以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
本発明の保護継電装置は、専用の装置、ハードウェアを要せずに最近IPネットワーク化の技術に着目したIP対応の保護継電装置を実現する回路方式を発案したものである。
図1に例示された本実施形態の保護継電装置10は、IEEE1588と時刻同期(PTP)対応ハブとを組み合わせたタイミング生成回路を有する。保護継電装置10はハブ11と伝送ボード12とを備える。伝送ボード12はシステムバス13を介してメインCPUボード14と接続されている。
保護継電装置10は、図13に例示した保護継電システムに適用される。複数台の保護継電装置10にはそれぞれIEEE1588対応のハブ(HUB)11を備えたIPネットワーク構成となっている。各ハブを介して情報を授受する保護継電システムでは、全ての保護継電装置10の時間同期が必要となる。
図1の保護継電装置10においては、ハブ11から時間同期出力される信号を受信し、リレー演算に出力する信号をその信号に同期するDPLL(ディジタル形フェーズロックループ)制御を行う。このような条件を備え、各保護継電装置の系統電気情報となるサンプリングデータ(瞬時値)の共通利用を図る。
ハブ11は、IEEE1588のPTPプロトコルに準拠した同期回路111と、この同期回路の状態を監視する状態監視回路112とを備える。
同期回路111は、ネットワーク内で同期を取った後の基準信号、例えば、系統周波数である50Hz、60Hzを基準としたPTP(50PPSまたは60PPS)信号を基準信号として出力する。PPSは、パルス/秒を意味する。例えば、50Hz周期の信号は、タイミング信号が1秒間に50パルスで発している信号を意味する。
状態監視回路112は、ハブ11の故障を示す「故障ステータス」、PTP基準信号の妥当性を保証する条件となる「同期ステータス」信号を生成する。
本態様では、PTP対応のハブ11が前述の3本の信号を用意することにより、リレー側では、ネットワーク内に接続された複数の保護継電装置10間で、PTP信号のタイミングを元に、保護継電装置10内で必要なタイミング信号を生成する。
保護継電装置10内では、PTP信号に同期した、50Hz(60Hz)その12倍の周波数成分である600Hz(720Hz)、または、高速サンプリングを行うための、96倍の4.8kHz、55.76kHz信号を生成することができる。
伝送ボード12は、ハブ11からPTP(50PPSまたは60PPS)信号を受信し、メインCPUボード14が動作するための必要な信号SYNC1(エッジ信号f2:600Hz or 720Hz)及びSYNC4(エッジ信号f1:50Hz or 60Hz)をPTP同期信号に同期して出力する。本事例では、96倍の4.8kHz、5.76kHz信号を表現していないが、このような他の周波数成分を出力しても良いものとする。各周波数の信号との関係は、図2に示す。
図1に示された伝送ボード12は、LANの伝送処理を行うCPU(中央演算装置)122を備える。伝送ボード12には、水晶発振子(クロック発振子)120、PTP同期回路121、ステータス表示部123により、PTP同期・表示回路が構成される。
また、CPU122は、LAN水晶発振子126のクロック信号で動作するLANコントローラ125を介して、物理層(PHY)124経由で、ハブ11にLAN接続して、図13に示す他の保護継電装置10と通信が実行される。
PTP同期回路121は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等に例示される論理設計可能なデバイスにおいて、回路構成が書き換え可能なデバイスに実装できる。
PTP同期回路121には、本発明の一態様である従属同期回路15に加えて、同期監視部16、ステータス検定部17、論理積回路18、状態監視部19を備えている。
従属同期回路15は、保護継電装置10の同一のネットワークに属する他の保護継電装置10と時間同期を行う。同期監視部16は従属同期回路15を監視する。ステータス検定部17はハブ11から供された故障ステータスと同期ステータスに基づくステータス検定信号出力する。論理積回路18は前記ステータス検定信号とハブ11の同期回路111からのPTP信号との論理積を従属同期回路15に出力する。状態監視部19はステータス検定部17を監視する。
PTP同期回路121は、ハブ11から受けたPTP信号、PTP信号のタイミング信号、故障ステータス及び同期ステータスの信号に基づき、保護継電装置10の保護演算に必要とするタイミング信号を生成する。そして、50Hzパルス、600Hzパルスを図示省略の保護演算部に出力する。一方、CPU122に対しては、伝送処理を実行して動作するための信号SYNC1(600Hz又は720Hz)、SYNC4(50Hzまたは60Hz)を出力する。
