以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
図1は、本発明のある実施形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。極低温冷凍機10は、作動ガスを圧縮する圧縮機12と、作動ガスを断熱膨張により冷却する膨張機14とを備える。作動ガスは例えばヘリウムガスである。膨張機14はコールドヘッドとも呼ばれる。膨張機14には作動ガスを予冷する蓄冷器16が備えられている。極低温冷凍機10は、圧縮機12と膨張機14とを各々が接続する第1管18aと第2管18bを含むガス配管18を備える。図示される極低温冷凍機10は、単段式のGM冷凍機である。
知られているように、第1高圧を有する作動ガスが圧縮機12の吐出口12aから第1管18aを通じて膨張機14に供給される。膨張機14における断熱膨張により、作動ガスは第1高圧からそれより低い第2高圧に減圧される。第2高圧を有する作動ガスは、膨張機14から第2管18bを通じて圧縮機12の吸入口12bに回収される。圧縮機12は、回収された第2高圧を有する作動ガスを圧縮する。こうして作動ガスは再び第1高圧に昇圧される。一般に第1高圧及び第2高圧はともに大気圧よりかなり高い。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。通例、高圧は例えば2〜3MPaであり、低圧は例えば0.5〜1.5MPaである。高圧と低圧との差圧は例えば1.2〜2MPa程度である。
膨張機14は、膨張機可動部分20と膨張機静止部分22とを備える。膨張機可動部分20は、膨張機静止部分22に対し軸方向(図1における上下方向)に往復移動可能であるよう構成されている。膨張機可動部分20の移動方向を図1に矢印Aで示す。膨張機静止部分22は、膨張機可動部分20を軸方向に往復移動可能に支持するよう構成されている。また、膨張機静止部分22は、膨張機可動部分20を高圧ガス(第1高圧ガス及び第2高圧ガスを含む)とともに収容する気密容器として構成されている。
膨張機可動部分20は、ディスプレーサ24と、その往復移動を駆動するディスプレーサ駆動軸26とを含む。ディスプレーサ24には蓄冷器16が内蔵されている。ディスプレーサ24は、蓄冷器16を包囲するディスプレーサ部材24aを有する。ディスプレーサ部材24aの内部空間に蓄冷材が充填され、それによりディスプレーサ24内に蓄冷器16が形成されている。ディスプレーサ24は、例えば、軸方向に延在する実質的に円柱状の形状を有する。ディスプレーサ部材24aは、軸方向において実質的に一様な外径及び内径を有する。よって、蓄冷器16も、軸方向に延在する実質的に円柱状の形状を有する。
膨張機静止部分22は、大まかに、シリンダ28及び駆動機構ハウジング30からなる二部構成を有する。膨張機静止部分22の軸方向上部が駆動機構ハウジング30であり、膨張機静止部分22の軸方向下部がシリンダ28であり、これらは相互に堅く結合されている。シリンダ28は、ディスプレーサ24の往復移動を案内するよう構成されている。シリンダ28は、駆動機構ハウジング30から軸方向に延在する。シリンダ28は、軸方向において実質的に一様な内径を有し、よって、シリンダ28は、軸方向に延在する実質的に円筒の内面を有する。この内径は、ディスプレーサ部材24aの外径よりわずかに大きい。
また、膨張機静止部分22は、冷却ステージ32を含む。冷却ステージ32は、軸方向において駆動機構ハウジング30と反対側でシリンダ28の末端に固定されている。冷却ステージ32は、膨張機14が生成する寒冷を他の物体に伝導するために設けられている。その物体は冷却ステージ32に取り付けられ、極低温冷凍機10の動作時に冷却ステージ32によって冷却される。
極低温冷凍機10の動作時において、蓄冷器16は、軸方向において一方側(図において上側)に蓄冷器高温部16aを有し反対側(図において下側)に蓄冷器低温部16bを有する。このように蓄冷器16は軸方向に温度分布を有する。蓄冷器16を包囲する膨張機14の他の構成要素(例えばディスプレーサ24及びシリンダ28)も同様に軸方向温度分布を有し、従って膨張機14はその動作時に軸方向一方側に高温部を有し軸方向他方側に低温部を有する。高温部は、例えば室温程度の温度を有する。低温部は、極低温冷凍機10の用途により異なるが、例えば約100Kから約10Kの範囲に含まれるある温度に冷却される。冷却ステージ32は、シリンダ28の低温部を外包するようにシリンダ28に固着されている。
