JP6803769B2 - フェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法及び溶接部の保守管理方法 - Google Patents
フェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法及び溶接部の保守管理方法 Download PDFInfo
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Description
また、特許文献2が開示する金属材料の損傷評価方法は、反射エコー高さとクリープボイド個数密度との対応データを利用しているが、本発明者の知見によれば、反射エコー高さとクリープボイド個数密度との間に対応関係が認められない場合もあることもわかってきた。
フェーズドアレイ超音波探傷装置によって、評価対象の溶接部の内部に超音波を走査しながら照射し、前記超音波の反射波を受信する本探傷工程と、
前記本探傷工程で受信した前記反射波の強度を閾値と比較し、前記反射波の強度が前記閾値以上である領域に亀裂が発生していると判定する判定工程と、
前記本探傷工程の前に前記閾値を求める閾値取得工程と、を備え、
前記閾値取得工程は、
内部に亀裂が発生した溶接部を有する閾値取得用試料を準備する試料準備工程と、
フェーズドアレイ超音波探傷装置によって、前記閾値取得用試料の溶接部の内部に、超音波を走査しながら照射し、前記超音波の反射波を受信する予備探傷工程と、
前記予備探傷工程の後、前記閾値取得用試料の溶接部の内部に含まれる前記亀裂を進展させる亀裂進展工程と、
前記亀裂進展工程の後、前記閾値取得用試料の溶接部を切断する切断工程と、
前記切断工程にて切断された溶接部における前記亀裂の長さを測定する亀裂長さ測定工程と、
前記亀裂長さ測定工程で測定された前記亀裂の長さから、亀裂伝播逆解析により、前記予備探傷工程の時刻での前記亀裂の長さを推定する亀裂長さ推定工程と、
前記予備探傷工程にて得られた反射波の強度分布において反射波の強度が一の値以上である領域に亀裂が発生していると仮定し、前記仮定に基づいて求められる前記予備探傷工程の時刻での亀裂の長さ(仮亀裂長さ)と前記亀裂長さ推定工程で推定された前記亀裂の長さ(推定亀裂長さ)とが一致するときの前記一の値を、前記閾値に決定する閾値決定工程と、
を含む。
ここで、亀裂に対応する反射波の強度は、亀裂が進展するのに伴い大きくなる傾向があり、発生初期の亀裂に対応する反射波の強度を閾値に設定することができれば、より小さい亀裂を早期に発見することが可能になる。しかしながら、発生初期の亀裂に対応する反射波の強度を正確に求めることは困難であった。
この点、上記構成(1)では、閾値取得用試料を切断した時刻よりも遡って、予備探傷工程の実施時刻での推定亀裂長さと仮亀裂長さとが一致するときの反射波の強度の値(前記一の値)を閾値に決定するので、亀裂がある程度進展した時刻よりも前の時刻、即ち亀裂の発生初期における、亀裂に対応する反射波の強度を閾値に決定することができる。このため、上記構成(1)によれば、発生初期の亀裂の評価を正確に行うことができる。
前記本探傷工程にて求められた前記評価対象の溶接部の内部の亀裂の長さから、亀裂伝播解析により、前記評価対象の溶接部の残存寿命を評価する工程を更に備える。
前記溶接部によって溶接される部材は高強度フェライト鋼からなる。
この点、上記構成(1)又は(2)のフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法は、溶接部の内部の亀裂の長さの評価を正確に行うことができ、上記構成(3)のように、高強度フェライト鋼からなる部材を溶接して形成された溶接部のクリープ損傷度の評価に適している。
前記判定工程において、前記反射波の強度が前記閾値未満であるとき、
溶接部を有する強度曲線取得用試料に関する前記超音波の反射波の強度の経時変化を示す既知の反射波強度曲線に基づいて、前記評価対象の前記溶接部に関する前記反射波の強度が、前記本探傷工程で受信した前記反射波の強度H*から前記閾値に到達するまでの時間Δt*を求める工程を備える。
