以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態にかかるエンジンシステム100の構成を示す概略図である。図1に示すように、車両に搭載されるエンジンシステム100には、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータでなるECU(Engine Control Unit)10が設けられ、ECU10によりエンジンE全体が統括制御される。ただし、以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
エンジンシステム100を構成するエンジンEは、シリンダブロック102と、クランクケース104と、シリンダヘッド106と、ヘッドカバー108と、オイルパン110とを含んで構成される。クランクケース104は、シリンダブロック102と一体形成されている。シリンダヘッド106は、シリンダブロック102におけるクランクケース104とは反対側に接合される。ヘッドカバー108は、シリンダヘッド106におけるシリンダブロック102とは反対側に接合される。オイルパン110は、クランクケース104におけるシリンダブロック102とは反対側に接合される。
シリンダブロック102には、複数のシリンダボア112が形成されており、複数のシリンダボア112には、それぞれピストン114が摺動可能にピストンロッド116に支持されている。そして、エンジンEでは、シリンダボア112と、シリンダヘッド106と、シリンダボア112内で摺動可能に支持されているピストン114の冠面とによって囲まれた空間が燃焼室118として形成される。
また、エンジンEでは、クランクケース104およびオイルパン110に囲まれた空間がクランク室120として形成される。クランク室120内には、クランクシャフト122が回転可能に支持されており、ピストン114がピストンロッド116を介してクランクシャフト122に連結される。
シリンダヘッド106には、吸気ポート124および排気ポート126が燃焼室118に連通するように設けられる。吸気ポート124と燃焼室118との間には、吸気弁128の先端が位置し、排気ポート126と燃焼室118との間には、排気弁130の先端が位置している。
また、エンジンEでは、シリンダヘッド106およびヘッドカバー108に囲まれた空間がカム室132として形成されており、カム室132内には、吸気弁用カム134および排気弁用カム136が設けられる。吸気弁用カム134は、吸気弁128の他端に当接されており、回転することで吸気弁128を吸気ポート124のバルブシートに対して当接および離隔させる。これにより、吸気弁128は、吸気ポート124と燃焼室118との間を開閉する。排気弁用カム136は、排気弁130の他端に当接されており、回転することで排気弁130を排気ポート126のバルブシートに対して当接および離隔させる。これにより、排気弁130は、排気ポート126と燃焼室118との間を開閉する。
吸気ポート124の上流側には、吸気マニホールドを含む吸気流路140が連通される。吸気流路140内には、スロットル弁142、および、スロットル弁142より上流側にインタークーラ144、インタークーラ144より上流側にエアクリーナ146が設けられる。スロットル弁142は、アクセル(図示せず)の開度に応じてアクチュエータにより開閉駆動される。インタークーラ144は、後述するコンプレッサ184によって圧縮された空気を冷却する。エアクリーナ146にて浄化された空気は、吸気流路140、吸気ポート124を通じて燃焼室118に吸入される。
シリンダヘッド106には、燃料噴射口が燃焼室118に開口するようにインジェクタ150が設けられるとともに、先端が燃焼室118内に位置するように点火プラグ152が設けられる。インジェクタ150から燃焼室118に噴射された燃料は、吸気ポート124から燃焼室118に供給された空気と混ざり混合気となる。そして、所定のタイミングで点火プラグ152が点火され、燃焼室118内で生成された混合気に含まれる燃料が燃焼される。かかる燃焼により、ピストン114が往復運動を行い、その往復運動が、ピストンロッド116を通じてクランクシャフト122の回転運動に変換される。
