JP6782085B2 - 白毛化抑制剤、細胞死抑制剤、活性酸素発生抑制剤、dna損傷抑制剤、ミトコンドリア損傷抑制剤 - Google Patents
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Description
特許文献1には、フラボノイド類のステルビン、ヤーバサンタ抽出物、ヨモギ抽出物がメラノサイト幹細胞の維持・増加、メラニン合成の増加を促進することを見出し、これらの物質を含む白毛数抑制剤が記載されている。
そして、特許文献2には、フラボノイド類のステルビン、ルテオリン、ディオスメチン及びヤーバサンタ抽出物が毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制することによって、白毛化を抑制することが記載されている。
(第1発明)
上記課題を解決するための第1発明は、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンを含有することを特徴とする白毛化抑制剤である。
(第2発明)
上記課題を解決するための第2発明は、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンを含有することを特徴とする細胞死抑制剤である。
(第3発明)
上記課題を解決するための第3発明は、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンを含有することを特徴とする細胞内の活性酸素発生抑制剤である。
(第4発明)
上記課題を解決するための第4発明は、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンを含有することを特徴とするDNA損傷抑制剤である。
(第5発明)
上記課題を解決するための第5発明は、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンを含有することを特徴とするミトコンドリア損傷抑制剤である。
上記課題を解決するための第6発明は、第1発明の毛髪の白毛化抑制剤、第2発明の細胞死抑制剤、第3発明の細胞内の活性酸素発生抑制剤、第4発明のDNA損傷抑制剤、又は、第5発明のミトコンドリア損傷抑制剤の1種以上を有効成分として含有することを特徴とする医薬品、化粧料又は飲食品である。
(第7発明)
上記課題を解決するための第7発明は、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンを0.0001〜1.0質量%(w/w)含有することを特徴とする第6発明に記載の医薬品、化粧料又は飲食品である。
(第8発明)
上記課題を解決するための第8発明は、外用剤であることを特徴とする第6又は第7発明に記載の医薬品又は化粧料である。
(第9発明)
上記課題を解決するための第9発明は、前記外用剤を頭皮へ適用することを特徴とする、第8発明に記載の化粧料の使用方法である。
第2発明によれば、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンが、放射線や紫外線、老化、酸化ストレス等の細胞死を誘発する因子から細胞を保護し、細胞死を抑制することができる。
第3発明によれば、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンが、放射線や紫外線、老化、酸化ストレス等の細胞内の活性酸素を発生させる因子から細胞を保護し、細胞内の活性酸素の発生を抑制することができる。
第4発明によれば、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンが、放射線や紫外線、老化、酸化ストレス等のDNAの損傷を誘発する因子から細胞を保護し、DNAの損傷を抑制することができる。
第5発明によれば、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンが、放射線や紫外線、老化、酸化ストレス等のミトコンドリアの損傷を誘発する因子から細胞を保護し、ミトコンドリアの損傷を抑制することができる。
