JP6768395B2 - 筒形防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のエンジンマウントやトルクロッドブッシュなどに適用される筒形防振装置に関するものである。
従来から、自動車のエンジンマウントやトルクロッドブッシュなどに適用される筒形防振装置が知られている。筒形防振装置は、実公平7−46826号公報(特許文献1)の図2に示されているように、内筒と外筒を内外挿配置して、内筒の外周面と外筒の内周面をゴム筒によって弾性連結した構造を有している。
ところで、特許文献1の図2に示された従来の筒形防振装置では、軸直角方向の振動入力に対してゴム筒の圧縮ばね成分が支配的に作用する一方、軸方向の振動入力に対してゴム筒の剪断ばね成分が支配的に作用することから、軸方向のばねと軸直角方向のばねの比のチューニング自由度が制限されていた。そこで、特許文献1の図1に示されているような構造を採用すれば、軸方向のばねと軸直角方向のばねの比をより大きな自由度でチューニングすることができることが知られている。すなわち、内筒の軸方向両端部分に外周へ突出する段部を設けることにより、軸直角方向ばねの自由長を維持しながら、軸方向ばねの自由長を小さくして、軸方向ばねを硬くすることができる。
しかしながら、このような特許文献1の図1に示された構造では、耐久性を確保しながら、ばね特性のチューニング自由度を大きく得ることが難しかった。すなわち、内筒の軸方向端部に段部を設けることによって、ゴム筒の軸方向端面の径方向寸法が小さくなって、表面の自由長が小さくなることによるゴム筒の耐久性の低下が問題となる。一方、ゴム筒の耐久性を十分に確保するために、内筒における段部の突出寸法を小さくすると、ゴム筒の軸方向ばねと軸直方向ばねのばね比のチューニング自由度が十分に確保し難くなる。
また、内筒の段部を十分に大きく形成しながら、ゴム筒の軸方向端面の径方向自由長を十分に確保するために、内筒の段部を外れた軸方向中間部分の外径を小さくすると、内筒の周長が短くなることでゴム筒の内筒への固着面積が小さくなって、軸直角方向の荷重入力に対する耐荷重性能や耐久性が低下するおそれがある。さらに、内筒を小径化することなく外筒を大径化すると、筒形防振装置が大型化して、筒形防振装置を配設するためのスペースがより大きく必要になるなどのおそれもあった。
実公平7−46826号公報
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、軸方向ばねと軸直角方向ばねのばね比のチューニング自由度を大きく確保しながら、優れた耐荷重性能や耐久性を得ることができる、新規な構造の筒形防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明の第一の態様は、インナ軸部材の外周面とアウタ筒部材の内周面とが本体ゴム弾性体で連結された筒形防振装置において、前記インナ軸部材の外周面が軸直角方向の上側よりも下側が幅狭となる両側面を備えた異形状とされており、該両側面において幅狭となる方向の傾斜角度が該上側よりも該下側の方が大きくされていると共に、該両側面には該上側から該下側にまで連続して延びる溝状の凹部が形成されており、該凹部が円弧状断面を有していることを、特徴とする。
このような第一の態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、装着状態で及ぼされる軸直角方向荷重が特定方向とされるのが一般的であり、且つ当該特定方向でも荷重が両方向に同一となることは殆どないという実際の事情に着目して、軸直角方向と軸方向のばねをより同程度に近く設定しつつ、耐荷重性能や耐久性を高度に実現可能とした。
すなわち、荷重入力方向となる軸直角方向(上下方向)では、上下方向に延びるインナ軸部材の両側面で剪断ばね成分が大きく設定されるとともに、軸直角方向の入力に対する本体ゴム弾性体の実質的な自由長が凹部によって長く設定されて、軸直角方向の低ばね化が図られる。さらに、インナ軸部材の両側面を上下方向に延びる形状としたことで、本体ゴム弾性体のインナ軸部材に対する接着面積を確保して、耐久性と耐荷重性能の向上が図られる。
さらに、インナ軸部材の両側面に幅狭となる方向へ傾斜する面を設けたことにより、特に軸直角方向の入力荷重に対する適当なばね特性を、耐久性や耐荷重性能の確保と併せて効率的に設定することができる。しかも、インナ軸部材は下側が幅狭となる異形状の外周面を備えていることから、インナ軸部材の下側の両側方において本体ゴム弾性体のゴムボリュームが大きく確保されて、たとえば上向きに下向きよりも大きな荷重入力が想定される場合に、本体ゴム弾性体の下部に作用する引張応力に対して耐久性の向上が図られ得る。加えて、インナ軸部材の両側面に上下方向に対して傾斜する領域を設けることにより、それら両側面の面積を大きく確保することができて、両側面に対する本体ゴム弾性体の固着面積を大きく得ることで耐久性や耐荷重性能の向上が図られる。
