ100cを4つ、閉ループ状に並べることで、力の4成分(Fz、Mx、My、Mzの組、またはFx、Fy、Fz、Mzの組)を検出することができる。もちろん、これらの4成分のうち任意の成分のみを検出しても良い。
なお、§3及び§4で説明した各実施の形態及びそれらの変形例による力覚センサ300c、301c、400c、401cは、特定の梁を片持ち梁構造に置換したモデルとして説明を行った。しかしながら、このような例には限られず、図18に示す両持ち梁構造を維持したままで、各力覚センサ300c、301c、400c、401cにおいて用いられている特定の容量素子に着目し、それらの容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、作用した力及びモーメントを計測しても良い。
<<< §5. 本発明の第5の実施の形態による力覚センサ >>>
< 5−1. 基本構造の構成 >
次に、本発明の第5の実施の形態による力覚センサについて説明する。
図29は、本発明の第5の実施の形態による力覚センサの基本構造500を示す概略上面図であり、図30は、Y軸正側から見た基本構造500を示す概略側面図である。ここでは、図29及び図30に示すようにXYZ三次元座標系を定義して以下の説明を行うこととする。なお、図29では、説明の便宜上、受力体560の図示が省略されている。
図29及び図30に示すように、基本構造500は、閉ループ状の矩形変形体510であって、4つの受力部514A、514B、514D、514Fと、閉ループ状の経路に沿って前記4つの受力部514A、514B、514D、514Fと交互に配置された4つの固定部515B、515C、515E、515Hと、閉ループ状の経路に沿って隣接する受力部及び固定部によって挟まれた8つの間隙に1つずつ配置され、受力部514A、514B、514D、514Fに作用した力またはモーメントにより弾性変形を生じる8つの変形要素510A〜510Hと、を有する矩形変形体510と、各変形要素510A〜510Hに接続され、当該変形要素510A〜510Hに生じる弾性変形により変位を生じる8つの変位体520A〜520Hと、を備えている。
図29に示すように、4つの受力部514A、514B、514D、514Fは、正のX軸上、負のX軸上、正のY軸上及び負のY軸上にそれぞれ1つずつ原点Oから等距離で配置されている。また、4つの固定部515B、515C、515E、515Hは、原点Oを通り正のX軸に対して反時計回りに45°の角度を成す直線上、及び、原点Oを通り正のY軸に対して反時計回りに45°の角度を成す直線上、にそれぞれ原点Oに関して対称的に各1つずつ配置されている。これら4つの固定部515B、515C、515E、515Hは、矩形変形体510の4つの頂点を構成している。したがって、図29に示すように、矩形変形体510は、Z軸方向から見て正方形の形状を有している。
矩形変形体510の各変形要素510A〜510Hの配置について見ると、負のX軸上に配置された第1受力部514Aの両隣に配置された第1変形要素510A及び第8変形要素510Hと、正のX軸上に配置された第3受力部514Dの両隣に配置された第4変形要素510D及び第5変形要素510Eとは、共にY軸に平行に延在している。また、正のY軸上に配置された第2受力部514Bの両隣に配置された第2変形要素510B及び第3変形要素510Cと、負のY軸上に配置された第4受力部514Fの両隣に配置された第6変形要素510F及び第7変形要素510Gとは、共にX軸に平行に延在している。
次に、各変形要素510A〜510Hの構成について説明する。ここでは、図29及び図30を参照して、第2及び第3変形要素510B、510Cの構成を詳細に説明し、その説明に基づいて残りの変形要素の構成を説明する。
図29及び図30に示すように、XY平面の第2象限(図29の左上の領域)にX軸と平行に配置された第2変形要素510Bは、X軸負側に配置された第1固定部515BとY軸上に配置された第2受力部514Bとの間に配置されており、Z軸方向(図29における奥行き方向)を長手方向とする第2傾動部513Bと、第2受力部514Bと第2傾動部513Bとを接続する第2−1変形部511Bと、第1固定部515Bと第2傾動部513Bとを接続する第2−2変形部512Bと、を有している。図30に示すように、第2−1変形部511Bは、XY平面と平行に延在し、第2傾動部513BのZ軸負側の端部(図30における下端部)にて、当該第2傾動部513Bに接続されている。第2−2変形部512Bは、XY平面と平行に延在し、第2傾動部513BのZ軸正側の端部(図30における上端部)にて、当該第2傾動部513Bに接続されている。
図29及び図30に示すように、XY平面の第1象限(図29の右上の領域)にX軸と平行に配置された第3変形要素510Cは、X軸正側に配置された第2固定部515CとY軸上に配置された第2受力部514Bとの間に配置されており、Z軸方向を長手方向とする第3傾動部513Cと、第2受力部514Bと第3傾動部513Cとを接続する第3−1変形部511Cと、第2固定部515Cと第3傾動部513Cとを接続する第3−2変形部512Cと、を有している。図30に示すように、第3−1変形部511Cは、XY平面と平行に延在し、第3傾動部513CのZ軸負側の端部(下端)にて、当該第3傾動部513Cに接続されている。第3−2変形部512Cは、XY平面と平行に延在し、第3傾動部513CのZ軸正側の端部(上端)にて、当該第3傾動部513Cに接続されている。
更に、詳細には図示されていないが、X座標が負の領域(図29におけるY軸の左側の領域)にY軸と平行に配置された第1変形要素510A及び第8変形要素510Hは、上述した第2及び第3変形要素510B,510Cを、原点Oを中心として反時計回りに90°回転させたときの当該第3変形要素510C及び第2変形要素510Bの構成に、それぞれ対応している。
また、X座標が正の領域(図29におけるY軸の右側の領域)にY軸と平行に配置された第4変形要素510D及び第5変形要素510Eは、上述した第2及び第3変形要素510B,510Cを、原点Oを中心として時計回りに90°回転させたときの当該第2変形要素510B及び第3変形要素510Cの構成に、それぞれ対応している。Y座標が負の領域(図29におけるX軸の下側の領域)にX軸と平行に配置された第6変形要素510F及び第7変形要素510Gは、上述した第2及び第3変形要素510B,510Cを、原点Oを中心として時計回りに180°回転させたときの当該第2変形要素510B及び第3変形要素510Cの構成に、それぞれ対応している。
以上の対応関係により、ここでは、第1及び第4〜8変形要素510A、510D〜510Hの詳細な説明は省略する。なお、図29及び図30において、第1及び第4〜8変形要素510A、510D〜510Hの構成要素には符号の末尾に「A」、「D」〜「H」がそれぞれ付されている。
更に、基本構造500の各固定部515B、515C、515E、515Hは、その下端部が、後述される第1〜第8梁521A〜521Hに所定の間隔を空けて対向配置された支持体550に接続されている。
図29及び図30に示すように、前述した8つの変位体520A〜520Hは、第1〜第8変形要素510A〜510Hの各傾動部513A〜513Hの下端(Z軸負側の端部)に1つずつ接続されている。各変位体520A〜520Hは、それぞれ、対応する傾動部513A〜513Hの傾動によって変位する変位部を有している。この変位部は、図29及び図30に示すように、各傾動部513A〜513Hの下端に接続体522A〜522Hを介してそれぞれ取り付けられた第1〜第8梁521A〜521Hである。
各変位体520A〜520Hの具体的な構成は、第2の実施の形態で説明した第1変位体220Aの構成と同様である。このため、図29及び図30では、第2の実施の形態に対応する構成要素には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。後述されるように、各変位体520A〜520Hの各変位部D11〜D82のそれぞれに容量素子が配置され、受力部514A、514B、514D、514Fに作用した力及びモーメントが検出されることになる。結局、基本構造500は、第1〜第8変形要素510A〜510Hとして、§1で説明した基本構造100を8つ、矩形の閉ループ状に配置されて構成されている。
更に、図30に示すように、矩形変形体510のZ軸正側には、検出対象の力を受けるための受力体560が配置されている(図29では図示が省略されている)。受力体560は、Z軸方向から見て、矩形変形体510と重なる矩形の形状を有する受力体本体561と、受力体本体561のうち、矩形変形体510の受力部514A、514B、514D、514Fに面する部位に設けられた受力部接続体562〜565(563〜565は図示されず)と、を有している。これらの受力部接続体562〜565が、対応する受力部514A、514B、514D、514Fに接続され、受力体本体561に作用した力及びモーメントが、当該受力部514A、514B、514D、514Fに伝達されるようになっている。
< 5−2. 基本構造の作用 >
次に、以上のような基本構造500の作用について説明する。
(5−2−1.力+Fxが作用した場合)
図31は、受力体560にX軸正方向の力+Fxが作用したときに、図29の基本構造500の各変位体520A〜520Hに生じる変位を説明するための図である。図中の矢印等の記号の意味は、§2で説明した通りである。
受力体560を介して受力部514A、514B、514D、514FにX軸正方向の力+Fxが作用することにより、各受力部514A、514B、514D、514FがX軸正方向へ変位する。この結果、図31に示すように、第3変形要素510C及び第6変形要素510Fは、図3に示すような圧縮力の作用を受ける。この場合、第3傾動部513Cが反時計回りに傾動し、第6傾動部513Fが時計回りに傾動する。すなわち、第3梁521Cが反時計回りに傾動し、第6梁513Fが時計回りに傾動する。これらの結果、第3−1変位部D31がZ軸負方向に変位し、第3−2変位部D32がZ軸正方向に変位し、第6−1変位部D61がZ軸正方向に変位し、第6−2変位部D62がZ軸負方向に変位する。