本書では説明の便宜上、軸方向、径方向、周方向との用語が使用される。軸方向は、矢印Aで図示されるように、膨張機静止部分22に対する膨張機可動部分20の移動方向を表す。径方向は軸方向に垂直な方向(図において横方向)を表し、周方向は軸方向を囲む方向を表す。膨張機14のある要素が軸方向に関して冷却ステージ32に相対的に近いことを「下」、相対的に遠いことを「上」と呼ぶことがある。よって、膨張機14の高温部及び低温部はそれぞれ軸方向において上部及び下部に位置する。こうした表現は、膨張機14の要素間の相対的な位置関係の理解を助けるために用いられるにすぎず、現場で設置されるときの膨張機14の配置とは関係しない。例えば、膨張機14は、冷却ステージ32を上向きに駆動機構ハウジング30を下向きにして設置されてもよい。あるいは、膨張機14は、軸方向を水平方向に一致させるようにして設置されてもよい。
また、ロータリバルブ機構についても、軸方向、径方向、周方向との用語が使用される。この場合、軸方向は、ロータリバルブ機構の回転軸の方向を表す。ロータリバルブ回転軸方向は、膨張機軸方向に直交する。
膨張機14における作動ガスの流路構成を説明する。膨張機14は、バルブ部34、ハウジングガス流路36、上部ガス室37、ディスプレーサ上蓋ガス流路38、ディスプレーサ下蓋ガス流路39、ガス膨張室40、及び低圧ガス室42を備える。高圧ガスは、第1管18aからバルブ部34、ハウジングガス流路36、上部ガス室37、ディスプレーサ上蓋ガス流路38、蓄冷器16、ディスプレーサ下蓋ガス流路39を経てガス膨張室40に流入する。ガス膨張室40からの戻りガスは、ディスプレーサ下蓋ガス流路39、蓄冷器16、ディスプレーサ上蓋ガス流路38、上部ガス室37、ハウジングガス流路36、バルブ部34を経て低圧ガス室42に受け入れられる。
詳細は後述するが、バルブ部34は、ディスプレーサ24の往復移動と同期してガス膨張室40の圧力を制御するよう構成されている。バルブ部34は、高圧ガスをガス膨張室40に供給するための供給路の一部として機能するとともに、低圧ガスをガス膨張室40から排出するための排出路の一部として機能する。バルブ部34は、ディスプレーサ24が下死点またはその近傍を通過するとき低圧ガスの排出を終了し高圧ガスの供給を開始するよう構成されている。バルブ部34は、ディスプレーサ24が上死点またはその近傍を通過するとき高圧ガスの供給を終了し低圧ガスの排出を開始するよう構成されている。このように、バルブ部34は、ディスプレーサ24の往復移動と同期して作動ガスの供給機能と排出機能とを切り替えるよう構成されている。
ハウジングガス流路36は、膨張機静止部分22と上部ガス室37との間のガス流通のために駆動機構ハウジング30に貫通形成されている。
上部ガス室37は、蓄冷器高温部16aの側で膨張機静止部分22とディスプレーサ24との間に形成されている。より詳しくは、上部ガス室37は、軸方向において駆動機構ハウジング30とディスプレーサ24とに挟まれ、周方向にシリンダ28に囲まれている。上部ガス室37は、低圧ガス室42に隣接する。上部ガス室37は室温室とも呼ばれる。上部ガス室37は膨張機可動部分20と膨張機静止部分22との間に形成された可変容積である。
ディスプレーサ上蓋ガス流路38は、蓄冷器高温部16aを上部ガス室37に連通するよう形成されたディスプレーサ部材24aの少なくとも1つの開口である。ディスプレーサ下蓋ガス流路39は、蓄冷器低温部16bをガス膨張室40に連通するよう形成されたディスプレーサ部材24aの少なくとも1つの開口である。ディスプレーサ24とシリンダ28とのクリアランスを封じるシール部44が、ディスプレーサ部材24aの側面に設けられている。シール部44は、ディスプレーサ上蓋ガス流路38を周方向に囲むようディスプレーサ部材24aに取り付けられていてもよい。
ガス膨張室40は、蓄冷器低温部16bの側でシリンダ28とディスプレーサ24との間に形成されている。ガス膨張室40は上部ガス室37と同様に膨張機可動部分20と膨張機静止部分22との間に形成された可変容積であり、シリンダ28に対するディスプレーサ24の相対移動によってガス膨張室40の容積は上部ガス室37の容積と相補的に変動する。シール部44が設けられているので、上部ガス室37とガス膨張室40との直接のガス流通(つまり蓄冷器16を迂回するガス流れ)はない。
低圧ガス室42は、駆動機構ハウジング30の内部に画定されている。第2管18bが駆動機構ハウジング30に接続されており、それにより低圧ガス室42が第2管18bを通じて圧縮機12の吸入口12bに連通している。そのため、低圧ガス室42は常に低圧に維持される。
