以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係るリーク検査装置10の概略構成と検査の流れを示している。以下、圧力はすべてゲージ圧とする。リーク検査装置10は、検査対象となる管路(例えば、熱交換器)や容器(例えば、貯湯タンク)の漏れを検査する装置である。検査対象の容器(または管路)をワークとする。またワークと同形状、同材料で構成された容器等であって漏れのないことが確認されているものをマスタとする。ワークとマスタは同じ力学的および熱力学的パラメータを持った異なる容器等である。なお、ワークとマスタを同じ力学的および熱力学的パラメータを持った異なる容器とすると、ワークが大きい場合にはマスタも大きくなり、結果、検査装置の所有場所として広い場所を要することとなるので、マスタを小型として、マスタをワークと同じ大型を用いる場合と小型を用いる場合の変換係数をもって対応する場合もあるが、このような場合の対応方法については、後述する。
リーク検査装置10は、加圧源接続口11と、ワーク接続口12と、マスタ接続口13を備えている、リーク検査装置10は内部の管路として、加圧源接続口11に一端が接続された第1配管21を有し、該第1配管21は途中で二手に分岐して第2配管22と第3配管23となり、第2配管22の他端はワーク接続口12に、第3配管23の他端はマスタ接続口13にそれぞれ接続されている。
第1配管21には第1開閉弁31が介挿されている。第2配管22には、第1配管21との分岐箇所からワーク接続口12に向かう並び順で、第2開閉弁32、第1圧力計41、第3開閉弁33が設けてある。また第3配管23には、第1配管21との分岐箇所からマスタ接続口13に向かう並び順で、第4開閉弁34、第2圧力計42、第5開閉弁35が設けてある。
第2開閉弁32と第3開閉弁33との間の第2配管22と、第4開閉弁34と第5開閉弁35の間の第3配管23との間には、差圧計43が接続されている。また、第1開閉弁31と第4開閉弁34との間の所定箇所で第3配管23から排気管24が分岐しており、該排気管24の途中に排気弁38が設けてある。排気管24の終端は排気ポートとなっており大気開放されている。
リーク検査装置10は、検査の流れの制御、測定、および測定結果に基づく漏れ判定等を行う検査処理部15を有する。検査処理部15は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を主要部とする回路であり、ROMに格納されたプログラムに従ってCPUが処理を実行することで、リーク検査装置10における検査動作の制御、測定および判定が行われる。
加圧源接続口11には、電空レギュレータ2を介して加圧気体の供給源3が接続される。また、電空レギュレータ2と加圧源接続口11との間の配管には圧力計5が接続される。電空レギュレータ2は、下流側が設定圧力を超えないようにする機能を果たす。供給源3は例えば屋外に設置され、供給源3から他の加圧気体を動力とする機械等(例えばエアーツール等)に加圧気体を供給(供給源3から電空レギュレータ2までの管路は複数に分岐)しながら加圧源接続口11に至る。
ワーク接続口12には、ワーク51が接続される。この例では、ワーク51は入口と出口を有する貫通型の容器等(たとえば、給湯器の熱交換器)である。ワーク51の入口はワーク接続口12に接続され、出口には第6開閉弁36が接続されている。第6開閉弁36を開くとワーク51の出口は大気に通じて大気開放となる。
マスタ接続口13には、マスタ52が接続される。この例では、マスタ52は、ワーク51と同様に入口と出口を有する貫通型の容器等である。マスタ52の入口はマスタ接続口13に接続され、出口には第7開閉弁37が接続されている。第7開閉弁37を開くとマスタ52の出口は大気に通じて大気開放となる。
ワーク51は、製造から検査終了まで以下のような工程を経る。なお、マスタ52は、マスタ接続口13に接続された状態に維持される。リーク検査装置10は、次々と新たなワーク51を検査する。ワーク51は、ロー付け工程を経て製造(P1)された後、籠台車上に集積されて10分ほど放置され、環境温度+10℃程度に落ち着く(P2)。その後、大気を送風する等温化ファンユニット6に載せて数分間、大気を当てて冷却する(P3)。その後、リーク検査装置10に取り付けられて検査が行われる(P4)。検査が終了するとリーク検査装置10から取り外されて次工程に送られる(P5)。
図2は、リーク検査装置10が行う検査処理の流れを示す流れ図である。ワーク51およびマスタ52を図1に示すようにリーク検査装置10に接続した後、第1開閉弁31を除くすべての開閉弁32〜38を開く。これによりワーク51、マスタ52は大気開放の状態になる(ステップS101)。その後、排気弁38を閉じ、この状態で第1開閉弁31を所定時間(20〜30秒)開いてから閉じることで、ワーク51およびマスタ52内を掃気(プレパージ)する(ステップS102)。掃気流量は、例えば大気圧換算で50〜100リットル位である。
その後、第6開閉弁36、第7開閉弁37を閉じ、さらに第2開閉弁32、第4開閉弁34を閉じて、ワーク51とマスタ52をそれぞれ、大気開放の状態から封止した独立の密閉空間にする(ステップS103)。
その後、所定時間にわたって放置しているときのワーク51側の密閉空間とマスタ52側の密閉空間との差圧を差圧計43で測定する温度補償用測定工程(前補正工程とする)を実施する(ステップS104)。前補正工程で測定された差圧の変化量(前補正工程の測定開始時の差圧と前補正工程の測定終了時の差圧との差分)をΔPt1とし、前補正工程での差圧の変化の測定時間をTaとする。
