本発明は、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントの各成分のうち少なくとも1つの成分を検出する力覚センサであって、
XY平面上に配置された支持体と、
前記支持体に接合された変形体と、
前記変形体に作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記変形体は、第1バネ定数を有する第1変形部と、前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する第2変形部と、を有し、
前記検出回路は、作用した力に対応する、前記第1変形部の変形に相当する第1電気信号と、前記第2変形部の変形に相当する第2電気信号と、を出力し、
作用した力に対応する前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
本発明によれば、力検出部を構成する変形体に金属疲労が生じると、第1電気信号と第2電気信号との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
この力覚センサにおいて、好ましくは、前記第1電気信号または前記第2電気信号に基づいて、当該力覚センサに作用した成分を検出する。
この場合、相対的にバネ定数が大きい変形部に対応する電気信号に基づいて作用した成分(力)を検出すれば、金属疲労の影響をほとんど受けることなく当該成分の検出が可能である。一方、相対的にバネ定数が小さい変形部に対応する電気信号に基づいて作用した成分(力)を検出すれば、作用した成分に対する感度が相対的に高いため、S/Nに優れた計測が可能となる。
以上のような力覚センサにおいて、前記検出回路は、各種の手段によって当該力覚センサに作用した成分を検出することが可能である。一例として、前記検出回路は、静電容量の変化で作用した成分を検出しても良い。
あるいは、前記検出回路は、電気抵抗値の変化で作用した成分を検出しても良い。
あるいは、前記検出回路は、発光素子と受光素子とを用いて作用した成分を検出しても良い。
以上の発明の具体的な形態としては、次のものが想定され得る。
第1−1の発明によれば、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の力を検出する一軸の力覚センサであって、
XY平面上に配置された支持体と、
前記支持体に対向して配置され、検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる変形部を有する変形体と、
前記支持体上に配置された固定電極と、
前記固定電極に対向するように前記変形体の前記変形部に設けられ、前記固定電極との間で容量素子を構成する変位電極と、
前記容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記変形体及び前記支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記変形部は、Z軸方向から見て、当該Z軸を含み第1バネ定数を有する内側変形部と、この内側変形部の外側に位置し前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する外側変形部と、を有し、
前記容量素子は、前記内側変形部に対応する位置に配置された第1容量素子と、前記外側変形部に対応する位置に配置された第2容量素子と、を有し、
前記検出回路は、
作用した力に対応する、前記第1容量素子の静電容量値に相当する第1電気信号と、前記第2容量素子の静電容量値に相当する第2電気信号と、を出力し、
作用した力に対応する前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第1−2の発明によれば、前記第2容量素子は、前記第1容量素子を取り囲むように配置されている。
第1−3の発明によれば、前記第1容量素子は、Z軸方向から見て円盤状の形状を有し、前記第2容量素子は、Z軸方向から見て円環状の形状を有している。
これらの場合、各容量素子が対称的な形状を有しているため、各容量素子の静電容量値の変動に基づいて検出対象の力を計測するための処理が容易である。
第1−4の発明によれば、以上の力覚センサにおいて、前記第1及び第2容量素子の各変位電極が共通の電極で構成されているか、または、前記第1及び第2容量素子の各固定電極が共通の電極で構成されている。
第1−5の発明によれば、Z軸方向の力が作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1及び第2容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1及び第2容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうちの一方の面積をが方の面積よりも大きく設定されている。
第2−1の発明によれば、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向及びX軸方向の力を検出する力覚センサであって、
XY平面上に配置された支持体と、
前記支持体に対向して配置され、検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる変形部を有する変形体と、
前記支持体上に配置された固定電極と、
前記固定電極に対向するように前記変形体の前記変形部に設けられ、前記固定電極との間で容量素子を構成する変位電極と、
前記容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記変形体及び前記支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記変形部は、Z軸方向から見て、当該Z軸を含み第1バネ定数を有する内側変形部と、この内側変形部の外側に位置し、前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する外側変形部と、を有し、
前記容量素子は、Z軸方向から見て、前記内側変形部に対応する位置にY軸を挟んで配置されたX軸負側の第1容量素子及びX軸正側の第2容量素子と、前記外側変形部に対応する位置において、当該第1容量素子の近傍に配置された第3容量素子及び当該第2容量素子の近傍に配置された第4容量素子と、を有し、
前記検出回路は、
作用したX軸方向の力に対応する、「前記第1容量素子の静電容量値と、前記第2容量素子の静電容量値と、の差」に相当する第1電気信号と、「前記第3容量素子の静電容量値と、前記第4容量素子の静電容量値と、の差」に相当する第2電気信号と、を出力し、
作用したX軸方向の力に対応する前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第2−2の発明によれば、作用したZ軸方向の力に対応する電気信号に基づいて、変形体の故障を診断することも可能である。すなわち、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向及びX軸方向の力を検出する力覚センサであって、
XY平面上に配置された支持体と、
前記支持体に対向して配置され、検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる変形部を有する変形体と、
前記支持体上に配置された固定電極と、
前記固定電極に対向するように前記変形体の前記変形部に設けられ、前記固定電極との間で容量素子を構成する変位電極と、
前記容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記変形体及び前記支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記変形部は、Z軸方向から見て、当該Z軸を含み第1バネ定数を有する内側変形部と、この内側変形部の外側に位置し前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する外側変形部と、を有し、
前記容量素子は、Z軸方向から見て、前記内側変形部に対応する位置にY軸を挟んで配置されたX軸負側の第1容量素子及びX軸正側の第2容量素子と、前記外側変形部に対応する位置において、当該第1容量素子の近傍に配置された第3容量素子及び当該第2容量素子の近傍に配置された第4容量素子と、を有し、
前記第1及び第2容量素子は、前記内側変形部に対応する位置にそれぞれ配置され、前記第3及び第4容量素子は、前記外側変形部に対応する位置にそれぞれ配置され、
前記検出回路は、
作用したZ軸方向の力に対応する、「前記第1容量素子の静電容量値と、前記第2容量素子の静電容量値と、の和」に相当する第1電気信号と、「前記第3容量素子の静電容量値と、前記第4容量素子の各静電容量値と、の和」に相当する第2電気信号と、を出力し、
作用したZ軸方向の力に対応する前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
本発明によっても、力検出部を構成する変形体に金属疲労が生じると、第1電気信号と第2電気信号との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
第2−3の発明によれば、前記第3容量素子は、前記第1容量素子のX軸負側に配置され、
前記第4容量素子は、前記第2容量素子のX軸正側に配置される。
第2−4の発明によれば、前記第1容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第2容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第3容量素子は、Z軸方向から見て、前記第1容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状であり、
前記第4容量素子は、Z軸方向から見て、前記第2容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状である。
これらの場合、各容量素子が対称的な形状を有するため、各容量素子の静電容量値の変動に基づいて検出対象の力を計測するための処理が容易である。
第2−5の発明によれば、X軸方向及び/またはZ軸方向の力が作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第4容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうちの一方の面積が他方の面積よりも大きく設定されている。
第2−6の発明によれば、前記第1〜第4容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第4容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されている。
第2−7の発明によれば、前記第1電気信号または前記第2電気信号に基づいて、当該力覚センサに作用した成分が検出される。本発明は、第1−1〜1−5の発明に対しても適用され得る。
第3−1の発明によれば、本発明は、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントを検出する力覚センサ、すなわち6軸の力覚センサであって、
XY平面上に配置された支持体と、
前記支持体に対向して配置され、検出対象となる力ないしモーメントの作用により弾性変形を生じる4つの第1変形部を有する第1変形体と、
前記4つの第1変形部に対応して前記支持体上に配置された固定電極と、
前記固定電極に対向するように前記4つの第1変形部にそれぞれ設けられ、固定電極との間で4組の容量素子を構成する変位電極と、
前記第1変形体に関して前記支持体とは反対側で当該第1変形体と対向し、前記4つの第1変形部の各々に対向するように配置された4つの第2変形部を有する第2変形体と、
各第1変形部とこの第1変形部に対応する第2変形部とをそれぞれ連結する連結部材と、
前記4組の容量素子の各静電容量値の変動量に基づいて、前記第2変形体及び前記支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用した力ないしモーメントを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
各第1変形部は、それぞれ、当該第1変形部のうち前記連結部材に連結され第1バネ定数を有する内側変形部と、この内側変形部の外側に位置し前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する外側変形部と、を有し、
前記4組の容量素子のうち第1組の容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸正側にY軸を挟んで配置されたX軸負側の第1容量素子及びX軸正側の第2容量素子と、前記第1容量素子の近傍に配置された第3容量素子及び前記第2容量素子の近傍に配置された第4容量素子と、を有し、
前記4組の容量素子のうち第2組の容量素子は、Z軸方向から見て、X軸正側にX軸を挟んで配置されたY軸正側の第5容量素子及びY軸負側の第6容量素子と、前記第5容量素子の近傍に配置された第7容量素子及び前記第6容量素子の近傍に配置された第8容量素子と、を有し、
前記4組の容量素子のうち第3組の容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸負側にY軸を挟んで配置されたX軸正側の第9容量素子及びX軸負側の第10容量素子と、前記第9容量素子の近傍に配置された第11容量素子及び前記第10容量素子の近傍に配置された第12容量素子と、を有し、
前記4組の容量素子のうち第4組の容量素子は、Z軸方向から見て、X軸負側にX軸を挟んで配置されたY軸負側の第13容量素子及びY軸正側の第14容量素子と、前記第13容量素子の近傍に配置された第15容量素子及び前記第14容量素子の近傍に配置された第16容量素子と、を有し、
前記第1、第2、第5、第6、第9、第10、第13及び第14容量素子は、各第1変形部の内側変形部に対応する位置にそれぞれ配置され、前記第3、第4、第7、第8、第11、第12、第15及び第16容量素子は、各第1変形部の外側変形部に対応する位置にそれぞれ配置され、
前記検出回路は、
「前記第1、第2、第5、第6、第9、第10、第13及び第14容量素子の各静電容量値の変動量」に基づいて、XYZ三次元座標系における各軸方向の力と各軸まわりのモーメントとに相当する、4つの第1変形部について合計6つの第1電気信号を出力し、
「前記第3、第4、第7、第8、第11、第12、第15及び第16容量素子の各静電容量値の変動量」に基づいて、XYZ三次元座標系における各軸方向の力と各軸まわりのモーメントとに相当する、4つの第1変形部について合計6つの第2電気信号を出力し、
XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントのうち少なくとも1つにおける前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第3−2の発明によれば、前記検出回路は、前記第1電気信号または前記第2電気信号に基づいて、当該力覚センサに作用した各軸方向の力及びモーメントを検出する。
第3−3の発明によれば、前記第3容量素子は、前記第1容量素子のX軸負側に配置され、
前記第4容量素子は、前記第2容量素子のX軸正側に配置され、
前記第7容量素子は、前記第5容量素子のY軸正側に配置され、
前記第8容量素子は、前記第6容量素子のY軸負側に配置され、
前記第11容量素子は、前記第9容量素子のX軸正側に配置され、
前記第12容量素子は、前記第10容量素子のX軸負側に配置され、
前記第15容量素子は、前記第13容量素子のY軸負側に配置され、
前記第16容量素子は、前記第14容量素子のY軸正側に配置されている。
第3−4の発明によれば、前記第1容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第2容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第3容量素子は、Z軸方向から見て、前記第1容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状であり、
前記第4容量素子は、Z軸方向から見て、前記第2容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の電極であり、
前記第5容量素子は、Z軸方向から見て、X軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のY軸正側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第6容量素子は、Z軸方向から見て、X軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のY軸負側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第7容量素子は、Z軸方向から見て、前記第5容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状であり、
前記第8容量素子は、Z軸方向から見て、前記第6容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状であり、
前記第9容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第10容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第11容量素子は、Z軸方向から見て、前記第9容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状であり、
前記第12容量素子は、Z軸方向から見て、前記第10容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状であり、
前記第13容量素子は、Z軸方向から見て、X軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のY軸負側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第14容量素子は、Z軸方向から見て、X軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のY軸正側に弧が形成された半円状の形状であり、
前記第15容量素子は、Z軸方向から見て、前記第13容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状であり、
前記第16容量素子は、Z軸方向から見て、前記第14容量素子の前記弧を取り囲む半円環状の形状である。
この場合、各容量素子が対称的な形状を有するため、各容量素子の静電容量値の変動に基づいて検出対象の力を計測するための処理が容易である。
第3−5の発明によれば、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第16容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第16容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうちの一方の面積が他方の面積よりも大きく設定されている。
第3−6の発明によれば、前記第1〜第16容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第16容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されている。
第3−7の発明によれば、前記4組の容量素子は、Z軸方向から見て、原点から等距離に配置されている。この場合、各組の容量素子が対称的に配置されることになるため、各容量素子の静電容量値の変動に基づいて検出対象の力を計測するための処理が一層容易である。
第3−8の発明によれば、前記検出回路は、当該力覚センサが正常に機能している状態における前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率を基準比率として記憶する記憶部を有し、
「前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率と、前記基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
この場合、予め定められた基準比率に基づいて、変形体の故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。この構成は、第1−1〜第2−7の発明に対しても適用され得る。
第4−1の発明によれば、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の力を検出する力覚センサであって、
検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる変形部を有する変形体と、
前記変形体の表面に配置され、前記弾性変形によって当該変形体に生じた歪を計測する歪計測器と、
前記歪計測器の計測結果に基づいて、前記変形体に作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記変形部は、Z軸方向から見て当該Z軸を含み第1バネ定数を有する内側変形部と、この前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する外側変形部と、を有し、
前記歪計測器は、前記内側変形部に設けられた第1計測部位の歪と、前記外側変形部に設けられた第2計測部位の歪と、を計測し、
