以下、本発明の一実施の形態に係る拡大観察装置および拡大観察装置の制御方法について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る拡大観察装置の構成を示す模式図である。図2は、図1の拡大観察装置1の測定ヘッド100の正面図である。図3は、図2の測定ヘッド100の平面図である。図4は、図2の測定ヘッド100の側面図である。図1に示すように、拡大観察装置1は、測定ヘッド100および処理装置200を備える。
[1]測定ヘッド
測定ヘッド100は、例えば顕微鏡であり、スタンド部110、ステージ装置120、鏡筒部130、投光部140および制御基板150を含む。図2〜図4においては、鏡筒部130および投光部140の図示が省略される。
図4に示すように、スタンド部110は、縦断面がL字形状を有し、設置部111、保持部112および焦点駆動部113を含む。設置部111および保持部112は、例えば樹脂により形成される。設置部111は、水平な平板形状を有し、設置面に設置される。保持部112は、設置部111の一端部から上方に延びるように設けられ、下保持部112Aおよび上保持部112Bを含む。下保持部112Aと上保持部112Bとの間に傾斜機構101が設けられている。傾斜機構101は、下保持部112Aの上端で上保持部112Bを保持する。下保持部112Aにおける傾斜機構101の近傍部分に距離測定用カメラ190が設けられている。距離測定用カメラ190は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラを含み、鏡筒部130(図1)の一部およびステージ装置120が距離測定用カメラ190の撮像視野内に含まれるように配置されている。距離測定用カメラ190においては、鏡筒部130の一部とステージ装置120上に載置される観察対象物Sとを示す画像データが生成される。生成された画像データは、ケーブル203を介して順次処理装置200に与えられる。傾斜機構101の詳細は後述する。
図1に示すように、ステージ装置120は、ステージ121およびステージ駆動部122を含む。ステージ121は、ステージ駆動部122により支持された状態で設置部111上に設けられる。ステージ121上には、観察対象物Sが載置される。観察対象物Sが載置されるステージ121上の平面(以下、載置面と呼ぶ。)内で互いに直交する2方向をX方向およびY方向と定義し、それぞれ矢印X,Yで示す。ステージ121の載置面に対して直交する法線の方向をZ方向と定義し、矢印Zで示す。Z方向に平行な軸を中心に回転する方向をθ方向と定義し、矢印θで示す。
図2〜図4に示すように、ステージ駆動部122は、回転移動部124、載置面移動部125および昇降移動部126を含む。設置部111の上面上に昇降移動部126が設けられ、昇降移動部126上に載置面移動部125が設けられ、載置面移動部125上に回転移動部124が設けられる。
昇降移動部126は、ステッピングモータ等の図示しないアクチュエータを含み、制御基板150から与えられる駆動パルスに基づいてステージ121、回転移動部124および載置面移動部125をZ方向に移動させる。載置面移動部125は、ステッピングモータ等の図示しないアクチュエータを含み、制御基板150から与えられる駆動パルスに基づいてステージ121および回転移動部124をX方向またはY方向に移動させる。
回転移動部124は、ステッピングモータ等の図示しないアクチュエータを含み、制御基板150から与えられる駆動パルスに基づいてステージ121を載置面に直交する回転軸A10の周りでθ方向に回転させる。回転軸A10は、ステージ121の中心を通るように設定される。載置面移動部125により回転移動部124がX方向またはY方向に移動されると、その移動に伴って回転軸A10もX方向またはY方向に移動する。
なお、使用者は、上記の駆動パルスによらず、手動によりステージ121をX方向、Y方向もしくはZ方向に移動させるか、またはθ方向に回転させることも可能である。
図1に示すように、鏡筒部130は、レンズユニット131および撮像部132を含み、ステージ121の上方に配置される。レンズユニット131は、観察対象物Sの種類に応じて他のレンズユニットと交換可能である。レンズユニット131は、対物レンズ131aおよび図示しない複数のレンズにより構成される。対物レンズ131aの光軸A1は、Z方向に平行である。撮像部132は、例えばCMOS(相補性金属酸化膜半導体)カメラを含む。撮像部132は、CCDカメラ等の他のカメラを含んでもよい。
鏡筒部130は、スタンド部110の焦点駆動部113により上保持部112Bに取り付けられる。焦点駆動部113は、ステッピングモータ等の図示しないアクチュエータを含む。焦点駆動部113は、制御基板150から与えられる駆動パルスに基づいて、鏡筒部130を対物レンズ131aの光軸A1の方向に移動させる。これにより、レンズユニット131を通過した光の焦点位置が光軸A1の方向に変化する。
また、上保持部112Bには、回転方向および回転量を受付可能なダイヤル状の操作部114(図2)が設けられる。操作部114が回転操作されると、焦点駆動部113は、その回転量に対応する距離だけ、光軸A1に平行でかつその回転方向に対応する一方向に鏡筒部130を移動させる。これにより、使用者は、手動のような操作性で鏡筒部130を対物レンズ131aの光軸A1の方向に移動させることが可能である。
上記の昇降移動部126、載置面移動部125、回転移動部124および焦点駆動部113の各々には、図示しないエンコーダが設けられる。各エンコーダの出力は、制御基板150を通して処理装置200に与えられる。
投光部140は、対物レンズ131aの光軸A1を取り囲むようにレンズユニット131に一体的に取り付けられる。投光部140の光軸は、対物レンズ131aの光軸A1と略同一である。投光部140からステージ121上の観察対象物Sに光が照射される。観察対象物Sからステージ121の上方に反射された光は、レンズユニット131により集光および結像された後、撮像部132により受光される。撮像部132は、各画素の受光量に対応する画素データに基づいて所定周期で画像データを生成する。
図1に示すように、制御基板150は、例えばスタンド部110の上保持部112B内に設けられ、焦点駆動部113、ステージ駆動部122および撮像部132に接続される。なお、制御基板150は、スタンド部110の下保持部112A内に設けられてもよい。制御基板150は、処理装置200による制御に基づいて焦点駆動部113およびステージ駆動部122の動作を制御する。撮像部132には、処理装置200から制御信号が入力される。また、撮像部132により生成される複数の画像データは、ケーブル203を介して順次処理装置200に与えられる。
[2]処理装置
図1に示すように、処理装置200は、筐体210、光生成部300および制御装置400を含む。筐体210は、光生成部300および制御装置400を収容する。光生成部300は、ファイバユニット201により測定ヘッド100の投光部140に光学的に接続される。ファイバユニット201は、図示しない複数の光ファイバを含む。
光生成部300は、光源310を含む。光源310は、例えばLED(発光ダイオード)である。光源310は、ハロゲンランプ等の他の光源であってもよい。光源310により出射された光は、ファイバユニット201へ入射する。これにより、ファイバユニット201を通して測定ヘッド100の投光部140から光が出射される。