同時に、図31に示すように、第2変形要素510B及び第7変形要素510Gは、図4に示すような引張力の作用を受ける。この結果、第2傾動部513Bが反時計回りに傾動し、第7傾動部513Gが時計回りに傾動する。すなわち、第2梁521Bが反時計回りに傾動し、第7梁513Gが時計回りに傾動する。これらの結果、第2−1変位部D21がZ軸負方向に変位し、第2−2変位部D22がZ軸正方向に変位し、第7−1変位部D71がZ軸正方向に変位し、第7−2変位部D72がZ軸負方向に変位する。
一方、X軸上に位置する2つの受力部514A、514Dは、第1、第4、第5、第8変形要素510A、510D、510E、510Hの整列方向(Y軸方向)に対して直交する方向(X軸方向)に移動する。このため、これら4つの変形要素510A、510D、510E、510Hに対応する容量素子C11、C12、C41、C42、C51、C52、C81、C82では、各容量素子を構成する変位電極Em11、Em12、Em41、Em42、Em51、Em52、Em81、Em82のそれぞれにおいて、一部がZ軸正方向に変位し、他の一部がZ軸負方向に変位する。すなわち、各容量素子は、一部において極板間の離間距離が増大する一方、他の一部において当該離間距離が減少する。したがって、当該8つの容量素子C11、C12、C41、C42、C51、C52、C81、C82の静電容量値は、いずれも実質的に変化しないと考えて良い。
なお、基本構造500の受力部514A、514B、514D、514FにY軸正方向の力+Fyが作用したときの当該基本構造500の作用は、上述した、X軸正方向の力+Fxが作用したときの基本構造500の作用を、原点Oを中心として反時計回りに90°回転させて考えればよい。このため、ここでは、その詳細な説明は省略する。
(5−2−2.力+Fzが作用した場合)
次に、図32は、受力体560にZ軸正方向の力+Fzが作用したときに、図29の基本構造500の各変位体520A〜520Hに生じる変位を説明するための図である。図中の矢印等の記号の意味は、§2で説明した通りである。
受力体560を介して受力部514A、514B、514D、514FにZ軸正方向の力+Fzが作用することにより、各受力部514A、514B、514D、514FがZ軸正方向へ変位する。この結果、図32に示すように、第1〜第8変形要素510A〜510Hは、いずれも、図6に示すような上向きの力の作用を受ける。この場合、第1、3、5及び7傾動部513A、513C、513E、513Gが時計回りに傾動し、残りの第2、4、6及び8傾動部513B、513D、513F、513Hが反時計回りに傾動する。すなわち、第1、3、5及び7梁521A、521C、521E、521Gが時計回りに傾動し、残りの第2、4、6及び8傾動部513B、513D、513F、513Hが反時計回りに傾動する。
これらの結果、第1−1、第2−2、第3−1、第4−2、第5−1、第6−2、第7−1及び第8−2変位部D11、D22、D31、D42、D51、D62、D71、D82がZ軸正方向に変位し、残りの第1−2、第2−1、第3−2、第4−1、第5−2、第6−1、第7−2及び第8−1変位部D12、D21、D32、D41、D52、D61、D72、D81がZ軸負方向に変位する。
(5−2−3.モーメント+Mxが作用した場合)
次に、基本構造500の受力体560(受力部)にX軸正まわりのモーメント+Mxが作用したときの当該基本構造500の作用について説明する。
図33は、受力体560にX軸正まわりのモーメント+Mxが作用したときに、図29の基本構造500の各変位体520A〜520Hに生じる変位を説明するための図である。図中の矢印等の記号の意味は、§2で説明した通りである。
受力体560にX軸正まわりのモーメント+Mxが作用すると、正のY軸上に位置する第2受力部514BがZ軸正方向(図33における手前方向)に変位し、負のY軸上に位置する第4受力部514FがZ軸負方向(図33における奥行き方向)に変位する。したがって、図33に示すように、第2及び第3変形要素510B、510Cは、力+Fzが作用したときと同様に、図6に示すような上向きの力の作用を受ける。すなわち、5−2−2.で説明したように、第2−1及び第3−2変位部D21、D32がZ軸負方向に変位し、第2−2及び第3−1変位部D22、D31がZ軸正方向に変位する。
一方、図33に示すように、第6及び第7変形要素510F、510Gは、力+Fzが作用したときとは逆に、図5に示すような下向きの力の作用を受ける。この場合、第6傾動部513Fは時計回りに傾動し、第7傾動部513Gは反時計回りに傾動する。すなわち、第6梁521Fは時計回りに傾動し、第7梁521Gは反時計回りに傾動する。この結果、第6−1変位部D61及び第7−2変位部D72はZ軸正方向に変位し、第6−2変位部D62及び第7−1変位部D71はZ軸負方向に変位する。
一方、モーメント+Mxの中心軸線上(X軸上)に位置する第1及び第3受力部514A、514Dは、実質的に変位しない。このため、第1及び第3受力部514A、514Dに接続された第1、第4、第5及び第8変形要素510A、510D、510E、510Hには、実質的に圧縮力も引張力も作用しない。すなわち、各変形要素510A、510D、510E、510Hに対応する変位部D11、D12、D41、D42、D51、D52、D81、D82は、X軸まわりのモーメントMxによってZ軸方向へは変位しない。
なお、基本構造500の受力部514A、514B、514D、514FにY軸正まわりのモーメント+Myが作用したときの当該基本構造500の作用は、上述した、X軸正まわりのモーメント+Mxが作用した場合を、原点Oを中心として反時計回りに90°回転させて考えればよい。このため、ここでは、その詳細な説明は省略する。
(5−2−4.モーメント+Mzが作用した場合)
次に、図34は、受力体560にZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用したときに、図29の基本構造500の各変位体520A〜520Hに生じる変位を説明するための図である。図中の矢印等の記号の意味は、§2で説明した通りである。
受力体560にZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用すると、図34に示すように、負のX軸上に位置する第1受力部514AがX軸負方向に変位し、正のY軸上に位置する第2受力部514BがX軸負方向に変位し、正のX軸上に位置する第3受力部514DがY軸正方向に変位し、負のY軸上に位置する第4受力部514FがX軸正方向に変位する。したがって、図34に示すように、第2、第4、第6及び第8変形要素510B、510D、510F、510Hは、図3に示すような圧縮力の作用を受ける。この場合、第2、第4、第6及び第8傾動部513B、513D、513F、513Hが時計回りに傾動するため、第2、第4、第6及び第8梁521B、521D、521F、521Hも時計回りに傾動する。この結果、第2−1、第4−1、第6−1及び第8−1変位部D21、D41、D61、D81がZ軸正方向に変位し、第2−2、第4−2、第6−2及び第8−2変位部D22、D42、D62、D82がZ軸負方向に変位する。
更に、図34に示すように、第1、第3、第5及び第7変形要素510A、510C、510E、510Gが図4に示すような引張力の作用を受ける。この場合、第1、第3、第5及び第7傾動部513A、513C、513E、513Gが時計回りに傾動するため、第1、第3、第5及び第7梁521A、521C、521E、521Gも時計回りに傾動する。この結果、第1−1、第3−1、第5−1及び第7−1変位部D11、D31、D51、D71がZ軸正方向に変位し、第1−2、第3−2、第5−2及び第7−2変位部D12、D32、D52、D72がZ軸負方向に変位する。
以上のまとめとして、図35には、受力体560にXYZ三次元座標系の各軸方向の力+Fx、+Fy、+Fz及び各軸方向のモーメント+Mx、+My、+Mzが作用したときに図29の基本構造500の各傾動部513A〜513Hに生じる傾動の向きと、各変位体520A〜520Hの各変位部D11〜D82に生じる変位とが、一覧で示されている。図35において、各傾動部513A〜513Hの欄に記された回動の向き(時計回り/反時計回り)は、原点Oから観測したときの向きである。また、各変位部D11〜D48の欄に記された「+」の記号は、対応する変位部と支持体550との離間距離が増大することを意味し、「−」の記号は、対応する変位部と支持体550との離間距離が減少することを意味する。
なお、受力体560に作用する力及びモーメントが負方向及び負まわりである場合には、上述した各場合において、傾動部513A〜513Hの傾動の向きが全て逆になる。この結果、各変位体520A〜520Hの変位部D11〜D82に生じる変位の向きが逆になり、図35に一覧で示した傾動の向き、及び、各変位部D11〜D82と支持体550との離間距離の増減(+/−)が、全て逆になる。
< 5−3. 力覚センサの構成 >
次に、5−1、5−2において説明した基本構造500を有する力覚センサ500cの構成について説明する。
図36は、図29の基本構造500を用いた本発明の第5の実施の形態による力覚センサ500cを示す概略上面図であり、図37は、図36のX軸正側から見た力覚センサ500cを示す概略側面図である。
図36及び図37に示すように、力覚センサ500cは、上述した基本構造500と、基本構造500の変位体520A〜520Hの各変位部D11〜D82に生じる変位に基づいて、作用した力及びモーメントを検出する検出回路540と、を有している。本実施の形態の検出回路540は、図36及び図37に示すように、変位体520A〜520Hの各変位部D11〜D82に1つずつ配置された、合計16個の容量素子C11〜C82と、これらの容量素子C11〜C82に接続され、当該容量素子C11〜C82の静電容量値の変動量に基づいて、作用した力を計測する計測部541と、を有している。