図2は、伝送ボード12の水晶発振子120によるクロック周波数1.8432MHzの分周例を示す。水晶発振子120のクロックはその倍数のクロックであってこれを分周した結果であってもよい。
図3は、クロック周波数の1.8432MHzに基づく出力位相関係例を示す。50Hz系で説明すると、SYNC4の50Hzの変化点は、SYNC1の600Hzの変化点であり、サンプリング4.8kHzの変化点でもある。つまり、全て、PTP信号に同期した状態では、各周波数の位相は同じ変化点の位相となる。従属同期回路15は、水晶発振子120のクロックをカウントすることにより周期を刻む。
例えば、水晶発振子120のクロック周波数が1.8432MHzである場合、以下のように算出された周期となる。
・SYNC4=50Hz → SYNC1=600Hz 1周期1.666ms(3072カウント)
・SYNC4=60Hz → SYNC1=720Hz 1周期1.388ms(2560カウント)
また、SYNC1及びSYNC4がPTP信号(50PPS信号)と同位相になるよう位相制御を行う。水晶発振子120の精度によってPTP信号との誤差が生じるので、その誤差は、PTP信号(50PPS信号)を受信する毎に従属同期が行われるようにする。
上記の従属同期はSYNC1、SYNC4を作成する際の分周率を変化させて行われる。但し、以下の条件1,2の場合、従属同期は実行されない。
条件1:ハブ11がマスターハブ(クロックマスター)に対してIEEE1588のPTPプロトコルで非同期である状態。非同期であることはハブ11からの「同期ステータス信号」で判断した時。
条件2:保護継電装置10のハブ11と他の保護継電装置10のハブ11との同期がとれているが、ハブ11から出力されるPPS信号が従属同期回路15との誤差±20μsの範囲内でない場合(±20μsは同期領域とする)、前方保護により連続回数による同期はずれを検出して、非同期状態と判断した時。
基準となるハブ11から出力されたPPS信号と従属同期回路15から生成された自己のSYNC4(エッジ信号f1:50Hzまたは60Hz)との位相比較、前方保護・後方保護により、非同期判定された状態であれば、そのPTP同期信号の健全性をチェックした上で、その信号に位相を合わせるべき同期の引き込みの制御を行う。つまり、従属同期回路15のカウンタ値の偏位量により、従属同期回路15の位相を基準とすべきPTP信号に位相を合わせるような追従動作を行う。
これらの動作状態については、伝送ボード12のステータス表示部123、CPU122からのPTP同期回路121内のレジスタアクセスにより状態が確認できる。
図4を参照しながら従属同期回路15の基本構成とその機能について説明する。同図において、符号aは「600Hzパルス信号」、符号bは「50Hzパルス信号」、符号cは「50HzPTP信号」、符号dは「50HzPTP信号と50Hzパルス信号の差分時間」、符号eは「位相補正実行信号」を示す。符号f1,f2は「エッジ信号」、符号gは「50HzPTP信号と600Hzパルス信号の差分時間」、符号hは「リセット信号」、符号i1〜i5,jは「位相制御信号」を示す。
従属同期回路15は、水晶発振子120からのクロック信号に基づく位相比較回路203での位相比較により位相補正実行信号eを得る。この位相補正実行信号eは、AND回路(AND1,AND2,AND3)、エッジ抽出回路205、位相差比較回路206及び位相差量検定回路207を介して位相制御信号i1〜i5として出力される。
600Hzパルス信号aと位相補正実行信号eは、AND1,AND3を介してエッジ抽出回路205に入力される。エッジ抽出回路205は、50HzPTP信号cと関係する600Hzエッジ信号f1を出力する。
50HzPTP信号cと位相補正実行信号eは、AND2,パルス化回路を介してエッジ抽出回路205に入力される。エッジ抽出回路205は、50HzPTP信号cと関係するPTPの50Hzエッジ信号f2を出力する。
位相差量検定回路207は以下の条件により位相制御信号i1〜i5,hを生成する。
CPU122の指令により、50HzPTP信号cのワンパルスの発信タイミングで、分周回路202を強制リセットするリセット信号hを生成する(後述の実施形態4)。
位相補正実行信号eの条件により、分周回路202の位相制御量を引き込み易くした複数の位相制御信号i4,i5を生成する。
位相補正実行信号eの条件により、50HzPTP信号cと600Hzパルス信号の差分時間gが同期範囲として管理された領域以内にある場合、分周回路202の位相制御量を±1クロック分とする位相制御信号i2,i3を生成する。または、位相補正実行信号eの条件により、位相制御量を変更しない位相制御信号i1を生成する(0クロック、位相制御しない分周条件)。
以上の位相制御信号i1〜i5は600Hzカウンタ回路201に閉ループされる。
