JP6774189B2 - 発光体、発光体の製造方法、および、発光体粉末の製造方法 - Google Patents

発光体、発光体の製造方法、および、発光体粉末の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、放射線を照射すると発光する蛍光発光体に関し、特に、13族窒化物からなる発光体に関する。
GaNを初めとする13族窒化物は、X線、電子線その他の放射線を照射すると発光する(蛍光を発する)発光体(蛍光発光体)であることから、それらの放射線を検出する検出器(シンチレーション(scintillation)検出器)におけるシンチレータ(scintillator)に適用が可能であることがすでに公知である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、強いシンチレーションを生じさせるためには、InGaN/GaNの多重量子井戸(MQW)構造を有するシンチレータが好ましいとの開示がある。
また、AlNやAlの粉体粒子の表面に13族窒化物をヘテロエピタキシャル成長させることによって発光体を得る技術も公知である(例えば、特許文献2参照)。
一方、InGaN/GaN MQW層をGaN層の上に形成する場合において、下地のGaN層の面方位に応じてInGaN中のIn組成が異なり、それゆえ、発光波長が下地のGaN層の面方位ごとに異なることもすでに公知である(例えば、非特許文献1参照)。
また、InGaNやGaNを成長させる場合において、極性面であるc面以外の半極性面や非極性面(例えばm面)を成長面とすると、c面を成長面とする場合に比して不純物としての酸素の取り込みが多くなり、発光輝度が低下することが知られている(例えば、特許文献3参照)。
さらには、c軸方向に配向させた多結晶アルミナを基板形状にした配向アルミナ基板およびその基板上に窒化ガリウムを積層させc軸方向に配向させたGaN多結晶基板(配向GaN基板)を作成する方法もすでに公知である(例えば、特許文献4参照)。
特開2004−59722号公報 特開平11−279550号公報 特許第4891462号公報 国際公開第2014/192911号
K. Nisizuka, M. Funato, Y. Kawakami, and Sg. Fujita, "Efficient radative recombination from <11-22> -oriented InxGa1-xN multiple quantum wells fabricated by the regrowth technique", Applied Physics Letters, vol.85, no.15(2004), p.3122-3124.
シンチレータとして使用する発光体は、検出精度および検出感度の観点から、発光スペクトルにおける発光波長の半値幅が小さく発光輝度が強い(発光強度が大きい)ものであることが望ましい。この点に関し、13族窒化物半導体は、分解しにくく耐環境性が高いことから、例えばInGaN/GaN MQW構造は、高温・高圧といった過酷な環境でも輝度劣化の少ない蛍光発光体として使用できると考えられる。
しかしながら、特許文献1には、InGaN/GaN MQW構造を有するシンチレータに関し、InGaN層とGaN層の膜厚が例示されているのみであり、具体的な構造および特性について何ら開示されてはいない。
また、例えば特許文献2に開示されているように粉体粒子の表面にInGaN/GaN MQW構造を形成しようとすると、粉体の表面には様々な面方位の結晶面が現れているために、非特許文献1に開示されているように下地の面方位によってInGaN中のIn組成が異なることになり、結果的に発光スペクトルが広くなってシンチレータとしての使用に適さない。また、下地の面方位が様々であるということは、極性面であるc面以外の半極性面や非極性面を成長面とする成長も生じ得ることを意味するが、特許文献3に開示されているように、それらの成長面における成長は酸素などの不純物を多く取り込むため、得られる蛍光発光体において高発光効率が期待できないという問題もある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、13族窒化物からなり、発光波長の半値幅が小さくかつ発光効率の優れた発光体を実現することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、発光体であって、複数の単位発光体が、アルミナ(006)面についてのX線ロッキングカーブ半値幅の値が2.0度〜6.5度である、c軸配向した多結晶アルミナ基板の上に備わっており、前記複数の単位発光体のそれぞれが、13族窒化物半導体からなり、c軸配向した複数の層の積層体であり、前記複数の層の一部が蛍光発光する発光層であり、c面を主面とする平板粒子状をなしており、前記主面の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下であり、前記多結晶アルミナ基板の個々の結晶上に一の前記単位発光体が備わり、前記一の単位発光体のc軸方位が、直下の結晶のc軸方位に倣っており、前記一の単位発光体同士の間に溝部が備わる、ことを特徴とする。
本発明の第の態様は、第の態様に係る発光体であって、前記発光層が、相異なる組成を有する第1単位層と第2単位層とが繰り返し交互に積層された多重量子井戸構造を有する、ことを特徴とする。
本発明の第の態様は、第の態様に係る発光体であって、前記第1単位層がInGaNからなり、前記第2単位層がGaNからなる、ことを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3の態様のいずれかに係る発光体であって、前記溝部が前記多結晶アルミナ基板の結晶粒界に沿って備わる、ことを特徴とする。
本発明の第の態様は、アルミナ(006)面についてのX線ロッキングカーブ半値幅の値が2.0度〜6.5度である、c軸配向した多結晶アルミナ基板と、13族窒化物半導体からなり、前記多結晶アルミナ基板の上に備わる発光体構造と、を備え、前記発光体構造が、それぞれが前記多結晶アルミナ基板の個々の結晶上に備わり、蛍光を発する発光層を有する複数の単位発光体によって構成されてなり、前記複数の単位発光体のそれぞれのc軸方位が、直下の結晶のc軸方位に倣っており、前記複数の単位発光体それぞれの間に溝部が備わる、ことを特徴とする。