16個の容量素子C11〜C82の具体的な構成は、次の通りである。すなわち、図37に示すように、第2−1容量素子C21は、第2梁221Bの第2−1変位部D21上に絶縁体(不図示)を介して配置された第2−1変位電極Em21と、支持体550上に絶縁体(不図示)を介して第2−1変位電極Em21と対向するように配置された第2−1固定電極Ef21と、を有している。また、第2−2容量素子C22は、第2梁221Bの第2−2変位部D22上に絶縁体(不図示)を介して配置された第2−2変位電極Em22と、支持体550上に絶縁体(不図示)を介して第2−2変位電極Em22と対向するように配置された第2−2固定電極Ef22と、を有している。
同様に、図37に示すように、第3−1容量素子C31は、第3梁221Cの第3−1変位部D31上に絶縁体(不図示)を介して配置された第3−1変位電極Em31と、支持体550上に絶縁体(不図示)を介し第3−1変位電極Em31と対向するように配置された第3−1固定電極Ef31と、を有しており、第3−2容量素子C32は、第3梁221Cの第3−2変位部D32上に絶縁体(不図示)を介して配置された第3−2変位電極Em32と、支持体550上に絶縁体(不図示)を介して第3−2変位電極Em32と対向するように配置された第3−2固定電極Ef32と、を有している。
更に、詳細には図示されていないが、X座標が負の領域(図36におけるY軸の左側の領域)にY軸と平行に配置された第1−1、第1−2、第8−1及び第8−2容量素子C11、C12、C81、C82は、上述した第3−1、第3−2、第2−1及び第2−2容量素子C31、C32、C21、C22を、原点Oを中心として反時計回りに90°回転させたときの各容量素子C31、C32、C21、C22の構成に、それぞれ対応している。
また、X座標が正の領域(図36におけるY軸の右側の領域)にY軸と平行に配置された第4−1、第4−2、第5−1及び第5−2容量素子C41、C42、C51、C52は、上述した第3−1、第3−2、第2−1及び第2−2容量素子C31、C32、C21、C22を、原点Oを中心として時計回りに90°回転させたときの各容量素子C31、C32、C21、C22の構成に、それぞれ対応している。Y座標が負の領域(図36におけるX軸の下側の領域)にX軸と平行に配置された第6−1、第6−2、第7−1及び第7−2容量素子は、上述した第2−1、第2−2、第3−1及び第3−2容量素子C21、C22、C31、C32を、原点Oを中心として時計回りに180°回転させたときの当該各容量素子C21、C22、C31、C32の構成に、それぞれ対応している。
以上の対応関係により、ここでは、第2−1、第2−2、第3−1及び第3−2容量素子C21、C22、C31、C32以外の容量素子についての詳細な説明は省略する。
これらの容量素子C11〜C82は、図36及び図37には明確には図示されていないが、所定の回路によって検出回路540の計測部541に接続されており、各容量素子C11〜C82の静電容量値が計測部541に提供されるようになっている。
< 5−4. 力覚センサの作用 >
次に、5−3.で説明した力覚センサ500cの作用について説明する。
(5−4−1.X軸正方向の力+Fxが作用した場合)
力覚センサ500cの受力部514A、514B、514D、514Fに受力体560を介してX軸正方向の力+Fxが作用すると、図35に示す各検出部D11〜D82の変位から理解されるように、第2−1、第3−1、第6−2及び第7−2容量素子C21、C31、C62、C72の静電容量値が増大する一方、第2−2、第3−2、第6−1及び第7−1容量素子C22、C32、C61、C71の静電容量値が減少する。残りの第1−1、第1−2、第4−1、第4−2、第5−1、第5−2、第8−1及び第8−2容量素子C11、C12、C41、C42、C51、C52、C81、C82の静電容量値は、変動しない。
図38は、受力部514A、514B、514D、514FにXYZ三次元座標系における各軸方向の力+Fx、+Fy、+Fzまたは各軸まわりのモーメント+Mx、+My、+Mzが作用したときの各容量素子の静電容量値の増減を一覧で示す図表である。上述した各容量素子C11〜C82の静電容量値の増減は、図38のFxの欄に纏めて示してある。なお、図中の「+」の記号は、静電容量値が増大することを示しており、「−」の記号は、静電容量値が減少することを示している。
本実施の形態では、各梁521A〜521Hにおいて、第1変位部D11、D21、…、D81と第2変位部D12、D22、…、D82とが、対応する梁521A〜521Hの傾動の中心から互いに等距離に配置されている。このため、傾動が生じる4つの梁521B、521C、521F、521Gにおいて、第1変位部D21、D31、D61、D71に配置された容量素子C21、C31、C61、C71の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC21|、|ΔC31|、|ΔC61|、|ΔC71|)と、第2変位部D22、D32、D62、D72に配置された容量素子C22、C32、C62、C72の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC22|、|ΔC32|、|ΔC62|、|ΔC72|)とは、互いに等しい。このため、|ΔC21|=|ΔC22|=|ΔC31|=|ΔC32|=|ΔC61|=|ΔC62|=|ΔC71|=|ΔC72|=ΔCとすると、力+Fxが作用したときの第1−1〜第8−2容量素子C11〜C82の各静電容量値C11a〜C82aは、次の[式21]で表される。
[式21]
C11a=C11
C12a=C12
C21a=C21+ΔC
C22a=C22−ΔC
C31a=C31+ΔC
C32a=C32−ΔC
C41a=C41
C42a=C42
C51a=C51
C52a=C52
C61a=C61−ΔC
C62a=C62+ΔC
C71a=C71−ΔC
C72a=C72+ΔC
C81a=C81
C82a=C82
このような静電容量値の変動に基づいて、計測部541は、作用した力+Fxを次の[式22]により計測する。
[式22]
+Fx=C21−C22+C31−C32−C61+C62−C71+C72
(5−4−2.Y軸正方向の力+Fyが作用した場合)
次に、力覚センサ500cの受力部514A、514B、514D、514Fに受力体560を介してY軸正方向の力+Fyが作用すると、図35に示す各検出部D11〜D82の変位から理解されるように、第1−1、第4−2、第5−2及び第8−1容量素子C11、C42、C52、C81の静電容量値が増大する一方、第1−2、第4−1、第5−1及び第8−2容量素子C12、C41、C51、C82の静電容量値が減少する。残りの第2−1、第2−2、第3−1、第3−2、第6−1、第6−2、第7−1及び第7−2容量素子C21、C22、C31、C32、C61、C62、C71、C72の静電容量値は、変動しない。これらの容量素子C11〜C82の静電容量値の増減は、図38のFyの欄に纏めて示してある。
ここでも、各梁521A〜521Hにおいて、第1変位部D11、D21、・・・、D81に配置された容量素子C11、C21、・・・、C81の静電容量値の変動の大きさと、第2変位部D12、D22、・・・、D82に配置された容量素子C12、C22、・・・、C82の静電容量値の変動の大きさとが、互いに等しいと見なせる。このため、前述した[式21]と同様にして各容量素子C11〜C82の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部541は、作用した力+Fyを次の[式23]により計測する。
[式23]
+Fy=C11−C12−C41+C42−C51+C52+C81−C82
(5−4−3.Z軸正方向の力+Fzが作用した場合)
次に、力覚センサ500cの受力部514A、514B、514D、514Fに受力体560を介してZ軸正方向の力+Fzが作用すると、図35に示す各検出部D11〜D82の変位から理解されるように、第1−2、第2−1、第3−2、第4−1、第5−2、第6−1、第7−2及び第8−1容量素子C12、C21、C32、C41、C52、C61、C72、C81の静電容量値が増大する一方、残りの第1−1、第2−2、第3−1、第4−2、第5−1、第6−2、第7−1、第8−2容量素子C11、C22、C31、C42、C51、C62、C71、C82の静電容量値が減少する。これらの容量素子C11〜C82の静電容量値の増減は、図38のFzの欄に纏めて示してある。
より詳細には、力+Fzが作用すると、各傾動部513A〜513Hが全体的にZ軸正方向に変位する。したがって、§2で詳細に説明したように、各変位部D11〜D82に生じる変位は、各傾動部513A〜513Hの傾動によるZ軸正方向またはZ軸負方向への変位と、各傾動部513A〜513HのZ軸正方向への変位と、の和である。つまり、Z軸正方向に変位する変位部D11、D22、D31、D42、D51、D62、D71、D82においては、その変位が増幅され、Z軸負方向に変位する変位部D12、D21、D32、D41、D52、D61、D72、D81においては、その変位が相殺される。
ここでは、各傾動部513A〜521HのZ軸方向の長さ(高さ)に対して各梁521A〜521HのZ軸方向の長さが十分に大きいため、各梁521A〜521Hの第1変位部D11、D21、・・・、D81に設けられた容量素子C11、C21、・・・、C81の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC11|、|ΔC21|、・・・、|ΔC81|)と、第2変位部D12、D22、・・・、D82に設けられた容量素子C12、C22、・・・、C82の静電容量値の変動の大きさ(|ΔC12|、|ΔC22|、・・・、|ΔC82|)とは、互いに等しいと考えて良い。
このため、前述した[式21]と同様にして各容量素子C11〜C82の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部541は、作用した力+Fzを次の[式24]により計測する。
[式24]
+Fz=−C11+C12+C21−C22−C31+C32+C41−C42−C51+C52+C61−C62−C71+C72+C81−C82
