JP6793005B2 - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リードフレームなどに用いられる銅合金板材およびその製造方法に関する。
Ni、Siを主な副成分とするコルソン系合金からなる銅合金板材は、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどの用途に使用されている。そして、例えば半導体パッケージ用途のリードフレーム製造工程では、樹脂密着性を高めるために銅合金板材の表面の粗化処理が行われている。
ここで、特許文献1には、Co−Si系銅合金板において、酸洗後にバフ研磨することにより、圧延平行方向の表面粗さRa(RD)/圧延直角方向の表面粗さRa(TD)を0.8以下として、はんだ濡れ性に優れ、かつ半田付けの際のピンホールを少なくする技術が開示されている。また、特許文献2には、屈曲寿命が1.0×106回以上である圧延銅箔の表面に機械研磨を施すことにより、銅箔表面の最大粗さRyを2μm以下、加工変質層の厚みを3μm以下として、優れた屈曲性を有し、同時に良好なマイクロエッチング特性を持つ銅箔を提供する技術が開示されている。
特開2012−201905号公報 特開2009−280855号公報
通常コルソン系合金板材は、熱処理と圧延を繰り返し行い、高硬度を実現している。圧延時、母材に圧延加工によるひずみが入り、そのひずみによって加工硬化すると同時に材料表面に加工変質層が形成される。ところが、圧延加工では、材料全体に圧力が分散されてしまい、形成される加工変質層は非常に薄く、粗化処理性の低下を招くことが、本願発明者らの検討によりわかってきた。
本発明は、リードフレーム等に用いられる高強度で且つ粗化処理性の高いCu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明によれば、質量%で、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%を含有し、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有し、加工変質層の厚さが0.2〜1.5μmであり、表面の圧延方向に対して垂直方向の算術平均粗さRaが0.3μm以下であり、表面のビッカース硬さHVが200以上である、銅合金板材が提供される。また例えば、硫酸・過酸化水素水溶液を用いた浸漬試験において、前記銅合金板材表面の5mm×5mmの正方形の範囲内に、深さ0.3μm以上の浸食部が90%以上存在する。
また本発明によれば、質量%で、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%を含有し、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板材を製造する方法であって、鋳造後、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、中間冷間圧延、時効処理、仕上げ冷間圧延、形状矯正、低温焼鈍を行い、最終工程でバフ研磨を行い、仕上げ冷間圧延率を、53%以上、84%以下とし、最終工程で行われるバフ研磨において、前記銅合金板材の送り速度を2〜50m/min、バフロールの周速度を600m/min以上、負荷電流を0.18〜0.26A/cmとし、ダウンカットによりバフ研磨して加工変質層の厚さを0.2〜1.5μm、表面の圧延方向に対して垂直方向の算術平均粗さRaを0.3μm以下、表面のビッカース硬さHVを200以上とすることを特徴とする、銅合金板材の製造方法が提供される。例えば、前記バフの砥粒が炭化ケイ素である。また例えば、前記バフロールの直径が300mm以上である。

本発明によれば、良好な粗化処理性を有するCu−Ni−Si系銅合金板材を得ることができる。
粗化処理部(浸食部)の割合を求める例の説明図である。 本発明の実施例の加工変質層の断面の写真である。