経過時間が異なる2以上の時点のそれぞれにおいて前記強度曲線取得用試料について前記超音波の反射波の強度を計測し、前記強度曲線取得用試料についての前記2以上の時点における前記反射波の強度の計測結果に基づいて、前記強度曲線取得用試料に関する前記反射波強度曲線を同定する工程を備える。
上記構成(5)によれば、強度曲線取得用試料を用い、経過時間が異なる2以上の時点のそれぞれにおいて超音波の反射波の強度を計測することで、反射波強度曲線を求めることができる。このように、強度曲線取得用試料を用いた試験段階での計測により容易に反射波強度曲線を求めることができる。
前記強度曲線取得用試料に関する前記反射波強度曲線を用いて、前記強度曲線取得用試料に関して、前記反射波の強度が、前記反射波の強度H*から前記閾値に到達するまでの時間Δt* sampleを求める工程を備え、
前記時間Δt*を求める工程では、ラーソンミラーパラメータ法により、前記時間Δt* sampleを前記時間Δt*に換算する。
上記構成(6)によれば、強度曲線取得用試料を用いて求めた時間Δt* sampleから、ラーソンミラーパラメータ法を用いた演算により、評価対象の溶接部の閾値到達時間Δt*を容易に求めることができる。
前記強度曲線取得用試料に関する前記反射波強度曲線をラーソンミラーパラメータ法により補正し、前記評価対象の前記溶接部に関する前記反射波の強度の経時変化を示す補正曲線を求める工程を備え、
前記時間Δt*を求める工程では、前記補正曲線を用いて、前記時間Δt*を求める。
上記構成(7)によれば、上記補正曲線を求めることで、評価対象の溶接部に関する閾値到達時間Δt*を容易に求めることができる。
フェーズドアレイ超音波探傷装置によって、評価対象の溶接部の内部に超音波を走査しながら照射し、前記超音波の反射波を受信する本探傷工程と、
前記本探傷工程で受信した前記反射波の強度を閾値と比較し、前記反射波の強度が前記閾値以上である領域に亀裂が発生していると判定する判定工程と、
前記判定工程の判定結果に基づいて、前記評価対象の溶接部の補修又は交換を行う修理工程と、
前記本探傷工程の前に前記閾値を求める閾値取得工程と、を備え、
前記閾値取得工程は、
内部に亀裂が発生した溶接部を有する閾値取得用試料を準備する試料準備工程と、
フェーズドアレイ超音波探傷装置によって、前記閾値取得用試料の溶接部の内部に、超音波を走査しながら照射し、前記超音波の反射波を受信する予備探傷工程と、
前記予備探傷工程の後、前記閾値取得用試料の溶接部の内部に含まれる前記亀裂を進展させる亀裂進展工程と、
前記亀裂進展工程の後、前記閾値取得用試料の溶接部を切断する切断工程と、
前記切断工程にて切断された溶接部における前記亀裂の長さを測定する亀裂長さ測定工程と、
前記亀裂長さ測定工程で測定された前記亀裂の長さから、亀裂伝播逆解析により、前記予備探傷工程の時刻での前記亀裂の長さを推定する亀裂長さ推定工程と、
前記予備探傷工程にて得られた反射波の強度分布において反射波の強度が一の値以上である領域に亀裂が発生していると仮定し、前記仮定に基づいて求められる前記予備探傷工程の時刻での亀裂の長さ(仮亀裂長さ)と前記亀裂長さ推定工程で推定された前記亀裂の長さ(推定亀裂長さ)とが一致するときの前記一の値を、前記閾値に決定する閾値決定工程と、
を含む。
ここで、亀裂に対応する反射波の強度は、亀裂が進展するのに伴い大きくなる傾向があり、発生初期の亀裂に対応する反射波の強度を閾値に設定することができれば、より小さい亀裂を早期に発見することが可能になる。しかしながら、発生初期の亀裂に対応する反射波の強度を正確に求めることは困難であった。
