以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る自動運転システムを示すブロック図である。図1に示す第1の実施形態に係る自動運転システム100は、乗用車などの車両に搭載され、車両の自動運転を実行する。自動運転制御とは、予め設定された目的地に向かって自動で車両を走行させる車両制御である。自動運転制御では、運転者が運転操作を行う必要が無く、車両が自動で走行する。
[自動運転システムの構成]
図1に示すように、自動運転システム100は、システムを統括的に管理するECU[Electronic Control Unit]10を備えている。ECU10は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などを有する電子制御ユニットである。ECU10では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU10は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
ECU10は、GPS受信部1、外部センサ2、内部センサ3、地図データベース4、運転操作検出部5、ナビゲーションシステム6、アクチュエータ7、及びHMI[Human Machine Interface]8と接続されている。
GPS受信部1は、3個以上のGPS衛星から信号を受信することにより、車両の位置(例えば車両の緯度及び経度)を測定する。GPS受信部1は、測定した車両の位置情報をECU10へ送信する。
外部センサ2は、車両の周辺の状況を検出する検出機器である。外部センサ2は、カメラ、レーダセンサのうち少なくとも一つを含む。
カメラは、車両の外部状況を撮像する撮像機器である。カメラは、車両のフロントガラスの裏側に設けられている。カメラは、車両の外部状況に関する撮像情報をECU10へ送信する。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有している。
レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して車両の周辺の障害物を検出する検出機器である。レーダセンサには、例えば、ミリ波レーダ又はライダー[LIDAR:LightDetection and Ranging]が含まれる。レーダセンサは、電波又は光を車両の周辺に送信し、障害物で反射された電波又は光を受信することで障害物を検出する。レーダセンサは、検出した障害物情報をECU10へ送信する。障害物には、ガードレール、建物などの固定障害物の他、歩行者、自転車、他車両などの移動障害物が含まれる。
内部センサ3は、車両の走行状態及び車両状態を検出する検出機器である。内部センサ3は、車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサを含む。車速センサは、車両の速度を検出する検出器である。車速センサとしては、例えば、車両の車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフトなどに対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。車速センサは、検出した車速情報(車輪速情報)をECU10に送信する。
加速度センサは、車両の加速度を検出する検出器である。加速度センサは、例えば、車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、車両の横加速度を検出する横加速度センサとを含んでいる。加速度センサは、例えば、車両の加速度情報をECU10に送信する。ヨーレートセンサは、車両の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、検出した車両のヨーレート情報をECU10へ送信する。内部センサ3は、車両状態として車両のドアの開閉を検出するドアセンサを含む。
地図データベース4は、地図情報を記憶するデータベースである。地図データベース4は、例えば、車両に搭載されたHDD[Hard Disk Drive]内に形成されている。地図情報には、道路の位置情報、道路形状の情報(例えばカーブ、直線部の種別、カーブの曲率など)、交差点及び分岐点の位置情報、及び構造物の位置情報などが含まれる。地図情報には、位置情報と関連付けられた法定速度などの交通規制情報も含まれている。地図情報には、施設の位置と施設の種類(学校、病院、駅、コンビニエンスストアなどの種類)を含む施設データも含まれる。なお、地図データベース4は、車両と通信可能な管理センターなどの施設のコンピュータに記憶されていてもよい。