図5は、図1の制御装置400の構成を示すブロック図である。図5に示すように、制御装置400は、制御部410、記憶部420、表示部430および操作部440を含む。制御部410は、例えばCPU(中央演算処理装置)を含む。記憶部420は、例えばROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)またはHDD(ハードディスクドライブ)を含む。本実施の形態においては、制御部410および記憶部420は、パーソナルコンピュータにより実現される。
制御部410は、駆動制御部500および演算処理部600を含む。記憶部420には、制御プログラムが記憶される。また、記憶部420は、種々のデータの処理および制御部410から与えられる種々のデータの保存のために用いられる。駆動制御部500および演算処理部600の機能は、制御部410が記憶部420に記憶される制御プログラムを実行することにより実現される。
ここで、拡大観察装置1においては、上記のX方向、Y方向およびZ方向にそれぞれ平行な3つの軸で形成される装置固有の三次元座標系が定義されている。記憶部420には、拡大観察装置1の三次元座標系における後述する交差位置ip(図6)の座標がさらに記憶されている。交差位置ipの座標情報は、拡大観察装置1の工場出荷時に予め記憶部420に記憶されていてもよい。また、記憶部420に記憶される交差位置ipの座標情報は、拡大観察装置1の使用者により更新可能であってもよい。
駆動制御部500は、投光制御部510、撮像制御部520、焦点制御部530およびステージ制御部540を含む。投光制御部510は、ケーブル202を通して図1の光生成部300に接続され、光生成部300の動作を制御する。撮像制御部520、焦点制御部530およびステージ制御部540は、ケーブル203を通して図1の測定ヘッド100の制御基板150に接続される。撮像制御部520、焦点制御部530およびステージ制御部540は、制御基板150を通して撮像部132、焦点駆動部113およびステージ駆動部122の動作をそれぞれ制御する。また、撮像制御部520は、撮像部132により生成された複数の画像データを順次演算処理部600に与える。
演算処理部600は、例えば撮像制御部520から与えられる画像データに基づく画像を表示部430に表示させるとともに、操作部440から与えられる指令に応答してその指令に対応する処理を行う。演算処理部600において取得される画像データは、記憶部420に記憶される。演算処理部600の詳細については後述する。
表示部430は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)パネルにより構成される。表示部430は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル等の他の表示部により構成されてもよい。表示部430は、記憶部420に記憶された画像データまたは演算処理部600により生成された画像データに基づく画像等を表示する。操作部440は、マウス、タッチパネル、トラックボールまたはジョイスティック等のポインティングデバイスおよびキーボードを含み、制御装置400に後述する観察対象追従処理の開始指令および観察対象追従処理の終了指令を含む各種指令を与えるために使用者により操作される。
[3]鏡筒部の傾斜機構
図6(a)は測定ヘッド100の外観斜視図であり、図6(b)は鏡筒部130が傾斜する状態を示す模式図である。図6(a)に示すように、本例の測定ヘッド100においては、下保持部112Aに取り付けられた傾斜機構101がステージ121の載置面に平行な回転軸A20を中心として上保持部112Bを回転可能に保持する。
上記のように、上保持部112Bには、鏡筒部130が焦点駆動部113を介して取り付けられる。この状態で、対物レンズ131aの光軸A1は回転軸A20に交差する。上保持部112Bが回転軸A20を中心として回転される際には、鏡筒部130も上保持部112Bとともに回転する。この場合、対物レンズ131aの光軸A1と回転軸A20との交差位置ipが一定に維持されつつステージ121の載置面に対する光軸A1の角度が変化する。このように、傾斜機構101によれば、使用者は、上保持部112Bを回転軸A20を中心として回転させることにより、鏡筒部130をステージ121に対して傾斜させることができる。図6(b)においては、傾斜後の鏡筒部130が一点鎖線で示される。
例えば、観察対象物Sの表面上の観察対象部分が上記の交差位置ipにある場合には、鏡筒部130を傾斜させても撮像部132の視野中心が同じ観察対象部分から移動しないユーセントリック関係が維持される。したがって、観察対象物Sの観察対象部分が撮像部132の視野から外れることを防止することができる。
図6(b)に示すように、鏡筒部130は、上記のレンズユニット131および撮像部132に加えて傾斜センサ133を含む。傾斜センサ133は、加速度センサであり、重力加速度に基づいてステージ121の載置面に対する対物レンズ131aの光軸A1の傾斜角度(以下、鏡筒部130の傾斜角度と呼ぶ。)αに対応する角度信号を図1の制御基板150に出力する。
制御基板150は、傾斜センサ133により出力された角度信号を図5のケーブル203および撮像制御部520を介して演算処理部600に与える。演算処理部600は、角度信号に基づいて、鏡筒部130の傾斜角度αを検出する。演算処理部600により検出された傾斜角度αは、図5の表示部430に表示させることができる。
上記の構成によれば、ステージ121の載置面に載置された観察対象物Sの平面観察および傾斜観察を選択的に行うことができる。平面観察時には、対物レンズ131aの光軸A1はZ方向に平行になる。すなわち、鏡筒部130の傾斜角度αが90°になる。一方、傾斜観察時には、鏡筒部130の傾斜角度αは、0°よりも大きく90°よりも小さくなる。または、鏡筒部130の傾斜角度αは、90°よりも大きく180°よりも小さくなる。
[4]演算処理部
図7は、図5の演算処理部600の構成を示すブロック図である。図7に示すように、演算処理部600は、データ生成部610、合焦判定部620、検出部630、傾斜判定部640、傾斜調整部650、回転判定部660、回転調整部670および表示画像更新部680を含む。
データ生成部610は、例えば図5の操作部440からの指令に応答して、図1の撮像部132により生成される複数の画像データの連結処理、ダイナミックレンジの調整処理または深度合成処理等を行う。ダイナミックレンジの調整処理は、撮像部132の受光時間が複数変化された状態で生成された複数の画像データを選択的に合成することにより、ダイナミックレンジが調整された画像データを生成する処理である。また、深度合成処理は、合焦判定部620による後述する合焦度の判定結果に基づいて複数の画像データを画素ごとに選択的に合成することにより、撮像部132の撮像視野に位置する観察対象物Sの全部分に合焦した画像データを生成する処理である。
合焦判定部620は、例えば操作部440からオートフォーカス処理の指令を受けた場合に、取得される画像データについて予め定められた領域の合焦度を判定する。合焦度の判定は、予め定められた領域における輝度値に関する情報に基づいて行われる。また、合焦判定部620は、例えば操作部440から深度合成処理の指令を受けた場合に、複数の画像データについて画素ごとの合焦度を判定する。
