JP6797375B2 - 生体標本作製器具および生体標本作製方法 - Google Patents

生体標本作製器具および生体標本作製方法 Download PDF

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Description

本発明は、生体標本作製器具および生体標本作製方法に関する。詳しくは、液体固定化剤を用いた生体組織固定化法による病理組織などの生体組織等の観察用の生体標本作製において、摘出される前の臓器や筋肉塊等の組織塊の形状を保持しつつ、固定ムラ(組織の固定化処理による固定が不均一、不良、不充分等の状態を意味する。以下同じ)を極力抑制させ、かつ短時間で固定処理(生物試料を自己分解や腐敗による劣化から保護するための化学処理等)を実現することができる器具及び方法に関する。
従来から、病院等では、患者の病理診断を行うために、臓器や筋肉に生じた腫瘍等を含む病変部位、病変組織、病変臓器・器官等の組織塊を外科手術によって摘出し、摘出後の臓器や筋肉に生じた腫瘍や病変部位等を含む組織塊を、ホルマリン、アルコール等の液体固定剤により固定処理された組織塊標本が作製され、更に切片等に調製され観察用標本とされている。
上記した組織塊標本の作製作業においては、摘出した組織塊を容器に入れた液体固定剤に漬けて浸漬固定するのである。一般的に、組織塊は、液体固定剤に浸漬することにより固定化され、組織の腐敗等による変質を防ぎ、組織の固化による形状保持がなされる。しかしながら、組織塊が軟らかいものであると、液体貯留部内底に着底したままの形状や、外方に向かって流れるように型崩れした形状のまま、組織が固定されてしまう場合が多い。
変形した状態で固定された組織塊は摘出前の組織塊との形状の乖離が著しく、このような変形した組織塊からの標本観察に基づいて診断を行った場合、標本の変形、変性等により、腫瘍等の病変箇所の大きさ、形状や位置の判断に影響し、正確な診断に悪影響を及ぼすおそれがある。また、固定ムラが生ずれば、組織塊の変質や固化不充分により、前記した切片等の観察標本の調製時に観察用組織断片が破壊される等の恐れが生じ、所望の切片標本を供せなくなる場合もある。
このため、標本作製の現場では、非特許文献1に示すような態様で、組織塊を板等に固定してから液体固定剤に漬ける方法が行われており、この方法については図8に示している。なお、図8では非特許文献1記載の標本作製の態様を示しており、(a)が組織塊を板にピン留めした状態、(b)がピン留めした組織塊を液体固定剤中に浸した状態、(c)が固定処理後の組織塊の状態である。
図8に示す非特許文献1に示す生体標本作製方法によれば、組織塊90の輪郭に沿って発泡スチロール等の板91に固定ピン92でピン留めし、これを液体固定剤93中に沈めて固定処理を行うため、組織塊90の変形をある程度は抑えることができる。
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しかしながら、図8に示す生体標本作製方法では、板への液体固定剤の浸透性、浸潤性が板の材質によっては殆どないことから、板に面した部分の組織94が板91と密着していることにより、この密着部分へは液体固定剤が浸入しにくい。つまり、組織塊90の他の部分と比較して、板に面した部分の組織94は、全部または一部が固定不良となり、固定ムラが生じることとなる。
一方、図8に示す生体標本作製方法であっても、板に面した部分の組織94以外の箇所からの液体固定剤の浸透によって、時間を掛ければ組織塊の固定は可能であるが、組織塊への液体固定剤の浸透にあまりにも時間が掛かりすぎると、摘出した組織塊の自己融解や腐敗が始まり、病理組織の構造が不明瞭となるため、サンプルとしての信頼性が下がり、正しい診断も困難となるおそれがある。
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、液体固定剤を用いて、摘出前の組織塊の形状を保持しつつ、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない固定処理を実現することができる生体標本作製器具および生体標本作製方法を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明の生体標本作製器具は、組織塊を浸漬して固定化するための液体固定剤を貯留する液体貯留部と、収容する組織塊の所定部分の形状が同組織塊の摘出前の形状と略同一となるように、同組織塊を前記液体固定剤中に保持する受け部分を有する本体部と、該本体部を、前記受け部分が前記液体貯留部の内壁に接触不能に、同液体貯留部内に支持する支持部とを備える。
ここで、本発明の生体標本作製器具は、前述の構成を備えることにより、肉体から摘出等された組織塊を受け部分に保持し、液体固定剤に浸漬させて行う生体標本作製作業において、固定処理後の組織塊を、その所定部分が圧迫等の力による変形をより回避させ、その形状が摘出前の同組織塊の形状と略同一なものとすることができる。なお、ここで、「略同一」の用語は、形状が「同一」であるものを含む意味で使用しており、以下、同様の意味で使用される。
前述の「所定部分」の用語は、組織塊の下面部分、または、組織塊の下面から側面にかけての部分を意味するが、これに限定するものではなく、例えば、受け部分の構造および組織塊の形状によっては、組織塊の下面から上面にかけてのほぼ全域の部分を含むことがあり、以下、同様の意味で使用される。
固定処理後の組織塊は、摘出前の組織塊の形状を保持した生体標本となり、病変部等の腫瘍部や変性部の位置が正しく保たれ、サンプルとしての信頼性が向上し、より正確な病理観察を可能とする。特に、腫瘍部や変性部の位置が正しく保たれていると、固定処理後の組織塊を用いた病理組織の診断を行った際に、摘出前に撮影した病変部分の画像等との対比も容易になるという優れた利点があり、術後の正しい診断に繋がる。
前述の液体貯留部は、組織塊を浸漬して固定するための液体固定剤を貯留するものである。ここで、液体固定剤としては、例えば、ホルムアルデヒド水溶液(以下「ホルマリン」という)等のアルデヒド水溶液やアルコール等の固定化に用いる液体固定剤が一般的に使用される。なお、液体貯留部は、前述の本体部を沈めることができる量の液体固定剤を貯留可能な容量を有するものであれば、その形状または材質は特に限定されない。但し、耐久性または組織塊に悪影響を及ぼさないという観点から、使用する液体固定剤によって変性や変質しない材質であることが好ましい。
本体部は、その受け部分によって組織塊を保持し、液体固定剤中で組織塊の少なくとも所定部分の形状を、外力や応力等によって殆ど変形することなく、摘出前の同組織塊の形状と略同一に保持することができる。
支持部は、液体固定剤が組織塊を保持した受け部分を有する本体部に全方位的に接触させることを目的として、受け部分を、液体貯留部内の内壁とは接触不能に支持することができる。これにより、受け部分に保持された組織塊と液体貯留部の内壁とが接触した箇所が生じないので、液体固定剤が組織塊の外表面全体に万遍なく回り、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない生体標本作製が可能となる。支持部は、受け部分が液体貯留部の内壁へ接触しないようにしたものであればよく、例えば、本体部を吊り下げ可能な紐条体または棹体、あるいは、本体部下方に設けた支持脚等であってもよい。
また、前記受け部分が液体透過性を有するものであることが好ましい。この場合は、受け部分を透過した液体固定剤が、内部に収容された組織塊の表面に行き渡り、組織塊と充分かつ継続的に接触可能とすることができる。なお、ここで「液体透過性」の用語は、受け部分が浸透、流動等により液体(液体固定剤)を透過させることができる性質である、という意味で使用している。
また、前記本体部に収容された組織塊の液体固定剤中での浮上による本体部からの離脱を防止する浮上防止構造を備えるものであることが好ましい。この場合は、組織塊を液体固定剤中で浮上しないように保持することにより、組織塊を収めた本体部を液体固定剤の中に沈めた状態であったとしても、振動等の外力によって受け部分から組織塊のみが液体固定剤中へ浮上し、離脱することを防止する。なお、ここで、「浮上」の用語は、「浮上」、「浮揚」あるいは「浮遊」といった状態を含む意味で使用している。
一般的に、生体における組織塊が液体固定剤の比重よりその嵩比重が小さい場合には、組織塊は液体固定剤中で浮揚することになり、組織塊を本体部の受け部分に留まらせるためには、浮上防止構造が必須である。
