JP6769298B2 - 斜め延伸用原反フィルム及びその製造方法、並びに斜め延伸フィルムの製造方法 - Google Patents

斜め延伸用原反フィルム及びその製造方法、並びに斜め延伸フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、斜め延伸用原反フィルム及びその製造方法、並びに斜め延伸フィルムの製造方法に関する。
有機EL表示装置は、光の取り出し効率を高めるために、通常、有機EL素子の背面側にアルミニウム板等の反射部材を有する。そのため、有機EL表示装置に入射した外光がこの反射部材で反射されて、画像のコントラストが低下することがある。このような外光の反射による画像のコントラストの低下を抑制するために、有機EL素子の表面側に円偏光板が配置されている。
円偏光板は、偏光子と、延伸フィルムとを含む。円偏光板は、延伸フィルムと偏光子とを、延伸フィルムの面内遅相軸が、偏光子の透過軸に対して所望の角度で傾斜するように貼り合わせて製造される。偏光子の透過軸は、通常、長手方向に平行であるため、ロール・トゥ・ロールで貼り合わせて製造できるようにするために、延伸フィルムとしては、幅方向に対して斜め方向に面内遅相軸を有する斜め延伸フィルムが使用されている。
斜め延伸フィルムは、原反フィルムの幅方向の両端部を一対の把持具で把持すると共に、一方の把持具の移動距離が他方の把持具の移動距離よりも長くなるように搬送することで、原反フィルムを斜め方向に延伸(斜め延伸)して製造される。しかしながら、そのような斜め延伸では、フィルムの幅方向の一方の端部を把持する把持具と他方の端部を把持する把持具とで移動距離が異なり、延伸倍率が異なることから、得られるフィルムは、幅方向で厚みや光学特性が不均一になりやすいという問題があった。
これに対して、斜め延伸に用いられる原反フィルムとして、例えば特許文献1では、フィルムの幅方向の両端部のうち、一方の端部の厚みが、他方の端部の厚みよりも大きくなるような厚み勾配を有する原反フィルムが開示されている。特許文献2では、フィルムの幅方向の中央付近の厚みが、両端部の厚みよりも大きくなるような厚み勾配を有する原反フィルムが開示されている。これらの原反フィルムは、いずれも斜め延伸により減少する厚みの分だけ、予め厚みを増加させたものであることから、幅方向で厚みや光学特性を均一にできるとされている。
特許文献3では、フィルムの幅方向又は長手方向の中央部と両端部とで、位相差値の差が一定以上となるような位相差勾配を有する位相差板が開示されている。このような位相差板を用いることにより、表示装置の表示特性を均一にできるとされている。
特開2010−173261号公報 特開2014−237287号公報 特開平9−090127号公報
このように、特許文献1及び2に示されるような従来の原反フィルムは、斜め延伸後のフィルムの幅方向の厚みをある程度均一にしうるものの、斜め延伸時に発生するトタン状のツレを十分に抑制できるものではなかった。トタン状のツレが生じると、斜め延伸後のフィルムの外観を損なうだけでなく、十分な光学特性が得られにくい。
特許文献3に示される位相差板は、斜め延伸用の原反フィルムとして用いられることは想定されていないだけでなく、光学特性のバラツキを吸収できる程度にごく僅かに位相差分布を有するものに過ぎない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルムの幅方向で厚みを均一にしつつ、斜め延伸時に発生するトタン状のツレを十分に抑制できる斜め延伸用原反フィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた斜め延伸フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
[1] フィルムの幅方向に対して直交する方向にロール状に巻き取られた斜め延伸用原反フィルムであって、前記斜め延伸用フィルムの厚みが、フィルムの幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に増加する厚み勾配を有し、且つ
前記斜め延伸用フィルムの、下記式(I)で表され、且つ波長550nmで測定される厚み方向の位相差Rtが、前記一方の端部Aから前記他方の端部Bに向かうにつれて連続的に減少する位相差勾配を有する、斜め延伸用原反フィルム。
式(I):Rt=((nx+ny)/2−nz)×t
(式(I)中、
nxは、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表し、
nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
tは、フィルムの厚み(nm)を表す。)
[2] 下記式(1)で表される厚みの平均変化率は、0.06〜2%/0.1mである、[1]に記載の斜め延伸用原反フィルム。
式(1):厚みの平均変化率(%/0.1m)={((tB−tA)/tA*100)/L}*0.1
(式(1)中、
tA:一方の端部Aの厚み(μm)を示し、
tB:他方の端部Bの厚み(μm)を示し、
L:原反フィルムの幅方向の長さ(m)を示す)
[3] 下記式(2)で表される厚み方向の位相差Rtの平均変化率は、0.005〜0.2nm/μm/0.1mである、[1]又は[2]に記載の斜め延伸用原反フィルム。
式(2):Rtの平均変化率(nm/μm/0.1m)={(RtA−RtB)/L}*0.1
(式(2)中、
RtA:一方の端部Aの単位厚み当たりの位相差Rt(nm/μm)を示し、
RtB:他方の端部Bの単位厚み当たりの位相差Rt(nm/μm)を示し、
L:原反フィルムの幅方向の長さ(m)を示す)
[4] 斜め延伸用原反フィルムの製造方法であって、1)熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融混練する工程と、2)溶融状態の前記樹脂組成物をシート状に吐出する工程と、3)吐出された前記溶融状態の樹脂組成物を冷却固化する工程とを含み、
前記2)の工程において、
前記溶融状態の樹脂組成物の吐出厚みは、前記溶融状態の樹脂組成物の幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に厚くなっており、且つ
前記溶融状態の樹脂組成物の吐出温度は、前記一方の端部Aから前記他方の端部Bに向かうにつれて連続的に高くなっている、斜め延伸用フィルムの製造方法。
[5] 前記2)の工程は、前記溶融状態の樹脂組成物をダイスからシート状に吐出することによって行うと共に、前記ダイスのリップ間隔が、前記ダイスの幅方向の一方の端部aから他方の端部bに向かうにつれて連続的に増加しており、且つ
前記ダイス温度が、前記一方の端部aから前記他方の端部bに向かうにつれて連続的に高くなっている、[4]に記載の斜め延伸用原反フィルムの製造方法。
[6] 下記式(3)で表されるダイスのリップ間隔の平均変化率は、0.06〜2%/0.1mである、請求項5に記載の斜め延伸用原反フィルムの製造方法。
式(3):リップ間隔の平均変化率(%/0.1m)={((gb−ga)/ga*100)/L}*0.1
(式(3)中、
ga:ダイスの幅方向の一方の端部aのリップ間隔(μm)を示し、
gb:ダイスの幅方向の他方の端部bのリップ間隔(μm)を示し、
l:ダイスの幅方向の長さ(m)を示す)
[7] 下記式(4)で表されるダイス温度の平均変化率は、0.33〜3.33℃/0.1mである、[5]又は[6]に記載の斜め延伸用原反フィルムの製造方法。
式(4):ダイス温度の平均変化率(℃/0.1m)={(Tb−Ta)/l}*0.1
(式(4)中、
Ta:ダイスの幅方向の一方の端部aのダイス温度(℃)を示し、
Tb:ダイスの幅方向の他方の端部bのダイス温度(℃)を示し、
l:ダイスの幅方向の長さ(m)を示す)
[8] [1]〜[3]のいずれかに記載の斜め延伸用原反フィルムの幅方向の両端部のうち、厚みが小さい一方の端部Aを把持具Ciで把持し、厚みが大きい他方の端部Bを前記把持具Coで把持する工程と、前記把持具Coの移動距離を前記把持具Ciの移動距離よりも長くなるように前記斜め延伸用原反フィルムを搬送して、前記斜め延伸用原反フィルムを幅方向に対して斜め方向に延伸して斜め延伸フィルムを得る工程と、を含む、斜め延伸フィルムの製造方法。
本発明は、フィルムの幅方向で厚みや光学特性を均一にしつつ、斜め延伸時に発生するトタン状のツレを十分に抑制できる斜め延伸用フィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた斜め延伸フィルムの製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の斜め延伸用原反フィルムの幅方向の厚みと位相差Rtの勾配の一例を示す模式図である。 図2Aは、厚み勾配の形状の種々の例を示す模式図であり、図2Bは、位相差勾配の形状の種々の例を示す模式図である。 図3は、原反フィルムの製造装置の構成の一例を示す模式図である。 図4は、冷却ロール体周辺の構成の他の例を示す模式図である。 図5は、斜め延伸フィルムの製造装置の構成の一例を示す平面図である。 図6は、延伸部のレールパターンの一例を示す平面図である。 図7は、有機EL表示装置の構成の一例を示す模式図である。
