以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
図1は、本発明者らが見出した、土を含んで構成される締固め施工領域での転圧回数Nと、締固め施工領域の変形係数比(土の変形係数比)Pと、締固め施工領域の乾燥密度(土の乾燥密度)ρdとの関係の一例を示す図である。図2は、本発明者らが見出した、土を含んで構成される締固め施工領域の飽和度(土の飽和度)Srと、締固め施工領域の変形係数比(土の変形係数比)Pとの関係の一例を示す図である。ここにおいて、締固め施工領域は、例えば盛土により構成されている。また、転圧回数Nは、締固め施工領域を、図示しない締固め機械を用いて締固めた回数であり、本発明の「締固め回数」に対応するものである。また、図1及び図2において、締固め施工領域の変形係数比Pは、転圧回数Nが4回であるときの締固め施工領域の変形係数(土の変形係数)Eを基準としたものである。例えば、P=1.4であれば、それに対応する締固め施工領域の変形係数(土の変形係数)Eが、転圧回数Nが4回であるときの締固め施工領域の変形係数(土の変形係数)Eの1.4倍であることを意味する。
図1及び図2に示す例では、転圧回数Nが6回に至るまでは、転圧回数Nが増加するほど、変形係数比P(変形係数E)が上昇する。つまり、転圧回数Nが6回に至るまでは、転圧回数Nが増加するほど、締固め施工領域の剛性が高くなる。
一方、転圧回数Nが6回を超えると、転圧回数Nが増加するほど、変形係数比P(変形係数E)が低下する。つまり、転圧回数Nが6回を超えると、転圧回数Nが増加するほど、締固め施工領域の剛性が低下する。
図1に示す例では、転圧回数Nが6回に至るまでは、転圧回数Nが増加するほど、乾燥密度ρdが上昇する。一方、転圧回数Nが6回を超えると、転圧回数Nが増加しても、乾燥密度ρdはほとんど上昇せずに、ほぼ一定の値に収束する。
以上に基づいて、本発明者らは、転圧回数Nが増加するに際して、締固め施工領域の変形係数Eの低下傾向を確認すれば、乾燥密度ρdがほぼ一定の値に収束したことを確認できることを見出した。すなわち、本発明者らは、転圧回数Nが増加するに際して、締固め施工領域の剛性の低下傾向を確認すれば、締固め施工領域の乾燥密度ρdがほぼ一定の値に収束したことを確認できることを見出した。
図2に示す例では、転圧回数Nが6回に至るまでは、転圧回数Nが増加するほど、飽和度Srが上昇する。一方、転圧回数Nが6回を超えると、転圧回数Nが増加しても、飽和度Srはほとんど上昇せずに、ほぼ一定の値に収束する。
以上に基づいて、本発明者らは、転圧回数Nが増加するに際して、締固め施工領域の変形係数Eの低下傾向を確認すれば、飽和度Srがほぼ一定の値に収束したことを確認できることを見出した。すなわち、本発明者らは、転圧回数Nが増加するに際して、締固め施工領域の剛性の低下傾向を確認すれば、締固め施工領域の飽和度がほぼ一定の値に収束したことを確認できることを見出した。
従って、本発明者らは、転圧回数Nが増加するに際して、締固め施工領域の剛性(変形係数E)の低下傾向を確認すれば、締固め施工領域の乾燥密度ρd及び飽和度Srがほぼ一定の値に収束したことを確認でき、ひいては、締固め施工領域が十分に締固められていることを把握することができることを見出した。
この知見に基づいて本発明がなされた。以下、図3〜図7を用いて、本発明の第1実施形態における締固め管理システム1及び締固め機械10について説明する。
図3は、締固め機械10の概略構成を示す図である。図4は、図3に示す矢印A方向から見た締固め機械10の正面図である。図5は、図3のB−B断面図である。図6は、締固め管理システム1の概略構成を示す図である。図7は、締固め施工領域Gの剛性を測定する方法の説明図であり、転圧輪13の荷重によって締固め施工領域Gの表面(地表面)がたわんでいる状態を示す。尚、図6及び図7では、締固め施工領域Gの表面(地表面)のたわみを誇張して示している。また、図6及び図7では、測距部基準面が、回転中心線Oより上方に位置しているが、実際には、図3に示すように、回転中心線Oより下方に位置している。
締固め機械10は、締固め施工領域G上を走行して締固め施工領域Gを締固めるものである。尚、本実施形態では、締固め施工領域Gが盛土により構成される(すなわち、土を含んで構成される)として以下説明するが、締固め施工領域Gの構成はこれに限らない。
締固め機械10は、締固め施工領域Gの表面上(地表面上)を走行可能な車両であり、締固め施工領域Gの表面上を転動して締固め施工領域Gを締固める転圧輪を有する。締固め機械10は、例えば、土工用のローラである。ローラとしては、前輪が転圧輪、後輪がゴム製タイヤのタイプや、前後輪とも転圧輪のタイプ、又は、転圧輪が振動可能なタイプなど、様々な種類のものがある。本実施形態では、締固め機械10は、前輪が転圧輪で、後輪がゴム製タイヤであるものとし、かつ、転圧輪が振動可能ないわゆる振動ローラであるとして、以下説明する。
締固め機械10は、前方車体11と、後方車体12とを備える。
前方車体11は、全体として、走行方向(図3において白抜き矢印で示す方向)に延設されてなり、鉄製の転圧輪13の軸部13aを回転可能に支持する。尚、本実施形態において、転圧輪13は、後述する載荷ロール2を兼ねている。
前方車体11は、左右一対のサイドフレーム11a,11bと、上下一対のフロントフレーム11c,11dと、複数のリブ11eとを備える。サイドフレーム11a,11bは前後方向に延びており、転圧輪13の一対のプレート13c,13dに対向している。フロントフレーム11c,11dは左右方向に延びており、サイドフレーム11a,11bの前部同士を連結する。リブ11eは上下方向に延びており、フロントフレーム11c,11d同士を連結する。
後方車体12は、全体として、走行方向に延設されてなり、ゴム製タイヤからなる後輪14を回転可能に軸支すると共に、操縦室フレーム15を備える。操縦室フレーム15内には、操縦部15a、処理装置6、表示部8及び入力装置9が設けられ、操縦室フレーム15の天井部には、位置検知部7のGPSアンテナ7aが設けられている。後方車体12は、例えば、エンジン(図示せず)を備え、このエンジンを駆動源として駆動する走行用油圧モータ(図示せず)により後輪14を回転させる。このエンジンは、転圧輪13の走行用油圧モータM及び加振機構駆動用油圧モータ(図示せず)の駆動源でもある。
転圧輪13は中空円筒状に形成されてなり、例えば、上下に振動しつつ、締固め施工領域Gの表面上を転動して効果的に締固め施工領域Gを締固め可能に構成されている。転圧輪13の円筒表面は、平滑に形成されている。ここで、転圧輪13により締固められた後の締固め施工領域Gの表面には、局所的な凹凸がほぼ無く、かつ、締固め機械10の通過後に大きなうねりも無い。ゆえに、締固め施工領域Gは、転圧輪13により締固められることで、その表面が平滑化される。
転圧輪13の円筒周壁13bの内周面には、円板形状の一対のプレート13c,13dが互いに離間して固定されている。各プレート13c,13dは、円筒周壁13bの幅方向端面からそれぞれ内方に位置している。
一方のプレート13cの中央部には、軸部13aが突設されている。他方のプレート13dの中央部には、転圧輪13を回転させる走行用油圧モータMの出力部Maが取付けられている。軸部13aは、一方のサイドフレーム11aに防振ゴムKを介して取付けられた取付け板13eに、軸受部13fを介して回転可能に支持される。走行用油圧モータMのモータ部Mbは、他方のサイドフレーム11bに防振ゴムKを介して取付けられたモータ固定板13gに固定される。このようにして、軸部13aは前方車体11(サイドフレーム11a)に回転可能に支持され、走行用油圧モータMの出力部Maの回転により、転圧輪13は走行回転する。
