以下、本発明の電子機器を適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態>
図1は、実施の形態の電子機器100を示す斜視図である。
電子機器100は、一例として、タッチパネルを入力操作部とする、スマートフォン端末機、タブレット型コンピュータ、又は、ゲーム機等である。電子機器100は、タッチパネルを入力操作部とする機器であればよいため、例えば、携帯情報端末機、又は、ATM(Automatic Teller Machine)のように特定の場所に設置されて利用される機器であってもよい。また、電子機器100は、車載用の入力装置であってもよい。
電子機器100の入力操作部101は、タッチパネルの下にディスプレイパネルが配設されており、ディスプレイパネルにGUI(Graphic User Interface)による様々なボタン102A、又は、スライダー102B等(以下、GUI操作部102と称す)が表示される。
電子機器100の利用者は、通常、GUI操作部102を操作するために、指先で入力操作部101に触れる。
次に、図2を用いて、電子機器100の具体的な構成について説明する。
図2は、実施の形態の電子機器100を示す平面図であり、図3は、図2に示す電子機器100のA−A矢視断面を示す図である。なお、図2及び図3では、図示するように直交座標系であるXYZ座標系を定義する。
電子機器100は、筐体110、トップパネル120、両面テープ130、振動素子140A、140B、タッチパネル150、ディスプレイパネル160、基板170、及び減衰部材180A、180Bを含む。
筐体110は、例えば、樹脂製であり、凹部110Aに基板170、ディスプレイパネル160、タッチパネル150、及び減衰部材180A、180Bが配設されるとともに、両面テープ130によってトップパネル120が接着されている。
トップパネル120は、平面視で長方形の薄い平板状の部材であり、透明なガラス、又は、ポリカーボネートのようなプラスティックで作製される。トップパネル120の表面(Z軸正方向側の面)は、電子機器100の利用者が操作入力を行う操作面の一例である。
トップパネル120は、Z軸負方向側の面に2つの振動素子140A、140Bが接着され、平面視における二辺が両面テープ130によって筐体110に接着されている。また、トップパネル120は、2つの減衰部材180A、180Bによって筐体110に対して接続されている。
なお、両面テープ130は、トップパネル120を筐体110に接着できればよく、トップパネル120の四辺に沿ってタッチパネル150及びディスプレイパネル160を囲む矩形環状の形状を有していてもよい。
トップパネル120のZ軸負方向側にはタッチパネル150が配設される。トップパネル120は、タッチパネル150の表面を保護するために設けられている。なお、トップパネル120の表面に、さらに別なパネル又は保護膜等が設けられていてもよい。
トップパネル120は、Z軸負方向側の面に振動素子140A、140Bが接着された状態で、振動素子140A、140Bが駆動されることによって振動する。実施の形態では、トップパネル120の固有振動周波数でトップパネル120を振動させて、トップパネル120に定在波を生じさせる。ただし、トップパネル120には振動素子140A、140Bが接着されているため、実際には、振動素子140A、140Bの重さ等を考慮した上で、固有振動周波数を決めることが好ましい。
振動素子140A、140Bは、トップパネル120のZ軸負方向側の面において、Y軸正方向側とY軸負方向側において、X軸方向に伸延する短辺に沿って接着されている。2つの振動素子140A、140Bは、トップパネル120の2つの短辺に平行な中心線を対称軸として、軸対称になるように配設すればよい。振動素子140A、140Bは、超音波帯の振動を発生できる素子であればよく、例えば、ピエゾ素子のような振動素子140A、140Bを含むものを用いることができる。
振動素子140A、140Bは、後述する駆動制御部から出力される駆動信号によって駆動される。振動素子140A、140Bが発生する振動の振幅(強度)及び周波数は駆動信号によって設定される。また、振動素子140A、140Bのオン/オフは駆動信号によって制御される。
2つの振動素子140を駆動する場合は、周期数kが整数の場合は、対称なモードであるので、同一位相で駆動すればよく、周期数kが小数(整数部と小数部0.5を含む数)の場合は、非対称なモードであるので、逆位相で駆動すればよい。
なお、超音波帯とは、例えば、約20kHz以上の周波数帯をいう。実施の形態の電子機器100では、振動素子140A、140Bが振動する周波数は、トップパネル120の振動数と等しくなるため、振動素子140A、140Bは、トップパネル120の固有振動数で振動するように駆動信号によって駆動される。
タッチパネル150は、ディスプレイパネル160の上(Z軸正方向側)で、トップパネル120の下(Z軸負方向側)に配設されている。タッチパネル150は、電子機器100の利用者がトップパネル120に触れる位置(以下、操作入力の位置と称す)を検出する座標検出部の一例である。
タッチパネル150の下にあるディスプレイパネル160には、GUIによる様々なボタン等(以下、GUI操作部と称す)が表示される。このため、電子機器100の利用者は、通常、GUI操作部を操作するために、指先でトップパネル120に触れる。
タッチパネル150は、利用者のトップパネル120への操作入力の位置を検出できる座標検出部であればよく、例えば、静電容量型又は抵抗膜型の座標検出部であればよい。ここでは、タッチパネル150が静電容量型の座標検出部である形態について説明する。タッチパネル150とトップパネル120との間に隙間があっても、静電容量型のタッチパネル150は、トップパネル120への操作入力を検出できる。
また、ここでは、タッチパネル150の入力面側にトップパネル120が配設される形態について説明するが、トップパネル120はタッチパネル150と一体的であってもよい。この場合、タッチパネル150の表面が図2及び図3に示すトップパネル120の表面になり、操作面を構築する。また、図2及び図3に示すトップパネル120を省いた構成であってもよい。この場合も、タッチパネル150の表面が操作面を構築する。また、この場合には、操作面を有する部材を、当該部材の固有振動で振動させればよい。
