JP6795670B1 - テトラペプチド化合物及びその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
現在、ILに属するサイトカインは30種類以上が知られているが、その一つであるIL−10は抗炎症性サイトカインと言われており、炎症性サイトカインの作用を抑制し、過剰な免疫反応を鎮静化する機能を有する。詳細について以下に示す(特許文献1より引用)。
(2)単球/マクロファージからのIL−1レセプターアンタゴニストの産生を増強する。
(3)単球/マクロファージのシクロオキシゲナーゼ2(以下、COX2と略す)産生を抑制する。COX2は痛みの元となるプロスタグランジンE2(以下、PGE2と略す)の産生に関与する酵素であることから、痛みを軽減する作用を有する。
(4)マクロファージのMHC class II分子、CD86分子の発現を抑制する。
(5)T細胞の増殖を抑制する。
(6)T細胞からのIL−2、IFN−γ、IL−4、IL−5産生を抑制する。
(7)IL−10産生調節性T細胞を誘導する。
(8)好酸球、好中球、マスト細胞からのIL−1、IL−8、TNFα産生を抑制する。
(9)NK細胞の細胞傷害活性を増強する。
以上のことから、生体内のIL−10産生促進効果によって、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、慢性リウマチ、アレルギー、乾癬、アトピー性皮膚炎、臓器移植時の拒絶反応、ウィルス感染、腫瘍、慢性腸炎など、多くの疾患の予防、治療に利用可能になるものと期待されている。
変形性膝関節症は関節を使いすぎた際に生じる摩擦によって、MMPによる軟骨の破壊と修復のバランスが崩れることで起こる。体重などの負担がかかりやすい膝関節や股関節など、限られた関節にだけ症状が起こるのが特徴である。病気が進行すると痛みや変形が悪化する。変形性関節症はMMP−13の増加と関連が深い。
一方、関節性リウマチは免疫の異常によって多くのMMPが放出されて発症するが、特にMMP−13が関与しており、リウマチモデルラットにMMP−13抑制剤を投与するとリウマチの進行を抑制したと報告されている。
なお、MMPの産生量が増加することにより、炎症性細胞の浸潤が活発に起こり、がん細胞の転移又は血管新生が起こる。逆に、炎症性細胞の浸潤が抑制される場合はMMPの産生が抑制されていると考えられる(非特許文献5)。
(1)pyro−Glu−Pro−Tyr−Proで表されるアミノ酸配列からなるテトラペプチド化合物又はその薬学的に許容される塩。
(2)上記(1)に記載のテトラペプチド化合物またはその塩を有効成分とする、IL−10産生促進剤。
(3)上記(1)に記載のテトラペプチド化合物またはその塩を有効成分とする、MMP−13産生阻害剤。
(4)上記(1)に記載のテトラペプチド化合物またはその塩を含有し、炎症性のサイトカインの産生を低下させることで関節炎を抑制するための組成物。
(5)マクロファージのCOX2産生を低下させることでPGE2の産生を抑制する、上記(4)に記載の関節炎を抑制するための組成物。
(6)抗原提示細胞の抗原提示能を弱めて、過剰な免疫反応による疾患を予防しまたは改善する、上記(4)に記載の関節炎を抑制するための組成物。
(7)関節炎の治療、予防、または緩和用である、上記(4)ないし(6)のいずれかに記載の関節炎を抑制するための組成物。
(8)飲食品、サプリメント、または医薬品の形態である、上記(4)ないし(7)のいずれかに記載の関節炎を抑制するための組成物。
HPLC分析で1ピークとなり、MS分析で分子量が486であった精製サンプルの精密質量による推定分子式は、C24H30N4O7であった。
試料2mgを秤量し6N塩酸を加えて密封し、105℃で11時間加熱した。その後、減圧乾固し、0.1N塩酸に再溶解させ100mLとし、アミノ酸分析を行った。HPLC装置は、Nexera(島津製作所製)、検出器は、蛍光検出器RF−20Axs (島津製作所製)を用いた。