本発明の第の態様は、第の態様に係る発光体であって、前記溝部が前記多結晶アルミナ基板の結晶粒界に沿って備わる、ことを特徴とする。
本発明の第の態様は、第5または第6の態様に係る発光体であって、前記多結晶アルミナ基板の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下である、ことを特徴とする。
本発明の第の態様は、第ないし第の態様のいずれかに係る発光体であって、前記複数の単位発光体が、それぞれがc軸配向した複数の層の積層体であり、前記複数の層の一部が前記発光層である、ことを特徴とする。
本発明の第の態様は、第の態様に係る発光体であって、前記発光層が、相異なる組成を有する第1単位層と第2単位層とが繰り返し交互に積層された多重量子井戸構造を有する、ことを特徴とする。
本発明の第10の態様は、第の態様に係る発光体であって、前記第1単位層がInGaNからなり、前記第2単位層がGaNからなる、ことを特徴とする。
本発明の第11の態様は、発光体を製造する方法であって、アルミナ(006)面についてのX線ロッキングカーブ半値幅の値が2.0度〜6.5度である、c軸配向した多結晶アルミナ基板の主面に存在する個々の結晶上に、13族窒化物半導体からなり、当該結晶のc軸方位に倣ったc軸方位を有し、蛍光を発する発光層を有する単位発光体を、それぞれの前記単位発光体の間に溝部を設けつつ成長させることによって、複数の前記単位発光体からなる発光体構造を形成する、ことを特徴とする。
本発明の第12の態様は、第11の態様に係る発光体の製造方法であって、前記溝部を前記多結晶アルミナ基板の結晶粒界に沿って形成させる、ことを特徴とする。
本発明の第13の態様は、第11または第12の態様に係る発光体の製造方法であって、前記多結晶アルミナ基板の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下である、ことを特徴とする。
本発明の第14の態様は、第11ないし第13の態様のいずれかに係る発光体の製造方法であって、それぞれがc軸配向した複数の層を積層させることによって複数の前記単位発光体を形成し、前記複数の層の一部を前記発光層として形成する、ことを特徴とする。
本発明の第15の態様は、第14の態様に係る発光体の製造方法であって、前記発光層を、相異なる組成を有する第1単位層と第2単位層とが繰り返し交互に積層することによって多重量子井戸構造として形成する、ことを特徴とする。
本発明の第16の態様は、第15の態様に係る発光体の製造方法であって、前記第1単位層をInGaNにて形成し、前記第2単位層をGaNにて形成する、ことを特徴とする。
本発明の第17の態様は、蛍光を発する発光体粉末を製造する方法であって、第11ないし第16の態様のいずれかに係る製造方法によって発光体を得る発光体作製工程と、前記発光体において前記多結晶アルミナ基板を前記発光体構造から剥離させることで、前記発光体構造において個々の前記単位発光体同士を分離させ、これによって発光体粉末を得る粉末作製工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の第18の態様は、第17の態様に係る発光体粉末の製造方法であって、前記発光体作製工程においては、前記多結晶アルミナ基板と前記発光体構造との間に剥離層を形成し、前記粉末作製工程においては、前記発光体の前記多結晶アルミナ基板側にレーザー光を照射することによって前記剥離層のところで前記多結晶アルミナ基板を前記発光体構造から剥離させる、ことを特徴とする。
本発明の第19の態様は、蛍光を発する発光体粉末を製造する方法であって、第ないし第10の態様のいずれかに係る発光体を用意する発光体準備工程と、前記発光体において前記多結晶アルミナ基板を前記発光体構造から剥離させることで、前記発光体構造において個々の前記単位発光体同士を分離させ、これによって発光体粉末を得る粉末作製工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の第20の態様は、第19の態様に係る発光体粉末の製造方法であって、前記発光体が前記多結晶アルミナ基板と前記発光体構造との間に剥離層を有してなり、前記粉末作製工程においては、前記発光体の前記多結晶アルミナ基板側にレーザー光を照射することによって前記剥離層のところで前記多結晶アルミナ基板を前記発光体構造から剥離させる、ことを特徴とする。
本発明の第21の態様は、第17ないし第20の態様のいずれかに係る発光体粉末の製造方法であって、前記発光体粉末の粉末粒子が、c面を主面とする平板状をなしており、前記主面の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下である、ことを特徴とする。
本発明の第1ないし第21の態様によれば、結晶方位の揃った、発光層における組成ばらつきの小さい発光体を実現することができる。
特に、第1ないし第16の態様によれば、発光スペクトルにおける波長ピークの半値幅が小さい板状の発光体を実現することが実現できる。
特に、第1ないし第10の態様によれば、溝部からも光を取り出し可能となるので、発光効率が優れた板状の発光体が実現できる。
また、第1ないし16の態様によれば、溝部が好適に形成されてなるとともに、c軸以外の成長方位における成長が抑制されてなることで、発光効率が特に優れた板状の発光体が、実現できる。
特に、第17ないし第21の態様によれば、粉末粒子内における結晶方位が揃った、発光層における組成ばらつきの小さい発光体粉末が実現できる。
特に、第21の態様によれば、塗布や成形などの加工によって作製した加工品においても結晶方位が揃いやすく、優れた発光効率が得られる発光体粉末が実現できる。
第1の実施の形態に係る板状発光体10の構成を模式的に示す図である。 板状発光体10の上面のレーザー顕微鏡像である。 配向アルミナ基板1の詳細について説明するための図である。 粒子状の発光体を得る処理の様子を示す図である。
