JP6800442B2 - 三次元形状計測システム - Google Patents
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Description
表面形状の高精度な測定法としては、フィゾー干渉計測法が最も一般的である。フィゾー干渉計による形状測定法は、3Dトポグラフィを一度に得ることができ、分解能もナノメータのレベルが実現可能である。しかし、基本的に基準原器(参照平面や参照球面など)との差分測定であるため、測定の絶対精度は基準原器の精度によって制限され、ナノメータレベルの絶対精度を実現することは容易ではない。
一方、近年、高精度な形状測定法として、物体表面の局部傾斜角度測定を用いた手法が注目されている。この手法は、物体表面の局所的な角度の変化を逐次測定していき、得られた角度変化データを積分することにより形状を得るというシンプルな原理に基づく測定法であり、参照面を必要としない、大口径の形状も測定可能といった特徴を有する。
世界的には、ドイツ物理工学研究所(PTB)などが先行して開発を進めており、ナノレベルの測定精度が既に達成されている。
SDPでは、図1に示すように、オートコリメータ(AC1)の測定光を、エアスライド式可変ステージに保持したペンタミラーの反射を介し、図示していない測定対象(SUT)の直前にエアスライドで保持したアパーチャーを通過して、測定対象の表面に照射する。
次に、ペンタミラーを移動ステージにより走査(スキャニング)し、測定対象表面の局部傾斜角度分布を得る。このとき、ペンタミラーを用いることで、移動ステージのピッチング誤差をキャンセルすることができる。得られた局部傾斜角度分布を積分することにより、測定対象表面の二次元形状(ライン形状)が得られる。
また、特許文献1に記載された形状計測装置では、複数のライン形状を測定することにより、二次元的な形状計測ができると記載されているが、異なるライン形状を得るために用いる移動機構の運動誤差により、各ライン形状間の相対位置関係を特定できず、各ライン形状間を正確に結合し、三次元形状を得る事が困難である。
ただし、より高精度に三次元形状を計測するためには、測定試料を第2の方向に走査する際に発生する角度ずれを補正する必要があるため、回転誤差補正システムを導入するとともに、対象表面の円周形状測定により、接続する際の誤差伝搬を抑制する接続アルゴリズムを採用することで、最終的には、測定範囲φ800mmで、平面から数m程度の曲率をもつ表面形状(自由曲面)を測定精度±5nm(世界最高精度)で3Dトポグラフィ測定が可能となる。
この三次元形状測定システムにおいて、測定対象(SUT)を支持するサンプルベースプレート1から上方の部分は、前述のSDPと同様の構造を採用している。
すなわち、第1オートコリメータ(AC1)2により、測定光をエアスライドで保持したペンタミラー3の反射を介し、図示していない測定対象4の直前にエアスライドで保持したアパーチャーを通過して、測定対象4の表面に照射する。
次に、図示しない移動ステージにより、ペンタミラー3を測定対象4の直径方向(第1の方向)に走査し、測定対象表面の局部傾斜角度分布(1番目の直径方向傾斜角度分布)を得る。
このとき、ペンタミラー3を用いることで、エアスライド式移動ステージのピッチング誤差をキャンセルすることができる。そして、得られた局部傾斜角度分布を積分することにより、測定対象4の表面において、第1の方向の二次元形状(ライン形状)が得られる。
なお、ペンタミラーの移動量は、図示していないリニアスケールまたはレーザ測長機等を用いて計測できるようになっている。
この回転テーブル6は、中空の円筒体7に固定されており、ベルト、歯車等の伝導機構を介して、回転テーブル6あるいは円筒体7に連結された電動モータにより、一体的に回転駆動および位置決めされるようになっている。なお、回転テーブル6の回転角度は、図示していない内蔵するロータリエンコーダにより、回転角度が計測されるようになっている。
回転テーブル6の裏面には、第1ミラー11が装着されており、第2オートコリメータ(AC2)12から照射される光ビームが、第2ミラー13により垂直方向に反射され、支持プレート8の開口部、円筒体7の中空部を介して、第1ミラー11に反射することで、回転テーブル6の傾斜角度を計測できるようなっている。
そこで、この実施例では、回転テーブル6の裏面に第1ミラー11を設置し、第2のオートコリメータ12により回転時に発生する回転テーブル6のアンギュラー振れを読み取り、アンギュラー振れを低減するように、傾斜角度調整用アクチュエータ9をリアルタイムに制御するようにしている。
さらに、第1オートコリメータ2による計測結果と、第2オートコリメータ12による計測結果を同期させ、第2オートコリメータ12による計測結果に基づいて、第1オートコリメータ2による計測結果を補正するようにしてもよい。この場合、必ずしも、傾斜角度調整用アクチュエータ9を設ける必要はない。
ここでは、ペンタミラー3を走査させるためのエアスライド式移動ステージの運動軸をX軸、重力方向(垂直方向)をZ軸、XZと直交する軸をY軸とする。
(1)第1オートコリメータ2の光軸調整
