以下に、添付図面を参照して、本発明に係る硬貨識別装置、該硬貨識別装置を利用する硬貨処理装置及び硬貨識別方法について説明する。本発明に係る技術は、搬送中の物体をラインセンサで撮像する際に、従来に比して解像度の高い画像の撮像を可能とするものである。このため、本発明に係る技術は、硬貨や紙幣等の通貨、通貨の代用として利用されるメダルや紙葉類等の有価媒体などの対象物を搬送しながら、該対象物をラインセンサで撮像する様々な装置に適用することができる。本実施形態では、店舗のレジでPOSレジスタと接続して利用される硬貨処理装置内で、硬貨の金種、真偽、正損等を識別する硬貨識別装置を例に詳細を説明する。
まず、図1及び図2を参照しながら、硬貨識別装置を内蔵する硬貨処理装置の概要を説明する。図1は、硬貨処理装置100及びPOSレジスタ200の外観を示す図である。硬貨処理装置100は、硬貨の入金処理及び出金処理を実行する。図1では省略しているが、硬貨処理装置100は、紙幣の入金処理及び出金処理を実行する紙幣処理装置と共にPOSレジスタ200に接続され、釣銭機として使用される。POSレジスタ200は、店舗サーバと通信可能に接続されており、POSレジスタ200から店舗サーバに売上金情報等を送信し、店舗サーバからPOSレジスタ200に設定情報等が送信されるようになっている。
硬貨処理装置100は、筐体112及び本体ユニット114を含む。筐体112は、前面に開口を有する箱形形状を有する。本体ユニット114は、前面側一部を筐体112外側へ露出した状態で、筐体112の前面開口から筐体112内に収められている。本体ユニット114は、筐体112から前面側へ引き出せるようになっている。筐体112の前面外側に露出した本体ユニット114の上面には、硬貨処理装置100に入金する硬貨を投入するための硬貨投入口116が設けられている。また、本体ユニット114の上面には、指示や設定等の各種情報を入力するための操作部118と、表示部121とが設けられている。表示部121は、各種情報を表示するための液晶表示部と、金種別の硬貨収納量を表示するLED表示部とを有する。本体ユニット114の前面右側下部には、硬貨処理装置100から硬貨を出金するための硬貨出金口122と、装置内から硬貨出金口122へ硬貨を放出する硬貨放出口124とが設けられている。
図2は、硬貨処理装置100の内部構成を示す図である。硬貨処理装置100の本体ユニット114には、硬貨投入口116に投入された硬貨を装置内に一枚ずつ繰り出すための繰出機構131が設けられている。硬貨投入口116の下方に設けられた繰出機構131は、硬貨投入口116に投入された硬貨を受け入れる受入部132と、受入部132の底面を構成する繰出ベルト134とを有する。繰出ベルト134は無端状の平ベルトから成り、図2の右側から左側に向けた硬貨繰出方向に硬貨を搬送する。繰出ベルト134で硬貨を搬送する通路幅は、硬貨処理装置100で処理する硬貨のうち最大径の硬貨よりも大きくかつ最小径の硬貨2枚分よりも小さい寸法に規制されている。受入部132の搬送方向下流側には、繰出ベルト134の上面との間に硬貨1枚の通過を許容する隙間を形成した状態で、逆転ローラ136が設けられている。逆転ローラ136は、繰出ベルト134による硬貨の繰出方向に対して逆方向に連続回転して、繰出ベルト134が繰り出す硬貨を1層1列状態に整列させる。
逆転ローラ136の繰出方向下流側にガイド部材138が設けられている。繰出ベルト134によって受入部132から繰り出され、逆転ローラ136によって1枚ずつに分離された硬貨は、ガイド部材138に沿って搬送路51上に移動して、搬送ベルト52によって搬送される。搬送ベルト52は、複数のプーリ142に掛け渡された無端状ベルトである。一部のプーリ142をモータ等の駆動部によって回転させ、搬送ベルト52を駆動することによって硬貨を搬送する。搬送路51の搬送面と対向する搬送ベルト52下面に、搬送路51上の硬貨を搬送するための突起部53が等間隔で複数設けられている(図4参照)。
搬送路51には、識別部80が設けられている。識別部80は、硬貨の材質、直径、硬貨を撮像した画像、該画像に表れる特徴等に基づいて、硬貨の金種、真偽、正損等を識別する。識別部80の搬送方向下流側には、リジェクト部152が設けられている。識別部80が識別できない硬貨、識別結果に基づいて装置外へ排出すると決定した硬貨等は、リジェクト硬貨として、リジェクト部152からリジェクトされる。リジェクト硬貨は、搬送ベルト178によって装置前面側へ向けて搬送され、硬貨放出口124から硬貨出金口122に返却される。