斜め延伸時に発生するトタン状のツレが生じるメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。
即ち、斜め延伸時には、フィルムに機械的な収縮力(具体的には、屈曲時に隣接クリッピング位置が短くなる際の収縮)が加わりやすい。一方、フィルム自体も、熱収縮しようとすることから、熱収縮力が働きやすい。このとき、機械的な収縮力がフィルム自体の熱収縮力よりも小さい場合は、機械的な収縮力をフィルム自体の熱収縮力で吸収できるため、トタン状のツレは生じないが;機械的な収縮力がフィルム自体の熱収縮力よりも大きい場合は、機械的な収縮力をフィルム自体の熱収縮力で吸収しきれないため、トタン状のツレが生じやすい。つまり、トタン状のツレは、斜め延伸時にフィルムに加わる機械的な収縮力が、フィルム自体の熱収縮力よりも大きい場合に生じると考えられる。
従って、トタン状のツレを生じさせないためには、フィルム自体の熱収縮力を、機械的な収縮力よりも大きくすることが有効である。フィルム自体の熱収縮力を大きくするためには、フィルムの残留応力(配向性)を高めること;即ち、フィルムの位相差を高めることが有効である。
また、斜め延伸では、フィルムの幅方向で延伸倍率が異なることから、機械的な収縮力も、フィルムの幅方向で異なる。従って、トタン状のツレを生じさせないためには、フィルムの位相差を高めるだけでなく;フィルムの幅方向で位相差に勾配を持たせることが必要であると考えられる。
そこで、本発明では、フィルムの幅方向の両端部のうち、低い延伸倍率が付与される一方の端部Aの厚み方向の位相差Rtが高く、高い延伸倍率が付与される他方の端部Bの厚み方向の位相差Rtが低くなるような位相差勾配を付与する。それにより、斜め延伸時にトタン状のツレが生じるのを抑制できる(表1参照)。
また、低い延伸倍率が付与される一方の端部Aの厚みが小さく、高い延伸倍率が付与される他方の端部Bの厚みが大きくなるような厚み勾配をさらに付与する。それにより、斜め延伸後のフィルムの幅方向の厚みの均一性も高めることができる(表1参照)。
Figure 0006769298
即ち、本発明の斜め延伸用フィルムは、フィルムの幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に増加する厚み勾配を有し、且つ一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に減少する位相差勾配を有する。それにより、斜め延伸後の厚みを幅方向で均一にしつつ、斜め延伸時にトタン状のツレが生じるのを抑制できる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
1.斜め延伸用原反フィルム
本発明の斜め延伸用原反フィルム(以下、単に「原反フィルム」ともいう)は、フィルムの幅方向に対して直交する方向にロール状に巻き取られた原反フィルムであって、1)厚みが、フィルムの幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に増加する厚み勾配を有し;且つ2)厚み方向の位相差Rtが、一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に減少する位相差勾配を有する。
図1は、本発明の原反フィルムの幅方向の厚みと位相差Rtの勾配の一例を示す模式図である。図1において、横軸は、原反フィルムの幅方向の位置を示し;左側の縦軸は、原反フィルムの厚みを示し;右側の縦軸は、原反フィルムの位相差Rtを示す。図2Aは、厚み勾配の形状の種々の例を示す模式図であり、図2Bは、位相差勾配の形状の種々の例を示す模式図である。
(厚み勾配について)
図1に示されるように、原反フィルムは、フィルムの幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて厚みが連続的に増加する厚み勾配を有する。連続的に増加するとは、一方の端部Aと他方の端部Bとの間で極大値又は極小値を有することなく、一方の端部Aから他方の端部Bへ向かって増加することをいう。
原反フィルムの下記式(1)で表される厚みの平均変化率は、0.06〜2%/0.1mであることが好ましい。
式(1):厚みの平均変化率(%/0.1m)={((tB−tA)/tA*100)/L}*0.1
(式(1)中、
tA:一方の端部Aの厚み(μm)を示し、
tB:他方の端部Bの厚み(μm)を示し、
L:原反フィルムの幅方向の長さ(m)を示す)
厚みの平均変化率が0.06%/0.1m以上であると、斜め延伸後に得られるフィルムの厚みを幅方向で十分に均一にしやすく、2%/0.1m以下であると、幅方向の厚み勾配が大きくなりすぎないので、斜め延伸後に得られるフィルムの厚みが幅方向で不均一になるのを抑制しやすい。原反フィルムの厚みの平均変化率は、1.05〜1.2%/0.1mであることがより好ましい。
図1では、厚み勾配の形状が下に凸となる曲線状である例を示したが、これに限定されず、直線状(符号1)であってもよいし、上に凸となる曲線状(符号3)であってもよい(図2A参照)。
即ち、原反フィルムの幅方向の中心部と一方の端部Aとの間の厚みの平均変化率は、原反フィルムの幅方向の中心部と他方の端部Bとの間の厚みの平均変化率と同じであってもよいし、異なってもよい。中でも、斜め延伸フィルムにおける厚みのバラツキを低減しやすくする観点では、原反フィルムの幅方向の中心部と一方の端部Aとの間の厚みの平均変化率<原反フィルムの幅方向の中心部と他方の端部Bとの間の厚みの平均変化率であることが好ましい。幅方向の中心部と一方の端部Aとの間の厚みの平均変化率や幅方向の中心部と他方の端部Bとの間の厚みの平均変化率は、前述の厚みの平均変化率と同様にして(式(1)において、Lを0.5Lに変更し、tA又はtBを幅方向の中心部の厚みに変更して)求めることができる。
原反フィルムの幅方向の長さLは、特に制限されないが、例えば300〜2000mmであることが好ましく、500〜1500mmであることがより好ましい。
原反フィルムの平均厚みは、例えば20〜200μm、好ましくは40〜150μm、より好ましくは50〜120μmとしうる。原反フィルムの平均厚みとは、原反フィルムの一方の端部Aの厚みと他方の端部Bの厚みの和に0.5を乗じた値である。
原反フィルムの厚みは、原反フィルムの製造工程における、ダイスから溶融状態の樹脂組成物を吐出するときの吐出厚み(ダイスのリップ間隔)によって調整することができる。即ち、溶融状態の樹脂組成物の吐出厚みに幅方向に分布を持たせること(ダイスのリップ間隔に幅方向で分布を持たせること)により調整することができる。
(位相差勾配について)
原反フィルムは、下記式(I)で表される厚み方向の位相差Rtが、フィルムの幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に減少する位相差勾配を有する。
式(I):Rt=((nx+ny)/2−nz)×t
(式(I)中、
nxは、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表し、
nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
tは、フィルムの厚み(nm)を表す。)
下記式(2)で表される厚み方向の位相差Rtの平均変化率は、0.005〜0.2nm/μm/0.1mであることが好ましい。
式(2):Rtの平均変化率(nm/μm/0.1m)={(RtA−RtB)/L}*0.1
(式(2)中、
RtA:一方の端部Aの単位厚み当たりの位相差Rt(nm/μm)を示し、
RtB:他方の端部Bの単位厚み当たりの位相差Rt(nm/μm)を示し、
L:原反フィルムの幅方向の長さ(m)を示す)
位相差Rtの平均変化率が0.005nm/μm/0.1m以上であると、斜め延伸時に原反フィルムに加わる機械的な収縮力の幅方向の分布に対応して、原反フィルムの熱収縮力を生じさせやすい。それにより、機械的な収縮力を十分に吸収しやすく、トタン状のツレを抑制しやすい。位相差Rtの平均変化率が0.2nm/μm/0.1m以下であると、斜め延伸時における原反フィルムの熱収縮力が大きくなりすぎないので、斜め延伸後に得られるフィルムの幅方向の位相差Rtが不均一になるのを抑制できる。原反フィルムの位相差Rtの平均変化率は、0.01〜0.15nm/μm/0.1mであることがより好ましい。
図1では、位相差勾配の形状が下に凸となる曲線状である例を示したが、これに限定されず、直線状(符号1)であってもよいし、上に凸となる曲線状(符号3)であってもよい(図2B参照)。
即ち、原反フィルムの幅方向の中心部と一方の端部Aとの間の位相差Rtの平均変化率は、原反フィルムの幅方向の中心部と他方の端部Bとの間の位相差Rtの平均変化率と同じであってもよいし、異なってもよい。中でも、斜め延伸フィルムにおける位相差Rtのバラツキを低減しやすくする観点では、原反フィルムの幅方向の中心部と一方の端部Aとの間の位相差Rtの平均変化率>原反フィルムの幅方向の中心部と他方の端部Bとの間の位相差Rtの平均変化率であることが好ましい。幅方向の中心部と一方の端部Aとの間の位相差Rtの平均変化率や幅方向の中心部と他方の端部Bとの間の位相差Rtの平均変化率は、前述の位相差Rtの平均変化率と同様にして(式(2)において、Lを0.5Lに変更し、RA又はRBを幅方向の中心部の位相差Rt(nm/μm)に変更して)求めることができる。