また、タッチパネル150が抵抗膜型の場合は、トップパネル120の上にタッチパネル150が配設されていてもよい。この場合も、タッチパネル150の表面が操作面を構築する。また、図2及び図3に示すトップパネル120を省いた構成であってもよい。この場合も、タッチパネル150の表面が操作面を構築する。また、この場合には、操作面を有する部材を、当該部材の固有振動で振動させればよい。
ディスプレイパネル160は、例えば、液晶ディスプレイパネル又は有機EL(Electroluminescence)パネル等の画像を表示できる表示部であればよい。ディスプレイパネル160は、筐体110の凹部110Aの内部で、図示を省略するホルダ等によって基板170の上(Z軸正方向側)に設置される。
ディスプレイパネル160は、後述するドライバIC(Integrated Circuit)によって駆動制御が行われ、電子機器100の動作状況に応じて、GUI操作部、画像、文字、記号、図形等を表示する。
基板170は、筐体110の凹部110Aの内部に配設される。基板170の上には、ディスプレイパネル160及びタッチパネル150が配設される。ディスプレイパネル160及びタッチパネル150は、図示を省略するホルダ等によって基板170及び筐体110に固定されている。
基板170には、後述する駆動制御装置の他に、電子機器100の駆動に必要な種々の回路等が実装される。
減衰部材180A、180Bは、トップパネル120のZ軸負方向側の面において、Y軸負方向側とY軸正方向側において、X軸方向に伸延する短辺に沿って当接するように設けられている。減衰部材180A、180Bは、超音波帯の定在波をトップパネル120に発生させる際に、可聴域のノイズの発生を抑制するために設けられている。
減衰部材180A、180Bは、例えば、シリコンゴム、天然ゴム、又はクロロプレンゴム等のゴム製である。減衰部材180A、180Bは、変形可能な弾性体及び/又は粘性を有する材質製であればよい。
減衰部材180A、180Bは、Z軸負方向側の端部(下端)が筐体110の凹部110Aの表面に接着され、Z軸正方向側の端部(上端)がトップパネル120のZ軸負方向側の面に当接するように配設される。
2つの減衰部材180A、180BのY軸方向における位置は、次のように設定する。トップパネル120に生じる定在波の複数の節と複数の腹は、Y軸方向に沿って生じる。
Y軸負方向側に位置する減衰部材180AのY軸方向における位置は、トップパネル120に生じる定在波の複数の節のうち、トップパネル120のY軸負方向側の端部側から2番目の節に対応する位置である。
また、Y軸正方向側に位置する減衰部材180BのY軸方向における位置は、トップパネル120に生じる定在波の複数の節のうち、トップパネル120のY軸正方向側の端部側から2番目の節に対応する位置である。このような位置に2つの減衰部材180A、180Bを配置することによって可聴域のノイズの発生を抑制できる理由については後述する。
以上のような構成の電子機器100は、トップパネル120に利用者の指が接触し、指先の移動を検出すると、基板170に実装される駆動制御部が振動素子140A、140Bを駆動し、トップパネル120を超音波帯の周波数で振動させる。この超音波帯の周波数は、トップパネル120と振動素子140A、140Bとを含む共振系の共振周波数であり、トップパネル120に定在波を発生させる。
電子機器100は、超音波帯の定在波を発生させることにより、トップパネル120を通じて利用者に触感を提供する。そして、このような超音波帯の定在波をトップパネル120に発生させる際に、減衰部材180A、180Bによって可聴域のノイズが発生することを抑制する。
次に、図4を用いて、トップパネル120に発生させる定在波について説明する。
図4は、超音波帯の固有振動によってトップパネル120に生じる定在波のうち、トップパネル120の短辺に平行に形成される波頭を示す図であり、図4の(A)は側面図、(B)は斜視図である。図4の(A)、(B)では、図2及び図3と同様のXYZ座標を定義する。なお、図4の(A)、(B)では、理解しやすさのために、定在波の変位を誇張して示す。また、図4の(A)、(B)では振動素子140A、140Bを省略する。
トップパネル120のヤング率E、密度ρ、ポアソン比δ、長辺寸法l、厚さtと、長辺方向に存在する定在波の周期数kとを用いると、トップパネル120の固有振動数(共振周波数)fは次式(1)、(2)で表される。定在波は1/2周期単位で同じ波形を有するため、周期数kは、0.5刻みの値を取り、0.5、1、1.5、2・・・となる。
なお、式(2)の係数αは、式(1)におけるk
2以外の係数をまとめて表したものである。
図4の(A)、(B)に示す定在波は、一例として、周期数kが10の場合の波形である。例えば、トップパネル120として、長辺の長さLが140mm、短辺の長さが80mm、厚さtが0.7mmのGorilla(登録商標)ガラスを用いる場合には、周期数kが10の場合に、固有振動数fは33.5[kHz]となる。この場合は、周波数が33.5[kHz]の駆動信号を用いればよい。
トップパネル120は、平板状の部材であるが、振動素子140A、140B(図2及び図3参照)を駆動して超音波帯の固有振動を発生させると、図4の(A)、(B)に示すように撓むことにより、曲げ振動の定在波が生じる。
なお、ここでは、2つの振動素子140A、140Bがトップパネル120のZ軸負方向側の面において、Y軸正方向側において、X軸方向に伸延する短辺に沿って接着される形態について説明するが、振動素子140A、140Bのうちのいずれか1つを含む構成であってもよい。
図5は、電子機器100のトップパネル120に生じさせる超音波帯の固有振動により、操作入力を行う指先に掛かる動摩擦力が変化する様子を説明する図である。図5の(A)、(B)では、利用者が指先でトップパネル120に触れながら、指をトップパネル120の奥側から手前側に矢印に沿って移動する操作入力を行っている。なお、振動のオン/オフは、振動素子140(図2及び図3参照)をオン/オフすることによって行われる。
また、図5の(A)、(B)では、トップパネル120の奥行き方向において、振動がオフの間に指が触れる範囲をグレーで示し、振動がオンの間に指が触れる範囲を白く示す。
超音波帯の固有振動は、図4に示すようにトップパネル120の全体に生じるが、図5の(A)、(B)には、利用者の指がトップパネル120の奥側から手前側に移動する間に振動のオン/オフを切り替える動作パターンを示す。