ディスプレーサ駆動軸26は、ディスプレーサ24から上部ガス室37を貫通して低圧ガス室42へと突き出している。膨張機静止部分22は、ディスプレーサ駆動軸26を軸方向に移動可能に支持する一対の駆動軸ガイド46a、46bを備える。駆動軸ガイド46a、46bはそれぞれ、ディスプレーサ駆動軸26を囲むように駆動機構ハウジング30に設けられている。軸方向下側の駆動軸ガイド46bまたは駆動機構ハウジング30の下端部は気密に構成されており、そのため低圧ガス室42は上部ガス室37から隔離されている。低圧ガス室42と上部ガス室37との直接のガス流通はない。
膨張機14は、ディスプレーサ24を駆動する駆動機構48を備える。駆動機構48は、低圧ガス室42に収容されており、モータ48a及びスコッチヨーク機構48bを含む。ディスプレーサ駆動軸26はスコッチヨーク機構48bの一部を形成する。また、スコッチヨーク機構48bは、モータ48aの出力軸と平行に延在するとともに当該出力軸から偏心したクランクピン49を備える。ディスプレーサ駆動軸26はスコッチヨーク機構48bによって軸方向に駆動されるようスコッチヨーク機構48bに連結されている。したがって、モータ48aの回転によりディスプレーサ24の軸方向往復移動が駆動される。駆動軸ガイド46a、46bは、スコッチヨーク機構48bを挟んで軸方向に異なる位置にある。
バルブ部34は、駆動機構48に連結され、駆動機構ハウジング30に収容されている。バルブ部34は、ロータリバルブの形式をとる。バルブ部34は、ロータバルブ樹脂部材(以下、単にバルブロータともいう)34a及びステータバルブ金属部材(以下、単にバルブステータともいう)34bを備える。つまり、バルブロータ34aは樹脂材料(例えば、エンジニアリングプラスチック材料、フッ素樹脂材料)で形成され、バルブステータ34bは、金属(例えばアルミ材または鉄材)で形成されている。なお逆に、バルブロータ34aが金属で形成され、バルブステータ34bが樹脂で形成されてもよい。バルブロータ34aおよびバルブステータ34bはそれぞれ、バルブディスクおよびバルブ本体と呼ばれることもある。
バルブロータ34aおよびバルブステータ34bはともに、低圧ガス室42に配設されている。バルブロータ34aは、モータ48aの回転により回転するようモータ48aの出力軸に連結されている。バルブロータ34aは、バルブステータ34bに対し回転摺動するようバルブステータ34bと面接触している。バルブステータ34bは、駆動機構ハウジング30に固定されている。バルブステータ34bは、第1管18aから駆動機構ハウジング30に入る高圧ガスを受け入れるよう構成されている。
図2は、本発明のある実施形態に係るバルブ部34の要部を概略的に示す分解斜視図である。図2に示す一点鎖線は、バルブ回転軸Yを表す。図3(a)および図3(b)はそれぞれ、本発明のある実施形態に係るバルブロータ34aおよびバルブステータ34bを概略的に示す平面図である。理解の容易のために、図3(a)および図3(b)には一点鎖線で同一の位置を示す。
バルブステータ34bはバルブ回転軸Yに垂直なステータ平面50を有し、バルブロータ34aは同じくバルブ回転軸Yに垂直なロータ平面52を有する。バルブロータ34aがバルブステータ34bに対し回転するとき、ロータ平面52はステータ平面50に対し回転摺動する。ステータ平面50とロータ平面52が面接触することにより、冷媒ガスの漏れが防止される。
バルブステータ34bは、駆動機構ハウジング30内にバルブステータ固定ピン54で固定される。バルブステータ固定ピン54は、バルブステータ34bのステータ平面50と回転軸方向反対側に位置するバルブステータ端面51に係合し、バルブステータ34bの回転を規制する。
バルブロータ34aは、図1に示すロータ軸受56により回転可能に支持されている。バルブロータ34aのロータ平面52と回転軸方向反対側に位置するバルブロータ端面58には、クランクピン49と係合する係合穴(図示せず)が形成されている。モータ48aがクランクピン49を回転させることにより、バルブロータ34aはスコッチヨーク機構48bと同期して回転する。また、バルブロータ34aは、ロータ平面52をバルブロータ端面58に接続するロータ外周面60を備える。ロータ外周面60は、ロータ軸受56に支持されるとともに、低圧ガス室42に面している。
