JP6772522B2 - 粘弾性体のシミュレーション方法、粘弾性体のシミュレーション装置およびプログラム - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、押出成形におけるゴムまたはプラスチック等の粘弾性流体の流動解析に用いられる流動シミュレーション方法が記載されている。
シミュレーション方法としては、ステップ11において、ダクトDの初期計算格子を生成し、次いで、ステップ12において、初期計算格子の全計算領域の格子点に初期値として一様流の条件を付与して、ステップ13において、純粘性非ニュートン流体での数値計算により流れ場の解を求める予備解析を実施する。そして、ステップ14において、格子点の移動による解適合格子法により、計算格子を更新する。ステップ13において純粘性非ニュートン流体の非定常解、即ちある物理時刻での解を求める。
計算格子を更新した後、ステップ15において、更新した計算格子に、初期値として、上記ステップ13の純粘性非ニュートン流体の計算で得られた非定常解を対応する各計算格子点に付与して、ステップ16において、粘弾性流体についての数値計算により、ある物理時刻tでの流れ場の解を求める。これにより、ある物理時刻での粘弾性流体での速度分布を得ることができる。なお、物理時刻tの設定は、解析対象及び目的等に応じて適宜に設定することができる。
タイヤのトレッドゴム等のゴム部材の押出しにおいては、未加硫ゴムが流路内で環流していると局部的に滞留時間が長くなるため、ゴム焼けが生じて均質な押出しが妨げられる。一方で、押出機内において実際に環流部を確認することは容易ではないことから上述のシミュレーション方法が有効である。
しかしながら、上述の特許文献1に記載の粘弾性流体のシミュレーション方法では、押出し前の状態は考慮されているが、押出し後の変形が考慮されておらず、押出し後の変形を予測することができないのが現状である。
流体解析を実行する工程は、粘弾性体の温度変化をパラメータに加えたことが好ましい。構造解析を実行する工程は、粘弾性体の温度変化をパラメータに加えたことが好ましい。粘弾性体は、例えば、未加硫ゴムである。
解析部は、粘弾性体の温度変化をパラメータに加えて流体解析を実行することが好ましい。解析部は、粘弾性体の温度変化をパラメータに加えて構造解析を実行することが好ましい。粘弾性体は、例えば、未加硫ゴムである。
図1は本発明の実施形態の粘弾性体のシミュレーション方法に用いられるシミュレーション装置を示す模式図であり、図2は本発明の実施形態の粘弾性体のシミュレーション方法を示すフローチャートである。
粘弾性体とは、例えば、未加硫ゴム、および樹脂等である。
処理部12は、制御部32により制御される。また、処理部12において条件設定部20、モデル作成部22、解析部24、演算部26および表示制御部30はメモリ28に接続されており、条件設定部20、モデル作成部22、解析部24、および演算部26のデータがメモリ28に記憶される。
各種のパラメータとしては、流体解析モデルについては、例えば、流体解析モデル内の解析領域形状定義、流体解析モデルのメッシュ作成条件、境界条件、ならびに流体解析モデルの内の速度条件および圧力条件等である。
粘弾性モデルについては、例えば、粘性パラメータおよび粘弾性パラメータ等である。
構造解析モデルについては、例えば、解析領域形状定義、構造解析モデルのメッシュ作成条件、初期形状の定義、構造解析の対象の超弾性パラメータ、ならびに構造計算の際の境界条件および計算条件等である。
また、後述するように、流線上の粘弾性応力から、構造解析モデルに適用する構造解析入力用応力を演算するが、この流線の数および流線の間隔等の流線の設定条件、ならびに構造解析入力用応力の設定条件等がパラメータとして、条件設定部20に設定される。
流体解析における粘弾性モデルには、例えば、PowerLowモデルであり、粘弾性モデルは、例えば、Oldroyd−Bモデル、Giesekusモデル、Phan−Thien−Tannerモデルを用いることができる。
流体解析の計算方法としては、例えば、有限差分法、有限要素法および格子ボルツマン法等による定常計算または非定常計算を用いることができる。
構造解析の計算方法としては、例えば、有限差分法または有限要素法が用いられる。弾性特性としては、例えば、線形材料特性、または超弾性材料特性がある。
未加硫ゴムの物性値としては、例えば、粘性がパラメータとして設定される。
また、未加硫ゴムは、ゴム単相であっても、ゴム単相に限定されるものではなく、カーボンブラックまたはシリカ等のフィラーを含んだゴムでもよい。
構造解析モデルは、未加硫ゴムが流路から出た状態の形状を示すものであり、流体解析モデルから出た状態の形状を示すものである。また、粘弾性モデルは、未加硫ゴムの粘弾性を示すものである。
例えば、未加硫ゴム等の粘弾性体の流路を複数の節点で構成される有限個の要素に分割して流体解析モデルを構成する。
流体解析モデルを構成する要素は、例えば、2次元平面では四辺形要素、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等のコンピュータで解析可能な要素とする。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標を用いて、2次元モデルでは2次元座標を用いて逐一特定される。