その結果、チロシン:グルタミン酸:プロリン=1:1:2で検出された。
改良Marfey法を行った。試料5mgを秤量し6N塩酸1mLを加えて密封し、105℃で16時間加熱した。その後、減圧乾固してから、蒸留水200μLに再溶解させた。サンプル50μLに1M NaHCO3 20μL及び1% Nα−(5−Fluoro−2,4−dinitrophenyl)−L−leucinamide (L−FDLA)アセトン溶液100μLを加え、37℃で1時間加温した。加温後、1M塩酸20μLを加え冷却し、アセトニトリル390μLで希釈して、HPLC分析に供した。
結果は、分子量486を構成しているアミノ酸は、全てL体であった。
構成アミノ酸がどのように結合しているのかを調べるために、LC/MS/MS分析を行った。HPLC装置は、Waters社製ACQUITY UPLCを用いた。質量分析装置は、Waters社製Synapt G2−S型を用いた。
フラグメント解析の結果、N末端にピログルタミン酸を有するpyro−Glu−Pro−Tyr−Proの可能性が考えられた。次に、合成品も同様にフラグメント解析を行い、精製品のフラグメントと比較した。その結果、LCのリテンションタイムは同じであり、かつLC/MS/MSのフラグメントも同じパターンであったことから、分子量486を構成するアミノ酸は、pyro−Glu−Pro−Tyr−Proであることが判明した。
[IL−10 mRNA発現量のリアルタイムPCRでの測定]
急性Tリンパ芽球性細胞(TALL−1)をウシ血清10%含有RPMI培地にて8×104cells/mLに調製した。24ウェルプレートに20,000cells/cm2となるように播種し、ピログルタミルテトラペプチド溶液(溶媒は0.01%ジメチルスルホキシド溶液とした)及びIL−6,Human(sigma)溶液を添加し、37℃、CO2濃度5%で72時間培養を行った。
72時間後に、TRIzol(登録商標) Plus RNA Purification Kit 50preps(Thermo Fisher SCIENTIFIC)を用い、細胞から総RNAを抽出した。SuperScript IV VILO Master Mix with ezDNase Enzyme(Thermo Fisher SCIENTIFIC)を用い、cDNAを合成した。その後、FastStart Essential DNA Green Master(Roche)にて調製したサンプルを、LightCycler 96 システムを用いて、IL−10 mRNA発現量の測定を行った。内部標準はGAPDHを用いた。mRNA発現量はGAPDH mRNA発現量に対する割合として求めた。
〈GAPDHプライマーセット〉
Fw:5’−GGTGAAGGTCGGAGTCAACGGA−3’
Rv:5’−GAGGGATCTCGCTCCTGGAAGA−3’
〈IL−10 プライマーセット〉
Fw:5’−GCCTAACATGCTTCGAGATC−3’
Fw:5’−GCCTAACATGCTTCGAGATC−3’
[IL−10タンパク質発現量のウェスタンブロッティング法による確認]
ウェスタンブロッティングの試薬は全てThermo Fisher SCIENTIFICのものを使用した。
急性Tリンパ芽球性細胞(TALL−1)をウシ血清10%含有RPMI培地にて8×104cells/mLに調製した。24ウェルプレートに20,000cells/cm2となるように播種し、ピログルタミルテトラペプチド溶液(溶媒は0.01%ジメチルスルホキシド溶液とした)及びIL−6,Human(sigma)溶液を添加し、37℃、CO2濃度5%で72時間培養を行った。
Protease and Phosphatase inhibitorを添加したM−PER Reagentにてタンパクを抽出した。
抽出したタンパクの量をBrandford Assayにて調整し、nano dropにて測定した(比色法)。