そして、組織塊の嵩比重が液体固定剤の比重が同等若しくは多少大きい程度の場合にも、受け部分からの離脱防止のために、浮上防止構造を設置することが好ましい。この理由は、振動等の外力により多少組織塊の嵩比重が高くても、受け部分から離脱する恐れがあるからである。
更に、通常の組織塊等においては、ホルマリン水溶液等の液体固定剤の種類によっては、本体部に設置し、液体固定剤中に浸漬した際に、組織塊が浮遊、浮上する恐れがあることからも、組織塊の受け部分となる本体部からの浮遊・浮上を防止する為に、浮上防止構造を備えることが推奨される。
また、前記浮上防止構造が、前記受け部分に形成された上端開口に設置され、該上端開口の一部または全部を覆う蓋体であることが好ましい。この場合は、蓋体が受け部分に形成された上端開口の一部または全部を閉塞し、収容する組織塊の離脱防止手段となる。つまり、蓋体は、閉じた状態にすれば、液体固定剤中に組織塊を収めた本体部を沈めたとしても、組織塊が浮上して本体部の受け部分から器具外(液体固定剤中)へ組織塊が離脱することを防止できる。この結果、摘出前の組織塊の形状を更に正確に保持した標本を作製することができる。更に、本体部は、その受け部分の上端が開口しているので、この開口を介して受け部分の中に組織塊を入れることができる。
また、前記蓋体の下面が、収容する組織塊の上部と当接するものであることが好ましい。この場合は、液体固定剤中に組織塊を収めた本体部を沈めたとしても、蓋体を閉じた状態にすれば、浮遊、浮上した組織塊の上面が蓋体の下面に当接し、本体部の受け部分から器具外(液体固定剤中)へ組織塊が離脱することを防止できる。この結果、摘出前の組織塊の形状を更に正確に保持した標本を作製することができる。
また、前記蓋体が液体透過性を有するものであることが好ましい。この場合は、前述の本体部のみならず、蓋体からも液体固定剤が透過し、透過した液体固定剤は、内部に収容された組織塊の表面に行き渡り、組織塊と充分かつ継続的に接触可能とすることができる。
また、前記蓋体が網目状に形成されるものであることが好ましい、この場合は、網目の大きさを調整することが可能であり、この調整により、例えば、内部の組織塊の視認性が向上した場合は、蓋を閉じた状態であっても収容した組織塊の固定化の進捗状況を視認することができる。また、前述の調整により、蓋を閉じた状態において本体部内に入る液体固定剤の流量を加減することができる。
また、被収容物である組織塊に形成されている切り目に挿入されると共に、該切り目の隙間を所定間隔に拡張して保持するための拡張部材を備えるものであることが好ましい。この場合は、本体部の受け部分に入れる前等の様々なタイミングで組織塊に切り目を形成し、形成した切り目に挿入した拡張部材により、切り目内の対向する肉壁が互いに接触しないような隙間が保持される。なお、切り目を入れるタイミングとしては、本体部の受け部分に入れる前、受け部分に入れた後、あるいは液体固定剤に入れた後等が挙げられ、生体標本を作製する者が好むタイミングで行うことができる。
本発明において、摘出等によって観察用に用いられる組織塊をより効率的かつ短時間で固化や固定化を達成させる為、つまりは、組織塊の内部への液体固定剤の浸透を効率的かつ短時間に達成させる為に、観察に必要となる部位、部分を損傷しないように、組織塊に切込み、切り目等を入れ、これらの切り目等からも液体固定剤を浸透させる方法が有効である。
しかしながら、形成した切り目等をそのままにすると、組織塊の自重や液圧等の外力によって切り目が閉じ、切り目内の対向する肉壁が互いに接触して、液体固定剤が切り目内に浸入しにくくなる。従って、形成した切り目同士が再接触しないように、隔壁として作用する拡張部材を切り目に設置し、組織塊の固定処理を行うことが推奨される。なお、組織塊に切り目を形成する際には、その切り目の位置や深さは、組織塊における生体標本観察する部位を避けて、同部位が損傷しないようにすることが推奨される。
このように、拡張部材を使用して組織塊を固定化する方法では、拡張部材を挿入した部分(即ち、切り目)を通じて、液体固定剤が組織塊内部に浸入し、浸透する。これにより、組織塊内の切れ目によって形成された面(肉壁)から液体固定剤が浸透するので、組織塊の外表面のみから液体固定剤が浸透する場合と比べて固定処理の時間が短くて済み、かつ固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない生体標本作製が可能となる。
また、前記拡張部材が、液浸透性、吸液性、保液性、通液性のうちの少なくとも一つの性質を有する素材および/または構造により形成されたものであることが好ましい。ここで、「素材および/または構造」とは、「素材および構造」と「素材または構造」の両方を含む意味である。この場合は、前述の拡張部材の作用に加えて、組織塊に挿入された拡張部材に液体固定剤が浸透等し、拡張部材を通して切れ目に浸透や通液により導入された液体固定剤が、組織塊の切り目部分の肉壁表面へ、より効果的かつ連続的に接触し、同肉壁から組織塊に浸透することから、組織塊全体への液体固定剤による固定化を早めることができ、かつ、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない標本作製が可能となる
また、前記拡張部材が、板厚方向と板面方向の少なくとも一方に通液路が形成される板状部材であることが好ましい。この場合は、拡張部材を挿入した部分から組織塊の内側に液体固定剤が浸入することに加え、拡張部材自体の通液路を介しても液体固定剤が浸入する。これにより、液体固定剤が組織塊の切り目部分の肉壁表面に至る時間が一層短くなり、同箇所に至る液体固定剤の量も十分なものとなる。これらの通液路は一つ設置しても効果は望めるが、複数設置することでより大きな効果が得られる。ここで、「通液路」としては、孔(即ち、通液孔)または溝(即ち、通液溝)が挙げられる。
なお、前述の通液路が、板厚方向に形成されている通液孔である場合は、組織塊に形成される切り目から液体固定剤が流入し、拡張部材の表面と肉壁表面の間の隙間を充填するように満たしながら縦横方向に広がっていく。ここで、拡張部材の表裏のいずれか一方側にのみ偏って液体固定剤が流入しても、板厚方向に形成された通液孔によって他方側にも液体固定剤が届くので、固定ムラを生じにくくすることができる。
更に、前述の通液溝が板状の拡張部材の板を構成する表面に沿って板面と平行に上部から下部に向かって構成されているものであれば、固定速度が上昇すると共に、固定ムラを減少させることができる。この通液溝によれば、切り目上部に位置する溝の上部から切り目下方に向かって、液体固定剤が切り目の下部まで流入し、溝部分に流入した液体固定剤と組織塊の切り目内の肉壁とが溝部分の全体に亘って接触し、溝部分からも組織塊に液体固定剤が更に浸透する。
これらの溝は、拡張部材の表裏のいずれか一方に設置しても差し支えないが、表裏面双方に設置することで、より一層浸透速度が高まり、かつ固定ムラをより解消することができる。なお、溝は一本でも固定化速度や固定ムラの解消効果は望めるが、それぞれの面に複数本設置することが更に好ましい。これに加えて、該溝に前述した厚み方向への孔を1つ以上設けてもよく、この場合、組織塊の切り目内の両側に位置する各肉壁への浸透の均一化や、固定化速度の向上に繋がる。
更に、前述の通液溝は、板面側の溝の開口を液浸透性を有する表面素材で覆うように取り付けられた態様(結果的には中空孔となる)に形成させることも推奨される。この場合には、中空な通液溝を通して流入した液体固定剤は、液浸透性の側面部、溝方向に対して直角(板の厚み方向)方向にも浸透拡散し、組織塊の切り目内の肉壁に接触し、組織塊内部へ浸透する。
このような、拡張部材の構造が内部中空状のダンボール板タイプを例示することで、よりその構造は理解しやすい。このような板面方向と平行に形成された通液孔についても、一本でも種々の固定化への効果は望めるが複数本設置することが更に好ましい。また、これら板面方向の通液孔と板厚方向に形成された通液孔が交差するように設けることも当然好ましい形態として推奨される。
また、前記拡張部材は、前記切り目の内部に向かって狭くなるテーパ構造を有するものであってもよい。ここで、テーパ構造には、いわゆる平型の楔タイプが挙げられる。この様な拡張部材では、テーパ構造によって尖鋭に構成された拡張部材の先端部分で、組織塊を切開あるいは裂き開くことができる。
つまり、本体部に収容される組織塊に対して、医療用メス等の刃物で事前に切り目を形成する前準備を行わなくともよい。例えば、本体部に組織塊(この時点では切り目は未形成)を収容し、収容後、拡張部材の挿入先端となる側を組織塊に押し当てると、拡張部材の先端部分によって組織塊の表面部分が切開され、拡張部材の先端部分を組織塊の奥側へ更に進めることで切り目が拡大していき、この切り目に拡張部材が収まることとなる。