次に、漏洩検査工程を行う。漏洩検査工程では、まず、加圧気体の供給源3からワーク51とマスタ52に気体を加圧導入して所定の検査圧力まで加圧する(ステップS105:加圧ステップ)。具体的には、第2開閉弁32と第4開閉弁34を開いてワーク51とマスタ52とを連通した後、第1開閉弁31を開いて供給源3から気体をワーク51とマスタ52に加圧導入する。目標の検査圧力となったか否かは圧力計5で確認し、目標の検査圧力になったら第1開閉弁31を閉じる。その後、第2開閉弁32、第4開閉弁34を閉じて、ワーク51とマスタ52をそれぞれ、検査圧力(Pd)に加圧された独立の密閉空間にする(ステップS105)。
この時の加圧導入量は、ワーク51(マスタ52)の内容量500cc とすると、例えば、20℃、500kPa(G) の空気の体積は[T2]=273.2+20 K [P2]=101.3+500 kPa(abs) [V2]=0.0005m3×2ヶなので、例えば、掃気流量に比して極めて小さい、大気圧換算で6リットル位である([T1]=273.2+0 K [P1]=101.3+0 kPa(abs) [V1]=0.0059m3)。
その後、温度変化(圧力変化)がある程度落ち着くまでの整定期間を待ってから、ワーク51側の密閉空間とマスタ52側の密閉空間との差圧の変化を差圧計43で測定する(ステップS106:測定ステップ)。漏洩検査工程で測定された差圧の変化量(漏洩検査工程での測定開始時の差圧と漏洩検査工程の測定終了時の差圧との差分)をΔPrとし、漏洩検査工程の測定ステップの測定時間をTrとする。
次に、ワーク51と、マスタ52を減圧して大気開放する(ステップS107:減圧ステップ)。詳細には、第2開閉弁32と第4開閉弁34を開いてワーク51とマスタ52を連通させてから排気弁38を開いて減圧して大気開放する。このとき、第6開閉弁36、第7開閉弁37をさらに開放してもよい。
その後、排気弁38を閉じ(大気開放時に第6開閉弁36、第7開閉弁37を開いた場合はこれらも閉じる)、さらに、第2開閉弁32、第4開閉弁34を閉じて、ワーク51とマスタ52をそれぞれ、大気開放の状態から封止した独立の密閉空間にする(ステップS108)。
その後、所定時間にわたって放置しているときのワーク51側の密閉空間とマスタ52側の密閉空間との差圧を差圧計43で測定する温度補償用測定工程(後補正工程とする)を実施する(ステップS109)。後補正工程で測定された差圧の変化量(後補正工程の測定開始時の差圧と後補正工程の測定終了時の差圧との差分)をΔPt2とし、後補正工程での差圧の変化の測定時間をTbとする。
次に、検査処理部15は、前補正工程で得た差圧の変化量ΔPt1と該変化量ΔPt1を測定した計測期間の長さ(Ta)とから、前補正工程における単位時間当たりの差圧の変化量(差圧変化率)を第1温度補償値H1として求める。H1=ΔPt1/Ta
また、後補正工程で得た差圧の変化量ΔPt2と該変化量ΔPt2を測定した計測期間の長さ(時間Tb)とから、後補正工程における単位時間当たりの差圧の変化量(差圧変化率)を第2温度補償値H2として求める(ステップS110)。H2=ΔPt2/Tb
次に検査処理部15は、第1温度補償値H1と第2温度補償値H2に与える重み係数(比率)を、漏洩検査時の検査圧力の大小、前補正工程の測定を開始する時点でのワーク51と環境温度との温度差の大小、ワーク51の熱容量の大小、ワーク51の熱伝達率の大小に基づいて決定する(ステップS111)。第1温度補償値H1に与える重み係数をα、第2温度補償値H2に与える重み係数をβとする。重み係数の決定方法については後述する。
ステップS111で決定した重み係数α、βに従って第1温度補償値H1と第2温度補償値H2に重み付けをして、これらの加重平均を算出する。この算出結果を、漏洩検査工程の測定結果を温度補償するための温度補償値H3とする(ステップS112)。すなわち、H3=(αH1+βH2)/(α+β) となる。
温度補償値H3は、漏洩検査工程の計測期間(Tr)中における温度変動に基づく単位時間当たりの差圧の変化量の推定値である。
次に、検査処理部15は、漏洩検査の測定結果ΔPrを、温度補償値H3で補正して、ワーク51の漏れに基づく差圧ΔPsを求める(ステップS113)。
具体的には、漏洩検査工程でΔPrを測定したときの計測期間の長さをTr、大気開放時の圧力をPa、検査圧力をPdとすると、
漏洩検査の測定結果に含まれる、温度変動分の差圧ΔPfは、
ΔPf=H3×Tr×Pd/Pa
として求まる。よって、漏れに基づく差圧ΔPsは、
ΔPs=ΔPr−ΔPf
として求まる。
漏れによる差圧ΔPsが予め定めた基準値より大きいか否かを判定し(ステップS114)、漏れによる差圧ΔPsが予め定めた基準値より大きい場合は(ステップS114;Yes)、漏れありと判定して本処理を終了する。漏れによる差圧ΔPsが予め定めた基準値以下ならば(ステップS114;No)、漏れなしと判定して本処理を終了する。
たとえば、容量980mlの容器を、500KPaに加圧し、整定期間の経過を待った後、30秒間放置したときの放置前後の差圧の変化量を温度補償した値が±36Pa以上の場合は、漏れありと判定する。
