以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。また、本明細書において「前面」、「背面」、「フロント」、「バック」、「上」、「下」、「左」、「右」等の表現を用いるが、これらは、説明の都合上、例示の図面の紙面上における位置、方向を示すものであり、装置使用時等の実際の配置では異なる場合がある。また、本明細書において「アーム部」あるいは「ハンドル」は、基板ホルダが搬送される際に搬送装置により基板ホルダが把持又は係合される部分の「係合部」と同義に用いられる。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板ホルダが使用されるめっき装置の全体配置図である。図1に示すように、このめっき装置100は、基板ホルダ1に基板(被処理物の一例に相当する)をロードし、又は基板ホルダ1から基板をアンロードするロード/アンロード部110と、基板を処理する処理部120と、洗浄部50aとに大きく分けられる。処理部120は、さらに、基板の前処理及び後処理を行う前処理・後処理部120Aと、基板にめっき処理を行うめっき処理部120Bとを含む。なお、このめっき装置100で処理する基板は、角形基板、円形基板を含む。また、角形基板は、矩形等の多角形のガラス基板、液晶基板、プリント基板、その他の多角形のめっき対象物を含む。円形基板は、半導体ウェハ、ガラス基板、その他の円形のめっき対象物を含む。
ロード/アンロード部110は、2台のカセットテーブル25と、基板脱着機構29と
を有する。カセットテーブル25は、半導体ウェハ、ガラス基板、液晶基板、プリント基板等の基板を収納したカセット25aを搭載する。基板脱着機構29は、基板を基板ホルダ1(図2A以降で後述)に着脱するように構成される。また、基板脱着機構29の近傍(例えば下方)には基板ホルダ1を収容するためのストッカ30が設けられる。これらのユニット25,29,30の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送用ロボットからなる基板搬送装置27が配置されている。基板搬送装置27は、走行機構28により走行可能に構成される。
洗浄部50aは、めっき処理後の基板を洗浄して乾燥させる洗浄装置50を有する。基板搬送装置27は、めっき処理後の基板を洗浄装置50に搬送し、洗浄された基板を洗浄装置50から取り出すように構成される。
前処理・後処理部120Aは、プリウェット槽32と、プリソーク槽33と、プリリンス槽34と、ブロー槽35と、リンス槽36と、を有する。プリウェット槽32では、基板が純水に浸漬される。プリソーク槽33では、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。プリリンス槽34では、プリソーク後の基板が基板ホルダと共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブロー槽35では、洗浄後の基板の液切りが行われる。リンス槽36では、めっき後の基板が基板ホルダと共に洗浄液で洗浄される。プリウェット槽32、プリソーク槽33、プリリンス槽34、ブロー槽35、リンス槽36は、この順に配置されている。なお、このめっき装置100の前処理・後処理部120Aの構成は一例であり、めっき装置100の前処理・後処理部120Aの構成は限定されず、他の構成を採用することが可能である。
めっき処理部120Bは、オーバーフロー槽38を備えた複数のめっき槽39を有する。各めっき槽39は、内部に一つの基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを行う。ここで、めっき液の種類は、特に限られることはなく、用途に応じて様々なめっき液が用いられる。
めっき装置100は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダを基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した基板ホルダ搬送装置37を有する。この基板ホルダ搬送装置37は、基板脱着機構29、プリウェット槽32、プリソーク槽33、プリリンス槽34、ブロー槽35、リンス槽36、及びめっき槽39との間で基板ホルダを搬送するように構成される。
以上のように構成されるめっき装置100を含むめっき処理システムは、上述した各部を制御するように構成されたコントローラ175を有する。コントローラ175は、所定のプログラムを格納したメモリ175Bと、メモリ175Bのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)175Aと、CPU175Aがプログラムを実行することで実現される制御部175Cとを有する。制御部175Cは、例えば、基板搬送装置27の搬送制御、基板脱着機構29における基板の基板ホルダへの着脱制御、基板ホルダ搬送装置37の搬送制御、各めっき槽39におけるめっき電流及びめっき時間の制御、並びに、各めっき槽39に配置されるアノードマスク(図示せず)の開口径及びレギュレーションプレート(図示せず)の開口径の制御等を行うことができる。また、コントローラ175は、めっき装置100及びその他の関連装置を統括制御する図示しない上位コントローラと通信可能に構成され、上位コントローラが有するデータベースとの間でデータのやり取りをすることができる。ここで、メモリ175Bを構成する記憶媒体は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体としては、コンピュータで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
[基板ホルダ]
図2Aは、一実施形態に係る基板ホルダの概略正面図である。図2Bは、基板ホルダの概略側面図である。図2Cは、基板ホルダの概略背面図である。図3Aは、基板ホルダの前方斜視図である。図3Bは、基板ホルダの後方斜視図である。図4Aは、基板ホルダの前面図である。図4Bは、基板ホルダの背面図である。
基板ホルダ1は、フロントプレート300とバックプレート400とを備えている。これらのフロントプレート300とバックプレート400との間に基板Sが保持される。本実施例では、基板ホルダ1は、基板Sの片面を露出した状態で基板Sを保持する。基板Sは、半導体ウェハ、ガラス基板、液晶基板、プリント基板、その他の被めっき物であり得る。基板Sは、円形、角形等の何れの形状である。なお、以下の説明では、角形の基板を例に挙げて説明するが、基板ホルダ1の開口部の形状を変更すれば、円形その他の形状の基板を保持することが可能である。
フロントプレート300は、フロントプレート本体310と、アーム部330とを備えている。アーム部330は、基板ホルダ搬送装置37に把持される把持部分であり、めっき槽39に配置される際に支持される部分である。基板ホルダ1は、基板ホルダ搬送装置37によって、めっき装置100の設置面に対して垂直に立てた状態で搬送され、垂直に立てた状態でめっき槽39内に配置される。
フロントプレート本体310は、概ね矩形状であり、配線バッファ部311とフェース部312とを有し、前面301と背面302とを有する。フロントプレート本体310は、取付部320によって2箇所でアーム部330に取り付けられている。フロントプレート本体310には、開口部303が設けられており、開口部303から基板Sの被めっき面が露出される。本実施形態では、開口部303は、矩形状の基板Sに対応して矩形状に形成されている。なお、基板Sが円形の半導体ウェハ等である場合には、開口部303の形状も円形に形成される。