(5−4−4.X軸正まわりのモーメント+Mxが作用した場合)
次に、力覚センサ500cの受力部514A、514B、514D、514Fに受力体560を介してX軸正まわりのモーメント+Mxが作用すると、図35に示す各検出部D11〜D82の変位から理解されるように、第2−1、第3−2、第6−2及び第7−1容量素子C21、C32、C62、C71の静電容量値が増大する一方、第2−2、第3−1、第6−1及び第7−2容量素子C22、C31、C61、C72の静電容量値が減少する。残りの第1−1、第1−2、第4−1、第4−2、第5−1、第5−2、第8−1及び第8−2容量素子C11、C12、C41、C42、C51、C52、C81、C82の静電容量値は、変動しない。これらの容量素子C11〜C82の静電容量値の増減は、図38のMxの欄に纏めて示してある。
ここでも、各梁521A〜521Hにおいて、第1変位部D11、D21、・・・、D81に配置された容量素子C11、C21、・・・、C81の静電容量値の変動の大きさと、第2変位部D12、D22、・・・、D82に配置された容量素子C12、C22、・・・、C82の静電容量値の変動の大きさとが、互いに等しいと見なせる。このため、前述した[式21]と同様にして各容量素子C11〜C82の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部541は、作用したモーメント+Mxを次の[式25]により計測する。
[式25]
+Mx=C21−C22−C31+C32−C61+C62+C71−C72
(5−4−5.Y軸正まわりのモーメント+Myが作用した場合)
次に、力覚センサ500cの受力部514A、514B、514D、514Fに受力体560を介してY軸正まわりのモーメント+Myが作用すると、図35に示す各検出部D11〜D82の変位から理解されるように、第1−2、第4−2、第5−1及び第8−1容量素子C12、C42、C51、C81の静電容量値が増大する一方、第1−1、第4−1、第5−2及び第8−2容量素子C11、C41、C52、C82の静電容量値が減少する。残りの第2−1、第2−2、第3−1、第3−2、第6−1、第6−2、第7−1及び第7−2容量素子C21、C22、C31、C32、C61、C62、C71、C72の静電容量値は、変動しない。これらの容量素子C11〜C82の静電容量値の増減は、図38のMyの欄に纏めて示してある。
ここでも、各梁521A〜521Hにおいて、第1変位部D11、D21、・・・、D81に配置された容量素子C11、C21、・・・、C81の静電容量値の変動の大きさと、第2変位部D12、D22、・・・、D82に配置された容量素子C12、C22、・・・、C82の静電容量値の変動の大きさとが、互いに等しいと見なせる。このため、前述した[式21]と同様にして各容量素子C11〜C82の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部541は、作用したモーメント+Myを次の[式26]により計測する。
[式26]
+My=−C11+C12−C41+C42+C51−C52+C81−C82
(5−4−6.Z軸正まわりのモーメント+Mzが作用した場合)
次に、力覚センサ500cの受力部514A、514B、514D、514Fに受力体560を介してZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用すると、図35に示す各検出部D11〜D82の変位から理解されるように、第1−2、第2−2、第3−2、第4−2、第5−2、第6−2、第7−2及び第8−2容量素子C12、C22、C32、C42、C52、C62、C72、C82の静電容量値が増大する一方、残りの第1−1、第2−1、第3−1、第4−1、第5−1、第6−1、第7−1、第8−1容量素子C11、C21、C31、C41、C51、C61、C71、C81の静電容量値が減少する。これらの容量素子C11〜C82の静電容量値の増減は、図38のMzの欄に纏めて示してある。
ここでも、各梁521A〜521Hにおいて、第1変位部D11、D21、・・・、D81に配置された容量素子C11、C21、・・・、C81の静電容量値の変動の大きさと、第2変位部D12、D22、・・・、D82に配置された容量素子C12、C22、・・・、C82の静電容量値の変動の大きさとが、互いに等しいと見なせる。このため、前述した[式21]と同様にして各容量素子C11〜C82の静電容量値の変動を考慮することにより、計測部541は、作用した力+Fyを次の[式27]により計測する。
[式27]
+Mz=−C11+C12−C21+C22−C31+C32−C41+C42−C51+C52−C61+C62−C71+C72−C81+C82
なお、力覚センサ500cの受力体560に各軸方向の負の力−Fx、−Fy、−Fzまたは各軸の負まわりのモーメント−Mx、−My、−Mzが作用した場合は、前述したように、各容量素子C11〜C82の電極間の離間距離の増減が図35とは逆になる。このため、力−Fx、−Fy、−Fzまたはモーメント−Mx、−My、−Mzを検出するには、[式22]〜[式27]の右辺のC11〜C82の符号を全て逆にすればよい。
< 5−5. 力覚センサの他軸感度 >
次に、図39を参照して、本実施の形態による力覚センサ500cの他軸感度について説明する。図39は、図36に示す力覚センサ500cにおける、各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸まわりのモーメントMx、My、Mzの他軸感度VFx〜VMzを一覧で示す図表である。図39の図表に記されている数字は、2−5.で説明したように、図38に示す図表の各力Fx、Fy、Fz及び各モーメントMx、My、Mzについて、「+」の記号が付された容量素子を+1とし、「−」の記号が付された容量素子を−1として、上述した[式22]〜[式27]のそれぞれの右辺に代入して得られた値である。
図39によれば、各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸まわりのモーメントMx、My、Mzの他軸感度はゼロであることが分かる。従って、図36に示す力覚センサ500cは、各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸まわりのモーメントMx、My、Mzの全てを検出することができる。
なお、実際の力覚センサ500cにおいては、図38において静電容量値の変動を「0」と記した容量素子においても、僅かに静電容量値の変動が生じる。また、力Fz及びモーメントMx、Myが受力体560に作用した場合には、前述したように、傾動部513A〜513HにZ軸方向への変位が生じるため、第1変位部D11、D21、・・・D81に生じるZ軸方向の変位と、第2変位部D21、D22、・・・、D82に生じるZ軸方向の変位とは、互いに大きさが異なる。これらのことを考慮すれば、実際には、他軸感度が僅かに存在することになる。しかしながら、このような場合であっても、実際の他軸感度のマトリクス(図39の図表に対応する6行6列の行列)の逆行列を求め、この逆行列を力覚センサ500cの出力に乗じるという補正演算によって、他軸感度をゼロにすることができる。
以上のような本実施の形態によれば、傾動部513A〜513Hの傾動によって変位する梁521A〜521Hの作用により、傾動部513A〜513Hに生じる変位を容易に増幅させることができる。更に、第1−1〜第8−2容量素子C11〜C82を用いて、それらの静電容量値の変動量の差分によって作用した力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzの全てを検出することができる。すなわち、本実施の形態によれば、低価格かつ高感度であり、使用環境の温度変化や同相ノイズによる影響を受けにくい力覚センサ500cを提供することができる。
また、各変位体520A〜520Hは、それぞれ、対応する傾動部513A〜513Hと梁521A〜521Hとを接続する接続体522A〜522Hを有しており、各変位体520A〜520Hの第1変位部D11、D21、・・・、D81及び第2変位部D12、D22、・・・、D82は、接続体522A〜522Hと対応する梁521A〜521Hとの接続部位に関して対称的に配置されている。このため、第1変位部D11、D21、・・・、D81に生じる変位と第2変位部D12、D22、・・・、D82に生じる変位とが、同じ大きさで互いに異符号となるため、作用した力及びモーメントを簡易な演算によって検出することができる。
また、力覚センサ500cは、変形体510の受力部514A、514B、514D、514Fに接続され、作用する力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzを受けるための受力体560と、各変位体520A〜520Hに対向配置され、変形体510の4つの固定部515B、515C、515E、515Hに接続された支持体550と、を備えている。このため、作用する力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzを確実に変形体510に伝達することができる。
更に、変形体510は、正方形の形状を有しており、4つの受力部514A、514B、514D、514F各辺の中点に位置付けられており、4つの固定部515B、515C、515E、515Hは、各頂点に位置付けられている。このため、作用した力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzを検出するための演算が容易である。
<<< §6. 本発明の第6の実施の形態による力覚センサ>>>
< 6−1. 基本構造の構成 >
§5で説明した力覚センサ500cは、各軸方向の力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzの6つの成分を検出することが可能であった。ところで、これら6つの成分を検出するためには、力覚センサに必ずしも16個の容量素子を設ける必要は無い。
