実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における把持装置100を備えたロボットシステムの構成の一例を示す図である。図1に示すロボットシステムは、把持装置100、負圧発生源200、配管300、及び制御装置400を備え、把持装置100で対象物である物品500を把持する。把持装置100は、ロボットアーム110と、吸着ハンド120とを備えている。吸着ハンド120は、物品500を吸着して把持する吸着方式のハンドである。吸着ハンド120は、ロボットアーム110に取り付けられている。さらに、吸着ハンド120は、吸着パッド130を備えている。吸着ハンド120が、吸着部に相当する。
制御装置400は、把持装置100及び負圧発生源200と制御線で接続されている。制御装置400は、制御線を介して制御信号を送信することで、把持装置100及び負圧発生源200の動作を制御する。制御装置400は、メモリ及びプロセッサで構成することができる。なお、本実施の形態の把持装置100では、吸着パッド130を備えた吸着ハンド120を吸着部としているが、吸着パッド130を配管300に直接に接続しても良く、この場合、吸着パッド130が吸着部となる。また、ロボットアームは単にアームと呼ぶこともできる。さらに、本実施の形態では、ロボットアーム110と吸着ハンド120とを備えたロボットシステムを例に挙げて説明するが、必ずしもロボットシステムへの適用に限定されるものではない。
配管300は、負圧発生源200と吸着ハンド120とを接続し、負圧発生源200と吸着ハンド120との間の空気の流通を可能としている。ロボットアーム110は、吸着ハンド120を移動させ、物品500の表面に吸着ハンド120を密着させる。物品500の表面に吸着ハンド120が密着した状態で、負圧発生源200は、配管300を介して、吸着ハンド120の内部の空気を排出する。この結果、吸着ハンド120の内部に負圧が生じ、吸着ハンド120の外部との圧力差によって、物品が吸着ハンド120に吸着する。
吸着ハンド120で物品500を吸着した際の把持力Fは、吸着ハンド120が物品500に吸着している面積をA、その際の吸着ハンド120の内部の負圧をPとすると、式(1)で表される。ここで、負圧とは、大気圧と比較した結果マイナスとなる圧力を意味しており、物品500を吸着ハンド120へ押し付け、 持ち上げる力を生み出す。また、負圧は、絶対圧力と大気圧との差であるゲージ圧で表される。
式(1)から、より大きな把持力Fを得るためには、負圧Pの絶対値を大きくするか、吸着する面積Aを大きくする必要があることが分かる。しかし、負圧Pの絶対値は、最高でも1気圧であり上限がある。このことから、重量の大きな物品500を把持する際や、外力が加わっても物品500を把持し続けるためには、出来るだけ大きな吸着面積Aを確保することが重要である。また、物品500の表面の小さな領域に過度に大きな力を加えることも望ましくない。この点からも、出来るだけ大きな吸着面積Aを確保することが重要となる。
一方で、吸着ハンド120をむやみに大きくしても、物品500が小さい場合、もしくは物品500が凹凸などの複雑な形状を持つ場合には、吸着ハンド120を物品500に押し付けた時に、吸着ハンド120と物品500との間に隙間が生じてしまう。吸着ハンド120と物品500との間に隙間が生じると、隙間から吸着ハンド120の内部に空気が流入し、その結果、把持装置100は十分な吸着力を得られない。
負圧発生源200としては、イジェクタ、真空ポンプ、ブロアなど、空気を排出して圧力を低下させる様々な機器が用いられる。図2は、負圧発生源200の性能を説明するための図である。図2において、縦軸は発生する負圧の大きさであり、横軸は空気の流量である。図2に示すように、負圧発生源200の性能は、空気の流量Qと、負圧の大きさPとの関係で表される。図2に示すように、発生する負圧が最も高まるのは、流量が0の時である。流量が0となるのは、締め切り状体(空間が密閉されている状態)の場合である。したがって、大きな吸着力を得るためには、吸着ハンド120が隙間なく物品500に密着することが望ましい。さらに、吸着ハンド120と物品500との間の隙間が一定以上の大きさになると、隙間から流入する空気の量が、負圧発生源200によって排出できる上限に達する。この場合には、負圧は0となるため、把持装置100は、まったく把持力を生じさせることができない。