フロントプレート本体310のアーム部330に近い側には、配線バッファ部311が設けられている。配線バッファ部311は、アーム部330を介してフロントプレート本体310まで到達するケーブルの分配を行う領域であり、また、予備の長さのケーブルを収容する領域である。配線バッファ部311は、フロントプレート本体310の他の部分(フェース部312)よりも若干厚みを持って形成されている(図2B参照)。本実施形態では、配線バッファ部311は、フロントプレート本体310の他の部分(フェース部312)とは別体に形成され、フェース部312に取り付けられている。アーム部330の一端側には、外部の配線と電気的に接続するためのコネクタ331が設けられている(図3A等参照)。バックプレート400は、フロントプレート本体310(より詳細には、フェース部312)の背面302にクランプ340によって固定される(図2C、図3B、図4B)。
(バックプレートのフロントプレートへの取付構造)
図5Aは、バックプレートの正面図である。図5Bは、バックプレートの背面図である。図6Aは、バックプレートの取り付け状態を示す、基板ホルダの一部拡大背面図である。図6Bは、バックプレートの取り付け状態を示す、基板ホルダの一部拡大斜視図である。図7は、クランプと連結部材の関係を示す斜視図である。
バックプレート400は、バックプレート本体410を備え、バックプレート本体410は、概ね矩形状であるが、フロントプレート300のフロントプレート本体310よりも小さい寸法を有する(図3B、図4B)。バックプレート本体410は、前面401(
図5A)と背面402(図5B)とを有する。
バックプレート本体410の前面401は、基板Sの載置面であり、フロントプレート本体310の背面302に取り付けられる。バックプレート本体410の前面401には、基板Sを保持(固定)するためのクリップ部420が、基板Sの各辺に対応して合計8個設けられている。この例では、クリップ部420は、基板Sの上辺及び下辺にそれぞれ1個づつ、左片及び右辺にそれぞれ3個づつ配置されている。なお、クリップ部420の数及び配置は、基板Sの寸法、形状に応じて適宜選択されるものであり、図示の数及び配置に限定されない。
バックプレート本体410の4隅のうちの3隅には、位置決め片490が設けられている。位置決め片490には、貫通孔490aが形成されている。位置決め片490は、バックプレート本体410と一体に形成してもよいし、バックプレート本体410とは別体で形成し、バックプレート本体410に取り付けるようにしてもよい。フロントプレート本体310の背面302には、位置決め片490の各々に対応する位置に位置決めピン390が設けられている(図6A,B)。位置決めピン390は、フロントプレート本体310と一体に形成してもよいし、フロントプレート本体310とは別体で形成し、フロントプレート本体310に取り付けるようにしてもよい。バックプレート400をフロントプレート300に取り付ける際に、バックプレート400の位置決め片490の貫通孔490aに位置決めピン390を挿通させ、両者の位置合わせを行う。
フロントプレート300の背面302には、図4Bに示すように、バックプレート400の4辺の各辺に対応して、固定部材350が配置されている。2つの固定部材350が、バックプレート400の1辺に対して設けられており、バックプレート400の1辺に沿って並んで配置されている。各固定部材350には、図6A、図6B、図7に示すように、2つのクランプ340が取り付けられている。よって、1辺あたり、4つのクランプ340が設けられている。また、各辺の2つの固定部材350の間には、4つのクランプ340を同時に動作させるためのレバー342が取り付けられている。なお、1辺あたりのクランプの数は、4つに限定されず、3つ以下であっても、5つ以上であってもよい。
各辺の2つの固定部材350に亘って回転軸341が取り付けられている。回転軸341は、固定部材350に対して回転自在に取り付けられている(図7)。各クランプ340及びレバー342は、回転軸341にキー結合(キー及びキー溝)によって回転不能に取り付けられている(図8A,B、図9A,B)。4つのクランプ340は、同一の位相で回転軸341に取り付けられているが、レバー342は、4つのクランプ340とは異なる位相で回転軸341に取り付けられている。この構成により、レバー342が回転すると、それに伴い、4つのクランプ340が同期して回転する。なお、ここでは、フロントプレート本体310の面301、302に平行な回転軸341の周りにクランプ340が回転するように構成したが、フロントプレート本体310の面301、302に垂直な方向に往復運動してバックプレート400をクランプするように、クランプ340を構成してもよい。
クランプ340は、その先端部において鉤状に湾曲した係合部340aを有する。クランプ340の基端側には貫通孔を有し、この貫通孔に回転軸341が挿通され、キー及びキー溝によって回転不能に固定されている(図9A参照)。レバー342は、外部からの力を受けていない場合、図7に示すように、圧縮ばね343によってフロントプレート300の背面302から立ち上がるように付勢されており、これに伴い、各クランプ340は閉じる方向に付勢されている。言い換えれば、クランプ340は、ノーマルクローズ型で構成されている。また、レバー342は、外部からの押圧力を受けることが可能な力受部として構成されている。レバー342は、例えば、基板着脱機構29に設けられるアク
チュエータから押圧力を受けることが可能である。図10Bにおいて、アクチュエータAR1を模式的に示している。アクチュエータAR1は、例えば、エアシリンダ、モータ等の駆動部DRVと、駆動部DRVによって駆動される棒状部材RDとを備える。レバー342は、アクチュエータAR1から押圧力を受けると、フロントプレート300の背面302に向かって倒れる方向に回転し、これに伴い、クランプ340は開く方向に回転する。この例では、アクチュエータAR1は、各辺のレバー342に対応して4つ設けられる。好ましくは、4つのアクチュエータAR1は、同時に駆動されてレバー342を押す。但し、4つのアクチュエータAR1は、別々に駆動してもよく、同時に駆動することに限定されない。
バックプレート400の背面402には、クランプ340に対応する位置に係合受部430が設けられている。係合受部430は、本実施形態で示すように、バックプレート400のバックプレート本体410とは別部材で形成され、バックプレート本体410に取り付けても良いし、バックプレート本体410と一体に形成したものであってもよい。係合受部430には、クランプ340の鉤状の係合部340aが引っ掛かり、係合することが可能な形状を有する突出部430aが形成されている。突出部430aは、クランプ340の係合部340aの係合を確実に受けるために、係合部340aよりも長い寸法を有する。
以下、図面を参照しつつ、バックプレート400のフロントプレート300への取り付け構造を説明する。
図8Aは、クランプ状態のクランプの斜視図である。図8Bは、クランプ状態のクランプの側面図である。図9Aは、クランプ状態のクランプの断面斜視図である。図9Bは、クランプ状態のクランプの断面図である。図10Aは、アンクランプ状態のクランプの構成を示す斜視図である。図10Bは、アンクランプ状態のクランプの側面図である。図11Aは、アンクランプ状態のクランプの断面斜視図である。図11Bは、アンクランプ状態のクランプの構成を示す断面図である。
