この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶組成物」および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが、ネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。アルケニルを有する液晶性化合物は、その意味では重合性ではない。
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。この液晶組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。液晶性化合物の割合は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。添加物の割合は、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。すなわち、液晶性化合物や添加物の割合は、液晶性化合物の全重量に基づいて算出される。重量百万分率(ppm)が用いられることがある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
「ネマチック相の上限温度」を「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと、大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。組成物や素子の特性を検討するために、経時変化試験が使われることがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数は任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できる。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。
「少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよい」のような表現がこの明細書で使われる。この場合、−CH2−CH2−CH2−は、隣接しない−CH2−が−O−で置き換えられることによって−O−CH2−O−に変換されてもよい。しかしながら、隣接した−CH2−が−O−で置き換えられることはない。この置き換えでは−O−O−CH2−(ペルオキシド)が生成するからである。すなわち、この表現は、「1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよい」と「少なくとも2つの隣接しない−CH2−は−O−で置き換えられてもよい」の両方とを意味する。このルールは、−O−への置き換えだけでなく、−CH=CH−や−COO−のような二価基への置き換えにも適用される。
成分化合物の化学式において、末端基R1の記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR1が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2−1)のR1がエチルであり、化合物(2−2)のR1がエチルであるケースがある。化合物(2−1)のR1がエチルであり、化合物(2−2)のR1がプロピルであるケースもある。このルールは、他の末端基などの記号にも適用される。式(2)において、dが2のとき、2つの環Dが存在する。この化合物において、2つの環Dが表す2つの環は、同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、dが2より大きいとき、任意の2つの環Dにも適用される。このルールは、Z1、環Fなどの記号にも適用される。このルールは、化合物(1−4)における2つの−Sp2−P5のような場合にも適用される。
六角形で囲んだA、B、C、Dなどの記号はそれぞれ環A、環B、環C、環Dなどの環に対応し、六員環、縮合環などの環を表す。この六角形の一辺を横切る斜線は、環上の任意の水素が−Sp1−P1などの基で置き換えられてもよいことを表す。‘a’などの添え字は、置き換えられた基の数を示す。添え字‘a’が0(ゼロ)のとき、そのような置き換えはない。添え字‘a’が2以上のとき、環A上には複数の−Sp1−P1が存在する。−Sp1−P1が表す複数の基は、同一であってもよく、または異なってもよい。「環Aおよび環Cは独立して、X、Y、またはZである」の表現では、主語が複数であるから、「独立して」を用いる。主語が「環A」であるときは、主語が単数であるから「独立して」を用いない。
液晶性化合物のアルキルは、直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、環から2つの水素を除くことによって生成した、非対称な二価基にも適用される。このルールは、カルボニルオキシ(−COO−または−OCO−)のような二価の結合基にも適用される。
本発明は、下記の項などである。
項1. 重合性化合物を添加物として含有し、ネマチック相および負の誘電率異方性を有する液晶組成物を含有する液晶表示素子から、高分子支持配向型の液晶表示素子を製造する製造方法において、前記添加物が、式(1)で表される重合性化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、前記液晶組成物を、配向膜および電極を有する2つの基板の間に封入し、前記基板の間に特定の電圧を印加しながら、照度が3mW/cm
2から200mW/cm
2の範囲である第一紫外線を前記基板に14秒から580秒の間照射し、次に前記基板の間に電圧を印加せずに、照度が3mW/cm
2から100mW/cm
2の範囲である第二紫外線を前記基板に10分から60分の間照射する、製造方法。
式(1)において、環Aおよび環Cは独立して、フェニル、1−ナフチル、または2−ナフチルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;環Bは、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,2−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,7−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;Z
1およびZ
2は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−、−C(CH
3)=CH−、−CH=C(CH
3)−、または−C(CH
3)=C(CH
3)−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;P
1、P
2、およびP
3は独立して、重合性基であり;Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合、または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;a、b、およびcは独立して、0、1、2、3、または4であり、そしてa、b、およびcの和は、1以上であり;dは、1、または2である。
項2. 項1に記載の紫外線照射において、前記基板の間に特定の電圧を印加しながら、照度が70mW/cm2から110mW/cm2の範囲である第一紫外線を前記基板に19秒から120秒の間照射し、次に前記基板の間に電圧を印加せずに、照度が3mW/cm2から30mW/cm2の範囲である第二紫外線を前記基板に10分から30分の間照射する、項1に記載の製造方法。