この際に、このような楔型の拡張部材に、前述の板厚方向あるいは板面方向に形成された通液溝または通液孔を、同時にまたは併用して設けることで、より効率の良い固定化が期待できる。更に、拡張部材には、これらの通液孔や通液溝を一または複数設けて使用することができる。
ここにおいて、前述の拡張部材の材質としては、いかなる材質であっても本発明の器具は構成されるが、他の部材と同様に、液体固定剤による腐食や、液体固定剤での溶出がない材質であることが望ましい。また、液体固定剤を浸透、含浸、吸収等をさせる材質であることも好ましい。具体的には、ステンレス、チタン等の耐食性の金属材料、セラミックス等の無機材料、合成および天然の繊維材料からなる布等や厚紙やダンボール等のセルロース系神材質などが例示される。またこれらの組み合わせである複合材料も好ましい材質として例示される。しかしながら本発明においての拡張部材の材質は特に制限されることは無く、前述した機能や構造等を達成させうる材質であればいかなる材質であっても差し支えない。
また、前記受け部分が、摘出前の前記組織塊の所定部分と略同一形状を有する難変形部材、または前記組織塊の所定部分の形状に沿って弾性変形可能な弾性部材からなることが好ましい。この場合は、この受け部分を構成する部材の特性に応じて、固定処理後の組織塊の形状を、摘出前の組織塊に近似するものとすることができる。
即ち、受け部分が前述の難変形部材からなるタイプであれば、組織塊の所定部分は、その受け部分の形状と略同一な形状に保持され、極端な圧迫等を受けない。この結果、組織塊は、当初の形状と略同一の形状で固定された生体標本となる。一方、受け部分が前述の弾性部材からなるタイプであれば、受け部分が収容された組織塊の所定部分の形状に沿って変形し、組織塊は、受け部分の剛性に起因する変形を強いられることなく本来の形状が保持され、当該形状のまま固定された標本となる。
なお、前述の受け部分は摘出した組織塊が収納もしくは格納できる形状であり、例えば、袋状又は箱状等であることが好ましい。更に、前述の受け部分は、形状変化をさせずに摘出前の組織塊の所定部分と略同一の固まり形状を維持させるものであることや、組織塊の所定部分の形状に沿って密着等が生じるように弾性変形することで、組織塊形状を不要な変形させずに萎縮させ、近似または相似形での萎縮変形塊として保持可能とする素材および形状であることも、必要に応じて好ましい。
この場合、弾性変形させ、相似方に形状維持させることが可能な受け部分では可撓性もしくは弾性部材が使用され、この受け部分を構成する部材の特性に応じて、固定処理後の組織塊の形状を、摘出前の組織塊に相似または近似するものとすることができる。
前述の通り、受け部分の構造および材質に関しては、受け部分に収容して液体固定剤中に入れた組織塊と液体固定剤が、直接または受け部分を介しての浸透によって接触可能となる構造や材質であることが好ましい。
無論、受け部分の開口箇所から浸入した液体固定剤が、組織塊と液体固定剤の接触部分から浸透する等の浸透方法によっても、本発明における固定化方法は達成できるが、より効率的な組織塊への液体固定剤の浸透を達成する為には、受け部分の開口箇所からの液体固定剤の浸入や浸透に加えて、組織塊と受け部分の他の部分(側面、底面等)との接触部分からの液体固定剤の浸入や浸透がなされることが好ましい。
このような観点から、受け部分の構造や材質としては、1)受け部分が液体固定剤の浸透性を有する材質、材料で構成され、2)受け部分が網目構造となっているか、または複数の孔が設けられた構造となっている、こと等が推奨され、また、これらの組み合わせの構造であることも推奨される。
加えて、前述したように、本発明においては、試料である組織塊を保持させた受け部分が液体貯留部の壁面や底面との直接接触するのを避けることが好ましい。第一の理由として、受け部分が液体貯留部の底面や側面と直接接触することで、受け部分に入れた組織塊がこれらの面に押し付けられて変形する恐れがあるからである。更に、第二の理由として、受け部分が液体固定剤の浸入や浸透等が可能な部材で構成されていた場合に、受け部が液体貯留部の底面等と接触していると、この接触面から液体固定剤が浸入等することが妨げられる恐れがあるからである。
従って、本発明における受け部分は、種々の手段を講じて、前述の第一および第二の理由に記載した恐れを回避させることが推奨される。回避手段としては、上記の恐れが回避される手段であればいかなる手段も採用することができるが、実施しやすい手段として例示すれば、受け部分の底部に脚状の突起を設置することで、液体貯留部と受け部分の底面との間に隙間を確保することができる。
そして、1)受け部分の上端部にフック状のものを取り付け、液体貯留部の側面に引っ掛ける手法、2)クランプで受け部分を固定する手法、3)受け部分の上部縁を紐状物により吊り下げる手法、4)液体貯留部内に五徳状のものを設置し、その上辺空間部に受け部分をはめ込む手法、5)液体貯留部の上面部に梁状の棒を立てるか横に橋渡しし、この棒に前述のフック状物により引っ掛ける手法、等が例示される。また、橋渡しする棒状物を予め、受け部分上部の試料挿入用開口部の縁に設置することも例示される。
更に、本発明における受け部分に用いられる浸透性素材としては、天然繊維や合成繊維等からなる布や、不織布等が例示される。また、素焼板等の液浸透性のセラミックス材料も例示することができる。これら布材料やセラミックス材料を受け部分に用いた場合には、予め対象となる組織塊の形状に合わせた形状、規格に成型し作成することができ、これにより設置する試料(組織塊等)の変形を抑制することも可能とする。
ここにおいて、前述した本発明器具へ必要に応じて設置される浮上防止構造の形状や材質等について述べる。本発明では、前述の通り、受け部分の上部開口部分に浮上防止構造を設置することが推奨される。
加えて、浮上防止構造の形態としては、受け部分に対象となる組織塊を設置して、液体固定剤中に浸漬させた際に、組織塊の嵩比重が小さい等の原因により、液体固定剤中に浮上等することで受け部分の上部開口から液体固定剤中に離脱することが防止できれば、いかなる形状であっても差し支えないが、実施しやすい形状として例示すれば、前述の受け部分の上部開口を全面的に覆う蓋状の形状や、部分的な蓋状(例えば、上部開口を部分的に覆うことができる一または複数の帯状の形状)が例示される。
更に、蓋の中央部に円形、多角形等の開口部が設けられた蓋状の形態も例示することができる。この浮上防止構造においては、前述の通り、完全蓋状で密閉式あっても差し支えないが、好ましくは試料となる組織塊の液体固定剤中において常時、受け部分の内部と外部の液体固定剤の間において液拡散が可能な状態であることが推奨される。
これにより、可能な限り該保持部分内部の液体固定剤と外部の液体固定剤との均質を可能な限り保つ手段となりうるからである。こういった観点から、浮上防止構造として全面蓋状であってもその構造が網目構造の形状も推奨できる。また、前述したように蓋に1以上の開口部分を設けることも推奨される。
そして、浮上防止構造に用いられる素材や材質は、特に限定はされず、受け部分に設置した標本用の比較的低比重の組織塊を液体固定剤中に浸漬させた際に、この組織塊が液体固定剤中で浮上し受け部分から外へ飛び出して液体固定剤中を浮遊したり、組織塊の一部が液体固定剤の液面よりも上部に浮かび上がることを防止できる構造、言い換えれば、組織塊を受け部分内に保持可能とする構造であれば、如何なる材質を用いても差し支えないが、液体固定剤により溶解したり、腐食する材質や化学変化や物理変化等により変質したり、溶出して組織塊に悪影響を及ぼす材質は避けることが推奨される。
更に、浮上防止構造が受け部分の上部開口を全面的に覆う構造の場合には、受け部分の内部と外部における液拡散、液流動を生じさせることが好ましいことから、受け部分の内部に液体固定剤が流入もしくは浸透する手段が必要である。
これらの手段を具体的に例示すれば、前述したような、1)全面蓋状である場合には、少なくとも1以上の液流入口を設置する、2)蓋を網目状構造とする、3)一または複数本の帯状物とし、受け部分の上部開口に設置する、4)中心部が円形、多角形等に開口し、この開口から組織塊が通過しない大きさや形状とする、等が例示されるが、これらの形状でなく完全蓋状物で覆う場合には、液体固定剤が浸透できる素材が推奨される。これらの材質としては保持部分に記載した浸透性の材質と同様の材質が推奨される。
