JP6795704B2 - インクジェット記録用水性インク組成物、画像形成方法及び樹脂微粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録用水性インク組成物、画像形成方法及び樹脂微粒子に関する。
画像データ信号に基づき、紙等の記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式等の記録方法がある。
インクジェット記録方法は、印刷版を必要とせず、画像形成部のみにインクを吐出して記録媒体上に直接画像形成を行う。そのため、インクを効率的に使用でき、ランニングコストが安くなる。更に、インクジェット記録方法は印刷装置も従来の印刷機に比べ比較的低コストで、小型化も可能であり、騒音も少ない。このように、インクジェット記録方法は他の画像記録方式に比べて種々の利点を兼ね備えている。
インクジェット記録方法に用いるインクには、目的の画像を精度良く、安定して形成するために、ノズルから所望量のインクを安定的に吐出できる吐出安定性が求められる。また、インクには、外部から力を加えた際に傷付いたり剥がれたりしない機械強度(耐擦性)を示す画像を形成できるものであることも求められる。
上記の要求を満たすべくインクの改良が進められている。例えば、コアシェル構造を有する樹脂微粒子を含有するインクが種々提案されている(特許文献1〜4参照)。
具体的には、特許文献1には、コアポリマー及びシェルポリマーのガラス転移温度を規定したコアシェル構造の重合体微粒子を含有するインクジェット記録用インク組成物が記載されている。また、特許文献2には、特定のモノマーに由来するユニットを有するシェルポリマーの存在下でコアポリマーを重合したコアシェル構造を有するポリマー微粒子を含有するインクジェット用のクリアインクが記載されている。更に、特許文献3には、コアとシェルを有する特定の樹脂粒子と、多価金属イオンとを含有する水性インクが記載されている。特許文献4には、色材、及び、特定のシェル部と特定のコア部とを有する樹脂粒子を含有するインクジェット用インクが記載されている。
特開2014−208738号公報 特開2011−11449号公報 特開2017−101178号公報 特開2013−136744号公報
インクジェット記録方法はこれまで主にオフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野で用いられてきた。更に、近年は、商業印刷分野にまでその利用が拡大し、インクジェット記録の高速化も進んでいる。これに伴いインクの吐出安定性に対する要求は年々高度化している状況にある。インクジェット記録方法には、画像形成後にノズルを放置すると、例えば画像の形成を一旦休止(中断)すると、ノズルが目詰まりするという特有かつ喫緊の解決すべき問題がある。そのため、インクジェット記録方法に用いるインクには、一旦休止後にも正常に吐出される特性(レイテンシ、放置回復性ともいう。)が強く求められている。しかも、インクジェット記録方法に用いるインクにおいても、画像を形成した記録媒体を積み重ねた際等に、重ねた記録媒体の表裏の間の色移り又は記録媒体同士の接着を防ぐ性能(耐ブロッキング性)を有する画像を形成できることが求められる。
本発明は、インクジェット記録方法に適用した際のレイテンシに優れ、かつ耐擦性及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成できるインクジェット記録用水性インク組成物、及び、このインクジェット記録用水性インク組成物を用いた画像形成方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、インクジェット記録用水性インク組成物に配合することにより、このインクジェット記録用水性インク組成物に高いレイテンシを付与することができ、更に、形成した画像の耐擦性及び耐ブロッキング性をも高めることも可能とする樹脂微粒子を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、カルボキシ基等の特定の酸性基等又はその塩が特定の基を介して結合している特定の構造単位(繰り返し単位)と、特定のアルキレンオキシ基を有する構造単位とを組み合わせて有するポリマーを少なくともシェルポリマーとして用い、かつコアとシェルのポリマー間のガラス転移温度の関係を制御したコアシェル構造の樹脂微粒子を、水性媒体中に含有させた水性インク組成物が、インクジェット記録のインクとして用いた際のレイテンシに優れること、更にこの水性インク組成物を用いて形成した画像の耐擦性及び耐ブロッキング性が優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
<1>水性媒体と、粒子内部に顔料を含まない樹脂微粒子とを含むインクジェット記録用水性インク組成物であって、
樹脂微粒子が、コアポリマーと、コアポリマーを被覆するシェルポリマーとを含有するコアシェル構造を有し、
シェルポリマーが、下記式(1)で表される構造単位と、下記式(2A)若しくは式(2B)で表される構造単位とを有し、
コアポリマーのガラス転移温度がシェルポリマーのガラス転移温度より高く、ガラス転移温度の差が20℃以上であり、かつ、シェルポリマーのガラス転移温度が20〜130℃である、インクジェット記録用水性インク組成物。
Figure 0006795704
式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、芳香族環基を示す。Aは炭素数2〜20のアルキレン基を示す。mは1〜100の整数である。
式(2A)及び式(2B)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。L1Aは、単結合、又は式中のカルボニル炭素原子とY1Aとを連結する最少原子数が6以下の連結基を示す。Y1Aは、L1Aが単結合である場合、−OMを示し、L1Aが連結基である場合、−C(=O)OM、−S(=O)OM又は−OS(=O)OMを示す。Y1Bは−C(=O)OM、−S(=O)OM又は−OS(=O)OMを示す。Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示す。
<2>式(1)で表される構造単位が、下記式(3)で表される構造単位である、<1>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
Figure 0006795704
式中、R及びRは上記の通りである。mは2〜100の整数である。
>シェルポリマー中の、式(1)で表される構造単位の含有率が30質量%以下である、<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
>コアポリマー及びシェルポリマーの少なくとも一方が、芳香族環又は脂肪族環を有するエチレン性不飽和化合物由来の構造単位を有する<1>〜<>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
>芳香族環又は脂肪族環を有するエチレン性不飽和化合物由来の構造単位が、下記一般式(A)〜(E)のいずれかで表される<>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
Figure 0006795704
一般式(A)〜(E)中、R11及びR12はメチル又は水素原子を示す。R13は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。一般式(A)及び一般式(B)中のnは0〜5の整数であり、一般式(C)中のnは0〜11の整数である。L11は単結合、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−若しくは−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を示す。
>コアポリマー中の、一般式(A)〜(E)のいずれかで表される構造単位の含有量が10〜90質量%であり、
シェルポリマー中の、一般式(A)〜(E)のいずれかで表される構造単位の含有量が70質量%以下である、<>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
>樹脂微粒子の含有量が、インクジェット記録用水性インク組成物の全質量に対して1〜15質量%である<1>〜<>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
>顔料を含有する<1>〜<>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
>上記<>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程を含む、画像形成方法。
10>インクジェット記録用水性インク組成物を、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に直接付与する<>に記載の画像形成方法。
11>コアポリマーと、コアポリマーを被覆するシェルポリマーとを含有するコアシェル構造を有し、粒子内部に顔料を含まない樹脂微粒子であって、
シェルポリマーが、下記式(1)で表される構造単位と、下記式(2A)若しくは式(2B)で表される構造単位とを有し、
コアポリマーのガラス転移温度がシェルポリマーのガラス転移温度より高く、前記ガラス転移温度の差が20℃以上であり、かつ、シェルポリマーのガラス転移温度が20〜130℃である、樹脂微粒子。
Figure 0006795704
式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、芳香族環基を示す。Aは炭素数2〜20のアルキレン基を示す。mは1〜100の整数である。
式(2A)及び式(2B)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。L1Aは、単結合、又は式中のカルボニル炭素原子とY1Aとを連結する最少原子数が6以下の連結基を示す。Y1Aは、L1Aが単結合である場合、−OMを示し、L1Aが連結基である場合、−C(=O)OM、−S(=O)OM又は−OS(=O)OMを示す。Y1Bは−C(=O)OM、−S(=O)OM又は−OS(=O)OMを示す。Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示す。
12>式(1)で表される構造単位が下記式(3)で表される構造単位である、<11>に記載の樹脂微粒子。
Figure 0006795704
式中、R及びRは上記の通りである。mは2〜100の整数である。
本明細書において、特に断りがない限り、特定の符号で表示された置換基、連結基、配位子、構造単位等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
本明細書において、各置換基の例として説明される各基の「基」は無置換の形態及び置換基を有する形態のいずれも包含する意味に用いる。例えば、「アルキル基」は置換基を有してもよいアルキル基を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両者を含む意味に用いる。このことは、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」及び「(メタ)アクリロイル基」についても同様である。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物は、インクジェット記録方法に適用した際のレイテンシに優れ、かつ耐擦性及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。本発明の画像形成方法は、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れた画像を安定して(目詰まりなく)形成することができる。本発明の樹脂微粒子は、これを水性インク組成物に配合することにより、インクジェット記録方法に適したレイテンシを水性インク組成物に付与することができ、更に耐擦性及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物(以下、単に、本発明の水性インク組成物ということがある。)、画像形成方法及び樹脂微粒子の好ましい実施形態について以下に説明する。