項3. 項1に記載の式(1)において、P
1、P
2、およびP
3が独立して、式(P−1)から式(P−5)で表される重合性基の群から選択された基である、項1または2に記載の製造方法。
式(P−1)から式(P−5)において、M
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。
項4. 添加物として式(1−1)から式(1−4)で表される重合性化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
式(1−1)から式(1−4)において、P
4、P
5、およびP
6は独立して、式(P−1)から式(P−3)で表される重合性基の群から選択された基であり
ここで、M
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合、または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
項5. 添加物の割合が0.03重量%から10重量%の範囲である、項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6. 第一成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
式(2)において、R
1およびR
2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり;環Dおよび環Fは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイル、クロマン−2,6−ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン−2,6−ジイルであり;環Eは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;Z
3およびZ
4は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり;dは、1、2、または3であり、eは、0または1であり、そしてdとeとの和は3以下である。
項7. 第一成分として式(2−1)から式(2−19)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から6のいずれか1項に記載の製造方法
。
式(2−1)から式(2−19)において、R
1およびR
2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルである。
項8. 第一成分の割合が10重量%から80重量%の範囲である、項6または7に記載の製造方法。
項9. 第二成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から8のいずれか1項に記載の製造方法。
式(3)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Gおよび環Iは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Z
5は、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;fは、1、2、または3である。
項10. 第二成分として式(3−1)から式(3−10)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から9のいずれか1項に記載の製造方法。
式(3−1)から式(3−10)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
項11. 第二成分の割合が15重量%から90重量%の範囲である、項9または10に記載の製造方法。
項12. 項1から11のいずれか1項に記載の製造方法に用いられる、液晶組成物。
項13. 項12に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
項14. 項13に記載の液晶表示素子において、添加物が重合した液晶表示素子。
項15. 液晶表示素子の動作モードが、IPSモード、VAモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、項13または14に記載の液晶表示素子。
項16. 項12に記載の液晶組成物の、液晶表示素子における使用。
項17. 項12に記載の液晶組成物の、高分子支持配向型の液晶表示素子における使用。
本発明は、次の項も含む。(a)上記の液晶組成物を2つの基板のあいだに配置し、この組成物に電圧を印加した状態で光を照射し、この組成物に含有された重合性基を有する化合物を重合させることによって、上記の液晶表示素子を製造する方法。(b)ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が−2以下である、上記の液晶組成物。
本発明は、次の項も含む。(c)特開2006−199941号公報に記載された化合物(5)から化合物(7)は、誘電率異方性が正の液晶性化合物であるが、これらの化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する上記の組成物。(d)上記の重合性化合物を少なくとも2つ含有する上記の組成物。(e)上記の重合性化合物とは異なる重合性化合物をさらに含有する上記の組成物。(f)光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物の1つ、2つ、または少なくとも3つを含有する上記の組成物。(g)上記の組成物を含有するAM素子。(h)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、またはFPAのモードを有する素子。(i)上記の組成物を含有する透過型の素子。(j)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物として使用すること。(k)上記の組成物に光学活性化合物を添加することによって調製された組成物を、光学活性な組成物として使用すること。
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物や素子に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組合せ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、好ましい成分化合物を示す。第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。第八に、組成物の用途を説明する。最後に、素子を製造する方法を説明する。
第一に、組成物の構成を説明する。この組成物は、複数の液晶性化合物を含有する。この組成物は、添加物を含有してもよい。添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物などである。この組成物は、液晶性化合物の観点から組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(2)および化合物(3)から選択された液晶性化合物の他に、その他の液晶性化合物、添加物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(2)および化合物(3)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。
