JP6778972B1 - アルカリ重合ナイロン用開始剤組成物、その製造方法、及びアルカリ重合ナイロンの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のアルカリ重合用開始剤組成物は、カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートとカプロラクタムとを含む開始剤組成物であり、アルカリ重合用開始剤組成物総重量の15〜90重量%がカプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートである。
3量化ジイソシアネートはジイソシアネートが公知の方法で3量化された化合物である。3量化されるジイソシアネートとしては脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートがある。脂肪族ジイソシアネートの具体例として、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等がある。脂環式ジイソシアネートの具体例として、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等がある。芳香族ジイソシアネートの具体例として、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等がある。
カプロラクタムはω−ラクタムのアルカリ重合法で使用されるものと同じものである。カプロラクタムは、3量化ジイソシアネートの全てのイソシアネート基をブロックする量より多い量が使用され、イソシアネート基をブロックすると共に本発明のアルカリ重合用開始剤組成物の成分となる。カプロラクタムは使用に先立ち、減圧法等公知の方法で脱水された含水量0.2%以下としたものが好ましく使用される。本発明のアルカリ重合用開始剤組成物の成分として、単独のカプロラクタムが好ましく使用されるが、カプロラクタムと2−ピロリドンとを混合して使用することもできる。
カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートは、カプロラクタムでブロックされた3量化ジイソシアネートのことであり、3量化ジイソシアネートとカプロラクタムとの反応により合成される。3量化ジイソシアネートとカプロラクタムとを1モル:3モルの割合で反応させた場合や、3量化ヘキサメチレンジイソシアネートとカプロラクタムとを、約6:4(重量比)の割合で反応させた場合は、3量化ジイソシアネートのイソシアネート基の全てがカプロラクタムでブロックされる。カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートは、50〜120℃の温度で3量化ジイソシアネートとカプロラクタムとを直接混合、撹拌することにより、合成される。また、高沸点の石油系炭化水素等の有機溶剤中で3量化ジイソシアネートとカプロラクタムとを混合、反応させても、合成できる。この場合、合成後、溶剤の除去が必要となることがある。
本発明のアルカリ重合用開始剤組成物は、カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートとカプロラクタムを含む開始剤組成物であり、カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートの量は、アルカリ重合用開始剤組成物総重量の15〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、より好ましくは25〜75重量%、カプロラクタムの量は、アルカリ重合用開始剤組成物総重量の10〜85重量%、好ましくは15〜80重量%、より好ましくは25〜75重量%である。本発明のアルカリ重合用開始剤組成物は、常温では、カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートとカプロラクタムとが均一に分散混合された無色透明の流動性の低い液体又は常温で固体であり、常温での計量は困難であるが、ω−ラクタムのアルカリ重合の開始剤として使用する際、ω−ラクタムのアルカリ重合の他の原料と同様、80〜120℃で使用され、その温度では計量が容易な500mPa・s以下の流動性の良い液体である。また、カプロラクタムを含むことで計量等に使用した機器の内面の付着が少なく洗浄は難しくない。アルカリ重合用開始剤組成物を構成する成分は1H−NMR装置により分析できる。
以下、本発明のアルカリ重合用開始剤組成物の製造方法を、3量化ジイソシアネートとして、HDIイソシアヌレートを使用した場合で説明する。窒素ガス雰囲気下、80〜120℃の脱水カプロラクタムを容器に入れ、撹拌しながら50〜100℃のHDIイソシアヌレートを添加、80〜120℃の温度で混合撹拌してカプロラクタムとHDIイソシアヌレートとを反応させる。この方法によりカプロラクタムでブロックされたHDIイソシアヌレート(カプロラクタムブロックHDIイソシアヌレート)の合成と合成されたカプロラクタムブロックHDIイソシアヌレートとカプロラクタムとが均一に混合分散された無色透明のアルカリ重合用開始剤組成物の製造が同一工程で実施される。製造されたアルカリ重合用開始剤組成物は常温でも無色透明である。
