以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本実施形態のゴム組成物は、天然ゴムと、シリカと、シランカップリング剤とを含むゴム組成物であって、上記ゴム組成物のトルエン不溶分における上記シランカップリング剤の相互作用率が90%以上であり、上記ゴム組成物中のシランカップリング剤の含有量及びシリカの含有量は、下記式(A)におけるCが0.00045〜0.00065となる含有量である、ゴム組成物である。
C=(シランカップリング剤の含有量(単位:phr))/(シリカの含有量(単位:phr)×D(m2/g)) (A)
ここで、DはISO5794−1:2010に準じて測定したシリカのCTAB表面積を示す。
本明細書において、シランカップリング剤の相互作用率は下記式により求められる。
シランカップリング剤の相互作用率(%)=(トルエン不溶分に含まれるシランカップリング剤の質量(g)/ゴム組成物に含まれるシランカップリング剤の質量(g)×100
また、トルエン不溶分は、ゴム組成物をトルエンに浸漬した際にトルエンに溶解しない成分を意味し、ゴム組成物をトルエンに十分に浸漬した後に濾過して乾燥させて得られるものである。トルエン不溶分は、より詳細には、実施例に記載の方法に準じて得られる。トルエン不溶分は、シリカと相互作用したシランカップリング剤を含有すると考えられ、その含有量が多いほど、すなわち相互作用率が高いほど、シリカと天然ゴムとの間を連結させ、シリカの凝集を防ぎ、分散性を向上させる。トルエン不溶分は、未加硫のゴム組成物をトルエンに浸漬した際にトルエンに溶解しない成分であると、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から好ましい。
シランカップリング剤の相互作用率が90%以上であることは、ゴム組成物に含まれるシランカップリング剤の大部分がシリカと天然ゴムとの間の相互作用に寄与することを意味する。その相互作用率が90%以上であることにより、上記式(A)におけるCが0.00045〜0.00065であることと相俟って、シリカによる天然ゴムに対する補強効果をより有効かつ確実に奏することができると共に、シリカと天然ゴムとの間の親和性が高まるので、ゴム組成物は低ロス性にも優れたものとなる。なお、シランカップリング剤の相互作用率の上限は特に限定されず、例えば100%であってもよく、98%であってもよい。
シランカップリング剤の相互作用率を90%以上に調整する方法は特に限定されないが、例えば、ゴム組成物にアミノグアニジン類を添加する方法が挙げられる。また、それに加えて、ゴム組成物を得るために各成分の混合物を混練する際の最高温度を120〜190℃に制御する方法、及び、アミノグアニジン類を添加する際の温度を120℃以下にする方法が挙げられる。さらには、相互作用率が90%以上になるように、加硫前の混練時間を調整する方法が挙げられる。
アミノグアニジン類としては、例えば、下記式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ここで、式中、Xはグアニジン部位と塩を形成する酸である。
式(1)中のXは、グアニジン部位と塩を形成可能な酸であればよく、その種類は限定されないが、例えば、有機酸(酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等)や無機酸(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、硫酸、リン酸、炭酸、スルファミン酸、過塩素酸、ケイ酸、ホウ酸、フェニルホスフィン酸等)等が挙げられる。これらの中でも、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、炭酸が好ましい。
上記式(1)で表される化合物は、その分子内に存在する複数の窒素原子によって共役酸のプラスの電荷が分散安定化されるため、強い塩基性を示し、通常は酸との複合体(塩)で存在する。上記式(1)で表される化合物として、例えば、アミノグアニジン炭酸塩(融点162℃(分解))、アミノグアニジン塩酸塩(融点165℃)、アミノグアニジンヨウ化水素酸塩(融点115−118℃)、アミノグアニジン臭化水素酸塩、アミノグアニジンヘミ硫酸塩(融点207℃)、アミノグアニジン硝酸塩(融点145−147℃)、アミノグアニジンシュウ酸塩(融点209℃)、アミノグアニジンリン酸塩(融点144℃)、アミノグアニジン酢酸塩、アミノグアニジンスルファミン酸塩、アミノグアニジン過塩素酸塩、アミノグアニジンケイ酸塩、アミノグアニジンホウ酸塩、及びアミノグアニジンフェニルホスフィン酸塩が挙げられる。
上記式(1)で表される化合物は、公知の方法で得ることができ、市販品を入手してもよい。
ここで、式中、Xはグアニジン部位と塩を形成する酸であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルケニル基(これらの基はいずれも硫黄原子、窒素原子、酸素原子を含む置換基を1つ以上有するものを含む)及び水素原子からなる群より選択されるいずれかである。
