以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係るソレノイドバルブ50を備える流量制御弁100について説明する。流量制御弁100は、建設機械や産業機械等に設けられ、図示しない流体圧力源からアクチュエータ(負荷)に供給される作動流体の流量やアクチュエータからタンク等へ排出される作動流体の流量を制御するものである。流量制御弁100は、ソレノイドバルブ50と、ソレノイドバルブ50により開弁量が制御される弁装置10と、を備える。
流量制御弁100は、バルブブロック110に設けられる非貫通の挿入孔112に挿入固定される。バルブブロック110には、一端が挿入孔112の底面に開口し、他端がバルブブロック110の外面に開口して図示しない配管等を通じて流体圧力源に接続される第1ポート114と、一端が挿入孔112の側面に開口し、他端がバルブブロック110の外面に開口して図示しない配管等を通じてアクチュエータに接続される第2ポート116と、が設けられる。
流量制御弁100では、作動流体として作動油が用いられ、第1ポート114から第2ポート116へと流れる作動油の流量が制御される。作動流体は、作動油に限定されず、他の非圧縮性流体または圧縮性流体であってもよい。
弁装置10は、第1ポート114と第2ポート116との連通開度を変化させる主弁22と、主弁22が摺動自在に挿入される中空円筒状のバルブスリーブ12と、第1ポート114から作動油が導かれ、主弁22を閉弁方向に付勢する制御圧室42と、主弁22に摺動自在に挿入され、制御圧室42と第2ポート116とを連通させるスリーブ貫通孔26cが形成される圧力補償スリーブ26と、を備える。なお、圧力補償スリーブ26には、後述のソレノイドバルブ50の副弁70が着座するサブシート部26dが設けられており、圧力補償スリーブ26は、ソレノイドバルブ50のシート部材を兼ねている。
バルブスリーブ12は、主弁22の外周面を摺動自在に支持する摺動支持部12aと、主弁22が着座するシート部13と、を有する。
シート部13には、第1ポート114側から順に、円孔状の第1シート部13aと、円錐台状の第2シート部13bと、の2つのシート部が形成される。第1シート部13aの中心軸と第2シート部13bの中心軸とは、バルブスリーブ12の中心軸と一致している。
バルブスリーブ12には、第2シート部13bと摺動支持部12aとの間に、バルブスリーブ12内の空間と第2ポート116とを連通する連通孔12bが周方向に間隔をあけて複数形成される。
シート部13の外周と摺動支持部12aの外周とには、連通孔12bを挟むようにして、それぞれOリング31,32が配置される。連通孔12bと第2ポート116との接続部は、バルブスリーブ12と挿入孔112との間で圧縮されるこれら二つのOリング31,32によって封止される。また、シート部13の外周に設けられるOリング31によって、バルブスリーブ12と挿入孔112との間の隙間を通じて第1ポート114と第2ポート116とが連通することが防止される。
主弁22は、柱状部22cと、柱状部22cの両端に形成される端面22e,22fと、を有する円柱状部材である。主弁22は、一端面22eがシート部13側に位置し、柱状部22cが摺動支持部12aに摺動支持されるようにバルブスリーブ12内に配置される。
主弁22の一端面22e側には、第1シート部13aに摺動自在に挿入される円柱状のスプール弁22aが形成され、スプール弁22aと柱状部22cとの間には、第2シート部13bに着座する円錐台状のポペット弁22bが形成される。
主弁22の一端面22eには、第1ポート114に連通する凹部22gがスプール弁22aと同軸上に形成される。スプール弁22aには、一端が第1シート部13aと摺動する面に開口し、他端が凹部22gの内周面に開口する貫通孔22dが周方向に間隔をあけて複数形成される。
第1シート部13aにより閉塞される各貫通孔22dは、ポペット弁22bと第2シート部13bとが離れる方向にスプール弁22aが移動するのに伴って、徐々に開口する。つまり、第1シート部13aから露出する各貫通孔22dの面積は、スプール弁22aの移動量に応じて変化する。このように、各貫通孔22dの開口面積を変化させることによって、第1ポート114から第2ポート116へ流れる作動油の流量を制御することができる。
各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bに当接するときであっても、第1シート部13aによって完全に閉塞されないように配置される。つまり、各貫通孔22dの開口面積は、ポペット弁22bが第2シート部13bに当接する閉弁位置において最小となり、ポペット弁22bが開弁方向に変位するにつれて漸次増大する。