一対のプレート13c,13dの間には、加振機構(図示せず)が挟持されている。取付け板13eには、加振機構駆動用油圧モータ(図示せず)が取付けられ、その出力軸の回転動力を、軸部13aの内部を貫通する加振機構の起振軸に伝達可能に構成されている。これにより、加振機構駆動用油圧モータが駆動すると加振機構により振動が発生して、転圧輪13が振動する。このとき、防振ゴムKが変形し、転圧輪13の回転中心線Oの前方車体11に対する位置が変動する。振動ロールにおいては、締固め施工領域Gの締固め時に、転圧輪13を例えば上下に振動させるので、この振動の前方車体11への伝達を抑制する必要がある。そのため、前述したように前方車体11と転圧輪13の間に、防振ゴムKが設けられている。
例えば、転圧輪13により締固められて平滑化された締固め施工領域Gの表面(図6及び図7に破線で示す締固め後の締固め施工領域Gの表面(地表面))上を、転圧輪13が再度転動して、締固め施工領域Gに荷重が付与されると、締固め施工領域Gの表面は図6及び図7に実線で示すようにたわむ。以下に、荷重の付与により締固め施工領域Gの表面がたわむことを利用して締固め施工領域Gの剛性を測定する剛性測定部6aを有する締固め管理システム1について、詳述する。尚、締固め施工領域Gの締固め時には、締固め機械10を走行させつつ加振機構を駆動させ、転圧輪13を振動させるが、締固め施工領域Gの剛性測定時には、加振機構を停止させた状態で、締固め機械10を走行させる。
締固め管理システム1は、載荷ロール2と、支持フレーム3と、第1測距部4と、基準測距部5と、処理装置6と、位置検知部7と、表示部8と、入力装置9とを備える。ここにおいて、第1測距部4と、基準測距部5と、処理装置6と、位置検知部7と、表示部8と、入力装置9とについては、締固め機械10に搭載されている。
載荷ロール2は、締固め施工領域Gの表面上を転動しつつ締固め施工領域Gに荷重を付加するものであり、本実施形態では転圧輪13によって構成される。つまり、転圧輪13は、締固め施工領域Gの締固め時には、締固め用のロールとして機能し、締固め施工領域Gを締固めた後の締固め施工領域Gの剛性測定時には、加振機構が停止された状態で、締固め施工領域Gに荷重を付加してたわませるロールとして機能する。
支持フレーム3は、転圧輪13の軸部13aを回転可能に支持し、走行方向に延設されてなるものであり、本実施形態では、締固め機械10の前方車体11によって構成される。
本実施形態では、防振ゴムKにより、転圧輪13の回転中心線Oの前方車体11に対する位置を可動に、転圧輪13の軸部13aを支持するように構成されている。尚、締固め施工領域Gの剛性測定時は、加振機構を停止させるが、前方車体11などの自重により、防振ゴムKは変形するため、基準離間距離D0(図6及び図7参照)の実際の値は、測定しなければ正確に求まらない。このため、本実施形態においては、第1測距部4とは別に、基準測距部5を設けている。防振ゴムKなどの可動部や構造上のあそびがなければ、基準離間距離D0は、設計値によって定まる固定値となる。
第1測距部4は、前方車体11に固定され、前方車体11の下方の締固め施工領域Gの表面(地表面)のうち、図6に示すように、転圧輪13の回転中心線Oの直下地点X0に対し走行方向に離間した第1地点X1についての前方車体11に対する離間距離D1を測定するものである。
第1測距部4は、非接触式の距離計(変位計)、例えばレーザ変位計であり、図3及び図4に示すように、例えば、前方車体11のフロントフレーム11dの下面に、ブラケット4aを介して取付けられ、鉛直下向きにレーザ光(図3、図4及び図6に破線矢印で示す)を投光可能に構成される。
第1地点X1についての前方車体11に対する離間距離D1とは、例えば、図3、図6及び図7に示すように、レーザ光を投光する箇所を含む面(以下において第1測距部4の測距部基準面という)と第1地点X1との間の距離であり、第1測距部4は、この距離に対応する信号を、離間距離D1の測定結果として、処理装置6の剛性測定部6aに出力可能に構成されている。
第1測距部4は、フロントフレーム11dにおける転圧輪13の幅方向内側、好ましくは幅方向中央に対応する位置に取付けられている。これにより、転圧輪13により締固め施工領域Gの表面に轍ができてしまう場合であっても、その影響を受けずに測定をすることができ、また、幅方向中央に対応する位置に取付けることにより、転圧輪13が幅方向中央を中心として傾いたとしても、その影響を受けずに測定をすることができる。
基準測距部5は、前方車体11に固定され、図6に示すように、回転中心線Oの直下地点X0についての前方車体11に対する離間距離である基準離間距離D0を測定するものである。
基準測距部5は、第1測距部4と同様に、例えばレーザ変位計であり、図3及び図4に示すように、前方車体11の他方のサイドフレーム11bの下面に、ブラケット5aを介して取付けられ、鉛直下向きにレーザ光(図3〜図6に破線矢印で示す)を投光可能に構成される。
直下地点X0についての前方車体11に対する基準離間距離D0とは、例えば、図3、図6及び図7に示すように、レーザ光を投光する箇所を含む面(以下において基準測距部5の測距部基準面という)と直下地点X0との間の距離であり、基準測距部5は、この距離に対応する信号を、基準離間距離D0の測定結果として、処理装置6の剛性測定部6aに出力可能に構成されている。
基準測距部5は、図5及び図7に示すように、転圧輪13の円筒周壁13bの円筒内面までの距離D’(図7参照)を測定可能に、サイドフレーム11bの下面に、ブラケット5aを介して取付けられ(図5参照)、この測定値に基づいて、基準離間距離D0を演算する。詳しくは、ブラケット5aは他方(走行用油圧モータM側)のサイドフレーム11bの下面において、回転中心線Oの方向に沿って延設して設けられ、このブラケット5aの一端部の下面に基準測距部5が設けられる。例えば、基準測距部5には、円筒周壁13bの肉厚tが記憶されており、測定した距離D’にこの肉厚tを加算した距離に対応する信号を基準離間距離D0の測定結果として、処理装置6の剛性測定部6aに出力する。
尚、本実施形態では、基準測距部5は、他方のサイドフレーム11b側で円筒内面までの距離D’を測定するものとしたが、これに限らず、一方(軸受部13f側)のサイドフレーム11a側で円筒内面までの距離D’を測定するようにしてもよい。
第1測距部4及び基準測距部5については、第1地点X1と直下地点X0の地表面標高が等しい場合、それぞれの測定結果(離間距離D1,基準離間距離D0)が等しくなるように、事前に原点補正を行う必要がある。原点補正の手法としては、例えば、サイフォンの原理を利用した水盛式の水平器を利用することができる。具体的には、上方が開口した容器を第1測距部4と基準測距部5との鉛直下方にそれぞれ配置し、これらの容器の下部を連通管により連通させると共にそれぞれの容器に液体を満たすことで、第1測距部4と基準測距部5の鉛直下方に、標高の等しい液面をそれぞれ配する。この状態で、液面までの距離をそれぞれ測定する。そして、第1測距部4と基準測距部5の測定結果が等しくなるように、それぞれの鉛直方向の位置を微調整する。このとき、第1測距部4の測距部基準面と基準測距部5の測距部基準面とは、図3及び図6に示すように、互いに面一になる。