本明細書中に示す周期表の族番号は、1989年国際純正応用化学連合会(International Union of Pure Applied Chemistry:IUPAC)による無機化学命名法改訂版による1〜18の族番号表示によるものであり、13族とはアルミニウム(Al)・ガリウム(Ga)・インジウム(In)等を指し、14族とは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等を指し、15族とは窒素(N)・リン(P)・ヒ素(As)・アンチモン(Sb)等を指す。
<第1の実施の形態>
<板状発光体の構造>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る板状発光体10の構成を模式的に示す図である。図2は、板状発光体10の上面のレーザー顕微鏡像である。図3は、板状発光体10において下地基板として用いられる配向アルミナ基板1の詳細について説明するための図である。
本実施の形態に係る板状発光体10は、X線、電子線その他の放射線を照射すると発光する(蛍光を発する)、板状の発光体(蛍光発光体)である。板状発光体10は、概略、13族窒化物半導体からなる発光構造体を備える。より詳細には、板状発光体10は、下地基板である配向アルミナ基板1の上に、GaNからなるいわゆる低温バッファ層2と、第1のn型GaN層3と、発光層4と、キャップ層としての第2のn型GaN層5とを、この順に積層したものである。低温バッファ層2から第2のn型GaN層5までの積層は、MOCVD(有機金属化学気相成長)法によって行うのが好適であるが、他の成長手法が採用されてもよい。なお、以降においては、このうち、第1のn型GaN層3と、発光層(活性層)4と、第2のn型GaN層5との積層部分を、発光体構造20と称することとする。
配向アルミナ基板1は、アルミナ粒子をc軸配向させつつ焼結させることにより得られる、面内方向にアルミナ結晶が連結してなる焼結体を、所定の厚みに研磨することにより得られる、c軸配向多結晶基板である。
より詳細には、配向アルミナ基板1は、結晶粒界1gで区画される個々のアルミナ結晶のc軸方向については当該配向アルミナ基板1の主面の法線方向(以下、単に法線方向とも称する)から多少のずれを有している場合がある(適度にばらついている)ものの、基板全体としてみれば法線方向がアルミナのc軸方向に略一致しているとみなすことができるものである。個々のアルミナ結晶の面内方向における平均粒径(平均サイズ)は30μm〜100μm程度である。
例えば図3に示す配向アルミナ基板1の場合であれば、図面視左右方向において4つのアルミナ結晶1a、1b、1c、および1dが連結してなるところ、アルミナ結晶1a、1b、1c、および1dにおけるc軸方向(矢印cにて示す)はそれぞれ、配向アルミナ基板1の主面Sの法線方向(矢印nにて示す、図3の図面視上下方向に一致している)に対して、角度α1、α2、α3、α4だけ傾斜している。
配向アルミナ基板1における個々のアルミナ結晶のc軸のばらつきの程度(以下、c軸配向度)は、主面Sに対しアルミナの(006)面についてのX線ロッキングカーブ(XRC)測定(ωスキャン)を行った場合に得られる(006)面のピークの半値幅(以下、RC半値幅)の多少によって評価が可能である。RC半値幅の値が小さいほど、c軸方位が法線方向に揃っている(配向度が高い)ということになる。本実施の形態においては、係るRC半値幅の値が2.0度〜6.5度である配向アルミナ基板1を用いて板状発光体10を構成する。係る場合に、発光スペクトルにおける発光強度が大きく、かつ、シンチレータとして使用が可能な程度に発光波長の半値幅(以下、波長半値幅)が小さい板状発光体10が実現される。
なお、配向アルミナ基板1の平面サイズ(直径)および厚みには、発光体構造20を形成するための処理および板状発光体10の使用に際して問題とならない限りにおいて特段の制限はないが、例えば直径2インチ〜8インチで、厚みが300μm〜1800μm程度のものが例示される。
バッファ層2は、発光体構造20の結晶品質を良好なものとするために形成される層である。バッファ層2は、GaNにて5nm〜50nm程度の厚みに形成される。
第1のn型GaN層3は、GaNにn型ドーパント(例えばSi)が8×1017/cm〜3×1019/cm程度の原子濃度でドープされることによりn型を呈するGaN層である。第1のn型GaN層3は、100nm〜10μm程度の厚みを有するのが好適である。
発光層4は、発光体構造20において主に発光を担う部位である。本実施の形態に係る板状発光体10は、係る発光層4を、それぞれにn型ドーパント(例えばSi)が5×1017/cm〜1×1019/cm程度の原子濃度でドープされることによりn型を呈するInGa1−xN(0<x<1)なる組成の第1単位層4aとGaNからなる第2単位層4bとを、繰り返し交互に積層してなる多重量子井戸(MQW)構造にて備える。すなわち、本実施の形態に係る板状発光体10は、InGaN/GaN MQW構造を有する発光層4を備える。係る場合において、発光層4は、所望する波長の光(蛍光)を発するように、第1単位層4aにおけるIn組成比xの値が選択されて構成されてなる。換言すれば、板状発光体10は、第1単位層4aのIn組成比xに応じた波長の光(蛍光)を発する。例えば、x=0.15とした場合には、発光波長が450nmの発光層4を得ることができる。
発光層4は、2nm〜10nm程度の厚みを有する第1単位層4aと2nm〜10nm程度の厚みを有する第2単位層4bとをそれぞれ1層〜8層ずつ積層することによって構成されるのが好適である。
また、第2のn型GaN層5は、GaNにSiが8×1017/cm〜3×1019/cm程度の原子濃度でドープされることによりn型を呈するGaN層である。第2のn型GaN層5は、キャップ層として設けられてなる。第2のn型GaN層5は、50nm〜500nm程度の厚みを有するのが好適である。
本実施の形態においては、上述したように、これら第1のn型GaN層3と、発光層4と、第2のn型GaN層5とからなる発光構造体20を、配向アルミナ基板1の上に形成している。それゆえ、発光構造体20を構成する各層は、配向アルミナ基板1の上に一様な結晶方位にて形成されるのではなく、配向アルミナ基板1を構成する個々のアルミナ結晶(図3に例示する場合であれば、アルミナ結晶1a、1b、1c、および1d)の上において、それぞれのアルミナ結晶の結晶方位に倣う態様にて成長する。
