JP6768298B2 - X線ct装置、シフト位置補正方法及びシフト位置補正プログラム - Google Patents

X線ct装置、シフト位置補正方法及びシフト位置補正プログラム Download PDF

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Description

本願発明は、X線CT装置、特に、X線源のシフトを補正するX線CT装置に関する。
X線CT装置に適用されるX線管装置は、陰極と陽極との間に高電圧を印加して、陰極から放出された電子ビームを加速させてターゲットとなる陽極面で衝突させることでX線を発生させている。加速された電子ビームのエネルギーの一部はX線に変換されるものの、残りの殆どは熱に変換されるため、この熱により陽極が加熱されて熱膨張する。このため、X線の発生点となる陽極表面の位置が熱膨張により変動し、X線照射位置が変動する。
また、近年、X線管装置の回転速度の高速化が進んでおり、回転速度の高速化に伴う遠心力等の外力によってもX線照射位置が変動する。
これらX線発生点の変動、すなわちX線照射位置の変動により、照射されたX線は検出器において適正な検出位置からずれて検出されるため、検出器で取得する投影データの計測誤差となる。この計測誤差は、再構成後に得られる断層画像上にアーティファクト(偽像)を生じさせ、画質を劣化させる原因となる。断層画像上にアーティファクトが生じて画質が劣化した場合、診断性能を著しく劣化させるので、X線照射位置の変動を補正し低減させる必要がある。このため、X線照射位置の変動補正する技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、シフト専用検出器を設けると共に、検出器の一部の検出素子をシフト検出のために用いることができるようにしたX線CT装置が開示されている。特許文献1のX線CT装置では、X線ビームが被検体に遮られる場合等、検出器の一部を用いてシフト検出を行うと正確にシフト検出ができない場合に、シフト専用検出器を用いてシフトを検出し、シフト補正を行っている。
特開2010−115354号公報
しかしながら、上述した特許文献1のX線CT装置では、X線ビームが被検体に遮られる場合のシフトを検出するために、シフト専用検出器を設けているので部品点数が増加し、製造コストが嵩む。
また、X線ビーム及び検出器だけでなく、シフト専用検出器についても最適な位置関係となるように高精度な位置調整を行う必要があり、煩雑な工程が必要となる。さらに、位置関係がずれた場合には、ビーム位置検出にずれが生じて適切な位置にシフト補正が行われず、画質劣化や無効被曝を生じる可能性がある。
さらに、シフト検出器が検出器から離れた位置に設けられていることから、両者に照射されるX線ビームが異なるため、検出結果にばらつきが生じ、制御精度が十分に得られない場合があり、画質劣化や無効被曝を生じる虞がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、部品点数を削減して位置調整等の煩雑な工程を低減させ、X線ビームが遮られて減弱した場合でも正確にシフト補正を行い、画質劣化や無効被曝を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、被検体に対してX線を照射するX線源と、複数チャンネル分の検出素子を有し、前記被検体を透過したX線を検出して検出信号を出力する検出器と、 複数チャネル分の前記検出素子のうち、チャンネル方向端部にシフト検出のために割り当てられた少なくとも1チャンネル分の検出素子を、スライス方向に第1領域及び第2領域に分け、第1領域の検出素子及び第2領域の検出素子によりそれぞれ出力された前記検出信号に基づいて、前記X線源により照射するX線の前記基準照射位置からのシフト位置を算出するシフト位置算出部と、前記シフト位置が所定の範囲内にあるか否かを判定する判定部と、前記判定部により、前記シフト位置が所定の範囲内であると判定された場合には、前記シフト位置に基づく補正に従ってX線の照射位置を補正し、前記シフト位置が所定の範囲内にないと判定された場合には予め定めた干渉補正値に従ってX線の照射位置を補正する補正処理部と、を備えるX線CT装置を提供する。
本発明によれば、部品点数を削減して位置調整等の煩雑な工程を低減させ、X線ビームが遮られて減弱した場合でも正確にシフト補正を行い、画質劣化や無効被曝を抑制することができる。