尚、原点補正は、このように互いの測距部基準面を面一にする場合に限らず、例えば、第1測距部4の測定結果と基準測距部5の測定結果の差分値を事前に記録し、剛性測定部6aなどにおいて常にこの差分値を一方の測定結果から差し引くことで、補正を行ってもよい。
処理装置6は、剛性測定部6aと、データ作成部6bと、記憶部6cと、剛性低下判定部6dとを有し、例えば、操縦室フレーム15内の操縦部15aに隣接して配置される。
剛性測定部6aは、第1測距部4の測定結果(離間距離D1)と基準測距部5の測定結果(基準離間距離D0)との差分値により、第1地点X1のたわみ量Sと直下地点X0のたわみ量S0との差分値ΔSを算出し、このたわみ量の差分値ΔSに基づいて、締固め施工領域Gの剛性を測定するものである。換言すれば、剛性測定部6aは、第1測距部4及び基準測距部5の各測定結果(離間距離D1,基準離間距離D0)に基づいて、締固め施工領域Gの剛性を測定するものである。
剛性測定部6aは、例えば、各測距部4,5からの測定結果の信号が入力された時刻を測定時刻とし、測定時刻のデータを生成し、測定結果の信号に基づく測定データ(剛性測定データ)を、測定時刻のデータに関連付けて、記憶部6cに格納する。
ここで、剛性測定部6aによる締固め施工領域Gの剛性測定の測定原理の一例について、図6及び図7を用いて説明する。
図7に示すように、走行方向に沿って互いに離間した2地点X1,X0について、それぞれ前方車体11に対する離間距離D1及び基準離間距離D0を測定する。その差分ΔD(=D0−D1)は、2地点のたわみ量の差分値であるΔSに等しく、下記の式(1)に示す関係が成り立つ。
但し、S0は、締固め後の地表面(図7に破線で示す)上に転圧輪13が位置したときの直下地点X0におけるたわみ量を示し、Sは、このときの第1地点X1におけるたわみ量を示す。尚、基準離間距離D0は直下地点X0における測距部基準面から円筒内面までの距離D’に円筒周壁13bの肉厚tを加算した値である。
次に、締固め施工領域Gの締固め後、再度その位置に転圧輪13を転動させて、締固め施工領域Gに荷重を付与した場合において、転圧輪13が締固め施工領域Gに接地する範囲(接地範囲)は、転圧輪13の幅方向にロール幅W(図5参照)、走行方向に前後幅2bの矩形の範囲となり、この矩形範囲に転圧輪13による接地圧が一様に作用すると仮定する。この場合、図7に示すように、転圧輪13の直下地点X0に対し走行方向に距離x(但し、x>b)だけ離間した位置(つまり、第1地点X1)におけるたわみ量S(つまり、締固め後の地表面と変形後の地表面との間の距離)は、ブシネスクの弾性理論により、下記の式(2)により表すことができる。
但し、Qは転圧輪13の軸重、μは締固め施工領域Gのポアソン比、Eは締固め施工領域Gの剛性を示す変形係数をそれぞれ示し、(Iρ)1及び(Iρ)2はそれぞれb、Wを定数、xを変数とした関数である。このようにして、転圧輪13前方に生じるたわみ量Sの理論式(式(2))が得られる。
一方、転圧輪13の接地範囲(0≦x≦b)においては、締固め施工領域Gは転圧輪13の円筒外面(ロール表面)に沿って強制的にたわみ、幾何学的にたわみ分布が得られる。この場合、転圧輪13の回転中心線Oの直下地点X0におけるたわみ量S0と、x=bにおけるたわみ量Sbとの間には、下記の式(3)に示す関係が成り立つ。
但し、Rは転圧輪13のロール半径を示し、Sbは上記式(2)においてx=bとして得ることができる。このようにして、転圧輪13の直下地点X0に生じるたわみ量S0の理論式(式(3))が得られる。
ここで、式(1)におけるたわみ量の差分値ΔS(=D1−D0)は各測距部4,5によって取得でき、転圧輪13の軸重Q、転圧輪13のロール幅W及びロール半径Rは機械仕様により定まる既知の値であり、xについても第1測距部4の取付け位置であるため既知の値である。したがって、式(1)に、式(2)及び式(3)を代入して得られる式(以下において、「式A」という)において、未知数は、b、μ、Eの3つとなる。このうちポワソン比μは、一般に0.2〜0.45程度のものが多く、また、土質が分かればその概略値を文献などにより得ることができる。概略値のポワソン比を用いたとしても、式(2)に示すように、式中では1−μ2の形でのみ現れるため、概略値μの精度がEの演算精度に及ぼす影響は小さい。
従って、式Aにおいて、未知数はbとEの2つとなる。そこで、b、Eに関する条件式をもう1つ立てて、連立方程式を解くことにより、Eを特定することができる。
b、Eに関するもう一つの条件式は、例えば、2つの円柱についてのヘルツの弾性接触理論を転圧輪13と締固め施工領域Gとの接触に適用することにより得ることができる。すなわち、締固め後の締固め施工領域Gは平滑化された平面であり、その曲率半径を無限大とみなすことができ、さらに、転圧輪13の変形係数は締固め施工領域Gの変形係数Eに比べて、非常に大きいため、bは、以下の式(4)で表すことができる。
式(4)において、未知数は、式Aの場合と同様に、bとEの2つとなる。以上より、上記式Aと式(4)とを連立させて解くことにより、Eを特定することができる。このようにして、剛性測定部6aは、第1測距部4の測定結果(離間距離D1)と基準測距部5の測定結果(基準離間距離D0)との差分値により、第1地点X1のたわみ量Sと直下地点X0のたわみ量S0との差分値ΔSを算出し、このたわみ量の差分値ΔSに基づいて(換言すると、第1測距部4及び基準測距部5の各測定結果(離間距離D1,基準離間距離D0)に基づいて)、締固め施工領域Gの剛性として、締固め施工領域Gの変形係数Eを測定する。
位置検知部7は、予め定めた基準位置に対する原位置を検知するものであり、例えば、GPSを利用したものであり、GPSアンテナ7aと、GPSアンテナ7aの受信信号により原位置を演算するGPS本体(図示せず)とからなる。GPSアンテナ7aは操縦室フレーム15の天井に配置され、GPS本体は操縦室フレーム15内に配置される。GPS本体による原位置の演算結果は、位置検知データとして、受信時刻のデータと共に、記憶部6cに格納される。位置検知データとしては、2次元又は3次元の適宜の座標データを取得することができる。尚、位置検知部7は、GPSを利用したものに限らず、レーザなどにより車体11,12の位置を追尾可能な、自動追尾式システム(自動追尾式トータルステーションなど)を利用したものであってもよい。
入力装置9は操縦室フレーム15内に配置されている。入力装置9には、オペレータによって、締固め機械10による締固め施工領域Gの転圧回数Nと、転圧回数Nごとの転圧開始時刻及び転圧終了時刻とが入力される。入力装置9に入力された転圧回数Nは、転圧回数データとして、転圧回数Nごとの転圧開始時刻及び転圧終了時刻を含む転圧時刻データと共に、記憶部6cに格納される。
データ作成部6bは、記憶部6cに格納された、剛性測定部6aからの剛性測定データと、位置検知部7からの位置検知データと、入力装置9からの転圧回数データと、を関連付けて、記憶部6cに格納する。データ作成部6bは、例えば、記憶部6cに格納された、剛性測定部6aからの剛性測定データ及び測定時刻データと、位置検知部7からの位置検知データ及び受信時刻データと、入力装置9からの転圧回数データ及び転圧時刻データとを抽出し、測定時刻データと受信時刻データと転圧時刻データとが互いに一致又はほぼ一致する剛性測定データと位置検知データと転圧回数データとを関連付けて、記憶部6cに格納するように構成されている。