ここでは、上述した力覚センサ500cの変形例として、より少ない容量素子によって6つの成分を検出可能な第6の実施の形態による力覚センサについて説明する。
図40は、本発明の第6の実施の形態による力覚センサ600cを示す概略上面図であり、図41は、Y軸正側から見た力覚センサ600cを示す概略正面図である。
図40に示すように、力覚センサ600cは、全ての梁621A〜621Hが片持ち梁として構成されている点において、第5の実施の形態による力覚センサ500cとは異なっている。具体的には、X軸と平行に延在している第2、第3、第6及び第7梁621B、621C、621F、621Gにおいては、各接続体622B、622C、622F、622Gを挟んで、図40の反時計回りに進んだ方に位置する部位が削除されている。その一方、Y軸と平行に延在している第1、第4、第5及び第8梁621A、621D、621E、621Hにおいては、各接続体622A、622D、622E、622Hを挟んで、図40の時計回りに進んだ方に位置する部位が削除されている。
したがって、力覚センサ600cでは、各梁621A〜621Hに1つずつ、合計8つの変位部D11、D22、D32、D41、D51、D62、D72、D81が規定されている。そして、これら8つの変位部に1つずつ、合計8つの容量素子C11、C22、C32、C41、C51、C62、C72、C81が配置されている。各容量素子の構成は、第5の実施の形態と同じである。
これらの8つの容量素子は、図40及び図41には図示されていないが、所定の回路によって検出回路640の計測部641に接続されており、各容量素子の静電容量値が当該計測部641に提供されるようになっている。そして、後述するように、計測部641は、各容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、力覚センサ600cに作用した力及びモーメントを検出するようになっている。
力覚センサ600cのその他の構成については、第5の実施の形態と同様である。このため、第5の実施の形態と共通する構成要素には略同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
次に、本実施の形態による力覚センサ600cの作用について説明する。ここでは、XYZ三次元座標系における各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸周りのモーメントMx、My、Mzの6つの成分のすべてを検出する場合について説明を行う。
上述したように、本実施の形態による力覚センサ600cは、梁621A〜621Hが片持ち梁として構成されている点を除いて、第5の実施の形態による力覚センサ500cと略同様の構造を有している。したがって、受力体660を介して受力部614A、614B、614D、614Fに力またはモーメントが作用すると、各梁621A〜621Hの各検出部D11、D22、D32、D41、D51、D62、D72、D81には、第5の実施の形態による力覚センサ500cの対応する検出部D11、D22、D32、D41、D51、D62、D72、D81と同じ変位が生じる。
以上から、力覚センサ600cに力及びモーメントの6つの成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが作用すると、各容量素子の静電容量値は、図42に一覧で示すように変動する。図38と同様に、図中の「+」の記号は、静電容量値が増大することを示しており、「−」の記号は、静電容量値が減少することを示している。なお、図42の図表は、図38における、8つの容量素子C11、C22、C32、C41、C51、C62、C72、C81の静電容量値の増減と、同一である。
このような静電容量値の変動に基づいて、計測部641は、作用した力及びモーメントを次の[式28]により計測する。[式28]は、[式22]〜[式27]の各式から、C12、C21、C31、C42、C52、C61、C71及びC82を削除した式に一致する。
[式28]
+Fx=−C22−C32+C62+C72
+Fy=C11−C41−C51+C81
+Fz=−C11−C22+C32+C41−C51−C62+C72+C81
+Mx=−C22+C32+C62−C72
+My=−C11−C41+C51+C81
+Mz=−C11+C22+C32−C41−C51+C62+C72−C81
[式28]に基づき、力及びモーメントの6つの成分それぞれの他軸感度を求めると、図43に一覧で示す通りである。他軸感度は、図21と同様に、図23に示す図表の力Fz及びモーメントMx、My、Mzについて、「+」の記号が付された容量素子を+1とし、「−」の記号が付された容量素子を−1として、上述した[式28]のそれぞれの式の右辺に代入して得られた値である。図43に示すように、各成分の他軸感度は、ゼロである。更に、[式28]から理解されるように、本実施の形態では、各成分は、静電容量値の差分によって検出されるため、その検出結果は、周辺環境の温度変化や同相ノイズの影響を受けにくい。
以上のような本実施の形態によれば、上述した第5の実施の形態による力覚センサ500cと同様の作用効果を奏する力覚センサ600cを提供することができる。
<<< §7. 本発明の第7の実施の形態による力覚センサ及びその変形例 >>>
< 7−1. 第7の実施の形態による力覚センサ >
次に、本発明の第7の実施の形態による力覚センサについて説明する。
図44は、本発明の第7の実施の形態による力覚センサ700cを示す概略上面図である。ここでも、図44に示すようにXYZ三次元座標系を定義して以下の説明を行うこととする。なお、図44では、説明の便宜上、受力体760の図示が省略されている。
図44に示すように、力覚センサ700cは、第5の実施の形態の矩形変形体510の四隅が丸められ、原点Oを中心とする環状変形体710として構成されている点で、第5の実施の形態と異なっている。したがって、例えば、第5の実施の形態による力覚センサ500cの第1梁521Aは、長さ方向がY軸と平行に配置されていたが、本実施の形態の第1梁721Aは、長さ方向がY軸と平行ではない。具体的には、第1梁721Aは、原点Oと第1接続体722Aとを結ぶ直線と直交するように、配置されている。このような配置は、第2〜第8梁721B〜721Hにおいても同様である。
次に、以上のような力覚センサ700cの作用について説明する。
力覚センサ700cにおいて、それぞれの変形要素710A〜710Hの配置は、大まかには第5の実施の形態と同様である。したがって、例えば、力覚センサ700cにX軸正方向の力+Fxが作用すると、図35に示すように、第2−1、第3−1、第6−2及び第7−2変位部D21、D31、D62、D72はZ軸負方向に変位し、第2−2、第3−2、第6−1及び第7−1変位部D22、D32、D61、D71はZ軸正方向に変位する。
更に、本実施の形態では、前述したように、各梁721A〜721Hの長さ方向が、いずれもX軸及びY軸と非平行となっている。したがって、第5の実施の形態ではZ軸方向に変位しなかった第1−1、第1−2、第4−1、第4−2、第5−1、第5−2、第8−1及び第8−2変位部D11、D12、D41、D42、D51、D52、D81、D82にも、相対的に小さい値ではあるが、Z軸方向の変位が生じる。具体的には、第1、第4、第5及び第8変形要素710A、710D、710E、710Hは、それぞれ§2で説明した基本構造200(図8参照)の第1〜第4変形要素210A〜210Dに対応すると考えられるため、第1−1、第4−1、第5−2及び第8−2変位部D11、D41、D52、D82はZ軸負方向に変位し、第1−2、第4−2、第5−1及び第8−1変位部D12、D42、D51、D81はZ軸正方向に変位する。なお、このことは、Y軸正方向の力+Fyが作用した場合においても、同様である。
一方、Z軸正方向の力+Fz及び各軸正まわりのモーメント+Mx、+My、+Mzが作用した場合には、各容量素子C11〜C82の電極間距離の変動は、第5の実施の形態と同様である。
図45は、受力部にXYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸方向のモーメントFx〜Mzが作用したときに、図44の力覚センサの各傾動部713A〜713Hに生じる傾動の向きと、各変位部D11〜D82に生じる変位とを、一覧で示す図表である。
図45に示す図表では、変形要素が相対的に小さい弾性変形を呈することによって、相対的に小さい傾動を示す傾動部、及び、相対的に小さい変位を示す変位部、に対応する欄には、括弧付きで傾動方向及び変位の符号を示してある。なお、図45に示す図表は、括弧付きの欄以外の部分は、図35と同じである。また、図示しないが、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸方向のモーメントFx〜Mzが作用したときに各容量素子C11〜C82に生じる静電容量値の変動は、図45の表において、当該容量素子C11〜C82に対応する変位部D11〜D82の欄に記入された変位の符号を反転させればよい。もちろん、「+」の符号は静電容量値の増大を表し、「−」の符号は静電容量値の減少を表す。
そして、計測部741は、作用した力及びモーメントFx〜Mzを次の[式29]により計測する。
[式29]
+Fx=C11−C12+C21−C22+C31−C32+C41−C42−C51+C52−C61+C62−C71+C72−C81+C82
+Fy=C11−C12+C21−C22−C31+C32−C41+C42−C51+C52−C61+C62+C71−C72+C81−C82
+Fz=−C11+C12+C21−C22−C31+C32+C41−C42−C51+C52+C61−C62−C71+C72+C81−C82
+Mx=C21−C22−C31+C32−C61+C62+C71−C72
+My=−C11+C12−C41+C42+C51−C52+C81−C82
+Mz=−C11+C12−C21+C22−C31+C32−C41+C42−C51+C52−C61+C62−C71+C72−C81+C82
