(発明の詳細な説明)
試験サンプル(例えば、生物学的サンプル、食品サンプル、水サンプル、および臨床サンプル)中の目的の微生物の検出に関して驚くべき感度を示す、組成物、方法およびシステムが本明細書で開示される。検出は、富化のためのいかなる培養もなしに、もしくはいくつかの実施形態では最小限のインキュベーション時間(その間に、微生物が潜在的に増殖し得る)を伴って行われるアッセイにおいて、遺伝的に改変された感染性因子を使用して、以前に可能と考えられた時間枠より短い時間枠で達成され得る。また、試験サンプルとともにインキュベートするために、高い感染多重度(MOI)、もしくは高濃度のプラーク形成単位(PFU)を使用することの成功は驚くべきである。このような高いファージ濃度(PFU/mL)は、微生物検出アッセイには有害であると以前に主張された。なぜならそれらは、「非感染溶菌(lysis from without)」を引き起こすと主張されたからである。
本発明の組成物、方法、システムおよびキットは、このような微生物の検出において使用するための感染性因子を含み得る。ある種の実施形態において、本発明は、組換えバクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を有する該バクテリオファージを含む組成物を包含し得る。ある種の実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。ある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、上記バクテリオファージの後期遺伝子(すなわち、クラスIII)領域に挿入され得る。上記バクテリオファージは、T7、T4、JG04、もしくは別の天然のバクテリオファージに由来し得る。
いくつかの局面において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を包含する。上記方法は、上記目的の微生物の検出のために感染性因子を使用し得る。例えば、ある種の実施形態において、上記目的の微生物は、細菌であり、上記感染性因子は、バクテリオファージである。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルを、目的の微生物に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートすることによる、サンプル中の目的の微生物の検出を包含し得る。ある種の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、インジケーター遺伝子を含む。上記インジケーター遺伝子は、ある種の実施形態において、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入され得、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。上記方法は、上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程を包含し得、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の微生物が上記サンプルに存在することを示す。
ある種の実施形態において、本発明は、システムを包含し得る。上記システムは、本発明の組成物のうちの少なくともいくつかを含み得る。また、上記システムは、上記方法を行うために上記構成要素のうちの少なくともいくつかを含み得る。ある種の実施形態において、上記システムは、キットとして編成される(formulated)。従って、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムを包含し得、上記システムは、上記サンプルを、上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素;および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含む。さらに他の実施形態において、本発明は、上記方法もしくはシステムとともに使用するためのソフトウェアを含む。
従って、本発明のいくつかの実施形態は、細菌の存在を示す検出可能なシグナルを増幅するための感染性因子ベースの方法を使用することによって、要求を解決する。ある種の実施形態において、1個程度のわずかな細菌が検出される。本明細書で適用される原理は、種々の微生物の検出に適用され得る。微生物の表面上に感染性因子のための多くの結合部位、感染の間に100個以上の子孫因子を生成する能力、およびコードされたインジケーター部分の高レベル発現の潜在能力があるので、上記感染性因子もしくはインジケーター部分は、上記微生物自体より容易に検出可能であり得る。このようにして、本発明の実施形態は、実に単一感染細胞からの非常に大きなシグナル増幅を達成し得る。
本発明の局面は、サンプル中の特異的微生物を検出および/定量する手段として、感染性因子の結合構成要素などの、特定の微生物に結合し得る結合因子の高い特異性を利用する。いくつかの実施形態において、本発明は、感染性因子(例えば、バクテリオファージ)の高い特異性を利用する。
いくつかの実施形態において、検出は、上記目的の微生物に特異的な結合因子と関連付けられたインジケーター部分を通じて達成される。例えば、感染性因子は、インジケーター部分を含み得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターは、上記感染性因子(例えば、バクテリオファージ)によってコードされ得、上記バクテリオファージは、インジケーターファージと示される。