このため、図5の(A)、(B)では、トップパネル120の奥行き方向において、振動がオフの間に指が触れる範囲をグレーで示し、振動がオンの間に指が触れる範囲を白く示す。
図5の(A)に示す動作パターンでは、利用者の指がトップパネル120の奥側にあるときに振動がオフであり、指を手前側に移動させる途中で振動がオンになっている。
一方、図5の(B)に示す動作パターンでは、利用者の指がトップパネル120の奥側にあるときに振動がオンであり、指を手前側に移動させる途中で振動がオフになっている。
ここで、トップパネル120に超音波帯の固有振動を生じさせると、トップパネル120の表面と指との間にスクイーズ効果による空気層が介在し、指でトップパネル120の表面をなぞったときの動摩擦係数が低下する。
従って、図5の(A)では、トップパネル120の奥側にグレーで示す範囲では、指先に掛かる動摩擦力は大きく、トップパネル120の手前側に白く示す範囲では、指先に掛かる動摩擦力は小さくなる。
このため、図5の(A)に示すようにトップパネル120に操作入力を行う利用者は、振動がオンになると、指先に掛かる動摩擦力の低下を感知し、指先の滑り易さを知覚することになる。このとき、利用者はトップパネル120の表面がより滑らかになることにより、動摩擦力が低下するときに、トップパネル120の表面に凹部が存在するように感じる。
一方、図5の(B)では、トップパネル120の奥前側に白く示す範囲では、指先に掛かる動摩擦力は小さく、トップパネル120の手前側にグレーで示す範囲では、指先に掛かる動摩擦力は大きくなる。
このため、図5の(B)に示すようにトップパネル120に操作入力を行う利用者は、振動がオフになると、指先に掛かる動摩擦力の増大を感知し、指先の滑り難さ、あるいは、引っ掛かる感じを知覚することになる。そして、指先が滑りにくくなることにより、動摩擦力が高くなるときに、トップパネル120の表面に凸部が存在するように感じる。
以上より、図5の(A)と(B)の場合は、利用者は指先で凹凸を感じ取ることができる。このように人間が凹凸の知覚することは、例えば、"触感デザインのための印刷物転写法とSticky-band Illusion"(第11回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会論文集 (SI2010, 仙台)____174-177, 2010-12)に記載されている。また、"Fishbone Tactile Illusion"(日本バーチャルリアリティ学会第10 回大会論文集(2005 年9 月))にも記載されている。
なお、ここでは、振動のオン/オフを切り替える場合の動摩擦力の変化について説明したが、これは、振動素子140の振幅(強度)を変化させた場合も同様である。
次に、図6を用いて、トップパネル120に発生させる定在波について説明する。
図6は、トップパネル120に発生させる定在波を説明する図である。図6では、図2乃至図4と同様のXYZ座標を定義する。
トップパネル120には、振動素子140A、140Bが設けられている。ここでは、振動素子140A、140Bは、同位相で駆動されるものとし、あるタイミングにおいて、トップパネル120には、濃いグレーで示す凸の腹と、薄いグレーで示す凹の腹とが生じているものとする。濃いグレーで示す凸の腹と、薄いグレーで示す凹の腹とは、最大振幅のときのものとする。
なお、図6に示すタイミングとは定在波の固有振動の半周期異なるタイミングにおいては、図6に濃いグレーで示す凸の腹の部分に最大振幅の凹の腹が生じ、薄いグレーで示す凹の腹の部分に最大振幅の凸の腹が生じる。
次に、図7を用いて、実施の形態の電子機器100の構成について説明する。
図7は、実施の形態の電子機器100の構成を示す図である。
電子機器100は、振動素子140A、140B、アンプ141A、141B、タッチパネル150、ドライバIC(Integrated Circuit)151、ディスプレイパネル160、ドライバIC161、制御部200、正弦波発生器310、及び振幅変調器320を含む。
制御部200は、アプリケーションプロセッサ220、通信プロセッサ230、駆動制御部240、及びメモリ250を有する。制御部200は、例えば、ICチップで実現される。
また、駆動制御部240、正弦波発生器310、及び振幅変調器320は、駆動制御装置300を構築する。なお、ここでは、アプリケーションプロセッサ220、通信プロセッサ230、駆動制御部240、及びメモリ250が1つの制御部200によって実現される形態について説明するが、駆動制御部240は、制御部200の外部に別のICチップ又はプロセッサとして設けられていてもよい。この場合には、メモリ250に格納されているデータのうち、駆動制御部240の駆動制御に必要なデータは、メモリ250とは別のメモリに格納して、駆動制御装置300の内部に設ければよい。
図7では、筐体110、トップパネル120、両面テープ130、及び基板170(図2参照)は省略する。また、ここでは、アンプ141A、141B、ドライバIC151、ドライバIC161、駆動制御部240、メモリ250、正弦波発生器310、及び振幅変調器320について説明する。
アンプ141A、141Bは、それぞれ、駆動制御装置300と振動素子140A、140Bとの間に配設されており、駆動制御装置300から出力される駆動信号を増幅して振動素子140A、140Bを駆動する。
ドライバIC151は、タッチパネル150に接続されており、タッチパネル150への操作入力があった位置を表す位置データを検出し、位置データを制御部200に出力する。この結果、位置データは、アプリケーションプロセッサ220と駆動制御部240に入力される。なお、位置データが駆動制御部240に入力されることは、位置データが駆動制御装置300に入力されることと等価である。
ドライバIC161は、ディスプレイパネル160に接続されており、駆動制御装置300から出力される描画データをディスプレイパネル160に入力し、描画データに基づく画像をディスプレイパネル160に表示させる。これにより、ディスプレイパネル160には、描画データに基づくGUI操作部又は画像等が表示される。
アプリケーションプロセッサ220は、電子機器100の種々のアプリケーションを実行する処理を行う。
通信プロセッサ230は、電子機器100が3G(Generation)、4G(Generation)、LTE(Long Term Evolution)、WiFi等の通信を行うために必要な処理を実行する。