硬貨処理装置100の本体ユニット114には、硬貨を金種別に収納する複数の収納部160が設けられている。識別部80が、金種等を識別して、収納部160に収納すると決定した硬貨は、各収納部160の上方に設けられた搬送路51を搬送されて、対応する収納部160に収納される。各収納部160の上方を通過する搬送路51には、搬送する硬貨を各収納部160に収納するための分類孔158が設けられている。分類孔158は、1つの収納部160に対して1つずつ設けられている。硬貨を収納する収納部160の分類孔158を開くことによって、搬送路51を搬送される硬貨が分類孔158から落下して収納部160に収納される。
搬送路51上の複数の位置に、硬貨検出センサが配置されている。硬貨検出センサによって搬送路51上の硬貨の位置を検出して、識別部80による識別や収納部160への収納を行うようになっている。
硬貨処理装置100の本体ユニット114には、出金処理時に、各収納部160から繰り出した硬貨を搬送する搬送ベルト178が設けられている。各収納部160から1枚ずつ繰り出された硬貨は、搬送ベルト178によって搬送されて硬貨放出口124から硬貨出金口122に排出される。
次に、図3及び図4を参照しながら、硬貨識別装置1について説明する。図3は、硬貨識別装置1について説明するための模式図である。図3は、搬送路51に設けられた硬貨識別装置1のセンサ部2を上方から見た図を示している。図4は、硬貨7の搬送について説明するための模式図である。図4(a)は搬送路51を搬送される硬貨7を上方から見た図を示し、図4(b)は、この硬貨7を側方から見た図を示し、図4(c)は、この硬貨7を後方から見た図を示している。なお、図3以降の図では、搬送路51の搬送面がXY平面を形成するものとして説明する。
図3に示すように、硬貨識別装置1のセンサ部2は、2つのラインセンサ10(10a、10b)を有する。センサ部2は、硬貨処理装置100内で硬貨7が搬送される搬送路51に設けられている。具体的には、センサ部2は、上面が、搬送路51の搬送面と同一平面を形成するように設けられている。図3に矢印で示すように搬送路51を搬送される硬貨7は、センサ部2の上面を通過する。センサ部2の上面には透明なガラス板が嵌め込まれており、ラインセンサ10a、10bによって、上面を通過する硬貨7を下方から撮像できるようになっている。
搬送路51の幅方向(X軸方向)両側には、硬貨7の動きを規制するガイド51a、51bが設けられている。図3では省略しているが、硬貨7は搬送ベルト52によって搬送される。具体的には、図4(a)〜(c)に示すように、硬貨7は、搬送ベルト52の下面に設けられた突起部53によって後方から押されながら搬送される。図4では1枚の硬貨7のみを示しているが、搬送ベルト52には、複数の突起部53が所定間隔で設けられており、複数の硬貨7が順にセンサ部2の上面を通過する。硬貨識別装置1は、センサ部2を通過する複数の硬貨7を順に識別する。
図3に示すラインセンサ10(10a、10b)は、直線状に1列に配置された複数の受光素子30(30a、30b)を含む。ラインセンサ10は、受光素子30を上方に向けた状態で搬送路51の下方に設けられる。
本実施形態に係る硬貨識別装置1は、2つのラインセンサ10a、10bが、XY平面上で、硬貨7の搬送方向(Y軸正方向)に垂直な方向(X軸)に対して、角度を成した斜めの状態で設けられる点を1つの特徴としている。すなわち、ラインセンサ10aは、1列に配列された受光素子30aの列方向とX軸との間の角度がα1(α1>0)となるように配置され、ラインセンサ10bも、1列に配列された受光素子30bの列方向とX軸との間の角度がα2(α2>0)となるように配置されている。X軸方向に対して斜めに配置するラインセンサ10の配置角度は特に限定されないが、例えば、2つのラインセンサ10a、10bをX軸方向に対してそれぞれ45度の角度を成すように配置する(α1=45度、α2=45度)。
また、2つのラインセンサ10は、硬貨処理装置100が処理対象とする複数種類の硬貨のうち最小径の硬貨が、搬送路51の幅方向(X軸方向)一方側に片寄せされた状態でセンサ部2を通過する場合も、この硬貨の少なくとも一部の領域が他方側に配置されたラインセンサ10を通過するように配置されている。すなわち、一方のラインセンサ10で硬貨7の外周縁部上の2点を撮像する同一タイミングで、他方のラインセンサ10で硬貨7の外周縁部上の少なくとも1点を撮像できるように配置されている。言い換えれば、硬貨7の種類によらず、2つのラインセンサ10を利用して、硬貨7の外周縁部を3点以上同時に撮像することができる。