バルブステータ34bは、高圧ガス流入口62およびステータ凹部64を有する。高圧ガス流入口62は、ステータ平面50の中心部に開口され、バルブステータ34bの中心部を回転軸方向に貫通するよう形成されている。高圧ガス流入口62は、バルブ回転軸Yを中心とする円形状の輪郭をステータ平面50上に定める。高圧ガス流入口62は、第1管18aを通じて圧縮機12の吐出口12aに連通される。ステータ凹部64は、ステータ平面50において高圧ガス流入口62に対し径方向外側に開口されている。ステータ凹部64は、高圧ガス流入口62を中心とした円弧状に形成されている。ステータ凹部64の深さはバルブステータ34bの回転軸方向長さより短く、ステータ凹部64はバルブステータ34bを貫通していない。
バルブステータ34bは、ステータ凹部64をハウジングガス流路36につなぐようバルブステータ34bに貫通形成されている連通路66を有する。よってステータ凹部64は、連通路66およびハウジングガス流路36を経て最終的にガス膨張室40に連通される。連通路66は一端がステータ凹部64に開口され他端がバルブステータ34bの側面に開口されている。連通路66のステータ凹部64側の部分は回転軸方向に延びており、これに対し直交するよう連通路66のハウジングガス流路36側の部分は径方向に延びている。
ステータ凹部64は、ステータ平面50上に円弧状のステータ凹部輪郭72を定める。ステータ凹部輪郭72は、ステータ凹部前縁線72a、ステータ凹部後縁線72b、ステータ凹部内縁線72c、およびステータ凹部外縁線72dを有する。ステータ凹部前縁線72aおよびステータ凹部後縁線72bはバルブ周方向に互いに離れて位置し、ステータ凹部内縁線72cおよびステータ凹部外縁線72dはバルブ径方向に互いに離れて位置する。ステータ凹部内縁線72cはステータ凹部前縁線72aの一端をステータ凹部後縁線72bの一端に接続し、ステータ凹部外縁線72dはステータ凹部前縁線72aの他端をステータ凹部後縁線72bの他端に接続する。
ステータ凹部前縁線72aおよびステータ凹部後縁線72bはそれぞれ逆向きの半円状曲線である。ステータ凹部内縁線72cおよびステータ凹部外縁線72dはそれぞれバルブ回転軸Yを中心とする円弧であり、同一の中心角を有する。ステータ凹部内縁線72cは、ステータ凹部外縁線72dに対し径方向内側に位置する。つまり、ステータ凹部内縁線72cの半径は、ステータ凹部外縁線72dの半径より小さい。また、ステータ凹部内縁線72cの半径は、高圧ガス流入口62の円形輪郭線の半径より大きい。
バルブロータ34aは、ロータ凹部68と、第2ロータ凹部としての低圧ガス流出口70とを有する。ロータ平面52は、ロータ凹部68の周囲でステータ平面50に面接触する。同様に、ロータ平面52は、低圧ガス流出口70の周囲でステータ平面50に面接触する。
ロータ凹部68は、ロータ平面52に開口され、長円状に形成されている。ロータ凹部68は、ロータ平面52の中心部から径方向外側へと延在する。ロータ凹部68の深さはバルブロータ34aの回転軸方向長さより短く、ロータ凹部68はバルブロータ34aを貫通していない。ロータ凹部68はロータ平面52上で高圧ガス流入口62に対応する場所に位置しており、ロータ凹部68は高圧ガス流入口62に常時連通している。
ロータ凹部68は、ロータ平面52上にロータ凹部輪郭74を定める。ロータ凹部輪郭74は、ロータ凹部前縁線74a、ロータ凹部後縁線74b、ロータ凹部内縁線74c、およびロータ凹部外縁線74dを有する。ロータ凹部前縁線74aおよびロータ凹部後縁線74bはバルブ周方向に互いに離れて位置し、ロータ凹部内縁線74cおよびロータ凹部外縁線74dはバルブ径方向に互いに離れて位置する。ロータ凹部内縁線74cはロータ凹部前縁線74aの一端をロータ凹部後縁線74bの一端に接続し、ロータ凹部外縁線74dはロータ凹部前縁線74aの他端をロータ凹部後縁線74bの他端に接続する。
ロータ凹部前縁線74aおよびロータ凹部後縁線74bはそれぞれ直線である。ロータ凹部内縁線74cおよびロータ凹部外縁線74dはそれぞれ逆向きの半円状曲線である。ロータ凹部内縁線74cの半径は、高圧ガス流入口62の円形輪郭線の半径と等しく、両者は重なり合う。
ロータ凹部68は、バルブロータ34aの回転の一周期の一部(例えば吸気工程)において高圧ガス流入口62をステータ凹部64に連通し、当該一周期の残部(例えば排気工程)において高圧ガス流入口62をステータ凹部64とは不通とするようバルブロータ34aに形成されている。ロータ凹部68および高圧ガス流入口62からなる二区域、または、ロータ凹部68、高圧ガス流入口62、およびステータ凹部64からなる三区域は、互いに連通してバルブ部34内に高圧領域(または高圧流路)を形成する。バルブロータ34aは、高圧領域を密封し低圧周囲環境(すなわち低圧ガス室42)から隔離するようバルブステータ34bに隣接配置されている。ロータ凹部68は、バルブ部34の高圧流路における流れ方向変更部または流路折り返し部として設けられている。このようにして、吸気工程A1を定める吸気バルブV1(図4参照)がバルブ部34に構成される。