上記の目的を達成するために、本発明の生体標本作製方法は、組織塊を固定化するための液体固定剤中に保持する受け部分を有する本体部を、液体固定剤を貯留する液体貯留部内に、前記受け部分が前記液体貯留部の内壁に接触不能に、支持部を介して配置した後、前記組織塊を前記本体部内に収容して受け部分で保持する手順、あるいは、組織塊を固定化するための液体固定剤中に保持する受け部分を有する本体部に、組織塊を収容して同受け部分で保持した後、支持部を介して、前記本体部を前記受け部分が液体貯留部の内壁に接触不能に前記液体貯留部内に配置する手順のいずれかにより行う設置過程と、該設置過程の後に、前記液体貯留部内に液体固定剤を所定量注入する注液過程とを含む設置先行工程、または、組織塊を固定化するための液体固定剤を貯留する液体貯留部内に、同液体固定剤を所定量注入する注液過程と、該注液過程の後に、組織塊を固定化するための液体固定剤中に保持する受け部分を有する本体部を、液体固定剤を貯留する液体貯留部内に、前記受け部分が前記液体貯留部の内壁に接触不能に、支持部を介して配置した後、前記組織塊を前記本体部内に収容して受け部分で保持する手順、あるいは、組織塊を固定化するための液体固定剤中に保持する受け部分を有する本体部に、組織塊を収容して同受け部分で保持した後、支持部を介して、前記本体部を前記受け部分が液体貯留部の内壁に接触不能に前記液体貯留部内に配置する手順のいずれかにより行う設置過程とを含む注液先行工程を行う第1工程、および該第1工程で貯溜された液体固定剤中の前記受け部分に、前記組織塊を、所定部分の形状が同組織塊の摘出前の形状と略同一に固定されるまで保持する第2工程を備える。
ここで、本発明の生体標本作製方法によれば、前述の第1工程および第2工程を備えることにより、固定処理後の組織塊の所定部分の形状が摘出前の同組織塊の形状と略同一なものとすることができ、かつ固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない標本作製が可能となる。
前述の第1工程を経ることにより、液体固定剤が注液された液体貯留部内に、組織塊を収容した本体部が設置される。このとき、液体貯留部内において、組織塊を収容した受け部分は、液体貯留部の内壁に接触しないように支持部によって保持されている。これにより、受け部分に保持された組織塊と液体貯留部の内壁とが接触した箇所が生じない。
前述の設置先行工程によれば、液体貯留部内に本体部を設置した後に液体固定剤を注液するので、組織塊の全体が丁度浸るように液量を調整しやすいので、過剰な注液を無くすことで液体固定剤を節約して無駄を無くすことができる。
そして、先に液体貯留部へ本体部を設置する手順によれば、組織塊が入っていない分、本体部が軽く、設置作業がしやすい。他方で、先に組織塊を本体部に収容する手順によれば、すでに組織塊が収容された本体部の重さが明確であるため、例えば、吊り下げ紐で支持するような場合は、液体貯留部の内壁に接触しないよう、正確にバランスを取りやすい。
前述の注液先行工程によれば、先に液体貯留部に液体固定剤が満たされているので、本体部を液体貯留部内に配置した後に組織塊を入れる手順で作業を行えば、組織塊を液体固定剤中に徐々に入れると、既に液体貯留部に注液された液体固定剤の粘性抵抗あるいは組織塊に生じる浮力によって、組織塊を本体部に納める際に生じる衝撃が軽減され、組織塊の崩壊をできるだけ抑制することができる。他方で、先に組織塊を本体部に収容し、次いで本体部を液体貯留部内に配置する手順で作業を行えば、液中で収容作業を行うよりも作業がしやすい。
そして、前述の第2工程を経ることにより、組織塊が液体貯留部の液体固定剤中で固定化処理される。このとき、前述の第1工程を経て液体固定剤中に保持されているので、組織塊を収容した受け部分が液体貯留部の内壁に接触せず、この結果、液体固定剤が組織塊の外表面全体に万遍なく回るので、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない生体標本の作製が可能となる。更に、固定化処理後に取り出した組織塊の所定部分の形状は、摘出前の同組織塊の形状と略同一な形状となる。
また、被収容物である組織塊に切り目を形成し、該切り目に拡張部材を挿入して同切り目の隙間を所定間隔に拡張して保持する隙間形成過程を有するものであることが好ましい。この場合、拡張部材によって、切り目内の対向する肉壁が、互いに接触しないような隙間が保持される。
そして、拡張部材を挿入した部分に生じたこの隙間(組織塊の内部)に液体固定剤が浸入し、組織塊の内部側の肉壁から液体固定剤が浸透するので、組織塊の外表面のみから液体固定剤が浸透する場合と比べて固定処理の時間が短くて済み、かつ固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない生体標本作製が可能となる。なお、拡張部材としては前記した形状、材質等が推奨される。
本発明の器具と本発明の方法によって固定化処理する組織塊とは、一般的には生体の組織、器官等の全摘出塊や部分摘出塊をいい、人間のもののみならず、各種実験動物等のものであってもよい。具体的な器官・臓器、組織としては、胃、肝臓、腎臓、すい臓、膀胱、前立腺、脳等の人体を含む動物等の臓器や、筋肉組織等の体の一部が挙げられるが、体の全部(例えばラット等の実験用小動物)であってもよい。用語「生体」は、通常、人間を含む動物等の生きた体を意味するが、生きていた体(即ち、死体あるいは死骸)であって標本作製可能なもの等を除外するものではない。そして、用語「摘出」は、通常、手術により生体から分離されたものを意味するが、事故等で肉体から切断されて分離したものを除外するものではない。つまり、言い換えれば、生体構成物でその病理観察や、実験観察において固定化処理を必要とするものであれば、それら総てが対象となり得る。
次に、本発明における組織塊の保持部分の形状と、観察用標本に供すために保持部分に設置される組織塊との形状関連について記載する。本発明の器具を用いて組織塊を液体固定剤により固定化する際の長所であり目的の一つとして、前述のように摘出等により保持部分に収容した組織塊の形状を極力変化させないことがある。
これを達成する為には、予め保持部分の形状を、標本となる組織塊の形状と同一形状に近い形状とすることが推奨される。具体的には、例えばヒトの乳房の全摘出組織塊であれば、保持部分の形状はその乳房の形状に合わせた袋状とすることが好ましい。また、例えばブラジャー状カップでその大きさをパターン化させて複数種類をそろえれば、一般規格品と同様に簡便に保持部分として規格品を本発明に供すことが出来る。
本発明の生体標本作製器具および生体標本作製方法によれば、摘出前の組織塊の形状を保持しつつ、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない固定処理を実現することができる。
本発明の生体標本作製器具の第1実施形態を示す斜視説明図である。 図1に示す生体標本作製器具の使用状態を側面側から示す断面視説明図である。 図1に示す生体標本作製器具の変形例1を示す斜視図である。 図1に示す生体標本作製器具の変形例2を示す斜視図である。 本発明の生体標本作製器具の第2実施形態を示す平面図である。 (a)は図5に示す生体標本作製器具の拡張部材の斜視図、(b)は拡張部材の他の例である変形例3を示す斜視図である。 拡張部材の他の例である変形例4を示す斜視説明図である。 非特許文献1記載の生体標本作製の態様を示しており、(a)は組織塊を板にピン留めした状態、(b)はピン留めした組織塊を液体固定剤中に浸した状態、(c)は固定処理後の組織塊の状態である説明図である。
本発明の生体標本作製器具、生体標本作製方法による実施形態を以下に例示する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、本発明の趣旨に沿う方法、器具であればいかなる手法、器具を用いることも採用されうる。
本発明を更に理解を深める為、図1ないし図7を参照して、本発明での実施の形態(以下「実施形態」という)の実施しやすい例として例示し、詳細に説明する。前記したように、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。
なお、各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。また、説明は、第1実施形態、変形例1、変形例2、第2実施形態、変形例3、変形例4、の順序により以下で行う。
なお、以下の説明中において、前述の「浮上防止構造」の一例として「蓋体」を挙げており、前述の「支持部」の例として「吊り下げ紐」「脚部」「支持脚」を挙げており、前述の「切り目の内部に向かって狭くなるテーパ構造」の一例として「刃部」を挙げており、前述の「難変形部材」の一例として「パンチングメタル」を挙げており、前述の「弾性部材」の一例として「ナイロン繊維シート」を挙げている。
〔第1実施形態〕