排気ポート126の下流側には、排気マニホールドを含む排気流路160が連通され、排気流路160内に触媒162が設けられる。燃焼室118で生じた燃焼後の排気ガスは、排気ポート126、排気流路160を通じて外部へ排出される。したがって、排気ガスは、排気流路160の通過過程で、触媒162によって浄化された後、不図示のマフラを通じて外部に排出されることとなる。
EGR(Exhaust Gas Recirculation)流路170は、排気流路160における触媒162の上流側の流路と、吸気流路140におけるスロットル弁142の下流側の流路とを連通させる流路である。EGR流路170は、排気流路160を流通する排気ガスの一部を吸気流路140に還流させる(以下、還流させた排気ガスを「EGRガス」と称する)。
EGR流路170には、EGRクーラ172が設けられており、EGRクーラ172で冷却されたEGRガスは、吸気流路140、吸気ポート124を通じて燃焼室118に還流する。EGRバルブ170aは、EGR流路170におけるEGRクーラ172の下流側に設けられ、EGR流路170の流路幅を調整することで、EGR流路170を流れるEGRガスの流量を制御する。
過給機180は、タービン182と、コンプレッサ184と、タービン182およびコンプレッサ184を一体回転可能に接続するタービンシャフト186とを含んで構成される。タービン182は、排気流路160における触媒162の上流側に設けられ、排気ポート126から排出される排気ガスによって回転する。コンプレッサ184は、吸気流路140におけるエアクリーナ146と、インタークーラ144との間に設けられ、タービン182の回転に伴って回転し、エアクリーナ146で塵や埃などの不純物(ダスト)が除去された吸気を圧縮して下流に供給する。過給機バイパス路188は、排気流路160におけるタービン182の上流側から分岐され、タービン182の下流側に再接続される流路である。過給機バイパス路188には、ウェイストゲートバルブ188aが設けられる。
また、クランクケース104には、クランク室120に連通するオイルセパレータ190a、190bが設けられる。オイルセパレータ190a、190bは、シリンダボア112およびピストン114の隙間を介してクランク室120に流出したブローバイガスから、混入したオイルを分離する。
また、エンジンシステム100には、オイルセパレータ190aと、吸気流路140における吸気ポート124およびスロットル弁142間とを連通する第1ブローバイガス流路192aが設けられる。また、エンジンシステム100には、オイルセパレータ190bと、吸気流路140におけるエアクリーナ146と、コンプレッサ184との間を連通する第2ブローバイガス流路192bが設けられる。第1ブローバイガス流路192a、第2ブローバイガス流路192bは、ブローバイガスを吸気流路140へ還流させる。
過給機180が駆動していない場合、吸気流路140におけるスロットル弁142の下流側はクランク室120に対して負圧になる。このため、ブローバイガスは、オイルセパレータ190a、第1ブローバイガス流路192aを通じて吸気流路140に還流されることとなる。一方、過給機180が駆動している場合、コンプレッサ184より上流側が負圧になる。このため、ブローバイガスは、コンプレッサ184の負圧によって、オイルセパレータ190b、第2ブローバイガス流路192bから吸引されて、吸気流路140に還流されることとなる。なお、第1ブローバイガス流路192aには、逆止弁(PCVバルブ)192cが設けられ、吸気流路140からオイルセパレータ190aへの吸気の逆流を防止している。
また、エンジンシステム100には、カム室132と、吸気流路140におけるインタークーラ144およびスロットル弁142間とを連通する掃気流路194が設けられる。さらに、シリンダブロック102およびシリンダヘッド106には、クランク室120とカム室132とを連通する通気孔196が形成される。掃気流路194に流入した空気は、カム室132および通気孔196を介してクランク室120に導かれ、クランク室120に溜まったブローバイガスを掃気する。
また、本実施形態のエンジンシステム100には、バイパス路148と、酸素富化ユニット200と、窒素排出路240と、バルブ242とを含んで構成される吸気装置が設けられている。バイパス路148は、吸気流路140から分岐されるとともに、分岐箇所Aの下流側の接続箇所Bに再接続される流路である。そして、バイパス路148には、酸素富化空気および窒素富化空気を生成する酸素富化ユニット200が設けられている。
