JP6795138B2 - 接着性ファイバー及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は微生物由来の接着性ファイバータンパク質及びそれを利用した固定化技術に関する。
本発明者が以前にバイオフィルターから単離したAcinetobacter sp. Tol 5(アシネトバクター属細菌Tol 5株)は、細胞自己凝集性が高く、また、疎水性の各種プラスチック担体から親水性のガラス、金属表面まで、様々な材料表面に対して高い付着性を示す非病原性のグラム陰性細菌である。他の微生物では報告例のないこのような付着特性をもたらす因子として、細菌細胞表層に存在する新規のバクテリオナノファイバーを発見し、さらにナノファイバーを構成する新しいタンパク質を同定した。このタンパク質はグラム陰性細菌がもつ三量体オートトランスポーターアドヘシン(TAA)ファミリーに属しており、本発明者がAtaAと名付けた(非特許文献1)。TAAファミリーに属するタンパク質はホモ三量体を形成し、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、シグナルペプチド−ヘッド−ネック−ストーク−メンブレンアンカーという共通の基本構造をとる(非特許文献2)。メンブレンアンカードメインはトランスロケータードメインともいい、外膜にベータバレルを形成し、ペリプラズムでシグナルペプチドが切断された後のヘッド−ネック−ストークから成るパッセンジャードメインを細胞外に輸送、ファイバーとして細胞表層に提示させる機能を有する。パッセンジャードメインのヘッド側がファイバーの先端になり、成熟タンパク質のアミノ末端側にあたる。しかしTAAには、構成単量体ポリペプチド鎖のアミノ酸残基数が300ほどの小さなものから3000を超える大きなものまで存在し、アミノ酸配列、特にパッセンジャードメインを構成するドメインやモチーフの種類と並びは多様である。本発明者が見つけたAtaAを構成する単量体ポリペプチド鎖は3630アミノ酸(シグナルペプチドを含む長さ)から成り、TAAの中でも最大級である。長いストークに複数の長い繰返し配列がモザイク状に並ぶユニークな一次構造をしている。この繰返し配列は、何種類ものモチーフが反復、混在して形成されている。ヘッドもファイバーの先端以外にストークの途中、メンブレンアンカー寄りにもう一つ繰り返す。そして、多くのTAAがコラーゲンやフィブロネクチンなどの生体分子に対し特異的に接着するのに対し、AtaAのみが様々な非生物表面に対し非特異的で高い接着性を示す。
AtaAは微生物の固定化に極めて有用であり、様々なバイオプロセスへの応用が期待される(例えば特許文献1、2を参照)。また、本発明者は先の特許出願(特許文献3)において、様々な機能性ペプチドやタンパク質をAtaAに導入し、微生物表面に提示させ得ることを報告した。尚、特許文献1ではAtaA及びそれをコードする遺伝子(ataA遺伝子)をそれぞれAadA及びaadA遺伝子と呼称していた。
国際公開第2009/104281号パンフレット 国際公開第2014/156736号パンフレット 国際公開第2015/030171号パンフレット
Ishikawa, M.; Nakatani, H.; Hori, K., AtaA, a new member of the trimeric autotransporter adhesins from Acinetobacter sp. Tol 5 mediating high adhesiveness to various abiotic surfaces. PLoS One 2012, 7, (11), e48830. Linke, D.; Riess, T.; Autenrieth, I. B.; Lupas, A.; Kempf, V. A., Trimeric autotransporter adhesins: variable structure, common function. Trends Microbiol. 2006, 14, (6), 264-270.
AtaAは非特異的且つ高い接着性を示すことから、特に微生物固定化材料としての利用価値が高い。例えば、産業上有用な微生物(標的微生物)にataA遺伝子を導入すれば、微生物細胞自体に付着性を付与し、様々な担体に固定化できるようになる。ataA遺伝子を導入した微生物が期待される付着性を発揮するためには、ataA遺伝子の発現産物であるAtaAが適切な高次構造を形成しつつ効率的に細胞表面に発現、提示される必要がある。AtaAは多くのドメインで構成された分子量350 kDa以上のポリペプチド鎖のホモ三量体であり、その遺伝子も11 kbpと巨大であるため、他の微生物にataA遺伝子を導入し、効率的に発現させることは容易ではない。標的微生物の種類によっては、期待される効果が得られないことも経験される。AtaAの機能を保ったまま小型化できれば、効率的な発現による付着性の向上(標的微生物の固定化能が向上する)、適用可能な標的微生物の種類/範囲の拡大などを期待できる。
そこで本発明は、AtaAの利用価値を更に高めるべく、AtaAを改良し、異種微生物でのその遺伝子発現、細胞表層への輸送・分泌、細胞表層での正しい三量体立体構造形成を促進、向上させ、その結果として、異種微生物への付着性付与能、即ち微生物細胞固定化能を向上させることを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑み、これまでの経験及び蓄積された知識を基に検討を進めた。具体的には、部分的な欠損によって全体の高次構造が影響を受け、きちんとしたホモ三量体が形成されなくなり、接着性が低下し、その結果、微生物細胞固定化能も低下することが当然に予想されたが、試行錯誤の上、欠損のための切断と欠損部削除後に再結合するポリペプチドのアミノ酸配列部位の精密設計により、欠損後のポリペプチドがホモ三量体の高次構造を正しく形成する設計方法(後述)を確立した。さらに、欠損させる領域やその大きさ、欠損部の数などが異なる様々なAtaA部分欠損体を作製し、その構造と接着性/微生物細胞固定化能の関係を調べることで上記課題の解決の糸口を見出すことを目指した。その結果、AtaAの接着性の維持に必須と考えられる領域が特定された。一方、予想外且つ興味深いことに、接着性に不要と思われる部分を削除したにもかかわらず微生物細胞固定化能が低下するという現象を認めた。即ち、AtaAの小型化を目指しながらも、小さくしすぎると微生物細胞固定化能が低下してしまうという、目的と相反する克服し難い課題に直面した。こうしたAtaA部分欠損体の分子設計における困難の中、鋭意且つ詳細な検討を進めた結果、驚くべき知見として、分子サイズが微生物細胞固定化能を決定する重要なファクター(因子)の一つであることが明らかとなった。また、特筆すべきことに、急激に微生物細胞固定化能が低下する分子サイズも特定された。更には、AtaAの利用を図る上で重要且つ興味深い知見も得られた。
以上の通り、本発明者の独自の検討によって、AtaAの改良に有益な知見が得られ、以下の発明を完成するに至った。
[1]アシネトバクターsp. Tol5株のAtaAの一部が欠損した構造からなり、
AtaAのNヘッドをN末端側に備え、
AtaAのC-ストーク内のFGGドメイン及びメンブレンアンカードメインをC末端側に備え、
それを構成する単量体ポリペプチドの分子量が120kDa以上である、
ホモ三量体の接着性ファイバー。
[2]以下の(A)〜(C)のいずれかの方法で設計される、[1]に記載の接着性ファイバー:
(A)AtaAのドメイン間の連結部と、該連結部よりもC末端側に位置するドメイン間の連結部を再結合することにより、前記欠損構造を形成する;
(B)AtaA内に存在する繰り返し配列を利用し、欠損後も切断したドメインとそのアミノ酸配列が保存されるように切断、再結合することにより、前記欠損構造を形成する;