本明細書で開示および記載される本発明のいくつかの実施形態は、単一微生物が特異的認識因子(例えば、ファージ)を結合し得るという発見を利用する。上記ファージの感染および複製の後に、子孫ファージは、ファージ複製の間に発現されるインジケーター部分を介して検出され得る。この原理は、微生物表面レセプターの特異的認識に基づいて、1もしくは数個の細胞からのインジケーターシグナルの増幅を可能にする。例えば、微生物の実に単一細胞を複数のファージに曝露し、その後、上記ファージの増幅、および複製の間に、コードされたインジケーター遺伝子生成物の高レベル発現を可能にすることによって、上記インジケーターシグナルは、上記単一微生物が検出可能であるように増幅される。
本発明の方法およびシステムの実施形態は、食品サンプル、水サンプル、臨床サンプルおよび商業サンプルからの病原体の検出があげられるが、これらに限定されない種々の環境における種々の微生物(例えば、細菌、真菌、酵母)の検出および定量に適用され得る。本発明の方法は、迅速にかつ旧来の生物学的富化(例えば、富化のための培養)の必要性なしに、高い検出感度および特異性を提供する。これは、すべての利用可能な方法が培養を要するので驚くべき局面である。いくつかの実施形態において、検出は、世間一般の通念に反する、上記バクテリオファージもしくはウイルスの1〜2回の複製サイクル内で可能である。なぜならそれは、上記ファージがそれ自体および上記ルシフェラーゼシグナルを増幅する天然の能力を利用しないからである。
定義
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学用語および専門用語は、当業者が一般に理解する意味を有するべきである。さらに、他に状況によって必要とされない限り、単数の用語は、複数を含むべきであり、複数の用語は、単数を含むべきである。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションとの関連で使用される命名法、ならびにこれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。公知の方法および技術は、他に示さない限り、当技術分野で周知の通常の方法によって、および本明細書を通して考察される様々な一般のおよびより特定の参考文献において記載されているように一般に行われる。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載のように、製造元の仕様によって行われる。本明細書に記載されている実験室の手順および技術に関連して使用される命名法は当技術分野で周知のものであり、一般に使用される。
下記の用語は、他に示さない限り、下記の意味を有すると理解すべきである。
本明細書において使用する場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、他に特に留意しない限り、1つまたは複数を指すことができる。
「または」という用語の使用は、代替物のみを言及することが明確に示されない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ超を意味することができる。
本出願を通して、「約」という用語は、その値が、値を決定するために用いられているデバイス、方法についての固有の誤差の変動、または試料の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
「固体支持体」または「支持体」という用語は、その上に生体分子が結合し得る基材および/または表面を提供する構造物を意味する。例えば、固体支持体は、アッセイウェル(すなわち、例えば、マイクロタイタープレートまたはマルチウェルプレート)であり得、または固体支持体は、フィルター、アレイ、または移動性の支持体(例えば、ビーズ)または膜(例えば、フィルタープレートまたはラテラルフローストリップ)上の位置であり得る。
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体およびキメラ抗体、例えば、コンビナトリアル変異誘発およびファージディスプレイによって生じたものを含む。「抗体」という用語はまた、抗体の模倣物またはペプチド模倣物を含む。ペプチド模倣物は、ペプチドおよびタンパク質に基づいた、またはペプチドおよびタンパク質に由来する化合物である。本発明のペプチド模倣物は典型的には、非天然アミノ酸、コンホメーション制限、アイソスター置換(isosteric replacement)などを使用した、公知のペプチド配列の構造的改変によって得ることができる。抗体のフラグメントは、いくつかの実施形態では抗体の代わりに働き得る。「表面特異的抗体」は本明細書で使用される場合、特異的微生物の外表面上に露出した分子に結合する。
本明細書で使用される場合、用語「遊離抗体」とは、溶液中に存在しかつ液体を介して自由に動き得る抗体をいう;すなわち、それらは、最初に固体支持体に結合していないかまたは別の方法で拘束されてもいない。
本明細書で使用される場合、「アフィニティー精製された」もしくは「アフィニティー精製」とは、抗体を調製および処理するために使用される一連の工程であって、その結果、それらが、望ましくないエピトープとの最小限の交差反応性を含む、最適な特異性および感度を示す工程をいう。例えば、抗血清からの望ましくない脂質およびタンパク質の除去は、塩析沈殿(salt precipitation)工程によってまず達成され得る。さらなる陽性選択(「アフィニティー精製」ともいわれる)および/もしくは陰性選択(「逆精製(reverse-purification)」ともいわれる)は、残っている抗体を、特定のエピトープアフィニティーを有する抗体を保持するように設計された表面抗原を含む支持体(例えば、アガロースカラム)に通過させることによって達成され得る。いくつかの例では、出発抗血清がポリクローナルである場合、これら選択工程の後に残る精製された抗体は、上記目的の微生物の表面上の多くの異なるエピトープを認識し得るが、それらは、他の微生物の表面エピトープを認識しない。