運転操作検出部5は、運転者の運転操作を検出する。運転操作検出部5は、例えば、アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ、及び操舵センサを含んでいる。アクセルペダルセンサは、運転者によるアクセルペダルの踏込み量を検出する。ブレーキペダルセンサは、運転者によるブレーキペダルの踏込み量を検出する。操舵センサは、運転者によるステアリングホイールの操舵速度、操舵角、及び操舵トルクのうち少なくとも一つを検出する。操舵センサは、ステアリングホイールに設けられたタッチセンサを含んでもよい。タッチセンサは、ステアリングホイールを握る運転者の手の把持力を検出する。運転操作検出部5は、運転者のシフト操作を検出するシフトセンサを含んでいてもよい。運転操作検出部5は、検出した運転者の運転操作をECU10へ送信する。
ナビゲーションシステム6は、車両に搭載され、自動運転制御によって車両が走行する目標ルートを設定する。ナビゲーションシステム6は、予め設定された目的地E、GPS受信部1によって測定された車両の位置、及び地図データベース4の地図情報に基づいて、車両の位置から目的地Eに至るまでの目標ルートを演算する。自動運転制御の目的地Eは、車両の乗員がナビゲーションシステム6の備える入力ボタン(又はタッチパネル)を操作することにより設定される。目標ルートは、道路を構成する車線を区別して設定される。ナビゲーションシステム6は、周知の手法により目標ルートを設定することができる。ナビゲーションシステム6は、運転者による車両の手動運転時において、目標ルートに沿った案内を行う機能を有していてもよい。ナビゲーションシステム6は、車両の目標ルートの情報をECU10へ出力する。ナビゲーションシステム6は、その機能の一部が車両と通信可能な情報処理センター等の施設のサーバで実行されていてもよい。ナビゲーションシステム6の機能は、ECU10において実行されてもよい。
なお、ここで言う目標ルートには、特許5382218号公報(WO2011/158347号公報)に記載された「運転支援装置」、又は、特開2011−162132号公報に記載された「自動運転装置」における道なり走行ルートのように、目的地の設定が運転者から明示的に行われていない際に、過去の目的地の履歴や地図情報に基づき自動的に生成される目標ルートも含まれる。
アクチュエータ7は、車両の制御に用いられる機器である。アクチュエータ7は、スロットルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。スロットルアクチュエータは、ECU10からの加速制御指令値に応じてエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、車両の駆動力を制御する。なお、車両がハイブリッド車である場合には、エンジンに対する空気の供給量の他に、動力源としてのモータにECU10からの加速制御指令値が入力されて当該駆動力が制御される。車両が電気自動車である場合には、スロットルアクチュエータの代わりに動力源としてのモータにECU10からの加速制御指令値が入力されて当該駆動力が制御される。これらの場合における動力源としてのモータは、アクチュエータ7を構成する。
ブレーキアクチュエータは、ECU10からの減速制御指令値に応じてブレーキシステムを制御し、車両の車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU10からの操舵制御指令値に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、車両の操舵トルクを制御する。
HMI8は、自動運転システム100と乗員との間で情報の入出力を行うためのインターフェイスである。HMI8は、例えば、ディスプレイ、スピーカなどを備えている。HMI8は、ECU10からの制御信号に応じて、ディスプレイの画像出力及びスピーカからの音声出力を行う。ディスプレイは、ヘッドアップディスプレイであってもよい。HMI8は、例えば、乗員からの入力を受け付けるための入力機器(ボタン、タッチパネル、音声入力器など)を備えている。