原反フィルムの厚み方向の位相差Rtは、原反フィルムの製膜工程において、ダイスから溶融状態の樹脂組成物を吐出するときの吐出温度(ダイス温度)によって調整することができる。即ち、溶融状態の樹脂組成物の吐出温度に幅方向に分布を持たせること(ダイス温度に幅方向で分布を持たせること)により調整することができる。
(原反フィルムの材料)
原反フィルムの材料は、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂を用いることができ、その例には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、環状オフィン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロースエーテル系樹脂等が含まれる。中でも、透明性や機械強度等の観点から、環状オレフィン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
(環状オレフィン系樹脂)
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン由来の構造単位を含む重合体であり、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体又はそれらの水添物が含まれる。
環状オレフィンは、ノルボルネン系単量体であることが好ましい。即ち、環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂であることが好ましい。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン等のノルボルネン系単量体以外の環状オレフィンが含まれる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能な共重合性単量体の例には、不飽和二重結合含有化合物、ビニル系環状炭化水素単量体、(メタ)アクリレートが含まれる。不飽和二重結合含有化合物の例には、炭素原子数2〜12(好ましくは2〜8)のオレフィン系化合物であり、その例には、エチレン、プロピレン、ブテンが含まれる。ビニル系環状炭化水素単量体の例には、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテン等のビニルシクロペンテン系単量体が含まれる。(メタ)アクリレートの例には、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。
中でも、ノルボルネン系単量体の開環(共)重合体が好ましい。
ノルボルネン系単量体由来の構造単位の含有割合は、環状オレフィン系樹脂を構成する構造単位の合計に対して50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%とし得る。
環状オレフィン系樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」が挙げられる。
環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000〜300000であることが好ましく、30000〜250000であることがより好ましく、40000〜200000であることがさらに好ましい。
環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。測定条件は以下の通りである。
(測定条件)
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)
Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
(セルロースエステル系樹脂)
セルロースエステル樹脂は、炭素数2以上の脂肪族アシル基を有するセルロースエステルであることが好ましい。
脂肪族アシル基の炭素数は、セルロース合成の生産性、コストの観点から、2以上6以下が好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタネート基、ヘキサネート基等が含まれる。
セルロースエステルの例には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースペンタネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートペンタネート等が含まれる。中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネートが好ましい。
セルロースエステルのアシル総置換度は、1.0〜2.95であることが好ましい。中でも、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとしたとき、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルが好ましい。
式(I) 1.0≦X+Y≦2.95
式(II) 0≦X≦2.5
中でも、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましく、0.01≦X≦2.5、0.1≦Y≦2.94を満たすセルロースアセテートプロピオネートがより好ましい。アシル基置換度は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの重量平均分子量Mwは、50000〜500000であることが好ましく、100000〜300000であることがより好ましく、150000〜250000であることがさらに好ましい。セルロースエステルの重量平均分子量Mwは、前述と同様の方法で測定することができる。
(ポリカーボネート系樹脂)
ポリカーボネート系樹脂としては、化学的性質及び物性の点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、フルオレン骨格を有するポリカーボネートや、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂がより好ましく、ビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、脂肪族炭化水素基等を導入したものがさらに好ましい。さらに、ビスフェノールAの中央の炭素に対して、非対称に上記官能基が導入された誘導体を用いて得られたポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
このようなポリカーボネート樹脂の例には、ビスフェノールAの中央の炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置き換えたもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一の水素をメチル基やフェニル基等で中央炭素に対し非対称に置換して得られるポリカーボネート樹脂が特に好ましい。具体的には、4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカン又はこれらのハロゲン置換体からホスゲン法又はエステル交換法によって得られるものであり、例えば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルブタン等が含まれる。
熱可塑性樹脂の含有量は、原反フィルムの全質量に対して50〜100質量%であることが好ましく、50〜99質量%であることがより好ましく、60〜98質量%であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以上であると、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等を十分に発現しうる。
(その他の成分)
原反フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、微粒子(マット剤)や紫外線吸収剤、酸化防止剤等が含まれる。
微粒子(マット剤)は、原反フィルムの滑り性を高める機能を有する。微粒子の例には、二酸化珪素(SiO)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等の無機微粒子が含まれる。中でも、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素粒子の市販品の例には、アエロジルR812、R972(日本アエロジル社製)、NanoTek SiO(シーアイ化成社製)等が含まれる。
微粒子の平均一次粒子径は、5〜50nmであることが好ましい。微粒子の平均一次粒子径が5nm以上であると、フィルムの表面を粗面化することができるので、滑り性を付与しやすく、50nm以下であると、ヘイズの増大を抑制しやすい。微粒子の平均一次粒子径は、5〜30nmであることがより好ましい。