組成物Bは、実質的に化合物(2)および化合物(3)から選択された液晶性化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物Bが添加物を含有してもよいが、その他の液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって特性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物や素子に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類である。記号0は、値がゼロに近いことを意味する。
成分化合物の主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は、重合によって重合体を与える。この重合体は、液晶分子の配向を安定化するので、素子の応答時間を短縮し、そして画像の焼き付きを改善する。化合物(2)は誘電率異方性の絶対値を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(3)は、上限温度を上げる、または粘度を下げる。
第三に、組成物における成分の組合せ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の好ましい組合せは、化合物(1)+化合物(2)であるか、または化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)である。さらに好ましい組合せは、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)である。
化合物(1)は、高分子支持配向型の素子に適合させる目的で、組成物に添加される。化合物(1)は、容易に重合する。化合物(1)の反応性は高い。化合物(1)およびその重合体は、液晶分子の配向に寄与する。化合物(1)の好ましい割合は、液晶分子を配向させるために約0.03重量%以上であり、素子の表示不良を防ぐために約10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約2重量%の範囲である。特に好ましい割合は、約0.2重量%から約1.0重量%の範囲である。
化合物(2)の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために約80重量%以下である。さらに好ましい割合は約25重量%から約70重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約65重量%の範囲である。
化合物(3)の好ましい割合は、上限温度を上げるために、または粘度を下げるために約15重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約25重量%から約70重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約60重量%の範囲である。
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。式(1)において、環Aおよび環Cは独立して、フェニル、1−ナフチル、または2−ナフチルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。好ましい環Aまたは環Cは、フェニルである。環Bは、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,2−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,7−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。好ましい環Bは、1,4−フェニレンまたは2−フルオロ−1,4−フェニレンである。
Z1およびZ2は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−CH2−は、−CH=CH−、−C(CH3)=CH−、−CH=C(CH3)−、または−C(CH3)=C(CH3)−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。好ましいZ1またはZ2は、単結合、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−である。さらに好ましいZ1またはZ2は、単結合である。
P
1、P
2、およびP
3は独立して、重合性基である。好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P−1)から式(P−5)で表される重合性基の群から選択された基である。さらに好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P−1)、式(P−2)、または式(P−3)で表される基である。特に好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P−1)または式(P−2)で表される基である。最も好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P−1)で表される基である。式(P−1)で表される好ましい基は、−OCO−CH=CH
2または−OCO−C(CH
3)=CH
2である。式(P−1)から式(P−5)の波線は、結合する部位を示す。
式(P−1)から式(P−5)において、M1、M2、およびM3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。好ましいM1、M2、またはM3は、反応性を上げるために水素またはメチルである。さらに好ましいM1は、水素またはメチルである。さらに好ましいM2またはM3は、水素である。
Sp1、Sp2、およびSp3は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−CH2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。好ましいSp1、Sp2、またはSp3は、単結合、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−CO−CH=CH−、または−CH=CH−CO−である。さらに好ましいSp1、Sp2、またはSp3は、単結合である。
a、b、およびcは独立して、0、1、2、3、または4であり、そしてa、b、およびcの和は、1以上である。好ましい和は、2、3、または4である。さらに好ましい和は、3または4である。好ましいdは、1である。
式(2)および式(3)において、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルである。好ましいR1またはR2は、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルであり、誘電率異方性を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。R3およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR3またはR4は、粘度を下げるために炭素数2から12のアルケニルであり、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルである。