本発明は、3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボン(以下、「THMF」という。)を含有する白毛化抑制剤、細胞死抑制剤、活性酸素発生抑制剤、DNA損傷抑制剤、ミトコンドリア損傷抑制剤である。
本発明のTHMFは、以下の化(1)に示す有機化合物である(CAS Number:20243−59−8)。
本発明の白毛化抑制剤とは、上記のTHMFを含有し、放射線や紫外線、老化、酸化ストレス等の白毛化を誘発する因子から毛包ケラチノサイト幹細胞を保護し、ヒトを含む動物の体毛の白毛化を抑制するものである。
本発明の細胞死抑制剤とは、上記のTHMFを含有し、放射線や紫外線、酸化ストレス等の細胞死を誘発する因子から細胞を保護し、細胞死を抑制するものである。
本発明の細胞死抑制剤を適用する細胞としては、どの組織の細胞であるかは制限されないが、例えば、毛包ケラチノサイト幹細胞、メラノサイト等の表皮組織の細胞や、角膜、結膜等の細胞等に適用して細胞死の発生を抑制する。
本発明の活性酸素発生抑制剤とは、上記のTHMFを含有し、放射線や紫外線、老化、酸化ストレス等の細胞内の活性酸素の発生を誘発する因子から細胞を保護し、細胞内の活性酸素の発生を抑制するものである。
本発明の活性酸素発生抑制剤を適用する細胞としては、どの組織の細胞であるかは制限されないが、例えば、毛包ケラチノサイト幹細胞、メラノサイト等の表皮組織の細胞や、角膜、結膜等の細胞等に適用して活性酸素の発生を抑制する。
本発明のDNA損傷抑制剤とは、上記のTHMFを含有し、放射線や紫外線、老化、酸化ストレス等のDNAの損傷を誘発する因子から細胞を保護し、DNAの損傷を抑制するものである。
本発明のDNA損傷抑制剤を適用する細胞としては、どの組織の細胞であるかは制限されないが、例えば、毛包ケラチノサイト幹細胞、メラノサイト等の表皮組織の細胞や、角膜、結膜等の細胞等に適用してDNAの損傷を抑制する。
本発明のミトコンドリア損傷抑制剤とは、上記のTHMFを含有し、放射線や紫外線、老化、酸化ストレス等のミトコンドリアの損傷を誘発する因子から細胞を保護し、細胞内のミトコンドリアの損傷を抑制するものである。
本発明のミトコンドリア損傷抑制剤を適用する細胞としては、どの組織の細胞であるかは制限されないが、例えば、毛包ケラチノサイト幹細胞、メラノサイト等の表皮組織の細胞や、角膜、結膜等の細胞等に適用してミトコンドリアの損傷を抑制する。
上記の本発明の白毛化抑制剤、細胞死抑制剤、活性酸素発生抑制剤、DNA損傷抑制剤、ミトコンドリア損傷抑制剤は、これらを有効成分として1種以上含有する医薬品、化粧料又は飲食品として利用される。医薬品とは、医薬部外品等も含む概念であり、飲食品とは、特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品等も含む概念である。
なお、投与対象としては、ヒトを含む動物一般であり、好ましくは、ヒト及び非ヒト哺乳動物であり、特に好ましくは、ヒトである。
頭髪の白毛化を抑制するという観点では、ヘアケア剤等の頭皮へ適用する外用剤が好ましく、髭の白毛化を抑制するという観点では、フェイスケア剤等の顔の皮膚へ適用する外用剤が好ましい。
医薬品、化粧料又は飲食品の使用方法としては、THMFを、ヒトを含む動物一般に投与する方法であれば、特に制限されないが、例えば、経口や経鼻により摂取する方法、手や塗布具等によって皮膚の目的部位に塗布する方法、注射により皮下、皮内、血管内に注入する方法等により投与すればよい。
化粧料の使用方法は、皮膚へ塗布する手段であれば、特に制限されないが、例えば、手や塗布具等によって化粧料を塗布する手段や、布等の貼付部材に含浸して目的部位に貼付する手段等が挙げられる。
非ヒト哺乳動物の皮膚に塗布する場合、皮膚4〜5cm2あたり、THMFが0.002〜20mg/回が皮膚に適用されることが好ましく、適用間隔は少なくとも1日1回塗布とすることが好ましい。
[マウスを用いた試験]
<試料>
〔試料1〕:THMF10mgを、10mLのエタノールに溶解して、0.1%(w/v)のTHMF溶液を調製した(以下、試料名を「0.1%THMF」という。)。
〔試料2〕:THMF−0.1%を、エタノールで1000倍に希釈して、1ppm(w/v)のTHMF希釈溶液を調製した(以下、試料名を「1ppmTHMF」という。)。
〔比較試料1〕:50体積%エタノール(以下、「50%EtOH」という。)。
