本発明の実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各層の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、透明導電体の一実施形態を示す模式断面図である。透明導電体100は、透明樹脂基材10と、第1の金属酸化物層12と、耐エッチング層18と、金属層16と、第2の金属酸化物層14とがこの順に配置された積層構造を有する。
本明細書における「透明」とは、可視光が透過することを意味しており、光をある程度散乱してもよい。光の散乱度合いについては、透明導電体100の用途によって要求されるレベルが異なる。一般に半透明といわれるような光の散乱があるものも、本明細書における「透明」の概念に含まれる。光の散乱度合いは小さい方が好ましく、透明性は高い方が好ましい。透明導電体100全体の可視光透過率は、例えば60%以上であり、好ましくは65%以上である。この可視光透過率は、市販の分光測色計を用いて測定される。
透明樹脂基材10は、特に限定されず、可撓性を有する有機樹脂フィルムであってもよい。有機樹脂フィルムは有機樹脂シートであってもよい。有機樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、並びにトリアセチルセルロースフィルム等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルムが好ましい。
透明樹脂基材10は、剛性の観点からは厚い方が好ましい。一方、透明樹脂基材10は、透明導電体100を薄膜化する観点からは薄い方が好ましい。このような観点から、透明樹脂基材10の厚みは、例えば20〜200μmである。透明樹脂基材の屈折率は、光学特性に優れる透明導電体とする観点から、例えば1.50〜1.70である。なお、本明細書における屈折率は、λ=633nm、温度20℃の条件下で測定される値である。透明樹脂基材10は、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、及びオゾン処理からなる群より選ばれる少なくとも一つの表面処理が施されたものであってもよい。
透明樹脂基材10が有機樹脂フィルムであることによって、透明導電体100を柔軟性に優れたものとすることができる。これによって、透明導電体100を、タッチパネル用途の透明導電体、フレキシブルな有機EL照明等の有機デバイス用の透明電極、及び電磁波シールド等に好適に用いることできる。
第1の金属酸化物層12は、金属酸化物を含む透明の層である。第1の金属酸化物層12は、光学特性の調整、及び金属層16の保護といった機能を兼ね備える。第1の金属酸化物層12は酸性エッチング液に溶解する層であってもよい。第1の金属酸化物層12の組成は特に限定されない。一例として、第1の金属酸化物層12は、酸化亜鉛、酸化インジウム、及び酸化スズの4成分を主成分として含有してもよい。当該4成分の割合は、例えば95mol%以上であってもよく、97mol%以上であってもよい。第1の金属酸化物層12は、金属酸化物のみからなる層であってもよい。
酸化亜鉛は例えばZnOであり、酸化インジウムは例えばIn2O3である。酸化チタンは例えばTiO2であり、酸化スズは例えばSnO2である。上記各金属酸化物における金属原子と酸素原子の比は、化学量論比からずれていてもよい。また、酸化数が異なる別の酸化物を含んでいてもよい。
第1の金属酸化物層12は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズを、それぞれZnO、In2O3、TiO2及びSnO2に換算したときに、ZnO、In2O3、TiO2及びSnO2の合計に対するZnOの含有量は、20〜80mol%であることが好ましく、30〜78mol%であることがより好ましい。同様に換算したときに、ZnO、In2O3、TiO2及びSnO2の合計に対するIn2O3の含有量は、優れた透明性と高い導電性と高い耐食性を両立する観点から、10〜35mol%であることが好ましく、13〜30mol%であることがより好ましい。
同様に換算したときに、ZnO、In2O3、TiO2及びSnO2の合計に対するTiO2の含有量は、高い透明性と優れた耐食性を両立する観点から、5〜15mol%であることが好ましく、7〜13mol%であることがより好ましい。同様に換算したときに、ZnO、In2O3、TiO2及びSnO2の合計に対するSnO2の含有量は40mol%以下であることが好ましく、5〜30mol%であることがより好ましい。第1の金属酸化物層12は、導電性が低くてもよく、絶縁体であってもよい。この場合、透明導電体100の導電性は、金属層16及び第2の金属酸化物層14によって担われてもよい。
