以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
以下では、本発明の一実施形態に係るワッシャ10の製造方法及びワッシャ10について説明する。
図8に示すワッシャ10は、適宜荷重を受けるための部材である。ワッシャ10は、平面視半円状(円弧状)に形成される。ワッシャ10は、二種類の金属材料を貼り合わせたバイメタル材によって構成される。本実施形態に係るワッシャ10の製造方法は、このようなワッシャ10を製造するものである。
図1に示すように、本実施形態に係るワッシャ10の製造方法では、まず、準備工程が行われる(ステップS10)。準備工程は、図2に示す板状部材Nを準備する工程である。図2に示す状態において、板状部材Nは、その板面を上下方向に向けて配置されると共にその長手方向を左右方向に向けて配置される。板状部材Nは、裏金20及び摺動部30からなるバイメタル材によって構成される。
裏金20は、後述する摺動部30を固定するための部材である。裏金20は、ワッシャ10の上部に配置される。裏金20は、例えば、鉄等によって構成される。
摺動部30は、他の部材に対して摺動するための部分である。摺動部30は、ワッシャ10の下部(裏金20の下方)に配置され、裏金20に貼り合わされる。摺動部30は、その摩擦係数が裏金20の摩擦係数よりも低い金属材料、例えば、アルミニウム合金等によって構成される。
図1に示すように、準備工程が行われた後で、切断工程が行われる(ステップS20)。切断工程は、板状部材Nを切断する工程である。
図3に示すように、切断工程では、レーザ切断装置L1から板状部材Nの裏金20にレーザL2を照射すると共にアシストガスを噴射する。これにより、レーザ切断装置L1は、板状部材Nを溶融させると共に溶融金属を吹き飛ばす。レーザ切断装置L1は、このようなレーザL2の照射及びアシストガスの噴射を行いながら略左右方向に移動する。これにより、レーザ切断装置L1は、板状部材Nの左端部から右端部までを切断して板状部材Nの一部を切り離す。これによって、板状部材Nは、複数(本実施形態では七個)の長手部材N1と二個のスクラップS1とに分けられる。なお、本実施形態においては、前記アシストガスとして、空気が採用されている。
図4から図6までに示すように、切断工程で切断された長手部材N1は、その長手方向を左右方向に向けて配置されると共に、その短手方向を前後方向に向けて配置される。なお、図4から図7までにおいては、後述する摺動部30を上に向けた状態の長手部材N1を示している。長手部材N1は、その長手方向幅(左右方向幅)が板状部材Nの長手方向幅(左右方向幅)と同一幅となる。長手部材N1(裏金20及び摺動部30)は、前側波型部40及び後側波型部50、前側溶融部60、後側溶融部70、前側角部80及び後側角部90を具備する。
裏金20及び摺動部30は、略左右方向に延びるように形成されると共に互いに同一形状となるように形成される。また、裏金20及び摺動部30は、その前側面及び後側面がレーザL2による切断面となっている。
前側波型部40は、長手部材N1(裏金20及び摺動部30)の前側面に形成される。前側波型部40は、山部41及び谷部42を有する。
山部41は、長手部材N1の前側面において、前方向(短手方向)に突出するように形成される部分である。山部41の先端部(頂部)41aは、平面視略弧状に形成される。山部41は、長手部材N1の上端部から下端部(摺動部30の上側面から裏金20の下側面)までに亘って形成される。山部41は、後述する谷部42を挟んで左右方向に複数(本実施形態では十一個)形成される。
谷部42は、長手部材N1の前側面において、後方向(短手方向)に窪むように形成される部分である。谷部42は、山部41と左右方向に連続するように複数(本実施形態では十二個)形成される。左右中途部に配置される谷部42(左端部及び右端部を除く谷部42)は、山部41の外形と略同一の外形(左右方向幅、前後方向幅及び先端部(底部)42aの形状が略同一)となるように形成される。左端部に配置される谷部42は、左右中途部に配置される谷部42の左半分が切り落とされたような平面視略弧状に形成される。また、右端部に配置される谷部42は、左右中途部に配置される谷部42の右半分が切り落とされたような平面視略弧状に形成される。谷部42は、長手部材N1の上端部から下端部までに亘って形成される。
このように構成される前側波型部40は、長手部材N1の前側面における左端部から右端部に亘って形成される。これによって、長手部材N1の前側面は、全面に亘って山部41及び谷部42が交互に連続して形成され、平面視略正弦波状に形成される。