また、2つのラインセンサ10は、センサ部2を通過する硬貨7を走査したラインデータから硬貨7の全面の画像(反射画像)を得られるように、一方のラインセンサ10aの受光素子30aの一部と、他方のラインセンサ10bの受光素子30bの一部とが、X軸方向で重なる位置関係で配置されている。すなわち、例えばY軸正方向側から2つのラインセンサ10a、10bを見た場合に、手前側のラインセンサ10bの左端の受光素子30bよりも、奥側のラインセンサ10aの右端の受光素子30aの方が右側(X軸正方向側)にある。
図3では、ラインセンサ10aの搬送方向(Y軸正方向)前端が、ラインセンサ10bの搬送方向前端よりも搬送方向上流側(Y軸負方向側)にある例を示している。ただし、ラインセンサ10aの搬送方向前端が、ラインセンサ10bの搬送方向前端より搬送方向下流側にあってもよいし、ラインセンサ10aの搬送方向前端とラインセンサ10bの搬送方向前端の搬送方向の位置を揃えて配置してもよい。
硬貨識別装置1は、図3に示すように、制御部40及び記憶部90を有する。制御部40は、硬貨識別装置1の各部を制御する機能を有する。制御部40は、搬送情報取得部50、光源制御部60、硬貨データ取得部70及び識別部80を有する。記憶部90は、半導体メモリ等から成る不揮発性の記憶装置である。硬貨識別装置1の動作に必要なプログラム、設定データ、硬貨識別用のテンプレートデータ等の各種情報が予め記憶部90に保存されている。
搬送情報取得部50は、搬送路51上の硬貨7の位置、硬貨7の搬送速度等の情報を取得する。硬貨処理装置100の搬送路51には、複数の硬貨検出センサが設けられている。搬送情報取得部50は、硬貨検出センサによる検出結果に基づいて、搬送路51を搬送される硬貨7の位置を認識する。硬貨処理装置100は、搬送ベルト52の突起部53によって硬貨7を押しながら搬送する。搬送情報取得部50は、搬送ベルト52の駆動情報に基づいて、センサ部2を通過する硬貨7の搬送速度を認識する。
光源制御部60は、搬送情報取得部50が取得した情報に基づいて、ラインセンサ10による硬貨7の撮像時に、硬貨7に光を照射する。センサ部2には、ラインセンサ10が硬貨7の鮮明な画像を撮像できるように、硬貨面を照らす光源が設けられている。光源制御部60は、搬送路51上の硬貨7の位置及び搬送速度に基づいて、硬貨7がラインセンサ10aによる撮像位置を通過するタイミング、及び硬貨7がラインセンサ10bによる撮像位置を通過するタイミングを認識する。そして、ラインセンサ10が硬貨7を撮像するタイミングに合わせて光源を点灯して、センサ部2上面を通過する硬貨7の硬貨面に光を照射する。光源は、ラインセンサ10の内部に設けることができるが詳細は後述する。
硬貨データ取得部70は、搬送情報取得部50が取得した情報に基づいて、ラインセンサ10で硬貨7を撮像したデータを取得する。硬貨データ取得部70は、搬送路51上の硬貨7の位置及び搬送速度に基づいて、硬貨7が一方のラインセンサ10aによる撮像位置を通過するタイミング、及び硬貨7が他方のラインセンサ10bによる撮像位置を通過するタイミングを認識する。そして、センサ部2上面を通過する硬貨7を、2つのラインセンサ10a、10bによって撮像したデータを取得する。具体的には、2つのラインセンサ10a、10bによって、上方を通過する硬貨7を所定ピッチで1ラインずつ走査したラインデータを取得する。
硬貨データ取得部70は、センサ部2上面を通過する硬貨7を下方から撮像した硬貨面全体の画像を取得する。センサ部2内のラインセンサ10a及びラインセンサ10bの位置は固定されている。硬貨データ取得部70は、2つのラインセンサ10a、10bの位置関係に基づいて、一方のラインセンサ10aで取得したラインデータと、他方のラインセンサ10bで取得したラインデータとを合成して、硬貨7の硬貨面全体を含む画像を生成する。
具体的には、例えば、図3に示すように、硬貨7が搬送路51の幅方向略中央を通過して、左側のラインセンサ10aで、硬貨7の右端一部の部分領域を撮像できない場合、この部分領域については、右側のラインセンサ10bで撮像したデータを利用する。これにより、真円形状の硬貨面全体を撮像した画像を生成することができる。