タンパク液にBolt LDL Sample Buffer及びReducing Agentを添加して70℃、10分間加熱処理を行った。Bolt MES SDS Running Bufferと15wellゲルを用い、電気泳動を行った(200V,22分間)。
ゲルを取り出して、iBlot2ドライブロッティングシステムによって転写を行った。
iBind Western Systemを用いて、GAPDH及びIL−10タンパクの抗原抗体反応を行った。
メンブレンをMilliQ水で洗い、Super Signak WEST Duraに含まれる2種類の試薬をそれぞれ1.0mLずつ混合して、メンブレンの入ったタッパーに入れ、5分間反応させた。
メンブレンをBIO RADのchemi DocXRS+システムに挿入して、イメージングを行った。
画像解析ソフトによりGAPDH及びIL−10タンパクの検出点を数値化し、グラフ化した結果、mRNAの発現量のグラフと相関性が高い結果となり、濃度依存的に発現が増加した(図3)。
[MMP−13 mRNA発現量のリアルタイムPCRでの測定]
[使用細胞] ヒト軟骨肉腫細胞(OUMS−27)
[培地] DMEM培地+FBS1%+P.S.1%
[手順]
24well plateに8×104cells/mL(20,000cells/cm2)の密度で細胞を播種し、培養を行った(37℃、5%CO2、加湿)。48時間後に、ピログルタミルテトラペプチド溶液及びInterleukin−1β,Human(sigma)溶液を添加し、培養を行った(37℃、5%CO2、加湿)。
24時間後に、TRIzol(登録商標) Plus RNA Purification Kit 50preps(Thermo Fisher SCIENTIFIC)を用い、細胞から総RNAを抽出した。SuperScript IV VILO Master Mix with ezDNase Enzyme(Thermo Fisher SCIENTIFIC)を用い、cDNAを合成した。その後、FastStart Essential DNA Green Master(Roche)にて調製し、LightCycler 96 システムを用いて、リアルタイム−PCR法にて、MMP−13 mRNA発現量の測定を行った。内部標準はGAPDHを用いた。mRNA発現量はGAPDH mRNA発現量に対する割合として求めた。
〈GAPDHプライマーセット〉
Fw:5’−GGTGAAGGTCGGAGTCAACGGA−3’
Rv:5’−GAGGGATCTCGCTCCTGGAAGA−3’
〈MMP−13- プライマーセット〉
Fw:5’−CCAGTCTCCGAGGAGAAACA−3’
Rv:5’−AAAAACAGCTCCGCATCAAC−3’
なお、ウェスタンブロッティングの試薬は全てThermo Fisher SCIENTIFICのものを使用した。
サンプル添加までは実施例3のmRNA発現量確認試験と同様に行った。
サンプル溶液を含む培地での培地交換を24時間ごとに4日間行った。
Protease and Phosphatase inhibitorを添加したM−PER Reagentにてタンパクを抽出した。
抽出したタンパクの量をBrandford Assayにて調整し、nano dropにて測定した(比色法)。
タンパク液にBolt LDL Sample Buffer及びReducing Agentを添加して70℃、10分間加熱処理を行った。Bolt MES SDS Running Bufferと15wellゲルを用い、電気泳動を行った(200V,22分間)。
ゲルを取り出して、iBlot2ドライブロッティングシステムによって転写を行った。
iBind Western Systemを用いて、GAPDH及びIL−10タンパクの抗原抗体反応を行った。
メンブレンをMilliQ水で洗い、Super Signak WEST Duraに含まれる2種類の試薬をそれぞれ1.0mLずつ混合して、メンブレンの入ったタッパーに入れ、5分間反応させた。
メンブレンをBIO RADのchemi DocXRS+システムに挿入して、イメージングを行った。