なお、力覚センサ700cの受力体760に各軸の負方向の力−Fx、−Fy、−Fzまたは各軸の負まわりのモーメント−Mx、−My、−Mzが作用した場合は、前述したように、各変位部D11〜D82のZ軸方向における変位が図45とは逆方向になる。このため、力−Fx、−Fy、−Fzまたはモーメント−Mx、−My、−Mzを検出するには、[式29]の右辺のC11〜C82の符号を全て逆にすればよい。
本実施の形態による力覚センサ700cでは、前述したように、第5の実施の形態において静電容量値の変動がゼロであった容量素子においても、静電容量値の変動が生じる。
このため、本実施の形態では、他軸感度が存在することになる。しかしながら、前述したように、実際の他軸感度のマトリクスの逆行列を求め、この逆行列を力覚センサ700cの出力に乗じるという補正演算によって、他軸感度をゼロにすることができる。
以上のような本実施の形態によっても、上述した第5の実施の形態による力覚センサ500cと同様の作用効果を奏する力覚センサ700cを提供することができる。
< 7−2. 変形例 >
7−1.で説明した力覚センサ700cは、各軸方向の力Fx、Fy、Fz及びモーメントMx、My、Mzの6つの成分を検出することが可能であった。ところで、これら6つの成分を検出するためには、力覚センサに必ずしも16個の容量素子を設ける必要は無い。ここでは、上述した力覚センサ700cの変形例として、より少ない容量素子によって6つの成分を検出可能な力覚センサ701cについて説明する。
図46は、図44の変形例による力覚センサ701cを示す概略上面図である。
図46に示すように、力覚センサ701cは、梁721A〜721Hが片持ち梁として構成されている点において、第7の実施の形態による力覚センサ700cとは異なっている。具体的には、第2、第3、第6及び第7梁721B、721C、721F、721Gにおいては、各接続体722B、722C、722F、722Gを挟んで、図46の反時計回りに進んだ方に位置する部位が削除されている。その一方、第1、第4、第5及び第8梁721A、721D、721E、721Hにおいては、各接続体722A、722D、722E、722Hを挟んで、図46の時計回りに進んだ方に位置する部位が削除されている。
したがって、力覚センサ701cでは、各梁721A〜721Hに1つずつ、合計8つの変位部D11、D22、D32、D41、D51、D62、D72、D81が規定されている。そして、これら8つの変位部に1つずつ、合計8つの容量素子C11、C22、C32、C41、C51、C62、C72、C81が配置されている。各容量素子の構成は、第5〜第7の実施の形態と同じである。
これらの8つの容量素子は、図46には図示されていないが、所定の回路によって検出回路740の計測部741に接続されており、各容量素子の静電容量値が当該計測部741に提供されるようになっている。そして、後述するように、計測部741は、各容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、力覚センサ701cに作用した力及びモーメントを検出するようになっている。
力覚センサ701cのその他の構成については、第7の実施の形態と同様である。このため、第7の実施の形態と共通する構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。結局、第7の実施の形態による力覚センサ700cは、第5の実施の形態による力覚センサ500cの変形体の形状を環状にしたものであったが、本変形例による力覚センサ701cは、第6の実施の形態による力覚センサ600cの変形体の形状を環状にしたものである。
次に、本実施の形態による力覚センサ701cの作用について説明する。ここでは、XYZ三次元座標系における各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸周りのモーメントMx、My、Mzの6つの成分のすべてを検出する場合について説明を行う。
上述したように、本変形例による力覚センサ701cは、梁721A〜721Hが片持ち梁として構成されている点を除いて、第7の実施の形態による力覚センサ700cと略同様の構造を有している。したがって、受力体760を介して受力部714A、714B、714D、714Fに力またはモーメントが作用すると、各梁721A〜721Hの各検出部D11、D22、D32、D41、D51、D62、D72、D81には、第7の実施の形態による力覚センサ700cの対応する検出部D11、D22、D32、D41、D51、D62、D72、D81と同じ変位が生じる。
以上から、力覚センサ701cに力及びモーメントの6つの成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが作用すると、各容量素子の静電容量値は、第7の実施の形態による力覚センサ700cに力及びモーメントが作用したときの、対応する8つの容量素子C11、C22、C32、C41、C51、C62、C72、C81の静電容量値の増減と、同一である。
このような静電容量値の変動に基づいて、計測部741は、作用した力及びモーメントを次の[式30]により計測する。[式30]は、[式29]の各式から、C12、C21、C31、C42、C52、C61、C71及びC82を削除した式に一致する。
[式30]
+Fx=C11−C22−C32+C41−C51+C62+C72−C81
+Fy=C11−C22+C32−C41−C51+C62−C72+C81
+Fz=−C11−C22+C32+C41−C51−C62+C72−C82
+Mx=−C22+C32+C62−C72
+My=−C11−C41+C51+C81
+Mz=−C11+C22+C32−C41−C51+C62+C72−C81
なお、力覚センサ701cの受力体760に各軸方向の負の力−Fx、−Fy、−Fzまたは各軸の負まわりのモーメント−Mx、−My、−Mzが作用した場合は、前述したように、各容量素子の電極間の離間距離の増減が、対応する変位部についての図45に示す増減とは逆になる。このため、力−Fx、−Fy、−Fzまたはモーメント−Mx、−My、−Mzを検出するには、[式30]の右辺のC11・・・C81の符号を全て逆にすればよい。
本変形例による力覚センサ701cにおいても、前述した補正演算によって、他軸感度をゼロにすることができる。
以上のような本変形例によっても、上述した第7の実施の形態による力覚センサ700cと同様の作用効果を奏する力覚センサ701cを提供することができる。
<<< §8. 本発明の第8の実施の形態による力覚センサ >>>
< 8−1. 力覚センサの構成 >
次に、本発明の第8の実施の形態による力覚センサ800cについて説明する。
図47は、本発明の第8の実施の形態による力覚センサ800cの基本構造800を示す概略上面図であり、図48は、その概略上面図である。
図47及び図48に示すように、基本構造800の全体的な構成は、§1で示した第1の実施の形態と同様である。更に、この基本構造800に配置される容量素子C1、C2も、第1の実施の形態と同様である(図7参照)。したがって、図47及び48において、第1の実施の形態による基本構造100と共通する構成要素には略同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。但し、本実施の形態では、受力部814にZ軸負方向の力−Fzが作用したときに第2変位部D2がZ軸方向に変位しないように、接続体822のZ軸方向の長さと、傾動部813の長手方向lから第2変位部D2までの距離とが、設定されている。この点については、以下に詳細に説明する。
図49は、受力部814に対してX軸負方向の力−Fxが作用したときの基本構造800の変形状態を示す概略正面図である。§1で説明したように、受力部814に対してZ軸負方向の力−Fzが作用すると、傾動部813の左下端の接続部位R1にはZ軸負方向(図47における下方向)に力が作用し、傾動部813の右上端の接続部位R2には、作用した力−Fzの反作用として、Z軸正方向(図47における上方向)に力が作用する。
これらの力の作用によって、図49に示すように、傾動部813は、反時計回りに傾動する。更に、作用した力−Fzの作用によって、第1変形部811を介して傾動部813がZ軸負方向へ引き下げられるため、当該傾動部813は、全体として、わずかにZ軸負方向に変位する。
同時に、傾動部813の傾動によって、図49に示すように、傾動部813の下端に接続された梁821は、反時計回りに傾動する。これにより、梁821の第1変位部D1は、支持体850との間の離間距離が減少する方向(図49における下方)に変位し、第2変位部D2は、支持体850との間の離間距離が増大する方向(図49における上方)に変位する。より詳細には、力−Fzが作用したときに第1変位部D1に生じる変位は、前述した傾動部813の全体的なZ軸負方向への変位と、梁821の傾動によるZ軸負方向への変位と、の和であり、第2変位部D2に生じる変位は、傾動部813の当該変位と、梁821の傾動によるZ軸正方向への変位と、の和である。つまり、受力部814にZ軸負方向の力−Fzが作用すると、第1変位部D1においては、梁821の傾動による変位に傾動部813の全体的なZ軸負方向への変位が加わるため、当該第1変位部D1と支持体850との離間距離は大きく減少する。一方、第2変位部D2においては、梁821の傾動による変位が傾動部813の全体的なZ軸負方向への変位によって相殺されるため、第2変位電極Em2と第1固定電極Ef2との離間距離はわずかな変化にとどまる。とりわけ、接続体822のZ軸方向の長さと、傾動部813の長手方向lから第2変位部D2までの距離と、が所定の関係を満たす場合には、第2変位電極Em2と第2固定電極Ef2との離間距離を実質的に変化しないようにすることができる。本実施の形態は、このことに着目して創案されたものである。
すなわち、接続体822のZ軸方向の長さと、傾動部813の長手方向lから第2変位部D2までの距離と、が前記所定の関係を満たす場合、Z軸負方向の力−Fzが受力部814に作用したときの力覚センサ800cの容量素子C1、C2(不図示)の静電容量値C1a、C2aは、次の[式31]で表される。