以上のことから、一般的には、吸着ハンド120と物品500との間に隙間ができず、しかも出来るだけ大きな吸着面積を得ることができる吸着ハンド120が、物品500に応じて選択されることになる。しかし、同一の吸着ハンド120で、複数の種類の物品500を把持する必要がある場合は、吸着面積が最も小さい物品500に合わせて吸着ハンド120が選択されることになる。この時、複数の種類の物品500のうち、いずれかの物品500において、物品500の重量と吸着可能な面積及び吸着時に吸着ハンド120内で得られる負圧との関係が適切でなければ、単一の吸着ハンド120では、全ての種類の物品500を把持することができない。以上のことから、多様な物品500を単一の吸着ハンド120で把持することは、難しい課題である。
しかし、単一の吸着ハンド120であっても、大きさの異なる複数種類の物品500を把持する際に、それぞれの物品500に応じて適切な吸着面積を得ることが出来れば、把持装置100は、単一の吸着ハンド120で複数種類の物品500を把持可能となる。本実施の形態の把持装置100は、このような汎用性の高い把持装置100となる。
図3は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120の外観を示す斜視図であり、後述する伸縮部123が伸びた状態における吸着ハンド120の外観を示す斜視図である。また、図4は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120の切断形状を示す斜視図であり、後述する伸縮部123が伸びた状態における吸着ハンド120の切断形状を示す斜視図である。なお、図4は、吸着ハンド120をX−Z平面と平行な面で切断した形状を示している。図3、図4において、吸着ハンド120の底面と平行で、互いに直交する軸をX軸およびY軸とする。また、図3、図4において、吸着ハンド120の底面に対して垂直となる軸をZ軸とする。X軸、Y軸、およびZ軸は、以降の図面においても同様である。
吸着ハンド120は、上面及び底面が開口した中空構造となっている。また、吸着ハンド120の上面は、排気部121となっている。排気部121の開口は、配管300を介して負圧発生源200に接続されている。したがって、吸着ハンド120の内部の空気は、排気部121の開口から排出されることになる。一方、吸着ハンド120の底面は、物品500を把持する際に、物品500に接触する接触部122となっている。接触部122も開口している。
さらに、吸着ハンド120は、伸縮部123を備えている。伸縮部123は、Z軸方向に伸縮できるように構成されている。すなわち、伸縮部123のZ方向の長さは、長くなったり、短くなったりする。この詳細については後述する。なお、図3および図4は、伸縮部123が伸びた状態における吸着ハンド120の外観及び切断形状を示している。伸縮方向であるZ方向は、排気部121と接触部122とを結んだ方向である。より厳密には、Z方向は、排気部121の開口の中心と、接触部122の開口の中心とを結んだ方向である。
なお、吸着ハンド120は中空構造なので、伸縮部123も排気部121側及び接触部122側で開口した中空構造となっている。ここで、排気部121側及び接触部122側とは、空気の流路における相対的な位置関係を指している。なお、空気の流路は、接触部122の開口から吸着ハンド120の中空空間を経由して排気部の開口へと至る。排気部121側とは、空気の流路において、他の位置と比較して排気部121に近い位置を意味する。一方、接触部122側とは、空気の流路において、他の位置と比較して接触部122に近い位置を意味する。