耐エッチング層18は、第1の金属酸化物層12よりも酸性エッチング液に溶解し難い透明の層である。酸性エッチング液としては、リン酸、酢酸、及び硝酸を含むPAN系エッチング液が挙げられる。耐エッチング層18は、第2の金属酸化物層14及び金属層16よりも酸性エッチング液に溶解し難い。
透明樹脂基材10上に耐エッチング層18(厚み:70nm)を形成して得られる二層構造の積層体を、上記PAN系エッチング液に浸漬する前と、45℃で10分間浸漬した後に可視光透過率を測定したときに、可視光透過率の差の絶対値が例えば3%以下である。ここでいう可視光透過率差は、450〜650nmの波長範囲において、10nmの波長間隔で測定される透過率の平均値の差である。上記波長範囲における透過率は市販の測定装置を用いて測定することができる。
耐エッチング層18は、酸性エッチング液に対して全く溶けなくてもよい。耐エッチング層18は、例えば第1の金属酸化物層12とは異なる組成を有する金属酸化物層であってもよく、窒化珪素等の金属窒化物層であってもよい。なお、本明細書では、珪素は金属元素に該当し、珪素化合物は金属化合物に該当する。
耐エッチング層18が金属酸化物層である場合、耐エッチング層18は、構成元素としてNbを有する酸化物を含有することが好ましい。Nbを有する酸化物を含有することによって、耐エッチング層18を酸性エッチング液に一層溶解し難くすることができる。酸化物としてはNb2O5等の酸化ニオブ、及び、構成元素としてNbとNb以外の金属元素とを有する複合酸化物が挙げられる。耐エッチング層18におけるNbの含有量は、Nb2O5に換算して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。耐エッチング層18は、金属酸化物のみからなる層であってもよい。
耐エッチング層18は、酸化ニオブと酸化チタンを含有してもよい。酸化ニオブは例えばNb2O5であり、酸化チタンは例えばTiO2である。酸化ニオブと酸化チタンを含有することによって、耐エッチング層18を、酸性エッチング液とアルカリ性エッチング液の両方に溶解し難くすることができる。酸性エッチング液に一層溶解し難くする観点から、酸化ニオブと酸化チタンをそれぞれNb2O5とTiO2に換算したときに、TiO2とNb2O5の合計を基準として、Nb2O5の含有量は好ましく20mol%以上であり、より好ましくは30mol%以上である。一方、アルカリ性エッチング液にも溶解し難くする観点から、同基準においてNb2O5の含有量は、好ましくは80mol%以下であり、より好ましくは70mol%以下である。上記各金属酸化物における金属原子と酸素原子の比は、化学量論比からずれていてもよい。また、酸化数が異なる別の酸化物を含んでいてもよい。
耐エッチング層18は、酸化スズを含有してもよい。これによって、酸性エッチング液及びアルカリ性エッチング液の両方への不溶性を一層向上することができる。このような観点から、酸化スズの含有量は、SnO2換算で、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。ただし、酸化スズの含有量が過剰になると、高温高湿環境下に保存した場合に、金属層16のマイグレーションが発生しやすくなる傾向にある。これは、耐エッチング層18のSnと金属層16中の銀合金との反応が進行するためと考えられる。このような観点から、酸化スズの含有量は、SnO2換算で、好ましくは60質量%以下である。
耐エッチング層18が金属窒化物層である場合、耐エッチング層18は、窒化珪素を含有することが好ましい。このとき、耐エッチング層18は、少量の酸化珪素を含有していてもよい。ただし、酸性エッチング液に一層溶解し難くする観点から、金属窒化物(窒化珪素)のみから構成されることが好ましい。
耐エッチング層18の厚みは、パターニングプロセスによって導電部分と絶縁部分とを形成したときに、導電パターンの形状に由来する濃淡模様の発生を一層十分に抑制する観点から、好ましくは0.4nm以上であり、より好ましくは0.7nm以上である。耐エッチング層18の厚みは、十分に優れた透明性を維持する観点及び光学設計の容易性の観点から、例えば、10nm以下であってもよく、7nm以下であってもよい。
金属層16は、主成分として銀合金を含む層である。金属層16は、酸性エッチング液に溶解する層である。金属層16が高い透明性と導電性を有することによって、透明導電体100の可視光透過率を十分高くしつつ表面抵抗を十分に低くすることができる。銀合金の構成元素としては、Agと、Pd、Cu、Nd、In、Sn、及びSbから選ばれる少なくとも1種と、が挙げられる。銀合金の例としては、Ag−Pd、Ag−Cu、Ag−Pd−Cu、Ag−Nd−Cu、Ag−In−Sn、及びAg−Sn−Sbが挙げられる。銀合金は、Agを主成分として含有し、副成分として上述の各金属を含むものが好ましい。金属層16は、金属のみからなる層であってもよい。