(C)コイルドコイルの周期性を利用して、切断、削除、再結合後にコイルドコイルの周期性が復活するように、前記欠損構造を形成する。
[3]AtaAにおける、Nヘッドに続く部分からC-ストーク内のFGGドメインの前までの領域に存在するドメイン構造又はモチーフの二つ以上を、前記Nヘッドと前記FGGドメインの間に備え、該二つ以上のドメイン構造又はモチーフは、全長AtaAにおける順序と同一の順序で配置される、[1]又は[2]に記載の接着性ファイバー。
[4]前記N末端側が、AtaAのNヘッドに加え、それに続くネックドメインを備える、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
[5]前記分子量が120kDa〜300kDaである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
[6]前記分子量が120kDa〜250kDaである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
[7]前記分子量が125kDa〜200kDaである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
[8]前記分子量が125kDa〜180kDaである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
[9]前記単量体ポリペプチドがそのN末端側に、配列番号5のアミノ酸配列からなる領域を備え、
前記単量体ポリペプチドがそのC末端側に、配列番号3のアミノ酸配列からなる領域を備える、
[4]〜[8]のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
[10]前記単量体ポリペプチドがそのN末端側に、配列番号26のアミノ酸配列からなる領域を備え、
前記単量体ポリペプチドがそのC末端側に、配列番号3のアミノ酸配列からなる領域を備える、
[4]〜[8]のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
[11]前記単量体ポリペプチドが、配列番号6〜25のいずれかのアミノ酸配列を含む、[1]又は[2]に記載の接着性ファイバー。
[12][1]〜[11]のいずれか一項に記載の接着性ファイバーを細胞表面に発現した微生物。
[13]前記微生物が元来TAAを有する、[12]に記載の微生物。
[14]前記微生物がグラム陰性菌である、[12]に記載の微生物。
[15]前記微生物がガンマプロテオバクテリアである、[12]に記載の微生物。
[16]前記微生物がアシネトバクター又は大腸菌である、[12]に記載の微生物。
[17][1]〜[11]のいずれか一項に記載の接着性ファイバーをコードするDNA。
[18]配列番号27〜46のいずれかの塩基配列からなる、[17]に記載のDNA。
[19][1]〜[11]のいずれか一項に記載の接着性ファイバーをコードするDNAを、標的微生物に導入するステップ、を含む、接着性ファイバーを細胞表面に発現した微生物の作製方法。
[20]前記DNAが、以下の(a)〜(d)のいずれかのDNAである、[19]に記載の作製方法:
(a)配列番号27〜46のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(b)(a)のDNAと80%以上の相同性を有する塩基配列からなり、微生物に対して非特異的付着性を付与するタンパク質(ホモ三量体)を構成する単量体ポリペプチドをコードするDNA、
(c)(a)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、微生物に対して非特異的付着性を付与するタンパク質(ホモ三量体)を構成する単量体ポリペプチドをコードするDNA、
(d)配列番号27〜46のいずれかの塩基配列のDNA配列縮重体。
[21]前記DNAと一緒に、以下の(A)〜(D)のいずれかのDNAも前記標的微生物に導入する、[20]に記載の作製方法:
(A)配列番号47の塩基配列からなるDNA、
(B)配列番号47の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA、
(C)配列番号47の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
(D)配列番号47の塩基配列のDNA配列縮重体。
[22]前記標的微生物が元来TAAを有する、[19]〜[21]のいずれか一項に記載の作製方法。
[23]前記標的微生物がグラム陰性菌である、[19]〜[21]のいずれか一項に記載の作製方法。
[24]前記標的微生物がガンマプロテオバクテリアである、[19]〜[21]のいずれか一項に記載の作製方法。
[25]前記標的微生物がアシネトバクター又は大腸菌である、[19]〜[21]のいずれか一項に記載の作製方法。
[26][19]〜[25]のいずれか一項に記載の作製方法で得られた、接着性ファイバーを細胞表面に発現した微生物。
各種AtaA部分欠損体(IFD)の構造(上)と実験結果(付着菌体量と自己凝集性)(下)。 AtaAのドメインモデル。SPはシグナルペプチド。TMはメンブレンアンカードメイン。 接着性に必須の構造を残した各種IFD。 固定化試験の結果(固定化能の経時変化)。分子量が比較的小さいIFDの固定化能の経時変化(左)と分子量が比較的大きいIFDの固定化能の経時変化(右)を示す。括弧内の数値は各IFDを構成する単量体ポリペプチドの分子量。 固定化試験の結果(IFDを構成する単量体ポリペプチドの分子量と固定化能の関係)。IFDを導入していない宿主Acinetobacter sp. Tol 5 4140の測定値を分子量0のときの浮遊菌体濃度とした。分子量125kDa付近で浮遊菌体濃度が0になることがわかる。 大腸菌でのIFDの発現。IFDの表層提示量を共焦点レーザー顕微鏡で確認した。 大腸菌でのIFDの発現。IFDの表層提示量をフローサイトメトリーで評価した。 IFDを発現させた大腸菌株BL21の固定化試験の結果。分子量の小さいIFD(IFD059、IFD053)の固定化能を全長AtaA(AtaA)と比較した。*は有意差があることを示す。BL21は大腸菌BL21の野生株(ネガティブコントロール) アシネトバクター属細菌ADP1でのIFDの発現。CBB染色及びウエスタンブロットにより、IFD053の発現量を全長AtaA (pAtaA)と比較した。また、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)とフローサイトメトリー(FACS)により、IFD053の表層提示量を全長AtaAと比較した。上段はIFD053の構造。4140はIFDを導入していない宿主Acinetobacter sp. Tol 5 4140。 AtaA部分欠損体ΔNS-A'pApとΔYlhead_2の構造(上)と実験結果(付着菌体量)(下)。各AtaA部分欠損体を構成する単量体ポリペプチドの分子量を構造の右に示した。実験方法は図1の場合と同様である。ΔNS-A'pApとΔYlhead_2は十分な分子量があるにもかかわらず、また前者は図1のΔNS-A'1およびΔNS-Aと、後者はΔNS-CΔCheadとそれぞれ比較してドメイン構成的には付着性を有すると考えられるが、付着性を示していない。
1.接着性ファイバー及びその遺伝子
本発明の第1の局面は接着性ファイバーに関する。本発明の接着性ファイバーはアシネトバクターsp. Tol5株のAtaAタンパク質の一部が欠損した構造を有する。この特徴に注目し、以下では、本発明の接着性ファイバーをAtaA部分欠損体と呼ぶことがある。ここでの用語「一部」とは用語「全体」との対比で用いられるものである。従って、「一部が欠損」は、全体ではなく部分的な欠損(除去)を意味し、一箇所(連続する一定のアミノ酸配列領域)が欠損している場合に限らず、複数箇所が欠損している場合を含めた包括的な表現である。