式(2)中のXは、塩酸、硫酸、炭酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、スルファミン酸、過塩素酸、ケイ酸、ホウ酸、フェニルホスフィン酸が挙げられる。これらのうち、原料化合物のグアニジン塩の商業的な入手が容易な塩酸、硫酸、炭酸、硝酸が好ましく、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、炭酸がより好ましい。
R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルケニル基(これらの基はいずれも硫黄原子、窒素原子、酸素原子を含む置換基を1つ以上有するものを含む)及び水素原子からなる群より選択されるいずれか1種以上であり、これらの中でも水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基又は水素原子であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが更に好ましい。このような置換基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、ビニル基、1−メチルビニル基、1−エチルビニル基、1−プロピルビニル基、2−メチルビニル基、2−エチルビニル基、2−プロピルビニル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、ビニル基、1−メチルビニル基、1−エチルビニル基、2−メチルビニル基、2−エチルビニル基等が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ビニル基、1−メチルビニル基、1−エチルビニル基、2−メチルビニル基、2−エチルビニル基がより好ましい。
本実施形態の上記式(2)で表される化合物として具体的には、エチリデンアミノグアニジン塩、プロピリデンアミノグアニジン塩、ブチリデンアミノグアニジン塩、3−メチルブチリデンアミノグアニジン塩、1−メチルエチリデンアミノグアニジン塩、1−メチルプロピリデンアミノグアニジン塩、1−メチルブチリデンアミノグアニジン塩、1−エチルプロピリデンアミノグアニジン塩、1−イソプロピル−2−メチルプロピリデンアミノグアニジン塩、ペンチリデンアミノグアニジン塩、1,3−ジメチルブチリデンアミノグアニジン塩、1,2−ジメチルプロピリデンアミノグアニジン塩、1−メチルブチリデンアミノグアニジン塩、1−メチルペンチリデンアミノグアニジン塩、2−メチルプロピリデンアミノグアニジン塩、1−メチルヘキシリデンアミノグアニジン塩、アリリデンアミノグアニジン塩、2−メチルアリリデンアミノグアニジン塩、2−ブテニリデンアミノグアニジン塩、2,6−ジメチル−4−へプチリデンアミノグアニジン塩、2−フリルメチリデンアミノグアニジン塩、ベンジリデンアミノグアニジン塩、4−ジメチルアミノフェニルメチレンアミノグアニジン塩、4−メトキシフェニルメチレンアミノグアニジン塩、4−ヒドロキシフェニルメチレンアミノグアニジン塩、1−フェニルエチリデンアミノグアニジン塩、1−メチル−3−フェニルアリリデンアミノグアニジン塩、ジフェニルメチレンアミノグアニジン塩、及び1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ベンジリデンアミノグアニジン塩が挙げられる。これらの中でも好ましい化合物としては下記式(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)及び(13)で表されるものが挙げられる。
上記式(2)で表される化合物は、公知の方法で得ることができ、例えば、国際公開第2015/190504号に記載の方法により製造することができる。
ここで、式中、Xは、グアニジン部位と塩を形成している酸である。
上記式(3)で表される化合物は、その分子内に存在する複数の窒素原子によって共役酸のプラスの電荷が共鳴安定化されるため、強い塩基性を示し、通常は酸との複合体(塩)で存在する。上記式(3)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ジアミノグアニジン塩酸塩、1,3−ジアミノグアニジンヨウ化水素酸塩、1,3−ジアミノグアニジン臭化水素酸塩、1,3−ジアミノグアニジン硫酸塩、1,3−ジアミノグアニジン硝酸塩、1,3−ジアミノグアニジンシュウ酸塩、1,3−ジアミノグアニジンリン酸塩、1,3−ジアミノグアニジン炭酸塩、1,3−ジアミノグアニジン酢酸塩、1,3−ジアミノグアニジンスルファミン酸塩、1,3−ジアミノグアニジン過塩素酸塩、1,3−ジアミノグアニジンケイ酸塩、1,3−ジアミノグアニジンホウ酸塩、及び1,3−ジアミノグアニジンフェニルホスフィン酸塩が挙げられる。これらの中でも、商業的に入手が容易な1,3−ジアミノグアニジン塩酸塩、1,3−ジアミノグアニジン硫酸塩、1,3−ジアミノグアニジン炭酸塩、及び1,3−ジアミノグアニジン硝酸塩が好ましく、更には、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1,3−ジアミノグアニジン塩酸塩、及び1,3−ジアミノグアニジン炭酸塩が好ましい。