この点、上記構成(8)では、閾値取得用試料を切断した時刻よりも遡って、予備探傷工程の実施時刻での推定亀裂長さと仮亀裂長さとが一致するときの反射波の強度の値(前記一の値)を閾値に決定するので、亀裂がある程度進展した時刻よりも前の時刻、即ち亀裂の発生初期における、亀裂に対応する反射波の強度を閾値に決定することができる。このため、上記構成(8)によれば、発生初期の亀裂の評価を正確に行うことができる。そしてこのように、上記構成(8)によれば、亀裂の評価を正確に行うことができるので、判定工程の結果に基づいて、溶接部の補修を的確に実施することができる。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹突起や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図4は、図1中の本探傷工程にて評価対象の溶接部から得られる、超音波の反射波の強度(エコー高さ)分布を説明するための図である。図5は、図2中の予備探傷工程にて得られる閾値取得用試料の溶接部から得られる、超音波の反射波の強度分布を説明するための図である。図6は、図5の強度分布中、反射波の強度が大きい領域での反射波の強度(エコー高さ)と鉛直方向での位置との間の相関関係を概略的に示す図であり、(a)は溶接部の厚さ方向を含む断面での2次元的な強度分布、(b)は、溶接部の厚さ方向に沿う一次元的な強度分布を示している。図7は、図2中の亀裂長さ測定工程を説明するための図である。図8は、図2中の亀裂長さ推定工程を説明するための図である。図9は、図2中の閾値決定工程を説明するための図である。図10は、図2中の亀裂長さ測定工程に適用可能な亀裂伝播逆解析工程の手順を概略的に示すフローチャートである。図11は、図3中の残存寿命推定工程を説明するための図である。図12は、図3中の残存寿命推定工程に適用可能な亀裂伝播解析工程の手順を概略的に示すフローチャートである。図13は亀裂の進展挙動を説明するための図であり、(a)は、亀裂深さと時間の関係を概略的に表すグラフであり、(b)は、初期亀裂深さと貫通時間の関係を概略的に表すグラフである。図14は、本発明の一実施形態に係るフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法を適用可能な幾つかの溶接部の開先形状を例示する図である。図15は、本発明の一実施形態に係るフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法を適用可能な溶接部により接続される配管の断面を例示する図である。
本探傷工程S2では、図4に示したように、フェーズドアレイ超音波探傷装置2によって、評価対象の溶接部4aの内部に超音波を走査しながら照射し、超音波の反射波(エコー)を受信する。
評価対象の溶接部4aとは、ボイラ等、実際に使用されている機器(実機)の配管等の溶接部4aである。
なお、反射波の強度は、照射する超音波の強度によっても変化するので、本明細書において反射波の強度とは、照射する超音波の強度に対する反射波の強度の比であってもよい。
例えば、図4の場合、亀裂6aが溶接部4aにおける熱影響部8aの内部に発生している。溶接部6aの厚さ方向での亀裂6aの長さaxは10mmであり、亀裂6aから溶接部4aの表面までの距離が7mmである。
なお、本明細書において、亀裂の長さとは、特に断らない限り、溶接部の厚さ方向、例えば配管の肉厚方向、での亀裂の長さを意味するものとする。
図2に示したように、閾値取得工程S1は、試料準備工程S100と、予備探傷工程S102と、亀裂進展工程S104と、切断工程S106と、亀裂長さ測定工程S108と、亀裂長さ推定工程S110と、閾値決定工程S112とを含む。
なお、閾値取得用試料12が実機の一部の場合には、閾値取得用試料12を準備することには、実機の一部の設置場所に、次の予備探傷工程S102を行う者が出向くことも含まれる。
なお、亀裂6bを進展させるには、閾値取得用試料12がクリープ試験片の場合には、クリープ試験を続行すればよい。閾値取得用試料12が実機の一部である場合には、実機の運転を続行すればよい。