さらに、インナ軸部材の両側面に上下方向へ延びる凹部を形成したことにより、インナ軸部材の実質的な小径化を回避しつつ、本体ゴム弾性体における軸方向と軸直角方向のばね比のチューニング自由度の向上が図られる。したがって、本体ゴム弾性体のインナ軸部材に対する固着面積を大きく得て耐久性や耐荷重性能を確保しながら、目的とするばね特性を効率的に得て防振性能の向上を図ることができる。
加えて、凹部が円弧状断面とされていることにより、本体ゴム弾性体の凹部への固着部分において応力の分散化などが図られて、耐久性や耐荷重性能の更なる向上が図られる。
本発明の第二の態様は、インナ軸部材の外周面とアウタ筒部材の内周面とが本体ゴム弾性体で連結された筒形防振装置において、前記インナ軸部材の外周面が軸直角方向の上側よりも下側が幅狭となる両側面を備えた異形状とされており、該両側面において幅狭となる方向の傾斜角度が該上側よりも該下側の方が大きくされていると共に、該両側面には該上側から該下側にまで連続して延びる溝状の凹部が形成されている一方、該インナ軸部材が、周方向で凸形円弧形状を有する上側端面と、周方向で左右方向に広がる平面形状を有する下側端面とを有していることを、特徴とする。
第二の態様によれば、上記[0010]〜[0013]に記載の効果に加えて、上下方向の両側で異なる入力に対して、防振効果をそれぞれ効率的に得ることができる。また、上側端面が周方向で凸形円弧形状を有していることから、上側端面の面積が大きく確保されており、本体ゴム弾性体のインナ軸部材に対する固着面積を大きく得ることも可能になる。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体には、前記インナ軸部材を軸直角方向に挟んだ上下両側に位置するすぐり部が設けられているものである。
第三の態様によれば、インナ軸部材に対する上下両側にすぐり部を形成することで、荷重入力方向となる軸直角方向(上下方向)のばね特性において、本体ゴム弾性体の圧縮ばね成分が低減されて、軸直角方向のばね定数をより小さく設定し易くなる。
本発明の第の態様は、第の態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体における上下両側の前記すぐり部が何れも軸方向に貫通して形成されていると共に、該インナ軸部材の上側に位置する該すぐり部が、該インナ軸部材の上側端面において前記両側面に設けられた前記凹部の各底部間よりも大きな左右方向幅寸法を有しており、且つ、該インナ軸部材の下側に位置する該すぐり部が、該インナ軸部材の下側端面において前記両側面に設けられた前記凹部の各底部間よりも大きな左右方向幅寸法を有しているものである。
の態様によれば、すぐり部が軸方向に貫通して形成されていることによって、上下方向の入力に対するばねをより小さく設定可能となる。しかも、各すぐり部の左右方向幅寸法が、インナ軸部材の各すぐり部に近い側の端面における凹部の底部間の距離よりも大きくされていることから、上下方向入力に対して本体ゴム弾性体の圧縮ばね成分がより効果的に低減されて、上下方向のばね定数をより小さく設定することができる。
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記インナ軸部材における前記両側面の上側の領域には、互いに平行に上下に延びる一対の対向面が設けられているものである。
の態様によれば、一対の対向面が設けられた領域において、上下方向入力に対する本体ゴム弾性体の圧縮ばね成分がより小さくなることから、ばね特性の調節自由度がより大きくなって、防振性能の更なる向上が図られ得る。
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記凹部が全長に亘って略一定の断面形状で延びているものである。
第六の態様によれば、軸直角方向(上下方向)の入力に対して、本体ゴム弾性体の実質的な自由長が効率的に長く確保されて、軸直角方向のばねを小さく設定することができる。