次に、ECU10の機能的構成について説明する。図1に示すように、ECU10は、車両位置認識部11、走行環境認識部12、走行状態認識部13、トリガードエンゲージ判定部14、自動エンゲージ判定部15、走行計画生成部16、オーバーライド判定部17、介入意図判定部18、モード判定部19、及び車両制御部20を有している。
車両位置認識部11は、GPS受信部1の位置情報及び地図データベース4の地図情報に基づいて、車両の地図上の位置を認識する。また、車両位置認識部11は、地図データベース4の地図情報に含まれた電柱等の固定障害物の位置情報及び外部センサ2の検出結果を利用して、SLAM[Simultaneous Localization And Mapping]技術により車両の位置を認識する。車両位置認識部11は、その他、周知の手法により車両の地図上の位置を認識してもよい。
走行環境認識部12は、外部センサ2の検出結果に基づいて、車両の走行環境を認識する。走行環境には、車両に対する障害物の位置、車両に対する障害物の相対速度、車両に対する障害物の移動方向などが含まれる。走行環境認識部12は、カメラの撮像画像、レーダセンサの障害物情報に基づいて、周知の手法により、車両の走行環境を認識する。
走行状態認識部13は、内部センサ3の検出結果に基づいて、走行中の車両の状態を認識する。走行状態には、車両の車速、車両の加速度、車両のヨーレートが含まれる。具体的に、走行状態認識部13は、車速センサの車速情報に基づいて、車両の車速を認識する。走行状態認識部13は、加速度センサの加速度情報に基づいて、車両の加速度(前後加速度及び横加速度)を認識する。走行状態認識部13は、ヨーレートセンサのヨーレート情報に基づいて、車両のヨーレートを認識する。
トリガードエンゲージ判定部14は、車両がトリガードエンゲージモードである場合に、自動運転開始条件が満たされたか否かを判定する。トリガードエンゲージモードとは、運転者の操作により車両の自動運転制御が開始されるモードである。運転者は、HMI8へモード設定の入力を行うことで車両をトリガードエンゲージモードにすることができる。
自動運転開始条件とは、トリガードエンゲージによる自動運転制御を開始するための前提となる条件である。自動運転開始条件は、例えば、地図上に予め設定された自動運転可能な区間内に車両が位置することを条件の一つとすることができる。自動運転可能な区間は、例えば、地図データベース4に記憶されている地図情報の精度及び鮮度等に基づいて設定される。自動運転開始条件は、車両位置認識部11による車両の位置の誤差が誤差閾値以下であることを条件の一つとしてもよい。誤差閾値は、予め設定された閾値である。車両の位置の誤差は周知の手法により求めることができる。
自動運転開始条件は、周知の手法により演算された自動運転システム100の信頼度が信頼度閾値以上であることを条件の一つとしてもよい。信頼度閾値は、予め設定された閾値である。自動運転システム100の信頼度は、外部センサ2の信頼度及び内部センサ3の信頼度等から求めてもよい。外部センサ2の信頼度は、例えば、外部センサ2のカメラの撮像画像から認識された障害物とレーダセンサの障害物情報との整合性から求めることができる。自動運転開始条件は、車両が直進姿勢であり、車速が一定閾値以下であることを条件の一つとしてもよい。自動運転開始条件は、車両のシフトレバーが「D(ドライブ)」のシフト位置であることを条件の一つとしてもよい。
トリガードエンゲージ判定部14は、地図データベース4の地図情報、車両位置認識部11の認識した車両の地図上の位置、走行環境認識部12の認識した車両の走行環境、及び走行状態認識部13の認識した車両の走行状態に基づいて、自動運転開始条件が満たされたか否かを判定する。
トリガードエンゲージ判定部14は、自動運転開始条件が満たされたと判定した場合、乗員により自動運転開始トリガーが入力されたか否かを判定する。自動運転開始トリガーは、HMI8の入力部に含まれるトリガー入力部を乗員が操作することで自動運転システム100に入力される。自動運転開始トリガーは、例えば、ボタンであるトリガー入力部を一定時間押し続けることで入力される。自動運転開始トリガーは、音声によって入力されてもよい。トリガードエンゲージ判定部14は、HMI8の入力信号に基づいて、自動運転開始トリガーが入力されたか否かを判定する。
自動エンゲージ判定部15は、車両が自動エンゲージモードである場合に、自動エンゲージ条件が満たされたか否かを判定する。自動エンゲージモードとは、車両が自動エンゲージ条件を満たした場合に自動で車両の自動運転制御を開始するモードである。運転者は、HMI8へモード設定の入力を行うことで車両を自動エンゲージモードに切り換えることができる。