上記式(3)で表される化合物は、公知の方法で得ることができ、市販品を入手してもよい。
アミノグアニジン類の使用量は、天然ゴムの総量(100質量%)に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜3.0質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ゴム組成物中のシランカップリング剤の含有量及びシリカの含有量は、上記式(A)におけるCが0.00045〜0.00065となる含有量であることにより、相互作用率が90%以上であることと相俟って、ゴム組成物におけるシランカップリング剤の配合量が適切な量となり、ゴム組成物の補強性の向上と低ロス性とのバランスをより良好なものとなる。Cが0.00045以上であることにより、シリカにおける天然ゴムと相互作用し得る部分に対して、シランカップリング剤の量が十分多くの量となる。一方、Cが0.00065以下であることにより、シリカと天然ゴムとの間の相互作用に寄与し得ないシランカップリング剤の量が十分少ない量となる。
シランカップリング剤の相互作用率と上記式(A)におけるCとの相関性は下記のとおりである。すなわち、上記式(A)におけるCTAB表面積は、シリカの非孔性の表面を反映しており、天然ゴムと相互作用するために接触しうるシリカの量的関係性を示すファクターである。一方で、シランカップリング剤は天然ゴムとシリカの両者と相互作用することにより、天然ゴムとシリカとの間の相互作用を強めてゴム組成物の補強性を向上させ、低ロス性の向上を目指すものである。ゴム組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、シリカの表面積をある一定の厚みで覆うことができる量であることが肝要であり、シリカのCTAB表面積とシリカの含有量とを変数とした上記式(A)におけるCが0.00045〜0.00065となることが望ましい。ただし、シランカップリング剤の厚みを適切な範囲にするには、シランカップリング剤の相互作用率が90%以上であることが好ましい。すなわち、上記式(A)におけるCが0.00045〜0.00065となる量のシランカップリング剤をゴム組成物に含有させても、シランカップリング剤の相互作用率が90%以上でなければ、シランカップリング剤が天然ゴムとシリカとの間の相互作用に十分寄与したとはいえず、ゴム特性の向上も期待通りとはいえない。また、シランカップリング剤の相互作用率が90%以上であっても、上記式(A)におけるCが0.00045〜0.00065とならなければ、本発明による作用効果を奏するのは困難となる。例えば、Cが0.00045を下回る場合、そもそものシランカップリング剤の含有量が不足するため、シリカ表面を覆うシランカップリング剤の厚みが十分でなくなるか、あるいは、シランカップリング剤がシラン表面を覆わない部分も存在する。また、Cが0.00065を超える場合、シリカと天然ゴムとの間の相互作用に寄与し得ないシランカップリング剤の量が増え、高価なシランカップリング剤を過度な量で含有することになるため、経済的な面で問題が生じる。このように、上記式(A)におけるCとシランカップリング剤の相互作用率は、補強性及び低ロス性といったゴムの特性を経済的負担なく実現させるために、その両方を本発明における範囲内に設定する必要がある。
Cを0.00045〜0.00065とするには、ゴム組成物中のシランカップリング剤の含有量及びシリカの含有量を調整する他、シリカのCTAB表面積を制御したり、CTAB表面積が所望の範囲にあるシリカを選択したりする方法が挙げられる。
天然ゴムとしては、特に限定されないが、天然ゴムラテックスを凝固、乾燥して得られるシートゴム、ブロックゴムのいずれの形状も原料として用いることができる。シートゴムとしては、特に限定されないが、「天然ゴム各種等級品の国際品質包装基準」(通称グリーンブック)の格付けにより分類した、シートを煙で燻しながら乾燥させたリブドスモークドシート(RSS)、シートを熱風乾燥させたエアドライシート(ADS)凝固物を充分に水洗し熱風で乾燥させたクレープ等が挙げられ、この他に、TCラバー(Technically Classified Rubber)、SPラバー(Super Processing Rubber)、MGラバー、PPクレープ、軟化剤、しゃく解剤添加ゴム等が挙げられる。ブロックゴムとしては、特に限定されないが、マレーシアのSMR(Standard Malaysian Rubber)、インドネシアのSIR、タイのTTR、スリランカのSCR、シンガポールのSSR等が挙げられる。