後側波型部50は、長手部材N1の後側面に形成される。後側波型部50は、山部51及び谷部52を有する。
山部51は、長手部材N1の後側面において、後方向(短手方向)に突出するように形成される部分である。山部51は、後述する後側波型部50の谷部52を挟んで左右方向に複数(本実施形態では十二個)形成される。左右中途部に配置される山部51(左端部及び右端部を除く山部51)は、前側波型部40の谷部42の外形と略同一の外形(左右方向幅、前後方向幅及び先端部(頂部)51aの形状が略同一)となるように形成される。左端部に配置される山部51は、左右中途部に配置される山部51の左半分が切り落とされたような平面視略弧状に形成される。また、右端部に配置される山部51は、左右中途部に配置される山部51の右半分が切り落とされたような平面視略弧状に形成される。山部51は、長手部材N1の上端部から下端部までに亘って形成される。
山部51は、前側波型部40の谷部42の後方にそれぞれ配置される。すなわち、山部51は、前側波型部40の山部41に対して左右方向にずれた位置に配置される。
谷部52は、長手部材N1の後側面において、前方向(短手方向)に窪むように形成される部分である。谷部52は、前側波型部40の山部41の外形と略同一の外形(左右方向幅、前後方向幅及び先端部(底部)52aの形状が略同一)となるように形成される。谷部52は、山部51と左右方向に連続するように複数(本実施形態では十一個)形成される。谷部52は、長手部材N1の上端部から下端部(上側面から下側面)までに亘って形成される。
谷部52は、前側波型部40の山部41の後方にそれぞれ配置される。すなわち、谷部52は、前側波型部40の谷部42に対して左右方向にずれた位置に配置される。
このように構成される後側波型部50は、長手部材N1の後側面における左端部から右端部までに亘って形成される。これによって、長手部材N1の後側面は、全面に亘って後側波型部50の山部51及び谷部52が交互に連続して形成され、平面視略正弦波状に形成される。
また、長手部材N1は、前側波型部40の山部41と後側波型部50の谷部52とが左右方向における位置を合わせて配置されると共に、前側波型部40の谷部42と後側波型部50の山部51とが左右方向における位置を合わせて配置される。これにより、長手部材N1は、前後方向幅W(前側面から後側面までの前後方向に沿った距離)が常に一定となるような平面視略正弦波状に形成される。こうして、長手部材N1は、前側面及び後側面が略同一形状に形成される。
また、前側波型部40の谷部42から後側波型部50の谷部52までの前後方向に沿った距離W2(図5(b)参照)は、前後方向幅Wの半分程度となるように形成される。これにより、本実施形態に係る長手部材N1は、その体積を減らして軽量化することができる。
図6に示す前側溶融部60は、長手部材N1の外縁部分の一部、本実施形態では摺動部30の前端部が溶融されることで(より詳細には溶融後に常温に戻されることで)形成される。摺動部30の前端部が溶融されると、当該溶融部分において、裏金20と摺動部30とが強固に密着される(図6(b)に示す密着向上範囲R60参照)。このように、前側溶融部60は、長手部材N1の前端部で裏金20と摺動部30とを接合する。前側溶融部60は、摺動部30の前端部の全域に(左端部から右端部に亘って)形成される。本実施形態に係る前側溶融部60は、切断工程において板状部材NがレーザL2で切断されることで形成される。
前述の如く、本実施形態に係る切断工程では、板状部材Nを切断する際のアシストガスとして、空気が採用されている。これによって、切断工程では、板状部材Nの溶融金属をアシストガスと反応させて酸化させている。これにより、切断後の切断面(前側波型部40)の裏金20及び摺動部30の色は、切断前の色とは異なる色となるように形成される。
また、前側溶融部60は、板状部材NがレーザL2で切断されることで熱処理が施されてその硬度が摺動部30の他の部分(摺動部30のうち、前側溶融部60及び後述する後側溶融部70を除く部分)の硬度よりも高くなっている。例えば、摺動部30がAl−Sn系合金によって構成されている場合、元の硬さ(切断前の硬さ)がHv35〜55程度であるのに対し、前側溶融部60の硬さ(切断後の硬さ)は、Hv70〜90となる。
後側溶融部70は、摺動部30の後端部が溶融されることで(より詳細には溶融後に常温に戻されることで)形成される。これによって、摺動部30の後端部において、裏金20と摺動部30とが強固に密着される(図6(b)に示す密着向上範囲R70参照)。後側溶融部70は、摺動部30の後端部の全域に形成される点を除いて、前側溶融部60と同様に構成される。すなわち、切断後の切断面(後側波型部50)の裏金20及び摺動部30の色は、切断前の色とは異なる色となるように形成される。