駆動制御部240は、2つの所定の条件が揃った場合に、振幅データを振幅変調器320に出力する。振幅データは、振動素子140A、140Bの駆動に用いる駆動信号の強度を調整するための振幅値を表すデータである。振幅値は、位置データの時間的変化度合に応じて設定される。ここで、位置データの時間的変化度合としては、利用者の指先がトップパネル120の表面に沿って移動する速度を用いる。利用者の指先の移動速度は、ドライバIC151から入力される位置データの時間的な変化度合に基づいて、駆動制御部240が算出する。
また、実施の形態の駆動制御装置300は、利用者の指先がトップパネル120の表面に沿って移動したときに、指先に掛かる動摩擦力を変化させるためにトップパネル120を振動させる。動摩擦力は、指先が移動しているときに発生するため、駆動制御部240は、移動速度が所定の閾値速度以上になったときに、振動素子140A、140Bを振動させる。移動速度が所定の閾値速度以上になることは、1つ目の所定の条件である。
従って、駆動制御部240が出力する振幅データが表す振幅値は、移動速度が所定の閾値速度未満のときはゼロであり、移動速度が所定の閾値速度以上になると、移動速度に応じて所定の振幅値に設定される。移動速度が所定の閾値速度以上のときには、移動速度が高いほど振幅値は小さく設定され、移動速度が低いほど振幅値を大きく設定される。
また、実施の形態の駆動制御装置300は、操作入力を行う指先の位置が、振動を発生させるべき所定の領域内にある場合に、振幅データを振幅変調器320に出力する。操作入力を行う指先の位置が、振動を発生させるべき所定の領域内にあることは、2つ目の所定条件である。
操作入力を行う指先の位置が振動を発生させるべき所定の領域内にあるかどうかは、操作入力を行う指先の位置が、振動を発生させるべき所定の領域の内部にあるか否かに基づいて判定される。
ここで、ディスプレイパネル160に表示するGUI操作部、画像を表示する領域、又は、ページ全体を表す領域等のディスプレイパネル160上における位置は、当該領域を表す領域データによって特定される。領域データは、すべてのアプリケーションにおいて、ディスプレイパネル160に表示されるすべてのGUI操作部、画像を表示する領域、又は、ページ全体を表す領域について存在する。
このため、2つ目の所定条件として、操作入力を行う指先の位置が、振動を発生させるべき所定の領域内にあるかどうかを判定する際には、電子機器100が起動しているアプリケーションの種類が関係することになる。アプリケーションの種類により、ディスプレイパネル160の表示が異なるからである。
また、アプリケーションの種類により、トップパネル120の表面に触れた指先を移動させる操作入力の種類が異なるからである。トップパネル120の表面に触れた指先を移動させる操作入力の種類としては、例えば、GUI操作部を操作する際には、所謂フリック操作がある。フリック操作は、指先をトップパネル120の表面に沿って、はじく(スナップする)ように比較的短い距離移動させる操作である。
また、ページを捲る場合には、例えば、スワイプ操作を行う。スワイプ操作は、指先をトップパネル120の表面に沿って掃くように比較的長い距離移動させる操作である。スワイプ操作は、ページを捲る場合の他に、例えば、写真を捲る場合に行われる。また、GUI操作部によるスライダー(図1のスライダー102B参照)をスライドさせる場合には、スライダーをドラッグするドラッグ操作が行われる。
ここで一例として挙げるフリック操作、スワイプ操作、及びドラッグ操作のように、トップパネル120の表面に触れた指先を移動させる操作入力は、アプリケーションによる表示の種類によって使い分けられる。このため、操作入力を行う指先の位置が、振動を発生させるべき所定の領域内にあるかどうかを判定する際には、電子機器100が起動しているアプリケーションの種類が関係することになる。
駆動制御部240は、領域データを用いて、ドライバIC151から入力される位置データが表す位置が、振動を発生させるべき所定の領域の内部にあるか否かを判定する。
アプリケーションの種類を表すデータと、操作入力が行われるGUI操作部等を表す領域データと、振動パターンを表すパターンデータとを関連付けたデータは、メモリ250に格納されている。
また、駆動制御部240は、ドライバIC151から駆動制御装置300に位置データが入力されてから、当該位置データに基づいて駆動信号が算出されるまでの所要時間の間における指先の位置の変化分を補間するために、次の処理を行う。
駆動制御装置300は、所定の制御周期毎に演算を行う。これは駆動制御部240も同様である。このため、ドライバIC151から駆動制御装置300に位置データが入力されてから、当該位置データに基づいて駆動制御部240が駆動信号を算出するまでの所要時間をΔtとすると、所要時間Δtは、制御周期に等しい。
ここで、指先の移動速度は、ドライバIC151から駆動制御装置300に入力される位置データが表す点(x1、y1)を始点とし、所要時間Δtが経過した後の指先の位置を終点(x2、y2)とするベクトルの速度として求めることができる。
駆動制御部240は、ドライバIC151から駆動制御装置300に入力される位置データが表す点(x2、y2)を始点とし、所要時間Δtが経過した後の指先の位置を終点(x3、y3)とするベクトルを求めることにより、所要時間Δt経過後の座標(x3、y3)を推定する。
実施の形態の電子機器100では、上述のようにして所要時間Δt経過後の座標を推定することにより、所要時間Δtの間における指先の位置の変化分を補間する。
このような所要時間Δt経過後の座標を推定する演算は、駆動制御部240が行う。駆動制御部240は、推定座標が振動を発生させるべき所定の領域の内部にあるか否かを判定し、振動を発生させるべき所定の領域の内部にある場合に振動を発生させる。従って、2つ目の所定の条件は、推定座標が振動を発生させるべき所定の領域の内部にあることである。
以上より、駆動制御部240が振幅データを振幅変調器320に出力するために必要な2つの所定の条件は、指先の移動速度が所定の閾値速度以上であることと、推定座標が振動を発生させるべき所定の領域の内部にあることである。
駆動制御部240は、指先の移動速度が所定の閾値速度以上であり、推定座標が振動を発生させるべき所定の領域の内部にある場合に、移動速度に応じた振幅値を表す振幅データをメモリ250から読み出して、振幅変調器320に出力する。