なお、各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bから所定距離だけ離れるまで第1シート部13aによって閉塞されるように配置されてもよい。この場合、主弁22が所定距離だけ変位するまでの間、作動油の流量をほぼゼロに設定することができる。
主弁22の他端面22fは、主弁22と、バルブスリーブ12と、ソレノイドバルブ50と、により画定される制御圧室42に臨んでいる。
バルブブロック110には、制御圧室42と第1ポート114とを接続する圧力導入通路118が形成される。圧力導入通路118は、バルブスリーブ12に形成されオリフィスとして機能する導入孔41を通じて制御圧室42に連通する。
なお、圧力導入通路118には、制御圧室42に導入された作動油が第1ポート114に逆流することを防止する逆止弁が設けられてもよい。この場合、第1ポート114の圧力が制御圧室42内の圧力よりも高い場合には、第1ポート114の作動油が圧力導入通路118、逆止弁及び導入孔41を通じて制御圧室42へと導かれる。一方、制御圧室42内の圧力が第1ポート114の圧力よりも高い場合には、逆止弁によって制御圧室42から第1ポート114への作動油の流れが遮断される。
制御圧室42内には、主弁22に対して付勢力を付与するメインリターンスプリング24が圧縮された状態で配置される。主弁22は、メインリターンスプリング24によって、シート部13に着座する方向に付勢される。
ここで、第1ポート114の圧力は、主弁22の第2シート部13bにおける断面に相当する開弁受圧面A1に作用し、主弁22を開弁させる方向に作用する。また、制御圧室42内の圧力は、柱状部22cにおける断面に相当する閉弁受圧面A2に作用し、主弁22を閉弁させる方向に作用する。このため、主弁22は、開弁受圧面A1に作用する第1ポート114の圧力による推力が、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を上回ると開弁方向に変位し、下回ると閉弁方向に変位する。
主弁22は、さらに、制御圧室42と第2ポート116とを連通させる連通路としての第1連通路23a及び第2連通路23bを有する。
第1連通路23aは、その中心軸が主弁22の中心軸に一致するように主弁22に形成される非貫通孔であり、一端が他端面22fに開口する。第1連通路23aには、圧力補償スリーブ26が摺動自在に挿入される。
なお、第1連通路23aは、一端が他端面22fに開口し、他端が凹部22gに開口する貫通孔として形成されてもよい。この場合、第1連通路23aの加工は、主弁22の凹部22g等を加工する際に併せて行うことができる。また、この場合、第1連通路23aの凹部22g側の開口端には、プラグが埋め込まれ、第1連通路23aと第1ポート114との連通は、確実に遮断される。
第2連通路23bは、主弁22の径方向に形成され、一端が第1連通路23aに連通し、他端が主弁22の外周面に開口する。第2連通路23bの他端は、主弁22が軸方向に変位する範囲において、連通孔12bと常に連通するように配置される。
圧力補償スリーブ26は、第1連通路23a内に摺動自在に挿入される摺動部26aと、制御圧室42に臨むように設けられ、摺動部26aよりも外径が大きい鍔部26bと、鍔部26bから摺動部26aにかけて軸方向に貫通して形成されるスリーブ貫通孔26cと、を有する。
圧力補償スリーブ26の鍔部26bと主弁22の他端面22fとの間には、複数の皿バネからなる圧力補償スプリング28が介装される。圧力補償スプリング28は、圧力補償スリーブ26が主弁22内に進入すると圧縮されて変形し、復元力を生じる。圧力補償スプリング28は、圧力補償スリーブ26とともに、後述の圧力補償作用を生じる。
圧力補償スリーブ26の鍔部26bに開口するスリーブ貫通孔26cの開口端には、円錐台状のサブシート部26dが形成される。サブシート部26dには、ソレノイドバルブ50の副弁70が離着座する。つまり、圧力補償スリーブ26は、副弁70が離着座するシート部材に該当する。
次に、図1及び図2を参照して、ソレノイドバルブ50の構成について説明する。
ソレノイドバルブ50は、電流が供給されることにより磁気吸引力を生じるコイル52と、コイル52が外周に設けられる有底筒状のスリーブとしてのソレノイドスリーブ51と、ソレノイドスリーブ51内に摺動自在に収容され、コイル52が生じる磁気吸引力によって軸方向に移動するプランジャ60と、磁気吸引力とは反対の方向の付勢力をプランジャ60に付与する第1付勢部材としてのサブリターンスプリング65と、プランジャ60とサブリターンスプリング65との間に介装される伝達部材としてのスプリングシート68と、プランジャ60に保持され、プランジャ60に対して径方向に変位自在な弁部材としての副弁70と、プランジャ60に対向して配置され、副弁70が離着座するサブシート部26dが形成されたシート部材としての圧力補償スリーブ26と、を有する。
