JP6769017B2 - 積層体、画像表示装置、積層体の製造方法及び保護層の転写方法 - Google Patents

積層体、画像表示装置、積層体の製造方法及び保護層の転写方法 Download PDF

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Description

本発明は、積層体、画像表示装置、積層体の製造方法及び保護層の転写方法に関する。
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のCRTディスプレイに替わり近年急速に普及している。
一般的な液晶表示装置としては、バックライト光源から照射された光が入射する側の偏光板(下偏光板)と、該光が出射する側の偏光板(上偏光板)と、これらの偏光板に挟まれた液晶セルとを有するものが挙げられる。2枚の偏光板は、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されているものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。
このような構成の液晶表示装置の偏光板としては、通常、偏光子と該偏光子を保護する保護フィルムとからなる構成が挙げられる。
また、従来、偏光子としては、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものが挙げられ、保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース誘導体からなる基材フィルム上に保護層が設けられたものが一般的である(例えば、特許文献1等参照)。
また、このような構成を有する保護フィルムは、基材フィルム上に保護層を構成する材料を含む塗工液を塗布して形成した塗膜を乾燥させ、硬化処理を経て保護層を形成することで製造されていた。
ところで、スマートフォンやタブレット等に代表されるモバイル端末等においては、偏光板の偏光子を保護する保護フィルム上に光学的接着剤を介してタッチセンサが配設された構成が知られているが、該光学的接着剤と貼り合わせるために、均一に保護フィルムの水に対する接触角を低く(低接触角化)することが求められる。
保護フィルムの低接触角化の手法としては、例えば、保護フィルムをアルカリ溶液により鹸化処理することで低接触角にする手法(例えば、特許文献1参照)や、保護フィルム中に親水性の微粒子を添加する手法等が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献1に記載のように鹸化処理により保護フィルムを低接触角化する手法の場合、工程上の手間がかかる上に、鹸化後の汚れやシミの発生を抑制するためにレベリング剤の選択性が狭いという問題があった。
また、特許文献2に記載のように親水性の微粒子を保護フィルム中に添加する手法の場合、製造コストの向上や透明性の低下の原因となるため好ましくなかった。
また、モバイル端末用途においては特に保護フィルムの薄膜化の要請が大きいが、従来の保護フィルムは、基材フィルム上に保護層が積層された構成であったため、薄膜化の要請に充分に応えることができないという問題もあった。
特開2014−153502号公報 特開2001−272503号公報
本発明は、上記現状に鑑みて、偏光子上に形成された保護層の該偏光子側と反対側面上における水の接触角が充分に小さく、かつ、薄膜化を図ることができる積層体、該積層体を用いてなる画像表示装置、積層体の製造方法及び保護層の転写方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、偏光子上に少なくとも保護層が形成された積層体であって、上記保護層は、レベリング剤を含有し、厚みが5〜15μmであり、上記レベリング剤は、前記保護層の前記偏光子側がより高濃度となるように、前記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されており、前記保護層の前記偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角が55°以下であることを特徴とする積層体である。
本発明の積層体において、上記保護層の偏光子側表面の水の接触角が、上記偏光子側と反対側表面の水の接触角よりも大きいことが好ましい。
また、本発明の積層体は、上記保護層の偏光子側面上にベースマテリアル層が設けられていることが好ましい。
また、本発明は、上述した本発明の積層体を用いてなることを特徴とする画像表示装置でもある。
また、本発明は、離型フィルム上に少なくとも保護層が設けられた転写フィルムを用いた積層体の製造方法であって、偏光子上に上記保護層側の面が接するように、上記転写フィルムを配置する工程、及び、上記転写フィルムから上記離型フィルムを剥離する工程を有し、上記保護層は、レベリング剤を含有し、厚みが5〜15μmであり、上記レベリング剤は、上記保護層の上記偏光子側と反対側よりも上記偏光子側がより高濃度となるように、上記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されており、前記保護層の前記偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角が55°以下であることを特徴とする積層体の製造方法でもある。
本発明の積層体の製造方法において、上記転写フィルムは、保護層の離型フィルム側と反対側の面にベースマテリアル層が設けられていることが好ましい。
また、本発明は、離型フィルム上に少なくとも保護層が設けられた転写フィルムを用いた保護層の転写方法であって、偏光子上に上記保護層側の面が接するように、上記転写フィルムを配置した後、上記転写フィルムから上記離型フィルムを剥離するものであり、上記保護層は、レベリング剤を含有し、厚みが5〜15μmであり、上記レベリング剤は、上記保護層の上記偏光子側がより高濃度となるように、上記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されており、上記保護層の上記偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角が55°以下であるいることを特徴とする保護層の転写方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、従来の偏光板の保護フィルムにおける保護層は、該保護層に含まれるレベリング剤等の添加剤がタッチセンサ側面にブリードアウトすることにより、該タッチセンサ側面の水に対する接触角が大きくなり(すなわち、濡れ性が低くなり)、その結果、光学的接着剤を均一に塗布できなかったことを見出した。また、基材フィルムを用いずに保護層を偏光子上に配置した構成とすることで、薄膜化の要請に充分に応えることができることを見出した。