酸素富化ユニット200は、エアウォーマ210と、酸素富化デバイス220と、断熱部230とを含んで構成される。エアウォーマ210は、エアクリーナ146で浄化された空気を加熱するとともに、空気から水(水蒸気)を除去する。本実施形態において、エアウォーマ210は、酸素富化デバイス220を構成する酸素富化膜の適用温度範囲(酸素と窒素との分離を効率的に行うことができる温度範囲)内となるように空気を加熱するとともに、適用湿度範囲(酸素と窒素との分離を効率的に行うことができる湿度範囲)内となるように空気から水を除去する。エアウォーマ210を備える構成により、酸素富化デバイス220において効率よく酸素富化空気を生成することができる。
酸素富化デバイス220は、中空糸状のポリイミド樹脂で構成され、空気から酸素を選択的に分離する酸素富化膜と、酸素富化膜に空気を導入する空気導入部222と、酸素富化膜から酸素富化空気を送出する酸素送出部224と、酸素富化膜から窒素富化空気を送出する窒素送出部226とを含んで構成される。酸素富化デバイス220の空気導入部222はバイパス路148の上流側(分岐箇所A側)に接続され、酸素送出部224はバイパス路148の下流側(接続箇所B側)に接続される。また、酸素富化ユニット200の窒素送出部226は後述する窒素排出路240に接続される。したがって、酸素富化空気は、酸素送出部224からバイパス路148(吸気流路140、燃焼室118)に導かれ、窒素富化空気は、窒素送出部226から窒素排出路240(排気流路160)に導かれることとなる。
酸素富化膜をポリイミド樹脂で構成することにより、空気中の酸素濃度を99%以上とすることができる。このように、酸素富化デバイス220によって分離された酸素富化空気(酸素濃度99%以上)は、バイパス路148を通じて吸気流路140に供給される。
したがって、エンジンシステム100では、酸素濃度が高い空気が燃焼室118に供給されることとなる。このため、エンジンEの燃焼効率が向上して、燃焼室118における燃焼温度を上昇させることができる。これにより、触媒162の暖機を早期に行うことができ、触媒162の活性温度への到達時間を短縮することが可能となる。また、燃焼室118における燃焼温度を上昇させることができるため、同一の温度の排気ガスを得るために必要な燃料を削減することが可能となる。したがって、燃費を向上させることができる。さらに、酸素富化デバイス220が、酸素濃度が99%以上の酸素富化空気を生成することができる。酸素濃度が80%を超えると、空気中の窒素量が酸化反応の支配要因となり、NOx生成反応が抑制されるため、燃焼室118におけるNOxの増加を抑制することが可能となる。
断熱部230は、酸素富化デバイス220を囲繞するとともに、少なくとも酸素富化デバイス220から外部への熱の流出を抑制する。断熱部230を備える構成により、外部への放熱による温度低下を抑制し、酸素富化デバイス220を適用温度範囲に維持することが可能となる。
また、本実施形態において、バイパス路148は、吸気流路140におけるエアクリーナ146(詳細には、インタークーラ144)の下流側であってスロットル弁142の上流側から分岐される。つまり分岐箇所Aはエアクリーナ146とスロットル弁142との間に配される。また、バイパス路148は、吸気流路140におけるスロットル弁142の下流側であってEGR流路170、第1ブローバイガス流路192aの上流側に再接続される。つまり、接続箇所Bは、スロットル弁142とEGR流路170との間に配される。
このように、バイパス路148が、スロットル弁142の上流側から分岐されるとともに、スロットル弁142の下流側に再接続される構成により、分岐箇所Aと接続箇所Bとの間に差圧を生じさせることができる。具体的に説明すると、アイドル時または低負荷時等、過給機180が実質的に吸気を過給していないときは、スロットル弁142の下流側が負圧になる。このため、分岐箇所Aをスロットル弁142の上流側とし、接続箇所Bをスロットル弁142の下流側とすることにより、ポンプ等の吸引装置を備えずとも、酸素富化デバイス220の空気導入部222(バイパス路148)に空気を導くとともに、酸素送出部224を通じて酸素富化空気を吸引することができる。