ソレノイドスリーブ51は、バルブブロック110の挿入孔112内に挿入される挿入部51aと、挿入部51aよりも外径が小さく挿入孔112の外側に配置される小径部51bと、を有する。ソレノイドスリーブ51は、挿入部51aにおいてバルブスリーブ12と螺合される。ソレノイドスリーブ51とバルブスリーブ12との結合は、ネジ結合に限定されず、嵌合結合であってもよい。
挿入部51aの外周には、シール部材としてのOリング33が配置される。ソレノイドスリーブ51と挿入孔112との間で圧縮されるOリング33によって、挿入孔112内と外部との連通は遮断される。このため、挿入孔112内の作動油が外部に漏れることが防止されるとともに、外部から水や粉塵等が挿入孔112内に侵入することが防止される。
小径部51bの外周には、締結部材54が遊びを有して嵌めこまれる。締結部材54は、内周側の部分が挿入部51aに係止された状態で図示しないボルトを介してバルブブロック110に締結される。締結部材54がバルブブロック110に締結されることによって、流量制御弁100は、バルブブロック110に対して固定される。
また、ソレノイドスリーブ51には、プランジャ60が摺動自在に挿入される摺動孔51eが形成される。
プランジャ60は、円柱状の部材であり、外周面60eが摺動孔51eに摺接し、一端面60a側が制御圧室42に臨むように摺動孔51e内に配置される。プランジャ60の一端面60aには、凹部としての第1凹部60cが形成され、他端面60bには、第2凹部60gが形成される。第1凹部60c及び第2凹部60gの周囲には軸方向に貫通する複数の連通孔60dが形成される。第1凹部60cには、内周面に雌ねじ部が加工されており、第1凹部60cの内周面には副弁70を保持する保持部材61が螺着される。
保持部材61は、外周面に雄ねじ部が加工された筒状部材であり、軸心を貫通する貫通孔61aと、第1凹部60cの底面と対向する端面61bと、を有する。
副弁70は、円柱状部材であり、軸方向に延び外径が保持部材61の貫通孔61aの内径よりも小さい本体部70aと、本体部70aの一端側に円錐台状に形成された弁部70bと、本体部70aの他端側に設けられ外径が保持部材61の貫通孔61aの内径よりも大きい大径部70cと、を有する。弁部70bは、プランジャ60の一端面60aに対向して配置される圧力補償スリーブ26のサブシート部26dに着座し、スリーブ貫通孔26cを閉塞する。
保持部材61は、端面61b側から副弁70が貫通孔61aに挿入された状態で第1凹部60cに螺合される。つまり、外径が貫通孔61aの内径よりも大きい大径部70cが、第1凹部60c内に配置される。このため、大径部70cが保持部材61の端面61bによって係止されることで、副弁70がプランジャ60から抜け出ることは防止される。このように、副弁70は、プランジャ60の一端面60a側の端部である軸方向端部に保持部材61によって保持されることとなる。
また、本体部70aと貫通孔61aとの間には、所定の隙間が設けられる。このため、副弁70はプランジャ60に対して径方向に変位することが可能となる。したがって、副弁70の中心軸がサブシート部26dの中心軸に対して多少ずれていたとしても、副弁70はサブシート部26dの位置に合せて径方向に変位する。この結果、副弁70をサブシート部26dに確実に着座させることができる。
なお、大径部70cは、副弁70に一体的に形成されたものに限定されず、外径が貫通孔61aの内径よりも大きい環状またはC字状の部材を副弁70の本体部70aに嵌合することによって形成されてもよい。
また、第1凹部60c内には、一端が第1凹部60cの底面に係止され、他端が大径部70cに係止される保持スプリング62が設けられる。保持スプリング62の付勢力は副弁70に対して大径部70cを保持部材61の端面61bに当接させる方向に作用する。
ここで、上述のように、本体部70aと貫通孔61aとの間には所定の隙間が設けられているため、プランジャ60の中心軸に対して副弁70の中心軸が傾く可能性がある。このように副弁70が傾いた状態でサブシート部26dに弁部70bが着座すると、サブシート部26dと弁部70bとの間に隙間が生じてしまったり、サブシート部26dに弁部70bが密接するまでに時間がかかってしまったりするおそれがある。さらに、副弁70が傾くことで弁部70bの先端がサブシート部26dに衝突し、サブシート部26dが変形したり損傷したりするおそれがある。
