JP6780521B2 - 変性共役ジエン系重合体及びその製造方法、重合体組成物、架橋重合体、並びにタイヤ - Google Patents
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Description
(A) 基「−SiR1R2R3」を有するビニルシラン化合物。ただし、R1は、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基、又はヒドロカルビル基である。
(B) 窒素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ窒素原子、リン原子及び硫黄原子に活性水素が結合していない芳香族ビニル化合物。
[2] 重合開始剤の存在下で、上記(A)ビニルシラン化合物及び上記(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と共役ジエン化合物とを含む単量体群Xを重合して、活性末端を有する重合体ブロックを得る工程と、
前記活性末端を有する重合体ブロックの存在下で、共役ジエン化合物を含む単量体群Yを重合して、前記重合体ブロックに結合する共役ジエン系重合体鎖を形成する工程と、
を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法。
[3] 重合開始剤の存在下で、下記式(3)で表されるスチレン系化合物を含む単量体群Zを重合して、活性末端を有する重合体ブロックを得る工程と、
前記活性末端を有する重合体ブロックの存在下で、共役ジエン化合物を含む単量体群Yを重合して、前記重合体ブロックに結合する共役ジエン系重合体鎖を形成する工程と、
前記重合体ブロックが有する、前記スチレン系化合物に由来する単量体単位中のベンジル位と、上記(A)ビニルシラン化合物及び上記(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、を反応させる工程と、
を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法。
[4] 上記[1]の変性共役ジエン系重合体、又は、上記[2]若しくは[3]の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体と、無機フィラーと、架橋剤とを含有する重合体組成物。
[5] 上記[4]の重合体組成物を架橋させてなる架橋重合体。
[6] 上記[5]の架橋重合体を、少なくともトレッド又はサイドウォールの材料として用いたタイヤ。
(A)上記式(1)で表されるビニルシラン化合物。
(B)窒素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ窒素原子、リン原子及び硫黄原子に活性水素が結合していない芳香族ビニル化合物。
当該変性共役ジエン系重合体は、以下の方法1及び方法2により製造することができる。本開示の態様に関連する事項について、以下、詳細に説明する。
方法1は、重合開始剤の存在下で、(A)ビニルシラン化合物及び(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と共役ジエン化合物とを含む単量体群Xを重合して、活性末端を有する重合体ブロックを得る工程(1−1)と、活性末端を有する重合体ブロックの存在下で、共役ジエン化合物を含む単量体群Yを重合して、重合体ブロックに結合する共役ジエン系重合体鎖を形成する工程(1−2)と、を含むものである。なお、以下では、活性末端を有する重合体ブロックを「開始剤ブロック」とも称する。
(単量体群X)
・(A)ビニルシラン化合物
(A)ビニルシラン化合物は、基「−SiR1R2R3」を有するビニルシラン化合物であり、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
R33のヒドロカルビレン基は、炭素数1〜20のアルカンジイル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルカンジイル基であることがより好ましい。
L1としては、炭素数1〜20のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。nは、好ましくは0である。
ヒドロカルビルオキシ基含有ビニルシラン化合物として、例えば、トリヒドロカルビルオキシビニルシラン、ジアルコキシアルキルビニルシラン、ジアルコキシアリールビニルシラン、モノアルコキシジアルキルビニルシラン、モノアルコキシジアリールビニルシラン、モノアルコキシアルキルアリールビニルシラン等を、それぞれ挙げることができる。
ビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシランとして、例えばビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン等を;
ビス[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]アルキルビニルシランとして、例えばビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチルビニルシラン等を;
ビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルビニルシランとして、例えばビス(ジメチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)(2−メトキシエチル)ビニルシラン等を;
環状アミノジアルキルビニルシランとして、例えば1−ピロリジニルジメチルビニルシラン、1−ピペリジニルジメチルビニルシラン、1−ヘキサメチレンイミノジメチルビニルシラン、4,5−ジヒドロ−1−イミダゾリルジメチルビニルシラン等を;