ここで、図3及び図4の吸着ハンド120において、排気部121の開口は、接触部122の開口と対向して設けられている。しかし、排気部121の開口は、接触部122の開口と必ずしも対向している必要はない。例えば、吸着ハンド120は折れ曲がっていても良い。この場合、伸縮方向は、空気の流路の方向と解釈できる。すなわち、排気部121と接触部122とを結んだ方向とは、空気の流路に沿って排気部121と接触部122とを結んだ方向であり、必ずしも直線的に結んだ方向を意味するわけではない。さらに、伸縮方向は、伸縮部123が備える排気部121側の開口の中心と、接触部122側の開口の中心とを結んだ方向と言うこともできる。
伸縮部123の内部の中空空間は、排気部121側から接触部122側に向かうにつれて、段階的に広くなっている。言い換えると、伸縮部123の内部の中空空間は、−Z方向に進むにつれて、段階的に広くなっている。ここで、中空空間が広くなるとは、伸縮方向と垂直な面で中空空間を切断した時に、切断面の面積が大きくなることを意味する。本実施の形態の把持装置100においては、伸縮部123を吸着パッド130とする。
伸縮部123は、第1の筒状部124a、第2の筒状部124b、第3の筒状部124c、及び第4の筒状部124dを備えている。なお、本実施の形態の把持装置100では、4つの筒状部を備える構成を例示しているが、この構成に限定されるわけではなく、2つ以上の筒状部を備えていれば良い。本実施の形態の把持装置100では、第4の筒状部124dの底面が接触部122となる。第1の筒状部124aは、両端である上面および底面が開口した円筒形状である。すなわち、第1の筒状部124aは、対向する2つの面が開口した円筒形状である。また、第1の筒状部124aは、両端を結ぶ方向が伸縮方向と平行になるように配置されている。すなわち、第1の筒状部124aは、伸縮方向であるZ軸方向に対して開口が垂直となるように配置されている。言い換えると、第1の筒状部124aは、開口がX−Y平面と平行となるように配置されている。第2の筒状部124b、第3の筒状部124c、及び第4の筒状部124dも、第1の筒状部124aと同様に配置されている。
伸縮部が伸びた状態では、第1の筒状部124a、第2の筒状部124b、第3の筒状部124c、及び第4の筒状部124dは、Z方向の異なる位置に配列されている。第1の筒状部124aは、第2の筒状部124bよりも排気部121側に配置されている。また、第2の筒状部124bは、第3の筒状部124cよりも排気部121側に配置されている。また、第3の筒状部124cは、第4の筒状部124dよりも排気部121側に配置されている。
第1の筒状部124aの開口は、第2の筒状部124bの開口よりも小さくなっている。さらに、第2の筒状部124bの開口は、第1の筒状部124aを内部に収めることが可能な大きさとなっている。第2の筒状部124bの開口は、第3の筒状部124cの開口よりも小さくなっている。さらに、第3の筒状部124cの開口は、第2の筒状部124bを内部に収めることが可能な大きさとなっている。第3の筒状部124cの開口は、第4の筒状部124dの開口よりも小さくなっている。さらに、第4の筒状部124dの開口は、第3の筒状部124cを内部に収めることが可能な大きさとなっている。なお、開口が大きいとは、開口している面積が大きいことを意味する。したがって、伸縮方向から見ると、第1の筒状部124a、第2の筒状部124b、第3の筒状部124c、及び第4の筒状部124dは同心円状に配置されていることになる。
ここで、筒状部の形状について、さらに説明する。ここで、単に筒状部と記載した場合は、第1の筒状部124a〜第4の筒状部124dのそれぞれを指している。本実施の形態の把持装置100において、筒状部は中空構造であり、中空の空間を取り囲むように側壁があり、伸縮方向の両端面である上面および底面が開口している。言い換えると、伸縮方向の両端が開口した中空構造の柱状の中空体を形成している。側壁を伸縮方向から見た場合に、円、楕円などの閉曲線となっていても良いし、多角形になっていても良い。すなわち、筒状部の側壁は環状に形成されているが、必ずしも円環状で有る必要はない。また、開口の大きさに対して、伸縮方向の長さが短くても良いし、長くても良い。開口の大きさは、例えば開口の径、対角線の長さ、又は開口の面積で表すことができる。図4および図5では、円筒形の筒状部を図示しているが、あくまで一例である。また、図4および図5では、吸着ハンド120はZ軸に対して回転対称な形状としているが、あくまで一例である。