600Hzカウンタ回路201は、位相差量検定回路207から位相制御信号i1〜i5の入力を受ける一方で水晶発振子120から発振パルスをクロック信号として受けて600Hzパルス信号aを得る。600Hzパルス信号aは分周回路202とAND回路(AND1)とに出力される。
分周回路202は、600Hzカウンタ回路201から受けた600Hzパルス信号aの分周により所定の同期パルス信号として50Hzパルス信号bを生成する。
位相比較回路203は、分周回路202でのデコードにより得られた50Hzパルス信号bと、ハブ11から供された同期基準となる50HzPTP信号cとの位相比較を行う。
差分量検定回路204は、前記位相比較による50Hzパルス信号bと50HzPTP信号cとの差分時間dに基づき位相補正実行信号eを生成する。
図5を参照しながら差分量検定回路204による位相同期補正について説明する。
差分量検定回路204は、50Hzパルス信号bと50HzPTP信号cの位相差が±20μs以上である場合に位相補正実行信号eをアクティブにする。そして、50HzPTP信号cと600Hzパルス信号aの位相差が±20μs範囲内となるように位相制御を行う(後述の実施形態1)。
同期の引き込み時間を短縮させる機能として、強制リセットするリセット信号hを使用すれば、50HzPTP信号cのタイミングで50Hzパルス信号bを一度だけセットする。これにより、50HzPTP信号cに同期した600Hzパルス信号a及び50Hzパルス信号bを得ることができる(後述の実施形態4)。
50HzPTP信号cと600Hzパルス信号aの位相差nに応じた制御の一例を以下に示す。位相差の閾値とそのカウント値は、水晶発振子120と600Hzカウンタ回路201によって決定されるカウント値であり、クロック周波数の1.8432MHzを例にしてカウント換算を一例として示すものである。
・位相差+20μs以下(差+36カウント以下)の場合、20ms間に−0.5μs(−1カウント)の位相制御信号i2(図5の領域A+)
・位相差−20μs以下(差−36カウント以下)の場合、20ms間に+0.5μs(+1カウント)の位相制御信号i3(図5の領域A−)
・位相差+20μs以上(差+36カウント以上)の場合、20ms間に−39μs(−72カウント)の位相制御信号i4(図5の領域B+)
・位相差−20μs以上(差−36カウント以上)の場合、20ms間に+39μs(+72カウント)の位相制御信号i5(図5の領域B−)
特に、本態様の位相同期補正においては、図5に例示されたように、エッジ信号f1の周期毎の同期比較結果をf2周期毎に位相制御を行う。図示の態様は、1.8432MHzの分解能を有する従属同期回路15であって、基準周波数を50Hzのエッジ信号f1で位相比較し、さらに、高速な同期引き込みのために、内部で使用する周波数600Hzのエッジ信号f2として、そのカウンタ値を計算する。また、本態様では、同期引き込み量を6クロック分(約3.25μs)とし、同期範囲を±20μs(±36クロック分)とする。位相比較は、エッジ信号f1の周期毎行い、同期引き込み動作においては、エッジ信号f2の周期毎行う。
また、同期の引き込みを行う際、例えば、50Hzパルス信号bに対して±39μsの調整を行う。これは600Hzパルス信号aに対して±3.25(±6クロック分)μsの調整を行うことで実現する(エッジ信号f2:600Hz、エッジ信号f1:50Hzの場合、3.25μs×12=±39μs)。600Hzパルス信号a及び50Hzパルス信号bはCPU122が定周期処理するタイミング信号となり、CPU122は600Hzパルス毎に定められた処理を行う。
しかしながら、同期の引き込みを行う場合、不用意な大きな位相制御を行うことにより、周期が短くなると、予め定められた処理が終わる前に次の処理開始となるので、CPU122はオーバーランすることがある。
そこで、本態様の従属同期回路15は、CPU122のオーバーランを回避するために、600Hz信号=1.66ms周期のうち調整幅を±3.25μs(±6クロック分)と小さくする。
また、位相の調整幅はその値が小さい程、位相の補正に時間を要する。
本態様では、ハブ11からのPTP信号cに対して50Hz周期で位相制御を行うのではなく、その12倍の周波数成分の位相に対して、位相制御を行う。これにより、50Hz周期で位相比較を行い、600Hz周期で位相制御により、従属同期を行い、同期の引き込み動作をする。
例えば、所定の同期判定領域が±20μsである場合、一度だけ従属同期回路15から生成する50Hz信号に対して強制的に位相合わせを行う。これにより、高速にハブ11からのPTP信号cに対して同期した50Hzパルス信号b、600Hzパルス信号aを得ることができる(後述の実施形態4)。
位相制御量においては、同期判定領域を越えない位相制御量とすることが望ましい。