そして、本発明者らは、更に鋭意検討した結果、偏光子上に少なくとも保護層が形成された積層体を、離型フィルム上に保護層が設けられた転写シートを用いた転写方法により製造することで、該積層体を従来の保護フィルムのような基材フィルムを含まない構成にでき、かつ、上記保護層に含まれるレベリング剤が所定の濃度勾配を有するものにもできるため、積層体の薄膜化及び保護層の偏光子側と反対側面の水に対して低接触とすることができることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、偏光子上に少なくとも保護層が形成された積層体である。
上記偏光子としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や染料等の二色性色素を吸着又は染色させ、その後、一軸延伸して配向させることによって、光の吸収異方性が付与されたポリビニルアルコール系フィルムを基材とした偏光子が挙げられる。
上記保護層は、レベリング剤を含有する。
上記レベリング剤としては特に限定されないが、例えば、フッ素原子を含有するレベリング剤(以下、F系レベリング剤ともいう)が好適に用いられる。なお、ケイ素原子を含有するレベリング剤(以下、Si系レベリング剤ともいう)であると、添加量が多いとリコート性が悪くなったり、はじきなどの塗工欠点が多くなってしまうおそれがある。
本発明の積層体において、上記レベリング剤は、上記保護層の上記偏光子側と反対側よりも上記偏光子側がより高濃度となるように、上記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されている。このような状態でレベリング剤が含まれていることで、上記保護層の偏光子側と反対側表面の水に対する接触角を、上記保護層の偏光子側表面の水に対する接触角よりも小さくすることができる。
ここで、上記レベリング剤が保護層中に厚み方向に濃度勾配を有するように含有されているか否かは、該保護層の厚み方向の上記レベリング剤由来の成分の成分量を観察することで確認することができる。なお、上記レベリング剤由来の成分の成分量とは、該レベリング剤を特徴付ける元素の存在量を意味し、具体的には、上記レベリング剤がF系レベリング剤なら、フッ素原子の存在量を、上記レベリング剤がSi系レベリング剤なら、ケイ素原子の存在量である。
例えば、上記保護層のレベリング剤由来の成分の成分量は、X線光電子分析装置(ESCA)でレベリング剤由来の元素量を測定することで推測することができ、上記偏光子側表面と該偏光子側と反対側表面とでそれぞれレベリング剤由来の成分の成分量の測定を行ったとき、上記偏光子側表面においてはレベリング剤由来の成分が検出される(原子組成百分率で0.1atomic%以上)のに対し、上記偏光子側と反対側表面においてはレベリング剤由来の成分が検出されない(原子組成百分率で0atomic%)場合、上記濃度勾配を有するように含有されているとみなす。
なお、上記レベリング剤を保護層中に濃度勾配を有するように含有させる方法は後述する。
ここで、上記保護層は、上記レベリング剤が偏光子側面から反対側面に向かって徐々に少なくなるように含まれていてもよいし、上記レベリング剤が保護層の偏光子側表面付近に偏在して含まれていてもよい。
上記保護層におけるレベリング剤の含有量としては、後述するバインダー樹脂成分100質量部に対して、0.1〜1.0質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、レベリング性が足りず、上記保護層の外観がきれいにならないことがあり、1.0質量部を超えると、保護層の偏光子側面と反対側面にブリードアウトしてしまうことがある。上記レベリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3質量部であり、より好ましい上限は0.5質量部である。
上記保護層は、バインダー樹脂を含むことが好ましい。
上記バインダー樹脂としては、後述する転写シートにおける離型フィルム(未処理のPETフィルム)に対して離型性に優れ、保護層にある程度の硬度を付与できるものであれば特に限定されず、例えば、ウレタン変性、エポキシ変性、アルコキシ変性といった変性基を導入した樹脂(以下、変性樹脂ともいう)が好ましい。何故なら、変性されていない樹脂、例えば、汎用的な多官能アクリレートモノマーを上記バインダー樹脂として使用した場合、後述する保護層形成時に使用する保護層用組成物を用いて離型フィルム上に形成した塗膜の硬化性が極めて速いため、離型フィルムとの密着が良くなってしまい、転写フィルムとして求められるほどの良好な剥離性が得られないことがある。また、上記塗膜を紫外線照射により硬化させる場合、該紫外線の照射条件を大幅に下げることで、硬化後の保護層を離型フィルムから剥離させることは可能にはなるが、その場合充分に保護層が硬化していないため、保護層にハードコート性が充分に付与できないことがある。
この点、上述した変性樹脂は、樹脂中に変性基が存在するため、架橋点間の距離が少し長くなることで架橋密度が低下し、紫外線等の照射条件に関わらず硬化後の保護層と離型フィルムとの剥離性が良好となる。
なかでも、上記離型フィルムに対する離型性に優れることから、上記バインダー樹脂としては、アルコキシ変性の樹脂であることが好ましく、アルコキシ変性の多官能の樹脂であることがより好ましく、炭素数が長いアルコキシ変性の多官能の樹脂が更に好ましい。
本発明の積層体は、後述する偏光子上に上述した保護層が形成された構成を有するが、該保護層は、離型フィルム上に少なくとも保護層が設けられた転写フィルムを用いた転写方法により形成することができる。このようにして保護層を形成して本発明の積層体を製造する方法もまた、本発明の一つである。