前側角部80は、側面断面視略直角状に形成される部分である。前側角部80は、摺動部30の外縁(前上端部、後上端部、左上端部及び右上端部)の一部、本実施形態では前上端部に形成される。より詳細には、前側角部80は、摺動部30の前上端部の全域(左端部から右端部に亘って)形成される。本実施形態に係る前側角部80は、断面視においてその曲率半径が0.05mm以下となるように形成される。本実施形態に係る前側角部80は、板状部材NがレーザL2で切断されることで形成される。
後側角部90は、摺動部30の後上端部の全域に形成される点を除いて、前側角部80と同様に構成される。
図1に示すように、切断工程が行われた後で、成形工程が行われる(ステップS30)。成形工程は、長手部材N1を所望の形状に成形する工程である。本実施形態に係る長手部材N1は、成形工程において塑性変形されることで円弧状に成形される。
より詳細には、成形工程において、長手部材N1は、所定の治具によって拘束される。その後、図7に示すように、右部及び左部が後側(長手部材N1の後方に配置される点C側)に曲げられる。これによって、長手部材N1は、点Cを中心とした平面視半円状に塑性変形される。こうして長手部材N1は、ワッシャ10として形成される。このようなワッシャ10の外周側には、前側波型部40、前側溶融部60及び前側角部80が配置される。また、ワッシャ10の内周側には、後側波型部50、後側溶融部70及び後側角部90が配置される。
このような成形工程が行われるとき、前側波型部40の山部41及び谷部42は、ワッシャ10の周方向に伸張される。また、このとき、谷部42(特に、先端部42a)に応力が作用し易い。このため、図7及び図8に示すように、ワッシャ10の外周面(長手部材N1の前側面)においては、谷部42が主に伸張されることとなる。
なお、図8に破線で示す仮想線L41は、前側波型部40の山部41の先端部41aを結ぶ曲線である。図8に二点鎖線で示す仮想線L42は、前側波型部40の谷部42の先端部42aを結ぶ曲線である。図8に破線で示す仮想線L51は、後側波型部50の山部51の先端部51aを結ぶ曲線である。図8に二点鎖線で示す仮想線L52は、後側波型部50の谷部52の先端部52aを結ぶ曲線である。仮想線L41・L42・L51・L52は、点Cを中心とする平面視半円状に形成される。
また、図8に示す半径R41は、仮想線L41の半径(点Cから前側波型部40の山部41の先端部41aまでの径方向に沿った距離)である。図8に示す半径R42は、仮想線L42の半径(点Cから前側波型部40の谷部42の先端部42aまでの径方向に沿った距離)である。図8に示す半径R51は、仮想線L51の半径(点Cから後側波型部50の山部51の先端部51aまでの径方向に沿った距離)である。図8に示す半径R52は、仮想線L52の半径(点Cから後側波型部50の谷部52の先端部52aまでの径方向に沿った距離)である。
長手部材N1は、前側波型部40の谷部42を具備することで、当該谷部42の先端部42a近傍が最も変形し易くなる。すなわち、成形工程においては、山部41ではなく、当該谷部42の先端部42a近傍が主に変形(伸張)することになる。当該部分(谷部42の先端部42a近傍)に着目すると、谷部42を具備することで、成形工程における変形の曲率半径が、仮想線L41の半径R41ではなく、当該半径R41よりも小さな仮想線L42の半径R42となる。すなわち、長手部材N1は、外周側の曲率を大きくすることができる。このような成形工程が行われることによって、谷部42は、大きく開口した状態(成形工程が行われる前よりも広がった状態)となる。
また、成形工程が行われるとき、後側波型部50の山部51及び谷部52は、ワッシャ10の周方向に圧縮される。また、このとき、谷部52(特に、先端部52a)に応力が作用し易い。このため、長手部材N1の後側面においては、谷部52が主に圧縮されることとなる。
長手部材N1は、後側波型部50の谷部52を具備することで、当該谷部52の先端部52a近傍が最も変形し易くなる。すなわち、成形工程においては、山部51ではなく、当該谷部52の先端部52a近傍が主に変形(圧縮)することになる。当該部分(谷部52の先端部52a近傍)に着目すると、谷部52を具備することで、成形工程における変形の曲率半径が、仮想線L51の半径R51ではなく、当該半径R51よりも大きな仮想線L52の半径R52となる。すなわち、長手部材N1は、内周側の曲率を小さくすることができる。このような成形工程が行われることによって、谷部52は、小さく開口した状態(成形工程が行われる前よりも縮んだ状態)となる。