伸縮部123は、第1の連結部125a、第2の連結部125b、第3の連結部125cも備える。第1の連結部125aは、第1の筒状部124a及び第2の筒状部124bを連結する。また、第2の連結部125bは、第2の筒状部124b及び第3の筒状部124cを連結する。また、第3の連結部125cは、第3の筒状部124c及び第4の筒状部124dを連結する。第1の連結部125a、第2の連結部125b、及び第3の連結部125cも環状となっている。
次に、伸縮部123における伸縮動作について述べる。図5は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120の外観を示す斜視図であり、伸縮部123が縮んだ状態の外観を示す斜視図である。また、図6は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120の切断形状を示す斜視図であり、伸縮部123が縮んだ状態の切断形状を示す斜視図である。なお、図6は、吸着ハンドをX−Z平面と平行な面で切断した形状を示している。図5及び図6に示すように、本実施の形態の把持装置100において、吸着ハンド120は、伸縮部123が折り畳まれることによって、縮んだ状態となる。より具体的は、伸縮部123が縮む際には、第1の筒状部124aは、第2の筒状部124bの内部に位置するように移動する。また、第2の筒状部124bは、第3の筒状部124cの内部に位置するように移動する。また、第3の筒状部124cは、第4の筒状部124dの内部に位置するように移動する。ここで、内部に位置するとは、X−Y平面と平行な同一の平面上に位置するとともに、Z軸方向から見た時に、内側に位置していることを意味する。
伸縮部123が伸びた状態から縮んだ状態へと変化する際には、連結部と筒状部との接続箇所が折れ曲がる。すなわち、連結部と筒状部とは、接続箇所で折り曲げることができるように接続されている。なお、単に連結部と記載した場合は、第1の連結部125a〜第3の連結部125cのそれぞれを指している。また、連結部自身も屈曲可能な構成となっており、この結果、スムーズな折り畳み動作が実現できる。さらに、伸縮部123が伸びた状態において、連結部の表面と伸縮方向との成す角が、筒状部の側壁と伸縮方向との成す角よりも大きくなっていれば、伸縮部は折り畳みやすくなる。筒状部の側壁は、伸縮方向とほぼ平行になっていることが望ましい。
伸縮部123が伸びる際には、伸縮部123が縮む際とは逆の動作となる。伸縮部123が縮んだ状態では、それぞれの筒状部の下端は、X−Y平面と平行な同一の平面上に配置されるとともに、それぞれの筒状部は、筒状部の径方向に配列されることになる。このように配列されるためには、内側に位置する筒状部の外径は、外側に隣接する筒状部の内径よりも小さい必要がある。ただし、伸縮部123が縮んだ状態で、それぞれの筒状部の下端が同一の平面上に配置されるのは、物品500の表面が平面である場合である。厳密には、筒状部の下端は、物品500の表面に接触することになる。したがって、物品500の表面の形状次第では、それぞれの筒状部の下端は、Z方向の異なる位置に配置される場合もある。また、物品500が小さい場合などでは、いくつかの筒状部の下端は、物品500の表面に接触することがない。この場合には、物品500の表面に接触しない筒状部の下端は、連結部及び筒状部の弾性と、伸縮方向に加えられる力とによって決定される位置に配置されることになる。
このように構成された伸縮部123は、伸縮方向の力が加えられることによって、伸縮方向の長さが変わり、その結果、後述する通り、吸着面積が変化する。ロボットアーム110は吸着ハンド120を物品500に押し付けることによって、伸縮部123に伸縮方向の力を加え、伸縮部を伸縮させる。この時、筒状部は、連結部と比較して剛性が高い素材で構成すると、伸縮方向の力が加えられた場合でも、形状が安定する。筒状部は、例えば金属、プラスチックなどの樹脂で形成することが考えられる。また、筒状部は、ゴムやシリコンなどの柔軟な素材で形成することも考えられる。なお、伸縮方向に力が加わった場合に形状が安定するためには、伸縮方向の力に対する剛性が高ければ良く、伸縮方向に垂直な方向の力に対する剛性は、必ずしも高くなくても良い。