図3は、前補正工程で測定された差圧ΔPt1に基づく第1温度補償値H1と、後補正工程で測定された差圧ΔPt2に基づく第2温度補償値H2とから、漏洩検査時の温度補償値H3を推定し、漏洩検査で測定された差圧ΔPrから温度変動に基づく差圧の変化分ΔPfを除去して、漏れ(質量変化)による差圧の変化分ΔPsを導出する様子を示している。
次に、重み係数の決定方法について説明する。
図4は、ワーク51とマスタ52間の差圧(ワーク51内の圧力−マスタ52内の圧力=マスタ52を基準としたワーク51内の圧力)の変化(以下圧力変化)の概要を示している。この図では、前補正工程、後補正工程での圧力変化は、第1温度補償値H1、第2温度補償値H2を傾きとする直線で示してある。漏洩検査工程では、検査圧力に加圧した後の整定期間中は急激な圧力変化となり、その後、次第に圧力変化が緩やかになると、圧力変化を測定する測定ステップが行われる(Tr)。
仮に、後補正工程前の整定期間(Ts2=0)が無ければ、漏洩検査工程全体(整定期間Ts1+測定ステップTr)での温度の影響によるワーク51とマスタ52間の差圧の変化の程度(以下圧力変化率)は、第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の平均値で表すことができる。しかし、漏洩検査工程における圧力変化は、漏洩検査工程のうちの整定期間(Ts1)に急激に生じ、漏洩検査工程のうちの測定ステップ(Tr)では緩やかなので、測定ステップ(Tr)における圧力変化率は第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の平均値よりも小さくなる(要素1)。
この点を詳述すると、マスタは複数回の検査で略所定温度(例えば、周囲環境よりも温度が降下した略所定温度)となる(前記略所定温度が場合によっては常温のワーク51との温度差問題となるために、複数のワーク51をローテーションして上記温度差問題に対応する場合もあった。)。しかし本願のように検査対象のワーク51がマスタ52に比してより熱い場合(例えばアルゴン溶接後に風冷による冷却を行っても、まだ予熱を持っている場合)には、漏洩検査工程のうちの整定期間(Ts1)に、マスタ52よりもワーク51の方が大きく温度降下するので(両方とも大きく温度降下するのではなく、2者の温度降下率が大きく異なる状態で降下する為に)、2者の差圧の変化量は急激となる。
ワーク51の方が大きく温度降下した後では、マスタ52とワーク51の温度差が近くなって温度降下するので(両方とも同じに温度降下するのではなく、2者の温度降下率が近い状態で降下する為に)、漏洩検査工程のうちの測定ステップ(Tr)では2者の差圧の変化量は緩やかとなる。このように、漏洩検査工程における2者の差圧の変化は、前半と後半で同一ではないので、圧力変化率を第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の平均値で表せない。
ところでステップS102で、ワーク51およびマスタ52内を掃気(プレパージ)するが、検査対象のワーク51がマスタ52に比してより熱いので、ワーク51内の気体は掃気中も膨張し(配管抵抗が増大し、ワーク51とマスタ52とに均等に流れず)、ステップS103で封止されたワーク51とマスタ52内の気体密度に差が生じる(ワーク51内でも、第3開閉弁33近傍と第6開閉弁36近傍で気体密度に差が生じる)。ステップS105の加圧ステップでワーク51とマスタ52が同一圧力にまで加圧充填されるが、ワーク51とマスタ52が同一体積であっても、当初に封入されていた体積が異なる為に(同一体積だが密度が異なるために同じ温度に換算すると異なる体積である為に)、当然、所定時間後に差圧を生じ、もって、充填量も異なって来る。この結果、後述の断熱圧縮により、ワーク51とマスタ52の内部温度上昇の程度に差が生じる(ワーク51の方が、充填量が多くなるので、マスタ52に対して温度上昇量が多い=マスタ52に対してワーク51内の気体は気体密度の低い気体で満たされた状態で検査圧力(Pd)に加圧された独立の密閉空間となる。このように、漏洩検査時に生じる温度変動(主として環境温度の変化)にプラスされる形で、ステップS103で封止されたワーク51とマスタ52内の気体密度に差がステップS106の測定ステップの漏れ検査段階にまで影響する)。
ステップS103で封止されたワーク51内の気体温度(密度)は測定することが不可能なので、当然物体の温度が低下する際の特性推定(例えば、指数関数的減衰等、単なる温度低下特性を推定)する起点温度を特定することができず、もって、ステップS106の測定ステップの漏れ検査での2者の差圧の変化影響量も推定することができない。また掃気に用いられる空気の質(例えばアルゴン分圧、湿度等の比熱の影響等)でも影響を受ける。起点温度等の影響を受けた結果が測定ステップ(Tr)での2者の差圧の変化量として現れるが、例えばマスタ52とワーク51内の気体温度差が大きめ(ワーク51内の気体温度が高め)で湿度が低い場合やアルゴン分圧が高い場合と、マスタ52とワーク51内の気体温度差が小さめだが湿度が高い場合やアルゴン分圧が低い場合では、第1温度補償値H1が同じ値となる場合があるので、第1温度補償値H1のみで温度補償することはできない。