[インクジェット記録用水性インク組成物]
本発明の水性インク組成物は、水性媒体と特定の樹脂微粒子とを含有する。また、本発明の水性インク組成物は、通常は顔料を含有する。本発明の水性インク組成物が顔料を含有しない場合は、クリアインクとして使用することができ、顔料を含有する場合はカラー画像形成用途に用いることができる。
<水性媒体>
本発明に用いる水性媒体は少なくとも水を含み、必要に応じて水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含んで構成される。
− 水 −
本発明に用いる水としては、イオン交換水、蒸留水等のイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。また、水性インク組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、50〜70質量%であることが更に好ましい。
− 水溶性有機溶剤 −
本発明における水性媒体は水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。水溶性有機溶剤を含有することで、乾燥防止、湿潤又は浸透促進の効果を得ることができる。ここで、乾燥防止とは、噴射ノズルのインク吐出口にインクが付着乾燥して凝集体ができ目詰まりするのを防止することを意味する。乾燥防止又は湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また水溶性有機溶剤は、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、炭素数1〜4のアルキルアルコール類、アルカンジオール(多価アルコール類)、糖アルコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。
炭素数1〜4のアルキルアルコール類としては、特に限定されないが、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
アルカンジオールとしては、特に限定されないが、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、更には後述するもの等が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、特に限定されないが、下記の各化合物が挙げられる。
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノノニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノノニルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、
トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノノニルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノヘプチルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘプチルエーテル、ジプロピレングリコールモノオクチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘプチルエーテル、トリプロピレングリコールモノオクチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、
1−メチル−1−メトキシブタノール
水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
乾燥防止又は湿潤の目的としては、多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
浸透促進の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールが好適である。脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
また本発明における水溶性有機溶剤としては、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、下記構造式(S)で表される化合物の少なくとも1種を含有することもできる。
Figure 0006795704
構造式(S)において、t、u及びvは、各々独立に1以上の整数を表し、t+u+v=3〜15を満たし、t+u+vは3〜12の範囲が好ましく、3〜10の範囲がより好ましい。t+u+vの値は、3以上であると良好なカール抑制力を示し、15以下であると良好な吐出性が得られる。構造式(S)中、AOは、エチレンオキシ基(EO)及びプロピレンオキシ基(PO)の少なくとも一方を表し、中でもプロピレンオキシ基が好ましい。上記(AO)、(AO)、及び(AO)における各AOはそれぞれ同一でも異なってもよい。なお、上記構造式(S)において、EO及びPOはそのエチレン基又はプロピレン基が水酸基側に位置して結合する。
本発明において水溶性有機溶剤は、1種単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
また水溶性有機溶剤の水性インク組成物中における含有量としては、1質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、更に好ましくは7質量%以上30質量%以下である。
<樹脂微粒子>
本発明の水性インク組成物は、コアポリマーと、コアポリマーを被覆するシェルポリマーとを含有するコアシェル構造を有する樹脂微粒子を含有する。この樹脂微粒子は、少なくともシェルポリマーが、下記式(1)で表される構造単位(I)と、下記式(2A)若しくは式(2B)で表される構造単位(II)とを有している。また、樹脂微粒子は、コアポリマーのガラス転移温度がシェルポリマーのガラス転移温度より高く、かつ、シェルポリマーのガラス転移温度が20〜130℃である。この樹脂微粒子を、単に「本発明に用いる樹脂微粒子」ともいう。
本発明の水性インク組成物が上記樹脂微粒子を含有していると、インクジェット記録方法に適用した際のレイテンシに優れ、かつ耐擦性及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。その詳細な理由は定かではないが、次のように考えられる。
すなわち、樹脂微粒子を形成するシェルポリマーは、特定の基Y1A又はY1Bを有する構造単位(II)を含み、この特定の基が樹脂微粒子において所謂荷電反発基として機能する。これにより、シェルポリマーは、樹脂微粒子同士を静電的に反発させて、樹脂微粒子の分散安定作用を奏しうる。しかも、シェルポリマーは、この構造単位(II)に組み合わせて、親水性のアルキレンオキシ基(式(1)中、−(A−O)m−で表される基)を含む構造単位(I)を有する。このような構造単位(I)と(II)とが協働することにより、水性インク組成物中での樹脂微粒子の安定性が向上し、水性インク組成物のゲル化、更には樹脂微粒子ないし水性インク組成物の凝集が抑えられ、上述の分散安定作用が効果的に発現する。その結果、ノズルの目詰まりが発生しにくくなり、高いレイテンシを示すと考えられる。
一方、上述の、特定の組み合わせで構造単位(I)と構造単位(II)とを有するシェルポリマーを含む樹脂微粒子において、シェルポリマーのガラス転移温度を20〜130℃に設定し、かつコアポリマーのガラス転移温度をシェルポリマーよりも高く設定することにより、上述の作用の発現を損なうことなく、本発明の水性インク組成物による画像形成の際に、樹脂微粒子のコアシェル構造を形成する各々のポリマーが異なる機能を担うことができる。その結果、耐擦性と耐ブロッキング性を共に高めることができる。すなわち、この樹脂微粒子は、ガラス転移温度の低いシェルポリマーによる熱融着力と、ガラス転移温度の高いコアポリマーによる熱安定性とを、バランスよく発揮し、維持できると考えられる。そのため、本発明の樹脂微粒子は、優れたレイテンシを示しつつも、画像の耐擦性及び耐ブロッキング性を高めることができる。
この樹脂微粒子は、上述のように、コアポリマーと、コアポリマーを被覆するシェルポリマーとを含有するコアシェル構造を有している。このコアシェル構造において、コアポリマー(コアポリマーが形成するコア層)はその少なくとも一部がシェルポリマーで被覆されていればよく、コアポリマーの被覆量は特に限定されない。また、シェルポリマーからなるシェル層の層厚も特に限定されない。本発明においては、被覆量、シェル層の層厚は、例えば、コアポリマーとシェルポリマーとの質量比で特定することができ、質量比[コアポリマー:シェルポリマー]で示すと、例えば、80〜20:20〜80であることが好ましく、70:30〜30:70であることがより好ましい。
樹脂微粒子を形成するコアポリマー及びシェルポリマー(両者を合わせて、コア/シェルポリマーということがある。)は、それぞれ、1種でも2種以上でもよい。また、樹脂微粒子は、コアポリマー及びシェルポリマーとは異なるポリマーを本発明の効果を損なわない範囲で有していてもよい。
シェルポリマーは、構造単位として、後述する構造単位(I)の少なくとも1種と、構造単位(II)の少なくとも1種とを有している。シェルポリマーは、構造単位(I)及び構造単位(II)以外に、後述するその他の構造単位(III)を有していることが好ましい。
コアポリマーは、ガラス転移温度の条件を満たす限り、任意の構造単位を有していればよい。例えば、このコアポリマーは、必ずしも、構造単位(I)と構造単位(II)とを有している必要はなく、構造単位(I)及び構造単位(II)のいずれか一方又は両方を有していなくてもよい。コアポリマーは、後述するその他の構造単位(III)を有していることが好ましく、この構造単位(III)の1種又は2種以上の重合体であってもよく、構造単位(III)と、構造単位(I)及び構造単位(II)のいずれか一方又は両方との共重合体であってもよい。
コアポリマー及びシェルポリマーそれぞれを形成する構造単位の種類等は、シェルポリマーのガラス転移温度、及び、両ポリマーのガラス転移温度の差(絶対値)が後述する範囲を満たすように、選択される。
本発明の水性インク組成物は、本発明に用いる樹脂微粒子を1〜15質量%含有することが好ましく、1〜10質量%含有することがより好ましく、4〜10質量%含有することが更に好ましい。本発明の水性インク組成物は、本発明に用いる樹脂微粒子を1〜15質量%含有することにより、水性インク組成物の吐出安定性、レイテンシが良好となる。
以下に、コアポリマー及びシェルポリマーを形成する構造単位について具体的に説明する。
− 構造単位(I) −
構造単位(I)は下記式(1)で表される。
Figure 0006795704
式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは水素原子又はメチルが好ましく、より好ましくはメチルである。
は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、芳香族環基を示す。Rは、水素原子、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、水素原子又は直鎖状のアルキル基がより好ましい。
アルキル基は、好ましくは炭素数1〜15のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、最も好ましくはメチルである。
芳香族環基は、芳香族環からなる基であれば特に限定されず、単環でも縮合環でもよく、芳香族炭化水素環基でも芳香族ヘテロ環基でもよい。芳香族炭化水素環基を形成する芳香族炭化水素環は、特に限定されないが、炭素数が6〜12であるものが好ましい。芳香族ヘテロ環基を形成する芳香族ヘテロ環は、環構成原子として、少なくとも1個以上のヘテロ原子と炭素原子とを含む。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、その数は、特に限定されないが、例えば、1〜2個である。環構成炭素原子の数は、特に限定されないが、好ましくは3〜20個であり、更に好ましくは3〜12個である。また、芳香族環(縮合環の場合、縮合環を形成する環)の環員数も、特に限定されないが、5員環又は6員環が好ましい。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビナフチル基等が挙げられる。