検出部630は、載置面移動部125および昇降移動部126に設けられるエンコーダ(リニアエンコーダ)の出力に基づいて、拡大観察装置1の三次元座標系におけるステージ121の載置面上の中心の座標位置を検出する。また、検出部630は、焦点駆動部113に設けられるエンコーダの出力に基づいて、対物レンズ131aの光軸A1上の鏡筒部130の位置を検出する。
さらに、検出部630は、回転移動部124に設けられるエンコーダ(ロータリーエンコーダ)の出力に基づいて、回転軸A10を中心とするステージ121の回転方向の角度位置を検出する。また、検出部630は、図4の距離測定用カメラ190から与えられる画像データに基づいて、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の対物レンズ131aの光軸A1上の距離を検出する。また、検出部630は、図6(b)の傾斜センサ133の出力に基づいて、鏡筒部130の傾斜角度αを検出する。
図5の記憶部420に記憶される制御プログラムは観察対象追従プログラムを含む。演算処理部600の複数の機能部のうち、傾斜判定部640、傾斜調整部650、回転判定部660、回転調整部670および表示画像更新部680は、制御部410が観察対象追従プログラムを実行することにより実現される。
傾斜判定部640は、検出部630により検出される傾斜角度αの変化に基づいて、鏡筒部130の傾斜角度αが変化したか否かを判定する。傾斜調整部650は、鏡筒部130の傾斜角度αが変化した場合に、その変化の前後における撮像部132の視野中心が観察対象物S上の同じ観察対象部分に位置しかつその変化の前後における鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となるように、焦点駆動部113およびステージ駆動部122の制御情報を生成する。また、傾斜調整部650は、生成した制御情報を図5の焦点制御部530およびステージ制御部540にそれぞれ与える。具体的な制御例については後述する。
回転判定部660は、検出部630により検出されるステージ121の角度位置に基づいてステージ121が回転軸A10を中心として回転したか否かを判定する。回転調整部670は、ステージ121が回転した場合に、その回転の前後における撮像部132の視野中心が観察対象物S上の同じ観察対象部分に位置するように、ステージ駆動部122の制御情報を生成する。また、回転調整部670は、生成した制御情報を図5のステージ制御部540に与える。具体的な制御例については後述する。
表示画像更新部680は、鏡筒部130の傾斜角度αが予め定められた角度変化するごとに、撮像部132により取得される画像データに基づいて表示部430に表示される画像を更新する。また、表示画像更新部680は、ステージ121の角度位置が予め定められた角度変化するごとに、撮像部132により取得される画像データに基づいて表示部430に表示される画像を更新する。
[5]鏡筒部の傾斜時における具体的な制御の一例
上記のように、観察対象物Sの観察対象部分が交差位置ipにある場合には、鏡筒部130の傾斜角度αを変化させても撮像部132の視野中心は同じ観察対象部分から移動しない。一方、観察対象物Sの観察対象部分が交差位置ipから外れた位置にあると、鏡筒部130の傾斜角度αを変化させることにより観察対象部分が撮像部132の撮像視野から外れてしまう可能性がある。一つの観察対象部分を観察する場合に、鏡筒部130の傾斜角度αを変化させるごとに観察対象部分を撮像部132の視野中心に合わせる位置決め作業は煩雑である。
そこで、本実施の形態では、上記の観察対象追従プログラムに基づく観察対象追従処理が行われることにより、鏡筒部130の傾斜角度αが変化する場合に、図4のステージ駆動部122および焦点駆動部113が例えば以下のように動作する。図8は、鏡筒部130の傾斜角度αが変化する際の図4のステージ駆動部122および焦点駆動部113の動作の一例を示す模式図である。図8(a)〜(d)の各図では、上段に測定ヘッド100を図6の回転軸A20の方向に見た鏡筒部130およびステージ121の側面図が示され、下段にステージ121の平面図が示される。ステージ121の平面図では、撮像部132の撮像視野fvが点線で示される。
図8(a)に示すように、初期状態として例えば鏡筒部130がステージ121の載置面に対して垂直な状態で観察対象物Sの平面観察が行われている場合を想定する。この状態で、ステージ121上に載置された観察対象物Sの観察対象部分opに鏡筒部130の焦点が合っているものとする。本例では、観察対象部分opは交差位置ipよりも下方にある。鏡筒部130の視野中心が位置する観察対象物S上の点を視野中心点fcと呼ぶ。また、初期状態において、視野中心点fcは観察対象部分opにあり、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離は「D1」であるものとする。ここで、視野中心点fcおよび観察対象部分opの座標位置が、光軸A1の傾斜角度α、光軸A1上の鏡筒部130の位置および鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離に基づいて算出される。
図8(b)に太い実線の矢印で示すように、使用者が図4の上保持部112Bを操作することにより、鏡筒部130をステージ121の載置面に対して傾斜させる。この場合、鏡筒部130の傾斜角度αが変化することにより、視野中心点fcが観察対象部分opからX方向にずれる。
上記のように、拡大観察装置1の三次元座標系における交差位置ipの座標は、予め記憶部420に記憶されている。そこで、図4の昇降移動部126は、図8(c)に白抜きの矢印で示すように、観察対象部分opが初期状態で算出された座標位置から交差位置ipに向かうようにステージ121をZ方向(本例では上方向)に移動させる。撮像部132の視野中心は常に交差位置ipを通る。それにより、観察対象部分opが交差位置ipに到達すると、視野中心点fcが観察対象部分opに位置することになる。このとき、図8(c)に示すように、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離は、初期状態における距離「D1」よりも小さくなる。そのため、この時点では、観察対象部分opに鏡筒部130の焦点が合っていない。
そこで、図4の焦点駆動部113は、図8(d)に白抜きの矢印で示すように、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離が初期状態における距離「D1」と等しくなるように、鏡筒部130を光軸A1の方向に移動させる。
これらの制御により、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後において視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opに位置することになる。また、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後において鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となる。
