本明細書で用いられる場合、「1つの (a)」、「1つの (an)」および「その」という単数形は、文脈上明白に別の意味を示していない限り、複数の指示対象も含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「1つの抗体 (an antibody)」への言及は、そのような種々の抗体の1つまたは複数を含み、「その方法 (the method)」への言及は、本明細書に記載される方法に対して修正または置換され得る、当業者に公知の等価な段階および方法への言及を含む。
別段の指示がない限り、一連の要素を先行する「少なくとも」という用語は、その一連の要素の中のあらゆる要素を指すと理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様に対する多くの等価物を認識するか、または日常的な実験だけを用いてこれらを確認することができるであろう。このような等価物は、本発明によって包含されることが意図される。
以下の本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈上別の解釈が要求される場合を除き、「含む (comprise)」という語、ならびに「含む (comprises)」および「含む (comprising)」などの変化形は、記載の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を含むことを意味するが、任意の他の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を除外することを意味するものではないと理解されよう。本明細書で用いられる「含む (comprising)」という用語は、「含有する (containing)」という用語、もしくは場合によっては、本明細書で用いられる「有する (having)」という用語と置換され得、または、〜からなる (consisting of) によってさえも置き換えられ得る。
本明細書で用いられる「〜からなる」は、特許請求の範囲の要素に規定されていないいかなる要素、段階、または成分も除外する。本明細書で用いられる場合、「本質的に〜からなる (consisting essentially of)」は、特許請求の範囲の基礎的でかつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料または段階を除外しない。本明細書における各場合において、「本質的に〜からなる」および「〜からなる」という用語のいずれも、互いに置き換えられ得る。
本明細書で用いられる場合、列挙される複数の要素間の「および/または (and/or)」という接続的用語は、個々の選択肢および組み合わされた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「および/または」によって結合されている場合、第1の選択肢は、第2要素を伴わない第1要素の適用性を指す。第2の選択肢は、第1要素を伴わない第2要素の適用性を指す。第3の選択肢は、第1要素と第2要素とを併せた適用性を指す。これらの選択肢のうちの任意の1つは、その意味の範囲内に入り、したがって本明細書で用いられる「および/または」という用語の要件を満たすと理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、その意味の範囲内に入り、したがって本明細書で用いられる「および/または」という用語の要件を満たすと理解される。
本明細書の本文を通して、いくつかの文書が引用される。本明細書で引用された文書(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、説明書等を含む)の各々は、前出であれまたは後出であれ、全体として参照により本明細書に組み入れられる。参照により組み入れられる資料が本明細書と矛盾するかまたは一致しない範囲で、本明細書はいかなるこのような資料にも優先する。本明細書におけるいかなるものも、本発明が、先行発明のせいでそのような開示を先行する権利が与えられないことの容認と解釈されるべきではない。
高濃度のGM-CSF中和化合物を有する製剤を提供するという目的を念頭に置いて、本発明者らは、GM-CSF中和化合物が高濃度で不安定である可能性があり、また長期間の貯蔵を通して不安定である可能性があることを認識した。
実際に、タンパク質のようなGM-CSF中和化合物が不安定になり得る多くの方法がある。例えば、タンパク質の不安定性は、タンパク質の凝集または分解によって引き起こされ得るばかりでなく、脱アミノ、脱アミド、酸化、ジスルフィド結合の切断および形成、加水分解、スクシンイミド化、非ジスルフィド架橋、脱グルコシル、もしくは「酵素的褐変」(メイラード反応)、またはこれらの現象の任意の組み合わせによる化学的不安定性によっても引き起こされ得る;例えば、Wang et al. (1999), Int. J. Pharm. 185: 129-188を参照されたい。さらに、温度、pH値、表面吸着、塩、金属イオン、キレート剤、せん断力などの物理的力、タンパク質変性剤、非水性溶媒、タンパク質濃度、タンパク質の起源および純度、タンパク質モルフィズム、または圧力などの物理化学的パラメータも、タンパク質の安定性に影響を及ぼし得る。
しかし、多くの要因がタンパク質の安定性に影響を及ぼし得る一方で、タンパク質を安定化するために多くの手段を講じることもできる。例えば、タンパク質は、内部的に(アミノ酸を変更することにより)または外部的に安定化され得る。外部的安定化は、キレート剤、金属イオン、還元剤、ポリマー、ポリエチレングリコール/ポリオール、血清アルブミン、界面活性剤、糖およびポリオール、脂肪酸およびリン脂質、アミノ酸、緩衝液等の添加によって達成され得る;例えば、Wang, Y and Hanson M (1988), J. Parental Sci.& Technology, 42, Supplement: 4-26;Wang et al. (1999), Int. J. Pharm. 185: 129-188を参照されたい。要するに、製剤中の、抗体などのGM-CSF中和化合物を安定化するために、当業者は多くの選択肢を利用できたであろう。
本事例において、発明者らは、GM-CSF中和化合物が、より高濃度で凝集を示す可能性があり、かつ/または溶解しない可能性があることを観察した。多くの種々の要因が、製剤中のタンパク質の凝集を引き起こし得る。典型的な精製および貯蔵手順は、タンパク質を、タンパク質二量体、三量体、または多量体、サブビジブル(subvisible)の大きな粒子、および可視的粒子へと凝集させる条件および成分にタンパク質製剤を曝露し得る。例えば、製剤中のタンパク質は、以下のうちのいずれか1つまたは複数の結果として凝集し得る:貯蔵、高温への曝露、製剤のpH、製剤のイオン強度、ならびにある特定の界面活性剤および乳化剤の存在。同様に、タンパク質は、溶液中での凍結乾燥されたタンパク質ケーキ (cake)の再構成、タンパク質試料の濾過精製、凍結融解、振盪、またはシリンジを介したタンパク質溶液の移行などのせん断応力に曝露された場合に、凝集し得る。凝集はまた、貯蔵バイアル内で、溶液中のおよび液体‐気体界面におけるポリペプチド分子の相互作用の結果としても起こり得る。輸送中の撹拌によって生じる界面の圧縮または拡張の際に、気体−液体および個体−液体界面に吸着したポリペプチドにおいて立体構造変化が起こり得る。このような撹拌は、製剤のタンパク質を凝集させ、最終的に他の吸着タンパク質と共に沈殿させ得る。サブビジブル粒子の増加は、可視的粒子を形成する傾向を示し得る。一般に、異なる種類の凝集物および粒子の形成は、その凝集物または粒子のサイズに基づいて、異なる測定システムによって解析することができる。例えば、SEC、DLS、AUCは、ナノメーターのサイズ範囲にある二量体、三量体、多量体を測定する;光遮蔽、顕微鏡検査、動的イメージング、フローサイトメトリー、およびコールターは、1μmを上回るサブビジブル粒子および小さな可視的粒子を測定する。
加えて、タンパク質製剤の光への曝露も、タンパク質を凝集させ得る。したがって本発明は、高濃度のGM-CSF中和化合物を可能にし、かつこれらの化合物の凝集を減少させる製剤を提供する。理論によって縛られることはないが、凝集の減少は、上述の凝集機構のうちの1つまたは複数を制御することによって達成されると考えられる。これは、例えば、製品安定性の改善、ならびに製造工程および貯蔵条件におけるより大きな柔軟性をもたらし得る。
本発明者らは、例えば、注射容量が多いことに起因する疼痛のような副作用を軽減するのに適しているか、または低容量で皮下投与できるようにする、より少ない注射容量を可能にするために、高濃度のGM-CSF中和化合物を伴う製剤を提供することを目的とした。
しかるが故に、本発明者らは、研究中にGM-CSF中和化合物のある種の不安定性を観察し、よってこの望ましくない所見を改善することを目的とした。したがって、本発明者らは、GM-CSF中和化合物を、溶液中で維持しながら、すなわち溶解期において、濃縮することを目的とした。そうすることで、本発明者らは、多数の選択肢および代替案のうちのいずれが対象の問題を解決するのに適しているといういかなる示唆もないが、それらを利用可能にした。
「溶解期」とは、好ましくは少なくとも約20 mg/mlの濃度のGM-CSF中和化合物が、溶液中に存在する、すなわち製剤の水溶液(すなわち、水相)中に直接溶解および/または分散していることを意味する。好ましくは、GM-CSF中和化合物は、均一に溶解および/または分散している。均一とは、水性製剤中に溶解および/または分散しているGM-CSF中和化合物が、水性製剤中にほぼ均等に、好ましくは均等に分布しており、その結果、GM-CSF中和化合物(モル質量の場合は「n」または質量の場合は「m」)の濃度(「c」)が、水溶液の体積(「v」)中で(またはその全体にわたって)ほぼ同一であり、好ましくは同一であり、すなわちc = n/vまたはc = m/vのそれぞれがほぼ一定であり、好ましくは一定であることを意味する。好ましくは、製剤中に濃度勾配は存在しない。
したがって、GM-CSF中和化合物を含む本発明の安定な製剤は、好ましくは水溶液と見なされ得、この場合、GM-CSF中和化合物はその中に直接溶解および/または分散している。
「溶液」とは、2つまたはそれ以上の物質/成分の均一な混合液である。そのような混合液において、溶質(本発明ではGM-CSF中和化合物)は、溶媒としても知られる別の物質(本発明では好ましくは水性製剤)中に(上記のように)溶解している。
上記を考慮すると、GM-CSF中和化合物は、好ましくは水溶液に不均一には溶解および/または分散していない。「溶解状態」という用語はまた、GM-CSF中和化合物が、水溶液中で好ましくは本質的に乳化されていないか、またはより好ましくは全く乳化されていないことを含む。
また、「溶解状態」という用語は、GM-CSF中和化合物が、例えばリポソーム、多重膜リポソーム等の中に、好ましくは本質的にカプセル化および/もしくは封入されていないか(好ましくは、GM-CSF中和化合物の2%、1%、または0.5%未満がカプセル化および/または封入され得る)、またはより好ましくは全くカプセル化および/もしくは封入されていないことを含む。
したがって、本発明の1つの好ましい態様は、長期間貯蔵した場合に、安定しており、かつ複合物/凝集物/粒子または断片/分解産物の形成を起こさない、GM-CSF中和化合物を含む液体製剤であって、皮下投与に適している製剤である。
具体的には、多くの異なる安定化剤を試験した後に、本発明者らは、貯蔵される溶液中に浸透圧調整剤が添加された場合に、GM-CSF中和化合物が安定化され得ることを見出した。浸透圧調整剤の例には、これらに限定されないが、糖および糖アルコールが含まれる。単糖は単糖類と称され、これにはグルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、リボース、マンノース、ラクツロース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロース、アラビノース、およびリキソースが含まれる。本発明にとってより好ましいのは二糖類であり、これには例えば、スクロース、マルトース、ラクトース、イソマルトース、トレハロース、およびセルビオース (cellubiose) が含まれる。糖アルコールには、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ポリグリシトールが含まれる。好ましい態様において、糖は、スクロースおよびトレハロースなどの非還元糖である。非還元糖は開鎖構造の非存在を特徴とし、そのため酸化還元反応の影響を受けにくい。したがって、スクロースもしくはトレハロースなどの非還元糖のうちの1つもしくは複数、またはマンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコールのうちの1つもしくは複数を、GM-CSF中和化合物を含む製剤に添加することができる。また、スクロースとマンニトール、スクロースとソルビトール、トレハロースとマンニトール、またはトレハロースとソルビトールなどの、非還元糖と糖アルコールとの組み合わせを、溶液に添加することもできる。より好ましくは、糖アルコールであるマンニトールおよび/またはソルビトールを好ましくはD型で添加し、最も好ましくはソルビトールを溶液に添加する。浸透圧調整剤、好ましくはソルビトールの濃度は、約1%〜約15% (w/v)、好ましくは約2%〜約10% (w/v)、より好ましくは約3%〜約7% (w/v)、より好ましくは約4%〜約6% (w/v)、および最も好ましくは約5% (w/v) である。
長期貯蔵に関して、高濃度のGM-CSF中和化合物を安定化するための別の特に好ましい物質は、約4〜約10、好ましくは約4〜約7、より好ましくは約4〜約6または約5〜約7、さらにより好ましくは約5.5〜約6.5のpH、および最も好ましくは約5.8のpHを有する緩衝系である。緩衝液は好ましくは、ヒスチジン緩衝液、酢酸緩衝液、およびクエン酸緩衝液より選択され得る。本明細書において言及される場合、アミノ酸とはL-アミノ酸またはD-アミノ酸を意味し、この場合はL-アミノ酸が好ましい。好ましくは、ヒスチジンまたはその塩が緩衝系に用いられる。好ましくは、塩は塩化物、リン酸塩、酢酸塩、または硫酸塩であり、より好ましくは塩は塩化物である。ヒスチジン緩衝系のpHは約5〜約7、好ましくは約5.5〜約6.5であり、より好ましいpHは約または正確に5.8である。pHは、慣例的に用いられる塩基および酸、好ましくはNaOHを用いて調整され得るか、またはヒスチジンとヒスチジン塩の混合物が使用可能で、その結果pH調製の必要がなくなる。緩衝系、好ましくはヒスチジン緩衝系の濃度は、約10 mM〜約50 mM、好ましくは約20 mM〜約40 mM、より好ましくは約30 mMである。
さらに、本発明者らは、貯蔵される溶液に界面活性剤、アミノ酸、抗酸化剤および/またはキレート剤のうちの1つもしくは複数が添加されれば、GM-CSF中和化合物は安定化されることを見出した。
好ましい態様に従って、凝集を防ぐため、ならびに長期貯蔵および/または1回もしくは複数回の凍結/融解サイクルに対して製剤を十分に安定化するために、溶液中のGM-CSF中和化合物を安定化するには、緩衝系、好ましくはヒスチジン緩衝液、浸透圧調整剤、好ましくは糖アルコール、より好ましくはマンニトール、またはさらにより好ましくはソルビトール、ならびに界面活性剤、好ましくはポリソルベート20 (PS20; TWEEN (登録商標) 20)、ポリソルベート80 (PS80; TWEEN (登録商標) 80)および/またはポロキサマーの組み合わせが用いられる。安定性の観点から、製剤中に約6% (w/v) およびそれ以上の糖アルコール、好ましくはソルビトールを有することが好ましいことが示された。しかしながら、製剤のモル浸透圧濃度の上限は、なお高浸透圧であるが、認可済み製品(Synagis;Lm.投与)のモル浸透圧濃度と同様である約500 mOsm/kgに設定される。そのため、本発明の実施例に記載されるように、GM-CSF中和化合物の最適な安定性と浸透圧と濃度との間の妥協点を見出さなければならなかった。糖アルコール、好ましくはソルビトールの好ましい濃度は、したがって約3%〜約7% (w/v)、より好ましくは約4%〜約6% (w/v)、および最も好ましくは約5% (w/v) である。
本発明のいくつかの態様において、GM-CSF中和化合物を含む本発明の製剤または組成物は、塩化ナトリウムを含まないかまたは本質的に含まないことが好ましい。「本質的に含まない」とは、塩化ナトリウムの濃度が0(ゼロ)mMであるかまたはそれに非常に近いこと、例えば、約50 mM未満、好ましくは約20 mM未満、より好ましくは約10 mM未満、さらにより好ましくは約5 mM未満、および最も好ましくは約2 mM未満またはさらには約1 mM未満であることを意味する。
使用される各GM-CSF中和化合物の濃度は、貯蔵される、凍結/融解される、かつ/または使用準備済である液体製剤中で、少なくとも約20 mg/ml、好ましくは少なくとも約50 mg/ml、より好ましくは少なくとも約60 mg/mlである。本発明において、約20 mg/ml〜約200 mg/mg、好ましくは約40 mg/ml〜約200 mg/ml、より好ましくは約50 mg/ml〜約180 mg/ml、さらにより好ましくは約70 mg/ml〜約170 mg/ml、さらにより好ましくは約75 mg/ml〜約165 mg/ml、および最も好ましくは約80 mg/mlまたは約150 mg/mlの濃度が用いられる。
生産された液体製剤の品質保持期間は、2〜8℃で24カ月、好ましくは2〜8℃で36カ月、より好ましくは2〜8℃で48カ月、最も好ましくは2〜8℃で60カ月、または周囲温度(25℃±2℃)で少なくとも28日という好ましい最低必要条件を有する。
本発明は、GM-CSF中和化合物の長期貯蔵を驚くほど可能にする安定な製剤、好ましくは安定な液体製剤に関する。この製剤は、一つには、この製剤のGM-CSF中和化合物が、注射容量が多いことに起因する疼痛のような副作用を軽減するように、高度に濃縮されているために、患者に使用するのにより簡便であるという理由で、有用である。
したがって、本発明の1つの局面は、
‐GM-CSF中和化合物、
‐好ましくは、5〜7の好ましいpHを有するヒスチジン緩衝液、酢酸緩衝液、および/またはクエン酸緩衝液より選択される緩衝系、
‐好ましくは、スクロースもしくはトレハロースなどの非還元糖、またはマンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコールより選択される浸透圧調整剤、
-ならびに、界面活性剤、アミノ酸、抗酸化剤および/またはキレート剤のうちの1つもしくは複数、好ましくは、好ましくはポリソルベート20、ポリソルベート80またはポロキサマーのうちの1つもしくは複数より選択される界面活性剤
を含む製剤が、長期貯蔵および/または凍結融解/サイクルおよび/またはせん断応力(振盪/撹拌安定性)に対して十分に安定化されるという発見に基づいている。本発明の製剤は、標準的な緩衝製剤に勝る多くの利点を有する。1つの局面において、本製剤は、高タンパク質製剤で予想され得る有害効果を伴わずに、長期貯蔵に際して最小限の凝集挙動を示す。本発明による製剤の他の利点は、長期貯蔵を通して、GM-CSF中和化合物の断片化が最小限であること、およびGM-CSF中和化合物の生物活性に対する有意な影響がないこと、ならびに組成物の粘度の低さである。
本発明の第1局面の好ましい態様は、以下のものである:
GM-CSF中和化合物がポリペプチド、ペプチド模倣体、核酸、または小分子である、本発明による製剤。
好ましい態様において、GM-CSF中和化合物(好ましくはポリペプチド、およびより好ましくは抗体またはその機能的断片である)は、GM-CSFまたはGM-CSF受容体に結合するまたは特異的に結合する。GM-CSFまたはGM-CSF受容体は、実験動物(齧歯類、例えば、ラット、モルモット、ハムスター、またはマウスなど、非ヒト霊長類、例えばカニクイザルまたはマカクザルなど)、飼育動物もしくはペット動物(例えば、イヌまたはネコ)、家畜もしくは農業動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、およびブタ動物)、および/またはヒトなどの哺乳動物を含むがこれらに限定されない動物のものであると想定される。好ましくは、GM-CSFまたはGM-CSF受容体は、それぞれヒトGM-CSF(ヒト (Homo sapiens))もしくはヒトGM-CSF受容体、またはそれぞれ非ヒト霊長類GM-CSFもしくは非ヒト霊長類GM-CSF受容体である。非ヒト霊長類GM-CSFまたは非ヒト霊長類GM-CSF受容体の特に好ましい変種(相同体)には、テナガザル(西洋クロテテナガザル (western black crested gibbon) としても知られるクロテナガザル (nomascus concolor))、およびマカク科のサル、例えばアカゲザル(アカゲザル (Macaca mulatta) およびカニクイザル(カニクイザル (Macaca fascicularis))のものが含まれる。本発明の特に好ましい態様によれば、GM-CSFまたはGM-CSF受容体に結合する化合物(好ましくは抗体またはその断片)は、ヒトと、上述のサル種のうちの少なくとも1つとの間で交差反応性を示す。例えば、抗体またはその断片は、ヒトGM-CSF、およびカニクイザル(カニクイザル)のGM-CSFの両方に結合する(および両方を中和する)ことができる。このことは、ヒト対象における治療的投与のために意図される抗体分子にとって特に有利である。なぜなら、このような抗体は通常、規制認可前に多数の試験を通過しなければならず、それらの試験のうちのある特定の初期試験は非ヒト動物種を伴うからである。このような試験を実施する際には、ヒトと高度な遺伝的類似性を有する種(例えば、カニクイザルなどの非ヒト霊長類)を非ヒト種として使用することが一般的に望ましい。というのは、そのようにして得られた結果は、一般的に、同じ分子をヒトに投与する場合に予想され得る対応する結果を高度に予測するからである。しかしながら、動物試験に基づくそのような予測力は、分子の比較可能性に少なくとも部分的に依存し、種間交差反応性のために、同じ治療用分子をヒトおよび動物モデルに投与することができる場合に、非常に高い。本発明のこの態様におけるように、抗体分子が、ヒトおよび別の近縁種における同じ抗原に対して交差反応性である場合、ヒトおよびこの近縁種、例えば上述のサル種のうちの1つで、この同じ抗体分子を用いて試験を実施することができる。これにより、試験自体の効率、および治療上の見地から最終的な関心対象種であるヒトにおけるそのような抗体の挙動に関する、そのような試験によって提供される予測力が共に向上する。GM-CSFまたはGM-CSF受容体に結合する抗体またはその機能的断片は、モノクローナル抗体またはその機能的断片であることが好ましい。同じことが、抗体ではないまたは抗体由来ではないGM-CSF中和化合物を用いる代替の態様についても当てはまる。