図1に各試料の塗布試験についての手順を示した。
7週齢のC57BL/6系統のマウスの背部をバリカンで刈り取り、その部位に200μLの試料を毎日1週間塗布した。1週間後、除毛クリーム(クラシエホームプロダクツ株式会社製「エピラット」)を用いて塗布部位の体毛を完全に除去することにより、休止期から成長期に発毛を誘導した。翌日、マウスに放射線(5Gy)を照射した。
放射線照射6時間後の皮膚を回収し、免疫染色を実施した。毛包ケラチノサイト幹細胞の染色マーカーはCD34を用い、DNAの損傷した細胞の染色マーカーはγH2AXを用いた。毛包中において、CD34に陽性の細胞と、CD34及びγH2AXのいずれにも陽性の細胞について、それぞれ細胞数をカウントした。
放射線照射1カ月後、抜去した体毛が生えそろった時点で、体毛を目視にて評価した。図2は、50%EtOH塗布マウスと0.1%THMF塗布マウスの体毛の色を評価した写真である。図3は、50%EtOH塗布マウスと1ppmTHMF塗布マウスの体毛の色を評価した写真である。
その結果、THMFを塗布したマウスの体毛は、0.1%THMF、1ppmTHMFのいずれも50%EtOHを塗布したマウスの体毛よりも黒い毛が多く生えた。
その結果、50%EtOH塗布群のL*値は47.6、0.1%THMF塗布群のL*値は37.8であり、THMFを塗布することにより、体毛の白毛化を抑制するという効果が認められた。
また、50%EtOH塗布マウスと1ppmTHMF塗布マウスについて、上記と同じ手法でL*値を測定し、体毛の明度を評価した。各試料塗布群について3匹のマウスの体毛を刈り取った後、それぞれのL*値を測定し、その平均を算出した。
その結果、50%EtOH塗布群のL*値は46.91、1ppmTHMF塗布群のL*値は42.22であり、THMFを塗布することにより、体毛の白毛化を抑制するという効果が認められた。
<試料>
〔試料3〕:THMFをエタノールに溶解して、100μMのTHMF溶液を調製した(以下、試料名を「100μM-THMF」という。)。
〔比較試料2〕:ジメチルスルホキシド(CAS Number:67−68−5)をエタノールに溶解して、100μMのジメチルスルホキシド溶液を調製した(以下、試料名を「DMSO」という。)。
〔比較試料3〕:エリオディクティオン・アングスティフォリウム種のヤーバサンタ(ハゼリソウ科の植物)の葉及び茎の混合物の乾燥物1gに50体積%エタノール溶液200mLを加え、室温で約1週間抽出後、ろ過した。得られたろ液を濃縮して、100μg/mLのヤーバサンタ抽出液を調製した(以下、「E.angu.」という。)。
〔比較試料4〕:エリオディクティオン・カリフォルニカム種のヤーバサンタ(ハゼリソウ科の植物)の葉及び茎の混合物の乾燥物1gに50体積%エタノール溶液200mLを加え、室温で約1週間抽出後、ろ過した。得られたろ液を濃縮して、100μg/mLのヤーバサンタ抽出液を調製した(以下、「E.cali.」という。)。
〔比較試料5〕:ステルビン(CAS Number:51857−11−5)をエタノールに溶解して、100μMのステルビン溶液を調製した(以下、試料名を「Sterubin」という。)。
〔比較試料6〕:ルテオリン(CAS Number:491−70−3)をエタノールに溶解して、100μMのルテオリン溶液を調製した(以下、試料名を「Luteolin」という。)。
〔比較試料7〕:ホモエリオジクチオール(CAS Number:446−71−9)をエタノールに溶解して、100μMのホモエリオジクチオール溶液を調製した(以下、試料名を「Homoeri」という。)。
〔比較試料8〕:ヘスペレチン(CAS Number:520−33−2)をエタノールに溶解して、100μMのヘスペレチン溶液を調製した(以下、試料名を「Hesper」という。)。
〔比較試料9〕:ジオスメチン(CAS Number:520−34−3)をエタノールに溶解して、100μMのジオスメチン溶液を調製した(以下、試料名を「Diosmet」という。)。
〔比較試料10〕:エリオジクチオール(CAS Number:552−58−9)をエタノールに溶解して、100μMのエリオジクチオール溶液を調製した(以下、試料名を「Eriodic」という。)。