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記インナ軸部材が前記アウタ筒部材よりも軸方向両側に突出していると共に、該インナ軸部材における前記凹部の軸方向両端が該アウタ筒部材よりも軸方向外方に位置せしめられており、該インナ軸部材の外周面に固着された前記本体ゴム弾性体の内周部分の軸方向寸法が、該アウタ筒部材の内周面に固着された該本体ゴム弾性体の外周部分の軸方向寸法よりも大きくされているものである。
の態様によれば、凹部の軸方向寸法が大きく確保されることによって、筒形防振装置のばね特性の調節自由度をより向上させることができるとともに、耐久性や耐荷重性能の向上も図られる。また、インナ軸部材とアウタ筒部材のこじり方向の相対変位時に発揮される本体ゴム弾性体のばね特性を調節し易くなって、こじり方向の入力に対する防振性能の向上も実現可能となる。
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、溝状の前記凹部の両側壁が、前記インナ軸部材の軸方向両端部に位置して該インナ軸部材の外周上に突出する状態で設けられているものである。
の態様によれば、インナ軸部材の軸方向長さに対して凹部の溝幅を効率的に大きく設定して、本体ゴム弾性体のゴムボリュームを確保することができる。
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体の軸方向両端部が、前記インナ軸部材において外径寸法が大きくされた溝状の前記凹部の両側壁の外周面上に位置しているものである。
の態様によれば、本体ゴム弾性体のインナ軸部材に対する固着面積をより大きく得ることができて、耐久性や耐荷重性能の向上が図られる。
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記インナ軸部材の溝状の前記凹部における溝底面の傾斜角度が、溝長さ方向で異ならされているものである。
の態様によれば、凹部の溝底面の傾斜角度の大きさや傾斜角度の変化する位置などを変更することにより、インナ軸部材の外周面の形状設定を変えることなく、筒形防振装置のばね特性をチューニングすることも可能になる。
本発明によれば、荷重入力方向となる軸直角方向(上下方向)では、上下方向に延びるインナ軸部材の両側面で剪断成分が大きく設定されるとともに、上下方向の入力に対する本体ゴム弾性体の実質的な自由長が凹部によって長く設定されて、上下方向の低ばね化が図られる。さらに、インナ軸部材の両側面を上下方向に延びるように設けると共に、インナ軸部材の両側面に上下方向に対して傾斜する面を設けたことにより、特に上下方向の入力荷重に対する適当なばね特性を設定しつつ、本体ゴム弾性体のインナ軸部材に対する接着面積や自由長を確保して、耐久性と耐荷重性能の向上を図り得る。しかも、インナ軸部材の両側面に上下方向へ延びる凹部を形成したことにより、インナ軸部材の実質的な小径化を回避して、本体ゴム弾性体のインナ軸部材に対する固着面積を大きく確保できる。
本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントの正面図。 図1のII−II断面図。 図1のIII−III断面図。 図1に示すエンジンマウントを構成するインナ軸部材の斜視図。 図4のインナ軸部材を別の角度で示す斜視図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜3には、本発明に従う構造とされた筒形防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、インナ軸部材12の内周面とアウタ筒部材14の外周面が、本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは図1中の上下方向を、左右方向とは図2中の左右方向を、前後方向とは軸方向である図3中の左右方向を、それぞれ言う。
より詳細には、インナ軸部材12は、金属や合成樹脂などで形成された高剛性の部材であって、図4,5に示すように、全体として小径のロッド状とされており、軸方向に貫通するボルト孔18を備えている。また、インナ軸部材12は、図1に軸方向端面を示すように、異形断面で軸方向へ直線的に延びており、外周面が、上下で相互に離れて位置する上側端面20および下側端面22と、それら上下端面20,22をつなぐ左右の側面24,24とを、備えている。
インナ軸部材12の上側端面20は、インナ軸部材12の周方向で凸形円弧形状を有しているとともに、上方へ向けて凸となる湾曲面とされている。一方、インナ軸部材12の下側端面22は、左右方向に広がる平面形状を有しており、上下方向と略直交して広がっている。