これら天然ゴム原材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、天然ゴムラテックスを酸化処理した後に凝固させたゴムを用いてもよく、天然ゴムラテックスの酸化は公知の方法で行うことができる。例えば、特開平8−81505号公報の記載に従って、有機溶剤に1.0〜30質量%の割合で溶解した天然ゴムラテックスを金属系酸化触媒の存在下で空気酸化することによって天然ゴムラテックスの酸化を行うことができる。また、特開平9−136903号公報に記載されているように、天然ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加して、酸化を行うこともできる。酸化方法として空気酸化を行う場合は、特開平9−136903号公報に記載されているように、空気酸化を促進するためにラジカル発生剤の存在下で空気酸化を行ってもよい。ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤、アゾ系ラジカル発生剤が好適に用いられる。
本実施形態におけるシリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、及び乾式シリカ(無水ケイ酸)を用いることができる。シリカは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
シリカのCTAB表面積は、60〜300m2/gであることが好ましく、100〜300m2/gであるとより好ましい。シリカのCTAB表面積が60m2/g以上であれば、耐摩耗性が向上する。また、シリカのCTAB表面積が300m2/g以下であれば、未加硫ゴム組成物の加工性が向上することとなる。CTAB表面積(CTAB吸着比表面積)は、ISO5794−1:2010に準じて測定される。CTAB表面積がこの範囲内であるシリカとしては、沈降シリカが挙げられ、その市販品として例えば、Rhodia(株)製、商品名「Zeosil HRS 1200」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=200m2/g)、商品名「Zeosil 1115」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=120m2/g)、商品名「Zeosil 115」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=110m2/g)、商品名「Zeosil 125」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=115m2/g)、商品名「Zeosil 1165」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=160m2/g)、及び、東ソー・シリカ(株)製、商品名「ニップシールAQ」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=160m2/g)が挙げられる。
本実施形態のゴム組成物におけるシリカの含有量は、特に限定されるものではないが、加工性を悪化させず、充分な低ロス効果又は補強効果が得られる含有量として、天然ゴム100質量部に対して5.0〜100質量部の範囲にあることが好ましく、20〜80質量部の範囲にあることがより好ましい。
本実施形態のゴム組成物に用いる充填材として、上記のシリカの他に、補強効果を高めるため、カーボンブラックを添加することもできる。なお、カーボンブラックは、上記のシリカとは別異の充填材であり、シリカとは明確に区別されるものである。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFといった種々のグレードのもの等が挙げられる。
また、本実施形態のゴム組成物は、シリカ以外の無機充填材を添加しても何ら問題ない。そのような無機充填材として、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム(クレー)、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ケイ酸カルシウム、亜鉛華等が挙げられる。
本実施形態のシランカップリング剤としては、特に限定されないが、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、分子内に硫黄原子を含むシランカップリング剤である含硫黄シランカップリング剤が好ましく、ポリスルフィド系シランカップリング剤及びチオエステル系シランカップリング剤がより好ましい。含硫黄シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、及びビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドが挙げられる。シランカップリング剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。その含有量は、上記式(A)におけるCが0.00045〜0.00065となるよう、シリカの含有量に合わせて決定することが好ましい。