本発明の第1の実施形態に係るX線CT装置の概略を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態に係るX線CT装置におけるX線源、コリメータ、検出器の関係を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係るX線CT装置のスキャナ制御部の一部の概略を示すブロック図である。 X線源に対するシフト補正及び熱伸びの予測特性を示すグラフである。 X線源に対するシフト補正の様子を示すグラフであり、(A)は干渉補正を行っていない場合の例を、(B)は干渉補正を行った場合の例を示す。 本発明の第1の実施形態に係るX線CT装置において、シフト補正の動作を示すフローチャートである。 X線源に対するシフト補正の様子を示すグラフであり、(A)は累積補正を行っていない場合の例を、(B)は累積補正を行った場合の例を示す。 本発明の第2の実施形態に係るX線CT装置のスキャナ制御部の一部の概略を示すブロック図である。 本発明の第2の実施形態に係るX線CT装置において、シフト補正の動作を示すフローチャートである。 X線源に対する微小なずれが生じているかを判定するための閾値と微小なずれとの関係を示すグラフである。 本発明の第3の実施形態に係るX線CT装置において、シフト補正の動作を示すフローチャートである。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
本実施形態に係るX線CT装置は、図1に示すように、スキャナ2、寝台3、操作ユニット4及び表示部5を備えている。X線CT装置は、寝台3上の被検体6をスキャナ2の開口部に搬入してスキャンすることにより、被検体6透過後の透過X線データを取得する。
操作ユニット4は、入出力部41、システム制御部42及び画像演算部43、を備えている。操作ユニット4は、スキャナ2に接続され、スキャナ2の設定や撮影、或いは画像の再構成及び表示に関する各種操作及び処理を実行する。
入出力部41は、例えば、キーボード、マウス、テンキー等の入力装置、及び各種スイッチボタン等により構成され、操作者によって入力される各種の指示や情報をシステム制御部42に出力する。操作者は、表示部5及び入出力部41を使用してX線CT装置1を操作することができるようになっている。
システム制御部42は、図示しないCPU及びROM等のメモリを含むものであり、X線CT装置の全体を制御する。なお、ROM等のメモリは、ハードディスク等を適用することができ、システム制御部42の制御により、画像演算部43によって作成された画像や、入出力部41から入力された撮影条件、その他のデータや、各種処理を実行するためのプログラム等を記憶している。
画像演算部43は、システム制御部42の制御によってスキャナ2内の検出器24が収集した透過X線データを取得し、スキャノグラム画像や、断層像を再構成する。
表示部5は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置を適用することができる。表示部5は、画像演算部43から出力される再構成画像やスキャノグラム画像、並びにシステム制御部42が取り扱う種々の情報を表示する。
スキャナ2は、X線源21、スキャナ制御部22、コリメータ23、検出器24及び回転板26を備えている。
X線源21は、スキャナ制御部22により制御され、被検体6に対してX線ビームを連続的または断続的に照射する。X線源21から照射されるX線ビームはチャネル方向(回転板26の回転方向)及びスライス方向(被検体の体軸方向)に所定角度の広がりを持つファンビームである。
コリメータ23は、X線源21から放射されたX線ファンビームを、所定のスライス厚に成形するものであり、図2に示すように、複数の羽根23a,23bにより構成される。複数の羽根23a,23bは、X線照射経路の一部または全部を遮断するように設けられるものであり、コリメータ23の羽根23a、23bの位置は、スキャナ制御部22により制御される。
本実施の形態では、コリメータ23は、シフト位置の補正機構として機能する。すなわち、スキャナ制御部22から入力される、X線ビームのシフト位置の補正信号に基づいて、コリメータ23の羽根23a、23bの位置がスライス方向(体軸方向)に移動され、X線ビームの照射位置が最適な位置に移動される。
検出器24は、図1及び図2に示すように、被検体6を介してX線源21に対向するように配置される。検出器24には、例えばシンチレータとフォトダイオードとにより構成される複数の検出素子が、チャネル方向及びスライス方向の2次元に配置されている。具体的には、複数チャネル分の検出素子が、チャネル方向に例えば1〜1000個程度、スライス方向に例えば1〜1000個程度配列されており、これらの複数の検出素子は全体として円筒面状もしくはチャネル方向に折れ線状に湾曲したX線入射面を形成している。各検出素子は被検体6を透過したX線量(透過X線データ)を検出し、検出した透過X線データをスキャナ制御部に出力する。