芳香族ヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チエノチオフェン等の5員環、若しくは5員環を含む縮合環、ピリジン環、ピリミジル環、ピラジン環、キノリン環、イソキノリン環等の6員環、若しくは6員環を含む縮合環が挙げられる。
芳香族環基は、芳香族炭化水素環基が好ましく、ベンゼン環基がより好ましい。
は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、特に限定されず、例えば、(シクロ)アルキル基、(シクロ)アルケニル基、(シクロ)アルキニル基、芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基等が挙げられる。中でも、アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
が置換基を有する場合、置換基は、Rに直結していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、特に限定されないが、例えば、−NH−、−S−、−О−、−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基が挙げられる。この連結基において、−NH−、−S−、−О−及び−C(=O)−が連結される数は、特に限定されないが、2〜5個が好ましい。上記基を2個以上連結して形成される連結基としては、例えば、−C(=O)−NH−、−C(=O)−S−、−NH−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−S−、−C(=O)−О−、−C(=O)−О−C(=O)−等が挙げられる。
は、炭素数2〜20のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数2〜15のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜10のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、特に好ましくはエチレン基である。
このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
構造単位(I)において、Aは、1種でも2種以上でもよい。Aが2種以上である場合、2種の(−A−O−)単位の結合様式は、ブロックでもランダムでもよい。Aが2種以上である場合、エチレンとプロピレンの組み合わせが好ましい。
は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、特に限定されず、例えば、Rが有していてもよい置換基が挙げられる。
は、1〜100の整数であり、構造単位(II)を有する樹脂微粒子であってもそのゲル化ないし凝集を効果的に抑制できる点で、好ましく2〜100の整数であり、より好ましくは2〜80の整数であり、更に好ましくは2〜50の整数である。
式(1)で表される構造単位は、下記式(3)で表される構造単位が好ましい。
Figure 0006795704
式(3)中、R及びRは式(1)のR及びRと同義であり、好ましいものも同じである。
は2〜100の整数である。mは、構造単位(II)を有する樹脂微粒子であってもそのゲル化ないし凝集を効果的に抑制できる点で、好ましくは2〜80の整数であり、より好ましくは2〜50の整数である。
構造単位(I)の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。下記構造単位において、Rとして採りうるアルキル基は、いずれも、直鎖状である。*は連結部位を示す。
Figure 0006795704
コア/シェルポリマーの各ポリマーは、構造単位(I)を1種又は2種以上有していてもよい。
− 構造単位(II) −
構造単位(II)は下記式(2A)又は式(2B)で表され、式(2A)で表されるものが好ましい。
Figure 0006795704
式(2A)において、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、式(1)のRと同義であり、好ましいものも同じである。
1Aは、単結合、又は、式(2A)中のカルボニル炭素原子とY1Aとを連結する最少原子数が6以下の連結基を示す。L1Aとして採りうる2価の連結基は、最少原子数が6以下であれば特に限定されず、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基、アリーレン基、−O−、−NH−、−S−若しくは−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基が挙げられる。連結する基の数は、2個以上であれば特に限定されず、例えば、2〜5個が好ましく、2〜3個がより好ましい。連結基は、アルキレン基、−NH−アルキレン基、−O−アルキレン基、−S−アルキレン基、−O−アリーレン基、−NH−アリーレン基、−O−アルキレン基−O−C(=O)−アルキレン基、又は−NH−アリーレン基がより好ましく、−O−アルキレン基又は−NH−アルキレン基が更に好ましい。
アルキレン基は、直鎖でも分岐を有していてもよいが、吐出安定性、レイテンシ、及び樹脂微粒子の安定性の観点から直鎖であることが好ましい。
アルキレン基の炭素数は、後述する最少原子数が6以下であることを満たすものであれば特に限定されない。例えば、L1Aがアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素数は、6個以下であり、好ましくは5個以下であり、より好ましくは2個又は3個である。L1Aがアルキレン基を含有する場合(上述の、2個以上連結して形成される連結基である場合)、アルキレン基の炭素数は、1〜3個が好ましく、1個又は2個がより好ましい。
1Aは、式(2A)中のカルボニル炭素原子とY1Aとを連結する最少原子数が6以下である。換言すると、カルボニル炭素原子とY1Aとを連結する原子鎖のうち最短鎖を構成する原子の結合数が6以下である。このような比較的短鎖の連結基L1Aを介してY1Aが結合する構造単位(I)を有すると、水性インク組成物中での樹脂微粒子の安定性が良くなる。また連結基L1Aが比較的短鎖であることで他のモノマー又は有機溶媒との親和性が高くなり、合成時の取り扱いが容易になるという利点がある。その一方で、連結基L1Aが短鎖であると、Y1Aが本来示す作用機能が効果的に発現せず、樹脂微粒子がゲル化ないし凝集して、インクジェット記録用水性インク組成物に、高いレイテンシ、優れた画像形成特性(耐擦性及び耐ブロッキング性)を付与できなくなる。しかし、本発明では、このような構造単位(II)を構造単位(I)と組み合わせて、樹脂微粒子を形成するシェルポリマーに組み込む。これにより、上述のように、本発明の樹脂微粒子は、優れたレイテンシを示しつつも、画像の耐擦性及び耐ブロッキング性を高めることができる。
1Aは、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、特に限定されず、例えば、Rが有していてもよい置換基が挙げられる。
1Aは、L1Aが単結合である場合、−OMを示し、L1Aが上記連結基である場合、−C(=O)OM、−S(=O)OM又は−OS(=O)OMを示す。このY1Aは、レイテンシと、画像の耐擦性及び耐ブロッキング性を高い水準で両立できる点で、L1Aが上記連結基である場合、−C(=O)OM若しくは−S(=O)OMが好ましく、−C(=O)OMがより好ましい。
Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示す。吐出安定性、レイテンシと樹脂微粒子の安定性の観点から、Mはアルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン又はカリウムイオンがより好ましく、カリウムイオンが更に好ましい。
本発明の水性インク組成物中において、Mは乖離(遊離)していてもよい。
式(2B)において、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、式(1)のRと同義であり、好ましいものも同じである。
1Bは、−C(=O)OM、−S(=O)OM又は−OS(=O)OMを示す。Y1Bは、レイテンシと、画像の耐擦性及び耐ブロッキング性を高い水準で両立できる点で、−C(=O)OM若しくは−S(=O)OMが好ましく、−C(=O)OMがより好ましい。
Mは、水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示し、Y1Aが有しうるMと同義であり、好ましいものも同じである。
式(2)中のベンゼン環において、Y1Bが結合する位置は、特に限定されないが、Rを有する炭素原子に結合する環構成炭素原子に対してパラ位が好ましい。
式(2)中のベンゼン環は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、特に限定されず、例えば、Rが有していてもよい置換基、更には上記Y1B等が挙げられる。
構造単位(II)の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造単位において、*は連結部位を示す。なお、以下で示す構造単位(II)の好ましい具体例は、上記式(2A)中のM及び式(2B)中のMが水素原子である構造を示すが、この水素原子に代えて、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを採用した形態も、上記構造単位(II)として好ましい。
Figure 0006795704
コア/シェルポリマーの各ポリマーは、構造単位(II)を1種又は2種以上有していてもよい。構造単位(II)を1種有する場合、式(2A)で表される構造単位であっても、式(2B)で表される構造単位であってもよい。また、構造単位(II)を2種以上有する場合、式(2A)又は式(2B)で表される構造単位を2種以上有していてもよく、式(2A)で表される構造単位の少なくとも1種と式(2B)で表される構造単位の少なくとも1種とを有していてもよい。
構造単位(I)と構造単位(II)との組み合わせは、特に限定されないが、構造単位(I)の好ましいものと構造単位(II)の好ましいものとを適宜に組み合わせることができる。例えば、構造単位(I)として上記式(3)で表される構造単位と、構造単位(II)として上記式(2A)で表される構造単位とを組み合わせることができる。
− その他の構造単位(III) −
コア/シェルポリマーの少なくとも一方を構成する、上記構造単位(I)及び構造単位(II)以外の構造単位(「他の構造単位(III)」という。)としては、特に限定されず、好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されている構造単位を挙げることができる。
コア/シェルポリマーの少なくとも一方は、他の構造単位(III)として、芳香族環又は脂肪族環を有するエチレン性不飽和化合物の構造単位(i)を含有することが好ましい。
構造単位(i)に含まれる芳香族環又は脂肪族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及び、炭素数5〜20の脂肪族炭化水素環が挙げられ、ベンゼン環、及び、炭素数6〜10の脂肪族炭化水素環が好ましい。
これらの芳香族環又は脂肪族環は置換基を有していてもよい。芳香族環又は脂肪族環が置換基を有する場合、置換基は、特に限定されないが、上記Y1A及びY1Bとして採りうる上述の基以外の置換基が挙げられる。
構造単位(i)を導く芳香族環又は脂肪族環を有するエチレン性不飽和化合物としては、化合物末端にエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、スチレン、又は、(メタ)アクリレート化合物、又は、(メタ)アクリルアミド化合物がより好ましく、置換基を有していてもよいスチレン、又は、(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。