以上のように、本実施形態に係るワッシャ10は、その外周側と内周側との曲率の差を小さくすることができる。これによって、長手部材N1は、細い部材(前後方向幅Wよりも短い前後方向幅を有する平面視矩形状の部材)を曲げ変形させる場合のように、長手部材N1を簡単に(小さい力で)曲げ変形させることができる。
また、ワッシャ10は、その外周面及び内周面に前側波型部40及び後側波型部50の山部41・51が形成されているため、摺動面積(摺動部30の上側面の面積)を増大させることができる。このため、ワッシャ10は、谷部42・52が形成されて摺動面積が減少しても、山部41・51によって摺動面積の減少を抑制することができる。
また、図7に示すように、ワッシャ10(長手部材N1)は、その内周面(後側面)に後側波型部50の谷部52が形成されることによって、内周面(後側面)に隙間を設けている。これにより、ワッシャ10(長手部材N1)は、成形工程時(圧縮時)の逃げ代を確保することができる。このため、成形工程において、長手部材N1の後側面を無理なく曲げ変形させることができる。このため、ワッシャ10は、内周側の端部が上下に盛り上がることを抑制できるため、品質を向上することができる。
以上によってワッシャ10の製造が完了する。当該ワッシャ10は、裏金20、摺動部30、前側波型部40、後側波型部50、前側溶融部60、後側溶融部70、前側角部80及び後側角部90を具備することとなる。裏金20及び摺動部30は、互いに同一形状となるように形成される。また、摺動部30は、裏金20に対してその外縁が一致するように貼り合わされた状態となる。
上記のように製造された一の半円状のワッシャ10は、他の半円状のワッシャ10の周方向端部と突き合わされる。そして、前記一の半円状のワッシャ10は、レーザ溶接等の適宜の手段によって他の半円状のワッシャ10と接合される。当該接合されたワッシャ10は、円環状に形成され、適宜の部材(例えば、軸部材を支持するハウジング等)に設けられる。この状態で、ワッシャ10は荷重(例えば、前記軸部材からの軸方向の荷重)を受けることができる。また、ワッシャ10の上側面は、前記軸部材に対して摺動することができる。また、ワッシャ10の前側波型部40及び後側波型部50の谷部42・52には、所定の潤滑油路から潤滑油が供給される。潤滑油は、谷部42・52で保持される。
これによれば、ワッシャ10は、前側波型部40及び後側波型部50の谷部42・52を油溜まりとして機能させることができるため、潤滑性を向上することができる。特に、ワッシャ10は、大きく開口した谷部42で多くの潤滑油を保持することができるため、潤滑性を効果的に向上することができる。
本実施形態に係るワッシャ10の製造方法を用いることで、切断工程において長手部材N1を前後方向に並べた状態で板状部材Nを切断することができる(図3参照)。このため、本実施形態に係るワッシャ10の製造方法によれば、板状部材Nを略隙間なく切断することができ、材料歩留まりを向上することができる(図3に示すスクラップS1及び図12に示す板状部材をリング状に打ち抜いた場合のスクラップS901参照)。
特に、本実施形態に係る長手部材N1は、その前側面と後側面とが略同一形状に形成されるため、図3に示すように、左右方向の位置を合わせた状態で、他の長手部材N1に対して前後方向に隙間なく並ぶことができる。従って、切断工程で板状部材Nを切断する際に、長手部材N1の間に前後方向に沿った隙間を空ける必要がなくなるため、材料歩留まりを効果的に向上することができる。
また、長手部材N1は、左右方向の位置を合わせた状態で、他の長手部材N1に対して前後方向に隙間なく並ぶことができるため、長手部材N1の長手方向幅と同一幅を有する板状部材Nを幅方向(同一幅を有する方向、本実施形態では左右方向)に切断するだけで、板状部材Nから複数の長手部材N1を得ることができる。これにより、板状部材Nの左端部及び右端部を無駄にすることなく、板状部材Nを切断することができる。このため、材料歩留まりを効果的に向上することができる。