自動エンゲージ条件とは、自動エンゲージによる自動運転制御を開始するための条件である。自動エンゲージ条件は、予め地図上に設定された自動エンゲージの開始地点に車両が至ったことを条件の一つとすることができる。自動エンゲージの開始地点には、例えば、自動運転専用レーンの入口地点が含まれる。
自動エンゲージ条件は、上述した自動運転開始条件と同一としてもよく、自動運転開始条件と異なっていてもよい。自動エンゲージ条件は、自動運転開始条件と比べて自動運転制御を開始しにくい条件(厳しい条件)であってもよい。
自動エンゲージ条件は、車両位置認識部11による車両の位置の誤差が第2の誤差閾値以下であることを条件の一つとしてもよい。この場合、第2の誤差閾値は、自動運転開始条件における誤差閾値より小さい値とすることができる。同様に、自動エンゲージ条件は、周知の手法により演算された自動運転システム100の信頼度が第2の信頼度閾値以上であることを条件の一つとしてもよい。第2の信頼度閾値は、自動運転開始条件における信頼度閾値より大きい値とすることができる。自動エンゲージ条件は、車両のシフトレバーが「A(自動)」のシフト位置であることを条件の一つとしてもよい。
自動エンゲージ判定部15は、地図データベース4の地図情報、車両位置認識部11の認識した車両の地図上の位置、走行環境認識部12の認識した車両の走行環境、及び走行状態認識部13の認識した車両の走行状態に基づいて、自動エンゲージ条件が満たされたか否かを判定する。
走行計画生成部16は、地図データベース4の地図情報、ナビゲーションシステム6の経路情報、車両位置認識部11の認識した車両の地図上の位置、走行環境認識部12の認識した車両の走行環境、及び走行状態認識部13の認識した車両の走行状態に基づいて、自動運転制御のための走行計画を生成する。
走行計画には、車両の操舵に関する操舵計画と車両の車速に関する車速計画とが含まれる。操舵計画には、自動運転制御により車両が走行する経路上の位置に応じた目標操舵角が含まれている。経路上の位置とは、地図上で経路(すなわち自動運転制御の目標ルート)の延在方向における位置である。具体的に、経路上の位置は、経路の延在方向において所定間隔(例えば1m)毎に設定された設定縦位置とすることができる。目標操舵角は、走行計画において車両の操舵角の制御目標となる値である。走行計画生成部16は、経路上で所定間隔離れた位置毎に目標操舵角を設定することで、操舵計画を生成する。なお、目標操舵角に代えて目標操舵トルク又は目標横位置(車両の目標となる道路の幅方向における位置)を用いてもよい。
車速計画には、自動運転制御により車両が走行する経路上の位置に応じた目標車速が含まれている。目標車速は、走行計画において車両の車速の制御目標となる値である。走行計画生成部16は、経路上で所定間隔離れた位置毎に目標車速を設定することで、車速計画を生成する。なお、目標車速に代えて目標加速度又は目標ジャークを用いてもよい。経路上の位置(設定縦位置)に代えて時間を基準としてもよい。
オーバーライド判定部17は、車両の自動運転制御の実行中に、運転操作検出部5の検出した運転者の運転操作に基づいて、オーバーライドが行なわれたか否かを判定する。オーバーライドとは、運転者が自動運転制御を解除して手動運転に移行するための操作である。
オーバーライドには、運転者がステアリングホイールの操舵速度を第1操舵速度閾値以上にする操作、運転者がステアリングホイールの操舵角を第1操舵角閾値以上に回転させる操作、運転者がステアリングホイールに加える操舵トルクを第1操舵トルク閾値以上にする操作のうち少なくとも一つの操作を含むことができる。オーバーライドには、運転者がアクセルペダルの踏込み量を第1アクセル踏込み量閾値以上とする操作、運転者がアクセルペダルの踏込速度を第1アクセル踏込速度閾値以上とする操作、運転者がブレーキペダルの踏込み量を第1ブレーキ踏込み量閾値以上とする操作、運転者がブレーキペダルの踏込速度を第1ブレーキ踏込速度閾値以上とする操作のうち少なくとも一つの操作を含んでもよい。各閾値は、予め設定された値とすることができる。後述する各種の閾値についても同様である。
介入意図判定部18は、オーバーライド判定部17によりオーバーライドが行なわれたと判定された場合、運転者が強い介入意図を有しているか弱い介入意図を有しているかを判定する。介入意図判定部18は、運転操作検出部5の検出した運転者の運転操作に基づいて、上記の判定を行う。介入意図判定部18は、一例として、オーバーライドが行なわれたと判定された時又はオーバーライドが行なわれたと判定された時を含む一定時間内の運転者の運転操作に基づいて上記の判定を行う。