好ましくは、GM-CSF中和化合物はヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片である。
GM-CSF中和化合物は、ヒトおよび非ヒト霊長類GM-CSFのエピトープに結合する抗体またはその機能的断片であってよい。このエピトープは好ましくは、アミノ酸23〜27 (RRLLN) および/またはアミノ酸65〜77 (GLR/QGSLTKLKGPL) を含む。アミノ酸配列伸長65〜77内の67位における変異性は、一方のヒトおよびテナガザルGM-CSF(67位はRである)と、他方のマカク科のサル、例えばカニクイザルおよびアカゲザル(67位はQである)との間の、GM-CSFのこの位置における不均一性を反映している。エピトープが、隣接していない2つのアミノ酸配列伸長、例えば23〜27 (RRLLN) および65〜77 (GLR/QGSLTKLKGPL) を含む場合、このエピトープはまた「不連続エピトープ」とも称され得る。該GM-CSFエピトープまたは該GM-CSF不連続エピトープは、アミノ酸28〜31 (LSRD)、アミノ酸32〜33 (TA)、および/またはアミノ酸21〜22 (EA) をさらに含み得る。
ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、好ましくは、その重鎖可変領域内に、SEQ ID NO: 1〜13および56に記載されるものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含み;好ましくは、重鎖可変領域CDR3は、SEQ ID NO: 2に記載されるアミノ酸配列を含む。
前記重鎖可変領域CDR3配列のいずれもが、さらに、重鎖可変領域において、SEQ ID NO: 14に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、およびSEQ ID NO: 15に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2と共に存在し得る。
さらに、ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、その軽鎖可変領域内に、SEQ ID NO: 16に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO: 17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 18に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3を含み得る。
本発明の特に好ましい局面において、ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、その軽鎖可変領域内に、SEQ ID NO: 16に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO: 17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 18に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3を含み、かつその重鎖可変領域内に、SEQ ID NO: 14に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO: 15に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2、ならびにSEQ ID NO: 1〜13および56に記載されるものからなる群より選択されるアミノ酸配列、最も好ましくはSEQ ID NO: 2を含むCDR3を含む。
好ましい態様によれば、ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、その軽鎖可変領域において、SEQ ID NO: 19、54、および55に記載されるものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の好ましい態様によれば、ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、その重鎖可変領域において、SEQ ID NO: 20〜33、52、および53に記載されるものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、さらなる態様において、SEQ ID NO: 34に記載される軽鎖アミノ酸配列、および/またはSEQ ID NO:35〜48のいずれかに記載されるものからなる群より選択される重鎖アミノ酸配列、最も好ましくはSEQ ID NO: 35を含む。
ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、SEQ ID NO: 1〜48および52〜56のいずれかに記載される各アミノ酸配列、好ましくはSEQ ID NO: 1〜18および56のいずれかに記載される各アミノ酸配列、ならびに/またはSEQ ID NO: 19〜48および52〜55のいずれかに記載されるアミノ酸配列内のフレームワーク領域 (FR) のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、98%、または99%の相同性を有する1つまたは複数のアミノ酸配列を含み得る。したがって、好ましい態様において、ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、SEQ ID NO: 1〜18および56のいずれかに記載される各アミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、98%、または99%の相同性を有する1つまたは複数のアミノ酸配列を含み得る。
あるいは、SEQ ID NO: 1〜18および56のいずれかに記載されるCDRのアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸が置換され得る。好ましくは、置換を有するそのようなCDRは、本明細書に記載されるようなGM-CSFになお結合することができる。
あるいはまたは加えて、ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、それぞれSEQ ID NO: 19〜48および52〜55のいずれかに記載されるVH、VL、H、またはL領域の各アミノ配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、98%、または99%の相同性を有する1つまたは複数のアミノ酸配列を含み得ることが好ましい。好ましくは、相同性は、VH、VL、H、またはLアミノ酸配列全体にわたる。より好ましくは、相同性は前記のCDR内にあるか、または相同性は、SEQ ID NO: 19〜48および52〜55のいずれかに記載されるそのようなVH、VL、H、またはL領域のFR(または非CDR)内にある。したがって、FRの各々において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または25個のアミノ酸が置換され得る。このようなFR置換変種は、本明細書に記載されるようなGM-CSFになお結合することができる。
SEQ ID NO: 1〜18および56は、SEQ ID NO: 19〜48および52〜55に示されるVH、VL、H、またはL配列のうちの1つまたは複数中に含まれるCDR配列を示すため、当業者は、SEQ ID NO: 19〜48および52〜55内のFR(または非CDR)を容易に同定することができる。すなわち、配列表は、配列識別子<223>において、アミノ酸配列の各々の指定を提供する。同一の指定は、これらのアミノ酸配列が共に「属する」ことを示し、CDRがVH、VL、H、またはL領域中に含まれる、例えば、SEQ ID NO: 16、17、18が、SEQ ID NO: 19に示されるアミノ酸配列中に含まれるCDRのアミノ酸配列であること(それらのすべてが「5-306」と指定されるため)を意味する。
さらなる例証として、重鎖および/または軽鎖のCDRまたはFRのうちの1つもしくは複数またはすべてにおいてアミノ酸が置換される場合、そうして得られた「置換」配列は、「元の」CDRまたはFR配列と少なくとも70%、より好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、特に好ましくは95%、より特に好ましくは98%または99%同一であることが好ましい。これは、「置換」配列との相同的な度合いが、CDRまたはFRの長さに依存することを意味する。
る。
相同性は、Vector NTI(InforMax(商標)、Maryland, USA))などの標準的配列アラインメントプログラムにより、またはより好ましくはプログラムBLASTP、好ましくはversion blastp 2.2.5(Novemver 16, 2002;Altschul, S. F. et al. (1997) Nucl. Acids Res. 25, 3389-3402を参照のこと)により決定される。相同性の割合は、ペアワイズ比較における参照としてCDR、VH、H、またはLアミノ酸配列のうちのいずれか1つを用いた、ポリペプチド配列全体のアラインメント(マトリックス:BLOSUM 62;ギャップコスト:11.1;カットオフ値を10-3に設定)に基づく。これは、BLASTPプログラムアウトプットの結果として示される「正」(相同アミノ酸)の数を、アラインメントのためにプログラムによって選択されたアミノ酸の総数で除した割合として計算される。
本明細書で用いられる場合、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の相同性は、「同一性」という用語と互換的に使用され得る。本明細書で用いられる「相同性」という用語は、‐本発明のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と問題の配列との配列の相同性アラインメント後の‐これら2つの配列のより長いものにおける残基数に関して、対になる同一残基の割合を意味する。上記のように、相同性(または同一性)を決定するためのプログラムは、整列させた配列をアミノ酸毎に比較し、比較について様々なレベルの厳密性を設定することができる(例えば、同一アミノ酸、保存的アミノ酸置換等)。本用語が本明細書で用いられる場合、問題の2つのアミノ酸は、それら各々が同じ化学的クラス、すなわち、酸性、非極性/疎水性、非荷電極性、および塩基性に属する場合に、互いの「保存的置換」であると見なされる。非限定的な例として、非極性アミノ酸のクラスに属する2つの異なるアミノ酸は、これら2つのアミノ酸が同一でない場合でさえ、互いの「保存的置換」と見なされるのに対して、一方の非極性アミノ酸と他方の塩基性アミノ酸は、互いの「保存的置換」とは見なされない。Alberts, Johnson, Lewis, Raff, Roberts and Walterによる「Molecular Biology of the Cell」, 4th Edition (2002) のパネル3.1では、アミノ酸を4つの主要な群:酸性、非極性、非荷電極性、および塩基性に分類している。そのような分類は、特定のアミノ酸が問題の別のアミノ酸の保存的置換であるか否かを、本発明との関連において決定する目的で使用することができる。上述の主要な群は、例えば、小型の非極性アミノ酸および大型の非極性アミノ酸、大型の芳香族アミノ酸等にさらに細分類され得る。「保存的アミノ酸置換」という用語はまた、置換残基が所与の残基と化学的に極めて類似しているため、ポリペプチド機能(例えば結合)の実質的な減少が起こらない場合の、所与のアミノ酸残基に対する任意のアミノ酸置換を示す。
GM-CSF中和化合物は典型的に、対象への非経口投与、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、または皮内投与のための薬学的製剤として製剤化され、皮下投与が好ましい。ある特定の態様において、薬学的組成物は液体組成物、好ましくは水性組成物である。
1つの態様において、液体薬学的組成物中のGM-CSF中和化合物の濃度は、貯蔵される、凍結/融解される、および/または使用準備済である液体製剤中で、少なくとも20 mg/ml、好ましくは少なくとも約50 mg/ml、より好ましくは少なくとも約60 mg/mlである。本発明において、約20 mg/ml〜約200 mg/ml、好ましくは約40 mg/ml〜約200 mg/ml、より好ましくは約50 mg/ml〜約180 mg/ml、さらにより好ましくは約70 mg/ml〜約170 mg/ml、さらにより好ましくは約75 mg/ml〜約165 mg/ml、および最も好ましくは約80 mg/mlまたは約150 mg/mlの濃度が用いられる。いくつかの態様において、例えば、組成物が皮下送達のために意図される場合、より高濃度のGM-CSF中和化合物が使用され得る。
上記の通り、本発明の組成物は緩衝液を含む。本明細書で用いられる場合、「緩衝液」という用語は、液体製剤がpH変化に抵抗することを可能にする添加組成物を指す。ある特定の態様において、添加緩衝液によって、液体製剤が、その酸‐塩基複合物成分の作用によるpH変化に抵抗することが可能になる。適切な緩衝液の例には、緩衝ヒスチジン系、酢酸系、またはクエン酸系が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で用いられる「特異的に結合する」という用語、または「特異的結合」、「特異的に結合すること」、「特異的結合剤」等などの関連表現は、GM-CSF中和化合物および好ましくは(ヒト)(モノクローナル)抗体またはその機能的断片が、潜在的結合パートナーとしての複数の異なる抗原から、GM-CSF/GM-CSF受容体のみが結合するかまたは有意に結合する程度まで、その標的(例えば、GM-CSFまたはGM-CSF受容体)と、GM-CSFまたはGM-CSF受容体とは異なる任意の他の潜在的抗原とを識別する能力を指す。本発明の意味の範囲内で、潜在的な結合パートナーとしての複数の等しく接近可能な異なる抗原の中から、標的が、標的とは異なる任意の他の抗原よりも少なくとも10倍、好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは少なくとも100倍またはそれ以上の頻度で(動力学的意味で)結合する場合に、標的は「有意に」結合する。そのような動力学的測定は、例えばBiacore装置などのSPR技術を用いて行うことができる。本明細書で用いられる場合、「(特異的に)結合する」という用語、または「(特異的に)認識する」、「〜に対する」、「(特異的に)相互作用する」、および「(特異的に)反応する」などの関連用語は、本発明に従って、GM-CSF中和化合物(例えば抗体)が、その標的(例えば、GM-CSFまたはGM-CSF受容体)に対して明らかな親和性を示し、一般的に前述の標的以外のタンパク質または抗原との有意な反応性を示さないことを意味する。「明らかな親和性」は、約10-6 M (KD) またはそれよりも強い、例えば10-7 Mまたはそれよりも強い親和性による結合を含む。好ましくは、結合親和性が約10-11〜10-8 M、好ましくは約10-11〜10-9 M、より好ましくは約10-11〜10-10 Mである場合に、結合は特異的と見なされる。化合物(例えば抗体)が標的と特異的に反応または結合するかどうかは、とりわけ、該化合物とその標的タンパク質または抗原との反応を、該化合物と、その標的以外のタンパク質または抗原との反応と比較することによって、容易に試験することができる。好ましくは、本発明による化合物は、GM-CSFまたはGM-CSF受容体以外のタンパク質または抗原に本質的に結合しないか、または結合することができない。「本質的に結合しない」または「結合することができない」という用語は、本発明の化合物が、GM-CSFまたはGM-CSF受容体以外のタンパク質または抗原と30%超、より好ましくは20%超、より好ましくは10%超、特に好ましくは9%、8%、7%、6%、または5%超の反応性を示さないことを意味する。
本明細書で用いられる場合、「中和」、「中和剤」、「中和すること」、および文法的に関連するそれらの変化形は、GM-CSFの生物学的効果の部分的または完全な減弱を指す。GM-CSFの生物学的効果のこのような部分的または完全な減弱は、細胞内シグナル伝達、細胞増殖、または可溶性物質の放出、例えばGM-CSF以外のリガンドに対する表面受容体の発現をもたらす細胞内遺伝子活性化の上方制御もしくは下方制御で明らかになるような、GM-CSF媒介性のシグナル伝達などの過程の改変、中断、および/または抑止によって生じる。当業者が理解するように、化合物、例えば抗体またはその機能的断片が、中和剤として分類されるかどうかを決定する複数の様式が存在する。一例として、これは、一般的に以下のように行われる標準的インビトロ試験によって達成され得る。第1の増殖実験において、その増殖の程度がGM-CSFの活性に依存することが公知である細胞株を、様々な濃度のGM-CSFを含む一連の試料と共にインキュベートし、このインキュベーション後に、細胞株の増殖の程度を測定する。この測定から、細胞の最大半量の増殖を可能にするGM-CSFの濃度が決定される。次いで、一連の試料の各々において、第1の増殖実験で用いたものと同数の細胞、上記で決定したGM-CSF濃度、および今度は、GM-CSFの中和剤であると推測される化合物の様々な濃度を使用して、第2の増殖実験を行う。細胞増殖を再度測定して、最大半量の増殖阻害を引き起こすのに十分な解析化合物の濃度を決定する。増殖阻害 対 解析化合物の濃度の得られたグラフがシグモイド形状であり、解析化合物の濃度の増加と共に細胞増殖が減少するのであれば、ある程度の増殖阻害が達成されており、すなわちGM-CSFの活性はある程度中和されている。このような場合、問題の化合物は、本発明の意味において「中和剤」と見なされ得る。その増殖の程度がGM-CSFの活性に依存することが公知である細胞株の一例は、Kitamura, T. et al. (1989). J Cell Physiol 140, 323-34に記載されているようなTF-1細胞株である。
当業者が理解するように、細胞増殖の程度は、GM-CSF中和能を確証することができる唯一のパラメータではない。例えば、その分泌のレベルがGM-CSFに依存するシグナル伝達分子(例えばサイトカイン)のレベルの測定を用いて、推測されれるGM-CSF中和剤/GM-CSF阻害性化合物)を同定することができる。
抗体またはその機能的断片などの、問題の化合物がGM-CSF活性の中和剤であるかどうかを決定するために使用することができる細胞株の他の例には、AML-193 (Lange, B. et al. (1987). Blood 70, 192-9);GF-D8 (Rambaldi, A. et al. (1993). Blood 81, 1376-83);GM/SO (Oez, S. et al. (1990). Experimental Hematology 18, 1108-11);MO7E (Avanzi, G. C. et al. (1990). Journal of Cellular Physiology 145, 458-64);TALL-103 (Valtieri, M. et al. (1987). Journal of Immunology 138, 4042-50);およびUT-7 (Komatsu, N. et al. (1991). Cancer Research 51, 341-8) が含まれる。
本発明に従ったGM-CSFの中和が、GM-CSF受容体を有する細胞の外部または該細胞の内部のいずれかで達成され得ることが理解される。したがって、化合物によるGM-CSFの中和は、GM-CSFのその特異的受容体への結合の阻害もしくは防止、または該サイトカインがその受容体へ結合することによって誘導される細胞内シグナルの阻害のいずれかであってよい。GM-CSF中和化合物は例えば、GM-CSFに直接結合するかまたはGM-CSF受容体に結合し、それによっていずれの場合もGM-CSFの生物学的効果を妨げ得る。
本明細書の上記で定義されているように、GM-CSFの阻害剤は、ポリペプチド、ペプチド模倣体、核酸分子、および小分子からなる群より選択され得る。
本明細書で用いられる「ポリペプチド」という用語は、通常、共有ペプチド結合により互いに結合した少なくとも30個のアミノ酸からなる、1群の分子を表す。本発明に従って、ポリペプチド群は、単一のポリペプチドまたは複数のポリペプチドからなる「タンパク質」を含む。「ポリペプチド」という用語はまた、これらの断片が少なくとも30個のアミノ酸からなる限り、タンパク質の断片も表す。ポリペプチドが、二量体、三量体、およびそれ以上のオリゴマーなどの、すなわち複数のポリペプチド分子からなる多量体を形成し得ることは、当技術分野で周知である。そのような多量体もまた、「ポリペプチド」という用語の定義に含まれる。そのような二量体、三量体等を形成するポリペプチド分子は、同一であってもよいし、または同一でなくてもよい。そのような多量体の対応する高次構造は、その結果として、ホモ二量体もしくはヘテロ二量体、ホモ三量体もしくはヘテロ三量体等と称される。ヘテロ多量体の一例は抗体分子であり、これは天然形態では、2つの同一ポリペプチド軽鎖および2つの同一ポリペプチド重鎖からなる。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語はまた、天然または非天然修飾ポリペプチド/タンパク質も指し、この場合の修飾は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、およびジスルフィド架橋の形成等のような翻訳後修飾によって、またはペグ化などの化学的修飾によって行われる。そのような修飾は、当技術分野で周知である。