また、検出器24の検出素子のうち、一端側または両端側の、少なくとも1チャネル分の検出素子が、X線ビーム位置のシフト検出用に割り当てられる。本実施の形態においては、一端側のチャネルをシフト検出チャネル24aとする。
検出器24の各検出素子により検出される透過X線データは、図示しないデータ収集部に収集され、スキャナ制御部22を介して操作ユニット4の画像演算部43に出力される。
スキャナ制御部22は、上述したX線源21、コリメータ23、検出器24、回転板26等を制御する。スキャナ制御部22は、スキャナ2によって被検体6を撮影(計測)する際に、X線ビームのシフト位置の検出及び補正処理を行う。このため、スキャナ制御部22は、図3に示すように、検出信号処理部221、シフト位置算出部222、判定部(以下、干渉判定部という)223及び補正処理部224を備えている。
なお、スキャナ制御部22に含まれる各部の機能は、演算装置22が有する図示しないCPUが予めROM等に格納されたプログラムを読み込んで実行することによりソフトウエアとして実現することができる。また、演算装置22に含まれる各装置が実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)やFPGA(field-programmable gate array)により実現することもできる。
検出信号処理部221は、検出器24からの出力データである透過X線データからシフト検出チャネル24aからの出力データを抜き出して、シフト位置算出部222に出力する。具体的には、本実施形態においては、検出器24のチャネル1ch側の一部のチャネルをシフト検出チャネル24aとし、シフト検出チャネル24aの出力データをシフト位置算出部222に出力する。
シフト位置算出部222は、シフト検出チャネル24aからの出力データを処理することにより、シフト位置を算出する。ここでシフト位置とは、X線源によるX線ビームの照射中心からのシフト量に対応している。X線の照射量は、照射中心で最大となり、外側に向かって減衰するものであるので、シフト位置算出部222は、X線の照射中心を基準照射位置とし、この基準照射位置からのシフト位置を算出する。このためシフト検出チャネル24aをスライス方向に第1領域、第2領域に分け、各領域の検出素子の検出値をもとにシフト量を算出する。例えば、シフト検出チャネル24aの1スライス〜M/2スライスの第1領域の各検出素子の検出値の和と、M/2スライス〜Mスライスの第2領域の各検出素子の検出値の和とを算出する。シフト検出チャネル24aの第1及び第2の各領域の出力データの差分が、照射中心、すなわち基準照射位置からのシフト量に対応するので、の差分をシフト位置として算出し、図示しない記憶装置等に記憶すると共に、干渉判定部223に出力する。
干渉判定部223は、シフト位置算出部222により算出されたシフト位置が所定の範囲内にあるか否かを判定する。干渉判定部223において、シフト位置が所定の範囲内にないと判定された場合には、X線源21と検出器24との間にX線を減弱させる干渉があるものとみなす。
ここで、上述した通り、X線源21では、熱により陽極が膨張して陽極表面の位置が変動し、X線照射位置(照射中心)が変動(シフト)する。このため、熱膨張に起因するシフトを補正するために、例えば、X線源21の回転毎や、角度(ビュー)毎にシフト位置を補正している。
図4に、X線源21と検出器24との間にX線を減弱させる干渉がない場合での、シフト補正のグラフを示す。図4においては、シフト位置算出部222によるシフト位置を縦軸とし、X線源の回転数を横軸とし、陽極の熱膨張に起因するシフト位置の変動を補正する様子が理解できる。
ここで、図4中の予測特性直線とは、X線源21の曝射履歴や次の撮影における撮影条件、X線照射量、過去の撮影中に得られたシフト位置に基づく補正値等に基づいて算出されるシフト位置を予測した予測特性を示すデータである。また、閾値Th1及び閾値Th2は、X線照射位置が、これら閾値を超える又は下回る、つまり、閾値Th1から閾値Th2の範囲外となった場合には、X線CT装置の性能を発揮することができず、画像上にリングが生じる等画質の劣化を生じさせる上限又は下限を示す値である。
X線源21と検出器24との間にX線を減弱させる干渉がある場合には、図4のようなシフト補正を実現することができないため、干渉判定部223はシフト位置算出部222により算出されたシフト位置に基づいて、干渉の有無を判定する。
図5(A)及び(B)に示すように、干渉がある場合には、シフト検出チャネル24aにおける出力データの減弱が、干渉がない場合に比して大きくなる。このため、シフト位置算出部222によって得られるシフト位置は干渉に起因して基準照射位置から大きく離れた位置となる。