また、硬貨データ取得部70は、硬貨7の中心位置及び直径を特定する機能を有する。硬貨データ取得部70は、2つのラインセンサ10a、10bによって、硬貨7の外周縁部(エッジ)の3箇所以上を同時に撮像可能となったタイミングで、硬貨7を撮像してデータを取得する。そして、同時に撮像した3箇所以上の外周縁部の位置関係から、真円形状を有する硬貨7の中心位置及び直径を特定する。
例えば、硬貨データ取得部70は、図3に破線で示す位置7aに到達した硬貨7を撮像して、ラインセンサ10a、10bのラインデータから、硬貨7の外周縁部を示す点P1、P2及びP3の3箇所の位置を検出する。なお、破線の位置7aは、一方のラインセンサ10bが1点以上の外周縁部(P1)を撮像し、かつ、他方のラインセンサ10aが撮像する2つの外周縁部(P2、P3)の間の距離が所定距離以上離れた位置である。
硬貨データ取得部70は、点P1〜P3が存在するXY平面上で、点P1及びP2の垂直二等分線と、点P2及びP3の垂直二等分線との交点を硬貨7の中心位置として特定する。そして、この中心位置から点P1〜P3までの距離を半径として、硬貨7の直径を特定する。また、硬貨データ取得部70は、このとき得られた中心位置の情報を利用して、2つのラインセンサ10a、10bで得られたラインデータを合成した画像上で何ライン目の何画素目が硬貨7の中心位置であるかを特定する。
また、硬貨データ取得部70は、硬貨7を撮像した画像を補正する機能を有する。硬貨7の搬送速度が変動して、ラインセンサ10で撮像した画像上で、真円形状である硬貨がY軸方向に長い楕円形状やY軸方向に短い楕円形状となる場合がある。このような場合に、硬貨データ取得部70は、特定した直径に基づいて、画像上の硬貨が真円形状となるように画像を補正する。
識別部80は、硬貨データ取得部70で得られた硬貨7の中心位置、直径及び撮像画像を利用して、硬貨7の金種等を識別する。例えば、金種によって硬貨径が異なる場合、識別部80は、硬貨径に基づいて硬貨7の金種を識別する。また、例えば、識別部80は、硬貨データ取得部70が生成した画像から、硬貨7の中心位置及び直径に基づいて硬貨部分を切り出して硬貨画像とする。そして、記憶部90に予め保存されている各金種の硬貨画像と比較して両者の類似度から硬貨7の金種を識別する。また、例えば、識別部80は、硬貨画像から取得した特徴と、記憶部90に予め保存されている各金種の硬貨の特徴とを比較して両者の類似度から硬貨7の金種を識別する。なお、センサ部2に、硬貨7の材質を検出するための磁気センサを設けて、磁気センサで得られた硬貨7の材質情報を、硬貨7の識別に利用する態様であってもよい。直径、硬貨画像及び材質に基づいて硬貨7を識別すれば、より高精度に硬貨を識別することができる。
2つのラインセンサ10a、10bは、XY平面上で、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向に対して角度を成した斜めの状態で配置されている。これにより、2つのラインセンサ10a、10bを含むセンサ部2を利用して、同一タイミングで少なくとも3点以上の硬貨7の外周縁部を撮像して硬貨7の中心位置及び硬貨径を特定することができる。また、2本のラインセンサ10a、10bをX軸方向に対して斜めに配置することにより、ラインセンサ10をX軸と平行に配置する場合に比べて、得られる画像の解像度を高くすることができる。例えば、X軸方向に対して45度の角度を成した状態でラインセンサ10を配置すれば、X軸方向に平行に配置する場合に比べて、X軸方向の解像度が約1.4倍となる。
硬貨径を特定する方法については、同一タイミングで撮像した外周縁部の位置を利用する方法に限定されるものではなく、従来同様に、硬貨7を撮像した画像を利用して硬貨径を特定してもよい。本実施形態に係るセンサ部2を利用すれば、撮像画像を利用する場合も硬貨径を高精度に特定することができる。以下、図5及び図6を参照しながら詳細を説明する。
図5は、硬貨7の搬送方向(Y軸正方向)と垂直な方向(X軸方向)に配置したラインセンサ110について説明するための模式図である。ラインセンサ110は、1列に配列された受光素子130の配列方向がX軸と平行となるように配置されている。図5(a)はラインセンサ110の上方を通過する硬貨7を上方から見た図を示し、図5(b)及び(c)は、この硬貨7を側方から見た図を示している。図5(d)はラインセンサ110で撮像した硬貨7の画像400を示している。画像400は、硬貨7の硬貨面で反射された光によって得られる反射画像である。