個々のアルミナ結晶上に形成される第1のn型GaN層3と、発光層4と、第2のn型GaN層5とからなる積層構造を単位発光体20Aと称することとすると、それぞれの単位発光体20Aは、その下地となったアルミナ結晶の結晶方位であるc軸に倣ってエピタキシャル成長することから、優れた結晶品質を有するものとなっている。このことは、それぞれの単位発光体20Aにおける組成ばらつきが小さいこと、ひいては、それぞれの単位発光体20Aから生じる発光の波長および当該発光についての波長プロファイルにおける半値幅のばらつきが小さいということを意味している。発光構造体20からの発光は、個々の単位発光体20Aからの発光の重ね合わせであることから、発光構造体20からの発光は、所望の発光波長を有し、輝度が大きく、かつ波長プロファイルにおける波長半値幅の小さいものとなっている。例えば、50nm以下という波長半値幅が実現可能である。係る波長半値幅の値は、従来公知の青色蛍光粉末であるP55,BM粉末をガラス板(ガラス基板)に塗布して作製した発光体(蛍光板)からの発光の波長半値幅とおおよそ同程度である。
なお、本実施の形態においては、カソードルミネッセンス(CL)測定の結果に基づいて、発光の波長プロファイル(発光波長および半値幅)を評価するものとする。
また、確認的にいえば、単位発光体20Aは、厚みは第1のn型GaN層3と発光層4と第2のn型GaN層5との総厚であって100nm〜1000nm程度であるのに対し、面内方向における平均粒径(平均サイズ)は配向アルミナ基板1を構成する個々のアルミナ結晶の平均粒径(平均サイズ)と同程度の30μm〜100μm程度であるので、平板粒子状をなしている。すなわち、図1においてはあくまで各層の厚みを誇張して描いているに過ぎない。
また、本実施の形態においては、発光構造体20を構成する各層の成長条件を適宜に調整することによって、図1に示すように、配向アルミナ基板1の結晶粒界1gに沿った溝部6が発光構造体20に形成されるようにする。なお、図1においては理解の容易のため溝部6を誇張している。実際の溝部6は、例えば図2に示すように観察され、その幅はおおよそ100nm〜1000nm程度である。また、図1においては溝部6が第1のn型GaN層3を貫通してバッファ層2にまで到達しているが、必ずしも全ての溝部6がバッファ層2にまで到達するとは限らない。
係る態様にて溝部6を有してなることから、本実施の形態に係る板状発光体10が備える発光構造体20は、それぞれが配向アルミナ基板1を構成する下地のアルミナ結晶と略同一あるいはわずかに小さい平面サイズを有し、かつ、下地のアルミナ結晶の結晶方位に倣って成長してなる単位発光体20Aの集合体である、ということができる。あるいは、発光構造体20は、個々の単位発光20Aのc軸方向については法線方向から多少のずれを有している場合がある(適度にばらついている)ものの、発光構造体20全体としてみれば法線方向がc軸方向に略一致しているとみなすことができる態様にて、共通の下地基板である配向アルミナ基板1上に多数の単位発光体20Aを備えるものである、ということもできる。
係る溝部6が備わる板状発光体10においては、発光部4で生じた光(蛍光)は、板状発光体10の厚み方向に取り出されるのみならず、溝部6を通じても取り出されるようになる。すなわち、発光層4から溝部6に向かう光Lは、当該溝部6をなす発光構造体20の相対する側面20sにて順次に反射されながら板状発光体10の外部へと進んでいくことになる。
これにより、板状発光体10は、溝部6を有さない構成に比して、高い発光効率(光取り出し効率)を有するものとなっている。
<板状発光体の製法>
次に、板状発光体10の製造方法を、配向アルミナ基板1上への各層の形成にMOCVD法を用いる場合を例として説明する。
まず、配向アルミナ基板1を用意する。配向アルミナ基板1は、平均粒径が30μm〜100μm程度である市販の板状アルミナ粉末を原料として、特許文献4に例示されているような種々の手法および条件にて作製したアルミナ焼結体を、ナノダイヤ砥粒を用いた表面研磨(ラップ(lap)研磨)によって所望の厚みにまで研磨することによって、用意することが可能である。
本実施の形態においては、上述のように、XRC測定(ωスキャン)におけるアルミナのRC半値幅が2.0度〜6.5度である配向アルミナ基板1を用いて板状発光体10を構成する。係る配向アルミナ基板1を好適に(高い歩留まりで)得るには、上述したアルミナ焼結体の作製条件についても、適宜に制御することが好ましい。具体的には、商業的に入手可能な板状アルミナ粉末を、テープ成形、押出し成形、ドクターブレード法、といったせん断力を用いた手法によりシート状に成形した配向成形体とし、これを多数枚積み重ねて所望の厚さとした後、プレス成形を施したシート状の成形体を用意したうえで、ホットプレス法などの加圧焼結法にて焼成温度1500〜1800℃、焼成時間30分間〜5時間、面圧100〜200kgf/cmの条件で焼成する第一の焼成工程と、熱間等方圧加圧法(HIP)にて焼成温度1500〜1800℃、焼成時間2〜5時間、ガス圧1000〜2000kgf/cmの条件で再度焼成する第二の焼成工程と、行うことによって、アルミナ焼結体を得るのが好ましい。ただし、歩留まりを考慮しないのであれば、適宜の条件にて作製したアルミナ焼結体から、上述の半値幅の要件をみたすものを選択するようにしてもよい。
配向アルミナ基板1に透光性を付与する場合には、高純度の板状アルミナ粉末を用いる。好ましくは、純度98%以上の板状アルミナ粉末を用いる。さらに好ましくは、純度99%以上の板状アルミナ粉末を用いる。特に好ましくは、純度99.9%以上の板状アルミナ粉末を用い、最も好ましくは純度99.99%以上の板状アルミナ粉末を用いる。
用意した配向アルミナ基板1を、所定のMOCVD炉内のサセプタ上に載置し、水素雰囲気中で基板温度をいったん1050℃〜1200℃の範囲にまで上昇させてクリーニング処理を行う。