本実施形態に係る長手部材N1(ワッシャ10)は、その上側面と下側面とで金属材料が異なるバイメタル材によって構成されている。この場合、長手部材N1は、その上側面(摺動部30)と下側面(裏金20)とで曲げ荷重に対する変形量(伸張量及び圧縮量)が異なる構成となる。このような長手部材N1を曲げる場合、長手部材N1の前側面が大きく伸張されると共に後側面が大きく圧縮され、裏金20と摺動部30との変形量の差が大きくなって裏金20と摺動部30とが剥離してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態に係る長手部材N1(ワッシャ10)は、図6に示す前側溶融部60及び後側溶融部70によって裏金20及び摺動部30を外周側及び内周側の端部(外縁部分)で接合している。これによれば、ワッシャ10は、前側溶融部60及び後側溶融部70によって裏金20及び摺動部30を強固に固定できるため、長手部材N1が曲げられて製造される場合でも、裏金20と摺動部30とが剥離することを抑制できる。
また、切断後の切断面(前側波型部40及び後側波型部50)の裏金20及び摺動部30の色は、切断前の色とは異なる色となるように形成されている。これによれば、前側溶融部60及び後側溶融部70が狙い通りに形成されているか否かを簡単に視認できる。また、前側溶融部60及び後側溶融部70を検査する場合(例えば、裏金20と摺動部30とを接合しているか否かを検査する場合や硬度を検査する場合等)に、前側溶融部60及び後側溶融部70を簡単に見つけられる。このため、前側溶融部60及び後側溶融部70の検査を速やかに行うことができる。
また、本実施形態に係る長手部材N1は、前側波型部40の谷部42によって外周側の曲率を大きくすることで、外周側(前側面)の伸張量を減らすことができる。また、長手部材N1は、後側波型部50の谷部52によって内周側の曲率を小さくすることで、内周面(後側面)の圧縮量を減らすことができる。すなわち、長手部材N1は、外周側と内周側との曲率の差を小さくすることで、外周側と内周側との変形量の差を小さくすることができる。このため、長手部材N1は、裏金20と摺動部30との剥離を抑制することができる。
ここで、仮に、図10に示すように、板状部材Nを上方から下方(裏金N920側から摺動部N930側)へと打ち抜くことでワッシャ10を製造する場合、板状部材Nを打ち抜く際の応力によって裏金N920と摺動部N930とが剥離する可能性がある。これに対して、本実施形態に係るワッシャ10の製造方法では、板状部材NをレーザL2で切断している(図3参照)。これによれば、板状部材Nを打ち抜く際の応力が発生しないため、前記応力によって裏金20と摺動部30とが剥離することを防止できる。
また、板状部材Nを打ち抜いた場合、ワッシャには、ダレN902及びバリN903が発生する。ダレN902は、裏金N920の上側面に形成されると共に、裏金N920の外周側及び内周側の端部の全域に形成される。当該ダレN902を除去するためには、裏金N920の上側面を削る必要がある。このため、ダレN902が発生する場合、予め板状部材Nの厚みを厚くして、板状部材Nの上側面に加工代を確保する必要がある。
バリN903は、摺動部N930の下側面から突出するように形成される。バリN903は、摺動部N930の外周側及び内周側の端部の全域に形成される。当該バリN903を除去するためには、例えば、所定の工具等を用いてバリN903を削る必要がある。
これに対して、本実施形態に係るワッシャ10は、板状部材NをレーザL2で切断するため、摺動部30にドロス(レーザL2の照射面とは反対側の面に形成される微小な凸部)が発生する程度で済む。このため、ワッシャ10は、ダレN902及びバリN903を除去する場合よりも簡単に(摺動部30を僅かに削るだけで)仕上げ加工を済ませることができる。また、裏金N920の上側面を削らなくて済むため、仕上げ加工に必要な加工代を少なくできる。このため、板状部材Nの厚みを薄くでき、材料歩留まりを向上できる。
また、図11に示すように、板状部材Nを下方から上方(摺動部N930側から裏金N920側)へと打ち抜いた場合、裏金N920にバリN903が発生すると共に、摺動部N930にダレN902が発生する。ここで、ダレN902は、断面視弧状(又は曲面状)に形成される。また、ダレN902の径方向の長さD1は、例えば、0.2〜1.0mmとなる。摺動部N930は、ダレN902が発生すると、下側面の外周側及び内周側の端部の全域が面取りされたような状態となる。この場合、摺動部N930は、ダレN902が発生した箇所(図11に示すダレN902の径方向の長さD1参照)において他の部材に対して摺動できなくなる。このため、摺動部N930は、その下側面のうち、ダレN902が発生していない箇所、すなわち図11に示す点線の斜線の領域の面積が摺動面積となる。以上のように、摺動部N930は、ダレN902が発生すると摺動面積が減少してしまう。