図1に示す生体標本作製器具1aは、液体固定剤を貯留する液体貯留部2と、上方が開口した(以下、同部分を「上部開口104」という)略半球のカップ体である本体部10と、本体部10に取り付けられた蓋体12と、本体部10に取り付けられた吊り下げ紐3と、を備える。なお、図1では、本体部10と蓋体12の形状を理解しやすくする便宜上、液体貯留部2と吊り下げ紐3を一点鎖線および二点鎖線により表している。
液体貯留部2は、透明な合成樹脂製の箱状容器であり、前述の本体部10を収容可能な容積を有するものである。
本体部10は、上部開口104の口縁部分に配置される円環状のフレーム部101と、フレーム部101から吊り下げられるように取り付けられた受け部分102と、受け部分102の胴部においてフレーム部101よりもやや下方の位置に設けられたファスナー部103と、を有する(図1参照)。
本体部10は、フレーム部101と受け部分102の取り付け部分において、受け部分102に間隔を開けて所要数(合計7つ)の切欠部が形成されており、この切欠部分においては、フレーム部101が露出するようにしてある。上部開口104は、直径が10cm〜15cmである。
蓋体12は、上部開口104と略同じか、やや径小な円形であり、外縁の一部に接続片が形成され、同接続片の先端が本体部10に取り付けられている。蓋体12は、その外縁にファスナー部121が設けられており、ファスナー部121と前述のファスナー部103が噛合することで、上部開口104は蓋体12により閉じることができるようにしてある。
受け部分102および前述の蓋体12は、所要の伸縮性を有するナイロン繊維シートにより形成されている。本実施形態において、受け部分102は、ナイロン繊維シートにより形成されたものであるが、これに限定するものではなく、例えば、綿等の天然繊維により形成されたものであってもよいし、ナイロン以外の合成繊維により形成されたものであってもよい。
また、受け部分102は、繊維シートを立体裁断して形成されたものであるが、これに限定するものではなく、例えば、不織布等を成型したものや、プラスチックネット、透液性を有する帯状あるいは方形のシートを重ね合わせて構成したものであってもよい。
受け部分102の伸縮性は、繊維自体の弾性に起因するものであってもよいし、生地の織り方に起因するもの等、特に限定するものではない。また、受け部分102は、組織塊のサイズの大小に対応できるよう、所要の伸縮性を有する素材で形成されることが好ましいが、これに限定するものではなく、例えば、伸縮性が無い素材で形成されても、組織塊に応じたサイズのものを複数種類準備する態様であってもよい。
受け部分に関しては、本実施形態の本体部10のように、略半球のカップ体であれば、口径10cm〜15cmのものが好適に使用されるが、これに限定するものではなく、例えば、肝臓や肺、脳等の大きな組織塊の標本作製を目的として、本体部の口径を15cmより大きなものに設定することを除外するものではなく、同様に、小さな組織塊の標本作製を目的として、本体部の口径を10cmより小さなものに設定することを除外するものでもない。
カップ体の形状も略半球に限定するものではなく、組織塊の形状やサイズに合わせて、浅い丸底状等のもの、有底円筒形、箱状等の他の形状であってもよい。更に、本体部の開口部分は、上方に限定されるものではなく、側方や下方に開口した態様であってもよい。
本実施形態において、蓋体12は、本体部10の開口部分である上部開口104と略同じか、やや径小な円形なものを採用しているが、これに限定するものではなく、例えば、本体部10の開口部分を覆うことができるものであれば、開口部分よりも大きなものであってもよいし、円形以外の他の形状(例えば四角形等)であってもよい。また、蓋体は、開口部分を完全する閉塞するものに限定されず、収めた組織塊が外部に出ない構造のものであればよい。
本実施形態において、蓋体12は、接続片によって本体部10に取り付けられているが、これに限定するものではなく、例えば、別体として分離可能なものであってもよい。
本実施形態において、ファスナー部103とファスナー部121とを設けているが、これに限定するものではなく、例えば、面ファスナーや綴じ紐、掛止フック等の繋止手段を採用してもよい。
本実施形態において、受け部分102および蓋体12は、同素材より形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、異素材であってもよい。また、受け部分102は、全体を同素材で形成したもののみならず、異素材を組み合わせて形成したもの(例えば、大きく型崩れしないように配置したプラスチック等のワイヤーと繊維シートを組み合わせたもの)であってもよく、蓋体12についても同様である。
なお、本実施形態では液体貯留部2は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン製)であるが、これに限定するものではなく、例えば、ガラス等の他の素材により形成されたものであってもよい。また、透明なもののみならず、半透明、不透明なものであってもよいが、中の状態を目視しやすいように全体が(少なくとも一部が)透明または半透明が好ましい。更に、形状は箱状に限定するものではなく、有底筒状等の他の形状でもよいが、安定性の観点から底面が広い形状が好ましい。
図1において、液体貯留部2に蓋は無いが、蓋を有するものであってもよい。この場合、蓋は、液体固定剤がこぼれることや、異物混入を防止すると共に、前述の浮上防止構造として本体部内に収容された組織塊の浮上を防止するように設定することもできる。
(作 用)
図1と図2を参照して、生体標本作製器具1aを使用した生体標本作製方法(生体標本作製器具1aの作用)について説明する。
(第1工程:設置過程)
本体部10は、その底部が液体貯留部2の液体貯留部内底21に接触しないようにするため、吊り下げ紐3を使用し、液体貯留部2の上縁部22に回し掛けるようにして液体貯留部2内に設置する(手順1)。これにより、本体部10は、その底部が液体貯留部内底21に接触せず、浸漬時においても、液中に吊り下げられた状態となる。
ここで、吊り下げ紐3は、一端側を本体部10上部に形成された切欠部から露出したフレーム部101に結び、他端側を液体貯留部2の外の何某かの部材(例えば重りのようなものや、柱のようなもの等。図示省略)に結んで、上縁部22に回し掛けることによって、本体部10を吊り上げることが可能なテンションが掛かるようにしてある。
次に、本体部10の開口部分から組織塊M(本実施形態では、乳房切除術で全摘出した乳房)を入れ、蓋体12を閉じてファスナーを閉める(手順2)。
(第1工程:注液過程)
液体貯留部2に本体部10を設置した後、液体固定剤Hを液体貯留部2に入れる。なお、先に液体固定剤Hを空の液体貯留部2に入れて満たし、その中に本体部10を入れる態様であってもよい。
前述の第1工程によれば、液体貯留部2内に本体部10を設置した後に液体固定剤Hを注液するので、組織塊Mの全体が丁度浸るように液量を調整しやすいので、過剰な注液を無くすことで液体固定剤を節約して無駄を無くすことができる。そして、先に液体貯留部2へ本体部10を設置する手順であるので、組織塊Mが入っていない分、本体部10が軽く、設置作業がしやすい。
(第2工程)
本体部10に収容された組織塊Mは、本体部10と共に、組織塊Mの固定化処理が終わるまでの所要時間、液体固定剤H中に置かれる。液体固定剤H中において、組織塊Mは、収容した本体部10が柔軟な容器であると共に、組織塊Mが丁度収まるサイズであるので、摘出前の組織塊Mの形状と略同一となるように保持される(換言すると、容器に起因する変形を起こさずに、摘出前の原形が概ね保持される)。
また、蓋体12が上部開口104を閉じると共に、その下面で組織塊Mの浮上を抑えているので、組織塊Mのみが浮き上がって器具外(液体固定剤H中)に出るようなことがない。
加えて、本体部10と蓋体12は透液可能であるため、本体部10と蓋体12を透過した液体固定剤Hが、内部に収容された組織塊Mの表面に万遍なく行き渡る。更に、生体標本作製器具1aは、本体部10の底部が液体固定剤Hを入れた液体貯留部内底21に接しないので、液体固定剤Hが組織塊Mの底部側にも万遍なく回って行き渡る。そして、液体固定剤Hが組織塊Mの表面の全体から組織の内部に浸透し、所要時間経過後、組織塊Mによる固定化処理が終わる。
その後、液体固定剤Hから本体部10を液外に取り出し、ファスナーを開け、蓋体12を開いて、固定化処理後の組織塊M(生体標本)を取り出す。この固定化処理後の組織塊Mは、生体標本作製器具1aを使用したことにより、摘出前の組織塊Mの形状を正確に保持しつつ(摘出前の組織塊の形状と略同じ)、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ないものとなる。