連結部は、屈曲することが可能な柔軟な素材で形成することが考えられる。連結部は、適度な伸縮性があっても良い。連結部は、例えばゴムやシリコンなどの樹脂の膜により形成することが考えられる。筒状部と連結部とは、個別の部材であっても良いし、一体で形成し、厚みを変えることで剛性を調整することも考えられる。また、一体で成形した後に、補強材として別の部材を組み合わせることで、筒状部の剛性を得ることも考えられる。
連結部が複数ある場合は、伸縮部123を折り畳む方向の力が加わった際に、接触部122側の連結部が、排気部121側の連結部よりも先に折り畳まれるように、連結部の厚みや素材などを調整しておく。なお、伸縮部123を折り畳む方向の力は、図3他における−Z方向の力となる。また、伸縮部123が伸びた状態において、連結部の表面と伸縮方向との角度が大きいほど、折り畳みが発生しやすい。したがって、接触部122側の連結部ほど連結部の表面と伸縮方向との角度を大きくすることも考えられる。
図7は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120の外観を示す斜視図であり、伸縮部123の一部が縮んだ状態の外観を示す斜視図である。また、図8は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120の切断形状を示す斜視図であり、伸縮部123の一部が縮んだ状態の切断形状を示す斜視図である。なお、図8は、吸着ハンドをX−Z平面と平行な面で切断した形状を示している。図7及び図8では、もっとも接触部122に近い第3の連結部125cのみが折り畳まれている。
このように吸着ハンド120を伸縮可能に構成することで、ロボットアーム110が吸着ハンド120を物品500に押し付けた際に、伸びた状態の吸着ハンド120が、押し付けが進むことによって徐々に縮んでいく。この際、接触部122側から先に縮んでいくことで、接触部122の開口の面積が徐々に減少する。ここで、接触部122の開口とは、吸着ハンド120の内部の中空空間を介して、排気部121の開口と連通する開口である。例えば、図6においては、接触部122の開口とは、第1の筒状部124aの内部の開口である。また、図8においては、接触部122の開口とは、第3の筒状部124cの内部の開口である。接触部122の開口の大きさが変化することで、吸着面積も変化する。吸着ハンド120が物品500に接触した際の最初の開口は、第4の筒状部124dの内部の開口となる。第4の筒状部124dの内部の開口では、物品500との間に大きな隙間が生じてしまう場合でも、本実施の形態のロボットシステムは、吸着ハンド120を徐々に押し付けることで、開口の面積を減少させる。この結果、本実施の形態のロボットシステムは、吸着ハンド120と物品500との間の隙間を減少させ、負圧を高めることが可能になる。
制御装置400、吸着ハンド120、配管300、または負圧発生源200に備えた圧力センサで計測した負圧を読み取ることで、十分な把持力が得られているかどうかを確認できる。もしくは、負圧発生源200の運転状態に対して決まる負圧と流量の関係を利用すれば、制御装置400は、流量を計測した結果を読み取ることで、十分な把持力が得られているかどうかを確認できる。さらに、物品500を把持すれば、その重量が負荷としてロボットアーム110に加わることから、力センサやひずみゲージなどの検出結果を用いて、制御装置400は、十分な把持力が得られているかどうかを確認することもできる。
もし、これらの方法によって、十分な把持力が得られていることが確認できれば、制御装置400は、その時点で吸着ハンド120の押し付けをやめて、ロボットアーム110による搬送などの作業に移ればよい。一方、吸着ハンド120の押し付けが不十分で、十分な把持力が得られていないのであれば、制御装置400は、さらに吸着ハンド120を物品500に押し付けるようにロボットアーム110を制御する。ここで、さらに吸着ハンド120を物品500に押し付けるとは、排気部121が物品500の表面にさらに近付くようにするとこを意味する。このようにすれば、本実施の形態の把持装置を用いたロボットシステムは、物品500に応じて適切な吸着面積を得られるようになり、様々な物品500を把持することが可能になる。