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、本発明との関連において、リン酸、糖、ならびにプリンおよびピリミジン塩基の複数の繰り返し単位からなるポリマー高分子を定義する。これらの分子の態様には、DNA、RNA、およびPNAが含まれる。核酸は、一本鎖または二本鎖、直鎖状または環状であってよい。本発明との関連における核酸の特に好ましい態様は、アプタマーである。核酸アプタマーとは、他の分子に結合するそれらの能力に基づいてランダムなプールから選択されたDNAまたはRNA分子である。核酸、タンパク質、小型有機化合物、およびさらには生物全体とも結合するアプタマーが選択されている。それらは通常、典型的には50塩基またはそれ未満である、短いオリゴヌクレオチド鎖からなる。
「小分子」という用語は、1000ダルトン未満、好ましくは最大800ダルトンまで、およびより好ましくは300〜700ダルトンの分子量を有する、1群の有機薬物化合物を定義する。小分子の上限分子量は、それらが細胞内の作用部位に到達し得るように、細胞膜を介して迅速に拡散する可能性を可能にする。対応する小分子は、少なくとも部分的にランダム化されたペプチドライブラリーに由来し得る。本発明に従って適している小分子のライブラリーは、当技術分野で周知であり、かつ/または商業的販売業者から購入することができる。
「ペプチド模倣体」という用語は、ペプチドを模倣するように設計された小型タンパク質様の鎖を表す。この種類の分子は、分子の特性を変更するために既存ペプチドを修飾することによって、人為的に導出される。例えば、親の既存ペプチドを修飾して、分子の安定性または生物学的活性を変更する。これらの修飾は、骨格の変更および非天然アミノ酸の取り込みを含む。
「GM-CSF受容体」という用語は、GM-CSFの生理学的な細胞表面受容体を指し、これは当技術分野において、α鎖 (CD116) と共通β (βc) サブユニットとのヘテロマーとして記載されている。
中和ポリペプチドの好ましい態様は、抗体またはその機能的断片、より好ましくはヒト抗体またはその機能的断片である。抗体を生成するための技法は、当技術分野で周知であり、例えば、Harlow and Lane 「Antibodies, A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988、およびHarlow and Lane 「Using Antibodies: A Laboratory Manual」 Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999に記載されている。
「抗体」という用語の定義は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体などの態様を含む。全長抗体に加えて、この定義はまた、とりわけFab断片のような、抗体誘導体および抗体断片を含む。抗体断片または誘導体はさらに、F(ab')2、Fv、scFv断片、または単一ドメイン抗体、例えば、ドメイン抗体またはナノボディ、他のV領域またはドメインとは独立して抗原またはエピトープと特異的に結合するVHH、VH、またはVLであってよい唯一の可変ドメインを含む単一可変ドメイン抗体または免疫グロブリン単一可変ドメインを含む;例えば、Harlow and Lane (1988) および (1999)、前掲;Kontermann and Duebel, Antibody Engineering, Springer, 2nd ed. 2010、ならびにLittle, Recombinant Antibodies for Immunotherapy, Cambridge University Press 2009を参照されたい。このような用語はまた、ダイアボディまたは二重親和性再標的化 (DART) 抗体を含む。さらに、(二重特異性)一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボティ (Tandab)、以下のような構造:(VH-VL-CH3)2、(scFv-CH3)2、または(scFv-CH3-scFv)2によって例示される「ミニボディ」、「Fc DART」および「IgG DART」、トリアボディなどのマルチボディが想定される。免疫グロブリン単一可変ドメインは、単離された抗体単一可変ドメインポリペプチドのみならず、抗体単一可変ドメインポリペプチド配列の1つまたは複数の単量体を含むより大きなポリペプチドも含む。
さらに、本明細書で用いられる「抗体」という用語はまた、記載される抗体と同じ特異性を示す、本明細書に記載される抗体の誘導体または変種に関する。「抗体変種」の例には、非ヒト抗体のヒト化変種、「親和性成熟」抗体(例えば、Hawkins et al. J. Mol. Biol. 254, 889-896 (1992)、およびLowman et al., Biochemistry 30, 10832- 10837 (1991) を参照されたい)、およびエフェクター機能が変更された抗体変異体(例えば、米国特許第5,648,260号、Kontermann and Dubel (2010)、前掲、およびLittle (2009)、前掲を参照されたい)が含まれる。
「抗体」という用語はまた、異なるクラス(すなわち、IgA、IgG、IgM、IgD、およびIgE)およびサブクラス(IgG1、IgG2等など)の免疫グロブリン (Ig) を含む。抗体の誘導体もまた、本発明の意味において、抗体という用語の定義の範囲内であり、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、ジスルフィド結合形成、ファルネシル化、ヒドロキシル化、メチル化、またはエステル化などの、そのような分子の修飾を含む。
抗体の機能的断片には、F(ab')2断片、Fab断片、scFv、または単一免疫グロブリン可変ドメインまたは単一ドメイン抗体ポリペプチド、例えば単一重鎖可変ドメインまたは単一軽鎖可変ドメインを含む構築物、および本明細書で上記された他の抗体断片のドメインが含まれる。F(ab')2またはFabは、CH1ドメインとCLドメインとの間で生じる分子間ジスルフィド相互作用を最小化する、または完全に除去するように改変され得る。
本明細書で用いられる「ヒト」抗体という用語は、抗体またはその機能的断片が、ヒト生殖系列抗体レパートリー中に含まれるアミノ酸配列を含むことを意味すると理解されるべきである。したがって、本明細書における定義の目的で、抗体またはその断片は、それがそのようなヒト生殖系列アミノ酸配列からなる場合に、すなわち問題の抗体またはその機能的断片のアミノ酸配列が、発現されたヒト生殖系列アミノ酸配列と同一である場合に、ヒトと見なされ得る。抗体またはその機能的断片はまた、それがその最も近いヒト生殖系列配列から、体細胞超変異の痕跡のために予測されるにすぎない分だけ逸脱する配列からなる場合にも、ヒトと見なされ得る。加えて、多くの非ヒト哺乳動物、例えばマウスおよびラットなどの齧歯類の抗体は、発現されたヒト抗体レパートリー中にも同様に存在することが予測され得るVH CDR3アミノ酸配列を含む。発現されたヒトレパートリー中に存在することが予測され得る、ヒトまたは非ヒト由来の任意のそのような配列もまた、本発明の目的では「ヒト」と見なされる。したがって「ヒト抗体」という用語は、例えば、Kabatら(Kabat, et al. (1991)、前掲を参照されたい)によって記載されるものを含む、当技術分野で公知のヒト生殖系列免疫グロブリン配列と実質的に対応する可変領域および定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的な突然変異誘発により、またはインビボでの体細胞変異により導入された変異)を、例えばCDR中、特にCDR3中に含み得る。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基で置換された、少なくとも1、2、3、4、5個、またはそれ以上の位置を有し得る。
非ヒト抗体およびヒト抗体またはその機能的断片は、好ましくはモノクローナルである。モノクローナルであるヒト抗体を調製するのは特に難しい。マウスB細胞と不死化細胞株の融合とは対照的に、ヒトB細胞と不死化細胞株の融合は実現可能ではない。したがって、ヒトモノクローナル抗体は、抗体技術の分野に存在すると一般的に認識されている重大な技術的障害を克服した結果である。抗体のモノクローナル性のために、このような抗体は、十分特徴づけられ、かつ再現性よく作製および精製され得る単一の均一な分子種として存在するため、治療剤として使用するのに特によく適している。これらの要因は、その生物学的活性を高レベルの精度で予測することができる産物をもたらし、そのような分子がヒトにおける治療的投与に関する規制認可を得ようとしているのであれば、非常に重要である。本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る潜在的な自然変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養によって合成され得、その他の免疫グロブリンが混入していないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られたという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256: 495 (1975) によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得、または組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)、およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991) に記載される技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
モノクローナル抗体または対応する機能的断片は、ヒト抗体または対応する機能的断片であることが特に好ましい。ヒトへの治療的投与が意図される抗体剤を企図する場合、抗体がヒト由来のものであることは非常に有利である。ヒト患者への投与後、ヒト抗体またはその機能的断片は、患者の免疫系による強力な免疫原性応答を誘発する可能性がほとんどなく、すなわち非ヒトタンパク質である外来物質とは認識されない。これは、本来なら治療用抗体の活性を遮断し、かつ/または患者体内からの治療用抗体の排除を加速させ、ひいてはそれがその所望の治療効果を発揮するのを妨げる、治療用抗体に対する宿主抗体、すなわち患者抗体が産生されないことを意味する。
本発明の好ましい態様によれば、薬学的目的に使用されるヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片は、ヒトと少なくとも1つのサル種との両者間で反応性を示す。同じ種間交差反応性はまた、GM-CSFのあらゆる他の非抗体または非抗体由来中和/阻害化合物にとっても好ましい。
本発明のさらなる態様によれば、抗体はIgG抗体であってよい。IgGアイソタイプは、高度に識別力のある抗原認識および結合に関与する重鎖および軽鎖の可変抗体領域のみならず、天然に産生される抗体に通常存在する重鎖および軽鎖抗体ポリペプチド鎖の定常領域、および場合によってはさらに、1つまたは複数の部位での糖による修飾を含む。このようなグリコシル化は、一般的にIgG形式の特徴であり、インビボで様々なエフェクター機能を誘発することが公知である、完全抗体のいわゆるFc領域を含む定常領域内に位置する。加えて、Fc領域は、IgGのFc受容体への結合を媒介し、かつFc受容体の存在が増加した位置‐例えば炎症組織へのIgGのホーミングを促進する。有利には、IgG抗体はIgG1抗体またはIgG4抗体であり、インビボでのそれらの作用機序が特に十分に理解されかつ特徴づけられているため、このような形式が好ましい。これは、特にIgG1抗体の場合に当てはまる。
本発明のさらなる態様によれば、抗体の機能的断片は好ましくは、scFv、単一ドメイン抗体、Fv、VHH抗体、ダイアボディ、タンデムダイアボディ、Fab、Fab'、またはF(ab)2であってよい。これらの形式は一般的に、2つのサブクラス、すなわち単一ポリペプチド鎖からなるものと少なくとも2つのポリペプチド鎖を含むものに分類され得る。前者のサブクラスのメンバーには、scFv(1つのVH領域および1つのVL領域を含み、これらがポリペプチドリンカーを介して連結されて単一のポリペプチド鎖になっている);VHH抗体(単一のVH領域を含む)などの単一ドメイン抗体(単一の抗体可変領域を含む)が含まれる。後者のサブクラスのメンバーには、Fv(別々のポリペプチド鎖として1つのVH領域および1つのVL領域を含み、これらが非共有結合で互いに会合している);ダイアボディ(非共有結合で会合している2つのポリペプチド鎖を含み、これらはそれぞれ2つの抗体可変領域‐通常は1つのポリペプチド鎖当たり1つのVHおよび1つのVL‐を含み、2つのポリペプチド鎖は、二価抗体分子が生じるようにヘッドトゥーテール立体構造で配置されている);タンデムダイアボディ(2つの異なる特異性の4つの共有結合した免疫グロブリン可変‐VHおよびVL‐領域を含み、上記ダイアボディの2倍の大きさのホモ二量体を形成する二重特異性一本鎖Fv抗体);Fab(それ自体がVL領域および軽鎖定常領域全体を含む抗体軽鎖全体を1つのポリペプチド鎖として含み、完全なVH領域および重鎖定常領域の一部を含む抗体重鎖の一部を別のポリペプチド鎖として含み、該2つのポリペプチド鎖が鎖間ジスルフィド結合により分子間で結合されている);Fab'(抗体重鎖上に付加的な還元ジスルフィド結合が含まれていること以外は、上記Fabと同様);ならびにF(ab)2(2つのFab'分子を含み、各Fab'分子が鎖間ジスルフィド結合によりそれぞれ他方のFab'分子に連結されている)が含まれる。一般的に、上記の種類の機能的抗体断片は、例えば、直面する特定の緊急事態に対する治療的投与に望ましい抗体の薬物動態学的特性を調整する際に、大きな柔軟性をもたらす。例えば、血管新生が不良であることが知られている組織(例えば関節)を治療する場合、組織浸透の程度を高めるために、投与する抗体のサイズを減少させることが望ましい場合がある。ある状況下では、治療用抗体が体内から排除される速度を増加させることが望ましい場合もあり、このような速度は一般的に、投与する抗体のサイズを減少させることによって加速する。抗体断片は、断片が親抗体のエピトープ/標的の特異的結合特性を維持している限り、すなわち断片がGM-CSFまたはGM-CSF受容体に特異的に結合する限り、本発明との関連において機能的抗体断片と定義される。
本発明のさらなる態様によれば、前記抗体またはその機能的断片は、一価単一特異性型;多価単一特異性型、特に二価単一特異性型;または多価多重特異性型、特に二価二重特異性型で存在し得る。一般的に、多価単一特異性抗体、特に上記のような完全ヒトIgGなどの二価単一特異性抗体は、そのような抗体によって達成される中和が、アビディティー効果、すなわち同じ抗原、本明細書ではGM-CSFまたはGM-CSF受容体の複数分子に対する同じ抗体による結合によって増強されるという治療上の利点をもたらし得る。いくつかの一価単一特異性型の抗体断片は、上記されている(例えば、scFv、Fv、VHH、または単一ドメイン抗体)。多価多重特異性型、特に二価二重特異性型の抗体には、一方の結合アームが霊長類GM-CSF/GM-CSF受容体に結合し、その他方の結合アームがGM-CSF/GM-CSF受容体とは異なる別の抗原に結合する完全IgGが含まれ得る。さらなる多価多重特異性型、特に二価二重特異性型は、有利には、ヒト一本鎖二重特異性抗体、すなわち、当技術分野で一般的に公知であるような短い挿入ポリペプチドスペーサーによって結合されて1つの連続したポリペプチド鎖になった、上記の2つのscFv実体を含む組換えヒト抗体構築物であってよい(例えば、抗CD19×抗CD3二重特異性一本鎖抗体については、WO 99/54440を参照されたい)。本明細書では、二重特異性一本鎖抗体内に含まれる二重特異性一本鎖抗体の一方のscFv部分は、上記されているようなGM-CSF/GM-CSF受容体と特異的に結合し、この二重特異性一本鎖抗体のそれぞれ他方のscFv部分は、治療上有益であると判明している別の抗原に結合する。
さらなる態様によれば、抗体またはその機能的断片は、例えば有機ポリマー、例えばポリエチレングリコール(「PEG」)および/またはポリビニルピロリドン(「PVP」)の1つまたは複数の分子で誘導体化され得る。当技術分野で公知であるように、このような誘導体化は、抗体またはその機能的断片の薬力学的特性の調節に有利であり得る。システインアミノ酸のスルフヒドリル基によって部位特異的様式で抗体またはその機能的断片との複合化を可能にする、PEG-マレイミドとして誘導体化されたPEG分子が特に好ましい。これらのうち、分岐型または直鎖型のいずれかである20 kDおよび/または40 kD PEG-マレイミドが特に好ましい。scFv断片などのより小さなヒト抗GM-CSF抗体断片の有効分子量を、PEG、特にPEG-マレイミドの1つまたは複数分子に後者を結合させることによって増加させることが、特に有利であり得る。
本発明の抗体にはまた、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同的であり、鎖の残りの部分が、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同的である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいてそのような抗体の断片も含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984))。本明細書における関心対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿等)由来の可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化 (primatized)」抗体が含まれる。
「ヒト化」型の非ヒト(例えばマウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む、大部分がヒト配列の免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、または抗体の他の抗原結合サブ配列など)であるキメラ免疫グロブリンである。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(またCDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域 (FR) 残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、本明細書で用いられる「ヒト化抗体」はまた、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに精緻化し、最適化するために行われる。ヒト化抗体は任意にまた、免疫グロブリン定常領域 (Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332: 323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596 (1992) を参照されたい。
本明細書で用いられる場合、ヒトおよび非ヒト霊長類GM-CSFのアミノ酸残基または位置の番号づけは、成熟GM-CSF、すなわちアミノ酸17個のシグナル配列を含まないGM-CSFのものを指す(ヒトおよび上記の非ヒト霊長類種の両者における成熟GM-CSFの全長は127アミノ酸である)。ヒトGM-CSFおよびテナガザルGM-CSFの配列は、以下の通りである:
例えばアカゲザルおよびカニクイザルなどのマカクザル科のある特定のメンバーにおけるGM-CSFの配列は、以下の通りである:
ヒトGM-CSFの配列はまた、SEQ ID NO:57に示される。テナガザルGM-CSFのものはまた、SEQ ID NO: 58に示される:
(SEQ ID NO:57および58)
例えばアカゲザル (SEQ ID NO:59) およびカニクイザル (SEQ ID NO:60) などのマカクザル科のある特定のメンバーにおけるGM-CSFの配列はまた、以下の通りである:
(SEQ ID NO:59および60)
抗体、好ましくはヒトモノクローナル抗体(またはその機能的断片)が結合する最小エピトープ、有利には本明細書に記載される不連続エピトープは、上記GM-CSF配列において、太字で示される。