前記検出回路は、
作用した力に対応する、前記第1計測部位の計測値に相当する第1電気信号と、前記第2計測部位の計測値に相当する第2電気信号と、を出力し、
作用した力に対応する前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第4−2の発明によれば、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向及びX軸方向の力を検出する力覚センサであって、
検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる変形部を有する変形体と、
前記変形体の表面に配置され、前記弾性変形によって当該変形体に生じた歪を計測する歪計測器と、
前記歪計測器の計測結果に基づいて、前記変形体に作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記変形部は、Z軸方向から見て、当該Z軸を含み第1バネ定数を有する内側変形部と、この内側変形部の外側に位置し前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する外側変形部と、を有し、
前記歪計測器は、正のX軸上において前記内側変形部に設けられた第1計測部位の歪と、負のX軸上において前記内側変形部に設けられた第2計測部位の歪と、正のX軸上において前記外側変形部に設けられた第3計測部位の歪と、負のX軸上において前記外側変形部に設けられた第4計測部位の歪と、を計測し、
前記検出回路は、
作用したX軸方向の力に対応する、「前記第1計測部位の計測値と、前記第2計測部位の計測値と、の差」に相当する第1電気信号と、「前記第3計測部位の計測値と、前記第4計測部位の計測値と、の差」に相当する第2電気信号と、を出力し、
作用したX軸方向の力に対応する前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第4−3の発明によれば、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向及びX軸方向の力を検出する力覚センサであって、
検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる変形部を有する変形体と、
前記変形体の表面に配置され、前記弾性変形によって当該変形体に生じた歪を計測する歪計測器と、
前記歪計測器の計測結果に基づいて、前記変形体に作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記変形部は、Z軸方向から見て、当該Z軸を含み第1バネ定数を有する内側変形部と、この内側変形部の外側に位置し前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する外側変形部と、を有し、
前記歪計測器は、正のX軸上において前記内側変形部に設けられた第1計測部位の歪と、負のX軸上において前記内側変形部に設けられた第2計測部位の歪と、正のX軸上において前記外側変形部に設けられた第3計測部位の歪と、負のX軸上において前記外側変形部に設けられた第4計測部位の歪と、を計測し、
前記検出回路は、
作用したZ軸方向の力に対応する、「前記第1計測部位の計測値と、前記第2計測部位の計測値と、の和」に相当する第1電気信号と、「前記第3計測部位の計測値と、前記第4計測部位の計測値と、の和」、に相当する第2電気信号と、を出力し、
作用したZ軸方向の力に対応する前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第4−4の発明によれば、作用した力が、前記内側変形部及び前記外側変形部のうち相対的に大きいバネ定数を有する変形部に設けられた計測部位の計測値に基づいて計測される。
第4−5の発明によれば、前記検出回路は、「当該力覚センサが正常に機能している状態における前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率」を基準比率として記憶する記憶部を有し、
「前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率と、前記基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第4−6の発明によれば、本発明は、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントを検出する6軸の力覚センサであって、
検出対象となる力ないしモーメントの作用により弾性変形を生じる4つの第1変形部を有する第1変形体と、
前記第1変形体の表面に配置され、前記弾性変形によって前記4つの第1変形部に生じた歪を計測するための歪計測器と、
前記4つの第1変形部の各々に対向するように配置された4つの第2変形部を有する第2変形体と、
各第1変形部とこの第1変形部に対応する第2変形部とをそれぞれ連結する連結部材と、
前記歪計測器の計測結果に基づいて、前記第1変形体及び前記第2変形体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用した力ないしモーメントを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
各第1変形部は、それぞれ、当該第1変形部のうち前記連結部材に連結され第1バネ定数を有する内側変形部と、前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有する外側変形部と、を有し、
前記歪計測器は、各第1変形部において、前記内側変形部に前記連結部材を挟んでX軸方向に沿って設けられた第1及び第2計測部位の歪と、前記内側変形部に前記連結部材を挟んでY方向に沿って設けられた第3及び第4計測部位の歪と、前記外側変形部に前記連結部材を挟んでX軸方向に沿って設けられた第5及び第6計測部位の歪と、前記外側変形部に前記連結部材を挟んでY軸方向に沿って設けられた第7及び第8計測部位の歪と、を検出し、
前記検出回路は、
各第1変形部の前記内側変形部に配置された前記第1〜第4計測部位の計測値に基づいて、XYZ三次元座標系における各軸方向の力と各軸まわりのモーメントとに相当する、4つの前記第1変形部について合計6つの第1電気信号を出力し、
各第1変形部の前記外側変形部に配置された前記各4つの第5〜第8計測部位の計測値に基づいて、XYZ三次元座標系における各軸方向の力と各軸まわりのモーメントとに相当する、4つの前記第1変形部について合計6つの第2電気信号を出力し、
XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントのうち少なくとも1つについての前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第4−7の発明によれば、前記第1電気信号または前記第2電気信号に基づいて、当該力覚センサに作用した成分が検出される。
第4−8の発明によれば、前記検出回路は、各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントのうち少なくとも1つについて、「当該力覚センサが正常に機能している状態における前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率」を基準比率として記憶する記憶部を有し、
「各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントのうち少なくとも1つについての前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率と、前記基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第4−9の発明によれば、前記歪計測器は、各計測部位に対応して設けられた歪ゲージを含む。
第4−10の発明によれば、前記歪計測器は、発光素子と受光素子とを有する光学干渉式の計測器を含む。
第4−11の発明によれば、前記内側変形部は、X軸方向に延びる一本の内側ビームであり、
前記外側変形部は、前記内側ビームの両端からそれぞれX軸方向に延びる外側ビームである。
第4−12の発明によれば、前記内側変形部は、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ延びる十字状の2本の内側ビームであり、
前記外側変形部は、前記2本の内側ビームの各両端からX軸方向及びY軸方向にそれぞれ延びる外側ビームである。
第4−13の発明によれば、前記内側変形部は、円盤状の内側ダイアフラムであり、
前記外側変形部は、前記内側ダイアフラムの外周を取り囲む円環状の外側ダイアフラムである。
第4−14の発明によれば、前記第1バネ定数は、前記第2バネ定数よりも小さい。
第4−15の発明によれば、前記第1バネ定数は、前記第2バネ定数よりも大きい。
第4−16の発明によれば、前記内側変形部と前記外側変形部とは、Z軸方向の肉厚が互いに異なることによって、異なるバネ定数を有する。
なお、第4−13〜4−16の発明は、第1−1〜第3−8の発明に対しても適用され得る。
第4−17の発明によれば、前記内側変形部及び前記外側変形部のうちの一方にスリットが設けられていることによって、当該内側変形部と当該外側変形部とが異なるバネ定数を有する。
第4−18の発明によれば、前記内側ビームと前記外側ビームとは、Z軸方向から見て、互いの幅方向の肉厚が異なることによって、異なるバネ定数を有する。
第5−1の発明によれば、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのトルクを検出する力覚センサであって、
検出対象となる力ないしトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、Z軸が挿通する貫通開口部を有する環状変形体と、
前記環状変形体がXZ平面と交わる2つの第1部位において当該環状変形体に接続された第1支持体と、
前記環状変形体がZ軸を含みXZ平面とは異なる平面と交わる2つの第2部位において当該環状変形体に接続され、前記第1支持体に対してZ軸まわりに回転可能な第2支持体と、
前記環状変形体の所定位置に配置され、当該環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる変位電極と、
前記第1支持体のうち前記変位電極に対向する位置に配置された固定電極と、
前記変位電極と前記固定電極とによって構成される容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記第1支持体及び前記第2支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用した各軸方向の力及び各軸まわりのトルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記環状変形体は、当該前記環状変形体上に定義された4つの検出点に位置する第1〜第4検出部と、これらの第1〜第4検出部の両端に接続された連結部と、を有し、
前記第1検出部と前記第4検出部とは、X軸正側においてX軸に関して対称的に配置され、前記第2検出部と前記第3検出部とは、X軸負側においてX軸に関して対称的に配置され、
前記第1〜第4検出部は、それぞれ、検出対象となる力ないしトルクの作用により弾性変形を生じる第1変形部と、検出対象となる力ないしトルクの作用により弾性変形を生じる第2変形部と、前記第1変形部および前記第2変形部の弾性変形により変位を生じる変位部と、を有し、
前記第1変形部の円周方向外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第1変形部の円周方向内側端は前記変位部に接続され、前記第2変形部の円周方向外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第2変形部の円周方向内側端は前記変位部に接続され、
前記第1及び第4検出部の前記第1及び第2変形部は、第1バネ定数を有し、
前記第2及び第3検出部の前記第1及び第2変形部は、前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有し、
前記容量素子は、第1容量素子、第2容量素子、第3容量素子及び第4容量素子を有し、各容量素子は、前記第1〜第4検出部のそれぞれの前記変位部に対応する位置に配置された変位電極及び固定電極から構成され、
前記検出回路は、「前記第1容量素子の静電容量値と前記第4容量素子の静電容量値との和に相当する第1電気信号と、前記第2容量素子の静電容量値と前記第3容量素子の静電容量値との和に相当する第2電気信号と、の差」を作用したX軸方向の力を示す電気信号として出力し、
「前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率」または「前記第1容量素子または前記第4容量素子の静電容量値に相当する電気信号と、前記第2容量素子または前記第3容量素子の静電容量値に相当する電気信号と、の比率」に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第5−2の発明によれば、前記検出回路は、
当該力覚センサが正常に機能しているときの、「前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率」または「前記第1容量素子または前記第4容量素子の静電容量値に相当する電気信号と、前記第2容量素子または前記第3容量素子の静電容量値に相当する電気信号と、の比率」を基準比率として記憶する記憶部を有し、
「前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率」または「前記第1容量素子または前記第4容量素子の静電容量値に相当する電気信号と、前記第2容量素子または前記第3容量素子の静電容量値に相当する電気信号と、の比率」と、前記基準比率と、の差が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第5−3の発明によれば、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、前記第1検出部は、正のV軸上に配置され、前記第2検出部は、正のW軸上に配置され、前記第3検出部は、負のV軸上に配置され、前記第4検出部は、負のW軸上に配置される。
第5−4の発明によれば、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのトルクを検出する力覚センサであって、
検出対象となる力ないしトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、Z軸が挿通する貫通開口部を有する環状変形体と、
前記環状変形体がXZ平面と交わる2つの第1部位において当該環状変形体に接続された第1支持体と、
前記環状変形体がZ軸を含みXZ平面とは異なる平面と交わる2つの第2部位において当該環状変形体に接続され、前記第1支持体に対してZ軸まわりに回転可能な第2支持体と、
前記環状変形体の所定位置に配置され、当該環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる変位電極と、
前記第1支持体のうち前記変位電極に対向する位置に配置された固定電極と、
前記変位電極と前記固定電極とによって構成される容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記第1支持体及び前記第2支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用した各軸方向の力及び各軸まわりのトルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記環状変形体は、当該前記環状変形体上に定義された4つの検出点に位置する第1〜第4検出部と、これらの第1〜第4検出部の両端に接続された連結部と、を有し、
前記第1〜第4検出部は、それぞれ、検出対象となる力ないしトルクの作用により弾性変形を生じる第1変形部と、検出対象となる力ないしトルクの作用により弾性変形を生じる第2変形部と、前記第1変形部および前記第2変形部の弾性変形により変位を生じる変位部と、を有し、
前記第1変形部の円周方向外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第1変形部の円周方向内側端は前記変位部に接続され、前記第2変形部の円周方向外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第2変形部の円周方向内側端は前記変位部に接続され、
前記第1及び第2検出部の前記第1及び第2変形部は、第1バネ定数を有し、
前記第3及び第4検出部の前記第1及び第2変形部は、前記第1バネ定数とは異なる第2バネ定数を有し、
前記容量素子は、第1容量素子、第2容量素子、第3容量素子及び第4容量素子を有し、各容量素子は、前記第1〜第4検出部のそれぞれの前記変位部に対応する位置に配置された変位電極及び固定電極から構成され、
前記検出回路は、
「前記第1容量素子の静電容量値と、前記第2容量素子の静電容量値と、の和」に相当する第1電気信号と、「前記第3容量素子の静電容量値と、前記第4容量素子の静電容量値と、の和」に相当する第2電気信号と、を作用したZ軸方向の力を示す電気信号として出力し、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第5−5の発明によれば、前記検出回路は、「当該力覚センサが正常に機能している状態でZ軸方向の力が作用したときの前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率」を基準比率として記憶する記憶部を有し、
「前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率と、前記基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する。
第5−6の発明によれば、前記第1〜第4検出部は、前記環状変形体上に当該環状変形体の周方向に沿って等間隔で配置されている。この場合、各検出部が原点の周りに対称的に配置されることになるため、力覚センサに作用した力ないしモーメントを検出するための計算が容易である。
第5−7の発明によれば、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第4容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうちの一方の面積が他方の面積よりも大きく設定されている。
第5−8の発明によれば、前記第1〜第4固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第4変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されている。
第5−9の発明によれば、前記第1バネ定数は、前記第2バネ定数よりも小さい
第5−10の発明によれば、前記第1バネ定数は、前記第2バネ定数よりも大きい。
<<< §1. 1軸の力覚センサの実施例 >>>
添付の図面を参照して、本発明の第1の実施の形態による力覚センサについて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による1軸の力覚センサを示す概略断面図であり、図2は、図1の力覚センサの変位電極E30を示す概略平面図である。
図1に示すように、本実施の形態による力覚センサは、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向(図1における上下方向)の力Fzを検出する力覚センサである。本実施の形態の力覚センサは、XY平面上に配置された平板状の支持体300と、前記支持体300に対向して配置され、検出対象となる力Fzの作用により弾性変形を生じる変形部としてのダイアフラム150dを有する変形体100と、支持体300の上面に下部基板12を介して配置された固定電極E20と、固定電極E20に対向するように上部基板11を介してダイアフラム150dに設けられ、固定電極E20との間で容量素子Cを構成する変位電極E30と、を備えている。ここでは、説明の便宜上、支持体300の上面はXY平面に一致して配置されているものとする。
本実施の形態では、図1に示すように、ダイアフラム150dの上面(図1における上方の面)に、検出対象となる力Fzを受ける受力体160が設けられており、当該受力体160を介して力Fzがダイアフラム150dに伝達されるようになっている。また、ダイアフラム150dの周縁部には、下方に向かって延出した接続部151が形成されており、当該接続部151の下端が支持体300の上面に接続されている。すなわち、変形体100は、支持体300によって支持されており、受力体160に検出対象となる力Fzが作用すると、ダイアフラム150dが支持体300に対して弾性変形するようになっている。本実施の形態の支持体300及び変形体100は、上方(Z軸正方向)から見て共にZ軸上に中心を有する円形の外形を有している。更に、受力体160は、後述される内側変形部150lよりも小径であり、支持体300及び変形体100と同心の円盤形状を有している。図1に示すように、力Fzは、Z軸と平行に受力体160の上面に作用するようになっている。