図9は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120で、一方に長い物品500aを把持する様子を示す斜視図である。図9において、物品500aはX方向に長い直方体の形状を有している。ロボットシステムは、伸縮部123の一部が縮んだ状態になるまで吸着ハンド120を物品に押し付けることで、適切な吸着面積を得ている。
図10は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120で、物品500aを把持する様子を説明するための図である。図10は、図9に示す物品500aを把持する様子を説明するための概念図であり、Y−Z平面と平行な平面による断面の概念図である。図10は簡略化された図であり、吸着ハンド120の側壁の厚みは考慮していない。吸着ハンド120において、第2の連結部125b及び第3の連結部125cが折り畳まれている。この結果、物品500aを吸着する開口は、図10にB1で示した第2の筒状部124bの内部の開口となる。また、物品500aを吸着する開口は、物品500aで隙間なく閉じられている。この結果、吸着ハンド120は十分な把持力を得ている。
図11は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120で、物品500aを把持する様子を説明するための比較例を示す図である。図11は、吸着ハンド120が伸びた状態で、図9に示す物品500aを把持しようとする場合の概念図である。図11は簡略化された図であり、吸着ハンド120の側壁の厚みは考慮していない。吸着ハンド120は、伸びた状態となっており、物品500aを吸着する開口は、図11にB2で示した第4の筒状部124dの内部の開口となる。この結果、物品500aを吸着する開口は、物品500aの両側で完全に閉じられておらず、隙間が発生している。図11に示す状態では、吸着ハンド120は十分な把持力を得ることができない。
図12は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120で、一方に長い別の物品500bを把持する様子を示す斜視図である。図12において、物品500bはX方向に長い直方体の形状を有している。また、物品500bのY方向の幅は、図10に示す物品500aのY方向の幅よりも狭い。ロボットシステムは、伸縮部123が最も縮んだ状態になるまで吸着ハンド120を物品に押し付けることで、適切な吸着面積を得ている。
図13は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120で、物品500bを把持する様子を説明するための図である。図13は、図12に示す物品500bを把持する様子を説明するための概念図であり、Y−Z平面と平行な平面による断面の概念図である。図13は簡略化された図であり、吸着ハンド120の側壁の厚みは考慮していない。吸着ハンド120において、第1の連結部125a、第2の連結部125b及び第3の連結部125cが折り畳まれている。この結果、物品500bを吸着する開口は、図13にB3で示した第1の筒状部124aの内部の開口となる。また、物品500bを吸着する開口は、物品500bで隙間なく閉じられている。この結果、吸着ハンド120は十分な把持力を得ている。
図14は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120で、球体の物品500cを把持する様子を示す斜視図である。筒状部が程度な柔軟性を有していれば、表面が曲面となる物品500cに対しても、吸着ハンド120の密着度をより高くすることができる。