好ましい態様によれば、GM-CSF中和化合物は、GM-CSFに結合する抗体(好ましくはヒトモノクローナル抗体)またはその機能的断片である。より好ましくは、これは、好ましくはアミノ酸23〜27 (RRLLN) および/またはアミノ酸65〜77 (GLR/QGSLTKLKGPL) を含むGM-CSFのエピトープに結合する。これらのアミノ酸配列伸長は、上記のGM-CSF配列において太字で示されている。「エピトープ」という用語は、抗体またはその機能的断片などの化合物が特異的に結合する、抗原または標的(例えばGM-CSF)上の部位を指す。そのような結合/相互作用はまた、「特異的認識」を定義することが理解される。「エピトープ」は、連続アミノ酸、またはタンパク質の三次元折りたたみによって近接した不連続アミノ酸の両方によって形成され得る。「直鎖状エピトープ」とは、アミノ酸の一次配列が認識エピトープを含むエピトープである。直線状エピトープは典型的に、特有の配列内に少なくとも3個または少なくとも4個、およびより一般には少なくとも5個または少なくとも6個または少なくとも7個、例えば約8〜約10個のアミノ酸またはそれ以上を含む。本発明との関連においては、GM-CSFエピトープは不連続エピトープであることが好ましい。抗体が配列伸長23〜27および65〜77の両方に結合する場合、エピトープは「不連続」と称され得る。ヒトGM-CSFの二次構造において、アミノ酸15〜35はヘリックスAの中に位置しているのに対して、65〜77位に対応する残基は、ヘリックスCとヘリックスDとの間に位置するループ構造の一部である。分子の折りたたみの三次元モデルから、これらの部位が互いに立体的に近接していることが明らかである(WO 2006/111353を参照されたい)。本明細書で用いられる場合、「不連続エピトープ」という用語は、抗体が同時にかつ特異的に結合する、所与のポリペプチド鎖、本明細書では成熟ヒトGM-CSFおよび非ヒト霊長類GM-CSF内にある少なくとも2つの隣接していないアミノ酸配列伸長と理解されるべきである。この定義によれば、そのような同時特異的結合は、直線形態のGM-CSFポリペプチドのものであってよい。本明細書では、伸長ループを形成する成熟GM-CSFポリペプチドを想定することができ、この1つの領域では、上記の太字で示された2つの配列が、例えばおおよそ平行して互いに近接して並んでいる。この状態において、この2つの配列に、抗体断片が特異的かつ同時に結合する。この定義によれば、上記の成熟GM-CSFの2つの配列伸長の同時特異的結合はまた、立体構造エピトープに結合する抗体の形態をとってもよい。本明細書では、成熟GM-CSFは、それが通常インビボで存在するようなその三次立体構造を既に形成している。この三次立体構造において、成熟GM-CSFのポリペプチド鎖は、上記の2つの配列伸長を、例えば成熟して折りたたまれたGM-CSFの特定領域の外表面上で空間的に近接させるような様式で折りたたまれており、次いで2つの配列伸長は外表面上で、周囲のポリペプチド配列と関連してその三次立体構造により認識される。
さらに好ましい態様において、GM-CSFの上記のエピトープまたは上記の不連続エピトープは、以下をさらに含む:
・ヒトおよび非ヒト霊長類GM-CSFの上記配列においてイタリック体で示されるアミノ酸28〜31 (LSRD);
・ヒトおよび非ヒト霊長類GM-CSFの上記配列において下線で示されるアミノ酸32〜33 (TA);および/または
・ヒトおよび非ヒト霊長類GM-CSFの上記配列において下線で示されるアミノ酸21〜22 (EA)。
好ましいヒトモノクローナル抗GM-CSF抗体またはその機能的断片は、重鎖および軽鎖相補性決定領域 (CDR) 1〜3、ならびに重鎖および軽鎖の可変領域、ならびに全長重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を示す、参照SEQ ID NO 1〜48および52〜56の下でWO2006/111353に具体的に開示されているものである。
特に好ましいのは、以下を含む抗GM-CSF抗体またはその機能的断片である:SEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 1に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 2に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 3に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 4に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 5に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 6に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 7に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 8に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 9に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 10に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 11に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 12に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 13に記載される重鎖可変領域CDR3配列;またはSEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 56に記載される重鎖可変領域CDR3配列。
さらにより好ましくは、重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3配列の上記14通りの組み合わせのいずれかが、SEQ ID NO: 16に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO: 17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 18に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3をその軽鎖可変領域内にさらに含む抗体またはその機能的断片中に存在する。
特に好ましい抗GM-CSF抗体またはその機能的断片は、SEQ ID NO: 14に記載される重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO: 15に記載される重鎖可変領域CDR2配列、およびSEQ ID NO: 2に記載される重鎖可変領域CDR3配列を含み、かつその軽鎖可変領域内に、SEQ ID NO: 16に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO: 17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO: 18に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3をさらに含む。この抗GM-CSF抗体は、GM-CSFを中和するための最も好ましい化合物であり、WO 2006/111353にも記載されている。
さらなる態様によれば、抗GM-CSF抗体またはその機能的断片は、その軽鎖可変領域内に、SEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含む。軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 20に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 21に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 22に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 23に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 24記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 25に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 26に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 27に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 28に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 29に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 30に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 31に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 32に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 33に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 52に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 19に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 53に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片が好ましい。
さらなる態様によれば、抗GM-CSF抗体またはその機能的断片は、その軽鎖可変領域内に、SEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含む。軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 20に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 21に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 22に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 23に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 24記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 25に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 26に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 27に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 28に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 29に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 30に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 31に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 32に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 33に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 52に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 54に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 53に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片が好ましい。
さらなる態様によれば、抗GM-CSF抗体またはその機能的断片は、その軽鎖可変領域内に、SEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含む。軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 20に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 21に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 22に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 23に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 24記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 25に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 26に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 27に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 28に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 29に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 30に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 31に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 32に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 33に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 52に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片;または軽鎖可変領域がSEQ ID NO. 55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変領域がSEQ ID NO: 53に記載されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片が好ましい。
好ましい抗GM-CSF抗体またはその機能的断片は、その軽鎖可変領域内に、SEQ ID NO. 16に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO. 17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO. 18に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3を含み、かつその重鎖可変領域内に、SEQ ID NO. 14に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO. 15に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO. 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または56のうちのいずれかに記載されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
さらに好ましい態様において、抗体は、その軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 35に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 36に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 37に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 38に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 39に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 40に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 41に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 42に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 43に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 44に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 45に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 46に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 47に記載されるアミノ酸配列を含む;またはその軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 48に記載されるアミノ酸配列を含む。その軽鎖においてSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含み、かつその重鎖においてSEQ ID NO: 35に記載されるアミノ酸配列を含む抗GM-CSF抗体が、GM-CSFを中和するための最も好ましい化合物であり、WO 2006/111353にも記載されている。
上記の好ましい態様は、霊長類およびヒトGM-CSFの活性の中和剤として特に有益である抗体分子および/またはその機能的断片、好ましくはヒトモノクローナル抗体分子および/またはその機能的断片を提供する。これらの特に好ましい態様による抗体またはその機能的断片は、いくつかの理由で非常に有益である。
第1に、それらは、霊長類およびヒトGM-CSFを高度に特異的に認識する。すなわち、これらの特に好ましい態様による結合分子は、霊長類GM-CSFと他の霊長類コロニー刺激因子(例えば、霊長類G-CSFおよびM-CSF)との混合物から、霊長類GM-CSFを高度に識別し、同じ環境中の他のコロニー刺激因子は認識されない。同じことは、必要な変更を加えるとヒトGM-CSFにも当てはまる。このことは、これらの態様による抗体またはその機能的断片が、ヒトに投与された場合に、所望の標的にのみ特異的に結合しそれを中和することが予測され、他の所望されない標的は結合も中和もされないことを意味する。最終的に、このことは、インビボでの治療上の作用様式に関する高度の予測可能性をもたらす。
第2に、これらの特に好ましい態様による結合剤は、霊長類およびヒトGM-CSFに明らかな親和性で結合する。「明らかな親和性」は、約10-6 M (KD) またはそれよりも強い親和性による結合を含む。好ましくは、結合親和性が約10-12〜10-8 M、10-12〜10-9 M、10-12〜10-10 M、10-11〜10-8 M、好ましくは約10-11〜10-9 Mである場合に、結合は感知され得る(または高いもしくは特異的)と見なされる。したがって、本発明の結合剤は好ましくは、そのような範囲内のKDを有する。本明細書に記載される抗体分子に関して、約4×10-9 Mから低くは約0.04×10-9 MまでのKD値が観察され、後者は約40 pMに相当するという事実を考慮すると、本発明の抗体分子はそのような範囲内のKDを有することが好ましい。しかしながら、本発明の抗体分子は、上記のようなKDを有することもまた好ましい。水性媒体中でのこのような分子の動力学的結合速度は主として拡散律速であり、そのため局所拡散条件が生理学的条件下で可能にする速度を超えて改善され得ないため、この低いKDは主に動力学的解離速度、koffの結果として生じ、これは最も高い親和性の抗体結合剤ではおよそ10-5 s-1である。このことは、一方の、これらの態様のいずれかによるヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片と、他方のGM-CSFとの複合体がいったん形成されると、これが容易に分離しない、または少なくともすぐには分離しないことを意味する。生物学的活性の中和剤として意図される結合分子の場合、所望の中和効果は、通常、その生物学的活性が中和されようとする分子(本明細書では、霊長類およびヒトGM-CSF)に中和結合分子が結合したままである限り持続するため、これらの特徴は非常に有益である。そのため、その意図した標的に長時間結合したままである中和分子は、それに応じて長期間中和し続ける。
霊長類およびヒトGM-CSFに対する抗体またはその機能的断片の高い結合親和性は、付加的な利点を有する。通常、抗体またはその機能的断片は、サイズ依存的な様式で患者の血流から排除され、より小さな分子はより大きな分子よりも早く排出および排除される。2つのポリペプチドの複合体‐抗体または抗体断片と、それが結合しているGM-CSF‐は、抗体単独よりも明らかに大きいため、上述の低いkoffは、治療用中和剤が、GM-CSFに結合していない場合よりもゆっくりと患者の体内から排出および排除されるという効果を有する。したがって、中和活性の大きさが増すばかりでなく、インビボでのその持続期間も延びる。
上記の態様による結合剤について決定された中和活性は、驚くほど高い。本明細書において以下でさらに詳述するように、GM-CSF中和活性は、TF-1増殖阻害アッセイ法を用いてインビトロで測定した (Kitamura, T. et al. (1989). J Cell Physiol. 140, 323-34)。中和能の指標として、IC50値を測定した。IC50は、TF-1細胞増殖の最大半量阻害を誘発するのに必要な、これらの態様のいずれかによる抗体またはその機能的断片の濃度を表す。上記で指定されたヒトモノクローナル抗GM-CSF抗体またはその機能的断片に関して、およそ3×10-10 M、すなわち約0.3 nMというIC50値が決定された。したがって、該結合分子は、霊長類およびヒトGM-CSFの活性の非常に強力な中和剤である。