上記エチレン性不飽和化合物としては、特に限定されないが、下記一般式(A)〜一般式(E)で表される構造単位を導く化合物等が挙げられ、より具体的には、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
構造単位(i)は、得られる画像の製造適性(ろ過性)の観点から、下記一般式(A)〜一般式(E)のいずれか1つの式で表される構造単位を含むことが好ましく、インク中での粒子の安定性の観点から、下記一般式(A)で表される構造単位を含むことがより好ましい。
Figure 0006795704
一般式(A)〜一般式(E)中、R11及びR12は、各々独立に、メチル基又は水素原子を表す。R13は、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1〜10のアルキル基を表す。一般式(A)及び一般式(B)中のnは0〜5の整数を示す。一般式(C)中のnは0〜11の整数である。L11は、単結合、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−若しくは−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を示す。
一般式(A)中、R11は水素原子であることが好ましい。
一般式(B)〜一般式(E)中、R12はメチル基であることが好ましい。
一般式(A)〜一般式(C)中、R13は、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。各式で表される構造単位が複数のR13を有する場合、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、一般式(C)で表される構造単位において、複数のR13が互いに結合して環を形成する場合、一般式(D)及び(E)で表される構造単位となることはない。
nは、いずれの式においても、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
一般式(B)中、L11は、一般式(B)中に記載されたカルボニル炭素原子との結合部位に−O−又は−NH−を含む2価の連結基が好ましく、上記カルボニル炭素原子との結合部位に−O−又は−NH−を含み、かつ、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基を含む2価の連結基がより好ましく、−OCH−又は−NHCH−が更に好ましく、−OCH−が特に好ましい。
一般式(C)〜一般式(E)中、L11は、一般式(C)〜一般式(E)中に記載されたカルボニル炭素原子との結合部位に−O−又は−NH−を含む2価の連結基が好ましく、−O−又は−NH−がより好ましく、−O−が更に好ましい。
一般式(A)で表される構造単位は、スチレンに由来する構造単位であることが好ましい。
一般式(B)で表される構造単位は、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましい。
一般式(C)で表される構造単位は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましい。
一般式(D)で表される構造単位は、イソボルニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましい。
一般式(E)で表される構造単位は、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましい。
コア/シェルポリマーの各ポリマーは、構造単位(i)を1種又は2種以上有していてもよい。
コア/シェルポリマーの少なくとも一方は、他の構造単位(III)として、上記構造単位(i)以外の構造単位(ii)を有していてもよい。
構造単位(ii)は、上記構造単位と重合可能な化合物由来のものであれば特に限定されず、(メタ)アクリルアミド化合物又は(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位であることがより好ましい。
構造単位(ii)は、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート化合物、又は、アルキル(メタ)アクリルアミド化合物が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。このアルキル(メタ)アクリレート化合物は、アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート化合物であることが更に好ましい。
構造単位(ii)が有する上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造(ただし、上記一般式(C)〜一般式(E)に包含されるものを除く。)を有していてもよい。
上記構造単位(ii)は置換基を有していてもよい。構造単位(ii)が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、上記Y1A及びY1B以外の置換基、例えば水酸基、アミノ基が挙げられる。
コア/シェルポリマーの各ポリマーは、構造単位(ii)を1種又は2種以上有していてもよい。
コア/シェルポリマーの少なくとも一方は、他の構造単位(III)として、上記構造単位以外の構造単位を有していてもよい。このような構造単位としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸系化合物又はその塩(上記アルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。)に由来する構造単位が挙げられる。
コアポリマー及びシェルポリマーそれぞれを形成する構造単位の含有量は、他の構造単位の種類及び含有量等を考慮して、シェルポリマーのガラス転移温度、及び、両ポリマーのガラス転移温度の差(絶対値)が後述する範囲を満たすように、選択される。
シェルポリマー中、上記構造単位(I)の含有量は、例えば、レイテンシ(吐出安定性)と、画像の耐擦性及び耐ブロッキング性を高い水準で両立できる観点から、更に所望により、樹脂微粒子の安定性の観点から、0質量%を越え、30質量%以下であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましく、1〜25質量%が更に好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。構造単位(I)の上記含有量は、シェルポリマーが複数種の構造単位(I)を含有する場合、各構造単位の含有量の合計とする。
コアポリマーが構造単位(I)を有する場合、コアポリマー中の構造単位(I)の含有量はシェルポリマーの含有量と同じである。
シェルポリマー中、上記構造単位(II)の含有量は、例えば、レイテンシと、画像の耐擦性及び耐ブロッキング性を高い水準で両立できる観点から、更に所望により、樹脂微粒子の安定性の観点から、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%がより好ましく、2〜15質量%が更に好ましい。構造単位(II)の含有量は、シェルポリマーが複数種の構造単位(II)を含有する場合、各構造単位の含有量の合計とする。
コアポリマーが構造単位(II)を有する場合、コアポリマー中の構造単位(II)の含有量はシェルポリマーの含有量と同じである。
コア/シェルポリマーの各ポリマー中、他の構造単位(III)のうち構造単位(i)の含有量は、それぞれ、樹脂微粒子の製造適性(ろ過性)の観点も考慮すると、下記範囲に設定されることが好ましい。シェルポリマー中の構造単位(i)の含有量は、0〜80質量%が好ましく、0〜75質量%がより好ましく、0〜70質量%が更に好ましい。コアポリマー中の構造単位(i)の含有量は、1〜100質量%が好ましく、5〜95質量%がより好ましく、10〜90質量%が更に好ましい。上記含有量は、各ポリマーが複数種の構造単位(i)を含有する場合、各構造単位の含有量の合計とする。
構造単位(i)の中で特に好ましいスチレン由来の構造単位については、吐出安定性、耐傷性の観点、更に所望により樹脂微粒子の製造適性(ろ過性)の観点を考慮すると、シェルポリマー中の含有量は、0〜50質量%が好ましく、0〜40質量%がより好ましく、0〜35質量%が更に好ましい。コアポリマー中の、スチレン由来の構造単位の含有量は、1〜100質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、15〜80質量%が更に好ましい。
コア/シェルポリマーの各ポリマー中、他の構造単位(III)のうち構造単位(ii)の含有量は、それぞれ、吐出性及び耐擦性の観点から、0〜90質量%であることが好ましく、0〜70質量%であることがより好ましい。上記含有量は、各ポリマーが複数種の構造単位(ii)を含有する場合、各構造単位の含有量の合計とする。
本発明においては、コアポリマー及びシェルポリマーは、それぞれ、上記構造単位(I)、(II)及び(III)を含有し、これらの構造単位の含有量の合計が100質量%となることが好ましい。
コアポリマー又はシェルポリマーが上記構造単位以外の構造単位を有する場合、上記構造単位以外の構造単位の含有量は、コアポリマー又はシェルポリマー中、0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましく、0〜10質量%が更に好ましい。
本発明に用いる樹脂微粒子(コアポリマー及びシェルポリマーを含む樹脂全体)のガラス転移温度(以下、樹脂微粒子のガラス転移温度ということがある。)は、得られる画像の耐傷性、耐ブロッキング性の観点から、20〜150℃が好ましく、40〜130℃がより好ましく、50〜120℃が更に好ましい。
本発明に用いる樹脂微粒子を形成するシェルポリマーのガラス転移温度は20〜130℃である。これにより、シェルポリマーによる融着性力を担保して画像の耐擦性をより向上させることができ、しかも、コアポリマーの高い熱安定性を維持して耐ブロッキング性を更に高めることができる。シェルポリマーのガラス転移温度は、20〜130℃が好ましく、30〜100℃がより好ましい。
本発明に用いる樹脂微粒子を形成するコアポリマーは、シェルポリマーよりも高いガラス転移温度を有している。これにより、シェルポリマーによる融着性力を担保して画像の耐擦性をより向上させることができ、しかも、コアポリマーの高い熱安定性を維持して耐ブロッキング性を更に高めることができる。コアポリマーのガラス転移温度とシェルシェルポリマーのガラス転移温度との差(Tg差)の絶対値は、0℃を越えるものであれば特に限定されないが、レイテンシと、画像の耐擦性及び耐ブロッキング性を高い水準で両立できる観点から、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは25℃以上であり、更に好ましくは30℃以上である。Tg差が小さすぎると、コアポリマーとシェルポリマーとの熱安定性の差が小さく、耐擦性又は耐ブロッキング性の一方が劣ることがある。ガラス転移温度との差の上限は、特に限定されないが、実際的には80℃以下である。
コアシェルポリマーのガラス転移温度は、シェルポリマーのガラス転移温度よりも高ければよく、例えば、レイテンシと、画像の耐擦性及び耐ブロッキング性を高い水準で両立できる観点から、70〜150℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。
上記樹脂微粒子、コアポリマー及びシェルポリマーのガラス転移温度は、従来公知の方法によって適宜に制御することができる。例えば、樹脂微粒子を構成するコア/シェルポリマーの各ポリマーの合成に用いるモノマーの種類若しくはその構成比率、樹脂微粒子を構成するポリマーの分子量等を適宜に調整することで、樹脂微粒子のガラス転移温度を所望の範囲に制御することができる。
本発明において、ガラス転移温度は、実測によって得られる測定Tgを適用する。測定Tgは、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて、昇温速度5℃/分で測定したときに、ガラス転移に伴いベースラインが変化しはじめる温度と、再びベースラインに戻る温度との平均として測定される。