さらに、左右の側面24,24は、上部が上下方向に略非傾斜で延びる対向面26,26とされて、左側面24の対向面26と右側面24の対向面26が左右方向で相互に対向して略平行に配置されている。また、左右の側面24,24の下部は、下方へ行くに従って左右内側へ傾斜するテーパ面28,28とされており、左右側面24,24において下方へ行くに従って幅狭となる方向の傾斜角度が、上部よりも下部で大きく設定されている。なお、本実施形態では、左右の側面24,24のテーパ面28,28が、何れも略一定の角度で傾斜する傾斜平面とされているが、左右のテーパ面28,28は、たとえば上下方向で傾斜角度が徐々に乃至は段階的に変化していても良く、必ずしも平面に限定されない。
このように、インナ軸部材12の左右両側面24,24がそれぞれテーパ面28を備えていることにより、インナ軸部材12の下部が上部よりも左右方向で幅狭とされており、インナ軸部材12の上側端面20の左右幅寸法が下側端面22の左右幅寸法よりも大きくされており、インナ軸部材12の外周面が異形状とされている。
さらに、図2および図4,5に示すように、インナ軸部材12には、左右の凹部30,30が形成されている。凹部30は、左右側面24,24に開口して上下方向に延びる溝状とされており、インナ軸部材12の上下全長に亘って略一定の断面形状で連続して形成されている。また、凹部30は、インナ軸部材12の軸方向中央部分に一つだけ形成されて、インナ軸部材12の端部付近まで広がって開口しているとともに、軸方向中央に対して対称となる円弧凹状断面とされて、インナ軸部材12の軸方向中央において最も深くなっている。さらに、凹部30の両側壁32,32は、インナ軸部材12の軸方向両端部に位置して、インナ軸部材12の外周上に突出する状態で設けられており、インナ軸部材12は、凹部30の両側壁32,32を含む軸方向両端部において外径寸法が最大とされている。
さらに、凹部30は、図1に破線で示すように、インナ軸部材12の上部では対向面26に沿って上下に延びているとともに、インナ軸部材12の下部ではテーパ面28に沿って上下に対して傾斜して延びており、溝底面34の上下方向に対する傾斜角度が、溝長さ方向で二段階に異ならされている。本実施形態では、凹部30,30の溝底面34,34においてインナ軸部材12が左右幅狭となる方向の傾斜角度が、上側よりも下側において大きくされている。また、本実施形態では、凹部30,30の溝底面34,34における傾斜角度の小さい上部の上下長さ寸法が、インナ軸部材12の外周面における対向面26,26の上下長さ寸法に比して小さく設定されており、凹部30,30における溝底面34,34の傾斜角度の変化位置が、インナ軸部材12における両側面24,24の傾斜角度の変化位置(対向面26とテーパ面28の境界)よりも上側に位置している。
一方、アウタ筒部材14は、金属や合成樹脂で形成された高剛性の部材であって、薄肉大径の略円筒形状を有している。また、アウタ筒部材14は、軸方向の長さがインナ軸部材12よりも小さくされているとともに、軸方向の長さがインナ軸部材12に形成された凹部30の軸方向幅よりも更に小さくされている。
そして、インナ軸部材12がアウタ筒部材14に挿通されて、それらインナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、大径の筒状とされており、内周面がインナ軸部材12の外周面に加硫接着されているとともに、外周面がアウタ筒部材14の内周面に加硫接着されている。
さらに、本体ゴム弾性体16の軸方向両端面は、内周側へ向けて軸方向外側へ傾斜する傾斜端面36をそれぞれ有しており、本体ゴム弾性体16が傾斜端面36,36の内周端部において外周端部よりも軸方向に厚肉とされている。また、本体ゴム弾性体16の左右内面は、軸方向両端部38,38がインナ軸部材12の凹部30を軸方向外側に外れた部分、換言すれば、溝状とされた凹部30,30の両側壁32,32の外周面に固着されているとともに、軸方向中間部分がインナ軸部材12の凹部30の内面に固着されて、左右内方へ凸の円弧状湾曲面とされている。
更にまた、図2に示すように、本体ゴム弾性体16において、凹部30,30の内面を含むインナ軸部材12の外周面に固着された内周部分の軸方向寸法L1 は、アウタ筒部材14の内周面に固着された外周部分の軸方向寸法L2 よりも大きくされている。要するに、インナ軸部材12がアウタ筒部材14よりも軸方向寸法を大きくされているとともに、インナ軸部材12における凹部30,30の開口部の軸方向寸法が、アウタ筒部材14の軸方向寸法よりも大きくされている。なお、インナ軸部材12は、軸方向両端部がそれぞれアウタ筒部材14よりも軸方向外側へ突出して配置されており、凹部30,30の軸方向両端部が何れもアウタ筒部材14より軸方向外側に位置している。