本態様は、同期判定領域が±20μsであると、50HzPTP信号c(図4)で判定した位相制御量は最大3.25μs×12=±39μとなり、同期判定範囲40μs以内に必ず同期引き込み過程で同期判定範囲に入る設定としている。位相制御量が多いと越えてしまい、同期引き込み極性が反転して、引き込み動作にハンチングが発生する。
最大引き込み時間を次のように算出する。
最大位相差時間は、600Hz周期で同期引き込みを行うので、最大の位相1/600Hz/2=0.83msとなる。
600Hz周期、±3.25μs(±6クロック分)及び同一極性で引き込みを行うと、0.83ms÷3.25μs=256回となる。
この引き込み動作は、600Hz周期で行えるので、256回÷600Hz=427msで引き込むことが可能である。
さらに、±20μs領域に入った後、ロックするまで±0.54μs(±1クロック)で引き込むとすると、20μs÷0.54μs=37回となる。
この領域での従属同期動作は、50Hz周期で行えるので、1/50Hz×37回=740msとなる。
最大、427msで同期化可能となり、最大1.16s(427ms+740ms)で従属同期回路15による±1クロック分の制御にロックすることができる。
以下に本発明のより具体的な従属同期回路の態様例について説明する。
[実施形態1]
図7に例示された実施形態1の従属同期回路15は、エッジ信号f1の周期毎の同期比較結果をf2周期毎に位相制御する。
従属同期回路15は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の論理設計可能なデバイスにより実装されることから、クロック同期設計のために、必要とされる周波数以上の周波数で処理が実行される。そのために、従属同期回路15に供される水晶発振子120の周波数はその逓倍の周波数が使用される。
以下に従属同期回路15を構成する主要な回路の機能について説明する。
クロック分周回路1は、従属同期回路15の精度を決定するクロック分周回路である。
本態様では、水晶発振子120の周波数が例えば18.432MHzである場合、10分周することで、1.8432MHzのクロック信号s1を得る。クロック分解能としては、約0.5μsのクロックジッタを有する同期回路に設計可能である。
DPLLカウンタ回路2は、クロック信号s1と従属同期回路15で得られるエッジ信号f2とによって決定する深さのカウンタ回路である。
例えば、エッジ信号f1(SYNC4)の周波数が50Hzの場合、エッジ信号f2(SYNC1)の周波数は600Hzとなる。この場合、例えば、クロック信号s1の周波数が1.8432MHz、エッジ信号f2の周波数が600Hzの場合、DPLLカウンタ回路2はエッジ信号f2の周期1.666msをクロック信号s1の3072カウントで周期性を得る。また、エッジ信号f1(SYNC4)の周波数が60Hzの場合、エッジ信号f2(SYNC1)の周波数は720Hzとなる。この場合、DPLLカウンタ回路2は、エッジ信号f2の周期1.388msをクロック信号s1の2560カウントで周期性を得る。これにより、4095カウントまで計測できる12ビットカウンタを用意することとなる。前述のクロックジッタ性能の揺らぎを抑えるために、周波数を高く設定した場合は、カウンタの深さが12ビット以上の多ビットカウンタとなる。
DPLLカウンタ回路2は、12ビットのカウンタの出力信号として、エッジ信号f1のタイミング信号s2を生成する。このエッジ信号f1のタイミング信号s2は、出力比較回路22からDPLLカウンタリセットの信号(s24)によりリセットされる。
一般的な位相同期回路は位相比較の結果に基づき位相同期の制御を行うが、従属同期回路15では同期の引き込みタイミングは位相比較と位相同期制御を分割して行う。
すなわち、従属同期回路15は、位相比較タイミングのエッジ信号f1と、それより分解能高いタイミングを設けて、例えば、エッジ信号f2(エッジ信号f1の12倍の周波数成分)の周波数により位相同期の制御を行う。つまり、このような位相同期制御を12分割して小刻みに位相制御することにより、分解能による位相同期のクロック揺らぎを増加させることなく、高速に同期引き込みを行える。
従属同期回路15においては、二つの周波数成分であるエッジ信号f1,f2が生成される。エッジ信号f1は、例えば、50Hzの周波数のパルス化信号s31(SYNC4)であり、以下に述べるf2パルス化回路21により生成される。一方、エッジ信号f2は、例えば、600Hzの周波数のパルス化信号s21(SYNC1)であり、以下に述べるf1パルス化回路31により生成される。
f2パルス化回路21は、DPLLカウンタ回路2でエッジ信号f2の周期が決定されるので、DPLLカウンタ回路2から出力されたタイミング信号s2(f1タイミング)をデコードする。そして、フリップフロップのセット、リセットのコントロールよるパルス化を行う。これにより、エッジ信号f1のパルス化信号s21として、例えば、600Hz,720Hz(SYNC1)のパルス信号が生成される。尚、論理条件を上に突のエッジと決定されると、パルス化信号s21は、正のパルス化信号として生成される。