微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対して例えば0.1〜5質量%としうる。無機微粒子の含有量が0.1質量%以上であると、得られる原反フィルムの表面の滑り性を十分に高めやすく、5質量%以下であると、原反フィルムのヘイズの増大を抑制しやすい。微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対して0.1〜2.5質量%であることがより好ましく、0.3〜2質量%であることがさらに好ましい。
2.原反フィルムの製造方法
本発明の原反フィルムは、溶融流延法によって製造されることが好ましく、機械的強度や表面精度が良好なフィルムが得られやすい点から、溶融押し出し法によって製造されることがより好ましい。
まず、本発明の原反フィルムの製造方法に用いられる、原反フィルムの製造装置の構成の一例を説明する。
図3は、原反フィルムの製造装置の構成の一例を示す模式図である。図3に示されるように、原反フィルムの製造装置10は、押出し機11と、フィルター13と、スタチックミキサー15と、ダイス17と、第1冷却ロール19と、タッチロール21と、第2冷却ロール23と、第3冷却ロール25と、剥離ロール27とを含む。
押出し機11は、単軸押出し機でも2軸押出し機でもよい。
フィルター13は、押し出された溶融樹脂中の異物を除去するものであり、例えばリーフディスクタイプのフィルターでありうる。
スタチックミキサー15は、必要により添加される添加剤を溶融樹脂に混合するものである。必要により添加される添加剤は、押出し機11に供給する前に樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機11の途中で添加してもよい。その場合、スタチックミキサー15は、省略されてもよい。
ダイス17は、例えばコートハンガーダイでありうる。ダイス17は、リップ間隔(スリットギャップ)と温度を、ダイス17の幅方向の位置毎に調整可能に構成されている。ダイス17は、例えばリップ間隔をダイス13の幅方向の位置毎に調整するためのギャップ調節部材(不図示)を有しうる。また、ダイス13は、多数のヒートボルト(不図示)がダイス13の幅方向、即ち一対のリップ間に形成されるスリットの長さ方向に一定ピッチで配列されていており;ヒートボルト毎に温度を調整できるようになっている。
ダイス17の材質は、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)等を溶射若しくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨等の加工を施したもの等が挙げられる。ダイス17のリップ部の材質も、ダイス17と同様である。
タッチロール21(挟圧回転体)は、可撓性を有する、シームレスなステンレス鋼管製の外筒と、その内側に同一軸心状に配置された高剛性の金属内筒とを含む。そして、外筒と内筒との間の空間には、冷却液が流されるようになっている。外筒は、ゴム弾性に近い柔軟性と可撓性、復元性を付与するために薄肉化されている。外筒は、可撓性を高めるために、t(肉厚)/r(ロール半径)≦0.03を満たすことが好ましい。タッチロール21の例には、特開2011−27898号公報に記載のものが含まれる。
第1冷却ロール19、第2冷却ロール23、及び第3冷却ロール25は、肉厚が20〜30mm程度のシームレスな鋼管製であって、表面が鏡面に仕上げられている。第1冷却ロール19、第2冷却ロール23、及び第3冷却ロール25は、内部に冷却液を流す配管を有し、配管を流れる冷却液によってロール上のフィルムから熱を吸収できるようになっている。
次に、本発明の原反フィルムの製造方法を、図3を参照しながら説明する。
即ち、本発明の原反フィルムの製造方法は、1)前述の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融混練する工程、2)溶融状態の樹脂組成物をシート状に吐出する工程、及び3)吐出された溶融状態の樹脂組成物を冷却固化する工程を含む。
1)の工程について
押出し機11に供給する材料は、予め乾燥させておくことが好ましい。真空又は減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機等で水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させる。押出し機11に材料を供給する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして、酸化分解を防止することが好ましい。
押出し機11内の材料の溶融温度は、材料の粘度や吐出量、製造するフィルムの厚み等にもよるが、一般的には、フィルムのガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+100℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。押し出し時の溶融粘度は、1〜10000Pa・s、好ましくは10〜1000Pa・sである。
押出し機11内での材料の滞留時間は、短いほうが好ましく、例えば5分以内としうる。滞留時間は、押出し機11の種類、押し出し条件にもよるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等によって調整することができる。
溶融混練時のせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
次いで、押出し機11から押し出された溶融状態の樹脂組成物を、必要に応じてフィルター13で濾過して異物を除去した後、必要に応じて添加剤等をスタチックミキサー15でさらに混合して、溶融状態の樹脂組成物をダイス17に供給する。
2)の工程について
溶融状態の樹脂組成物は、ダイス17に送られ、ダイス17のスリットからシート状に吐出される。溶融状態の樹脂組成物の吐出は、溶融状態の樹脂組成物の吐出厚みが、幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に厚くなり、且つ溶融状態の樹脂組成物の吐出温度が、一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に高くなるように行うことが好ましい。
溶融状態の樹脂組成物の吐出厚みは、ダイス17のリップ間隔によって調整し;溶融状態の樹脂組成物の吐出温度は、ダイス17の加熱温度(ダイス温度)によって調整しうる。即ち、ダイス17のリップ間隔は、ダイス17の幅方向の一方の端部aから他方の端部bに向かうにつれて連続的に増加しており、且つダイス17の温度(ダイス温度)は、一方の端部aから他方の端部bに向かうにつれて連続的に高くなっている。
得られる原反フィルムの幅方向の厚み勾配を前述の範囲とするためには、ダイス17の下記式(3)で表されるリップ間隔の平均変化率は、0.06〜2%/0.1mであることが好ましく、1.05〜1.20%/0.1mであることがより好ましい。
式(3):リップ間隔の平均変化率(%/0.1m)={((gb−ga)/ga)*100/l}*0.1
(式(3)中、
ga:ダイスの幅方向の一方の端部aのリップ間隔(μm)を示し、
gb:ダイスの幅方向の他方の端部bのリップ間隔(μm)を示し、
l:ダイスの幅方向の長さ(m)を示す)
得られる原反フィルムの幅方向の位相差Rtを前述の範囲とするためには、下記式(4)で表されるダイス温度の平均変化率は、0.33〜3.33℃/0.1mであることが好ましく、0.5〜2.0℃/0.1mであることがより好ましい。
式(4):ダイス温度の平均変化率(℃/0.1m)={(Tb−Ta)/l}*0.1
(式(4)中、
Ta:ダイスの幅方向の一方の端部aのダイス温度(℃)を示し、
Tb:ダイスの幅方向の他方の端部bのダイス温度(℃)を示し、
l:ダイスの幅方向の長さ(m)を示す)
ダイス温度が高いほど、溶融状態の樹脂組成物に加わる引取り応力が少ないため、位相差Rtが発現しにくい。つまり、ダイスの他方の端部a近傍から吐出される溶融状態の樹脂組成物のほうが、ダイスの一方の端部a近傍から吐出される溶融状態の樹脂組成物よりも位相差Rtが発現しにくい。尚、ダイスの幅方向の一方の端部aは、原反フィルム(又は溶融状態の樹脂組成物)の一方の端部Aと対応し;ダイスの幅方向の他方の端部bは、原反フィルム(又は溶融状態の樹脂組成物)の他方の端部Bと対応する。
ダイス17の平均リップ間隔は、原反フィルムの平均厚みが前述した範囲となるように設定されればよく、通常、200〜2000μm、好ましくは300〜1800μm、より好ましくは500〜1500μmである。
3)の工程について
ダイス17からシート状に吐出された溶融状態の樹脂組成物を、第1冷却ロール19とタッチロール21とでニップして冷却した後、第2冷却ロール23、第3冷却ロール25でさらに冷却固化させ、剥離ロール27で剥離して、原反フィルムを得る。
シート状に吐出された溶融樹脂を第1冷却ロール19にて冷却する際、溶融樹脂を、第1冷却ロール19とタッチロール21とでニップしてもよい(図3参照)。それにより、原反フィルムの平面性を高めることができる。
図3では、タッチロール21を用いる例を示したが、これに限定されず、静電ピニングを用いてもよい。図4は、冷却ロール体周辺の構成の他の例を示す模式図である。図4に示されるように、静電ピニングとして、エッジピニング29Aと、ワイヤーピニング29Bとが設けられてもよい。