亀裂長さ測定工程S108では、切断工程S106にて切断された溶接部4cにおける亀裂6cの長さa2を測定する。亀裂長さ測定工程S108での亀裂6cの長さa2の測定は、目視による直接的なものであり、定規やノギス等を用いて行うことができるが、亀裂6cの大きさによっては顕微鏡を使用してもよい。
なお、図8中のマスターカーブ14は、時間と亀裂6bの長さとの関係を表す曲線であり、亀裂伝播逆解析により求められたものである。亀裂伝播逆解析は、時刻t2から時刻t1へと時間差ΔTだけ時間が遡るように亀裂伝播解析を行うものであり、基本的な考え方は亀裂伝播解析と同じである。このため、マスターカーブ14は、亀裂の進展の評価にも用いることができる。
かくして閾値決定工程S112で決定された閾値thが、判定工程S3にて用いられる。
ここで、亀裂に対応する反射波の強度は、亀裂が進展するのに伴い大きくなる傾向があり、発生初期の亀裂に対応する反射波の強度を閾値に設定することができれば、より小さい亀裂を早期に発見することが可能になり、発生初期から亀裂を正確に評価することができる。しかしながら、従来、発生初期の亀裂に対応する反射波の強度を正確に求めることは困難であった。
亀裂伝播逆解析では、まず、解析に必要なデータが取得される(S200)。取得されるデータは、時刻t2での亀裂6cの長さa2、亀裂6cの深さ(溶接部4cの表面から亀裂6c先端までの距離)、応力、温度、クリープ速度、クリープ亀裂進展速度データ及び材質である。
それから、工程S202で変数aに長さa2を代入し、工程S204で変数nに1を代入する。そして、C*演算工程S206にて、取得したデータに基づいて、C*パラメータ(修正J積分J’)を演算する。
あるいは、材質毎に、亀裂進展速度(da/dt)とC*パラメータとの関係を予め求めておき、該関係に基づいて、演算されたC*パラメータから亀裂進展速度(da/dt)を求めてもよい。
亀裂寸法更新工程S212では、変数aから亀裂減少分Δaを引き算することによって、変数aを更新する。
一方、時刻判定工程S214の判定結果が肯定的なものである場合、すなわち時刻t1まで遡った場合、そのときの変数aが、求めるべき亀裂6bの長さa1である。
残存寿命推定工程S5では、判定工程S3の判定結果に基づいて、評価対象の溶接部4aの残存寿命を評価する。すなわち、残存寿命推定工程S5では、本探傷工程S2及び判定工程S3にて求められた評価対象の溶接部4aの内部の亀裂6aの長さaxから、亀裂伝播解析により、評価対象の溶接部4aの残存寿命を評価する。
具体的には、図11に示したように、本探傷工程S2の実施時刻txでの溶接部4aの内部の亀裂6aの長さaxから、亀裂伝播解析により、亀裂6aの長さaxが溶接部4aを貫通する長さarになる貫通時刻trを求める。貫通時刻trと時刻t1との差が残存寿命に相当する。
例えばボイラ等においては、溶接部の個数は多数であり、全ての溶接部を評価対象とする場合、評価に時間がかかってしまう。この点、応力解析により、亀裂が発生していそうな溶接部を見つけ出すことで、効率的に溶接部内の亀裂評価を行うことができる。
亀裂伝播解析では、まず、解析に必要なデータが取得される(S300)。取得されるデータは、時刻txでの亀裂6aの長さax、亀裂6aの深さ(溶接部4aの表面から亀裂6a先端までの距離)、応力、温度、クリープ速度、クリープ亀裂進展速度データ及び材質である。
それから、工程S302で変数aに長さaxを代入し、工程S304で変数nに1を代入する。そして、C*演算工程S306にて、取得したデータに基づいて、C*パラメータ(修正J積分J’)を演算する。
あるいは、材質毎に、亀裂進展速度(da/dt)とC*パラメータとの関係を予め求めておき、該関係に基づいて、演算されたC*パラメータから亀裂進展速度(da/dt)を求めてもよい。
亀裂寸法更新工程S312では、変数aに亀裂増分Δaを足し算することによって、変数aを更新する。