f1パルス化回路31は、f1カウンタ回路3から出力されたタイミング信号s3(f2タイミング)をデコードして、フリップフロップのセット、リセットのコントロールよるパルス化を行う。これにより、エッジ信号f2のパルス化信号s31として、例えば、50Hz,60Hz(SYNC4)のパルス信号が生成される。f2パルス化回路21と同様に、尚、論理条件を上に突のエッジと決定されると、パルス化信号s31は、正のパルス化信号として生成される。
本態様での位相比較と位相制御の具体的方法について述べる。
f1位相差カウンタ回路42は、ハブ11からのPTP信号(s41)に基づきPTP信号状変検出回路41から供された基準信号であるPTP信号(s42)のタイミングでスタートする16ビットのカウンタ回路(第一周波数位相差カウンタ回路)である。このカウンタは、最大カウント値「FFFF」で停止する。そして、このPTP同期信号(s41)と、自走している従属同期回路15の所定のタイミング(s24)とで比較する。比較対象は、エッジ信号f2(SYNC1:600Hz)(s24)、エッジ信号f1(SYNC4:50Hz)(s3)及びPTPタイミング信号(s42)の周期である。測定は、f1位相差カウンタ回路42の位相差カウンタ(16ビット)を起点に、測定対象の信号でラッチ(f1位相ラッチ回路5、f2位相ラッチ回路6、後述のPTP周期ラッチ回路7(図8の実施形態3に関係))により実行される。
f1位相ラッチ回路5は、PTP信号のタイミング(s42)でスタートしたf1位相差カウンタ回路42の出力信号(s43)を、f1カウンタ回路3のリセットタイミング(s3)でラッチして位相差を測定するラッチ回路(第一周波数位相ラッチ回路)である。
f2位相ラッチ回路6は、PTP信号のタイミング(s42)でスタートしたf1位相差カウンタ回路42の出力信号(s43)を、DPLLカウンタ回路2のリセットタイミング(s24)でラッチして位相差を測定するラッチ回路(第二周波数位相ラッチ回路)である。
第二位相差比較回路9は、f2位相ラッチ回路6によりラッチしたPTP信号のタイミング(s42)とf1カウンタ回路3のタイミング(s3)との時間差を±20μs以外の領域を判別してDPLL補正量条件信号(s91)を生成する。
図5を参照して600Hzタイミングでの位相制御領域は、出力信号(s43)をラッチしたカウント値s6のカウント値で領域を示すと、以下の通りになる。
B+領域:36〜1535、B−領域:−1535(1535)〜−36(3036)までの領域となる。
B領域閾(s911)は、比較対象となる領域のカウント値であり、例えば、36,1535,3036,3072となる。
また、720Hzのタイミングで位相制御領域は、B+領域:36〜1279、B−領域:−1279(1279)〜−36(2524)までの領域)となる。
B領域閾(s911)は、比較対象となる領域のカウント値であり、例えば、36,1279,2524,2560となる。
条件制御回路99は、各条件により、DPLL補正量デコード条件(s991)を出力して、位相同期制御を実行させる。再び、600Hz条件で説明する。
すなわち、条件制御回路99では、f1位相差カウント値が0から1535の時、位相が遅れているので、DPLLカウンタ回路2を早めるためにDPLL制御量「−6」を選択する。つまり、DPLLデコード条件選択回路23でDPLL補正量デコード条件(s22)から「−6」の位相同期制御量が補正量信号(s23)として選択される。この補正量信号(s23)が補正信号として出力比較回路22に供されて、DPLLカウンタ回路2のリセットタイミングを変更する。
同様に、f1位相差カウント値が1535から3071の時、位相が進みとなるので、DPLLカウンタ回路2を遅くするために、位相同期制御量「+6」を選択する。DPLLカウンタ回路2は、エッジ信号f2の周波数(600Hz)のカウンタであるので、12回分、同一の補正量の制御を行う。
<同期・非同期判定>
f1位相ラッチ回路5は、PTP信号のタイミング(s42)でスタートしたf1位相差カウンタ回路42の出力信号(s43)を、f1カウンタ回路3のリセットタイミング(s3)でラッチして位相差を測定する。図5では20m周期を0〜36859までカウントする。
第一位相差比較回路8は、f1位相ラッチ回路5によりラッチしたPTP信号のタイミング(s42)と、f1カウンタ回路3のリセットタイミング(s3)の時間差を、20m±20μs以外の領域(図5の事例では、A+領域:20ms+20μs:0〜36864+36カウント、A−領域:20ms−20μs:36863〜36864−36カウントまでの領域)を判別して、同期・非同期条件を生成する。領域となる比較のための閾値(s811)は、同図の事例では、例えば、36828(36864−36)、36900(36864+36)となっている。