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるために、ビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。
好ましいアルケニルオキシは、ビニルオキシ、アリルオキシ、3−ブテニルオキシ、3−ペンテニルオキシ、または4−ペンテニルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルケニルオキシは、アリルオキシまたは3−ブテニルオキシである。
少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルキルの好ましい例は、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシル、7−フルオロヘプチル、または8−フルオロオクチルである。さらに好ましい例は、誘電率異方性を上げるために2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、または5−フルオロペンチルである。
少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、または6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2−ジフルオロビニルまたは4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
環Dおよび環Fは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイル、クロマン−2,6−ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン−2,6−ジイルである。好ましい環Dまたは環Fは、粘度を下げるために、または上限温度を上げるために、1,4-シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4−フェニレンである。環Eは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルである。好ましい環Eは、粘度を下げるために2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、誘電率異方性を上げるために7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルである。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。テトラヒドロピラン−2,5−ジイルは、
または
であり、好ましくは
である。
環Gおよび環Iは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。好ましい環Gまたは環Iは、粘度を下げるために、または上限温度を上げるために、1,4-シクロヘキシレンであり、光学異方性を上げるために、1,4−フェニレンである。
Z3およびZ4は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシである。好ましいZ3またはZ4は、粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、誘電率異方性を上げるためにメチレンオキシである。Z5は、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシである。好ましいZ5は、安定性を上げるために単結合である。
式(2)において、dは、1、2、または3であり、eは、0または1であり、そしてdとeとの和は3以下である。好ましいdは、粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。好ましいeは、粘度を下げるために0であり、下限温度を下げるために1である。式(3)において、fは、1、2、または3である。好ましいfは、粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。
第五に、好ましい成分化合物を示す。好ましい化合物(1)は、化合物(1−1)から化合物(1−4)である。これらの化合物において、添加物の少なくとも1つが、化合物(1-1)または化合物(1−2)であることが好ましい。添加物の少なくとも2つが、化合物(1-1)および化合物(1−2)の組合せであることが好ましい。
好ましい化合物(2)は、化合物(2−1)から化合物(2−19)である。これらの化合物において、第一成分の少なくとも1つが、化合物(2−1)、化合物(2−2)、化合物(2−3)、化合物(2−4)、化合物(2−6)、化合物(2−7)、化合物(2−8)、または化合物(2−9)であることが好ましい。第一成分の少なくとも2つが、化合物(2−1)および化合物(2−6)、化合物(2−1)および化合物(2−9)、化合物(2−3)および化合物(2−6)、化合物(2−3)および化合物(2−9)、化合物(2−4)および化合物(2−6)、または化合物(2−4)および化合物(2−9)の組合せであることが好ましい。
好ましい化合物(3)は、化合物(3−1)から化合物(3−10)である。これらの化合物において、第二成分の少なくとも1つが、化合物(3−1)、化合物(3−3)、化合物(3−5)、または化合物(3−6)であることが好ましい。第二成分の少なくとも2つが化合物(3−1)および化合物(3−3)、化合物(3−1)および化合物(3−5)の組合せであることが好ましい。
第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物などである。液晶分子のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性化合物が組成物に添加される。このような化合物の例は、化合物(4−1)から化合物(4−5)である。光学活性化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に添加される。酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(5)などである。
化合物(5)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは7である。nが7である化合物(5)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないために約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に添加される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
