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以下に、添付の図面を参照して、本発明の一実施の形態による力覚センサについて詳細に説明する。
図1は、本実施の形態による力覚センサを示す概略断面図であり、図2は、図1のA−A線断面図であり、図3は、図1のB−B線断面図であり、図4は、図1の力覚センサを示す概略平面図である。
本実施の形態の力覚センサは、XYZ三次元座標系におけるX軸方向及びZ軸方向の力を検出するものであり、図1乃至図4に示すように、XY平面上に配置された第1支持体300と、第1支持体300からZ軸方向に離間して配置された第2支持体400と、第1支持体300に、第2支持体400側において接合され、検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる第1変形部111を有する第1変形体100と、第2支持体400に、第1支持体300側において接合され、検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる第2変形部211を有する第2変形体200と、を備えている。また、第2支持体400の上面の中央には、この力覚センサに作用する力を受ける受力体60が設けられている。すなわち、本実施の形態の力覚センサでは、受力体60を介して第2支持体400に力が作用するようになっている。
更に本力覚センサは、第1変形部111及び第2変形部211に生じる変形を計測するセンサと、第1変形部111と第2変形部211とを連結する連結部材401と、前記センサの計測値に基づいて、作用した力ないしモーメントを示す電気信号を出力する検出回路と、を備えている。
第1変形体100は、例えば導電性を有する金属で構成された円盤状の板材に、肉厚が薄い弾性(可撓性)を有する領域が形成されて構成され得る。この弾性を有する領域が、第1変形部111として機能することになる。また、本実施の形態の第2変形体200は、例えば金属で構成され第1変形体100と同じ直径を有する円盤状の板材に、第1変形部111よりも肉厚が厚い弾性を有する領域が形成されて構成され得る。この弾性を有する領域が、第2変形部211として機能することになる。換言すれば、本実施の形態の第1変形部111及び第2変形部211は、いずれも、Z軸方向から見て、同じ直径を有する円形のダイアフラムとして構成されている。
本実施の形態の第1支持体300は、第1変形体100及び第2変形体200と同じ直径の円盤形状を有しており、図1に示すように、第1変形部111を除く領域において、第1変形体100を支持している。また、本実施の形態の第2支持体400は、第1変形体100及び第2変形体200と同じ直径の円盤形状を有しており、図1に示すように、第2変形部211を除く領域において、第2変形体200を支持している。
本実施の形態では、第1変形部111の上面(図1の上方の面)には、当該第1変形部111の円形の中心位置からZ軸方向に沿って上方に延び出た第1連結部121が設けられている。更に、第2変形部211の下面(図1の下方の面)には、当該第2変形部211の円形の中心位置からZ軸方向に沿って下方に延び出た第2連結部221が設けられている。そして、第1連結部121と第2連結部221とがボルトなどの適切な接続手段によって強固に接続されることによって、Z軸方向に延在する連結部材401が構成されている。
このような構成により、第2支持体400に対して何ら力が作用していない状態では、当該第2支持体400及び第2変形体200は第1支持体300及び第1変形体100に対して定位置をとるが、第2支持体400に対して何らかの力が作用すると、弾性(可撓性)をもった第1変形部111及び第2変形部211に弾性変形が生じ、第2支持体400及び第2変形体200と第1支持体300及び第1変形体100との相対位置に変化が生じることになる。もちろん、第2支持体400に作用する力がなくなると、当該第2支持体400はもとどおりの定位置に戻る。
本実施の形態では、図示されるように、前記センサは容量素子として具現化されている。すなわち、前記センサは、第1変形部111に配置された第1容量素子C1である第1センサと、第2変形部211に配置された第2容量素子C2である第2センサと、を有している。このような構成によれば、検出対象の力が第2支持体400を介して第2変形体200に作用すると、第1変形部111及び第2変形部211がそれぞれ弾性変形し、この弾性変形に起因して各容量素子を構成する一対の電極間の距離が変化することになる。この変化は、容量素子の静電容量値に変動をもたらすため、この変動を検出することによって本力覚センサに作用した力が計測される。
本実施の形態では、図1に示すように、第1容量素子C1は、X軸正側に配置された第1−1容量素子C11及びX軸負側に配置された第1−2容量素子C12を有している。具体的には、第1−1容量素子C11は、第1支持体300の上面のX軸正側に設けられた第1−1固定電極Ef11と、第1−1固定電極Ef11に対向するように第1変形部111の下面に設けられ、第1−1固定電極Ef11との間で第1−1容量素子C11を構成する第1−1変位電極Em11と、を有している。また、第1−2容量素子C12は、第1支持体300のX軸負側の上面に設けられた第1−2固定電極Ef12と、第1−2固定電極Ef12に対向するように第1変形部111の下面に設けられ、第1−2固定電極Ef12との間で第1−2容量素子C12を構成する第1−2変位電極Em12と、を有している。
本実施の形態では、図3に示すように、第1−1変位電極Em11は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の形状を有している。また、第1−2固定電極Em12は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の形状を有している。更に、図示されていないが、第1−1固定電極Ef11は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の形状を有している。また、第1−2変位電極Ef12は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の形状を有している。
また、図1に示すように、第2容量素子C2は、X軸正側に配置された第2−1容量素子C21及びX軸負側に配置された第2−2容量素子C22を有している。具体的には、第2−1容量素子C21は、第2支持体400の下面のX軸正側に設けられた第2−1固定電極Ef21と、第2−1固定電極Ef21に対向するように第2変形部211の上面に設けられ、第2−1固定電極Ef21との間で第2−1容量素子C21を構成する第2−1変位電極Em21と、を有している。また、第2−2容量素子C22は、第2支持体400のX軸負側の下面に設けられた第2−2固定電極Ef22と、第2−2固定電極Ef22に対向するように第2変形部211の上面に設けられ、第2−2固定電極Ef22との間で第2−2容量素子C22を構成する第2−2変位電極Em22と、を有している。
本実施の形態では、図4に示すように、第2−1固定電極Ef21は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の形状を有している。また、第2−2固定電極Ef22は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の形状を有している。更に、第2−1変位電極Em21は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸正側に弧が形成された半円状の形状を有している。また、第2−2変位電極Em22は、Z軸方向から見て、Y軸と平行に延在する弦を直径とし当該弦のX軸負側に弧が形成された半円状の形状を有している。要するに、第1容量素子C1を構成する各電極と第2容量素子を構成する各電極とは、共に同じ構成を有している。
もちろん、この他にも様々な電極の形態が可能である。第1支持体300、第1変形体100、第2変形体200及び第2支持体400が導電性を有する材料で構成される場合は、後述される図37に例示されるように、絶縁性を有する支持基板を介して第1−1及び第1−2固定電極Ef11、Ef12が第1支持体300上に配置され、絶縁性を有する支持基板を介して第1−1及び第1−2変位電極Em11、Em12が第1変形体100上に配置され、絶縁性を有する支持基板を介して第2−1及び第2−2固定電極Ef21、Ef22が第2支持体400上に配置され、絶縁性を有する支持基板を介して第2−1及び第2−2変位電極Em21、Em22が第2変形体200上に配置される。あるいは、このような独立した変位電極を配置する一方で、第1支持体300上に設けられる第1−1及び第1−2固定電極Ef11、Ef12及び第2支持体400上に設けられる第2−1及び第2−2固定電極Ef21、Ef22を、共通電極で構成することも可能である。同様に、第1変形体100上に設けられた第1−1及び第1−2変位電極Em11、Em12及び第2変形体200上に設けられた第2−1及び第2−2変位電極Em21、Em22を共通電極で構成しても良い。
本実施の形態による力覚センサにおいては、第1変形体300の第1変形部111のバネ定数と、第2変形体400の第2変形部211のバネ定数と、が異なっている。具体的には、図示されるように、第2変形部211のZ軸方向の肉厚が、第1変形部111のZ軸方向の肉厚よりも大きくなっていて、このことにより、第2変形部211のバネ定数が、第1変形部111のバネ定数よりも大きくなっている。なお、本実施の形態における「バネ定数」とは、受力体60に対してX軸方向及びZ軸方向の力が作用した時に各変形部111、211に生じるZ軸方向の変位で、当該力の大きさを除した値を意味している。
前述したように、第1変形体100の第1変形部111は、連結部材401を介して第2変形体200の第2変形部211に連結されている。このため、第2変形体200を支持する第2支持体400に力が作用すると、第2変形体200及び連結部材401を介して第1変形体100の第1変形部111に力が伝わり、作用した力の大きさ及び方向に応じて、第1変形部111が変形する。換言すれば、この変形に伴って、第1支持体300上に配置された第1−1及び第1−2固定電極Ef11、Ef12に対する第1−1及び第1−2変位電極Em11、Em12の相対位置(離間距離)がそれぞれ変化する。このことは、第1−1及び第1−2容量素子C11、C12の静電容量値に、作用した力の大きさ及び方向に応じた変動を生じさせる。従って、それぞれの静電容量値の変動量を検出することによって、受力体60に作用した力の向き及び大きさを計測することができる。
もちろん、受力体60に力が作用すると、第1変形部111に対して伝えられる力と同じ力が、反作用として第2変形部211にも伝えられる。従って、第2支持体400上に配置された第2−1及び第2−2固定電極Ef21、Ef22に対する第2−1及び第2−2変位電極Em21、Em22の相対位置(離間距離)もそれぞれ変化する。このことは、第2−1及び第2−2容量素子C21、C22の静電容量値に、作用した力の大きさ及び方向に応じた変動を生じさせる。従って、第2−1及び第2−2容量素子C21、C22の各静電容量値の変動量を検出することによっても、受力体60に作用した力の向き及び大きさを計測することができる。前述の通り、第2変形部211のバネ定数は、第1変形部111のバネ定数よりも大きい。このため、第1−1及び第1−2固定電極Ef11、Ef12の方が作用した力による変形が大きく、より高感度の計測を行うことができる。一方、第2変形部211は、力が第2支持体400に繰り返し作用しても、相対的に金属疲労が発現しにくいため、当該金属疲労による検出精度の低下が生じにくい。