さらに、バイパス路148が、吸気流路140におけるエアクリーナ146とスロットル弁142との間から分岐される構成により、酸素富化ユニット200にダストが混入する事態を回避することができ、酸素富化デバイス220の破損を防止することが可能となる。
また、バイパス路148が、第1ブローバイガス流路192aの上流側に再接続される構成により、酸素富化ユニット200にオイルやダストが混入する事態を回避することができ、酸素富化デバイス220の破損を防止することが可能となる。
さらに、バイパス路148は、EGR流路170の上流側に再接続される。これにより、酸素富化ユニット200にオイルやダストが混入する事態を回避することができ、酸素富化デバイス220の破損を防止することが可能となる。
窒素排出路240は、酸素富化ユニット200の窒素送出部226に接続されるとともに、排気流路160における触媒162の下流側に接続される。これにより、分岐箇所Aと接続箇所C(窒素排出路240における排気流路160との接続箇所)との間に差圧を生じさせることができる。具体的に説明すると、排気流路160は、排気動圧により負圧が発生する環境下にある。また、負圧が発生しない環境下であっても、排気流動による吸引力が生じる。このため、分岐箇所Aをスロットル弁142の上流側とし、接続箇所Cを排気流路160とすることにより、ポンプ等の吸引装置を備えずとも、酸素富化デバイス220の空気導入部222(バイパス路148)に空気を導くとともに、窒素送出部226を通じて窒素富化空気を吸引することができる。
バルブ242は、窒素排出路240に設けられており、後述するバルブ制御部16によって開度が調整される。バルブ制御部16によるバルブ242の開度調整については、後に詳述する。
また、エンジンシステム100には、スロットル弁142と吸気弁128の間に吸入空気圧(吸気流路140の圧力)を検出する吸気圧センサ250が設けられる。また、エンジンシステム100には、シリンダヘッド106から排出された冷却水の水温を検出する水温センサ252が設けられる。さらに、エンジンシステム100には、クランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ254が設けられる。また、エンジンシステム100には、シリンダブロック102の側面にノックの有無を検出するノックセンサ256が設けられる。さらに、エンジンシステム100には、窒素排出路240におけるバルブ242の下流側に、排気圧(排気流路160の圧力)を検出する排気圧センサ258が設けられる。また、エンジンシステム100には、排気流路160におけるタービン182と触媒162との間に、排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ260、排気ガスの温度を検出する排気温度センサ262が設けられる。さらに、エンジンシステム100には、車両の速度を検出する車速センサ264が設けられる。
これら各センサ250〜264は、ECU10に接続されており、検出値を示す信号をECU10に出力する。
ECU10は、各センサ250〜264から出力された信号を取得してエンジンEを制御する。ECU10は、エンジンEを制御する際、信号取得部12、駆動制御部14、バルブ制御部16として機能する。なお、バルブ制御部16は、上記吸気装置の一部として機能する。
信号取得部12は、各センサ250〜264が検出した値を示す信号を取得する。駆動制御部14は、信号取得部12が取得した信号に基づいて、スロットル弁用アクチュエータ(図示せず)、インジェクタ150、点火プラグ152、ウェイストゲートバルブ188aを制御する。
バルブ制御部16は、水温センサ252から取得した冷却水の水温を示す信号、クランク角センサ254から取得したクランク角を示す信号、車速センサ264から取得した車両の速度(車速)を示す信号、吸気圧センサ250から取得した吸気流路140の圧力を示す信号、ノックセンサ256から取得したノックの発生有無を示す信号、排気温度センサ262から取得した排気ガスの温度を示す信号、空燃比センサ260から取得した排気ガスの空燃比を示す信号、排気圧センサ258から取得した排気流路160の圧力を示す信号に基づいて、バルブ242の開度を調整する。