中和抗GM-CSF抗体の他の例は、Li el al., (2006) PNAS 103(10):3557-3562に記載されているヒトE10抗体およびヒトG9抗体である。E10およびG9は、IgGクラス抗体である。E10は、GM-CSFに対する870 pMの結合親和性を有し、G9は、GM-CSFに対する14 pMの親和性を有する。いずれの抗体もヒトGM-CSFに対する結合について特異的であり、TF-1細胞増殖アッセイ法で評価して、強力な中和活性を示す。他の例は、WO2006/122797に開示されているヒト抗GM-CSF抗体である。
抗GM-CSF受容体抗体であるGM-CSFアンタゴニストまたは中和剤もまた、本発明において使用することができる。このようなGM-CSFアンタゴニストには、GM-CSF受容体α鎖またはβ鎖に対する抗体が含まれる。本発明において使用される抗GM-CSF受容体抗体は、上記で説明したような任意の抗体形態、例えば、インタクト、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、抗体断片または誘導体、一本鎖、ヒト化、humaneered等であってよい。本発明における使用に適した抗GM-CSF受容体抗体、例えば中和高親和性抗体の例は、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,747,032号、およびNicola et al., Blood 82:15 1724, 1993を参照されたい)。
適切な抗体のなおさらなる配列は、いくつかの出願に提供されており、全体として参照により組み入れられる。抗GM-CSF抗体は、WO2006/122797、WO2007/049472、WO2007/092939、WO2009/134805、WO2009/064399、WO2009/038760に提供されている。GM-CSF受容体に対する抗体は、WO2007/110631に提供されている。
要約すると、抗GM-CSF抗体またはその機能的断片は、所望の抗原に対する高度の識別を示し、この抗原と極めて堅固に長時間結合し、それらが結合している間、長時間にわたって非常に強力な中和活性を示す。同時に、結合剤‐抗原複合体が長時間持続することは、この結合剤の体内からの排除を遅らせ、それによってインビボでの所望の治療効果の持続期間が延びる。好ましくは同様の特徴が、上記のようなGM-CSF受容体を認識する抗体にも当てはまる。
本発明による組成物は、好ましくは薬学的組成物である。本発明の態様に従って、「薬学的組成物」という用語は、患者、好ましくはヒト患者に投与するための組成物を指す。薬学的組成物または製剤は、通常、有効成分の生物学的活性が有効となるような形態をしており、そのため本明細書に記載される治療用途のために対象に投与することができる。通常、薬学的組成物は、担体、安定剤、および/または賦形剤の適切な(すなわち薬学的に許容される)製剤を含む。好ましい態様において、薬学的組成物は、非経口、経皮、腔内、動脈内、髄腔内、および/もしくは鼻腔内投与、または組織への直接注射のための組成物である。特に、該組成物が点滴または注射によって患者に投与されることが想定される。適切な組成物の投与は、様々な方法により、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、または皮内投与によって達成され得る。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。適切な薬学的担体の例は当技術分野で周知であり、それらには、緩衝生理食塩水、水、油/水乳濁液などの乳濁液、様々な種類の湿潤剤、無菌溶液、リポソーム等が含まれる。そのような担体を含む組成物は、周知の従来法により製剤化することができる。
本発明の態様に従って、「有効量」という用語は、炎症性障害および自己免疫障害のような、GM-CSFと関連する疾患の治療に有効であるGM-CSF中和化合物の量を指す。
好ましい投与量および好ましい投与方法は、投与後に、GM-CSF中和化合物が有効な投与量で血中に存在するというものである。投与スケジュールは、病状を観察し、かつ臨床検査においてGM-CSF中和化合物の血清レベルを解析した後に、例えば1週間に2回もしくは1週間に1回から2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回等のように投与間隔を延ばすか、またはあるいはそれに応じて投与間隔を短くするかのいずれかによって調整することができる。
薬学的組成物は、適切な用量で対象に投与することができる。投与計画は、主治医および臨床学的要因によって決定される。医学分野において周知であるように、任意のある患者に対する投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、全体的健康、ならびに同時に投与される他の薬物を含む多くの要因に依存する。
非経口投与用の調製物には、無菌の水溶液または非水性溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール溶液/水溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル、または固定油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、液体および栄養補充液、電解質補充液(リンゲルデキストロースに基づくものなど)等が含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等の保存剤および他の添加剤が存在してもよい。加えて、本発明による薬学的成物は、例えば、好ましくはヒト由来の血清アルブミンまたは免疫グロブリンのような、タンパク質性担体を含んでもよい。本発明による薬学的組成物は、上記の化合物に加えて、該薬学的組成物の意図される用途に応じて、さらなる生物活性剤を含み得ることが想定される。そのような剤は、胃腸系に作用する薬物、細胞増殖抑制剤として作用する薬物、高尿酸血症を予防する薬物、免疫反応を阻害する薬物(例えばコルチコステロイド)、炎症反応を調節する薬物、循環系に作用する薬物、および/または当技術分野で公知のサイトカインなどの剤であってよい。
例えば関節リウマチ (RA) におけるGM-CSF中和化合物の効果を解析するには、結果尺度は、例えば、薬物動態、免疫原性、ならびにDAS28、ACR20/50/70、および/またはEULAR反応基準、滑膜炎および骨浮腫に関するMRI画像法、ならびに患者報告結果によって測定されるRAの臨床徴候および症状を改善する能力より選択され得る。ACRは、圧痛関節数および腫脹関節数、疼痛スケール、患者および医師による改善評価、ならびにある特定の検査マーカーの改善を要約した尺度である。ACR20は、臨床徴候および症状の20パーセントの改善、例えば、圧痛関節数および腫脹関節数の20パーセントの改善、ならびに3つの他の疾患関連基準の20パーセントの改善を達成した試験参加者の割合を表す。
本発明による薬学的組成物などの薬物の開発における別の主要な課題は、薬物動態特性を予測可能に調節することである。この目的のため、薬物候補の薬物動態プロファイル、すなわち特定の薬物が所与の状態を治療する能力に影響を与える薬物動態パラメータのプロファイルを確立する。ある特定の疾患実体を治療するための薬物の能力に影響を及ぼす薬物の薬物動態パラメータには、これらに限定されないが、半減期、分布容積、肝臓初回通過代謝、および血清結合の程度が含まれる。所与の薬剤の有効性は、上述のパラメータの各々により影響を受け得る。「半減期」とは、投与した薬物の50%が生物学的過程、例えば、代謝、排泄等によって排除される時間を意味する。「肝臓初回通過代謝」とは、肝臓と最初に接触する際に、すなわち薬物が最初に肝臓を通過する間に薬物が代謝される傾向を意味する。「分布容積」とは、例えば、細胞内および細胞外空間、組織および器官等のような体内の様々な区画の至る所で薬物が滞留する程度、およびこれらの区画内の薬物の分布を意味する。「血清結合の程度」とは、薬物がアルブミンなどの血清タンパク質と相互作用および結合して、薬物の生物学的活性の減少または喪失をもたらす傾向を意味する。
薬物動態パラメータには、投与される所与量の薬物に関する生物学的利用能、遅延時間 (Tlag)、Tmax、吸収速度、および/またはCmaxもまた含まれる。「生物学的利用能」とは、血液区画中の薬物の量を意味する。「遅延時間」とは、薬物の投与と、血中または血漿中でのその検出および測定可能性との間の時間的遅れを意味する。「Tmax」とは、薬物の最大血中濃度に到達した時間であり、吸収は、投与部位から体循環への薬物の移動と定義され、「Cmax」とは、所与の薬物で最大限に得られる血中濃度である。その生物学的効果に必要な薬物の血中または組織内濃度に達するまでの時間は、すべてのパラメータにより影響を受ける。
本明細書で用いられる「毒性」という用語は、有害事象または重篤な有害事象という形で現れる、薬物の毒性作用を指す。これらの副作用は、一般的に、薬物の耐容性の欠如および/または投与後の局所耐性の欠如を指し得る。毒性には、薬物によって引き起こされる催奇形作用または発癌作用もまた含まれ得る。
本明細書で用いられる「安全性」、「インビボ安全性」、または「耐容性」という用語は、投与後(局所耐性)およびより長い薬物適用期間中に重篤な有害事象を直接的に誘発しない薬物の投与を定義する。「安全性」、「インビボ安全性」、または「耐容性」は、例えば、治療期間中および追跡期間中に定期的な間隔で評価することができる。測定には、臨床評価、例えば器官所見、および検査所見異常のスクリーニングが含まれる。臨床評価を実施して、正常所見からの逸脱を、NCI-CTCおよび/またはMedDRA基準に従って記録/コード化することができる。器官所見には、例えば有害事象共通用語基準 (Common Terminology Criteria for adverse events) v3.0 (CTCAE) に記載されている、アレルギー/免疫学、血液/骨髄、心不整脈、凝固等の基準が含まれ得る。試験することができる検査パラメータには、例えば、血液学、臨床化学、凝固プロファイル、および尿検査、ならびに血清、血漿、リンパ液または脊髄液、髄液等の他の体液の検査が含まれ得る。安全性はこのように、例えば、理学的検査、画像化技法(すなわち、超音波、x線、CTスキャン、磁気共鳴画像法 (MRI)、技術的装置(すなわち心電図)を用いた他の測定、生命徴候により、検査パラメータの測定および有害事象の記録により、評価することができる。本明細書で用いられる「有効で無毒性の用量」という用語は、大きな毒性作用を伴わずまたは本質的に伴わずに、関心対象の疾患を治癒させるかまたは安定化させるのに十分高い、GM-CSF中和化合物、好ましくは本明細書で定義される抗体の耐容量を指す。そのような有効で無毒性の用量は、例えば、当技術分野で記載されている用量漸増研究により決定することができ、重篤な有害副作用(用量制限毒性、DLT)を誘発する用量を下回るべきである。
本発明の製剤(場合により、本明細書において「物質の組成物」;「組成物」、または「溶液」とも称される)は、好ましくは、液体、凍結、凍結乾燥 (lyophilized)、凍結乾燥 (freeze-dried)、噴霧乾燥、および再構成製剤などの様々な物理的状態であってよく、液体および凍結が好ましい。
本明細書で用いられる「液体製剤」とは、それら自体の中の構成分子の自由運動によって特徴づけられるが、室温で分離する傾向がない液体として見出される、物質の組成物を指す。液体製剤には水性液体および非水性液体が含まれ、水性製剤が好ましい。水性製剤とは、溶媒または主な溶媒が水、好ましくは注射用水 (WFI) である製剤である。製剤中でのGM-CSF中和化合物の溶解は、均一または不均一であってよく、上記のように均一が好ましい。
いかなる適切な非水性液体も、それが本発明の製剤に安定性を提供するのであれば、使用することができる。好ましくは、非水性液体は親水性液体である。適切な非水性液体の実例には、グリセロール;ジメチルスルホキシド (DMSO);ポリジメチルシロキサン (PMS);エチレングリコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(「PEG」)200、PEG 300、およびPEG 400など;ならびにプロピレングリコール類、例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(「PPG」)425、およびPPG 725などが含まれる。
本明細書で用いられる「混合水性液体製剤/非水性液体製剤」とは、水、好ましくはWFIと、付加的な液体組成物との混合物を含む液体製剤を指す。
本明細書で用いられる場合、「製剤」または「組成物」とは、GM-CSF中和化合物(すなわち、活性薬物/物質)と、好ましくは液体状態である医薬製品に必要なさらなる化学物質および/または添加剤との混合物である。本発明の製剤には、薬学的製剤が含まれる。
製剤の調製は、活性薬物を含む種々の化学物質が、薬学的組成物などの最終医薬製品を製造するために組み合わされる工程を含む。本発明の製剤の活性薬物は、GM-CSF中和化合物である。
ある特定の態様において、製剤化されるGM-CSF中和化合物は、本質的に純粋かつ/または本質的に均一である(すなわち、製品関連および/または工程関連不純物であってよい混入物質、例えばタンパク質を実質的に含まない)。「本質的に純粋」という用語は、少なくとも約80重量%、好ましくは約90重量%の化合物、好ましくは少なくとも約95重量%の化合物、より好ましくは少なくとも約97重量%の化合物、または最も好ましくは少なくとも約98重量%の化合物を含む組成物を意味し、好ましくは化合物は単量体状態である。「本質的に均一」という用語は、溶液中の様々な安定剤および水の質量を除いて、少なくとも約99重量%の化合物を含む組成物を意味し、好ましくは化合物は単量体状態である。
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、各値または範囲(pH、濃度、割合、モル濃度、アミノ酸の数、時間等)において、所与の値の5%まで、10%まで、15%まで、またはこれを含め20%までであってよい変動が存在し得ることを意味すると理解される。例えば、製剤が約5 mg/mlの化合物を含むとすると、これは、製剤が4〜6 mg/ml、好ましくは4.25〜5.75 mg/ml、より好ましくは4.5〜5.5 mg/ml、およびさらにより好ましくは4.75〜5.25 mg/mlを有し得ることを意味すると理解され、最も好ましくは5 mg/mlである。本明細書で用いられる場合、「X〜Y」と規定される間隔は、「XとYとの間」と規定される間隔と同等と見なす。いずれの間隔も、上限およびまた下限を明確に含む。これは、例えば「5 mg/ml〜10 mg/ml」または「5 mg/mlと10 mg/mlの間」という間隔は、5、6、7、8、9、および10 mg/ml、ならびに任意の所与の中間値の濃度を含むことを意味する。
「安定」な製剤とは、その中のGM-CSF中和化合物が、貯蔵に際してその物理的安定性および/もしくは化学的安定性および/もしくは生物学的活性を本質的に保持し、かつ/または好ましくは色および/もしくは透明性の視覚的検査に際して、またはUV光散乱もしくはサイズ排除クロマトグラフィーにより測定して、対照試料と比較して凝集、沈殿、断片化、分解、および/もしくは変性の実質的徴候を示さない製剤である。タンパク質の安定性を測定するための様々なさらなる解析技法が、当技術分野において利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs. (1991)、およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993) に概説されている。
本明細書で用いられる「貯蔵中」とは、いったん調製された製剤が直ちに用いられず;むしろ、その調製後に、液体形態、凍結状態、または後に液体形態もしくは他の形態に再構成するための乾燥形態のいずれかで、貯蔵のためにパッケージングされていることを意味する。
GM-CSF中和化合物は、貯蔵中、および/または凍結/融解の間もしくは後、および/またはせん断応力(例えば、振盪段階もしくは濾過段階による)の間もしくは後に、それが凝集物またはサブビジブル/可視的粒子または断片/分解産物(例えば、前述の原因のうちの1つまたは複数による)を実質的に形成しない限りにおいて、好ましくは安定であると想定される。したがって、好ましくは、貯蔵開始時、または1回もしくは複数回の凍結/融解サイクルを実施する前、または振盪試験を実施する前のGM-CSF中和化合物の量と比較して、10%以下のGM-CSF中和化合物、より好ましくは8%以下、さらにより好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下が凝集物、粒子、および/または断片を形成すると想定される。この安定性は好ましくは、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、または少なくとも3カ月;好ましくは少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、または少なくとも6カ月;より好ましくは少なくとも9カ月または少なくとも12カ月;さらにより好ましくは少なくとも18カ月または少なくとも24カ月;および最も好ましくは少なくとも30カ月または少なくとも36カ月または少なくとも48カ月または少なくとも54カ月または少なくとも60カ月という時間範囲に当てはまる。好ましい貯蔵温度条件は、室温(約20℃〜約25℃)まで、より好ましくは約2〜8℃であり、最も好ましい時間範囲は、少なくとも3年またはさらには少なくとも4年である。いくつかの態様において、GM-CSF中和化合物は、温暖気候(例えば約30℃)下の室温において安定である。上記パラメータに従って該化合物が好ましくは安定である凍結/融解サイクルの回数は、少なくとも1サイクル、好ましくは少なくとも2、3、または4サイクル、より好ましくは少なくとも5、6、または7サイクル、および最も好ましくは少なくとも8、9、または10サイクルである。上記パラメータ(例えば+5℃±3℃の温度、実施例12dもまた参照されたい)に従って該化合物が好ましくは安定である、振盪、例えばGM-CSF中和化合物を輸送する際の振盪の日数は、少なくとも1日、好ましくは少なくとも2、3、または4日、より好ましくは少なくとも5、6、または7日、さらにより好ましくは少なくとも8、9、10、または11日、および最も好ましくは少なくとも12、13、または14日である。
別の方法では、GM-CSF中和化合物は、それが二量体、オリゴマー、または断片を形成しない限りにおいて、好ましくは安定であると想定される。言い換えれば、GM-CSF中和化合物の安定性は、分解(例えば断片化)タンパク質、粒子状タンパク質(例えば、可視的および/もしくはサブビジブル粒子を伴う)、および/または凝集タンパク質の割合が低い、溶液中の単量体タンパク質の割合に従って決定され得る。例えば、抗体などのGM-CSF中和化合物を含む本発明の製剤は、GM-CSF中和化合物の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%、さらにより好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%、および最も好ましくは少なくとも99%の単量体を含み得る。
「凝集物」とは、可溶性のままであり得る共有結合性または非共有結合性の二量体またはオリゴマー(すなわち、三量体または多量体などの高分子量実体)の形成をもたらす、タンパク質分子間の物理的相互作用を意味する。「凝集物」はまた、分解タンパク質および/または断片化タンパク質を含む。凝集物、例えば可溶性凝集物のサイズは、一般に1μm未満である。
「サブビジブル粒子」とは、サイズが1μmよりも大きくかつサイズがおよそ100μmまでの可逆的または不可逆的タンパク質粒子のいずれかの形成をもたらす、タンパク質分子(分解タンパク質または断片化タンパク質を含む)の物理的相互作用を意味する。可溶性の凝集物および/またはタンパク質分子(分解タンパク質または断片化タンパク質を含む)は、結合してサブビジブル粒子を形成し得る。
「可視的粒子」は、典型的に100μmよりも大きなサイズであり、例えばより小さなサブビジブル粒子、凝集物、もしくはタンパク質分子(分解タンパク質もしくは断片化タンパク質を含む)から形成された内因性タンパク質可視的粒子、または例えば貯蔵容器もしくは送達装置からなどの異物を含む外因性可視的粒子のいずれかであってよい。シリコン液滴などの、組み合わせ産物に由来するいくつかの外因性または内因性粒子は、液体であり粒子ではないが、いくつかのアッセイでは粒子として検出することができる。
上述したように、多くの異なる解析方法を用いて、GM-CSF中和化合物を含む製剤中の凝集物の存在およびレベルを検出することができる。これらには、例えば、未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウム‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析 (MALDI-TOF MS)、キャピラリーゲル電気泳動 (CGE)、サイズ排除クロマトグラフィー (SEC)、分析用超遠心分離 (AUC)、フィールドフロー分画 (FFF)、沈降速度、UV分光法、示差走査熱量測定、比濁法、ネフェロメトリー、サイズ排除‐高速液体クロマトグラフィー (SE-HPLC)、逆相‐高速液体クロマトグラフィー (RP-HPLC)、エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析 (ESI-MS)、およびタンデムRP-HPLC/ESI-MS、フローフィールドフロー分画技法、ならびに静的および/または動的光散乱が含まれるが、これらに限定されない。これらの方法は、単独かまたは組み合わせのいずれかで使用することができる。好ましくは、GM-CSF中和化合物を含む製剤中の凝集物および/または断片の存在およびレベルを検出するための解析方法は、SE-HPLCなどのサイズ排除クロマトグラフィー、分析用超遠心分離、および非対称フィールドフロー分画である。GM-CSF中和化合物の生物学的活性を決定する方法は、例えば(固定化)GM-CSF(またはGM-CSF受容体)へのその結合の程度の測定であり、いわゆる表面プラズモン共鳴 (SPR) である。