エッジピニング29Aは、シート状に吐出された溶融状態の樹脂組成物の幅方向の端部を静電密着させるためのものであり、シート状に吐出された溶融状態の樹脂組成物が、第1冷却ロール19に着地するまでの間に設置することが好ましく、より好ましくはダイス17の吐出口と、溶融樹脂が第1冷却ロール19に着地する点との中間点から、溶融状態の樹脂組成物が第1冷却ロール21に着地する点までの間がよい。また、溶融状態の樹脂組成物の幅方向の端部付近に設置することが好ましい。また、溶融状態の樹脂組成物の表面からのエッジピニング29Aまでの距離は、1〜10mmが好ましい。
ワイヤーピニング29Bは、シート状に吐出された溶融状態の樹脂組成物の幅方向の全体を静電密着させるためのものであり、シート状に吐出された溶融状態の樹脂組成物が、第1冷却ロール19に着地し、第1冷却ロール19上での樹脂温度がTgとなる位置を含め、これより下流側であり、且つ溶融状態の樹脂組成物が第1冷却ロール19から剥離される位置よりも上流側に設置することが好ましい。溶融状態の樹脂組成物の表面からのワイヤーピニング29Bまでの距離は、1〜10mmが好ましい。
図4では、エッジピニング29Aとワイヤーピニング29Bの両方が設けられる例を示したが、これに限定されず、どちらか一方のみが設けられてもよいし;エッジピニング29Aとタッチロール21とを組み合わせてもよい。
3.斜め延伸フィルムの製造方法
まず、斜め延伸フィルムの製造方法に用いられる、斜め延伸フィルムの製造装置の構成について説明する。
図5は、斜め延伸フィルムの製造装置30の構成の一例を示す平面図である。図5に示されるように、斜め延伸フィルムの製造装置30は、原反フィルムの搬送方向上流側から順に、フィルム繰り出し部31と、搬送方向変更部33と、ガイドロール35と、延伸部37と、ガイドロール39と、搬送方向変更部41と、フィルム巻き取り部43とを有する。延伸部37は、後述する。
フィルム繰り出し部31は、長尺状の前述の原反フィルムを繰り出して延伸部37に供給するものである。フィルム繰り出し部31は、原反フィルムの製膜装置と別体で構成されていてもよいし、一体的に構成されてもよい。前者の場合、原反フィルムを製膜後に一度巻芯に巻き取って巻回体(長尺フィルム原反)となったものをフィルム繰り出し部31に装填することで、フィルム繰り出し部31から長尺フィルムが繰り出される。一方、後者の場合、フィルム繰り出し部31は、原反フィルムの製膜後、それを巻き取ることなく、延伸部37に対して繰り出すことになる。
搬送方向変更部33は、フィルム繰り出し部31から繰り出される原反フィルムの搬送方向を、延伸部37の入口に向かう方向に変更するものである。搬送方向変更部33は、例えばフィルムを搬送しながら折り返すことで搬送方向を変更するターンバーや、そのターンバーをフィルムに平行な面内で回転させる回転テーブルを含んで構成されている。
ガイドロール35は、原反フィルムの走行時の軌道を安定させるために、延伸部37の上流側に少なくとも1本設けられている。
ガイドロール39は、延伸部37にて斜め延伸されたフィルムの走行時の軌道を安定させるために、延伸部37の下流側に少なくとも1本設けられている。
搬送方向変更部41は、延伸部37から搬送される延伸後のフィルムの搬送方向を、フィルム巻き取り部43に向かう方向に変更するものである。
フィルム巻き取り部43は、延伸部37から搬送方向変更部41を介して搬送されるフィルムを巻き取るものであり、例えばワインダー装置、アキューム装置、ドライブ装置等で構成される。
図6は、延伸部37のレールパターンの一例を模式的に示す平面図である。但し、これは一例であって、延伸部37の構成はこれに限定されるものではない。
延伸部37では、斜め延伸可能なテンター(斜め延伸機)を用いて、原反フィルムを斜め延伸する。斜め延伸機は、加熱ゾーンZと、左右で一対のレールRi及びRoと、レールRi及びRoに沿って走行し、原反フィルムを搬送する多数の把持具Ci及びCoとを有する。
レールRi及びRoは、それぞれ、複数のレール部を連結部で連結して構成されうる(図6中の白丸は連結部の一例)。把持具Ci及びCoは、原反フィルムの幅方向の両端を把持するクリップである。
図6において、原反フィルムの繰出方向D1は、延伸後の斜め延伸フィルムの巻取方向D2と異なっており、巻取方向D2との間で繰出角度θiをなしている。繰出角度θiは、0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができる。
このように、繰出方向D1と巻取方向D2とが異なっており、且つレールRoを走行する把持具Coの移動距離が、レールRiを走行する把持具Ciの移動距離よりも長くなっている。そのため、テンターのレールパターンは左右で非対称な形状となっている。そして、斜め延伸フィルムに付与すべき配向角θ、延伸倍率等に応じて、レールパターンを手動又は自動で調整できるようになっている。
テンターの把持具Ci及びCoは、前後の把持具Ci及びCoと一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。把持具Ci及びCoの走行速度は、通常、1〜150m/minである。
加熱ゾーンZは、予熱ゾーンZ1、延伸ゾーンZ2及び熱固定ゾーンZ3を有する。延伸部37では、把持具Ci及びCoによって把持されたフィルムは、予熱ゾーンZ1、延伸ゾーンZ2、熱固定ゾーンZ3を順に通過する。予熱ゾーンZ1と延伸ゾーンZ2とは隔壁で区切られており、延伸ゾーンZ2と熱固定ゾーンZ3とは隔壁で区切られている。
予熱ゾーンZ1とは、加熱ゾーンZの入口部において、原反フィルムの両端を把持した把持具Ci及びCoが、左右で(フィルム幅方向に)一定の間隔を保ったまま走行する区間を指す。
延伸ゾーンZ2とは、フィルムの両端を把持した把持具Ci及びCoの間隔が開き出し、所定の間隔になるまでの区間を指す。
熱固定ゾーンZ3とは、延伸ゾーンZ2より後の、把持具Ci及びCoの間隔が再び一定となる区間であって、両端の把持具Ci及びCoが互いに平行を保ったまま走行する区間を指す。
次に、本発明の斜め延伸フィルムの製造方法について、図5を参照しながら説明する。
本発明の斜め延伸フィルムの製造方法は、1)本発明の原反フィルムの幅方向の一方の端部Aを把持具Ciで把持し、他方の端部Bを把持具Coで把持する工程と;2)把持具Coの移動距離を把持具Ciの移動距離よりも長くなるように原反フィルムを搬送して、原反フィルムを斜め方向に延伸して斜め延伸フィルムを得る工程とを含む。
2)の工程では、一対の把持具Ci及びCoを走行させて、原反フィルムを搬送する。一対の把持具Ci及びCoは、延伸部37の入口部(図中Pの位置)において、フィルムの進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対しており、左右非対称な一対のレールRi及びRo上をそれぞれ走行する。
このとき、レールRi及びRoは左右非対称であり、長さも異なるため、図6中Pの位置で相対していた左右の把持具Ci及びCoは、レールRi及びRo上を走行するにつれて、レールRi側(インコース側)を走行する把持具Ciが、レールRo側(アウトコース側)を走行する把持具Coに対して先行する位置関係となる。
即ち、図中Pの位置でフィルムの繰出方向D1に対して略垂直な方向に相対していた把持具Ci及びCoのうち、一方の把持具Ciがフィルムの延伸終了時の位置Qに先に到達したときには、把持具Ci及びCoを結んだ直線がフィルムの巻取方向D2に略垂直な方向に対して、角度θLだけ傾斜している。以上の所作をもって、原反フィルムが幅方向に対してθLの角度で斜め延伸されることとなる。尚、略垂直とは、90±1°の範囲にあることを示す。
延伸温度は、例えば樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−30〜Tg+50℃に設定されうる。延伸温度は、主に延伸ゾーンZ2における加熱温度で調整されうる。延伸倍率は、求められるフィルムの特性にもよるが、例えば1.1〜5.0倍でありうる。
その後、延伸終了時の出口部(図中Qの位置)に到達すると、把持していたフィルムを開放する。把持具Ci及びCoから開放されたフィルムは、前述したフィルム巻き取り部43にて巻芯に巻き取られる。一対のレールRi及びRoは、それぞれ無端状の連続軌道を有しており、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具Ci及びCoは、外側のレールを走行して順次入口部に戻される。
本発明では、原反フィルムの幅方向の一方の端部Aを把持具Ciで把持し、他方の端部Bを把持具Coで把持し、把持具Coの移動距離を把持具Ciの移動距離よりも長くなるように原反フィルムを搬送して、原反フィルムを斜め方向に延伸する。このとき、原反フィルムは、前述の通り、フィルムの幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に増加する厚み勾配を有し、且つ厚み方向の位相差Rtが、一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に減少する位相差勾配を有する。従って、斜め延伸時に機械的な収縮力が原反フィルムの幅方向に不均一に加わっても、その機械的な収縮力を原反フィルムの熱収縮力(位相差勾配)によって吸収できるので、トタン状のツレが生じるのを抑制できる。さらに、斜め延伸時に、原反フィルムの幅方向に不均一な延伸倍率が付与されても、原反フィルムが有する厚み勾配によって吸収できるので、延伸後のフィルムの幅方向の厚みも均一にすることができる。