データ作成部6bは、例えば、関連付けた剛性測定データと位置検知データと転圧回数データとに基づき、締固め施工領域Gでの転圧回数Nと締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)の関係を示す平面分布図や空間分布図を作成することができる。つまり、データ作成部6bは、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)と、締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)との関係を示すデータを作成することができる。
データ作成部6bにて作成されるこれらデータ(前述の平面分布図や空間分布図を含む)は、記憶部6cに格納される。
剛性低下判定部6dは、データ作成部6bで作成されて記憶部6cに格納された、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)と、締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)との関係を示すデータに基づいて、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの剛性(の測定値)(変形係数E(の測定値))が低下しているか否かを判定し、その判定結果を記憶部6cに格納するように構成されている。この判定結果は、前述の位置検知データと関連付けられて、平面分布図や空間分布図に加工され得る。この平面分布図や空間分布図についても、記憶部6cに格納される。
記憶部6cに格納された各データ(剛性低下判定部6dでの判定結果を含む)は、表示部8にて表示され得る。表示部8は例えばディスプレイであり、操縦室フレーム15内に配置されている。尚、記憶部6cに格納された各データ(剛性低下判定部6dでの判定結果を含む)は、プリンタなどの印刷装置によって紙などの媒体に印刷可能であってもよい。
次に、締固め管理システム1を用いて締固め施工領域Gを締固める方法について、図1〜図7に加えて、図8を用いて説明する。
図8は、締固め施工領域Gの締固め方法を示すフローチャートである。
まず、ステップS1にて、締固め機械10によって締固め施工領域Gを締固める(すなわち、転圧を行う)。この締固め回数(転圧回数N)は1回又は2回以上の任意の回数であり得る。
次に、ステップS2では、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)を測定する。この測定時には、締固め機械10は締固め施工領域Gの表面上を走行する。この走行時には、転圧輪13の軸重Qが締固め施工領域Gに作用して、締固め施工領域Gの表面(地表面)がたわむ。
ステップS2では、剛性測定部6aは、第1測距部4の測定結果(離間距離D1)と基準測距部5の測定結果(基準離間距離D0)との差分値により、第1地点X1のたわみ量Sと直下地点X0のたわみ量S0との差分値ΔSを算出し、このたわみ量の差分値ΔSと、ブシネスクの弾性理論に基づいて得られる理論式(式A)と、ヘルツの弾性接触理論に基づいて得られる理論式(式(4))とを介して、締固め施工領域Gの剛性としての変形係数Eを測定する。詳しくは、剛性測定部6aには、上記式Aと式(4)との連立2次方程式の解(b、E)を演算可能なプログラムが組み込まれており、このプログラムにより、Eを算出する。
尚、転圧輪13におけるたわみは、後輪14の荷重によっても生じるが、後輪14は転圧輪13から遠方に離間しているため、後輪14の荷重による転圧輪13におけるたわみ量は無視できるほどである。但し、後輪14の荷重による転圧輪13におけるたわみを考慮することにより、締固め施工領域Gの変形係数Eの測定精度をより一層高めることができる。具体的には、転圧輪13の直下地点X0において後輪14の軸重によって生じるたわみ量を式(2)と同様にして定式化し、その定式化されたたわみ量を式(3)のS0に加算すると共に、同じく第1地点X1において後輪14の軸重によって生じる定式化されたたわみ量を式(2)のSに加算すればよい。後輪14が複数ある場合は、すべての後輪について加算すればよい。
また、ステップS2では、データ作成部6bにて前述のような様々なデータが作成されて、これらデータが記憶部6cに格納される。
次に、ステップS3(剛性低下判定工程)では、剛性低下判定部6dにて、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定する。ステップS3では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)とに基づいて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定する。
ステップS3では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)とを比較することによって、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定してもよい。
又は、ステップS3では、例えば、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)が、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)よりも所定割合以上減少しているか否かを判定することで、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定してもよい。ここで、前述の所定割合は、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性の測定値(変形係数Eの測定値)の10%であるが、前述の所定割合はこれに限らない。
ステップS3にて、締固め施工領域Gの剛性が低下していないと判定された場合には、その判定結果を表示部8に表示する。オペレータは、締固め施工領域Gの剛性が低下していないことを表示部8で確認すると、転圧不足であると判断し、ステップS1に進み、締固め機械10によって締固め施工領域Gを締固める(すなわち、転圧を行う)。
ステップS3にて、締固め施工領域Gの剛性が低下していると判定された場合には、その判定結果を表示部8に表示する。オペレータは、締固め施工領域Gの剛性が低下していることを表示部8で確認すると、転圧が十分に行われたと判断し、ステップS4に進み、締固め機械10による締固め施工領域Gの締固めを終了する(すなわち、転圧を終了する)。
この後、締固め機械10及び締固め管理システム1を次の新たな締固め施工領域G(別の層又は別のレーンなど)に移動して、前述と同様に、当該新たな締固め施工領域Gを締固める。
図9は、表示部8によりリアルタイムに表示される締固め施工領域Gのブロックごとの締固め状況の一例を示す図である。この例では、締固め施工領域Gが例えば1m四方のメッシュ状に複数のブロックに分けられている。この例では、各ブロックごとに、剛性の測定と、剛性が低下しているか否かの判定とが行われる。
図9に示す例では、締固め施工領域Gのうち、ステップS3にて剛性が低下していると判定されたブロックが斜線で表示されている。締固め施工領域Gのうち、ステップS3にて剛性が低下していないと判定されたブロック(図9中のブロック「イ−3」,「イ−4」,「ウ−4」,「オ−7」,「カ−7」)は白抜きで表示されており、これらブロックについては、転圧が不足していることがオペレータによって容易に把握できる。ゆえに、オペレータは、締固め機械10を用いて、転圧が不足しているブロックのみを再度転圧することができる。