前述したように、クランプ340は、ノーマルクローズ型であり、レバー342に押圧力を受けていない状態では、図8A,B及び図9A,Bに示すように、閉じた状態にある。フロントプレート300にバックプレート400を取り付ける場合には、先ず、アクチュエータAR1(図10B)によってフロントプレート300のレバー342に押圧力を加え、図10A,B及び図11A,Bに示すように、圧縮ばね343の付勢力に抗してクランプ340を開く方向に回転させる。クランプ340を開放させた状態で、フロントプレート300(フェース部312)の背面302の所定の位置にバックプレート400を配置する。このとき、フロントプレート300の位置合わせピン390が、バックプレート400の位置合わせ片490の貫通孔490aに係合して、バックプレート400がフロントプレート300の所定の位置に位置合わせされる。
次に、フロントプレート300のレバー342からアクチュエータAR1の押圧力を取り除く。これにより、レバー342が圧縮ばね343の付勢力によってレバー342が元の位置に向かって回転し、各クランプ340が閉じる方向に回転する。この結果、クランプ340の係合部340aが、バックプレート400の係合受部430に係合し、バックプレート400がフロントプレート300に固定される(図8A,B及び図9A,B)。
バックプレート400を取り外す場合には、前述したように、アクチュエータ(図示せず)によってフロントプレート300のレバー342に押圧力を加え、圧縮ばね343の付勢力に抗してクランプ340を開く方向に回転させる(図10A,B及び図11A,B)。この結果、クランプ340が係合受部430から解放され、バックプレート400をフロントプレート300から取り外し可能となる。
(基板のバックプレートへの取付構造)
図12Aは、バックプレートのクリップを示す一部切欠き側面図である。図12Bは、バックプレートのクリップを示す一部拡大斜視図である。図13Aは、閉鎖時のクリップの状態を示す一部切欠き斜視図である。図13Bは、閉鎖時のクリップの状態を示す一部切欠き断面図である。図14Aは、開放時のクリップの状態を示す一部切欠き斜視図である。図14Bは、開放時のクリップの状態を示す一部切欠き断面図である。
バックプレート400の前面401には、基板Sの各辺に対応して合計8個のクリップ部420が設けられている(図5A参照)。また、バックプレート400の背面402には、クリップ部420の各々に対応する位置に、ボタン470が設けられている(図5B参照)。ボタン470に力が加わっていない場合、ボタン470の前面401側の面は、2つのクリップ421の基端部と所定の間隔を持って配置されている(図13B)。ボタン470は、力受部471と、力受部471をバックプレート本体410に対して変位可能に支持する弾性部分472と、弾性部分472の外周にある取付部473とを有する。ボタン470は、取付部473において押え部材474、及び締結部材475によって固定されている。締結部材475は、例えば、スタッド、ボルト等である。
各クリップ部420は、図12A,Bに示すように、バックプレート本体410の前面401に固定された固定部423と、固定部423に回転不能に固定された固定軸424と、固定軸424に対して並進しつつ回転可能に支持された2つのクリップ421と、クリップ421の各々に設けられクリップ421を閉鎖方向に付勢する巻ばね422と、を備えている。
クリップ421は、その先端部に爪部421aを有し、その基端側には長穴421b及び2つの丸穴421cが形成されている。クリップ421は、固定軸424を長穴421bに挿通させて取り付けられている。図13Bに示すように巻ばね422は、巻回部422cと、巻回部422cから延びる脚部422a、422bを有している。巻ばね422は、針金等を複数回円形に巻いて巻回部422cを設け、所定の長さの脚部422a、422bを残したものである。脚部422aは、略直角に折れ曲がる折曲部を先端に有し、この折曲部が、クリップ421の2つ丸穴421cのうち基端側の丸穴421cに挿入及び嵌合されている。他方の脚部422bは、クリップ421には取り付けられておらず、略直角に折れ曲がる折曲部を先端に有し、この折曲部が、固定部423に設けられた規制面423aに当接した状態で支持されている。また、脚部422aは、固定部423に設けられた案内面423bによって案内される(図13B、図14B)。
この構成により、クリップ421は、バックプレート本体410から離れる方向に移動しつつ、バックプレート本体410の外側に向かって回転することが可能である(図13Bから図14B)。この結果、クリップ421は、開放状態となる(図14A,B)。また、逆に、クリップ421は、バックプレート本体410に接近する方向に移動しつつ、バックプレート本体410の内側に向かって回転することが可能である(図14Bから図13B)。この結果、クリップ421は、閉鎖状態となる(図13A,B)。なお、本実施形態では、クリップ421は、外部から力を受けない状態では、巻ばね422によって閉鎖方向に付勢されており、ノーマルクローズ型である(図13A,B)。また、図14Bでは、図面の複雑化を避けるため、ボタン470の力受部471が変位していない状態を示しているが、実際には、力受部471はクリップ421に向かって変位してクリップ421を押圧しており、この押圧によってクリップ421が開放状態にある。
基板Sをバックプレート400に載置する場合、バックプレート400の8個のボタン470(力受部471)に、外部からアクチュエータAR2によって押圧力を加える(図
14B)。これにより、図14A,Bに示すように、力受部471が前面401側に変位し、2つのクリップ421の基端部に当接する。力受部471から受ける力によって、クリップ421は、図14Bに示すように、バックプレート本体410から離れる方向に移動しつつ、バックプレート本体410の外側に回転し、開放状態となる(図14B)。図14Bに模式的に示したように、アクチュエータAR2は、例えば、エアシリンダ、モータ等の駆動部DRVと、駆動部DRVによって駆動される棒状部材RDとを備える。アクチュエータAR2は、8個のボタン470に対応して8台設けられている。好ましくは、8台のアクチュエータAR2は、同時に駆動されてボタン470を押す。但し、8台のアクチュエータAR2は、別々に駆動してもよく、同時に駆動することに限定されない。
クリップ421が開放した状態で、バックプレート400の前面401の所定の位置に基板Sを載置し、その後、ボタン470からアクチュエータAR2による押圧力を解放する。この結果、クリップ421は、巻ばね422の付勢力によって、バックプレート本体410に接近する方向に移動しつつ、バックプレート本体410の内側に回転し、閉鎖状態となる(図14Bから図13B)。このとき、クリップ421の先端の爪部421aが基板Sの周縁部に係合し、基板Sをバックプレート400の前面401に固定することができる。
このように基板Sを取り付けたバックプレート400を、図5から図13で説明したように、フロントプレート300(フェース部312)に取り付ければ、基板ホルダ1への基板Sの取り付けが完了する。基板Sをバックプレート400から取り外す場合、前述したように、バックプレート400の8個のボタン470(力受部471)に、外部からアクチュエータAR2によって押圧力を加える(図14A、B)。
なお、ここでは、バックプレート本体410の面401、402に平行な固定軸424の周りにクリップ421が回転するように構成したが、バックプレート本体410の面401、402に垂直な方向に往復運動して基板Sをクランプするようにクリップ421を構成してもよい。