メモリ250は、アプリケーションの種類を表すデータと、操作入力が行われるGUI操作部等を表す領域データと、振動パターンを表すパターンデータとを関連付けたデータを格納する。
また、メモリ250は、アプリケーションプロセッサ220がアプリケーションの実行に必要とするデータ及びプログラム、及び、通信プロセッサ230が通信処理に必要とするデータ及びプログラム等を格納する。
正弦波発生器310は、トップパネル120を固有振動数で振動させるための駆動信号を生成するのに必要な正弦波を発生させる。例えば、トップパネル120を33.5[kHz]の固有振動数fで振動させる場合は、正弦波の周波数は、33.5[kHz]となる。正弦波発生器310は、超音波帯の正弦波信号を振幅変調器320に入力する。
正弦波発生器310が発生する正弦波信号は、超音波帯の固有振動を発生させる駆動信号の元になる交流の基準信号であり、一定の周波数と一定の位相を有する。正弦波発生器310は、超音波帯の正弦波信号を振幅変調器320に入力する。
なお、ここでは、正弦波信号を発生する正弦波発生器310を用いる形態について説明するが、正弦波信号ではなくてもよい。例えば、クロックの立ち上がりと立ち下がりの波形を鈍らせたような波形の信号を用いてもよい。このため、超音波帯の交流信号を発生する信号発生器を正弦波発生器310の代わりに用いてもよい。
振幅変調器320は、駆動制御部240から入力される振幅データを用いて、正弦波発生器310から入力される正弦波信号の振幅を変調して駆動信号を生成する。振幅変調器320は、正弦波発生器310から入力される超音波帯の正弦波信号の振幅のみを変調し、周波数及び位相は変調せずに、駆動信号を生成する。
このため、振幅変調器320が出力する駆動信号は、正弦波発生器310から入力される超音波帯の正弦波信号の振幅のみを変調した超音波帯の正弦波信号である。なお、振幅データがゼロの場合は、駆動信号の振幅はゼロになる。これは、振幅変調器320が駆動信号を出力しないことと等しい。
次に、減衰部材180A、180Bを配置する位置について説明する。減衰部材180A及び180Bは、それぞれ、トップパネル120に生じる定在波の複数の節のうち、トップパネル120のY軸負方向側及びY軸正方向側の端部側から2番目の節に対応する位置に配設される。
電子機器100から減衰部材180A、180Bを取り除いた装置において、トップパネル120に利用者の指先が接触している状態で発生する可聴域の音をマイクロフォンで測定したところ、駆動制御部240から振動素子140A、140Bに印加されている駆動信号の周波数(駆動周波数)の2分の1、又は、4分の1の周波数の成分が多く出ていることが分かった。駆動周波数をfc、2以上の整数をNとすると、fc/Nという分数周波数の音が発生し、聞こえていると考えられる。このように人間が聞き取れる音は、可聴域の音であり、場合によってはノイズになりうる。
駆動周波数fcの振動がトップパネル120に生じており、指先とトップパネル120が1秒にfc回衝突しているときに、fc/2の周波数の振動がトップパネル120に加わったと仮定すると、周波数fcと周波数fc/2の振動とが合成されることにより、1秒感にfc/2回だけ指先とトップパネル120とが衝突することになる。周波数fc/2は、可聴域の周波数である。
これによりトップパネル120は、周波数fc/2の力の成分で加振されることになり、周波数fc/2の振動が大きくなり、可聴域の音がマイクロフォンで測定されたものと考えられる。同様に、Nが2以上のすべての整数で、fc/Nの周波数の振動が発生する可能性があると考えられる。
様々な寸法及びヤング率を有する複数のトップパネル120を振動させたときに、実際に測定されることが多いのは、fc/2、fc/3、fc/4の周波数の成分であった。このため、これらの周波数の振動を低減すれば、可聴域の音を低減することができると考えられる。トップパネル120に定在波を発生させるような曲げ振動では、周波数fと波長Pの関係は、次式(3)で表される。すなわち、波長Pは、周波数fの平方根に反比例する。
ここで、駆動制御部240で駆動している周波数fcの定在波を基本定在波と称することとすると、基本定在波の波長を基準として、fc/2の周波数の曲げ振動の波長は、基本定在波の波長Pの√2倍である。また、fc/3の周波数の曲げ振動の波長は、基本定在波の波長Pの√3倍であり、fc/4の周波数の曲げ振動の波長は、基本定在波の波長Pの2倍である。
トップパネル120のY軸方向の端における変位が零で、曲げ振動による傾きが有るという条件(トップパネル120のY軸方向の端が支持端であるという条件)で、波長√2P(周波数fc/2)、波長√3P(周波数fc/3)、波長2P(周波数fc/4)の波長の定在波は、図8に示す通りである。このような境界条件では、梁の振動の理論から、定在波の形は三角関数となるので、ここでは波長Pを√2倍、√3倍、2倍にした三角関数で定在波の形状を表した。
図8は、トップパネル120の両端が支持端である場合に、波長P(周波数fc)の基本定在波、波長√2P(周波数fc/2)の定在波、波長√3P(周波数fc/3)の定在波、及び波長2P(周波数fc/4)の定在波の波形を示す図である。図8には、トップパネル120のY軸負方向側の端部側のみを示す。
また、図9は、トップパネル120の両端が支持端である場合に、トップパネル120に生じる基本定在波の波形と、減衰部材180A、180Bの位置との関係を示す図である。
図8において、横軸はY軸であり、Y=0はトップパネル120のY軸負方向側の端部を表す。また、縦軸は定在波の変位(Z軸方向の変位)を表す。縦軸の値が零(0)であることは、トップパネル120がZ軸方向に変位していないことを表す。このため、縦軸の値が零(0)である点は、定在波の節である。また、縦軸の値が正又は負の最大である点は、定在波の腹である。なお、図8に示す4つの定在波の波形は、腹における変位が最大になっている瞬間のものである。
基本定在波の節の位置と、周波数fc/2、fc/3、fc/4の定在波の節の位置とは、波長が異なるので一致しない。しかしながら、基本定在波の端(Y=0の位置)の節を1番目の節とすると、例えば、基本定在波のY軸負方向側から2番目の節では、周波数fc/2の定在波の変位は最大値の約70%であり、周波数fc/3の定在波の変位は、最大値の約85%であり、周波数fc/4の定在波の変位は、最大値である。