次に、X軸方向及びZ軸方向の力Fx、Fzを計測する原理を説明する。以下の説明においては、第1支持体300が固定された状態で、受力体60に力が作用するものとする。
図5は、受力体60にX軸正方向の力+Fxを作用させたときの図1の力覚センサの状態を示す概略断面図である。この場合、第1変形体100の第1変形部111及び第2変形体200の第2変形部211は、図示されているように変形する。すなわち、第1変形部111では、X軸正側の半円領域が下方(Z軸負側)に変形し、X軸負側の半円領域が上方(Z軸正側)に変形する。従って、第1容量素子C1のうちX軸負側に配置されている第1−2容量素子C12の静電容量値が減少し、その一方、X軸正側に配置されている第1−1容量素子C11の静電容量値が増大する。
更に、図示されるように、第2変形体200にも、第1変形部111に生じる変形と同じ変形が生じる。すなわち、第2変形部211では、X軸負側の半円領域が上方(Z軸正側)に変形し、X軸正側の半円領域が下方(Z軸負側)に変形する。従って、第2容量素子C2のうちX軸負側に配置されている第2−2容量素子C22の静電容量値が増大し、その一方、X軸正側に配置されている第2−1容量素子C21の静電容量値が減少する。
これとは逆に、受力体60にX軸負方向の力が作用すると、第1容量素子C1及び第2容量素子C2には、上述した静電容量値の変動とは逆の変動が生じる。すなわち、第1変形部111では、X軸正側の半円領域が上方(Z軸正側)に変形し、X軸負側の半円領域が下方(Z軸負側)に変形する。従って、第1容量素子C1のうちX軸負側に配置されている第1−2容量素子C12の静電容量値が増大し、その一方、X軸正側に配置されている第1−1容量素子C11の静電容量値が減少する。また、第2変形部211では、X軸正側の半円領域が上方(Z軸正側)に変形し、X軸負側の半円領域が下方(Z軸負側)に変形する。従って、第2容量素子C2のうちX軸負側に配置されている第2−2容量素子C22の静電容量値が減少し、その一方、X軸正側に配置されている第2−1容量素子C21の静電容量値が増大する。
次に、受力体60にZ軸正方向(図6における上向き)の力+Fzが作用した場合について検討する。図6は、受力体60にZ軸正方向の力+Fzを作用させたときの図1の力覚センサの状態を示す概略断面図である。この場合、第1変形体100の第1変形部111及び第2変形体200の第2変形部211は、図示されているように変形する。すなわち、第1変形部111は、第1支持体300から離間するように変形し、第2変形部211は、第2支持体400から離間するように変形する。従って、第1及び第2容量素子C1、C2は、いずれも変位電極と固定電極との間の離間距離が大きくなるため、静電容量値が減少する。
他方、受力体60にZ軸負方向(図6における下向き)の力が作用すると、前述した場合とは逆に、第1変形部111は、第1支持体300に近接するように変形し、第2変形部211は、第2支持体400に近接するように変形する。従って、第1及び第2容量素子C1、C2は、いずれも変位電極と固定電極との間の離間距離が小さくなるため、静電容量値が増大する。
本実施の形態では、前述したように、第2変形部211のバネ定数は、第1変形部111のバネ定数よりも大きい。このため、受力体60に作用した力によって、第1変形部111においては相対的に大きな弾性変形が生じ、第2変形部211においては相対的に小さな弾性変形が生じる。このため、第2容量素子C2の静電容量値の変動量の方が、第1容量素子C1の静電容量値の変動量よりも小さい。換言すれば、作用した力に対して、第1容量素子C1は、第2容量素子C2よりも高感度である。
図7は、上述した力+Fx及び+Fzが作用した場合に各容量素子C11〜C22に生じる静電容量値の変化を一覧で示した図表である。表中の「+」は、静電容量値の増大を示し、「−」は、静電容量値の減少を示している。また、「++」は、静電容量値の更に大きな増大を示し、「−」は、静電容量値の減少を示し、「−−」は、静電容量値の更に大きな減少を示している。上述したように、力Fx及びFzが逆向きになった場合には、表中の符号が逆になる。
本実施の形態の力覚センサでは、第1容量素子C1に基づいて作用した力を計測することも可能であるし、第2容量素子C2に基づいて作用した力を計測することも可能である。具体的には、第1容量素子C1を構成する各容量素子の静電容量値を用いると、作用した力Fx及びFzが次の[式1]で表される。なお、下式において、C11及びC12は、第1−1及び第1−2容量素子C11、C12の静電容量値をそれぞれ示している。また、力と静電容量値とが「=」で結ばれているが、これらは互いに異なる物理量であるため、実際には所定の変換がなされた上で力Fxが計測される。また、各力の末尾に付してある「1」及び「2」の符号は、後述される、第2容量素子C2の静電容量値の変動量に基づいて算出される力(これらは、末尾に「2」の符号を付してある)と区別するためのものである。
[式1]
Fx1=C11−C12
Fz1=−(C11+C12)
更に、第2容量素子C2を構成する各容量素子の静電容量値を用いると、作用した力Fx及びFzが次の[式2]で表される。
[式2]
Fx2=C22−C21
Fz2=−(C21+C22)
本実施の形態の力覚センサにおいては、力Fx及びFzのいずれに着目しても当該力覚センサの故障判定を行うことができるが、ここでは、一例として、Z軸方向の力Fzに着目して故障判定を行う方法について説明する。また、この故障判定を説明するに当たり、上述したFz1及びFz2に相当する電気信号を、それぞれ第1電気信号T1及び第2電気信号T2とおく。すなわち、改めて第1電気信号T1及び第2電気信号T2を書き下すと、次の[式3]のようになる。
[式3]
T1=−(C11+C12)
T2=−(C21+C22)
本実施の形態では、第1変形部111及び第2変形部211に金属疲労が蓄積することに伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じることを利用して、力覚センサの故障診断を行う。以下の説明においては、第1変形部111及び第2変形部211に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1a、T2aとし、第1変形部111及び第2変形部211に金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1b、T2bとして、互いに区別することとする。
図8は、図1の第1変形部111及び第2変形部211に金属疲労が生じていない状態(初期状態)において、力覚センサに作用する力の大きさと、当該力覚センサから出力される第1電気信号T1a及び第2電気信号T2aと、の関係を示すグラフであり、図9は、図1の第1変形部111及び第2変形部211に金属疲労が生じている(蓄積している)状態において、力覚センサに作用する力の大きさと、当該力覚センサから出力される第1電気信号T1b及び第2電気信号T2bと、の関係を示すグラフである。各図において、横軸は力覚センサに作用した力Fzを示し、縦軸は当該力Fzに応じて力覚センサから出力される電気信号の大きさを示している。このため、各図において、各電気信号T1a〜T2bを示す直線の傾きは、力覚センサの検出感度を示すことになる。
次に、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定する方法について説明する。本実施の形態の力覚センサに対して繰り返しの負荷が作用すると、第1変形部111及び第2変形部211に金属疲労が蓄積する。金属疲労は、力Fzによる弾性変形が相対的に大きい第1変形部111において顕著に発現する。この金属疲労が蓄積すると、第1変形部111の強度が低下し、最終的に当該第1変形部111が破断することになる。一般的に、金属材料に金属疲労が蓄積すると、当該金属材料は軟化する。このため、金属疲労の蓄積に伴って、第1変形部111のバネ定数が次第に低下することになる。すなわち、本実施の形態の第1変形体100においては、第1変形部111に金属疲労が蓄積すると、当該第1変形部111が力Fzによって大きく変形されるようになり、初期状態と比較して、力Fzに対する感度が上昇する。このことは、図8と図9とを比較することによって理解される。
具体的には、図8を参照すると、初期状態においては、第1変形部111に対応する第1電気信号T1aを示す直線の傾き(感度)は2.0である。一方、図9を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、第1変形部111に対応する第1電気信号T1bを示す直線の傾き(感度)は3.0であり、感度が50%上昇している。
もちろん、金属疲労は、第2変形部211にも蓄積するが、その蓄積の程度は、第1変形部111における金属疲労の蓄積の程度よりも小さい。実際、図8を参照すると、初期状態においては、第2変形部211に対応する第2電気信号T2aを示す直線の傾き(感度)は0.5である。これに対し、図9を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、第2変形部211に対応する第2電気信号T2bを示す直線の傾き(感度)は0.6である。従って、感度の上昇は20%にとどまっている。
なお、本実施の形態では、第1変形部111はいずれも厚さ(Z軸方向の肉厚)が1.0mmのダイアフラムとして構成されており、第2変形部211はいずれも厚さが1.6mmのダイアフラムとして構成されている。理論上、各変形部に生じるZ軸方向の変位は、ダイアフラムの厚さの3乗に反比例する。このため、本実施の形態では、力覚センサに作用した力によって、第1変形部111に生じるZ軸方向の変位は、第2変形部211に生じるZ軸方向の変位の約4倍である。
ここで着目すべきは、第1変形部111と第2変形部211とで、金属疲労の蓄積の程度が異なっているということである。すなわち、初期状態においては、第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率(T1a/T2a)は、4.0であるのに対し、金属疲労が蓄積している状態においては、第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率(T1b/T2b)は、5.0に上昇しているのである。換言すれば、第1変形部111と第2変形部211とで金属疲労の蓄積の特性が異なることに起因して、繰り返しの負荷に伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が次第に変化している。本発明は、このことを利用して力覚センサの故障診断を行うものである。
なお、力覚センサに対して繰り返しの負荷が更に作用すると、第1変形部111が破断し、当該第1変形部111に配置された第1容量素子C1が正常に機能しなくなる。一方、この時点では第2変形部211に配置された第2容量素子C2は正常に機能している蓋然性が高い。
以上のことから、力Fzの計測を例えば第2変形部211に配置された第2容量素子C2を用いて行いつつ、「ある時点における第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、初期状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを評価することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定することができる。もちろん、作用した力Fzを第1電気信号T1に基づいて計測しても良い。この場合、第1電気信号T1を提供する第1容量素子C1に対応する第1変形部111は、相対的にバネ定数が小さいため、作用した力に対する感度が高く、S/Nに優れた力の計測が可能となる。同様に、X軸方向の力Fxの計測においても、第1容量素子C1を用いるとS/Nに優れた力の計測が可能となる。