また、バルブロータ34aは、ロータ平面52に開口しロータ凹部68へと延びる第1ロータ連通溝80を有する。第1ロータ連通溝80は、ロータ平面52上に形成され、ロータ凹部68に比べて細長い。第1ロータ連通溝80は、図3(a)に一点鎖線で示されるステータ凹部64の中心半径(すなわち、ステータ凹部内縁線72cとステータ凹部外縁線72dの平均半径)に沿って円弧状に延びている。ロータ平面52からの第1ロータ連通溝80の深さは、ロータ凹部68の深さより小さい。
第1ロータ連通溝80は、ロータ平面52に開口する第1始端80aと、ロータ凹部68に連通する第1終端80bと、を有する。第1終端80bは、ロータ凹部前縁線74a上にある。第1ロータ連通溝80は、第1始端80aから第1終端80bへと延びている。第1始端80aから第1終端80bへの角度C1は、3度より大きく30度より小さい。
低圧ガス流出口70は、ロータ平面52上でロータ凹部68と径方向反対側に開口され、バルブロータ34aを回転軸方向に貫通するよう形成されている。低圧ガス流出口70は、バルブロータ34aのロータ平面52からバルブロータ端面58まで貫通する。低圧ガス流出口70は、低圧ガス室42と連通する低圧流路を形成する。
低圧ガス流出口70は、ロータ平面52上に円弧状の流出口輪郭76を定める。流出口輪郭76は、流出口前縁線76a、流出口後縁線76b、流出口内縁線76c、および流出口外縁線76dを有する。流出口前縁線76aおよび流出口後縁線76bはバルブ回転方向Rに互いに離れて位置し、流出口内縁線76cおよび流出口外縁線76dはバルブ径方向に互いに離れて位置する。流出口内縁線76cは流出口前縁線76aの一端を流出口後縁線76bの一端に接続し、流出口外縁線76dは流出口前縁線76aの他端を流出口後縁線76bの他端に接続する。低圧ガス流出口70は、ステータ凹部64に比べてバルブ周方向に長く延びている。
流出口前縁線76aおよび流出口後縁線76bはそれぞれ逆向きの半円状曲線である。流出口内縁線76cおよび流出口外縁線76dはそれぞれバルブ回転軸Yを中心とする円弧であり、同一の中心角を有する。流出口内縁線76cは、流出口外縁線76dに対し径方向内側に位置する。つまり、流出口内縁線76cの半径は、流出口外縁線76dの半径より小さい。流出口内縁線76cの半径は、ステータ凹部内縁線72cの半径と等しく、流出口外縁線76dの半径は、ステータ凹部外縁線72dの半径と等しい。
低圧ガス流出口70は、高圧ガス流入口62がステータ凹部64から不通となる期間の少なくとも一部(例えば排気工程)においてステータ凹部64を低圧ガス室42に連通するようバルブロータ34aに形成されている。このようにして、排気工程A2を定める排気バルブV2(図4参照)がバルブ部34に構成される。
また、バルブロータ34aは、ロータ平面52に開口し低圧ガス流出口70へと延びる第2ロータ連通溝82を有する。第2ロータ連通溝82は、ロータ平面52上に形成され、低圧ガス流出口70に比べて細長い。第2ロータ連通溝82は、図3(a)に一点鎖線で示されるステータ凹部64の中心半径(すなわち、ステータ凹部内縁線72cとステータ凹部外縁線72dの平均半径)に沿って円弧状に延びている。よって、第2ロータ連通溝82は第1ロータ連通溝80と同じ円周上にある。ロータ平面52からの第2ロータ連通溝82の深さは、低圧ガス流出口70の深さより小さい。第2ロータ連通溝82の深さは、第1ロータ連通溝80の深さと等しくてもよい。
第2ロータ連通溝82は、ロータ平面52に開口する第2始端82aと、低圧ガス流出口70に連通する第2終端82bと、を有する。第2終端82bは、流出口前縁線76a上にある。第2ロータ連通溝82は、第2始端82aから第2終端82bへと延びている。第2始端82aから第2終端82bへの角度C2は、3度より大きく30度より小さい。図示の例では、角度C2は、角度C1と同じである。しかし、角度C2は、角度C1と異なっていてもよい。
上記の構成をもつ極低温冷凍機10の動作を説明する。図4は、本発明のある実施形態に係る極低温冷凍機10の動作を例示する図である。図5は、本発明のある実施形態に係るバルブ部34の動作を例示する図である。