図5(a)に示すように、ラインセンサ110は、X軸方向に1列に配列された受光素子130(130a〜130c)と、各受光素子130に対応して設けられた光源120(120a〜120c)とを有する。硬貨7は、ラインセンサ110の上方を通過する。ラインセンサ110は、上方を通過する硬貨7に光源120から光を照射して、硬貨面で反射された光を受光素子130で受けることによって、搬送方向前端から1ラインずつ順にラインデータを取得する。
図5(a)に示すように硬貨7の下側にある受光素子130bは、図5(b)に示すように、光源120bから照射して硬貨面で反射された光を受光する。これに対して、図5(a)に示す硬貨7のX軸方向外周縁部300aの位置では、図5(c)に示すように、光源120aから照射した光の一部が硬貨7によって反射されず硬貨7の後方へ抜けてしまう。このため、受光素子130aで十分な反射光を受光することができない。図5(a)に示すX軸方向外周縁部300bの位置でも同様に、光源120cから照射した光の一部は硬貨面で反射されず、受光素子130cは十分な反射光を受光することができない。この結果、ラインセンサ110で得られたラインデータから生成される画像400は、図5(d)に示す部分領域401だけが他の領域に比べて暗く、硬貨7のX軸方向両端一部が欠けたような画像となる。
硬貨7の搬送方向(Y軸正方向)の外周縁部は鮮明に撮像できるが、硬貨7の搬送速度の変動による影響を受けやすい。このため、真円形状であるはずの硬貨が、画像400上では、Y軸方向に長い楕円形状やY軸方向に短い楕円形状となる場合がある。画像400を利用して直径を特定する場合、搬送速度の変動による影響を避けるため、搬送方向と垂直なX軸方向の直径を特定することが好ましいが、図5(d)に示す両端の部分領域401が欠けてしまうと直径を高精度に特定できない可能性がある。本実施形態に係るセンサ部2によれば、このような事態を回避することができる。
図6は、図3に示すラインセンサ10について説明するための模式図である。図6(a)はラインセンサ10の上方を通過する硬貨7を上方から見た図を示している。図6(b)はラインセンサ10で撮像した硬貨7の画像410を示している。画像410は、硬貨7の硬貨面で反射された光によって得られる反射画像である。各ラインセンサ10は、1列に配列された受光素子30と、各受光素子30に対応して設けられた光源20とを有する。
本実施形態に係るセンサ部2では、図6(a)に示すように、2つのラインセンサ10が、搬送方向と垂直なX軸方向に対して角度を成すように斜めに配置されている。このため、X軸方向の外周縁部301a、301bが通過する位置では、光源20から照射した光が硬貨7の硬貨面で反射され、受光素子30で十分な光を受光することができる。
図6(a)に示すようにラインセンサ10を配置した場合でも、受光素子30の配列方向と平行な方向の外周縁部では、図5(c)に示す場合と同様に、光源20から照射した光の一部が硬貨7の後方へ抜けてしまい、受光素子30で十分な反射光を受光することができない。このため、X軸方向に対して斜めに配置したラインセンサ10から生成した画像410は、図6(b)に示すように、X軸方向に対して斜め方向の外周縁部の部分領域411が他の領域に比べて暗く、硬貨7の一部が欠けたような画像となる。
斜めに配置したラインセンサ10を利用して得られる画像410は、一部に暗い部分領域411は含むが、搬送方向と垂直なX軸方向では外周縁部を鮮明に撮像した画像となる。よって、この画像410を利用して、搬送速度の変動による影響を受けることなくX軸方向の直径を高精度に特定することができる。
次に、図7及び図8を参照しながら、ラインセンサ10の構造の一例を説明する。図3及び図6に示すように、センサ部2では、ラインセンサ10をX軸方向に対して角度を成した斜めの状態で配置する。このため、図7及び図8では座標軸は示さず、硬貨7の搬送方向との関係が分かるように、硬貨7の搬送方向を矢印で示している。
図7は、ラインセンサ10の内部構成を説明するための断面模式図である。図7左側の図は直線状に1列に配列された受光素子30を配列方向から見た模式図を示し、右側の図は配列方向と垂直な方向から見た模式図を示している。ラインセンサ10は、黒色樹脂製のセンサケース41を有し、センサケース41の上面には、サファイアガラスから成るガラス板42が嵌め込まれている。ラインセンサ10は、センサ部2内で、センサケース41の上面及びガラス板42が、搬送路51の搬送面と同一平面を形成するように配置される。