以上の判定原理を具現化するために、本実施の形態の力覚センサは、図10に示す検出回路を備えている。図10は、本実施の形態の力覚センサに採用されている検出回路のブロック図である。この検出回路は、各変形部及び各容量素子C1、C2を含む機構部から提供される各容量素子の静電容量値をそれぞれ対応する電圧値に変換するC/V変換器41と、C/V変換器41から提供される電圧値から、前述の[式3]に基づいて第1電気信号T1と第2電気信号T2とを算出し、これらT1及びT2のいずれか一方から力覚センサに作用している力を算出するマイコン47と、マイコン47に接続され、各変形部に金属疲労が発現していない初期状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を記憶する記憶部48と、を有している。マイコン47は、記憶部48に記憶された前記初期状態の比率(T1a/T2a)と、現在の第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、を比較して、その比較結果が所定の範囲内にあるか否かを判定する機能を有している。
比較の結果、現在の比率(T1b/T2b)が所定の範囲内にある場合、マイコン47は、力覚センサが正常に機能していると判定し、計測された力の値を出力する。一方、前記比率が所定の範囲内に無い場合は、マイコン47は、力覚センサが正常に機能していない(故障している)と判定し、故障診断信号を出力する。
以上のような本実施の形態によれば、第1及び第2変形部111、211に金属疲労が蓄積すると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が生じていることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、各変形部に金属疲労が発現していない初期状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、各変形部の故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
また、本実施の形態では、各容量素子がXY平面において対称的に配置されているため、当該各容量素子の静電容量値の変動に基づく検出対象の力を計測するための処理が容易である。
なお、本実施の形態では、Z軸方向の力Fzを計測するに当たって、前述の[式1]及び[式2]に記載したFz1及びFz2のいずれかを用いても良いが、より高精度な計測を行うために、Fz1+Fz2、すなわち、−(C11+C12)−(C21+C22)を用いることも可能である。同様に、X軸方向の力Fxを計測する場合も、Fx1+Fx2、すなわち(C11−C12)+(C22−C21)を用いると高精度な計測が可能である。
また、以上の説明においては、第1変形部111のバネ定数と第2変形部211のバネ定数とを各変形部(ダイアフラム)の厚みで変えていたが、他の実施の形態においては、ダイアフラムの径で変えても良い。
以上の説明においては、Z軸方向の力Fzに基づく[式3]によって力覚センサの故障判定を行っていたが、この[式3]に代えて、T1=C11−C12、T2=C22−C21という式を用いれば、以上の説明と同様の考えによってX軸方向の力Fxを用いて力覚センサの故障判定を行うことができる。
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次に本発明の第2の実施の形態による力覚センサについて説明する。§1で説明した力覚センサは、第1変形体100及び第2変形体200に各2つの容量素子が配置されて、X軸方向及びZ軸方向の力Fx、Fzの向き及び大きさを検出することが可能であった。本実施の形態では、X軸方向及びZ軸方向の力Fx、Fzのみならず、XYZ三次元座標系の各軸方向の力Fx、Fy、Fz及び各軸まわりのモーメントMx、My、Mzの6成分全てを検出可能な力覚センサの例について説明する。
図11は、本実施の形態による力覚センサを示す概略断面図であり、図12は、図11のA−A線断面図であり、図13は、図11のB−B線断面図である。
本実施の形態の力覚センサは、図11乃至図13に示すように、XYZ三次元座標系における各軸方向の力及び各軸まわりのモーメントの全てを検出するものであり、XY平面上に配置された第1支持体300と、第1支持体300からZ軸方向に離間して配置された第2支持体400と、第1支持体300に、第2支持体400側において接合され、検出対象となる力ないしモーメントの作用により弾性変形を生じる4つの第1変形部111〜114を有する第1変形体100と、第2支持体400に、第1支持体300側において接合され、検出対象となる力ないしモーメントの作用により弾性変形を生じる4つの第2変形部211〜214を有する第2変形体200と、を備えている。
更に本力覚センサは、4つの第1変形部111〜114及び4つの第2変形部211〜214のそれぞれに生じる変形を計測するセンサと、各第1変形部111〜114と第1変形部111〜114に対応する第2変形部211〜214とをそれぞれ連結する4つの連結部材401〜404と、前記センサの計測値に基づいて、作用した力ないしモーメントを示す電気信号を出力する検出回路と、を備えている。なお、図11では、煩雑さを避けるため、第1変形部111、113、第2変形部211,213及び連結部材401、403の図示は省略されている。
第1変形体100は、例えば導電性を有する金属で構成された円盤状の板材に、4つの肉厚が薄い弾性(可撓性)を有する領域を当該円盤の中心から等距離に90°毎に形成されて構成され得る。この弾性を有する4つの領域が、第1変形部111〜114として機能することになる。また、本実施の形態の第2変形体200は、例えば金属で構成された第1変形体100と同じ直径を有する円盤状の板材に、4つの肉厚が薄い弾性を有する領域を当該円盤の中心から等距離に90°毎に形成されて構成され得る。この弾性を有する4つの領域が、第2変形部211〜214として機能することになる。
本実施の形態の第1支持体300は、第1変形体100及び第2変形体200と同じ直径の円盤形状を有しており、図11に示すように、第1変形部111〜114を除く領域の下面において、第1変形体100を支持している。また、本実施の形態の第2支持体400は、第1変形体100及び第2変形体200と同じ直径の円盤形状を有しており、図11に示すように、第2変形部211〜214を除く領域の上面において、第2変形体200を支持している。
また、4つの第1変形部111〜114及び4つの第2変形部211〜214は、Z軸方向から見て、正のX軸上、正のY軸上、負のX軸上及び負のY軸上に、各1つずつ、原点Oから等距離で配置されている(図12参照)。本実施の形態では、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214は、いずれも、Z軸方向から見て、同じ直径を有する円形のダイアフラムとして構成されている。
本実施の形態では、各第1変形部111〜114の上面(図11の上方の面)には、当該各第1変形部111〜114の円形の中心位置からZ軸方向に沿って上方に延び出た第1連結部121〜124が設けられている。更に、各第2変形部211〜214の下面(図11の下方の面)には、当該各第2変形部211〜214の円形の中心位置からZ軸方向に沿って下方に延び出た第2連結部221〜224が設けられている。そして、第1連結部121〜124とその各々に対応する第2連結部221〜224とがボルトなどの適切な接続手段によって強固に接続されることによって、Z軸方向に延在する4つの連結部材401〜404が構成されている。結局、図11に示す本実施の形態による力覚センサは、図1に示す力覚センサを4つ並列に並べたものである。
このような構成により、第2支持体400に対して何ら力が作用していない状態では、当該第2支持体400及び第2変形体200は第1支持体300及び第1変形体100に対して定位置をとるが、第2支持体400に対して何らかの力が作用すると、弾性(可撓性)をもった4つの第1変形部111〜114及び4つの第2変形部211〜214に弾性変形が生じ、第2支持体400と第1支持体300との相対位置に変化が生じることになる。もちろん、第2支持体400に作用する力がなくなると、当該第2支持体400はもとどおりの定位置に戻る。
本実施の形態では、図示されるように、前記センサは容量素子として具現化されている。すなわち、前記センサは、4つの第1変形部111〜114に配置された4組の第1容量素子C1を有する第1センサと、前記4つの第2変形部211〜214に配置された4組の第2容量素子C2を有する第2センサと、を有している。このような構成によれば、力ないしモーメントが第2支持体400を介して第2変形部200に対して作用すると、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214がそれぞれ弾性変形し、この弾性変形に起因して容量素子を構成する一対の電極間の距離が変化することになる。この変化は、容量素子の静電容量値に変動をもたらすため、この変動量を計測することによって、本力覚センサに作用した力ないしモーメントが計測されるのである。
本実施の形態では、図13に示すように、4組の第1容量素子C1は、4つの第1変形部111〜114に対応して第1支持体300上に設けられた第1固定電極Ef1と、第1固定電極Ef1に対向するように4つの第1変形部111〜114に設けられ、当該第1固定電極Ef1との間で4組の第1容量素子C1を構成する第1変位電極Em1と、を有している。同様に、4組の第2容量素子C2は、4つの第2変形部211〜214に対応して第2支持体400上に設けられた第2固定電極Ef2と、第2固定電極Ef2に対向するように4つの第2変形部211〜214に設けられ、当該第2固定電極Ef2との間で4組の第2容量素子C2を構成する第2変位電極Em2と、を有している。
図14を参照して、本実施の形態の力覚センサに採用されている第1及び第2固定電極Ef1、Ef2の構成について説明する。図14は、本実施の形態による力覚センサの第1容量素子C1を構成する電極のうち第1固定電極Ef1の配置を示す概略平面図である。図14に示すように、第1固定電極Ef1は、X軸正側にX軸を挟んで配置されたY軸正側の第1−1固定電極Ef101及びY軸負側の第1−2固定電極Ef102と、X軸負側にX軸を挟んで配置されたY軸正側の第1−3固定電極Ef103及びY軸負側の第1−4固定電極Ef104と、Y軸正側にY軸を挟んで配置されたX軸正側の第1−5固定電極Ef105とX軸負側の第1−6固定電極Ef106と、Y軸負側にY軸を挟んで配置されたX軸正側の第1−7固定電極Ef107とX軸負側の第1−8固定電極Ef108と、を有している。
一方、本実施の形態の第1変位電極Em1は、図13に示すように、4つの変形部111〜114が共通電極で構成されている。
このような構成から、Z軸方向から見て、4組の第1容量素子C1のうち、第1組の第1容量素子は、X軸正側にX軸を挟んで配置されたY軸正側の第1−1容量素子C101とY軸負側の第1−2容量素子C102とを有し、第2組の第1容量素子は、X軸負側にX軸を挟んで配置されたY軸正側の第1−3容量素子C103とY軸負側の第1−4容量素子C104とを有し、第3組の第1容量素子は、Y軸正側にY軸を挟んで配置されたX軸正側の第1−5容量素子C105とX軸負側の第1−6容量素子C106とを有し、第4組の第1容量素子は、Y軸負側にY軸を挟んで配置されたX軸正側の第1−7容量素子C107とX軸負側の第1−8容量素子C108とを有している。