銀以外の金属の含有量は、耐食性と透明性を一層向上させる観点から、金属層16を基準として例えば0.5〜5質量%である。銀合金は銀以外の金属としてPdを含有することが好ましい。これによって、高温高湿環境下における耐食性を一層向上することができる。銀合金におけるPdの含有量は例えば1質量%以上であってもよい。
金属層16の厚さは、例えば15〜25nmであってもよい。金属層16の厚さが小さくなり過ぎると、金属層16の連続性が損なわれて透明導電体100の表面抵抗値が高くなる傾向にある。一方、金属層16の厚さが大きくなりすぎると、可視光透過率が高くなる傾向にある。
金属層16は、透明導電体100の全光線透過率及び表面抵抗を調整する機能を有している。金属層16は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点、及び成膜速度が速い点で、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ターゲットとしては、金属ターゲットを用いることができる。
第2の金属酸化物層14は、金属酸化物を含む透明の層である。第2の金属酸化物層14は、光学特性の調整、金属層16の保護、導電性、エッチング性及び耐アルカリ性の確保といった機能を兼ね備える。第2の金属酸化物層14の組成は特に限定されず、第1の金属酸化物層12と同じであってもよい。一例として、第2の金属酸化物層14は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズの4成分を、主成分として含有してもよい。各成分の含有割合の好ましい範囲は、第1の金属酸化物層12と同じである。第2の金属酸化物層14は、主成分として上記4成分を含むことによって、導電性と透明性に一層優れる。第2の金属酸化物層14は、金属酸化物のみからなる層であってもよい。
透明導電体100の導電性は、金属層16及び第2の金属酸化物層14によって担われてもよい。したがって、例えば、第1の金属酸化物層12よりも第2の金属酸化物層14の酸化スズの含有量を高くすることによって、第2の金属酸化物層14の導電性を向上させてもよい。
第1の金属酸化物層12及び第2の金属酸化物層14は、アモルファスであることが好ましい。これによって、第1の金属酸化物層12及び第2の金属酸化物層14を水蒸気が通過することを一層抑制され、高温高湿下における耐久性を向上することができる。第1の金属酸化物層12及び第2の金属酸化物層14は、例えば、組成を調整することによってアモルファスにすることができる。
第1の金属酸化物層12と第2の金属酸化物層14とは、厚み、構造、及び組成の点で、同一であってもよく、異なっていてもよい。
第1の金属酸化物層12及び第2の金属酸化物層14の厚みは、透明性を一層向上する観点から、例えば60nm以下である。一方、耐食性を一層向上するとともに生産性向上の観点から、上記厚さは、例えば20nm以上である。
第1の金属酸化物層12及び第2の金属酸化物層14は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点、及び、成膜速度が速い点で、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ターゲットとしては、酸化物ターゲット、金属又は半金属ターゲットを用いることができる。
第2の金属酸化物層14の上には配線電極等が設けられてもよい。金属層16を導通する電流は、第2の金属酸化物層14の上に設けられる配線電極等から、第2の金属酸化物層14を経由して、第2の金属酸化物層14の上に設けられる別の配線電極等に導かれる。このため、第2の金属酸化物層14は、高い導電性を有することが好ましい。このような観点から、第2の金属酸化物層14単層での表面抵抗値は、例えば1.0×10+7Ω/sq.以下であることが好ましく、5.0×10+6Ω/sq.以下であることがより好ましい。
透明導電体100における第2の金属酸化物層14の少なくとも一部、及び金属層16の少なくとも一部は、エッチング等によって除去されていてもよい。この場合、金属層16及び第2の金属酸化物層14によって、導電パターンが形成される。