(シール部の構成)
図15は、フロントプレートのインナーシール部を示す断面図である。図16は、フロントプレートのインナーシール部及びアウターシール部を示す断面図である。
フロントプレート300の背面302には、開口部303に隣接してインナーシール361が設けられている。インナーシール361は、シールホルダ363によってフロントプレート300の背面302に取り付けられている。インナーシール361は、基板Sとフロントプレート300との間をシールし、めっき液が基板Sの端部に侵入することを防止する。シールホルダ363には、基板Sに電位を供給するためのコンタクト370も取り付けられている。
また、図16に示すように、フロントプレート300の背面302には、インナーシール361よりも外側において、アウターシール362がシールホルダ364によって取り付けられている。アウターシール362は、バックプレート400に当接し、フロントプレート300とバックプレート400との間をシールする。
本実施形態では、インナーシール361及びアウターシール362を取り付けるシールホルダ363、364が別部材で構成されているので、インナーシール361及びアウターシール362を別々に交換することができる。
図17は、フロントプレート本体の背面図である。図18は、フロントプレートのコネ
クタを含む領域の一部拡大平面図である。図19Aは、フロントパネルの断面斜視図である。図19Bは、フロントパネルの断面図である。図19Cは、ケーブルの配置を示すフロントパネルの一部拡大斜視図である。図20Aは、配線バッファ部の図示を省略した場合の、フェース部のケーブル導入位置付近の斜視図である。図20Bは、配線バッファ部の図示を省略した場合の、フェース部のケーブル導入位置付近を示す上面図である。図20Cは、配線バッファ部の図示を省略した場合の、フェース部のケーブル導入位置付近を示す上面図の拡大図である。
フロントプレート本体310の背面302は、18個のコンタクト領域C1−C18を有する。コンタクト領域C1−C7、C17、C18は、フェース部312のうちコネクタ331側の半分の領域(第1領域、図17の右側半分の領域)に配置されており、コンタクト領域C8−C16は、フェース部312のうちコネクタ331から遠い側の半分の領域(第2領域、図17の左側半分の領域)に配置されている。以下の説明では、便宜上、第1領域に配置されるケーブルを第1グループのケーブル、第2領域に配置されるケーブルを第2グループのケーブルと称す場合がある。
各コンタクト領域C1−C18には、図15、図16に図示した基板Sに給電するためのコンタクト(接点部材)370が含まれる。各コンタクト領域C1−C18のコンタクト370には、それぞれ、ケーブルL1−L18を介して、外部から給電される。なお、以下の説明では、各ケーブルを区別する必要がない場合には、ケーブルL1−L18をまとめて、ケーブルLと総称する場合がある。また、任意のケーブルをケーブルLとして参照する場合もある。
ケーブルL1−L18の第1端部は、アーム部330の一端に設けられたコネクタ331に接続されおり、より詳細には、コネクタ331において個別の接点または複数本ずつ共通の接点(図示省略)に電気的に接続されている。ケーブルL1−L18は、コネクタ331の各接点を介して外部の電源(電源回路、電源装置等)に電気的に接続可能である。
図22は、ケーブルと外部接続接点との接続関係を説明する説明図である。
コネクタ331では、ケーブルL1−L18が外部接続接点331a1、331a2に接続される(図22)。外部接続接点331a1、331a2には、外部電源からの給電端子に接続される。例えば、第1グループのケーブル(L1−L7、L17、L18)の3本を共通の第1側の外部接続接点331a1に接続し、第2グループのケーブル(L8−L16)の3本のケーブルを共通の第2側の外部接続接点331a2に接続し、これらの第1側の外部接続接点331a1と第2側の外部接続接点331a2とを一対の外部接続接点331aとする。ここで、第1側及び第2側とは、コネクタ331において接点が2列に並んでいる場合の各側に対応する。例えば、図17において、基板ホルダ1のコネクタ331を右側方から見た場合に、右側を第1側、左側を第2側とする。具体的には、以下のように外部接続接点を構成する。
ケーブルL17、L18、L1を共通の第1側の外部接続接点331a1に接続し、ケーブルL8、L9、L10を共通の第2側の外部接続接点331a2に接続し、これらの第1側の外部接続接点331a1と第2側の外部接続接点331a2とを一対(第1対、又は第1の外部接続接点対331aと称す)とする。
ケーブルL2、L3、L4を別の第1側の外部接続接点331a1に接続し、ケーブルL11、L12、L13を別の第2側の外部接続接点331a2に接続し、これらの第1側の外部接続接点331a1と第2側の外部接続接点331a2とを一対(第2対、又は第2の外部接続接点対331aと称す)とする。
ケーブルL5、L6、L7を別の第1側の外部接続接点331a1に接続し、ケーブルL14、L15、L16を別の第2側の外部接続接点331a2に接続し、これらの第1側の外部接続接点331a1と第2側の外部接続接点331a2とを一対(第3対、又は第3の外部接続接点対331aと称す)とする。
コネクタ331において、各外部接続接点対331aの第1側の外部接続接点331a1と第2側の外部接続接点331a2とは互いに対向して配置されている。第1の外部接続接点対331aの第1側の外部接続接点331a1と第2側の外部接続接点331a2とは互いに対向して配置され、第2の外部接続接点対331aの第1側の外部接続接点331a1と第2側の外部接続接点331a2とは互いに対向して配置され、第3の外部接続接点対331aの第1側の外部接続接点331a1と第2側の外部接続接点331a2とは互いに対向して配置される。
基板着脱機構29において、通電確認処理が実行される。具体的には、基板ホルダ1に基板Sが保持された後(バックプレート400がフロントプレート300のクランプ340で固定された後)、コネクタ331の第1〜第3対に抵抗測定器(図示せず)が接続され、各対における第1外部接続接点と第2外部接続接点との間に、所定の検査電圧が印加される。これにより、各対における第1外部接続接点と第2外部接続接点との間の電気抵抗が測定される。そして、各対の電気抵抗が所定値以下かつ所定の範囲内であれば(各対の電気抵抗にばらつきがなく、断線等の異常がない)、基板ホルダ1の通電が良好であると判断する(通電確認処理)。この通電確認処理は、コントローラ175の制御部175Cで実行され、前述した「基板脱着機構29における基板の基板ホルダへの着脱制御」に含むことができる。
ケーブルL1−L18の他端である第2端部は、後述するように、それぞれ、コンタクト領域C1−C18においてコンタクト370に電気的に接続される。各ケーブルL1−L18は、コネクタ331から、アーム部330を通って、一方の取付部320を通過し、配線バッファ部311に入る(図18)。配線バッファ部311において、ケーブルL1−L18のうちケーブルL17、L18、L1−L7が、第1領域(コネクタ側の領域)に向かい、ケーブルL8−L16が、第2領域(コネクタから遠い側の領域)に向かう。図18では、第1領域に配置される第1グループのケーブルL17、L18、L1−L7が主に示されている。図18に示すように、第1グループのケーブルL17、L18、L1−L7は、配線バッファ部311を通過して、フェース部312におけるシールホルダ363、364間のケーブル通路365に導かれる。図示省略するが、第2グループのケーブルL8−16も、配線バッファ部311の第2領域(コネクタから遠い側の領域)を通過して、フェース部312の第2領域においてケーブル通路365に導かれる。なお、図18では、図面の複雑化を避けるため、ケーブルの長さの一部を省略して表示している。また、配線バッファ部311におけるケーブルL1−L18の配置は、ケーブルL1−L18の長さの一部をバッファするように任意の配置とすることができる。