さらに、本体ゴム弾性体16には、上すぐり部40が形成されている。上すぐり部40は、インナ軸部材12よりも上側で本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通しており、上下寸法に比して左右寸法が大きくされた扁平形状の孔断面を有している。更にまた、図1に示すように、上すぐり部40の左右幅寸法W1 は、インナ軸部材12の上側端面20における左右の凹部30,30の各底部間の距離D1 よりも大きくされており、本実施形態ではインナ軸部材12の上側端面20における凹部30,30を外れた部位での左右幅寸法よりも大きくされている。
更にまた、本体ゴム弾性体16には、下すぐり部42が形成されている。下すぐり部42は、インナ軸部材12よりも下側で本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通しており、上下寸法に比して左右寸法が大きくされた扁平形状の孔断面を有している。更にまた、下すぐり部42の左右幅寸法W2 は、インナ軸部材12の下側端面22における左右の凹部30,30の各底部間の距離D2 よりも大きくされており、本実施形態ではインナ軸部材12の下側端面22における凹部30,30を外れた部位での左右幅寸法よりも大きくされている。
要するに、本体ゴム弾性体16に形成された上すぐり部40と下すぐり部42は、インナ軸部材12を上下方向に挟んだ上下両側に配置されており、それら上下のすぐり部40,42によって、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の上下間における本体ゴム弾性体16の圧縮が回避されている。なお、上すぐり部40の左右幅寸法W1 は、下すぐり部42の左右幅寸法W2 よりも大きくされている。
さらに、本体ゴム弾性体16に上すぐり部40が形成されることにより、上すぐり部40の上側には、本体ゴム弾性体16と一体形成された上ストッパゴム44が設けられている。上ストッパゴム44は、アウタ筒部材14の内周面に固着されて、上すぐり部40を介してインナ軸部材12と上下に対向配置されているとともに、インナ軸部材12と対向する上すぐり部40側の面に軸方向へ延びる複数の溝が形成されて、上ストッパゴム44の緩衝性能の向上が図られている。
更にまた、本体ゴム弾性体16に下すぐり部42が形成されることにより、下すぐり部42の下側には、本体ゴム弾性体16と一体形成された下ストッパゴム46が設けられている。下ストッパゴム46は、アウタ筒部材14の内周面に固着されて、下すぐり部42を介してインナ軸部材12と上下に対向配置されているとともに、インナ軸部材12と対向する下すぐり部42側の面に軸方向へ延びる複数の溝が形成されて、下ストッパゴム46の緩衝性能の向上が図られている。なお、下ストッパゴム46は、図1,3に示すように、突出先端部分が基端部分よりも軸方向寸法を小さくされた段付き形状とされている。
このような構造とされたエンジンマウント10は、例えば、インナ軸部材12がボルト孔18に挿通される図示しないボルトによって同じく図示しないパワーユニットに取り付けられるとともに、アウタ筒部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられる。これにより、エンジンマウント10は、車両に装着されて、パワーユニットを車両ボデーに対して防振連結するようになっている。かかる車両への装着状態において、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の間に荷重(振動)が入力されると、本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられて、本体ゴム弾性体16の内部摩擦に基づくエネルギー損失作用などによって、車両ボデーへの伝達振動が低減される。なお、インナ軸部材12とアウタ筒部材14は、必ずしもパワーユニットと車両ボデーに直接取り付けられなくてもよく、図示しないブラケットなどを介して間接的に取り付けられるようにすることもできる。