図2は、透明導電体の別の実施形態を示す模式断面図である。透明導電体102は、フィルム状の透明樹脂基材10、第1の金属酸化物層12、耐エッチング層18、金属層16及び第2の金属酸化物層14が積層された第1積層部21と、透明樹脂基材10、第1の金属酸化物層12、及び耐エッチング層18がこの順に積層された第2積層部22とを備える。第1積層部21と第2積層部22は、これらの積層方向(図2の上下方向)とは垂直方向(図2の左右方向)に隣接して設けられている。第1積層部21と第2積層部22は、上記垂直方向に沿って、交互に並ぶように設けられていてもよい。
第1積層部21は、例えばパターニングプロセスによって形成される導電部分である。第1積層部21の積層方向における可視光透過率T1は、例えば60%以上であってもよく、65%以上であってもよい。本明細書における可視光透過率T1は、450〜650nmの波長範囲において、10nmの波長間隔で測定される透過率の平均値である。上記波長範囲における透過率は市販の測定装置を用いて測定することができる。
第2積層部22は、例えばパターニングプロセスによって形成される、導電体を有しない絶縁部分となる。第2積層部22の可視光透過率T2は、60%以上であってもよく、65%以上であってもよい。本明細書における可視光透過率T2は、450〜650nmの波長範囲において、10nmの波長間隔で測定される透過率の平均値である。上記波長範囲における透過率は市販の測定装置を用いて測定することができる。
可視光透過率差、すなわち、T1とT2の差の絶対値ΔT=|T2−T1|は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは12%以下であり、更に好ましくは10%以下である。絶対値ΔTを小さくすることによって、導電パターンの形状に由来する濃淡模様の発生を十分に抑制することができる。絶対値ΔTの下限は特に限定されず、例えば、製造上の簡易性の観点から3%であってもよい。
透明導電体102は、図1の透明導電体100のパターニングを行うことによって製造することができる。この製造方法の一例を以下に説明する。図1の透明導電体100の第2の金属酸化物層14の表面にフォトレジストを塗布して加熱しレジスト膜を形成する。所定のパターンを有するフォトマスクを介して紫外線をレジスト膜に照射して一部を感光する。その後、現像液を用いて感光した部分を溶解して除去し、第2の金属酸化物層14の表面の一部を露出させる(ポジ型)。
酸性エッチング液を用いて第2の金属酸化物層14の当該一部とその下側にある金属層16を溶解して除去する。このとき、金属層16の下側にある耐エッチング層18は、酸性エッチング液に対して第1の金属酸化物層12よりも難溶であることから、殆ど溶解しない。このため、第1の金属酸化物層12がエッチングによって溶解することを十分に抑制することができる。第2の金属酸化物層14及び金属層16を溶解して第2積層部22を形成した後、レジスト膜を除去する。このようにして、透明導電体102を得ることができる。なお、上述の手順ではポジ型のフォトレジストを用いたときの例を説明したが、これに限定されず、ネガ型のフォトレジストを用いてもよい。
透明導電体102の製造方法、つまり、透明導電体100のパターニングの方法は、上述のフォトレジストを用いた方法に限定されず、例えば印刷法であってもよい。印刷法の場合、図1の透明導電体100の第2の金属酸化物層14の表面の一部に、インクジェット印刷、スクリーン印刷、又はグラビア印刷等の方法によって、パターン形状に応じてインクを印刷する。印刷後、酸性エッチング液を用いてインクが印刷されていない部分のエッチングを行う。これによって、第2の金属酸化物層14及び金属層16を溶解して第2積層部22を形成する。その後、インクを除去することによって透明導電体102を得ることができる。
透明導電体100及び透明導電体102は、各層の間に任意の層を備えていてもよい。例えば、透明樹脂基材10と第1の金属酸化物層12の間にハードコート層を備えていてもよい。ハードコート層は、透明樹脂基材10を挟むように対をなして設けられてもよい。
ハードコート層は、例えば、樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物と当該樹脂硬化物中に分散されたフィラーを含有する。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物、及び電子線硬化性樹脂組成物から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、及びメラミン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエネルギー線反応性基を有する硬化性化合物を含む組成物である。なお、(メタ)アクリロイル基なる表記は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む意味である。硬化性化合物は、1つの分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上のエネルギー線反応性基を含む多官能モノマー又はオリゴマーを含んでいることが好ましい。