また、図示されていないが、第2容量素子C2を構成する第2固定電極Ef2及び第2変位電極Em2も、前述した第1固定電極Ef1及び第1変位電極Em1と同様の構成を有している。すなわち、Z軸方向から見て、前記4組の第2容量素子C2のうち、第1組の第2容量素子は、X軸正側にX軸を挟んで配置されたY軸正側の第2−1容量素子C201とY軸負側の第2−2容量素子C202とを有し、第2組の第2容量素子は、X軸負側にX軸を挟んで配置されたY軸正側の第2−3容量素子C203とY軸負側の第2−4容量素子C204とを有し、第3組の第2容量素子は、Y軸正側にY軸を挟んで配置されたX軸正側の第2−5容量素子C205とX軸負側の第2−6容量素子C206とを有し、第4組の第2容量素子は、Y軸負側にY軸を挟んで配置されたX軸正側の第2−7容量素子C207とX軸負側の第2−8容量素子C208とを有している。すなわち、Z軸方向から見て、第2容量素子C2は、第1容量素子C1と同様の構成を有している。
もちろん、この他にも様々な電極の形態が可能である。例えば、他の実施の形態においては、4つの第1変形部111〜114の下面(第1支持体300側の面)に絶縁体からなる支持基板を介して、Z軸方向から見て第1−1〜第1−8固定電極Ef101〜Ef108と同様の位置に、合計8個の電極からなる第1変位電極Em1を配置しても良い。また、4つの第2変形部211〜214の上面(第2支持体400側の面)に絶縁体からなる支持基板を介して、同様に合計8個の電極からなる第2変位電極Em2を配置しても良い。この場合、第1−1〜第1−8容量素子C101〜C108及び第2−1〜第2−8容量素子C201〜C208が、それぞれ独立した電極から構成される。あるいは、このような独立した各8個の第1及び第2変位電極を配置する一方で、第1支持体300上に設けられる固定電極Ef1及び第2支持体400上に設けられる固定電極Ef2を、共通の電極から構成することも可能である。また、第1固定電極Ef101〜Ef104及び第2固定電極Ef201〜Ef208を絶縁体からなる支持基板を介して第1支持体300と第2支持体400にそれぞれ固定しても良い。
本実施の形態による力覚センサにおいては、第1変形体300の4つの第1変形部111〜114のバネ定数と、第2変形体400の4つの第2変形部211〜214のバネ定数と、が異なっている。具体的には、図示されるように、第2変形部211〜214のZ軸方向の肉厚が、第1変形部111〜114のZ軸方向の肉厚よりも大きくなっていて、このことにより、第2変形部211〜214のバネ定数が、第1変形部111〜114のバネ定数よりも大きくなっている。なお、本実施の形態における「バネ定数」とは、第2支持体400に対してX、Y、Zの各軸方向の力または各軸まわりのモーメントが作用した時に各変形部111〜114、211〜214に生じるZ軸方向の変位で、当該力またはモーメントの大きさを除した値を意味している。
前述したように、第1変形体100の第1変形部111〜114は、各1つの連結部材401〜404を介して第2変形体200の第2変形部211〜214に連結されている(図8及び図9参照)。このため、第2変形体200を支持する第2支持体400に力ないしモーメントが作用すると、第2変形体200及び連結部材401〜404を介して第1変形体100の第1変形部111〜114に力が伝わり、作用した力ないしモーメントの大きさ及び方向に応じて、第1変形部111〜114が弾性変形する。換言すれば、この変形に伴って、第1変位電極Em1がZ軸方向に変位する。すなわち、第1支持体300上に配置された第1−1〜第1−8固定電極Ef101〜Ef108に対する第1変位電極Em1の相対位置(離間距離)がそれぞれ変化する。このことは、第1−1〜第1−8容量素子C101〜C108の静電容量値に、作用した力ないしモーメントの大きさ及び方向に応じた変動を生じさせる。従って、それぞれの静電容量値の変動量を検出することによって、第2支持体400に作用した力ないしモーメントの向き及び大きさを計測することができる。
もちろん、第2支持体400に力ないしモーメントが作用すると、第1変形部111〜114に対して伝えられる力と同じ力が、反作用として第2変形部211〜214にも伝えられる。従って、第2支持体400上に配置された第2−1〜第2−8固定電極Ef201〜Ef208に対する第2変位電極Em2の相対位置(離間距離)もそれぞれ変化する。このことは、第2−1〜第2−8容量素子C201〜C208の静電容量値に、作用した力ないしモーメントの大きさ及び方向に応じた変動を生じさせる。従って、第2−1〜第2−8容量素子C201〜C208に基づいても、各静電容量値の変動量を検出することによって、第2支持体400に作用した力ないしモーメントの向き及び大きさを計測することができる。前述の通り、第2変形部211〜214のバネ定数は、第1変形部111〜114のバネ定数よりも大きい。このため、第1−1〜第1−8固定電極Ef101〜Ef108の方が作用した力ないしモーメントによって相対的に大きく変形するため、より高感度の計測を行うことができる。一方、第2変形部211〜214は、力ないしモーメントが第2支持体400に繰り返し作用しても相対的に金属疲労が発現しにくいため、当該金属疲労による検出精度の低下が生じにくい。
次に、本力覚センサによって、X、Y、Z軸の各軸方向の力Fx、Fy、Fz、及び、各軸まわりのモーメントMx、My、Mzを計測する原理を説明する。以下の説明においては、第1支持体300が固定された状態で、第2支持体400に力ないしモーメントが作用するものとする。
図15は、第2支持体400にX軸正方向の力+Fxを作用させたときの図11の力覚センサの状態を示す概略断面図である。この場合、第1変形体100の第1変形部111〜114及び第2変形体200の第2変形部211〜214は、図示されているように変形する。すなわち、第1変形部111〜114の各々において、X軸正側の半円領域が第1支持体300に近接するように弾性変形し、X軸負側の半円領域が第1支持体300から離間するように弾性変形する。従って、第1容量素子C1のうち第1−6及び第1−8容量素子C106、C108静電容量値が減少し、その一方、第1−5及び第1−7容量素子C105、C107の静電容量値が増大する。これに対し、残りの容量素子については、変位電極と固定電極との間の離間距離が小さくなる領域と大きくなる領域とが存在し、静電容量値の変化が打ち消されるため、静電容量値は実質的に変化しない。
一方、第2変形体200に生じる変形について検討してみると、図示されるように、第1変形部111〜114に生じる弾性変形と同様の弾性変形が生じる。すなわち、第2変形部211〜214の各々において、X軸正側の半円領域が第2支持体400から離間するように変形し、X軸負側の半円領域が第2支持体400に近接するように変形する。従って、4組の第2容量素子C2のうち第2−6及び第2−8容量素子C206、C208の静電容量値が増大し、その一方、4組の第2容量素子C2のうち第2−5及び第2−7容量素子C205、C207の静電容量値が減少する。これに対し、残りの容量素子については、変位電極と固定電極との間の離間距離が小さくなる領域と大きくなる領域とが存在し、静電容量値の変化が打ち消されるため、静電容量値は実質的に変化しない。
もちろん、第2支持体400にX軸負方向の力が作用すると、4組の第1容量素子C1及び4組の第2容量素子C2は、上述した静電容量値の変動とは逆の変動が生じる。すなわち、第1変形部111〜114の各々において、X軸正側の半円領域が第1支持体300から離間するように変形し、X軸負側の半円領域が第1支持体300に近接するように変形する。従って、4組の第1容量素子C1のうち第1−6、第1−8容量素子C106、C108の静電容量値が増大し、その一方、4組の第1容量素子C1のうち第1−5、第1−7容量素子C105、C107の静電容量値が減少する。また、第2変形部211〜214の各々において、X軸正側の半円領域が第2支持体400に近接するように弾性変形し、X軸負側の半円領域が第2支持体から離間するように弾性変形する。従って、4組の第2容量素子C2のうち第2−6及び第2−8容量素子C206、C208の静電容量値が減少し、その一方、4組の第2容量素子C2のうち第2−5及び第2−7容量素子C205、C207の静電容量値が増大する。そして、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214のいずれにおいても、残りの容量素子の静電容量値は、実質的に変化しない。
第2支持体400にY軸方向の力Fyを作用させた場合については、第2変形体400にX軸方向の力Fxを作用させた状態を90°ずらして考えれば良いため、ここでは省略する。
次に、第2支持体400にZ軸正方向の力+Fzを作用させた場合について検討する。図16は、第2支持体400にZ軸正方向(図の上方向)の力+Fzを作用させたときの図11の力覚センサの状態を示す概略断面図である。この場合、第1変形体100の第1変形部111〜114及び第2変形体200の第2変形部211〜214は、図示されているように変形する。すなわち、第1変形部111〜114は、いずれも第1支持体300から離間するように弾性変形し、第2変形部211〜214は、いずれも第2支持体400から離間するように弾性変形する。従って、第1−1〜第1−8容量素子C101〜C108及び第2−1〜第2−8容量素子C201〜C208は、いずれも変位電極と固定電極との間の離間距離が大きくなるため、静電容量値が減少する。
他方、第2支持体400にZ軸負方向(図16の下方向)の力が作用すると、前述した場合とは逆に、第1変形部111〜114は、いずれも第1支持体300に近接するように弾性変形し、第2変形部211〜214は、いずれも第2支持体400に近接するように弾性変形する。従って、第1−1〜第1−8容量素子C101〜C108及び第2−1〜第2−8容量素子C201〜C208は、いずれも変位電極と固定電極との間の離間距離が小さくなるため、静電容量値が増大する。
次に、第2支持体400にY軸正まわりのモーメント+Myを作用させた場合について検討する。図17は、第2支持体400にY軸正まわりのモーメント+Myを作用させたときの図1の力覚センサの状態を示す概略断面図である。この場合、第1変形体100の第1変形部111〜114及び第2変形体200の第2変形部211〜214は、図示されているように変形する。すなわち、第1変形体100について見ると、X軸正側の第1変形部112が第1支持体300に近接するように弾性変形し、X軸負側の第1変形部114が第1支持体300から離間するように弾性変形する。一方、図示されていないが、Y軸正側及びY軸負側の第1変形部111、113では、いずれも、X軸正側の半円領域が第1支持体300にわずかに近接するように変形し、X軸負側の半円領域が第1支持体300からわずかに離間するように変形する。
2変形部211〜214について見ると、X軸正側の第2変形部212は第2支持体400に近接するように変形し、X軸負側の第2変形部214は第2支持体400から離間するように変形する。一方、図示されていないが、Y軸正側及びY軸負側の第2変形部211、213は、いずれも、X軸正側の半円領域が第2支持体400にわずかに近接するように変形し、X軸負側の半円領域が第2支持体400からわずかに離間するように変形する。