図2は、バルブ制御部16によるバルブ開度調整処理の流れを説明するフローチャートである。なお、本実施形態において、このバルブ開度調整処理は、所定の時間間隔毎に生じる割込によって繰り返し遂行される。
(開条件成立判定処理:ステップS110)
バルブ制御部16は、所定の開条件が成立しているか否かを判定する。その結果、開条件が成立していると判定した場合にはステップS120に処理を移し、開条件が不成立である(成立していない)と判定した場合にはステップS130に処理を移す。
ここで、開条件の成立は、エンジンEを冷却する冷却水の水温が所定の水温閾値未満であり、クランク角を示す信号に基づいて導出されるエンジンEの回転数が所定の回転数閾値未満であり、エンジンEが搭載される車両の速度が所定の車速閾値未満であり、吸気流路140の圧力が所定の吸気圧力閾値未満であることである。なお、水温閾値は、例えば50℃である。また、回転数閾値は、例えば2000rpmである。また、車速閾値は、例えば15km/hである。また、吸気圧力閾値は、例えば−0mmHgである。
開条件成立判定処理ステップS110を遂行することにより、エンジンEの温度が低く、かつ、エンジンEが低負荷であるか否か、つまり、触媒162の温度が活性温度未満であり、かつ、触媒162を活性温度まで上昇させるために時間がかかるか否かを判定することができる。
(バルブ開弁処理:ステップS120)
バルブ制御部16は、バルブ242を開弁する(開度を最大にする)。これにより、酸素富化ユニット200の酸素富化膜に空気(吸気)が導かれ、酸素送出部224、バイパス路148を介して、酸素富化ガスが燃焼室118(吸気流路140)に供給されることになる。したがって、燃焼室118における燃焼温度を上昇させることができ、触媒162の暖機を早期に行うことが可能となる。
(バルブ開閉判定処理:ステップS130)
バルブ制御部16は、バルブ242が開弁しているか否かを判定する。その結果、開弁していると判定した場合にはステップS140に処理を移し、開弁していない(閉弁している)と判定した場合には当該バルブ開度調整処理を終了する。
(フェイル制御条件成立判定処理:ステップS140)
バルブ制御部16は、所定のフェイル制御条件が成立しているか否かを判定する。その結果、フェイル制御条件が成立していると判定した場合にはステップS150に処理を移し、フェイル制御条件が不成立である(成立していない)と判定した場合にはステップS160に処理を移す。
ここで、フェイル制御条件の成立は、ノッキングが発生したこと、排気流路160の排気ガスの温度が所定の排気温度閾値以上であること、排気ガスの空燃比が所定の空燃比範囲外であること、および、排気流路160の圧力が所定の排気圧力閾値以上であることのうち、少なくともいずれか1である。なお、排気温度閾値は、例えば950℃である。また、空燃比範囲は、例えば理論空燃比である。排気圧力閾値は、例えば0MPaG(大気圧)である。
フェイル制御条件成立判定処理ステップS140を遂行することにより、酸素富化空気を燃焼室118に供給したことに基づいて生じるエンジンEの不具合の発生有無を判定することができる。
(バルブ閉弁処理:ステップS150)
バルブ制御部16は、バルブ242を閉弁して(開度を0にして)、当該バルブ開度調整処理を終了する。これにより、酸素富化ユニット200の酸素富化膜への空気の供給が遮断され、燃焼室118への酸素富化ガスの供給が停止される。したがって、酸素富化空気が燃焼室118に供給されることによって生じる燃焼温度の上昇を回避することができ、エンジンEの不具合を抑制することが可能となる。
例えば、酸素富化空気が燃焼室118に供給されると、燃焼室118内において自己着火が促進されて、ノッキングが発生するおそれがある。ノッキングが発生すると、騒音が生じたり、エンジンEが破損したりするおそれがある。このため、上記フェイル制御条件成立判定処理ステップS140において、ノッキングが発生したことをフェイル制御条件の成立とする。そして、フェイル制御条件が成立した場合にバルブ242を閉弁することにより、酸素富化空気が燃焼室118に供給されたことに基づいて生じるノッキングを防止することができる。