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、離型フィルム上に少なくとも保護層が設けられた転写フィルムを用いた積層体の製造方法であって、偏光子上に上記保護層側面が接するように、上記転写フィルムを配置する工程、及び、上記転写フィルムから上記離型フィルムを剥離する工程を有し、上記保護層は、レベリング剤を含有し、上記レベリング剤は、上記保護層の上記偏光子側がより高濃度となるように、上記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されていることを特徴とする。
また、上述した保護層を転写方法で形成する方法もまた、本発明の一つである。
すなわち、本発明の保護層の転写方法は、離型フィルム上に少なくとも保護層が設けられた転写フィルムを用いた保護層の転写方法であって、偏光子上に上記保護層側面が接するように、上記転写フィルムを配置した後、上記転写フィルムから上記離型フィルムを剥離するものであり、上記保護層は、レベリング剤を含有し、上記レベリング剤は、上記保護層の上記偏光子側がより高濃度となるように、上記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されていることを特徴とする。
上記転写フィルムは、離型フィルム上に少なくとも保護層が設けられている。
上記離型フィルムとしては特に限定されないが、例えば、未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられる。未処理のPETフィルムは、保護層との離型性に優れる他、安価であるため本発明の積層体の製造コストを低く抑えることが可能となる。また、上記離型フィルムは、上記偏光子上に上記転写フィルムを配置した後、剥離させるまでは上記保護層を保護する保護フィルムとして機能するが、未処理のPETフィルムは、COPフィルムや表面処理PETフィルムと比較して強靭であるため、上記保護フィルムとして好適に機能する。例えば、上記離型フィルムとして、ケイ素原子を含有するSi系の離型剤等が塗布されている離型フィルムを使用すると、該離型フィルムの剥離性は良好である一方で、保護層の転写時に離型剤の成分が保護層側に転写してしまい、保護層表面の水の接触角が上昇してしまうことがある。これに対し、上記離型フィルムとして、未処理のPETフィルムを使用すると、保護層の転写時に該保護層に転写する成分がないため、転写後の保護層の表面に水の接触角の変化が生じない。
上記保護層は、上述したレベリング剤及びバインダー樹脂等を含む保護層用組成物を用いて上記離型フィルム上に形成することができる。
上記保護層用組成物に含まれるレベリング剤及びバインダー樹脂としては、上述した本発明の積層体と同様のものが挙げられる。
上記保護層用組成物は、更に、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、公知のものであれば特に限定されず、例えば、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1−オン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を挙げることができる。なかでも、アセトフェノン類であることが好ましい。
上記光重合開始剤の含有量は、保護層用組成物中のバインダー樹脂の固形分100質量部に対して、1〜7質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、光重合開始剤の量が不足し、硬化不足となるおそれがある。7質量部を超えると、光重合開始剤が過剰となり、過剰であることによる光重合反応の違いが生じ、かえって硬度不足を引き起こす、溶け残りによる欠点が生じる、といったおそれがある。
上記光重合開始剤の含有量は、上記バインダー樹脂の固形分100質量部に対して2〜5質量部であることがより好ましい。
上記保護層用組成物は、上述した成分以外に、必要に応じて他の成分を更に含んでいてもよい。
上記他の成分としては、熱重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防汚剤、スリップ剤、屈折率調整剤、分散剤等が挙げられる。これらは公知のものを使用することができる。
上記保護層用組成物は、上述のバインダー成分、レベリング剤、光重合開始剤、並びに、他の成分を溶媒中に混合分散させて調製することができる。
上記混合分散は、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
上記溶媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等を挙げることができる。
なかでも、上記溶媒としては、上述したバインダー樹脂成分及び他の添加剤を溶解又は分散させ、上記保護層用組成物を好適に塗工できる点で、メチルイソブチルケトン、及び/又は、メチルエチルケトンが好ましい。
上記保護層用組成物は、総固形分が30〜45%であることが好ましい。30%より低いと残留溶剤が残ったり、白化が生じたりするおそれがある。45%を超えると、保護層用組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下して表面にムラやスジが出たり、干渉縞が発生したりするおそれがある。上記固形分は、35〜45%であることがより好ましい。
上記保護層は、上記保護層用組成物の硬化物からなる。すなわち、上記保護層は、上記保護層用組成物を、上記離型フィルム上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記塗膜を硬化させることにより形成することができる。
上記塗布して塗膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
塗布量は、5〜15g/mであることが好ましい。5g/m未満であると、所望の硬度が得られないおそれがある。15g/mを超えると、カールの発生や硬化不足の原因となるおそれがある。上記塗布量は、6〜10g/mであることがより好ましい。
上記乾燥の方法としては特に限定されないが、一般的に30〜120℃で3〜120秒間乾燥を行うとよい。
上記塗膜を硬化させる方法としては、上記保護層用組成物の内容等に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、上記保護層用組成物が紫外線硬化型のものであれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