ところが、実際のX線源21のシフト位置はシフト位置算出222による算出結果と乖離している。したがって、干渉判定部223において、干渉がある場合にはこれを加味したシフト補正を行うために、閾値Th1から閾値Th2の範囲内に収まる、干渉判定閾値の上限値Th3及び下限値Th4(図5(B)参照)を適宜設定して、干渉の有無を判定する。
補正処理部224は、干渉判定部223により、干渉がないと判定された場合にはシフト位置に基づく補正値に従ってX線の照射位置を補正し、干渉があると判定された場合には予め定めた干渉補正値に従ってX線の照射位置を補正する。
つまり、干渉判定部による判定結果が判定なしの場合には、シフト位置に基づく補正値を算出する。また、干渉判定部による判定結果が判定ありの場合には、予め定めた干渉補正値に基づいて補正値を算出する。
ここで、シフト補正に基づく補正値は、シフト位置算出部222で算出されたシフト位置、つまり、シフト検出チャネル24aの1スライス〜M/2スライスの第1領域の各検出素子の検出値の和と、M/2スライス〜Mスライスの第2領域の各検出素子の検出値の和との差分がゼロに近づくような値である。
干渉補正値は、例えば、X線源21の曝射履歴や次の撮影における撮影条件、X線照射量、過去の撮影中に得られたシフト位置に基づく補正値等に基づいて算出されるシフト位置を予測した予測特性を示すデータ(図4の予測特性直線等)から予め定められた値とすることができる。干渉補正値は、このような種々の条件から得られるデータに基づいて、干渉がなかったと仮定し、熱膨張だけの場合にはこの程度シフトしているであろうと予測されるシフト位置を補正するための値である。具体的には、干渉補正値は、予め実験により又は計算により求め、これを補正処理部224に記憶しておいても、図示しない記憶装置に記憶しておくことができる他、補正処理部224が適宜読み込んでもよい。
また、干渉補正値として、直前の処理においてシフト位置算出部222により算出されたシフト量やシフト位置に基づく補正値を適用してもよい。
また、本実施形態においては、算出した補正値に基づいて、コリメータ23の位置を制御し、検出器24の中心とX線ビームの中心とが一致するように、又は、X線ビームの中心が検出器24の中心から所定の範囲内に収まるようにX線照射位置を補正する。
このように構成されたX線CT装置における、X線ビームのシフト補正処理の流れを、図6のフローチャートに従って説明する。
図6に示すように、X線CT装置において、撮影(計測)が開始されると、同時にX線照射位置(X線ビーム)のシフト位置算出及び補正処理が開始される。ステップS11で、スキャナ制御部22が、X線源21の回転における位置を示す、VN(ビューナンバー)を読み込む。ステップS12では、シフト位置算出部222により、先のステップS11で読み込んだVNにおけるシフト位置の算出を行う。すなわち、シフト位置算出部222が、検出信号処理部221から、検出器24のシフト検出チャネル24aの出力データ(Mスライス分の各検出素子からの出力データ)を取得し、これらの出力データに基づいてシフト位置を算出する。
ステップS13では、干渉判定部223が、シフト位置算出部222により算出されたシフト位置が、閾値の範囲内にあるか否かを判定する。つまり、例えば、シフト位置が、図5(B)に示す干渉判定閾値Th3から干渉判定閾値Th4の間に入るか否かを判定する。
干渉判定部223は、シフト位置が閾値の範囲内にある場合には、干渉がないと判定し、ステップS14に進み、補正処理部224が、シフト位置に基づく補正値を適用することを決定する。干渉判定部223は、シフト位置が閾値の範囲内にない場合には、干渉があると判定し、ステップS15に進み、補正処理部224が干渉補正値を適用することを決定する。
ステップS16では、補正処理部224が、ステップS14又はステップS15において決定した補正値に基づいて補正処理を行う。
以上説明したように、本実施の形態にかかるX線CT装置では、X線源21から照射され被検体を透過したX線を検出して検出信号を出力する検出器24の少なくとも1チャネル分の検出素子をシフト位置検出のためのシフト検出チャネル24aとして割り当てる。そして、このシフト検出チャネル24aの出力データに基づいて、X線ビームのシフト位置を算出し、算出したシフト位置に基づいて、コリメータ23等の位置を制御することによりX線ビームの照射位置を補正する。
この場合において、算出したシフト位置に基づいて、X線源21と検出器24との間にX線を減弱させる干渉があるか否かを判定し、判定結果に応じて補正処理を行う。特に、干渉がある場合には、シフト検出チャネル24aにおける出力データ上は、X線の大きな減弱が発現しており、X線源21のX照射位置が、あたかも基準照射位置から大きく離れた位置にシフトしたかのようにみえる。しかしながら、このX線の減弱はあくまでも干渉に起因するものであることから、実際のX線源21のシフト位置はシフト位置算出222による算出結果と乖離している。