図1に示すように、本実施の形態のダイアフラム150dは、内側変形部150lと、この内側変形部150lよりもバネ定数が相対的に大きい外側変形部150hと、を有している。内側変形部150lは、図1から理解されるように、ダイアフラム150dの中央領域に設けられている。一方、外側変形部150hは、内側変形部150lの外周を取り囲む環状の領域に設けられている。具体的には、内側変形部150lは円盤状の形状を有しており、外側変形部150hは、円環状の形状を有している。図示されるように、内側変形部150lは、外側変形部150hよりもZ軸方向の肉厚が小さくなっており、これによって、当該外側変形部150hのバネ定数よりも小さいバネ定数を有している。なお、本実施の形態における「バネ定数」とは、内側変形部150lに設けられた受力体160に対してZ軸方向の力Fzが作用したときに、内側変形部150l及び外側変形部150hに生じるZ軸方向のそれぞれの変位で力Fzの大きさを除した値を意味している。
受力体160に対して何ら力が作用していない状態では、受力体160は支持体300に対して定位置をとるが、受力体160に力Fzが作用すると、弾性(可撓性)をもったダイアフラム150dが弾性変形を生じ、受力体160と支持体300との相対位置に変化が生じることになる。このとき、内側変形部150lと外側変形部150hとのバネ定数の相違から、内側変形部150lに生じる弾性変形は、外側変形部150hに生じる弾性変形よりも大きい。もちろん、受力体160に作用する力がなくなると、受力体160は元通りの定位置に戻る。
図2に示すように、本実施の形態の変位電極E30は、Z軸上に中心を有する円盤状の第1変位電極E31と、当該第1変位電極E31の外周を取り囲む、Z軸上に中心を有する円環状の第2変位電極E32とを有している。また、図1に示すように、本実施の形態の固定電極E20は、Z軸上に中心を有する第1固定電極E21と、当該第1固定電極E21の外周を取り囲む、Z軸上に中心を有する円環状の第2固定電極E22とを有している。そして、第1変位電極E31と第1固定電極E21とは互いに対向して配置され、第1容量素子C1を構成しており、第2変位電極E32と第2固定電極E22とは互いに対向して配置され、第2容量素子C2を構成している。本実施の形態では、第1変位電極E31と第1固定電極E21とは同一の形状を有しており、第2変位電極E32と第2固定電極E22とは同一の形状を有している。もちろん、他の実施の形態においては、変位電極E30を第1変位電極と当該第1変位電極を取り囲む第2変位電極とから構成し、固定電極E20を共通電極として構成しても良く、あるいは、固定電極E20を第1固定電極と当該第1固定電極を取り囲む第2固定電極とから構成し、変位電極E30を共通電極として構成しても良い。
本実施の形態では、図1に示すように、第1変位電極E31は、内側変形部150lの下面に配置されており、第2変位電極は、外側変形部150hの下面に配置されている。換言すれば、第1変位電極E31と第1固定電極E21とで構成される第1容量素子C1は、Z軸方向から見て、内側変形部150lに対応する位置に配置されており、第2変位電極E32と第2固定電極E22とで構成される第2容量素子C2は、Z軸方向から見て、外側変形部150hに対応する位置に配置されている。
なお、図示されていないが、Z軸方向の力が作用した結果、固定電極に対する変位電極の相対位置が変化した場合にも、容量素子を構成する一対の電極の実効対向面積が変化しないように、固定電極および変位電極のうちの一方の面積を他方の面積よりも大きく設定することも考えられる。これは、具体的には、面積が小さい方の電極(例えば変位電極)の輪郭を、面積が大きい方の電極(例えば固定電極)の表面に投影して正射影投影像を形成した場合、面積が小さい方の電極の投影像が、面積が大きい方の電極の表面内に完全に含まれるような状態である。この状態が維持されれば、両電極によって構成される容量素子の実効面積は、小さい方の電極の面積に等しくなり、常に一定になる。すなわち、力の検出精度を向上させることができる。
以上のような力覚センサの受力体160にZ軸負方向(下向き)の力−Fzが作用すると、ダイアフラム150dは下方に湾曲する。これに伴って、第1変位電極E31及び第2変位電極E32が下方に変位する。このことにより、第1及び第2変位電極E31、E32と第1及び第2固定電極E21、E22との離間距離がそれぞれ減少し、第1及び第2容量素子C1、C2の静電容量値がそれぞれ増大する。本実施の形態の力覚センサにおいては、第1容量素子C1の静電容量値の変動量に基づいて、受力体160に作用したZ軸方向の力Fzを検出することができる。あるいは、第2容量素子C2の静電容量値の変動量に基づき、受力体160に作用したZ軸方向の力Fzを検出することができる。
本実施の形態では、前述したように、内側変形部150lのバネ定数は、外側変形部150hのバネ定数よりも小さい。このため、作用した力Fzの向き(符号)によらず、当該力Fzによって、内側変形部150lにおいては相対的に大きな弾性変形が生じ、外側変形部150hにおいては相対的に小さな弾性変形が生じる。このため、第1及び第2容量素子C1、C2を構成する各一対の固定電極及び変位電極が、互いに同一の離間距離を有し、且つ、互いに同一の実効対向面積を有していれば、第1容量素子C1の静電容量値の変動量の方が、第2容量素子C2の静電容量値の変動量よりも大きい。換言すれば、力Fzに対して、第1容量素子C1は、第2容量素子C2よりも高感度である。
本実施の形態の力覚センサにおいては、以下の[式1]に示すように、第1容量素子C1の静電容量値の変動量に相当する第1電気信号T1に基づいて、受力体160に作用した力Fzの方向及び大きさを検出することが可能になる。更に、第2容量素子の静電容量値の変動量に相当する第2電気信号T2に基づいて、作用した力Fzの方向及び大きさを検出することも可能である。なお、以下の[式1]において、C1及びC2は、それぞれ容量素子C1、C2の静電容量値の変動量を示している。
[式1]
T1=C1
T2=C2
本実施の形態では、変形体としてのダイアフラム150dに金属疲労が蓄積することに伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行う。以下の説明においては、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。
図3は、図1のダイアフラム150dに金属疲労が生じていない状態(初期状態)において、力覚センサに作用する力の大きさと、当該力覚センサから出力される第1電気信号T1a及び第2電気信号T2aと、の関係を示すグラフであり、図4は、図1のダイアフラム150dに金属疲労が生じている(蓄積している)状態において、力覚センサに作用する力の大きさと、当該力覚センサから出力される第1電気信号T1b及び第2電気信号T2bと、の関係を示すグラフである。
各図において、横軸は力覚センサに作用した力−Fzの絶対値を示し、縦軸は当該力−Fzに応じて力覚センサから出力される電気信号の大きさを示している。このため、各図において、各電気信号T1a〜T2bを示す直線の傾きは、力覚センサの検出感度を示すことになる。
次に、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する方法について説明する。本実施の形態の力覚センサに対して繰り返しの負荷が作用すると、ダイアフラム150dに金属疲労が生じる。金属疲労は、力Fzによる弾性変形が相対的に大きい内側変形部150lにおいて顕著に発現する。この金属疲労が蓄積されると、内側変形部150lの強度が低下し、最終的にダイアフラム150dが破断することになる。一般的に、金属材料に金属疲労が蓄積すると、当該金属材料が軟化するため、内側変形部150lのバネ定数が低下することになる。すなわち、本実施の形態のダイアフラム150dにおいては、内側変形部150lに金属疲労が蓄積すると、当該内側変形部150lが力Fzによって大きく変形されるようになり、初期状態と比較して、力Fzに対する内側変形部150lの感度が上昇する。このことは、図3と図4とを比較することによって理解される。
具体的には、図3を参照すると、初期状態においては、内側変形部150lに対応する第1電気信号T1aを示す直線の傾き(感度)は2.0である。一方、図4を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、内側変形部150lに対応する第1電気信号T1bを示す直線の傾き(感度)は3.0であり、感度が50%上昇している。
もちろん、金属疲労は、外側変形部150hにも発現するが、その発現の程度は、内側変形部150lにおける金属疲労の発現の程度よりも小さい。実際、図3を参照すると、初期状態においては、外側変形部150hに対応する第2電気信号T2aを示す直線の傾き(感度)は0.5である。その一方、図4を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、外側変形部150hに対応する第2電気信号T2bを示す直線の傾き(感度)は0.6である。従って、感度の上昇は20%にとどまっている。
ここで着目すべきは、内側変形部150lと外側変形部150hとで、金属疲労の発現の程度が異なっているということである。すなわち、初期状態においては、第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率(T1a/T2a)は、4.0であるのに対し、金属疲労が蓄積している状態においては、第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率(T1b/T2b)は、5.0に上昇しているということである。本発明は、このことを利用して力覚センサの故障診断を行うものである。
換言すれば、内側変形部150lと外側変形部150hとで金属疲労の蓄積の特性が異なることに起因して、繰り返しの負荷に伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が次第に変化する。そして、力覚センサに対して繰り返しの負荷が更に作用すると、ダイアフラム150dは最終的に内側変形部150lにおいて破断し、当該内側変形部150l側に配置された容量素子C1が正常に機能しなくなる。一方、この時点では外側変形部150h側に配置された容量素子C2は正常に機能している蓋然性が高い。
以上のことから、力Fzの計測を外側変形部150h側に配置された容量素子C2を用いて行いつつ、第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、初期状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率と、の差が所定の範囲内にあるか否かを評価することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定することができる。もちろん、作用したトルクが前記第1電気信号T1に基づいて計測されても良い。この場合、第1電気信号T1を提供する容量素子C1がバネ定数が相対的に小さい内側変形部150lに支持されているため、作用した力に対する感度が高く、S/Nに優れた力の計測が可能となる。
以上の判定原理を具現化するために、本実施の形態の力覚センサは、図5に示す検出回路を有している。図5は、本実施の形態の力覚センサに採用されている検出回路のブロック図である。この検出回路は、ダイアフラム150d及び容量素子C1、C2を含む機構部から提供される2つの容量素子の静電容量値に関する情報、すなわち第1電気信号T1及び第2電気信号T2、をそれぞれ対応する電圧値に変換するC/V変換器41と、C/V変換器41から提供される2つの電圧値に基づいて力覚センサに作用している力Fzを算出するマイコン47と、マイコン47に接続され第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの初期状態の比率を記憶する記憶部48と、を有している。マイコン47は、記憶部48に記憶された前記初期状態の比率(T1a/T2a)と、現在の第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、を比較して、その比較結果が所定の範囲内にあるか否かを判定する機能を有している。
比較の結果、現在の比率(T1b/T2b)が所定の範囲内にある場合、マイコン47は、力覚センサが正常に機能していると判定し、計測された力Fzの値を出力する。本実施の形態では、外側変形部150h側に設けられた第2容量素子C2に基づいて提供される第2電気信号T2bを用いて力Fz(Fz2)が計測される。一方、前記比率が所定の範囲内に無い場合は、マイコン47は、力覚センサが正常に機能していない(故障している)と判定し、故障診断信号を出力する。
以上のような本実施の形態によれば、ダイアフラム150dに金属疲労が生じると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、ダイアフラム150dの故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
<<< §2. 2軸の力覚センサの実施例>>>
次に、以上の故障判定の原理を2軸の力覚センサに応用した例について説明する。
ここで説明する2軸の力覚センサは、受力体160に作用したZ軸方向の力FzとX軸方向の力Fxとの2つの力を検出することが可能な力覚センサである。図6は、本発明の第2の実施の形態による2軸の力覚センサを示す概略断面図であり、図7は、図6の力覚センサの変位電極E30を示す概略平面図である。
図6及び図7に示すように、本実施の形態の力覚センサは、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向(図6における上下方向)及びX軸方向(図6における左右方向)の力を検出する力覚センサである。この力覚センサは、第1の実施の形態による1軸の力覚センサ(図1参照)と略同様の構造を有している。このため、第1の実施の形態による力覚センサに対応する構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図6に示すように、本実施の形態のダイアフラム150dも、内側変形部150lと、この内側変形部150lよりもバネ定数が相対的に大きい外側変形部150hと、を有している。内側変形部150l及び外側変形部150hの配置及び構成は1軸の力覚センサ(図1参照)と同様であるため、その詳細な説明は省略する。なお、本実施の形態における「バネ定数」とは、内側変形部150lに設けられた受力体160に対してZ軸方向の力FzまたはX軸方向の力Fxが作用したときに、内側変形部150l及び外側変形部150hに生じるZ軸方向の変位で作用した力FzまたはFxの大きさを除した値を意味している。従って、本実施の形態における「バネ定数」には、力Fzに対応するバネ定数と、力Fxに対応するバネ定数と、が考慮され得るが、いずれの方向の力が作用しても、内側変形部150lに生じる変位の方が外側変形部150hに生じる変位よりも大きくなる。
本実施の形態の力覚センサは、容量素子の構造において第1の実施の形態の力覚センサと異なっている。すなわち、本実施の形態の容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸を挟んで配置されたX軸負側の第1容量素子C11及びX軸正側の第2容量素子C12と、当該第1容量素子C11のX軸負側に配置された第3容量素子C21及び当該第2容量素子C12のX軸正側に配置された第4容量素子C22と、を有している。
これらの容量素子の一部を構成する変位電極が、図7に示されている。図示されるように、この変位電極は、Z軸方向から見て、Y軸を挟んで配置されたX軸負側の第1変位電極E31及びX軸正側の第2変位電極E32と、当該第1変位電極E31のX軸負側に配置された第3変位電極E33及び当該第2変位電極E32のX軸正側に配置された第4変位電極E34と、を有している。更に、固定電極は、第1変位電極E31に対向して配置された第1固定電極E21と、第2変位電極E32に対向して配置された第2固定電極E22と、第3変位電極E33に対向して配置された第3固定電極E23と、第4変位電極E34に対向して配置された第4固定電極E24と、を有している。
本実施の形態では、図6に示すように、第1変位電極E31及び第2変位電極E32は、内側変形部150lの下面に配置されており、第3変位電極E33及び第4変位電極E34は、外側変形部150hの下面に配置されている。換言すれば、第1変位電極E31と第1固定電極E21とで構成される第1容量素子C11、及び、第2変位電極E32と第2固定電極E22とで構成される第2容量素子C12は、Z軸方向から見て、内側変形部150lに対応する位置に配置されており、第3変位電極E33と第3固定電極E23とで構成される第3容量素子C21、及び、第4変位電極E34と第4固定電極E24とで構成される第4容量素子C22は、Z軸方向から見て、外側変形部150hに対応する位置に配置されている。
本実施の形態では、第1変位電極E31と第1固定電極E21とは同一の形状を有しており、第2変位電極E32と第2固定電極E22とは同一の形状を有しており、第3変位電極E33と第3固定電極E23とは同一の形状を有しており、第4変位電極E34と第4固定電極E24とは同一の形状を有している。
もちろん、他の実施の形態においては、第1〜第4変位電極の少なくとも2つ、例えば全て、を共通電極として構成しても良いし、あるいは、第1〜第4固定電極の少なくとも2つ、例えば全て、を共通電極として構成しても良い。
また、図示されていないが、X軸方向及びZ軸方向の力が作用した結果、固定電極に対する変位電極の相対位置が変化した場合にも、容量素子を構成する一対の電極の実効対向面積が変化しないように、固定電極および変位電極のうちの一方の面積を他方の面積よりも大きく設定することも考えられる。これは、前述したように、面積が小さい方の電極(例えば変位電極)の輪郭を、面積が大きい方の電極(例えば固定電極)の表面に投影して正射影投影像を形成した場合、面積が小さい方の電極の投影像が、面積が大きい方の電極の表面内に完全に含まれるような状態である。この状態が維持されれば、両電極によって構成される容量素子の実効面積は、小さい方の電極の面積に等しくなり、常に一定になる。すなわち、力の検出精度を向上させることができる。
Z軸方向から見た各電極の構造について詳述すると、第1固定電極E31及び第1変位電極E21は、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の電極であり、第2固定電極E32及び第2変位電極E22は、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の電極であり、第3固定電極E33及び第3変位電極E23は、第1固定電極E31及び第1変位電極E21の前記弧をそれぞれ取り囲む半円環状の電極であり、第4固定電極E34及び第4変位電極E24は、第2固定電極E32及び第2変位電極E22の前記弧をそれぞれ取り囲む半円環状の電極である。結局、本実施の形態の電極E20、E30は、第1の実施の形態の力覚センサにおける電極を、Y軸を切断線としてそれぞれ二等分した形状となっている。
<2−1. Fxによる故障判定>
以上のような力覚センサの受力体160にX軸正方向の力+Fxが作用すると、ダイアフラム150dには弾性変形が生じる。図8は、X軸正方向の力+Fxによって図7の力覚センサのダイアフラム150dに変形が生じている状態を示す概略断面図である。図8に示すように、図の左側から右側に向かって、受力体160に力+Fxがに作用すると、ダイアフラム150dには、図示するような変形が生じる。この変形により、受力体160に力+Fxが作用していない初期状態と比較して、X軸負側に位置する第1変位電極E31及び第3変位電極E33が上方に変位し、その一方で第2変位電極E32及び第4変位電極E34が下方に変位する。このような各変位電極E31〜E34の変位により、第1容量素子C11及び第3容量素子C21の各静電容量値は減少し、その一方で第2容量素子C12及び第4容量素子C22の各静電容量値は増大する。
本実施の形態では、前述したように、内側変形部150lのバネ定数は、外側変形部150hのバネ定数よりも小さい。このため、力Fxの向き(符号)によらず、当該力Fxによって、内側変形部150lにおいては相対的に大きな弾性変形が生じ、外側変形部150hにおいては相対的に小さな弾性変形が生じる。このため、第1〜第4容量素子C11〜C22を構成する各一対の固定電極及び変位電極が、互いに同一の離間距離を有し、且つ、互いに同一の実効対向面積を有していれば、第1容量素子C11及び第2容量素子C12の静電容量値の変動量の方が、第3容量素子C21及び第4容量素子C22の静電容量値の変動量よりも大きい。換言すれば、力Fzに対して、第1容量素子C11及び第2容量素子C12は、第3容量素子C21及び第4容量素子C22よりも高感度である。
このような各容量素子C11〜C22の各静電容量値の変動量に基づき、受力体160に作用したX軸方向の力Fxの方向及び大きさは、以下の[式2]に示すように、「第1容量素子C11の静電容量値と、第2容量素子C12の静電容量値と、の差」に相当する第1電気信号T1に基づいて、検出することができる。更に、「第3容量素子C21の静電容量値と、第4容量素子C22の静電容量値と、の差」に相当する第2電気信号T2に基づいて、力Fxを検出することもできる。なお、以下の[式2]において、C11〜C22は、それぞれ容量素子C1〜C4の静電容量値の変動量を示している。
[式2]
T1=C12−C11
T2=C22−C21
本実施の形態でも、変形体としてのダイアフラム150dに金属疲労が蓄積することに伴ってこれら第1及び第2電気信号T1及びT2の比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行う。このため、以下の説明においては、§1と同様に、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。本実施の形態では、力覚センサに作用する力Fxの大きさと、初期状態での第1及び第2電気信号T1a、T2aと、の関係は、図3に示すグラフと同じである。また、力覚センサに作用する力Fxの大きさと、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている状態での第1及び第2電気信号T1b、T2bと、の関係は、図4に示すグラフと同じである。