「結合因子」という用語は、第2の(すなわち、異なる)対象分子に特異的および選択的に結合することができる分子を指す。相互作用は、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または静電相互作用もしくは疎水的相互作用の結果として非共有結合性であり得、あるいは相互作用は共有結合性であり得る。「可溶性結合因子」という用語は、固体支持体に会合(すなわち、共有結合または非共有結合)していない結合因子を指す。
本明細書で使用される場合、「分析物」とは、測定されている分子、化合物もしくは細胞をいう。目的の分析物は、ある種の実施形態において、結合因子と相互作用し得る。本明細書で記載される場合、用語「分析物」とは、目的のタンパク質もしくはペプチドをいい得る。分析物は、アゴニスト、アンタゴニスト、もしくはモジュレーターであり得る。あるいは、分析物は、生物学的効果を有しなくてもよい。分析物としては、低分子、糖、オリゴサッカリド、脂質、ペプチド、ペプチド模倣物、および有機化合物などが挙げられ得る。
用語「検出可能な部分」もしくは「検出可能な生体分子」もしくは「レポーター」もしくは「インジケーター部分」とは、定量的アッセイにおいて測定され得る分子をいう。例えば、インジケーター部分は、基質を、測定され得る生成物に変換するために使用され得る酵素を含み得る。インジケーター部分は、生物発光の放射を生じる反応を触媒する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)であり得る。あるいは、インジケーター部分は、定量され得る放射性同位体であり得る。あるいは、インジケーター部分は、発蛍光団であり得る。あるいは、他の検出可能な分子が使用され得る。
本明細書で使用される場合、「バクテリオファージ」もしくは「ファージ」とは、複数の細菌のウイルスのうちの1種以上を含む。本開示において、用語「バクテリオファージ」および「ファージ」は、生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母、および他の顕微鏡レベルの生存している生物に侵入し得るウイルスであって、そして上記生物を使用して、該ウイルス自体を複製するウイルスを指す、マイコバクテリオファージ(例えば、TBおよびパラTBに関する)、マイコファージ(mycophage)(例えば、真菌に関する)、マイコプラズマファージ、および任意の他の用語などのウイルスを含む。ここで、「顕微鏡レベルの」とは、最大寸法が1ミリメートル以下であることを意味する。バクテリオファージは、それらを複製する手段として、天然において細菌を使用するように進化したウイルスである。ファージは、このことを、ファージ自体を細菌に付着させ、そのDNA(もしくはRNA)をその細菌の中に注入し、上記ファージを数百倍もしくはさらには数千倍も複製するようにその細菌を誘導することによって行う。これは、ファージ増幅ともいわれる。
本明細書で使用される場合、「後期遺伝子領域」とは、ウイルス生活環において後期に転写されるウイルスゲノムの領域をいう。上記後期遺伝子領域は、代表的には、最も豊富に発現される遺伝子(例えば、上記バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質)を含む。後期遺伝子は、クラスIII遺伝子と同義であり、構造およびアセンブリ機能を有する遺伝子を含む。例えば、上記後期遺伝子(クラスIIIと同義)は、T7では、例えば、感染後8分から溶解するまでに、クラスI(例えば、RNAポリメラーゼ)は、早期に4〜8分に、およびクラスIIは、6〜15分に転写されるので、IIおよびIIIのタイミングは重なり合っている。後期プロモーターは、天然に位置し、このような後期遺伝子領域において活性であるプロモーターである。
本明細書で使用される場合、「富化のための培養」とは、旧来からの培養(例えば、微生物繁殖に都合のよい培地中でのインキュベーション)をいい、語句「富化」の他の考えられる使用(例えば、サンプルの液体構成要素を取り出して、その中に含まれる上記微生物を濃縮することによる富化)、または微生物繁殖の旧来の促進を含まない富化の他の形態と混同されるべきではない。非常に短期間にわたる富化のための培養は、本明細書で記載される方法のいくつかの実施形態において使用され得るが、それが全てで使用される場合、必須ではなく、かつ富化のための旧来からの培養よりはるかに短期間にわたる。
本明細書で使用される場合、「組換え(recombinant)」とは他の方法では見いだされない遺伝的物質を一緒にするために、通常は実験室で行われる場合、遺伝的な(すなわち、核酸)改変をいう。この用語は、本明細書において用語「改変された」と交換可能に使用される。
(サンプル)
本発明の方法およびシステムの実施形態の各々は、サンプル中の微生物の迅速検出および定量を可能にし得る。例えば、本発明に従う方法は、最もこのましくは、約2時間以下で行われ得る。