ビス(環状アミノ)アルキルビニルシランとして、例えばビス(1−ピロリジニル)メチルビニルシラン、ビス(1−ピペリジニル)メチルビニルシラン等を、それぞれ挙げることができる。
(B)芳香族ビニル化合物において、窒素原子、リン原子及び硫黄原子は、いずれも活性水素に結合しておらず、例えば3置換のヒドロカルビルシリル基等で保護されていてもよい。(B)芳香族ビニル化合物は、フィラーの分散性の観点から、窒素含有芳香族ビニル化合物であることが特に好ましい。
上記式(8−2)において、X3は、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環等の環部分から水素原子を1個取り除いた基などが挙げられる。当該環部分が有していてもよい置換基としては、R61の説明が適用される。
上記式(8−2)で表される化合物として、例えば、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジンなどを、それぞれ挙げることができる。なお、(B)芳香族ビニル化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(単量体群Y)
単量体群Yは、共役ジエン化合物を含む。本工程の重合に使用する共役ジエン化合物としては、工程(1−1)で例示した化合物等が挙げられる。共役ジエン化合物は、中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンの少なくともいずれかであることが好ましい。なお、共役ジエン化合物としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
方法2は、重合開始剤の存在下で、上記式(3)で表されるスチレン系化合物を含む単量体群Zを重合して、活性末端を有する重合体ブロック(以下、「スチレン系ブロック」ともいう。)を得る工程(2−1)と、活性末端を有するスチレン系ブロックの存在下で、共役ジエン化合物を含む単量体群Yを重合して、スチレン系ブロックに結合する共役ジエン系重合体鎖を形成する工程(2−2)と、スチレン系ブロックが有する、上記式(3)で表される化合物に由来する単量体単位中のベンジル位と、(A)ビニルシラン化合物及び(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とを反応させる工程(2−3)と、を含むものである。この方法によれば、単量体群Yからなる共役ジエン系重合体鎖の一末端に、特定構造[F]が側鎖部分に結合された重合体ブロックを有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
(単量体群Z)
・スチレン系化合物
上記式(3)において、R5〜R9のヒドロカルビル基は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。ただし、R5〜R9の少なくとも1個は、ベンジル位に水素原子を有する。上記式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン(p−メチルスチレン)、2−(4−メチルフェニル)−1−プロペン、4−エチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、4−メチルスチレンが特に好ましい。なお、上記式(3)で表される化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本工程では、活性末端を有するスチレン系ブロックの存在下で単量体群Yを重合して、スチレン系ブロックに結合する共役ジエン系重合体鎖を形成する工程である。本工程で使用する単量体群Y及び重合条件については上記工程(1−2)の説明が適用される。
本工程では、スチレン系ブロック中のベンジル位と、(A)ビニルシラン化合物及び(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とを反応させて、特定構造[F]をスチレン系ブロック中に導入する。
・末端変性工程
工程(1−2)及び工程(2−2)において、開始剤ブロックを用いて単量体群Yを重合することにより、活性末端を有する(変性)共役ジエン系重合体が得られる。この活性末端を有する(変性)共役ジエン系重合体につき、重合停止剤として、例えばアルコールを用いて重合を停止させてもよいが、(変性)共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する元素を有し、当該元素に活性水素が結合しておらず、かつ重合体の活性末端と反応し得る官能基を有する化合物(以下、「末端変性剤」ともいう。(E)化合物に相当。)と、を反応させてもよい。こうした工程を経ることにより、共役ジエン系重合体鎖の一末端に、特定構造[F]を有する重合体ブロックを有し、当該重合体ブロックを有していない側の末端に、シリカと相互作用する構造を有する変性共役ジエン系重合体が得られる。
(IV) 分子中に、イソ(チオ)シアナート基を2つ以上有する化合物(E−4);
(V) ケイ素−窒素結合を有する化合物(E−5);
R13は、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基又は炭素数6〜20のアリーレン基であることが好ましい。
mは、共役ジエン系重合体との反応性を高める観点から、0又は1が好ましい。
A1の具体例としては、例えば1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、3級アミノ基、炭素−窒素二重結合を有する基、窒素含有複素環基、1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、及び、チオール基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる硫黄含有基等が挙げられる。これらの中でも、シリカとの親和性が良好である観点から、窒素原子を有する基であることが好ましい。