介入意図判定部18は、例えば、運転者の操舵速度が第2操舵速度閾値以上である場合、運転者が強い介入意図を有していると判定する。第2操舵速度閾値は、オーバーライドの判定に用いた第1操舵速度閾値以上の値である。すなわち、第2操舵速度閾値は第1操舵速度閾値と等しい値であってもよい。この場合、運転者の操舵速度が第1操舵速度閾値以上となることでオーバーライドが行なわれたと判定されると、介入意図判定部18は、運転者が強い介入意図を有していると判定する。
同様に、介入意図判定部18は、運転者の操舵角が第2操舵角閾値以上である場合に、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよく、運転者の操舵トルクが第2操舵トルク閾値以上である場合に、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。第2操舵角閾値も第1操舵角閾値以上の値であり、第2操舵トルク閾値も第1操舵トルク閾値以上の値である。なお、操舵角に負の値がある場合には絶対値により比較を行う。
介入意図判定部18は、運転者の操舵角が第2操舵角閾値以上である状態が一定時間以上に継続した場合に、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。同様に、介入意図判定部18は、運転者の操舵トルクが第2操舵トルク閾値以上である状態が一定時間以上に継続した場合に、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。介入意図判定部18は、運転者のステアリングホイールを握る把持力(圧力)が把持力閾値以上である場合に、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。
介入意図判定部18は、運転者のアクセルペダルの踏込み量が第2アクセル踏込み量閾値以上である場合、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。介入意図判定部18は、運転者のアクセルペダルの踏込速度が第2アクセル踏込速度閾値以上である場合、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。第2アクセル踏込み量閾値は、第1アクセル踏込み量閾値より大きい値であり、第2アクセル踏込速度閾値は第1アクセル踏込速度閾値より大きい値である。
同様に、介入意図判定部18は、運転者のブレーキペダルの踏込み量が第2ブレーキ踏込み量閾値以上である場合、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。介入意図判定部18は、運転者のブレーキペダルの踏込速度が第2ブレーキ踏込速度閾値以上である場合、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。第2ブレーキ踏込み量閾値は、第1ブレーキ踏込み量閾値より大きい値であり、第2ブレーキ踏込速度閾値は第1ブレーキ踏込速度閾値より大きい値である。
介入意図判定部18は、運転者のアクセルペダルの踏込み量が第2アクセル踏込み量閾値以上である状態が一定時間以上に継続した場合に、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。介入意図判定部18は、運転者のブレーキペダルの踏込み量が第2アクセル踏込み量閾値以上である状態が一定時間以上に継続した場合に、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。介入意図判定部18は、運転者が強い介入意図を有していると判定しなかった場合には、運転者が弱い介入意図を有していると判定する。
モード判定部19は、介入意図判定部18により運転者が弱い介入意図を有していると判定された場合、実行中の自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたかトリガードエンゲージモードにより開始されたかを判定する。モード判定部19は、トリガードエンゲージ判定部14により自動運転開始トリガーが入力されたと判定されたことで実行中の自動運転制御が開始された場合、実行中の自動運転制御がトリガードエンゲージモードにより開始されたと判定する。モード判定部19は、自動エンゲージ判定部15により自動エンゲージ条件が満たされたと判定されたことで実行中の自動運転制御が開始された場合、実行中の自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定する。