配線バッファ部311のフェース部312側には、肉厚部3113が設けられている(図19A、図19B)。配線バッファ部311の肉厚部3113及びフェース部312には、シールホルダ363、364間のケーブル通路365まで、各ケーブルL1−L18に対応する配線穴311aが設けられている(図19A、図19B)。ここで、配線穴311aは、ケーブルが通過可能な径を有する錐穴である。図19Aでは、1つの配線穴311aのみを示しているが、実際には、配線穴311aは、図19Cに示すように、各ケーブルに対応して複数設けられている。少なくともケーブルの数の配線穴311aが設けられている。
本実施形態では、図19A、図19Bに示すように、配線バッファ部311は、フロントパネル本体310のフェース部312とは別体で設けられ、フェース部312に取り付けられている。配線バッファ部311とフェース部312の境界においてケーブルの周囲には、配線穴311a及びケーブルLを密閉するためのOリング501が配置されている。これにより、配線穴311a及びケーブルLが、めっき液や、外部からの異物から保護される。
図21Aは、コネクタに近い側のフェース部の隅部近傍における背面図である。図21Bは、コネクタに近い側のフェース部の隅部近傍をさらに拡大した背面図である。図21Cは、図21AのC−C線における断面図である。図21Dは、ケーブルの被覆を除去した部分の斜視図である。
ケーブルL1−L7は、図21A及び図21Bに示すように、同一平面内に並んでケーブル通路365内に導入され、開口部303のコネクタ331側の辺に沿って配置されている。ケーブル同士は、フェース部312の厚み方向に重ならない。従って、フェース部312及びフロントパネル300の厚みを抑制することができる。
図21A及び図21Bに示すように、開口部303の各辺に沿って、コンタクト領域C1−C18ごとに導電体からなるコンタクト370が配置されている。コンタクト370は、インナーシール361に接触しないが、隣接して配置されている。コンタクト370は、シールホルダ363上に配置されており、複数のネジ511でシールホルダに固定されている。シールホルダ363には、各コンタクト領域においてケーブル通路365から接続位置(ネジ511の位置)まで、ケーブルを引き込む配線溝363aが設けられている。ケーブルLは、図21Dに示すように、電気的な伝導体からなる心線又は導電線601と、導電線601を絶縁するための被覆602とを備えている。ケーブルLは、先端部(第2端部)において、被覆602が除去され、心線又は導電線601が露出される。そして、ケーブルLの心線601が配線溝363aに引き込まれる。なお、割り当てられたコンタクト領域において引き込まれたケーブルLは、そのコンタクト領域で終端する。
例えば、コンタクト領域C1では、コンタクト領域C1近傍のケーブル通路365に向かって開口する配線溝363a(図21C)が、シールホルダ363中に形成され、この配線溝363aは、コンタクト領域C1に設けられた4つのネジ(締結部材)511の下方を通過するように延びかつ終端する(図21A)。同様に、コンタクト領域C2では、コンタクト領域C2近傍のケーブル通路365に向かって開口する配線溝363aが、シールホルダ363中に形成され、この配線溝363aは、コンタクト領域C2に設けられた4つのネジ511の下方を通過するように延びかつ終端する。ネジ511と配線溝363aの位置関係を図21Cに示している。ケーブルL(図21Cでは、L1)が配線溝363aに配置されたとき、ネジ511のフランジ部511aによって、コンタクト370及びケーブル(心線)が押圧される。
各コンタクト領域におけるケーブルLとコンタクト370との電気接続は、以下のように行われている。ケーブルL1を例に挙げると、ケーブルL1の先端部(第2端部)は、被覆602が除去されて、心線(導電線)601が露出している(図21A−D)。ケーブルL1の先端部は、コンタクトC1の近傍においてシールホルダ363の配線溝363a内に導入され、コンタクト領域C1内で、4箇所のネジ(締結部材)511によってコンタクト370とともに押圧されている。つまり、ネジ(締結部材)511とシールホルダ363とが、ケーブルL1の心線601をコンタクト370とともに挟持している。この結果、図21Cに示すように、ケーブルL1は、コンタクト370に電気的に接続される。基板ホルダ1が基板Sを保持すると、コンタクト370が基板Sに接触して、外部の電源からケーブルL1、コンタクト370を介して基板Sに給電が行われる。他のコンタ
クト領域C2−C18も同様に構成されており、18箇所のコンタクト370から基板Sに給電が行われる。
コンタクト領域C1には、ケーブルL2−L7は引き込まれないので、コンタクト領域C1とコンタクト領域C2との間では、ケーブルL2−L7が並んで配置されている。コンタクト領域C2では、コンタクト領域C1と同様に、ケーブルL2がシールホルダ363の配線溝363aに引き込まれ、4箇所のネジ511によってコンタクト370とともに押圧され、コンタクト370と電気的に接続される。この結果、コンタクト領域C2とコンタクト領域C3との間では、ケーブルL3−L7が並んで配置されている。同様にして、ケーブルL3−L7が、それぞれコンタクト領域C3−C7において、コンタクト370と電気的に接続される。この結果、コンタクト領域C3とC4との間ではケーブルL4−L7が並んで配置され、コンタクト領域C4とC5との間ではケーブルL5−L7が並んで配置され、コンタクト領域C5とC6との間ではケーブルL6−L7が並んで配置され、コンタクト領域C6とC7との間ではケーブルL7が並んで配置される。
ケーブルL17、L18も同様に、それぞれコンタクト領域C17、C18において、コンタクト370と電気的に接続される。また、コネクタから遠い側の領域(第2領域)でも、ケーブルL8−L16が、第1領域のケーブルと同様に、それぞれコンタクト領域C8−C16において、コンタクト370と電気的に接続される。
本実施形態では、コンタクト370とともにケーブルLが挟持され、ケーブルLとコンタクト370とが直接、電気的に接続される場合を説明したが、ケーブルLとコンタクト370との間に別の導電部材(第2導電部材)を介在させるようにしてもよい。
(配線バッファ部)
図23は、配線バッファ部の近傍のフロントプレートの斜視図である。図24は、配線バッファ部の拡大斜視図である。図25は、配線バッファ部の蓋部材の背面図である。図26は、配線バッファ部の蓋部材の側面図である。
配線バッファ部311は、収容部本体3111と、蓋部材3120とを備えている。収容部本体311は、例えば、チタンで形成される。蓋部材3120は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)で形成される。なお、フェース部312及びアーム部330もチタンで形成することができる。また、バックプレート400も全体的にチタンで形成することができる。本実施形態では、蓋部材3120は、配線バッファ部311の専用の蓋であり、フェース部312等の他の部分を覆う部材と共用されるものではない。