なぜならば、例えば第1温度補償値H1がゼロでない限り、ステップS105でのワーク51とマスタ52の充填量が異なる(例えばワーク51の方が、充填量が多くなり)、断熱圧縮でのワーク51とマスタ52の内部温度上昇の程度に差が生じる(測定ステップ(Tr)での2者の差圧の変化量に影響が出る)からである(換言すれば複数の未知数を含む場合には、複数の連立方程の組を与えないと未知数を求めることが出来ないが、本願では検査対象のワーク51がマスタ52に比してより熱い場合で温度補償するために、2つ以上の、例えば最低限、第1温度補償値H1、第2温度補償値H2と重み付けを用いている。)。なお、検査対象容器を所定の検査圧力に加圧した後に封止した前記検査対象容器内の圧力変化を前記第2期間の後の第3期間に測定する場合において、少なくとも第1温度補償値H1、第2温度補償値H2から、ステップS103で封止された、ワーク51とマスタ52内の、気体密度の差を演算で求めことが必要となる。
図5は、漏洩検査工程におけるワーク内部の温度変化を示している。検査圧力(この例では420KPa)に加圧する際の断熱圧縮によりワーク51の内部温度は上昇し、その後、急激に低下した後、次第に緩慢に低下するように変化する。加圧後の内部温度がある程度落ち着くまでの期間は整定期間にされ、その後の所定期間に渡って圧力変化が測定される(測定ステップ)。測定終了後は、減圧されて大気開放にされる。この時の断熱膨張によりワーク51の内部温度が急激に下降し、その後は環境温度に次第に近づくように変化する。したがって、検査圧力が高い場合には、図5の破線で示すように、ワーク51の残熱が、減圧による吸熱で相殺される割合が大きくなるので、後補正工程で測定される差圧ΔPt2に影響を及ぼす(要素2)。
この点を詳述すると、減圧による吸熱は、減圧速度(ワーク51と排気弁38の大気解放端の端部までの配管距離によって左右される減圧速度=ワーク51からの出側配管抵抗)によって大きく異なり、減圧速度が大きいほど(出側配管距離が短いほど)吸熱量が大きくなる(配管距離・配管抵抗も検査圧力の要因の1つ)。吸熱量が多いと、見掛け上整定時間TS2が長くなってワーク51の内部温度の放熱量が多くなったのと類似の状況となる。
ところでワーク51が小さい場合には、リーク検査装置10のすぐ横(例えば検査台の上)に置いて検査できるが、ワーク51が例えば電気温水器等で使用される370リットルのような大型タンクの場合には、リーク検査装置10のすぐ横に置くことができずに、近くの地面において検査することとなる。当然、検査対象毎(ワーク51の大きさで)に出側配管抵抗が異なる場合が多い。ワーク51とマスタ52とが検査前に同じ温度(ステップS103で封止されたワーク51とマスタ52内の気体密度に差が生じない場合で、かつ、出側配管距離も同じ)ならば、差圧ΔPt2に影響はないが、検査前に同じ温度でない場合には、減圧による吸熱により環境温度との温度差が大きく表れる側が逆転する場合もあり(温度差が大きく表れる側の方が、圧力変化率が大きくなるので)、後補正工程で測定される差圧ΔPt2に影響を及ぼす。
なお、図5において加圧時の断熱圧縮による温度上昇と、減圧時の吸熱量による温度降下の程度(変化温度:X軸、変化の程度:面積)が大きく異なる。例えば屋外に置かれた供給源3から長い配管距離を経て(配管抵抗大)、時間をかけて加圧されるが、減圧時には短い配管距離で(配管抵抗小)、短時間に減圧されるからである(換言すれば、加圧時には電空レギュレータ2(配管抵抗に相当)を通し、減圧時には電空レギュレータ2を通さないからである)。
ステップS103で封止されたワーク51とマスタ52内の気体密度の差がステップS106の測定ステップの漏れ検査段階にまで影響することは先に述べたが、この影響には、電空レギュレータ2からワーク51(又は電空レギュレータ2からマスタ52)までの配管抵抗も関与する。電空レギュレータ2からワーク接続口12まではリーク検査装置10の製造メーカが関わり、ワーク接続口12からワーク51まではワーク51を検査するリーク検査装置10の使用メーカが関わるのであるから、リーク検査装置10の使用メーカ側が、配管やその他の使用状態に応じて、重み付けを行えるようにリーク検査装置10の製造メーカがすることが好ましい。
この点を詳述すると、ワーク51が小さい場合には、リーク検査装置10のすぐ横(例えば検査台の上)に置いて検査できるが、ワーク51が例えば電気温水器等で使用される370リットルのような大型タンクの場合には、リーク検査装置10のすぐ横に置くことができずに、近くの地面において検査することとなる。当然、ワーク接続口12からワーク51までの配管はリーク検査装置10の使用メーカーが適宜設定するので、配管距離(以下入側配管抵抗)が異なる。ステップS103で封止されたワーク51の方が、封入気体密度が低い場合において、ワーク51とマスタ52への入側配管が同じであっても、共に短ければ(入側配管抵抗小)長い場合に比して差圧ΔPt2が大きくなるがごとく、強く影響を受ける。従って入側配管距離が短いほど(入側配管抵抗が小さいほど)断熱圧縮でのワーク51とマスタ52の内部温度上昇の程度に差が大きく生じるので、重み付けには入側配管距離も勘案しなければならない(リーク検査装置10が設置される条件に応じて例えば重み付け表を変更したり、例えば標準(中心)の値を変える必要がある)。
さらに詳述すれば、検査圧力が低い場合には、図4での前補正工程での圧力変化率H1(ステップ104)よりも、漏洩検査工程での圧力変化率の方が緩やか(例えば圧力変化率が(H1+H2)/2に近い状態)となり、測定ステップでの圧力変化率は、(H1+H2)/2よりも小さく(後補正工程での圧力変化率H2を重視した勾配と)なりやすいのに対し、検査圧力が高い場合には、図4での圧力変化率H1(ステップ104)よりも、例えば漏洩検査工程での圧力変化率の方が急こう配となる場合があり、このような場合では、測定ステップでの圧力変化率は、(H1+H2)/2よりも大きく(前補正工程での圧力変化率H2を重視した勾配と)なる場合がある(図4の灰色線参照)。