車両制御部20は、車両の自動運転制御を実行する。車両制御部20は、地図データベース4の地図情報、車両位置認識部11の認識した車両の地図上の位置、走行環境認識部12の認識した車両の走行環境、走行状態認識部13の認識した車両の走行状態、及び走行計画生成部16の生成した走行計画に基づいて、車両の自動運転制御を行う。車両制御部20は、アクチュエータ7に制御指令値(操舵制御指令値、加速制御指令値、減速制御指令値など)を送信することにより、走行計画に沿った車両の自動運転制御を行う。車両制御部20は、周知の手法により自動運転制御を実行することができる。
車両制御部20は、トリガードエンゲージ判定部14により自動運転開始トリガーが入力されたと判定された場合、トリガードエンゲージにより自動運転制御を開始する。車両制御部20は、自動エンゲージ判定部15により自動エンゲージ条件が満たされたと判定された場合、自動エンゲージにより自動運転制御を開始する。
車両制御部20は、自動運転制御の実行中に、オーバーライド判定部17によりオーバーライドが行なわれたと判定された場合、自動運転制御を解除して運転者の手動運転に移行する。車両制御部20は、自動運転制御における車両のアクチュエータ7への制御指令値を徐々に減らしてゼロにすることで手動運転に移行する。オーバーライド判定部17によりオーバーライドが行なわれたと判定されてから制御指令値がゼロになるまでの時間を徐変時間と呼ぶ。なお、操舵制御指令値、加速制御指令値、及び減速制御指令値のそれぞれの徐変時間が一致していてもよく、異なっていてもよい。
図2は、手動運転への移行時における制御指令値の変化の一例を示すグラフである。図2の横軸は時間、縦軸は制御指令値Ytである。図2に、オーバーライド判定時の制御指令値をYm、徐変時間をTdecとして示す。図2に示すように、車両制御部20は、オーバーライド判定時から徐々に制御指令値Ytを減少させ、徐変時間Tdecの完了時にゼロになるようにコントロールする。
車両制御部20は、モード判定部19によって自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定された場合には、介入意図判定部18により運転者が強い介入意図を有していると判定された場合又はモード判定部19により自動運転制御がトリガードエンゲージモードにより開始されたと判定された場合と比べて、徐変時間を長くする。
具体的に、車両制御部20は、手動運転への移行において、モード判定部19によって自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定された場合、徐変時間として第1の徐変時間T1を設定する。車両制御部20は、第1の徐変時間T1において制御指令値を徐々に減らしてゼロにすることで、運転者の手動運転への移行を完了する。
一方、車両制御部20は、介入意図判定部18により運転者が強い介入意図を有していると判定された場合又はモード判定部19により自動運転制御がトリガードエンゲージモードにより開始されたと判定された場合、徐変時間として第2の徐変時間T2を設定する。第2の徐変時間T2は、第1の徐変時間T1より短い時間である。言い換えると、第1の徐変時間T1は、第2の徐変時間T2より長い時間である。
車両制御部20は、第2の徐変時間T2において制御指令値を徐々に減らしてゼロにすることで、運転者の手動運転への移行を完了する。なお、第2の徐変時間T2はゼロ時間であってもよい。この場合、車両制御部20は、直ぐに自動運転制御の制御指令値をゼロにして手動運転への移行を完了する。
ここで、図3は、操舵速度と徐変時間との関係を示すグラフである。図3の横軸はオーバーライド判定時における運転者の操舵速度、縦軸は徐変時間Tdecである。図3に、第2操舵速度閾値をdθthとして示す。この場合において、介入意図判定部18は、運転者の操舵速度が第2操舵速度閾値dθth以上である場合、運転者が強い介入意図を有していると判定する。車両制御部20は、介入意図判定部18により運転者が強い介入意図を有していると判定された場合、第2の徐変時間T2を設定する。一方、介入意図判定部18は、運転者の操舵速度が第2操舵速度閾値dθth未満である場合、運転者が弱い介入意図を有していると判定する。車両制御部20は、介入意図判定部18により運転者が強い介入意図を有していると判定された場合であって、モード判定部19によって自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定されたとき、第2の徐変時間T2より長い第1の徐変時間T1を設定する。