収容部本体311は、概ね矩形状であり、その背面に形成された凹部3112を有している。凹部3112は、略立方体形状の空間であり、配線収容空間3140を形成する。凹部3112は、フェース部312の幅方向の概ね全体にわたって形成されており、フェース部312の幅よりも若干短い幅を有する。収容部本体311は、フェース部312側において肉厚部3113を有している。肉厚部3113の前面には、フェース部312に係合する段差部3113aが形成されている。収容部本体311は、取付部320側において肉厚部3114を有している。肉厚部3114は、各取付部320に対応して突出する2つの突出部3114aを有している。各突出部3114aの背面には、取付部320に係合する段差部3114bが形成されている。凹部3112は、フェース部312側の肉厚部3113、取付部320側の肉厚部3114、及び、幅方向両側の肉厚部によって囲まれた矩形状の空間を形成する。
蓋部材3120は、概ね矩形状であり、前面側(収容部本体3111に取り付けられる側)に凹部3121を有する。凹部3120は、平面視において、収容部本体3111の
凹部3112に概ね合致する形状を有し、蓋部材3120が収容部本体3111に取り付けられたとき、凹部3112とともに配線収容空間3140を形成する。蓋部材3120の凹部3121の周囲の肉厚部には、シール溝3122が凹部3121を囲むように設けられている(図25)。シール溝3122には、シール部材3130が取り付けられている(図23)。シール部材3130は、例えば、Oリング、パッキン等である。蓋部材3120が収容部本体311に取り付けられたとき、シール部材3130は蓋部材3120と収容部本体311の間を密閉し、配線収容空間3140を気密に封止する(図24)。蓋部材3120の周縁部には、ボルト、スタッド等の締結部材3131を通す固定用の穴3131aが設けられており、収容部本体3111には、穴3131aに対応する穴が設けられている。蓋部材3120は、穴3131aの位置で締結部材3131によって収容部本体3111に固定される(図24)。
図27は、配線バッファ部の近傍のフロントプレートの背面図である。図28は、蓋部材を取り外した状態の配線バッファ部の近傍のフロントプレートの背面図である。図29は、蓋部材を取り外した状態の配線バッファ部の近傍のフロントプレートの斜視図である。
フロントプレート300において、配線バッファ部311は、フェース部312と、アーム部330との間に配置されている。ここで、基板ホルダ1は、めっき槽39(図1)内においてアーム部330で懸架され、略鉛直な姿勢でめっき液に浸かるように配置される。配線収容部311の配線収容空間3140(凹部3112)は、基板ホルダ1がめっき槽39に配置された際に、めっき液面WL(図27、図28)の高さ以上になる位置(例えば、めっき液面WLよりも所定の距離高い位置)に配置されている。例えば、シール部材3130の下端がめっき液面WLの高さ以上になる位置に、配線収容部311を基板ホルダ1内に配置してもよい。
フェース部312は、上述したように、バックプレート400と共に、基板Sを挟持して保持する。フェース部312及びバックプレート400は、基板Sを挟持する挟持部を構成する。配線バッファ部311の収容部本体3111は、ボルト、スタッド等の締結部材3116によってフェース部312に固定されている。また、配線バッファ部3111の収容部本体3111は、2つの取付部320によってアーム部330に固定されている。収容部本体3111は、ボルト、スタッド等の締結部材320aによって2つの取付部320に固定されている。取付部320は、ボルト、スタッド等の締結部材330aによってアーム部330に固定されている。アーム部330の一端側には、コネクタ331が設けられている。コネクタ331には、複数の外部接続接点331a(331a1、331a2)(図22)が設けられており、外部接続接点331a(331a1、331a2)にケーブルL1〜L18が接続されている。ケーブルL1〜L18は、外部接続接点331aからアーム部330の一端側を通り、一方の取付部320を通って、配線バッファ部311の配線収容空間3140(凹部3112)内に導入される。アーム部330には、コネクタ331及びコネクタ331に接続されるケーブルL1〜L18を覆うカバー331bが取り付けられる(図27)。また、取付部320とアーム部330には、ケーブルLを覆うカバー321が取り付けられる。図28は、蓋部材3120、カバー321、カバー331bを取り外した状態の配線バッファ部311の近傍の構成を図示している。
本実施形態では、ケーブルL1〜L18の長さは同一であり、外部接続接点331a1、331a2から各コンタクト領域C1〜C18(図17)までの各経路の経路長の差に起因する余分なケーブルの長さが、配線バッファ部311に収納され、配線バッファ部311で余分なケーブルの長さの配置が調整される。外部接続接点331a1、331a2から各コンタクト領域C1〜C18までの経路長のうち最長の経路長に適合するように、ケーブルL1〜L18の同一の長さが選択されるが、最長でない経路に配置されるケーブ
ルLは余分な長さを有することになる。このケーブルLの余分な長さを配線バッファ部311で調整する。
図30は、各コンタクトと外部接続接点との間の経路差に起因する配線の長さの差を説明する説明図である。例えば、図30に示すように、外部接続接点外部接続接点331aからコンタクト領域C8、C1(コンタクト370)までの経路長をそれぞれx8、x1(x8>x1)とすると、経路長の差は、Δx=x8−x1となる。図17に示すように、コンタクト領域C8までの経路長x8が最大経路長であり、ケーブルL1〜L18の長さは、この最大経路長x8に合うように(実質的に同一の長さに)選択される。この場合、ケーブルL8、L1の長さは、いずれも最大経路長x8に対応するy8に設定される。一方、コンタクト領域C1までの経路長x1は、最大経路長x8より短いため、図30に示すように、ケーブルL1はΔxだけ余分な長さを有することになる。この余分な長さΔxを配線バッファ部311で収容し、ケーブル長(ケーブルL1の長さ)を調整する。また、最大経路長x8より短い経路長を有するコンタクト領域C1〜C7、C9−C18についても同様である。図28、図29では、配線バッファ部311の凹部3112(配線収容空間3140)内におけるケーブルL1〜L18の配置の一例を示すが、ケーブルL1〜L18の配置はこれに限らず、余分なケーブル長を収容するように任意の配置とすることができる。
ケーブルL1〜L18の長さを同一とする利点は、ケーブル長の差による抵抗値の差を除去し、各ケーブルに接続されるコンタクト370から基板Sに均一な電流を供給できるため、めっき品質を向上し得ることにある。
なお、ケーブルL1〜L18の長さが同一でない場合であっても、1又は複数のケーブルが、外部接続接点からコンタクトまでの経路長に対して余分な長さを有する場合には、配線バッファ部311で余分な長さを収容してケーブル長を調整することができる。
図31は、配線バッファ部のフェース部側の拡大斜視図である。図32は、配線バッファ部の取付部側を、取付部側から見た斜視図である。図33は、配線バッファの取付部側を、配線バッファ部側から見た斜視図である。図34は、蓋部材を取り外した状態の配線バッファ部を示す斜視図である。図35は、蓋部材を取り付けた状態の配線バッファ部を示す斜視図である。