さらに、上下方向に大きな荷重が入力されて、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が相対的に大きく変位すると、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が上ストッパゴム44又は下ストッパゴム46を介して間接的に当接することにより、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の上下相対変位量を制限する軸直ストッパが構成されるようになっている。特に本実施形態では、より大きな荷重の入力が想定される上側において、インナ軸部材12の上側端面20が周方向に湾曲する湾曲面とされているとともに、上ストッパゴム44の軸方向寸法が大きくされており、上側の軸直ストッパにおけるストッパ当接面積が大きく確保されることで、耐荷重性能の向上が図られている。一方、上側に比して小さな荷重の入力が想定される下側では、インナ軸部材12の下側端面22が平面とされているとともに、下ストッパゴム46の先端部分の軸方向寸法が小さくされており、インナ軸部材12と下ストッパゴム46の当接初期の衝撃が低減されることで、良好な乗り心地などが実現されるようになっている。
ここにおいて、エンジンマウント10は、前後方向(軸方向)の入力に対するばね定数と、上下方向(軸直角方向)の入力に対するばね定数とがより近い数値に設定可能とされており、前後方向のばね定数と上下方向のばね定数の比を略1に設定することも可能とされている。すなわち、エンジンマウント10では、インナ軸部材12の左右両側面24,24に上下方向へ延びる凹部30,30が形成されているとともに、本体ゴム弾性体16が凹部30,30に入り込んでインナ軸部材12に固着されている。これにより、上下方向の入力に対して、本体ゴム弾性体16の実質的な左右自由長が大きくされて、上下方向のばね定数が小さく設定されているとともに、前後方向の入力に対して、本体ゴム弾性体16の実質的な左右自由長が小さくされて、前後方向のばね定数が小さくなるのが防止されている。その結果、上下方向のばね定数と前後方向のばね定数の差が小さくなって、それらばね定数の比を1に近づけて設定することが可能となっている。
さらに、凹部30がインナ軸部材12の上下全長に亘って連続して形成されているとともに、凹部30が全長に亘って略一定の断面形状で延びていることにより、上下方向の入力に対して、本体ゴム弾性体16の長い自由長が有効に設定されて、上下方向のばねを小さく設定することができる。
しかも、インナ軸部材12の凹部30における溝底面34の傾斜角度が溝長さ方向で異ならされていることにより、凹部30の溝底面34の傾斜角度の大きさや傾斜角度の変化点の上下位置などを変更することにより、インナ軸部材12の外周面の形状設定を変えることなく、エンジンマウント10のばね特性をチューニングすることも可能になる。特に本実施形態では、インナ軸部材12の外周面における対向面26,26の上下長さ寸法に比して、凹部30,30の溝底面34,34の上下長さ寸法が小さく設定されていることによって、ばね特性がチューニングされている。
更にまた、溝状とされた凹部30の両側壁32,32が、インナ軸部材12の軸方向両端部に位置してインナ軸部材12の外周上に突出する状態で設けられていることから、インナ軸部材12の軸方向長さに対して凹部30の溝幅寸法を大きく設定することができて、本体ゴム弾性体16のゴムボリュームを確保することができる。それゆえ、本体ゴム弾性体16において、ばね特性のチューニング自由度の向上や耐久性の向上などが有利に図られる。
さらに、インナ軸部材12の左右側面24,24が上下に延びていることにより、上下方向の入力に対して、インナ軸部材12の左右側面24,24に固着される本体ゴム弾性体16の剪断ばね成分が支配的に作用して、上下方向の低ばね化が図られる。しかも、インナ軸部材12の左右側面24,24の上部が、上下方向に広がる対向面26,26とされていることから、上下方向の入力に対して本体ゴム弾性体16の剪断ばね成分がより支配的となって、上下方向のばね定数をより小さく設定可能とされている。
さらに、本実施形態では、インナ軸部材12を上下方向に挟んだ両側に上すぐり部40と下すぐり部42が形成されていることから、上下方向の入力時に本体ゴム弾性体16の圧縮ばねが低減されている。特に本実施形態では、上すぐり部40の左右幅寸法W1 が、インナ軸部材12の上側端面20における左右の凹部30,30の底部間距離D1 よりも大きくされているとともに、下すぐり部42の左右幅寸法W2 が、インナ軸部材12の下側端面22における左右の凹部30,30の底部間距離D2 よりも大きくされており、上下方向の入力に対する本体ゴム弾性体16の圧縮ばねが効率的に低減されている。これにより、上下方向のばね定数がより小さく設定されており、前後方向と上下方向のばね比をより大きな自由度で調節することができる。