第1オートコリメータ2の測定光ベクトルがX軸と一致するように、第1オートコリメータ2のY軸まわり、およびZ軸まわりの角度を調整する。
次に、サンプルベースプレート1に調整用の平面基板を設置する。このとき、調整用の平面基板の法線方向が、重力方向(Z軸)と一致するように、調整用平面基板を調整する。そして、第1オートコリメータ2を用いて調整用平面基板の傾きを測定する。このとき、第1オートコリメータ2の直交する測定2軸をH軸とV軸とする。ペンタミラー3をZ軸まわりに回転したとき、第1オートコリメータ2のV軸の値が変化しないように、第1オートコリメータ2の光軸周りの回転を調整する。
(Ralf D Geckeler, Optimal use of pentaprisms in highly accurate deflectometric scanning, measurement science and technology, 18 (2007), 115-125参照)
ペンタミラー3のX軸周り、Z軸周りの傾きを調整する。(上記論文参照)
回転テーブル6の回転中心座標をOr(Xo,Yo)とすると、回転中心のX軸成分X0を、第1ペンタミラー3を走査して、エアスライド式移動ステージの運動軸方向の位置が回転テーブル6の回転中心座標のX座標と一致する地点をX軸座標の原点とする。
そして、このペンタミラーの位置(Xo)において、第1オートコリメータ2の光軸が回転テーブル6の回転中心を通るように、回転テーブル6のY軸方向を調整する。
この時のY座標をX軸座標の原点とする。X座標、Y座標の調整は、回転テーブル6、第1ペンタミラー2ばかりでなく、アパーチャーを調整することによって行ってもよい。
第1ミラー11は、図示していないX軸およびY軸まわりに回転可能なチルトステージを用いて、回転テーブル6の中心部裏面に装着している。第1ミラー11は、反射面と装着面が平行となる平行平面基板とし、第1オートコリメータ2側の法線ベクトルをN1、第2オートコリメータ12側のミラー面の法線ベクトルをN2とする。N1と回転テーブル6の回転軸が一致するように第1ミラー11を調整する。
第2ミラー13で反射した照射光の光軸と第1ミラー11の法線ベクトルN2が一致するように、第2オートコリメータ12の光軸を調整する。これにより、平行平面基板 (N1とN2の平行度)の精度で、第1オートコリメータ2と第2オートコリメータ12の光軸平行度が一致するようになる。
ここで、第2オートコリメータ12の直交する測定2軸をH2、V2とする。
この時、傾斜角度調整用アクチュエータ9を用いて、第1ミラー11をY軸周りまたはX軸周りに回転させ、このときに発生する、第1オートコリメータ2のV成分とH成分の変化量と、第2オートコリメータ12のV成分とH成分の変化量がそれぞれ一致するように、第2オートコリメータ12の測定光軸周りに回転させ、調整を行う。
以上の操作により、計測装置の初期調整が終了したら、サンプルベースプレート1上に測定対象4を設置する。
基本的には、次のように、予め設定した測定対象4表面の評価範囲の中心が回転テーブル6の回転中心と一致するように設置する。なお、評価範囲は、円形でも矩形でも自由に設定することができる。
(7−1)測定対象4が円形試料の場合
回転テーブル6上に設置した測定対象4の外周をダイヤルゲージや電気マイクロメータ等を用いて測定し、偏心がなくなるよう、測定対象4の載置位置を調整する。
(7−2)測定対象4が矩形試料の場合
第1オートコリメータ2を事前に一方向に走査し、測定可能な左端と右端の座標を読み取り、その中心座標が回転テーブル6の回転中心と一致するように調整する。次に、回転テーブル6を90°回転させ、この作業を再度繰り返す。なお、第1オートコリメータ2に代えて、ダイヤルゲージや電気マイクロメータを用いてもよい。
なお、測定対象4表面の評価範囲が中心からずれている場合には、これに合わせて、測定対象4表面の評価範囲を回転テーブル6の中心からずらせばよい。
以下、一例として測定対象4が円形試料の場合について説明する。
まず、エアスライド式移動ステージによりペンタミラー3を移動させ、第1オートコリメータ2を円形試料の中心を通る直径方向にスキャンさせ、図3に示すように、測定対象4の外縁14の内側にある評価範囲15の一端15aから他端15bまでのライン形状を計測する。
これが、第1の方向(直径方向)の二次元形状を計測する第1の二次元形状計測機構に相当する。
本実施例では、22.5°毎に8本のライン形状を計測しており、一つの直径方向スキャンが終了したら、回転テーブル6を22.5°回転させ、回転角度毎に8回のライン形状計測を繰り返し、それぞれ記憶装置に記録する。
そこで、各ライン形状を接続するため、次に、円周方向の形状計測を行う。
すなわち、ペンタミラー3を回転中心から、評価範囲15の他端15bに対応する半径位置に移動させた後、回転テーブル6を回転させ、ペンタミラー3の直径方向の走査軸と直交する円周方向に測定対象表面の局部傾斜角度を計測する。これが、測定対象物の特定位置で、第1の方向(直径方向)と交差する第2の方向(円周方向)に相対的にスキャンさせ、測定対象物の表面における第2の方向の二次元形状を計測する第2の二次元形状計測機構に対応する。