上記紫外線を照射する場合は、紫外線照射量が80mJ/cm以上であることが好ましく、100mJ/cm以上であることがより好ましく、130mJ/cm以上であることが更に好ましい。
上記保護層は、層厚みが5〜15μmであることが好ましい。
5μm未満であると、硬度が不充分となるおそれがある。15μmを超えると、残留溶剤が残ったり、塗膜密着性が低下したりするおそれがある。上記保護層は、層厚みが5〜10μmであることがより好ましい。
上記保護層の厚みは、保護層の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより測定して得られた値である。
本発明において、上記保護層の形成は、まず、上記離型フィルム上にレベリング剤及びバインダー樹脂等を含有した保護層用組成物を塗工して塗膜を作製するが、該塗膜形成後の乾燥工程において塗膜中に分散しているレベリング剤は、離型フィルム側と反対側表面側へ浮上する。これはレベリング剤が親油性基と親水性基を有しており、界面活性剤のように働くためである。この性質により、レベリング剤が濃度勾配を有している保護層を形成した転写フィルムを得ることができる。
更に、上述した保護層形成時の塗膜を硬化する際に紫外線を照射する場合、該紫外線の照射量も上記保護層中のレベリング剤の濃度勾配状態を固定化するのに重要な役割を果たす。
上記塗膜への紫外線の照射量としては、具体的には、100〜500mJ/cmであることが好ましい。上記塗膜に対する紫外線の照射量が100mJ/cm未満であると、塗膜の硬化が甘いため、保護層を偏光子上に転写させた後に離型フィルムを剥離した後、レベリング剤が偏光子側と逆面側に動きやすくなり水の接触角が経時で上昇してしまうことがある。これはレベリング剤が界面活性剤のようにふるまう性質、すなわち、離型フィルムを剥離する前の保護層は密閉された状態であるが、離型フィルムを剥離することで保護層が空気に触れることとなり、保護層中の偏光子側に高濃度で存在していたレベリング剤が、偏光子側と反対面側に移動しやすい性質が関係しているためである。一方、上記塗膜に対する紫外線の照射量が500mJ/cmを超えると、上記保護層中でのレベリング剤を動きにくくすることができるが、逆に保護層が硬化しすぎてしまい、ベースマテリアル層を偏光子が面上に有する場合該ベースマテリアル層のリコート性が悪くなるおそれがある。上記紫外線照射量のより好ましい下限は200mJ/cmであり、より好ましい上限は400mJ/cmである。
次に、偏光子上に上記保護層側面が接するように、上記転写フィルムを配置した後、上記転写フィルムから上記離型フィルムを剥離する工程により、上記保護層の上記偏光子側がより高濃度となるように、上記レベリング剤が該保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有させることができる。
本発明の積層体は、上記保護層の偏光子側面上にベースマテリアル層が設けられていることが好ましい。
上記ベースマテリアル層は、上記保護層と偏光子との間に設けられ、これらの層間の密着性の向上を図る目的で設けられる層であり、従来の偏光フィルムにおける基材フィルムとは全く異なる層である。
このようなベースマテリアル層を構成する材料としては、例えば、電離放射線の照射により硬化物を形成するものが挙げられ、重合性オリゴマーや重合性ポリマー等を用いることができる。
上記重合性オリゴマー又は重合性ポリマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー、又は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートポリマーが挙げられる。
上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー、又は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートポリマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のオリゴマー又はポリマーが挙げられる。これら重合性オリゴマー又は重合性ポリマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、硬度や組成物の粘度調整等のために、上記ベースマテリアル層を構成する材料としては、上記重合性オリゴマー又は重合性ポリマーに加えて、更に単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いてもよい。
上記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリシジルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート等が挙げられる。
上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、ベースマテリアル層の硬度を向上させる観点から、1000未満が好ましく、200〜800がより好ましい。
また、上記重合性ポリマーの重量平均分子量は、1000〜2万であることが好ましく、1000〜12000であることがより好ましく、3000〜1万であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、上記重合性モノマー及び重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
なお、本発明の積層体に上記ベースマテリアル層が設けられている場合、上述した本発明の積層体の製造方法又は本発明の保護層を転写する方法では、上記転写フィルムの保護層の離型フィルム側と反対側にベースマテリアル層を有し、該転写フィルムをベースマテリアル層側面が偏光子と接するように配置してもよく、また、上記偏光子上にベースマテリアル層を設け、該ベースマテリアル層上に上記保護層側面が接するように上記転写フィルムを配置してもよい。
上記ベースマテリアル層は、紫外線吸収剤(UVA)を含有することが好ましい。
本発明の積層体は、スマートフォンやタブレット端末のようなモバイル端末に特に好適に用いられるが、このようなモバイル端末は屋外で使用されることが多く、そのため、上記偏光子が紫外線に晒されて劣化しやすいという問題がある。