そこで、図9に示すように、基本定在波の端から2番目の節の位置において、減衰部材180A、180Bをトップパネル120と筐体110との間に配置すると、基本定在波の駆動効率にあまり影響を与えずに、周波数fc/2、fc/3、fc/4の振動を減衰させることができると考えられる。
減衰部材180A、180Bは変形することにより、周波数fc/2、fc/3、fc/4の振動にエネルギ損失を生じさせ、振動を減衰させることになる。しかしながら、基本定在波については、節ではトップパネル120の変位がないので、振動を妨げない。減衰部材180A、180Bの位置が腹に近いモードの定在波ほど、減衰され易いと考えられる。
従って、基本定在波の端から2番目の節の位置に減衰部材180A、180Bを配置することが、分数周波数fc/2、fc/3、fc/4の振動を低減し、可聴域の音の発生を抑制することに効果的である。
以上のような理由から、トップパネル120に生じる定在波の複数の節のうち、トップパネル120のY軸負方向側及びY軸正方向側の端部側から2番目の節に対応する位置に、それぞれ、減衰部材180A及び180Bを配設する。
なお、節に対応する位置とは、定在波の節と腹が配列される方向(Y軸方向)において節が存在する厳密な位置に限らず、定在波の節と腹が配列される方向(Y軸方向)において節の前後(Y軸方向における前後)の所定の範囲を含む意味である。換言すれば、節に対応する位置とは、節が存在する厳密な位置に加えて、節の近傍を含む意味である。節の近傍とは、例えば、定在波の波長WLに対して、±WL/10の範囲である。
図10は、トップパネル120に生じる基本定在波の波形と、減衰部材180A、180Bの位置との関係を示す図である。図9に比べて、図10では、減衰部材180A、180Bは、基本定在波の端から4番目の節の位置に存在する。
図8において、基本定在波の端から4番目の節においては、周波数fc/2の定在波の変位は最大値の約20%であり、周波数fc/3の定在波の変位は、最大値の約70%であり、周波数fc/4の定在波の変位は、最大値である。
このため、図10に示すように、減衰部材180A、180Bを基本定在波の端から4番目の節の位置に配置すれば、基本定在波の端から2番目の節ほどではないが、分数周波数fc/2、fc/3、fc/4の振動を低減し、可聴域の音の発生を抑制することができると考えられる。
また、これは、基本定在波の端から2番目及び4番目の節に限らず、基本定在波の端から3番目又は5番目以降の節の位置に減衰部材180A、180Bを配置すれば、同様の効果が得られると考えられる。
次に、トップパネル120の両端が自由端である場合について説明する。トップパネル120の両端が自由端で、波長√2P(周波数fc/2)、波長√3P(周波数fc/3)、波長2P(周波数fc/4)の波長の定在波は、図11に示す通りである。
図11は、トップパネル120の両端が自由端である場合に、波長P(周波数fc)の基本定在波、波長√2P(周波数fc/2)の定在波、波長√3P(周波数fc/3)の定在波、及び波長2P(周波数fc/4)の定在波の波形を示す図である。図11には、トップパネル120のY軸負方向側の端部側のみを示す。トップパネル120の端部が自由端である場合の基本定在波は、端部が節ではなく腹になる。
また、図12は、トップパネル120の両端が自由端である場合に、トップパネル120に生じる基本定在波の波形と、減衰部材180A、180Bの位置との関係を示す図である。
図11において、横軸はY軸であり、Y=0はトップパネル120のY軸負方向側の端部を表す。また、縦軸は定在波の変位(Z軸方向の変位)を表す。
図11に示す波長P(周波数fc)の基本定在波、波長√2P(周波数fc/2)の定在波、波長√3P(周波数fc/3)の定在波、及び波長2P(周波数fc/4)の定在波の波形は、梁の曲げ振動の理論から、すべての定在波は、三角関数と双曲線関数との和で次式(4)のように表されることから求めたものである。
式(4)において、YはY座標、U(Y)は定在波のZ軸方向の変位、Lはトップパネル120のY軸方向の長さ、λ/Lは波のY軸方向の波数、λは境界条件から決まる固有値、C
1、C
2、C
3、C
4は係数である。
自由端という境界条件を用いて、固有値λと、各項の係数C1、C2、C3、C4を決めることができる。定在波の周波数と波長は、固有値λによって決まるが、固有値は離散的な値であるので、正確に1/2の周波数の定在波というのは殆ど存在しない。図11には、周波数fcの1/2の周波数に近い定在波モード、周波数fcの1/3の周波数に近い定在波モード、周波数fcの1/4の周波数に近い定在波モードを示す。
図11から、基本定在波の複数の節のうち、トップパネル120のY軸負方向側の端部から見て2番目の節の位置では、他の3つの定在波は腹に近いので、この位置に減衰部材180Aを配置すれば、基本定在波以外を効果的に減衰できることが分かる。なお、減衰部材180Bは、同様な考え方から、トップパネル120のY軸正方向側の端部から2番目の節の位置に配置すればよい。
すなわち、図12に示すように、トップパネル120の端部の条件が自由端の場合においても、トップパネル120のY軸負方向及びY軸正方向における端部から2番目の節の位置に減衰部材180A、180Bを配置することが、可聴域の音を減衰させるために効果的であると言える。
また、図11において、基本定在波の端から3番目、4番目、又は5番目以降の節の位置においても、基本定在波の端から2番目の節ほどではないが、周波数fc/2、fc/3、fc/4の定在波には変位が生じる。これは、トップパネル120の端部の条件が支持端の場合と同様である。
従って、減衰部材180A、180Bを基本定在波の端から3番目、4番目、又は5番目以降の節の位置に配置しても、基本定在波の端から2番目の節ほどではないが、分数周波数fc/2、fc/3、fc/4の振動を低減し、可聴域の音の発生を抑制することができると考えられる。
以上、図9及び図12に示したように、トップパネル120の端部が支持端及び自由端のいずれのであっても、減衰部材180A、180Bを基本定在波の端から2番目以降の節の位置に配置すれば、分数周波数fc/2、fc/3、fc/4等の振動を低減し、可聴域の音の発生を抑制することができる。