続いて、バッファ層2としてのGaN層、第1のGaN層3としてのSiドープGaN層、第1単位層4aとしてのSiドープInGaN層と第2単位層4bとしてのSiドープGaN層とからなるMQW構造を有する発光層4、および、第2のGaN層5としてのSiドープGaN層を、順次に形成する。各層の形成は、以下の条件をみたして行うようにすればよい。なお、15族/13族ガス比とは、モル比で表した、13族原料ガス(TMG、TMI)の全供給量に対する15族原料であるアンモニアガスの供給量の比である。また、本実施の形態において形成温度とはサセプタ加熱温度を意味する。
バッファ層2:
形成温度:500℃〜600℃;
形成圧力:20kPa〜100kPa;
キャリアガス:水素;
原料ガス:TMG(トリメチルガリウム)およびアンモニアガス;
15族/13族ガス比:500〜2000。
第1のGaN層3:
形成温度:1050℃〜1200℃;
形成圧力:10kPa〜100kPa;
キャリアガス:窒素および水素;
原料ガス:TMG(トリメチルガリウム)およびアンモニアガス;
15族/13族ガス比:1500〜3000;
ドーパント源:シランガス。
発光層4:
形成温度:800℃〜870℃;
形成圧力:20kPa〜100kPa;
キャリアガス:窒素;
第1単位層4aの原料ガス:TMG(トリメチルガリウム)、TMI(トリメチルインジウム)、およびアンモニアガス;
ドーパント源:シランガス;
第2単位層4bの原料ガス:TMG(トリメチルガリウム)およびアンモニアガス;
ドーパント源:シランガス;
15族/13族ガス比:300〜800;
第1単位層4aと第2単位層4bのペアの繰り返し数:1〜8。
第2のGaN層5:
形成温度:950℃〜1050℃;
形成圧力:10kPa〜100kPa;
キャリアガス:窒素および水素;
原料ガス:TMG(トリメチルガリウム)およびアンモニアガス;
15族/13族ガス比:500〜3000;
ドーパント源:シランガス。
これらの条件をみたすことで、配向アルミナ基板1上に、個々の単位発光体20Aの間に溝部6を備える発光構造体20を好適に形成することができる。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、個々のアルミナ結晶のc軸方位が適度にばらついている配向アルミナ基板上に、InGaN/GaN MQW構造を有する発光層を備える発光体構造を、該配向アルミナ基板の結晶粒界に沿った溝部が形成されるように設けることで、発光体構造を構成する個々の単位発光体における組成ばらつきが小さく、例えばシンチレータに適用可能な、発光効率の優れた板状発光体が実現される。
<第2の実施の形態>
上述した第1の実施の形態においては、板状発光体について説明しているが、X線、電子線その他の放射線を照射すると発光する発光体として、粉末(粒子状)のものを用いたいという要求もある。粉末の発光体は、例えば、ペースト状にして任意の面に塗布しその後乾燥させることで当該面に密に固着させたり、任意の形状に成形加工したりすることなど、加工の自由度が高いので、結果として、発光体の使用局面の拡大に寄与するからである。
係る粉末状の発光体の形成は、例えば特許文献2に開示されているような手法での造粒や、あるいはバルク発光体の粉砕などによって得ることが考えられるが、本実施の形態においては、第1の実施の形態に係る板状発光体10から配向アルミナ基板1をレーザーリフトオフの手法にて分離させることで、粒子状の発光体を得るようにする。図4は、粒子状の発光体を得る処理の様子を示す図である。
具体的には、第1の実施の形態において示す手順にて作製された板状発光体10を用意し、図4(a)に示すように、その配向アルミナ1側の面(発光構造体20の非形成面)に、レーザー光を照射する。係る態様にてレーザー光が照射されると、板状発光体10においては、機械的強度の弱いバッファ層2のところで図4(b)に示すように剥離が生じ、矢印AR1にて示すように配向アルミナ基板1が発光体構造20から分離される。すると、全体として発光体構造20を構成しつつも溝部6が存在することで互いの結合力が弱い単位発光体20A同士も、矢印AR2にて示すように分離する。その結果、図4(c)に示すように粒子状となった多数の単位発光体20Aが得られる。換言すれば、個々の粉末粒子が第1のn型GaN層3と発光層4と第2のn型GaN層5との積層体である、発光体粉末が得られる。上述したように単位発光体20Aはアルミナ結晶のc軸に倣ってc軸にエピタキシャル成長しており、他の結晶方位における成長は抑制されているので、得られた粉末粒子は、組成ばらつきの小さいものとなっている。
係る場合において、単位発光体20Aは、13族窒化物半導体からなり、c面を主面とする平板粒子状をなしており、当該主面の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下である粉末粒子であるといえる。
なお、上述した態様にて粒子状の単位発光体20Aを得ることを前提として板状発光体10を捉えた場合、板状発光体10は平板粒子状の発光体粉末を得るのに好適な手段であり、また、バッファ層2は剥離層として作用するべく形成されているともいえる。
粉末の発光体を用いて作製される加工品において所望の波長における発光を優れた発光効率にて得るためには、加工後の個々の発光体粒子の結晶方位がある程度揃っている必要があるが、上述したように、個々の単位発光体20Aは平板状をなしているとともにc軸配向してなるので、例えば、単位発光体20Aを粉末粒子とする発光体粉末をペースト塗布や成形などによって加工した場合、その加工品においては結晶方位が揃いやすい。従って、係る発光体粉末によれば、加工の自由度が好適に確保されるとともに、加工品においても高い発光効率を得ることが可能となる。なお、単位発光体20Aの平均粒径は板状発光体10の作製に用いる配向アルミナ基板1の粒径とほぼ同じであるので、配向アルミナ基板1の平均粒径を適宜に定めれば、これに応じた平均粒径の発光体が得られる。
一方、例えば特許文献2に開示されているような手法にて作製される発光体の場合、形状の制御が困難であり、また、下地結晶の結晶面によって成長方位も異なる。従って、加工品における結晶方位の制御は困難であり、高い発光効率は期待できない。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態に係る手法にて形成される板状発光体からレーザーリフトオフの手法にて配向アルミナ基板を分離することによって、個々の単位発光体を分離させることで、組成ばらつきが小さい、粒子状の発光体を、得ることができる。しかも、係る発光体は平板状をなしており、かつc軸配向しているので、塗布や成形などの加工を行って得られる加工品においても結晶方位が揃いやすく、高い発光効率を得ることが可能となる。