これに対して、本実施形態に係るワッシャ10は、板状部材NをレーザL2で切断するため、図6に示すように、摺動部30にダレN902が発生せずに、断面視略直角状の前側角部80及び後側角部90が形成される。これによれば、図9に示すように、摺動部30は、その上側面の外周側及び内周側の端部の略全域でも他の部材に対して摺動可能となる。このため、摺動部30は、その上側面の略全域、すなわち図9に示す点線の斜線の領域の面積が摺動面積となる。これによって、ワッシャ10は、その摺動面積が減少することを抑制できる。
また、本実施形態に係る摺動部30は、前側溶融部60及び後側溶融部70が形成される部分(外周側及び内周側の端部)の硬度が他の部分の硬度よりも高くなっている。これによれば、ワッシャ10は、前側溶融部60及び後側溶融部70が形成される部分が摩耗することを抑制できる。これによって、本実施形態に係るワッシャ10は、摩耗し易い部分である摺動部30の外周側及び内周側の端部が局所的に摩耗することを抑制できるため、耐摩耗性を向上できる。
また、図5及び図7に示すように、本実施形態に係る長手部材N1は、前後方向幅Wが常に一定となるように形成されることで、剛性が局所的に低くなることを防止できる。このため、ワッシャ10の強度を向上することができる。
また、前側波型部40及び後側波型部50の谷部42・52同士が左右方向にずれた位置に配置される長手部材N1を曲げ変形させることにより、ワッシャ10は、谷部42・52同士を周方向にずらすことができる。これによれば、谷部42・52、すなわち応力が作用し易い部分を互いに遠ざけることができる。このため、ワッシャ10の強度を向上することができる。
また、本実施形態に係る前側波型部40及び後側波型部50は、長手部材N1の右端部から左端部に亘って形成されることによって、より多くの山部41・52及び谷部42・52が前側面及び後側面に形成されるようにしている。これによれば、長手部材N1(ワッシャ10)は、成形工程において多くの谷部42・52に応力を分散させることができる。これによって、ワッシャ10の強度を向上することができる。また、より多くの山部41・52が形成されることで、摺動面積の減少を抑制することができる。
また、本実施形態に係る前側波型部40及び後側波型部50の谷部42・52は、先端部42a・52aが平面視略弧状(尖った部分が形成されない形状)に形成される。これによれば、ワッシャ10は、谷部42・52の先端部42a・52aの全体に応力を分散させることができる。このため、ワッシャ10の強度を向上することができる。
また、本実施形態に係る長手部材N1の前側波型部40及び後側波型部50は、平面視略正弦波状に形成されている。これによれば、前側波型部40及び後側波型部50は、山部41・51においても先端部41a・51aの全体に応力を分散させることができる。このため、ワッシャ10の強度を向上することができる。また、長手部材N1を滑らかに曲げ変形させることができる。
以上の如く、本実施形態に係るワッシャ10(摺動部材)は、上方向(一方向)から見て所定の形状となるように形成された裏金20(第一の部材)と、前記上方向から見て前記裏金20と同一形状となるように形成され、前記裏金20に対して外縁が一致するように前記上方向に貼り合わされた摺動部30(第二の部材)と、前記裏金20及び前記摺動部30の外縁部分の少なくとも一部が溶融されることで形成された前側溶融部60及び後側溶融部70(溶融部)と、を具備するものである。
このように構成することにより、前側溶融部60及び後側溶融部70によって裏金20と摺動部30とを強固に密着させることができるため、裏金20と摺動部30とが剥離することを抑制できる。
また、前記裏金20及び前記摺動部30は、前記上方向から見て円弧状となるように形成され、前記溶融部は、前記裏金20及び前記摺動部30のうち、円弧の外周部分に相当する部分全体が溶融されることで形成された前側溶融部60(外周側溶融部)を含むものである。
このように構成することにより、前側溶融部60によって裏金20及び摺動部30の外周側の端部の全域を接合できるため、裏金20と摺動部30とが剥離することを効果的に抑制できる。
また、前記裏金20及び前記摺動部30は、前記上方向から見て円弧状となるように形成され、前記溶融部は、前記裏金20及び前記摺動部30のうち、円弧の内周部分に相当する部分全体が溶融されることで形成された後側溶融部70(内周側溶融部)を含むものである。
このように構成することにより、後側溶融部70によって裏金20及び摺動部30の内周側の端部の全域を接合できるため、裏金20と摺動部30とが剥離することを効果的に抑制できる。