なお、ステップS105において加圧用気体の流速と流量の変化の状況、又はワーク接続口12の供給圧力の変化の状況と入側配管抵抗、又はワーク51とマスタ52の受圧圧力の変化の状況(例えばワーク51とマスタ52はステップS105において内部圧力が上昇しそれにより流速が落ちて行くので単なる圧力を見るのではなく、変化の状況)等から断熱圧縮でのワーク51とマスタ52の内部温度上昇の程度の差を、(リーク検査装置10の使用メーカ側が使用する、配管やその他の状態に応じて)演算で求めることが必要となる。
図6は、検査圧力の大小と、各工程における圧力変化率の関係を観念的に示している。検査圧力が小さい場合は、例えば前述の要素2の影響は少なく、要素1の影響が大きい。一方、検査圧力が高くなると、例えば要素1の影響は変わらないが、要素2の影響が大きくなる。
たとえば、図6では、検査圧力が小のとき、前補正工程における圧力変化率H1(−2)と後補正工程における圧力変化率H2(−1.4)との平均値は−1.7になるが、実際の漏洩検査工程の測定期間(測定ステップ)における圧力変化率H3は−1.6なので、後補正工程の圧力変化率H2の影響が大きい。従って、第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の加重平均で漏洩検査工程の測定期間における温度補償値H3を求める際には、H2に与える重み係数βをH1に与える重み係数αより大きくする。この例では、α:βの比は、1:2となる。
検査圧力が中の場合は、検査圧力が小のときに比べて高いので、その分、要素2の影響が現れ、ワーク51の残熱が減圧による吸熱で少し相殺される。そのため、後補正工程の開始時におけるワーク51と環境温度との差が小さくなって温度変化が緩やかになり、後補正工程での圧力変化率は−1.2になっている。この場合、前補正工程の圧力変化率H1(−2)と後補正工程の圧力変化率H2(−1.2)との平均値は−1.6になり、実際の漏洩検査工程の測定期間における圧力変化率H3と一致する。したがって、第1温度補償値H1に与える重み係数αと第2温度補償値H2に与える重み係数βは、1:1にすればよい。
検査圧力が大1の場合は、検査圧力がさらに高くなるので、その分、要素2の影響が強く現れ、ワーク51の残熱が減圧による吸熱で相殺される割合が高くなる。そのため、後補正工程の圧力変化率が−1.0になっている。この場合、前補正工程の圧力変化率H1(−2)と後補正工程の圧力変化率H2(−1.0)との平均値は−1.5になり、実際の漏洩検査工程の測定期間における圧力変化率H3(−1.6)より小さくなっている。したがって、第1温度補償値H1に与える重み係数αを第2温度補償値H2に与える重み係数βより大きくする。具体的には、この例ではα:βの比は、3:2となる。
検査圧力が最も高いケース(大2)では、要素2の影響がさらに強く現れるため、ワーク51の残熱が減圧による吸熱で相殺される割合がさらに高くなる。そのため、後補正工程の圧力変化率が−0.4になっている。この場合、前補正工程の圧力変化率H1(−2)と後補正工程の圧力変化率H2(−0.4)との平均値は−1.2になり、実際の漏洩検査工程の測定期間における圧力変化率H3(−1.6)よりかなり小さくなる。したがって、第1温度補償値H1に与える重み係数αを第2温度補償値H2に与える重み係数βに比べてかなり大きくすることになる。具体的には、この例ではα:βの比は、3:1となる。
このように、第1温度補償値H1と第2温度補償値H2との加重平均で漏洩検査の測定結果を温度補償するための温度補償値H3を求める際に第1温度補償値H1に与える重み係数αと第2温度補償値H2に与える重み係数βの比を、前述の要素1と要素2の影響を考慮して設定することで、漏洩検査工程の測定結果を適正に温度補償することができる。
ここで、要素1の影響は、ワーク51と環境温度の温度差が大きいほど、また、ワーク51の熱容量が小さいほど、ワーク51の熱伝達率が大きいほど、顕著に表れる。一方、要素2の影響もワーク51と環境温度の温度差が大きいほど、また、ワーク51の熱容量が小さいほど、ワーク51の熱伝達率が大きいほど、顕著に表れる。そして、要素2の影響は検査圧力が高くなるほど大きくなる。
そのため、検査圧力が低い場合には、ワーク51と環境温度の温度差が大きいほど、ワーク51の熱容量が小さいほど、ワーク51の熱伝達率が大きいほど、第2温度補償値H2に与える重み係数βを第1温度補償値H1に与える重み係数αより大きくする。一方、検査圧力が高い場合には、ワーク51と環境温度の温度差が大きいほど、ワーク51の熱容量が小さいほど、ワーク51の熱伝達率が大きいほど、第1温度補償値H1に与える重み係数αを第2温度補償値H2に与える重み係数βより大きくする。
以上を踏まえて図7に示すような決定基準で重み係数を与えることになる。同図(a)は、検査圧力の大小と、ワーク51の熱容量の大小と、第1温度補償値H1、第2温度補償値H2に与える重み係数との関係を示している。検査圧力が低い場合には、ワーク51の熱容量が大きいほど、第1温度補償値H1に与える重み係数αを大きくし、第2温度補償値H2に与える重み係数βを小さくする。検査圧力が高い場合には、ワーク51の熱容量が大きいほど、第1温度補償値H1に与える重み係数αを小さくし、第2温度補償値H2に与える重み係数βを大きくする。また検査圧力が高いほど、熱容量が同じであっても重み係数αに対する重み係数βの比を大きくする。