高分子支持配向(PSA)型の素子に適合させるために重合性化合物が組成物に添加される。化合物(1)はこの目的に適している。化合物(1)と共に、化合物(1)とは異なる重合性化合物を組成物に添加してもよい。このような重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの化合物である。さらに好ましい例は、アクリレートまたはメタクリレートの誘導体である。好ましい重合性化合物の少量を、化合物(1)と共に組成物に添加してもよい。組成物に添加された重合性化合物の好ましい割合は、約0.03重量から約10重量%の範囲である。
このような重合性化合物は紫外線によって重合する。光重合開始剤などの適切な開始剤存在下で重合させてもよい。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocur1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合性化合物の重量に基づいて約0.1重量%から約5重量%の範囲である。さらに好ましい割合は約1重量%から約3重量%の範囲である。
このような重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4−t−ブチルカテコール、4-メトキシフェノ−ル、フェノチアジンなどである。
極性化合物は、極性をもつ有機化合物である。ここでは、イオン結合を有する化合物は含まれない。酸素、硫黄、および窒素のような原子は、より電気的に陰性であり、部分的な負電荷をもつ傾向にある。炭素および水素は中性であるか、または部分的な正電荷をもつ傾向がある。極性は、化合物中の別種の原子間で部分電荷が均等に分布しないことから生じる。例えば、極性化合物は、−OH、−COOH、−SH、−NH2、>NH、>N−のような部分構造の少なくとも1つを有する。
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(1−1)はWO2013−161576公報に記載された方法で合成する。化合物(2−6)は、特開2000−53602号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−1)は、特開昭59−176221号公報に記載された方法で合成する。化合物(5)の一部は市販されている。式(5)のnが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(5)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
第八に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、約−10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。さらには、試行錯誤によって約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、FPAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCB、IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子において、電圧が無印加のとき、液晶分子の配向がガラス基板に対して並行であってもよく、または垂直であってもよい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
最後に、素子を製造する方法を説明する。高分子支持配向型の液晶表示素子(略して、PSA素子)を製造する方法の一例は、次のとおりである。アレイ基板とカラーフィルター基板と呼ばれる2つの基板を有する素子を組み立てる。この基板の少なくとも1つは、配向膜および電極を有する。液晶性化合物を混合して液晶組成物を調製する。この組成物に重合性化合物を添加する。必要に応じて添加物をさらに添加してもよい。この組成物を素子に注入する。この素子に電圧を印加した状態で光照射する。紫外線が好ましい。光照射によって重合性化合物を重合させる。この重合によって、重合体を含有する組成物が生成する。PSA素子は、このような手順で製造する。
この手順において、電圧を印加したとき、液晶分子が配向膜および電場の作用によって配向する。この配向に従って重合性化合物の分子も配向する。この状態で重合性化合物が紫外線によって重合するので、この配向を維持した重合体が生成する。この重合体の効果によって、素子の応答時間が短縮される。画像の焼き付きは、液晶分子の動作不良であるから、この重合体の効果によって焼き付けも同時に改善されることになる。なお、組成物中の重合性化合物を予め重合させ、この組成物を液晶表示素子の基板のあいだに配置することも可能であろう。
本発明の好ましい態様を図で説明する。図1は液晶表示素子の一例を示す。この素子は、透明基板(上側基板1、下側基板2)、電極(上側電極3、電極4)、および垂直配向膜(上側配向膜5、下側配向膜6)を有する。負の誘電率異方性を有し、重合性化合物を含有する液晶組成物が基板の間に配置される。液晶分子7は、垂直配向膜の作用によって実質的に垂直に配向される。
基板には、少なくとも二段階で紫外線を照射する。第一段階では、基板間に特定の電圧を印加しながら照射する。好ましい照度は約3mW/cm2から約200mW/cm2の範囲であり、好ましい照射時間は約14秒から約580秒の範囲である。この紫外線を「第一紫外線」ということがある。この紫外線によって大部分の重合性化合物が重合する。第一紫外線において、さらに好ましい照度は、約70mW/cm2から約110mW/cm2の範囲であり、さらに好ましい照射時間は約19秒から約120秒の範囲である。特に好ましい照度は、約80mW/cm2から約100mW/cm2の範囲であり、特に好ましい照射時間は約20秒から約112秒の範囲である。
第二段階では、基板間に電圧を印加しないで紫外線を照射する。好ましい照度は約3mW/cm2から約100mW/cm2の範囲であり、好ましい照射時間は約10分から約60分の範囲である。この紫外線を「第二紫外線」ということがある。この紫外線によって残っている重合性化合物が重合体に変換される。第二紫外線において、さらに好ましい照度は、約3mW/cm2から約30mW/cm2の範囲であり、さらに好ましい照射時間は約10分から約30分の範囲である。特に好ましい照度は、約3mW/cm2から約6mW/cm2の範囲であり、特に好ましい照射時間は約11分から約15分の範囲である。
実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例1の組成物と実施例2の組成物との混合物を含む。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、NMR分析などの方法によって同定した。化合物および組成物の特性は、下記に記載した方法によって測定した。
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。1H−NMRの測定では、試料をCDCl3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFCl3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物の混合物をガスクロマトグラフ(FID)で検出する。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(重量比)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出することができる。