以上のような本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§1と同じである。すなわち、§1における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式2]に読み替えることによって、本実施の形態による力覚センサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。但し、本実施の形態では、検出回路のマイコン47は、C/V変換器41から提供される2つの電圧値に対して、[式2]に基づく差分検出を行うことによって、力Fxに代えて力Fxを算出する。
以上のような本実施の形態によれば、ダイアフラム150dに金属疲労が生じると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障診断が可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、ダイアフラム150dの故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
また、本実施の形態では、各容量素子C11〜C22がY軸に関して対称的に配置されているため、当該各容量素子C11〜C22の静電容量値の変動に基づく検出対象の力Fxを計測するための処理が容易である。
<2−2. Fzによる故障判定>
2軸の力覚センサについては、X軸方向の力Fxに代えて、Z軸方向の力Fzによって当該力覚センサの故障判定を行うことも可能である。2軸の力覚センサの構造は、2−1.において説明した構造と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
このような力覚センサの受力体160にZ軸負方向の力−Fzが作用すると、§1で説明したように、ダイアフラム150dは下方に湾曲する。これに伴って、第1〜第4変位電極E31〜E34が下方に変位する。このことにより、第1〜第4容量素子C11〜C22を構成する第1〜第4変位電極E31〜E34と第1〜第4固定電極E21〜E24との離間距離がそれぞれ減少し、各容量素子C11〜C22の静電容量値が増大する。
このことから、本実施の形態の力覚センサにおいては、以下の[式3]に示すように、第1容量素子C11の静電容量値の変動量と第2容量素子C12の静電容量値の変動量との和に相当する第1電気信号T1に基づいて、受力体160に作用したZ軸方向の力Fzを検出することができる。更に、第3容量素子C21の静電容量値の変動量と第4容量素子のC22の静電容量値の変動量との和に相当する第2電気信号T2に基づいて、力Fzを検出することもできる。
[式3]
T1=C11+C12
T2=C21+C22
本実施の形態による力覚センサも、変形体としてのダイアフラム150dに金属疲労が蓄積することに伴ってこれら第1及び第2電気信号T1及びT2の比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行うようになっている。ここでも、§1と同様に、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。本実施の形態では、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での、作用した力−Fzの絶対値と第1及び第2電気信号T1a、T2aとの関係は、図3に示すグラフと同じである。また、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている状態での、作用した力−Fz絶対値と第1及び第2電気信号T1b、T2bとの関係は、図4に示すグラフと同じである。
以上のような本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§1と同じである。すなわち、§1における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式3]に読み替えることによって、本実施の形態による力覚センサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。なお、逆向きの力、すなわちZ軸正方向の力+Fzが作用すると、各容量素子の静電容量値の増減は逆になる。
以上のような本実施の形態の力覚センサによっても、ダイアフラム150dに金属疲労が生じると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、ダイアフラム150dの故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
また、本実施の形態では、各容量素子C11〜C22がY軸に関して対称的に配置されているため、当該各容量素子C11〜C22の静電容量値の変動に基づく検出対象の力Fzを計測するための処理が容易である。
なお、図6に示す2軸の力覚センサにおいては、先の2−1.で説明したように力Fxに着目して[式2]により故障判定を行っても良いし、あるいは、ここで説明したように力Fzに着目して[式3]により故障判定を行っても良い。
<<< §3. 6軸の力覚センサの実施例 >>>
次に、§1で説明した故障判定の原理を6軸の力覚センサに応用した例について説明する。
ここで説明する6軸の力覚センサは、X、Y、Zの各軸方向の力Fx、Fy、Fzと各軸まわりのモーメントMx、My、Mzとの6つの成分を検出することが可能な力覚センサである。
図9は、本発明の第3の実施の形態による6軸の力覚センサを示す概略断面図であり、図10は、図9のA−A線断面図であり、図11は、図9のB−B線断面図である。
図9乃至図11に示すように、本実施の形態の力覚センサは、XY平面上に配置された支持体300と、支持体300に対向して配置され、検出対象となる力ないしモーメントの作用により弾性変形を生じる4つの第1変形部111〜114を有する第1変形体100と、第1変形体100の各変形部111〜114に対応して支持体300上に配置された固定電極と、固定電極に対向するように第1変形体100の4つの第1変形部111〜114にそれぞれ設けられ、固定電極との間で4組の容量素子を構成する変位電極と、第1変形体100の上方に対向して配置された第2変形体200と、を備えている。本実施の形態の第2変形体200は、4つの第1変形部111〜114に対向するように配置された4つの第2変形部211〜214を有している。更に、本実施の形態の力覚センサには、第1変形部111〜114と各第1変形部111〜114に対応する第2変形部211〜214とを連結する4つの連結部材401〜404が設けられている。なお、図9では、煩雑さを避けるため、2つの第1変形部111、113、2つの第2変形部211,213及び連結部材401、403の図示は省略されている。
第1変形体100は、例えば金属で構成された円盤状の板材に、肉厚が薄い弾性(可撓性)を有する領域を当該円盤の中心から等距離に90°毎に4つ形成されて構成され得る。この弾性を有する4つの領域が、第1変形部111〜114として機能することになる。また、本実施の形態の第2変形体200は、例えば金属で構成され第1変形体100と同じ直径を有する円盤状の板材に、肉厚が薄い弾性を有する領域を当該円盤の中心から等距離に90°毎に4つ形成することにより構成され得る。この弾性を有する4つの領域が、第2変形部211〜214として機能することになる。
本実施の形態の支持体300は、第1変形体100及び第2変形体200と同じ直径の円盤形状を有しており、図9に示すように、第1変形体100を第1変形部111〜114を除く領域において支持している。各第1変形部111〜114、各第2変形部211〜214は、Z軸方向から見て、正のX軸上、正のY軸上、負のX軸上及び負のY軸上に、各1つずつ、原点Oから等距離で配置されている(図10参照)。本実施の形態では、各第1変形部111〜114、各第2変形部211〜214は、いずれも、Z軸方向から見て、同じ直径を有する円形のダイアフラムとして構成されている。
各第1変形部111〜114の上面(図9の上方の面)には、当該各第1変形部111〜114の円形の中心位置からZ軸方向に沿って上方に延び出た第1連結部121〜124が設けられている。更に、各第2変形部211〜214の下面(図9の下方の面)には、当該各第2変形部211〜214の円形の中心位置からZ軸方向に沿って下方に延び出た第2連結部221〜224が設けられている。そして、第1連結部121〜124とその各々に対応する第2連結部221〜224とがボルトなどの適切な接続手段によって強固に接続されることによって、Z軸方向に延在する4つの連結部材401〜404が構成されている。
図9に示すように、本実施の形態の各第1変形部111〜114は、内側変形部150lと、この内側変形部150lよりもバネ定数が相対的に大きい外側変形部150hと、を有するダイアフラムから構成されている。内側変形部150lは、図9から理解されるように、各ダイアフラムの中央領域に設けられている。一方、外側変形部150hは、内側変形部150lの外周を取り囲む環状の領域に設けられている。図示されるように、内側変形部150lは、外側変形部150hよりもZ軸方向の肉厚が小さく構成されることによって、当該外側変形部150hのバネ定数よりも小さいバネ定数とされている。換言すれば、本実施の形態の第1変形体100には、§1で説明した1軸の力覚センサに採用されているダイアフラム150dが4つ、円周方向に等間隔で配置されている。
なお、本実施の形態における「バネ定数」とは、図示される受力体60に対してX、Y、Zの各軸方向の力及び/または各軸まわりのモーメントが作用した時に各ダイアフラムの内側変形部150l及び外側変形部150hに生じるZ軸方向のそれぞれの変位で、当該力及び/またはモーメントの大きさを除した値を意味している。従って、厳密には、受力体60に作用する力及び/またはモーメントごとに「バネ定数」が決定されることになるが、どのような方向及び大きさの力及び/またはモーメントが作用しても、内側変形部150lに生じる変位の方が外側変形部150hに生じる変位よりも大きくなる。
このような構成により、第2変形体200に対して何ら力が作用していない状態では、第2変形体200は支持体300に対して定位置をとるが、第2変形体200に何らかの力が作用すると、弾性(可撓性)をもった4つの第1変形部111〜114が弾性変形を生じ、第2変形体200と支持体300との相対位置に変化が生じることになる。このとき、内側変形部150lと外側変形部150hとのバネ定数の相違から、内側変形部150lに生じる弾性変形は、外側変形部150hに生じる弾性変形よりも大きい。もちろん、第2変形体200に作用する力がなくなると、当該第2変形体200は元通りの定位置に戻る。
図9に示すように、4組の容量素子は、4つの第1変形部111〜114の下面に配置された変位電極と、この変位電極に対向するように配置された固定電極とによって構成されている。まず、4組の容量素子のうち、第1組の容量素子について説明する。第1組の容量素子は、Z軸方向から見て、Y軸正側の第1変形部111に対応した領域に設けられており、4つの容量素子から構成されている。
これら4つの容量素子C11〜C14を構成する電極として、Y軸正側の第1変形部111の下面に、Y軸を挟んで配置されたX軸負側の第1変位電極E301及びX軸正側の第2変位電極E302と、第1変位電極E301のX軸負側に配置された第3変位電極E303及び第2変位電極E302のX軸正側に配置された第4変位電極E304と、がY軸に関して対称的に設けられている。更に、支持体300上に、第1変位電極E301に対向して配置された第1固定電極E201と、第2変位電極E302に対向して配置された第2固定電極E202と、第3変位電極E303に対向して配置された第3固定電極E203と、第4変位電極E304に対向して配置された第4固定電極E204と、が設けられている。
本実施の形態では、Z軸方向から見て、第1固定電極E201及び第1変位電極E301は、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の電極であり、第2固定電極E202及び第2変位電極E302は、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の電極であり、第3固定電極E203及び第3変位電極E303は、第1固定電極E201及び第1変位電極E301の前記弧をそれぞれ取り囲む半円環状の電極であり、第4固定電極E204及び第4変位電極E304は、第2固定電極E202及び第2変位電極E302の前記弧をそれぞれ取り囲む半円環状の電極である。なお、図9及び後述される図12乃至図14において、各電極を支持している基板は図示されていない。
このような電極の配置によって、第1容量素子C11が第1変位電極E301と第1固定電極E201とによって構成され、第2容量素子C12が第2変位電極E302と第2固定電極E202とによって構成され、第3容量素子C13が第3変位電極E303と第3固定電極E203とによって構成され、第4容量素子C14が第4変位電極E304と第4固定電極E204とによって構成されている。換言すれば、第1組の容量素子は、§2で説明した2軸の力覚センサに採用されている容量素子と同じ構造を有している。
本実施の形態の力覚センサには、このほかに第2組〜第4組の3組の容量素子が設けられている。第2組の容量素子も4つの容量素子(第5〜第8容量素子C21〜C24)から構成されている。この第2組の容量素子は、前述の第1組の容量素子、すなわち第1〜第4容量素子C11〜C14を原点を中心として時計回りに90°回転させた配置となっている。すなわち、第5容量素子C21は、第1容量素子C11を原点を中心として時計回りに90°回転させた位置に配置されており、第6容量素子C22は、第2容量素子C12を原点を中心として時計回りに90°回転させた位置に配置されており、第7容量素子C23は、第3容量素子C13を原点を中心として時計回りに90°回転させた位置に配置されており、第8容量素子C24は、第4容量素子C14を原点を中心として時計回りに90°回転させた位置に配置されている。もちろん、第5〜第8容量素子C21〜C24を構成する第5〜第8固定電極E205〜E208及び第5〜第8変位電極E305〜E308についても同様であり、第1〜第4固定電極E201〜E204及び第1〜第4変位電極E301〜E304を原点を中心として90°時計回りに回転させた位置に配置されている。
同様に、第3組の容量素子も4つの容量素子(第9〜第12容量素子C31〜C34)から構成されており、前述の第5〜第8容量素子C21〜C24を原点を中心として90°時計回りに回転させた位置に配置されている。また、第4組の容量素子も4つの容量素子(第13〜第16容量素子C41〜C44)から構成されており、前述の第9〜第12容量素子C31〜C34を、原点を中心として90°時計回りに回転させた位置に配置されている。
結局、第1及び第3容量素子C11、C13と、第2及び第4容量素子C12、C14とは、正のY軸を対称軸として軸対称に配置されて全体として略円形の第1組の容量素子を構成しており、第5及び第7容量素子C21、C23と、第6及び第8容量素子C22、C24とは、正のX軸を対称軸として軸対称に配置されて全体として略円形の第2組の容量素子を構成しており、第9及び第11容量素子C31、C33と、第10及び第12容量素子C32、C34とは、負のY軸を対称軸として軸対称に配置されて全体として略円形の第3組の容量素子を構成しており、第13及び第15容量素子C41、C43と、第14及び第16容量素子C42、C44とは、負のX軸を対称軸として軸対称に配置されて全体として略円形の第4組の容量素子を構成している。更に、第1組〜第4組の容量素子は、原点Oから等距離に、且つ、対応する第1変形部111〜114と同心に配置されている。本実施の形態における容量素子の配置についての理解を助けるために、図11には、第1変形体100上に配置された計16個の変位電極E301〜E316の参照符号と共に、当該変位電極E301〜E316の各々に対応する容量素子C11〜C44の参照符号を併記してある。
前述したように、第1変形体100の第1変形部111〜114は、各1つの連結部材401〜404を介して第2変形体200の第2変形部211〜214に連結されている(図9及び図10参照)。このため、第2変形体200に力が作用すると、第2変形体200及び連結部材401〜404を介して第1変形体100の第1変形部111〜114に力が伝わり、当該力の大きさ及び方向に応じて、当該第1変形部111〜114が変形する。この変形に伴って、第1変形部111〜114上に配置された第1〜第16変位電極E301〜E316がZ軸方向に変位する。すなわち、支持体300上に配置された第1〜第16固定電極E201〜E216に対する第1〜第16変位電極E301〜E316の相対位置(離間距離)がそれぞれ変化する。このことは、各容量素子C11〜C44の静電容量値のそれぞれに変動を生じさせるため、これらの変動量を検出することによって、第2変形体200に作用した力の向き及び大きさを計測することができる。
次に、X、Y、Z軸の各軸方向の力Fx、Fy、Fz、及び、各軸まわりのモーメントMx、My、Mzを計測する原理を説明する。以下の説明においては、支持体300が固定された状態で、第2変形体200に力ないしモーメントが作用するものとする。
図12は、第2変形体200にX軸正方向の力+Fxを作用させたときの図9の力覚センサの状態を示す概略断面図である。この場合、第1変形体の第1変形部111〜114及び第2変形体の第2変形部211〜214は、図示されているように変形する。すなわち、第1変形部111〜114の各々において、X軸正側の半円領域が下方に変形し、X軸負側の半円領域が上方に変形する。従って、第1組及び第3組の容量素子においてX軸負側に配置されている第1、第3、第10及び第12容量素子C11、C13、C32、C34の静電容量値が減少し、その一方、第1組及び第3組の容量素子においてX軸正側に配置されている第2、第4、第9及び第11容量素子C12、C14、C31、C33の静電容量値が増大する。これに対し、残りの第5〜第8及び第13〜第16容量素子C21〜C24、C41〜C44については、変位電極と固定電極との間の離間距離が小さくなる領域と大きくなる領域とが存在し、静電容量値の変化が打ち消されるため、静電容量値は実質的に変化しない。
もちろん、第2変形体200に左向きのX軸負方向の力−Fxが作用した場合には、第1組及び第3組の容量素子において上述した静電容量値の変動とは逆の変動が生じる。すなわち、第1組及び第3組の容量素子においてX軸負側に配置されている第1、第3、第10及び第12容量素子C11、C13、C32、C34の静電容量値が増大し、その一方、第1組及び第3組の容量素子においてX軸正側に配置されている第2、第4、第9及び第11容量素子C12、C14、C31、C33の静電容量値が減少する。残りの第5〜第8及び第13〜第16容量素子C21〜C24、C41〜C44については、前述した場合と同様に、静電容量値は実質的に変化しない。
第2変形体200にY軸正方向の力+Fyを作用させた場合については、第2変形体200にX軸正方向の力+Fxを作用させた状態を90°ずらして考えれば良いため、ここでは省略する。
次に、第2変形体200にZ軸負方向の力−Fz作用した場合について検討する。図13は、第2変形体200にZ軸負方向の力−Fzを作用させたときの図9の力覚センサの状態を示す概略断面図である。この場合、第1変形体の第1変形部111〜114及び第2変形体の第2変形部211〜214は、図示されているように変形する。すなわち、第1変形部111〜114の各々が下方に変形する。従って、第1〜第16容量素子C11〜C44は、いずれも変位電極と固定電極との間の離間距離が小さくなるため、静電容量値が増大する。
他方、第2変形体200にZ軸正方向の力が作用すると、前述した場合とは逆に、第1変形部111〜114は、それぞれ上方に変形する。従って、第1〜第16容量素子C11〜C44は、いずれも変位電極と固定電極との間の離間距離が大きくなるため、静電容量値が減少する。
次に、第2変形体200にY軸正まわりのモーメント+Myが作用した場合について検討する。図14は、第2変形体200にY軸正まわりのモーメント+Myが作用したときの図9の力覚センサの状態を示す概略断面図である。この場合、第1変形体の第1変形部111〜114及び第2変形体の第2変形部211〜214は、図示されているように変形する。すなわち、X軸正側の第1変形部112は下方に変形し、X軸負側の第1変形部114は上方に変形する。一方、図示されていないが、Y軸正側及びY軸負側の第1変形部111、113は、X軸正側の半円領域が下方に向かって変形し、X軸負側の半円領域が上方に向かって変形する。本願では、所定の座標軸まわりに作用するモーメントの符号について、当該座標軸の正方向に右ネジを進めるための当該右ネジの回転方向を正にとることにする。なお、図14において、図示されていないが、Y軸は紙面手前側から奥側に向かって延びている。
従って、X軸正側の第1変形部112に対応する第5〜第8容量素子C21〜C24の静電容量値が増大し、X軸負側の第1変形部114に対応する第13〜第16容量素子C41〜C44の静電容量値が減少する。一方、Y軸正側及びY軸負側の第1変形部111、113に対応する第1〜第4容量素子C11〜C14及び第9〜第12容量素子C31〜C34の静電容量値は、第2変形体200にX軸方向の力Fxが作用した場合(図12参照)において説明したように、実質的に変化しない。