以上のように、本実施の形態の把持装置100を備えたロボットシステムは、物品500に対して、まず大きな開口を接触させる。もし、この大きな開口では物品500との間に空隙が生じて、十分な吸着力が得られないときは、ロボットシステムは、更に吸着ハンド120を押し付ける。この結果、吸着ハンド120が押し縮められて、より小さな開口が対象物に密着して吸着力を得られる。これによって、物品500の大きさに応じた吸着力を得る機構を簡単な構成で実現することができる。なお、開口を接触させるとは、筒状部を接触させることを意味する。このように、本実施の形態の把持装置100を備えたロボットシステムは、簡単な構造で、様々な対象物を把持可能となる。
吸着した物品500は、負圧発生源200の運転を停止させることや、配管に開放弁を設けるなどの手段で、吸着ハンド120の内部の負圧を低下させれば、吸着ハンド120から外すことが可能である。もし、連続して物品500を吸着させる際に、吸着ハンド120が縮んだ状態になっているのであれば、吸着ハンド120を伸ばす処理が必要となる。吸着ハンド120を伸ばす方法としては、例えば、吸着ハンド120を振ったりする動作によって、吸着ハンド120が伸びる方向の加速度を与えてやる方法が考えられる。また、別の方法としては、吸着ハンド120を伸展させるためにシリンダなどのアクチュエータを備えておく方法が考えられる。
また、吸着ハンド120を伸ばす別の方法として、エアチューブを使用する方法も考えられる。図15及び図16は、本実施の形態の把持装置100における吸着ハンド120の進展機構を説明するための図である。図15及び図16は、吸着ハンド120をX−Z平面と平行な面で切断した形状をY方向から見た図となっている。図15は、吸着ハンド120が伸びた状態を示している。一方、図16は、吸着ハンド120が縮んだ状態を示している。吸着ハンド120の側面には、圧力調整部127とチューブ128が取り付けられている。チューブ128の一端は、吸着ハンド120の接触部122の近辺に接続される。また、チューブ128の他端は、圧力調整部127に接続される。圧力調整部127は、吸着ハンド120の側面の伸縮部123よりも排気部121側に取り付けられる。したがって、チューブ128の他端は、圧力調整部127を介して、伸縮部123よりも排気部121側に接続されることになる。この結果、吸着ハンド120が伸びた状態では、チューブ128は、排気部121から接触部122にかけて伸縮部123の側面を這うように取り付けられる。
圧力調整部127は、例えば、加圧と減圧とを切り替える弁である。圧力調整部127は、チューブ128の内部を加圧または減圧することで、チューブ128の内部の圧力を調整する。圧力調整部127がチューブ128の内部の圧力を高くすると、チューブ128の剛性が高くなり、チューブ128は進展する。これに伴って、吸着ハンド120も伸展される。吸着ハンド120が進展された後は、圧力調整部127はチューブ128の内部の圧力を低くする。この結果、チューブの剛性は低くなり、吸着ハンド120の収縮に影響を及ぼさなくなる。
実施の形態2
実施の形態1における把持装置では、連結部によって筒状部を連結し、連結部を折り畳み可能な構成としていた。一方、実施の形態2における把持装置は、複数の筒状部をスライド可能な構成としたものである。図17は、本発明の実施の形態2における把持装置100が備える吸着ハンド120の外観を示す斜視図であり、伸縮部123が伸びた状態における吸着ハンド120の外観を示す斜視図である。また、図18は、本発明の実施の形態2における把持装置100が備える吸着ハンド120の切断形状を示す斜視図であり、伸縮部123が伸びた状態における吸着ハンド120の切断形状を示す斜視図である。なお、図18は、吸着ハンド120をX−Z平面と平行な面で切断した形状を示している。また、本実施の形態の把持装置100において、吸着ハンド120以外の構成は、実施の形態1におけるものと同様である。以降では、実施の形態1との相違点である吸着ハンド120の構成について説明する。
吸着ハンド120は、上面及び底面が開口した中空構造となっている。また、吸着ハンド120の上面は、排気部121となっている。排気部121の開口は、配管300を介して負圧発生源200に接続されている。一方、吸着ハンド120の底面は、物品500を把持する際に、物品500に接触する接触部122となっている。接触部122も開口している。