図4の横軸はバルブ部34の回転における位相を表す。バルブ部34の回転の一周期(ディスプレーサ24の軸方向往復動の一周期でもある)が360度に対応づけられている。0度は周期の開始時点にあたり、360度は周期の終了時点にあたる。図4の縦軸はバルブ部34の開度を表す。ここで、バルブ部34の開度は、バルブロータ34a側の凹部とバルブステータ34b側の凹部との重なり面積に相当する。
極低温冷凍機10の吸気工程A1および排気工程A2が図4に例示されている。吸気工程A1は、バルブ回転の第1位相θ1から第3位相θ3の範囲であり、排気工程A2は、バルブ回転の第4位相θ4から第6位相θ6の範囲である。吸気工程A1は排気工程A2と交互である。吸気工程A1と排気工程A2が互いに重ならないように、吸気工程A1は排気工程A2の開始前に終了し、排気工程A2は吸気工程A1の開始前に終了する。
第1位相θ1から第2位相θ2までが吸気工程A1の先行部分にあたり、第2位相θ2から第3位相θ3までが吸気工程A1の本体部分にあたる。第4位相θ4から第5位相θ5までが排気工程A2の先行部分にあたり、第5位相θ5から第6位相θ6までが排気工程A2の本体部分にあたる。
図5はバルブ部34をバルブロータ34a側から透過して見た様子を示し、高圧ガス流入口62、ステータ凹部64、ロータ凹部68、および低圧ガス流出口70の相対位置を示す。バルブロータ34aはバルブステータ34bに対しバルブ回転方向R(図において反時計回り)に回転する。バルブステータ34bの高圧ガス流入口62およびステータ凹部64を実線で図示し、バルブロータ34aのロータ凹部68および低圧ガス流出口70を破線で図示する。
第1ロータ連通溝80の第1始端80aは、第1位相θ1でステータ凹部前縁線72aを通過するようロータ平面52上に位置する。ロータ凹部68は、第1位相θ1で第1ロータ連通溝80を通じてステータ凹部64と流体的に連絡される。こうして、第1位相θ1で吸気バルブV1が開き吸気工程A1が始まる。第1位相θ1以降、所定の微小開度S1で吸気バルブV1が開く。
上述のように、第1始端80aから第1終端80bへの角度C1は、第1位相θ1と第2位相θ2の位相差に相当する。よって、第1位相θ1と第2位相θ2の位相差は、3度より大きく30度より小さい。第1ロータ連通溝80の溝長さがこの範囲にあれば、冷凍能力への顕著な低下は生じない。
第1ロータ連通溝80の第1終端80bは、第2位相θ2でステータ凹部前縁線72aを通過するようロータ平面52上に位置する。第2位相θ2は第1位相θ1に後続する。第2位相θ2でロータ凹部前縁線74aがステータ凹部前縁線72aを通過する。第2位相θ2以降、吸気バルブV1の開度は大きくなり、最大開度S2に達する。図4および図5を参照して第2位相θ2と第3位相θ3の間の位相θaに例示されるように、吸気バルブV1が最大開度S2で開かれる。
第3位相θ3でロータ凹部後縁線74bがステータ凹部後縁線72bを通過してロータ凹部68がステータ凹部64から流体的に隔離される。こうして、第3位相θ3で吸気バルブV1が閉じ吸気工程A1が終わる。吸気工程A1の間、低圧ガス流出口70はステータ凹部64から流体的に隔離されている。
図4および図5を参照して第3位相θ3と第4位相θ4の間の位相θbに例示されるように、吸気工程A1と排気工程A2との間は吸気バルブV1および排気バルブV2がともに閉じている。
第2ロータ連通溝82の第2始端82aは、第4位相θ4でステータ凹部前縁線72aを通過するようロータ平面52上に位置する。低圧ガス流出口70は、第4位相θ4で第2ロータ連通溝82を通じてステータ凹部64と流体的に連絡される。こうして、第4位相θ4で排気バルブV2が開き排気工程A2が始まる。第4位相θ4以降、所定の微小開度S3で排気バルブV2が開く。開度S3は開度S1と等しい。
上述のように、第2始端82aから第2終端82bへの角度C2は、第4位相θ4と第5位相θ5の位相差に相当する。よって、第4位相θ4と第5位相θ5の位相差は、3度より大きく30度より小さい。
第2ロータ連通溝82の第2終端82bは、第5位相θ5でステータ凹部前縁線72aを通過するようロータ平面52上に位置する。第5位相θ5は第4位相θ4に後続する。第5位相θ5で流出口前縁線76aがステータ凹部前縁線72aを通過する。第5位相θ5以降、排気バルブV2の開度は大きくなり、最大開度S4に達する。図4および図5を参照して第5位相θ5と第6位相θ6の間の位相θcに例示されるように、排気バルブV2が最大開度S4で開かれる。図示の例では、排気バルブV2が最大開度S4が吸気バルブV1の最大開度S2より大きい。