<変形例>
上述の実施の形態においては、発光層4を、第1単位層4aと第2単位層4bとを繰り返し交互に積層してなるInGaN/GaN MQW構造にて設けるようにしていたが、これに代わり、あるいはこれに加えて、発光層4にPr(プラセオジム)、Eu(ユウロピウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Ce(セリウム)、Nd(ネオジム)、Gd(ガドリニウム)といった希土類元素を含有させるようにして、発光強度を高めるようにしてもよい。係る希土類元素の含有は、例えば、結晶成長時のドーピングによって行う態様であってもよいし、量子ドットとする態様であってもよい。あるいは、結晶成長後にイオン打ち込みをする態様であってもよい。
(実施例1)
本実施例では、アルミナ結晶におけるc軸配向度が異なる8種類の配向アルミナ基板1を用意し、それぞれを用いて、第1の実施の形態に係る板状発光体10(No.1−a〜1−h)を作製した。そして、得られた7種類の板状発光体10について、発光特性を評価した。
配向アルミナ基板1を得るにあたっては、まず、平均粒径35μmのアルミナ粉末を原料とし、アルミナ粒子をc軸に配向させつつ種々の条件で焼結させて、直径2インチ、厚さ400μmのウェハー形状のc軸配向焼結体を8種類作製した。そして、それぞれの焼結体の表面をナノダイヤ砥粒を用いて研磨することにより平滑化し、表面粗さRms=0.5nm程度の8種類の配向アルミナ基板1を得た。
得られた8種類の配向アルミナ基板1のc軸配向度を評価するべく、アルミナ(006)面のXRC測定を行い、RC半値幅を求めた。8種類の配向アルミナ基板1におけるRC半値幅は、1.5度〜7.1度の範囲で各々異なっていた。なお、このとき、入射X線のビーム径が基板上で約φ1.5mmとなるよう、スリットを調整した。また、レーザー顕微鏡で観察したところ、アルミナ結晶の基板面内方向における平均粒径は各々の配向アルミナ基板1において異なっていたが、いずれも30μm以上100μm以下の範囲に収まっていた。
それぞれの配向アルミナ基板1について、MOCVD炉内のサセプタに載せ、水素雰囲気中で基板温度を1200℃まで上げてクリーニング処理を行った後、基板温度を520℃まで低下させ、水素をキャリアガスとして、TMG(トリメチルガリウム)とアンモニアとを原料とし、バッファ層2としてのGaN層を10nmの厚みに形成した。
次に、窒素と水素をキャリアガスとして基板温度を1100℃まで上げ、TMG(トリメチルガリウム)とアンモニアとを原料ガスとし、シランガスをドーパント源として、第1のn型GaN層3を100nmの厚みに形成した。
続いて、基板温度を750℃まで低下させ、窒素のみをキャリアガスとして、TMG、TMI(トリメチルインジウム)、およびアンモニアを原料ガスとし、シランガスをドーパント源として、第1単位層4aとしてのIn0.15Ga0.85N層の形成と、第2単位層4bとしてのGaN層の形成とを交互に5回ずつ行い、MQW構造を有する発光層4を形成した。In0.15Ga0.85N層の厚みは4nmとし、GaN層の厚みは10nmとした。
最後に、基板温度を再び1100℃まで上げ、窒素と水素をキャリアガスとして、TMGとアンモニアとを原料ガスとし、シランガスをドーパント源として、第2のn型GaN層5を100nmの厚みに形成し、キャップ層とした。これにより、板状発光体10が得られた。
その後、炉内を窒素雰囲気に保ったままサセプタ温度を室温まで下げた後、得られた積層構造体を取出した。
それぞれの積層構造体についてその表面(第2のn型GaN層5の上面)側からレーザー顕微鏡で観察したところ、溝部6が形成されていること、および、結晶面内における粒径は配向アルミナ基板の粒径とほぼ同一であることが、確認された。なお、No.1−eについてのレーザー顕微鏡像が図2である。さらに、当該積層構造体についてEBSD(Electron Back Scatter Diffraction:電子線後方散乱回折)により結晶方位を観察した結果、配向アルミナ基板1上に形成した窒化物層の結晶方位が、配向アルミナ基板1のアルミナ結晶の結晶方位に倣っていることが確認された。
すなわち、得られた8種の積層構造体はいずれも、板状発光体10としての構成を備えていることが確認された。
それぞれの板状発光体10について、CL測定を行った。具体的には、走査電子顕微鏡(JSM−6300(日本電子製))内に載置した、測定対象たる板状発光体10に対し、加速電圧15kVにて電子線を照射し、係る照射によって得られる板状発光体10からの発光(蛍光)の分光スペクトルを、電子顕微鏡内に設置したCL測定システム(MP−18M−S型(ホリバ・ジョバンイボン社製))により測定した。
(実施例2)
本実施例では、第2の実施の形態に係る発光体粉末を3種類作製し、それぞれを用いて蛍光板(No.2−a〜2−c)を作製して、発光特性を評価した。
具体的にはまず、実施例1と同様の手順で、アルミナ結晶におけるc軸配向度が異なる3種類の配向アルミナ基板1を用意し、それらを用いて板状発光体10を作製した。
係る過程において、得られた3種類の配向アルミナ基板1のc軸配向度を評価するべく、アルミナ(006)面のXRC測定を行い、RC半値幅を求めたところ、3種類の配向アルミナ基板1におけるRC半値幅は、2.2度〜6.0度の範囲で各々異なっていた。また、レーザー顕微鏡で観察したところ、アルミナ結晶の基板面内方向における平均粒径は各々の配向アルミナ基板1において異なっていたが、いずれも30μm以上100μm以下の範囲に収まっていた。
また、得られた板状発光体10をレーザー顕微鏡で観察したところ、結晶面内における粒径は配向アルミナ基板の粒径とほぼ同一であった。
それぞれの板状発光体10について、配向アルミナ基板1側にレーザー光を照射し、レーザーリフトオフの手法によりバッファ層2のところで配向アルミナ基板1を分離するとともに、多数の単位発光体20Aからなる発光体粉末を得た。