また、以上の如く、本実施形態に係るワッシャ10の製造方法は、板状部材Nを準備する準備工程(ステップS10)と、前記板状部材NをレーザL2で切断することで長手部材N1を得る切断工程(ステップS20)と、前記長手部材N1を用いて円弧状のワッシャ10を得る成形工程(ステップS30)と、を具備するものである。
このように構成することにより、板状部材Nを切断する際にダレN902及びバリN903が発生することを防止できる。このため、ダレN902の発生に起因する摺動面積の減少を抑制できる。また、ダレN902を除去するための加工に要する部分(仕上げ加工のための加工代)が不要となって、材料歩留まりを向上できる。また、ダレN902及びバリN903を除去する工程(仕上げ加工)を簡素化できるため、ワッシャ10の製造に要するコストを低減することができる。
また、前記板状部材Nは、前記長手部材N1の長手方向幅と同一幅を有するものであり、前記切断工程は、前記板状部材Nを、幅方向一端から他端に亘って切断することで前記長手部材N1を得るものであり、前記成形工程は、前記長手部材N1の切断面が外周面及び内周面となるような円弧状になるように、当該長手部材N1を変形させるものである。
なお、本実施形態において幅方向とは、長手部材N1の長手方向幅と同一幅となる板状部材Nの一方向(本実施形態では長手方向である左右方向)を指す。
このように構成することにより、板状部材Nを略直線状に切断することができるため、板状部材Nをリング状に打ち抜く場合と比較して、スクラップS1の量を減らすことができる。また、長手部材N1の長手方向幅と同一幅を有する板状部材Nを幅方向一端から他端に亘って切断することで、板状部材Nの左端部及び右端部を無駄にすることなく板状部材Nを切断することができる。以上によって、材料歩留まりを効果的に向上することができる。
また、長手部材N1の切断面がワッシャ10の外周面及び内周面となるような円弧状になるように長手部材N1を変形させることで、摺動部30の上側面の外周側の端部及び内周側の端部に前側角部80及び後側角部90を形成できる。これによれば、板状部材Nを打ち抜く場合と比較して、摺動面積が減少することを抑制できる。
また、本実施形態に係るワッシャ10は、他の部材に対して摺動可能な摺動部30を具備するワッシャ10であって、前記摺動部30の外縁の少なくとも一部には、断面視において略直角となる前側角部80及び後側角部90(角部)が形成されているものである。
このように構成することにより、摺動部30の外縁の一部を他の部材に対して摺動させることができる(摺動面の一部を成すことができる)ため、板状部材Nを打ち抜く場合と比較して摺動面積が減少することを抑制できる。
また、前記前側角部80及び後側角部90は、断面視において曲率半径が0.05以下となるように形成されているものである。
このように構成することにより、前側角部80及び後側角部90の曲率半径を十分に小さくすることができるため、摺動部30の外縁の一部のより広い範囲を他の部材に対して摺動させることができる。これによって、摺動面積が減少することを効果的に抑制できる。
また、前記摺動部30は円弧状に形成され、前記前側角部80は、前記摺動部30のうち、円弧の外周部分に相当する部分に形成されているものである。
このように構成することにより、摺動部30の上側面の外周側の端部の略全域を他の部材に対して摺動させることができる(摺動面の一部を成すことができる)ため、摺動面積が減少することを効果的に抑制できる。
また、前記摺動部30は円弧状に形成され、前記後側角部90は、前記摺動部30のうち、円弧の内周部分に相当する部分に形成されているものである。
このように構成することにより、摺動部30の上側面の内周側の端部の略全域を他の部材に対して摺動させることができる(摺動面の一部を成すことができる)ため、摺動面積が減少することを効果的に抑制できる。
また、以上の如く、本実施形態に係るワッシャ10は、他の部材に対して摺動可能な摺動部30を具備するワッシャ10であって、前記摺動部30の外縁部の少なくとも一部には、他の部分よりも硬度が高い前側溶融部60及び後側溶融部70(高硬度部)が形成されているものである。
このように構成することにより、摩耗し易い部分である摺動部30の外周側及び内周側の端部の硬度を高くすることができるため、耐摩耗性を向上することができる。
また、前記摺動部30は円弧状に形成され、前記前側溶融部60は、前記摺動部30のうち、円弧の外周部分に相当する部分に形成されているものである。