本発明の銅合金板材は、質量%で、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%を含有し、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有し、加工変質層の厚さが0.2〜1.5μmであり、表面の圧延方向に対して垂直方向の算術平均粗さRaが0.3μm以下であり、ビッカース硬さHVが200以上である。
Ni:1.0〜4.5%
本発明は、Cu−Ni−Si系合金を採用する。Niは主にNiSiからなるNi−Si系析出物を形成する。添加元素としてCoを含有する場合は、(Ni,Co)Siを主体としたNi−Co−Si系の析出物を形成すると考えられる。これらの析出物は銅合金板材の強度と導電率を向上させる。これらの強度向上に有効な微細な析出物粒子の十分な分散のためはNiの含有量を1.0%以上とする必要があり、1.5%以上とすることが好ましく、さらには2.0%を超えることがより好ましい。一方、Niを過剰に添加すると粗大な析出物が生成しやすく、熱間圧延時に割れやすくなり、また、粗大な析出物やNi系酸化物の生成、偏析が起こりやすくなり、粗化処理性の低下につながるので、4.5%以下とし、4.0%以下さらには3.0%以下に制御してもよい。
Si:0.1〜1.2%
SiはNi−Si系析出物を形成する。強度向上に有効な主にNiSi系の微細な析出物粒子を十分に分散させるためはSiの含有量を0.1%以上とする必要があり、0.4%以上とすることがより効果的である。一方、Siを過剰に添加すると粗大な析出物が形成されてしまい、熱間圧延時に割れやすくなるので、1.2%以下とし、1.0%以下としてもよい。
本発明の銅合金板材は、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%を必須成分として含有する他、任意成分として、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%を含有することができる。
Co:0〜2.0%、
CoはNi−Co−Si系の析出物を形成して、銅合金板材の強度と導電率を向上させる。また、強度向上に有効な微細な析出物粒子の分散のためは、Coの含有量を0.1%以上とする必要がある。但し、Co含有量が多くなると、粗大な析出物を生成しやすいので、Coを添加する場合は2.0%以下の範囲で行い、1.5%以下がより好ましく、1.0%以下、さらに0.4%以下としてもよい。
その他の元素として、必要に応じてMg、Cr、P、B、Mn、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Zn等を含有させることができる。これらの元素の含有量範囲は、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%とすることが好ましい。
Cr、P、B、Mn、Ti、Zr、Alは合金強度を更に高め、かつ応力緩和を小さくする作用を有する。Sn、Mgは耐応力緩和性の向上に有効である。Znは銅合金板材のはんだ付け性および鋳造性を改善する。Fe、Cr、Zr、Ti、Mnは不可避的不純物として存在するS、Pbなどと高融点化合物を形成しやすく、また、B、P、Zr、Tiは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。
Mg、Cr、P、B、Mn、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Znの1種または2種以上を含有させる場合は、それらの合計含有量を0.01%以上とすることがより効果的である。ただし、多量に含有させると、熱間または冷間加工性に悪影響を与え、かつコスト的にも不利となる。これら任意添加元素の総量は1.2%以下とすることがより望ましく、0.5%以下に制御してもよい。
加工変質層の厚さ:0.2〜1.5μm