ただし、樹脂の分解、感度等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは下記の式により計算されるものである。

1/Tg=Σ(X/Tg

ここで、計算対象となる樹脂はi=1からnまでのn種のモノマーが共重合しているとする。Xはi番目のモノマー成分の質量分率、Tgはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただし、Σはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tg)は、Polymer Handbook (3rd Edition) (J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
本発明に用いる樹脂微粒子を構成する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、7万以上であることが好ましく、8万〜100万であることがより好ましく、10万〜80万であることが更に好ましい。重量平均分子量を7万以上とすることで、得られる膜の機械物性をより向上させることができる。重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)を用いて、公知の方法で測定できる。
本発明に用いる樹脂微粒子を構成する樹脂、コア/シェルポリマーの各ポリマーは、いずれも、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。
本発明の水性インク組成物中において、本発明に用いる樹脂微粒子の粒径は、インク吐出性の観点から1〜400nmであることが好ましく、5〜300nmであることがより好ましく、20〜200nmであることが更に好ましく、20〜100nmであることが特に好ましく、20〜80nmであることが最も好ましい。
樹脂微粒子の上記粒径は体積平均粒径を意味する。この体積平均粒径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記樹脂微粒子は、上述の構造単位(I)と、構造単位(II)と、必要により構造単位(III)等とを用いて、コアシェル構造を有する樹脂の粒子を製造可能な方法により、製造することができる。樹脂の粒子を製造する方法としては、公知の方法を特に制限されることなく、適用できる。例えば、コアポリマーを合成するコア重合工程と、シェルポリマーを合成するシェル重合工程とを有する重合方法が挙げられる。必要により、コア重合の際、シェル重合の際、更にはシェル重合の後に、Y1A及び/又はY1BカチオンM交換反応を行うこともできる。
上記樹脂微粒子は、乳化重合法により調製することができる。乳化重合法は、水性媒体(例えば、水)中にモノマー、重合開始剤、乳化剤、及び、必要に応じて連鎖移動剤等を加えて調製した乳化物を重合させることで樹脂微粒子を調製する方法である。吐出安定性を低下させない範囲であれば、既知の乳化剤を別途添加してもよい。上記乳化剤としては、例えば、本発明の水性インク組成物に含有されてもよい、後述する界面活性剤(アニオン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤)が挙げられる。
上記重合開始剤は、特に制限されるものではなく、無機過硫酸塩(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系開始剤(例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸))、有機過酸化物(例えばペルオキシピバル酸−t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、二コハク酸ペルオキシド)等、又はそれらの塩を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でもアゾ系開始剤又は無機過酸化物を用いることが好ましい。
本発明における重合開始剤の使用量としては、全モノマー100質量部に対して、通常0.01〜5質量部であり、好ましくは0.2〜2質量部である。
上記連鎖移動剤としては、四ハロゲン化炭素、スチレン類の二量体、(メタ)アクリル酸エステル類の二量体、メルカプタン類、スルフィド類等の公知の化合物を用いることができる。中でも、特開平5−17510号公報に記載されているスチレン類の二量体又はメルカプタン類を好適に用いることができる。
本発明に用いる樹脂微粒子は、上記のような水性媒体中に分散していることが好ましい。本発明に用いる樹脂微粒子は、自己分散性樹脂微粒子であることがより好ましい。
本発明において、自己分散性樹脂微粒子とは、樹脂自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩、具体的には上記Y1A又はY1B)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性樹脂からなる微粒子をいう。分散状態とは、水性媒体中に水不溶性樹脂が液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性樹脂が固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
本発明に用いる樹脂微粒子は、顔料の分散剤として機能するものではなく、したがって粒子内部に顔料を含まない。
<顔料>
本発明の水性インク組成物は、1種又は2種以上の顔料が分散してなる形態が好ましい。
本発明の水性インク組成物に用いられる顔料の種類に特に制限はなく、通常の有機又は無機顔料を用いることができる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、又は多環式顔料が好ましい。アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料が挙げられる。多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料が挙げられる。染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックが挙げられる。
本発明に用いることができる顔料の具体例は、特開2007−100071号公報の段落番号0142〜0145に記載の顔料等が挙げられる。
本発明の水性インク組成物中の顔料の体積平均粒径は、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmが更に好ましい。体積平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、体積平均粒径が10nm以上であることで、耐光性が良好になる。水性インク組成物中の顔料の体積平均粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
また、本発明の水性インク組成物中の顔料の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ着色剤を、2種以上混合して使用してもよい。
なお、顔料の体積平均粒径は、上述の樹脂微粒子の体積平均粒径の測定と同様の方法で測定することができる。
本発明の水性インク組成物が顔料を含む場合、着色性、保存安定性の観点から、水性インク組成物中の顔料の含有量は、1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
− 分散剤 −
本発明の水性インク組成物が顔料を含む場合、顔料としては、顔料が分散剤によって水性媒体中に分散された着色粒子(以下、単に「着色粒子」という)を調製し、これを水性インク組成物の原料として用いることが好ましい。
上記分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性ポリマー分散剤でも水不溶性ポリマー分散剤のいずれでもよい。
上記低分子の界面活性剤型分散剤については、例えば、特開2011−178029号公報の段落0047〜0052に記載された公知の低分子の界面活性剤型分散剤を用いることができる。
上記ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等が挙げられる。
また、天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等が挙げられる。
更に、合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウム、アミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸又はメタクリル酸のホモポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸と他のモノマーとの共重合体等のように、カルボキシ基が導入された親水性高分子化合物が好ましい。
水不溶性ポリマー分散剤は、水不溶性のポリマーであって、顔料を分散可能であれば特に制限はなく、従来公知の水不溶性ポリマー分散剤を用いることができる。水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構造単位と親水性の構造単位の両方を含んで構成することができる。
ここで、疎水性の構造単位を構成するモノマー成分としては、スチレン系モノマー成分、アルキル(メタ)アクリレート成分、芳香族基含有(メタ)アクリレート成分等を挙げることができる。
また、親水性の構造単位を構成するモノマー成分としては、親水性基を含むモノマー成分であれば特に制限はない。この親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。なお、ノニオン性基は、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基、アルキレンオキシド重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基等が挙げられる。
上記親水性の構造単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシ基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシ基を共に含む形態であることもまた好ましい。
水不溶性ポリマー分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
水不溶性ポリマー分散剤は、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシ基を含むビニルポリマーであることが好ましい。更に、疎水性の構造単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構造単位を有し、親水性の構造単位としてカルボキシ基を含む構造単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
また、水不溶性ポリマー分散剤の重量平均分子量は、顔料の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
着色粒子における分散剤の含有量は、顔料の分散性、インク着色性、分散安定性の観点から、顔料100質量部に対し、分散剤が10〜90質量部であることが好ましく、20〜70質量部がより好ましく、30〜50質量部が特に好ましい。
着色粒子中の分散剤の含有量が、上記範囲内にあることにより、顔料が適量の分散剤で被覆され、粒径が小さく経時安定に優れた着色粒子を得やすい傾向となり好ましい。
着色粒子は、例えば、顔料、分散剤、必要に応じて溶剤(好ましくは有機溶剤)等を含む混合物を、分散機により分散することで得ることができる。
より詳細には、例えば、顔料と、分散剤と、この分散剤を溶解又は分散する有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加える工程(混合・水和工程)の後、有機溶剤を除く工程(溶剤除去工程)を設けて分散物として製造することができる。これにより、顔料が微細に分散され、保存安定性に優れた着色粒子の分散物を作製することができる。