センサケース41内の基板31上に、複数の受光素子30が直線状に1列に設けられている。また、センサケース41内には棒状の導光体22が2本設けられ、各導光体22の端面に対向してLED21が設けられている。LED21を点灯して導光体22の端面から軸方向に光を入射すると、導光体22の側面からガラス板42に向けて光が出射され、ガラス板42上の硬貨7に光を照射することができる。LED21及び導光体22が、光源20として機能する。
2本の導光体22の間に、ガラス板42の上面を通過する硬貨7から反射光を受けて受光素子30へと導くSLA(Selfoc Lens Array)等のレンズアレイ32が設けられている。受光素子30が、導光体22から漏れた光を直接受光することを防ぐため、導光体22と、レンズアレイ32及び受光素子30との間には、遮光板33が設けられている。
図8は、図7に示すラインセンサ10の構造を模式的に示すブロック図である。図3に示すようにセンサ部2は2つのラインセンサ10a、10bを有するが、2つのラインセンサ10a、10bは同一構造を有する。説明を簡単にするため、図8では、1つのラインセンサ10のみを示している。また、図8は、図3に示す光源制御部60を基板31上に設けた例を示している。
図8に示すように、硬貨7は、搬送路51と同一平面を形成するセンサ部2の上面、すなわちラインセンサ10のセンサケース41及びガラス板42の上面を搬送される。基板31上に設けられた光源制御部60が、LED21を点灯して導光体22に光を入射して、導光体22から硬貨7に向けて光を照射する。図8に破線矢印で示すように、光源20から照射された光は、硬貨7の下側の硬貨面で反射されてレンズアレイ32に入射する。受光素子30は、レンズアレイ32から出射された光を受光する。受光素子30は、受光した光の強度に応じてアナログ信号を出力する。基板31上には、受光素子30が出力したアナログ信号のオフセットやゲインを調整してデジタル信号に変換するAFE(Analog Front End)等の信号処理部71が設けられている。硬貨7の搬送タイミングを光源制御部60へ知らせるための入力信号や、信号処理部71によって得られた受光素子30からの出力信号は、基板31上のコネクタ43を介して外部とやり取りされる。
図7及び図8に示すラインセンサ10の構造は一例であって、光源20は、導光体22を利用する態様に限定されず、図6に示すように、複数のLED21を受光素子30の配列方向と平行に直線状に1列に配置して、硬貨7に光を照射する態様であってもよい。また、光源20は、受光素子30に対して搬送方向上流側及び下流側の2箇所に設ける態様に限定されず、いずれか一方に設ける態様であってもよい。
次に、図9〜図11を参照しながら、センサ部2におけるラインセンサ10(10c〜10o)の異なる配置例について説明する。説明を簡単にするため、図9〜図11では、上方から見た搬送路51に対するラインセンサ10の配置位置を示す。上方から見た場合、ラインセンサ10の一部が硬貨7の下側に隠れるため、図9〜図11では、硬貨7の位置を破線で示す。
図9は、1つのラインセンサ10cを、硬貨7の搬送方向と垂直な方向(X軸方向)に対して角度を成した斜めの状態で配置した例を示す模式図である。ラインセンサ10cは、両端の受光素子30が、搬送路51の幅方向を超えた両外側となる状態で配置されている。これにより、ラインセンサ10cによって、搬送路51を搬送される硬貨7の全面を撮像することができる。図5及び図6を参照しながら説明したように、ラインセンサ10cをX軸方向に対して斜めに配置すれば、図9に示すX軸方向の硬貨7の外周縁部302a、302bを鮮明に撮像した画像を取得することができる。これにより、硬貨7の直径を高精度に特定することができる。また、ラインセンサ10cをX軸方向に対して斜めに配置することにより、ラインセンサ10cをX軸と平行に配置する場合に比べて、得られる画像の解像度を高くすることができる。例えば、X軸方向に対して45度の角度を成した状態でラインセンサ10cを配置すれば、X軸方向に平行に配置する場合に比べて、X軸方向の解像度が約1.4倍となる。
図10及び図11は、硬貨7の外周縁部を同一タイミングで3点以上撮像可能な例を示す図である。図10は、受光素子30の配列方向の長さが異なる2つのラインセンサ10を配置した例を示す模式図である。すなわち、主走査方向の長さが異なる2つのラインセンサを利用する場合の例である。なお、2つのラインセンサ10は、硬貨7が搬送路51の幅方向いずれの位置を搬送される場合でも、2つのラインセンサ10を利用して硬貨7の外周縁部3点以上を同時に検知できる位置に配置されている。