本発明において、加工変質層とは、銅合金板材の表面に形成された結晶粒径が0.2μm未満の微細な結晶組織からなる表面層を指し、結晶粒径が0.5μm以上である銅合金板材の母材の組織と比較して明らかに異なる。加工変質層の厚さは、集束イオンビーム装置(FIB)を用いて、銅合金板材の圧延方向に直角な断面を露出させ、前記断面を20000倍でSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、銅合金板材の表面に平行な長さが100μmの範囲の観察部位における微細結晶組織からなる加工変質層の厚さの最大値を求め、加工変質層の厚さとする。粗化処理性に有効な加工変質層の厚さは0.2〜1.5μmであり、0.2μm未満であると粗化されにくい部分が発生し、粗化処理性が低下しやすい。加工変質層厚さは0.3μm以上、さらには0.6μm以上であることが好ましい。加工変質層が1.5μmよりも厚くなると、粗化処理性が低下しやすい。
ビッカース硬さHV:200以上
ビッカース硬さHVが200未満であると、高い機械的特性(高強度、高硬度)が求められる(特に小型の)リードフレーム用銅合金板材として使用することができない。また、銅合金板材の表面のビッカース硬さHVが200未満では、加工変質層は厚く形成されてしまい、粗化処理性が低下しやすくなる。一方ビッカース硬さHVが200以上の本発明の組成の高強度銅合金板材は、リードフレーム用銅合金板材として十分な強度を有する。ただし、従来の工程では厚い加工硬化層を形成することが困難であるが、後述の製造方法により高い硬度との両立を達成することができる。
算術平均粗さRa:0.3μm以下
表面(圧延面)の圧延方向に対して垂直方向の算術平均粗さ(Ra)は、Ra≦0.3μmである。算術平均粗さRaが0.3μmよりも大きいと、加工変質層の厚さのばらつきが大きくなり、粗化処理性の低下を招きやすい。なお、算術平均粗さRaはJIS B0601(2001)に基づいて測定した。
〔製造方法〕
次に、本発明の銅合金板材の製造方法について説明する。
以上説明した銅合金板材は、例えば以下のような製造工程により作ることができる。
溶解・鋳造→熱間圧延→(冷間圧延)→溶体化処理→中間冷間圧延→時効処理→仕上げ冷間圧延→形状矯正→低温焼鈍→バフ研磨
なお、上記工程中には記載していないが、熱間圧延後には必要に応じて材料表面の面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいは更に脱脂が行われる。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
上記組成を有する銅合金材を連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造する。Siなどの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うのがよい。
〔熱間圧延〕
熱間圧延は通常の手法に従えばよい。熱間圧延前の鋳片加熱は例えば900〜1000℃で1〜5hとすることができる。トータルの熱間圧延率は例えば70〜97%とすればよい。最終パスの圧延温度は700℃以上とすることが好ましい。熱間圧延終了後には、水冷などにより急冷することが好ましい。
次工程の溶体化処理の前には、必要に応じて板厚調整のために冷間圧延を施すことができる。
〔溶体化処理〕
溶体化処理は添加元素を十分に固溶させることが主目的である。溶体化処理条件は、加熱温度(材料の最高到達温度)を850〜1000℃、その温度域での保持時間(材料温度がその温度域にある時間)を10〜600秒とする。加熱温度が低すぎる場合や、保持時間が短すぎる場合は、溶体化が不十分となって最終的に満足できる高強度が得られない。
〔中間冷間圧延〕
時効処理前の冷間圧延により、板厚の減少およびひずみエネルギー(転位)の導入を図る。この段階での冷間圧延を本明細書では「中間冷間圧延」と呼んでいる。中間冷間圧延での圧延率を30%以上とすることが好ましく、35%以上とすることがより好ましい。ただし、この段階で板厚を過度に減じると、後述の仕上げ冷間圧延で必要な圧延率を確保することが難しくなる場合がある。そのため、中間冷間圧延での圧延率は90%以下の範囲で設定することが好ましく、75%以下に管理してもよい。
〔時効処理〕