本発明の方法およびシステムによって検出される微生物としては、商業的、医学的もしくは獣医学的に懸念される病原体が挙げられる。このような病原体としては、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、マイコプラズマおよびウイルスが挙げられる。上記特定の微生物に特異的な感染性因子が同定された任意の微生物は、本発明の方法によって検出され得る。当業者は、必須の特定の感染性因子/微生物の対の利用可能性以外に、本発明の方法の適用に制限はないことを認識する。
本発明によって検出可能な細菌細胞としては、食品もしくは水で伝播する病原体である細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によって検出可能な細菌細胞としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Salmonellaのうちの全ての種、Escherichia coliのうちの全ての株(E. coli O157:H7が挙げられるが、これに限定されない)、Listeriaのうちの全ての種(L. monocytogenesが挙げられるが、これに限定されない)、およびCampylobacterのうちの全ての種。本発明によって検出可能な細菌細胞としては、医学的にもしくは獣医学的に重要な病原体である細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。このような病原体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Bacillus spp.、Bordetella pertussis、Camplyobacter jejuni、Chlamydia pneumoniae、Clostridium perfringens、Enterobacter spp.、Klebsiella pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Salmonella typhi、Shigella sonnei、Staphylococcus aureus、およびStreptococcus spp。
上記サンプルは、環境サンプルもしくは食品サンプルもしくは水サンプルおよび医学的サンプルもしくは獣医学的サンプルであり得る。サンプルは、液体、固体、もしくは半固体であり得る。サンプルは、固体表面のスワブであり得る。サンプルとしては、環境材料(例えば、水サンプル)、またはサイクロンコレクターからの空気サンプルもしくはエアロゾルサンプルに由来するフィルターが挙げられ得る。サンプルは、食肉、家禽、加工食品、ミルク、チーズ、もしくは他の酪農製品のサンプルであり得る。医学的サンプルもしくは獣医学的サンプルとしては、血液サンプル、喀痰サンプル、脳脊髄液サンプル、および糞便サンプルならびに種々のタイプのスワブが挙げられるが、これらに限定されない。
サンプルは、調製も、濃縮も、希釈もなしに、本発明の検出法において直接使用され得る。例えば、液体サンプル(ミルクおよびジュースが挙げられるが、これらに限定されない)は、直接アッセイされ得る。サンプルは、緩衝化溶液もしくは細菌培養培地が挙げられ得るが、これらに限定されない溶液中で希釈もしくは懸濁され得る。固体もしくは半固体であるサンプルは、液体中の固体を細かく刻むか、混合するかもしくは浸軟することによって、液体中に懸濁され得る。サンプルは、上記宿主細菌細胞へのバクテリオファージ付着を促進するpH範囲内に維持されるべきである。サンプルはまた、2価カチオンおよび1価カチオン(Na+、Mg2+、およびK+が挙げられるが、これらに限定されない)の適切な濃度を含むべきである。好ましくは、サンプルは、上記サンプル内に含まれる任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。
好ましくは検出アッセイ全体を通じて、上記サンプルは、上記サンプルに存在する任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。バクテリオファージが細菌細胞に付着している工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ付着を促進する温度で維持することは、好ましい。バクテリオファージが感染細菌細胞内で複製されているかもしくはこのような感染細胞を溶解する工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ複製および上記宿主の溶解を促進する温度で維持することは好ましい。このような温度は、少なくとも約25摂氏度(C)、より好ましくは、約45℃以下、最も好ましくは約37℃である。上記サンプルが、バクテリオファージ付着、複製および細胞溶解の間に穏やかな混合もしくは振盪に供されることもまた好ましい。
アッセイは、種々の適切なコントロールサンプルを含み得る。例えば、バクテリオファージを含まないコントロールサンプルまたは細菌なしのバクテリオファージを含むコントロールサンプルは、バックグラウンドシグナルレベルに関するコントロールとしてアッセイされ得る。
(インジケーター感染性因子)
本明細書でより詳細に記載されるように、本発明の組成物、方法、システムおよびキットは、このような微生物の検出において使用するための感染性因子を含み得る。ある種の実施形態において、本発明は、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を有する組換えバクテリオファージを含む組成物を包含し得る。以下でより詳細に記載されるように、上記感染性因子のある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない。例えば、ある種の実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。ある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入され得る。組換えバクテリオファージにおいて、上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域であり得る。