5.斜め延伸フィルムの物性
(位相差Ro及びRt)
斜め延伸フィルムが、λ/4位相差フィルムとして用いられる場合、測定波長550nm、23℃55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差Roは、30nm≦Ro≦300nmを満たすことが好ましく、50nm≦Ro≦250nmを満たすことがより好ましい。厚み方向の位相差Rtは、−200nm≦Rt≦200nmを満たすことが好ましく、−150nm≦Rt≦150nmを満たすことがより好ましい。
斜め延伸フィルムのRo及びRtは、それぞれ下記式で定義される。
式(IIa):Ro=(nx−ny)×d
式(IIb):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、
nxは、斜め延伸フィルムの面内遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を表し、
nyは、斜め延伸フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、斜め延伸フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、斜め延伸フィルムの厚み(nm)を表す。)
斜め延伸フィルムの面内遅相軸とは、フィルム面において屈折率が最大となる軸をいう。斜め延伸フィルムの面内遅相軸は、自動複屈折率計アクソスキャン(AxoScan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)により確認することができる。
斜め延伸フィルムのRo及びRtの測定は、以下の方法で行うことができる。
1)斜め延伸フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿する。この斜め延伸フィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚みdを市販のマイクロメーターを用いて測定する。
2)調湿後の斜め延伸フィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRo及びRtを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(AxoScan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃55%RHの環境下で測定する。
斜め延伸フィルムの面内遅相軸とフィルムの幅方向とのなす角(配向角)は、40〜50°であることが好ましく、45°であることがより好ましい。
(厚み)
斜め延伸フィルムの厚みは、例えば5〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは20〜60μmとしうる。
4.斜め延伸フィルムの用途
本発明の斜め延伸フィルムは、前述の通り、有機EL表示装置の円偏光板等に用いることができる。
(有機EL表示装置)
図7は、有機EL表示装置の構成の一例を示す模式図である。図7に示されるように、有機EL表示装置100は、有機EL素子101と、円偏光板301と、それらの間に配置された接着層201とを有する。
有機EL素子101は、ガラスやポリイミド等を用いた基板111上に、金属電極112、発光層113、透明電極(ITO等)114、封止層115をこの順に有する。
金属電極112(陽極)は、効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えばAl、Cr、Mo、W、Cu、Ag、Au等の金属やその合金、これらの酸化物が用いられる。金属電極112は、光反射性に優れた第1層と、この上部に設けられた光透過性を有すると共に仕事関数の大きい第2層との積層物であっても良い。例えば、第1層を、Al又はCrを主成分とする合金層とし、第2層を、ITOやIZOとしてもよい。
発光層113は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、これらの正孔注入層、発光層、電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成でありうる。
透明電極114(陰極)は、仕事関数が小さく、且つ光透過性の良好な材料、例えばLi酸化物(例えばLiO)や、セシウムの複合酸化物(例えばCsCO)、Ca、Ba等のアルカリ土類金属、Li、Ce等のアルカリ金属、In、Mg等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの酸化物や複合酸化物、フッ化物等が用いられる。
有機EL素子101自体の厚さは1μm程度である。
円偏光板301は、有機EL素子101側から、λ/4位相差フィルム311、偏光子312、保護フィルム313をこの順に有する。偏光子312の透過軸と斜め延伸フィルムからなるλ/4位相差フィルム311の遅相軸とのなす角度が約45°(または135°)となるように貼り合わせることで、円偏光板301が構成されている。
上記の構成において、金属電極112と透明電極114とに電圧を印加すると、発光層113に対して、金属電極112及び透明電極114のうちで陰極となる電極から電子が注入され、陽極となる電極から正孔が注入され、両者が発光層113で再結合することにより、発光層113の発光特性に対応した可視光線の発光が生じる。発光層113で生じた光は、直接又は金属電極112で反射した後、透明電極114及び円偏光板301を介して外部に取り出される。
発光層113は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で構成されていることから、発光層113も透明電極114と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板114の表面から入射し、透明電極114と発光層113とを透過して金属電極112で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置100の表示面が鏡面のように見える。円偏光板301は、このような外光反射が特に問題となる有機EL表示装置に適している。
即ち、有機EL素子101の非発光時に、室内照明等により有機EL素子101の外部から入射した外光は、円偏光板301の偏光子312によって半分は吸収され、残りの半分は直線偏光として透過し、λ/4位相差フィルム311に入射する。λ/4位相差フィルム311に入射した光は、偏光子312の透過軸とλ/4位相差フィルム311の遅相軸とが45°(または135°)で交差するように配置されているため、λ/4位相差フィルム311を透過することにより円偏光に変換される。
λ/4位相差フィルム311から出射された円偏光は、有機EL素子101の金属電極112で鏡面反射する際に、位相が180度反転し、逆回りの円偏光として反射される。この反射光は、λ/4位相差フィルム311に入射することにより、偏光子312の透過軸に垂直(吸収軸に平行)な直線偏光に変換されるため、偏光子312で全て吸収され、外部に出射されないことになる。つまり、円偏光板301により、有機EL素子101での外光反射を低減することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)原反フィルムの作製
環状オレフィン樹脂(アートンR5000:JSR(株)製、ガラス転移点(Tg)=137℃)のペレットを、100℃で3時間乾燥させて、含水率100ppmとした。このペレットを、図3に示されるようなTダイを取り付けた単軸押出し機に供給して、以下の条件で溶融押出しを行った後、冷却固化して幅1.00mの原反フィルムを得た。
(溶融押出し条件)
・単軸押出し機:スクリュー径90mm、L/D=30(L:スクリュー長、D:スクリュー径)
・ダイス:内壁にハードクロムメッキが施され、面粗度0.1Sの鏡面に仕上げられたコートハンガーダイを使用、ダイスの幅は1.5m。
ダイスのリップ間隔は、一方の端部aを990μm、他方の端部bを1050μmとして、幅方向に勾配を有するように設定した(リップ間隔の平均変化率:0.4%/0.1m)。
ダイス温度は、一方の端部Aに対して他方の端部Bを5℃高くし、幅方向で温度勾配を有するように設定した(ダイス温度の平均変化率:0.33℃/0.1m))。
・冷却ロール:材質はステンレス鋼、表面粗さは最大高さRyで0.1μm以下のものを使用。
・押圧ロール:金属外筒、内筒、空隙部を有する二重筒構造のものを使用。
金属外筒:材質はステンレス、表面粗さは最大高さRyで0.05μm以下、肉厚は3mm
内筒:材質はアルミニウム、肉厚は30mm
金属外筒と内筒との空隙部:空隙大きさは5mm、この空隙部にオイルを流し、金属外筒の表面の温度を120℃に設定。
・静電ピニング:春日電機株式会社製のエッジピニングを配置。