一方、貫通判定工程S314の判定結果が肯定的なものである場合、すなわち亀裂6aの長さが、溶接部4aを貫通する貫通長さar以上になった場合、残存寿命演算工程S318が実行される。残存寿命演算工程S318では、残存寿命(tr−tx)が、変数nと微小時間Δtの積として求められる。
高強度フェライト鋼からなる部材の溶接部4aの場合、外表面のクリープ損傷度と内部のクリープ損傷度との間に相関がなく、溶接部4aの外表面のクリープ損傷度に関わらずに、溶接部4aの内部のクリープ損傷度を評価する必要がある。
この点、図1及び図3に示したフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法は、溶接部4aの内部の亀裂6aの長さaxの評価を正確に行うことができ、高強度フェライト鋼からなる部材の溶接部4aのクリープ損傷度の評価に適している。
なお、高強度フェライト鋼とは、例えば、Gr.91系鋼(火SCMV28、火STPA28、火SFVAF28、火STBA28)の同等材、Gr.92系鋼(火STPA29、火SFVAF29、火STBA29)の同等材、火Gr.122系鋼(火SUS410J3、火SUS410J3TP、火SUSF410J3、火SUS410J3TB、火SUS410J3DTB)の同等材、又は、Gr.23系鋼(火STPA24J1、火SFVAF22AJ1、火STBA24J1、火SCMV4J1)の同等材である。
低合金鋼とは、例えば、STBA12の同等材、STBA13の同等材、STPA20の同等材、火STPA21の同等材、STPA22の同等材、STPA23の同等材、又は、STPA24の同等材である。
ステンレス鋼とは、例えば、SUS304TPの同等材、SUS304LTPの同等材、SUS304HTPの同等材、火SUS304J1HTBの同等材、SUS321TPの同等材、SUS321HTPの同等材、SUS316HTPの同等材、SUS347HTPの同等材、又は、火SUS310J1TBの同等材である。
図15は、溶接部4aによって溶接される配管の外径Dと厚さtを説明するための図である
事前準備工程S8では、溶接部を有する強度曲線取得用試料を用意し、図18に示すように、強度曲線取得用試料に関して超音波の反射波の強度の経時変化を示す反射波強度曲線16を予め作成する。
判定工程S3において、評価対象の溶接部4aの反射波の強度(エコー高さ)が閾値未満のH*であるとき、図18に示すように、反射波強度曲線16に基づいて、評価対象の溶接部4aに関する反射波の強度が、本探傷工程S2で受信した反射波の強度H*から閾値に到達するまでの時間Δt*を求める(閾値到達寿命推定工程S9)。
図17において、まず、1個以上の強度曲線取得用試料を用意する(試料準備工程S400)。用意された強度曲線取得用試料に対して、経過時間が異なる2以上の時点のそれぞれにおいて超音波の反射波の強度を計測する(反射波強度取得工程S402)。次に、この計測結果に基づいて、強度曲線取得用試料に関する反射波強度曲線を同定する(同定工程S404)。
これによって、強度曲線取得用試料を用いた試験段階での計測により容易に反射波強度曲線を求めることができる。
一般式y=p・eqx (1)
但し、y;エコー高さ、x;経過時間、p、q;係数
次に、異なる経過時間で2回探傷を行い、これらの計測値を式(1)に代入することで、係数p、qを求める。こうして、2個の閾値取得用試料12から、反射波強度曲線16a及び16bを求めることができる。
次に、時間Δt*を求める工程では、ラーソンミラーパラメータ法により、時間Δt* sampleを時間Δt*に換算する。
この実施形態によれば、強度曲線取得用試料を用いて求めた時間Δt* sampleから、ラーソンミラーパラメータ法を用いた演算により、評価対象の溶接部4aの閾値到達時間Δt*を容易に求めることができる。
次に、評価対象の溶接部4aの運転条件(温度T2、負荷応力σ2)における全寿命tr1と、反射波の強度が閾値thになるまでの時間Δt*から、式(3)で寿命消費率の変化量ΔD2を算出する。