したがって、干渉判定部223による判定結果に応じた補正値を決定し、これに従って補正処理を行う。このようにすることで、シフト専用検出器を設ける必要がなく、部品点数を削減することができ、部品点数に応じた位置調整等の煩雑な工程を低減させることができる。また、X線ビームが遮られて減弱した場合でも正確にシフト補正を行い、画質劣化や無効被曝を抑制することができる。
また、シフト位置を補正する手段としては、コリメータ23を用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、検出器24を移動させたり、X線源21(X線管球)の位置を移動させたり、或いは磁場を発生させてX線ビームを所定方向へ屈曲させたりする等種々の手法により実現することができる。
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。例えば、補正処理部における補正処理が、都度微小な値に基づく補正である場合等には、単位時間当たりのシフト量が補正量よりも大きいことが考えられる。このような状態が連続すると、累積的にシフト位置がずれ、図7(A)に示すように、累積的に位置ずれを生じさせ、シフト位置が基準照射位置から離れていく傾向を示す。
そこで、本実施形態かかるX線CT装置は、図8に示すように、累積的なシフトが生じているかを検出する累積シフト検出部225を設けて、累積的なシフトを補正している(図7(B)参照)。なお、本実施形態において、上述した第1の実施形態と同一のものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
累積シフト検出部225は、シフト位置算出部によりシフト位置を検出し、干渉判定部により干渉を判定し、補正処理部によりシフト位置を補正する処理を繰り返し行った場合に累積的なシフトが生じているかを検出する。このため、まず、累積シフト検出部225は、前回の処理においてシフト位置算出部222により算出された前回シフト位置と、現在の処理においてシフト位置算出部222により算出されたシフト位置との差分値を算出する。
そして、差分値と閾値とを比較し、差分値が閾値より小さい場合に累積数をカウントする。また、累積数と閾値とを比較し、累積数が閾値より大きい場合には、累積補正処理を行うように、補正処理部224に指示を出力する。
ここで、累積補正処理とは、累積的にシフトしたX線照射位置を、基準照射位置に近づけるような処理であり(図7(B)参照)、予め定められた補正値に従って補正処理が行われる。
つまり、単位時間あたりのX線線量が僅かである、通常、低線量と呼ばれる領域での撮影の場合は、上述の通り、補正処理部における補正処理が、都度微小な値に基づく補正となり、単位時間当たりのシフト量が補正量よりも大きい((熱伸びによる)焦点変動>補正量)状態が続くことが考えられる。このため、補正量が足りない状態となり、結果、図7(A)に示すように、基準照射位置とのずれがだんだん大きくなり、最終的に画質を担保する閾値Th1を超えてしまう虞がある。そこで、Th1に達した場合に通常の補正量よりも大きな補正量とすることで、基準照射位置に戻す補正が累積補正処理となる。
このように構成されたX線CT装置における、X線ビームのシフト補正処理の流れを、図9のフローチャートに従って説明する。
図9に示すように、X線CT装置において、撮影(計測)が開始されると、同時にX線照射位置(X線ビーム)のシフト位置算出及び補正処理が開始される。ステップS21で、スキャナ制御部22が、X線源21の回転における位置を示す、VN(ビューナンバー)を読み込む。ステップS22では、シフト位置算出部222により、先のステップS21で読み込んだVNにおけるシフト位置の算出を行う。すなわち、シフト位置算出部222が、検出信号処理部221から、検出器24のシフト検出チャネル24aの出力データ(Mスライス分の各検出素子からの出力データ)を取得し、これらの出力データに基づいてシフト位置を算出する。
次のステップS23では、累積シフト検出部225が、ステップS22においてシフト位置算出部222が算出したシフト位置と、前回処理においてシフト位置算出部222が算出した前回シフト位置との差分を算出する。続いてステップS24では、累積シフト検出部22により、ステップS23において算出した差分値と所定の閾値とを比較し、差分値が閾値よりも小さい場合にはステップS25に進み、補正累積数をカウントしステップS26に進む。差分値が閾値よりも大きい場合にはそのままステップS26に進む。