上記の通り、本発明の接着性ファイバーはAtaAタンパク質の一部が欠損した構造を有する。言い換えれば、全長AtaAタンパク質の構造において部分的に欠損し、欠損部の前後で連結された構造からなる。機能領域単位(ドメイン、モチーフなど)で除去して欠損部を形成することが好ましい。より具体的には、本発明の接着性ファイバーの構築にあたっては、ドメインアノテーション(図2)に基づき、全体の構造を可能な限り維持するために、ドメイン間の連結部(つなぎの部分)で切断、削除し再結合することが好ましい。即ち、ドメイン間の連結部と、当該連結部よりもC末端側に位置するドメイン間の連結部を再結合し、欠損構造を形成するとよい(設計方法(A))。ドメイン内で切断する場合には、AtaA内に存在する繰り返し配列を利用し、欠損後もそのドメインとアミノ酸配列が保存されるようにするとよい(設計方法(B))。さらに、ドメイン内にあって繰り返し配列も利用できない場合は、コイルドコイルの周期性を利用して、切断、削除、再結合後にコイルドコイルの周期性が復活するようにする(設計方法(C))。以上の設計方法により、欠損後のポリペプチドは正しい立体構造をとるホモ三量体を形成することができる。これらの設計方法が有効であることは、設計方法(A)によって構築されたIFD09、IFD010、IFD013、IFD016、IFD030、IFD031、IFD036、FD047、IFD048、IFD055、設計方法(B)によって構築されたIFD049、IFD050、設計方法(C)によって構築されたIFD035、IFD040、IFD042、IFD051、IFD054、設計方法(B)及び(C)を併用して構築されたIFD052、設計方法(A)〜(c)を併用して構築されたIFD053、IFD059(各AtaA部分欠損体の構造の詳細は後述する)がいずれも高い微生物細胞固定化能を示した事実によって裏づけられている(実施例を参照)。対照的に、設計方法(A)〜(C)のいずれも適用せずに構築したAtaA部分欠損体(図10に示したΔNS-A'pApとΔYlhead_2)では付着性が認められず(図10下)、接着性ファイバーとしての機能を喪失している。これらの部分欠損体の構成ポリペプチドの分子量は120kDaよりずっと大きく、また接着に必須なドメインも全て含む。さらに、ΔNS-A'pApは全長AtaAと同程度の接着性を示したΔNS-A'1およびΔNS-Aの欠損部分を合わせたような欠損部分をもつポリペプチドで構成され、ΔYlhead_2はΔNS-CΔCheadの欠損部分ごく一部であるYlhead2のみを欠損したポリペプチドで構成される。すなわち、両AtaA部分欠損体とも、ドメイン構成的には全長AtaAと同程度の接着性を有していても当然であると考えられる。しかし、設計方法(A)〜(C)のいずれにも適用せずに構築されたため、的確な三量体立体構造がとれず、接着性を失ったものと考えられる。尚、ΔNS-A'pApとΔYlhead_2を構成する単量体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号51と配列番号52にそれぞれ示す。
アシネトバクター sp.Tol5株は、排ガス処理リアクターから分離されたトルエン分解能を有する株であり、受託番号FERM P-17188として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許生物寄託センター(NITE IPOD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)に寄託されている。
AtaAはN末端側からC末端側に向かって順に、Nヘッド、Nストーク、Cヘッド、Cストーク、メンブレンアンカードメインが並んだ構造を備える。さらにNヘッド、Nストーク、Cヘッド、CストークはYlheadやTrp-ring、GIN、FGGなど様々なドメインを、またドメインによっては反復して含む(図2を参照)。全長AtaAを構成する単量体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号1(シグナルペプチドの配列(配列番号49)を含む)に示す。発現する際には、そのC末端のアラニン(配列番号1の59番目のアミノ酸残基)を残してシグナルペプチドは切断されることになる。
本発明の接着性ファイバーは、第1の特徴として、接着性および細胞表層への提示に重要ないし必須の構造を備える。具体的には、AtaAタンパク質のNヘッドをN末端側に備えるとともに、AtaAタンパク質のC-ストーク内のFGGドメイン及びメンブレンアンカードメインを備える。Nヘッドを構成するアミノ酸配列を配列番号2に、C-ストーク内のFGGドメイン及びメンブレンアンカードメインを構成するアミノ酸配列を配列番号3に示す。
本発明の機能性ファイバーの第2の特徴は分子サイズである。本発明者の検討によって、AtaA部分欠損体の微生物細胞固定化能には分子サイズが重要であることが明らかとなった。即ち、後述の実施例に示すように、単量体ポリペプチドの分子量が100kDa付近を境として微生物細胞固定化能が急激に低下し、80kDaより小さいと微生物細胞固定化能をほとんど示さないことが判明した。また、実用性を考慮すれば、全長AtaAと同等の高い微生物細胞固定化能を示した分子量、即ち、120kDa以上であることが望まれる。この知見及び考察に基づき、本発明の機能性ファイバーはその微生物細胞固定化能の発揮のために、それを構成する単量体ポリペプチドの分子量が120kDa以上である。本発明の機能性ファイバーを微生物細胞で発現させ、表層提示させるとホモ三量体を形成する。従って、実際の機能性ファイバーの分子量は、単量体ポリペプチドの分子量の三倍となる。
より高い微生物細胞固定化能の発揮のため、本発明の機能性ファイバーを構成する単量体ポリペプチドの分子量は好ましくは125kDa以上である。分子量の上限は特に限定されないが、本発明の機能性ファイバーはAtaA部分欠損体であることから、それを構成する単量体ポリペプチドの分子量は、全長AtaAを構成する単量体ポリペプチドの分子量(353kDa)よりも小さくなる。但し、分子サイズが小さいことによる利点(発現効率の向上など)を考慮すれば、本発明の機能性ファイバーを構成する単量体ポリペプチドの分子量は好ましくは300kDa以下、更に好ましくは250kDa以下、更に更に好ましくは200kDa以下、より一層好ましくは180kDa以下である。従って、本発明の機能性ファイバーを構成する単量体ポリペプチドの分子量の範囲は、好ましくは120kDa〜300kDa、更に好ましくは120kDa〜250kDa、更に更に好ましくは125kDa〜200kDa、より一層好ましくは125kDa〜180kDaである。
本発明の機能性ファイバーでは、上記分子量の要件、即ち「それを構成する単量体ポリペプチドの分子量が120kDa以上であること」を満足するように、N末端側のNヘッドとC末端側のFGGドメインが直接ではなく、全長AtaAタンパク質における、Nヘッドに続く部分からCストーク内のFGGドメインの前までの領域に存在するドメイン構造又はモチーフ(例えば、ネック、GANG、Trp-ring、GIN、FGG、DALL1等)の二つ以上を介して、連結される。N末端側のNヘッドとC末端側のFGGドメインの間に介在する、当該二つ以上のドメイン構造又はモチーフ(説明の便宜上、以下では「介在構造」と呼ぶ)は、全長AtaAにおける順序と同一の順序で配置される。理論に拘泥する訳ではないが、この特徴によってAtaAの部分構造の維持が図られ、微生物細胞固定化能の喪失ないし低下を防止することができる。