これに対して本実施形態では、弁部70bがサブシート部26dから離れると、副弁70の大径部70cが保持スプリング62によって保持部材61の端面61bに押し付けられる。このため、副弁70は、サブシート部26dに対して傾くことが抑制され、副弁70の中心軸は、プランジャ60の中心軸及びサブシート部26dの中心軸とほぼ平行となる。この結果、副弁70の弁部70bを、サブシート部26dに確実に着座させることが可能となる。
プランジャ60の第2凹部60gには、球体状の球面部63が嵌入されており、他端面60bから球面部63の一部が凸状球面として突出している。なお、球面部63の形状は球体に限定されず、他端面60bから突出している部分が球面であれば、第2凹部60g内に挿入される部分はどのような形状であってもよい。あるいは、プランジャ60の他端面60bに凸状球面を直接的に形成してもよい。
スプリングシート68は、サブリターンスプリング65の一端を支持する支持部68aと、球面部63と当接する部分に形成される凹状円錐面としての円錐面部68bと、を有する。円錐面部68bは、軸方向に凹んだ円錐状に形成される。つまり、球面部63には、スプリングシート68を介してサブリターンスプリング65の付勢力が作用する。
ここで、球面部63に接触する円錐面部68bは、円錐状に形成されているため、円錐面部68bと球面部63とは、線接触状態、すなわち、互いに滑動自在な状態にある。したがって、サブリターンスプリング65の傾きに応じてスプリングシート68が軸方向に対して傾いたとしても、スプリングシート68は、球面部63に対して滑動するため、サブリターンスプリング65の傾きがプランジャ60に伝達されることが防止される。
なお、円錐面部68bの形状は、円錐状に限定されず、球面部63に対してスプリングシート68が滑動可能であればどのような形状であってもよく、例えば、球面部63以上の半径を有する球面状であってもよい。
ソレノイドスリーブ51内には、サブリターンスプリング65の他端を支持し、軸方向に移動自在な円柱状のリテーナ64がさらに設けられる。
プランジャ60の他端面60bとリテーナ64とにより区画され、サブリターンスプリング65が配置されるスプリング室69は、プランジャ60の連通孔60dを通じて制御圧室42に連通される。このため、スプリング室69内の圧力は、制御圧室42内の圧力と同等となる。
ソレノイドスリーブ51の端部51dには、調節ネジ66が軸方向に貫通して螺着される。調節ネジ66の一端は、スプリング室69内のリテーナ64に当接しており、調節ネジ66が回転されるとリテーナ64の軸方向における位置が変更され、サブリターンスプリング65の付勢力が変化する。このように、調節ネジ66を回転することによって、プランジャ60に作用するサブリターンスプリング65の初期荷重を変更することができる。ソレノイドスリーブ51から突出する調節ネジ66の他端は、ソレノイドスリーブ51に取り付けられるカバー53によって覆われる。
また、ソレノイドスリーブ51の摺動孔51eには、C字状のストッパリング67が係止される。ストッパリング67は、サブシート部26dに向かうプランジャ60の移動を規制する規制部として機能する。ストッパリング67は、副弁70がサブシート部26dに着座した後、保持スプリング62が最大圧縮状態となる前にプランジャ60の移動を規制する位置に配置される。また、ストッパリング67は、プランジャ60をソレノイドスリーブ51内に組み付けた後に、サブリターンスプリング65の付勢力によってプランジャ60が押し戻されて抜け出ることを防止する抜止め部材としても機能する。
次に、図1及び図2を参照し、上記構成のソレノイドバルブ50を備える流量制御弁100の作動について説明する。なお、図1は、コイル52に電流が供給されておらず、弁部70bがサブシート部26dに着座した状態を示しており、図2は、コイル52に電流が供給され、弁部70bがサブシート部26dから離座した状態を示している。
ソレノイドバルブ50のコイル52に電流が供給されていないとき、プランジャ60は、図1に示されるように、サブリターンスプリング65の付勢力によって押圧され、ストッパリング67に当接する。一方、副弁70は、保持スプリング62の付勢力と制御圧室42に連通する第1凹部60c内の圧力によって弁部70bがサブシート部26dに着座するように付勢される。このように、弁部70bがサブシート部26dに着座することで、制御圧室42は閉塞された状態となる。このため、制御圧室42内の圧力は第1ポート114の圧力と同等となり、閉弁受圧面A2には、第1ポート114の圧力と同等の圧力が作用する。
ここで、閉弁受圧面A2の面積は、開弁受圧面A1の面積よりも大きく設定される。したがって、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力が、開弁受圧面A1に作用する第1ポート114の圧力による推力を上回り、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。このように、コイル52が非通電状態にあるときには、第1ポート114から第2ポート116への作動油の流れが遮断される。