なお、本例では、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における視野中心点fcが同じ観察対象部分opに位置するように、ステージ121が昇降移動部126によりZ方向に移動されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステージ121がZ方向に移動する代わりに、ステージ121が図4の載置面移動部125によりX方向に移動されてもよい。すなわち、観察対象部分opが光軸A1上に位置するようにステージ121がX方向に移動されてもよい。
また、本例では、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となるように、鏡筒部130が焦点駆動部113により光軸A1の方向に移動されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、鏡筒部130が焦点駆動部113により移動する代わりに、ステージ121が図4の載置面移動部125および昇降移動部126によりX方向およびZ方向に移動されてもよい。
なお、初期状態においては、観察対象物S上の観察対象部分opに鏡筒部130の焦点が合わされていなくてもよい。この場合においても、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差は0に維持される。
[6]鏡筒部の傾斜時における具体的な制御の他の例
図8の例の他、本実施の形態では、上記の観察対象追従処理が行われることにより、鏡筒部130の傾斜角度αが変化した場合に、図4のステージ駆動部122および焦点駆動部113が例えば以下のように動作する。図9および図10は、鏡筒部130の傾斜角度αが変化する際の図4のステージ駆動部122および焦点駆動部113の動作の他の例を示す模式図である。図9(a)〜(c)および図10(a),(b)の各図では、上段に測定ヘッド100を図6の回転軸A20の方向に見た鏡筒部130およびステージ121の側面図が示され、下段にステージ121の平面図が示される。ステージ121の平面図では、撮像部132の撮像視野fvが点線で示される。
本例では、図9(a)に示すように、初期状態として例えば鏡筒部130の傾斜角度αが45°に維持された状態で観察対象物Sの傾斜観察が行われている場合を想定する。この状態で、ステージ121上に載置された観察対象物Sの観察対象部分opに鏡筒部130の焦点が合っているものとする。本例では、観察対象部分opは交差位置ipよりも下方でかつX方向にずれた位置にある。また、初期状態において、視野中心点fcは観察対象部分opにあり、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離は「D1」であるものとする。ここで、視野中心点fcおよび観察対象部分opの座標位置が、光軸A1の傾斜角度α、光軸A1上の鏡筒部130の位置および鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離に基づいて算出される。
図9(b)に太い実線の矢印で示すように、使用者が図4の上保持部112Bを操作することにより、鏡筒部130の傾斜角度αを90°を超える角度まで大きく変化させる。この場合、鏡筒部130の傾斜角度αが変化することにより、視野中心点fcが観察対象部分opからX方向にずれる。
そこで、図4の昇降移動部126および載置面移動部125は、図9(c)および図10(a)に白抜きの矢印で示すように、観察対象部分opが初期状態で算出された座標位置から交差位置ipに向かうようにステージ121をZ方向(本例では上方向)およびX方向に移動させる。それにより、観察対象部分opが交差位置ipに到達すると、視野中心点fcが観察対象部分op上に位置することになる。このとき、図10(a)に示すように、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離は、初期状態における距離「D1」よりも小さくなる。そのため、この時点では、観察対象部分opに鏡筒部130の焦点が合っていない。
そこで、図4の焦点駆動部113は、図10(b)に白抜きの矢印で示すように、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離が初期状態における距離「D1」と等しくなるように、鏡筒部130を光軸A1の方向に移動させる。
これらの制御により、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後において視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opに位置することになる。また、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後において鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となる。
なお、本例では、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における視野中心点fcが同じ観察対象部分opに位置するように、ステージ121が昇降移動部126および載置面移動部125によりZ方向およびX方向に移動されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステージ121がZ方向およびX方向の両方に移動する代わりに、ステージ121が図4の載置面移動部125または昇降移動部126によりX方向またはZ方向のうちいずれか一方にのみ移動されてもよい。すなわち、観察対象部分opが光軸A1上に位置するようにステージ121がX方向またはZ方向のうちいずれか一方にのみ移動されてもよい。
[7]ステージの回転時における具体的な制御の一例
本実施の形態に係る拡大観察装置1においては、図4に示すように、ステージ121を回転軸A10の周りで回転させる回転移動部124が載置面移動部125上に支持される。回転軸A10はステージ121の中心を通るので、載置面移動部125によりステージ121がX方向およびY方向に移動されると、回転軸A10もX方向およびY方向に移動する。また、傾斜観察時には、ステージ121の載置面に対して鏡筒部130が傾斜する。そのため、視野中心点fcを回転軸A10上に位置させることは難しい。
視野中心点fcが回転軸A10からずれた位置にあると、回転移動部124によるステージ121の回転時に観察対象物Sの観察対象部分opが視野中心点fcから外れてしまう。ステージ121を回転させるごとに、観察対象部分opを撮像部132の視野中心に合わせる位置決め作業は煩雑である。
そこで、本実施の形態では、上記の観察対象追従処理が行われることにより、ステージ121が回転軸A10を中心として回転する場合に、図4のステージ駆動部122が例えば以下のように動作する。図11は、ステージ121の回転時における図4のステージ駆動部122の動作の一例を示す模式図である。図11(a)〜(c)の各図では、ステージ121の平面図が示される。ステージ121の平面図では、撮像部132の撮像視野fvが点線で示される。
図11(a)に示すように、初期状態として例えば回転軸A10が対物レンズ131aの光軸A1からずれた位置にある状態で、観察対象物Sの平面観察が行われている場合を想定する。また、初期状態において、視野中心点fcは観察対象部分op上にあるものとする。ここで、視野中心点fcおよび観察対象部分opの座標位置が、光軸A1の傾斜角度α、光軸A1上の鏡筒部130の位置および鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離に基づいて算出される。また、本例では、ステージ121の中心の座標位置が検出される。さらに、視野中心点fcと回転軸A10との間のX方向およびY方向のずれ量が、算出された視野中心点fcの座標位置および検出されたステージ121の中心の座標位置に基づいて算出される。