条件制御回路99は、所定の条件により、位相同期制御を実行させる。同期中は、±1制御、非同期中は、同期引き込み±6クロック制御を行うよう位相同期補正量デコード条件(s991)となって出力される。
例えば、1.843200MHzで、周期を計測すると、DPLLカウンタ回路2は、前述のクロックと位相同期で求めるエッジ信号f2の周波数によって決定する深さのカウンタとなる。以下に事例を挙げた。
・エッジ信号f1(SYNC4)の周波数=50Hzの場合、20msは36864カウントとなる。
・エッジ信号f1(SYNC4)の周波数=60Hzの場合、16.66msは30720カウントとなる。
本実施形態の動作例の状態遷移(S11〜S18)について図12を参照しながら説明する。
S11:リセットが解除される(S1)と、従属同期回路15は初期化される。
S12:初期化が完了(S2)すると、DPLLカウンタ回路2は、フリーラン状態、位相制御量は±0制御となる(S120)。
S13:PTP同期ステータスが正常(S3)であれば、基準信号が入力されている非同期状態であり、同期引き込みを行えるかを確認する。PTP基準信号の健全性のチェック(S130)を行い、健全性に異常がないと判断されると、同期引き込みが実行可能となる(S4)。
S14:f2位相ラッチ回路6と第二位相差比較回路9は、位相差が±20μs以内とであると検出すると、後方保護に移行する(後述の実施形態3)。位相差が±20μs以上の場合、位相比較による同期引き込み中(S140)となる。同期引き込み中(S140)では、600Hz周期の±6clk制御による位相同期の引き込みが実行される。
S15:位相差が±20μs以内であるので、後方保護処理としての連続確認を行なう。後方保護が完了すると同期状態に移行する(S6)。このS15の状態の時、後述の実施形態4のように、エッジ信号f1の強制同期を行ってもよい。これにより高速に同期引き込みが可能となる。
S16:同期状態では、50Hz周期毎に±1クロックの位相同期制御が実行される(S160)。基準となるPTP信号と自己のエッジ信号f1の周期の位相がf2位相ラッチ回路6と第二位相差比較回路9によって、位相差が±20μs以外を検出すると、前方保護に移行する(後述の実施形態3)。
S17:位相差が±20μs以上となることを検出したら、前方保護による連続確認(S170)を行い非同期状態とする(S171)。同期状態(S16)時、PTP信号欠落検出(後述の実施形態5)を検出すると、非同期状態(S13)に移行する。(S161)または、後方保護動作(S15)時、PTP信号欠落検出(実施形態5)を検出すると、非同期状態(S13)に移行する(S151)。または、同期引き込み作(S14)時、PTP信号欠落検出(実施形態5)を検出すると、非同期状態(S13)に移行する(S141)。
以上の態様によれば、同期すべき信号の逓倍の成分で、同期引き込みを行うことで、高速に同期引き込みが行える。また、同期引き込みに行う位相制御量を小さくすることで、求める周波数成分のタイミングの揺らぎを小さくすることが可能となる。
したがって、この同期信号で動作するCPU処理に対して、周期時間の変動が小さくなり、オーバーランなどの不安定動作を抑制可能となる。例えば、同期引き込み時の600Hzの時間幅を微調整することで、高速に同期の引き込みを行うことに加えて、CPUのオーバーランの抑制を図ることでき、CPUの不安定動作を回避できる。
さらには、光ファイバー伝送路の構築、時分割多重フレームを構成した専用のハードウェア、または、光信号端子装置などのハードウェアのシステム構築ため設備費用および技術の継承の課題も、解消される。
[実施形態2]
ハブ11からのPTP信号が基準となるため、このPTP信号の性質によっては、従属同期回路15が正常に動作しないことがある。そこで、図8に示された実施形態2の従属同期回路15は基準信号の妥当性を検定する。同図の点線で示された箇所は本実施形態の制御系を示す。
すなわち、本実施形態の従属同期回路15は、PTP信号の周期の健全性を判定する回路として、PTP周期ラッチ回路7、PTP周期比較回路71、PTP周期連続判定回路72を備える。
PTP周期ラッチ回路7は、PTP信号状変検出回路41から供されたPTPタイミング信号(s42)でスタートしたf1位相差カウンタ回路42の出力信号(s43)を次のPTPタイミング信号(s42)のタイミング周期でラッチする。
PTP周期比較回路71は、PTP周期ラッチ回路7から供された周期カウント値(s70)とエッジ信号f1の周波数の位相の比較結果(s71)が所定範囲(例えば、位相のずれ時間が±20μs)以内であるか否かを判断する。
PTP周期連続判定回路72は、前記位相の比較結果が所定範囲であることを連続的であると、ハブ11からのPTP信号が健全であると判定する。