ここで、算出される差分値は前回の処理におけるシフト位置と今回の処理におけるシフト位置との差を示すものであることから、差分値が大きければ大きいほど、干渉があった可能性が高いと考えられる。そこで、差分値が所定の閾値よりも大きい場合にはそのままステップS26に進むことができる。一方、差分値が小さければ、干渉は生じていないものの、微小なずれが生じている可能性があり、このような微小なずれが繰り返されることにより、図4に示すような閾値Th1を超えてしまう虞がある。そこで、差分値の大小を判別することにより微小なずれが続いているかを判定する為の閾値Th5及びTh6を定め、差分値とこれら閾値Th5及びTh6とを比較し、差分値が閾値を超える場合、超えた分を回数としてカウントした後にS26に進む(図10参照)。
ステップS26では、補正累積数が閾値を超えたか否かを判定し、補正累積数が閾値を超えた場合には、ステップS27に進み累積補正処理を行い、カウント値をリセットする(ステップS28)。補正累積数が閾値を超えていない場合には、ステップS29に進み、干渉判定部223により、シフト位置算出部222により算出されたシフト位置が、閾値の範囲内にあるか否かを判定する。つまり、例えば、シフト位置が、図5(B)に示す干渉判定閾値Th3から干渉判定閾値Th4の間に入るか否かを判定する。
干渉判定部223により、シフト位置が閾値の範囲内にあると判定された場合には、干渉がないと判定され、ステップS30に進み、補正処理部224が、シフト位置に基づく補正値を適用することを決定する。干渉判定部223により、シフト位置が閾値の範囲内にないと判定された場合には、干渉があると判定され、ステップS31に進み、補正処理部224が干渉補正値を適用することを決定する。
ステップS32では、補正処理部224が、ステップS14又はステップS15において決定した補正値に基づいて補正処理を行う。
以上説明したように、本実施の形態にかかるX線CT装置では、干渉判定部による判定結果に応じた補正処理はもちろん、累積的なシフトを検出して補正するので、都度行われるシフト補正が微小であり、熱膨張に起因する単位時間当たりのシフト位置の変動がシフト補正よりも大きい場合であっても、確実にシフト位置を補正することができる。
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。上述した第2の実施形態では、補正処理部において、干渉補正とは無関係に累積補正処理のみを行う場合について図11のフローチャートに従って説明する。
図11に示すように、X線CT装置において、撮影(計測)が開始されると、同時にX線照射位置(X線ビーム)のシフト位置算出及び補正処理が開始される。ステップS41で、スキャナ制御部22が、X線源21の回転における位置を示す、VN(ビューナンバー)を読み込む。ステップS42では、シフト位置算出部222により、先のステップS41で読み込んだVNにおけるシフト位置の算出を行う。すなわち、シフト位置算出部222が、検出信号処理部221から、検出器24のシフト検出チャネル24aの出力データ(Mスライス分の各検出素子からの出力データ)を取得し、これらの出力データに基づいてシフト位置を算出する。
次のステップS43では、累積シフト検出部225が、ステップS42においてシフト位置算出部222が算出したシフト位置と、前回処理においてシフト位置算出部222が算出した前回シフト位置との差分を算出する。続いてステップS24では、累積シフト検出部22により、ステップS43において算出した差分値と所定の閾値とを比較し、差分値が閾値よりも小さい場合にはステップS45に進み、補正累積数をカウントしステップS46に進む。差分値が閾値よりも大きい場合にはそのままステップS46に進む。
ここで、算出される差分値は前回の処理におけるシフト位置と今回の処理におけるシフト位置との差を示すものであることから、差分値が大きければ大きいほど、通常の補正処理を行うべきものであり、微小なずれとしてカウントする必要のないものと考えられる。そこで、差分値が所定の閾値よりも大きい場合にはそのままステップS46に進むことができる。一方、差分値が小さければ、微小なずれが生じている可能性があり、このような微小なずれが繰り返されることにより、図5に示すような閾値Th1を超えてしまう虞がある。そこで、差分値の大小を判別することにより微小なずれが続いているかを判定する為の閾値Th5及びTh6を定め(図10)、差分値とこれら閾値Th5及びTh6とを比較し、差分値が閾値を超える場合、超えた分を回数としてカウントした後にS46に進む。
ステップS46では、補正累積数が閾値を超えたか否かを判定し、補正累積数が閾値を超えた場合には、ステップS47に進み累積補正処理を行い、カウント値をリセットする(ステップS48)。