硬化性化合物は、好ましくはアクリル系モノマーを含有する。アクリル系モノマーとしては、具体的には、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及び3−(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ただし、必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば、ウレタン変性アクリレート、及びエポキシ変性アクリレート等も挙げられる。
硬化性化合物として、ビニル基を有する化合物を用いてもよい。ビニル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、及び、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテル等が挙げられる。ただし、必ずしもこれらに限定されるものではない。
樹脂組成物は、硬化性化合物を紫外線によって硬化させる場合、光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、種々のものを用いることができる。例えば、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、及びチオキサントン系等の公知の化合物から適宜選択すればよい。より具体的には、ダロキュア1173、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア907(以上商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製)、及び、KAYACURE DETX−S(商品名、日本化薬(株)製)が挙げられる。
光重合開始剤は、硬化性化合物の質量に対して、0.01〜20質量%、又は0.5〜5質量%程度とすればよい。樹脂組成物は、アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えた公知のものであってもよい。アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えたものとしては、例えば、紫外線硬化型樹脂であるSD−318(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、及び、XNR5535(商品名、長瀬産業(株)製)等が挙げられる。
エネルギー線で硬化する樹脂組成物を用いると、紫外線等のエネルギー線を照射することによって、樹脂組成物を硬化させることができる。したがって、このような樹脂組成物を用いることが製造工程上の観点からも好ましい。
フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーが挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、有機珪素化合物粒子、架橋アクリル粒子、及び架橋ポリスチレン粒子等が挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、酸化珪素粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、及び酸化鉄粒子等が挙げられる。フィラーは、その表面がシランカップリング剤で処理され、(メタ)アクリロイル基、及び/又はビニル基等のエネルギー線反応性基が表面に膜状に形成されていてもよい。
ハードコート層は、溶剤と樹脂組成物とフィラーを含む塗料(分散液)を、透明樹脂基材10の一方面上に塗布して乾燥し、樹脂組成物を硬化させて作製することができる。この際の塗布は、公知の方法により行うことができる。塗布方法としては、例えば、エクストルージョンノズル法、ブレード法、ナイフ法、バーコート法、キスコート法、キスリバース法、グラビアロール法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、カーテン法、及びスクイズ法などが挙げられる。
ハードコート層の厚みは、例えば0.1〜10μmであり、好ましくは0.5〜5μmである。ハードコート層の屈折率は、例えば1.40〜1.60である。透明樹脂基材10とハードコート層の屈折率の差の絶対値は0.1以下であること好ましい。