なお、本実施例では、評価範囲の最外径の円周方向の形状を計測しているが、円周測定の半径は、ライン形状と交差する範囲で、任意に選択してよい。
そこで、第2のオートコリメータ12、回転テーブル6の裏面に設置した第1ミラー11により、回転ステージのアンギュラー振れがあっても、第1ミラー11が傾かないように傾斜角度調整用アクチュエータ9によりフィードバック制御を行うことにより、円周形状の計測誤差をキャンセルすることができる。
そこで、図4に示すように、前述と同様、ライン形状測定において、AC1の測定角度が変化しないように、傾斜角度調整用アクチュエータ9によりフィードバック制御を行いつつ、ハーフミラー16から切り出されたペンタミラー3からの反射光を、回転ミラー17の反射をレンズ18を介してポジションセンサ19に入射させる。
回転ミラー17の回転角度は、回転テーブル6に内蔵された高精度ロータリエンコーダによって計測し、これにより、測定範囲±10度、分解能0.001角度秒、精度±0.01角度秒程度の広い計測範囲(高ダイナミックレンジ)を有する角度測定を実現することができ、球面や自由曲面ミラーなど、数m〜数百m程度の曲率をもつ測定対象であっても、三次元表面形状を高精度に計測することが可能となる。
また、第1の方向、第2の方向にスキャンを行う際、回転テーブル6と第1オートコリメータ2の相対的な移動を可能にするものであれば、両者のいずれを移動させてもよい。
(1)省スペース化
放射状のライン測定に基づくため、必要最小限のスペースで、大型の測定対象物にも対応可能である。
(2)アンギュラー振れ補正用ミラーの形状誤差の影響を受けない
第2のオートコリメータ12の測定光は、回転テーブルのアンギュラー振れを補正する第1ミラー11の照射位置が変化しないため、第1ミラー11の形状誤差の影響を受けずにアンギュラー振れを補正することができる。また、アンギュラー振れを機械的に補正するフィードバック制御システムを導入することにより、補正に用いられる第2のオートコリメータ12は、中心付近の計測しか用いられないので、オートコリメータの2次元的な均一性、非線形性も問題とならない。
(3)円周測定に基づく高精度なライン形状接続が可能
第2の方向のスキャンによる円周形状の測定は、直線形状と同様に分解能サブnm、精度±1nmオーダであり、試料外周部(半径数百mmオーダー)の円周形状を高精度(ナノメートルオーダー)に測定できることから、各ライン形状間の相対角度関係を高精度に決定することができる。
3:ペンタミラー 4:測定対象
5:傾斜角調整装置 6:回転テーブル
7:円筒体 8:支持プレート
9:傾斜角度調整用アクチュエータ 10:基台
11:第1ミラー 12:第2オートコリメータ
13:第2ミラー 14:測定対象4の外縁
15:評価範囲 16:ハーフミラー−
17:回転ミラー 18:レンズ
19:ポジションセンサ
Claims (6)
- ペンタミラーを介して測定対象物の計測を行い、1つからなる第1のオートコリメータと、
前記測定対象物の複数位置の各々から、前記ペンタミラーと前記測定対象物との少なくとも一方を他方に対し第1の方向に走査させ、前記測定対象物の表面における前記第1の方向の二次元形状を前記第1のオートコリメータに計測させる第1の二次元形状計測機構と、
前記測定対象物の特定位置から、前記ペンタミラーと前記測定対象物との少なくとも一方を他方に対し、前記第1の方向と交差する第2の方向に走査させ、前記測定対象物の表面における前記第2の方向の二次元形状を前記第1のオートコリメータに計測させる第2の二次元形状計測機構とを備え、
前記第1の方向の二次元形状と前記第2の方向の二次元形状とを、両者の交差点で連結することにより、前記測定対象物の三次元形状を得ることを特徴とする三次元形状計測システム。 - 前記第2の二次元形状計測機構は、前記測定対象物を載置する支持台を回転テーブルとし、前記第2の方向に走査する際、前記ペンタミラーを固定し、前記回転テーブルを回転させるものであることを特徴とする請求項1に記載された三次元形状計測システム。
- 前記回転テーブルの測定対象物載置面に対向する裏面中央部に取り付けられたミラーにより、前記回転テーブルの傾斜角度を計測する第2のオートコリメータをさらに有することを特徴とする請求項2に記載された三次元形状計測システム。
- 前記回転テーブルの測定対象物載置面に対向する裏面に、直交2軸方向に配置された2台の水準器をさらに有することを特徴とする請求項2に記載された3次元形状計測システム。
- 前記回転テーブルは傾斜角度調整用アクチュエータを介して基台に固定されており、前記第2のオートコリメータの計測値に基づいて、前記回転テーブルが水平を維持するよう、前記傾斜角度調整用アクチュエータをフィードバック制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項3に記載された三次元形状計測システム。
- 前記第2のオートコリメータの計測値に基づいてアンギュラー振れを計測し、前記第2の方向の二次元形状を補正することを特徴とする請求項3に記載された三次元形状計測システム。
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