従って、第1容量素子C1のうち第1−1及び第1−2容量素子C101、C102の静電容量値が増大し、第1−3及び第1−4容量素子C103、C104の静電容量値が減少する。更に、第1−6及び第1−8容量素子C106、C108の静電容量値がわずかに減少し、第1−5、第1−7容量素子C105、C107の静電容量値がわずかに増大する。ここでは、第1−5〜第1−8容量素子C105〜C108の静電容量値の変動量は、ゼロと考えることとする。
本実施の形態では、第2容量素子C2においても、第1容量素子C1に生じる弾性変形と同様の弾性変形が生じる。このため、第2容量素子C2のうち第2−1及び第2−2容量素子C201、C202の静電容量値が増大し、第2−3及び第2−4容量素子C203、C204の静電容量値が減少する。更に、第2−6及び第2−8容量素子C206、C208の静電容量値がわずかに増大し、第2−5、第2−7容量素子C205、C207の静電容量値がわずかに減少する。
他方、第2支持体400に対してY軸負まわりのモーメントが作用すると、前述した場合とは逆に、第1容量素子C1のうち第1−1及び第1−2容量素子C101、C102の静電容量値が減少し、第1−3及び第1−4容量素子C103、C104の静電容量値が増大する。更に、第1−6及び第1−8容量素子C106、C108の静電容量値がわずかに増大し、第1−5、第1−7容量素子C105、C107の静電容量値がわずかに減少する。また、第2容量素子C2のうち第2−1及び第2−2容量素子C201、C202の静電容量値が増大し、第2−3及び第2−4容量素子C203、C204の静電容量値が減少する。更に、第2−6及び第2−8容量素子C206、C208の静電容量値がわずかに減少し、第2−5、第2−7容量素子C205、C207の静電容量値がわずかに増大する。ここでは、第2−5〜第2−8容量素子C205〜C208の静電容量値の変動量は、ゼロと考えることとする。
第2支持体400にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合については、前述のY軸まわりのモーメントMyが作用した状態を90°ずらして考えれば良いため、ここでは省略する。
また、第2支持体400にZ軸正まわり(図14における反半時計まわり)のモーメント+Mzが作用した場合には、図示されていないが、連結部材401〜404はいずれもZ軸を中心とする円周に沿って同じ回転方向に傾倒するように変位する。従って、第1容量素子C1について見ると、X軸正側の第1変形部112では、Y軸負側の半円領域が第1支持体300から離間するように弾性変形し、Y軸正側の半円領域が第1支持体300に近接するように弾性変形する。X軸負側の第1変形部114では、Y軸正側の半円領域が第1支持体300から離間するように弾性変形し、Y軸負側の半円領域が第1支持体300に近接するように弾性変形する。Y軸正側の第1変形部111では、X軸正側の半円領域が第1支持体300から離間するように弾性変形し、X軸負側の半円領域が第1支持体300に近接するように弾性変形する。Y軸負側の第1変形部113では、X軸負側の半円領域が第1支持体300から離間するように弾性変形し、Y軸負側の半円領域が第1支持体300に近接するように弾性変形する。従って、第1容量素子C1のうち、第1−1、第1−4、第1−6及び第1−7容量素子C101、C104、C106及びC107の静電容量値が増大し、第1−2、第1−3、第1−5及び第1−8容量素子C102、C103、C105及びC108の静電容量値が減少する。
また、第2容量素子C2について見ると、X軸正側の第2変形部212では、Y軸負側の半円領域が第2支持体400に近接するように弾性変形し、Y軸正側の半円領域が第2支持体400から離間するように弾性変形する。X軸負側の第2変形部214では、Y軸正側の半円領域が第2支持体400に近接するように弾性変形し、Y軸負側の半円領域が第2支持体400から離間するように弾性変形する。Y軸正側の第1変形部111では、X軸正側の半円領域が第2支持体400に近接するように弾性変形し、X軸負側の半円領域が第2支持体400から離間するように弾性変形する。Y軸負側の第1変形部114では、X軸負側の半円領域が第2支持体400に近接するように弾性変形し、Y軸負側の半円領域が第2支持体400から離間するように弾性変形する。従って、第2容量素子C2のうち、第2−1、第2−4、第2−6及び第2−7容量素子C201、C204、C206及びC207の静電容量値が減少し、第2−2、第2−3、第2−5及び第2−8容量素子C202、C203、C205及びC208の静電容量値が増大する。
一方、第2支持体400にZ軸負まわりのモーメントが作用すると、4つの第1変形部111〜114及び4つの第2変形部211〜214には前述した変形とは逆向きの弾性変形が生じ、この結果、第1−1〜第1−8容量素子C101〜C108及び第2−1〜第2−8容量素子C201〜C208に生じる静電容量値の変動も、逆になる。
本実施の形態では、前述したように、第2変形部211〜214のバネ定数は、第1変形部111〜114のバネ定数よりも大きい。このため、第2支持体400に対して作用した力ないしモーメントによって、第1変形部111〜114においては相対的に大きな弾性変形が生じ、第2変形部211〜214においては相対的に小さな弾性変形が生じる。このため、第1容量素子C1の静電容量値の変動量の方が、第2容量素子C2の静電容量値の変動量よりも大きい。換言すれば、作用した力ないしモーメントに対して、第1容量素子C1は、第2容量素子C2よりも高感度である。
図18は、上述した力ないしモーメントFx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが作用した場合に第1−1〜第1−8容量素子C101〜C108に生じる静電容量値の変化を一覧で示した図表である。また、図19は、上述した力ないしモーメントFx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが作用した場合に第2−1〜第2−8容量素子C201〜C208に生じる静電容量値の変化を一覧で示した図表である。各表中の「+」は、静電容量値の増大を示し、「++」は、静電容量値の更に大きな増大を示し、「−」は、静電容量値の減少を示し、「−−」は、静電容量値の更に大きな減少を示している。「0」は、静電容量値が実質的に変化しないことを示している。また、上述したように、各力Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが逆向きになった場合には、表中の符号が逆になる。
本実施の形態の力覚センサでは、第1容量素子C1に基づいて作用した力及びモーメントを計測することも可能であるし、第2容量素子C2に基づいて作用した力及びモーメントを計測することも可能である。具体的には、第1容量素子C1を構成する各容量素子の静電容量値を用いると、作用した力及びモーメントの各成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが次の[式4]で表される。なお、下式において、C101〜C108及びC201〜C208は、第1−1〜第1−8容量素子C101〜C108及び第2−1〜第2−8容量素子C201〜C208の静電容量値をそれぞれ示している。また、ここにおいても力と静電容量値とが「=」で結ばれているが、これらは互いに異なる物理量であるため、実際には所定の変換がなされた上で力ないしモーメントが計測される。なお、各成分の末尾に付してある「1」及び「2」の符号は、後述される、第2容量素子C2の静電容量値に基づいて算出される成分(これらは、末尾に「2」の符号を付してある)と区別するためのものである。
[式4]
Fx1=(C105−C106)+(C107−C108)
Fy1=(C101−C102)+(C103−C104)
Fz1=−(C101+C102+C103+C104+C105+C106+C107+C108)
Mx1=(C107+C108)−(C105+C106)
My1=(C101+C102)−(C103+C104)
Mz1=(C101−C102)+(C104−C103)+(C106−C105)+(C107−C108)
更に、第2容量素子C2を構成する各容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、力の6つの成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが次の[式5]で表される。
[式5]
Fx2=(C206−C205)+(C208−C207)
Fy2=(C202−C201)+(C204−C203)
Fz2=−(C201+C202+C203+C204+C205+C206+C207+C208)
Mx2=(C207+C208)−(C205+C206)
My2=(C201+C202)−(C203+C204)
Mz1=(C202−C201)+(C203−C204)+(C205−C206)+(C208−C207)
本実施の形態の力覚センサにおいては、以上のFx〜Mzの6つの力ないしモーメントのいずれに着目しても当該力覚センサの故障判定を行うことができるが、ここでは、一例として、Z軸方向の力Fz(Fz1、Fz2)に着目して故障判定を行う方法について説明する。この故障判定を説明するに当たり、上述したFz1及びFz2に相当する電気信号を、第1電気信号T1及び第2電気信号T2とおく。すなわち、改めて第1電気信号T1及び第2電気信号T2を書き下すと、次の[式6]のようになる。
[式6]
T1=−(C101+C102+C103+C104+C105+C106+C107+C108)
T2=−(C201+C202+C203+C204+C205+C206+C207+C208)
本実施の形態でも、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214に金属疲労が蓄積することに伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じることを利用して、力覚センサの故障診断を行う。従って、ここでも、以下の説明においては、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214に金属疲労が蓄積していない初期状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1a、T2aとし、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214に金属疲労が蓄積している状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1b、T2bとして、互いに区別することとする。
本実施の形態では、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214に金属疲労が蓄積していない初期状態において、力覚センサに作用する力Fzの大きさと、この時の第1及び第2電気信号T1a、T2aと、の関係は、図8に示すグラフと同じである。また、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214に金属疲労が蓄積している状態において、力覚センサに作用する力Fzの大きさと、この時の第1及び第2電気信号T1b、T2bと、の関係は、図9に示すグラフと同じである。
以上のような本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§1と同じである。すなわち、§1における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式6]に読み替えることによって、本実施の形態による力覚センサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