さらに、吸着ハンド120は、伸縮部123を備えている。伸縮部123は、Z軸方向に伸縮できるように構成されている。すなわち、伸縮部123のZ方向の長さは、長くなったり、短くなったりする。伸縮部123の内部の中空空間は、排気部121から接触部122に向かうにつれて、段階的に広くなっている。伸縮部123は、第1の筒状部124a、第2の筒状部124b、第3の筒状部124c、第4の筒状部124d、及び第5の筒状部124eを備えている。なお、本実施の形態の吸着ハンド120では、5つの筒状部を備える構成を例示しているが、この構成に限定されるわけではなく、2つ以上の筒状部を備えていれば良い。
本実施の形態の把持装置100では、第5の筒状部124eの底面が接触部122となる。それぞれの筒状部は、両端である上面および底面が開口した円筒形状である。また、それぞれの筒状部は、両端を結ぶ方向が伸縮方向と平行になるように配置されている。すなわち、それぞれの筒状部は、伸縮方向であるZ軸方向に対して開口が垂直となるように配置されている。
伸縮部が伸びた状態では、第1の筒状部124a、第2の筒状部124b、第3の筒状部124c、第4の筒状部124d、及び第5の筒状部124eは、Z方向の異なる位置に配列されている。第1の筒状部124aは、第2の筒状部124bよりも排気部121側に配置されている。また、第2の筒状部124bは、第3の筒状部124cよりも排気部121側に配置されている。また、第3の筒状部124cは、第4の筒状部124dよりも排気部121側に配置されている。また、第4の筒状部124dは、第5の筒状部124eよりも排気部121側に配置されている。
第2の筒状部124bの開口は、第1の筒状部124aを内部に収めることが可能な大きさとなっている。また、第3の筒状部124cの開口は、第2の筒状部124bを内部に収めることが可能な大きさとなっている。また、第4の筒状部124dの開口は、第3の筒状部124cを内部に収めることが可能な大きさとなっている。また、第5の筒状部124eの開口は、第4の筒状部124dを内部に収めることが可能な大きさとなっている。したがって、伸縮方向から見ると、第1の筒状部124a、第2の筒状部124b、第3の筒状部124c、第4の筒状部124d、及び第5の筒状部124eは同心円状に配置されていることになる。
第1の筒状部124aと第2の筒状部124bとの間には、シール部材126が配置されている。シール部材126は、第1の筒状部124aと第2の筒状部124bとの間から吸着ハンド120の内部に空気が流入するのを防ぐ。他の筒状部の間にも、同様にシール部材126が配置されている。
それぞれの筒状部は、伸縮方向に互いにスライド可能となっている。それぞれの筒状部が脱落するのを防ぐために、それぞれの筒状部の外壁の上下端、および内壁の上端には、庇状の突起部が設けられており、これらの突起部がストッパとして機能する。
次に、伸縮部123における伸縮動作について述べる。図19は、本実施の形態の吸着ハンド120の外観を示す斜視図であり、伸縮部123が縮んだ状態の外観を示す斜視図である。図19に示すように、本実施の形態の吸着ハンド120は、筒状部が伸縮方向にスライドし、他の筒状部の内部に位置するように移動することで、縮んだ状態となる。
図20は、本実施の形態の吸着ハンド120の切断形状を示す斜視図であり、伸縮部123の一部が縮んだ状態の切断形状を示す斜視図である。なお、図20は、吸着ハンド120をX−Z平面と平行な面で切断した形状を示している。
図20に示すように、筒状部が3つ以上あり、スライドする箇所が複数ある場合は、吸着ハンド120を縮ませる方向の力が加わった際に、接触部122側の筒状部が、排気部121側の筒状部よりも先にスライドするように、それぞれの筒状部をスライドさせるのに必要な力を調整しておく。例えば、シール部材126が両側の筒状部と接触している場合は、その接触によって生じる摩擦の大きさを調整することが考えられる。もしくは、磁力や静電吸引力により筒状部同士の位置を保持するための力を起こしておき、この力を調整しておく方法が考えられる。以上のように、本実施の形態の吸着ハンド120においても、簡単な構造で、様々な対象物を把持可能となる。