第6位相θ6で流出口後縁線76bがステータ凹部後縁線72bを通過して低圧ガス流出口70がステータ凹部64から流体的に隔離される。こうして、第6位相θ6で排気バルブV2が閉じ排気工程A2が終わる。排気工程A2の間、ロータ凹部68はステータ凹部64から流体的に隔離されている。第6位相θ6と第1位相θ1との間は吸気バルブV1および排気バルブV2がともに閉じている。
このようにして、ロータ凹部68は、バルブ回転の第2位相θ2でロータ凹部68がステータ凹部64と第1開度で流体的に連絡されかつ第2位相θ2に後続するバルブ回転の第3位相θ3でロータ凹部68がステータ凹部64から流体的に隔離されるようバルブロータ34aに形成されている。第1ロータ連通溝80は、第6位相θ6に後続し第2位相θ2に先行するバルブ回転の第1位相θ1でロータ凹部68がステータ凹部64と第1開度より小さい開度で流体的に連絡されるようバルブロータ34aに形成されている。
また、低圧ガス流出口70は、バルブ回転の第5位相θ5で低圧ガス流出口70がステータ凹部64と第2開度で流体的に連絡されかつ第5位相θ5に後続するバルブ回転の第6位相θ6で低圧ガス流出口70がステータ凹部64から流体的に隔離されるようバルブロータ34aに形成されている。第2ロータ連通溝82は、第3位相θ3に後続し第5位相θ5に先行するバルブ回転の第4位相θ4で低圧ガス流出口70がステータ凹部64と第2開度より小さい開度で流体的に連絡されるようバルブロータ34aに形成されている。
第1位相θ1においてディスプレーサ24は下死点またはその近傍に位置する。バルブ部34は、圧縮機12の吐出口12aをガス膨張室40に接続するよう切り替わる。極低温冷凍機10の吸気工程A1が開始される。バルブ部34においては、高圧ガス流入口62からロータ凹部68を通じてステータ凹部64へと高圧ガスが流れる。高圧ガスは、バルブ部34からハウジングガス流路36、上部ガス室37、ディスプレーサ上蓋ガス流路38を通じて蓄冷器高温部16aに入る。ガスは蓄冷器16を通過しながら冷却され、蓄冷器低温部16bからディスプレーサ下蓋ガス流路39を通じて最終的にガス膨張室40に入る。ガスがガス膨張室40に流入する間、ディスプレーサ24はシリンダ28の上死点に向けて移動する。それによりガス膨張室40の容積が増加される。こうしてガス膨張室40は高圧ガスで満たされる。
第4位相θ4においてディスプレーサ24は上死点またはその近傍に位置する。バルブ部34は、圧縮機12の吸入口12bをガス膨張室40に接続するよう切り替わる。排気工程A2が開始される。高圧ガスはガス膨張室40で膨張し冷却される。膨張したガスは、ガス膨張室40からディスプレーサ下蓋ガス流路39を通じて蓄冷器16に入る。ガスは蓄冷器16を通過しながら冷却する。ガスは、蓄冷器16からハウジングガス流路36、バルブ部34、低圧ガス室42を経て圧縮機12に戻る。バルブ部34においては、ガス膨張室40からの低圧戻りガスがステータ凹部64から低圧ガス流出口70を通じて低圧ガス室42へと流れる。ガスがガス膨張室40から流出する間、ディスプレーサ24はシリンダ28の下死点に向けて移動する。それによりガス膨張室40の容積が減少され、ガス膨張室40から低圧ガスが排出される。排気工程A2が終了すると再び吸気工程A1が開始される。
以上が極低温冷凍機10における1回の冷却サイクルである。極低温冷凍機10は冷却サイクルを繰り返すことで、冷却ステージ32を所望の温度に冷却する。よって、極低温冷凍機10は、冷却ステージ32に熱的に結合された物体を極低温に冷却することができる。
図6は、ある典型的なGM冷凍機の一周期にわたる差圧変動測定結果の例である。上部ガス室とガス膨張室との測定差圧が示されている。差圧のピークが吸気工程A1の開始直後と排気工程A2の開始直後の二度あることがわかる。いずれのピークもロータリバルブが開かれる時に生じる。
本実施形態によると、ロータ凹部68には第1ロータ連通溝80が設けられ、低圧ガス流出口70には第2ロータ連通溝82が設けられている。バルブ回転方向に先行する細溝がバルブ穴に付加されている。吸気バルブV1および排気バルブV2が徐々に開かれるので、シリンダ28内の圧力急変が抑制され、差圧ピークは低減される。差圧ピークはディスプレーサ24を駆動するモータ48aに作用する負荷トルク最大値を決めるから、負荷トルク最大値も低減される。負荷トルク最大値は、採用するモータ48aの能力およびサイズの設計に大きく影響する。よって、より小型のモータ48aを採用することができる。第1ロータ連通溝80および第2ロータ連通溝82は、モータ48aの大型化の防止に役立つ。