他方、第2変形体200にY軸負まわりのモーメント−Myが作用すると、前述した場合とは逆に、X軸正側の第1変形部112に対応する第5〜第8容量素子C21〜C24の静電容量値が減少し、X軸負側の第1変形部114に対応する第13〜第16容量素子C41〜C44の静電容量値が増大する。この場合も、Y軸正側及びY軸負側の第1変形部111、113に対応する第1〜第4容量素子C11〜C14及び第9〜第12容量素子C31〜C34の静電容量値は、実質的に変化しない。
第2変形体200にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合については、第2変形体200にY軸まわりのモーメントMyが作用した状態を90°ずらして考えれば良いため、ここでは省略する。
また、第2変形体200にZ軸まわりのモーメントMzが作用した場合には、図示されていないが、連結部材401〜404はいずれもZ軸を中心とする円周に沿って同じ回転方向に傾倒するように変位する。従って、例えば第2変形体200にZ軸負まわりのモーメント−Mzが作用すると、Y軸正側の第1変形部111においては、X軸正側の半円領域が下方に向かって変形し、X軸負側の半円領域が上方に向かって変形する。X軸正側の第1変形部112においては、Y軸負側の半円領域が下方に向かって変形し、Y軸正側の半円領域が上方に向かって変形する。Y軸負側の第1変形部113においては、X軸負側の半円領域が下方に向かって変形し、X軸正側の半円領域が上方に向かって変形する。X軸負側の第1変形部114においては、Y軸正側の半円領域が下方に向かって変形し、Y軸負側の半円領域が上方に向かって変形する。
従って、Y軸正側の第1変形部111に対応する第1組の容量素子においては、第1及び第3容量素子C11、C13の静電容量値が減少し、第2及び第4容量素子C12、C22の静電容量値が増大する。同様に、X軸正側の第2変形部112に対応する第2組の容量素子においては、第5及び第7容量素子C21、C23の静電容量値が減少し、第6及び第8容量素子C22、C24の静電容量値が増大する。Y軸負側の第1変形部113に対応する第3組の容量素子においては、第9及び第11容量素子C31、C33の静電容量値が減少し、第10及び第12容量素子C32、C34の静電容量値が増大する。X軸負側の第1変形部114に第4組の容量素子においては、第13及び第15容量素子C41、C43の静電容量値が減少し、第14及び第16容量素子C42、C44の静電容量値が増大する。
一方、第2変形体200にZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用すると、各第1変形部111〜114には逆の変形が生じ、この結果、第1〜第16容量素子C11〜C44に生じる静電容量値の変動も逆になる。
本実施の形態では、前述したように、内側変形部150lのバネ定数は、外側変形部150hのバネ定数よりも小さい。このため、作用した力ないしモーメントによって、内側変形部150lにおいては相対的に大きな弾性変形が生じ、外側変形部150hにおいては相対的に小さな弾性変形が生じる。このため、第1、第2、第5、第6、第9、第10、第13及び第14容量素子C11、C12、C21、C22、C31、C32、C41、C42の静電容量値の変動量の方が、第3、第4、第7、第8、第11、第12、第15及び第16容量素子C13、C14、C23、C24、C33、C34、C43、C44の静電容量値の変動量よりも大きい。換言すれば、作用した力ないしモーメントに対して、第1、第2、第5、第6、第9、第10、第13及び第14容量素子C11、C12、C21、C22、C31、C32、C41、C42は、第3、第4、第7、第8、第11、第12、第15及び第16容量素子C13、C14、C23、C24、C33、C34、C43、C44よりも高感度である。
図15は、第2変形体200に力ないしモーメント+Fx、+Fy、+Fz、+Mx、+My、+Mzが作用した場合に各容量素子C11〜C44に生じる静電容量値の変化を一覧で示した図表である。表中の「+」は、静電容量値の増大を示し、「++」は、静電容量値の更に大きな増大を示し、「−」は、静電容量値の減少を示し、「−−」は、静電容量値の更に大きな減少を示している。「0」は、静電容量値が実質的に変化しないことを示している。また、上述したように、各力Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが逆向きになった場合には、表中の符号が逆になる。このような静電容量値の増減は、第1〜第16容量素子を構成する各一対の固定電極及び変位電極が、互いに同一の離間距離を有し、且つ、互いに同一の実効対向面積を有している場合に、成立するものである。
以上の各容量素子のうち内側変形部150lに対応する容量素子の静電容量値の変化に基づいて、力の6つの成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが次の[式4]で表される。なお、各成分の末尾に付してある「1」及び「2」の符号は、後述される、外側変形部150hに対応する容量素子の静電容量値の変化に基づいて算出される成分(これらは、末尾に「2」の符号を付してある)と区別するためのものである。
[式4]
Fx1=(C12+C31)−(C11+C32)
Fy1=(C21+C42)−(C22+C41)
Fz1=−(C11+C12+C21+C22+C31+C32+C41+C42)
Mx1=(C31+C32)−(C11+C12)
My1=(C21+C22)−(C41+C42)
Mz1=C11−C12+C21−C22+C31−C32+C41−C42
更に、以上の各容量素子のうち外側変形部150hに対応する容量素子の静電容量値の変化に基づいて、力の6つの成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが次の[式5]で表される。
[式5]
Fx2=(C14+C33)−(C13+C34)
Fy2=(C23+C44)−(C24+C43)
Fz2=−(C13+C14+C23+C24+C33+C34+C43+C44)
Mx2=(C33+C34)−(C13+C14)
My2=(C23+C24)−(C43+C44)
Mz2=C13−C14+C23−C24+C33−C34+C43−C44
本実施の形態の力覚センサにおいては、以上のFx〜Mzの6つの力ないしモーメントのいずれに着目しても当該力覚センサの故障判定を行うことができるが、ここでは、X軸方向の力Fxに着目して故障判定を行う方法について説明する。また、この故障判定を説明するに当たり、上述したFx1及びFx2に相当する電気信号を、第1電気信号T1及び第2電気信号T2とおく。すなわち、改めて第1電気信号T1及び第2電気信号T2を書き下すと、次の[式6]のようになる。
[式6]
T1=(C12+C31)−(C11+C32)
T2=(C14+C33)−(C13+C34)
本実施の形態でも、変形体としてのダイアフラム150dに金属疲労が蓄積することに伴ってこれら第1及び第2電気信号T1及びT2の比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行う。ここでも、以下の説明においては、§1と同様に、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。
本実施の形態では、力覚センサに作用する力Fxの大きさと、初期状態での第1及び第2電気信号T1a、T2aと、の関係は、図3に示すグラフと同じである。また、力覚センサに作用する力Fxの大きさと、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている状態での第1及び第2電気信号T1b、T2bと、の関係は、図4に示すグラフと同じである。
以上のような本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§1と同じである。すなわち、§1における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式6]に読み替えることによって、本実施の形態による力覚センサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。但し、本実施の形態では、2−1.と同様に、検出回路のマイコン47は、C/V変換器41から提供される2つの電圧値に対して、[式6]に基づく差分検出を行うことによって、力Fxを算出することができる。
以上のような本実施の形態によれば、ダイアフラム150dに金属疲労が生じると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な6軸の力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、ダイアフラム150dの故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
なお、力Fx以外の5つの成分のいずれかを用いて故障判定を行う場合には、[式6]に示した第1電気信号T1及び第2電気信号T2に代えて、着目する特定の成分に関する[式4]の演算式を第1電気信号T1とし、当該特定の成分に関する[式5]の演算式を第2電気信号T2とすればよい。
また、本実施の形態では、各容量素子C11〜C44がXY平面において対称的に配置されているため、当該各容量素子C11〜C44の静電容量値の変動に基づく検出対象の力ないしモーメントを計測するための処理が容易である。
なお、以上の説明においては、変位電極が4つの第1変形部111〜114に各4つずつ設けられているが、このような例には限定されない。例えば、変位電極が4つの第1変形部111〜114に各1つずつ共通電極として設けられていても良い。この場合、例えば第1変形部111に、上述したようなY軸に関して対称的に配置された4つの固定電極E201〜E204が設けられ、これらの固定電極E201〜E204と共通電極とによって4つの容量素子C11〜C14が構成され得る。このことは、残り3つの第1変形部112〜114に対応する容量素子C21〜C44についても同様である。もちろん、4つの第1変形部111〜114を導電性材料(たとえば、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属材料)から構成し、当該4つの第1変形部111〜114を共通電極として機能させても良い。
あるいは、固定電極を共通電極として構成し、上述のように変位電極を4つの第1変形部111〜114にX軸ないしY軸に関して対称に各4つ設けることによって、容量素子C11〜C44を構成しても良い。
更には、図示されていないが、各軸方向の力ないし各軸まわりのモーメントが作用した結果、固定電極に対する変位電極の相対位置が変化した場合にも、容量素子を構成する一対の電極の実効対向面積が変化しないように、各容量素子を構成する固定電極および変位電極のうちの一方の面積を他方の面積よりも大きく設定することも考えられる。これは、前述したように、面積が小さい方の電極(例えば変位電極)の輪郭を、面積が大きい方の電極(例えば固定電極)の表面に投影して正射影投影像を形成した場合、面積が小さい方の電極の投影像が、面積が大きい方の電極の表面内に完全に含まれるような状態である。この状態が維持されれば、両電極によって構成される容量素子の実効面積は、小さい方の電極の面積に等しくなり、常に一定になる。すなわち、力の検出精度を向上させることができる。
なお、図9では、変位電極を変形部に直接配置し、固定電極を支持体に直接配置したが、変形部及び支持体が導体の(金属)の場合には、図6に示すように、絶縁基板を介して変形部及び支持体に各電極を配置すればよい。
<<< §4. 歪計測器を用いた変形例による力覚センサ >>>
§1〜§3においては、静電容量式の力覚センサにおける故障判定について説明したが、この故障判定の方法は、容量素子に代えて歪みゲージなどの歪計測器によって変形体(ダイアフラム150d)に生じる歪を計測するタイプの力覚センサにも、採用可能である。
<4−1. 1軸の力覚センサ>
まず、図16乃至図19を参照して、歪ゲージを用いた1軸の力覚センサにおける故障判定について説明する。図16は、歪ゲージ式の1軸の力覚センサの一例を示す概略断面図であり、図17は、受力体160に対してZ軸負方向の力−Fzが作用した状態での、図16の力覚センサの概略断面図であり、図18は、受力体160に対してX軸正方向+Fxの力が作用した状態での、図16の力覚センサを示す概略断面図である。また、図19は、図16の力覚センサに採用されている検出回路のブロック図である。
本実施の形態の力覚センサは、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向(図17における上下方向)の力Fzを検出する力覚センサである。本実施の形態の力覚センサは、XY平面上に配置された平板状の支持体300と、前記支持体300に対向して配置され、検出対象となる力Fzの作用により弾性変形を生じる変形部としてのダイアフラム150dを有する変形体100と、を備えている。ここでは、説明の便宜上、支持体300の上面はXY平面に一致して配置されているものとする。
本実施の形態による力覚センサのダイアフラム150dの構造は、§1に示した1軸の力覚センサのダイアフラム150dと同様である。このため、図16及び図17において、§1の力覚センサの構成に対応する構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態のダイアフラム150dの上面には、図示されるように、4つの歪ゲージS1〜S4がX軸に沿って配置されている。これらのうち2つの歪ゲージS1、S2は、受力体160に関して対称的に内側変形部150lに配置されており、残り2つの歪みゲージS3、S4は、受力体160に関して対称的に外側変形部150hに配置されている。結局、図16に示すように、本実施の形態による力覚センサは、§1の力覚センサ(図1参照)から上部基板11、下部基板12及び容量素子C1、C2を取り除き、これらに代えて4つの歪ゲージS1〜S4を配置した構成となっている。本実施の形態では、例えば金属箔歪ゲージが採用されている。この金属箔歪ゲージは、圧縮応力が作用すると抵抗値が減少し、逆に引張応力が作用すると抵抗値が増大する。
以上のような力覚センサの受力体160にZ軸負方向の力−Fzが作用すると、ダイアフラム150dは下方に湾曲する。この湾曲によって、図17に示すように、内側変形部150lに配置された2つの歪ゲージS1、S2には圧縮方向の力が作用し、外側変形部150hに配置された2つの歪ゲージS3、S4には引張方向の力が作用する。また、各歪ゲージにより検出される歪の大きさについて検討すると、次の通りである。すなわち、本実施の形態では、前述したように、内側変形部150lのバネ定数は、外側変形部150hのバネ定数よりも小さい。このため、作用した力Fzによって、内側変形部150lにおいて相対的に大きな弾性変形が生じ、外側変形部150hにおいて相対的に小さな弾性変形が生じる。このため、内側変形部150lに配置された2つの歪ゲージS1、S2によって検出される歪の方が、外側変形部150hに配置された2つの歪ゲージS3、S4によって検出される歪よりも大きい。
本実施の形態の力覚センサにおいて、受力体160に作用したZ軸負方向の力−Fzの大きさ及び向きは、一例として、以下の[式7]に示すように、内側変形部150lに配置された2つの歪ゲージS1、S2の計測値の和に相当する第1電気信号T1に基づいて検出することが可能である。更に、外側変形部150hに配置された2つの歪ゲージS3、S4の計測値の和に相当する第2電気信号T2に基づいて検出することも可能である。なお、以下の[式7]において、S1〜S4は、歪ゲージS1〜S4のそれぞれの計測値を示している。
[式7]
T1=S1+S2
T2=S3+S4
もちろん、歪センサS1〜S4の配置位置から理解されるように、力Fzが受力体160に作用した時の、第1電気信号T1の大きさと第2電気信号T2の大きさとは、異なっている。このため、歪センサS1〜S4の設置位置に応じて、力Fzが受力体160に作用した時に、第1電気信号T1から算出される力と第2電気信号T2から算出される力とが同じになるように、各信号の処理過程において、適宜の補正が行われることになる。
本実施の形態による力覚センサも、§1の力覚センサと同様に、変形体としてのダイアフラム150dに金属疲労が蓄積することに伴ってこれら第1及び第2電気信号T1、T2の比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行うようになっている。このため、ここでも、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。
ここでは、受力体160に対してZ軸負方向の力−Fzが作用した場合、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での、力−Fzの絶対値と第1及び第2電気信号T1a、T2aとの関係は、図3に示すグラフと同様である。また、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている状態での、力−Fzの絶対値と第1及び第2電気信号T1b、T2bとの関係は、図4に示すグラフと同様である。但し、本実施の形態においては、図3及び図4における縦軸を、静電容量値に代えて歪ゲージの抵抗値に読み替えるものとする。
以上のような本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§1と同じである。すなわち、§1における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式7]に読み替えることによって、本実施の形態による力覚センサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
但し、本実施の形態の検出回路は、容量素子に代えて歪ゲージS1〜S4が用いられているため、§1で説明した1軸の力覚センサの検出回路とは、部分的に異なる回路構成を有している。すなわち、図19に示すように、§1で説明した1軸の力覚センサに採用されている検出回路のC/V変換器41が、A/V変換器42に置き換えられている。このA/V変換器42によって、各歪センサS1〜S4の抵抗値の変化が電圧値に変換されるようになっている。その他の構成は、§1の検出回路(図5参照)と同様であるため、対応する構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
以上のような本実施の形態によっても、ダイアフラム150dに金属疲労が生じると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、ダイアフラム150dの故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
また、本実施の形態では、4つの歪センサS1〜S4がY軸に関して対称的に配置されているため、当該歪センサS1〜S4の計測値に基づく検出対象の力Fzを計測するための処理が容易である。
なお、本実施の形態では、4つの歪ゲージS1〜S4が用いられているが、2つの歪みゲージS1及びS3のみによっても、受力体160に作用したZ軸方向の力Fzを計測しつつ力覚センサの故障診断を行うことが可能である。この場合、受力体160に作用したZ軸方向の力Fzの大きさ及び向きは、以下の[式8]に示すように、内側変形部150lに配置された歪ゲージS1計測値に相当する第1電気信号T1に基づいて検出することが可能である。更に、外側変形部150hに配置された歪ゲージS3の計測値に相当する第2電気信号T2に基づいて検出することも可能である。
[式8]
T1=S1
T2=S3
この場合も、同様にして、変形体としてのダイアフラム150dに金属疲労が蓄積することに伴ってこれら第1及び第2電気信号T1及びT2の比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行えば良い。
<4−2. 2軸の力覚センサ>
Z軸方向に作用した力Fzと、X軸方向に作用した力Fxと、を計測可能な2軸の力覚センサにおいても、容量素子に代えて歪ゲージを採用することが可能である。このような力覚センサは、§4において説明した、図16に示す構造によって、実現可能である。
故障判定に当たっては、§2で説明したように、受力体160に作用した力Fxと力Fzとのいずれを用いてもよい。例えば、受力体160に作用したX軸方向の力Fxに基づいて力覚センサの故障判定を行う場合には、第1電気信号T1及び第2電気信号T2を以下の[式9]に示すように定めればよい。
[式9]
T1=S2−S1
T2=S4−S3
あるいは、受力体160に作用したZ軸方向の力Fzに基づいて力覚センサの故障判定を行う場合には、第1電気信号T1及び第2電気信号T2を、前述の[式7]に示すように定めればよい。
これらの場合においても、変形体としてのダイアフラム150dに金属疲労が蓄積することに伴ってこれら第1及び第2電気信号T1及びT2の比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行うことができるのである。ここでも、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。
受力体160に対してX軸方向の力FxまたはZ軸方向の力Fzが作用した場合、ダイアフラム150dに金属疲労が生じていない初期状態での、作用した力FxまたはFzの絶対値と第1及び第2電気信号T1a、T2aとの関係は、図3に示すグラフと同様である。また、ダイアフラム150dに金属疲労が生じている状態での、作用した力FxまたはFzの絶対値と第1及び第2電気信号T1b、T2bとの関係は、図4に示すグラフと同様である。但し、図3及び図4における縦軸を、静電容量値に代えて歪ゲージの抵抗値に読み替えるものとする。