一方、コイル52に電流が供給されると、コイル52が生じる磁気吸引力によってプランジャ60がコイル52側へと吸引される。プランジャ60がサブリターンスプリング65を圧縮させる方向へと変位すると、やがて副弁70の大径部70cが保持部材61の端面61bに当接し、副弁70もコイル52側へと変位し始める。このようにプランジャ60に連動して副弁70が変位することで、弁部70bはサブシート部26dから離座し、弁部70bとサブシート部26dとの間に隙間が形成される。制御圧室42内の作動油は、この隙間を通じてスリーブ貫通孔26c、第1連通路23a、第2連通路23b及び連通孔12bを通過し第2ポート116へと排出される。
第1ポート114から制御圧室42への作動油の流入は、オリフィスとして機能する導入孔41によって制限される。このため、制御圧室42内の圧力は、制御圧室42と第2ポート116とが連通することによって低下する。そして、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力と、開弁受圧面A1に作用する第1ポート114の圧力による推力と、がバランスするまで主弁22はシート部13を開放する方向へと変位する。この結果、作動油は、貫通孔22dと第1シート部13aとの間、ポペット弁22bと第2シート部13bとの間及び連通孔12bを通じて、第1ポート114から第2ポート116へと流れる。
コイル52に供給される電流が増加されると、副弁70はサブシート部26dからさらに離れる。この結果、制御圧室42から第2ポート116へと排出される作動油の量が増加し、制御圧室42内の圧力はさらに低下する。そして、制御圧室42内の圧力の低下に応じて主弁22はシート部13を開放する方向へとさらに移動し、スプール弁22aの貫通孔22dが第1シート部13aから露出される面積が大きくなる。この結果、第1ポート114から第2ポート116へと流れる作動油の流量が増加する。
このように、コイル52に供給される電流を増減すると、副弁70とサブシート部26dとの間の隙間の大きさが変化し、主弁22の変位量が変化する。つまり、第1ポート114から第2ポート116へと流れる作動油の流量は、コイル52に供給される電流を増減することで制御される。
また、コイル52に供給される電流が増加するにつれてプランジャ60がコイル52側へと移動するため、サブリターンスプリング65はさらに圧縮される。ここで、一般的にスプリングは、圧縮方向に対してわずかな傾きを有しており、圧縮されるほどその傾きは大きくなる。このため、圧縮されたサブリターンスプリング65の傾きがプランジャ60に伝達されると、プランジャ60が摺動方向に対して傾き、摺動抵抗が増大してしまう。
これに対して、本実施形態では、上述のように、サブリターンスプリング65に傾きが生じたとしても、サブリターンスプリング65を支持するスプリングシート68が球面部63に対して滑動するため、サブリターンスプリング65の傾きがプランジャ60に伝達されることは防止される。
このように、本実施形態では、サブリターンスプリング65の傾きがプランジャ60に伝達されることが防止されるため、プランジャ60の摺動抵抗の増大を抑制することができる。この結果、ソレノイドバルブ50のヒステリシスが低減され、流量制御弁100による作動油の流量制御の精度を向上させることができる。
一方、コイル52への通電が停止されると、プランジャ60を吸引する磁気吸引力が消失するため、プランジャ60は、サブリターンスプリング65の付勢力によって副弁70がサブシート部26dに着座する方向へと押圧される。
ここで、副弁70は、プランジャ60に対して径方向に変位自在に保持されている。このため、副弁70の中心軸がサブシート部26dの中心軸に対して多少ずれていたとしても、副弁70はサブシート部26dの位置に合せて径方向に変位する。この結果、副弁70をサブシート部26dに確実に着座させることができる。
また、副弁70は、図2に示されるように、保持スプリング62によって、大径部70cが保持部材61の端面61bに押し付けられる。このため、副弁70は、サブシート部26dに対して傾くことはなく接近することになり、弁部70bをサブシート部26dに着座させる際、弁部70b及びサブシート部26dが損傷することを防止することができる。加えて、保持スプリング62は、副弁70がサブシート部26dに着座する際の衝撃を吸収する。このため、副弁70をサブシート部26dに安定して着座させることができる。