タンパク質を含む製剤に伴う共通の課題は、時間、熱、またはせん断応力による凝集物の不可逆的蓄積である。典型的に、凝集物が沈殿する際に、それらは検出するのが容易である大きな粒子を形成する。しかしながら、より小さい非共有結合性の可溶性凝集物は、沈殿する大きな粒子の前駆体である場合が多く、小さいほど、検出および定量化するのがより困難である。したがって、タンパク質製剤中のタンパク質凝集を検出および定量化する方法は、評価される凝集物の種類に基づく必要がある。
上記の方法の中で、タンパク質製剤中の可溶性の共有結合性凝集物の存在および/または量を決定するために提案される方法は、SEC/光散乱、SDS-PAGE、CGE、RP-HPLC/ESI-MS、FFF、およびAUCである。タンパク質製剤中の可溶性の非共有結合性凝集物の存在および/または量を決定するために提案される方法は、SEC、PAGE、SDS-PAGE、CGE、FFF、AUC、および動的光散乱である。タンパク質製剤中の不溶性の非共有結合性凝集物の存在および/または量を決定するために提案される方法は、UV分光法、比濁法、ネフェロメトリー、顕微鏡観察、AUC、非対称フィールドフロー分画、および動的光散乱である。
サブビジブル粒子はまた、分解タンパク質、凝集物、またはより小さなサブビジブル粒子から形成され得る。サブビジブル粒子の存在および/または量を決定するために提案される方法は、光散乱、例えば静的(例えば、多角度レーザー光散乱による)もしくは動的(例えば、光子相関分光法による)など、ナノ粒子トラッキング解析(例えばMalvern Instruments、Malvern, UKのNTA)、光遮蔽、または他の液体粒子計測システム、例えば、顕微鏡検査、動的イメージング(マイクロ流イメージング、例えば、Brightwell (Cell Biosciences、Ottawa, CA) またはFluid Imaging Technologies (Yarmouth, ME) によるFLOWCAM(登録商標)Image粒子分析計等)、フローサイトメトリー、および電子インピーダンス(コールター)計測などである。
さらに、本発明の製剤は好ましくは、GM-CSF中和化合物が、液体または凍結形態のいずれか、好ましくは液体形態での貯蔵過程にわたって安定であるように、改善された長期貯蔵を提供する。本明細書で用いられる場合、「長期」貯蔵という語句は、製剤が少なくとも1カ月、2カ月もしくは3カ月またはそれ以上の間、6か月またはそれ以上の間、ならびに好ましくは1年およびそれ以上、またはさらには2年、3年もしくは4年もしくは5年およびそれ以上の間、貯蔵され得ることを意味すると理解される。長期貯蔵はまた、薬学的組成物が2〜8℃または周囲温度のいずれか、好ましくは2〜8℃で貯蔵され、それによって製剤が好ましくは、本明細書に記載されるような程度までその生物学的活性を失わない、および/または本明細書に記載されるような程度まで凝集物を形成しない、および/または本明細書に記載されるような程度まで単量体を含むことを意味すると理解される。これらの特性に関する試験は、本明細書の他所に記載されている。
本発明の1つの局面において、製剤中のGM-CSF中和化合物は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月;少なくとも4カ月、少なくとも5カ月;少なくとも6カ月;少なくとも12カ月;少なくとも24カ月;少なくとも36カ月;少なくとも48カ月;少なくとも60カ月の間、液体形態で安定である。上記で列挙された期間の中間の範囲、例えば9カ月等もまた、本発明の一部であることが意図される。加えて、上限および/または下限として上記で列挙された値のいずれかの組み合わせを用いる値の範囲も、含まれることが意図される。好ましくは、製剤は、室温(約20℃〜25℃)で少なくとも1カ月間安定であり、および/または約2〜8℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12カ月間安定であり、またはより好ましくは約2〜8℃で少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、もしくはさらには少なくとも5年間安定である。
安定性の別の重要な局面は、本発明による組成物中のGM-CSF中和化合物が、貯蔵期間中に、貯蔵条件、特に温度、および考えられ得る温度変化において、その生物学的活性または効力を維持することである。活性または効力は、例えば、化合物の中和能自体(上記のような細胞に基づくアッセイ法で測定され得る)によって、またはGM-CSFもしくはGM-CSF受容体に結合するGM-CSF中和化合物の能力によって反映される。結合親和性は、SPR、または例えばBiacoreもしくはスキャッチャードアッセイ法といった当技術分野で周知の他の方法によって評価することができる。
本発明の製剤は、例えば水溶液中の、本明細書に記載されるGM-CSF中和化合物に緩衝液、浸透圧調整剤、ならびに界面活性剤、アミノ酸、抗酸化剤、および/またはキレート剤のうちの1つまたは複数を添加することによって調製され、この場合には界面活性剤が好ましい。当業者は、製剤中に含まれる様々な成分の組み合わせが任意の適切な順序で行われ得ることを理解するであろう。例えば、緩衝液は最初、中間、または最後に添加することができ、浸透圧調整剤は最初、中間、または最後に添加することができ、界面活性剤、アミノ酸、抗酸化剤、および/またはキレート剤のうちの1つまたは複数もまた最初、中間、または最後に添加することができる。これらの化学物質のいくつかは、ある特定の組み合わせにおいて不適合となり得、したがって類似の特性を有するが関連混合物中で適合可能である異なる化学物質と容易に置換されることもまた、当業者によって理解される。
本発明の好ましい局面において、製剤は緩衝液を含む。本明細書において用いられる「緩衝液」または「緩衝剤」という用語は、pHを所望の範囲内に維持する剤を含む。緩衝液とは、弱酸とその共役塩基、または弱塩基とその共役酸の混合液からなる水溶液である。それは、少量の強酸または強塩基が添加された場合に、溶液のpHがほとんど変化しないという特性を有する。緩衝液は、多種多様な化学的適用において、pHをほぼ一定値に維持する手段として用いられる。一般的に、本発明の製剤中に適用される場合の緩衝液は、好ましくはGM-CSF中和化合物を安定化する。
本明細書で用いられる「アミノ酸緩衝液」は、例えば、アミノ酸塩基、例えばヒスチジンとその共役塩を含む。アミノ酸緩衝液の例は、ヒスチジン/ヒスチジン塩化物である。この例は、好ましくは本発明において適用される。
本明細書に記載される製剤の好ましいpHは、以下の範囲より選択され得る:約4〜約10、好ましくは約4〜約6または約5〜約7、より好ましくは約5.5〜約6.5。最も好ましくは、pHは約または正確に5.8である。したがって、溶液をpH 5〜7に維持し得る緩衝液が好ましく用いられる。pHの値/範囲に関して用いられる場合の「約」という用語は、好ましくは、引用値の+/- 20%の範囲を有する数値を意味する。薬学的組成物のpHが生理学的レベルまたはその近くに設定される場合、投与の際の患者の安楽が最大となる。特定の製剤中のGM-CSF中和化合物の安定性および溶解度を最大にするために、必要に応じてpHを調整することができ、したがって生理学的範囲外であるが、好ましくは患者にとって許容可能であるpHは、本発明の範囲内である。
本明細書に記載される製剤において使用され得る緩衝液の非限定的な例には、ヒスチジン、コハク酸、グルコン酸、クエン酸、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、tris(トロメタモール)、Bis-Tris、MOPS、ACES、TES、HEPES、EPPS、エチレンジアミン、リン酸、マレイン酸/リン酸、2-モルホリノエタンスルホン酸 (MES)、リン酸、酢酸、およびジエタノールアミンが含まれる。
好ましい緩衝液は、ヒスチジン、酢酸、およびクエン酸緩衝液である。より好ましくは、好ましくはpH 5〜7、より好ましくはpH 5.5〜6.5、さらにより好ましくはpH 5.8のヒスチジン緩衝液が、本発明の製剤中に適用される。本発明において適用される緩衝液は当技術分野で周知であり、公知の方法によって製造され、商業的供給業者から入手可能である。いくつかの態様において、緩衝液のpHは水酸化ナトリウムなしで調製される(0 mM NaOH)。1つの態様において、緩衝液はアミノ酸とその塩との混合物、例えばヒスチジンとヒスチジン塩との混合物であり、それらは緩衝液調製中に別の酸または塩基によるpH調整が必要とならないような割合に予め測定することができる。
いくつかの態様において、製剤は水酸化ナトリウム (NaOH) をさらに含む。特定の態様において、製剤は、1〜200 mM、または50 mM未満、40 mM未満、35 mM未満、30 mM未満、25 mM未満、20 mM未満、もしくは15 mM未満、例えば10 mM NaOHまたはそれ未満、例えば5 mMまたは1 mM水酸化ナトリウムなどを含む。
GM-CSF中和化合物および緩衝液に加えて、本発明による製剤はまた、安定化剤(安定剤)を含むがこれに限定されない他の物質を含み得る。
したがって、好ましい局面において、製剤は、浸透圧調整剤としても作用し得る安定剤を含む。「安定化剤」という用語は、特にGM-CSF中和化合物の製剤の安定性を改善するか、またはさもなくば増強する剤を指す。浸透圧調整剤である安定化剤は、非還元糖、糖アルコール、またはそれらの組み合わせであってよい。本発明の液体組成物中の浸透圧調整剤は、溶液の浸透圧、すなわちモル浸透圧濃度が、正常な生理学的体液と本質的に同じであり、したがって組成物と生理学的体液との間の差次的イオン濃度による投与後の膨張または組成物の急速な吸収を防ぐことを保証する。一般的に、本明細書に記載される製剤の性質は、製剤のモル浸透圧濃度が約240〜約500 mOsmol/kg、より好ましくは約300〜約450 mOsmol/kg、さらにより好ましくは約350〜約450 mOsmol/kg、最も好ましくは約400 mOsmol/kgというものである。
好ましくは、安定化剤/浸透圧調整剤は、スクロースもしくはトレハロースなどの非還元糖のうちの1つもしくは複数、またはマンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコールのうちの1つもしくは複数であってよく、また非還元糖と糖アルコールとの組み合わせも好ましい。ある特定の態様において、組成物中の安定化剤/浸透圧調整剤の濃度は、以下の範囲より選択される:1〜15% (w/v)、2〜10% (w/v)、3〜8% (w/v)、4〜6,5% (w/v)、4,5〜6% (w/v)。特定の態様において、その濃度は約5〜6% (w/v) である。本発明の製剤中に適用される好ましい安定剤/浸透圧調整剤は、好ましくは5% (w/v) のソルビトールである。
好ましい態様において、本明細書に記載される製剤は1つまたは複数の付加的な賦形剤を含む。好ましくは、賦形剤は、界面活性剤、アミノ酸、抗酸化剤、キレート剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
溶液中(また乾燥形態または凍結形態)のGM-CSF中和化合物を好ましくは安定化する、化学添加剤、共溶質、または共溶媒とも称される賦形剤を、本発明の製剤に添加することができる。好ましくは、賦形剤はGM-CSF中和化合物の安定性に寄与するが、賦形剤は、その他に製剤の物理的、化学的、および生物学的特性に寄与し得ることが理解されるべきである。賦形剤は当技術分野で周知であり、公知の方法によって製造され、商業的供給業者から入手可能である。
好ましい賦形剤は界面活性剤である。「界面活性剤」という用語は一般に、空気/溶液界面誘発性のストレスおよび溶液/表面誘発性のストレスからGM-CSF中和化合物を保護する剤を含む。これらの界面応力は、タンパク質凝集および粒子形成を誘導して、許容されない製品品質をもたらし得る。界面応力の例は、タンパク質とi) 空気、ii) ゴムのプランジャー、ピストン、ガラス、充填済みシリンジなどの容器閉鎖材料、iii) 鋼製タンク、管類、およびポンプなどの生産関連材料、iv) 凍結/融解中の氷等との接触であってよい。製剤への界面活性剤の添加は、タンパク質と液相/気相界面、氷/液相界面を含む疎水性界面との相互作用、およびタンパク質間相互作用を減少させる。界面活性剤は、凍結、混合、濾過、およびポンピングのような操作中に生じるサブビジブルおよび可視的粒子の量を減少させる。
界面活性剤の例には、非限定的に、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート(例えば、ポリソルベート80 (PS80) またはポリソルベート20 (PS20)(ポリソルベートは一般にTWEEN(登録商標)、ICI Americasという商品名で知られている)など;ポロキサマー(例えばポロキサマー188);Triton、ドデシル硫酸ナトリウム (SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、ステアリルスルホベタイン、ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、ステアリルサルコシン、リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、セチルベタイン、ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノレアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン(例えばラウロアミドプロピル)、ミリスタルニドプロピル (myristarnidopropyl)-ジメチルアミン、パルミドプロピル-ジメチルアミン、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ココイルメチルタウリンナトリウムまたはメチルオフェイル (ofeyl) タウリン二ナトリウム;ならびにMonaquatシリーズ(Mona Industries, Inc.、Paterson, NJ.)、ポリエチレングリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレンとプロピレングリコールのコポリマー(例えば、プルロニック、PF68)が含まれる。好ましくは、本明細書に記載される製剤中に用いられる界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー、およびそれらの組み合わせからなる群のうちの1つまたは複数より選択される。
添加される界面活性剤の量は、例えばSEC-HPLCを用いてアッセイして、それが許容可能なレベルのタンパク質の凝集を維持し、かつまたマイクロ流イメージングまたはFlowCAMなどの、光遮蔽、顕微鏡検査、および動的イメージングに基づいた粒子計測システムにより測定して、貯蔵、製造、凍結/融解、輸送等の間に形成される非可視的または可視的粒子の量を減少させるというものである。
いくつかの態様において、製剤中の界面活性剤の量は、臨界凝集濃度 (CAC) に基づいて決定される。CACとは、界面活性剤がタンパク質と相互作用し始める時の濃度である。例えば張力計からの表面張力測定値をグラフ上にプロットして、図7と同様の曲線を得ることができる。不連続の最初の点における界面活性剤濃度がCACである。いくつかの態様において、製剤中の界面活性剤の量は、CACよりも高い量である。いくつかの態様において、界面活性剤の量は、CACよりも高いが臨界ミセル濃度 (CMC) 未満である。
好ましい態様において、本発明の製剤は、200 mg/mLまでのタンパク質濃度に対して約0.001% (w/v)〜約1% (w/v) の濃度で、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の界面活性剤を含む。
より好ましい態様において、ポリソルベート20のタンパク質に対する比率は、約0.01:1〜約3:1、好ましくは約0.05:1〜約2:1、より好ましくは約0.1:1〜約1.5:1、さらにより好ましくは約0.1:1〜約0.8:1、および最も好ましくは約0.1:1〜約0.2:1である。80 mg/mLのタンパク質濃度に対して、ポリソルベート20濃度は約0.001% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、好ましくは約0.005% (w/v)〜約0.15% (w/v) であり、より好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.1% (w/v) であり、さらにより好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.06% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.01% (w/v) である。150 mg/mLのタンパク質濃度に対して、ポリソルベート20濃度は約0.001% (w/v)〜約0.4% (w/v) であり、好ましくは約0.006% (w/v)〜約0.25% (w/v) であり、より好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.18% (w/v) であり、さらにより好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.1% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.02% (w/v) である。
別の態様において、ポリソルベート20のタンパク質に対する比率は、約0.3:1〜約3:1、好ましくは約0.5:1〜約2.0:1、より好ましくは約0.5:1〜約1.5:1、さらにより好ましくは約0.8:1〜約1.2:1、および最も好ましくは約1:1である。80 mg/mLのタンパク質濃度に対して、ポリソルベート20濃度は約0.02% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、好ましくは約0.03% (w/v)〜約0.13% (w/v) であり、より好ましくは約0.05% (w/v)〜約0.08% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.07% (w/v) である。150 mg/mLのタンパク質濃度に対して、ポリソルベート20濃度は約0.04% (w/v)〜約0.4% (w/v) であり、好ましくは約0.06% (w/v)〜約0.25% (w/v) であり、より好ましくは約0.1% (w/v)〜約0.15% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.13% (w/v) である。
別のより好ましい態様において、ポリソルベート80のタンパク質に対する比率は、約0.01:1〜約3:1、好ましくは約0.05:1〜約2:1、より好ましくは約0.1:1〜約1.5:1、さらにより好ましくは約0.1:1〜約0.6:1、および最も好ましくは約0.3:1〜約0.6:1である。80 mg/mLのタンパク質濃度に対して、ポリソルベート80濃度は約0.001% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、好ましくは約0.004% (w/v)〜約0.14% (w/v) であり、より好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.1% (w/v) であり、さらにより好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.05% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.04% (w/v) である。150 mg/mLのタンパク質濃度に対して、ポリソルベート80濃度は約0.001% (w/v)〜約0.4% (w/v) であり、好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.26% (w/v) であり、より好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、さらにより好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.08% (w/v) であり、最も好ましくは約0.04% (w/v) である。
別の態様において、ポリソルベート80のタンパク質に対する比率は、約0.3:1〜約3:1、好ましくは約0.5:1〜約2.0:1、より好ましくは約0.5:1〜約1.5:1、さらにより好ましくは約0.8:1〜約1.2:1、および最も好ましくは約1:1である。80 mg/mLのタンパク質濃度に対して、ポリソルベート80濃度は約0.02% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、好ましくは約0.04% (w/v)〜約0.14% (w/v) であり、より好ましくは約0.06% (w/v)〜約0.09% (w/v) であり、最も好ましくは約0.07% (w/v) である。150 mg/mLのタンパク質濃度に対して、ポリソルベート80濃度は約0.04% (w/v)〜約0.4% (w/v) であり、好ましくは約0.06% (w/v)〜約0.27% (w/v) であり、より好ましくは約0.1% (w/v)〜約0.16% (w/v) であり、最も好ましくは約0.13% (w/v) である。