以上のような本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§1と同じである。すなわち、§1における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式7]または[式9]に読み替えることによって、本実施の形態による力覚センサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。また、本実施の形態による力覚センサに採用されている検出回路には、4−1.にて説明した検出回路(図19参照)と同じものが採用されている。
以上のような本実施の形態によれば、ダイアフラム150dに金属疲労が生じると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、ダイアフラム150dの故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
また、本実施の形態では、歪ゲージS1〜S4がY軸に関して対称的に配置されているため、当該歪ゲージS1〜S4の計測値に基づく検出対象の力を算出するための処理が容易である。
なお、[式8]によれば、1つの歪ゲージのみによって力Fzを検出するため、受力体160に力Fz以外の力ないしモーメントも作用している状況では、これらの力ないしモーメントも検出してしまう。[式7]も、力Fx、Fz以外の力ないしモーメントも作用している状況では、同様である。しかし、力覚センサに対して特定方向の力、例えば力Fz、しか作用しない場合には、有効である。
ところで、本実施の形態では、力Fzを検出するに当たって、[式7]または[式8]に示すように、2つの歪ゲージS1、S2または2つの歪ゲージS3、S4の計測値の和(式7)または絶対値(式8)に基づいて検出される。このため、ノイズや温度変化による影響を受けやすいという特性がある。もちろん、例えば恒温環境の下で使用すれば、本実施の形態によっても高精度な力Fzの検出が可能であるが、次に説明されるように、図20及び図21に示す変形例によれば、ノイズや温度変化による影響を受け難くなり、使用環境によらず高精度な力Fzの検出が可能となる。
図20は、半導体歪ゲージが採用された力覚センサを示す概略平面図であり、図21は、図20の力覚センサの検出回路に設けられるホイートストンブリッジ回路である。図20に示すように、本変形例による力覚センサは、p型の半導体歪ゲージS1p〜S4pとn型の半導体歪ゲージS1n〜S4nとの合計8つの歪ゲージを有している。これらの歪ゲージは、p型の半導体歪ゲージとn型の半導体歪ゲージとが2つ1組にされて、図16に示す歪ゲージS1〜S4が配置されていた位置に1組ずつ配置されている。すなわち、図16の歪ゲージS1に代えてp型の半導体歪ゲージS1p及びn型の半導体歪ゲージS1nとが配置され、図16の歪ゲージS2に代えてp型の半導体歪ゲージS2p及びn型の半導体歪ゲージS2nとが配置され、図16の歪ゲージS3に代えてp型の半導体歪ゲージS3p及びn型の半導体歪ゲージS3nとが配置され、図16の歪ゲージS4に代えてp型の半導体歪ゲージS4p及びn型の半導体歪ゲージS4nとが配置されている。
なお、半導体歪ゲージとは、ピエゾ抵抗効果を利用した歪ゲージであり、この半導体歪ゲージに対して引張応力が作用すると、p型の半導体歪ゲージにおいては抵抗値が増大し、n型の半導体歪ゲージにおいては抵抗値が減少するという特性がある。一方、この半導体歪ゲージに対して圧縮応力が作用すると、p型の半導体歪ゲージにおいては抵抗値が減少し、n型の半導体歪ゲージにおいては抵抗値が増大する。
図20に示す力覚センサに対して力Fz、Fxが作用した時に、各半導体歪ゲージS1p〜S4p、S1n〜S4nに作用する応力の方向は、図17及び図18に示す通りである。但し、図17及び図18のS1をS1p、S1nに、S2をS2p、S2nに、S3をS3p、S3nに、S4をS4p、S4nに、それぞれ読み替えるものとする。
これら8つの半導体歪ゲージS1p〜S4p、S1n〜S4nに基づいて受力体160に作用した力を計測するためには、図21に示すホイートストンブリッジ回路を用いることができる。図21(A)は、内側変形部150lに配置された4つの半導体歪ゲージS1p、S2p、S1n、S2nによって構成されるホイートストンブリッジ回路であり、図21(B)は、外側変形部150hに配置された4つの半導体歪ゲージS3p、S4p、S3n、S4nによって構成されるホイートストンブリッジ回路である。これらの2つの回路のうちどちらの回路によっても、受力体160に作用した力Fz及びFxを計測することが可能である。また、ホイートストンブリッジ回路の特性により、当該力Fz及びFxを、温度変化の影響を排除して高精度に計測することが可能である。
更に、図21(A)に示す回路から出力される電気信号を第1電気信号T1、図21(B)に示す回路から出力される電気信号を第2電気信号T2とし、これら2つの電気信号T1、T2の比率の変化に基づいて、本変形例による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定することが可能である。この判定原理は上述した通りであるため、ここでは、その詳細な説明は省略する。
<4−3. 6軸の力覚センサ>
§3で説明された6軸の力覚センサにおいても、容量素子に代えて歪ゲージを適用することが可能である。図22は、歪みゲージ式の6軸の力覚センサの一例を示す概略断面図であり、図23は、図22の力覚センサに設けられた変形部の1つを示す概略平面図である。
本実施の形態による力覚センサは、図22に示すように、§3で説明した6軸の力覚センサと略同様の構造を有している。但し、4つの変形部には容量素子が設けられておらず、その代わりに、図23に示すように、各変形部の上面(図22における上方の面)に4組の歪ゲージが設けられている。具体的には、第1組の歪ゲージは、図示されるように、Y軸正側の第1変形部111の上面に、Y軸を挟んで内側変形部150l上に対称的に配置されたX軸負側の第1歪ゲージS11及びX軸正側の第2歪ゲージS12と、Y軸を挟んで外側変形部150h上に対称的に配置されたX軸負側の第3歪ゲージS13及びX軸正側の第4歪ゲージS14と、を有している。
また、本実施の形態の力覚センサには、このほかに第2組〜第4組の3組の歪ゲージが設けられている。第2組の歪ゲージも4つの歪ゲージ(第5〜第8歪ゲージS21〜S24)から構成されている。この第2組の歪ゲージは、前述の第1組の歪ゲージS11〜S14を原点を中心として時計回りに90°回転させた配置となっている。すなわち、第5歪ゲージS21は、第1歪ゲージS11を原点を中心として時計回りに90°回転させた位置に配置されており、第6歪ゲージS22は、第2歪ゲージS12を原点を中心として時計回りに90°回転させた位置に配置されており、第7歪ゲージS23は、第3歪ゲージS13を原点を中心として時計回りに90°回転させた位置に配置されており、第8歪ゲージS24は、第4歪ゲージS14を原点を中心として時計回りに90°回転させた位置に配置されている。
同様に、第3組の歪ゲージも4つの歪ゲージ(第9〜第12歪ゲージS31〜S34)から構成されており、前述の第5〜第8歪ゲージS21〜S24を原点を中心として90°時計回りに回転させた位置に配置されている。更に、第4組の歪ゲージも4つの歪ゲージ(第13〜第16歪ゲージS41〜S44)から構成されており、前述の第9〜第12歪ゲージS31〜S34を原点を中心として90°時計回りに回転させた位置に配置されている。
結局、第1組の4つの歪ゲージS11〜S14と第3組の4つの歪ゲージS31〜S34とは、原点に関して対称的に配置され、第2組の4つの歪ゲージS21〜S24と第4組の4つの歪ゲージS41〜S44とは、原点に関して対称的に配置されている。更に、各組の歪ゲージは、内側変形部150lに配置された2つの歪ゲージ、及び、外側変形部150hに配置された2つの歪ゲージ、が連結部材401〜404に関してそれぞれ対称的に配置されている。
次に、X、Y、Z軸の各軸方向の力Fx、Fy、Fz、及び、各軸まわりのモーメントMx、My、Mzが第2変形体200に作用した時の力覚センサの状態は、§3で説明した通りであるので、ここではその説明は省略する。
本実施の形態では、内側変形部150lのバネ定数は、外側変形部150hのバネ定数よりも小さい。このため、作用した力ないしモーメントによって、内側変形部150lにおいては相対的に大きな歪が生じ、外側変形部150hにおいては相対的に小さな歪が生じる。このため、内側変形部150lに配置された歪ゲージの計測値の方が、外側変形部150hに配置された歪ゲージの計測値よりも大きい。換言すれば、第2変形体200に対して作用した力ないしモーメントに対して、内側変形部150lに配置された歪ゲージは、外側変形部150hに配置された歪ゲージよりも高感度である。
図24は、図22の力覚センサに対して正方向の力ないしモーメント+Fx、+Fy、+Fz、+Mx、+My、+Mzが作用した場合の、各歪ゲージS11〜S48の計測値の動向を一覧で示した図表である。図15に示す表と同様に、表中の「+」は、計測値が正であることを示し、「++」は、計測値が更に大きな正の値であることを示し、「−」は、計測値が負の値であること示し、「−−」は、計測値が更に大きな負の値であることを示している。また、「0」は、実質的に歪みが発生しないことを示している。本実施の形態における歪ゲージS11〜S44の配置は、§3にて説明した実施の形態(容量素子タイプの6軸の力覚センサ)における容量素子の配置に対応している。なお、本実施の形態においても、各力ないしモーメントFx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが逆向き(負方向)になった場合には、表中の符号が逆になる。
以上の各歪ゲージのうち内側変形部150lに配置された歪ゲージの計測値に基づいて、力の6つの成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが次の[式10]で表される。なお、各成分の末尾に付してある「1」及び「2」の符号は、§3にて説明した[式4]及び[式5]と同様に、後述される、外側変形部150hに配置された歪ゲージの計測値に基づいて算出される成分(これらは、末尾に「2」の符号を付してある)と区別するためのものである。また、以下の式において、S11〜S44は、歪ゲージS11〜S44の計測値を示している。
[式10]
Fx1=−(S12+S31)+(S11+S32)
Fy1=−(S21+S42)+(S22+S41)
Fz1=S11+S12+S21+S22+S31+S32+S41+S42
Mx1=−(S31+S32)+(S11+S12)
My1=−(S21+S22)+(S41+S42)
Mz1=(S12+S22+S32+S42)−(S11+S21+S31+S41)
更に、外側変形部150hに配置された歪ゲージの計測値に基づいて、力の6つの成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが次の[式11]で表される。
[式11]
Fx2=(S14+S33)−(S13+S34)
Fy2=(S23+S44)−(S24+S43)
Fz2=S13+S14+S23+S24+S33+S34+S43+S44
Mx2=−(S33+S34)+(S13+S14)
My2=(S23+S24)−(S43+S44)
Mz2=(S13+S23+S33+S43−(S14+S24+S34+S44)
本実施の形態の力覚センサにおいては、以上のFx〜Mzの6つの力ないしモーメントのいずれに着目しても当該力覚センサの故障判定を行うことができる。すなわち、例えば力Fxに着目して故障判定を行う場合、§3にて説明したように、上述したFx1及びFx2に相当する電気信号の比率に着目する。すなわち、以下の[式12]に示すように、第1電気信号T1及び第2電気信号T2を定義し、これらT1とT2との比率と、予め定められた基準比率と、の差が評価される。そして、この差が所定の範囲内に存在していない場合、力覚センサが正常に機能していない(故障している)と判定される。具体的な故障判定の方法は、§3と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
[式12]
T1=−(S12+S31)+(S11+S32)
T2=(S14+S33)−(S13+S34)
以上のような本実施の形態によれば、第1変形部111〜114に金属疲労が生じると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な6軸の力覚センサを提供することができる。
なお、本実施の形態では、4つの第1変形部111〜114に各4つの歪ゲージが配置されていたが、より計測精度を高めるために、各8つの歪みゲージが配置されても良い。すなわち、Y軸正側の第1変形部111の上面に、連結部材401を挟んでX軸方向及びY軸方向に沿って各2つずつ、内側変形部150l上に十字状に配置された4つの歪ゲージと、連結部材401を挟んでX軸方向及びY軸方向に沿って各2つずつ、外側変形部150h上に十字状に配置された4つの歪ゲージと、の合計8つの歪みゲージが配置されても良い。この場合、残り3つの第1変形部112〜114においても、同様に各8つの歪ゲージが配置され、結局、上述した6軸タイプの力覚センサにおいて、更に16個の歪ゲージが追加されることになる。この方法であれば、32個の歪ゲージが配置されることになり、それらを用いて各軸方向の力と各軸まわりのモーメントとを検出するために、ホイートストンブリッジ回路を構成しても良い。
<4−4. 4−1〜4−3の力覚センサの変形例 >
4.1〜4.3のいずれの実施の形態においても、歪センサが配置される変形部として、ダイアフラム150dに代えてビーム150bが採用され得る。図25は、ビーム形の変形部が採用された変形体の一例を示す概略平面図であり、図26は、図25の概略断面図である。図25に示すように、このビーム形の変形部においては、歪センサを配置するために十分な幅を有するビームが変形部の直径をなすように配置されている。この変形部は、全体的に板状の形状を有しているが、図26に示すように、連結部401との接続部分の近傍に位置する内側領域150lにおいて、この内側領域150lの外周に位置する外側領域150hよりも肉厚が薄くなっている。このことにより、内側領域150lのバネ定数が、外側領域150hのバネ定数よりも小さくなっている。
もちろん、内側領域150lの肉厚を異ならせる代わりに、内側領域150lの幅を異ならせても良い。すなわち、内側領域150lを相対的に幅狭に構成し、外側領域150hを相対的に幅広に構成することによって、内側領域150lのバネ定数を外側領域150hのバネ定数より小さくしてもよい。
また、4.1〜4.3のいずれの実施の形態においても、歪センサに代えて、光学式の歪計測装置が採用され得る。一例としては、4.1〜4.3において歪ゲージが配置されていた位置を計測対象部位として、この計測対象部位に光(レーザー光)を照射し、出射光と計測対象部位からの反射光との位相差に基づいて各計測対象部位の歪を計測する方法が考えられる。この場合も、歪ゲージによる計測値に基づく故障判定と同様の原理によって、力覚センサの故障判定を行うことが可能である。
<<< §5. その他の変形例>>>
以上の各力覚センサにおいては、ダイアフラム150dが金属で構成され、その下面(支持体300側の面)に基板及び変位電極が配置されているものとして説明を行ったが、このような形態には限られない。例えば、このダイアフラム150dが導電性を有していれば、当該ダイアフラム150d自体を共通電極として利用しても良い。但しこの場合、意図していない様々な部分に浮遊容量が形成されることになるため、静電容量の検出値にノイズ成分が混入しやすくなり、検出精度が低下する可能性がある。したがって、高精度の検出が要求される力覚センサの場合には、変位電極を容量素子毎に独立して設けることが好ましい。
あるいは、ダイアフラム150dをプラスチックなどの可撓性を有する絶縁体から構成することも可能である。図27は、プラスチック製のダイアフラム150dを有する力覚センサの概略断面図である。図27に示すように、ダイアフラム150dの下面(図27における下方の面)にフレキシブル基板(FPC:Flexible Print Circuit)等を接着して、その下面に変位電極を設ければよい。ただし、FPCは、ダイアフラム150dの弾性変形を妨げないような態様で当該ダイアフラム150dに接着される必要がある。このように変位電極を容量素子毎に独立して設けることができれば、前述したような検出精度の低下の恐れが少なく、更に回路的な自由度が増すことから、回路設計上有利である。プラスチックから構成されたダイアフラム150dも、繰り返しの使用によって前述した第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が変化するので、そのようなダイアフラム150dを有する力覚センサにおいても、これまで説明した故障判定の原理が採用され得る。もちろん、ダイアフラム150dを金属とした場合には、上部基板11a、下部基板11bを絶縁体として、その上面に電極を配置すればよい。
また、ダイアフラム150dの内側変形部150lと外側変形部150hとのバネ定数を異ならせるために、当該内側変形部150lと外側変形部150hとの厚みを異ならせていたが、内側変形部150lにスリット150sを放射状に設けることによって、外側変形部150hとバネ定数を異ならせる(バネ定数を小さくする)ことも可能である。図28は、内側変形部150lにスリット150sを設けたダイアフラム150dを有する変形体100を示す概略平面図である。このスリット150sによって内側変形部150lが相対的に外側変形部150hよりも変形し易くなり、前述したバネ定数の相違を生じさせることができるのである。もちろん、このようにスリット150sを設けてバネ定数を低下させることは、ビーム状の変形部を有するタイプの力覚センサ(図25参照)に対しても採用可能である。
更に、以上の各実施の形態による力覚センサにおいては、内側変形部150lのバネ定数が外側変形部150hのバネ定数よりも小さい場合について説明したが、これとは逆に、内側変形部150lのバネ定数が外側変形部150hのバネ定数よりも大きく構成されていても良い。この場合も、力覚センサの故障判定の原理は、上述した原理が採用され得る。但し、この場合、図3に示すT1a、T1bの傾き、及び、図4に示すT2a、T2bの傾きが変わることになるので、注意を要する。
<<< §6. 本出願人により提案された波型の検出部を有する力覚センサ >>>
<6−1.基本構造部の全体構成>
次に、本出願人によって出願された国際特許出願PCT/JP2015/052784において提案されている力覚センサに対して本発明の故障判定の機能を付与した、新たな力覚センサについて説明する。この説明に先だち、まず、図29乃至図37を参照して、当該国際特許出願において提案された力覚センサの基本構造部(以下、先願力覚センサという)の概要について述べることとする。
図29は、先願力覚センサの基本構造部の上面図(上段の図)および側面図(下段の図)である。上面図では、図の右方向にX軸、図の上方向にY軸が配置されており、紙面に垂直な手前方向がZ軸方向になる。一方、側面図では、図の右方向にX軸、図の上方向にZ軸が配置されており、紙面に垂直な奥行き方向がY軸方向になる。図示のとおり、この基本構造部は、受力体100、検出リング200、支持基板300、接続部材410,420、固定部材510,520によって構成されている。
受力体100は、Z軸が中心軸となるようにXY平面上に配置された円形平板状(ワッシャ状)のリングであり、外周面も内周面も円柱面を構成する。受力体100の役割は、検出対象となる力もしくはモーメントの作用を受け、これを検出リング200に伝達することにある。
一方、検出リング200は、Z軸を中心軸として配置された円盤の中央部に、より径の小さな同心円盤の形状をした貫通開口部H2を形成することにより得られる円環状の部材に対して、部分的な材料除去加工を施すことにより得られた部材である。この受力体100の外形は、後述される図36に示されているように4つの波形の検出部D1〜D4が設けられているが、ここでは、説明の便宜上、単純な円盤として図示されている。ここに示す例の場合、検出リング200は、受力体100の内側に配置されている。すなわち、受力体100はXY平面上に配置された外側リング、検出リング200はXY平面上に配置された内側リングということになる。ここで、検出リング200の特徴は、検出対象となる力もしくはモーメントの作用により弾性変形を生じる点である。
接続部材410,420は、受力体100と検出リング200とを接続するための部材である。図示の例の場合、接続部材410は、X軸正領域に沿った位置において、受力体100の内周面と検出リング200の外周面とを接続し、接続部材420は、X軸負領域に沿った位置において、受力体100の内周面と検出リング200の外周面とを接続している。したがって、受力体100と検出リング200との間には、図示のとおり空隙部H1が確保されており、検出リング200の内側には、図示のとおり空隙部H2が確保されている。
図29の下段に示す側面図を見れば明らかなように、この例の場合、受力体100と検出リング200の厚み(Z軸方向の寸法)は同じであり、側面図では、検出リング200は受力体100の内側に完全に隠れた状態になっている。両リングの厚みは、必ずしも同じにする必要はないが、薄型センサ(Z軸方向の寸法ができるだけ小さいセンサ)を実現する上では、両リングを同じ厚みにするのが好ましい。
支持基板300は、径が受力体100の外径と等しい円盤状の基板であり、XY平面に平行な上面をもち、受力体100および検出リング200の下方に所定間隔をおいて配置される。固定部材510,520は、検出リング200を支持基板300に固定するための部材である。側面図では、固定部材510は固定部材520の奥に隠れて現れていないが、固定部材510,520は、検出リング200の下面と支持基板300の上面とを接続する役割を果たす。上面図に破線で示されているとおり、固定部材510,520は、Y軸に沿った位置に配置されている。