また、プランジャ60は、副弁70がサブシート部26dに着座した状態となってから、ストッパリング67に当接することで停止する。つまり、弁部70bとサブシート部26dとの当接部には、プランジャ60の慣性力が作用しない。このため、弁部70bとサブシート部26dとの当接部に作用する荷重が低減され、弁部70b及びサブシート部26dに摩耗等が生じることを抑制することができる。なお、プランジャ60の慣性力が小さい場合は、プランジャ60をストッパリング67に当接させることなく、例えば、副弁70の大径部70c側の端面に第1凹部60cの底面を当接させることでプランジャ60の移動を停止させてもよい。
副弁70の弁部70bがサブシート部26dに着座すると、制御圧室42内には導入孔41を通じて第1ポート114の作動油が導かれ、制御圧室42内の圧力は、第1ポート114の圧力と同等となるまで上昇する。
制御圧室42内の圧力が第1ポート114の圧力と同等になると、上述のように、開弁受圧面A1に作用する第1ポート114の圧力による推力が、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を下回るため、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。この結果、主弁22は、シート部13を閉塞し、第1ポート114から第2ポート116への作動油の流れが遮断される。
続いて、圧力補償スリーブ26及び圧力補償スプリング28による圧力補償作用について説明する。
副弁70がサブシート部26dに着座した状態において、副弁70には、スリーブ貫通孔26cを通じて第2ポート116の圧力が作用するとともに、制御圧室42と連通する第1凹部内の圧力、すなわち、第1ポート114の圧力が作用している。
このため、プランジャ60を変位させて副弁70をサブシート部26dから離座させるためには、第1ポート114の圧力と第2ポート116の圧力との差圧が副弁70を閉弁方向に付勢する力と、サブリターンスプリング65がプランジャ60を閉弁方向に付勢する力と、の合力に打ち勝つだけの磁気吸引力をコイル52によって発生させなければならない。
つまり、第1ポート114の圧力と第2ポート116の圧力との圧力差が大きいほど、副弁70及びプランジャ60を開弁方向に駆動させるには、コイル52に供給される電流を大きくしなければならない。このように、第1ポート114の圧力と第2ポート116の圧力との圧力差に応じて副弁70及びプランジャ60を駆動させるために必要な電流の大きさは変化してしまう。この結果、コイル52に供給される電流の大きさと、第1ポート114から第2ポート116へと流れる作動油の流量とは、対応しないことになる。
そこで、第1ポート114の圧力と第2ポート116の圧力との圧力差に関わらず、副弁70及びプランジャ60を駆動させるために必要となる電流の大きさが一定となるように、サブシート部26dが設けられる圧力補償スリーブ26の位置を圧力差に応じて変化させる。
具体的には、圧力補償スリーブ26の鍔部26b側には、制御圧室42を通じて第1ポート114の圧力が作用し、摺動部26a側には、第1連通路23aを通じて第2ポート116の圧力が作用する。ここで、鍔部26bと主弁22の他端面22fとの間には、圧力補償スプリング28が介装されているため、第1ポート114の圧力と第2ポート116の圧力との圧力差が大きくなると圧力補償スプリング28が圧力補償スリーブ26の軸方向において圧縮され、サブシート部26dの位置が主弁22寄りに変位する。
サブシート部26dに対して押圧される副弁70は、サブシート部26dの変位に追従して、主弁22寄りに変位する。このため、副弁70を離座させるために副弁70とプランジャ60とが係合する位置、すなわち、副弁70の大径部70cが保持部材61の端面61bに当接する位置も主弁22寄りに変位する。このように、副弁70の着座位置が主弁22寄りに変位した分だけ副弁70とプランジャ60とが係合する位置も主弁22寄りに変位する。つまり、第1ポート114の圧力と第2ポート116の圧力との圧力差によってサブシート部26dの位置が変化する前と比較して、副弁70を離座させる際のサブリターンスプリング65の長さは長くなる。すなわち、副弁70を離座させる際の抵抗力であるサブリターンスプリング65の付勢力は低下することとなる。
このように、圧力補償スリーブ26が設けられることによって、第1ポート114の圧力と第2ポート116の圧力との圧力差が大きくなったとしても、その分、サブリターンスプリング65の付勢力が低下する。このため、コイル52へ供給される電流の大きさを大幅に変更しなくとも副弁70を離座させることが可能となる。この結果、コイル52に供給される電流の大きさに対する副弁70の変位量が安定し、第1ポート114から第2ポート116へと流れる作動油の流量を正確に制御することができる。