測定試料:組成物および素子の特性を測定するときは、組成物をそのまま試料として用いた。化合物の特性を測定するときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用の試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度、および誘電率異方性の値を求めた。
下記の母液晶を用いた。成分化合物の割合は重量%で示した。
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;JEITAと略す)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
(2)ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを「<−20℃」と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
(3)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
(4)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を注入した。この素子に39ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、「(6)誘電率異方性」で測定した。
(5)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計によって行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
(6)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を注入した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
(7)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧で表した。
(8)電圧保持率(VHR;60℃で測定;%):重合性化合物を含有する組成物を、2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであるPSA素子に封入した。この素子に15Vの電圧を印加しながら主波長が365nmの紫外線(90mW/cm2)を111秒間照射した。次に、重合性化合物の98.5重量%が消費されるまで、電圧を印加せずに主波長が335nmの紫外線(3mW/cm2)を照射した。紫外線の照射には、アイグラフィック株式会社製のメタルハライドランプを用いた。この素子にパルス電圧(1Vで0.7ミリ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で1667ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸とのあいだの面積Aを求めた。減衰しなかったときの面積を面積Bとして、電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
(9)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。
1)重合性化合物を含まない組成物:2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を注入した。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)で表した。
2)重合性化合物を含有する組成物:2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のPSA素子に試料を注入した。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に、15Vの電圧を印加しながら主波長が365nmの紫外線(90mW/cm2)を111秒間照射した。次に、重合性化合物の98.5重量%が消費されるまで、電圧を印加せずに主波長が335nmの紫外線(3mW/cm2)を照射した。紫外線の照射には、アイグラフィック株式会社製の紫外線照射装置US4−X0801D−CH型(メタルハライドランプM08−L41C)を用いた。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。応答時間は透過率0%から90%に変化するのに要した時間(立ち上がり時間;rise time;ミリ秒)で表した。
(10)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
(11)照度(mW/cm2):第一紫外線の照度を測定する際には、ウシオ電機株式会社のセンサーUVD−S365を備えた紫外線照度計、UIT−250型を用いた。第二紫外線の照度を測定する際には、ウシオ電機株式会社のセンサーUVD−S313を備えた紫外線照度計、UIT−250型を用いた。
(12)プレチルト角(度):プレチルト角の測定には、シンテック株式会社製のOpti−Proを使用した。
組成物の実施例を以下に示す。成分化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号によって表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。記号化された化合物の後にあるかっこ内の番号は化合物が属する化学式を表す。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。
[実施例1]
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 11.5%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 11%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 12%
2−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 2.5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 10%
V−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 8%
2−HH−3 (3−1) 21%
3−HH−4 (3−1) 7%
1−BB−3 (3−3) 15%
3−HHB−1 (3−5) 2%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物の特性は次のとおりであった。NI=75.5℃;Tc<−20℃;η=17.4mPa・s;Δn=0.107;Δε=−3.0.
この組成物を、2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.5μmであるPSA素子に封入した。この素子に15Vの電圧を印加しながら主波長が365nmの第一紫外線(90mW/cm2)を111秒間照射した。次に、この素子に電圧を印加せずに、主波長が335nmの第二紫外線(3mW/cm2)を30分照射した。未反応の重合性化合物の割合が、添加した重合性化合物に基づいて1.5重量%以下になった。このようにしてPSA素子を製造し、電圧保持率を測定した。VHR=94.4%.