なお、手動運転には、運転者の運転を支援する周知の運転支援制御が実行されている場合も含まれる。すなわち、手動運転において、ACC[Adaptive Cruise Control]、LKA[Lane KeepAssist]など運転支援制御としての制御指令値がアクチュエータ7に送信されていてもよい。
[自動運転システムの手動運転の移行処理]
次に、自動運転システム100の手動運転の移行処理を説明する。図4は、手動運転の移行処理を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートの処理は、車両が自動運転制御を実行中である場合に行なわれる。
図4に示すように、自動運転システム100のECU10は、S10として、オーバーライド判定部17によりオーバーライドが行なわれたか否かを判定する。オーバーライド判定部17は、車両の自動運転制御の実行中に、運転操作検出部5の検出した運転者の運転操作に基づいて、上記の判定を行う。ECU10は、オーバーライドが行なわれたと判定されなかった場合(S10:NO)、今回の処理を終了する。その後、ECU10は、一定時間経過後に再びS10の処理を繰り返す。ECU10は、オーバーライドが行なわれたと判定された場合(S10:YES)、S12に移行する。
S12において、ECU10は、介入意図判定部18により運転者が強い介入意図を有しているか弱い介入意図を有しているかを判定する。介入意図判定部18は、運転操作検出部5の検出した運転者の運転操作に基づいて、上記の判定を行う。ECU10は、運転者が弱い介入意図を有していると判定された場合(S12:NO)、S14に移行する。ECU10は、運転者が強い介入意図を有していると判定された場合(S12:YES)、S18に移行する。
S14において、ECU10は、モード判定部19によって実行中の自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたかトリガードエンゲージモードにより開始されたかを判定する。ECU10は、自動エンゲージモードにより開始されたと判定された場合(S14:YES)、S16に移行する。ECU10は、トリガードエンゲージモードにより開始されたと判定された場合(S14:NO)、S18に移行する。
S16において、ECU10は、車両制御部20により手動運転へ移行するための徐変時間Tdecとして第1の徐変時間T1を設定する。その後、ECU10は、S20に移行する。
S18において、ECU10は、車両制御部20により手動運転へ移行するための徐変時間Tdecとして第2の徐変時間T2を設定する。第2の徐変時間T2は、第1の徐変時間T1より短い時間である。その後、ECU10は、S20に移行する。
S20において、ECU10は、車両制御部20により手動運転への移行を行う。車両制御部20は、設定した徐変時間Tdecに合わせて制御指令値Ytを徐々に減少させてゼロにすることで手動運転への移行を完了する。
[自動運転システムの作用効果]
以上説明した一実施形態に係る自動運転システム100によれば、オーバーライドが行なわれたと判定された場合に、自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定された場合には、運転者が強い介入意図を有していると判定された場合又は自動運転制御がトリガードエンゲージモードにより開始されたと判定された場合と比べて、徐変時間Tdecを長くする。従って、自動運転システム100によれば、オーバーライドにおける運転者の介入意図に応じて制御指令値Ytの徐変時間Tdecを変更することができる。
自動運転システム100によれば、運転者が弱い介入意図を有しており、状況によっては自動運転制御を再開したいと思っている場合に、制御指令値Ytがゼロになるまでの時間が長い第1の徐変時間T1が採用されるので、自動運転制御の再開を滑らかに行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
介入意図判定部18は、強い介入意図及び弱い介入意図の他に、中間の介入意図を判定してもよい。すなわち、介入意図判定部18は、運転者が強い介入意図を有しているか、運転者が弱い介入意図を有しているか、運転者が中間の介入意図を有しているかを判定してもよい。