好ましい態様では、介在構造が、AtaAタンパクのNヘッドに続くネックドメインとそれ以外のドメイン又はモチーフを含む。言い換えれば、N末端側領域がAtaAタンパクのNヘッドに加え、それに続くネックドメイン(配列番号4)も含み、そして、N末端側領域とC末端側領域(FGGドメイン及びメンブレンアンカードメインを含む)が、他のドメイン又はモチーフを介して連結されることになる。この態様の接着性ファイバーでは、それを構成する単量体ポリペプチドがそのN末端側に配列番号5のアミノ酸配列からなる領域(Nヘッドとネックドメイン)を備え、同C末端側に配列番号3のアミノ酸配列からなる領域(C-ストーク内のFGGドメインとメンブレンアンカードメイン)を備える。
本発明の接着性ファイバーは、全長AtaA同様に非特異的接着性による微生物細胞固定化能を示す。本発明の接着性ファイバーの固定化能の程度は特に限定されない。例えば、評価対象の接着性ファイバーを細胞表面に発現させた微生物を作製し、当該微生物の付着性を、ウレタンフォームを用いた固定化試験(後述)で調べることにより、接着性ファイバーの固定化能を評価することができる。本発明の接着性ファイバーでは、休止菌体を用いた固定化試験における60分後の担体固定化率(増殖菌体の場合は、増殖後の担体固定化率)が、全長AtaAの固定化率と比べて好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、より一層好ましくは90%以上、最も好ましくは同程度以上である。
本発明の接着性ファイバーの具体例を、それを構成する単量体ポリペプチドのアミノ酸配列とともに以下に示す。各接着性ファイバーの詳細な構造は図3に示される(後述の実施例も参照)。標的細胞に導入し、表層提示させた接着性ファイバーの場合、通常、以下に示した各アミノ酸配列のN末端に、シグナルペプチドに由来する1〜数アミノ酸残基が付加された配列となる。例えば、実施例に示すように、AtaA本来のシグナル配列を用いた場合には、N末端にアラニンが付加された配列からなる単量体ポリペプチドが三量体を形成し、接着性ファイバーが表層提示される。尚、シグナルペプチドは、標的微生物内で接着性ファイバータンパク質が発現し、細胞表面に提示される過程で切断されるものであり、接着性ファイバーの固定化能に寄与するものではない。AtaA本来のもの(配列番号49)とは別のシグナルペプチドを用いて接着性ファイバーを発現させることも可能であり、その場合には、使用するシグナルペプチドに応じて、表層提示された接着性ファイバーを構成する単量体ポリペプチドのN末端アミノ酸数残基が変化することがある。
名称 : 単量体ポリペプチドのアミノ酸配列
IFD09 : 配列番号6
IFD010 : 配列番号7
IFD013 : 配列番号8
IFD016 : 配列番号9
IFD030 : 配列番号10
IFD031 : 配列番号11
IFD035 : 配列番号12
IFD036 : 配列番号13
IFD040 : 配列番号14
IFD042 : 配列番号15
IFD047 : 配列番号16
IFD048 : 配列番号17
IFD049 : 配列番号18
IFD050 : 配列番号19
IFD051 : 配列番号20
IFD052 : 配列番号21
IFD053 : 配列番号22
IFD054 : 配列番号23
IFD055 : 配列番号24
IFD059 : 配列番号25
中でも、IFD059とIFD036は、サイズが小さい上に全長AtaAと同等の固定化能力を示すものであり、特に好ましい。これら二つの接着性ファイバーは、図3に示す通り、N末端側領域が同一である。当該N末端側領域を構成するアミノ酸配列を配列番号26に示す。
本発明は更に、接着性ファイバーの遺伝子(以下、「ファイバーDNA」と呼ぶ)も提供する。当該遺伝子は、典型的には、標的微生物に付着性を付与するために利用される。ファイバーDNAは、本発明の接着性ファイバーを構成する単量体ポリペプチドをコードする。従って、それが導入された微生物ではファイバーDNAが発現し、その産物である単量体ポリペプチドが発現して三量体を形成し、その結果、接着性ファイバーが細胞表面に提示されることになる。以下、ファイバーDNAの具体例を、対応する接着性ファイバーの名称とともに示す。
対応する接着性ファイバーの名称 : ファイバーDNAの塩基配列
IFD09 : 配列番号27
IFD010 : 配列番号28
IFD013 : 配列番号29
IFD016 : 配列番号30
IFD030 : 配列番号31
IFD031 : 配列番号32
IFD035 : 配列番号33
IFD036 : 配列番号34
IFD040 : 配列番号35
IFD042 : 配列番号36
IFD047 : 配列番号37
IFD048 : 配列番号38
IFD049 : 配列番号39
IFD050 : 配列番号40
IFD051 : 配列番号41
IFD052 : 配列番号42
IFD053 : 配列番号43
IFD054 : 配列番号44
IFD055 : 配列番号45
IFD059 : 配列番号46
2.接着性ファイバーを細胞表面に発現した微生物及びその作製方法
本発明は更なる局面として、接着性ファイバーを細胞表面に発現した微生物(以下、「付着性付与微生物」と呼ぶ)及びその作製方法も提供する。付着性付与微生物は、本発明の接着性ファイバーの遺伝子(即ち、ファイバーDNA)を微生物(標的微生物)に導入することによって調製することができる。「接着性ファイバーの遺伝子」とは、それを発現させた場合に当該接着性ファイバーが得られるDNA、即ち、当該接着性ファイバーを構成する単量体ポリペプチドのアミノ酸配列に対応する塩基配列を有するDNAのことをいう。従ってコドンの縮重も当然に考慮される。また、遺伝子導入の際、標的微生物に対応するようにコドンの最適化をすることがあり、このようなコドンの最適化も当然に考慮される。
ファイバーDNAとして、典型的には上掲の配列番号27〜46のいずれかに示される塩基配列のDNAが用いられるが、当該DNAと機能的に同等のDNAを用いることにしてもよい。機能的に同等のDNAとしては、基準となる塩基配列(配列番号27〜46のいずれかの塩基配列)と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、微生物に対して非特異的付着性を付与するタンパク質(ホモ三量体)を構成する単量体ポリペプチドをコードするDNAが挙げられる。あるいは、基準となる塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、微生物に対して非特異的付着性を付与するタンパク質(ホモ三量体)を構成する単量体ポリペプチドをコードするDNAが挙げられる。機能的に同等のDNAの更に別の例は、配列番号27〜46のいずれかに示される塩基配列のDNA配列縮重体である。
ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、低ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件が挙げられるが、高ストリンジェントな条件が好ましい。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1% SDSで洗浄する条件であり、好ましくは50℃、5×SSC、0.1% SDSで洗浄する条件である。高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1% SDSで洗浄する条件である。
基準となる塩基配列との間の相違によって、発現産物である接着性ファイバーの各機能領域(例えばNヘッド、ネックドメイン、FGGドメイン、メンブレンアンカードメイン)が実質的な影響を受けないことが好ましい。即ち、各機能領域の構造が維持され、本来の機能が発揮できる限度において、基準となる塩基配列との間の相違が生じていることが好ましい。
標的微生物に導入する際、通常は、シグナルペプチドをコードする配列(シグナル配列)が5'末端に付加されたファイバーDNAが用いられる。シグナル配列の具体例を配列番号50(AtaA本来のシグナル配列)に示す。いうまでもなく、同等の機能を示す他のシグナル配列を用いることも可能である。