図34、図35に示すように、ケーブルLは、コネクタ331側の取付部320から配線バッファ部311の配線収容空間3140(凹部3112、3121)に導入され、配線収容空間3140内で余分なケーブル長が調整されたのちに、フェース部312に導かれる。
配線バッファ部311とフェース部312との境界におけるケーブルLの配置を図31に示す。同図を参照すると、配線バッファ部311の肉厚部3113には、図19A乃至Cで説明したように、錐穴からなる配線穴311aが複数設けられている。各ケーブルLは、配線バッファ部311の凹部3112から配線穴311aを通って、フェース部312(図21Aのケーブル通路365)に導かれる。
配線バッファ部311と取付部312との境界におけるケーブルLの配置を図32、図33に示す。これらの図に示すように、配線バッファ部311の肉厚部3114には、複数の配線穴3115が設けられている。取付部320には、配線穴3115を露出する凹部322が設けられている。凹部322は、配線穴3115を露出するように配線バッファ部311側が開口するとともに、配線穴3115を通るケーブルを通過させるように、背面側が開口している。一方、凹部322の前面側は閉鎖されている。ケーブルLは、取
付部320の凹部322内に入り、複数本ずつ、例えば3本ずつ配線穴3115を通され(図32)、配線バッファ部311の凹部3112に導かれる(図33)。
図36は、他の実施形態に係る蓋部材を取り外した状態の配線バッファ部の斜視図である。図37は、他の実施形態に係る蓋部材を取り付けた状態の配線バッファ部の斜視図である。図38は、他の実施形態に係る配線バッファ部の蓋部材の背面図である。他の実施形態では、配線バッファ部311の蓋部材3120Aに凹部が設けられない点で上記実施形態とは異なる。その他の構成は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。蓋部材3120Aに凹部を設けない場合、蓋部材3120Aの構成が簡易になる。また、蓋部材3120Aの厚みを、凹部を設ける場合よりも薄くすることが可能であるので、それに応じて収容部本体3111の厚みを増加することも可能である。
(実施形態の作用効果)
本実施形態に係る基板ホルダ1によれば、フロントプレート本体310の面に平行な軸の周りを回転可能な又はフロントプレート本体310の面に交差する方向に往復移動可能なクランプ340によって、基板を挟持するフロントプレート300とバックプレート400とを互いに固定するため、基板に回転方向の力が加わることを抑制ないし防止できる。基板が大型で薄い場合は、基板に回転方向の力が加わると基板に撓みを生じるおそれがあるが、この基板ホルダ1によれば、大型で薄い基板を保持する場合にも撓みの発生を抑制ないし防止できる。
また、クランプ340がノーマルクローズ型であるため、バックプレート本体410をフロントプレート本体310に当接する際にクランプを開けば、クランプした状態ではアクチュエータ等によって外部から力を加える必要がなく、エネルギー消費を抑制できる。
また、バックプレート400を複数の箇所でクランプ340によって挟持することが可能であり、また、連結部材(回転軸341)によって各クランプ340の動作が同期されるので、クランプ動作を効率よく行うことができる。また、外部から力を加えるアクチュエータAR1の構成を簡易にすることができる。レバー342が外部の第1アクチュエータAR1から力を受けて回転軸341を介して各クランプ340を動作させることができるので、クランプ340による固定を自動化することが容易である。
また、バックプレート400に、クランプ340の係合部340aを受け入れる形状の係合受部430を設けることによって、クランプによる係合を向上し得る。別体の係合受部430をバックプレート本体410に取り付ける構成とすることで、係合受部430の寸法、形状、個数等を適宜選択することが容易になる。
また、バックプレート本体410の面に平行な軸424の周りを回転可能な又はバックプレート本体410の面に交差する方向に往復移動可能なクリップ421によって、基板をバックプレート400に固定するため、基板に回転方向の力が加わることを抑制ないし防止できる。基板が大型で薄い場合は、基板に回転方向の力が加わると基板に撓みを生じるおそれがあるが、この基板ホルダによれば、大型で薄い基板を保持する場合にも撓みの発生を抑制ないし防止できる。
クリップ421がノーマルクローズ型であるため、基板をバックプレート本体410に当接する際にクリップ421を開けば、クリップした状態ではアクチュエータ等によって外部から力を加える必要がなく、エネルギー消費を抑制できる。
基板と当接する側の面とは反対の面から力を受けるボタン470を設けるため、アクチュエータAR2を基板当接面とは反対側に配置することができ、基板固定後のバックプレ
ート400の移動、姿勢の変更等が容易である。
ボタン470が外部の第2アクチュエータAR2から力を受けてクリップ421を動作させることができるので、クリップ421による固定を自動化することが容易である。
インナーシール361及びアウターシール362を保持するシールホルダ363、364を別々に設けるので、各シールの交換を別々に行うことができる。
また、本実施形態の基板ホルダでは、ケーブルLの一端部において被覆602を除去し、ケーブルLの心線601をコンタクト370とともに挟持することにより、簡易な構成で、ケーブルLとコンタクト370との間の電気的な接続を確立することができる。つまり、ケーブル端部にコネクタ等を設けることなく、ケーブルLとコンタクト370との間の接続を行うことができる。基板Sの複数の箇所にコンタクト370を接触させて給電する場合、基板ホルダ内で複数のケーブルLを引き回して電気的接続を行う必要があるが、この基板ホルダによれば、簡易な構成で、ケーブルLとコンタクト370との間の電気的な接続を確立することができ、基板ホルダの大型化を抑制できる。また、大型の基板に給電する場合や、基板への供給電流値が大きい場合には、ケーブルの数が増加し、ケーブル径も大きくなる。例えば、このような場合に、この基板ホルダによる簡易なケーブルの接続は有効である。
また、本実施形態の基板ホルダでは、ボルト、ネジ等の締結部材511によって簡易な構成、簡易な作業で、ケーブルLとコンタクト370との間の電気的接続を確立できる。
また、本実施形態の基板ホルダでは、シールホルダ363を用いてケーブルLとコンタクト370とを挟持することができるので、既存の構成を利用することができ、基板ホルダの大型化、コスト増を抑制し得る。
また、本実施形態の基板ホルダでは、シール361、362のシールホルダ363、364が別々であるため、シールを別々に交換することが容易である。また、シールホルダ363、364を別々に交換することも容易である。
また、本実施形態の基板ホルダでは、ケーブルLが基板ホルダの厚み方向に重ならないようにすることによって、基板ホルダの厚みの増加を抑制することが可能である。特に、大型の基板や、電流量が大きい場合には、ケーブルの数、ケーブルの径が大きくなる可能性があるが、この構成によれば、基板ホルダの厚み方向での増大を抑制することができる。
また、本実施形態の基板ホルダでは、先端の被覆602が除去された各ケーブルLを順次、各コンタクト370の位置に引き込み、接続するので、接続位置までのケーブル間の絶縁を確保するとともに、簡易な構成でケーブルを導電部材に接続することができる。
本実施形態の基板ホルダをめっき装置に適用する場合、基板ホルダの大型化を抑制できるので、めっき装置の大型化も抑制できる。