本実施形態のゴム組成物には、上記天然ゴム、シリカ及びシランカップリング剤の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤として、特に限定されないが、老化防止剤、軟化剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等を、本実施形態の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これらの配合剤は、市販品を好適に使用することができる。
老化防止剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、ナフチルアミン系、p−フェニレンジアミン系、ヒドロキノン誘導体、ビス,トリス,ポリフェノール系、ジフェニルアミン系、キノリン系、モノフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系等を挙げることができ、更なる老化防止効果の点で、p−フェニレンジアミン系、ジフェニルアミン系のアミン系老化防止剤が好ましい。ジフェニルアミン系老化防止剤としては、特に限定されないが、4,4′−ビス(α−メチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、ジ(4−オクチルフェニル)アミン等が挙げられ、これらの中で、更に高い老化防止効果の点で4,4′−ビス(α−メチルベンジル)ジフェニルアミンがより好ましい。また、p−フェニレンジアミン系老化防止剤としては、特に限定されないが、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N,N′−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N′−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N′−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられ、これらの中で、更に高い老化防止効果及びコスト面からN−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましい。老化防止剤のゴム組成物における含有量は、ゴム組成物中における天然ゴムの0.1〜5.0質量%であることが好ましい。
軟化剤の種類としては、特に限定されないが、石油やコールタール由来の鉱物油系軟化剤、脂肪油や松樹由来の植物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤等が挙げられる。
加硫促進剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、メルカプトベンゾチアゾール、2,2′−ジベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N′−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系、テトラメチルチオラムジスルフィド、テトラアセチルチオラムジスルフィド、テトラブチルチオラムジスルフィド、テトラベンジルチオラムジスルフィド等のチオラム系、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その含有量は天然ゴム100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましい。加硫促進助剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸、亜鉛華が挙げられる。
加硫剤の種類としては、特に限定されないが、通常当業界で用いられるものを適宜使用することができ、硫黄、過酸化物等が挙げられるが、好ましくは硫黄である。加硫剤の含有量は天然ゴム100質量部に対し、0.1〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3.0質量部である。加硫剤の含有量が0.1質量部以上であることにより、十分な加硫が得られる傾向にあり、また、加硫剤の含有量が5.0質量部以下であることにより、いわゆるスコーチ時間が短くなることと、混練中に天然ゴムが焦げてしまうことを抑制できる傾向にある。