ファイバーDNAをコードするDNAとともに、配列番号47で表される塩基配列からなるDNAを標的微生物に導入することにより、標的微生物の非特異的付着性をさらに向上させることができる。配列番号47で表される塩基配列からなるDNAと機能的に同等の遺伝子を導入してもよい。配列番号47で表される塩基配列からなるDNAと機能的に同等のDNAとしては、配列番号47で表される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAが挙げられる。あるいは、配列番号47で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが挙げられる。機能的に同等のDNAの更に別の例は、配列番号47に示される塩基配列のDNA配列縮重体である。尚、配列番号47で表される塩基配列は、Tol5株のataA遺伝子のすぐ下流に見出された配列であり、グラム陰性細菌が有する外膜タンパク質ompA遺伝子やBamE遺伝子、omlA遺伝子などと相同性を示すタンパク質のORFをコードする。当該ORFであるTol5-tpgA(特許文献1ではTol5-OmpAと呼称されていた)は795bpの遺伝子(配列番号47)でコードされる264アミノ酸(配列番号48)からなる。尚、Tol5株から単離・同定されたオペロン(ataA-tpgAオペロン。ataA遺伝子に加え、プロモーター/リボソーム結合部位及びTol5-tpgA遺伝子を含む)を組込んだベクターで形質転換したE.coli DH5αは、「DH5α-XLTOPO::aadA-ompA」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号NITE BP-490(受託日2008年(平成20年)2月19日)として寄託されている。
ファイバーDNAを導入する標的微生物には様々な微生物を用いることができる。標的微生物としては、特に制限されないが、例えば、非特異的付着性がない又は弱い微生物が挙げられる。標的微生物は野生株、変異株、遺伝子組換え株のいずれであってもよい。本発明の用途に応じて適切な微生物が選択される。好ましくはグラム陰性菌を、さらに好ましくはガンマプロテオバクテリアを標的微生物とする。元来TAAを有する微生物は、好ましい標的微生物の一つである。標的微生物として利用し得る微生物を例示すると、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、例えば、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、例えばアシネトバクター カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、例えばラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、例えばシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、アエロモナス(Aeromonas)属細菌、例えばアエロモナス キャビエ(Aeromonas caviae)、アルカリゲネス(Alcaligenes)属細菌、例えばアルカリゲネス レータス(Alcaligenes latus)、ザントモナス(Xanthomonas)属細菌、例えばザントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris)、デスルフォモナイル(Desulfomonile)属細菌、例えばデスルフォモナイル ティージェイ(Desulfomonile tiedjei)、デスルフォモナス(Desulfuromonas)属細菌、例えばデスルフォモナス クロロエテニカ(Desulfuromonas chloroethenica)、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属細菌、例えばクロモバクテリウム チヨコラチウム(Chromobacterium chocolatum)、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、例えばバークホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、アシドボラックス(Acidovorax)属細菌、例えばアシドボラックス ファシリス(Acidovorax facilis)、ザイモモナス(Zymomonas)属細菌、例えばザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、シアノバクテリア(例えば、Thermosynechococcus属のT. elongatus)である。
ファイバーDNAを標的微生物に導入して形質転換することにより、非特異的付着性が付与された微生物が得られる。典型的には、ファイバーDNAを適当なベクターに連結し、該ベクターで標的微生物(宿主微生物)を形質転換することにより、非特異的付着性が付与された微生物を得ることができる。具体的には、宿主微生物にファイバーDNAを多コピーにて導入したり、構成的に発現するプロモーター支配下にファイバーDNAを連結したり、又は誘導酵素系プロモーター支配下にファイバーDNAを連結したりして、非特異的付着性が付与された微生物を得ることができる。
まず、ファイバーDNAをベクター中に連結し、組換えベクターを製造する。上記ベクターには、宿主細胞で自律的に増殖し得るファージ、コスミド、人工染色体又はプラスミドが使用されるほかに、例えば、プラスミドを発現カセットとして染色体に導入するような場合にはその発現カセットの構築に必要な宿主(例えば、大腸菌)での自律複製能は必要だが、その発現カセットを導入する宿主(例えば、アシネトバクター属細菌)での自律複製能は必ずしも必要でない。これらの組換えベクターとして、例えば、大腸菌とアシネトバクター属細菌の両方で使用可能なように設計したシャトルベクター等も使用可能である。
プラスミドとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pET21a(+)、pET32a(+)、pET39b(+)、pET40b(+)、pET43.1a(+)、pET44a(+)、pKK223-3、pGEX4T、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等)、大腸菌-アシネトバクター間シャトルベクタープラスミドpARP3(非特許文献1)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λgt11、λZAP等)が挙げられる。また、クローニング、シークエンス確認用にpCR4-TOPO(登録商標)などの市販のクローニング用ベクターを用いてもよい。
ベクターにファイバーDNAを挿入するには、まず、精製されたファイバーDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。例えば、ファイバーDNAは、通常知られている方法により合成することができ、ベクターに組み込むため、適当な制限酵素の切断部位を両末端に含むように、プライマーを用いてPCR法により増幅してもよい。PCR反応の条件は、当業者が適宜決定することができる。
その他、組換えベクターには、プロモーター及びファイバーDNAに加えて、必要に応じてエンハンサーなどのシスエレメント、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などが連結されていてもよい。選択マーカーの例としては、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールなどの薬剤耐性マーカー、ロイシン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、アルギニン、トリプトファン、ウラシルなどの栄養要求性マーカーが挙げられるがこれに限定されない。