また、インナ軸部材12の左右側面24,24が上下に延びる形状とされていることにより、それら左右側面24,24における本体ゴム弾性体16のインナ軸部材12への接着面積が大きく確保されて、耐久性と耐荷重性能の向上が図られる。しかも、インナ軸部材12の左右側面24,24の下部がテーパ面28,28とされていることにより、それら左右側面24,24の面積が大きく確保されて、左右側面24,24に対する本体ゴム弾性体16の固着面積を大きく得ることで、耐久性や耐荷重性能の向上が図られる。
さらに、インナ軸部材12の左右側面24,24に上下方向へ延びる凹部30,30を形成したことにより、本体ゴム弾性体16における軸方向と軸直角方向のばね比のチューニング自由度の向上を図りつつ、インナ軸部材12の実質的な小径化を回避することができる。それゆえ、目的とする防振性能を有利に得ながら、本体ゴム弾性体16のインナ軸部材12に対する固着面積を十分に得ることができて、耐久性や耐荷重性能の向上を図ることができる。特に本実施形態では、凹部30,30の軸方向寸法が大きく確保されているとともに、本体ゴム弾性体16のインナ軸部材12に対する固着部分の軸方向寸法L1 が、本体ゴム弾性体16のアウタ筒部材14に対する固着部分の軸方向寸法L2 よりも大きくされている。それゆえ、エンジンマウント10のばね特性の調節をより大きな自由度で実現しつつ、耐久性や耐荷重性能の向上も有利に実現することができる。
しかも、本体ゴム弾性体16の軸方向両端部38,38が凹部30の両側壁32,32の外周面上に位置していることから、本体ゴム弾性体16のインナ軸部材12に対する固着面積をより大きく得ることができて、耐久性や耐荷重性能の向上が図られる。
更にまた、凹部30,30の内面が略円弧状断面を呈する湾曲面とされていることから、本体ゴム弾性体16の凹部30,30への固着部分において応力の分散化も図られ得る。
また、インナ軸部材12がアウタ筒部材14よりも軸方向両側に突出していると共に、インナ軸部材12における凹部30,30の軸方向両端がアウタ筒部材14よりも軸方向外方に位置せしめられている。これにより、インナ軸部材12とアウタ筒部材14のこじり方向の相対変位時に発揮される本体ゴム弾性体16のばね特性を調節し易くなっており、こじり方向の入力に対する防振性能の向上も実現できる。
また、本実施形態のエンジンマウント10では、車両装着状態で入力される上下方向の荷重において、上向きの荷重が下向きの荷重よりも大きくなることが想定されている。かかる上下方向の荷重の大小を考慮して、エンジンマウント10では、インナ軸部材12の上側端面20が、下側端面22よりも左右方向の幅寸法を大きくされている。これにより、上向きの荷重入力時に引張応力が集中的に作用する本体ゴム弾性体16の下端部(下すぐり部42の左右端部の上側)において、インナ軸部材12で拘束されることなく弾性変形を許容される領域が大きく確保されて、本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が図られている。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、インナ軸部材12の左右側面24,24は、上下に非傾斜で延びる対向面26,26を備える構造に限定されるものではなく、左右側面24,24の全体が下方へ向かって左右内側へ傾斜する傾斜面とされているとともに、左右側面24,24における下部の傾斜角度が上部の傾斜角度よりも大きくされていても良い。
さらに、インナ軸部材12の左右側面24,24に形成される凹部30,30は、全長に亘って深さ寸法や断面形状などが一定である必要はなく、要求される防振特性や耐荷重特性、耐久性などを考慮して、長さ方向で深さ寸法や断面形状などが変化するようにしても良い。さらに、凹部30,30は、前記実施形態のようにインナ軸部材12の上下方向全長に亘って形成される他、たとえば、上下方向の端部に向かって次第に浅底となる溝形状とされて、上下方向の端部では実質的に消失している構造なども採用され得る。
更にまた、凹部30,30の断面形状は、円弧状断面が望ましいが適宜に変更可能であり、たとえば、矩形断面や軸方向中央に向けて段階的に深くなる多段底形状を有する断面、底面が傾斜平面で構成されて軸方向中央に向けて徐々に深くなる傾斜底形状を有する断面などを採用することもできる。さらに、凹部30,30は、インナ軸部材12の軸方向中央に対して軸方向の何れか一方側へ偏倚した位置に形成することも可能である。
また、インナ軸部材12の上側端面20および下側端面22の具体的な形状は、特に限定されるものではなく、たとえば、それら上側端面20と下側端面22の少なくとも一方に左右方向へ延びる凹溝を形成しても良い。