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、T7、T4もしくは別のファージに由来する。インジケーターバクテリオファージはまた、T7様、T4様、JG04、JG04様バクテリオファージ、またはT7、T7様、T4、T4様、JG04、もしくはJG04様ファージと少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、もしくは70%の相同性を有するゲノムを有する任意の他のバクテリオファージに由来し得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、環境から単離された天然のファージ(例えば、実施例に記載されるように単離されたJG04ファージ、T4様ファージ)に由来する。遺伝的改変は、野生型遺伝子の欠失を回避することができ、したがって、多くの市販のファージ(例えば、T7SELECT(登録商標)415)より野生型感染性因子に類似のまま存続する。このような天然由来のバクテリオファージは、環境中で見いだされる細菌に対し、市販されているバクテリオファージよりも特異的であり得、よって、上記環境中で見いだされるファージとは遺伝的に異なり得る。
さらに、非必須であると考えられるファージ遺伝子は、認識されていない機能を有し得る。例えば、見かけは非必須の遺伝子は、アセンブリにおける巧妙な切断、適合、もしくはトリミング機能により、バーストサイズを上昇させることにおいて重要な機能を有し得る。よって、遺伝子を欠失させてインジケーターを挿入することは、有害であり得る。大部分のファージは、それらの天然のゲノムより数パーセント大きいDNAをパッケージし得る。この考察では、より小さなインジケーター遺伝子は、バクテリオファージ(特に、より小さなゲノムを有するバクテリオファージ)を改変するためのより適切な選択であり得る。OpLucおよびNANOLUC(登録商標)タンパク質は、わずか約20kDa(コードするのに約500〜600bp)である一方で、FLucは、約62kDa(コードするのに約1,700bp)である。比較のために、T7のゲノムは、約40kbpである一方で、T4ゲノムは、約170kbpである。
いくつかのインジケーターファージ実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、野生型ファージ遺伝子を無傷のままにして、機能的遺伝子の破壊を回避するために非翻訳領域へと挿入され得、これは、非実験室株の細菌に感染させる場合に、より大きな適合をもたらし得る。さらに、3つ全てのリーディングフレームにおける終止コドンは、リードスルー(発現漏れ(leaky expression)としても公知)を低減することによって、発現を増加させる一助になり得る。このストラテジーはまた、上記ファージから分離できないバックグラウンドシグナル(例えば、ルシフェラーゼ)として現れる融合タンパク質が低レベルで作られるという可能性を排除し得る。
インジケーター遺伝子は、種々の生体分子を発現し得る。上記インジケーター遺伝子は、検出可能な生成物を発現する遺伝子もしくは検出可能な生成物を生成する酵素である。例えば、一実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードする。種々のタイプのルシフェラーゼが使用され得る。代替の実施形態において、および本明細書でより詳細に記載されるように、上記ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、もしくは操作されたルシフェラーゼのうちの1種である。
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、上記後期(クラスIII)遺伝子領域において非バクテリオファージインジケーター遺伝子を含む改変されたバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、後期プロモーターの制御下にある。ウイルス後期遺伝子プロモーターを使用することは、上記レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)がウイルスカプシドタンパク質のように、高レベルで発現されるのみならず、内因性細菌遺伝子もしくはさらには初期ウイルス遺伝子のように停止もされないことを確実にする。
いくつかの実施形態において、上記後期プロモーターは、T4様もしくはT7様プロモーター、または遺伝的改変なしの天然のファージにおいて見いだされるプロモーターに類似の別のファージプロモーターである。上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域であり得、上記バクテリオファージは、T7、T4、T4様、JG04バクテリオファージ、またはT7、T4もしくはT4様ファージと少なくとも90%の相同性を有するゲノムを有する別の天然のバクテリオファージに由来し得る。好ましい実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない。