透明導電体100及び透明導電体102を構成する各層の厚みは、以下の手順で測定することができる。集束イオンビーム装置(FIB,Focused Ion Beam)によって透明導電体100,102を切断して断面を得る。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて当該断面を観察し、各層の厚みを測定する。測定は、任意に選択された10箇所以上の位置で測定を行い、その平均値を求めることが好ましい。断面を得る方法として、集束イオンビーム装置以外の装置としてミクロトームを用いてもよい。厚みを測定する方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてもよい。また蛍光X線装置を用いても膜厚を測定することが可能である。
透明導電体100の厚みは、300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよい。このような厚みであれば、薄膜化の要求レベルを十分に満足することができる。透明導電体100,102は導電性に優れる。例えば、表面抵抗値(4端子法)は、第1の金属酸化物層12及び第2の金属酸化物層14の熱アニールをしなくても10Ω/sq.以下にすることができる。
上述の構成を備える透明導電体100,102は、有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機薄膜太陽電池等の有機デバイス、調光フィルム及び電子ペーパーなどの各種表示装置において、透明電極用、帯電防止用、電磁波シールド用として用いることができる。また、透明導電体100,102は、液晶スクリーン、及びアンテナに用いることもできる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(透明導電体の作製)
以下の手順で、透明樹脂基材、第1の金属酸化物層、耐エッチング層、金属層、及び第2の金属酸化物層がこの順で積層された積層構造を有する透明導電体を作製した。作製手順の詳細は以下のとおりである。
市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:125μm)を準備した。このPETフィルムを透明樹脂基材として用いた。DCマグネトロンスパッタリングによって、透明樹脂基材の上に、第1の金属酸化物層、耐エッチング層、金属層及び第2の金属酸化物層を順次形成した。
第1の金属酸化物層は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズの4成分で構成されていた。第1の金属酸化物層において、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズを、それぞれ、ZnO、In2O3、TiO2及びSnO2に換算したときに、上記4成分の合計に対し、ZnOの含有量は44mol%、In2O3の含有量は26mol%、TiO2の含有量は11mol%、及び、SnO2の含有量は19mol%であった。第1の金属酸化物層の厚さは40nmであった。
耐エッチング層は、酸化ニオブ及び酸化チタンの2成分で構成されていた。耐エッチング層において、酸化ニオブ及び酸化チタンを、それぞれ、Nb2O5及びTiO2に換算したときに、Nb2O5とTiO2の合計を基準とするNb2O5とTiO2の含有量は、それぞれ50mol%であった。耐エッチング層の厚さは2.5nmであった。
金属層は、Ag、Pd及びCuで構成され、その質量比率は、Ag:Pd:Cu=99.0:0.7:0.3であった。金属層の厚さは15nmであった。第2の金属酸化物層は、第1の金属酸化物層と同じ組成を有していた。第2の金属酸化物層の厚さは40nmであった。
(透明導電体の評価)
<エッチング性の評価、及び、可視光透過率差の測定>
市販の分光測色計(コニカミノルタ製、商品名:CM−5)を用いて、作製した透明導電体の透過率測定を行った。測定にあたっては、透過率のキャリブレーションを行った。450〜650nmの波長範囲において、10nmの波長間隔で透過率を測定した。上記波長範囲における平均の可視光透過率(T1)を求めた。
次に、リン酸、酢酸、及び硝酸を含む、市販のPAN系のエッチング液を用いて、35℃、5分間の条件で、作製した透明導電体のエッチングを行った。エッチング後に、上述の分光測色計を用いて、450〜650nmの波長範囲において、10nmの波長間隔で透過率を測定した。上記波長範囲における平均の可視光透過率(T2)を求めた。可視光透過率の差の絶対値(ΔT=|T2―T1|)は、表1に示すとおりであった。
<表面抵抗値の測定>
作製した透明導電体の表面抵抗値を、4端子抵抗率計(商品名:ロレスタGP、三菱化学株式会社製)を用いて測定した。測定は、温度85℃、相対湿度85%(85%RH)で200時間保管する前と後でそれぞれ行って、保管による影響を評価した。測定結果は表1に示すとおりであった。表1には保管前の表面抵抗値をR1、保管後の表面抵抗値をR2として示した。表1には、R2−R1の計算値も併せて示した。