図11(b)に太い実線の矢印で示すように、使用者が図4の回転移動部124を操作することにより、ステージ121を回転軸A10の周りで回転させる。この場合、初期状態で視野中心点fcおよび観察対象部分opが回転軸A10からずれているので、観察対象物Sの観察対象部分opは視野中心点fcから離れるように移動する。
ここで、ステージ121の回転の前後において、ステージ121の回転軸A10を中心とする回転方向の角度位置が検出される。この場合、初期状態における観察対象部分opの座標位置と、初期状態における視野中心点fcと回転軸A10との間のX方向およびY方向のずれ量と、ステージ121の回転の前後におけるステージ121の角度位置の変化量とに基づいて、ステージ121の回転後の観察対象部分opの座標位置を求めることができる。
そこで、図4の載置面移動部125は、図11(c)に白抜きの矢印で示すように、観察対象部分opが初期状態で算出された座標位置に向かうようにステージ121をX方向およびY方向に移動させる。それにより、観察対象部分opが初期状態で算出された座標位置に到達すると、視野中心点fcが観察対象部分op上に位置することになる。
[8]観察対象追従処理
図12および図13は、観察対象追従処理の一例を示すフローチャートである。以下に示す観察対象追従処理は、制御部410が操作部440からの観察対象追従処理の開始指令に応答して観察対象追従プログラムを実行することにより開始される。また、制御部410は、一度観察対象追従処理の開始指令を受けると、観察対象追従処理の終了指令があるまでの間、以下に示す一連の処理を繰り返す。
図12に示すように、まず制御部410は、傾斜センサ133の出力に基づいて鏡筒部130の傾斜角度αを検出する(ステップS100)。次に、制御部410は、距離測定用カメラ190から与えられる画像データに基づいて、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の対物レンズ131aの光軸A1上の距離を検出する(ステップS101)。
次に、制御部410は、光軸A1の傾斜角度α、光軸A1上の鏡筒部130の位置および鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離に基づいて観察対象物S上の視野中心点fcおよび観察対象部分opの座標位置を算出する(ステップS102)。この時点で視野中心点fcおよび観察対象部分opの座標位置は一致しているものとする。
次に、制御部410は、傾斜センサ133の出力に基づいて鏡筒部130の傾斜角度αを再度検出することにより、検出された傾斜角度αが直前のステップS100で検出された傾斜角度αから予め定められた角度(例えば1°または5°等)変化したか否かを判定する(ステップS103)。
ステップS103で傾斜角度αが変化していないと判定した場合、制御部410は、後述するステップS106の処理に進む。一方、ステップS103で傾斜角度αが変化したと判定した場合、制御部410は、載置面移動部125および昇降移動部126を制御することにより、観察対象部分opを初期状態の座標位置から交差位置ipへ移動させる(ステップS104)。なお、ステップS104の処理は、傾斜角度αの変化が停止してから一定期間経過後のタイミングで行われてもよい。
次に、制御部410は、焦点駆動部113を制御することにより、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離を直前のステップS101で検出された距離に等しくなるように調整する(ステップS105)。これにより、傾斜角度αの変化の前後において鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となる。その後、制御部410は、撮像部132により取得される画像データに基づく画像を表示部430に表示させる(ステップS106)。
次に、制御部410は、回転移動部124のエンコーダの出力に基づいてステージ121の回転方向の角度位置を検出する(ステップS107)。また、制御部410は、ステップS102の処理と同様に、光軸A1の傾斜角度α、光軸A1上の鏡筒部130の位置および鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離に基づいて観察対象物S上の視野中心点fcおよび観察対象部分opの座標位置を算出する(ステップS108)。この時点で視野中心点fcおよび観察対象部分opの座標位置は一致しているものとする。
次に、制御部410は、ステージ121の中心の座標位置を検出するとともに、検出された座標位置とステップS108で算出された観察対象部分opの座標位置とに基づいて、観察対象部分opと回転軸A10との間のX方向およびY方向のずれ量を算出する(ステップS109)。
次に、制御部410は、回転移動部124のエンコーダの出力に基づいてステージ121の回転方向の角度位置を再度検出することにより、検出された角度位置が直前のステップS107で検出された角度位置から予め定められた角度(例えば1°または5°等)変化したか否かを判定する(ステップS110)。
ステップS110でステージ121が回転していないと判定した場合、制御部410は、後述するステップS112の処理に進む。一方、ステップS110でステージ121が回転していると判定した場合、制御部410は、回転後の観察対象部分opの座標位置を算出し、載置面移動部125を制御することにより観察対象部分opを回転前の座標位置へ移動させる(ステップS111)。これにより、ステージ121の回転の前後で視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opに位置することになる。なお、ステップS111の処理は、ステージ121の回転が停止してから一定期間経過後のタイミングで行われてもよい。
次に、制御部410は、ステップS106の処理と同様に、撮像部132により取得される画像データに基づく画像を表示部430に表示させ(ステップS111)、処理を終了する。
[9]効果
(a)本実施の形態に係る拡大観察装置1においては、使用者は、図4の上保持部112Bを操作することにより、鏡筒部130の傾斜角度αを調整することができる。それにより、観察対象物Sを種々の方向から観察することができる。
上記の観察対象追従処理によれば、鏡筒部130の傾斜角度αが変化した場合には、載置面移動部125および昇降移動部126のうち少なくとも一方が制御されることにより、観察対象物Sの観察対象部分opが光軸A1と回転軸A20との交差位置ipに移動する。観察対象部分opが交差位置ipに位置する状態においては、鏡筒部130を傾斜させても視野中心点fcが同じ観察対象部分opから移動しないユーセントリック関係が維持される。この状態で、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となるように、鏡筒部130が焦点駆動部113により光軸A1の方向に移動される。