さらに、得られた発光体粉末とニトロセルロース溶液とを混合してペースト状にしたものをITO膜付きのガラス板(ガラス基板)に塗布し、該ガラス板ともども電気炉内にて150℃で10分間加熱することで、発光体粉末が密に固着してなる蛍光板(No.2−a〜2−c)を作製した。
それぞれの蛍光板に対して、実施例1と同様にCL測定を行った。
(比較例1)
配向アルミナ基板1の代わりにc軸配向単結晶サファイア基板を用いたほかは実施例1と同様の手順で板状発光体(No.3−a)を作製し、実施例1と同様にCL測定を行った。なお、c軸配向単結晶サファイア基板は、法線方向に対するc軸のばらつきが事実上ない(法線方向とc軸方向とのなす角度が0度)とみなすことができる基板である。それゆえ、c軸配向単結晶サファイア基板についてはRC半値幅測定を行っていない。また、板状発光体の表面に溝部は形成されなかった。
(比較例2)
単位発光体20Aからなる発光体粉末の代わりに公知の青色蛍光粉末であるP55,BM粉末を用いたほかは実施例2と同様の手順にて蛍光板(No.3−b)を作製し、実施例1と同様にCL法による発光評価を行った。
(実施例と比較例との対比)
実施例1の全8種の板状発光体10(No.1−a〜1−h)、実施例2の全3種の蛍光板(No.2−a〜2−c)、比較例1の板状発光体(No.3−a)、および、比較例2の蛍光板(No.3−b)についての、CL測定結果(発光波長(発光スペクトルにおけるピーク波長)、発光強度、波長半値幅)を表1に示す。実施例1および実施例2については、配向アルミナ基板1のRC半値幅の測定値も併せて示している。比較例1のRC半値幅の値は実測値ではなく、仮定した値である。
なお、No.1−a〜1−hの板状発光体10は配向アルミナ基板1のRC半値幅の値が小さい順に順序づけしており、また、発光強度は全て、No.1−cの板状発光体10における発光強度を100として規格化している。
表1からわかるように、実施例および比較例の全ての板状発光体10において、発光波長(発光スペクトルにおけるピーク波長)が450nmである発光が得られた。ただし、発光強度と波長半値幅とはそれぞれにおいて異なっていた。
波長半値幅については、実施例1および実施例2のいずれにおいても、配向アルミナ基板1のRC半値幅の値が大きいほど、値が大きくなる傾向がある。
一方、発光強度については、実施例1のうち、配向アルミナ基板1のRC半値幅の値が2.0度以上6.5度以下の範囲に収まるNo.1−c〜1−gの板状発光体10と、実施例2の3種全ての蛍光板において比較例1および比較例2に比して良好な値が得られた。実施例1では、RC半値幅の値が4.3度であったNo.1−eの板状発光体10で発光強度が最大となり、実施例2では、RC半値幅の値が3.5度であったNo.2−bの板状発光体10で発光強度が最大となった。一方、比較例1において発光強度は最低となった。
実施例1のうち、配向アルミナ基板1におけるRC半値幅の値が2.0度未満の板状発光体10において、発光強度が低い理由は、比較例1における発光強度が低いことも併せ考えると、RC半値幅が小さくc軸配向度が高い配向アルミナ基板1ほど、発光構造体20の形成過程で溝部6が形成され難くなって板状発光体10の表面が平坦化する傾向があり、それゆえ光取出し効率が低くなったためであると考えられる。
一方、配向アルミナ基板1におけるRC半値幅の値が6.5度を超える場合に発光強度が小さくなるのは、波長半値幅大きくなることも併せ考えると、発光層4においてMQW構造を構成するInGaN層の成長時にc軸以外の成長方位における成長が起こりやすくなり、結果として個々の単位発光体20Aの間でIn濃度のばらつきが大きくなり、その結果、発光波長のばらつきが大きくなるためであると考えられる。
また、実施例2の蛍光板において高い発光強度が得られたということは、当該蛍光板において個々の発光体粉末粒子の結晶方位が十分に揃っていることを意味する。
なお、実施例2の発光強度の方が実施例1よりも高い理由は、配向アルミナ基板1から分離された粒子状の発光体を用いているので、粒子内部からの光取出し効率が高いためと考えられる。
さらには、発光強度が大きい実施例1のNo.1−c〜1−gの板状発光体10および実施例2の3種全ての蛍光板の測定結果を、従来公知の発光体を用いて作製した比較例2の蛍光板の測定結果と対比すると、波長半値幅は同程度であるのに、実施例における発光強度が比較例2の発光強度を大きく上回っている。係る結果は、RC半値幅の値が2.0度以上6.5度以下である配向アルミナ基板1を用いて作製した板状発光体、あるいは、係る板状発光体から作製した粉末状の発光体は、従来と同程度の波長半値幅を有するとともに従来よりも優れた発光効率を有するものであることを意味している。
1 配向アルミナ基板
1a、1b、1c、1d アルミナ結晶
1g (配向アルミナ基板の)結晶粒界
2 バッファ層
3 第1のn型GaN層
4 発光層
4a 第1単位層
4b 第2単位層
5 第2のn型バッファ層
6 溝部
10 板状発光体
20 発光体構造
20A 単位発光体
20s (発光体構造の)側面

Claims (21)

  1. 発光体であって、
    複数の単位発光体が、アルミナ(006)面についてのX線ロッキングカーブ半値幅の値が2.0度〜6.5度である、c軸配向した多結晶アルミナ基板の上に備わっており、
    前記複数の単位発光体のそれぞれが、
    13族窒化物半導体からなり、
    c軸配向した複数の層の積層体であり、
    前記複数の層の一部が蛍光発光する発光層であり、
    c面を主面とする平板粒子状をなしており、
    前記主面の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下であり、
    前記多結晶アルミナ基板の個々の結晶上に一の前記単位発光体が備わり、
    前記一の単位発光体のc軸方位が、直下の結晶のc軸方位に倣っており、
    前記一の単位発光体同士の間に溝部が備わる、
    ことを特徴とする発光体。
  2. 請求項1に記載の発光体であって、
    前記発光層が、相異なる組成を有する第1単位層と第2単位層とが繰り返し交互に積層された多重量子井戸構造を有する、
    ことを特徴とする発光体。
  3. 請求項2に記載の発光体であって、