また、前記実施形態では、アウタ筒部材14が略円筒形状とされているが、たとえば、楕円筒形状や多角筒形状のアウタ筒部材を備える筒形防振装置に本発明を適用することもできる。
また、筒形防振装置の上下方向は、必ずしも鉛直上下方向を意味するものではなく、たとえば、筒形防振装置の軸方向が鉛直上下方向となるようにしても良いし、主たる荷重の入力方向である筒形防振装置の上下方向が、車両の前後方向や左右方向となるようにしても良い。
本発明に係る筒形防振装置は、エンジンマウントにのみ適用されるものではなく、たとえば、サブフレームマウントやサスペンションブッシュ、トルクロッドブッシュなどにも適用することができる。さらに、本発明の適用範囲は、自動車用の筒形防振装置に限定されるものではなく、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両などに用いられる筒形防振装置にも好適に適用され得る。
10:エンジンマウント(筒形防振装置)、12:インナ軸部材、14:アウタ筒部材、16:本体ゴム弾性体、20:上側端面、22:下側端面、24:側面、26:対向面、28:テーパ面、30:凹部、32:側壁、34:溝底面、38:本体ゴム弾性体の軸方向両端部、40:上すぐり部、42:下すぐり部

Claims (10)

  1. インナ軸部材の外周面とアウタ筒部材の内周面とが本体ゴム弾性体で連結された筒形防振装置において、
    前記インナ軸部材の外周面が軸直角方向の上側よりも下側が幅狭となる両側面を備えた異形状とされており、該両側面において幅狭となる方向の傾斜角度が該上側よりも該下側の方が大きくされていると共に、該両側面には該上側から該下側にまで連続して延びる溝状の凹部が形成されており、該凹部が円弧状断面を有していることを特徴とする筒形防振装置。
  2. インナ軸部材の外周面とアウタ筒部材の内周面とが本体ゴム弾性体で連結された筒形防振装置において、
    前記インナ軸部材の外周面が軸直角方向の上側よりも下側が幅狭となる両側面を備えた異形状とされており、該両側面において幅狭となる方向の傾斜角度が該上側よりも該下側の方が大きくされていると共に、該両側面には該上側から該下側にまで連続して延びる溝状の凹部が形成されている一方、該インナ軸部材が、周方向で凸形円弧形状を有する上側端面と、周方向で左右方向に広がる平面形状を有する下側端面とを有していることを特徴とする筒形防振装置。
  3. 前記本体ゴム弾性体には、前記インナ軸部材を軸直角方向に挟んだ上下両側に位置するすぐり部が設けられている請求項1又は2に記載の筒形防振装置。
  4. 前記本体ゴム弾性体における上下両側の前記すぐり部が何れも軸方向に貫通して形成されていると共に、
    該インナ軸部材の上側に位置する該すぐり部が、該インナ軸部材の上側端面において前記両側面に設けられた前記凹部の各底部間よりも大きな左右方向幅寸法を有しており、且つ、
    該インナ軸部材の下側に位置する該すぐり部が、該インナ軸部材の下側端面において前記両側面に設けられた前記凹部の各底部間よりも大きな左右方向幅寸法を有している請求項に記載の筒形防振装置。
  5. 前記インナ軸部材における前記両側面の上側の領域には、互いに平行に上下に延びる一対の対向面が設けられている請求項1〜の何れか一項に記載の筒形防振装置。
  6. 前記凹部が全長に亘って略一定の断面形状で延びている請求項1〜5の何れか一項に記載の筒形防振装置。
  7. 前記インナ軸部材が前記アウタ筒部材よりも軸方向両側に突出していると共に、該インナ軸部材における前記凹部の軸方向両端が該アウタ筒部材よりも軸方向外方に位置せしめられており、該インナ軸部材の外周面に固着された前記本体ゴム弾性体の内周部分の軸方向寸法が、該アウタ筒部材の内周面に固着された該本体ゴム弾性体の外周部分の軸方向寸法よりも大きくされている請求項1〜の何れか一項に記載の筒形防振装置。
  8. 溝状の前記凹部の両側壁が、前記インナ軸部材の軸方向両端部に位置して該インナ軸部材の外周上に突出する状態で設けられている請求項1〜の何れか一項に記載の筒形防振装置。
  9. 前記本体ゴム弾性体の軸方向両端部が、前記インナ軸部材において外径寸法が大きくされた溝状の前記凹部の両側壁の外周面上に位置している請求項1〜の何れか一項に記載の筒形防振装置。
  10. 前記インナ軸部材の溝状の前記凹部における溝底面の傾斜角度が、溝長さ方向で異ならされている請求項1〜の何れか一項に記載の筒形防振装置。
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