上記有機溶剤は、分散剤を溶解又は分散できることが必要であるが、これに加えて水に対してある程度の親和性を有することが好ましい。具体的には、20℃において水に対する溶解度が10〜50質量%以下であるものが好ましい。
有機溶剤の好ましい例としては、水溶性有機溶剤が挙げられる。中でもイソプロピルアルコール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いても複数併用してもよい。
上記塩基性物質は、ポリマーが有することがあるアニオン性基(好ましくはカルボキシ基)の中和に用いられる。アニオン性基の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる着色剤粒子の分散物の液性が、例えばpHが4.5〜10であるものが好ましい。上記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
着色粒子分散物の製造工程での有機溶剤の除去は、特に方法が限定されるものではなく、減圧蒸留等の公知に方法により除去できる。
本発明の水性インク組成物において、上記着色粒子は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<界面活性剤>
本発明の水性インク組成物は、表面張力調整剤として界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテ硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、t−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物等のアセチレンジオール誘導体、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、安定性の点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アセチレンジオール誘導体がより好ましい。
水性インク組成物中の界面活性剤の含有量は、水性インク組成物を下記表面張力の範囲内とすることができる量であることが好ましい。より具体的には、水性インク組成物中の界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.2〜3質量%である。
<他の成分>
本発明の水性インク組成物は、更に必要に応じて、乾燥防止剤(膨潤剤)、着色防止剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘土調整剤、pH調製剤、キレート剤等の添加剤を混合してもよい。混合方法に特に制限はなく、通常用いられる混合方法を適宜に選択し、本発明の水性インク組成物を得ることができる。
<水性インク組成物の物性>
本発明の水性インク組成物の30℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
水性インク組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、30℃の温度下で測定される。
本発明の水性インク組成物のpHは、分散安定性の観点から、25℃におけるpHが6〜11が好ましい。
本発明の水性インク組成物をインクジェット記録方式に用いる場合、インク吐出性の観点から、水性インク組成物の表面張力が20〜60mN/mとなるよう界面活性剤の量を調整することが好ましく、より好ましくは20〜45mN/mとなる量であり、更に好ましくは25〜40mN/mとなる量である。
水性インク組成物の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、25℃の温度下で測定される。
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、本発明の水性インク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程を含む。
また、本発明の画像形成方法は、必要に応じて、記録媒体に付与された水性インク組成物中の水性媒体を乾燥除去する工程(以下、「インク乾燥工程」ともいう。)、水性インク組成物に含まれる樹脂微粒子を溶融定着する工程(以下、「熱定着工程」ともいう。)等の他の工程を更に有してもよい。
上記インク付与工程は、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に、本発明の水性インク組成物を直接付与して画像を形成する工程であることが好ましい。
低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に、インクを直接付与するとは、付与されたインクと低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体が直接接することを意味している。例えば、水性インク組成物に含まれる樹脂微粒子等の成分の凝集を目的とした、水性インク組成物による画像形成方法の分野において公知の処理液の付与を事前に行う場合には、水性インク組成物と上記低吸水性記録媒体又は上記非吸水性記録媒体は直接接しない。上述の公知の処理液としては、例えば、特開2012−40778号公報に記載の処理液が挙げられる。
また、本発明の画像形成方法は、インク付与工程の後に、上述の公知の処理液を付与しないことが好ましい。すなわち、本発明の画像形成方法は、上述の公知の処理液を付与する工程を含まないことが好ましい。
従来の水性インク組成物を用いたインクジェット法においては、特に、記録媒体として低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体を用いる場合、例えばプレコート液又はトップコート液等を使用して、記録媒体上に吐出される水性インク組成物中の成分を凝集させ、水性インク組成物の広がりを抑制して画質を向上させる方法が知られている。
しかし、本発明の水性インク組成物は、上述の優れた特性を示し、画像に高い性能を付与できるため、プレコート液又はトップコート液等を使用しなくても、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に、画質に優れた画像を形成できる。
<記録媒体>
本発明の画像形成方法に用いる記録媒体に特に制限はないが、紙媒体であることが好ましい。すなわち、一般のオフセット印刷等に用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙等のセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙社製の「OKプリンス上質」、日本製紙社製の「しらおい」、及び日本製紙社製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、日本製紙社製の「シルバーダイヤ」等の上質コート紙、王子製紙社製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙社製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙社製の「OKコートL」及び日本製紙社製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙社製の「OKトップコート+」及び日本製紙社製の「オーロラコート」、「ユーライト」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙社製の「OK金藤+」及び三菱製紙社製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷等に用いられるいわゆる塗工紙(コート紙)が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙、中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢、耐擦性等、品質上の問題を生じやすいが、本発明の水性インク組成物を用いる場合には、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐傷性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。アート紙、コート紙、軽量コート紙又は微塗工紙がより好ましい。
上記の中でも、顔料移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点から、記録媒体としては、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体を用いることが好ましい。本発明において、低吸水性記録媒体とは、水の吸収係数Kaが0.05〜0.5mL/m・ms1/2であるものをいい、0.1〜0.4mL/m・ms1/2であることが好ましく、0.2〜0.3mL/m・ms1/2であることがより好ましい。また、非吸水性記録媒体とは、水の吸収係数Kaが0.05mL/m・ms1/2未満であるものをいう。
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機社製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
<インク付与工程>
インク付与工程では、顔料を含有する本発明の水性インク組成物が記録媒体上に付与される。水性インク組成物の付与方法としては、画像上に水性インク組成物を付与可能なインクジェット方法であれば、特に制限はなく公知のインク付与方法を用いることができる。インクジェット方法は、記録装置のコンパクト化と高速記録性等の利点を有している。
インクジェット方式(方法)による画像形成では、エネルギーを供与することにより、記録媒体上に水性インク組成物を吐出し、着色画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット方式には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等のいずれであってもよい。
また、インクジェット方式で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。更に上記インクジェット方式により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
なお、インクジェット方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式、無色透明のインクを用いる方式等が含まれる。
またインクジェット方式として、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行うシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行うことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
インク付与工程をインクジェット方式で実施する場合、高精細印画を形成する観点から、インクジェット方式により吐出される水性インク組成物の液滴量が1.5〜10pLであることが好ましく、1.5〜6pLであることより好ましい。吐出される水性インク組成物の液滴量は、吐出条件を適宜に調整して調節することができる。
<インク乾燥工程>
本発明の画像形成方法は、必要に応じて、記録媒体上に付与された水性インク組成物中の水性媒体(例えば、水、上述の水溶性有機溶剤等)を乾燥除去するインク乾燥工程を備えていてもよい。インク乾燥工程は、水性インク組成物中の水性媒体の少なくとも一部を除去できれば特に制限はなく、通常用いられる方法を適用することができる。
<熱定着工程>
本発明の画像形成方法は、必要により、上記インク乾燥工程の後に、熱定着工程を備えることが好ましい。熱定着処理を施すことにより、記録媒体上の画像の定着が施され、画像の擦過に対する耐性をより向上させることができる。熱定着工程として、例えば、特開2010−221415号公報の段落番号0112〜0120に記載の熱定着工程を採用することができる。
<インク除去工程>