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
ソレノイドバルブ50では、副弁70は、プランジャ60の端部に保持された状態で、プランジャ60と連動して移動し、プランジャ60の端部に対向して配置されるサブシート部26dに離着座する。このように、副弁70は、プランジャ60を貫通することなく設けられるため、その軸方向長さを短くすることが可能となる。また、副弁70は、単にプランジャ60の端部に保持されるのではなく、径方向に変位自在な状態でプランジャ60に保持される。このため、副弁70の中心軸がサブシート部26dの中心軸に対して多少ずれていたとしても、副弁70は、サブシート部26dの中心軸に合せて径方向に変位し着座することができる。したがって、ソレノイドバルブ50では、副弁70のシール性を維持しつつ、副弁70を小さくすることが可能となり、結果として副弁70の加工費及び材料費が抑制され、ソレノイドバルブ50の製造コストを低減させることができる。
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、副弁70の大径部70cは、プランジャ60の一端面60aに形成された第1凹部60c内に配置される。これに代えて、図3に示される変形例のように、副弁70の大径部70cを、プランジャ60の一端面60aから突出した環状突部60hに囲まれた空間内に配置した構成としてもよい。
具体的には、プランジャ60の一端面60aには、軸方向に突出した環状の環状突部60hが形成される。環状突部60hには、外周面に雄ねじ部が加工されており、環状突部60hの外周面には、副弁70を保持する保持部材161が螺着される。
保持部材161は、軸方向に貫通する貫通孔161bが形成された円盤部161aと、円盤部161aの一端面161c側の外周端から軸方向に突出する円筒部161dと、を有する。円筒部161dの内周面には、雌ねじ部が加工されている。
副弁70は、上記実施形態のものと比べて本体部70aの軸方向長さが異なる以外は同じ形状であり、外径が貫通孔161bの内径よりも小さい本体部70aと、外径が貫通孔161bの内径よりも大きい大径部70cと、を有する。
保持部材161は、一端面161c側から副弁70が貫通孔161bに挿入された状態で環状突部60hに螺合される。つまり、外径が貫通孔161bの内径よりも大きい大径部70cが、環状突部60hに囲まれた空間内に配置される。このため、大径部70cが保持部材161の一端面161cによって係止されることで、副弁70がプランジャ60から抜け出ることは防止される。このように、副弁70は、プランジャ60の一端面60a側の端部である軸方向端部に保持部材161によって保持されることとなる。
このように、プランジャ60の軸方向外側に副弁70が配置されるため、副弁70の一部をプランジャ60内に配置した場合と比較し、副弁70の軸方向長さを短くすることができる。この結果、副弁70の加工費及び材料費をさらに抑制することができる。加えて、プランジャ60の一端面60aに凹部が設けられていないため、プランジャ60の磁気特性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
ソレノイドバルブ50は、供給される電流に応じて磁気吸引力を生じるコイル52と、コイル52が外周に設けられる筒状のソレノイドスリーブ51と、ソレノイドスリーブ51内に摺動自在に収容され、コイル52が生じる磁気吸引力によって軸方向に移動するプランジャ60と、磁気吸引力とは反対方向の付勢力をプランジャ60に付与するサブリターンスプリング65と、プランジャ60の一端面60a側の端部である軸方向端部に保持され、プランジャ60に対して径方向に変位自在な副弁70と、プランジャ60の軸方向端部に対向して配置され、副弁70が離着座する圧力補償スリーブ26と、を備えることを特徴とする。
この構成では、副弁70は、プランジャ60の軸方向端部に保持された状態で、プランジャ60と連動して移動し、プランジャ60の軸方向端部に対向して配置される圧力補償スリーブ26に離着座する。このように、副弁70は、プランジャ60を貫通することなく設けられるため、その軸方向長さを短くすることが可能となる。また、副弁70は、単にプランジャ60の軸方向端部に保持されるのではなく、径方向に変位自在な状態でプランジャ60に保持される。このため、副弁70の中心軸が圧力補償スリーブ26のサブシート部26dの中心軸に対して多少ずれていたとしても、副弁70は、サブシート部26dの中心軸に合せて径方向に変位し着座することができる。したがって、この構成では、副弁70のシール性を維持しつつ、副弁70を小さくすることが可能となり、結果として副弁70の加工費及び材料費が抑制され、ソレノイドバルブ50の製造コストを低減させることができる。