感染性因子に対する遺伝的改変は、核酸の小さなフラグメント、遺伝子の実質的部分、もしくは遺伝子全体の挿入、欠失、もしくは置換を含み得る。いくつかの実施形態において、挿入もしくは置換された核酸は、非天然の配列を含む。非天然のインジケーター遺伝子は、バクテリオファージプロモーターの制御下にあるように、バクテリオファージゲノムへと挿入され得る。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、融合タンパク質の一部ではない。すなわち、いくつかの実施形態において、遺伝的改変は、上記インジケータータンパク質生成物が上記天然のバクテリオファージのポリペプチドを含まないように構成され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、試験サンプルをこのような改変されたバクテリオファージとともにインキュベートする工程を包含する。
いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、ファージ構造タンパク質をコードする遺伝子と連結していないので、融合タンパク質を生じない。いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後の子孫バクテリオファージにおける上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性タンパク質生成物を生じる。
上記カプシドタンパク質への検出部分の融合(すなわち、融合タンパク質)を使用するシステムとは異なり、本発明のいくつかの実施形態は、可溶性ルシフェラーゼを発現する。これは、上記アッセイの感度を大いに増加させ得(単一細菌に至るまで)、上記アッセイを単純化し、検出可能な融合タンパク質を生成する構築物とともに必要とされるさらなる精製工程に起因する数時間とは対照的に、いくつかの実施形態に関しては1時間未満で上記アッセイか完了することを可能にする。さらに、融合タンパク質は、例えば、酵素活性部位のコンホメーションもしくは基質へのアクセスを変化させ得るタンパク質折り畳みの制約に起因して、可溶性タンパク質より活性が低い場合がある。
さらに、定義による融合タンパク質は、上記バクテリオファージにおけるタンパク質のサブユニットに付着される部分の数を制限する。例えば、融合タンパク質のためのプラットフォームとして働くように設計された市販のシステムを使用すると、各T7バクテリオファージ粒子において遺伝子10Bカプシドタンパク質の約415コピーに相当する、融合部分の約415コピーが生じる。この制約がなければ、感染した細菌は、上記バクテリオファージに適合し得るより多くの上記検出部分(例えば、ルシフェラーゼ)のコピーを発現すると予測され得る。さらに、大きな融合タンパク質(例えば、カプシド−ルシフェラーゼ融合物)は、上記バクテリオファージ粒子のアセンブリを阻害し得、そのようにして、より少ないバクテリオファージ子孫を生じる。従って、可溶性の非融合インジケーター遺伝子生成物が好ましいものであり得る。
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素をコードする。上記インジケーターは、光を放出し得、そして/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の操作されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素もまた、適切なインジケーター部分であり得る。
また、可溶性検出部分の使用は、汚染している親ファージを、上記感染したサンプル細胞の溶解物から単離する必要性を排除する。融合タンパク質システムを用いると、サンプル細胞に感染させるために使用される任意のバクテリオファージは、付着される検出部分を有し、上記検出部分も含む娘バクテリオファージから区別できない。サンプル細菌の検出は、新たに作り出された(デノボ合成された)検出部分の検出に依拠するので、融合構築物の使用は、古い(親)部分を新たに作り出された(娘バクテリオファージ)部分から分離するためにさらなる工程を要する。これは、上記バクテリオファージの生活環の完了の前に、上記感染した細胞を複数回洗浄する工程、物理的もしくは化学的手段によって感染後に過剰な親ファージを不活性化する工程、および/または上記親バクテリオファージを結合部分(例えば、ビオチン)で化学的に改変する工程(これは、次いで、結合および分離され得る(例えば、ストレプトアビジン被覆セファロースビーズによって))によって達成され得る。しかし、単離時にすべてのこれら試みを使用したとしても、親ファージは、代表的には、少ない数のサンプル細胞の感染を保証するために高い感染多重度(MOI)が使用される場合に残存し、感染した細胞の子孫ファージからのシグナルの検出を不明確にし得るバックグラウンドシグナルを作り出す。