同図(b)は、検査圧力の大小と、前工程開始時点におけるワーク51と環境温度との温度の大小と、第1温度補償値H1、第2温度補償値H2に与える重み係数との関係を示している。検査圧力が低い場合には、温度差が大きいほど、第1温度補償値H1に与える重み係数αを小さくし、第2温度補償値H2に与える重み係数βを大きくする。検査圧力が高い場合には、温度差が大きいほど、第1温度補償値H1に与える重み係数αを大きくし、第2温度補償値H2に与える重み係数βを小さくする。また検査圧力が高いほど、温度差が同じであっても重み係数βに対する重み係数αの比を大きくする。
同図(c)は、検査圧力の大小と、ワーク51の熱伝達率の大小と、第1温度補償値H1、第2温度補償値H2に与える重み係数との関係を示している。検査圧力が低い場合は、熱伝達率が大きいほど、第1温度補償値H1に与える重み係数αを小さくし、第2温度補償値H2に与える重み係数βを大きくする。検査圧力が高い場合は、熱伝達率が大きいほど、第1温度補償値H1に与える重み係数αを大きくし、第2温度補償値H2に与える重み係数βを小さくする。また検査圧力が高いほど、熱伝達率が同じであっても重み係数βに対する重み係数αの比を大きくする。
検査圧力、熱容量、環境温度との温度差、熱伝達率のすべてを勘案して第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の重み(比)を決定することが望ましいが、これらのうちの少なくとも1つに基づいて第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の重みを決定してもよい。なお、検査圧力が常に高圧の場合は、それを前提にして、熱容量、環境温度との温度差、熱伝達率に応じた重み係数を用いればよい。
この点を詳述すると、例えば給湯器にはその能力に応じて16号給湯器、24号給湯器等がある。この給湯器内には25degup16リットル毎分の湯を気液熱交換する顕熱熱交換器(例えば交換効率80%)や25degup24リットル毎分の湯を気液熱交換する顕熱熱交換器(例えば交換効率80%)が内蔵されており、この2つは略同じ熱伝達率を持つ。この2つを混合しながら検査する場合、検査圧力、熱容量、環境温度との温度差、熱伝達率のうち、検査圧力、環境温度との温度差、熱伝達率が略同一であるので、熱容量差に応じた第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の重み(比)を変更するのみで混合検査することが可能である。
図8は、温度補償値による補正の効果を確認するための実験結果を示すグラフである。この実験では、漏れのない980mlの容器549個について漏洩検査を行った。グラフは、結果のばらつきを示す度数分布である。補正前のグラフは、温度補正しない状態での測定結果のばらつきを示し、補正後のグラフは、測定結果を温度補償値H3で補正した結果のばらつきを示す。
補正前は、30秒間の測定時間で200Pa近傍までばらつくことがあり、36Paを漏れなしと判定する閾値とした場合、漏れのない容器549個のうちの36%が漏れありと誤判定される。これに対して、漏洩検査の測定結果を温度補償値H3で温度補償した補正後は、90Pa程度までばらつきがでるものの、差圧0の近辺に出現度数は集中している。補正後は、36Paを漏れなしと判定する閾値とした場合に、漏れのない容器549個のうちの約3%のみが漏れありと誤判定され、判定精度が高まっていることがわかる。
この点を詳述すると、漏れのない容器漏洩検査の測定結果から、検査圧力、熱容量、環境温度との温度差、熱伝達率に応じた重み係数を演算で求め、これに基づいて判定精度が高くなる第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の重み(比)を求めるよう(補正を行うよう)にしても良いし、検査圧力、熱容量、環境温度との温度差、熱伝達率を固定して、ダイレクトに判定精度が高くなる(最頻値が多くなる)第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の重み(比)を例えば演算(例えば離散微分)で求め、これに基づいて、例えば熱容量差に応じた第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の重み(比)を変更するよう(補正を行うよう)に演算(例えば回帰演算)しても良い。
ところで、前述の顕熱熱交換器は炉内で各パーツがろう付されて炉から取出される場合があるが、ロウ材の解ける温度は一定なので(炉内温度は一定なので)、炉内と周囲温度との温度差は夏場には小さく、冬場には大きくなる。他方、漏洩検査の測定を行う場所の温度(環境温度の要因の1つ)は事務所衛生基準規則等により検査員の負担とならないように検査室温が変更されるので、例えば検査室の室温変更に応じて第1温度補償値H1と第2温度補償値H2の重み(比)を変更するよう(補正を行うよう)にしても良い。これにより判定精度が高い状態を維持したまま、検査圧力、熱容量、環境温度との温度差、熱伝達率を変更することが出来る。