次いで時効処理を行い、強度に寄与する微細な析出物粒子を析出させる。この析出は、前述の中間冷間圧延によるひずみが導入されている状態で進行する。合金組成に応じて時効で硬さがピークになる温度、時間を予め調整して条件を決めるのが好ましい。ただし、ここでは時効処理の加熱温度を550℃以下に制限する。それより高温になると過時効となりやすく、所定の高強度に安定して調整することが難しくなる。一方、加熱温度が350℃より低い場合は析出が不十分となって、強度不足や導電性低下を招く要因となる。400℃以上であることが好ましい。350〜550℃での保持時間は7〜15時間の範囲で設定することができる。
〔仕上げ冷間圧延〕
時効処理後に行う最終的な冷間圧延を本明細書では「仕上げ冷間圧延」と呼んでいる。仕上げ冷間圧延は強度レベル(特に0.2%耐力)の向上に有効である。仕上げ冷間圧延率は50%以上とすることが効果的であり55%以上とすることがより効果的である。仕上げ冷間圧延率が過大になると低温焼鈍時に強度が低下しやすいので85%以下、さらには80%以下の圧延率とすることが好ましい。仕上げ冷間圧延率が50%より低いとビッカース硬さHVが200未満となり、加工変質層が1.5μmを超える場合があり、また仕上げ冷間圧延率が85%を超えるとビッカース硬さHVが大きくなりすぎ加工変質層を厚くするのが難しくなる。最終的な板厚としては、例えば0.06〜0.30mm程度の範囲で設定することができる。
〔形状矯正〕
仕上げ冷間圧延を終えた板材に対して、最終的な低温焼鈍を施す前に、テンションレベラーによる形状矯正を施しておくのが好ましい。テンションレベラーは圧延方向に張力を付与しながら板材を複数の形状矯正ロールによって曲げ伸ばす装置である。板形状の平坦性を改善するために、テンションレベラーにより伸び率0.1〜1.5%の変形を生じさせる通板条件で連続繰り返し曲げ加工を施すことが好ましい。
〔低温焼鈍〕
仕上げ冷間圧延後には、通常、板条材の残留応力の低減や曲げ加工性の向上、空孔やすべり面上の転位の低減による耐応力緩和性向上を目的として低温焼鈍が施される。低温焼鈍の加熱温度(最高到達温度)を400〜500℃とする。加熱温度が500℃を超えると軟化により強度が低下するようになる。400〜500℃での保持時間は5〜600秒の範囲で設定すればよい。
〔バフ研磨工程〕
本発明は最終工程として以下の条件によるバフ研磨工程を備え、特に前記仕上げ圧延工程との組み合わせにより所定の加工変質層を得る。本発明のバフ研磨は外観や表面粗さの調整のための通常のバフ研磨よりも大きな負荷を銅合金板材表面に付与することで実施される。バフ研磨工程のバフ研磨の前後に酸洗、水洗、また最後に乾燥工程を備えてもよい。
板材送り速度:2〜50m/min(mpm)
バフ研磨ライン(装置)における板材の送り速度(いわゆるライン速度に相当)が50mpmを超えると、バフと材料の接触時間が少なく加工変質層は薄くなる。好ましくは、5〜40mpmである。
バフロールの周速度:600m/min(mpm)以上
バフロールの周速度(バフロールの外周の速度)が600mpm未満では、バフと板材の接触時間が少なく加工変質層が薄くなる。好ましくは、バフ周速度が600〜1200mpmである。また、ダウンカットによりバフ研磨を実施する。アップカットでバフ研磨すると研磨ムラが発生し、加工変質層の厚さに大きなばらつきが発生する恐れがある。なお、ダウンカットは板材の送り方向とバフロールの回転方向が対抗しない研磨方法である。
バフ材、砥粒、バフロール
バフ研磨に用いるバフ材の材質はナイロン不織布に砥粒として炭化ケイ素(SiC)を含浸させたものを用いるのが好ましい。砥粒として高硬度で熱伝導率の高い炭化ケイ素を用いることにより、本発明のような高硬度・高強度な銅合金板材に対しても切削能力が高いので、切削時に形成される加工変質層を厚くすることができる。バフロールの直径は300mm以上(好ましくは320〜400mm)、バフロールの番手は#500〜#6000(好ましくは#800〜#3000が好ましい)とする。バフロールの目が粗いと、砥粒の接触が不均一になり、加工変質層の形成も不均一となる。
加圧力
板材がバフロールを通過する際にバフロールが板材に与える加圧力を通常のバフ研磨より大きくして加工変質層の最大厚さを0.2〜1.5mmに調整する。その加圧力の指標として板材がバフロールを通過する際にバフロールが板材に与える負荷電流を0.18A/cm以上とすることが好ましい。負荷電流が0.18A/cm未満であると、材料にかかる圧力が小さくなり加工変質層が薄くなる。ただし、負荷電流が0.35A/cm以上では砥石がバーストする恐れがある。好ましくは、負荷電流が0.20〜0.26A/cmである。