また、例えば、酸素富化空気が燃焼室118に供給されると、燃焼室118において燃焼温度が上昇し、排気ガスの温度が上昇する。排気ガスの温度が高すぎると、排気流路160を構成する部品や触媒162が溶損してしまうおそれがある。このため、上記フェイル制御条件成立判定処理ステップS140において、排気ガスの温度が排気温度閾値以上であることをフェイル制御条件の成立とする。そして、フェイル制御条件が成立した場合にバルブ242を閉弁することにより、燃焼室118への酸素富化空気の供給を停止することができる。これにより、燃焼室118の燃焼温度を低減することができ、排気ガスの温度を低下させることが可能となる。したがって、排気流路160を構成する部品や触媒162が溶損してしまう事態を回避することができる。
また、例えば、酸素富化空気が燃焼室118に供給されると、余剰の酸素が排気流路160に流出する。そうすると、排気ガス中に残留した燃料が、排気流路160や触媒162において燃焼してしまう場合がある(アフターファイヤー)。この場合、排気流路160を構成する部品や触媒162が溶損してしまうおそれがある。このため、上記フェイル制御条件成立判定処理ステップS140において、排気ガスの空燃比が空燃比範囲外である(排気ガスの空燃比が空燃比範囲(例えば、理論空燃比)よりもリッチまたはリーンである)ことをフェイル制御条件の成立とする。そして、フェイル制御条件が成立した場合にバルブ242を閉弁することにより、燃焼室118への酸素富化空気の供給を停止することができる。これにより、排気流路160への余剰の酸素の流出を防止することができ、排気流路160や触媒162における残留した燃料の燃焼を抑制することが可能となる。したがって、排気流路160を構成する部品や触媒162が溶損してしまう事態を回避することができる。
また、アフターファイヤーが生じると、排気流路160の圧力が上昇する。そうすると、排気流路160から窒素排出路240に排気ガスが逆流し、酸素富化デバイス220が破損(熱害により溶損)するおそれがある。このため、上記フェイル制御条件成立判定処理ステップS140において、排気流路160の圧力が排気圧力閾値以上であることをフェイル制御条件の成立とする。そして、フェイル制御条件が成立した場合にバルブ242を閉弁することにより、燃焼室118への酸素富化空気の供給を停止することができる。これにより、排気流路160への余剰の酸素の流出を防止することができ、排気流路160の想定外の圧力上昇(アフターファイヤー)を防止することが可能となる。したがって、排気流路160から窒素排出路240(酸素富化デバイス220)への排気ガスの逆流を防止することができ、酸素富化デバイス220の破損を回避することが可能となる。
(バルブ開度調整処理:ステップS160)
バルブ制御部16は、冷却水の水温、エンジンEの回転数、車速、吸気圧力に基づいて、バルブ242の開度を調整し、当該バルブ開度調整処理を終了する。具体的に説明すると、バルブ制御部16は、水温センサ252によって検出された冷却水の水温が上記水温閾値以上になると、水温の上昇に伴ってバルブ242の開度を小さくする。また、バルブ制御部16は、エンジンEの回転数が上記回転数閾値以上になると、回転数の上昇に伴ってバルブ242の開度を小さくする。さらに、バルブ制御部16は、車速センサ264によって検出された車速が上記車速閾値以上になると、車速の上昇に伴ってバルブ242の開度を小さくする。また、バルブ制御部16は、吸気流路140の圧力が上記吸気圧力閾値以上になると、吸気流路140の圧力の上昇に伴ってバルブ242の開度を小さくする。
バルブ開度調整処理ステップS160を遂行することにより、燃焼室118内の酸素濃度を、運転に適した濃度に制御することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態にかかる吸気装置によれば、上記開条件が成立した場合に、バルブ制御部16がバルブ242を開弁することにより、触媒162を早期に暖機することができる。また、上記フェイル制御条件が成立した場合に、バルブ制御部16がバルブ242を閉弁することにより、エンジンEの不具合を抑制することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、バルブ制御部16が判定する開条件の成立が、エンジンEを冷却する冷却水の水温が所定の水温閾値未満であり、エンジンEの回転数が所定の回転数閾値未満であり、エンジンEが搭載される車両の速度が所定の車速閾値未満であり、吸気流路140の圧力が所定の吸気圧力閾値未満であることである場合を例に挙げて説明した。しかし、開条件の成立は、エンジンEを冷却する冷却水の水温が所定の水温閾値未満であること、エンジンEの回転数が所定の回転数閾値未満であること、エンジンEが搭載される車両の速度が所定の車速閾値未満であること、および、吸気流路140の圧力が所定の吸気圧力閾値未満であることのうち、いずれか1であってもよい。