図10(a)は、ラインセンサ10eを、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向に対して角度を成した斜めの状態で配置して、このラインセンサ10eより長さが短いラインセンサ10dを、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向に対して角度を成しかつラインセンサ10eと平行とならない角度で配置した例を示す図である。例えば、一方のラインセンサ10eを、X軸との間で45度の角度を成した状態で配置する。そして、他方のラインセンサ10eを、X軸との間で135度の角度を成した状態、すなわちラインセンサ10eと90度の角度を成した状態で配置する。ラインセンサ10d及びラインセンサ10eは、センサ部2を通過する硬貨7を走査したラインデータから、硬貨7の全面の画像を得られるように配置されている。具体的には、2つのラインセンサ10e及びラインセンサ10fは、ラインセンサ10dの受光素子30の一部と、ラインセンサ10eの受光素子30の一部とが、X軸方向で重なる位置関係で配置されている。図10(a)に示すように2つのラインセンサ10d、10eを配置することにより、硬貨7の外周縁部3点303a〜303cを同時に撮像して、硬貨7の直径を高精度に特定することができる。
図10(b)は、ラインセンサ10gを、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向に対して角度を成した斜めの状態で配置して、このラインセンサ10gより長さが短いラインセンサ10fを、ラインセンサ10gと平行に配置した例を示す図である。例えば、ラインセンサ10f、10gを、X軸との間で45度の角度を成した状態で配置する。ラインセンサ10f及びラインセンサ10gは、センサ部2を通過する硬貨7を走査したラインデータから、硬貨7の全面の画像を得られるように、ラインセンサ10fの受光素子30の一部と、ラインセンサ10gの受光素子30の一部とが、X軸方向で重なる位置関係で配置されている。図10(b)に示すように2つのラインセンサ10f、10gを配置することにより、硬貨7の外周縁部3点304a〜304cを同時に撮像して、硬貨7の直径を高精度に特定することができる。
図10(c)は、ラインセンサ10iを、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向に対して角度を成した斜めの状態で配置して、このラインセンサ10iより長さが短いラインセンサ10hを、X軸方向と平行に配置した例を示す図である。例えば、ラインセンサ10iを、X軸との間で45度の角度を成した状態で配置する。ラインセンサ10h及びラインセンサ10iは、センサ部2を通過する硬貨7を走査したラインデータから、硬貨7の全面の画像を得られるように、ラインセンサ10fの受光素子30の一部と、ラインセンサ10gの受光素子30の一部とが、X軸方向で重なる位置関係で配置されている。図10(c)に示すように2つのラインセンサ10h、10iを配置することにより、硬貨7の外周縁部3点305a〜305cを同時に撮像して、硬貨7の直径を高精度に特定することができる。
図10(d)は、ラインセンサ10kを、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向に対して平行に配置して、このラインセンサ10kより長さが短いラインセンサ10jを、同様にX軸方向と平行に配置した例を示す図である。ラインセンサ10j及びラインセンサ10kは、センサ部2を通過する硬貨7を走査したラインデータから、硬貨7の全面の画像を得られるように、ラインセンサ10jの受光素子30の一部と、ラインセンサ10kの受光素子30の一部とが、X軸方向で重なる位置関係で配置されている。図10(d)に示すように2つのラインセンサ10j、10kを配置することにより、硬貨7の外周縁部3点306a〜306cを同時に撮像して、硬貨7の直径を高精度に特定することができる。