このようにして、オペレータは、ステップS3の判定結果を、表示部8を介して、視覚的に、かつ、リアルタイムに確認しながら締固め施工を行うことができるため、効率的に締固め施工を行うことができる。
本実施形態によれば、締固め施工領域Gを締固める方法は、締固め施工領域Gでの締固め回数(転圧回数N)の増加に伴って締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定する剛性低下判定工程(ステップS3)を含む。剛性低下判定工程(ステップS3)にて締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していないと判定した場合に、締固め施工領域Gの締固めを継続する。剛性低下判定工程(ステップS3)にて締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していると判定した場合に、締固め施工領域Gの締固めを終了する(ステップS4)。この判定手法を用いて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の低下傾向を確認すれば、前述の室内突固め試験を行うことなく、締固め施工領域Gが十分に締固められていることを把握することができる。ゆえに、締固め施工領域Gの締固め状態を正確に把握することができる。
また本実施形態によれば、剛性低下判定工程(ステップS3)では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値とに基づいて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定する。これにより、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の低下傾向を簡易に把握することができる。
また本実施形態によれば、剛性低下判定工程(ステップS3)では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値とを比較することによって、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定することができる。ここにおいて、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値よりも大きい場合には、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していると判定することができる。また、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値以下である場合には、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していないと判定することができる。
また本実施形態によれば、剛性低下判定工程(ステップS3)では、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値よりも所定割合以上減少しているか否かを判定することで、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定することができる。ここにおいて、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値よりも所定割合以上減少している場合には、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していると判定することができる。また、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値よりも所定割合以上減少していない場合には、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していないと判定することができる。ここにおける所定割合とは、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値を基準とする所定の割合である。
また本実施形態によれば、締固め施工領域Gは、締固め施工領域G上を走行可能な締固め機械10により締固められる。締固め機械10によって下方にたわむ締固め施工領域Gの表面のたわみ量S,S0に基づいて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)を測定する(図7参照)。これにより、締固め機械10を走行させつつ、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)を連続的に測定することができる。
また本実施形態によれば、締固め施工領域Gは、盛土により構成される。ゆえに、本実施形態の締固め方法を盛土の締固めに用いることができる。
また本実施形態によれば、締固め管理システム1は、締固め施工領域Gの締固めを管理するシステムである。締固め管理システム1は、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)を測定する剛性測定部6aと、締固め施工領域Gでの締固め回数(転圧回数N)と締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値との関係を示すデータを作成するデータ作成部6bと、該データに基づいて、締固め施工領域Gでの締固め回数(転圧回数N)の増加に伴って締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定する剛性低下判定部6dと、剛性低下判定部6dでの判定結果を表示する表示部8とを有する。この締固め管理システム1を用いて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の低下傾向を確認すれば、前述の室内突固め試験を行うことなく、締固め施工領域Gが十分に締固められていることを把握することができる。ゆえに、締固め施工領域Gの締固め状態を正確に把握することができる。
また本実施形態によれば、剛性低下判定部6dでは、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値とに基づいて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定する。これにより、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の低下傾向を簡易に把握することができる。
また本実施形態によれば、剛性低下判定部6dでは、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値とを比較することによって、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定することができる。ここにおいて、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値よりも大きい場合には、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していると判定することができる。また、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値以下である場合には、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していないと判定することができる。