したがって、使用者は、鏡筒部130の傾斜角度αを調整する際に、視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opから外れないようにするための操作を行う必要がない。また、使用者は、鏡筒部130の傾斜角度αの調整の前後における鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となるようにするための操作を行う必要がない。これらの結果、観察対象物S上の観察対象部分opを種々の方向から容易に観察することが可能になる。
(b)また、一度観察対象部分opが交差位置ipに移動した後は、ユーセントリック関係が維持されるので、鏡筒部130の傾斜角度αが変化しても視野中心点fcが観察対象部分opからずれない。また、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の距離も変化しない。
したがって、鏡筒部130の傾斜角度αが複数回変化する場合には、2回目以降の載置面移動部125および昇降移動部126の動作量が低減される。それにより、載置面移動部125および昇降移動部126の動作に伴う振動の発生が低減される。また、載置面移動部125および昇降移動部126を構成する部品の摩擦による塵埃の発生が抑制される。
(c)本実施の形態に係る拡大観察装置1においては、ステージ121が回転軸A10を中心として回転することにより、観察対象物Sの向きが変化する。したがって、使用者は、ステージ121を回転させることにより観察対象物Sを種々の姿勢で観察することができる。
上記の観察対象追従処理によれば、ステージ121が回転した場合には、ステージ121の回転方向の角度位置に基づいて載置面移動部125が制御される。それにより、ステージ121の回転の前後における視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opに位置する。
したがって、使用者は、ステージ121を回転させる際に、視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opから外れないようにするための操作を行う必要がない。その結果、観察対象物S上の観察対象部分opを種々の姿勢で容易に観察することが可能になる。
(d)上記の観察対象追従処理においては、鏡筒部130の傾斜角度αが変化することにより、載置面移動部125および昇降移動部126のうち少なくとも一方が自動的に動作し、観察対象部分opが交差位置ipに移動する。また、ステージ121が回転することにより載置面移動部125が自動的に動作し、観察対象部分opが回転前の座標位置へ移動する。したがって、煩雑な操作を要することなく観察対象物Sを種々の方向から種々の姿勢でより容易に観察することが可能になる。
(e)さらに、上記の観察対象追従処理によれば、鏡筒部130の傾斜角度αが予め定められた角度変化するごとに表示部430に表示される画像が更新される(図12のステップS106)。また、ステージ121が予め定められた角度回転するごとに表示部430に表示される画像が更新される(図13のステップS112)。したがって、使用者は、拡大観察装置1を操作しつつ、種々の方向から種々の姿勢で観察される観察対象物Sの画像を順次確認することができる。したがって、拡大観察装置1の利便性が向上される。
[10]付加機能
(a)上記の拡大観察装置1においては、操作部440によるオートフォーカス処理の指令に応答してオートフォーカス処理が行われる。オートフォーカス処理では、例えば焦点駆動部113により鏡筒部130が対物レンズ131aの光軸A1の方向に所定範囲移動され、光軸A1の方向の複数の位置で複数の画像データが生成される。また、図7の合焦判定部620により、光軸A1の方向の複数の位置で取得された複数の画像データについて予め定められた領域の合焦度が判定される。その後、複数の合焦度の判定結果に基づいて、焦点駆動部113により光軸A1上の鏡筒部130の位置が調整され、鏡筒部130の焦点が観察対象物S上の観察対象部分opに合わされる。
上記の観察対象追従処理においては、例えば図12および図13のステップS104,S105の処理後、ステップS106の処理中、ステップS106の処理後またはステップS111の処理後、予め定められた一定時間(例えば2秒等)鏡筒部130の傾斜角度αが変化せずかつステージ121が回転しない場合に、自動的にオートフォーカス処理が行われてもよい。
この場合、観察対象物Sを観察する方向または姿勢が変化するごとに鏡筒部130の焦点が観察対象物Sの観察対象部分opに合う。それにより、使用者は、観察対象追従処理中、鏡筒部130の焦点が観察対象物S上の観察対象部分opに合った状態で観察対象部分opを種々の方向から種々の姿勢で観察することが可能になる。
オートフォーカス処理中に鏡筒部130の傾斜角度αが変化した場合に、当該オートフォーカス処理が中断されてもよい。また、オートフォーカス処理中にステージ121が回転した場合に、当該オートフォーカス処理が中断されてもよい。それにより、オートフォーカス処理の処理不良の発生が防止される。
(b)また、上記の拡大観察装置1においては、操作部440による深度合成処理の指令に応答して深度合成処理が行われる。深度合成処理では、例えば焦点駆動部113により鏡筒部130が対物レンズ131aの光軸A1の方向に所定範囲移動され、光軸A1の方向の複数の位置で複数の画像データが生成される。また、図7の合焦判定部620により、光軸A1の方向の複数の位置で生成された複数の画像データについて画素ごとの合焦度が判定される。その後、画素ごとの合焦度の判定結果に基づいて、複数の画像データが画素ごとに選択的に合成され、撮像部132の撮像視野に位置する観察対象物Sの全部分に合焦した画像データが生成される。
上記の観察対象追従処理においては、例えば図12および図13のステップS104,S105の処理後、ステップS106の処理中、ステップS106の処理後またはステップS111の処理後、予め定められた一定時間(例えば2秒等)鏡筒部130の傾斜角度αが変化せずかつステージ121が回転しない場合に、自動的に深度合成処理が行われてもよい。
この場合、観察対象物Sを観察する方向または姿勢が変化するごとに、撮像部132の撮像視野に位置する観察対象物Sの全部分に合焦した画像データが生成され、生成された画像データに基づく画像が表示部430に表示される。それにより、使用者は、観察対象追従処理中、種々の方向から種々の姿勢で観察対象物S上の観察対象部分opをより詳細に観察することが可能になる。
なお、深度合成処理では、光軸A1の方向の複数の位置で生成された複数の画像データと、複数の画像データがそれぞれ生成されたときの鏡筒部130の光軸A1上の位置と、合焦度の判定結果に基づいて観察対象物Sの各部分の高さを示す高さデータが生成されてもよい。この場合、高さデータに基づいて、観察対象物Sの各部分の高さを示す画像が表示部430に表示されてもよい。
深度合成処理中に鏡筒部130の傾斜角度αが変化した場合に、当該深度合成処理が中断されてもよい。また、深度合成処理中にステージ121が回転した場合に、当該深度合成処理が中断されてもよい。それにより、深度合成処理の処理不良の発生が防止される。
[11]他の実施の形態
(a)上記実施の形態では、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opに位置するようにかつその変化の前後における鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となるように、焦点駆動部113およびステージ駆動部122が制御されるが、本発明は上記の例に限定されない。