本実施形態のゴム組成物は、例えば下記の製造方法により製造される。ただし、製造方法はこれに限定されない。すなわち、その製造方法は、天然ゴムと、シリカと、シランカップリング剤と、アミノグアニジン類とを混練してゴム組成物を得る混練工程(A)を有する。その製造方法は、この混練工程(A)の前に、天然ゴムを予備練りする工程(素練り工程)を有してもよい。また、その製造方法は、さらに上記ゴム組成物と、加硫剤と、加硫促進剤とを混練して未加硫のゴム組成物を得る混練工程(B)を有してもよい。さらに、その製造方法は、未加硫のゴム組成物を加硫して加硫ゴム組成物を得る加硫工程を有してもよい。天然ゴム、シリカ、シランカップリング剤、アミノグアニジン類、硫黄、及び加硫促進剤については既に説明したので、ここでの説明は省略する。
加硫剤及び加硫促進剤は、混練工程(B)において混練手段に投入することが好ましい。これにより、スコーチが早まるのをより確実に防止することができる。また、ゴム組成物に含まれ得る老化防止剤及び軟化剤は、混練工程(A)において混練手段に投入することが好ましい。
天然ゴムを予備練りする素練り工程における予備練りは、天然ゴムの粘度(分子量)をせん断力により低下させ、任意の条件に制御するために行う。その混練手段としては、ラボプラストミル、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、インターナルミキサー、ローラー、ニーダールーダー、二軸押出機、及びミキシングロール等が例示できる。また、素練り工程の温度や混練時間は、練られた天然ゴムを所望の粘度(または分子量)にすることができれば制限はなく、経済的な諸事情に併せて適宜決めればよい。
混錬工程(A)での混練手段としては、相互作用率を向上させる観点から、混練機を用いて混合することが好ましく、そのような混練機としては、ラボプラストミル、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、インターナルミキサー、ローラー、ニーダールーダー、二軸押出機、及びミキシングロール等が例示できる。また、各原料を混練手段に投入する順番については特に制限はないが、天然ゴムをまず投入し、次いで、その他の原料を投入することが望ましい。なお、その他の原料の投入方法としては、特に限定されないが、例えば、原料が粉体である場合は、その粉体をそのまま投入する方法、原料を溶媒に溶解させて溶液として投入する方法、及び原料を含むエマルジョン溶液として投入する方法が挙げられる。また、混錬工程(A)での混練は、効率上、1段階での混錬が望ましいが、必要に応じて複数の段階に分けてもよい。
混練工程(A)における混練温度は100℃〜200℃であると好ましく、110℃〜190℃であるとより好ましく、120℃〜180℃であるとさらに好ましい。混練温度を上記範囲内に調整することにより、シリカとシランカップリング剤とをより有効かつ確実に相互作用させることができる。また、混練工程(A)における混練時間は、2分間〜10分間であると好ましい。混練時間を上記範囲内に調整することにより、シリカとシランカップリング剤とをより有効かつ確実に相互作用させることができる。
混錬工程(B)での混練手段としては、混練工程(A)において例示した混練機を用いることができる。また、混練工程(B)における混練温度は、加硫の進行を抑制する観点から、100℃以下であることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物の製造方法において、上記以外の条件は公知のものであればよい。
本実施形態のゴム組成物は、タイヤの材料として用いることができ、特にタイヤ部材のトレッドに用いることが好ましい。上記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、低燃費性に優れる。なお、本実施形態のタイヤは、上述のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限はなく、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ミキサー内を30℃に加熱したラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に、天然ゴム(RSS#1、加藤産商(株)製)を投入し、5分間混練することにより素練りを行った。素練り後の天然ゴムを103℃に加熱した上記ラボプラストミルに投入した。次いで、そのラボプラストミル内に、アミノグアニジン炭酸塩(東京化成工業(株)製)、酸化亜鉛(和光純薬工業(株)製)、ステアリン酸(和光純薬工業(株)製)、シリカ(商品名「ULTRASIL7000GR」、エボニック ジャパン(株)製、CTAB表面積=160m2/g)、及びシランカップリング剤(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック ジャパン(株)製)を投入し、混練温度が150℃に達するまで混練後、排出し、ゴム組成物を得た(以下、この工程を「混練工程(A)」と表記する。)。混練時間は合計で540秒間であった。なお、各成分の添加量は、天然ゴム100phrに対して、表1に示すとおりである。