また本実施形態によれば、剛性低下判定部6dでは、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値よりも所定割合以上減少しているか否かを判定することで、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定することができる。ここにおいて、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値よりも所定割合以上減少している場合には、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していると判定することができる。また、今回の締固め時における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値が、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値よりも所定割合以上減少していない場合には、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していないと判定することができる。ここにおける所定割合とは、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定値を基準とする所定の割合である。
また本実施形態によれば、締固め施工領域Gは、締固め施工領域G上を走行可能な締固め機械10によって締固められる。剛性測定部6aは、締固め機械10に搭載されている。剛性測定部6aは、締固め機械10によって下方にたわむ締固め施工領域Gの表面のたわみ量S,S0に基づいて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)を測定する(図7参照)。これにより、締固め機械10を走行させつつ、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)を連続的に測定することができる。
また本実施形態によれば、表示部8は、締固め機械10に搭載されている。これにより、オペレータは、表示部8を介して、視覚的に、かつ、リアルタイムに確認しながら締固め施工を行うことができるため、効率的に締固め施工を行うことができる。
図10は、本発明の第2実施形態における締固め施工領域Gの締固め方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態では、ステップS11において、前述のステップS2と同様に、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)を測定すると共に、締固め施工領域Gの飽和度Sr(水の飽和度)を測定する。この飽和度Srの測定には周知の手法が用いられる。
また、ステップS11では、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)と、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)と、締固め施工領域Gの飽和度Srとの関係を示すデータが作成され得る。
次に、前述の第1実施形態と同様に、ステップS3では、剛性低下判定部6dにて、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定する。
ステップS3にて、締固め施工領域Gの剛性が低下していないと判定された場合には、その判定結果を表示部8に表示する。オペレータは、締固め施工領域Gの剛性が低下していないことを表示部8で確認すると、転圧不足であると判断し、ステップS1に進み、締固め機械10によって締固め施工領域Gを締固める(すなわち、転圧を行う)。
ステップS3にて、締固め施工領域Gの剛性が低下していると判定された場合には、その判定結果を表示部8に表示して、ステップS12(飽和度上昇鈍化判定工程)に進む。
ステップS12では、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化しているか否かを判定する。ステップS12では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値とに基づいて、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化しているか否かを判定する。
ステップS12では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値とを比較することによって、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化しているか否かを判定してもよい。
又は、ステップS12では、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値から今回の締固め時における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値までの増加度合いが所定割合未満であるか否かを判定することで、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化しているか否かを判定してもよい。ここで、前述の所定割合は、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値の10%であるが、前述の所定割合はこれに限らない。
ステップS12にて、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化していないと判定された場合には、オペレータは、転圧不足であると判断し、ステップS1に進み、締固め機械10によって締固め施工領域Gを締固める(すなわち、転圧を行う)。
ステップS12にて、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化していると判定された場合には、オペレータは、転圧が十分に行われたと判断し、ステップS4に進み、締固め機械10による締固め施工領域Gの締固めを終了する(すなわち、転圧を終了する)。
特に本実施形態によれば、締固め施工領域Gを締固める方法は、締固め施工領域Gでの締固め回数(転圧回数N)の増加に伴って締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化しているか否かを判定する飽和度上昇鈍化判定工程(ステップS12)を更に含む。剛性低下判定工程(ステップS3)にて締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していると判定し、かつ、飽和度上昇鈍化判定工程(ステップS12)にて締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化していると判定した場合に、締固め施工領域Gの締固めを終了する(図10参照)。ゆえに、締固め管理において、主として、締固め施工領域Gの剛性の低下傾向を確認し、補助的に、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇の鈍化を確認することで、確実に締固め管理を行うことができる。