なお、トップパネル120の端部における定在波の変位が零で、傾きも零という条件も考えられる。この場合は、式(4)の曲げ振動の理論から、定在波の一番端以外の節の位置は自由端の場合と同じであることが分かっているので、自由端の場合と同様に2番目の節が効果的であると言える。
トップパネル120のY軸方向の長さL、厚さt、及び材質を決定すれば、それに応じて基本定在波の周波数fcが決まることになる。曲げ振動の周波数fcと式(4)の固有値λとの関係は、長さL、厚さt、密度ρ、ヤング率Eを用いて次の式(5)となる。密度ρとヤング率Eは、材質によって決まる。
固有値λは、トップパネル120の端部が支持端の条件では、λ
m=mπ(mは1以上の整数)で与えられる値をとる。トップパネル120の端部が自由端の場合は、cosλcoshλ=1の解が固有値であり、数値計算で解を求めると、λ
1=4.73、λ
2=7.85、λ
3=10.996等が求まり、λ
m=(m+0.5)πという近似式で非常に高い精度で近似できる。
固有値λは離散値であるので、定在波になる共振周波数もそれに応じて離散的であり、基本周波数fcの定在波、及び、分数周波数fc/2、fc/3、fc/4の定在波は、いずれもトップパネル120の長さLに含まれる波の数が異なる定在波のモードである。
共振周波数の中の1つを触感を提供するために用いる周波数として選ぶと、固有値λつまり定在波のモードが決まったことになり、その節の位置も計算することができる。端から2番目の節の位置を計算し、そこに減衰部材180A、180Bを配置する構造とすれば、上述のように可聴域の音の発生を抑制することができる。
実際には、定在波モードを特定しても、トップパネル120及び/又は振動素子140A、140B等の個体差によって共振周波数にばらつきが生じるが、ばらつきは離散的な共振周波数の周波数間隔よりも小さいので、駆動周波数の微調整で共振周波数のばらつき分に対応することにすれば、常に同じ定在波モードを使うことになり、節の位置は変化しない。従って、最適な減衰部材180A、180Bの位置に、トップパネル120及び/又は振動素子140A、140B等の個体差の影響は生じない。
トップパネル120の端部が支持端の場合には、固有値λはλ=mπで表され、式(4)の各項の係数C1、C2、C3、C4を境界条件から求めると、次式(6)で表される定在波モードの変位が得られる。
式(6)は、トップパネル120の端部が節になっている場合の変位U(Y)を表す三角関数であり、式(6)から2番目の節の位置は、次式(7)のように簡単に求められる。
トップパネル120の端部が自由端の場合は、固有値λはλ=(m+0.5)πであって、定在波の変位U(Y)は、近似的に以下の式(8)で求めることができる。
端から2番目の節よりもさらに端に近い部分以外では、双曲線関数の寄与は小さいので、三角関数の項だけにして、1つにまとめると次式(9)が得られる。
例えば、端から2番目の節は、定在波の位相の3π/2の位置に相当するので、式(9)から次式(10)の関係を求めることができる。
以上より、自由端の場合の2番目の節の位置は以下の式(11)で求められる。
このように定在波モードを表すmの値が決まれば、節の位置を計算することができる。上述のように共振周波数からmの値はほぼ間違いなく判断できるが、より慎重に確認するならば、レーザードップラ振動計などを用いて振動分布を測定し、振動強度の節や腹の数を調べれば、どの定在波モードであるかが分かる。
これまで説明した定在波モードの形状や節の位置は、梁の曲げ振動の理論を使ったものであり、トップパネル120単体の場合に対応している。実際には、振動素子140A、140Bを貼り付けることで、若干、モード形状が影響を受ける。特にトップパネル120に対して振動素子140A、140Bが厚い場合には影響が大きくなるので、上述の式(7)又は式(11)で節の位置を決めてもよいが、有限要素解析のシミュレーションを行うことで、より正確な節の位置を求めることができる。
ここで、減衰部材180A、180Bを基本定在波の節の位置に配置することで、基本定在波を減衰させずに、分数周波数の定在波を減衰できることを確かめるために、有限要素解析のシミュレーションを行った。
図13は、振動素子140A、140Bを駆動した場合のトップパネル120の振動の解析結果を示す図である。図13では、減衰部材180A、180Bを配置する位置は、トップパネル120の基本定在波のY軸負方向側及びY軸正方向側の端部から2番目の節の位置である。
図14は、比較用に、減衰部材180A、180Bが存在しない条件下で振動素子140A、140Bを駆動した場合のトップパネル120の振動の解析結果を示す図である。
ここで、図13及び図14の解析結果を得るためのシミュレーション条件の振動周波数は、基本定在波の共振周波数fcである。 図13及び図14を比べて分かるように、端部から2番目の節の位置に減衰部材180A、180Bがあるかないかによって定在波の振幅にはほとんど変化がなかった。このことより、減衰部材180A、180Bをトップパネル120に取り付けても、基本定在波の振幅は殆ど減衰されないことが分かった。
図15は、振動素子140A、140Bを駆動した場合のトップパネル120の振動の解析結果を示す図である。図15では、減衰部材180A、180Bを配置する位置は、図13と同一である。
図16は、比較用に、減衰部材180A、180Bが存在しない条件下で振動素子140A、140Bを駆動した場合のトップパネル120の振動の解析結果を示す図である。
ここで、図15及び図16の解析結果を得るためのシミュレーション条件の共振周波数は、基本定在波の共振周波数fcの約1/2である。
図16に比べて、図15では振幅が1/7程度に減衰された。このように、トップパネル120の基本定在波のY軸負方向側及びY軸正方向側の端部から2番目の節の位置に減衰部材180A、180Bを配置することにより、共振周波数fcの約1/2の周波数の定在波の振幅が大幅に減衰されることが分かった。
ここで、図15及び図16のシミュレーションは、振動素子140A、140Bを共振周波数fcの約1/2の周波数で駆動しているので、実際の電子機器100における分数周波数fc/2の振動の発生要因とは状況が異なる。
実際には、指先とトップパネル120の表面との間で、分数周波数fc/2の力が発生していると考えると、力はトップパネル120の中央付近などに与えられている。次に、このような状況をシミュレーションで解析する。