流体解析モデルおよび粘弾性モデルでは、解析条件について、粘弾性体、例えば、未加硫ゴムの粘性を20000(Pa・s)、流入量を4000(mm3/s)とし、壁面をnon−slip条件とし、粘性モデルをPowerLowモデル、粘弾性モデルをOldroyd−Bモデルの条件とする。
また、流体解析において、未加硫ゴム等の粘弾性体の温度変化に伴う物性値の変化、例えば、未加硫ゴムの物性値の温度依存性をパラメータとして設定してもよい。また、構造解析において、未加硫ゴム等の粘弾性体の温度変化に伴う物性値の変化、例えば、未加硫ゴムの物性値の温度依存性をパラメータとして設定してもよい。
解析部24は、未加硫ゴム等の粘弾性体の温度変化に伴う物性値の変化、例えば、未加硫ゴムの物性値の温度依存性をパラメータに加えて流体解析を実行することもできる。
また、解析部24は、構造解析モデルにおいて、構造解析入力用応力を初期応力として構造解析を実行するものである。構造解析入力用応力を初期応力することについては、後に詳細に説明する。この場合、未加硫ゴム等の粘弾性体の温度変化に伴う物性値の変化、例えば、未加硫ゴムの物性値の温度依存性をパラメータに加えて構造解析を実行することもできる。
解析部24で得られた流体解析の結果、構造解析の結果は、メモリ28に記憶される。
演算部26での演算方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が適宜利用可能である。
上述の構造解析入力用応力としては、流線上での粘弾性応力の履歴を考慮することが好ましい。流線上の各位置での粘弾性応力が適宜用いられる。
例えば、構造解析入力用応力としては、流線上の粘弾性応力の最大値、流線上の粘弾性応力の最小値、流線上の粘弾性応力の平均値、流線上の流体移動時間、および流線上の流速を用いることができ、これらのうち、少なくとも1つを用いる。これらに加えて、未加硫ゴム等の粘弾性体の緩和時間を構造解析入力用応力として用いることもできる。
図2は、本発明の実施形態の粘弾性体のシミュレーション方法を示すフローチャートである。図3は本発明の実施形態の粘弾性体のシミュレーション方法に用いられる未加硫ゴムの押出機の一例を示す模式的斜視図であり、図4は構造解析モデルの一例を示す模式図である。
本実施形態では、未加硫ゴムの押出機を模した図3に示す流体解析モデル40と、図4に示す構造解析モデル46を例にして、粘弾性体のシミュレーション方法について説明する。図3に示す流体解析モデル40および図4に示す構造解析モデル46は、いずれもコンピュータで解析可能なモデルである。
図4に示す構造解析モデル46は、図3に示すノズル部40bの流出部40dの流出口の形状を断面とした円筒形状のモデルであり、図4の構造解析モデル46は中心軸Cを回転中心とした軸対称モデルであるため、中心軸Cに対して片側しか示していない。構造解析モデル46は、例えば、メッシュ形状が四角のメッシュモデルである。
次に、モデル作成部22で、流体解析モデル40の内部を流動する粘弾性モデルを設定する(ステップS12)。設定した粘弾性モデルはメモリ28に記憶される。
次に、解析部24で、粘弾性モデルに基づき、流体解析モデル40の内部を流動する流体解析を実行し(ステップS14)、流体解析モデル40内の未加硫ゴムの流動を解析する。ステップS14では、例えば、汎用流体解析ソフトAcuSolveが用いられる。
次に、ステップS14で得られた未加硫ゴムの流動の解析結果(図5参照)について、解析部24にて図6に示すように流線44を求める。流線44は公知の方法で求めることができる。流線44は、図7に拡大して示すように所定の間隔で設定されるものである。流線44の設定する数、および流線44の間隔は、流体解析モデル40の形状、計算精度等に応じて適宜決定されるものである。
なお、構造解析入力用応力として、流体解析における流線44上の粘弾性応力の最大値、流体解析における流線44上の粘弾性応力の最小値、流体解析における流線44上の粘弾性応力の平均値、流体解析における流線44上の流体移動時間、および流体解析における流線44上の流速のうち、少なくとも1つを用いることが好ましい。これにより、未加硫ゴムの加工後の未加硫ゴム内の応力を簡便に算出することができ、シミュレーションを効率的に実施できる。
さらには、未加硫ゴムの応力緩和時間を用いてもよい。この場合、構造解析入力用応力は下記数式1で表される。下記数式1において、tvは流線上の最大流速の逆数、τは未加硫ゴムの応力緩和時間(秒)、σrは流体解析における流線上の粘弾性応力の最大値と最小値の差である。
構造解析入力用応力を演算した後(ステップS16)、次に、条件設定部20に設定された上述の各種のパラメータに基づき、モデル作成部22で、図4に示す構造解析モデル46を作成する(ステップS18)。作成した図4に示す構造解析モデル46のデータはメモリ28に記憶される。
次に、構造解析モデルにおいて、上述の構造解析入力用応力を初期応力とし、図4に示す構造解析モデル46に初期応力を与える。この場合、構造解析モデル46の各メッシュに対して下記表1に示すように初期応力値を与える。なお、下記表1は構造解析モデル46のメッシュの一部を示すものである。