また、ソレノイドバルブ50は、プランジャ60の軸方向端部に固定され、軸方向に貫通する貫通孔61a,161bを有する保持部材61,161をさらに備え、副弁70は、貫通孔61a,161bの内径より外径が小さい棒状の本体部70aと、本体部70aに連続して形成され貫通孔61a,161bの内径より外径が大きい大径部70cと、を有し、本体部70aは、径方向に遊びを持って貫通孔61a,161bに挿通し、大径部70cは、保持部材61,161とプランジャ60との間に保持されることを特徴とする。
この構成では、副弁70は、保持部材61,161によって、径方向に変位自在な状態でプランジャ60の軸方向端部に保持される。このように、副弁70は、プランジャ60を貫通することなく設けられるため、その軸方向長さを短くすることが可能となる。また、副弁70は、径方向に変位自在な状態でプランジャ60に保持される。このため、副弁70の中心軸が圧力補償スリーブ26のサブシート部26dの中心軸に対して多少ずれていたとしても、副弁70は、サブシート部26dの中心軸に合せて径方向に変位し着座することができる。したがって、この構成では、副弁70のシール性を維持しつつ、副弁70を小さくすることが可能となり、結果として副弁70の加工費及び材料費が抑制され、ソレノイドバルブ50の製造コストを低減させることができる。
また、ソレノイドバルブ50は、プランジャ60と大径部70cとの間に配置され、副弁70を圧力補償スリーブ26に向けて付勢する保持スプリング62をさらに備えることを特徴とする。
この構成では、副弁70は保持スプリング62によって圧力補償スリーブ26に向けて付勢される。このように付勢されることで副弁70は、圧力補償スリーブ26のサブシート部26dに対して傾くことが抑制される。このため、副弁70の弁部70bをサブシート部26dに着座させる際に、副弁70が傾いた状態でサブシート部26dに衝突して弁部70b及びサブシート部26dが損傷することを防止することができる。加えて、副弁70がサブシート部26dに着座する際の衝撃は、保持スプリング62によって吸収される。このため、副弁70をサブシート部26dに安定して着座させることができる。
また、ソレノイドバルブ50は、圧力補償スリーブ26に向かうプランジャ60の移動を規制するストッパリング67をさらに備え、プランジャ60は、副弁70が圧力補償スリーブ26に着座した状態においてストッパリング67に当接することを特徴とする。
この構成では、圧力補償スリーブ26に向かうプランジャ60は、副弁70が圧力補償スリーブ26に着座した状態となってから、ストッパリング67に当接することで停止する。つまり、副弁70と圧力補償スリーブ26との当接部である弁部70bとサブシート部26dとの当接部には、プランジャ60の慣性力が作用しない。このため、弁部70bとサブシート部26dとの当接部に作用する荷重が低減され、弁部70b及びサブシート部26dに摩耗等が生じることを抑制することができる。また、弁部70b及びサブシート部26dの材料として硬度が低く、より安価な材料を採用することができる。この結果、副弁70の加工費及び材料費が抑制され、ソレノイドバルブ50の製造コストを低減させることができる。
また、ソレノイドバルブ50は、サブリターンスプリング65とプランジャ60との間に介装されるスプリングシート68をさらに備え、スプリングシート68に当接するプランジャ60の当接部及びプランジャ60に当接するスプリングシート68の当接部の何れか一方の当接部には他方の当接部に向けて突出する球面部63が設けられることを特徴とする。
この構成では、プランジャ60とスプリングシート68とは、球面部63を介して接触する。このため、サブリターンスプリング65の傾きに応じてスプリングシート68が軸方向に対して傾いた場合、スプリングシート68は球面部63に対して滑動する。この結果、サブリターンスプリング65の傾きがプランジャ60に伝達されることが防止される。このように、プランジャ60が傾くことが防止されることで、プランジャ60の摺動抵抗が増大することが抑制され、ソレノイドバルブ50のヒステリシスを低減させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、流量制御弁100は、第1ポート114から第2ポート116への作動油の流れを制御するものであるが、これに限定されず、第2ポート116から第1ポート114への作動油の流れも制御することが可能な双方向流制御弁であってもよい。
また、上記実施形態では、ソレノイドバルブ50は、作動流体の流量や圧力を制御する主弁22の開度を間接的に変化させるものであるが、これに限定されず、主弁22を直接的に駆動するものであってもよい。