ΔD1とΔD2とは等価と考えられるため、式(6)が成立し、従って、式(4)で求められる全寿命tr1と式(5)で求められる全寿命tr2との比から、式(7)で示すように、評価対象の溶接部4aの反射波の強度が閾値thになるまでの時間Δt*を求めることができる。
なお、図18中、t* sampleは強度曲線取得用試料の反射波の強度がH*になる時間を示している。
この実施形態で時間Δt*を求める工程では、補正曲線18を用いて、時間Δt*を求める。
なお、図18中、t*は評価対象の溶接部4aの反射波の強度がH*になる時間を示し、t1は亀裂発生時の時間を示している。
例えば、評価対象の溶接部は、ボイラの一部に限定されることはなく、本発明に係るフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法及び溶接部の保守管理方法は、高温高圧下に曝される種々の溶接部に適用可能である。
4a 評価対象の溶接部
4b 閾値取得用試料の溶接部(予備探傷工程の実施時刻)
4c 閾値取得用試料の溶接部(亀裂長さ測定工程の実施時刻)
6a 評価対象の溶接部の亀裂
6b 閾値取得用試料の溶接部の亀裂(予備探傷工程の実施時刻)
6c 閾値取得用試料の溶接部の亀裂(亀裂長さ測定工程の実施時刻)
8a 評価対象の溶接部の熱影響部
8b 閾値取得用試料の溶接部の熱影響部(予備探傷工程の実施時刻)
8c 閾値取得用試料の溶接部の熱影響部(亀裂長さ測定工程の実施時刻)
10a 評価対象の溶接部の溶着部
10b 閾値取得用試料の溶接部の溶着部(予備探傷工程の実施時刻)
10c 閾値取得用試料の溶接部の溶着部(亀裂長さ測定工程の実施時刻)
12 閾値取得用試料
14 マスターカーブ
16 反射波強度曲線
18 補正曲線
a1 推定亀裂長さ
a1’ 仮亀裂長さ
S1 閾値取得工程
S2 本探傷工程
S3 判定工程
S4 評価対象部位選定工程
S5 残存寿命推定工程
S6 修理工程
S8 事前準備工程
S9 閾値到達寿命推定工程
S100 試料準備工程
S102 予備探傷工程
S104 亀裂進展工程
S106 切断工程
S108 亀裂長さ測定工程
S110 亀裂長さ推定工程
S112 閾値決定工程
Claims (8)
- フェーズドアレイ超音波探傷装置によって、評価対象の溶接部の内部に超音波を走査しながら照射し、前記超音波の反射波を受信する本探傷工程と、
前記本探傷工程で受信した前記反射波の強度を閾値と比較し、前記反射波の強度が前記閾値以上である領域に亀裂が発生していると判定する判定工程と、
前記本探傷工程の前に前記閾値を求める閾値取得工程と、を備え、
前記閾値取得工程は、
内部に亀裂が発生した溶接部を有する閾値取得用試料を準備する試料準備工程と、
フェーズドアレイ超音波探傷装置によって、前記閾値取得用試料の溶接部の内部に、超音波を走査しながら照射し、前記超音波の反射波を受信する予備探傷工程と、
前記予備探傷工程の後、前記閾値取得用試料の溶接部の内部に含まれる前記亀裂を進展させる亀裂進展工程と、
前記亀裂進展工程の後、前記閾値取得用試料の溶接部を切断する切断工程と、
前記切断工程にて切断された溶接部における前記亀裂の長さを測定する亀裂長さ測定工程と、
前記亀裂長さ測定工程で測定された前記亀裂の長さから、亀裂伝播逆解析により、前記予備探傷工程の時刻での前記亀裂の長さを推定する亀裂長さ推定工程と、
前記予備探傷工程にて得られた反射波の強度分布において反射波の強度が一の値以上である領域に亀裂が発生していると仮定し、前記仮定に基づいて求められる前記予備探傷工程の時刻での亀裂の長さと前記亀裂長さ推定工程で推定された前記亀裂の長さとが一致するときの前記一の値を、前記閾値に決定する閾値決定工程と、
を含む
ことを特徴とするフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法。 - 前記本探傷工程にて求められた前記評価対象の溶接部の内部の亀裂の長さから、亀裂伝播解析により、前記評価対象の溶接部の残存寿命を評価する工程を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法。 - 前記溶接部によって溶接される部材は高強度フェライト鋼からなる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法。 - 前記判定工程において、前記反射波の強度が前記閾値未満であるとき、