以上のような本実施の形態によれば、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214に金属疲労が蓄積すると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が蓄積していることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な6軸の力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、第1変形部111〜114及び第2変形部211〜214の故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
なお、力Fz以外の5つの成分のいずれかを用いて故障判定を行う場合には、[式6]に示した第1電気信号T1及び第2電気信号T2に代えて、着目する特定の成分に関する[式4]の演算式を第1電気信号T1とし、当該特定の成分に関する[式5]の演算式を第2電気信号T2とすればよい。
また、本実施の形態では、各容量素子がXY平面において対称的に配置されているため、当該各容量素子の静電容量値の変動に基づく検出対象の力ないしモーメントを計測するための処理が容易である。
また、§1で示した力覚センサと同様に、[式5]で得られる出力よりも[式4]で得られる出力の方が高い(感度が大きい)ので、[式4]で各軸の力とモーメントを計測した方がよい。更に、[式4]と[式5]の各出力の和で計測した方が更に感度が高くなる。
なお、第1変形部111〜114のバネ定数と第2変形部211〜214のバネ定数とを異ならせるため、本実施の形態においては各変形部を構成するダイアフラムの厚さを異ならせているが、他の実施の形態においては、当該ダイアフラムの直径を異ならせても良いし、当該ダイアフラムに例えば径方向に延在するスリットを形成しても良い。
<<< §3. 本発明による力覚センサの第3の実施例>>>
<3−1. 歪ゲージを利用した力覚センサ>
§1及び§2では、容量素子を利用した静電容量式の力覚センサにおける故障判定について説明したが、容量素子に代えて歪ゲージなどの他のセンサを採用することも可能である。図20は、本発明の第3の実施の形態による力覚センサを示す概略断面図であり、図21は、図20に示す力覚センサの概略平面図である。図20及び図21に示すように、本実施の形態による力覚センサは、容量素子に代えて歪ゲージが配置されている点及び第2支持体400が設けられておらず第2変形体のX軸方向両端に受力体60が配置されている点を除き、§1で説明した第1の実施の形態による力覚センサと同様の構成を有している。このため、第1の実施の形態による力覚センサと同じ構成部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態の力覚センサは、図20に示すように、第1変形体100の下面にX軸方向に沿って配置された第1−1〜第1−4歪ゲージR11〜R14と、第2変形体200の上面にX軸方向に沿って配置された第2−1〜第2−4歪ゲージR21〜R24と、の合計8つの歪ゲージを有している。具体的には、Z軸方向から見て、第1−1歪ゲージR11及び第1−2歪ゲージR12は、連結部材401と変形体111との接続部分、すなわち変形体111の中心、を挟んで配置され、第1−3歪ゲージR13及び第1−4歪ゲージR14は、変形体111の中心を挟んで第1−1歪ゲージR11及び第1−2歪ゲージR12の外側に配置されている。第2−1〜第2−4歪ゲージR21〜R24は、Z軸方向から見て、第1−1〜第1−4歪ゲージR11〜R14にそれぞれ対応する位置に配置されている。
なお、歪ゲージとしては、例えば金属箔歪ゲージや半導体歪ゲージが採用され得る。金属箔歪ゲージは、圧縮応力が作用すると抵抗値が減少し、逆に引張応力が作用すると抵抗値が増大するという性質を有している。また、半導体歪ゲージは、ピエゾ抵抗効果を利用した歪ゲージであり、この半導体歪ゲージに対して引張応力が作用すると、p型の半導体歪ゲージにおいては抵抗値が増大し、n型の半導体歪ゲージにおいては抵抗値が減少するという特性がある。一方、この半導体歪ゲージに対して圧縮応力が作用すると、p型の半導体歪ゲージにおいては抵抗値が減少し、n型の半導体歪ゲージにおいては抵抗値が増大する。
本実施の形態による力覚センサの検出回路は、図10に示す検出回路とは部分的に異なる回路構成を有する。すなわち、歪ゲージからは静電容量値ではなく抵抗値が提供されるため、図10のC/V変換器41がA/V変換器に置き換えられる必要がある。このA/V変換器は、例えば、図22に示すホイートストンブリッジ回路を含んでいる。図22(A)は、第1変形部111に配置された4つの歪ゲージR11〜R14によって構成されるホイートストンブリッジ回路であり、図22(B)は、第2変形部211に配置された4つの歪ゲージR21〜R24によって構成されるホイートストンブリッジ回路である。これらの2つの回路のうちどちらの回路によっても、受力体60に作用した力Fz及びFxを計測することが可能である。また、ホイートストンブリッジ回路の特性により、当該力Fz及びFxを、温度変化の影響を排除して高精度に計測することが可能である。本力覚センサにおける検出回路のその他の構成は、図10に示す検出回路と同様である。
本実施の形態では、図22(A)に示す回路から出力される電気信号を第1電気信号T1、図22(B)に示す回路から出力される電気信号を第2電気信号T2とし、これら2つの電気信号T1、T2の比率の変化に基づいて、本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定することが可能である。この判定原理は上述した通りであるため、ここでは、その詳細な説明は省略する。
なお、図20に示す力覚センサに対して力Fz、Fxが作用した時に、各半導体歪ゲージR11〜R14、R21〜R24に作用する応力の方向は、図23及び図24の矢印で示される通りである。図23は、図20に示す力覚センサの受力体60に対してZ軸正方向の力+Fzが作用した時の当該力覚センサの状態を示す概略断面図であり、図24は、図20に示す力覚センサの受力体60に対してX軸正方向の力+Fxを作用させたときの図20の力覚センサの状態を示す概略断面図である。
なお、図22(A)及び図22(B)は、力Fzを検出するための回路であり、力Fxを検出する回路は、図22(A)に示す回路については、第1−1歪ゲージR11と第1−3歪ゲージR13とを入れ替えるか、または第1−2歪ゲージR12と第1−4歪ゲージR14とを入れ替えれば良く、図22(B)に示す回路については、第2−1歪ゲージR21と第2−3歪ゲージR23とを入れ替えるか、または第2−2歪ゲージR22と第2−4歪ゲージR24とを入れ替えれば良い。
また、図21では力Fx、Fzのいずれかが計測されるようになっているが、FxとFzとを同時に検出するためには、図20の各歪ゲージR11〜R14、R21〜R24が配置された領域に並列に4つの歪ゲージ(合計8個の歪ゲージ)を配置すればよい。また、Y軸方向の力Fyを検出するためには、Y軸方向に、すなわち図21に配置された4つの歪ゲージを90°回転させた位置に配置すればよい。
以上のような本変形例によっても、第1変形部111及び第2変形部211に金属疲労が蓄積すると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が蓄積していることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、変形部の故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
<3−2. 3−1の力覚センサの変形例 >
3−1で説明した実施の形態では、歪センサが配置される第1及び第2変形部111、211をダイアフラムではなくビーム等の他の構造体によって構成しても良い。図25乃至図27は、図20に示す力覚センサの第1及び第2変形部111、211の変形例を示す概略平面図である。具体的には、図25は、X軸に沿って延在する片持ち梁形の変形部を示している。また、図26はX軸及びY軸に沿って延在するクロスビーム形の変形部を示しており、図27はX軸に沿って延在するビーム形(両持ち梁形)の変形部を示している。
いずれの形状の変形部を採用する場合であっても、第2変形部211のバネ定数と第1変形部111のバネ定数とが異なるように構成されていれば、本発明による故障判定の原理を採用することが可能である。例えば、第2変形部211のZ軸方向の肉厚を第1変形部111のZ軸方向の肉厚よりも大きく構成することによって、第2変形部211のバネ定数を第1変形部111のバネ定数よりも大きく設定しても良いし、他の例としては、第2変形部211のY軸方向の幅を第1変形部111のY軸方向の幅よりも大きく構成することによって、第2変形部211のバネ定数を第1変形部111のバネ定数よりも大きく設定しても良い。
各変形例における歪ゲージの配置を見ると、図25に示す片持ち梁形の変形部においては、連結部材401と第1変形体100との接続部分の近傍、すなわち片持ち梁の一方の端部領域に、2つの歪ゲージが配置されており、片持ち梁の他方の端部領域に2つの歪ゲージが配置されている。前述の通り、図25において片持ち梁はX軸方向に延在しているため、各2つの歪ゲージもX軸方向に沿って配置されることになる。また、図26に示すクロスビーム形の変形部及び図27に示すビーム形の変形部においては、2つの歪ゲージが連結部材401と変形体111との接続部分、すなわち変形体111の中心、を挟んでX軸方向に沿って配置され、更に2つの歪ゲージが前記2つの歪ゲージを挟んでX軸方向に沿って配置されている。
これらの変形例による変形部を採用した力覚センサにおいても、3−1で説明した、図22(A)及び図22(B)に示すホイートストンブリッジ回路を含む検出回路が採用され得る。そして、3−1で説明したように、図22(A)に示す回路から出力される電気信号を第1電気信号T1、図22(B)に示す回路から出力される電気信号を第2電気信号T2とし、これら2つの電気信号T1、T2の比率の変化に基づいて、本実施の形態による力覚センサが正常に機能しているか否かを判定することが可能である。この判定原理は上述した通りであるため、ここでは、その詳細な説明は省略する。
以上の各変形例によっても、第1変形部111及び第2変形部211に金属疲労が蓄積すると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じるため、この変化に基づいて当該金属疲労が蓄積していることを検出し、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、変形部の故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
<3−3. 本発明の第4の実施の形態による力覚センサ>
次に、図28及び図29を参照して、本発明の第4の実施の形態による力覚センサについて説明する。図28は、本発明の第4の実施の形態による力覚センサを示す概略側面図であり、図29は、Z軸負方向の力−Fzが作用した時の図28の力覚センサの状態を示す図である。