こうして製造される本発明の銅合金板材について、粗化処理性の良否は次のように判断する。すなわち、硫酸・過酸化水素水溶液を用いた浸漬試験において、銅合金板材の表面で5mm×5mmの正方形の範囲内に、浸食部(粗化部)が90%以上存在する場合は、粗化処理性が良好と判断する。5mm×5mmの正方形の範囲内に、前記浸食部が90%未満の場合は粗化処理性が劣ると判断する。なお、SEMで浸食試験後の銅合金板材の表面を観察すると、非浸食部(非粗化部)はバフ研磨後の表面と同様バフ目等が残って見えるので、浸食部との区別は明確である(図1)。また、FIBで浸食試験後の銅合金板材の断面を切断すると、浸食部は0.3μm以上の深さであることが確認された。
粗化処理性評価の浸漬試験の条件は、浴組成をHO:98%HSO:30%H=90.5:5:4.5(Vol.%)とし、処理条件を浴温度:30℃、浸漬時間25secとする。光学顕微鏡やSEM(走査型電子顕微鏡)等の表面観察装置を用い、5mm×5mmの正方形の範囲内で銅合金板材表面の粗化処理部(浸食部)の割合を求める。
図1に、粗化処理部(浸食部)の割合を求める例を示す。5mm×5mmの正方形の範囲内において、0.2mm間隔で、圧延直角方向と圧延平行方向にそれぞれ25本ずつ直線を引き、該線分における粗化処理部(浸食部)の線分の長さを測定し、「(線分50本中の浸食部の線分の総長さ/線分50本の総長さ)×100」を浸食部の存在割合(%)として求めた。図1中の黒っぽい部分が非粗化処理部(非浸食部)である。
表1に示す化学組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を950℃で3時間加熱したのち抽出して、厚さ14mmまで熱間圧延を施し、水冷した。トータルの熱間圧延率は90〜95%である。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)し、圧延率80〜98%の冷間圧延を施して溶体化処理に供するための中間製品板材とした。各中間製品板材に表1に示す条件で溶体化処理、中間冷間圧延、時効処理、仕上げ(最終)冷間圧延、低温焼鈍を施した。また、比較例43を除き、仕上げ冷間圧延の圧延率は50〜85%とした。比較例43の仕上げ冷間圧延の圧延率は25%とした。低温焼鈍後の板材を酸洗後、表1中のバフ研磨条件でバフ研磨した。なお、バフ研磨は全てダウンカットで実施した。
表1において、溶体化処理の温度は最高到達温度を表示した。比較例43を除き、溶体化処理の時間は材料温度が850℃以上最高到達温度以下の範囲にある時間を示した。なお、比較例43は最高温度750℃で300秒保持した。
低温焼鈍はカテナリー炉を連続通板したのち、空冷する方法で行った。表1に示した低温焼鈍の温度は最高到達温度である。材料温度が400℃以上最高到達温度以下の範囲にある時間は10〜90秒であった。
以上の工程により得られた各板材の(最終)板厚は表1の通りであり、これを評価サンプルとした。ビッカース硬さ、加工変質層の厚さ、板材表面の圧延方向に対して垂直方向の算術平均粗さRa、粗化処理性については前述の方法で評価し、結果を表1に示した。なお、ビッカース硬さHVは、試験荷重を500gfとしJIS Z2244に準拠して測定した。また、粗化処理性については、前記浸食部の割合が90%以上を○、90%未満70%以上を△、70%未満を×とした。
本発明の組成およびバフ研磨条件によると、加工変質層の厚さ0.2〜1.5μmの範囲であって、粗化処理性は粗化処理部(浸食部)が90%以上であり良好であった。圧延方向に垂直な方向(板厚方向)のみについて結晶粒径を切断法で測定すると、加工変質層は0.2μm未満の微細な結晶粒径からなる組織であり、母材は0.5〜2.0μm程度の結晶粒径であった。また、本発明のバフ研磨後のビッカース硬さHVは全て200を超えており、また、バフ研磨前もビッカース硬さHVは200を超えており、バフ研磨後の値と有意差はなかった。また、本発明の圧延方向及び板厚方向に対して垂直方向の板材表面の算術平均粗さRaは0.3μm以下であった。