図30は、図29に示す基本構造部をXY平面で切断した横断面図(上段の図)およびXZ平面で切断した縦断面図(下段の図)である。XY平面で切断した横断面図の中心には、XYZ三次元直交座標系の原点Oが示されている。この図30では、検出リング200が、左右2カ所において、X軸に沿って配置された接続部材410,420を介して受力体100に接続されている状態が明瞭に示されている。
図31は、図29に示す基本構造部の支持基板300および固定部材510,520の上面図(上段の図)、ならびに、この基本構造部をYZ平面で切断した縦断面図(下段の図)である。図31の上面図は、図29の上面図を反時計まわりに90°回転させた状態に相当し、Y軸が左方向にとられている。また、図31の上面図では、検出リング200の位置が破線で示されている。一方、図31の縦断面図には、固定部材510,520によって、支持基板300の上方に検出リング200が固定されている状態が明瞭に示されている。
後述するように、支持基板300を固定した状態において、受力体100に様々な方向の力が作用すると、検出リング200が、作用した力に応じた態様で変形を生じることになる。先願力覚センサは、この変形態様を電気的に検出することにより、作用した力の検出を行う。したがって、検出リング200の弾性変形のしやすさは、センサの検出感度を左右するパラメータになる。弾性変形しやすい検出リング200を用いれば、微小な力が作用した場合でも検出可能な感度の高いセンサを実現することができるが、検出可能な力の最大値は抑制されることになる。逆に、弾性変形しにくい検出リング200を用いれば、検出可能な力の最大値を大きくとることができるが、感度は低下するため、微小な力の検出はできなくなる。
一方、受力体100および支持基板300は、力を検出する原理上、弾性変形を生じる部材である必要はない。むしろ、作用した力が検出リング200の変形に100%寄与するようにするためには、受力体100および支持基板300は、完全な剛体である方が好ましい。図示の例において、受力体100として、中心に空隙部H1を有するリング状構造体を用いた理由は、弾性変形しやすくするためではなく、内部に検出リング200を収容するためである。図示の例のように、検出リング200の外側にリング状の受力体100を配置する構成を採れば、基本構造部の厚みを小さくすることができ、より薄型の力覚センサが実現できる。
実用上、受力体100、検出リング200、支持基板300の材料としては、絶縁材料を利用するのであれば、プラスチックなどの合成樹脂を用いれば十分であり、導電材料を利用するのであれば、ステンレス、アルミニウムなどの金属を用いれば十分である。もちろん、絶縁材料と導電材料とを組み合わせて利用してもかまわない。
続いて、支持基板300を固定した状態において、受力体100に対して各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントが作用した場合に、この基本構造部にどのような現象が生じるかを検討する。
上述したとおり、受力体100および支持基板300は、作用した力が検出リング200の変形に100%寄与するようにするため、本来は、完全な剛体である方が好ましい。しかしながら、実際には、基本構造部を樹脂や金属で構成した場合、受力体100や支持基板300は完全な剛体にはならず、受力体100に力やモーメントが加わると、厳密に言えば、受力体100や支持基板300にも若干の弾性変形が生じることになる。ただ、受力体100や支持基板300に生じる弾性変形が、検出リング200に生じる弾性変形に比べてわずかな弾性変形であれば無視することができ、実質的に剛体と考えて支障はない。そこで、本願では、受力体100および支持基板300が剛体であり、力やモーメントによる弾性変形は、専ら検出リング200においてのみ生じるものとして説明を行うことにする。
まず、支持基板300を固定した状態において、受力体100に対して、X軸方向の力が作用したときに、この基本構造部にどのような変化が生じるかについて説明する。図32は、図29に示す基本構造部の受力体100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの変形状態を示すXY平面における横断面図(上段の図)およびXZ平面における縦断面図(下段の図)である。支持基板300は固定されているため不動であるが、受力体100は、X軸正方向の力+Fxにより図の右方向へと移動する。その結果、検出リング200は図示のとおり変形する。なお、図に示す破線は、移動もしくは変形前の各リングの位置を示している。
ここでは、この変形態様を説明する便宜上、2つの固定点P1,P2(黒丸で示す)と、2つの作用点Q1,Q2(白丸で示す)を考える。固定点P1,P2は、Y軸上に定義された点であり、図29に示す固定部材510,520の位置に対応するものである。すなわち、検出リング200は、この固定点P1,P2の位置において、固定部材510,520によって支持基板300に固定されている。一方、作用点Q1,Q2は、X軸上に定義される点であり、検出リング200は、この作用点Q1,Q2の位置において、接続部材410,420によって受力体100に接続されている。
このように、先願力覚センサにおいて、作用点は接続部材が接続される位置であり、固定点は固定部材が接続される位置である。そして、重要な点は、作用点と固定点とが異なる位置に配置される点である。図32に示す例の場合、固定点P1,P2と作用点Q1,Q2とはXY平面上の異なる位置に配置されている。これは、作用点と固定点とが同一位置を占めると、検出リング200に弾性変形が生じなくなるためである。
さて、受力体100に対してX軸正方向の力Fxが作用すると、図32に示すように、検出リング200の作用点Q1,Q2(白丸)には、図の右方向への力が加わることになる。ところが、検出リング200の固定点P1,P2(黒丸)の位置は固定されているため、可撓性をもった検出リング200は、基準の円形状態から、図示のような歪んだ状態へと変形することになる(なお、本願における変形状態を示す図は、変形状態を強調して示すため多少デフォルメされた図になっており、必ずしも正確な変形態様を示す図ではない)。具体的には、図示のとおり、点P1−Q1間および点P2−Q1間では、検出リング200の四分円弧の両端に引っ張り力が作用して四分円弧は内側に縮み、点P1−Q2間および点P2−Q2間では、検出リング200の四分円弧の両端に押圧力が作用して四分円弧は外側に膨らんでいる。
受力体100に対してX軸負方向の力−Fxが作用した場合は、図32とは左右逆の現象が起きる。また、受力体100に対してY軸正方向の力+FyおよびY軸負方向の力−Fyが作用した場合は、図32の上段における変形状態を90°回転させた現象が起きる。
次に、支持基板300を固定した状態において、受力体100に対して、Z軸方向の力が作用したときに、この基本構造部にどのような変化が生じるかを考えてみる。図33は、図29に示す基本構造部の受力体100にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの変形状態を示すXZ平面における縦断面図である。支持基板300は固定されているため不動であるが、受力体100は、Z軸正方向の力+Fzにより図の上方向へと移動する。その結果、検出リング200は図示のとおり変形する。なお、図に示す破線は、移動もしくは変形前の各リングの位置を示している。
ここでも、変形態様の基本は、2つの固定点P1,P2の位置(固定部材510,520で固定された位置)は不動であり、2つの作用点Q1,Q2の位置が上方へ移動する、という点である。検出リング200は、固定点P1,P2の位置から作用点Q1,Q2の位置へ向けて緩やかに変形することになる。また、受力体100に対してZ軸負方向の力Fzが作用した場合は、受力体100は、図の下方向へと移動する。その結果、検出リング200の変形態様は、図33とは上下逆になる。
続いて、支持基板300を固定した状態において、受力体100に対して、Y軸まわりのモーメントが作用したときに、この基本構造部にどのような変化が生じるかを考えてみる。図34は、図29に示す基本構造部の受力体100にY軸正まわりのモーメント+Myが作用したときの変形状態を示すXZ平面における縦断面図である。なお、前述の通り、所定の座標軸まわりに作用するモーメントの符号を、当該座標軸の正方向に右ネジを進めるための当該右ネジの回転方向が正である。
この場合も、支持基板300は固定されているため不動であるが、受力体100は、Y軸正まわりのモーメント+Myを受けて、図の原点Oを中心として時計まわりに回転する。その結果、作用点Q1は下方に移動し、作用点Q2は上方に移動する。検出リング200は、固定点P1,P2の位置(固定部材510,520で固定された位置)から作用点Q1,Q2の位置へ向けて緩やかに変形することになる。受力体100に対してY軸負まわりのモーメント−Myが作用した場合は、図34とは左右逆の現象が起きる。また、受力体100に対してX軸正まわりのモーメント+MxおよびX軸負まわりのモーメント−Mxが作用した場合は、上面図において変形状態を90°回転させた現象が起きる。
最後に、支持基板300を固定した状態において、受力体100に対して、Z軸まわりのモーメントが作用したときに、この基本構造部にどのような変化が生じるかを考えてみる。図35は、図29に示す基本構造部の受力体100にZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用したときの変形状態を示すXY平面における横断面図である。この場合も、支持基板300は固定されているため不動であるが、受力体100は、Z軸正まわりのモーメント+Mzを受けて、図の原点Oを中心として反時計まわりに回転する。
その結果、検出リング200の作用点Q1,Q2には、図において反時計回りの力が加わることになる。ところが、検出リング200の固定点P1,P2の位置は固定されているため、可撓性をもった検出リング200は、基準の円形状態から、図示のような歪んだ状態へと変形することになる。具体的には、図示のとおり、点P2−Q1間および点P1−Q2間では、検出リング200の四分円弧の両端に引っ張り力が作用して四分円弧は内側に縮み、点P1−Q1間および点P2−Q2間では、検出リング200の四分円弧の両端に押圧力が作用して四分円弧は外側に膨らんでおり、全体的に楕円状に変形している。一方、受力体100に対してZ軸負まわりのモーメント−Mzが作用した場合は、受力体100は、図の原点Oを中心として時計まわりに回転するため、図35を裏返しにした変形状態が生じる。
以上、図29に示す基本構造部の支持基板300を固定した状態において、受力体100に対して各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントが作用した場合に、検出リング200に生じる変形態様を説明したが、これらの変形態様は互いに異なり、また、作用した力やモーメントの大きさにより変形量も異なる。そこで、検出リング200の弾性変形を検出し、その態様や大きさに関する情報を収集すれば、各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントをそれぞれ別個独立して検出することができる。これが、先願力覚センサにおける検出動作の基本原理である。先願力覚センサでは、このような原理に基づく検出を行うために、これまで述べてきた基本構造部に、更に、容量素子と検出回路とを付加することになる。
<6−2.検出リングの構造>
図36は、本発明の基本的実施形態(第1の実施形態)に係る力覚センサに用いる検出リング200の斜視図(図(a))、側面図(図(b))、下面図(図(c))である。図36に示す本願力覚センサに用いる検出リング200は、単純な円環状の構造体の4箇所に、弾性変形する板状片を組み合わせて構成された検出部D1〜D4が設けられている。
別言すれば、図36に示す検出リング200は、円環状の構造体に対して、部分的な材料除去加工を施すことにより得られた部材であり、この材料除去加工を施した部分によって、図示のような検出部D1〜D4が形成される。もっとも、実際に検出リング200を量産する場合は、必ずしも材料除去加工を行う必要はなく、たとえば、鋳型を用いた鋳造、樹脂の成形、プレス加工等によって製造してもかまわない。
ここでは、説明の便宜上、図示のようにXYZ三次元座標系を定義し、検出リング200をZ軸を中心軸としてXY平面に配置した状態を示す。図36(a)は、この検出リング200を斜め下方から見た斜視図である。図示のとおり、この検出リング200は、4組の検出部D1〜D4と、これら検出部D1〜D4を相互に連結する4組の連結部L1〜L4と、を有している。すなわち、検出リング200は、各検出部D1〜D4の間にそれぞれ各連結部L1〜L4を介挿した構造を有している。
図36(b)の側面図(図が煩雑になるのを避けるため、外周面の部分のみを示す)の検出部D4に示されているように、この実施形態における検出部Dは、第1の変形部61、第2の変形部62、変位部63という3枚の板状片(板バネ)によって構成されている。他の検出部D1〜D3も同様の構造を有する。このように、各検出部D1〜D4は、各連結部L1〜L4に比べて肉厚の薄い板状片によって構成されているため、各連結部L1〜L4に比べて弾性変形しやすいという性質を有している。したがって、後述するように、検出リング200に外力が作用した場合、当該外力に基づく検出リング200の弾性変形は、検出部D1〜D4に集中して生じ、連結部L1〜L4の弾性変形は、実用上、無視し得る程度である。
このように、均一な円環状構造を有する検出リングでは、外力が作用するとリング全体にわたって弾性変形が生じるのに対して、本実施の形態の検出リング200では、弾性変形が生じやすい検出部D1〜D4に変形が集中することになる。このため、より効率的な変形を生じさせることが可能になり、より効率的な検出が可能になる。具体的には、検出感度を高めるだけでなく、検出部の形状や構造を工夫することにより、弾性変形の態様を自由に設定することができるようになる。
図36(c)は、図36(a)に示す検出リング200を下方から見上げた下面図であり、X軸を右方向にとると、Y軸は下方向を向いた軸になる。図示のとおり、X軸上に配置されている連結部L1を始点として時計まわりに、連結部L1,検出部D1,連結部L2,検出部D2,連結部L3,検出部D3,連結部L4,検出部D4の順に配置されている。後述するように、Y軸上の固定点P1,P2(黒丸で示す)は支持基板に固定され、X軸上の作用点Q1,Q2(白丸で示す)には受力体から加えられた外力が作用する。その結果、各検出部D1〜D4には、当該外力に応じた弾性変形が生じる。
図37は、図36に示す検出リング200の領域分布を示す上面図である(網目状のハッチングは、検出部D1〜D4の領域を示すためのものであり、断面を示すものではない)。上面図であるため、図36(c)とは逆に、検出リング200上には反時計まわりに、L1,D1,L2,D2,L3,D3,L4,D4がこの順に配置されている。図示のとおり、XY平面上において、原点Oを中心としてX軸を反時計まわりに45°回転させた座標軸としてV軸が定義され、原点Oを中心としてY軸を反時計まわりに45°回転させた座標軸としてW軸が定義されている。図の<I>,<II>,<III>,<IV>は、XY二次元座標系における第1象限〜第4象限を示している。4組の検出部D1,D2,D3,D4は、それぞれ第1象限,第2象限,第3象限,第4象限に配置されている。
<6−3.検出部の変形態様>
次に、各検出部D1〜D4の構造とその変形態様についての説明を行う。図38は、図38に示す検出リング200の検出部D1〜D4の詳細構造を示す部分断面図である。4組の検出部D1〜D4は、いずれも同一の構造を有している。図38に示す検出部Dは、これら4組の検出部D1〜D4を代表するものであり、検出リング200を、当該検出リング200の周方向に沿って円柱面で切断したときの断面部分を示している。図38(a)は、外力が作用していない状態、図38(b)は、外力の作用により検出部Dに圧縮力f1が作用した状態、図38(c)は、外力の作用により検出部Dに伸張力f2が作用した状態をそれぞれ示している。
図38(a)に示すとおり、検出部Dの左右両脇には、連結部Lが位置している。この連結部Lは、4組の連結部L1〜L4のいずれかに相当する。たとえば、図38(a)に示す検出部Dが、図36に示されている第4の検出部D4の場合、その右脇に配置されている連結部Lは、図36に示す連結部L1に相当し、その左脇に配置されている連結部Lは、図36に示す連結部L4に相当する。
図示のとおり、検出部Dは、検出対象となる外力の作用により弾性変形を生じる第1の変形部61と、検出対象となる外力の作用により弾性変形を生じる第2の変形部62と、第1の変形部61および第2の変形部62の弾性変形により変位を生じる変位部63と、を有しており、左脇に配置された連結部Lの端部と右脇に配置された連結部Lの端部との間に配置されている。
ここに示す例の場合、第1の変形部61は、可撓性を有する第1の板状片によって構成され、第2の変形部62は、可撓性を有する第2の板状片によって構成され、変位部63は、第3の板状片によって構成されている。実際には、検出リング200は、金属(ステンレス、アルミニウムなど)や合成樹脂(プラスチックなど)といった同一材料からなる構造体によって構成される。第1の板状片61、第2の板状片62、変位部63は、連結部Lに比べて肉厚の薄い板状の部材であるため可撓性を有することになる。
なお、ここに示す例の場合、変位部63も肉厚の薄い板状の部材であるため可撓性を有しているが、変位部63は必ずしも可撓性をもった部材である必要はない(もちろん、可撓性があってもよい)。変位部63の役割は、外力が作用したときに変位を生じることであり、そのような変位を生じさせるには、第1の変形部61および第2の変形部62が可撓性を有していれば足りる。一方、連結部Lは、ある程度の可撓性を有していてもかまわないが、作用した外力によって、第1の変形部61および第2の変形部62に効果的な変形を生じさせる上では、連結部Lはなるべく変形しない方が好ましい。
第1の変形部61の外側端はこれに隣接する連結部Lに接続され、第1の変形部61の内側端は変位部63に接続されている。また、第2の変形部62の外側端はこれに隣接する連結部Lに接続され、第2の変形部62の内側端は変位部63に接続されている。図38(a)に示す例の場合、第1の変形部、第2の変形部、変位部は、それぞれ第1の板状片61、第2の板状片62、第3の板状片63によって構成されており、第1の板状片61の外側端(左端)は、左脇に配置された連結部Lの右端部に接続され、第1の板状片61の内側端(右端)は、第3の板状片63の左端に接続され、第2の板状片62の外側端(右端)は、右脇に配置された連結部Lの左端部に接続され、第2の板状片62の内側端は、第3の板状片63の右端に接続されている。
前述したとおり、検出部Dは、基本環状路B上に定義された検出点Rの位置に配置される。図38(a)に示す法線Nは、検出点Rの位置に立てた、XY平面の法線であり、検出部Dは、この法線Nが中心にくるように配置されている。また、図38(a)の断面図において、第1の板状片61および第2の板状片62は、法線Nに対して傾斜しており、かつ、第1の板状片61の傾斜方向(右下がり)と第2の板状片62の傾斜方向(右上がり)とが逆向きとなっている。特に、図示の例の場合、検出部Dの断面形状は法線Nに関して線対称となっており、第3の板状片63の上下両面は、XY平面に平行な面を構成している。
このように、基本環状路Bを含む断面に関して、法線Nに対する第1の板状片61の傾斜方向と第2の板状片62の傾斜方向とが逆向きとなっているため、基本環状路Bに沿った方向に圧縮力f1が作用した場合と、伸張力f2が作用した場合とでは、第3の板状片63(変位部)の変位方向が逆になる。これは、後述するように、複数の容量素子を用いた差分検出を行う上で好都合である。
すなわち、図38(b)に示すとおり、検出部Dに対して基本環状路Bに沿った方向に圧縮力f1(図の白矢印)が作用した場合は、検出部Dには、横幅を縮める方向に応力が加わることになるので、第1の板状片61および第2の板状片62の姿勢は、より垂直に立った状態に変化する。その結果、第3の板状片63(変位部)は、図に黒矢印で示すとおり下方に変位する。一方、図38(c)に示すとおり、検出部Dに対して基本環状路Bに沿った方向に伸張力f2(図の白矢印)が作用した場合は、検出部Dには、横幅を広げる方向に応力が加わることになるので、第1の板状片61および第2の板状片62の姿勢は、より水平に寝た状態に変化する。その結果、第3の板状片63(変位部)は、図に黒矢印で示すとおり上方に変位する。
本実施の形態による力覚センサの力ないしモーメントの計測原理は、このような変位を利用するものである。すなわち、作用した力ないしモーメントの向きは、変位部63の変位方向(図38における上方か下方か)によって検出することができ、作用したトルクの大きさは、その変位量によって検出することができる。
<6−4.容量素子の構成>
本実施の形態では、変位部63の変位を検出するために容量素子を利用する。図39は、図36に示す検出リング200の検出部D1〜D4およびこれに対向する支持基板300の所定部分に電極を設けた詳細構造を示す部分断面図である。この図39においても、検出部Dは、4組の検出部D1〜D4を代表するものであり、検出リング200を、当該検出リング200の周方向に切断したときの断面部分を示している。すなわち、図39の上段に示されている検出リング200の一部分は、図36(a)に示す検出リング200の一部分に対応する。