<密着性の評価>
作製した透明導電体のクロスカット試験を行って、耐エッチング層と金属層との間の密着性を評価した。クロスカット試験は、JIS K 5600に準拠して行った。具体的には、第2の金属酸化物層の表面に、1mm間隔で縦方向及び横方向に沿ってそれぞれ11本の切り込みを入れて碁盤の目を100マス形成した。その後、切り込みを入れた領域にセロハンテープを貼り付けた。貼り付けたセロハンテープを引き剥がし、100マスにおける剥離状況を目視で確認し、結果を、5B,4B,3B,2B,1B,0Bの6段階に分類した。耐エッチング層と金属層との間において、剥がれが全くない場合を「5B」、剥がれた領域の割合が最も高い場合を「0B」に分類した。測定結果は表1に示すとおりであった。
[実施例2]
耐エッチング層の組成を以下のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。耐エッチング層は、酸化ニオブ、酸化チタン及び酸化スズの3成分で構成されていた。耐エッチング層における酸化スズの含有量は、SnO2換算で60質量%であった。残部は、酸化ニオブ及び酸化チタンで構成され、それぞれ、Nb2O5及びTiO2に換算したときに、Nb2O5とTiO2の合計を基準とするNb2O5とTiO2の含有量はどちらも50mol%であった。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例3]
耐エッチング層の組成を以下のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。耐エッチング層は、酸化ニオブ、酸化チタン及び酸化スズの3成分で構成されていた。耐エッチング層における酸化スズの含有量は、SnO2換算で60質量%であった。残部は、酸化ニオブ及び酸化チタンで構成され、それぞれ、Nb2O5及びTiO2に換算したときに、Nb2O5とTiO2の合計を基準とするNb2O5とTiO2の含有量はどちらも50mol%であった。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例4]
耐エッチング層の組成を以下のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。耐エッチング層は、酸化ニオブ、酸化チタン及び酸化スズの3成分で構成されていた。耐エッチング層における酸化スズの含有量は、SnO2換算で80質量%であった。残部は、酸化ニオブ及び酸化チタンで構成され、それぞれ、Nb2O5及びTiO2に換算したときに、Nb2O5とTiO2の合計を基準とするNb2O5とTiO2の含有量はどちらも50mol%であった。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例5]
耐エッチング層の組成を以下のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。耐エッチング層は、酸化ニオブのみで構成されていた。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例6]
耐エッチング層を以下のとおりにして形成したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。成膜室にArガスと窒素ガスの混合ガス[N2/(Ar+N2)=25〜30体積%]を供給しながら、Siターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタを行い、第2の金属酸化物層上にSiNを含む耐エッチング層(厚さ:10nm)を形成した。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例7]
成膜時間を変更して、SiNを含む耐エッチング層の厚さを20nmに変更したこと以外は、実施例6と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例8]
成膜時間を変更して、酸化ニオブ及び酸化チタンの2成分で構成される耐エッチング層の厚さを2.0nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例9]
成膜時間を変更して、酸化ニオブ及び酸化チタンの2成分で構成される耐エッチング層の厚さを1.0nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例10]