[式31]
C1a=C1+ΔC
C2a=C2
一方、力覚センサ800cにZ軸正方向の力+Fzが作用すると、図示されていないが、傾動部813は、時計回りに傾動すると共に、作用した力+Fzの作用によって、第1変形部811を介して傾動部813がZ軸正方向へ引き上げられるため、当該傾動部813は、全体として、わずかにZ軸正方向に変位する。
同時に、傾動部813の傾動によって、傾動部813の下端に接続された梁821は、時計回りに傾動する。これにより、梁821の第1変位部D1は、支持体850との間の離間距離が増大する方向に変位し、第2変位部D2は、支持体850との間の離間距離が減少する方向に変位する。したがって、先の場合と同様に、力+Fzが作用したときに第1変位部D1に生じる変位は、前述した傾動部813の全体的なZ軸正方向への変位と、梁821の傾動によるZ軸正方向への変位と、の和であり、第2変位部D2に生じる変位は、傾動部813の当該変位と、梁821の傾動によるZ軸負方向への変位と、の和である。ここで、本実施の形態では、接続体822のZ軸方向の長さと、傾動部813の長手方向lから第2変位部D2までの距離と、が前述した所定の関係を満たすことから、第2変位電極Em2と第2固定電極Ef2との離間距離は、実質的に変化しない。
したがって、本実施の形態による力覚センサ800cによれば、傾動部813がその長手方向lに沿って変位した際に、第2変位部D2が実質的にZ軸方向に変位しないように配置されているため、作用したZ軸方向の力Fzを簡易な演算によって検出することができる。
< 8−2. 図18に示す力覚センサ200cの変形例 >
次に、8−1.で説明した構成が作用された、図18に示す力覚センサ200cの変形例について説明する。
前述したように、図18に示す力覚センサ200cは、図1に示す基本構造100を4つ、円環状に配置して構成されている(2−1.参照)。これら4つの基本構造100(第1〜第4変形要素210A〜210D)を、それぞれ8−1.で説明した基本構造800に置換して構成された力覚センサ801cが、本変形例である。このため、図18に示す力覚センサ200cの構成要素と対応する構成要素は、当該力覚センサ200cを説明する際に用いた名称と同じ名称を用いることとする。
本変形例による力覚センサ801cにX軸正方向の力+Fx、Y軸正方向の力+Fy及びZ軸正まわりのモーメントが作用した場合については、各変形要素810A〜810Dの受力部814A〜814DにZ軸方向の力は作用しないため、各容量素子C11〜C42の静電容量値の変動は、図20に示す図表のFx、Fy、Mzの各欄に示す通りである。
一方、力覚センサ801cにZ軸正方向の力+Fzが作用すると、第1〜第4変形要素810A〜810Dの各受力部にはZ軸方向の力が作用する。このため、第1変形要素810Aにおいては、第1−2変位部D12のZ軸方向の変位がゼロとなり、第2変形要素810Bにおいては、第2−1変位部D21のZ軸方向の変位がゼロとなり、第3変形要素810Cにおいては、第3−2変位部D32のZ軸方向の変位がゼロとなり、第4変形要素810Dにおいては、第4−1変位部D41のZ軸方向の変位がゼロとなる。力覚センサ801cにZ軸負方向の力−Fzが作用した場合も同様である。更に、このように4つの変位部D12、D21、D32、D41のZ軸方向の変位がゼロとなる現象は、X軸まわりのモーメントMx及びY軸まわりのモーメントMyが作用した場合にも同様に生じる。以上の結果を踏まえ、力覚センサ801cに力及びモーメントFx〜Mzが作用したときに生じる容量素子C11〜C42の静電容量値の変動を、図50に一覧で示す。
各容量素子C11〜C42の静電容量値の変動に基づいて、検出回路840の計測部841は、作用した力及びモーメントを次の[式32]により計測する。[式32]は、[式14]のMx及びMyからC12、C21、C32及びC41を削除した式である。
[式32]
Fx=C11−C12+C21−C22−C31+C32−C41+C42
Fy=C11−C12−C21+C22−C31+C32+C41−C42
Fz=−C11+C12+C21−C22−C31+C32+C41−C42
Mx=−C11−C22+C31+C42
My=−C11+C22+C31−C42
Mz=−C11+C12−C21+C22−C31+C32−C41+C42
なお、[式32]のFzは、C12、C21、C32及びC41を残したままとしている。これは、Fzを差分検出によって計測することによって、環境温度の変化や同相ノイズによる影響を排除するための工夫である。
次に、本変形例による力覚センサ801cの他軸感度について説明する。
図51は、図47の変形例による力覚センサ801cについて、力及びモーメントの6つの成分の他軸感度を一覧で示す図表である。図51から、力覚センサ801cでは、X軸方向の力FxとY軸まわりのモーメントMyとが互いに影響を及ぼし、Y軸方向の力FyとX軸まわりのモーメントMxとが互いに影響を及ぼす、ということが読み取れる。したがって、力覚センサ801cは、例えばMx及びMyが作用しない環境で、4つの成分Fx、Fy、Fz及びMzを検出するセンサとして利用するか、あるいは、Fx及びFyが作用しない環境で、4つの成分Fz、Mx、My及びMzを検出センサとして利用すればよい。
あるいは、次の[式33]を用いることによっても、作用した力及びモーメントを計測することができる。
[式33]
Fx=−C12+C31+C32−C41
Fy=−C12−C21+C32+C41
Fz=−C11+C12+C21−C22−C31+C32+C41−C42
Mx=−C11−C12−C21−C22+C31+C32+C41+C42
My=−C11+C12−C21+C22+C31+C32−C41−C42
Mz=−C11+C21−C21+C22−C31+C32−C41+C42
[式33]において、Fx及びFyを示す式は、各梁に設けられた2つの変位部のうちの片方にのみ着目した式である。6つの成分のいずれも、差分によって計測することができるため、環境温度の変化や同相ノイズによる影響を受けることなく、作用した力及びモーメントを求めることができる。
更に、[式33]に基づき、各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントFx〜Mzの他軸感度を求めると、図52に一覧で示す通りとなる。他軸感度は、図51に示す図表の6つの成分Fx〜Mzについて、「+」の記号が付された容量素子を+1とし、「−」の記号が付された容量素子を−1とし、「0」である容量素子を0として、上述した[式33]のそれぞれの右辺に代入して得られた値である。図52に示すように、いずれの成分Fx〜Mzを検出する場合にも、他軸感度はゼロである。
以上のような本変形例によれば、第2の実施の形態による力覚センサ200cと同様の作用効果を奏することに加え、作用した力及びモーメントを一層簡易な演算によって検出することができる。
< 8−3. 図36に示す力覚センサ500cの変形例 >
次に、8−1.で説明した構成が作用された、図36に示す力覚センサ500cの変形例について説明する。
前述したように、図36に示す力覚センサ200cは、図1に示す基本構造100を8つ、矩形の閉ループ状に配置して構成されている(5−1.参照)。これら8つの基本構造100(第1〜第8変形要素210A〜210H)を、それぞれ8−1.で説明した基本構造800に置換して構成された力覚センサ802cが、本変形例である。ここでは、図36に示す力覚センサ500cの構成要素と対応する構成要素は、当該力覚センサ500cを説明する際に用いた名称と同じ名称を用いることとする。
本変形例による力覚センサ802cにX軸正方向の力+Fx、Y軸正方向の力+Fy及びZ軸正まわりのモーメントが作用した場合については、各変形要素810A〜810Hの受力部814A〜814HにZ軸方向の力は作用しないため、各容量素子C11〜C82の静電容量値の変動は、図38に示す図表のFx、Fy、Mzの各欄に示す通りである。
一方、力覚センサ801cにZ軸正方向の力+Fzが作用すると、第1〜第8変形要素810A〜810Hの各受力部にはZ軸正方向の力が作用する。このため、第1変形要素810Aにおいては、第1−2変位部D12のZ軸方向の変位がゼロとなり、第2変形要素810Bにおいては、第2−1変位部D21のZ軸方向の変位がゼロとなり、第3変形要素810Cにおいては、第3−2変位部D32のZ軸方向の変位がゼロとなり、第4変形要素810Dにおいては、第4−1変位部D41のZ軸方向の変位がゼロとなり、第5変形要素810Eにおいては、第5−2変位部D52のZ軸方向の変位がゼロとなり、第6変形要素810Fにおいては、第6−1変位部D61のZ軸方向の変位がゼロとなり、第7変形要素810Gにおいては、第7−2変位部D72のZ軸方向の変位がゼロとなり、第8変形要素810Hにおいては、第8−1変位部D81のZ軸方向の変位がゼロとなる。力覚センサ802cにZ軸負方向の力−Fzが作用した場合も同様である。更に、このように8つの変位部D12、D21、D32、D41、D52、D61、D72、D81のZ軸方向の変位がゼロとなる現象は、X軸まわりのモーメントMx及びY軸まわりのモーメントMyが作用した場合にも同様に生じる。以上の結果を踏まえ、力覚センサ802cに力及びモーメントFx〜Mzが作用したときに生じる容量素子C11〜C82の静電容量値の変動を、図53に一覧で示す。
各容量素子C11〜C82の静電容量値の変動に基づいて、検出回路840の計測部841は、作用した力及びモーメントを次の[式34]により計測する。[式34]は、[式22]〜[式27]に基づいており、Mx及びMyの式からC12、C21、C32、C41、C52、C61、C72及びC81を削除した式である。
[式34]
+Fx=C21−C22+C31−C32−C61+C62−C71+C72
+Fy=C11−C12−C41+C42−C51+C52+C81−C82
+Fz=−C11+C12+C21−C22−C31+C32+C41−C42−C51+C52+C61−C62−C71+C72+C81−C82
+Mx=−C22−C31+C62+C71