また、生体標本作製器具1aは、本体部10あるいは蓋体12が傷むまで、洗浄して繰り返し使用することができるので、経済的である。なお、生体標本作製器具1aは、前述の通り経済的なものであるが、これに限定するものではなく、例えば、使い捨てタイプであってもよく、使い捨てタイプであれば、本体部と蓋体との閉鎖手段を接着材等のより簡易な構造とすることで、製造コストを抑えることもできる。
本実施形態において、生体標本作製器具1aの支持部として吊り下げ紐3を採用しているが、これに限定するものではなく、例えば、中央部の長いS字フックのような係止フックを採用してもよいし、係止フックと吊り下げ紐あるいはチェーンを組み合わせたもの等であってもよい。
前述の第1工程では、設置過程は、先に液体貯留部2へ本体部10を設置し、その後に本体部10に組織塊Mを収容する手順で行われているが、これに限定するものではなく、例えば、先に本体部10に組織塊Mを収容し、その後に液体貯留部2へ本体部10を設置する手順で行ってもよい。この場合、すでに組織塊Mが収容された本体部10の重さが明確であるため、例えば、吊り下げ紐3で支持するような場合は、液体貯留部2の内壁に接触しないよう、正確にバランスを取りやすい。
前述の第1工程では、設置過程の後に注液過程が行われるが、これに限定するものではなく、例えば、注液過程の後に設置過程を行っても良い。この場合、先に液体貯留部2に液体固定剤Hが満たされているので、本体部10を液体貯留部2内に配置した後に組織塊Mを入れる手順で作業を行えば、組織塊Mを液体固定剤H中に徐々に入れると、既に液体貯留部2に注液された液体固定剤Hの粘性抵抗あるいは組織塊Mに生じる浮力によって、組織塊Mを本体部10に納める際に生じる衝撃が軽減され、組織塊Mの崩壊をできるだけ抑制することができる。他方で、先に組織塊Mを本体部10に収容し、次いで本体部10を液体貯留部2内に配置する手順で作業を行えば、液中で収容作業を行うよりも作業がしやすい。
<変形例1>
図3に示す生体標本作製器具1bは、生体標本作製器具1aにおける本体部および支持部の変形例である。生体標本作製器具1bは、上方が開口した略半球のカップ体である本体部10と、本体部10に取り付けられた蓋体12と、脚部14とを備える。
各部材の構成および作用については図3を参照して、以下説明する。なお、本体部10、蓋体12については、生体標本作製器具1aと同じものであるため、構造および作用の説明を省略する。また、液体貯留部2についても、その図示、構造および作用の説明を省略し、後述する変形例2についても同様である。
脚部14は、4本の支持脚141と、着底部142とを有する。各支持脚141は、上端側がフレーム部101に固着されており、下端が着底部142に固着されている。支持脚141は、各々等間隔で、間を開けて配置されている。着底部142は、フレーム部101よりも径大な円環状の部材である。つまり、側面視において、脚部14は、上方から下方に向かって裾広がりとなった形状に設けられている。
そして、各支持脚141は、液体固定剤H中に置いたときに、本体部10の受け部分102の底部が液体貯留部(図3では図示省略)の液体貯留部内底(図3では図示省略)と接触しないように、液体固定剤中に吊り下げ可能な状態に保持できる長さを有している。
(作 用)
生体標本作製器具1bの作用について説明する。
組織塊を収容した本体部10を、液体固定剤を満たした液体貯留部の中に入れて使用する。このとき、本体部10は、前述の構成の脚部14を備えているため、液体固定剤中に沈めるだけで、その底部が液体貯留部の内底に接触しない状態(換言すると、本体部10が液中に吊り下げられた状態)にすることができる。そして、脚部14は裾広がりの形状であるため、液中での安定性が良い。
また、生体標本作製器具1bによれば、使用の都度、吊り下げ紐のようにテンションを掛けて本体部10を吊る必要が無く、また、着脱式の吊り下げフックのように、液体貯留部の大きさに合わせて交換したり、係止するバランスに配慮したりする必要も無い。つまり、生体標本作製器具1bは、汎用性が高く、かつ、吊り下げ紐等のような手段を備える器具と比較して、作業前準備が不要で手間が掛からないという利点がある。
なお、本変形例では、脚部14が、各支持脚141の下端の着底部142に固着された態様であるが、これに限定するものではなく、例えば、着底部が支持脚の先端の各々に設けられた小円板状のもの等のセパレート型であってもよい。
<変形例2>
図4に示す生体標本作製器具4は、図3に示す生体標本作製器具1bにおける本体部および支持部の変形例である。生体標本作製器具4は、上方が開口した平面視楕円形の浅底ボウル状である本体部41と、本体部41の底面に取り付けられた4本の支持脚42を備える。各部材の構成および作用については図4を参照して、以下説明する。
本体部41は、パンチングメタル(ステンレススチール製)により形成されている。各支持脚42はステンレススチール製であり、各々等間隔で、間を開けて配置されている。各支持脚42は、先端までの長さが、本体部41の底部が液体貯留部(図4では図示省略)の内底(図4では図示省略)と接触しない状態に保持できる長さに設定してある。また、各支持脚42は、先端が本体部に対して外側の方向へ向かう(側面視で裾広がり状となる)ように設けてある。
なお、図4に示していないが、生体標本作製器具4は、本体部41に各種の蓋体を備える。この場合の蓋は、組織塊を本体部41の内面に強く押し当てるような重量、剛性のものではなく、液体固定剤中の組織塊に浮力が生じた際に、組織塊と本体部41の内面との間に僅かな隙間が生じる程度の遊動スペースが生じるものであることが好ましい。組織塊と本体部41の内面とが密着しないようにすることで、液体固定剤が浸入できない領域の発生(固定ムラの原因)を防止するためである。具体的には、蓋が、柔軟かつ軽量な部材であってもよいし、あるいは、内部の組織塊が液体固定剤中で僅かに遊動可能な程度に内部空間に余裕を持たせた難変形部材であってもよい。
また、生体標本作製器具4は、本体部41および支持脚42が共にステンレススチール製であるが、これに限定するものではなく、例えば、各々を異素材で形成したものであってもよい。更にまた、本体部41および支持脚42が共にステンレススチール製であるが、これに限定するものではなく、例えば、他の金属や合成樹脂製等で一体成型したものであってもよい。
本体部の底部が液体貯留部の内底と接触しない状態に保持する手段としては、本実施形態のように支持脚であることが好ましいが、これに限定するものではなく、例えば、本体部の口縁等に設けられ、本体部と反対側に延設された吊下フック等を除外するものではない。
本実施形態では、本体部41は、パンチングメタルにより形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、金属や合成樹脂の網を使用して形成してもよい。
また、生体標本作製器具4は、例えば、本体部41を一部が重なる二分割構造にし、伸縮可能なものとしてもよい。この場合、組織塊に応じたサイズのものを複数種類準備することが不要となるので、導入コスト抑制が期待でき、かつ、保管場所の省スペース化を図ることができる。
(作 用)
生体標本作製器具4の作用について説明する。なお、生体標本作製器具1bと共通する作用については、その説明を省略する。
生体標本作製器具4の本体部41は、前述の構成の脚部42を備えているため、液体固定剤中に沈めるだけで、その底部が液体貯留部の内底に接触しない状態にすることができる。そして、脚部42は裾広がり状であるため、液中での安定性が良い。
また、生体標本作製器具4は、生体標本作製器具1bと同様、汎用性が高く、かつ、吊り下げ紐等のような手段を備える器具と比較して、作業前準備が不要で手間が掛からないという利点がある。
そして、生体標本作製器具4の本体部41と脚部42は、ステンレススチール製であるため、剛性(耐腐食性、耐摩耗性、耐荷重性)に優れ、繰り返しの使用が可能であるため、ランニングコスト抑制が期待できる。
なお、生体標本作製器具4では、その構造上、組織塊に応じたサイズのものを複数種類準備することを要するが、本体部41および支持脚42が一体型であるので、金型等を用いて大量生産しやすく、製造コスト抑制による調達コスト低下が期待できる。
生体標本作製器具4は、本体部41が所要の剛性を有すると共に透液可能な構造であり、かつ、液体貯留部の内底に接触しないものであるため、収めた組織塊へ液体固定剤が万遍なく行き渡り、そして保形する。この結果、固定処理後の組織塊は、生体標本作製器具4を使用したことにより、摘出前の組織塊の形状を正確に保持しつつ(摘出前の組織塊の形状と同じか略同じ)、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ないものとなる。