図8は、図3の流出部40dから未加硫ゴムが押し出された直後の未加硫ゴム体50の初期状態を示す。未加硫ゴム体50は粘弾性体成形体である。
図8に示す未加硫ゴム体50の端部50dは平面である。この初期状態から時間が経過すると、図9に示す未加硫ゴム体52のように端部52dの中央部が凹む。この状態は、実際の現象を捉えていることを確認している。このように粘弾性体のシミュレーション方法は、実際の現象を捉えることができ、高い精度のシミュレーションを実現することができる。
また、ステップS20において、未加硫ゴム等の粘弾性体の温度変化をパラメータに加えて、例えば、未加硫ゴムの物性値の温度依存性を加えて構造解析を実行することもできる。この場合、未加硫ゴムの物性(弾性、粘性)の温度依存性を考慮することで、未加硫ゴムの変形予測が向上する。これにより、シミュレーション精度が向上する。
なお、温度には、例えば、熱伝導解析により計算した結果を用いる。未加硫ゴム等の粘弾性体の力学物性を温度の関数として定義する。さらには、上述の未加硫ゴム等の粘弾性体の温度変化をパラメータには、未加硫ゴム等の粘弾性体の表面と空気との熱伝達を加えてもよい。未加硫ゴム等の粘弾性体の表面から空気への放熱等の熱伝達を考慮することで、シミュレーション精度が向上する。
12 処理部
14 入力部
16 表示部
20 条件設定部
22 モデル作成部
24 解析部
26 演算部
28 メモリ
30 表示制御部
32 制御部
40、54 流体解析モデル
42、54 流体解析モデル
46、56 構造解析モデル
50、52 未加硫ゴム体
Claims (11)
- コンピュータで解析可能な、流入部と流出部を有する流体解析モデルにおける粘弾性体の、コンピュータで解析可能な粘弾性モデルを設定し、前記粘弾性モデルによる流体解析を実行する工程と、
前記流体解析の結果得られた流線上の粘弾性応力から構造解析入力用応力を演算する工程と、
前記流体解析モデルの前記流出部の流出口の形状を断面とした、コンピュータで解析可能な構造解析モデルを設定する工程と、
前記構造解析モデルに対して、前記構造解析入力用応力を初期応力として設定し構造解析を実行する工程とを有することを特徴とする粘弾性体のシミュレーション方法。 - 前記構造解析入力用応力として、前記流体解析における前記流線上の粘弾性応力の最大値、前記流体解析における前記流線上の粘弾性応力の最小値、および前記流体解析における前記流線上の粘弾性応力の平均値のうち、少なくとも1つを用いる請求項1に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 前記流体解析を実行する工程は、前記粘弾性体の温度変化をパラメータに加えた請求項1または2に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 前記構造解析を実行する工程は、前記粘弾性体の温度変化をパラメータに加えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 前記粘弾性体は、未加硫ゴムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- コンピュータで解析可能な、流入部と流出部を有する流体解析モデルを作成する流体解析モデル作成部と、
前記流体解析モデルの前記流出部の流出口の形状を断面とした、コンピュータで解析可能な構造解析モデルを作成する構造解析モデル作成部と、
前記流体解析モデルにおける粘弾性体の、コンピュータで解析可能な粘弾性モデルを設定する設定部と、
前記粘弾性モデルによる流体解析を実行する解析部と、
前記流体解析の結果得られた流線上の粘弾性応力から構造解析入力用応力を演算する演算部とを有し、
さらに、前記解析部は、前記構造解析モデルにおいて、前記構造解析入力用応力を初期応力として設定し構造解析を実行するものであることを特徴とする粘弾性体のシミュレーション装置。 - 前記構造解析入力用応力として、前記流体解析における前記流線上の粘弾性応力の最大値、前記流体解析における前記流線上の粘弾性応力の最小値、および前記流体解析における前記流線上の粘弾性応力の平均値のうち、少なくとも1つを用いる請求項6に記載の粘弾性体のシミュレーション装置。
- 前記解析部は、前記粘弾性体の温度変化をパラメータに加えて前記流体解析を実行する請求項6または7に記載の粘弾性体のシミュレーション装置。
- 前記解析部は、前記粘弾性体の温度変化をパラメータに加えて前記構造解析を実行する請求項6〜8のいずれか1項に記載の粘弾性体のシミュレーション装置。
- 前記粘弾性体は、未加硫ゴムである請求項6〜9のいずれか1項に記載の粘弾性体のシミュレーション装置。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘弾性体のシミュレーション方法の各工程を手順としてコンピュータに実行させるためのプログラム。
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