対照的に、本発明のいくつかの実施形態において発現される可溶性検出部分を用いると、最終溶解物からの上記親ファージの精製は不要である。なぜなら上記親ファージは、付着されるいかなる検出部分をも有しないからである。従って、感染後に存在する任意の検出部分は、感染した1個もしくは複数の細菌の存在を示して、新たに作り出されていなければならい。この利益を利用するために、親ファージの生成および調製は、細菌培養物中での親バクテリオファージの生成の間に生成された任意の遊離検出部分からの上記ファージの精製を含み得る。標準的なバクテリオファージ精製技術は、本発明に従うファージのいくつかの実施形態を精製するために使用され得る(例えば、スクロース密度勾配遠心分離、塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、および透析または派生技術(例えば、Amiconブランドの濃縮器 − Millipore, Inc.)。本明細書中の実施例は、親ファージ粒子を、上記細菌ストック中のファージの増殖の際に生成される汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離するように、本発明の組換えファージの調製の一部としての、塩化セシウム等密度超遠心分離の使用を記載する。このようにして、本発明の組換えバクテリオファージは、上記細菌の生成の間に生成される任意のルシフェラーゼが実質的ない。上記ファージストックに存在する残りのルシフェラーゼの除去は、上記組換えバクテリオファージが試験サンプルとともにインキュベートされる場合に認められるバックグラウンドシグナルを実質的に低減し得る。
改変されたバクテリオファージのいくつかの実施形態において、上記後期プロモーター(クラスIIIプロモーター、例えば、T7もしくはT4由来のもの)は、上記バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じ天然のバクテリオファージ(例えば、それぞれ、T7もしくはT4)のRNAポリメラーゼに対して高いアフィニティーを有する。これらのタンパク質は、各バクテリオファージ粒子が、これら分子の数十個もしくは数百個ものコピーを含むので、上記ファージによって作られる最も豊富なタンパク質である。ウイルス後期プロモーターの使用は、最適には、上記ルシェラーゼ検出部分の発現の高レベルを確実にし得る。上記インジケーターファージが由来する元の野生型バクテリオファージに由来するか、これに特異的か、もしくはこれの下で活性である後期ウイルスプロモーター(例えば、T4ベースのもしくはT7ベースのシステムに伴うT4もしくはT7後期プロモーター)の使用は、上記検出部分の最適な発現をさらに確実にし得る。標準的な細菌(非ウイルス/非バクテリオファージ)プロモーターの使用は、いくつかの場合では、発現に有害であり得る。なぜならこれらのプロモーターは、バクテリオファージ感染の間に(上記バクテリオファージがファージタンパク質生成のための細菌資源を優先するために)しばしばダウンレギュレートされるからである。従って、いくつかの実施形態において、上記ファージは、好ましくは、発現をファージ構造構成要素のサブユニットの数に制限しない可溶性(遊離)インジケーター部分をコードし、高レベルで発現するように操作されている。
本発明の改変されたバクテリオファージを使用する実施形態は、45分〜1.5時間という速さの合計アッセイ時間で、特定の細菌株の迅速検出を可能にし得る。必要とされる時間の量は、バクテリオファージの株および上記アッセイにおいて検出される予定の細菌の株に依存して、幾分短くなってもよいし、幾分長くなってもよい。
図1は、本発明の組換えバクテリオファージ、インジケーターファージT7SELECT(登録商標)415−Lucのゲノム構造の概略図を示す。図1に示される実施形態に関して、上記検出部分は、ウイルス生活環において後期に発現される、上記後期(クラスIII)遺伝子領域110ないに挿入されるホタルルシフェラーゼ遺伝子100によってコードされる。後期遺伝子は一般に、他のファージ遺伝子より高いレベルで発現される。なぜならそれらは、構造タンパク質をコードするからである。従って、図1によって示される組換えファージの実施形態において、上記インジケーター遺伝子(すなわち、ホタルルシフェラーゼ)は、遺伝子10B(主要カプシドタンパク質)の直後にある後期遺伝子領域へと挿入され、上記ホタルルシフェラーゼ遺伝子100を含む構築物である。図1に示される構築物を、ルシフェラーゼが遺伝子10B生成物へと組み込まれないことを確実にするために、3個すべてのリーディングフレームにおいて終止コドン120を含むように設計した。また、図1によって示されるように、上記構築物は、上記ルシフェラーゼ遺伝子の転写および発現を駆動するために、コンセンサスT7後期プロモーター130を含み得る。上記構築物はまた、いくつかのT7 UTRs 140から合成された複合非翻訳領域を含み得る。この構築物は、発現がファージディスプレイシステムに内在するカプシドタンパク質の数に制限されないように可溶性ホタルルシフェラーゼが生成されることを確実にする。
本明細書で注記されるように、ある種の実施形態において、本発明の感染性因子の生成のために環境から単離された感染性因子を利用することは、好ましいことであり得る。このようにして、天然由来の微生物に特異的である感染性因子が生成され得る。
例えば、図2は、バクテリオファージJG04(T4様バクテリオファージ、RB69と約98%配列相同性を有する天然ファージ)のゲノムを示す。下水処理プラントサンプルからの上記JG04バクテリオファージの単離は、本明細書中の実施例で特に記載される。実施例で考察されるように、カプシドタンパク質、gp23(220)およびgp24(230)は、ビリオンタンパク質をコードする構造遺伝子からなる後期遺伝子領域(210)内にある。これらのビリオンタンパク質が非常に高レベルで発現されるので、この領域に挿入される任意の遺伝子は、後期遺伝子プロモーターおよび/もしくは他の類似の制御エレメントが使用される限りにおいて、類似の発現レベルを有すると予測され得る。図2に示されるバクテリオファージ構築物は、配列番号3に示される配列を有する。