本発明の画像形成方法は、必要に応じて、インクジェット記録用ヘッドに付着した水性インク組成物(例えば、乾燥により固形化したインク固形物)をメンテナンス液により除去するインク除去工程を含んでいてもよい。メンテナンス液及びインク除去工程の詳細は、国際公開第2013/180074号に記載されたメンテナンス液及びインク除去工程を好ましく適用することができる。
[樹脂微粒子]
本発明の樹脂微粒子は、上述した本発明に用いる樹脂微粒子である。この樹脂微粒子は、上述のように、コアポリマーとシェルポリマーとを含有するコアシェル構造を有し、シェルポリマーが構造単位(I)と構造単位(II)とを有し、コアポリマーのガラス転移温度がシェルポリマーのガラス転移温度より高く、かつ、シェルポリマーのガラス転移温度が20〜130℃である、樹脂微粒子である。
本発明の樹脂微粒子は、典型的には、上述した乳化重合法により樹脂微粒子を調製した際の反応液の形態として得ることができるが、その形態に特に制限はない。本発明の樹脂微粒子は、本発明の水性インク組成物に好適に用いることができる。
本発明の樹脂微粒子において、樹脂微粒子のMw、Tg、Tg差(絶対値)及び粒径は、それぞれ本発明の水性インク組成物に含まれる樹脂微粒子のMw、Tg、Tg差(絶対値)及び粒径と同じである。
本発明の樹脂微粒子は、水又は水と水溶性有機溶剤との混合液、すなわち水性媒体に分散してなる形態で存在していることが好ましい。この水性媒体の好ましい形態は、本発明の水性インク組成物に用いる上述した水性媒体と同じである。
本発明の樹脂微粒子が水性媒体中に分散してなる形態で存在する場合(樹脂微粒子分散物として存在する場合)、この分散物中、樹脂微粒子の含有量は、1〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、組成を表す「部」及び「%」は質量基準である。
[樹脂微粒子の合成]
以下に、実施例及び比較例用いた樹脂微粒子P−1〜P−15及びCP−1〜CP−8を構成するコアポリマー及びシェルポリマーを示す。樹脂微粒子CP−5は、コアシェル構造を有せず、下記コアポリマーのみからなる樹脂の微粒子である。
下記コアポリマー及びシェルポリマーそれぞれにおいて、各構造単位の数字は質量比を表す。また、各構造単位に示される「*」はポリマー中に組み込まれるための連結部位を示す。
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<樹脂微粒子P−1の合成及び樹脂微粒子P−1の水性分散物の調製>
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた1リットル三口フラスコに、水(314g)、ネオペレックスG−15(16質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液、花王株式会社製)(7.50g)を仕込んで、窒素気流下で80℃まで昇温した。そこへ、過硫酸カリウム(ラジカル重合開始剤、和光純薬社製)(0.61g)、炭酸水素カリウム(0.47g)及び水(30g)からなる混合溶液を加え、10分間攪拌した。次いで、上記三口フラスコに、メチルメタクリレート(36.00g)と、スチレン(24.00g)とからなるモノマー溶液を2時間で滴下が完了するように等速で滴下し、モノマー溶液の滴下完了後、更に2時間攪拌した(コア重合工程)。
続いて、得られた分散液に、過硫酸カリウム(0.30g)、炭酸水素カリウム(0.24g)及び水(30g)からなる混合溶液を加え、次いで、メチルメタクリレート(18.00g)と、ベンジルメタクリレート(33.00g)と、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(6.00g)と、メタクリル酸(3.00g)からなるモノマー溶液を2時間で滴下が完了するように等速で滴下し、モノマー溶液の滴下完了後、更に3時間攪拌した(シェル重合工程)。得られた反応混合物を1N−KOH水溶液でpH8.0に調整した後、網目50μmのメッシュでろ過し、樹脂微粒子P−1の水性分散物を得た。
得られた樹脂微粒子P−1の水性分散物は固形分濃度24%であった。水性分散液中の樹脂微粒子は、体積平均粒径38nm(マイクロトラックUPA EX−150(日機装社製)で測定した。)であった。この樹脂微粒子P−1は、コアシェル構造を有しており、コアポリマーとシェルポリマーとの質量比[コアポリマー:シェルポリマー]は50:50であった。コアポリマー及びシェルポリマーのガラス転移温度Tgと、コアポリマーとシェルポリマーとのガラス転移温度の差(絶対値)を下記表1に示す。
各ポリマーのTgは次のようにして測定した。すなわち、樹脂の水性分散物を乾燥したサンプルを用い、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて、昇温速度5℃/分で測定した。
以降で調製する樹脂微粒子の体積平均粒径及び各ポリマーのTgも、上記の測定装置、測定方法により測定した。
<樹脂微粒子P−2〜P−15並びにCP−1〜CP4及びCP−6〜CP−8の合成>
上記樹脂微粒子P−1の合成において、各重合工程に用いるモノマーの種類を、上記構造単位を導くモノマーの種類に変更し、更に、各重合工程に用いるモノマーの量を、上記構造単位の質量比を満たし、かつコアポリマーとシェルポリマーとの質量比が表1に記載示す「質量比**」となる量に変更したこと以外は、樹脂微粒子P−1の合成と同様にして、樹脂微粒子P−2〜P−15並びにCP−1〜CP4及びCP−6〜CP−8の水性分散物をそれぞれ得た。また、Y1A又はY1Bがナトリウムカチオン又はアンモニウムカチオンである場合、ナトリウム塩又はアンモニアを用いて常法によりY1A又はY1Bをナトリウム塩又はアンモニウム塩に変換した。
得られたP−2〜P−15並びにCP−1〜CP4及びCP−6〜CP−8の物性を表1に示す。
<樹脂微粒子CP−5の合成>
上記樹脂微粒子P−1の合成において、コア重合工程に使用したモノマーの種類と量を、上記構造単位を導くモノマーの種類と上記構造単位の質量比を満たす量に変更し、シェル重合工程を行わないこと以外は、樹脂微粒子P−1の合成と同様にして、樹脂微粒子CP−6の水性分散物を得た。得られたCP−5の物性を表1に示す。樹脂微粒子CP−5のTgをコアポリマーのガラス転移温度欄に示す。
Figure 0006795704
表1において、「最少原子数*」は、式(2A)中のL1Aの最短鎖を構成する原子の結合数を示す。
最少原子数欄の「−」は、対応する樹脂微粒子を形成するシェルポリマーが式(2A)で表される構造単位を有しないことを示す。
「質量比**」は、コアポリマーの質量:シェルポリマーの質量を表す。
また、樹脂微粒子CP−5はシェルポリマーを有しないため、ガラス転移温度のシェルポリマー欄及び差の絶対値欄に「−」を記載した。
[実施例1]
<水性インク組成物の調製>
(ブラックインク組成物K−1の調製)
−水溶性ポリマー分散剤Q−1の合成−
メタクリル酸(172部)と、メタクリル酸ベンジル(828部)と、イソプロパノール(375部)とを混合することにより、モノマー供給組成物を調製した。また、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)と、イソプロパノール(187.5部)とを混合することにより、開始剤供給組成物を調製した。
次に、イソプロパノール(187.5部)を窒素雰囲気下、80℃に加温し、そこに、上記モノマー供給組成物及び上記開始剤供給組成物の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた溶液を更に4時間、80℃に保った後、25℃まで冷却した。
冷却後、溶剤を減圧除去することにより、重量平均分子量約30,000、酸価112mgKOH/gの水溶性ポリマー分散剤Q−1を得た。
−ブラック顔料分散物の調製−
上記で得られた水溶性ポリマー分散剤Q−1(150部)中のメタクリル酸量の0.8当量を、水酸化カリウム水溶液を用いて中和した後、水溶性ポリマー分散剤濃度が25質量%となるように、更にイオン交換水を加えて調整し、水溶性ポリマー分散剤水溶液を得た。
この水溶性ポリマー分散剤水溶液(124部)と、カーボンブラックMA−100(ブラック顔料)(48部)と、水(75部)と、ジプロピレングリコール(30部)とを混合し、ビーズミル(ビーズ径0.1mmφ、ジルコニアビーズ)で所望の体積平均粒径を得るまで分散し、顔料濃度15%のポリマー被覆ブラック顔料粒子の分散物(未架橋分散物)を得た。
この未架橋分散物(136部)に、架橋剤:Denacol EX−321(ナガセケムテックス社製)(1.3部)と、ホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:4質量%)(14.3部)とを添加し、50℃にて6時間半反応させた後、25℃に冷却し、架橋分散物を得た。次に、得られた架橋分散物にイオン交換水を加え、攪拌型ウルトラホルダー(ADVANTEC社製)及び限外ろ過フィルター(ADVANTEC社製、分画分子量5万、Q0500076Eウルトラフィルター)を用いて限外ろ過を行った。架橋分散物中のジプロピレングリコール濃度が0.1質量%以下となるように精製した後、顔料濃度が15質量%となるまで濃縮することにより、ブラック顔料分散物を得た。ブラック顔料分散物に含まれる顔料は、水溶性ポリマー分散剤Q−1が架橋剤により架橋された架橋ポリマーで表面が被覆されているポリマー被覆顔料(カプセル化顔料)である。
− ブラックインク組成物K−1の調製 −
下記組成となるように各成分を混合し、各ポリマー含有インク組成物を調液した。調液後、1μmフィルターを用いて粗大粒子を除去し、ブラックインク組成物K−1を調製した。ブラックインク組成物K−1中の樹脂微粒子P−1の含有量は5質量%であった。
〔組成〕
ブラック顔料分散物:ブラック顔料の濃度が4質量部となる量
水溶性有機溶剤1:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(和光純薬工業(株)社製):3質量部
水溶性有機溶剤2:ジエチレングリコール(和光純薬工業(株)社製):15質量部
上記樹脂微粒子P−1の水性分散物(固形分濃度24質量%):21質量部
界面活性剤CapstoneFS−3100(DuPont社製):0.1質量部
水:残部
合計:100質量部
(ブラックインク組成物K−2〜K−15及びCK−1〜CK−8の調製)
ブラックインク組成物K−1の調製において、樹脂微粒子P−1の水性分散物に代えて樹脂微粒子P−2〜P−15及びCP−1〜CP−8の各水性分散物を用いたこと(各ブラックインク組成物の樹脂微粒子の含有量は5質量%に設定した。)以外は、ブラックインク組成物K−1と同様にして、水性インク組成物としてのブラックインク組成物K−2〜K−15及びCK−1〜CK−8をそれぞれ調製した。
上記で調製したブラックインク組成物の粘度は、30℃においていずれも3〜15mPa・sの範囲内にあった。この粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD 製)にて測定した。
また、表面張力は、協和界面科学社製CBVP−Zを用いて、白金プレート法で測定した。上記で調製したブラックインク組成物の表面張力は、いずれも20〜60mN/mの範囲内にあった。
[試験例]
上記の如く調製した各ブラックインク組成物(以下、単に「インク」ということがある)について、下記試験を行った。結果を下記表2に示す。
<レイテンシ(放置回復性)試験>
下記インク付与条件により、記録媒体(「画彩 写真仕上げPro」、富士フイルム社製)上に画像を直接描画し、乾燥させた。その後、ノズルチェックパターン画像を1枚描画した(ここでの画像を「初期画像サンプル」とする。)。その後、記録ヘッドノズル部の環境を25℃、50%RHの環境に保ち、30分放置及び15時間放置した。所定時間放置後、再び上記で用いたものと同じ記録媒体上に、上記と同じノズルチェックパターン画像を1枚描画した(ここでの画像を、「30分放置後画像サンプル」及び「15時間放置後画像サンプル」とし、両者を併せて「放置後画像サンプル」とする。)。
放置後画像サンプルそれぞれについて、光学顕微鏡によりノズルチェックパターン画像でノズルの抜け(画像抜け)を観察し、吐出率を求め、下記の評価基準に従って不吐出の有無を評価した。本試験においては、30分放置後及び15時間放置後のいずれにおいても、「B」以上が合格レベルである。