また、上記実施形態において、バルブ制御部16が判定するフェイル制御条件の成立が、ノッキングが発生したこと、排気流路160の排気ガスの温度が所定の排気温度閾値以上であること、排気ガスの空燃比が所定の空燃比範囲外であること、および、排気流路160の圧力が所定の排気圧力閾値以上であることのうち、少なくともいずれか1である場合について説明した。しかし、フェイル制御条件の成立は、ノッキングが発生したこと、排気流路160の排気ガスの温度が所定の排気温度閾値以上であること、排気ガスの空燃比が所定の空燃比範囲外であること、および、排気流路160の圧力が所定の排気圧力閾値以上であることのうち、いずれか複数であってもよい。
また、上記実施形態において、バルブ制御部16がバルブ開度調整処理ステップS160を遂行する構成を例に挙げて説明した。しかし、バルブ制御部16は、バルブ開度調整処理ステップS160を遂行せずともよい。また、バルブ制御部16は、冷却水の水温の上昇、エンジンEの回転数の上昇、車速の上昇、および、吸気流路140の圧力の上昇のいずれか1または複数に伴ってバルブ242の開度を小さくしてもよい。
また、上記実施形態において、吸気装置が吸気圧センサ250を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、吸気圧センサ250は必須の構成ではない。吸気圧センサ250を備えない場合、バルブ制御部16は、例えば、ウェイストゲートバルブ188aが全開の場合(つまり、過給していない場合)に、吸気流路の圧力が所定の吸気圧力閾値未満であると判定してもよい。
また、上記実施形態において、吸気装置が空燃比センサ260を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、空燃比センサ260に代えて、酸素センサを排気流路160に設けるとしてもよい。この場合、インジェクタ150から噴射される燃料の噴射量と、酸素センサが検出した排気ガス中の酸素量とに基づいて、排気ガスの空燃比を導出するとよい。
また、上記実施形態において、酸素富化ユニット200の酸素富化膜が中空糸状のポリイミド樹脂で構成される場合を例に挙げて説明した。しかし、酸素富化ユニット200は、空気から酸素富化空気を生成することができれば、構成や材質に限定はない。例えば、酸素富化ユニットは、ゼオライトを含んで構成されるとしてもよい。
また、上記実施形態において、酸素富化ユニット200がエアウォーマ210を備える構成を例に挙げて説明したが、エアウォーマ210は必須の構成ではない。例えば、エアウォーマ210に代えて、水除去装置と、酸素富化デバイス220を加熱するヒータを備えてもよい。
また、上記実施形態において、バイパス路148が、スロットル弁142の上流側であってエアクリーナ146の下流側から分岐されるとともに、スロットル弁142の下流側であって第1ブローバイガス流路192aおよびEGR流路170の上流側に再接続される構成を例に挙げて説明した。しかし、バイパス路148は、吸気流路140から分岐されるとともに、分岐箇所Aの下流側に再接続されれば、分岐箇所および接続箇所に限定はない。例えば、空気導入部222に空気を送り込む装置や、酸素送出部224から酸素富化空気を吸引する装置を備える場合、バイパス路148は、少なくとも吸気流路140から分岐されるとともに、分岐箇所Aの下流側に再接続されればよい。
また、例えば、空気導入部222の上流側、酸素送出部224、窒素送出部226の下流側にフィルタを備える場合、バイパス路148の分岐箇所Aおよび接続箇所Bに限定はなく、バイパス路148は、少なくとも吸気流路140から分岐されるとともに、分岐箇所Aの下流側に再接続されればよい。
また、上記実施形態において、酸素富化ユニット200が断熱部230を備える構成を例に挙げて説明したが、断熱部230は必須の構成ではない。