成膜時間を変更して、酸化ニオブ及び酸化チタンの2成分で構成される耐エッチング層の厚さを0.5nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例11]
成膜時間を変更して、酸化ニオブ及び酸化チタンの2成分で構成される耐エッチング層の厚さを0.4nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例12]
成膜時間を変更して、酸化ニオブ及び酸化チタンの2成分で構成される耐エッチング層の厚さを0.3nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。
[比較例1]
耐エッチング層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして透明導電体を作製し、評価を行った。すなわち、比較例1の透明導電体は、透明樹脂基材、第1の金属酸化物層、金属層、及び第2の金属酸化物層がこの順で積層された積層構造を有していた。評価結果は表1に示すとおりであった。
実施例1〜5,8,9では、エッチング後も耐エッチング層及び第1の金属酸化物層がほぼそのまま残存していた。これらの実施例のΔTは3%以下であった。実施例6,10〜12では、耐エッチング層及び第1の金属酸化物層の一部がエッチングに溶解していた。このため、これらの実施例のΔTは7〜12%であった。
これに対し、比較例1のΔTは15%を超えていた。このことから、実施例1〜12では、耐エッチング層を設けることによって、エッチングの際に第1の金属酸化物層の溶解が抑制されていることが確認された。比較例1の透明導電体では、エッチングによって、第2の金属酸化物層及び金属層のみならず、第1の金属酸化物層も完全に除去されていた。このため、ΔTが大きくなっていた。
図3は、横軸を耐エッチング層の厚み、縦軸をΔTとして、比較例1,実施例1,8〜12のデータをプロットしたグラフである。図3には、耐エッチング層を有しない比較例1(厚み=0)と、酸化ニオブ及び酸化チタンの2成分(Nb2O5:TiO2=50mol%:50mol%)からなる耐エッチング層の厚みが0.6nm、0.7nm及び5.0nmのときのデータを併せて示した。
図3の結果から、耐エッチング層の厚みを大きくすることによって、ΔTを小さくできることが確認された。すなわち、耐エッチング層の厚みを大きくすれば、酸性エッチングの際の第1の金属酸化物層の溶解を低減できることが確認された。また、耐エッチング層の厚みを0.4nm以上とすることによって、ΔTを10%以下にすることができた。
窒化珪素を含む耐エッチング層を有する実施例6,7は、他の実施例に比べて密着性の評価が低かった。また、高温高湿環境下に保管した後の抵抗値R2が保管する前の抵抗値R1よりも大幅に大きくなっていた。これは、他の実施例に比べて金属層と耐エッチング層と間の密着性が低いことから、高温高湿環境下での保管時に金属層と耐エッチング層と間で剥離が発生し金属層の腐食が進行したためと推察される。ただし、実施例6,7の透明導電体も、比較例1よりも小さいΔTを有することから、導電パターンの形状に由来する濃淡模様を十分に抑制することができる。
[参考例1]
実施例1で用いたPETフィルムの上に、DCマグネトロンスパッタリングによって、酸化チタン(TiO2)からなる金属酸化物層(厚み:70nm)を形成した。この積層サンプルを、実施例1で用いたものと同じ市販のPAN系エッチング液に45℃、10分間の条件で浸漬した。浸漬の前と後で、実施例1と同じ要領で可視光透過率を測定した。測定結果は、図4に示すとおりであった。
[参考例2]
TiO2からなる金属酸化物層に代えて、酸化ニオブ及び酸化チタンの2成分からなる金属酸化物層(厚み:70nm)を形成したこと以外は、参考例1と同様にして積層サンプルを得た。この金属酸化物層は、酸化ニオブ及び酸化チタンをそれぞれNb2O5及びTiO2に換算したときに、Nb2O5:TiO2=50mol%:50mol%であった。そして、参考例1と同じ条件でPAN系エッチング液に浸漬し、浸漬の前と後で、実施例1と同じ要領で可視光透過率を測定した。
図4に、参考例1,2のそれぞれの積層サンプルの浸漬前後における可視光透過率の測定結果を示す。図4には、参考例1,2で用いたPETフィルム自体の可視光透過率の測定結果も併せて示す。図4に示すとおり、参考例2では、浸漬前後で可視光透過率が殆ど変化していなかった。この結果から、この金属酸化物層はPAN系エッチング液に殆ど溶解しないことが確認された。一方、参考例1では、浸漬前後で可視光透過率が大きく変化していた。この結果から、酸化チタンのみからなる金属酸化物層は、PAN系エッチング液に溶解することが確認された。