フィルム表面からエッジピニングまでの距離は2mmに設定。
・押出し環境:材料供給口付近より窒素ガスを封入して、押出し機内を窒素雰囲気に維持した。
・フィルムの搬送速度:30m/min
得られた原反フィルムの幅方向の厚みの勾配と位相差Rtの勾配を、それぞれ以下の方法で評価した。
(厚みの勾配)
得られた原反フィルムの幅方向の一方の端部Aと他方の端部Bの厚みを、デジマチックシックネスゲージ(ミツトヨ製)を用いてそれぞれ測定した。この測定を、斜め延伸フィルムの長手方向の50m毎に3回行い、その平均値を求めた。
一方の端部Aの厚みtA(平均値)、他方の端部Bの厚みtB(平均値)、及び原反フィルムの幅方向の長さ(L)を下記式(1)に当てはめて、厚みの平均変化率(%/0.1m)を求めた。
式(1):厚みの平均変化率(%/0.1m)={((tB−tA)/tA*100)/L}*0.1
(位相差の勾配)
得られた原反フィルムの幅方向の一方の端部Aの位相差Rtと、他方の端部Bの位相差Rtとを、以下の方法で測定した。
具体的には、波長550nmにおける3次元の屈折率(nx、ny及びnz)を、Axometrics社製Axoscanを用いて測定した後;得られた屈折率nx及びny、nzと、測定点における原反フィルムの厚みtとを前述の式(I)に当てはめて位相差Rtを算出した。
一方の端部Aと他方の端部Bについて位相差Rtの測定を行い、長手方向の50m毎に3回行い、その平均値を求めた。そして、一方の端部Aの単位厚み当たりの位相差RtA(平均値)、他方の端部Bの単位厚み当たりの位相差RtB(平均値)及び原反フィルムの幅方向の長さ(L)を下記式(2)に当てはめて、Rtの平均変化率(nm/μm/0.1m)を求めた。
式(2):Rtの平均変化率(nm/μm/0.1m)={(RtA−RtB)/L}*0.1
(2)斜め延伸フィルムの作製
得られた原反フィルムを用いて、上記の原反フィルム(ロールから巻き出された樹脂フィルム)を、図5及び6に示されるような斜め延伸フィルムの製造装置の延伸部にて、延伸温度をTg+20℃、延伸倍率を2.0倍、屈曲角度(繰出角度)θiを49°、収縮率(MD方向)を25%、配向角を45°の条件で斜め延伸した。
得られた斜め延伸フィルムについて、トタン状のツレ、幅方向の厚みのバラツキ、幅方向の厚み方向の位相差Rtのバラツキを評価した。
(トタン状のツレ)
得られた斜め延伸フィルム1m以上を黒い下地の上に置き、トタン状のツレの有無を目視観察した。そして、以下の基準に基づいて評価した。
◎:トタン状のツレが全く見られない
○:トタン状のツレがほんの少しだけ見られる
△:トタン状のツレが若干見られるが実用上問題ないレベル
×:トタン状のツレが多く見られる
(幅方向の厚みのバラツキ)
得られた斜め延伸フィルムの厚みを、デジマチックシックネスゲージ(ミツトヨ製)を用いて測定した。厚みの測定は、斜め延伸フィルム(1400mm幅)の幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bまで、幅方向に沿って100mm間隔で合計15点行った。この測定を、斜め延伸フィルムの長手方向の50m毎に3回行い、その平均値を求めた。そして、以下の基準に基づいて、評価した。
◎:厚みバラツキが1μm未満である。
○:厚みバラツキが1μm以上3μm未満である。
△:厚みバラツキが3μm以上5μm未満である。
×:厚みバラツキが5μm以上である。
(幅方向の位相差Rtのバラツキ)
得られた斜め延伸フィルムの波長550nmにおける3次元の屈折率(nx、ny及びnz)を、Axometrics社製Axoscanを用いて測定した。得られた屈折率nx及びny、nzと、測定点における斜め延伸フィルムの厚みdとを前述の式(IIb)に当てはめて、厚み方向の位相差Rtを算出した。
位相差Rtの測定は、斜め延伸フィルム(1400mm幅)の一方の端部Aから他方の端部Bまで、幅方向に沿って100mm間隔で合計15点行った。この測定を、斜め延伸フィルムの長手方向の50m毎に3回行い、その平均値を求めた。そして、以下の基準に基づいて評価した。
◎:Rtバラツキが3nm未満である。
○:Rtバラツキが3nm以上5nm未満である。
△:Rtバラツキが5nm以上10nm未満である。
×:Rtバラツキが10nm以上である。
(3)表示装置の作製
(偏光子の作製)
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
(保護フィルムの作製)
特開2013−101229号の段落0291〜0293に記載の方法で、セルローストリアセテートフィルム(保護フィルム)を作製した。
(円偏光板の作製)
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と斜め延伸フィルムと、裏面側(視認側)には上記保護フィルムを長手方向で合わせるようにロール・トゥ・ロールで貼り合わせて円偏光板1を作製した。
工程1:斜め延伸フィルムと延伸した保護フィルム1を60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した。
工程2:偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き取り、これを工程1で処理した斜め延伸フィルム上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層した斜め延伸フィルムと偏光子と保護フィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と斜め延伸フィルムと保護フィルム1とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、円偏光板1を作製した。
(有機EL表示装置の作製)
図7に示されるように、ガラスの透明基板上に、金属電極(陽極)として、クロムからなる反射電極とITOからなる透明電極(陽極)をこの順に成膜した。この陽極上に、正孔輸送層として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)をスパッタリング法で厚さ80nmに形成し、次いでシャドーマスクを用いて、RGBそれぞれの発光層を100nmの膜厚で形成した。赤色発光層としては、ホストとしてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq)と発光性化合物[4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。緑色発光層としては、ホストとしてAlqと、発光性化合物クマリン6とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。青色発光層としては、ホストとしてBAlqと発光性化合物Peryleneとを共蒸着(質量比90:10)して厚さ100nmで形成した。
Figure 0006769298
得られた発光層上に、カルシウム(第1陰極)を真空蒸着法により4nmの厚さで成膜した後、アルミニウム(第2陰極)を2nmの厚さでさらに形成した。次に、陰極上に、スパッタリング法によって透明導電膜としてITOを80nmの厚さでさらに成膜した。この透明導電膜上にCVD法によって窒化珪素を200nm成膜して絶縁膜を兼ねた封止層を形成し、有機EL素子を得た。そして、円偏光板と有機EL素子とを、接着層を介して貼り合わせて、有機EL表示装置を得た。貼り合わせは、斜め延伸フィルムが有機EL素子側となるように行った。
(表示ムラ)
上記作製した各有機EL表示装置を、23℃、相対湿度55%の環境下で48時間保管した後、電圧を印加せず、発光させない状態で、有機EL表示装置の最表面から5cm高い位置での照度が、500Lxとなる条件Aと、1000Lxとなる条件Bの2条件で、有機EL表示装置の画面の法線に対し40°の角度からのそれぞれの視認性を目視確認し、下記の基準に従って、常温常湿環境下での視認性を評価した。
視認性評価は10名で行い、条件Aである500Lxにおける視認性と、条件Bである1000Lxにおける視認性とを比較し、条件B(1000Lx)における視認性が、条件A(500Lx)における視認性と同等であれば「3点」、わずかに視認性が低下していると判断した場合には「2点」、やや視認性が低下していると判断した場合には「1点」、明らかに視認性が低下していると判断した場合には「0点」とした。10人の評価点数の総点数を求め、以下の基準に基づいて評価を行った。
◎:合計点数が27点以上である
○:合計点数が24点以上、26点以下である
△:合計点数が18点以上、23点以下である
×:合計点数が17点以下である
(実施例2〜16、比較例1〜7)
原反フィルムの製造工程において、ダイスのリップ間隔の平均変化率及びダイス温度の平均変化率を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして原反フィルムを得た。尚、比較例6は、ダイスのリップ間隔の平均変化率を、一方の端部aと他方の端部bの間で極大値を有するようにした例であり、比較例7は、ダイス温度を、一方の端部aと他方の端部bとで極大値を有するような勾配を付与したものである。
得られた原反フィルムを用いて実施例1と同様にして斜め延伸を行い、同様の評価を行った。さらに、得られた斜め延伸フィルムを用いて実施例1と同様にして表示装置を作製し、同様の評価を行った。