プロモーターは、特に制限されず、宿主微生物に応じて当業者が適宜選択すればよい。例えば、宿主が大腸菌である場合には、T7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λ−PLプロモーター、アラビノースプロモーターなどが使用できる。
DNA断片とベクター断片とを連結させるには公知のDNAリガーゼを用いるとよい。そして、DNA断片とベクター断片とをアニーリングさせた後連結させ、組換えベクターを作成する。好ましくは市販のライゲーションキット、例えば、ライゲーションhigh(東洋紡株式会社製)を用いて、規定の条件にてライゲーション反応を行うことにより組換えベクターを得ることができる。
クローニング、連結反応、PCR等を含む組換えDNA技術は、例えば、Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.,9.47-9.58,Cold Spring Harbor Lab.press(1989)及びShort Protocols In Molecular Biology,Third Edition,A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.に記載されるものを利用することができる。
得られたベクターを、必要であればボイル法、アルカリSDS法、磁性ビーズ法及びそれらの原理を使用した市販されているキット等により精製し、さらに例えばエタノール沈殿法、ポリエチレングリコール沈殿法などの濃縮手段により濃縮することができる。
標的微生物への組換えベクターの導入方法は、特に限定されないが、例えばカルシウムイオンを用いるヒートショック法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法等が挙げられる。自律複製可能なプラスミドを導入する形式の他に、染色体の遺伝子と相同な領域をベクター内に配置し、相同組換えを起こさせて目的遺伝子を導入させる染色体組み込み型の導入方法を使用してもよい。また、ZFN(Zinc Finger Nuclease)、TALEN(Transcription Activator-Like Effector Nuclease)、CRISPR-Cas9等によるゲノム編集技術を用いることにしてもよい。
目的のDNAを含む形質転換微生物は、その組換えベクターが有するマーカー遺伝子により、例えば、アンピシリン、カナマイシン、ゲンタマイシンなどの抗生物質を含むLB培地寒天プレート上でコロニーを形成することにより選抜することができるが、クローニングされた宿主微生物が組換えベクターにより形質転換されたものかどうかを確認するため、一部を用いて、PCR法によるインサートの増幅確認、又はシーケンサーを用いたダイデオキシ法による配列解析をしてもよい。
得られた形質転換微生物を培地で培養する方法は、標的微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。大腸菌等の微生物を宿主として得られた形質転換微生物を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換微生物の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。具体的には、M9培地、M9G培地、BS培地、LB培地、Nutrient Broth培地、肉エキス培地、SOB培地、SOC培地等が挙げられる。
炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコースなどの糖類、グリセリンなどのポリオール類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、又はピルビン酸、コハク酸、クエン酸若しくは乳酸等の有機酸類の他、脂肪酸類や油脂などを使用することができる。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物、メチルアミンなどのアルキルアミン類、又はアンモニア若しくはその塩、硝酸塩などを使用することができる。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミン、消泡剤なども必要に応じて使用してもよい。また、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド、アラビノースなどのタンパク質発現誘導剤を必要に応じて培地に添加してもよい。
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、好ましくは0〜40℃、より好ましくは10〜37℃、特に好ましくは15〜37℃で行う。培養期間中、培地のpHは宿主の発育が可能で、ファイバーDNAの発現産物である接着性ファイバーの構造が、微生物細胞固定化能が損なわれるほど壊れない範囲で適宜変更することができるが、好ましくはpH4〜8程度の範囲である。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
上記のようにして、固定化能が付与された微生物を得ることができる。得られた微生物の非特異的付着性については、例えば、ウレタンフォームを用いた固定化試験(後述)によって評価することができる。
1.接着性に必須の部位の特定
(1)AtaA部分欠損体(IFD)の構築
Nヘッド(N-エクストラとYlヘッド_1を含む)が欠損した構造のAtaA(ΔNextraNhead)、N-ストーク内の一部が欠損した構造のAtaA(ΔNS-A'1、ΔNS-A、ΔNS-B)、N-ストーク内の一部に加え、Cヘッドを欠損させた構造のAtaA(ΔNS-CΔChead)、C-ストークの大部分が欠損(FGGドメインは保存)した構造のAtaA(ΔCstalk2)を設計した(図1上)。尚、IFDの構築は、ドメインアノテーション(図2)に基づいて構造を壊さないようにドメイン間のつなぎの部分で切断、削除し再結合するか、やむを得ずドメイン内で切断する場合でも、AtaA内に存在する繰り返し配列を利用することで、欠損後もそのドメインとアミノ酸配列が保存されているようにつないだ。さらに、ドメイン内にあって繰り返し配列も利用できない場合は、コイルドコイルの周期性を利用して、切断、削除、再結合後にコイルドコイルの周期性が復活するようにした。
各IFDについて、ataA遺伝子をクローニングしてあるpAtaA(非特許文献1)、pDONR221::ataA、合成遺伝子断片を利用して発現コンストラクトを構築した。発現コンストラクトを保有するドナー株E. coli S17-1(Simon, R.; Priefer, U.; Puhler, A., Bio-Technol 1983, 1, (9), 784-791)との接合により、Tol 5のataA遺伝子欠損変異株である4140株を形質転換し、IFDを発現する形質転換株を得た。
(2)付着菌体量の測定及び自己凝集性の評価
各IFDの付着性と自己凝集性を比較評価した。付着菌体量はプレートアッセイ法で測定した。まず、IFDを発現する細胞株(AtaA部分欠損株)をLB培地中で一晩培養した後、LB培地に1/100量植菌し、115rpmで振とう培養した。続いて、28℃にて8時間培養した。ataA遺伝子およびその部分欠損遺伝子の発現を誘導する場合は、植菌時に0.5%アラビノースを添加した。培養後、遠心分離により集菌し、超純水で2回洗浄し、BS-N培地(1リットルあたりに、4.9 g Na2HPO4; 2.0 g KH2PO4; 2.7 g K2SO4; 340 mg MgCl2・6H2O; 1.7 mg CaCl2・2H2O; 2.4 mg FeSO4・7H2O; 0.3 mg ZnSO4・7H2O; 2.4 mg CoCl2・6H2O; 2.4 mg MnSO4・7H2O; 0.2 mg CuCl2・2H2O; 0.25 mg Na2MoO4を含む(pH 7.2))に再懸濁した。最終的に細胞濃度をOD660が0.5になるように調製し、200μlの懸濁液を96穴プレート中に移した。28℃で2時間インキュベートして細胞を付着させた後、ウェルをBS-N培地で2回洗浄し、付着した細胞を0.1%クリスタルバイオレットで15分間、室温にて染色した。染色後、BS-N培地でさらに3回洗浄し風乾させた。染色剤を200μlの99.5%エタノールで細胞から溶出し、590nmの吸光度を測定することで定量した。