また本実施形態によれば、飽和度上昇鈍化判定工程(ステップS12)では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値とに基づいて、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化しているか否かを判定する。これにより、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇の鈍化傾向を簡易に把握することができる。
また本実施形態によれば、飽和度上昇鈍化判定工程(ステップS12)では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値から今回の締固め時における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値までの増加度合いが所定割合未満であるか否かを判定することで、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化しているか否かを判定することができる。ここにおいて、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値から今回の締固め時における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値までの増加度合いが所定割合未満である場合には、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化していると判定することができる。また、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値から今回の締固め時における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値までの増加度合いが所定割合未満ではない場合には、締固め施工領域Gの飽和度Srの上昇が鈍化していないと判定することができる。ここにおける所定割合とは、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの飽和度Srの測定値を基準とする所定の割合である。
図11は、本発明の第3実施形態における締固め施工領域Gの締固め方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態では、ステップS21において、前述のステップS2と同様に、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)を測定すると共に、締固め施工領域Gの密度(本実施形態では乾燥密度ρd)を測定する。この乾燥密度ρdの測定には周知の手法が用いられる。
また、ステップS21では、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)と、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)と、締固め施工領域Gの乾燥密度ρdとの関係を示すデータが作成され得る。
次に、前述の第1実施形態と同様に、ステップS3では、剛性低下判定部6dにて、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下しているか否かを判定する。
ステップS3にて、締固め施工領域Gの剛性が低下していないと判定された場合には、その判定結果を表示部8に表示する。オペレータは、締固め施工領域Gの剛性が低下していないことを表示部8で確認すると、転圧不足であると判断し、ステップS1に進み、締固め機械10によって締固め施工領域Gを締固める(すなわち、転圧を行う)。
ステップS3にて、締固め施工領域Gの剛性が低下していると判定された場合には、その判定結果を表示部8に表示して、ステップS22(密度上昇鈍化判定工程)に進む。
ステップS22では、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの上昇が鈍化しているか否かを判定する。ステップS22では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの測定値とに基づいて、締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの上昇が鈍化しているか否かを判定する。
ステップS22では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの測定値とを比較することによって、締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの上昇が鈍化しているか否かを判定してもよい。
又は、ステップS12では、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの測定値から今回の締固め時における締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの測定値までの増加度合いが所定割合未満であるか否かを判定することで、締固め施工領域Gでの転圧回数N(締固め回数)の増加に伴って締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの上昇が鈍化しているか否かを判定してもよい。ここで、前述の所定割合は、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの測定値の10%であるが、前述の所定割合はこれに限らない。
ステップS22にて、締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの上昇が鈍化していないと判定された場合には、オペレータは、転圧不足であると判断し、ステップS1に進み、締固め機械10によって締固め施工領域Gを締固める(すなわち、転圧を行う)。
ステップS22にて、締固め施工領域Gの乾燥密度ρdの上昇が鈍化していると判定された場合には、オペレータは、転圧が十分に行われたと判断し、ステップS4に進み、締固め機械10による締固め施工領域Gの締固めを終了する(すなわち、転圧を終了する)。
特に本実施形態によれば、締固め施工領域Gを締固める方法は、締固め施工領域Gでの締固め回数(転圧回数N)の増加に伴って締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇が鈍化しているか否かを判定する密度上昇鈍化判定工程(ステップS22)を更に含む。剛性低下判定工程(ステップS3)にて締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下していると判定し、かつ、密度上昇鈍化判定工程(ステップS22)にて締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇が鈍化していると判定した場合に、締固め施工領域Gの締固めを終了する(図11参照)。ゆえに、締固め管理において、主として、締固め施工領域Gの剛性の低下傾向を確認し、補助的に、締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇の鈍化を確認することで、確実に締固め管理を行うことができる。