しかしながら、上記ベースマテリアル層は、偏光子の保護層側に配置されるため、該ベースマテリアル層に紫外線吸収剤が含有されていると、上記偏光子が紫外線に晒されることによる劣化を好適に防止することができる。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及び、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、および2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
また、市販されているトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、TINUVIN460、TINUVIN477(いずれも、BASF社製)、LA−46(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、市販されているベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、CHMASSORB81/FL(BASF社製)等が挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3’ ’,4’ ’,5’ ’,6’ ’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、及び、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
また、市販されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、KEMISORB71D、KEMISORB79(いずれも、ケミプロ化成社製)、JF−80、JAST−500(いずれも、城北化学社製)、ULS−1933D(一方社製)、RUVA−93(大塚化学社製)等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤は、なかでも、トリアジン系紫外線吸収剤が好適に用いられ、具体的には、紫外線吸収性、ベースマテリアル層を構成する上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーへの溶解性等の観点から、TINUVIN400が特に好適に用いられる。
上記紫外線吸収剤の含有量としては特に限定されないが、上記ベースマテリアル層の樹脂固形分100質量部に対して1〜6質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、上述した紫外線吸収剤をベースマテリアル層に含有させる効果を充分に得ることができないことがあり、6質量部を超えると、上記ベースマテリアル層に著しい着色や強度低下が生じることがある。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は2質量部、より好ましい上限は5質量部である。
上記ベースマテリアル層は、層厚が10〜40μmであることが好ましい。10μm未満であると、上記ベースマテリアル層の強度が著しく低下することがあり、40μmを超えると、上記ベースマテリアル層を形成するための塗液のコーティングが困難となり、また、厚みが厚すぎることに起因した加工性(特に、耐チッピング性)が悪化することがある。上記ベースマテリアル層の層厚みは、下限が20μmであることがより好ましく、上限が30μmであることがより好ましい。
なお、上記ベースマテリアル層の層厚みは、断面の電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)観察により測定して得られた値である。
上記ベースマテリアル層は、波長380nmの光の透過率が7%以下であることが好ましい。7%を超えると、本発明の積層体をモバイル端末に用いた場合、偏光子が紫外線に晒されて劣化しやすくなる恐れがある。上記ベースマテリアル層の波長380nmの光の糖率のより好ましい上限は5%である。
また、上記ベースマテリアル層は、ヘイズが1%以下であることが好ましい。1%を超えると、本発明の積層体をモバイル端末に用いた場合、表示画面の白化が問題となる恐れがある。上記ヘイズのより好ましい上限は0.5%である。
上記ベースマテリアル層の透過率及びヘイズは、例えば、上述した紫外線吸収剤の添加量を調整すること等により達成できる。
また、上記透過率及びヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に従い測定することができる。
上記ベースマテリアル層は、必要に応じて、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、フィラー、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤等のその他の成分が含有されていてもよい。
上記ベースマテリアル層は、例えば、上記重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマー、紫外線吸収剤やその他の成分等を添加したベースマテリアル層用組成物を、上記保護層の偏光子側面上に塗工し、乾燥硬化させることで形成することができる。
なお、上記ベースマテリアル層用組成物は、必要に応じて溶媒を含有してもよく、該溶媒としては、上述した保護層用組成物で説明した溶媒と同様のものが挙げられる。
本発明の積層体は、上記保護層の偏光子側面と反対側面上に透明樹脂層が形成されていることが好ましい。
上述したように、本発明の積層体がモバイル端末に用いられる場合、上記保護層の偏光子側面と反対側面は、光学的接着剤が塗布されタッチセンサが積層される構成となる。このため、上記透明樹脂層を有する場合、該透明樹脂層の表面に光学的接着剤が塗布されることとなる。そのため、上記保護層の偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角は小さいほうが好ましい。上記保護層の偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角が大きすぎると、上記光学的接着剤の濡れ性が悪くなり、塗工欠点や密着性が悪くなるおそれがある。上記保護層の偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角は55°以下であることが好ましく、50°以下であることがより好ましい。