他の好ましい賦形剤は、抗酸化剤またはキレート剤であってよい。本明細書で用いられる場合、「抗酸化剤」とは、他の分子の酸化を遅らせるかまたは防ぐことができる分子である。酸化は、物質から酸化剤に電子を移動させる化学反応である。溶液中で過酸化物を形成し得るポリソルベート80またはポリソルベート20などの界面活性剤の添加によって誘導される酸化の影響を減少させるために、酸化剤またはキレート剤を使用することができる。アスコルビン酸(ビタミンC)、リポ酸、メラトニン、尿酸、カロテン、レチノール、トコフェロールおよびトコトリエノール、例えばα-トコフェロール(ビタミンE)、ユビキノン(コエンザイムQ) メチオニン、システイン、クエン酸、EDTA、またはDTPAなどの抗酸化剤および/またはキレート剤を製剤に添加することができる。より好ましくは、約3:1〜約156:1という抗酸化剤:界面活性剤のモル比で、または約1:1〜約150:1という抗酸化剤:タンパク質のモル比で、メチオニン、システイン、またはクエン酸が添加される。抗酸化剤:タンパク質に関してより好ましくは、その比率は、約2:1〜約100:1、さらにより好ましくは約3:1〜約20:1、最も好ましくは約3:1〜約8:1である。
製剤中のタンパク質を安定化するために添加され得る別の賦形剤は、アミノ酸である。例えば、本発明の組成物中で用いられるアミノ酸は、スレオニン、セリン、プロリン、アラニン、バリン、グルタミン、メチオニン、システイン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、リジン、フェニルアラニン、ロイシン、アスパラギン、トリプトファン、チロシン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。より好ましいアミノ酸は、アルギニン、スレオニン、セリン、アラニン、グルタミン、メチオニン、グリシン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
本発明の組成物中で用いられるアミノ酸濃度は、好ましくは約10 mM〜約100 mM、より好ましくは約50 mM〜約100 mMの範囲である。
さらなる賦形剤の例には、糖/ポリオール、例えば、スクロース、ラクトース、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルトース、イノシトール、トレハロース、グルコースなど;ポリマー、例えば、血清アルブミン(ウシ血清アルブミン (BSA)、ヒトSA、または組み換えHA)、デキストラン、PVA、ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC)、ポリエチレンイミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン (PVP)、ヒドロキシエチルセルロース (HEC)、ヒドロキシエチルスターチ (HES) など;非水性溶媒、例えば、多価アルコール(例えば、PEG、エチレングリコール、およびグリセロール)、ジメチルスルホキシド (DMSO)、およびジメチルホルムアミド (DMF) など;ならびに種々の賦形剤、例えば、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、トリメチルアミンN-オキシド、ベタイン、金属イオン(例えば、亜鉛、銅、カルシウム、マンガン、およびマグネシウム)、CHAPS、モノラウレート、2-O-β-マンノグリセレートなど、または上記の任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
「凍結保護剤」は、生産、凍結、貯蔵、取扱い、流通、再構成、または使用中に凍結タンパク質に安定性を提供する物質を含む。特定の局面において、「凍結保護剤」は、凍結工程によって誘発されるストレスからタンパク質を保護する物質を含む。凍結保護剤は、凍結乾燥保護剤の効果を有し得る。凍結保護剤の非限定的な例には、糖、例えば、スクロース、グルコース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、マンノース、およびラクトースなど;ポリマー、例えば、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリビニルピロリドン (PVP)、およびポリエチレングリコールなど;界面活性剤、例えばポリソルベート(例えば、PS-20またはPS-80)など;ならびにアミノ酸、例えば、グリシン、アルギニン、ロイシン、およびセリンなどが含まれる。生体系において低い毒性を示す凍結保護剤が、一般的に用いられる。
本明細書に記載される二糖類は、凍結乾燥保護剤または凍結保護剤として作用し得る。「凍結乾燥保護剤」は、凍結乾燥およびその後の貯蔵の際にタンパク質の化学的または物理的不安定性を防ぐまたは低下させる物質を含む。1つの局面において、凍結乾燥保護剤は、乾燥工程中に組成物から水が除去される時に、タンパク質における化学的または物理的不安定性を防ぐまたは低下させる。さらなる局面において、凍結乾燥保護剤は、水素結合を介してタンパク質の適切な立体構造を維持するのを助けることによって、タンパク質を安定化する。
したがって、1つの局面において、本明細書に記載される二糖類は、凍結中にGM-CSF中和化合物を安定化するのに役立ち得る。凍結中の保護は二糖類の絶対濃度に依存し得るため (Carpenter et al., Pharm. Res. (1997), 14:969-975)、安定性を最大にするためには、5%よりも高い濃度が必要であり得る。
1つの態様では、凍結乾燥保護剤が、本明細書に記載される製剤に添加される。本明細書で用いられる「凍結乾燥保護剤」という用語は、非晶質ガラス様マトリックスを提供することにより、および水素結合によりタンパク質と結合して、乾燥工程中に除去される水分子を置換することにより、凍結乾燥または脱水工程(一次および二次凍結乾燥サイクル)中にタンパク質に安定性を提供する剤を含む。これは、タンパク質立体構造を維持し、凍結乾燥サイクル中のタンパク質分解を最小限にし、かつ長期の製品安定性を改善することを助ける。凍結乾燥保護剤は凍結乾燥前の製剤に「凍結乾燥保護量」で添加されるが、この量とは、凍結乾燥保護量の凍結乾燥保護剤の存在下でGM-CSF中和化合物を凍結乾燥させた後に、該化合物が凍結乾燥および貯蔵時にそれらの物理的および化学的な安定性および完全性を本質的に保持することを意味する。
凍結乾燥保護剤の非限定的な例には、糖、例えばスクロースまたはトレハロースなど;アミノ酸、例えば、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、またはヒスチジンなど;メチルアミン、例えばベタインなど;リオトロピック (lyotropic) 塩、例えば硫酸マグネシウムなど;ポリオール、例えば3価またはより多価の糖アルコールなど、例えば、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなど;ポリエチレングリコール;プルロニック;ならびにそれらの組み合わせが含まれる。好ましくは凍結乾燥保護剤は、安定化剤について上記した通りである。製剤に添加される凍結乾燥保護剤の量は、一般的に、タンパク質製剤が凍結乾燥された時に、タンパク質の許容できない程度の分解/凝集を引き起こさない量である。
さらに好ましい賦形剤は、増量剤であってよい。本明細書で用いられる「増量剤」という用語は、薬学的製品と直接相互作用することなく、凍結乾燥製品の構造を提供する剤を含む。薬学的に洗練されたケーキを提供することに加えて、増量剤はまた、崩壊温度を変更すること、凍結融解保護を提供すること、および長期貯蔵に対するタンパク質の安定性を増強することに関して有用な品質を与え得る。増量剤の非限定的な例には、マンニトール、グリシン、ラクトース、およびスクロースが含まれる。増量剤は、結晶性(グリシン、マンニトール、または塩化ナトリウムなど)または非晶質性(デキストラン、ヒドロキシエチルスターチなど)であってもよく、一般的にタンパク質製剤中で0.5%〜10%の量で用いられる。
好ましくは、本発明の製剤中に適用される増量剤は、美的に許容され、均一であり、または力学的に強力であるケーキの形成を促進する。増量剤はまた、好ましくは、開放細孔構造の形成、ならびに再構成の容易性および速度も促進する。増量剤はまた、好ましくは、ケーキの崩壊、共晶融解、または残存水分の保持を減少させるまたは防ぐ。別の局面において、増量剤は好ましくは、ストレス(例えば、物理的および化学的ストレス)に対するGM-CSF中和化合物の保護を助け、かつタンパク質活性の維持を助ける。
いくつかの態様において、製剤は任意に保存剤を含み得る。「保存剤」とは、細菌活性を減少させるために本明細書における製剤に添加され得る化合物である。保存剤の添加は、例えば、複数回使用(複数回投与)製剤の生産を容易にし得る。潜在的保存剤の例には、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンズアルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチル塩化アンモニウムの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが含まれる。他の種類の保存剤には、芳香族アルコール、例えば、フェノール、ブチルおよびベンジルアルコールなど、アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベンなど、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、ならびにm-クレゾールが含まれる。本明細書において最も好ましい保存剤はベンジルアルコールである。
したがって、より好ましい態様において、本発明の製剤は、約50 mg/ml〜約200 mg/mlのGM-CSF中和化合物と、pH約5〜約7の、ヒスチジン、酢酸、およびクエン酸からなる群より選択される緩衝液を含む、長期貯蔵用の液体製剤、好ましくは水性製剤であり、該製剤は、安定剤/浸透圧調整剤として、スクロース、トレハロース、マンニトール、および/またはソルビトールのうちの1つまたは複数を、ならびにポリソルベート20、ポリソルベート80およびポロキサマーからなる群より選択される1つまたは複数の界面活性剤を付加的に含み得る。
特定の好ましい態様において、本発明の製剤は、約50 mg/ml〜約200 mg/ml、より好ましくは約80 mg/ml〜約150 mg/mlのGM-CSF中和化合物、およびpH約5.5〜約6.5、より好ましくは5.8の、約20 mM〜約40 mM、より好ましくは約30 mMの濃度のヒスチジン緩衝液を含む、長期貯蔵用の液体製剤、好ましくは水性製剤であり、該製剤は、約4%〜約6%、より好ましくは約5% (w/v) のソルビトール、および約0.005% (w/v)〜約0.5% (w/v)、好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.04% (w/v) の濃度のポリソルベート、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80を付加的に含み得る。
上記の好ましい製剤においてポリソルベート20および約80 mg/mLというタンパク質濃度が用いられる場合、ポリソルベート20濃度は約0.001% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.11% (w/v) であり、より好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.06% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.01% (w/v) である。用いられるタンパク質濃度が約150 mg/mLである場合、ポリソルベート20濃度は約0.001% (w/v)〜約0.4% (w/v) であり、好ましくは約0.006% (w/v)〜約0.25% (w/v) であり、より好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.18% (w/v) であり、さらにより好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.1% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.02% (w/v) である。
別の態様において、上記の好ましい製剤においてポリソルベート20および約80 mg/mLというタンパク質濃度が用いられる場合、ポリソルベート20濃度は約0.02% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、好ましくは約0.03% (w/v)〜約0.13% (w/v) であり、より好ましくは約0.05% (w/v)〜約0.08% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.07% (w/v) である。用いられるタンパク質濃度が約150 mg/mLである場合、ポリソルベート20濃度は約0.04% (w/v)〜約0.4% (w/v) であり、好ましくは約0.06% (w/v)〜約0.25% (w/v) であり、より好ましくは約0.1% (w/v)〜約0.15% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.13% (w/v) である。
上記の好ましい製剤においてポリソルベート80および約80 mg/mLというタンパク質濃度が用いられる場合、ポリソルベート80濃度は約0.001% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、好ましくは約0.004% (w/v)〜約0.14% (w/v) であり、より好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.1% (w/v) であり、さらにより好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.05% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.04% (w/v) である。用いられるタンパク質濃度が約150 mg/mLである場合、ポリソルベート80濃度は約0.001% (w/v)〜約0.4% (w/v) であり、好ましくは約0.007% (w/v)〜約0.26% (w/v) であり、より好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、さらにより好ましくは約0.01% (w/v)〜約0.08% (w/v) であり、および最も好ましくは約0.04% (w/v) である。
別の態様において、上記の好ましい製剤においてポリソルベート80および約80 mg/mLというタンパク質濃度が用いられる場合、ポリソルベート80濃度は約0.02% (w/v)〜約0.2% (w/v) であり、好ましくは約0.04% (w/v)〜約0.14% (w/v) であり、より好ましくは約0.06% (w/v)〜約0.09% (w/v) であり、最も好ましくは約0.07% (w/v) である。用いられるタンパク質濃度が約150 mg/mLである場合、ポリソルベート80濃度は約0.04% (w/v)〜約0.4% (w/v) であり、好ましくは約0.06% (w/v)〜約0.27% (w/v) であり、より好ましくは約0.1% (w/v)〜約0.16% (w/v) であり、最も好ましくは約0.13% (w/v) である。
さらに、1つの態様において、中和抗GM-CSF抗体またはその機能的断片の本発明の製剤は、約80 mg/ml〜約150 mg/mlの中和抗体、約5% (w/v) のソルビトール、約30 mMのL-ヒスチジン、約0.02%〜約0.04% (w/v) のポリソルベート80を含み、約5.8のpHを有する。
さらに、1つの態様において、中和抗GM-CSF抗体またはその機能的断片の本発明の製剤は、約80 mg/mlの中和抗体、約5% (w/v) のソルビトール、約30 mMのL-ヒスチジン、約0.04% (w/v) のポリソルベート80を含み、約5.8のpHを有する。
さらに、1つの態様において、中和抗GM-CSF抗体またはその機能的断片の本発明の製剤は、約150 mg/mlの中和抗体、約5% (w/v) のソルビトール、約30 mMのL-ヒスチジン、約0.04% (w/v) のポリソルベート80を含み、約5.8のpHを有する。
組成物のある特定の成分は、当技術分野で公知の代替物と交換され得ることが理解されるべきである。しかしながら、当業者はまた、ある特定の成分の含有が、化学的適合性、pH、浸透圧、および安定性を含むがこれらに限定されない理由で、他の成分、濃度、または製剤の調製方法の使用を妨げることを理解するであろう。
本発明の液体製剤は、使用準備済の装置中などでの皮下投与に適した低くかつ実現可能な粘度を有することが有益である。したがって、本発明による製剤の粘度は好ましくは、約50〜約1000 [1/秒]のせん断速度および約20℃の温度において、20 mPa*sよりも低い。より好ましくは、粘度は上記条件において15 mPa*sよりも低い。
いくつかの態様において、本発明の液体製剤の粘度および/または安定性は、長期にわたって低い射出力 (force of injection) を維持する。例えば充填済みシリンジ内の製剤の力測定は、シリンジを保持するように試験機構を適合させるアタッチメントを備えたINSTRON(登録商標)一般的圧縮試験システム (Norwood, MA) などの機械で行われる。本明細書に記載される製剤は、手動装置および自動(例えば機械支援)装置の両方による皮下投与の可能性を提供する。1つの態様において、射出力は摺動力 (glide force) である。いくつかの態様において、摺動力は25 N未満である。他の態様において、摺動力は0〜20 N、2〜15 N、または4〜11 Nである。製剤が低い射出力を維持し得る期間は、シリンジに充填された後、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、15カ月、18カ月、24カ月、3〜6カ月、3〜9カ月、6〜9カ月、6〜12カ月、9〜15カ月、12〜18カ月、18〜30カ月、または24〜36カ月である。製剤は、冷蔵庫内、例えば2〜8℃もしくは5℃で、または室温、例えば18〜25℃もしくは25℃で貯蔵され得る。
本明細書において言及したように、本願は一般的に、GM-CSF中和化合物を含む製剤にいくつかの物質を添加することが、製剤中のこれらの化合物の凝集および/または分解/断片化を減少させ得るという発見に関する。どのような理由で製剤中のGM-CSF中和化合物が凝集または分解するかにかかわらず、本明細書に記載される物質の添加は、製剤中のGM-CSF中和化合物の凝集/断片化を減少させる。ある特定の態様において、記載される物質の添加は、例えば、貯蔵、高温への曝露、光への曝露、せん断応力への曝露、pHおよびイオン条件、ならびにそれらの任意の組み合わせによって起こる、製剤における凝集/分解を減少させる。
本発明によって見出されたこの手段は、特に液体形態および凍結形態で製剤化されたGM-CSF中和化合物の凝集および/または分解/断片化を減少させるために使用することができる。したがって、凝集/断片化の減少は、好ましくは液体製剤で認められる。凝集/分解の減少はまた、後に使用するために液体形態で直接貯蔵された場合、凍結状態で貯蔵されて使用前に融解された場合、または後に使用前に液体形態もしくは他の形態に再構成するために、凍結乾燥、空気乾燥、もしくは噴霧乾燥形態などの乾燥形態で調製された場合にも、認められ得ると考えられる。
したがって、本明細書に記載される製剤は、当業者に公知の任意の方法によって貯蔵され得ることが想定される。非限定的な例には、製剤の冷却、凍結、凍結乾燥、噴霧乾燥が含まれ、この場合には冷却による貯蔵が好ましい。
場合により、タンパク質製剤は、貯蔵のために凍結される。したがって、製剤が、凍結融解サイクルを含むそのような条件下で比較的安定であることが望ましい。製剤のこの適合性を決定する1つの方法は、製剤の試料を凍結および融解(例えば、約-80℃±10℃で一晩凍結させ、室温で急速に融解させるか、または氷上で例えば6時間かけてゆっくりと融解させることによる)の少なくとも1サイクル、例えば、1、3、5、7サイクル、および最大10サイクルまでに供し、凍結融解サイクル後に蓄積する低分子量/短縮 (LMW) 種および/または高分子量/凝集物(HMW) 種の量を決定し、それを、凍結融解手順の前に試料中に存在したLMW種またはHMW種の量と比較することである。LMW種またはHMW種の増加は、製剤の一部として貯蔵されたタンパク質の安定性の低下を示す。サイズ排除高速液体クロマトグラフィー (SEC-HPLC) を用いて、LMW種およびHMW種の存在を決定することができる。
好ましくは、タンパク質製剤は液体として貯蔵され得る。したがって、本明細書に記載されるように、液体製剤が、様々な温度を含むそのような条件下で安定であることが望ましい。例えば、製剤の適合性を決定する1つの方法は、いくつかの温度(2〜8℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、および50℃など)で試料製剤を貯蔵し、時間と共に蓄積するHMW種および/またはLMW種の量をモニターすることである。時間と共に蓄積するHMW種および/またはLMW種の量が少ないほど、製剤の貯蔵条件はより良好である。したがって、タンパク質の電荷プロファイルを、陽イオン交換‐高速液体クロマトグラフィー (CEX-HPLC) によってモニターすることができる。あるいは、製剤は、凍結乾燥後に貯蔵され得る。製剤が、せん断応力の条件下で安定であることがさらに望ましい。製剤の適合性を決定する1つの方法は、所望の温度(2〜8℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、および50℃など、好ましくは+5℃±3℃)で、振盪機、例えば垂直振盪機上でレシピエント中の製剤を軽く揺すぶることである。レシピエント(例えばバイアル)を、所望の期間、例えば14日間までまたはそれ以上にわたり振盪機上で貯蔵することができ、これに対して対照は同じ温度で浸透せずに貯蔵する。データ点収集を、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、および14日後に行うことができる。振盪貯蔵後に蓄積する低分子量 (LMW) 種および/または高分子量 (HMW) 種の量を決定し、非振盪試料中に存在するLMW種またはHMW種の量と比較することができる。LMW種またはHMW種の増加は、製剤の一部として貯蔵されたタンパク質の安定性の低下を示す。サイズ排除高速液体クロマトグラフィー (SEC-HPLC) を用いて、LMW種およびHMW種の存在を決定することができる。