X1は、好ましくはヒドロカルビル基であり、メチル基又はエチル基がより好ましい。
(チオ)カルボニル基を有する化合物として、例えば4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン等の4−アミノアセトフェノン;1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン等のビス(ジヒドロカルビルアミノアルキル)ケトン:2−ジメチルアミノエチルアクリレート等のジヒドロカルビルアミノアルキル(メタ)アクリレート;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のヒドロカルビルイミダゾリジノン;1−フェニル−2−ピロリドン等のN−ヒドロカルビルピロリドン;N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−ヒロドカルビルカプトラクタム;N,N−ジエチルホルムアミド等のN−ジヒドロカルビルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド等のN,N−ジヒドロカルビルアセトアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;などを;イソ(チオ)シアナート基を有する化合物として、例えば3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン等を;挙げることができる。
A11〜A13の特定官能基を有する基としては、エポキシ基を有する炭素数4〜12の基、2−ピロリドニル基を有する炭素数4〜20の基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、スチリル基、エステル基等が挙げられる。好ましくは、エポキシ基を有する炭素数4〜12の基、2−ピロリドニル基を有する炭素数4〜20の基又は炭素数1〜5のアルコキシ基である。
aは、重合体組成物の加工性の改善効果を十分に確保するとともに、特定ポリオルガノシロキサンの粘度が高くなりすぎるのを抑制する観点から、好ましくは20〜150の整数であり、より好ましくは30〜120の整数である。bは、0〜150が好ましく、0〜120がより好ましい。cは、0〜180が好ましく、10〜150がより好ましい。
a,b及びcの合計数は、特定ポリオルガノシロキサンの取り扱い容易性の観点から、400以下が好ましく、300以下がより好ましい。なお、特定ポリオルガノシロキサンは公知の合成方法により得ることができる。また、市販品を入手して使用することもできる。
本開示の重合体組成物は、上記の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分、無機フィラー及び架橋剤を含有する。重合体組成物中における上記の変性共役ジエン系重合体の含有割合は、重合体組成物に含まれるゴム成分のうちの20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。ここで、無機フィラーとしては、シリカ及びカーボンブラックの少なくとも一方を好ましく使用できる。
・ビニル結合含量(%):400MHzの1H−NMRによって測定した。
・結合スチレン含量(%):400MHzの1H−NMR測定によって測定した。
・変性前の重量平均分子量(変性反応前ピーク分子量):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。GPCの具体的な測定条件は以下の通りである。
(GPC測定条件)
測定器:HLC−8020(東ソー社製)
カラム:GMH−HR−H(東ソー社製)2本を直列に連結した
検出器:示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
・ムーニー粘度(ML1+4,100℃):JIS K6300に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で求めた。
窒素置換された100mlアンプル瓶に、シクロヘキサン28g、及びテトラメチルエチレンジアミン8.6mmolを添加し、さらに、n−ブチルリチウム6.1mmolを添加した。次いで、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン8.0g、及び1,3−ブタジエン2.0gをゆっくりと添加し、60℃のアンプル瓶内で120分反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(これを「開始剤ブロック1」とする。)を得た。
次に、攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、1,3−ブタジエン357.7g、及びスチレン132.3gを仕込んだ後、開始剤ブロック1を全量加え、40℃で重合を開始した。重合を開始してから10分経過後、1,3−ブタジエン195.3g、及びスチレン14.7gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は60℃であった。連続添加終了後、さらに20分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、次いで、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.08mmolを20重量パーセント濃度のシクロヘキサン溶液の状態で添加し、10分間反応させた。さらに、下記式(6−1)で表されるポリオルガノシロキサンA0.027mmolを20質量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムA1を含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、得られた共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムA1を得た。変性共役ジエン系ゴムA1の重合処方を下記表1に、得られた変性共役ジエン系ゴムA1の性質を下記表2に示す。
ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランに替えて下記表1に記載の重合モノマーを用いた点以外は実施例1−1と同様の方法により、活性末端を有する重合体ブロック(開始剤ブロック2〜7)を得た。
また、使用する開始剤ブロック及び末端変性に用いる化合物の種類及び量を下記表1に記載のとおりに変更した点以外は実施例1−1と同様の方法により、変性共役ジエン系ゴムA2〜A7をそれぞれ得た(下記表1参照)。なお、開始剤2〜7の配合量は、実施例1−1と同様、リチウム6.1mmol分とした。得られた変性共役ジエン系ゴムA2〜A7の性質を下記表2に示す。
X−1:ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン
X−2:ジメチル−1−ピペリジニルメチルビニルシラン
X−3:tert−ブトキシジフェニルビニルシラン
X−4:3−1−(ピロリジニル)エチルスチレンと4−1−(ピロリジニル)エチルスチレンとの混合物
X−5:4−ビニルピリジン
N/Si−1:1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン
N/Si−2:ポリオルガノシロキサンA(上記式(6−1)で表される化合物)
N/Si−3:四塩化ケイ素
N/Si−4:3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、1,3−ブタジエン357.7g、及びスチレン132.3gを仕込んだ後、テトラエチレンジアミン7.5mmolを加え、さらに、n−ブチルリチウム5.4mmolを加え、40℃で重合を開始した。重合を開始してから10分経過後、1,3−ブタジエン195.3g、およびスチレン14.7gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は60℃であった。連続添加終了後、さらに20分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.08mmolを20質量%濃度のシクロヘキサン溶液の状態で添加し、10分間反応させた。さらに、上記式(6−1)で表されるポリオルガノシロキサンA0.027mmolを20質量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムP1を含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、得られた変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムP1を得た。変性共役ジエン系ゴムA1の重合処方を上記表1に、得られた変性共役ジエン系ゴムA1の性質を上記表2に示す。
末端変性剤の種類及び量を上記表1に記載のとおりに変更した点以外は比較例1−1と同様の方法により、変性共役ジエン系ゴムP2,P3をそれぞれ得た。得られた変性共役ジエン系ゴムP2,P3の性質を上記表2に示す。
上記で得られた変性共役ジエン系ゴムA1を用いて、下記表3に示す配合処方により調製したゴム組成物を加硫して物性評価を行った。ゴム組成物の混練方法及び評価方法は以下の通りである。
*1;ローディア社製 Zeosil 1165MP
*2;デグッサ社製 Si69
*3;新日本石油社製 フッコール エラミック30
*4;東海カーボン社製 シースト7HM
*5;大内新興化学工業社製 ノクラック6C
*6;大内新興化学工業社製 ノクセラーD
*7;大内新興化学工業社製 ノクセラーNS
容積250mlのバンバリーミキサーを用いて、実施例1−1で得た変性共役ジエン系ゴムA1 100部を素練りした。次いで、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):163m2/g)40部、シランカップリング剤(ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)4.3部、およびプロセスオイル(商品名「フッコール エラミック30」、新日本石油社製)10部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。この混練物に、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ローディア社製)14部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3.0部、ステアリン酸(商品名「SA−300」、旭電化工業社製)2部、及び老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2部を添加し、2.5分間混練して、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。このゴム組成物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練した後、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールを用いて、得られたゴム組成物と、硫黄1.6部及び加硫促進剤(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS」、大内新興化学工業社製)1.4部と、ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.4部との混合物)とを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。