図28に示すように、本実施の形態による力覚センサは、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の力を検出するものであって、XY平面上に配置され、検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる第1変形部511を有する第1変形体510と、第1変形体510からZ軸負方向に離間して配置され、検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる第2変形部521を有する第2変形体520と、第1変形部511及び前記第2変形部521に生じる変形(歪)を計測するセンサと、第1変形体510と第2変形体520とを連結する連結部材530と、センサの計測値に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備えている。
本実施の形態によるセンサは、図28に示すように、第1変形部511の上面に配置された第1歪ゲージR1と、第2変形部521の上面に配置された第2歪ゲージR2と、を有している。
本実施の形態による検出回路は、図10に示す検出回路とは部分的に異なる回路構成を有する。すなわち、歪ゲージからは静電容量値ではなく抵抗値が提供されるため、図10のC/V変換器41がA/V変換器に置き換えられている。検出回路のその他の構成は、図10に示す検出回路と同様である。
また、第1変形体510は、検出対象となる力を受ける受力部560を有し、且つ、一方の端部が固定部540に固定されている。更に、第2変形体520も、一方の端部が固定部540に固定されている。図示されるように、第1変形部511は、固定部540から見て、第1変形体510と連結部材530との連結部分512よりも遠位側に設けられ、第2変形部521は、固定部540から見て、第2変形体520と連結部材530との連結部分522よりも近位側に設けられている。このような構成により、第1変形体510の受力部560にZ軸方向の力Fzが作用すると第1変形体510が撓み変形し、この撓み変形が連結部材530を介して第2変形体520に伝達されることで、当該第2変形体520も撓み変形することになる。
本実施の形態では、第1変形部511は、第2変形部521のバネ定数よりも小さいバネ定数を有している。本実施の形態における「バネ定数」とは、受力部560にZ軸方向の力Fzを作用させたときに、第1変形部511及び第2変形部521にそれぞれ生じるZ軸方向の変位で作用した力Fzの大きさを除した値を意味している。
また、図示されていないが、検出回路は、作用した力に対応する、第1変形部511の変形量に相当する第1電気信号T1と、第2変形部521の変形量に相当する第2電気信号T2と、を出力し、作用した力に対応する第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。
このような力覚センサの受力部560に対してZ軸負方向の力−Fzが作用すると、本力覚センサは、図29に示すように変形する。すなわち、第1変形体510が上に凸となるように撓み変形すると共に、作用した力−Fzが連結部材530を介して第2変形体520に伝達され、当該第2変形体520も上に凸となるように撓み変形する。但し、前述したように、第1変形部511は、第2変形部521のバネ定数よりも小さいバネ定数を有している。従って、変形の程度について見ると、第1変形部511の変形量、すなわち当該第1変形部511の上面に生じる歪の大きさの方が、第2変形部521の変形量、すなわち当該第2変形部521の上面に生じる歪の大きさよりも大きい。このため、第1変形部511に配置された第1歪ゲージR1を用いて作用した力を計測すれば、より高感度の計測を行うことができる。一方、第2変形部521は、力が受力部560に繰り返し作用しても、相対的に金属疲労が発現しにくいため、当該金属疲労による検出精度の低下が生じにくい。
本実施の形態の力覚センサでは、第1歪ゲージR1に基づいて受力部660に作用した力を計測することも可能であるし、第2歪ゲージR2に基づいて受力部660に作用した力を計測することも可能である。具体的には、第1歪ゲージR1の抵抗値に対応する電気信号をT1、第2歪ゲージR2の抵抗値に対応する電気信号をT2として、その比率に変化が生じることを利用して力覚センサの故障診断を行う。従って、第1変形部511及び第2変形部521に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1a、T2aとし、第1変形部511及び第2変形部521に金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1b、T2bとすることにより、§1で説明した力覚センサの故障診断の原理が採用され得る。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
以上のような本実施の形態によれば、第1変形部511及び第2変形部521に金属疲労が蓄積すると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じる。このことを利用して各変形部に当該金属疲労が生じていることを検出することにより、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、第1変形部511及び第2変形部521の故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
なお、本力覚センサの変形例として、連結部材530に非直線部分を設けた構成を採用することも可能である。このような連結部材530を有する力覚センサが図30に示されている。図30に示す力覚センサにおいては、第2変形体520に対する力の作用点が相対的に固定部側に近接しているため、第2変形部521に生じる変形(歪)は相対的に小さくなる。このことにより、図28に示す力覚センサと比較して、第2変形体520に金属疲労が一層発現しにくくなるのである。
<3−4. 本発明の第5の実施の形態による力覚センサ>
次に、図31及び図32を参照して、本発明の第5の実施の形態による力覚センサについて説明する。図31は、本発明の第5の実施の形態による力覚センサを示す概略側面図であり、図32は、Z軸負方向の力−Fzが作用した時の図31の力覚センサの状態を示す図である。
図31に示すように、本実施の形態による力覚センサは、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の力を検出するものであって、XY平面上に配置され、検出対象となる力の作用により弾性変形を生じる第1変形部及611及び第2変形部612を有する変形体610と、第1変形部及611及び第2変形部612に生じる変形を計測するセンサと、このセンサの計測値に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出回路と、を備えている。
本実施の形態による変形体610は、図示されるように一方の端部が固定部640に固定された片持ち梁として具現化されている。この片持ち梁は、第1変形部611と第2変形部612との間にZ軸方向への変位が規制された支点を有している。支点としては、例えば、図31に示すように、第2固定部641に対して固定され先細りの先端631を有する支柱630の当該先端631が、当該片持ち梁の下面に当接することによって実現され得る。また、変形体610は、固定部640から見て、第1変形部611及び第2変形部612よりも遠位側に検出対象となる力を受ける受力部660を有している。
本実施の形態では、第1変形部611は、第2変形部612のバネ定数よりも小さいバネ定数を有している。ここで、「バネ定数」とは、受力部660にZ軸方向の力Fzが作用した時に第1変形部611及び第2変形部612に生じるZ軸方向への変位で作用した力Fzの大きさを除した値を意味している。従って、変形体610が均質な材料によって構成されていても、支点の位置によっては第1変形部611に生じるZ軸方向への変位と第2変形部612に生じるZ軸方向への変位とが異なることになる。具体的な例としては、支点の位置を、固定部640と受力部660との中点よりも固定部640に近接させることにより、第1変形部611のバネ定数を第2変形部612のバネ定数よりも小さく設定することができる。
本実施の形態によるセンサは、図31に示すように、第1変形部611の上面に配置された第1歪ゲージR1と、第2変形部612の上面に配置された第2歪ゲージR2と、を有している。
本実施の形態による検出回路は、3−3の検出回路と同様に、図10のC/V変換器41がA/V変換器に置き換えられたものである。検出回路のその他の構成は、図10に示す検出回路と同様である。この、検出回路は、作用した力に対応する、第1変形部611の変形量に相当する第1電気信号T1と、第2変形部612の変形量に相当する第2電気信号T2と、を出力し、作用した力に対応する第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率の変化に基づいて、当該力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。
このような力覚センサの受力部660に対してZ軸負方向の力−Fzが作用すると、本力覚センサは、図32に示すように、変形体610が上に凸となるように撓み変形する。但し、前述したように、支柱630の存在によって、第1変形部611は、第2変形部612のバネ定数よりも小さいバネ定数を有している。このため、変形の程度について見ると、第1変形部611の変形量、すなわち当該第1変形部611の上面に生じる歪の大きさの方が、第2変形部612の変形量、すなわち当該第2変形部612の上面に生じる歪の大きさよりも大きい。このため、第1変形部611に配置された第1歪ゲージR1を用いて作用した力を計測すれば、より高感度の計測を行うことができる。一方、第2変形部612は、力が受力部660に繰り返し作用しても、相対的に金属疲労が発現しにくいため、当該金属疲労による検出精度の低下が生じにくい。
本実施の形態の力覚センサでは、第1歪ゲージR1に基づいて受力部660に作用した力を計測することも可能であるし、第2歪ゲージR2に基づいて受力部660に作用した力を計測することも可能である。具体的には、第1歪ゲージR1の抵抗値に対応する電気信号をT1、第2歪ゲージR2の抵抗値に対応する電気信号をT2として、その比率に変化が生じることを利用して力覚センサの故障診断を行う。従って、第1変形部611及び第2変形部612に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1a、T2aとし、第1変形部611及び第2変形部612に金属疲労が蓄積している状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1b、T2bとすることにより、§1で説明した力覚センサの故障診断の原理が採用され得る。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
以上のような本実施の形態によれば、第1変形部611及び第2変形部612に金属疲労が蓄積すると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じる。このことを利用して各変形部に当該金属疲労が生じていることを検出することにより、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
具体的には、本実施の形態の検出回路は、力覚センサが正常に機能している状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率を基準比率として記憶する記憶部48を有し、「第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、基準比率と、の差」が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、力覚センサが正常に機能しているか否かを判定するようになっている。このため、予め定められた基準比率に基づいて、第1変形部611及び第2変形部612の故障判定、すなわち力覚センサの故障判定を、確実に行うことができる。