本実施形態に係る基板ホルダの製造方法では、ケーブルLの一端部において被覆602を除去し、ケーブルLの心線601をコンタクト370とともに挟持することにより、簡易な構成で、ケーブルLとコンタクト370との間の電気的な接続を確立することができる。つまり、ケーブル端部にコネクタ等を設けることなく、ケーブルLとコンタクト370との間の接続を行うことができる。基板Sの複数の箇所にコンタクト370を接触させて給電する場合、基板ホルダ内で複数のケーブルLを引き回して電気的接続を行う必要が
あるが、この基板ホルダによれば、簡易な構成で、ケーブルLとコンタクト370との間の電気的な接続を確立することができ、基板ホルダの大型化を抑制できる。また、大型の基板に給電する場合や、基板への供給電流値が大きい場合には、ケーブルの数が増加し、ケーブル径も大きくなる。例えば、このような場合に、この基板ホルダによる簡易なケーブルの接続は有効である。
また、上述した基板ホルダ1を使用して基板にめっき処理を行う場合、大型の基板に給電する場合や、基板への供給電流値が大きい場合であっても、基板ホルダにおけるケーブルと導電部材との間の電気的な接続が簡易な構成であるため、大型化を抑制ないし防止した基板ホルダを用いてめっき処理を行うことができる。
また、上記実施形態では、めっき処理前に各外部接続接点対の第1及び第2側の接点間の電気抵抗を測定し、複数の外部接続接点対の電気抵抗にばらつきがないかを確認する通電確認処理を実施する。従って、複数の外部接続接点対の電気抵抗の間のばらつきに起因してめっき膜厚の均一性に問題がないか否かを事前に確認してから、めっき処理を行うことができる。この結果、めっき処理の信頼性を向上することができる。
上記実施形態によれば、基板ホルダ1のアーム部330と挟持部312、400との間に配置された配線収容部311によって、外部接続接点331aとコンタクト370との間の経路長に対して余分なケーブルLの長さを収容し、ケーブルLの配置を調整することができる。この構成では、基板ホルダ1のアーム部330と挟持部312、400との間に配線収容部(配線バッファ部)311を設けるため、基板ホルダ1の厚みが増加することを抑制ないし防止することが可能である。つまり、基板ホルダ1において、配線収容部311は、アーム部330と、挟持部312、400とに並んで配置されるため、基板ホルダ1を支持するためのアーム部330や、基板を保持する挟持部321、400の厚みが増加することを抑制ないし防止することが可能である。
また、基板ホルダ1をめっき槽39に設置した状態で、基板ホルダ1の高さ方向に配線収容部311を追加する。基板を保持する挟持部312、400と重ならないので、基板ホルダ1全体の厚みを抑制しつつ、配線収容部311の厚み方向の寸法も確保できる。よって、径の大きい配線Lを曲げて配置する空間を確保し易い。大型の角形基板を保持する基板ホルダでは、特に有利である。
また、配線収容部311が、基板を保持する挟持部312、400と重ならないので、基板ホルダ1に基板を保持した後にも、配線収容部311にアクセス可能な構成にすることもできる。
上記実施形態によれば、蓋部材3120、3120Aによって配線収容部311内の配線Lをめっき液等の処理液から保護できるとともに、蓋部材3120、3120Aを開けることによって配線収容部311内の配線Lにアクセス可能となる。従って、配線収容部311内でのメンテナンスが容易になる。
上記実施形態によれば、収容部本体3111及び蓋部材3120の凹部3112、3121を合わせた空間を配線収容空間3140(配線を収容するための空間)とすることができる。収容部本体3111の厚みを抑制しつつ、配線収容空間3140の厚み方向を増大することが容易になる。収容部本体3111の材料が、蓋部材3120の材料よりも高価な場合には、収容部本体3111の体積を低減することによって、コストの増大を抑制し得る。
上記実施形態によれば、シール部材3130によって、配線収容部311内の空間をよ
り気密に封止することが可能である。
上記実施形態によれば、配線収容部311の配線収容空間3140は、基板ホルダ1がめっき槽39に配置された際に、めっき液面WLの高さ以上の高さに対応する位置に配置されている。これにより、配線収容空間3140がほとんどめっき液に浸からないようにすることができる。めっき液中では、パドル、アノードマスク、レギュレーションプレート等のめっき槽39の構成によって基板ホルダ1の厚み方向が寸法制約されるが、めっき液面WLの上方では、厚み方向の制約が緩やかであるため、配線収容部の厚み方向の寸法を十分に確保することができる。また、配線収容空間3140がほとんどめっき液に浸からないので、配線収容空間3140内へのめっき液の漏れをより確実に抑制することができる。
上記実施形態によれば、配線収容部311は、アーム部330及び挟持部312、400とは別体であるので、アーム部330、挟持部312、400、配線収容部311を別々に交換することが可能になる。特に、めっき槽39内で配線収容部311をめっき液面WLの高さ以上になるように配置する場合には、めっき液によって経年劣化が相対的に早い挟持部312、400を配線収容部311とは別に交換することが可能である。
上記実施形態によれば、コンタクト370と外部接続接点331a1、331a2との間の複数の配線Lの長さを同一にすることによって、各コンタクトに流れる電流を均一化することができ、めっき品質を向上することができる。また、各コンタクト370と外部接続接点331a1、331a2との間の経路差に起因する1又は複数のケーブルの余分な長さは、配線収容部311に収容することができる。
上記実施形態によれば、収容部本体3111を剛性の高いチタンから構成し、蓋部材3120を安価なポリ塩化ビニルから構成することで、コストを抑制しつつ配線収容部311に必要な剛性を確保することができる。
上記実施形態によれば、上記基板ホルダ1を設置するためのめっき槽39を有するめっき装置が提供される。これにより、上記作用効果を奏するめっき装置を提供することができる。特に、基板ホルダ1の厚みの増大を抑制ないし防止しつつ、配線収容空間3140内に径の大きな配線Lを配置することができるので、より均一且つ大きな電流を基板に流すことができる。これにより、より大型の基板により品質のよいめっき処理を行うことができる。また、基板ホルダ1の厚みの増大を抑制ないし防止できるので、めっき槽39の寸法が大きくなることを抑制ないし防止できる。
上記実施形態によれば、基板ホルダ1によって基板を保持した状態で基板にめっき処理するめっき方法が提供され、このめっき方法では、めっき槽39内において、基板ホルダ1の複数のコンタクト370と1又は複数の外部接続接点331aとの間の経路長に対して余分な1又は複数のケーブルの長さを収容する配線収容部が、めっき液面よりも高い位置にある状態で、前記基板にめっき処理を行う。これにより、配線収容空間3140がほとんどめっき液に浸からないようにすることができる。めっき液中では、パドル、アノードマスク、レギュレーションプレート等のめっき槽の構成によって基板ホルダの厚み方向が寸法制約されるが、めっき液面の上方では、厚み方向の寸法制約が緩やかである。このため、配線収容部と、めっき槽の構成とが干渉することを抑制ないし防止できる。また、配線収容空間3140がほとんどめっき液に浸からないので、配線収容空間3140内へのめっき液の漏れをより確実に抑制することができる。
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するもので
はない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。