(i)ムーニー粘度:加硫前のゴム組成物を測定用試料とし、JIS K6300−1に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。数値が小さいほど、ゴム組成物の加工性に優れる。
(ii)ウェットグリップ性:加硫ゴムを測定用試料とし、JIS K6255に従って、直径29.0mm、厚み12.5mmの試験片を用いて反発弾性試験を行い、0℃における反発弾性を測定した。比較例2−1を基準サンプルとし、比較例2−1の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいほど、加硫ゴムをタイヤに用いた際のウェットグリップ性に優れる。
(iii)低発熱性:加硫ゴムを測定用試料とし、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み2.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。比較例2−1を基準サンプルとし、比較例2−1の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいほど、加硫ゴムをタイヤに用いた際の低発熱性に優れる。
物性評価の結果を下記表4に示す。
使用するゴム成分の種類及び量を下記表4に記載の通り変更した点以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物を調製し、調製したゴム組成物を加硫して物性評価を行った。物性評価の結果を下記表4に示す。
(活性末端を有するスチレン系ブロックの製造)
窒素雰囲気下、ガラス反応容器に、シクロヘキサン31.8部、4−メチルスチレン14.2部、及びテトラメチルエチレンジアミン1.74部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム0.96部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.0モルで、かつn−ブチルリチウム1モル当たり4−メチルスチレン8.0モル)を加え、反応温度50℃にて30分間反応させることにより、開始剤ブロックとして、活性末端を有するスチレン系ブロック(これを「スチレン系ブロックD」という。)を含有する溶液を得た。得られたスチレン系ブロックDの4−メチルスチレン単位数を確認する目的で、反応液の一部を分取し、メタノールを添加して触媒残渣を抽出洗浄したのちに溶媒を留去した。GPC測定より、このスチレン系ブロックDの4−メチルスチレン単位数(平均値)は9.0であった。
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン86.9部、スチレン23.1部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.07部を仕込んだ後、上記で得られたスチレン系ブロックDを含有する溶液2.6部を添加し、50℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認し、末端変性剤として1−フェニル−2−ピロリドン0.12部を添加し、30分間反応させた。次に、60℃に温度を上げて、リチオ化剤としてテトラメチルエチレンジアミン3.3部及びn−ブチルリチウム1.88部を添加して60分間反応させた。さらに、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン1.6部及び1,3−ブタジエン0.4部を添加して120分間反応させ、その後、メタノール1.58部を添加し、30分間反応させて、変性共役ジエン系ゴムB1を含有する溶液を得た。得られた溶液に、変性共役ジエン系ゴム100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(BASF社製、商品名「イルガノックス1520」)0.20部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムB1を得た。
重合処方を下記表5に記載のとおりに変更した点以外は実施例3−1と同様の方法により、変性共役ジエン系ゴムB2〜B7をそれぞれ得た。得られた変性共役ジエン系ゴムB2〜B7の性質を下記表6に示す。
N/Si−3:四塩化ケイ素
N/Si−4:3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン
N/Si−5:1−フェニル−2−ピロリドン
W−1:ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン
W−2:ジメチル−1−ピペリジニルメチルビニルシラン
W−3:tert−ブトキシジフェニルビニルシラン
W−4:3−1−(ピロリジニル)エチルスチレンと4−1−(ピロリジニル)エチルスチレンとの混合物
W−5:4−ビニルピリジン
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン86.9部、スチレン23.1部、及びテトラメチルエチレンジアミン0.15部を仕込んだ後、重合開始剤としてn−ブチルリチウム0.05部を添加し、50℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、末端変性剤としてN−フェニルピロリドン0.12部を添加し、30分間反応させた。次に、重合停止剤としてメタノール1.58部を添加し、30分間反応させ、変性共役ジエン系ゴムQ1を含有する溶液を得た。得られた溶液に、変性共役ジエン系ゴム100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(BASF社製、商品名「イルガノックス1520」)0.20部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムQ1を得た。得られた変性共役ジエン系ゴムQ1の性質を上記表6に示す。