得られたゴム組成物を60℃に加熱した上記ラボプラストミルに投入し、硫黄(細井化学工業(株)製、平均粒径:250μm)と、加硫促進剤としてCBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、和光純薬工業(株)製)及びDPG(ジフェニルグアニジン、和光純薬工業(株)製)とを投入後、3分間混練して、未加硫のゴム組成物を調製した(以下、この工程を「混練工程(B)」と表記する。)。なお、各成分の添加量は、天然ゴム100phrに対して、表1に示すとおりである。
続いて、プレス機(北川精機(株)製)を用いて145℃、10MPaの条件にて、上記未加硫のゴム組成物を30分間加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
(実施例2)
各成分の添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にした。混練工程(A)における混練時間は合計で513秒間であった。
(実施例3)
各成分の添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にした。混練工程(A)における混練時間は合計で457秒間であった。
(実施例4)
各成分の添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にした。混練工程(A)における混練時間は合計で531秒間であった。
(比較例1)
各成分の添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にした。混練工程(A)における混練時間は合計で541秒間であった。
(比較例2)
各成分の添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にした。混練工程(A)における混練時間は合計で540秒間であった。
混練工程(A)で得られたゴム組成物に対して、下記の方法でトルエン不溶分量及びシランカップリング剤の相互作用率を導き出した。そして、更に混練工程(B)、加硫工程を経て得られた加硫ゴム組成物に対して、発熱性及び補強性を評価した。
(1)トルエン不溶分量
混練工程(A)を経たゴム組成物0.60gを2mm角に裁断して質量を測定した後、150mLのトルエン中に室温下で72時間浸漬した。その後、桐山ロート用濾紙No.5Cを用いて、トルエン不溶分とトルエン可溶分とを分離した後、トルエン不溶分を50℃にて真空乾燥し、更に秤量して、トルエン不溶分量(質量%)を下記式により求めた。
トルエン不溶分量(質量%)=(乾燥後のトルエン不溶分の質量(g)/ゴム組成物の質量(g))×100
(2)シランカップリング剤の相互作用率
トルエン不溶分5〜10mgを試料として、燃焼イオンクロマトグラフィー(株式会社ダイヤインスツルメンツ社製型式名「AQF−100」、及び、日本ダイオネックス株式会社製型式名「ICS−1500」)により、試料に含まれる硫黄分量を測定した。得られた硫黄分量の結果から、下記式により、シランカップリング剤の相互作用率を求めた。
シランカップリング剤の相互作用率(%)=(S/Sr)×トルエン不溶分量(質量%)
ここで、Sはトルエン不溶分に含まれる硫黄分量(質量%)を示し、Srは、混練工程(A)を経たゴム組成物に含まれる硫黄分量(質量%)を示す。上記式により求められるシランカップリング剤の相互作用率は、ゴム組成物に含まれるシランカップリング剤の質量に対するトルエン不溶分に含まれるシランカップリング剤の質量を百分率で示すものと同義である。
(3)発熱性
上記加硫ゴム組成物に対し、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル(株)製型式名「DMS6100」)を用い、温度50℃、歪み0.5%、周波数10Hzの条件で、貯蔵弾性率(E′)及び損失弾性率(E″)を測定し、それらから損失正接(tanδ)を求めた。比較例1における損失正接の値を100として、それぞれの例の損失正接の値を指数値にて表示した。指数値が小さい程、ゴム組成物の発熱性が低く、ヒステリシスロスが小さい(すなわち低ロス性に優れる)ことを示す。
(4)補強性
上記加硫ゴム組成物に対し、JIS K6251:2010に準拠して、オートグラフ(SHIMADZU製作所製型式名「AGS−X」)を用いて引張試験を行い、引張応力を測定した。試験片の伸びが100%になるまで引っ張った際の応力をM100、試験片の伸びが300%になるまで引っ張った際の応力をM300とし、M300/M100を算出した。比較例1におけるM300/M100値を100として、それぞれの例のM300/M100の値を指数値にて表示した。指数値が大きいほど、補強性に優れることを意味する。
ここで、表1中の各成分の配合量はphrで示されているが、これは質量基準であり、表1においては質量部と同義である。
表1に示す結果から、上記式(A)におけるCの値が0.00045〜0.00065の範囲にあり、かつシランカップリング剤の相互作用率が90%以上であることにより、ゴム組成物は、その補強性及び発熱性の両方に優れたものになることがわかった。