なお、漏洩検査工程では、ワーク51とマスタ52が所定の検査圧力まで加圧されるので、このときワーク51とマスタ52内の気体が断熱圧縮されて温度上昇する。すなわち、前補正工程の間に温度低下したワーク51とマスタ52の温度は、漏洩検査工程で差圧の測定を開始する前に、一度、上昇する。そのため、前補正工程の開始時から漏洩検査工程で加圧し始めるまでの間に低下したワーク51とマスタ52の温度が加圧によって再び上昇し、漏洩検査の測定ステップの開示時にはワーク51とマスタ52内の気体の温度が再び高い温度から低下することになる。
すなわち、漏洩検査工程の測定ステップの開始時におけるワーク51と環境温度との温度差、マスタ52と環境温度との温度差が共に、前補正工程の終了時より大きくなるが、その大きくなる程度に差が生じる(理由の詳細は[0059]〜[0071]参照)ので、ワーク51とマスタ52との差圧(差圧の変化量)に影響が出る。そこで、この断熱圧縮による温度上昇に基づくワーク51とマスタ52内温度と環境温度との温度差の増大差を考慮して、温度補償値H3を求める際の第1温度補償値H1の重みを大きくする。測定ステップ開始時の温度差は、整定時間が同じならば、検査圧力が高いほど大きくなるので、漏洩検査時の検査圧力が高いほど、第1温度補償値の重みを大きくする。これにより、断熱圧縮による温度上昇を考慮に入れて漏洩検査時の測定結果を適切に温度補償することができる。
また、漏洩検査工程の減圧ステップでは、測定ステップでは減圧による吸熱が起きる。この点を詳述すると、減圧による吸熱は、減圧速度(ワーク51と排気弁38の大気解放端の端部までの配管距離によって左右される減圧速度)によって大きく異なり、減圧速度が大きいほど(出側配管距離が短いほど)吸熱量が大きくなる。吸熱量が多いと、見掛け上整定時間TS2が長くなってワーク51の内部温度の放熱量が多くなったのと類似の状況となる。ところでワーク51が小さい場合には、リーク検査装置10のすぐ横(例えば検査台の上)に置いて検査できるが、ワーク51が例えば電気温水器等で使用される370リットルのような大型タンクの場合には、リーク検査装置10のすぐ横に置くことができずに、近くの地面において検査することとなる。したがって減圧による吸熱の程度は、検査圧力(減圧時の大気圧との圧力差)以外にもワーク51内の圧力を開放する解放端までの出側配管距離(配管抵抗)等によっても左右される。
<変形例>
前補正工程と後補正工程の間に漏洩検査工程を行ったが、第1温度補償値H1を求める補正工程(図4にグレー色の線で示すように、急激に差圧が変化する箇所を使用した工程)と、第2温度補償値H2を求める補正工程(図4にグレー色の線で示すように、第1温度補償値H1を求めるためにサンプリングした箇所よりは緩やかに差圧が変化する箇所を使用した工程)を行った後に、漏洩検査工程を実施して、温度補償値H3を求めるようにしてもよい。
前補正工程と後補正工程の間に漏洩検査工程を行う場合、第1温度補償値H1と第2温度補償値H2を所定の比率(重み付け)で内挿して温度補償値H3を求めていた。これに対して、上記のように第1温度補償値H1を求める補正工程と、第2温度補償値H2を求める補正工程を行った後に、漏洩検査工程を行う場合は、第1温度補償値H1と第2温度補償値H2を所定の比率(重み付け)で外挿して温度補償値H3を求めることになる。
たとえば、1回目の補正工程と2回目の補正工程との間の時間と、2回目の補正工程と漏洩検査工程の時間とが等しい場合(たとえば、ゼロ)、1回目の補正工程で求める第1温度補償値H1と2回目の補正工程で求める第2温度補償値と漏洩検査時の温度補償値H3との関係は、温度補償値の変化が線形であれば、H3=−H1+2×H2、となる。そこで、これに重み係数を与えて、H3=−αH1+2βH2、とし、非線形性に応じてαとβを定めればよい。この場合は、第2補正工程が漏洩検査工程の前に行われるので、前述した減圧時の断熱膨張による温度降下の影響を受けない。また、外挿する場合には、重みづけの大小関係は、内挿の場合と逆転する。そのため、ワーク51の熱容量が小さいほど、温度差が大きいほど、熱伝達率が大きいほど、αを大きくし、βを小さくする。
ところで、加圧気体の供給源3からは環境温度よりも高めの気体が供給されることが多い。したがって、供給源3から例えば放熱しながらリーク検査装置10に至る。また一方、図8で示した約3%の漏れありと判定されたものは、リトライ工程で再度検査するが、当然のことながら取り外し、取り付け工程が省略され、例えばS115に引き続きS101に至る。従って、供給源3から放熱しながらリーク検査装置10に至る気体の放熱度が少ないまま再度検査が行われるので、再検査か否かによって重み付けを変更するようにしても良い。
さらに、例えば供給源3から他の加圧気体を動力とする機械等に加圧気体の供給が多い時に検査する場合と少ない時に検査する場合とでは供給源3から放熱しながらリーク検査装置10に至る気体の放熱度が少ないまま検査が行われるので、他の加圧気体を動力とする機器の稼働状況に応じて重み付けを変更するようにしても良い。
さらに、検査対象のワーク51が、温度が高いままで検査する場合について述べてきたが、例えばガスメーターのように略温度が環境温度に近いままで検査される場合にも本願は有効である。例えば供給源3から他の加圧気体を動力とする機械等に、加圧気体を供給する量が多い時に検査する場合と少ない時に検査する場合とで、重み付けを変更するようにしても良いし、例えば供給源3から供給される気体の質に応じ重み付けを変更するようにしても良い。