[比較例1]
実施例1の組成物をPSA素子に封入した。この素子に、15Vの電圧を印加しながら主波長が365nmの第一紫外線(90mW/cm2)を111秒の間照射した。次に、この素子に電圧を印加せずに、主波長が335nmの第二紫外線(3mW/cm2)を120分の間照射した。すなわち、電圧を印加することなく、第二紫外線をより長い間素子に照射した。このPSA素子の電圧保持率を測定した。VHR=75.5%。
実施例2から実施例13を以下に示す。これらの実施例において、種々の液晶組成物を用い、実施例1と同様の方法により、PSA素子を作製した。紫外線照射の条件は、実施例1の条件と同一にした。
[実施例2]
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 3%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 8%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 10%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 10%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 3%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 10%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 5%
V−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 5%
2−HH−3 (3−1) 18%
3−HH−O1 (3−1) 3%
3−HH−V (3−1) 5%
1−BB−3 (3−3) 10%
1−BB−5 (3−3) 5%
3−HBB−2 (3−6) 2%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=76.6℃;Tc<−20℃;η=17.7mPa・s;Δn=0.108;Δε=−3.0;VHR=94.2%.
[実施例3]
V−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 5%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 5%
2−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 3%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 8%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 5%
V−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 8%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 6%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−14) 3%
2−HH−3 (3−1) 20%
3−HH−4 (3−1) 10%
1−BB−3 (3−3) 8%
3−HHEH−3 (3−4) 3%
3−HHEBH−3 (3−9) 3%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=75.6℃;Tc<−20℃;η=19.7mPa・s;Δn=0.101;Δε=−2.9;VHR=94.0%.
[実施例4]
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 19%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 10%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 5%
4−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 6%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 4%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−15) 5%
2−HH−3 (3−1) 20%
3−HH−V1 (3−1) 7%
3−HHB−1 (3−5) 5%
3−HHB−3 (3−5) 4%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.5重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=79.6℃;Tc<−20℃;η=19.0mPa・s;Δn=0.090;Δε=−3.3;VHR=97.4%.
[実施例5]
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 10%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 5%
2O−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 5%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 8%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 10%
3−HH2B(2F,3F)−O2 (2−7) 5%
5−HH2B(2F,3F)−O2 (2−7) 5%
V−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 3%
3−HHB(2F,3Cl)−O2 (2−11) 3%
5−HHB(2F,3Cl)−O2 (2−11) 3%
2−HH−3 (3−1) 25%
3−HB−O2 (3−2) 5%
5−HB−O2 (3−2) 5%
V2−BB−1 (3−3) 5%
5−HB(F)BH−3 (3−10) 3%
上記の組成物に化合物(1−2−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=76.2℃;Tc<−20℃;η=17.9mPa・s;Δn=0.091;Δε=−2.9;VHR=94.0%.
[実施例6]
2−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 5%
V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 3%
2−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 2%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 12%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 5%
V−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 5%
3−HchB(2F,3F)−O2 (2−18) 3%
5−HchB(2F,3F)−O2 (2−18) 3%
2−HH−3 (3−1) 22%
F3−HH−V (3−1) 3%
1−BB−3 (3−3) 10%
3−HHB−O1 (3−5) 3%
V−HBB−2 (3−6) 3%
3−HHEBH−4 (3−9) 3%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=81.0℃;Tc<−20℃;η=19.7mPa・s;Δn=0.110;Δε=−3.0;VHR=94.1%.
[実施例7]
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 10%
3−B(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (2−5) 3%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 8%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 5%
2−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 3%
3−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (2−10) 3%
3−HBB(2F,3Cl)−O2 (2−12) 3%
5−HBB(2F,3Cl)−O2 (2−12) 3%
2−HH−3 (3−1) 26%
2−HH−5 (3−1) 5%
3−HH−4 (3−1) 5%
3−HH−V (3−1) 7%
V2−BB2B−1 (3−7) 3%
1O1−HBBH−5 (−) 3%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.2重量%の割合で添加し、さらに化合物(1−2−1)を0.2重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=79.9℃;Tc<−20℃;η=20.0mPa・s;Δn=0.092;Δε=−2.8;VHR=94.5%.