結果を図5に示す。本発明のピログルタミルテトラペプチドは、MMP−13タンパク質の発現を、陽性コントロールに比べて、抑制した(図6)。
DA/Slcラット(雌)、6匹×4群に対し、普通飼料を自由摂取させながら、各試験試料を5ml/kg b.w./dayずつ30日間、強制経口投与した。
対照区;蒸留水 5ml/kg b.w./day
ピログルタミルテトラペプチド低用量群(10mg/kg b.w./day)
ピログルタミルテトラペプチド中用量群(20mg/kg b.w./day)
ピログルタミルテトラペプチド高用量群(40mg/kg b.w./day)
投与14日目にウシ軟骨由来II型コラーゲン3mg/mL濃度溶液を尾根部の左右に対し0.05mLずつ注射し、関節炎を惹起した。
関節炎評価日は惹起から11〜14日目とした。
浮腫の程度は関節炎スコアリング(下記表1参照)によって評価した。また、血清抗II型コラーゲンIgG抗体量を測定した。図7に参考写真を示す。
また、該投与群において、血清中のIgG抗体量が対照群に比べ低値を示した(図9)。
[試験デザイン]プラセボ対照二重盲検比較試験
[被験者]膝関節に痛み・違和感がある40歳以上69歳以下の日本人男性及び女性(健常者)
[選択基準]膝関節可動域検査(ゴニオメーター)で評価が悪い者
JKOM膝関節痛アンケートが低値の方(原則45点以下)を基準とする。
JOAでスコアが高値の方(70点以上 但し100点を除く)を基準とする。
[試験食品]
試験群・・・ピログルタミルテトラペプチドを含むハードカプセル(ピログルタミルテトラペプチド15mg/3粒/日)
対照群・・・プラセボ食品(ピログルタミルテトラペプチドの代わりにデキストリンを配合した同一形状のハードカプセル)
[用法用量]:夕食後30分以内に1日1回3粒摂取する。
[観察項目]
1)主要評価項目
(1)JKOM(VAS含む)膝関節痛アンケート調査(0から100までの数値)
スコアが高い(大きい)程、膝関節の痛みやこわばりが強く、QOLが低い。
(2)JOA調査 日本整形外科学会が作成した調査票。医師が問診してスコア化した。
(3)膝関節可動域検査 ゴニオメーターによる屈曲・伸展度の評価。
(4)高感度CRP 血清中のCRPを測定し、炎症反応の程度を評価した。
安全性(血液・血圧・体重)
[摂取期間]2019年2月中旬から5月中旬の12週間
[観察時期]摂取前、摂取6週後、摂取12週後
試験計画書内容の被験者選択基準に該当する健常成人被験者男性14例、女性28例の合計42例が参加した。
JKOM(膝関節痛アンケート調査)において、ピログルタミルテトラペプチド摂取群では膝の痛み・こわばりが12週目に有意に低下した(図11)。
Claims (8)
- pyro−Glu−Pro−Tyr−Proで表されるアミノ酸配列からなるテトラペプチド化合物又はその薬学的に許容される塩。
- 請求項1に記載のテトラペプチド化合物またはその塩を有効成分とする、インターロイキン10産生促進剤。
- 請求項1に記載のテトラペプチド化合物またはその塩を有効成分とする、マトリックスメタロプロテアーゼ13産生阻害剤。
- 請求項1に記載のテトラペプチド化合物またはその塩を含有し、炎症性のサイトカインの産生を低下させることで関節炎を抑制するための組成物。
- マクロファージのシクロオキシゲナーゼ2産生を低下させることでプロスタグランジンE2の産生を抑制する、請求項4に記載の関節炎を抑制するための組成物。
- 抗原提示細胞の抗原提示能を弱めて、過剰な免疫反応による疾患を予防しまたは改善する、請求項4に記載の関節炎を抑制するための組成物。
- 関節炎の治療、予防、または緩和用である、請求項4ないし6のいずれかに記載の関節炎を抑制するための組成物。
- 飲食品、サプリメント、または医薬品の形態である、請求項4ないし7のいずれかに記載の関節炎を抑制するための組成物。
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