例えば検査室が、ワーク51、マスタ52、リーク検査装置10等しか配置できないような狭小恒温室のような場合で、ワーク51を手でリーク検査装置10にセットして検査室の扉を閉めて検査を行う場合には、検査室の室温がワーク51のセット時に、検査員の体温により変動し、その影響が ΔPt1には強く表れるものの、ΔPrではほとんど影響がなくなり、ΔPt2では全く影響がない等のような場合がある(影響度:ΔPr>・・・・・>ΔPr>ΔPt2)。このような場合でも、環境(検査員の検査室内作業による、体温による環境温度変動)との温度差により、重み付けを変更できれば、例えば、良品が1回目(影響度:ΔPr>・・・・・>ΔPr>ΔPt2)の検査で不良と誤判断さやすく、2回目(影響度:ΔPr≒ΔPr≒ΔPt2)となる再検査で合格と判定される場合には、重み付けを変更して1回目検査で誤判定回数を減らすことで検査時間を短縮することができる。つまり、ワーク51と環境との温度差の大小に基づいて重み付けを変更する場合は、熱いワーク51を検査するがごとくワーク51側に温度差の主な原因が有る場合と、上述のように環境側に温度差の主な原因が有る場合等があり、原因の所在を問う必要はなく、重み付けを変更できるようにすれば検査時間を短縮することができる。
またこの点について、ウォータージェット切断で作られた物や、液体窒素等を用いて勘合(例えばメタルシール)させた物が検査対象の場合については、ワーク51が、温度が環境温度より低い状態で検査することになる。詳述すれば、ワーク51がマスタ52に比してより冷たい場合には、漏洩検査工程のうちの整定期間(Ts1)に、マスタ52よりもワーク51の方が大きく温度上昇するので、2者の差圧の変化量は急激となり、圧力変化を測定する測定ステップ(Tr)が行われる時には圧力変化が緩やかになる。従ってこのような場合であっても本願は有効である。
さらに、入口と出口が共通の、例えば壺状のタンク等がアルゴン溶接等で製造されるような物を検査する場合には、掃気時間を長くしても掃気が十分行われない場合があり、溶接時にタンク内に侵入したアルゴンが残ったまま検査されやすい。すなわち、ワーク51とマスタ52とでは、中の気体組成が異なる状態で検査が行われやすいので、この状況(例えばアルゴン溶接等で製造されているか否か、供給源3から供給される気体中にアルゴン溶接で用いたアルゴンが混入していないか、又は混入しているとすればどの程度混入してきているのか=アルゴン分圧等の状況)を勘案して重み付けを変更するようにしても良い。
さらに、ワーク51とマスタ52を同じ力学的および熱力学的パラメータを持った異なる容器とすると、ワーク51が大きい場合にはマスタ52も大きくなり、結果、検査装置の所有場所として広い場所を要することとなるので、マスタ52を小型として、マスタ52をワーク51と同じ大型を用いる場合と小型を用いる場合の変換係数をもって対応する場合もある。このような場合でも、ステップS103で封止された、熱いワーク51内と常温の小型マスタ52内とでは、気体密度の異なる気体が封止されることは同じであり、ステップS105において加圧した時に断熱圧縮でワーク51とマスタ52の内部温度上昇についても、気体密度の低い空気が封止されるワーク51の方がマスタ52より、より多く発熱する点も同じなので、重み付けで対応する点も同じである。しかし、さらに、入側配管抵抗に着目すると、例えば370リットルの貯湯タンク(ワーク51)を検査する場合には、小型マスタ52はリーク検査装置10と同じ検査台に置ける(入側配管抵抗小=配管距離は短い)のに対し、大型ワーク51は小型マスタ52に使用した短い配管を使用することが出来なくなるので(ワーク51とマスタ52を同じ大きさのものを使用すれば入側配管抵抗の同じ配管でワーク51とマスタ52をリーク検査装置10に接続できるが、小型マスタ52を使用する目的が検査場所の狭小化である場合が多いので入側配管抵抗の同じ配管を使用しない場合が多く)、このような入側配管抵抗(又は出側配管抵抗)もまた、重み付けで対応するようにしても良い。
さらに、重み付け(重み係数)は両方を正の値のみではなく、一方を負の値としても良いし、両方が負の値であっても良い。
さらに大気開放時測定の補正工程は2つ以上で行っても良く、補正工程数に応じた重み係数数を持つようにしても良い。さらに前補正工程、後補正工程での測定圧力は漏洩検査工程での圧力以外であれば良く、前補正工程や、後補正工程で微小加圧ステップをいれて、それぞれの圧力変化率を求めるようにしても良い。
ところで、例えばアルゴン溶接を行ったものを検査対象とする場合、検査用空気の導入口(コンプレッサーの給気口)が、アルゴン溶接を行っている場所の近くにある場合があり、風向きによって、検査用空気にアルゴンが混ざる場合がある。また、湿度の低い日であるにもかかわらず、検査用空気の導入口が北側のじめじめした場所にある場合には、無風時と風が吹いた時とでは、検査用空気の湿度が変わる場合がある。
したがって、このように、検査毎(ワーク毎)に、充填される空気の質が異なる場合がある。そこで本願では、充填される空気の質を略同じものとして(連続する前補正工程、漏洩検査工程、後補正工程で封入される空気の質が近似している点を利用して)、加圧条件の異なる複数の工程(例えば前補正工程、後補正工程)での圧力変化率を基に漏洩検査工程での圧力変化率(H1とH2の比)を決めている点に特色がある。
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
実施の形態では、リーク検査装置10としてワーク51とマスタ52の差圧を測定する例を示したが、ワーク51の圧力を直接測定する構成でも構わない。
本発明は、リーク検査装置に限定されず、リーク検査方法も含まれる。