図17は、シミュレーションモデルを示す図である。図17において、トップパネル120、振動素子140A、140B、及び減衰部材180A、180Bの配置は、図12と同様である。図17に示すように、トップパネル120の中央に分数周波数fc/2の周期的な力Fを加えた場合のトップパネル120の振動について解析した。
図18は、トップパネル120の中央に分数周波数fc/2の周期的な力Fを加えた場合のトップパネル120の振動の解析結果を示す図である。図18では、減衰部材180A、180Bを配置する位置は、図13と同一である。
図19は、比較用に、減衰部材180A、180Bが存在しない条件下でトップパネル120の中央に分数周波数fc/2の周期的な力Fを加えた場合のトップパネル120の振動の解析結果を示す図である。なお、図18及び図19の解析結果を得るためのシミュレーションでは、振動素子140A、140Bは駆動していない。
図18及び図19に示す振動の分布は、互いに異なる分布になったが、図18に示す振動の振幅は、図19に示す振動の振幅の0.4倍であった。図18では、減衰部材180A、180Bが境界部として働き、図19とは異なるモードが発生することにより、図15に示す振動ほどの大きな減衰効果は得られなかった。しかしながら、指先とトップパネル120の接触で発生する分数周波数fc/2の振動に対して、減衰部材180A、180Bは一定の減衰効果を発揮することが分かった。
図18及び図19には、分数周波数fc/2の振動を発生させた場合の解析結果を示したが、他の分数周波数の場合にも同様の傾向が得られるものと考えられる。
また、図15及び図18には、トップパネル120の端部から2番目の節の位置に減衰部材180A、180Bを配置した場合の解析結果を示した。端部から2番目の節の位置は、図8及び図11に示すように、端部から3番目以降の節よりも分数周波数の定在波の振幅が大きいため、減衰部材180A、180Bを取り付ける効果が最も大きいと考えられるが、3番目以降の節の位置に減衰部材180A、180Bを配置した場合も同様の傾向があると考えられる。
また、基本定在波の振動を減衰させないように、節の位置からY軸方向におけるある程度の範囲内に減衰部材180A、180Bが位置する必要がある。図13の解析結果を得るために行ったシミュレーションでは、減衰部材180A、180BのY軸方向の幅は、基本周波数の波長の10%弱としている。すなわち、減衰部材180A、180BのY軸方向の幅は、Y軸方向において、節の位置に対して波長の±5%程度の範囲にわたっている。このような減衰部材180A、180Bの配置で、基本定在波に減衰は生じなかった。
例えば、トップパネル120としてガラス板を用いて、30kHzから40kHz程度の超音波帯の周波数の基本定在波を発生させる場合には、曲げ振動の波長は10mm以上である。減衰部材180A、180BのY軸方向の幅は、基本定在波の波長に比べて小さくなければならず、波長の1/10程度の1mm以下とする。また、減衰部材180A、180Bの取付位置は、計算した節の位置からずれると基本定在波が発生し難くなるので、Y軸方向における位置の誤差を抑える必要がある。減衰部材180A、180BのY軸方向の幅が0.8mmである場合に、減衰部材180A、180Bの位置の誤差を±0.2mm以内に収めれば、節からの位置のずれは、基本定在波の波長の±0.25%以内である。この場合には、上述した±5%以内の半分になる。
また、別のシミュレーションにおいて、減衰部材180A、180BのY軸方向における位置が、節の位置に対して波長の±8%以内にあれば、基本定在波に大きな減衰が生じないことが分かった。
以上より、減衰部材180A、180Bの幅と取付誤差を含めて、Y軸方向において、節の位置に対して、波長の±8%の範囲内に減衰部材180A、180Bを配置すれば、基本定在波の振幅の確保と、分数周波数の定在波の減衰との両立を図ることができる。
以上のように、トップパネル120の節の位置に減衰部材180A、180Bを配置することにより、基本定在波の振幅を確保しつつ、分数周波数の定在波を減衰させることができる。
例えば、基本定在波の周波数が超音波帯の30kHz又は40kHzである場合には、基本定在波の1/2又は1/3以下の分数周波数は、20kHz未満の可聴域の周波数になる。このため、可聴域の音を減衰させることができる。このような可聴域の音が減衰されない場合には、ノイズとなって聞こえ得る。
従って、実施の形態によれば、可聴域のノイズを抑制した電子機器100を提供することができる。特に、トップパネル120の端部から2番目の節の位置に減衰部材180A、180Bを配置することにより、可聴域のノイズをより一層効果的に抑制することができる。
なお、以上では、減衰部材180A及び180Bが筐体110の凹部110Aとトップパネル120との間に設けられる形態について説明したが、減衰部材180A及び180Bは、タッチパネル150とトップパネル120との間に設けられていてもよい。また、タッチパネル150がディスプレイパネル160のZ軸負方向側に配置される場合には、減衰部材180A及び180Bは、ディスプレイパネル160とトップパネル120との間に設けられていてもよい。これらの場合に、減衰部材180A及び180BがXY平面視でディスプレイパネル160の表示領域内に位置する場合には、減衰部材180A及び180Bは透明な樹脂等で作製されていてもよい。なお、減衰部材180A及び180Bは、ディスプレイパネル160とトップパネル120との間に設けられる場合には、タッチパネル150とトップパネル120とが一体になっていてもよい。
また、以上では、減衰部材180A、180BのZ軸負方向側の端部(下端)が筐体110の凹部110Aの表面に接着され、Z軸正方向側の端部(上端)がトップパネル120のZ軸負方向側の面に当接するように配設される形態について説明した。
しかしながら、減衰部材180A、180Bの位置が固定されるのであれば、減衰部材180A、180Bの下端は接着されていなくてもよく、例えば、トップパネル120と筐体110との間に挟まれて押圧された状態で固定されていてもよい。また、減衰部材180A、180Bの上端をトップパネル120に接着等によって固定してもよい。また、減衰部材180A、180Bを固定する固定部材を用いてもよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態の電子機器について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。