    前記第1単位層がInGaNからなり、前記第2単位層がGaNからなる、
    ことを特徴とする発光体。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発光体であって、
    前記溝部が前記多結晶アルミナ基板の結晶粒界に沿って備わる、
    ことを特徴とする発光体。
  5. アルミナ(006)面についてのX線ロッキングカーブ半値幅の値が2.0度〜6.5度である、c軸配向した多結晶アルミナ基板と、
    13族窒化物半導体からなり、前記多結晶アルミナ基板の上に備わる発光体構造と、
    を備え、
    前記発光体構造が、それぞれが前記多結晶アルミナ基板の個々の結晶上に備わり、蛍光を発する発光層を有する複数の単位発光体によって構成されてなり、
    前記複数の単位発光体のそれぞれのc軸方位が、直下の結晶のc軸方位に倣っており、
    前記複数の単位発光体それぞれの間に溝部が備わる、
    ことを特徴とする発光体。
  6. 請求項に記載の発光体であって、
    前記溝部が前記多結晶アルミナ基板の結晶粒界に沿って備わる、
    ことを特徴とする発光体。
  7. 請求項5または請求項6に記載の発光体であって、
    前記多結晶アルミナ基板の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下である、
    ことを特徴とする発光体。
  8. 請求項ないし請求項のいずれかに記載の発光体であって、
    前記複数の単位発光体が、それぞれがc軸配向した複数の層の積層体であり、
    前記複数の層の一部が前記発光層である、
    ことを特徴とする発光体。
  9. 請求項に記載の発光体であって、
    前記発光層が、相異なる組成を有する第1単位層と第2単位層とが繰り返し交互に積層された多重量子井戸構造を有する、
    ことを特徴とする発光体。
  10. 請求項に記載の発光体であって、
    前記第1単位層がInGaNからなり、前記第2単位層がGaNからなる、
    ことを特徴とする発光体。
  11. 発光体を製造する方法であって、
    アルミナ(006)面についてのX線ロッキングカーブ半値幅の値が2.0度〜6.5度である、c軸配向した多結晶アルミナ基板の主面に存在する個々の結晶上に、13族窒化物半導体からなり、当該結晶のc軸方位に倣ったc軸方位を有し、蛍光を発する発光層を有する単位発光体を、それぞれの前記単位発光体の間に溝部を設けつつ成長させることによって、複数の前記単位発光体からなる発光体構造を形成する、
    ことを特徴とする発光体の製造方法。
  12. 請求項11に記載の発光体の製造方法であって、
    前記溝部を前記多結晶アルミナ基板の結晶粒界に沿って形成させる、
    ことを特徴とする発光体の製造方法。
  13. 請求項11または請求項12に記載の発光体の製造方法であって、
    前記多結晶アルミナ基板の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下である、
    ことを特徴とする発光体の製造方法。
  14. 請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の発光体の製造方法であって、
    それぞれがc軸配向した複数の層を積層させることによって複数の前記単位発光体を形成し、前記複数の層の一部を前記発光層として形成する、
    ことを特徴とする発光体の製造方法。
  15. 請求項14に記載の発光体の製造方法であって、
    前記発光層を、相異なる組成を有する第1単位層と第2単位層とが繰り返し交互に積層することによって多重量子井戸構造として形成する、
    ことを特徴とする発光体の製造方法。
  16. 請求項15に記載の発光体の製造方法であって、
    前記第1単位層をInGaNにて形成し、前記第2単位層をGaNにて形成する、
    ことを特徴とする発光体の製造方法。
  17. 蛍光を発する発光体粉末を製造する方法であって、
    請求項11ないし請求項16のいずれかに記載の製造方法によって発光体を得る発光体作製工程と、
    前記発光体において前記多結晶アルミナ基板を前記発光体構造から剥離させることで、前記発光体構造において個々の前記単位発光体同士を分離させ、これによって発光体粉末を得る粉末作製工程と、
    を備えることを特徴とする発光体粉末の製造方法。
  18. 請求項17に記載の発光体粉末の製造方法であって、
    前記発光体作製工程においては、前記多結晶アルミナ基板と前記発光体構造との間に剥離層を形成し、
    前記粉末作製工程においては、前記発光体の前記多結晶アルミナ基板側にレーザー光を照射することによって前記剥離層のところで前記多結晶アルミナ基板を前記発光体構造から剥離させる、
    ことを特徴とする発光体粉末の製造方法。
  19. 蛍光を発する発光体粉末を製造する方法であって、
    請求項ないし請求項10のいずれかに記載の発光体を用意する発光体準備工程と、
    前記発光体において前記多結晶アルミナ基板を前記発光体構造から剥離させることで、前記発光体構造において個々の前記単位発光体同士を分離させ、これによって発光体粉末を得る粉末作製工程と、
    を備えることを特徴とする発光体粉末の製造方法。
  20. 請求項19に記載の発光体粉末の製造方法であって、
    前記発光体が前記多結晶アルミナ基板と前記発光体構造との間に剥離層を有してなり、
    前記粉末作製工程においては、前記発光体の前記多結晶アルミナ基板側にレーザー光を照射することによって前記剥離層のところで前記多結晶アルミナ基板を前記発光体構造から剥離させる、
    ことを特徴とする発光体粉末の製造方法。
  21. 請求項17ないし請求項20のいずれかに記載の発光体粉末の製造方法であって、
    前記発光体粉末の粉末粒子が、
    c面を主面とする平板状をなしており、
    前記主面の面内方向における平均サイズが30μm以上100μm以下である、
    ことを特徴とする発光体粉末の製造方法。
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