また、上記透明樹脂層としては、水に対する接触角の小さな層であることが好ましい。
このような水に対する接触角の小さな透明樹脂層としては、例えば、重合性モノマー成分、重合性オリゴマー成分、非硬化成分及び光重合開始剤を含む透明樹脂層用組成物を用いてなるものが挙げられる。
上記重合性オリゴマー成分としては、例えば、側鎖にイソプレン、ブタジエンを有する(メタ)アクリレート、シリコーン系(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記重合性モノマー成分としては特に限定はされないが、臭気が少なく皮膚刺激性の小さいものが好ましい。
また、上記非硬化成分としては、形成する透明樹脂層に対し、光学的接着剤との密着性、伸び率の付与、及び、硬化収縮の緩和等の役割を担うことができるものであれば特に限定されず、任意の材料を用いることができる。
上記光重合開始剤としては、公知のものであれば特に限定されず、使用する重合性モノマー成分及び重合性オリゴマー成分に応じて適宜選択して用いられる。
なお、上記「透明樹脂層」とは、全光線透過率が85%以上である樹脂層のことを指し、上記全光線透過率とは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に従い測定された値である。
また、上述した本発明の積層体の製造方法又は本発明の保護層を転写する方法において、上記転写フィルムを用いて保護層を偏光子上に転写する際、該偏光子の保護層が転写される側の面上には、ポリビニルアルコール(PVA)系接着剤や無溶剤紫外線硬化型接着剤を用いてなる層が設けられていてもよい。上記PVA系接着剤を用いてなる層が設けられていることで、上記転写フィルムによる保護層の転写時に、保護層又はベースマテリアル層を好適に偏光子側に貼り付けさせることができ、離型フィルムからの保護層(及びベースマテリアル層)の剥離が容易となる。
なお、上記PVA系接着剤としては特に限定されず、例えば、水のりとして従来公知のものを用いることができる。
また、上記転写フィルムによる保護層を転写する具体的方法としては、例えば、偏光子(又はPVA系接着剤からなる層)上に、転写フィルムの保護層(又はベースマテリアル層)側面が接するように上記転写フィルム配置し、該転写フィルムを800kg程度の荷重をかけながらローラーで押し付けて、偏光子(又はPVA系接着剤からなる層)に上記転写フィルムの保護層(又はベースマテリアル層)を貼り合せ、乾燥後離型フィルムを剥離させる方法が挙げられる。
本発明の積層体は、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、2H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましい。
また、本発明の積層体は、例えば、#0000番のスチールウールを用いた摩擦荷重100g/cm、10往復摩擦する耐擦傷試験で傷が生じないことが好ましい。
また、本発明の積層体を用いてなる画像表示装置もまた、本発明の一つである。
本発明の画像表示装置としては、上述した本発明の積層体が用いられてなるものであれば特に限定されないが、なかでも、スマートフォンやタブレット端末等のタッチセンサを備えたモバイル端末が好適である。
上述したように、本発明の積層体は、保護層の偏光子側面と反対側面に光学的接着剤を均一に塗布することができるため、高品質で安価にタッチセンサを搭載した構成のモバイル端末を製造することができる。
また、本発明の画像表示装置は、液晶表示装置(LCD)やPDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT等であってもよい。
上記LCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の積層体が形成されてなるものである。
本発明の画像表示装置がLCDの場合、光源装置の光源は偏光子側から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光子との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
上記PDPは、表面ガラス基板と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した本発明の積層体を備えるものでもある。
本発明の画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質等の発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した本発明の積層体を備えるものである。
本発明の積層体は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、液晶パネル、PDP、ELD、タッチパネル、電子ペーパー等の高精細画像用ディスプレイに好適に使用することができる。
本発明の積層体は、上述した構成からなるものであるため、偏光子上に形成された保護層の該偏光子側と反対側面上における水の接触角が充分に小さく、かつ、薄膜化を図ることができる。このため、本発明の積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー、タブレット端末等のディスプレイ、特にモバイル端末に好適に使用することができる。
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
(実施例1)
エチレンオキサイド変性ビスフェノールをAジアクリレート(第一工業製薬製、BPE−20)固形分が40部となるように、メチルイソブチルケトン(MIBK)の混合溶剤中に添加して攪拌し溶解させて、溶液(1)を得た。
次いで、溶液(1)の固形分100部に対して、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア184)を4部、F系レベリング剤(DIC株式会社製、F−554)を0.5部添加し、攪拌し、保護層用組成物(1)を得た。
未処理PETフィルム(東洋紡社製、A4100)の未処理面側にスリットリバースコートにより、乾燥後の塗布厚みが8μmとなるように保護層用組成物(1)を塗布して塗膜を形成した。