NHEK(正常ヒト表皮角化細胞:Normal Human Epidermal Keratinocytes)を用いて、放射線によるDNAの損傷試験を行い、各試料のDNA損傷抑制効果について評価した。評価方法は、NHEKを1ウェルあたり1.2×104個となるように、6ウェルプレートに投入した。翌日、このNHEKを各試料に1時間(37℃)暴露した後、放射線(5Gy)を照射した。
5時間後、DNAの損傷の指標となるγH2AXを免疫蛍光により発色させ、細胞あたりのγH2AXフォーサイの数をカウントした。細胞あたりのγH2AXフォーサイの数のカウントでは、試験を独立して3回行い、各試験の平均値をγH2AXフォーサイの数とした。その結果を図4に示す。
図4を参照すると、THMFは、ヤーバサンタ抽出物やステルビン等の他のフラボノイド類と比べて、優れたDNA損傷抑制効果を奏することが認められた。
NHEKを用いて、放射線による細胞の生存率の測定を行い、各試料の細胞死抑制効果について評価した。評価方法は、NHEKを1ウェルあたり1.2×104個となるように、6ウェルプレートに投入した。翌日、このNHEKを各試料に1時間(37℃)暴露した後、放射線(20Gy)を照射した。72時間後、細胞生存率を、MTTアッセイを用いて測定した。その結果を図5に示す。
図5(A)を参照すると、THMFは、ステルビン等の他のフラボノイド類と比べて、優れた細胞死抑制効果を奏することが認められた。また、図5(B)に示すように、THMFの細胞死抑制効果について、濃度依存性も確認された。
NHEKを用いて、放射線による細胞内の活性酸素の発生を確認し、THMFの活性酸素発生の抑制効果について評価した。評価方法は、NHEKを1ウェルあたり1.2×104個となるように、6ウェルプレートに投入した。翌日、このNHEKを各試料に1時間(37℃)暴露した後、放射線(20Gy)を照射した。次に、10μMのDCF-DAに30分間暴露した。活性酸素により生じたDCF(蛍光物質)を蛍光顕微鏡により撮影し、活性酸素の発生を確認した。その結果を図6に示す。なお、図6の「DAPI」は核染色による蛍光顕微鏡写真であり、「Merge」は、「DCF」と「DAPI」を合わせた写真である。
図6を参照すると、THMFで処理したNHEKでは、細胞内の活性酸素の発生が抑制されたことがわかる。
NHEKを用いて、放射線によるミトコンドリアの膜電位の低下を確認し、THMFのミトコンドリアの損傷の抑制効果について評価した。評価方法は、NHEKを1ウェルあたり1.2×104個となるように、6ウェルプレートに投入した。翌日、このNHEKを各試料に1時間(37℃)暴露した後、放射線(20Gy)を照射した。次に、Mito-Tracker red fluorescent(以下、「Mito-Tracker」という。)による染色を30分間行った。なお、Mito-Trackerは、ミトコンドリアの膜電位に依存して染色する染色色素である。染色したMito-Trackerを蛍光顕微鏡により撮影し、放射線によるミトコンドリアの膜電位の低下を確認した。その結果を図7に示す。なお、図7の「DAPI」は核染色による蛍光顕微鏡写真であり、「Merge」は、「Mito-Tracker」と「DAPI」を合わせた写真である。
図7を参照すると、THMFで処理したNHEKは、放射線照射によるミトコンドリアの膜電位の低下が抑制されており、THMFはミトコンドリアの損傷を抑制することが認められた。
Claims (5)
- 3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンを含有することを特徴とするDNA損傷抑制剤。
- 請求項1に記載されたDNA損傷抑制剤を有効成分として含有することを特徴とする医薬品、化粧料又は飲食品。
- 前記3’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシフラボンを0.0001〜1.0質量%(w/w)含有することを特徴とする請求項2に記載の医薬品、化粧料又は飲食品。
- 外用剤であることを特徴とする請求項2又は3に記載の医薬品又は化粧料。
- 前記外用剤を頭皮へ適用することを特徴とする、請求項4に記載の化粧料の使用方法(ただし、ヒトに対する医療行為を除く。)。
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