ここで、図5は、操舵速度と徐変時間との関係の他の例を示すグラフである。図5の横軸はオーバーライド判定時における運転者の操舵速度、縦軸は徐変時間Tdecである。図5に、第3操舵速度閾値をdθth1、第4操舵速度閾値をdθth2として示す。第4操舵速度閾値dθth2は、第3操舵速度閾値dθth1より大きい値である。介入意図判定部18は、運転者の操舵速度が第3操舵速度閾値dθth1未満である場合、運転者が弱い介入意図を有していると判定する。介入意図判定部18は、運転者の操舵速度が第3操舵速度閾値dθth1以上であり、第4操舵速度閾値dθth2未満である場合、運転者が中間の介入意図を有していると判定する。介入意図判定部18は、運転者の操舵速度が第4操舵速度閾値dθth2以上である場合、運転者が強い介入意図を有していると判定する。
車両制御部20は、介入意図判定部18により運転者が弱い介入意図を有していると判定された場合、モード判定部19により自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定されれば、徐変時間Tdecとして第1の徐変時間T1を設定する。車両制御部20は、介入意図判定部18により運転者が強い介入意図を有していると判定された場合、徐変時間Tdecとして第2の徐変時間T2を設定する。
車両制御部20は、介入意図判定部18により運転者が中間の介入意図を有していると判定された場合、操舵速度に応じた時間を徐変時間Tdecとして設定する。具体的に、車両制御部20は、操舵速度が第3操舵速度閾値dθth1に近いほど第1の徐変時間T1に近い時間を徐変時間Tdecとして設定する。車両制御部20は、操舵速度が第4操舵速度閾値dθth2に近いほど第2の徐変時間T2に近い時間を徐変時間Tdecとして設定する。車両制御部20は、第1の徐変時間T1と第2の徐変時間T2の間で、予め定められた線形の演算式から徐変時間Tdecを設定する。なお、ここでは、第3操舵速度閾値dθth1と第4操舵速度閾値dθth2の二つの閾値を用いる場合について説明したが、三つ以上の閾値を用いてもよい。また、操舵速度に限られず、操舵角、操舵トルク、アクセルペダルの踏込み量、アクセルペダルの踏込速度、ブレーキペダルの踏込み量、ブレーキペダルの踏込速度についても、二つ以上の閾値を利用した介入意図の判定が可能である。
その他、介入意図判定部18は、モード判定部19により実行中の自動運転制御がトリガードエンゲージモードにより開始されたと判定された場合において、オーバーライド判定部17によりオーバーライドが行なわれたと判定されたときには、運転者の運転操作に関わらず、運転者が強い介入意図を有していると判定してもよい。
また、介入意図判定部18は、モード判定部19により実行中の自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定された場合において、自動運転制御の解除ボタンの操作や自動運転制御を解除するためのシフト操作が行なわれたときには、運転者が弱い介入意図を有していると判定してもよい。
介入意図判定部18は、更に道路の曲率を考慮して判定を行なってもよい。具体的に、介入意図判定部18は、地図データベース4の地図情報と車両位置認識部11の認識した車両の地図上の位置とに基づいて、道路の曲率が曲率閾値以下の位置に車両が位置しているか否かを判定してもよい。介入意図判定部18は、自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定された場合で自動運転制御の解除ボタンの操作や自動運転制御を解除するためのシフト操作が行なわれたときであって、道路の曲率が曲率閾値以下の位置に車両が位置していると判定したとき、運転者の運転操作に関わらず、運転者が弱い介入意図を有していると判定してもよい。
また、介入意図判定部18は、更に車両の周囲の走行環境を考慮して判定を行なってもよい。具体的に、介入意図判定部18は、走行環境認識部12の認識した車両の走行環境に基づいて、車両の周囲の障害物の数が障害物閾値以下であるか否かを判定してもよい。介入意図判定部18は、自動運転制御が自動エンゲージモードにより開始されたと判定された場合で自動運転制御の解除ボタンの操作や自動運転制御を解除するためのシフト操作が行なわれたときであって、車両の周囲の障害物の数が障害物閾値以下であると判定したとき、運転者の運転操作に関わらず、運転者が弱い介入意図を有していると判定してもよい。