ω−ラクタムのアルカリ重合法は、ω−ラクタムをアルカリ触媒及び開始剤の作用により、ナイロンを製造する方法である。以下、開始剤として本発明のアルカリ重合用開始剤組成物を使用する製造方法の一例を説明する。
アルカリ触媒としては、ω−ラクタムのアルカリ重合法において使用される公知のアルカリ触媒が使用できる。具体例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらの水素化物、酸化物、アルキル化物、アルコキシド、グリニャール試薬、更に、前記の金属又は金属化合物とω−ラクタムとの反応生成物、例えば、ω−ラクタムのナトリウム塩、ω−ラクタムのカリウム塩等が挙げられる。好ましいアルカリ触媒はカプロラクタムのナトリウム塩、カプロラクタムのカリウム塩である。
本発明のアルカリ重合用開始剤組成物の成分であるカプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートが開始剤となる。カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートの使用量は、アルカリ触媒1モルに対して0.1〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.7モルの割合である。カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートの使用量が前記下限(0.1モル)より少ない場合、また、前記上限(1.0モル)より多い場合、いずれの場合も重合速度が遅くなる。カプロラクタムブロック3量化ジイソシアネートの中では、カプロラクタムブロックHDIイソシアヌレートが好ましく使用される。アルカリ重合用開始剤組成物は、他の原料と同様、80〜120℃の温度に加熱して、使用することが好ましい。
アルカリ重合ナイロンの製造の際、重合反応を阻害しない顔料や染料などの着色剤、ミルドグラス、ガラス繊維、繊維状マグネシウム化合物、チタン酸カリウム繊維、グラファイト繊維、ボロン繊維、炭素繊維、スチール繊維等の繊維、炭酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、黒鉛、石膏、長石、雲母、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の充填剤、各種柔軟材等の添加剤を使用することができる。着色剤の使用量はω−ラクタムに対して0.05〜3重量%である。繊維、充填剤、柔軟材等の添加剤の使用量は、ω−ラクタムに対して5〜30重量%である。
500ccの撹拌機付き容器に、100℃の脱水したカプロラクタム110gと50℃のHDIイソシアヌレート(デュラネート(登録商標)イソシアヌレート)90gを入れ、100℃の温度、窒素ガス雰囲気下で、30分間、混合撹拌して、アルカリ重合用開始剤組成物を製造した。製造したアルカリ重合用開始剤組成物の組成はカプロラクタムブロックHDIイソシアヌレートが73.2重量%、カプロラクタム26.8重量%であり、HDIイソシアヌレートのイソシアネート基はカプロラクタムでブロックされていた。80℃の粘度は310mPa・sであった。常温での状態(室温で放置した状態)は、無色透明の高粘度液体であった。重合時間は2分55秒であった。
カプロラクタムの量を75gに、HDIイソシアヌレートの量を125gに代えた以外は実施例1と同様に実施して、アルカリ重合用開始剤組成物を製造した。製造したアルカリ重合用開始剤組成物の成分はカプロラクタムブロックHDIイソシアヌレートが99.0重量%、カプロラクタムは微量であった。80℃の粘度は1580mPa・sであった。正確な計量が困難であり、重合時間は測定できなかった。
カプロラクタムの量を185gに、HDIイソシアヌレートの量を15gに代えた以外は実施例1と同様に実施して、アルカリ重合用開始剤組成物を製造した。製造したアルカリ重合用開始剤組成物の成分はカプロラクタムブロックHDIイソシアヌレートが12.4重量%、カプロラクタムは87.6重量%であった。80℃の粘度は75mPa・sであった。常温での状態(室温で放置した状態)は、カプロラクタムが凝固していた。重合時間は3分00秒であった。
表1に記載の3量化ジイソシアネート、カプロラクタムを使用し、実施例1と同様の方法でアルカリ重合用開始剤組成物を製造した。製造したアルカリ重合用開始剤組成物の組成、80℃の粘度、常温での状態(室温で放置した状態)、重合速度を示した。
ラクタム溶融タンク1からA成分タンク用ラクタム送液配管4を通して、A成分タンク2にカプロラクタムを880g入れ、B成分タンク用ラクタム送液配管5を通して、B成分タンク3にカプロラクタムを940g入れた。A成分タンク2にAddonyl(登録商標)Kat NL触媒120gを入れ、撹拌混合して、A成分を作り、窒素ガス雰囲気下、110℃で温調保持した。B成分タンク3に実施例1で製造したアルカリ重合用開始剤組成物60gを入れて、撹拌混合してB成分を作り、窒素ガス雰囲気下、110℃で温調保持した。A成分計量ポンプ6でA成分150gを計量し、B成分計量ポンプ7でB成分150gを計量し、A成分、B成分はそれぞれA成分送液配管8、B成分送液配管9を通して混合機10に送る。混合機10で撹拌混合されたA成分、B成分からなる混合物を150℃に加熱されているISOM試験片用の成形型11に注入した。15分後に成形型11を開き、アルカリ重合ナイロンからなる試験片を取り出した。試験片の表面は平滑で良好であった。曲げ強度は128MPa、曲げ弾性率は3310MPaであった。サンプルは蟻酸に溶解せず、「耐酸性あり」であった。