PTP周期連続判定回路72は、前記比較結果が所定範囲内(例えば、クロック1.8432MHzのカウント値が3072±36カウント以内)であることが連続的であると、PTP信号健全信号(s72)をアクティブにする。そして、ハブ11から供されたPTP信号は健全なPTP信号として以降のロジックで使用される。
一方、前記比較結果(s71)が所定範囲を逸脱し当該比較結果の信号がPTP周期でカウントされ、所定回数例えば3回連続カウントされた後にタイムアップすると、PTP周期連続判定回路72はPTP信号健全信号(s72)を非アクティブにする。
以上のように本実施形態の従属同期回路15によれば、外部から得る基準となる信号の健全性がチェックされるので、誤った信号への従属同期を回避できる。したがって、従属同期回路の安定度がさらに向上する。
[実施形態3]
実施形態3の従属同期回路15は前方保護、後方保護による同期判定の連続確認方式を採用する。実施形態2のf1位相ラッチ回路5での位相ラッチの結果に基づく位相差量から、位相の同期状態、非同期状態が存在する。この同期状態、非同期状態の判定において、連続監視方式を適用することにより、安定化した同期タイミングを得ることができる。
図9に示された実施形態3の従属同期回路15は第一判定回路81と第二判定回路82とを備える。同図の点線で示された箇所は本実施形態の制御系を示す。
第一判定回路81は、f1位相ラッチ回路5から出力された位相差とこの位相差の連続監視回数とに基づき非同期状態と判定する。一方、第二判定回路82は前記位相差とこの位相差の連続監視数とに基づき同期状態と判定する。非同期状態、同期状態での、第二判定回路82(後方保護)は、同期状態となるまで出力信号(s5)を連続監視する。第一判定回路81(前方保護)は、連続監視回数をロードするダウンカウンタ方式を採用し、ダウンカウンタが動作するまでの同期状態で、連続確認回数がロードされており、±20μs以上になると、非同期状態となる。
<後方保護動作過程>
f1位相ラッチ回路5の位相差の出力信号(s5)が±20μs以内でない場合、非同期状態である。非同期状態の時は、実施形態1に従い、同期の引き込み動作を行う。
第二判定回路82は、同期状態となるまで出力信号(s5)を連続監視する。第二判定回路82は、連続監視回数をロードするダウンカウンタ方式を採用し、ダウンカウンタが動作するまでの非同期状態で、連続確認回数がロードされており、±20μs以下になると、ダウンカウンタは起動する。
第二判定回路82の後方保護回数の減算によるカウントアップで、同期状態と判定する。
動作の過程で、f1位相ラッチ回路5で、位相差がA領域閾値(s811)である±20μsを越えた場合、再び、第二判定回路82内で、初期値となる連続確認回数を再ロードし、初期値に戻り、再度、同期判定を行う。
<同期>
後方保護が確立した後に同期状態となる。この状態の時、出力比較回路22は、エッジ信号f1(50Hz)の周期で、位相比較を行っているので、その位相極性に合わせてDPLLデコード条件選択回路23は、制御量「1」に基づき±1のDPLLカウンタ回路2を制御する。
位相が遅れている場合、DPLLカウンタ回路2を早めるために、DPLLデコード条件選択回路23でDPLL制御量「−1」を選択する。
位相が進みとなっている場合、DPLLカウンタ回路2を遅くするために、DPLLデコード条件選択回路23でDPLL制御量「+1」を選択する。
同期状態において、DPLLカウンタ回路52は、エッジ信号f2(600Hz)のカウンタ回路であるが、位相比較は、エッジ信号f1の周期で行う。エッジ信号f2(600Hz)の12回に1回の制御である。
この動作は、前述の後方保護の期間と同じ制御となる。
この同期状態で、第一判定回路81は、前方保護のカウントダウンの準備を実行する。
つまり、±20μs以内の同期状態に、非同期となる状態になるまでを連続監視する。この第一判定回路81は、連続確認回数をロードするダウンカウンタ方式で構成され、ダウンカウンタが動作するまでの同期状態で、連続確認回数がロードされており、±20μs以上になったら、ダウンカウンタは起動する。
<前方保護動作過程>
同期状態の時、エッジ信号f1の周期50Hzの周期タイミングで位相判定を行い、制御量は±1クロックしているが、PTP信号が喪失した場合は、この限りでない。f1位相ラッチ回路5は、位相差が検定できない場合は、±1クロック分の制御を行なわない。つまり、自走状態となる。自己のSYNC1とPTP信号が異なる位相で検出された場合は、同期の外れと判断する。
第一判定回路81は、前方保護回数の減算によるカウントアップで、非同期状態と判定する。
動作の過程で、f1位相ラッチ回路5で、位相差が±20μs以内に戻った場合、再び、第一判定回路81内で、初期値となる連続確認回数を再ロードして、初期値に戻り、再度、非同期判定を検定する。
[実施形態4]