なお、図31では、第1変形部611と第2変形部612との間において変形体610のZ軸方向への変位が制限されているとしたが、Z軸負方向の力−Fzが受力部660に作用した時、第1変形部611と第2変形部612が上に凸に変形するならば、どのような支持方法であっても良い。
<3−5. 3−3、3−4による力覚センサの変形例>
次に、3−3、3−4による力覚センサの歪ゲージを容量素子に置換した力覚センサの変形例について、図33乃至図36を参照して説明する。
図33は、3−3に対応する図28の力覚センサの変形例を示す概略側面図であり、図34は、Z軸負方向の力−Fzが作用した時の図33の力覚センサの状態を示す図である。また、図35は、3−4に対応する図31の力覚センサの変形例を示す概略側面図であり、図36は、Z軸負方向の力−Fzが作用した時の図35の力覚センサの状態を示す図である。
まず、3−3に対応する変形例による力覚センサについて説明する。本力覚センサは、図33に示すように、基本的な構造は図28に示す力覚センサと共通している。但し、図28において第1変形体511及び第2変形体521にそれぞれ配置されていた第1歪ゲージR1及び第2歪ゲージR2が取り除かれており、これらに代えて、第1変形部511及び第2変形部521の下面に第1容量素子C1及び第2容量素子C2がそれぞれ設けられている。図33に示すように、第1容量素子C1は、第1変形体510の第1変形部511(図33における左端近傍)の下面に配置された第1変位電極Em1と、この第1変位電極Em1に対向するように配置された第1固定電極Ef1とを有している。また、第2容量素子C2は、第2変形体520の下面であって、連結部材530と当該第2変形体520との接続部分に対応する第2変形部521に配置された第2変位電極Em2と、この第2変位電極Em2に対向するように配置された第2固定電極Ef2と、を有している。
本変形例では、第1変位電極Em1は第1変位基板Im1を介して第1変形部511に配置されており、第2変位電極Em2は第2変位基板Im2を介して第2変形部521に配置されている。また、第1固定電極Ef1は第1固定基板If1を介して第1台座541上に配置されており、第2固定電極Ef2は第2固定基板If2を介して第2台座542上に配置されている。
また、本変形例による力覚センサの検出回路は、§1で説明した図10の検出回路と同様のものが採用されている。
このような力覚センサの受力部560にZ軸負方向の力−Fzが作用すると、力覚センサの各変形体510、520には、図34に示すように、それぞれ上に凸の撓み変形が生じる。このことによって、第1及び第2容量素子C1及びC2の静電容量値が共に増大する。但し、前述したバネ定数の相違から、第1変形部511に生じる変位の方が第2変形部521に生じる変位よりも大きい。すなわち、静電容量値の変動量は、第1容量素子C1の方が第2容量素子C2よりも大きい。このため、第1変形部511に配置された第1容量素子C1の静電容量値の変動量に基づいて作用した力を計測すれば、より高感度の計測を行うことができる。一方、第2変形部521は、力が受力部560に繰り返し作用しても、相対的に金属疲労が発現しにくいため、第2容量素子C2の静電容量値の変動量に基づいて作用した力を計測すれば、当該金属疲労による検出精度の低下による影響を受けにくいという利点がある。
本変形例による力覚センサでは、第1容量素子C1に基づいて受力部560に作用した力を計測することも可能であるし、第2容量素子C2に基づいて受力部560に作用した力を計測することも可能である。もちろん、第1容量素子C1と第2容量素子C2との和で受力部560に作用した力を計測しても良い。具体的には、第1容量素子C1の静電容量値の変動量に対応する電気信号をT1、第2容量素子C2の静電容量値の変動量に対応する電気信号をT2として、その比率に変化が生じることを利用して力覚センサの故障診断を行う。従って、第1変形部511及び第2変形部521に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1a、T2aとし、第1変形部511及び第2変形部521に金属疲労が蓄積している状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1b、T2bとすることにより、§1で説明した力覚センサの故障診断の原理が採用され得る。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
次に、3−4に対応する変形例による力覚センサについて説明する。本力覚センサは、図35に示すように、基本的な構造は図31に示す力覚センサと共通している。但し、図31において変形体610に配置されていた第1歪ゲージR1及び第2歪ゲージR2が取り除かれており、これらに代えて、第1変形体611及び第2変形体612の下面に第1容量素子C1及び第2容量素子C2がそれぞれ設けられている。図35に示すように、第1容量素子C1は、変形体610の第1変形部611の下面に配置された第1変位電極Em1と、この第1変位電極Em1に対向するように配置された第1固定電極Ef1とを有している。また、第2容量素子C2は、変形体610の第2変形部612の下面に配置された第2変位電極Em2と、この第2変位電極Em2に対向するように配置された第2固定電極Ef2と、を有している。
本変形例でも、第1変位電極Em1は第1変位基板Im1を介して第1変形部611に配置されており、第2変位電極Em2は第2変位基板Im2を介して第2変形部612に配置されている。また、第1固定電極Ef1は第1固定基板If1を介して第1台座642上に配置されており、第2固定電極Ef2は第2固定基板If2を介して第2台座643上に配置されている。
また、本変形例による力覚センサの検出回路は、§1で説明した図10の検出回路と同様のものが採用されている。
このような力覚センサの受力部660にZ軸負方向の力−Fzが作用すると、力覚センサの変形体610には、図36に示すように、上に凸の撓み変形が生じる。このことによって、第1容量素子C1の静電容量値は増大し、第2容量素子C2の静電容量値は減少する。但し、前述したバネ定数の相違から、第1変形部611に生じる変位の方が第2変形部612に生じる変位よりも大きい。すなわち、静電容量値の変動量は、第1容量素子C1の方が第2容量素子C2よりも大きい。このため、第1変形部611に配置された第1容量素子C1の静電容量値の変動量に基づいて作用した力を計測すれば、より高感度の計測を行うことができる。一方、第2変形部612は、力が受力部660に繰り返し作用しても、相対的に金属疲労が発現しにくいため、第2容量素子C2の静電容量値の変動量に基づいて作用した力を計測すれば、当該金属疲労による検出精度の低下による影響を受けにくいという利点がある。
本変形例による力覚センサでも、第1容量素子C1に基づいて受力部660に作用した力を計測することが可能であるし、第2容量素子C2に基づいて受力部660に作用した力を計測することも可能である。もちろん、両者の和(C1+C2)に基づいて計測しても良い。具体的には、第1容量素子C1の静電容量値に対応する電気信号をT1、第2容量素子C2の静電容量値に対応する電気信号をT2として、その比率に変化が生じることを利用して力覚センサの故障診断を行う。従って、第1変形部611及び第2変形部612に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1a、T2aとし、第1変形部611及び第2変形部612に金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をそれぞれT1b、T2bとすることにより、§1で説明した力覚センサの故障診断の原理が採用され得る。このため、ここでも、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
以上のような各変形例によれば、第1変形部611及び第2変形部612に金属疲労が蓄積すると、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じる。このことを利用して各変形部に当該金属疲労蓄積していることを検出することにより、変形体の故障を診断することが可能な力覚センサを提供することができる。
<<< §4 他の変形例 >>>
<4−1. 他の電極構造を採用した力覚センサの変形例>
§1及び§2の力覚センサにおいては、各変形部が金属で構成され、当該各変形部が変位電極(共通電極)として機能しても良いとして説明を行った。しかしながら、この場合、意図していない様々な部分に浮遊容量が形成されることになるため、静電容量の検出値にノイズ成分が混入しやすくなり、検出精度が低下する可能性がある。このような事情に鑑み、高精度の検出が要求される力覚センサの場合には、変位電極を容量素子毎に独立して設けることで各容量素子を構成することも可能である。この場合、各変形体をプラスチックなどの可撓性を有する絶縁体から構成することも可能である。
図37は、プラスチック製のダイアフラム150dによって構成された変形部を有する力覚センサの、第1容量素子C1の部分的な概略断面図である。図37に示すように、連結部材401をダイアフラム150dの下方(図37における下方)まで設け、当該連結部材401の下端に固定基板Iを接着して、その下面に変位電極が設けられている。ただし、固定基板Iは、ダイアフラム150dの弾性変形を妨げないような態様で配置される必要がある。このように変位電極を容量素子毎に独立して設けることができれば、前述したような検出精度の低下の恐れが少なく、更に回路的な自由度が増すことから、回路設計上有利である。プラスチックから構成されたダイアフラム150dも、繰り返しの使用によって前述した第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が変化するので、そのようなダイアフラム150dを有する力覚センサにおいても、これまで説明した故障判定の原理が採用され得る。
もちろん、図37のダイアフラム150dは、プラスチックでなく金属でも良い。変位電極Em1は、変位基板(絶縁体)を介してダイアフラム150dに接合され、固定電極Ef1も固定基板(絶縁体)を介して第1支持体300に固定される。変位電極Em1と固定電極Ef1は、第1変形体100及び第1支持体300が導体(金属)であっても、変位基板(絶縁体)を介して配置されているため、電気的に導通することはない。
<4−3. 電極間の実効対向面積を一定とした力覚センサの変形例>
図示されていないが、各軸方向の力ないし各軸まわりのモーメントが作用した結果、固定電極に対する変位電極の相対位置が変化した場合にも、容量素子を構成する一対の電極の実効対向面積が変化しないように、各容量素子を構成する固定電極および変位電極のうちの一方の面積を他方の面積よりも大きく設定することも考えられる。これは、面積が小さい方の電極(例えば変位電極)の輪郭を、面積が大きい方の電極(例えば固定電極)の表面にZ軸方向に投影して正射影投影像を形成した場合、面積が小さい方の電極の投影像が、面積が大きい方の電極の表面内に完全に含まれるような状態である。この状態が維持されれば、両電極によって構成される容量素子の実効面積は、小さい方の電極の面積に等しくなり、常に一定になる。すなわち、力の検出精度を向上させることができる。