B成分タンク3にカプロラクタム940gと実施例1で製造したアルカリ重合用開始剤組成物60gの代わりに、カプロラクタム925gと実施例4で製造したアルカリ重合用開始剤組成物75gとした以外は実施例8と同様に実施し、アルカリ重合ナイロンからなる試験片を製造した。試験片表面は平滑で良好であった。得たアルカリ重合ナイロンの曲げ強度は121MPa、曲げ弾性率は3250MPaであった。サンプルは蟻酸に溶解し、「耐酸性なし」であった。
B成分タンク3にカプロラクタム940gと実施例1で製造したアルカリ重合用開始剤組成物60gの代わりに、カプロラクタム957gとAddonyl(登録商標)8108(LANXESS Deutschland GmbH製、HDIビウレット70%、N−エチル−2−ピロリドン30%からなるアルカリ重合用開始剤組成物)43gとした以外は実施例5と同様に実施し、アルカリ重合ナイロンからなる試験片を成形した。試験片表面に部分的に荒れた個所が観察され、平滑でなかった。曲げ強度は105MPa、曲げ弾性率は3080MPaであった。サンプルは蟻酸に溶解し、「耐酸性なし」であった。
2 A成分タンク
3 B成分タンク
4 A成分タンク用ラクタム送液配管
5 B成分タンク用ラクタム送液配管
6 A成分計量ポンプ
7 B成分計量ポンプ
8 A成分送液配管
9 B成分送液配管
10 混合機
11 成形型
M モータ
Claims (6)
- アルカリ重合ナイロン用開始剤組成物において、
アルカリ重合ナイロン用開始剤組成物は、カプロラクタムブロック3量化ヘキサメチレンジイソシアネートと、カプロラクタムを含み(N−アルキル−2−ピロリドンは含まず)、
前記カプロラクタムブロック3量化ヘキサメチレンジイソシアネートは、前記アルカリ重合ナイロン用開始剤組成物の総重量に対して15〜90重量%となる、
ことを特徴とするアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物。 - 請求項1記載のアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物において、
カプロラクタムブロック3量化ヘキサメチレンジイソシアネートは、3量化ヘキサメチレンジイソシアネートが9〜55重量%、カプロラクタムが45〜91重量%の割合で混合、反応して、生成するカプロラクタムブロック3量化ヘキサメチレンジイソシアネートである、
ことを特徴とするアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物。 - 請求項2記載のアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物において、
カプロラクタムブロック3量化ヘキサメチレンジイソシアネートは、カプロラクタムブロックヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレートであり、
3量化ヘキサメチレンジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレートである、
ことを特徴とするアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物。 - 3量化ヘキサメチレンジイソシアネートとカプロラクタムを原料とするアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物の製造方法において、
N−アルキル−2−ピロリドンの不存在下において、前記3量化ヘキサメチレンジイソシアネートを9〜55重量%、前記カプロラクタムを45〜91重量%の割合で、混合、反応させ、
アルカリ重合ナイロン用開始剤組成物中、15〜90重量%のカプロラクタムブロック3量化ヘキサメチレンジイソシアネートと10〜85重量%のカプロラクタムを生成させる、
ことを特徴とするアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物の製造方法。 - 請求項4記載のアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物の製造方法において、
3量化ヘキサメチレンジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレートであり、
カプロラクタムブロック3量化ヘキサメチレンジイソシアネートは、カプロラクタムブロックヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレートである、
ことを特徴とするアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物の製造方法。 - 少なくともω−ラクタムと開始剤組成物とアルカリ触媒を混合してアルカリ重合ナイロンを製造するアルカリ重合ナイロンの製造方法において、
開始剤組成物は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルカリ重合ナイロン用開始剤組成物である、
ことを特徴とするアルカリ重合ナイロンの製造方法。
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