実施形態4では、エッジ信号f1(50Hz)の位相をエッジ信号f2(600Hz)の位相に合わせること(強制同期すること)によりエッジ信号f1とエッジ信号f2の周波数の関係によって同期引き込みを行うために要する同期引き込み時間を短縮する。
実施形態3では、位相比較をエッジ信号f1(50Hz)のタイミングで行うので、位相制御にあたり、20msの位相量の制御が必要となる。
これに対して、図10の実施形態4においては、エッジ信号f1(50Hz)とエッジ信号f2(600Hz)のタイミングの重要性から、エッジ信号f2の変動揺らぎを小さく抑えてエッジ信号f1については位相スキップを許容するため以下の強制同期を行う。同図の点線で示された箇所は本実施形態の制御系を示す。
実施形態4の従属同期回路15は、同期引き込み動作(±6クロックの位相制御)状態から20μs以内を検出した後方保護領域に移行したタイミングで、エッジ信号f1(50Hz)のPTP位相比較を行っているエッジ信号f2(600Hz)の位相に合わせる。これにより、所定のタイミングで、f1カウンタ回路3をプリセットすることでエッジ信号f1,f2の周波数の位相が揃う。
後方保護による同期引き込み過程については図6において説明されている。
PTP信号cとエッジ信号f1(50Hz)は、当初の位相差が存在するが、同期引き込みにより±6クロック制御により、位相を合わせることができる。この時、PTP信号cの受信タイミングだけで位相制御を行うより、その12倍のf2タイミングで位相制御を行う方が、同期引き込みが早くなる。
強制同期引き込みは、PTP信号cとエッジ信号f2(600Hz)の同期性が得られた時、自身のエッジ信号f1の位相をプリセットすることで、エッジ信号f1とエッジ信号f2の位相を合わせる方式である。
したがって、600Hzの周期で同期引き込みを行っている過程で、PTP信号cと同期があった時、一度だけ、50Hz信号のカウンタ回路をプリセットする。
その後、±20μs以内の位相差に入るので、同期状態を後方保護により確認し、高速に同期状態とすることが可能となる。
以上の動作によりエッジ信号f2の立ち上がり位相にエッジ信号f1の立ち上がり位相が合うことになる。
したがって、引き込み動作としてはエッジ信号f1の20msの時間まで制御するより、エッジ信号f2の1.6msの時間までに位相を合わせる制御とすることにより、高速な同期引き込みを実現できる。
そして、条件制御回路99において同期判定が行える場合、条件制御回路99は、f1カウンタ回路3の強制位相合わせを行う強制同期信号(s992)として出力する。
以上のように本実施形態の従属同期回路15によれば、最も時間を要する非同期状態からも同期状態に引き込まれ、二つの周波数成分で同期引き込みを行う位相比較するf1側の位相に自身の従属同期回路の周波数成分が強制的に同期される。
従属同期のクロック精度の精度向上と同期引き込みは相反する事象であるが、本実施形態の同期方式が適用されることにより、従属同期クロックの向上をしながらも、同期引き込みを高速に行うことが可能となる。
[実施形態5]
図11の実施形態5の従属同期回路15は、本実施形態のPTP信号の欠落監視による自動非同期検出を行う。同図の点線で示された箇所は本実施形態の制御系を示す。
実施形態1〜4の態様においては、同期の基準となるPTP信号が外部のIEEE1588対応のハブ等により同期がとられた信号に従属同期することになるが、PTP信号が突然に欠落した場合のフェールセーフ処理が必要である。
同期状態から突然にPTP信号cの欠落を検出した場合、前回のPTP信号cのタイミング信号(s42)の後、次回のPTP信号cのタイミング信号(s42)を検出する際のf1位相差カウンタ64のカウンタ長が拡張する。例えば、5ppmの水晶発振子120が非同期状態となったとき、±20μsを逸脱するまでの時間は4秒で±20μsを逸脱することが想定される。
そこで、本実施形態の従属同期回路15は、入力される基準信号が欠落すると、位相差が所定の範囲内から逸脱する恐れがある時間で非同期を通知する。
すなわち、入力される基準信号が欠落した場合、PTP周期比較回路71により位相差が所定の範囲外であると判断されると、PTP周期連続判定回路72は、DPLLカウンタ回路2の位相同期制御を実行させない信号を条件制御回路99に出力する。
条件制御回路99は前記信号を受けると、DPLLカウンタ回路2の位相同期制御を実行させないようする。これにより、前記位相差は±0となり従属同期回路15は自走分周状態となる。
以上のように、本実施形態の従属同期回路15によれば、ネットワーク障害、ハブの故障などによる突然のPTP基準信号の欠落においても、フェールセーフ側の動作とさせることにより、保護継電装置10のアプリケーションの誤動作を防げる。したがって、保護継電装置10の誤動作を防止できる。
[実施態様6]
以上説明した実施形態1〜5の従属同期回路の機能は単一の従属同期回路15に実装させてもよい。本実施形態によれば、実施形態1〜5の全ての効果を有した従属同期回路を提供可能となる。