前述したとおり、外力(力もしくはモーメント)が作用していない状態において、第3の板状片63の両面は、基本環状路Bを含むXY平面に平行な面を構成している。一方、支持基板300は、その上下両面がXY平面に平行になるように配置されている。したがって、図示のとおり、第3の板状片63(変位部)と支持基板300の対向面とは平行な状態になっている。しかも、ここに示す実施例の場合、検出部Dの断面形状は法線Nに関して線対称となっているため、図38(b)、(c)に示すような圧縮力f1もしくは伸張力f2が作用した場合、第3の板状片63(変位部)は、図の上下方向に平行移動する形で変位を生じ、第3の板状片63(変位部)と支持基板300の対向面とは常に平行な状態に維持される。もちろん、第3の板状片63が、外力(f1,f2)によって変形する場合は、上記平行状態は維持されなくなるが、それでも、後述する電極E1,E2間の距離が外力(f1,f2)に基づいて変化すれば、検出動作上、何ら支障は生じない。
変位部の変位を検出するため、図示のとおり、支持基板300の上面には、絶縁層I1を介して固定電極E1が固定され、第3の板状片63(変位部)の下面には、絶縁層I2を介して変位電極E2が固定される。支持基板300を固定状態に維持すれば、固定電極E1の位置は固定されるが、変位電極E2の位置は第3の板状片63(変位部)の変位に伴って変位する。図示のとおり、固定電極E1と変位電極E2とは互いに対向する位置に配置されており、両者によって容量素子Cが構成される。ここで、第3の板状片63(変位部)が図の上下方向に移動すると、容量素子Cを構成する一対の電極間の距離が変動する。したがって、容量素子Cの静電容量値に基づいて、第3の板状片63(変位部)の変位方向(図の上方もしくは下方)および変位量を検出することができる。
具体的には、図38(b)に示すように、検出部Dに圧縮力f1が作用すると、両電極間距離が縮み、容量素子Cの静電容量値は増加し、図38(c)に示すように、検出部Dに伸張力f2が作用すると、両電極間距離が広がり、容量素子Cの静電容量値は減少する。図39には、検出部Dについて容量素子Cを形成した例が示されているが、もちろん、実際には、図36に示す4組の検出部D1〜D4について、それぞれ固定電極E1と変位電極E2とが設けられ、4組の容量素子C1〜C4が形成されることになる。これら4組の容量素子C1〜C4を用いて、作用した個々の外力成分を検出する具体的な方法は、次の6−5.で述べることにする。
<6−5.個々の外力成分の具体的な検出方法>
次に、図40は、本実施の形態による力覚センサの検出リング200aを示す概略平面図である。この検出リング200aは、第1検出部D1及び第4検出部D4と、第2検出部D2及び第3検出部D3と、が異なるバネ定数を有するように構成されている。具体的には、図示されるように、第1及び第4検出部D1、D4における第1の変形部61及び第2の変形部62の径方向の肉厚(幅)が、第2及び第3検出部D2、D3における第1の変形部61及び第2の変形部62の径方向の肉厚(幅)よりも大きく構成されていることによって、第1及び第4検出部D1、D4のバネ定数が第2及び第3検出部D2、D3のバネ定数よりも大きくなっている。また、本実施の形態では、第1検出部D1と第4検出部D4とは同じバネ定数を有しており、第2検出部D2と第3検出部D3とは同じバネ定数を有している。そして、前述したように、各検出部に対応する位置に合計4つの容量素子が配置されている。
以上のような力覚センサにおいて、支持基板300を固定した状態において、受力体100に正方向の力ないしモーメント+Fx,+Fy,+Fz,+Mx,+My,+Mzが作用した場合の各容量素子C1〜C4の静電容量値の変動量(増減の程度)は、図41の表に示すようになる。ここでは、4組の検出部D1〜D4について形成された容量素子を、それぞれ容量素子C1〜C4と呼ぶことにし、これら各容量素子C1〜C4の静電容量値を、同じ符号C1〜C4で示すことにする。この表において、「+」は静電容量値が増加する(容量素子Cの電極間隔が減少する)ことを示し、「−」は静電容量値が減少する(容量素子Cの電極間隔が増加する)ことを示している。また、「++」は静電容量値の増加の程度が「+」に比べて大きいことを示し、「−−」は静電容量値の減少の程度が「−」に比べて大きいことを示す。
もっとも、各静電容量値の増減の大きさは、実際には、検出リング200aの各部の寸法や厚み、特に、検出部Dを構成する板状片61,62,63の寸法や厚みに依存した量になるので、本願に示す表における「+」,「++」の相違や、「−」,「−−」の相違は、あくまでも相対的なものである。この増減の大きさは、Fx〜Mzの6つの成分ごとの相対的な大小であるため、例えば、Fxに対応する「+」、「−」とFzに対応する「+」「−」とでは大小関係は異なっている。また、力Fx,Fy,Fz(単位:N)とモーメントMx,My,Mz(単位:N・m)とは、異なる物理量であり、直接比較することはできない。
この図41の表に示すような結果が得られることは、図32乃至図35に示す検出リング200の変形態様を参照することにより、図38に示す変形態様を踏まえて図40に示す検出リング200aの検出部D1〜D4の各位置にどのような力が作用するかを考慮すれば、理解され得る。
たとえば、受力体100に対してX軸正方向の力Fxが作用すると、検出リング200aは、図32に示すように変形し、点P1−Q1間および点P2−Q1間には伸張力f2が作用し、点P1−Q2間および点P2−Q2間には圧縮力f1が作用する。したがって、検出部D1,D4には伸張力f2が作用し、図38(c)に示すように変位部63が上方に移動し、静電容量値C1,C4は減少する。一方、検出部D2,D3には圧縮力f1が作用し、図38(b)に示すように変位部63が下方に移動し、静電容量値C2,C3は増加する。
但し、本実施の形態では、前述したように、第1及び第4検出部D1、D4のバネ定数が第2及び第3検出部D2、D3のバネ定数よりも小さくなっている。このため、第1及び第4検出部D1、D4に設けられた第1及び第4容量素子C1、C4の方が、第2及び第3検出部D2、D3に設けられた第2及び第3容量素子C2、C3よりも、容量素子の変動量が大きい。
同様に、受力体100に対してY軸正方向の力+Fyが作用すると、点P1−Q1間および点P1−Q2間には圧縮力f1が作用し、点P2−Q1間および点P2−Q2間には伸張力f2が作用する。したがって、検出部D1,D2には圧縮力f1が作用し、静電容量値C1,C2は増加する。一方、検出部D3,D4には伸張力f2が作用し、静電容量値C3,C4は減少する。
また、受力体100に対してZ軸正方向の力+Fzが作用すると、検出リング200aは、図33に示すように変形する。したがって、4組の検出部D1〜D4は、いずれも上方(Z軸正方向)へと移動する。このため、4組の容量素子C1〜C4の電極間隔はいずれも広がり、静電容量値C1〜C4は減少する。
一方、受力体100に対してY軸正まわりのモーメント+Myが作用すると、検出リング200aは、図34に示すように変形し、図の右半分は下方へ変位し、図の左半分は上方へ変位する。したがって、図の右半分に位置する検出部D1,D4は下方へ変位し、図の左半分に位置する検出部D2,D3は上方へ変位する。このため、容量素子C1,C4の電極間隔は小さくなり、静電容量値C1,C4は増加する。また、容量素子C2,C3の電極間隔は大きくなり、静電容量値C2,C3は減少する。
同様に、受力体100に対してX軸正まわりのモーメント+Mxが作用すると、図の下半分に位置する検出部D3,D4は下方へ変位し、図の上半分に位置する検出部D1,D2は上方へ変位する。このため、容量素子C3,C4の電極間隔は小さくなり、静電容量値C3,C4は増加する。また、容量素子C1,C2の電極間隔は大きくなり、静電容量値C1,C2は減少する。
最後に、受力体100に対してZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用すると、検出リング200aは、図35に示すように変形し、点P1−Q1間および点P2−Q2間には圧縮力f1が作用し、点P1−Q2間および点P2−Q1間には伸張力f2が作用する。したがって、検出部D1,D3には圧縮力f1が作用し、静電容量値C1,C3は増加する。一方、検出部D2,D4には伸張力f2が作用し、静電容量値C2,C4は減少する。
なお、図41の表は、正方向の力および正まわりのモーメントが作用した場合の結果を示しているが、負方向の力および負まわりのモーメントが作用した場合は、「+」と「−」が逆転した結果が得られることになる。
なお、各成分の算出に当たっては、第1及び第4容量素子C1、C4の方が、第2及び第3容量素子C2、C3よりも、静電容量値の変化量が大きい(感度が高い)ことが考慮され、この感度の相違が各成分の算出結果に影響を与えないように適宜の補正がなされる。
<6−6.本実施の形態による力覚センサの故障判定の原理>
次に、以上のような力覚センサにおいて、故障判定を行うための方法について説明する。本実施の形態では、検出リング200aの第1の変形部61及び第2の変形部62に金属疲労が蓄積することに伴って、各容量素子C1〜C4の静電容量値が変動しやすくなる(感度が上昇する)ことを利用して、力覚センサの故障診断を行う。金属疲労は、特に、バネ定数が小さい第2及び第3検出部D2、D3を構成する第1の変形部61及び第2の変形部62において顕著に発現する。金属材料に金属疲労が発現及び蓄積すると、当該金属材料は軟化する。このため、これら第2及び第3検出部D2、D3に対応する第2及び第3容量素子C2、C3において、顕著に感度が上昇する。
このことを利用して、受力体100に対して例えばある大きさの力Fxが作用した際の、検出リング200aに金属疲労が生じていない時における第1及び第4容量素子C1、C4の静電容量値の変動量と第2及び第3容量素子C2、C3の静電容量値の変動量との比率(基準比率)と、検出リング200aに金属疲労が生じている時における当該比率と、を比較することにより、力覚センサの故障診断を行うことができる。
ここで、以下の[式13]に示すように、第2及び第3容量素子C2、C3の静電容量値の変動量の和に相当する電気信号を第1電気信号T1とし、第1及び第4容量素子C1、C4の静電容量値の変動量の和に相当する電気信号を第2電気信号T2とする。
[式13]
T1=C2+C3
T2=C1+C4
本実施の形態では、検出リング200aに金属疲労が蓄積することに伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行う。以下の説明においては、検出リング200aに金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、検出リング200aに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。
図42は、図40の検出リング200aに金属疲労が生じていない状態(初期状態)において、力覚センサに作用する力の大きさと、当該力覚センサから出力される第1電気信号T1a及び第2電気信号T2aと、の関係を示すグラフであり、図43は、図40の検出リング200aに金属疲労が生じている(蓄積している)状態において、力覚センサに作用する力の大きさと、当該力覚センサから出力される第1電気信号T2a及び第2電気信号T2bと、の関係を示すグラフである。
各図において、横軸は力覚センサに作用した力Fxを示し、縦軸は当該力Fxに応じて力覚センサから出力される電気信号の大きさを示している。このため、各図において、各電気信号T1a、T1b、T2a、T2bを示す直線の傾きは、力覚センサの検出感度を示すことになる。
次に、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する方法について説明する。本実施の形態の力覚センサに対して繰り返しの負荷が作用すると、検出リング200aに金属疲労が生じる。金属疲労は、前述したように、力Fxによる変形が相対的に大きい第2及び第3検出部D2、D3において顕著に発現する。この金属疲労が蓄積されると、第2及び第3検出部D2、D3における第1の変形部61及び第2の変形部62の強度が低下し、最終的に当該第2及び第3検出部D2、D3において検出リング200aが破断することになる。第2及び第3検出部D2、D3に金属疲労が蓄積すると、第2及び第3検出部D2、D3が力Fxによって大きく変形されるようになり、初期状態と比較して、力Fxに対する第2及び第3検出部D2、D3の感度が上昇する。このことは、図42と図43とを比較することによって理解される。
具体的には、図42を参照すると、初期状態においては、第1電気信号T1aを示す直線の傾き(感度)は2.0である。一方、図43を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、第2電気信号T2bを示す直線の傾き(感度)は3.0であり、感度が50%上昇している。
もちろん、金属疲労は、第1及び第4検出部D1、D4にも発現するが、その発現の程度は、第2及び第3検出部D2、D3における金属疲労の発現の程度よりも小さい。実際、図42を参照すると、初期状態においては、第2電気信号T2aを示す直線の傾きの絶対値(感度)は0.5である。その一方、図43を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、第2電気信号T2bを示す直線の傾きの絶対値(感度)は0.6である。従って、感度は上昇しているもののその割合は20%にとどまっている。
ここで着目すべきは、第2及び第3検出部D2、D3と第1及び第4検出部D1、D4とで金属疲労の発現の程度が異なっているということである。本発明は、このことを利用して力覚センサの故障診断を行うものである。すなわち、初期状態においては、第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率(T2a/T1a)の絶対値は、4.0であるのに対し、金属疲労が蓄積している状態においては、第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率(T2b/T1b)の絶対値は、5.0に上昇している。
換言すれば、第2及び第3検出部D2、D3と第1及び第4検出部D1、D4とで金属疲労の蓄積の特性が異なることに起因して、繰り返しの負荷に伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が次第に変化する。そして、力覚センサに対して繰り返しの負荷が更に作用すると、検出リング200aは最終的に第2検出部D2または第3検出部D3において破断する。一方、この時点では第1及び第4検出部D1、D4は正常に機能している蓋然性が高い。
以上のことから、ある時点における第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、初期状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率(基準比率)と、の差が所定の範囲内にあるか否かを評価することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定することができる。
以上の判定原理を具現化するために、本実施の形態の力覚センサも、前述した図5に示す検出回路を有している。この検出回路による故障診断の方法については、§1と略同様であるため、その詳細な説明は省略する。
以上のような本実施の形態によれば、検出リング200aに金属疲労が生じると、第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、検出リング200aの故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
<6−7.他の実施の形態による力覚センサの故障判定の原理>
以上の説明においては、X軸方向の力Fxに基づいて力覚センサの故障判定を行う方法について説明したが、Z軸方向の力Fzに基づいて力覚センサの故障判定を行うことも可能である。図44は、図40の検出リング200aの変形例を示す検出リング200bの概略平面図であり、力Fzに基づいて故障判定を行う場合に用いられるものを示す概略平面図である。この検出リング200bは、全体的な構成は図40に示す検出リング200aと略同様であるため、対応する構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。一方、本実施の形態の検出リング200bは、第1検出部D1及び第3検出部D3のバネ定数が第2検出部D2及び第4検出部D4のバネ定数よりも小さい、という点で図40の検出リング200aとは異なっている。第1検出部D1と第3検出部D3とは同じバネ定数を有しており、第2検出部D2と第4検出部D4とは同じバネ定数を有している。そして、各検出部に対応する位置に合計4つの容量素子が配置されている。
以上のような検出リング200bを有する力覚センサにおいて、支持基板300を固定した状態において、受力体100に各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzおよび各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzが作用した場合の動作は、6−5.で説明した動作と同じである。なお、ここでも、力ないしモーメントの算出に当たっては、第1及び第3容量素子C1、C3の方が、第2及び第4容量素子C2、C4よりも、静電容量値の変化量が大きい(感度が高い)ことが考慮され、この感度の相違が各成分の算出結果に影響を与えないように適宜の補正がなされる。
次に、以上のような力覚センサにおいて、故障判定を行うための方法について説明する。本実施の形態では、検出リング200bの第1の変形部61及び第2の変形部62に金属疲労が蓄積することに伴って、各容量素子C1〜C4の静電容量値が変動しやすくなる(感度が上昇する)ことを利用して、力覚センサの故障診断を行う。金属疲労は、特に、バネ定数が小さい第1及び第3検出部D1、D3を構成する第1の変形部61及び第2の変形部62において顕著に発現する。金属材料に金属疲労が発現及び蓄積すると、当該金属材料は軟化する。このため、これら第1及び第3検出部D1、D3に対応する第1及び第3容量素子C1、C3において、顕著に感度が上昇する。
このことを利用して、受力体100に対して例えばある大きさの力Fzが作用した際の、検出リング200bに金属疲労が生じていない時における第1及び第3容量素子C1、C3の静電容量値の変動量と第2及び第4容量素子C2、C4の静電容量値の変動量との比率(基準比率)と、検出リング200bに金属疲労が生じている時における当該比率と、を比較することにより、力覚センサの故障診断を行うことができる。
ここで、以下の[式14]に示すように、第1及び第3容量素子C1、C3の静電容量値の変動量の和に相当する電気信号を第1電気信号T1とし、第2及び第4容量素子C2、C4の静電容量値の変動量の和に相当する電気信号を第2電気信号T2とする。
[式14]
T1=C1+C3
T2=C2+C4
本変形例でも、検出リング200bに金属疲労が蓄積することに伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が変化することを利用して、力覚センサの故障診断を行う。ここでも、検出リング200bに金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、検出リング200bに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。
本変形例においては、図44の検出リング200bに金属疲労が生じていない状態(初期状態)において、力覚センサに作用する力の大きさと、当該力覚センサから出力される第1電気信号T1a及び第2電気信号T2aと、の関係は、図42に示すグラフと同じである。また、図44の検出リング200bに金属疲労が生じている(蓄積している)状態において、力覚センサに作用する力の大きさと、当該力覚センサから出力される第1電気信号T2a及び第2電気信号T2bと、の関係は、図43に示すグラフと同じである。
以上のような本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、6−6.と同じである。すなわち、6−6.における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式14]に読み替えることによって、本実施の形態による力覚センサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
以上のような本変形例によれば、検出リング200bに金属疲労が生じると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、検出リング200bの故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
なお、図29に示す力覚センサにおける故障判定について述べなかったが、図36に示す力覚センサと同様に、6−6.で説明した故障判定を行うことができる。この場合、検出リングとして、図45に示すものを採用すればよい。図45は、図29に示す検出リング200の変形例による検出リング200cを示す概略平面図である。この検出リング200cは、図40に示す検出リング200aの第2及び第3検出部D2、D3に対応する位置に、径方向の肉厚を他の領域よりも小さくして相対的にバネ定数を低下させた領域を有している。また、図40に示す力覚センサにおいては、検出リング200a上に配置される変位電極を支持基板300に面する側に配置したが(図39参照)、図45に示す検出リング200cに対しては、当該検出リング200cの側面に配置すればよい。
また、図36〜図40に示す力覚センサは、力ないしモーメントを検出するための容量素子を4つしか有していないため、力ないしモーメントの6つの成分全てを検出することはできない。従って、ここで示した故障判定の方法は、当該力覚センサに対して特定の軸方向の力(例えばFx)が作用した場合に有効である。
また、図16に示す力覚センサでは、力Fzのみが作用する力覚センサを前提に、故障判定の原理について述べた。