比較例31はNi添加量が多すぎたため、Ni系酸化物の生成や偏析またはNiの偏析が起こり、粗化ムラが発生し粗化処理性が劣ったと考えられる。
比較例32はNi添加量が少なすぎ、比較例33はSiの添加量が多すぎ、比較例34はSiの添加量が少なすぎたため、銅合金板材の表面のビッカース硬さHVが200未満となり、加工変質層の厚さが大きくなりすぎて粗化処理性が劣ったと考えられる。
比較例35はバフ研磨において負荷電流が大きすぎ、比較例40はバフロール径が小さすぎ、比較例41はバフロールの番手が大きすぎたため、バフ研磨中にバフロールがバーストしてバフ研磨処理を行うことができず、粗化処理性を評価することができなかった。
比較例36はバフロールが銅合金板材に与える負荷(電流)が小さすぎたため、加工変質層を厚くすることができず、粗化処理性が劣ったと考えられる。
比較例37はバフロールの周速度が小さく、バフ研磨が不十分となり加工変質層を厚くすることができず、粗化処理性が劣ったと考えられる。
比較例38はライン速度が大きすぎたため、バフ研磨が不十分となり加工変質層を厚くすることができず、粗化処理性が劣ったと考えられる。
比較例39はライン速度が小さすぎ、加工変質層が厚くなり且つ均一な加工変質層が形成されなかったため、粗化処理性が劣ったと考えられる。
比較例42はバフロールの研磨砥粒を320番としたため、研磨砥粒が粗すぎて銅合金板材の表面粗さが大きくなり、加工変質層の厚さのばらつきも大きくなり、粗化処理性に劣ったと考えられる。
比較例43は溶体化処理、時効処理、仕上げ冷間圧延の条件適切でなかったため、ビーカース硬さが低く、加工変質層が厚くなりすぎて粗化処理性が劣ったと考えられる。
図2に本発明の実施例の加工変質層の断面(銅合金板材の圧延直角方向の断面)の写真を示す。本発明の実施例では、十分な厚さの加工変質層が形成されている。

Claims (5)

  1. 質量%で、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%を含有し、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    加工変質層の厚さが0.2〜1.5μmであり、
    表面の圧延方向に対して垂直方向の算術平均粗さRaが0.3μm以下であり、
    表面のビッカース硬さHVが200以上である、銅合金板材。
  2. 硫酸・過酸化水素水溶液を用いた浸漬試験において、前記銅合金板材表面5mm×5mmの正方形の範囲内に、浸食部が90%以上存在する、請求項1に記載された銅合金板材。
  3. 質量%で、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%を含有し、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板材を製造する方法であって、
    鋳造後、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、中間冷間圧延、時効処理、仕上げ冷間圧延、形状矯正、低温焼鈍を行い、最終工程でバフ研磨を行い、
    仕上げ冷間圧延率を、53%以上、84%以下とし、
    最終工程で行われるバフ研磨において、前記銅合金板材の送り速度を2〜50m/min、バフロールの周速度を600m/min以上、負荷電流を0.18〜0.26A/cmとし、ダウンカットによりバフ研磨して加工変質層の厚さを0.2〜1.5μm、表面の圧延方向に対して垂直方向の算術平均粗さRaを0.3μm以下、表面のビッカース硬さHVを200以上とすることを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
  4. 前記バフの砥粒が炭化ケイ素であることを特徴とする、請求項3に記載された銅合金板材の製造方法。
  5. 前記バフロールの直径が300mm以上であることを特徴とする、請求項3または4に記載された銅合金板材の製造方法。
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