溶接部を有する強度曲線取得用試料に関する前記超音波の反射波の強度の経時変化を示す既知の反射波強度曲線に基づいて、前記評価対象の前記溶接部に関する前記反射波の強度が、前記本探傷工程で受信した前記反射波の強度H*から前記閾値に到達するまでの時間Δt*を求める工程を備える
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法。 - 経過時間が異なる2以上の時点のそれぞれにおいて前記強度曲線取得用試料について前記超音波の反射波の強度を計測し、前記強度曲線取得用試料についての前記2以上の時点における前記反射波の強度の計測結果に基づいて、前記強度曲線取得用試料に関する前記反射波強度曲線を同定する工程を備える
ことを特徴とする請求項4に記載のフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法。 - 前記強度曲線取得用試料に関する前記反射波強度曲線を用いて、前記強度曲線取得用試料に関して、前記反射波の強度が、前記反射波の強度H*から前記閾値に到達するまでの時間Δt* sampleを求める工程を備え、
前記時間Δt*を求める工程では、ラーソンミラーパラメータ法により、前記時間Δt* sampleを前記時間Δt*に換算する
ことを特徴とする請求項5に記載のフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法。 - 前記強度曲線取得用試料に関する前記反射波強度曲線をラーソンミラーパラメータ法により補正し、前記評価対象の前記溶接部に関する前記反射波の強度の経時変化を示す補正曲線を求める工程を備え、
前記時間Δt*を求める工程では、前記補正曲線を用いて、前記時間Δt*を求める
ことを特徴とする請求項5に記載のフェーズドアレイ法による溶接部内の亀裂評価方法。 - フェーズドアレイ超音波探傷装置によって、評価対象の溶接部の内部に超音波を走査しながら照射し、前記超音波の反射波を受信する本探傷工程と、
前記本探傷工程で受信した前記反射波の強度を閾値と比較し、前記反射波の強度が前記閾値以上である領域に亀裂が発生していると判定する判定工程と、
前記判定工程の判定結果に基づいて、前記評価対象の溶接部の補修又は交換を行う修理工程と、
前記本探傷工程の前に前記閾値を求める閾値取得工程と、を備え、
前記閾値取得工程は、
内部に亀裂が発生した溶接部を有する閾値取得用試料を準備する試料準備工程と、
フェーズドアレイ超音波探傷装置によって、前記閾値取得用試料の溶接部の内部に、超音波を走査しながら照射し、前記超音波の反射波を受信する予備探傷工程と、
前記予備探傷工程の後、前記閾値取得用試料の溶接部の内部に含まれる前記亀裂を進展させる亀裂進展工程と、
前記亀裂進展工程の後、前記閾値取得用試料の溶接部を切断する切断工程と、
前記切断工程にて切断された溶接部における前記亀裂の長さを測定する亀裂長さ測定工程と、
前記亀裂長さ測定工程で測定された前記亀裂の長さから、亀裂伝播逆解析により、前記予備探傷工程の時刻での前記亀裂の長さを推定する亀裂長さ推定工程と、
前記予備探傷工程にて得られた反射波の強度分布において反射波の強度が一の値以上である領域に亀裂が発生していると仮定し、前記仮定に基づいて求められる前記予備探傷工程の時刻での亀裂の長さと前記亀裂長さ推定工程で推定された前記亀裂の長さとが一致するときの前記一の値を、前記閾値に決定する閾値決定工程と、
を含む
ことを特徴とするフェーズドアレイ法による溶接部の保守管理方法。
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