図6によると、吸気工程A1の差圧ピークのほうが排気工程A2の差圧ピークより大きい。したがって、少なくとも吸気バルブV1(つまりロータ凹部68)に連通溝を設けることが望ましい。ただし、必要に応じて、排気バルブV2(つまり低圧ガス流出口70)のみに連通溝が設けられてもよい。
図7は、他の実施形態に係るバルブロータ34aを概略的に示す平面図である。図示されるように、第1ロータ連通溝80および第2ロータ連通溝82は、直線状であってもよい。
図8(a)および図8(b)はそれぞれ、他の実施形態に係るバルブロータ134aおよびバルブステータ134bを概略的に示す平面図である。図示されるように、バルブ回転方向に先行する細溝がバルブステータ134bに設けられていてもよい。バルブロータ134aはそうした細溝を有しない。
バルブステータ134bは、ステータ平面50に開口しステータ凹部64へと延びるステータ連通路84を有する。ステータ連通路84は、ステータ平面50上に形成され、ステータ凹部64に比べて細長い溝である。ステータ連通路84は、図8(b)に一点鎖線で示されるステータ凹部64の中心半径(すなわち、ステータ凹部内縁線72cとステータ凹部外縁線72dの平均半径)に沿って円弧状に延びている。ステータ平面50からのステータ連通路84の深さは、ステータ凹部64の深さより小さい。
ステータ連通路84は、ステータ平面50に開口する第3始端84aと、ステータ凹部64に連通する第3終端84bと、を有する。第3終端84bは、ステータ凹部前縁線72a上にある。ステータ連通路84は、第3始端84aから第3終端84bへと延びている。第3始端84aから第3終端84bへの角度C3は、3度より大きく30度より小さい。
ステータ連通路84は、第2位相θ2に先行するバルブ回転の第1位相θ1でロータ凹部68がステータ凹部64と第1開度より小さい開度で流体的に連絡されるようバルブステータ134bに形成されている。また、ステータ連通路84は、第5位相θ5に先行するバルブ回転の第4位相θ4で低圧ガス流出口70がステータ凹部64と第2開度より小さい開度で流体的に連絡されるようバルブステータ134bに形成されている。
このようにしてバルブステータ134bに連通路を設けても、図2から図5を参照して述べた実施形態と同様に、モータ48aに作用する負荷トルク最大値を低減することができる。
図9は、他の実施形態に係るバルブステータ134bを概略的に示す平面図である。図示されるように、ステータ連通路84は、直線状であってもよい。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
連通路の形状は種々可能である。連通路の終端は凹部の前縁線上に限られず、凹部輪郭の他の位置にあってもよい。連通路の始端は、先行してバルブを開く任意の位置にあってもよい。連通路は、円弧状または直線状の形状に限られず、曲線状または折れ線状その他の形状であってもよい。
連通路は、ロータ平面(またはステータ平面)に沿っていなくてもよい。バルブロータまたはバルブステータの内部を通ってもよい。連通路の始端が平面上にあり、終端が平面外にあってもよい。
ある実施形態においては、ロータ連通路とステータ連通路の両方がバルブ部に設けられてもよい。第1位相でロータ連通路とステータ連通路とが連絡されてもよい。
ある実施形態においては、第2ステータ凹部としての高圧ガス流入口62に第2ステータ連通路が設けられてもよい。
また、バルブ部における流路構成も種々可能である。上述の実施形態においては、ロータ凹部68がバルブロータ34aを貫通せずバルブロータ34a内に底面を有する。しかし、これに代えて、ロータ凹部は、バルブロータを貫通する貫通穴であってもよい。同様に、ステータ凹部は、バルブステータを貫通する貫通穴であってもよい。高圧ガス流入口は、バルブステータを貫通せずバルブステータ内に底面を有してもよい。低圧ガス流出口は、バルブロータを貫通せずバルブロータ内に底面を有してもよい。高圧ガス流入口がバルブロータに形成されてもよい。低圧ガス流出口がバルブステータに形成されてもよい。
上記においては、単段式のGM冷凍機に言及して実施の形態を説明した。本発明はこれに限られず、実施の形態に係るバルブ構成は、二段式または多段式のGM冷凍機、または、パルス管冷凍機などその他の極低温冷凍機に適用可能である。