例えば、傾斜角度αの変化後における視野中心点fcの位置が観察対象物S上の観察対象部分opを含む一定領域内に位置するように、ステージ駆動部122が制御されてもよい。また、傾斜角度αの変化の前後における鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が一定範囲内となるように、焦点駆動部113が制御されてもよい。
これらの場合においても、上記の一定領域が適切に設定されることにより、傾斜角度αの変化の前後で同じ観察対象部分opまたはその近傍に視野中心点fcが保持される。また、上記の一定範囲が適切に設定されることにより、傾斜角度αの変化の前後で鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が大きく変化しない。したがって、上記実施の形態の例とほぼ同様の効果を得ることができる。
(b)上記実施の形態では、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opに位置するようにかつその変化の前後における鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離の差が0となるように、焦点駆動部113およびステージ駆動部122が制御されるが、本発明は上記の例に限定されない。傾斜角度αの変化の前後における撮像部132の視野内の特定の位置が観察対象物S上の観察対象部分opに位置するように、ステージ駆動部122が制御されてもよい。
この場合、図5の操作部440は、使用者により撮像部132の視野内の特定の位置を指定するために操作可能に構成されてもよく、図7の傾斜調整部650は、操作部440により指定された位置を撮像部132の視野内の特定の位置として載置面移動部125および昇降移動部126のうち少なくとも一方を制御してもよい。また、図5の操作部440は、使用者により撮像部132の視野内の特定の位置を指定するために操作可能に構成されてもよく、図7の回転調整部670は、操作部440により指定された位置を撮像部132の視野内の特定の位置として載置面移動部125を制御してもよい。これにより、使用者は操作部440により撮像部132の視野内の所望の位置を撮像部132の視野内の特定の位置として指定することができる。
上記のように、使用者が操作部440により撮像部132の視野内の特定の位置を指定可能とする場合、特定の位置を指定するための操作は図5の表示部430に表示される画像に基づいて行われることが好ましい。
図14は、使用者が撮像部132の視野内の特定の位置を指定する際の表示部430の表示状態の一例を示す図である。図14に示すように、使用者は、例えば操作部440を操作することにより観察対象物Sの画像が表示される表示部430の画面上で、所望の位置TPを指定することができる。この場合、表示部430に表示される画像上の位置TPに対応する撮像部132の視野内の位置が観察対象追従処理の追従対象の位置(撮像部132の視野内の特定の位置)として決定される。
ここで、上記のように撮像部132の視野内の特定の位置が指定された場合には、指定された画像上の位置TPに対応する観察対象物S上の部分(位置)に撮像部132の視野中心が合うように載置面移動部125および昇降移動部126のうち少なくとも一方が制御されてもよい。この場合、使用者により指定された画像上の位置TPに対応する観察対象物S上の部分の画像が表示部430の画面中央に移動する。この状態で、上記実施の形態の例と同様の観察対象追従処理が実行されてもよい。
(c)上記実施の形態では、ステージ121の回転の前後における視野中心点fcが観察対象物S上の同じ観察対象部分opに位置するようにステージ駆動部122が制御されるが、本発明は上記の例に限定されない。
例えば、ステージ121の回転後における視野中心点fcの位置が観察対象物S上の観察対象部分opを含む一定領域内に位置するように、ステージ駆動部122が制御されてもよい。
この場合においても、上記の一定領域が適切に設定されることにより、ステージ121の回転の前後で同じ観察対象部分opまたはその近傍に視野中心点fcが保持される。したがって、上記実施の形態の例とほぼ同様の効果を得ることができる。
(d)上記実施の形態では、載置面移動部125上に回転移動部124が設けられることにより、ステージ121が載置面に平行な方向に移動するときに回転移動部124がステージ121とともに移動するが、本発明はこれに限定されない。上記の例とは逆に、回転移動部124上に載置面移動部125が支持されてもよい。この場合においても、上記の例と同様の観察対象追従処理を行うことができる。
なお、この場合、回転軸A10は、平面観察時に光軸A1に一致するように設定されることが好ましい。このように回転軸A10の位置が設定されることにより、平面観察時に観察対象部分opが視野中心点fcおよび回転軸A10からずれない。したがって、平面観察時に図13のステップS107〜S112の処理が不要となる。
(e)上記実施の形態では、距離測定用カメラ190により生成される画像データに基づいて鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離が検出されるが、本発明はこれに限定されない。鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離を検出するための構成として、距離測定用カメラ190に代えてレーザ変位計等の光学的な距離測定装置が用いられてもよい。
あるいは、撮像部132により生成される画像データに基づいて、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離が検出されてもよい。この場合、拡大観察装置1の部品点数が低減される。
(f)上記実施の形態では、鏡筒部130に設けられる傾斜センサ133の出力に基づいて、鏡筒部130の傾斜角度αが検出されるが、本発明はこれに限定されない。上記のように、距離測定用カメラ190は、鏡筒部130の一部が撮像視野内に含まれるように保持部112に取り付けられている。そこで、距離測定用カメラ190により生成される画像データに基づいて、鏡筒部130の傾斜角度αが算出されてもよい。この場合、拡大観察装置1の部品点数の増加が抑制される。
例えば、ステージ121の載置面上に予め傾斜角度αの検出用の指標を設け、当該指標と鏡筒部130とが撮像視野内に位置するように距離測定用カメラ190を設ける。それにより、距離測定用カメラ190により生成される画像データに基づいて、指標と鏡筒部130との間の距離を算出することにより、算出された距離に基づいて鏡筒部130の傾斜角度αを検出してもよい。あるいは、載置面上の指標に限らず、観察対象物Sに顕著な特徴部分があればその特徴部分と鏡筒部130との間の距離を算出することにより、算出された距離に基づいて鏡筒部130の傾斜角度αを検出してもよい。