なお、吐出率(%)は、「(放置後画像サンプルでの吐出ノズル数/初期画像サンプルでの吐出ノズル数)×100」から求めた。
〜インク付与条件〜
・ヘッド :1,200dpi(dot per inch)/20inch幅ピエゾフルラインヘッドを用いた。
・吐出液滴量:2.4pLとした。
・駆動周波数:24kHz(記録媒体搬送速度500mm/sec)とした。
〜評価基準〜
AA:吐出率が95%以上である。
A:吐出率が90%以上95%未満である。
B:吐出率が85%以上90%未満である。
C:吐出率が80%以上85%未満である。
D:吐出率が80%未満である。
<耐擦性試験>
耐擦性試験は、上記<レイテンシ(放置回復性)試験>において、30分放置後のレイテンシの結果が評価ランク「B」以上である各インクについて、行った。すなわち、30分放置後のレイテンシの結果が評価ランク「C」又は「D」である比較例1、2及び4については、既にインク性能が悪いため、耐擦性試験を行っていない(表2において「−」で示す。)。
下記インク付与条件により、記録媒体としてコート紙(商品名「OKトップコート+」、王子製紙社製)上に、所定の各ブラックインクによりブラック色の、記録デューティ100%のベタ画像を直接形成した。記録デューティ100%とは、解像度1200dpi×1200dpiで1/1200インチ×1/1200インチ(1インチ=2.54cm)の単位領域(1画素)に約2.4pLのインクを1滴付与する条件で記録された画像をいう。
〜インク付与条件〜
・ヘッド:1,200dpi(dot per inch)/20inch幅ピエゾフルラインヘッド
・吐出量:2.4pL
・駆動周波数:30kHz(記録媒体搬送速度635mm/sec)
・シングルパス方式
こうにして形成したベタ画像を、24時間25℃、相対湿度50%の環境下に放置した。ベタ画像の表面を2×10N/mの荷重をかけたシルホン紙により50回擦過した。ベタ画像の擦過表面の状態を目視で確認し、以下に示す評価基準に従って画像の耐擦性を評価した。本試験においては、「B」以上が合格レベルである。
〜評価基準〜
AA:擦過表面に擦過痕が確認できず、擦り紙(シルホン紙)にも画像(インク)の転写が認められなかった。
A:擦過表面に擦過痕が確認できないが、擦り紙に接触面積の5%未満の面積率で画像の転写が認められた。
B:擦過表面にわずかに擦過痕が確認できた。
C:擦過表面に擦過痕が確認でき、記録媒体の白地(表面)が見えていた。
<耐ブロッキング性試験>
耐ブロッキング性試験は、上記<レイテンシ(放置回復性)試験>において、30分放置後のレイテンシの結果が評価ランク「B」以上である各インクについて、行った。すなわち、30分放置後のレイテンシの結果が評価ランク「C」又は「D」である比較例1、2及び4については、既にインク性能が悪いため、耐ブロッキング性試験を行っていない(表2において「−」で示す。)。
上記<耐擦性試験>におけるインク付与条件と同じインク付与条件にて、記録媒体としてコート紙(商品名「OKトップコート+」、王子製紙社製)上に、所定の各ブラックインクによりブラック色の、記録デューティ100%のベタ画像を直接印字した。印字直後、60℃の温風で2秒乾燥させ、印字サンプルとした。
印字サンプルを3cm四方のサイズで2枚に裁断した。次に2枚の印字面同士が向かい合うように、4角を合わせて重ねた。これを、80℃のホットプレート上に載置した。その上に2.0cm×2.0cmの面を紙側に向けて2.0cm×2.0cm×0.3cmの平板のゴム版を置き、更にその上に2.0cm×2.0cmの面をゴム版に向けて2.0cm×2.0cm×0.3cmの平板のプラスチック版を置いた。プラスチック版の上に500gの分銅を載せて1時間静置した後、重ね合わせた2枚の紙を剥がして、下記評価基準に従って耐ブロッキング性を評価した。本試験においては、「B」以上が合格レベルである。
〜評価基準〜
A:自然に剥がれた。又は、剥がすときに抵抗があったが、印字サンプルの色移りはなかった。
B:印字面の面積の10%未満の範囲に印字サンプルの色移りが認められたが、実用上問題のないレベルであった。
C:印字面の面積の10%以上の広い範囲に印字サンプルの色移りが認められ、実用上問題になるレベルであった。
Figure 0006795704
表2に示されるように、本発明で規定する樹脂微粒子を含有しない比較例のインクジェット記録用水性インク組成物(CK−1〜CK−8)は、いずれも、レイテンシ、耐擦性及び耐ブロッキング性を兼ね備えるものではなかった。
これに対して、本発明で規定する樹脂微粒子を含有する実施例のインクジェット記録用水性インク組成物(K−1〜K−15)は、いずれも、レイテンシ、耐擦性及び耐ブロッキング性を高い水準で兼ね備える。すなわち、実施例のインクジェット記録用水性インク組成物は、優れたレイテンシを示すにもかかわらず、記録媒体上に吐出(着弾)されると、記録媒体が上記低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体であっても、高い耐擦性及び耐ブロッキング性を示す画像を記録媒体上に直接形成できることが分かる。
また、シアン顔料及びマゼンタ顔料を用いて調製したシアンインク組成物及びマゼンタインク組成物を用いて、上記ブラックインク組成物と同様にして、試験したところ、同様の結果を示した。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2017年9月20日に日本国で特許出願された特願2017−180192に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。

Claims (12)

  1. 水性媒体と、粒子内部に顔料を含まない樹脂微粒子とを含むインクジェット記録用水性インク組成物であって、
    前記樹脂微粒子が、コアポリマーと、該コアポリマーを被覆するシェルポリマーとを含有するコアシェル構造を有し、
    前記シェルポリマーが、下記式(1)で表される構造単位と、下記式(2A)若しくは式(2B)で表される構造単位とを有し、
    前記コアポリマーのガラス転移温度が前記シェルポリマーのガラス転移温度より高く、前記ガラス転移温度の差が20℃以上であり、かつ、前記シェルポリマーのガラス転移温度が20〜130℃である、インクジェット記録用水性インク組成物。
    Figure 0006795704
    式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、芳香族環基を示す。Aは炭素数2〜20のアルキレン基を示す。mは1〜100の整数である。
    式(2A)及び式(2B)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。L1Aは、単結合、又は式中のカルボニル炭素原子とY1Aとを連結する最少原子数が6以下の連結基を示す。Y1Aは、L1Aが単結合である場合、−OMを示し、L1Aが連結基である場合、−C(=O)OM、−S(=O)OM又は−OS(=O)OMを示す。Y1Bは−C(=O)OM、−S(=O)OM又は−OS(=O)OMを示す。Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示す。
  2. 前記式(1)で表される構造単位が、下記式(3)で表される構造単位である、請求項1に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
    Figure 0006795704
    式中、R及びRは前記の通りである。mは2〜100の整数である。
  3. 前記シェルポリマー中の、前記式(1)で表される構造単位の含有率が30質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  4. 前記コアポリマー及び前記シェルポリマーの少なくとも一方が、芳香族環又は脂肪族環を有するエチレン性不飽和化合物由来の構造単位を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  5. 前記、芳香族環又は脂肪族環を有するエチレン性不飽和化合物由来の構造単位が、下記一般式(A)〜(E)のいずれかで表される請求項4に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
    Figure 0006795704
    一般式(A)〜(E)中、R 11 及びR 12 はメチル又は水素原子を示す。R 13 は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。一般式(A)及び一般式(B)中のnは0〜5の整数であり、一般式(C)中のnは0〜11の整数である。L 11 は単結合、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−若しくは−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を示す。
  6. 前記コアポリマー中の、前記一般式(A)〜(E)のいずれかで表される構造単位の含有量が10〜90質量%であり、
    前記シェルポリマー中の、前記一般式(A)〜(E)のいずれかで表される構造単位の含有量が70質量%以下である、請求項5に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  7. 前記樹脂微粒子の含有量が、インクジェット記録用水性インク組成物の全質量に対して1〜15質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  8. 顔料を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  9. 請求項8に記載のインクジェット記録用水性インク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程を含む、画像形成方法。
  10. 前記インクジェット記録用水性インク組成物を、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に直接付与する請求項9に記載の画像形成方法。
  11. コアポリマーと、該コアポリマーを被覆するシェルポリマーとを含有するコアシェル構造を有し、粒子内部に顔料を含まない樹脂微粒子であって、
    前記シェルポリマーが、下記式(1)で表される構造単位と、下記式(2A)若しくは式(2B)で表される構造単位とを有し、
    前記コアポリマーのガラス転移温度が前記シェルポリマーのガラス転移温度より高く、前記ガラス転移温度の差が20℃以上であり、かつ、前記シェルポリマーのガラス転移温度が20〜130℃である、樹脂微粒子。
    Figure 0006795704
    式(1)中、R は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。R は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、芳香族環基を示す。A は炭素数2〜20のアルキレン基を示す。m は1〜100の整数である。
    式(2A)及び式(2B)中、R は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。L 1A は、単結合、又は式中のカルボニル炭素原子とY 1A とを連結する最少原子数が6以下の連結基を示す。Y 1A は、L 1A が単結合である場合、−OMを示し、L 1A が連結基である場合、−C(=O)OM、−S(=O) OM又は−OS(=O) OMを示す。Y 1B は−C(=O)OM、−S(=O) OM又は−OS(=O) OMを示す。Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示す。
  12. 前記式(1)で表される構造単位が下記式(3)で表される構造単位である、請求項11に記載の樹脂微粒子。
    Figure 0006795704
    式中、R 及びR は前記の通りである。m は2〜100の整数である。
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