図10(e)は、ラインセンサ10mを、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向に対して平行に配置して、このラインセンサ10mより長さが短いラインセンサ10lを、同様にX軸方向と平行に配置した例を示す図である。ラインセンサ10mは、両端の受光素子30が搬送路51の幅方向を超えた両外側となる状態で配置されている。これにより、ラインセンサ10mによって、搬送路51を搬送される硬貨7の全面を撮像することができる。図10(e)に示すように2つのラインセンサ10l、10mを配置することにより、硬貨7の外周縁部3点307a〜307cを同時に撮像して、硬貨7の直径を高精度に特定することができる。
図11は、ラインセンサ10とポイントセンサ11を利用する例を示す模式図である。図11(a)は、搬送路51を搬送される硬貨7の全面を撮像可能なラインセンサ10nを、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向と平行に配置した例を示している。図11(b)は、搬送路51を搬送される硬貨7の全面を撮像可能なラインセンサ10oを、硬貨7の搬送方向と垂直なX軸方向に対して角度を成した斜めの状態で配置した例を示している。
ここで、ポイントセンサ11とは、搬送路51上の一点で硬貨7の有無を検知するセンサである。例えば、検知光を投受光する投光部及び受光部の一方を搬送路51の搬送面より下方に配置して、他方を搬送路51の硬貨7より上方に配置して、ポイントセンサ11として利用する。搬送路51に硬貨7が無い状態では、投光部と受光部との間で検知光を投受光する透過状態にある。搬送路51を搬送されてきた硬貨7がポイントセンサ11の位置に到達すると検知光が遮断され遮光状態となる。そして、硬貨7がポイントセンサ11の位置を通過し終えると再び透過状態に戻る。
なお、ポイントセンサ11は、硬貨7が搬送路51の幅方向いずれの位置を搬送される場合でも、硬貨7の外周縁部を検知できる位置に配置されている。また、ポイントセンサ11は、硬貨7の種類によらず、ラインセンサ10n、10oで検出する2つの外周縁部(308bと308c、309aと309c)の間の距離が所定距離以上離れた位置となるように配置されている。
図11(a)に示すようにラインセンサ10及びポイントセンサ11を配置することにより、硬貨7の外周縁部3点308a〜308cを同時に検出することができる。同様に、図11(b)に示すようにラインセンサ10o及びポイントセンサ11を配置した場合も、硬貨7の外周縁部3点309a〜309cを同時に検出することができる。これにより、硬貨7の直径を高精度に特定することができる。
本実施形態では、センサの配置例を複数示したが、各センサの配置がこれらの例に限定されるものではない。例えば、図3、図9〜図11に示す各センサの配置を、X軸に対して反転した位置関係としてもよいし、Y軸に対して反転した位置関係としてもよいし、Z軸周りに180度回転した位置関係としても構わない。また、硬貨7の全面の画像を取得することができれば、ラインセンサ10の受光素子30配列方向の長さ、硬貨7の搬送方向に垂直なX軸方向に対して角度を成した斜めの状態で配置する際の角度についても特に限定されない。
また、本実施形態では、ラインセンサ10を搬送路51の下側に配置して硬貨7の反射画像を下方から撮像する例を示したが、ラインセンサ10の配置がこれに限定されるものではない。ラインセンサ10を、搬送路51の上方に配置して、搬送路51を搬送される対象物の反射画像を上方から撮像する態様であっても構わない。
上述してきたように、本実施形態に係るセンサ部2、該センサ部2を利用する硬貨識別装置1、及び該硬貨識別装置1を利用する硬貨処理装置100によれば、安価なラインセンサ10やポイントセンサ11を利用しながら、搬送路51を搬送される硬貨7の3点以上の外周縁部を同時に検出して、硬貨7の直径及び中心位置を高精度に特定することができる。
また、ラインセンサ10を、硬貨7の搬送方向と垂直な方向に対して角度を成した斜めの状態で配置して、硬貨7の搬送方向と垂直な方向の外周縁部を鮮明に撮像した画像を取得し、硬貨7の直径を高精度に特定することができる。また、ラインセンサ10を斜めに配置することで、硬貨7の搬送方向と垂直に配置する場合に比べて解像度の高い画像を得ることができる。これにより、硬貨7の汚損、傷、欠け、変形等の有無を正確に判定することができる。そして、硬貨7の画像から得られる特徴に基づく硬貨識別、硬貨7の画像と予め準備された硬貨画像との類似度に基づいて行う硬貨識別等の処理を行って、硬貨の金種、真偽、正損等を高精度に識別することができる。