(g)上記実施の形態では、観察対象追従処理において鏡筒部130の傾斜角度αが変化した場合に、観察対象物Sの観察対象部分opが交差位置ipに移動する。それにより、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における同じ観察対象部分opの画像データを取得することができる。この場合、制御部410は、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後の画像データに基づいて観察対象部分opのパターンマッチングを行うことにより、回転軸A20および交差位置ipが正確な座標位置にあるか否かの確認処理を実行してもよい。さらに、制御部410は、確認結果に基づいて、各種設定の校正または各種処理の補正を行ってもよい。
(h)上記実施の形態では、回転軸A10がステージ121の中心を通るので、ステージ121の中心の座標位置が検出されることにより回転軸A10の位置も検出される。それにより、観察対象追従処理のステップS109において、観察対象部分opと回転軸A10との間のX方向およびY方向のずれ量が算出される。本発明はこれに限定されない。
上記のように、観察対象追従処理においては、ステージ121が回転する際に、ステージ121の回転の前後における同じ観察対象部分opの画像データを取得することができる。この場合、制御部410は、ステージ121の回転の前後の画像データに基づいて観察対象部分opのパターンマッチングを行うことにより、回転軸A10の座標位置を算出してもよい。また、制御部410は、算出結果に基づいて、観察対象部分opと回転軸A10との間のX方向およびY方向のずれ量を算出してもよい。
(i)上記実施の形態では、観察対象追従処理において鏡筒部130の傾斜角度αが変化したか否かが判定される。そこで、鏡筒部130の傾斜角度αが変化したときに観察対象部分opが交差位置ipに自動的に移動され、鏡筒部130と観察対象物Sとの間の光軸A1上の距離が自動的に調整されるが、本発明はこれに限定されない。
制御部410は、鏡筒部130の傾斜角度αの調整を開始する指示と、鏡筒部130の傾斜角度αの調整を終了する指示とを受付可能に構成されてもよい。この場合、制御部410は、例えば傾斜角度αの調整を開始する指示に応答して図12のステップS100〜S102の処理を行い、傾斜角度αの調整を終了する指示に応答して図12のステップS104〜S106の処理を行ってもよい。
(j)上記実施の形態では、観察対象追従処理においてステージ121が回転したか否かが判定される。そこで、ステージ121が回転したときに観察対象部分opがステージ121の回転前の座標位置に自動的に移動されるが、本発明はこれに限定されない。
制御部410は、ステージ121の回転を開始する指示と、ステージ121の回転を終了する指示とを受付可能に構成されてもよい。この場合、制御部410は、例えばステージ121の回転を開始する指示に応答して図13のステップS107〜S109の処理を行い、ステージ121の回転を終了する指示に応答して図13のステップS111,S112の処理を行ってもよい。
(k)上記実施の形態では、傾斜機構101は使用者の手動操作により鏡筒部130の傾斜角度αを調整可能に構成されるが、本発明はこれに限定されない。傾斜機構101に鏡筒部130の傾斜角度αを変化させる駆動部が設けられるとともに、操作部440が鏡筒部130の傾斜角度αの調整指令を入力可能に構成されてもよい。
(l)上記実施の形態では、鏡筒部130の一部およびステージ装置120が距離測定用カメラ190の撮像視野内に含まれるように配置されている。そのため、距離測定用カメラ190により生成される画像データによれば、鏡筒部130と観察対象物Sおよびその周辺部材との位置関係を把握することが可能になる。そこで、制御部410は、距離測定用カメラ190により生成される画像データに基づいて、鏡筒部130と観察対象物Sおよびその周辺部材とが衝突しないように、ステージ駆動部122および焦点駆動部113を制御してもよい。
(m)操作部440は、使用者が観察対象物Sの所望の位置に観察対象部分opを設定する指令を入力可能に構成されてもよい。また、制御部410は、使用者による観察対象部分opの設定指令を受付可能に構成されてもよい。これらの場合、制御部410は、例えば使用者による観察対象部分opの設定指令に応答して視野中心点fcが観察対象部分opに位置するようにステージ駆動部122を制御してもよい。それにより、拡大観察装置1の利便性がより向上する。
(n)上記実施の形態では、ステージ121の載置面上の中心の座標位置は、載置面移動部125および昇降移動部126に設けられるエンコーダの出力に基づいて検出されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、載置面移動部125および昇降移動部126の各々に、エンコーダに代えてリミットセンサを設けてもよい。この場合、載置面移動部125および昇降移動部126に設けられるリミットセンサの出力に基づいてステージ121の載置面上の中心の座標位置を検出してもよい。
(o)上記実施の形態では、焦点駆動部113は、鏡筒部130を対物レンズ131aの光軸A1の方向に移動可能に支持するが、本発明はこれに限定されない。焦点駆動部113は、鏡筒部130を対物レンズ131aの光軸A1の方向に移動可能に支持するとともに、鏡筒部130を対物レンズ131aの光軸A1の周りで回転可能に支持してもよい。
この場合、鏡筒部130が対物レンズ131aの光軸A1の周りで回転されることにより複数の角度位置に変更される場合に、鏡筒部130の回転角度位置に応じて、ステージ121の移動方向が変更されてもよい。例えば、鏡筒部130の傾斜角度αの変化の前後における視野中心点fcが同じ観察対象部分opに位置するようにステージ121の移動を制御する際に、ステージ121がZ方向およびX方向に加えてY方向に移動されてもよい。
[12]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態では、観察対象物Sが観察対象物の例であり、ステージ121がステージの例であり、対物レンズ131aが対物レンズの例であり、鏡筒部130が撮像部の例であり、対物レンズ131aの光軸A1が対物レンズの光軸の例であり、回転軸A20が第1の回転軸の例であり、交差位置ipが交差位置の例である。
また、下保持部112A、上保持部112Bおよび傾斜機構101を含む保持部112が保持部の例であり、載置面移動部125が載置面移動部の例であり、焦点駆動部113および昇降移動部126が相対距離変化部の例であり、鏡筒部130の傾斜角度αが載置面に対する光軸の角度の例であり、傾斜センサ133および検出部630が光軸角度検出部の例である。
また、距離測定用カメラ190および検出部630が観察距離検出部の例であり、観察対象物S上の観察対象部分opが観察対象物上の一部領域の例であり、傾斜調整部650が傾斜調整部の例であり、拡大観察装置1が拡大観察装置の例であり、昇降移動部126がステージ昇降部の例であり、焦点駆動部113が撮像部昇降部の例であり、表示部430が表示部の例である。
また、表示画像更新部680が画像更新部の例であり、傾斜判定部640が傾斜判定部の例であり、回転軸A10が第2の回転軸の例であり、回転移動部124が載置面回転部の例であり、回転移動部124のエンコーダおよび検出部630が回転検出部の例であり、回転調整部670が回転調整部の例であり、回転判定部660が回転判定部の例であり、傾斜センサ133が加速度センサの例であり、距離測定用カメラ190がカメラの例であり、制御部410が処理部の例であり、操作部440が対象指定操作部および処理指令操作部の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。