以上説明したように、本実施の形態にかかるX線CT装置では、累積的なシフトを検出して補正するので、都度行われるシフト補正が微小であり、熱膨張に起因する単位時間当たりのシフト位置の変動がシフト補正よりも大きい場合であっても、確実にシフト位置を補正することができる。
21・・・X線源、22・・・スキャン制御部、23・・・コリメータ、24・・・検出器、24a・・シフト検出チャネル、221・・・検出信号処理部、222・・・シフト位置算出部、223・・・干渉判定部、224・・・補正処理部、225・・・累積シフト検出部

Claims (7)

  1. 被検体に対してX線を照射するX線源と、
    複数チャンネル分の検出素子を有し、前記被検体を透過したX線を検出して検出信号を出力する検出器と、
    複数チャネル分の前記検出素子のうち、チャンネル方向端部にシフト検出のために割り当てられた少なくとも1チャンネル分の検出素子を、スライス方向に第1領域及び第2領域に分け、第1領域の検出素子及び第2領域の検出素子によりそれぞれ出力された前記検出信号に基づいて、前記X線源により照射するX線の基準照射位置からのシフト位置を算出するシフト位置算出部と、
    前記シフト位置が所定の範囲内にあるか否かを判定する判定部と、
    前記判定部により、前記シフト位置が所定の範囲内であると判定された場合には、前記シフト位置に基づく補正値に従ってX線の照射位置を補正し、前記シフト位置が所定の範囲内にないと判定された場合には予め定めた干渉補正値に従ってX線の照射位置を補正する補正処理部と、を備えるX線CT装置。
  2. 請求項1に記載のX線CT装置であって、
    前記シフト位置は、前記第1領域の検出素子の検出値の和と、前記第2領域の検出素子の検出値の和との差分値であることを特徴とするX線CT装置。
  3. 前記干渉補正値が、前記X線源から照射されるX線の1回転あたりのX線量に基づいて予め定められた値である請求項1記載のX線CT装置。
  4. 前記干渉補正値が、直前の処理において前記シフト位置算出部により算出されたシフト位置に基づく補正値である請求項1記載のX線CT装置。
  5. 請求項1記載のX線CT装置による撮影処理時に、前記シフト位置算出部によりシフト位置を検出し、前記判定部により前記シフト位置が所定の範囲内にあるか否かを判定し、補正処理部によりX線の照射位置を補正する処理を繰り返し行い、
    繰り返し処理を行うことにより前記基準照射位置から累積的にシフトしているかを検出する累積シフト検出部を備え、
    前記補正処理部が、該累積シフト検出部による検出結果に基づいてX線の照射位置を補正するX線CT装置。
  6. 寝台上の被検体の周囲を周回するX線源から照射され、前記被検体を透過したX線の線量を検出した検出信号から、シフト位置検出のために割り当てられた少なくとも1チャネル分の検出素子から出力された検出信号を取得するステップと、
    前記1チャンネル分の検出素子を、スライス方向に第1領域及び第2領域に分け、第1領域の検出素子及び第2領域の検出素子によりそれぞれ検出した検出信号の差分に基づいて、前記X線源により照射されるX線の基準照射位置からのシフト位置を算出するステップと、
    前記シフト位置が所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、
    前記シフト位置が所定の範囲内にあると判定された場合には前記シフト位置に基づく補正値に従ってX線の照射位置を補正し、前記シフト位置が所定の範囲内にない場合には予め定めた干渉補正値に従ってX線の照射位置を補正するステップと、
    を備えるX線CT装置を備えたシフト位置補正方法。
  7. 寝台上の被検体の周囲を周回するX線源から照射され、前記被検体を透過したX線の線量を検出した検出信号から、シフト位置検出のために割り当てられた少なくとも1チャネル分の検出素子から出力された検出信号を取得するステップと、
    前記1チャンネル分の検出素子を、スライス方向に第1領域及び第2領域に分け、第1領域の検出素子及び第2領域の検出素子によりそれぞれ検出した検出信号の差分に基づいて、前記X線源により照射されるX線の基準照射位置からのシフト位置を算出するステップと、
    前記シフト位置が所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、
    前記シフト位置が所定の範囲内にあると判定された場合には前記シフト位置に基づく補正値に従ってX線の照射位置を補正し、前記シフト位置が所定の範囲内にないと判定された場合には予め定めた干渉補正値に従ってX線の照射位置を補正するステップと、
    をコンピュータに実行させるシフト位置補正プログラム。
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