このように構成することにより、摺動部30の外周側の端部の全域の硬度を高くすることができるため、耐摩耗性を効果的に向上することができる。
また、前記摺動部30は円弧状に形成され、前記後側溶融部70は、前記摺動部30のうち、円弧の内周部分に相当する部分に形成されているものである。
このように構成することにより、摺動部30の内周側の端部の全域の硬度を高くすることができるため、耐摩耗性を効果的に向上することができる。
また、前記摺動部30が貼り付けられた裏金20をさらに具備し、前記前側溶融部60及び後側溶融部70は、前記摺動部30を溶融させることで形成されているものである。
このように構成することにより、一つの加工(摺動部30を溶融させる加工)を行うだけで、耐摩耗性を向上することができると共に裏金20と摺動部30との剥離を抑制することができる。
なお、本実施形態に係る前側溶融部60及び後側溶融部70は、本発明に係る高硬度部の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、ワッシャ10は、平面視半円状に形成されるものとしたが、ワッシャ10の形状はこれに限定されるものでない。ワッシャ10は、例えば、中心角が90°の平面視円弧状に形成されるものであってもよい。
また、前側溶融部60は、摺動部30の外周側の端部の全域に形成されるものとしたが、前側溶融部60が形成される範囲はこれに限定されるものではなく、例えば、摺動部30の外周側の端部の一部であってもよい。また、前側溶融部60は、必ずしも一つの部材に形成される必要はなく、摺動部30を含む複数の部材(本実施形態では裏金20及び摺動部30)に形成されていてもよい。
また、後側溶融部70は、摺動部30の内周側の端部の全域に形成されるものとしたが、後側溶融部70が形成される範囲はこれに限定されるものではなく、例えば、摺動部30の内周側の端部の一部であってもよい。また、後側溶融部70は、必ずしも一つの部材に形成される必要はなく、摺動部30を含む複数の部材(本実施形態では裏金20及び摺動部30)に形成されていてもよい。
また、前側溶融部60及び後側溶融部70は、板状部材NがレーザL2で切断されることで形成されるものとしたが、前側溶融部60及び後側溶融部70を形成するための手段は、これに限定されるものではない。前側溶融部60及び後側溶融部70は、例えば、板状部材Nが打ち抜かれて形成された長手部材N1に熱が与えられることで形成されるものであってもよい。
また、高硬度部は、板状部材NがレーザL2で切断されることで形成されるものとしたが、高硬度部を形成するための手段は、これに限定されるものではない。高硬度部は、例えば、板状部材Nが打ち抜かれて形成されたワッシャ10の外周面及び内周面に、摺動部30よりも高い硬度を有する金属材料がコーティングされることで形成されるものであってもよい。
また、切断工程では、板状部材Nを略左右方向に切断するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、板状部材Nを略円弧状に切断してもよい。この場合、切断工程に成形工程が含まれることとなる。また、切断工程では、長手部材N1の長手方向幅よりも広い幅を有する板状部材を、長手部材N1の外形に沿って切断するものであってもよい。また、切断工程では、平面視略正弦波状に形成される板状部材を前後方向に切断するものであってもよい。
また、切断工程では、板状部材Nを切断する際のアシストガスとして酸素が採用されるものとしたが、アシストガスの種類は、空気に限定されるものではなく、例えば、アルゴン(不活性ガス)等であってもよい。
また、切断工程では、裏金20に向けてレーザL2を照射するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、摺動部30に向けてレーザL2を照射するものであってもよい。
また、ワッシャ10には、必ずしも仕上げ加工が施される必要はない。これによって、ワッシャ10の製造に要するコストを効果的に低減することができる。
また、ワッシャ10は、二種類の金属材料を貼り合わせたバイメタル材によって構成されるものとしたが、金属材料の種類の数は二種類に限定されるものでなく、例えば、三種類以上であってもよい。また、ワッシャ10の材料はバイメタル材に限定されるものでなく、適宜の(一種類の)金属材料等によって構成されていてもよい。
また、長手部材N1は、平面視略正弦波状に形成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。すなわち、長手部材N1は、必ずしも前側波型部40及び後側波型部50を具備していなくてもよい。