[実施例8]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 5%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 16%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 12%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−15) 7%
2−HH−3 (3−1) 26%
3−HH−4 (3−1) 3%
1−BB−3 (3−3) 4%
1−BB−5 (3−3) 5%
3−HHB−1 (3−5) 6%
3−HBB−2 (3−6) 3%
3−HHEBH−5 (3−9) 3%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=75.3℃;Tc<−20℃;η=19.3mPa・s;Δn=0.095;Δε=−3.1;VHR=92.5%.
[実施例9]
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 4%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 10%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 10%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 6%
3−H1OCro(7F,8F)−5 (2−13) 3%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (2−16) 3%
3−chB(2F,3F)−O2 (2−17) 3%
V2−HchB(2F,3F)−O2 (2−18) 3%
2−HH−3 (3−1) 20%
5−HH−O1 (3−1) 3%
1V2−HH−2V1 (3−1) 3%
3−HH−V (3−1) 5%
1−BB−3 (3−3) 8%
V−HBB−3 (3−6) 3%
3−HB(F)HH−2 (3−8) 3%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=75.4℃;Tc<−20℃;η=19.6mPa・s;Δn=0.100;Δε=−3.0;VHR=94.2%.
[実施例10]
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 7%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 13%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 8%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−14) 3%
3−B(2F)B(2F,3F)−O2 (2−19) 3%
2−HH−3 (3−1) 25%
5−HH−V (3−1) 4%
3−HH−VFF (3−1) 3%
7−HB−1 (3−2) 5%
3−HHEH−5 (3−4) 3%
V−HHB−1 (3−5) 5%
V−HBB−3 (3−6) 3%
上記の組成物に化合物(1−2−1)を0.5重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=70.9℃;Tc<−20℃;η=18.8mPa・s;Δn=0.092;Δε=−2.8;VHR=93.7%.
[実施例11]
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 10%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 10%
4−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 3%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 9%
2−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 10%
V−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 5%
V−chB(2F,3F)−O2 (2−17) 3%
2−HH−3 (3−1) 21%
3−HH−4 (3−1) 7%
1−BB−3 (3−3) 10%
3−HHB−1 (3−5) 3%
VFF−HHB−1 (3−5) 3%
3−HBB−2 (3−6) 3%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=80.9℃;Tc<−20℃;η=17.6mPa・s;Δn=0.104;Δε=−2.8;VHR=94.4%.
[実施例12]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 8%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 5%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 10%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 10%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 10%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 5%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−15) 5%
2−HH−3 (3−1) 16%
3−HH−4 (3−1) 10%
3−HH−V (3−1) 8%
1V2−BB−1 (3−3) 5%
3−HHB−3 (3−5) 5%
VFF2−HHB−1 (3−5) 3%
上記の組成物に化合物(1−2−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=82.0℃;Tc<−20℃;η=17.8mPa・s;Δn=0.099;Δε=−3.1;VHR=93.9%.
[実施例13]
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 12%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 3%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 6%
2−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 5%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 9%
4−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 5%
V−HBB(2F,3F)−O2 (2−9) 5%
2−HH−3 (3−1) 18%
3−HH−4 (3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5) 8%
3−HHB−3 (3−5) 6%
V2−HHB−1 (3−5) 3%
上記の組成物に化合物(1−1−1)を0.3重量%の割合で添加した。
この組成物とPSA素子の特性は次のとおりであった。NI=78.8℃;Tc<−20℃;η=18.4mPa・s;Δn=0.098;Δε=−2.9;VHR=94.1%.
実施例1から実施例13のPSA素子は、比較例1のPSA素子に比べて大きな電圧保持率(VHR)を有することがわかった。よって、本発明の方法によって製造されたPSA素子は優れた特性を有すると結論できる。