〔第2実施形態〕
図5および図6(a)に示す生体標本作製器具5は、前述の生体標本作製器具1aに拡張部材51を組み合わせたものである。従って、前述の生体標本作製器具1aと同じ部分(本体部10、蓋体12、吊り下げ紐3)については、同じ符号を付し、その構造および作用の説明を省略する。なお、液体貯留部2については、生体標本作製器具1aと同じものであるため、その図示、構造および作用の説明を省略し、後述する変形例3、4についても同様である。
拡張部材51は、合成樹脂製(本実施形態ではポリプロピレン製)であり、薄板である表ライナー511と、薄板である裏ライナー512と、表ライナー511と裏ライナー512の間に配置された波形板である中芯513からなり、中芯513の表面(図6(a)において正面側)に表ライナー511が、裏面(図6(a)において背面側)に裏ライナー512が、それぞれ接着されて一体となっている。
表ライナー511には、板厚方向に貫通した通液孔514が複数開口しており、裏ライナー512も同様の通液孔が複数開口(図示は省略)している。
拡張部材51は、波形である中芯513によって、図6(a)における上下方向に亘る複数の空隙が形成されており、この空隙と同空隙の近傍に形成された通液孔514とが連通した構造となっている。つまり、拡張部材51の上方から液体が浸入すると、下方のみならず、拡張部材51の板厚方向(換言すると、拡張部材51の表裏両面)からも、通液孔514を通じて、液体が流出可能となっている。
本実施形態における拡張部材51は厚みが3mm〜5mm程度であるが、これに限定するものではなく、例えば、1mm以上10mm以下程度であることが好ましい。1mm未満であると剛性が低下するおそれがあり、また、10mmを超えると、挿入された拡張部材の体積によって、収容された組織塊の一部が上方に押し上げられて変形するおそれがあるためである。この点は、後述する拡張部材の各変形例においても同様である。
(作 用)
生体標本作製器具5の作用について、拡張部材51を中心に説明する。
なお、従来技術である図8に示す生体標本作製方法は、切り開くことで厚みが薄くなるもの(例えば消化器官等)の固定には適しているが、脳、肝臓、脾臓等の厚みがある臓器や、筋肉、乳腺組織等の組織塊を対象とした場合、全体に液体固定剤が浸透しにくく、加えて、組織塊等を固定する板側から液体固定剤が浸透しないか、または浸透しにくい。一方、図8に示す生体標本作製方法であっても、時間を掛ければ組織塊の固定は可能であるが、組織塊への液体固定剤の浸透にあまりにも時間が掛かりすぎると、摘出した組織塊の自己融解や腐敗が始まり、病理組織の構造が不明瞭となるため、サンプルとしての信頼性が下がり、正しい診断も困難となるおそれがある。このような課題を解決すべく、生体標本作製器具5は、拡張部材51と組み合わせて使用される。
ところで、発明者による本発明の試作段階では、単に、組織塊Mの任意の箇所にメス等で切り目Rを形成するだけでは、切り目への液体固定剤の浸入が十分ではない事例が見受けられた。これは、組織塊を容器等に入れた場合、組織塊自体の重量等の要因によって組織塊の中央方向への押圧力が生じ、これによって、形成した切り目の一部または全部が閉じてしまうことがあることに起因すると考えられる。しかし、本実施の形態のように、切り目Rに拡張部材51を挿入することにより、このような現象を回避することができる。
生体標本作製器具5の本体部10内に組織塊Mを入れる。一般的に、大きな塊である組織塊Mは、液体固定剤の浸透に時間が掛かるため、浸透を促進すべく、外面のみならず内側からも液体固定剤を浸透させることができるように、組織塊Mの任意の箇所にメス等の刃物で切り目Rを複数形成し、その切り目Rに拡張部材51を挿入する。
そして、液体固定剤中に、拡張部材51が挿入された組織塊Mを収容した生体標本作製器具5を入れると、上方側から拡張部材51の内部に液体固定剤が流入し、下方側(即ち、切り目Rの奥)へ液体固定剤が流出する。これと同時に、拡張部材51の各通液孔514からも板厚方向(即ち、切り目Rの肉壁側)へ液体固定剤が流出する。
このようにして、切り目R内において、拡張部材51を介して流入した液体固定剤は、下方から上方に回ると共に、各通液孔514からも流出することで、拡張部材51の表面と肉壁表面の間の隙間を充填するように満たしながら縦横方向に広がり、切り目R内の肉壁のほぼ全ての領域に偏りなく届く(肉壁と液体固定剤が接触する)。
この拡張部材51の作用により、液体固定剤が組織塊Mの切り目Rの肉壁表面に至る時間を短くでき、かつ、同箇所に至って充填される液体固定剤の量も十分なものとなる。
そして、切り目R内の肉壁に至った液体固定剤は、組織塊Mの中側から浸透し、当該部分から固定化処理が進んでいく。また、前述の生体標本作製器具1aの作用でも説明した通り、生体標本作製器具5においても、本体部10を透過した液体固定剤によって組織塊Mの表面側からも固定化処理が進む。
つまり、生体標本作製器具5によれば、組織塊Mの内外から同時に固定化処理が進行するため、固定化処理が終わるまでの時間を大幅に短縮することができる。また、組織塊Mを、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない生体標本にすることができる。
このような短時間で作製され、かつ固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない生体標本によれば、摘出後の組織塊の劣化および変形が最小限に抑えられる。これにより、腫瘍部や変性部の位置が正しく保たれ、サンプルとしての信頼性が向上する。特に、腫瘍部や変性部の位置が正しく保たれていると、固定化処理後の組織塊を用いた病理組織の診断を行った際に、摘出前に撮影した病変部分の画像等との対比も容易になるという優れた利点があり、術後の正しい診断に繋がる。
また、拡張部材51は、合成樹脂製であることから繰り返しの使用が可能であり、ランニングコスト抑制が期待できる。また、拡張部材51は、簡易な構造であるため、製造コストの抑制が期待され、イニシャルコスト抑制も期待できる。
本実施形態において、拡張部材51は、合成樹脂製であるが、これに限定するものではなく、例えば、金属や紙質材等の他の素材で形成したものであってもよい。
また、拡張部材51の構造は前述の通りであるが、これに限定するものではなく、後述する他の構造であってよく、要するに、切り目R内の肉壁の間にスペースを形成することができ、同部分に液体固定剤が浸入して、浸入した液体固定剤が肉壁に浸透できるように構成されたものであれば、その構造は限定されない。例えば、拡張部材は、板体のみならず、円筒体、角筒体等の形状であってもよい。
本実施形態において、拡張部材51には通液孔が形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、板面に形成された通液可能な溝(通液溝)を採用したものであってもよい。
本実施形態において、生体標本作製器具5は、前述の生体標本作製器具1aと、拡張部材51の組み合わせからなるものであるが、これに限定するものではなく、例えば、組織塊の収容部分については生体標本作製器具1bと置き換えてもよい。
なお、切り目Rを形成する工程は、本体部10内に組織塊Mを入れる前に行ってもよく、その場合、本体部10内に組織塊Mを入れた後に拡張部材51を挿入してもよいし、本体部10内に組織塊Mを入れる前に拡張部材51を挿入してもよい。
本実施形態では、図5に示すように、組織塊Mに形成される切り目Rおよび同切り目Rに挿入される拡張部材51が、平行に配列された態様であるが、これに限定するものではなく、生体標本の作製担当者が自由に配列してもよい。但し、作製された生体標本を同一方向にスライスすることが決まっているような場合は、スライス後の生体標本が途中で断絶するような無秩序な配列にすることは好ましくない。
本実施形態を示す図5において、組織塊Mの中央部分に隠れる癌細胞Cを破線で示している。このような診断対象となるような重要部分がある場合、その部分を避けるように拡張部材51を配置してもよい。なお、図5においては、癌細胞Cの左右両側に、幅が狭い拡張部材51を配置している。これにより、組織塊Mにおいて液体固定剤が浸入する切り目Rの隣接間隔が広がりすぎなくて済む。
本実施形態では、拡張部材51は、前述の生体標本作製器具1aとの組み合わせ使用が好適であるが、単独での使用を除外するものではない。
<変形例3>
図6(b)に示す拡張部材6は、拡張部材51の変形例である。拡張部材6は、植物繊維を圧縮して形成された板材であり、吸液性を有している。
(作 用)
拡張部材6を前述の生体標本作製器具5の拡張部材51と置き換えた場合の作用を説明する。