また本実施形態によれば、密度上昇鈍化判定工程(ステップS22)では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値と、今回の締固め時における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値とに基づいて、締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇が鈍化しているか否かを判定する。これにより、締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇の鈍化傾向を簡易に把握することができる。
また本実施形態によれば、密度上昇鈍化判定工程(ステップS22)では、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値から今回の締固め時における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値までの増加度合いが所定割合未満であるか否かを判定することで、締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇が鈍化しているか否かを判定することができる。ここにおいて、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値から今回の締固め時における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値までの増加度合いが所定割合未満である場合には、締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇が鈍化していると判定することができる。また、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値から今回の締固め時における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値までの増加度合いが所定割合未満ではない場合には、締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇が鈍化していないと判定することができる。ここにおける所定割合とは、例えば、過去の締固め時(例えば前回の締固め時)における締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の測定値を基準とする所定の割合である。
尚、前述の第2実施形態において、本実施形態と同様に、補助的に、締固め施工領域Gの密度(乾燥密度ρd)の上昇の鈍化を確認することで、確実に締固め管理を行うようにしてもよいことは言うまでもない。
図12は、本発明の第4実施形態における締固め施工領域Gの締固め方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態では、まず、ステップS51(締固め回数予想工程)にて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下し始める転圧回数N(締固め回数)を予想する。換言すれば、ステップS51(締固め回数予想工程)にて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下し始める転圧回数N(締固め回数)の予想値を求める。この予想値を求める際には、例えば、締固め施工領域Gの限定された一部での事前の施工実験の結果や、過去の施工実績などが考慮され得る。
次に、ステップS52では、締固め施工領域Gで本施工を行う。具体的には、前述のステップS1〜S4が実施される。ここにおいて、ステップS51以降の最初のステップS1では、前述の予想値より所定回数分少ない転圧回数N(締固め回数)の転圧が行われ、これに続くステップS2にて、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定が行われる。従って、ステップS51に続くステップS52については、ステップS51にて求められた前述の予想値より所定回数分少ない転圧回数N(締固め回数)から締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定が開始される。ここで、前述の所定回数は例えば2回であるが、所定回数はこれに限らない。
特に本実施形態によれば、締固め施工領域Gを締固める方法は、締固め施工領域Gの締固めを開始するに先立って(ステップS52に先立って)、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)が低下し始める締固め回数(転圧回数N)の予想値を求める締固め回数予想工程(ステップS51)を更に含む。ステップS52にて締固め施工領域Gの締固めを開始した後に、前記予想値より所定回数分少ない締固め回数(転圧回数N)から締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定を開始する。これにより、締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の低下傾向を確認するための締固め施工領域Gの剛性(変形係数E)の測定の頻度を必要最小限にすることができるので、締固め施工領域Gの締固め施工を効率良く行うことができる。
尚、本実施形態における締固め施工領域Gの締固め方法に、前述の第2実施形態及び第3実施形態における締固め施工領域Gの締固め方法を適用することが可能であることは言うまでもない。
前述の第1〜第4実施形態では、本発明における「締固め施工領域の剛性」の一例として締固め施工領域Gの変形係数Eを挙げて説明したが、本発明における「締固め施工領域の剛性」は、前述の変形係数Eに限らない。例えば、締固め施工領域Gのバネ定数又は反力係数であってもよい(特許文献1の段落0007参照)。
また、転圧回数N(締固め回数)の増加に伴う締固め施工領域Gの剛性の低下を確認する手法については、前述の第1〜第4実施形態に開示したものに限らない。例えば、落球探査法における接触時間の増大、CBR試験におけるCBR値の低下、平板載荷試験におけるK30値の低下、コーン貫入試験におけるコーン指数の低下、振動ローラ加速度応答法におけるCCV(加速度応答値)の変化などに基づいて、締固め施工領域Gの剛性の低下を確認してもよい。
前述の第1〜第4実施形態では、締固め施工領域Gが土質材料を含んで構成される例を説明したが、これに加えて、又は、これに代えて、締固め施工領域Gがコンクリート材料を含んで構成されてもよい。例えば、締固め施工領域Gは、振動ローラで締固めを行う超硬練りのダムコンクリートであるRCDコンクリート(Roller Compacted Dam Concrete)を含んで構成され得る。又は、例えば、締固め施工領域Gは、砂礫などの岩石質材料に水とセメントとを配合して生成されたCSG(Cemented Sand and Gravel)を含んで構成され得る。
また、締固め施工領域Gがコンクリート材料を含んで構成される場合には、前述の飽和度Srに代わる指標として、空気量(コンクリート材料中の空気量)が用いられ得る。締固め施工領域Gがコンクリート材料を含んで構成される場合においては、締固め回数(例えば転圧回数N)が増加するに際して、締固め施工領域Gの剛性(例えば変形係数E)の低下傾向を確認すれば、締固め施工領域Gの空気量の低下が収まって当該空気量がほぼ一定の値に収束したことを確認でき、ひいては、締固め施工領域Gが十分に締固められていることを把握することができる。
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。