得られた塗膜を90℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量200mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み8μmの保護層を形成した。
次いで、形成した保護層上に、下記手法によりベースマテリアル層を形成した。
日本合成化学工業製、UV−3310Bを固形分が40部となるように、メチルエチルケトン(MEK)中に添加して攪拌し溶解させて、ベースマテリアル層用組成物(1)を得た。
得られたベースマテリアル層用組成物(1)を、保護層上にスリットリバースコートにより、乾燥後の塗布厚みが25μmとなるように塗布して塗膜を形成した。
得られた塗膜を90℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量500mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み25μmのベースマテリアル層を形成し、転写フィルムを製造した。
次に、平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。
その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光子を得た。なお、延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
得られた偏光子上に、製造した転写フィルムを用いて以下の条件で保護層の転写を行い、積層体を製造した。
PVA117(クラレ社製、ポバール樹脂)をイオン交換水で溶解させ、濃度12%のPVA水溶液を得た。このPVA水溶液を、スリットリバースコートにより先に作製してある偏光子上に塗布厚みが2〜3μmとなるように塗布して塗膜(PVA系接着剤層)を形成した。
続けて、この塗膜上に先に作製してある転写フィルムをベースマテリアル層が当接するように載せ、転写フィルム側から800kg荷重のローラーで押し付けて転写フィルムと偏光子(塗膜)とを貼り合わせた。その後、塗膜を、70℃で1分間乾燥させた後、50℃で24時間乾燥させた。乾燥後、転写フィルムの未処理PETフィルムを剥がすことにより、偏光子上に保護層を転写させて積層体を製造した。
(実施例2)
保護層用組成物(1)を塗布して形成した塗膜を90℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量400mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
(実施例3)
保護層用組成物(1)に代えて、溶液(1)の固形分100部に対して、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア184)を4部、F系レベリング剤(DIC株式会社製、F−554)を0.3部添加し、攪拌した保護層用組成物(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
(比較例1)
保護層用組成物(1)に代えて、溶液(1)の固形分100部に対して、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア184)を4部添加し、攪拌した保護層用組成物(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
(比較例2)
未処理PETフィルム(東洋紡社製、A4100)に代えて、セルローストリアセテートフィルム(富士フィルム社製、厚み80μm、商品名:TD80UL M)を用いた以外は、実施例(1)と同様にして、セルローストリアセテートフィルム上に保護層を形成した保護フィルムを作製した。
次に、実施例(1)と同様にして得られた偏光子上に、実施例(1)と同様にしてPVA系接着剤層を形成し、このPVA系接着剤層上に先に作製した保護フィルムのセルローストリアセテートフィルムの未塗工面側が当接するように載せ、保護層側から800kg荷重のローラーで押し付けて、セルローストリアセテートフィルムと偏光子(PVA系接着剤層)とを貼り合わせた。その後、塗膜を、70℃で1分間乾燥させた後、50℃で24時間乾燥させて積層体を製造した。
(参考例1)
保護層用組成物(1)を塗布して形成した塗膜を90℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量50mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
(参考例2)
保護層用組成物(1)を塗布して形成した塗膜を90℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量600mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
実施例、比較例及び参考例で得られた積層体について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(レベリング剤由来の成分量)
保護層の偏光子側の表面と、保護層の偏光子側と反対側表面におけるレベリング剤由来の成分量(ここではフッ素原子の量)の割合を、以下の条件でX線光電子分光分析装置(ESCA)を用いて原子組成百分率で測定した。
なお、測定は、下記に記載の通り、表面から深さ10nmの測定値をもって、表面のレベリング剤由来の成分量を表す数値とし、保護層の偏光子側と、保護層の偏光子側と反対側とを比べ濃度を相対的に比較できる指標とした。
加速電圧:15kV
エミッション電流:10mA
X線源:Alデュアルアノード
測定面積:300×700μmφ
表面から深さ10nmを測定(上記でいう表面とみなす)
n=3の平均値(任意の3箇所)
(保護層の水の接触角)
実施例、比較例及び参考例に係る積層体を製造後、すなわち、転写フィルムを偏光子に転写させた後、離型フィルムを剥離してから24時間経過後に、JIS R 3257(1999)「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して25℃における、保護層の偏光子側表面と、該偏光子側と反対側表面における水の接触角を、協和界面科学社製の顕微鏡式接触角計CA−QIシリーズを用いて測定した。
(保護層の外観)