場合により、製剤は噴霧乾燥された後に貯蔵される。噴霧乾燥するため、液体製剤は、乾燥ガス流の存在下でエアロゾル化される。水が製剤液滴からガス流中に除去され、薬物製剤の乾燥粒子が生じる。(i) 噴霧乾燥による脱水中にタンパク質を保護する、(ii) 噴霧乾燥後の貯蔵中にタンパク質を保護する、および/または (iii) エアロゾル化に適した溶液特性を付与するために、賦形剤を製剤中に含めることができる。この方法は、試料製剤が凍結の代わりに噴霧乾燥され、希釈液中に再構成され、再構成製剤がLMW種および/またはHMW種の存在について試験される以外は、凍結に関して上記された方法と同様である。凍結乾燥されなかった対応する試料製剤と比較して、噴霧乾燥試料中のLMW種またはHMW種が増加していることは、噴霧乾燥試料の安定性の低下を示す。
「凍結乾燥された (lyophilized)」または「凍結乾燥された (freeze-dried)」という用語は、凍結乾燥などの乾燥手順に供され、少なくとも90%、好ましくは95%、最も好ましくは98%の水分が除去された物質の状態を含む。したがって、本明細書で用いられる「凍結乾燥」という用語は、乾燥させる材料を最初に凍結させた後に、真空環境において昇華により氷または凍結溶媒を除去する工程を指す。貯蔵の際の凍結乾燥製品の安定性を増強するために、凍結乾燥される製剤中に賦形剤(例えば凍結乾燥保護剤)を含めることができる。本明細書で用いられる「再構成製剤」という用語は、GM-CSF中和化合物が希釈液中に分散されるように、凍結乾燥タンパク質製剤を希釈液中に溶解することによって調製された製剤を指す。
本明細書で用いられる「希釈液」という用語は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に関して安全でかつ無毒であり)、かつ凍結乾燥後に再構成される製剤などの液体製剤の調製に有用である物質である。希釈液の非限定的な例には、無菌水、注射用静菌水 (BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、無菌生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、または塩および/もしくは緩衝液の水溶液が含まれる。
本発明の別の局面において、製剤は、治療に用いられることが想定される。したがって、本発明は、本明細書に記載される製剤を含む薬学的組成物(または薬物)を想定する。
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載される製剤の治療有効量を投与することを含む、対象を治療する方法を提供し、この場合、該対象は、GM-CSF中和化合物を用いて有益に治療され得る疾患または障害を有する。
好ましくは、本明細書に記載される製剤は、GM-CSF中和化合物を用いて予防および/または治療および/または寛解され得る疾患の予防および/または治療に適用される。
「対象」という用語は、生体を含むことが意図される。対象の例には、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物といった哺乳動物が含まれる。本発明の好ましい態様において、対象はヒトである。
「有効用量」または「有効投与量」という用語は、所望の効果を達成するか、または少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義される。「治療有効用量」という用語は、既に疾患に罹患している患者において、疾患およびその合併症を治癒させるか、または少なくとも部分的に抑止するのに十分な量と定義される。この使用に有効な量は、医学的状態の重症度および対象自身の免疫系の一般的状態に依存する。「患者」という用語は、予防的または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を含む。
製剤の適切な投与量または治療有効量は、治療される状態、治療前の状態の重症度、ならびに患者の臨床歴および治療剤に対する反応に依存する。適切な用量は、それが患者に1度または一連の投与を通して投与され得るように、主治医の判断に従って調整され得る。薬学的組成物は、唯一の治療として、または必要に応じて付加的な治療法と組み合わせて投与され得る。
本発明の薬学的組成物は、非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、および/または関節滑液嚢内投与に特に有用であり、この場合は皮下投与が好ましい。非経口投与は、ボーラス注入または連続注入によって行われ得る。
注射用の薬学的組成物は、保存剤が添加されて、例えばアンプルまたは複数回投与用容器中に単位剤形で提示され得る。加えて、最近数多くの薬物送達アプローチが開発されており、本発明の薬学的組成物は、これらの新たな方法、例えば、Inject-ease、Genject、例えばGenenなどのインジェクターペン、ならびにMediJectorおよびBioJectorなどの無針装置を用いた投与に適している。本薬学的組成物はまた、まだ発見されていない投与方法にも適用され得る。Langer, 1990, Science, 249: 1527-1533もまた参照されたい。
凍結乾燥された薬学的組成物は、好ましくは、有効成分を含むバイアル中に提示され得る。1つの態様において、薬学的組成物は、再構成用の溶液を付加的に含む。
薬学的組成物は、薬学的に許容される付加的な成分をさらに含み得る。製剤の所望の特徴に悪影響を及ぼさないならば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に記載されているような、薬学的に許容される他の担体、賦形剤、または安定剤もまた、本明細書に記載されるタンパク質製剤中に含めることができる。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容される担体」とは、薬学的投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤を意味する。薬学的活性物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当技術分野で周知である。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに無毒であり、これには、浸透圧調整剤;付加的な緩衝剤;保存剤;共溶媒;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;キレート剤、例えばEDTAなど;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);生分解性ポリマー、例えばポリエステルなど;塩形成対イオン;例えば、ナトリウム、多価糖アルコールなど;アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、アスパラギン、2-フェニルアラニン、およびトレオニンなど;糖または糖アルコール、例えば、ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース (myoinisitose)、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)、ポリエチレングリコールなど;硫黄含有還元剤、例えば、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[α]-モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウムなど;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリンなど;ならびに親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなどが含まれる。
本明細書に記載される製剤は、それを必要とする患者における、疾患または障害の治療および/または予防および/または寛解における薬学的組成物として有用である。「治療」という用語は、治療的処置、および予防または防止手段の両方を指す。治療は、疾患、疾患の症状、または疾患の素因を治癒させる、治す、緩和する、軽減する、変更する、矯正する、寛解させる、改善する、またはそれに影響を及ぼす目的で、疾患/障害、疾患/障害の症状、または疾患/障害の素因を有する患者の身体、該患者から単離された組織、または細胞に製剤を適用または投与することを含む。
「治療を必要としている」ものは、既に障害を有するもの、および障害が予防されるべきものを含む。「障害」という用語は、本明細書に記載されるタンパク質製剤を用いた治療から恩恵を受ける任意の状態である。これは、哺乳動物を問題の障害にかかりやすくする病態を含む、慢性および急性の障害または疾患を含む。本明細書において治療される障害の非限定的な例には、好ましくはアレルギー性障害および乾癬性障害ならびに関節炎障害および喘息障害を含む、炎症性障害および自己免疫障害、例えば、関節炎、関節リウマチ (RA)、自己免疫脳炎、乾癬、多発性硬化症、肺疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、および急性呼吸促迫症候群 (ARDS) など;クローン病、特発性肺線維症 (IPF)、炎症性腸疾患 (IBD)、ブドウ膜炎、黄斑変性症、大腸炎、ウォラー変性、抗リン脂質症候群 (APS)、急性冠症候群、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、再発性多発性軟骨炎 (RP)、急性または慢性肝炎、整形外科移植物不全、糸球体腎炎、ループス、アトピー性皮膚炎、ならびに炎症痛、関節痛、および骨関節痛が含まれる。
アレルギー性障害は、アレルギーまたはアレルギー反応によって起こる任意の障害である。アレルギーは、免疫系の過敏性障害である。これは、人の免疫系が、食物、花粉、カビ、ハウスダスト、動物の鱗屑、イエダニなどの、通常は無害である外来物質(アレルゲン)に対して反応または過剰反応する場合に起こる。
乾癬は、主に皮膚に影響を及ぼす自己免疫疾患である。免疫系によって送られる誤ったシグナルにより、皮膚細胞の増殖サイクルが加速する。5種類の乾癬:尋常性乾癬、滴状乾癬、逆位乾癬、膿疱性乾癬、および乾癬性紅皮症が存在する。最も一般的な形態である尋常性乾癬は、一般に、表皮(皮膚)の最上層に現れる赤色および白色の落屑斑として見られる。しかしながら、皮膚の徴候または症状がない患者もいる。この障害は、重症度が、軽微な局所的な斑から完全に身体を覆うものまで様々である慢性再発性状態である。手指の爪および足指の爪は高頻度に冒され(乾癬性爪ジストロフィー)、また単発徴候として見られる場合もある。乾癬はまた、乾癬性関節炎として知られる関節の炎症を引き起こし得る。
関節炎は、1つまたは複数の関節の炎症を伴う関節障害の1つの形態である。100を超える様々な形態の関節炎が存在する。最も一般的な形態である変形性関節症(変性性関節疾患)は、関節の外傷、関節の感染、または年齢の結果である。他の関節炎形態は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および他の関連自己免疫疾患である。敗血症性関節炎は、関節の感染によって生じる。
喘息は、多くの細胞および細胞要素が役割を担う、気道の一般的な慢性炎症性障害である。喘息は、喘鳴、咳嗽、胸部絞扼感、および息切れの再発エピソードを引き起こす気道過敏症を伴う。これらのエピソードは、通常、肺内の広範であるが変動性の大きい気道閉塞と関連があり、このような気道閉塞は、自然発生的にまたは治療により可逆的である場合が多い。喘息は、症状の頻度、1秒間努力呼気容量、および最大呼気速度に従って分類され得る。喘息はまた、アトピー性(外因性)または非アトピー性(内因性)として分類され得る。
GM-CSF中和化合物に加えて、本発明の薬学的組成物は、付加的な治療剤または生物活性剤を含み得る。例えば、変形性関節症などの特定の徴候の治療において有用な治療因子(例えば、これらに限定されないが、抗メタロプロテイナーゼ、サイクリン化合物、サイトカインアンタゴニスト、コルチコステロイド、TNF阻害剤、IL阻害剤、抗血管新生物質、アグリカナーゼ阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、アポトーシス阻害剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、およびタンパク質分解酵素阻害剤より選択される、関節軟骨または滑膜成分の破壊に関与する1つまたは複数の阻害剤)が存在してよい。インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムラブ (adalimulab)、ネレリモンマブ (nerelimonmab)、レネルセプト等、またはそれらの組み合わせを含む、炎症を制御する因子もまた、組成物の一部であってよい。薬学的組成物が、細胞外マトリックス成分、例えば、ヒアルロン酸、または塩、エステル、内部エステル、および硫酸化誘導体を含むその誘導体、好ましくはヒアルロン酸の部分エステルなどを含み得ることもまた想定される。
別の態様において、本発明は、本発明の製剤を含むキット(または製造品)または容器に関する。製剤は好ましくは、既に液体状態である。しかしながら、その代わりに、製剤は好ましくは凍結乾燥状態であってもよい。製剤はまた、凍結、凍結乾燥 (lyophilized)、凍結乾燥 (freeze-dried)、または噴霧乾燥状態であってもよい。したがって、製剤が液体以外の状態である場合、それは(液体)水性薬学的組成物として実行者によって調製され得る。例えば、製剤は凍結乾燥されてよく、後に再構成されなければならない。したがって、キットはさらに、凍結、凍結乾燥 (lyophilized)、凍結乾燥 (freeze-dried)、もしくは噴霧乾燥製剤を再構成するための手段、および/または製剤を希釈するための手段、および/または、シリンジ、ポンプ、注入器、針等などの、製剤もしくは薬学的組成物を投与するための手段をそれぞれ含み得る。キットは、本発明の製剤を含む1つまたは複数のバイアルを含み得る。キットにはまた、使用説明書が添付され得る。
したがって、本明細書に記載される製剤を含み、好ましくはその使用説明書を提供する製造品が提供される。製造品は、製剤を含むのに適した容器を含む。適切な容器には、非限定的に、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(例えば、シングルまたはデュアルチャンバーシリンジ)、試験管、噴霧器、吸入器(例えば、定量吸入器または乾燥粉末吸入器)、またはデポーが含まれる。容器は、ガラス、金属、またはプラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン)などの種々の材料から形成され得る。容器は製剤を保持し、容器に貼られたまたは付随するラベルは、再構成および/または使用のための指示を示し得る。ラベルは、製剤が皮下投与に有用であるか、または意図されていることをさらに示し得る。製剤を保持している容器は、製剤の反復投与(例えば、2〜6回の投与)を可能にする複数回使用のバイアルであってもよい。製造品は、適切な希釈液(例えば、WFI、0.9% NaCl、BWFI、リン酸緩衝生理食塩水)を含む第2の容器をさらに含み得る。製造品が凍結乾燥型のGM-CSF中和化合物製剤を含む場合、希釈液と凍結乾燥製剤を混合することにより、再構成製剤において所望の最終タンパク質濃度が提供される。製造品は、他の緩衝液、希釈液、フィルター、針、シリンジ、および使用説明書を備えた添付文書を含む、商業上および使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含み得る。
本発明には、本発明の製剤を送達するために使用され得る装置もまた含まれる。そのような装置の例には、シリンジ(例えば、充填済みシリンジ)、ペン、インプラント、無針注射装置、吸入装置、およびパッチが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の組成物は、例えばガラス製の充填済みシリンジおよびカートリッジ内での使用による界面応力を含む、多くの局面に対して安定である。ゴム配合物、シリコン、タングステン、および硬化剤は、タンパク質溶液と負に相互作用して、凝集物、サブビジブル粒子、および可視的粒子を形成することが確認されている。本発明のタンパク質製剤は、その閉鎖システムを含む充填済みシリンジ/カートリッジシステム内の成分と適合可能である。
本発明を図面および実施例によってさらに説明するが、これらは単なる説明のためのものであって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
[本発明1001]
少なくとも約20 mg/mlの濃度のGM-CSF中和化合物と、浸透圧調整剤と、緩衝液と、界面活性剤、アミノ酸、抗酸化剤、および/もしくはキレート剤のうちの1つまたは複数とを含み、安定である、組成物。
[本発明1002]
GM-CSF中和化合物、浸透圧調整剤、緩衝液、および界面活性剤を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
GM-CSF中和化合物が少なくとも約50 mg/mlの濃度で存在し、浸透圧調整剤が約1%〜約15% (w/v) の濃度で存在し、かつ緩衝液が約10 mM〜約50 mMの濃度で存在する、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1004]
浸透圧調整剤が、マンニトール、ソルビトール、スクロース、および/またはトレハロースより選択される、本発明1001〜1003のいずれかの組成物。
[本発明1005]
緩衝液が、ヒスチジン、酢酸、および/またはクエン酸緩衝液より選択される、本発明1001〜1004のいずれかの組成物。
[本発明1006]
界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、およびそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数より選択される、本発明1001〜1005のいずれかの組成物。
[本発明1007]
GM-CSF中和化合物が少なくとも約50 mg/mlかつ約200 mg/ml未満の濃度で存在し、浸透圧調整剤が約3%〜約7% (w/v) の濃度で存在し、緩衝液が約20 mM〜約40 mMの濃度で存在し、かつ界面活性剤が約0.001%〜約1% (w/v) の濃度で存在する、本発明1001〜1006のいずれかの組成物。
[本発明1008]
pHが約5〜約7である、本発明1001〜1007のいずれかの組成物。
[本発明1009]
浸透圧調整剤がソルビトールであり、かつ緩衝液がヒスチジン緩衝液である、本発明1001〜1008のいずれかの組成物。
[本発明1010]
抗酸化剤をさらに含む、本発明1002〜1009のいずれかの組成物。
[本発明1011]
界面活性剤がポリソルベート80である、本発明1001〜1010のいずれかの組成物。
[本発明1012]
ポリソルベート80量がCACを上回る、本発明1011の組成物。
[本発明1013]
ポリソルベート80濃度が約0.01% (w/v)〜約0.08% (w/v) である、本発明1011の組成物。
[本発明1014]
ポリソルベート80のタンパク質に対する比率が約0.3:1〜約0.6:1である、本発明1011の組成物。
[本発明1015]
GM-CSF中和化合物が、ポリペプチド、ペプチド模倣体、核酸、および小分子からなる群より選択される、本発明1001〜1014のいずれかの組成物。
[本発明1016]
ポリペプチドが、GM-CSFまたはGM-CSF受容体に結合する抗体またはその機能的断片である、本発明1015の組成物。
[本発明1017]
抗体またはその機能的断片がヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片である、本発明1016の組成物。
[本発明1018]
i) 約50 mg/ml〜約180 mg/mlのGM-CSF中和化合物、
ii) 約5% (w/v) のソルビトール、
iii) 約30 mMのL-ヒスチジン、および
iv) 約0.001%〜約1% (w/v) の界面活性剤
を含み、かつ
v) 約5.8のpHを有する、
前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1019]
約80 mg/mlまたは150 mg/mlのGM-CSF中和化合物を含む、本発明1018の組成物。
[本発明1020]
界面活性剤がポリソルベート80である、本発明1018または1019の組成物。
[本発明1021]
ポリソルベート80濃度が約0.01% (w/v)〜約0.08% (w/v) である、本発明1020の組成物。
[本発明1022]
ポリソルベート80のタンパク質に対する比率が約0.3:1〜約0.6:1である、本発明1020の組成物。
[本発明1023]
液体組成物、好ましくは水性組成物である、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1024]
約2〜8℃で少なくとも24カ月間、または室温で少なくとも28日間安定である、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1025]
充填済みシリンジ中にパッケージングされている、前記本発明のいずれかの組成物。
[本発明1026]
治療に用いられる、前記本発明のいずれかの組成物。