末端変性剤の種類及び量を上記表5に記載のとおりに変更した点以外は比較例3−1と同様の方法により、変性共役ジエン系ゴムQ2,Q3をそれぞれ得た。得られた変性共役ジエン系ゴムQ2,Q3の性質を上記表6に示す。
上記で得られた変性共役ジエン系ゴムB1を用いて、下記表7に示す配合処方により調製したゴム組成物を加硫して物性評価を行った。ゴム組成物の混練方法及び評価方法は以下の通りである。
*1;ローディア社製 Zeosil 1165MP
*2;デグッサ社製 Si69
*3;新日本石油社製 フッコール エラミック30
*4;大内新興化学工業社製 ノクラック6C
*5;大内新興化学工業社製 ノクセラーD
*6;大内新興化学工業社製 ノクセラーNS
使用するゴム成分の種類及び量を下記表8に記載の通り変更した点以外は実施例4−1と同様にしてゴム組成物を調製し、調製したゴム組成物を加硫して物性評価を行った。物性評価の結果を下記表8に示す。
以上のことから、特定構造[F]を有する重合体ブロックを末端に有する変性共役ジエン系重合体によれば、ゴム組成物の加工性に優れ、しかも低燃費性能及びウェットグリップ性に優れた加硫ゴムを得ることができることが確認された。
Claims (10)
- 共役ジエン系重合体鎖の一末端に、下記(A)ビニルシラン化合物及び下記(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する構造を有する重合体ブロックを有し、
前記重合体ブロックにおいて、前記(A)ビニルシラン化合物及び前記(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する構造が側鎖部分に結合されている、変性共役ジエン系重合体。
(A) 基「−SiR1R2R3」を有するビニルシラン化合物。ただし、R1は、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基、又はヒドロカルビル基である。
(B) 窒素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ窒素原子、リン原子及び硫黄原子に活性水素が結合していない芳香族ビニル化合物。 - 前記重合体ブロックは、前記(A)ビニルシラン化合物及び前記(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する単量体単位を有する、請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系重合体。
- 前記共役ジエン系重合体鎖における前記重合体ブロックを有していない側の末端に、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄及びスズよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を有する化合物に由来する構造が結合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
- 重合開始剤の存在下で、下記式(3)で表されるスチレン系化合物を含む単量体群Zを重合して、活性末端を有する重合体ブロックを得る工程と、
前記活性末端を有する重合体ブロックの存在下で、共役ジエン化合物を含む単量体群Yを重合して、前記重合体ブロックに結合する共役ジエン系重合体鎖を形成する工程と、
前記重合体ブロックが有する、前記スチレン系化合物に由来する単量体単位中のベンジル位と、下記(A)ビニルシラン化合物及び下記(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、を反応させる工程と、
を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法。
(A) 基「−SiR1R2R3」を有するビニルシラン化合物。ただし、R1は、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基、又はヒドロカルビル基である。
(B) 窒素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ窒素原子、リン原子及び硫黄原子に活性水素が結合していない芳香族ビニル化合物。
- 前記(A)ビニルシラン化合物及び前記(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と共役ジエン化合物とを含む単量体群Xと、前記スチレン系化合物に由来する単量体単位中のベンジル位と反応させる、請求項5に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
- 前記単量体群Yの重合により、一方の末端に前記重合体ブロックを有し他方の末端が活性末端である前記共役ジエン系重合体鎖を得て、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、下記(E)化合物とを反応させる工程を更に含む、請求項5又は6に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
(E)窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄及びスズよりなる群から選ばれる少なくとも一種の特定元素を有し、前記特定元素に活性水素が結合しておらず、かつ前記共役ジエン系重合体鎖が有する活性末端と反応する官能基を有する化合物。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体と、無機フィラーと、架橋剤とを含有する重合体組成物。
- 請求項8に記載の重合体組成物を架橋させてなる架橋重合体。
- 請求項9に記載の架橋重合体を、少なくともトレッド又はサイドウォールの材料として用いたタイヤ。
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