実施例、比較例及び参考例に係る積層体の保護層にプロジェクターの光を透過させた映像を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:塗工斑(ハジキ、塗工スジ及び泡欠陥)が無い
×:塗工斑(ハジキ、塗工スジ及び泡欠陥)が有る
(耐擦傷性)
実施例、比較例及び参考例に係る積層体の保護層に#0000のスチールウール(商品名:BON STAR、日本スチールウール社製)を用い、荷重4.9N/cmをかけながら、速度100mm/secで10往復したときの傷の有無を目視により確認した。
評価基準は以下の通りとした。
○:全く傷が認められない
×:傷が認められる
(鉛筆硬度)
実施例、比較例及び参考例で得られた積層体の保護層表面の鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)に準じて測定した。
(PVA系接着剤層との密着性)
実施例、比較例及び参考例に係る積層体の保護層の面側からクロスカット碁盤目試験を行い、元のカット部数(100)に対するテープを剥がした後にPVA系接着剤層上に残存したカット部数の比を求め、PVA系接着剤層との密着性を以下の基準にて評価した。
○:90/100〜100/100
△:50/100〜89/100
×:0/100〜49/100
(ベースマテリアル層との密着性)
実施例、比較例及び参考例に係る転写フィルムを用いて、ベースマテリアル層面側をガラス上に貼り付けた両面テープ上に転写させ、保護層の面側からクロスカット碁盤目試験を行い、元のカット部数(100)に対するテープを剥がした後にベースマテリアル層上に残存したカット部数の比を求め、ベースマテリアル層との密着性を以下の基準にて評価した。なお、ベースマテリアル層を形成しなかった比較例2については評価していない。
○:90/100〜100/100
△:50/100〜89/100
×:0/100〜49/100
Figure 0006769017
表1に示したように、実施例に係る積層体は、保護層の偏光子側のレベリング剤由来の成分量が、偏光子側と反対側のレベリング剤由来の成分量よりも大きく、レベリング剤が上記保護層の偏光子側がより高濃度となるように、上記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されていたと推測され、保護層の偏光子側の水の接触角が、該偏光子側と反対側よりも大きな値であった。また、保護層の外観、耐擦傷(SW)性、鉛筆硬度及び密着性のいずれにも優れていた。
一方、保護層にレベリング剤を含まない比較例1に係る積層体は、保護層の外観に劣っており、比較例2に係る積層体は、偏光子側と反対側のレベリング剤由来の成分量が、保護層の偏光子側のレベリング剤由来の成分量よりも大きく、レベリング剤が上記保護層の偏光子側がより低濃度となるように、上記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されていたと推測され、保護層の偏光子側と反対側の水の接触角が、該偏光子側よりも大きな値であった。
また、参考例1に係る積層体は、保護層形成時の紫外線照射量が少なかったため、レベリング剤が保護層の偏光子側と反対側に移動したと推測され、保護層の偏光子側と反対側の水の接触角が大きな値であった。参考例2に係る積層体は、保護層形成時の紫外線照射量が多かったため、ベースマテリアル層との密着性(リコート性)に劣っていた。
本発明の積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー、タブレット端末等のディスプレイ、特にモバイル端末に好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. 偏光子上に少なくとも保護層が形成された積層体であって、
    前記保護層は、レベリング剤を含有し、厚みが5〜15μmであり、
    前記レベリング剤は、前記保護層の前記偏光子側と反対側よりも前記偏光子側がより高濃度となるように、前記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されており、
    前記保護層の前記偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角が55°以下である
    ことを特徴とする積層体。
  2. 保護層の偏光子側表面の水の接触角が、前記偏光子側と反対側表面の水の接触角よりも大きい請求項1記載の積層体。
  3. 保護層の偏光子側の面上にベースマテリアル層が設けられている請求項1又は2記載の積層体。
  4. 請求項1、2又は3記載の積層体を用いてなることを特徴とする画像表示装置。
  5. 離型フィルム上に少なくとも保護層が設けられた転写フィルムを用いた積層体の製造方法であって、
    偏光子上に前記保護層側の面が接するように、前記転写フィルムを配置する工程、及び、前記転写フィルムから前記離型フィルムを剥離する工程を有し、
    前記保護層は、レベリング剤を含有し、厚みが5〜15μmであり、
    前記レベリング剤は、前記保護層の前記偏光子側と反対側よりも前記偏光子側がより高濃度となるように、前記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されており、前記保護層の前記偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角が55°以下である
    ことを特徴とする積層体の製造方法。
  6. 転写フィルムは、保護層の離型フィルム側と反対側の面にベースマテリアル層が設けられている請求項5記載の積層体の製造方法。
  7. 離型フィルム上に少なくとも保護層が設けられた転写フィルムを用いた保護層の転写方法であって、
    偏光子上に前記保護層側の面が接するように、前記転写フィルムを配置した後、前記転写フィルムから前記離型フィルムを剥離するものであり、
    前記保護層は、レベリング剤を含有し、厚みが5〜15μmであり、
    前記レベリング剤は、前記保護層の前記偏光子側がより高濃度となるように、前記保護層の厚み方向に濃度勾配を有するように含有されており、
    前記保護層の前記偏光子側面と反対面側面の水に対する接触角が55°以下である
    ことを特徴とする保護層の転写方法。
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