実施例1〜16及び比較例1〜7の評価結果を表2に示す。尚、実施例1〜16において、原反フィルムの幅方向の中心部と一方の端部Aとの間の厚みの平均変化率<原反フィルムの幅方向の中心部と他方の端部Bとの間の厚みの平均変化率であり、原反フィルムの幅方向の中心部と一方の端部Aとの間の位相差Rtの平均変化率>原反フィルムの幅方向の中心部と他方の端部Bとの間の位相差Rtの平均変化率であることを確認した。また、原反フィルムの平均厚みは、いずれも100μmであった。
Figure 0006769298
表2に示されるように、フィルムの幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて、厚みが連続的に増加する厚み勾配と、位相差Rtが連続的に減少する位相差勾配とを有する実施例1〜16の原反フィルムは、斜め延伸後のフィルムの幅方向の厚みのバラツキが少なく、且つトタン状のツレも生じにくいことがわかる。その結果、実施例1〜16で得られた斜め延伸フィルムは、いずれも位相差Rtのバラツキが少なく、表示装置のムラも少ないことがわかる。
特に、厚み勾配(厚みの平均変化率)を0.06%/0.1m以上とすること(実施例13と14の対比)、好ましくは1.05%/0.1m以上とすること(実施例5と14の対比)で、斜め延伸後の厚みのバラツキを一層少なくしたり、位相差Rtのバラツキを一層少なくしたりしうることがわかる。厚みの平均変化率を2.0%/0.1m以下とすること(実施例9と10の対比)、好ましくは1.2%/0.1m以下とすることで(実施例3と5の対比)、斜め延伸フィルム後に厚みのバラツキが大きくなりすぎるのを抑制できることがわかる。
また、位相差勾配(位相差Rtの平均変化率)を0.005nm/μm/0.1m以上とすること(実施例15と16の対比)、好ましくは0.01nm/μm/0.1m以上とすること(実施例1と16の対比)で、斜め延伸後に得られるフィルムのトタン状のツレや厚みのバラツキを一層少なくできることがわかる。位相差Rtの平均変化率を0.2nm/μm/0.1m以下とすること(実施例2、8及び12の対比)、好ましくは0.15nm/μm/0.1m以下とすること(実施例8と9の対比)とすることで、斜め延伸時のフィルムの収縮力が大きくなりすぎるよって生じるツレを抑制できることがわかる。
これに対して、厚み勾配も位相差勾配も有しない比較例1の原反フィルムや、厚み勾配を有しない比較例2の原反フィルム及び厚み勾配が本願とは逆(厚みの変化率が負)である比較例5の原反フィルムは、いずれも斜め延伸後のフィルムの幅方向の厚みのバラツキが多く、且つトタン状のツレも生じることがわかる。一方、位相差勾配を有しない比較例3の原反フィルムや、位相差勾配が本願とは逆(位相差Rtの変化率が負)である比較例4の原反フィルムは、斜め延伸時にトタン状のツレが生じることがわかる。従って、比較例1〜7で得られた斜め延伸フィルムは、いずれも位相差Rtのバラツキが多く、表示装置のムラを生じることがわかる。
本発明によれば、フィルムの幅方向で厚みや光学特性を均一にしつつ、斜め延伸時に発生するトタン状のツレを十分に抑制できる斜め延伸用原反フィルムを提供することができる。
10 原反フィルムの製造装置
11 押出し機
13 フィルター
15 スタチックミキサー
17 ダイス
19 第1冷却ロール
21 タッチロール
23 第2冷却ロール
25 第3冷却ロール
27 剥離ロール
29 静電ピニング
30 斜め延伸フィルムの製造装置
31 フィルム繰り出し部
33 搬送方向変更部
35 ガイドロール
37 延伸部
39 ガイドロール
41 搬送方向変更部
43 フィルム巻き取り部
100 有機EL表示装置
101 有機EL素子
301 円偏光板
201 接着層
111 基板
112 金属電極
113 発光層
114 透明電極
115 封止層
311 λ/4位相差フィルム
312 偏光子
313 保護フィルム

Claims (8)

  1. フィルムの幅方向に対して直交する方向にロール状に巻き取られた斜め延伸用原反フィルムであって、
    前記斜め延伸用フィルムの厚みが、フィルムの幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に増加する厚み勾配を有し、且つ
    前記斜め延伸用フィルムの、下記式(I)で表され、且つ波長550nmで測定される厚み方向の位相差Rtが、前記一方の端部Aから前記他方の端部Bに向かうにつれて連続的に減少する位相差勾配を有する、
    斜め延伸用原反フィルム。
    式(I):Rt=((nx+ny)/2−nz)×t
    (式(I)中、
    nxは、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表し、
    nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
    nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
    tは、フィルムの厚み(nm)を表す。)
  2. 下記式(1)で表される厚みの平均変化率は、0.06〜2%/0.1mである、
    請求項1に記載の斜め延伸用原反フィルム。
    式(1):厚みの平均変化率(%/0.1m)={((tB−tA)/tA*100)/L}*0.1
    (式(1)中、
    tA:一方の端部Aの厚み(μm)を示し、
    tB:他方の端部Bの厚み(μm)を示し、
    L:原反フィルムの幅方向の長さ(m)を示す)
  3. 下記式(2)で表される厚み方向の位相差Rtの平均変化率は、0.005〜0.2nm/μm/0.1mである、
    請求項1又は2に記載の斜め延伸用原反フィルム。
    式(2):Rtの平均変化率(nm/μm/0.1m)={(RtA−RtB)/L}*0.1
    (式(2)中、
    RtA:一方の端部Aの単位厚み当たりの位相差Rt(nm/μm)を示し、
    RtB:他方の端部Bの単位厚み当たりの位相差Rt(nm/μm)を示し、
    L:原反フィルムの幅方向の長さ(m)を示す)
  4. 斜め延伸用原反フィルムの製造方法であって、
    1)熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融混練する工程と、
    2)溶融状態の前記樹脂組成物をシート状に吐出する工程と、
    3)吐出された前記溶融状態の樹脂組成物を冷却固化する工程と、
    を含み、
    前記2)の工程において、
    前記溶融状態の樹脂組成物の吐出厚みは、前記溶融状態の樹脂組成物の幅方向の一方の端部Aから他方の端部Bに向かうにつれて連続的に厚くなっており、且つ
    前記溶融状態の樹脂組成物の吐出温度は、前記一方の端部Aから前記他方の端部Bに向かうにつれて連続的に高くなっている、
    斜め延伸用フィルムの製造方法。
  5. 前記2)の工程は、前記溶融状態の樹脂組成物をダイスからシート状に吐出することによって行うと共に、
    前記ダイスのリップ間隔が、前記ダイスの幅方向の一方の端部aから他方の端部bに向かうにつれて連続的に増加しており、且つ
    前記ダイス温度が、前記一方の端部aから前記他方の端部bに向かうにつれて連続的に高くなっている、
    請求項4に記載の斜め延伸用原反フィルムの製造方法。
  6. 下記式(3)で表されるダイスのリップ間隔の平均変化率は、0.06〜2%/0.1mである、
    請求項5に記載の斜め延伸用原反フィルムの製造方法。
    式(3):リップ間隔の平均変化率(%/0.1m)={((gb−ga)/ga*100)/}*0.1
    (式(3)中、
    ga:ダイスの幅方向の一方の端部aのリップ間隔(μm)を示し、
    gb:ダイスの幅方向の他方の端部bのリップ間隔(μm)を示し、
    l:ダイスの幅方向の長さ(m)を示す)
  7. 下記式(4)で表されるダイス温度の平均変化率は、0.33〜3.33℃/0.1mである、
    請求項5又は6に記載の斜め延伸用原反フィルムの製造方法。
    式(4):ダイス温度の平均変化率(℃/0.1m)={(Tb−Ta)/l}*0.1
    (式(4)中、
    Ta:ダイスの幅方向の一方の端部aのダイス温度(℃)を示し、
    Tb:ダイスの幅方向の他方の端部bのダイス温度(℃)を示し、
    l:ダイスの幅方向の長さ(m)を示す)
  8. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の斜め延伸用原反フィルムの幅方向の両端部のうち、厚みが小さい一方の端部Aを把持具Ciで把持し、厚みが大きい他方の端部Bを把持具Coで把持する工程と、
    前記把持具Coの移動距離を前記把持具Ciの移動距離よりも長くなるように前記斜め延伸用原反フィルムを搬送して、前記斜め延伸用原反フィルムを幅方向に対して斜め方向に延伸して斜め延伸フィルムを得る工程と、
    を含む、
    斜め延伸フィルムの製造方法。
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