+My=−C11+C42+C51−C82
+Mz=−C11+C12−C21+C22−C31+C32−C41+C42−C51+C52−C61+C62−C71+C72−C81+C82
なお、[式34]のFzは、C12、C21、C32、C41、C52、C61、C72及びC81を残したままとしている。これは、Fzを差分検出によって計測することによって、環境温度の変化や同相ノイズによる影響を排除するための工夫である。[式34]によれば、6つの成分のいずれも、差分によって計測することができるため、環境温度の変化や同相ノイズによる影響を受けることなく、作用した力及びモーメントを求めることができる。
次に、本変形例による力覚センサ802cの他軸感度について説明する。
図54は、図53に対応する力覚センサ802cについて、力及びモーメントの6つの成分の他軸感度を一覧で示す図表である。他軸感度の算出方法は、8−2.で述べたとおりである。図54に示すように、力覚センサ802cでは、いずれの成分Fx〜Mzを検出する場合にも、他軸感度はゼロである。
以上のような本変形例によれば、第5の実施の形態による力覚センサ500cと同様の作用効果を奏することに加え、作用した力及びモーメントを一層簡易な演算によって検出することができる。
なお、[式34]では、C11〜C82の16個の変数から6つの成分Fx〜Mzを求めているため、冗長性がある。より効率的な計測のためには、例えばコンピューターシミュレーションによって静電容量の解析を行い、16個の容量素子から6つ以上の容量素子を選択することが考えられる。この場合、前述した補正演算を用いることによって、他軸感度の影響を排除することができる。
<<< §9. 変形例 >>>
< 9−1. 受力体の変形例 >
§2〜§8で説明した各力覚センサ200c〜802cでは、図9、図10、図19、図30、図37、図41等に示すように、変形体と受力体とがZ軸方向において(各図の上下方向において)整列されていた。しかしながら、このような形態には限定されない。
図55は、受力体が変形体の外周側に配置された力覚センサの基本構造201の一例を示す概略断面図である。図55では、第2の実施の形態による力覚センサ200cの基本構造200の変形例に対応している。このため、図55において、図55に示すように、上述した各力覚センサ200c〜802cにおいて、受力体260aの受力体本体261aを変形体210の外周の輪郭線の形状と相似形に構成し、当該変形体210の外周を取り囲むように配置しても良い。この場合、受力体本体261aと変形体210とを接続する受力部接続体262a、263aは、変形体210の外周面上に設けられることになる。
この場合、変形体210と受力体260aとが同一平面上に配置されるため、力覚センサのZ軸方向の寸法を小さく(薄く)設計することができる。
< 9−2. 変形体の変形例(1) >
次に、図56は、§1の力覚センサ100cの変形例を示す概略側面図である。
図56に示すように、本変形例による力覚センサ100caは、第1変形部11a及び第2変形部12aの配置が、第1の実施の形態による力覚センサ100cとは異なっている。すなわち、第1の実施の形態による力覚センサ100cは、第1変形部11と傾動部13とが当該傾動部13の下端部(Z軸負側の端部)にて接続されていたが、本変形例では、当該傾動部13の上端部(Z軸正側の端部)にて接続されている。更に、第1の実施の形態による力覚センサ100cは、第2変形部12と傾動部13とが当該傾動部13の上端部にて接続されていたが、本変形例では第2変形部12cと傾動部13とが当該傾動部13の下端部に接続されている。その他の構成は、第1の実施の形態による力覚センサ100cと同様である。図56において、力覚センサ100cと共通する構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例による力覚センサ100caでは、受力部14にX軸正方向(図56における右方向)の力+Fxが作用すると、傾動部13は時計回りに傾動し、受力部14にX軸負方向(図56における左方向)の力−Fxが作用すると、傾動部13は反時計回りに傾動する。これらの傾動の向きは、第1の実施の形態とは逆である。一方、受力部14にZ軸正方向(図56における上方向)の力+Fzが作用すると、傾動部13は時計回りに傾動し、受力部14にZ軸負方向(図56における下方向)の力−Fzが作用すると、傾動部13は反時計回りに傾動する。これらの傾動の向きは、第1の実施の形態と同じである。
したがって、本変形例による力覚センサ100caによって受力部14に作用した力を計測するには、X軸方向の力を検出する場合、[式3]の右辺の符号を反転させればよく、Z軸方向の力を検出する場合には、[式5]をそのまま採用すればよい。
もちろん、以上のような変形部10aは、第1の実施の形態に限らず、§2〜§8に示した各実施の形態及び各変形例による力覚センサに採用され得る。この場合、変形部10aにX軸方向の力が作用する場合には、§2〜§8の各実施の形態及び各変形例で示した容量素子の静電容量値の変動について、それぞれの符号を反転させればよい。
< 9−3. 変形体の変形例(2) >
次に、図57は、§1の力覚センサ100cの更なる変形例を示す概略側面図である。
本変形例による力覚センサ100cbは、変位体20の構成が第1の実施の形態とは異なっている。すなわち、図57に示すように、力覚センサ100cbの変位体20bは、傾動部13の下端ではなく、当該傾動部13の上端と下端との間の中間部13mに接続されている。この場合にも、梁21は、第1の実施の形態による力覚センサ100cと同様の挙動を示すため、§1で説明した力Fx及びFzの計測方法がそのまま採用され得る。
もちろん、本変形例の変形部10bは、第1の実施の形態に限らず、§2〜§8に示した各実施の形態及び各変形例による力覚センサに採用され得る。
< 9−4. 変形体の変形例(3) >
図58は、図57の力覚センサ101cbの更なる変形例を示す概略側面図である。
図58に示すように、本変形例による力覚センサ101ccは、傾動部13cが図1、図56、図57等に示す傾動部よりも短く構成されており、且つ、初期状態において長手方向lがZ軸と鋭角を成している。更に、力覚センサ101ccの第1変形部11cは、受力部14からX軸と平行に延び出た第1−1変形部11c1と、この第1−1変形部11c1の先端から傾動部13cの長手方向lと平行に延び出て当該傾動部13の一方の端部に連結された第1−2変形部11c2と、を有している。また、力覚センサ101ccの第2変形部12cは、固定部15の上端からX軸と平行に延び出た第2−1変形部12c1と、この第2−1変形部の先端から傾動部13cの長手方向lと平行に延び出て当該傾動部13の他方の端部に連結された第2−2変形部12c2と、を有している。更に、変位体20cは、傾動部13cからZ軸と平行に下方に延び出た接続体22cと、この接続体22cの下端に連結された梁21cと、を有している。
このような力覚センサ100ccによっても、梁21は、第1の実施の形態による力覚センサ100cと同様の挙動を示すため、§1で説明した力Fx及びFzの計測方法によって、適正に当該力Fx、Fzを計測することができる。もちろん、本変形例の変形部10cは、第1の実施の形態に限らず、§2〜§8に示した各実施の形態及び各変形例による力覚センサに採用され得る。
なお、更なる例示は行わないが、要するに、固定体が変位しない状況下で、受力部にZ軸方向及びX軸方向の力が作用したときに、変位体が傾動(回動)するような構造であれば良い。
なお、図56〜図58に示した3つの変形例では、2つの変位電極及び2つの固定電極がそれぞれ単一の絶縁体(絶縁層)の上に配置されている。このような配置によれば、単一の基板から絶縁体(ガラスエポキシ基板、セラミック基板など)を作ることができるため、力覚センサの生産性が向上するというメリットがある。
< 9−4. 変形体の変形例(4) >
次に、図18に示す第2の実施の形態による力覚センサ200cの更なる変形例について説明する。
図59は、図18の変形例による力覚センサ202cを示す概略上面図である。本図においても、説明の便宜上、受力体の図示が省略されている。
図59に示すように、力覚センサ202cは、変形体210bが矩形の形状を有している点で、図18に示す力覚センサ200cとは異なっている。変形体210bは、X軸上に原点Oを挟んで対称的に配置された2つの受力部218b、219bと、Y軸上に原点Oを挟んで対称的に配置された2つの固定部216b、217bとを有している。そして、閉ループ状の経路に沿って隣接する受力部と固定部とが、直線状の4つの変形要素210Ab〜210Dbによって連結されている。したがって、力覚センサ202cの基本構造202は、2つの受力部218b、219b及び2つの固定部216b、217bを4つの頂点とする矩形の形状を有しており、この矩形の4つの辺上に、変形要素210Ab〜210Dbが1つずつ配置されている。
その他の構成については、図18に示す力覚センサ200cと略同様である。このため、図59において、図18に示す力覚センサ200cと対応する構成要素には略同様の符号(末尾に「b」を付加)を付し、その詳細な説明は省略する。
以上の力覚センサ202cは、結局、図18に示す力覚センサ200cの各変形要素210A〜210Dを弧状ではなく直線状に構成したものである。従って、図59に示す力覚センサ202cに対して力及びモーメントが作用したときに、各変形要素210Ab〜210Dbに生じる弾性変形は、実質的に図18に示す力覚センサ200cと同様である。すなわち、作用する力及びモーメントに対して、本変形例による力覚センサ202cの各容量素子C11〜C41の静電容量値は、図20に記載された通りに変動する。
したがって、以上のような本変形例による力覚センサ202cによっても、図18に示す力覚センサ200cと同様の作用効果が提供され得る。
なお、本変形例においても、9−1.で説明した受力体の変形例を採用することができる。この場合、変形体210bの外周に、当該変形体210bの外周の輪郭線の形状と相似な矩形の形状に構成した受力体を配置すればよい。