一方、自己凝集性は試験管静置沈降法で評価した。まず、AtaA部分欠損株をLB培地に1/100量植菌し、115rpm、28℃にて8時間、振とう培養した。培養後、遠心分離により集菌し、超純水で2回洗浄し、BS-N培地に再懸濁した。細胞濃度を示すOD660が0.5になるように、細胞懸濁液を8 mL調製し、試験管中に移した。28℃で3時間静置させることで微生物細胞の細胞凝集塊を沈降させた後、上澄み液を採取してOD660で細胞懸濁液の濁度を測定した。静置前の0.5からの濁度の減少率により凝集率を算出した。
結果を図1下に示す。ΔNextraNhead(Nヘッドが欠損した構造のAtaAを発現する)は付着性と自己凝集性が著しく低下した。その他のAtaA部分欠損株では付着性、自己凝集性ともに実質的な変化は認められなかった。この結果は、AtaAの接着性にはNヘッドが必須であることを示す。また、ΔCstalk2が付着性及び自己凝集性を維持していることと、AtaAが膜結合型のファイバータンパク質であることから、付着機能を示すファイバータンパク質を適切に発現させるためにはC末端膜結合部位(メンブレンアンカードメイン)とファイバーの根元(C-ストーク内のFGGドメイン)も必要であると考えられる。
2.各種IFDの作製と固定化能評価
接着性に必須のNヘッドとメンブレンアンカードメインおよびその近傍(ファイバーの根元を構成するFGGドメイン)を残した各種IFDを設計した(図3)。各IFDを構成する単量体ポリペプチドのアミノ酸配列と、それをコードする遺伝子の塩基配列(一例)を以下に示す。
名称 : アミノ酸配列 : 塩基配列
IFD09 : 配列番号6 : 配列番号27
IFD010 : 配列番号7 : 配列番号28
IFD013 : 配列番号8 : 配列番号29
IFD016 : 配列番号9 : 配列番号30
IFD030 : 配列番号10 : 配列番号31
IFD031 : 配列番号11 : 配列番号32
IFD035 : 配列番号12 : 配列番号33
IFD036 : 配列番号13 : 配列番号34
IFD040 : 配列番号14 : 配列番号35
IFD042 : 配列番号15 : 配列番号36
IFD047 : 配列番号16 : 配列番号37
IFD048 : 配列番号17 : 配列番号38
IFD049 : 配列番号18 : 配列番号39
IFD050 : 配列番号19 : 配列番号40
IFD051 : 配列番号20 : 配列番号41
IFD052 : 配列番号21 : 配列番号42
IFD053 : 配列番号22 : 配列番号43
IFD054 : 配列番号23 : 配列番号44
IFD055 : 配列番号24 : 配列番号45
IFD059 : 配列番号25 : 配列番号46
上記1.と同様の方法で各IFDを発現するAtaA部分欠損株を作製し、その付着性を、新たに開発したポリウレタン固定化法で評価した。まず、増殖させたAtaA部分欠損株を超純水で2回洗浄し、菌体濃度(OD660)を1.0に合わせるようにBS-N培地に菌体を懸濁した。1cm角のポリウレタンフォーム担体(イノアックコーポレーション製CFH-40)が5個入ったフラスコに菌体懸濁液を24mL分注し、115rpm、28℃で振とうした。固定化による懸濁液中の菌体濃度の減少を経時的に測定した。菌が固体化されると振とう液が透明になり、上清のOD660が下がることになる。
固定化試験の結果を図4(固定化能の経時変化)と図5(IFDを構成する単量体ポリペプチドの分子量と固定化能の関係)に示す。分子量が小さいIFD(IFD043とIFD060)は固定化能を喪失していた(図4左)。また、三量体を構成する単量体ポリペプチドの分子量が109kDaのIFD038も、より分子量の大きなIFDと比べて、浮遊菌体濃度の低下速度、すなわち固定化速度が低下していた。固定化能と分子量との関係を調べたところ、IFDの固定化能は分子量に依存し、約100kDaを境として、IFDを構成する単量体ポリペプチドの分子量がそれよりも小さいと急激に固定化能が低下し、80kDa以下では固定化能をほとんど示さないことが判明した(図5)。また、IFDを構成する単量体ポリペプチドの分子量が120kDa以上であれば全長AtaAと同等の高い固定化能を発揮でき、実用性が高いことが示された。
3.大腸菌でのIFDの発現
上記の通り作製したIFDを大腸菌BL21株で発現させ、その固定化能を評価した。固定化能の評価方法は以下の通りとした。20mLのM9培地に1cm角のポリウレタンフォーム担体を4個入れ、そこに大腸菌を植菌して培養し、増殖後、担体を回収した。担体をBS-N培地で洗浄後、10mLの超純水中で固定化菌体を剥離し、菌体量を濁度法で測定した。また、培養液中の懸濁菌体量、洗浄により剥がれた菌体量も濁度法で測定した。固定化菌体量、懸濁菌体量、洗浄剥離菌体量の総和を総菌体量とし、次の式から担体固定化率を求めた。
担体固定化率(%)=固定化菌体量/総菌体量×100
代表例としてIFD059(単量体ポリペプチドの分子量139kDa)とIFD053(単量体ポリペプチドの分子量168kDa)の結果を図6〜8に示す。共焦点レーザー顕微鏡による観察及びフローサイトメトリーの解析により、菌体表層にIFDが提示されていることが確認された(図6、7)。IFD059とIFD053は全長AtaA(単量体ポリペプチドの分子量353kDa)よりも、遙かに多い表層提示量を示した(図6、7)。表層提示量を反映し、IFD059とIFD053の固定化能も優位に増大した(図8)。これらの結果は、AtaAの縮小化がそれを異種発現させた微生物の固定化能の増大に極めて有利であることを示す。
4.アシネトバクター属細菌でのIFDの発現
アシネトバクター属細菌Tol 5と同属別種の細菌であるアシネトバクター属細菌ADP1でIFDを発現させ、発現量及び表層提示量を評価した。IFDとしてはIFD053(単量体ポリペプチドの分子量168kDa)を使用し、全長AtaA(単量体ポリペプチドの分子量353kDa)を発現させた場合と比較した。尚、ADP1は元来、付着性も凝集性も有していないが、ataA遺伝子の導入によって高い付着性と凝集性を示す(Ishikawa, M.; Nakatani, H.; Hori, K., AtaA, a new member of the trimeric autotransporter adhesins from Acinetobacter sp. Tol 5 mediating high adhesiveness to various abiotic surfaces. PLoS One 2012, 7, (11), e48830.)。
図9右に示す通り、CBC染色とウエスタンブロットの結果から、全長AtaAに比べ、AtaAの短縮版であるIFD053の方が遺伝子発現量は多いことがわかる。一方で、共焦点レーザー顕微鏡による観察及びフローサイトメトリーの解析の結果から、全長AtaAとIFD053の表層提示量は同等であった。表層提示量に差が認められなかった理由は、全長AtaAにおいて既に最大量が提示されているためと考えられる。即ち、Tol 5株と同属のアシネトバクター属細菌では元々の表層提示量が多く、全長AtaAを発現させた場合でも飽和しており、短縮化することで遺伝子発現量が多くなっても、表層提示量が増大しないといえる。この結果と、上記の大腸菌での発現実験の結果を併せて考察すれば、AtaAを短縮化して遺伝子発現量を増大させれば、それに応じて表層提示量も増大するという単純なものではなく、宿主(標的微生物)との関係も重要であるという、AtaAの利用・応用を図る上で有用な事実が明らかとなった。