拡張部材6が挿入された組織塊Mを収容した生体標本作製器具5を液体固定剤中に沈めると、液体固定剤が拡張部材6上部側から内部へ染み込む。拡張部材6に染み込んだ液体固定剤は、拡張部材6の保液可能量を超過すると、外部(即ち、切り目Rの奥および周囲の肉壁の方向)へ流出する。
流出した液体固定剤は、拡張部材6の表面と肉壁表面の間の隙間を充填するように満たしながら縦横方向に広がり、切り目R内の肉壁のほぼ全ての領域に偏りなく届く。また、拡張部材6はそれ自体が液体固定剤を含んでいるので、拡張部材6表面に接触した肉壁へ直接液体固定剤を浸透させることができる。
つまり、拡張部材6によれば、拡張部材51と同様、組織塊Mの固定化処理が終わるまでの時間を大幅に短縮することができ、組織塊Mを、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない生体標本にすることができる。
本変形例において、拡張部材6は、前述の材料により形成されたものであるが、これに限定するものではなく、例えば、化学繊維を圧縮して形成されたものであってもよいし、板状の和紙、スポンジや軽石のような多孔質の材料等であって、吸液性を有しているものであってもよい。なお、吸液性を有する素材であっても、高吸水性樹脂のように高い保水性を有し、吸収した液体の排出に時間が掛かるものは好ましくなく、吸収した液体が時間を置かずに流出する程度の保水力で有する素材であることが好ましい。
<変形例4>
図7(a)、(b)に示す拡張部材7は、拡張部材51の変形例である。
拡張部材7は、第1フレーム71と第2フレーム72との組み合わせにより構成され、組み合わせ時において拡張部材7の上部に開口部73が形成される。拡張部材7は、第1フレーム71と第2フレーム72の間の領域に空隙を有しており、同空隙と開口部73は連通している。
第1フレーム71は、上下左右に配置された枠部材(符号省略)と、枠部材の内側の領域に配置された網状の透液部711と、枠部材の下方に取り付けられた刃部712により構成される。刃部712は、左右の両端よりも中央が突き出たV形に形成されている。
第2フレーム72は、上下左右に配置された枠部材(符号省略)と、枠部材の内側の領域に配置された網状の透液部721と、左右の枠部材の間のスペースに、同左右の枠部材と平行になるように配置された3本のスペーサー部722により構成される。各スペーサー部722は、その幅が拡張部材7の厚みとほぼ同じであり、透液部711と透液部721が互いに接触しないように、間隔を保持する。
(作 用)
拡張部材7を前述の生体標本作製器具5の拡張部材51と置き換えた場合の作用を説明する。
拡張部材7は、使用時において下端となる側に刃部712を有しているため、組織塊Mに予め切り目を形成しなくとも、直接組織塊Mに挿入することができる。通常、直線状の刃は、押すか引くかして刃を動かすことによって切断するものであるが、拡張部材7の刃部712はV形であるため、先端が刺さった後は、押圧するのみで左右方向に切り開かれていくので、切り目の形成と拡張部材7の挿入を同時に行うことができる。
そして、拡張部材7の挿入後、スペーサー部722によって、第1フレーム71と第2フレーム72を組み合わせた際に生じる空隙が、板厚方向に加わる押圧力によって狭くならないように作用する。つまり、このスペーサー部722の存在により、切り目R内の対向する肉壁が互いに接触して固定ムラが生じないように、間隔を保持することができる。
拡張部材7が挿入された組織塊Mを収容した生体標本作製器具5を液体固定剤中に沈めると、液体固定剤が拡張部材7上方の開口部73から内部へ流入し、拡張部材7の透液部711と透液部721から板厚方向(即ち、切り目Rの肉壁側)へ液体固定剤が流出する。流出した液体固定剤Hは、拡張部材6の表面と肉壁表面の間の隙間を充填するように満たしながら縦横方向に広がり、切り目R内の肉壁のほぼ全ての領域に偏りなく届く。
つまり、拡張部材7によれば、拡張部材51と同様、組織塊Mの固定化処理が終わるまでの時間を大幅に短縮することができ、組織塊Mを、固定ムラが無いか、または固定ムラが少ない生体標本にすることができる。
また、拡張部材7は、使用後に、第1フレーム71と第2フレーム72を外して清掃することができるので、メンテナンスがしやすく、かつ衛生的である。
本変形例において、拡張部材7は、刃部712がステンレススチール、その他の部品は合成樹脂により形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、刃部はセラミックや紙質材料等で形成したものであってもよいし、刃部以外の部品をステンレススチール等の金属等の素材で形成してもよい。
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
1a、1b 生体標本作製器具
10 本体部
101 フレーム部
102 受け部分
103 ファスナー部
104 上部開口
12 蓋体
121 ファスナー部
14 脚部
141 支持脚
142 着底部
2 液体貯留部
21 液体貯留部内底
22 上縁部
3 吊り下げ紐
4 生体標本作製器具
41 本体部
42 支持脚
5 生体標本作製器具
51 拡張部材
511 表ライナー
512 裏ライナー
513 中芯
514 通液孔
6 拡張部材
7 拡張部材
71 第1フレーム
711 通液部
712 刃部
72 第2フレーム
721 通液部
722 スペーサー部
73 開口部
H 液体固定剤
M 組織塊
R 切り目
C 癌組織
90 組織塊
91 板
92 固定ピン
93 液体固定剤
94 板に面した部分の組織

Claims (9)

  1. 組織塊を浸漬して固定化するための液体固定剤を貯留する液体貯留部と、
    液体透過性を有する略半球状のカップ体であり、前記組織塊を収容して前記液体貯留部内の液体固定剤中に保持する受け部分を有する本体部と、
    前記本体部を、前記受け部分が前記液体貯留部の内壁に接触しないように前記液体貯留部内に支持する支持部と、
    前記組織塊に形成されている切り目に挿入されると共に、前記切り目の隙間を所定間隔に拡張して、前記切り目内の組織壁に前記液体固定剤が浸透可能な状態で保持するための拡張部材とを備える
    生体標本作製器具。
  2. 前記本体部に収容された組織塊の液体固定剤中での浮上による本体部からの離脱を防止する浮上防止構造を備える
    請求項1に記載の生体標本作製器具。
  3. 前記浮上防止構造が、前記受け部分に形成された上端開口縁に設置され、前記上端開口縁の一部または全部を覆う蓋体である
    請求項2に記載の生体標本作製器具。
  4. 前記蓋体の下面が、収容する前記組織塊の上部と当接する
    請求項3に記載の生体標本作製器具。
  5. 前記蓋体が液体透過性を有する
    請求項3または4に記載の生体標本作製器具。
  6. 前記拡張部材が、液浸透性、吸液性、保液性、通液性のうちの少なくとも一つの性質を有する素材および/または構造により形成されたものである
    請求項1、2、3、4または5に記載の生体標本作製器具。
  7. 前記拡張部材が、板厚方向と板面方向の少なくとも一方に通液路が形成される板状部材である
    請求項1、2、3、4、5または6に記載の生体標本作製器具。
  8. 組織塊を浸漬して固定化するための液体固定剤を貯留する液体貯留部と、
    液体透過性を有する略半球状のカップ体であり、前記組織塊を収容して前記液体貯留部内の液体固定剤中に保持する受け部分を有する本体部と、
    前記本体部を、前記受け部分が前記液体貯留部の内壁に接触しないように前記液体貯留部内に支持する支持部と、
    前記組織塊を切開して切り目を形成する先端が尖鋭に形成されたテーパ構造を有し、前記切り目に収まった時、前記切り目の隙間を所定間隔に拡張して、前記切り目内の組織壁に前記液体固定剤が浸透可能な状態で保持するための拡張部材とを備える
    生体標本作製器具。
  9. 組織塊を保持する受け部分を有する本体部を、前記組織塊を固定化するための液体固定剤を貯留する液体貯留部内に、前記受け部分が前記液体貯留部の内壁に接触しないように支持部を介して配置した後、前記組織塊を前記受け部分に収容して保持し、保持した前記組織塊の切り目に拡張部材を挿入して前記切り目の隙間を所定間隔に拡張して、前記切り目内の組織壁に前記液体固定剤が浸透可能な状態で保持し、前記液体貯留部内に液体固定剤を所定量注入して、前記受け部分内で前記液体固定剤に前記組織塊を浸漬して前記液体固定剤を固化させる
    生体標本作製方法
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