全長AtaAよりも分子サイズの小さい本発明の接着性ファイバーは効率的な発現に有利である。本発明によれば、AtaAを利用した固定化技術の汎用性が向上し、適用可能な微生物(即ち、付着性/担体への固定化能を付与する微生物)の増大も望める。このように本発明は、AtaAを利用した固定化技術の利用価値の向上に貢献する。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
配列番号6:人工配列の説明:IFD09
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配列番号41:人工配列の説明:IFD051
配列番号42:人工配列の説明:IFD052
配列番号43:人工配列の説明:IFD053
配列番号44:人工配列の説明:IFD054
配列番号45:人工配列の説明:IFD055
配列番号46:人工配列の説明:IFD059
配列番号51:人工配列の説明:ΔNS-A'pAp
配列番号52:人工配列の説明:ΔYlhead_2

Claims (26)

  1. アシネトバクターsp. Tol5株のAtaAの一部が欠損した構造からなり、
    AtaAのNヘッドをN末端側に備え、
    AtaAのC-ストーク内のFGGドメイン及びメンブレンアンカードメインをC末端側に備え、
    それを構成する単量体ポリペプチドの分子量が120kDa以上である、
    ホモ三量体の接着性ファイバー。
  2. 以下の(A)〜(C)のいずれかの方法で設計される、請求項1に記載の接着性ファイバー:
    (A)AtaAのドメイン間の連結部と、該連結部よりもC末端側に位置するドメイン間の連結部を再結合することにより、前記欠損構造を形成する;
    (B)AtaA内に存在する繰り返し配列を利用し、欠損後も切断したドメインとそのアミノ酸配列が保存されるように切断、再結合することにより、前記欠損構造を形成する;
    (C)コイルドコイルの周期性を利用して、切断、削除、再結合後にコイルドコイルの周期性が復活するように、前記欠損構造を形成する。
  3. AtaAにおける、Nヘッドに続く部分からC-ストーク内のFGGドメインの前までの領域に存在するドメイン構造又はモチーフの二つ以上を、前記Nヘッドと前記FGGドメインの間に備え、該二つ以上のドメイン構造又はモチーフは、全長AtaAにおける順序と同一の順序で配置される、請求項1又は2に記載の接着性ファイバー。
  4. 前記N末端側が、AtaAのNヘッドに加え、それに続くネックドメインを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
  5. 前記分子量が120kDa〜300kDaである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
  6. 前記分子量が120kDa〜250kDaである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
  7. 前記分子量が125kDa〜200kDaである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
  8. 前記分子量が125kDa〜180kDaである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
  9. 前記単量体ポリペプチドがそのN末端側に、配列番号5のアミノ酸配列からなる領域を備え、
    前記単量体ポリペプチドがそのC末端側に、配列番号3のアミノ酸配列からなる領域を備える、
    請求項4〜8のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
  10. 前記単量体ポリペプチドがそのN末端側に、配列番号26のアミノ酸配列からなる領域を備え、
    前記単量体ポリペプチドがそのC末端側に、配列番号3のアミノ酸配列からなる領域を備える、
    請求項4〜8のいずれか一項に記載の接着性ファイバー。
  11. 前記単量体ポリペプチドが、配列番号6〜25のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の接着性ファイバー。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着性ファイバーを細胞表面に発現した微生物。
  13. 前記微生物が元来三量体オートトランスポーターアドヘシンを有する、請求項12に記載の微生物。
  14. 前記微生物がグラム陰性菌である、請求項12に記載の微生物。
  15. 前記微生物がガンマプロテオバクテリアである、請求項12に記載の微生物。
  16. 前記微生物がアシネトバクター又は大腸菌である、請求項12に記載の微生物。
  17. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着性ファイバーをコードするDNA。
  18. 配列番号27〜46のいずれかの塩基配列からなる、請求項17に記載のDNA。
  19. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着性ファイバーをコードするDNAを、標的微生物に導入するステップ、を含む、接着性ファイバーを細胞表面に発現した微生物の作製方法。
  20. 前記DNAが、以下の(a)〜(d)のいずれかのDNAである、請求項19に記載の作製方法:
    (a)配列番号27〜46のいずれかの塩基配列からなるDNA、
    (b)(a)のDNAと90%以上の相同性を有する塩基配列からなり、微生物に対して非特異的付着性を付与するタンパク質(ホモ三量体)を構成する単量体ポリペプチドをコードするDNA、
    (c)(a)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、微生物に対して非特異的付着性を付与するタンパク質(ホモ三量体)を構成する単量体ポリペプチドをコードするDNA、
    (d)配列番号27〜46のいずれかの塩基配列のDNA配列縮重体。
  21. 前記DNAと一緒に、以下の(A)〜(D)のいずれかのDNAも前記標的微生物に導入する、請求項20に記載の作製方法:
    (A)配列番号47の塩基配列からなるDNA、
    (B)配列番号47の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなり、前記標的微生物の非特異的付着性をさらに向上させるDNA、
    (C)配列番号47の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記標的微生物の非特異的付着性をさらに向上させるDNA、
    (D)配列番号47の塩基配列のDNA配列縮重体。
  22. 前記標的微生物が元来三量体オートトランスポーターアドヘシンを有する、請求項19〜21のいずれか一項に記載の作製方法。
  23. 前記標的微生物がグラム陰性菌である、請求項19〜21のいずれか一項に記載の作製方法。
  24. 前記標的微生物がガンマプロテオバクテリアである、請求項19〜21のいずれか一項に記載の作製方法。
  25. 前記標的微生物がアシネトバクター又は大腸菌である、請求項19〜21のいずれか一項に記載の作製方法。
  26. 請求項19〜25のいずれか一項に記載の作製方法で得られた、接着性ファイバーを細胞表面に発現した微生物。
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