本発明の組成物は、種々の感染性因子および/もしくはインジケーター遺伝子を含み得る。例えば、図3は、3種の異なるルシフェラーゼ遺伝子を担持する3種の相同な組換えプラスミド構築物を示す。3種の構築物を作り、本発明の組換えバクテリオファージを生成するために、JG04との組換えにおいて使用した。従って、図3の上の構築物は、JG04へのホタルルシフェラーゼの相同組換え挿入のために使用されるホタルルシフェラーゼ構築物を有する組換えプラスミド:配列番号5に相当する相同組換えプラスミドpUC57.HR.Flucを示す。図3の中央の構築物は、JG04へのNANOLUC(登録商標)ルシフェラーゼの相同組換え挿入のために使用される組換えプラスミド:配列番号6に相当する相同組換えプラスミドpUC57.HR.NANOLUC(登録商標)を示す;図3の下の構築物は、JG04へのOplophorusルシフェラーゼの相同組換え挿入のために使用される組換えプラスミド:配列番号7に相当する、相同組換えプラスミドpUC19.HR.OpLuc.KanRを示す。
いくつかの実施形態において、本発明に従うインジケーターファージは、図3に示される3種の構築物のうちのいずれか1種を含むように遺伝子操作されたJG04を含む。すなわち、配列番号3の配列を含むインジケーターファージは、配列番号5のヌクレオチド402〜2,973(もしくはその一部)に相当する配列番号3のヌクレオチド116,555〜119,830の間に挿入されたさらなる配列;または配列番号6のヌクレオチド402〜1,922(もしくはその一部)(本明細書中の実施例6および11においてJG04−NANOLUC(登録商標)インジケーターファージともいわれる);または配列番号7のヌクレオチド2,241〜4,729(もしくはその一部)(本明細書中の実施例7〜9においてJG04−OpLucインジケーターファージともいわれる)をさらに含む。例えば、その一部は、上記ルシフェラーゼ部分のみ(すなわち、配列番号5のヌクレオチド943〜2,595;もしくは配列番号6のヌクレオチド943〜1,542;もしくは配列番号7のヌクレオチド2,784〜3,296)を含み得る。その部分は、上記T4後期プロモーター (すなわち、配列番号5もしくは配列番号6いずれかのヌクレオチド908〜936、または配列番号7のヌクレオチド2,749〜2,777)をさらに含み得る。他の実施形態において、このようなインジケーターファージは、本発明に従うシステムもしくはキットの中に含まれる。本明細書で記載される方法はまた、このようなインジケーターファージを利用し得る。
図4は、図3に示されかつ実施例6で記載されるプラスミド構築物を使用する、JG04バクテリオファージの改変からの組換えファージの単離を示す。
第1の工程402では、相同組換えプラスミドで形質転換された細菌は、バクテリオファージで感染させられ、約20,000 野生型432:1 組換えファージ434の比を有する親ファージおよび組換えファージの混合物を伴って、子孫ファージを生じる。上記得られる組換えファージミックスは、平均3の組換え形質導入単位(TU)/プレート(これは、1ウェルあたり主に野生型ファージの約625の感染単位(IU)に相当する)を与えるために、96ウェルプレート406へと希釈される404。上記96ウェルプレートは、野生型バクテリオファージを含むウェル440と比較して、組換えファージを含むウェル436を同定するためにルシフェラーゼ活性についてアッセイされる。細菌438が添加される408;例えば、各ウェルは、濁ったE. coli O157:H7の約50μLを含み得る。これは、上記ファージが複製してルシフェラーゼ酵素442を生成することを可能にする。410に示される37℃で2時間インキュベートした後、ウェルは、ルシフェラーゼ442の存在についてスクリーニングされ得る。任意の陽性ウェルは、単一組換えファージを播種された可能性があり、この段階において、上記混合物は、元の20,000:1比を超える富化である、約600 野生型ファージ:1 組換えファージの比を含み得る。一実施形態において、可溶性ルシフェラーゼおよびファージは、625 野生型:1 組換えファージというおよその比で存在した。この富化した培養物412からの子孫は、その比を確認し、組換えファージ形質導入単位の実際の濃度を決定するために、さらなる限界希釈アッセイ414(複数可)に供され得る。例えば、96ウェルプレート416あたり約3の組換えTUは、第1の精製ストックからアリコートし得414、第2の希釈アッセイプレート420のウェルあたり約20の主に野生型ファージのおよその播種をもたらす。任意の陽性ルシフェラーゼウェルは、約20 野生型ファージとともに、単一組換えファージを播種した可能性がある。これらのウェルは、ルシフェラーゼ442の存在について分析され得る。
細菌の添加およびインキュベーション(例えば、37℃、2時間)418の後に、可溶性ルシフェラーゼおよびファージは、約20 野生型ファージ:1 組換えファージで存在する420。最後に、プラークアッセイは、ルシフェラーゼ446を発現する組換えファージについてスクリーニングするために行われ得る422。個々の(例えば、n=48)プラークの少数を、個々に拾い上げ得、ルシフェラーゼ活性436に関して、第3のマルチウェルプレートにおいてスクリーニングし得る426。一実施形態において、このアプローチは、約3 組換えファージが、スクリーニングされるプラークのミックス中にあることを確実にするはずである。1個のプラークを、上記プレートから96ウェルプレート424の各ウェルへと取り出し得、ルシフェラーゼアッセイを、どのウェルがルシフェラーゼ活性442を示すファージを含んだかを決定するために行い得る426。ルシフェラーゼ活性を示すウェル428は、純粋な組換えファージ434を表す一方で、ルシフェラーゼ活性なしのウェル430は、純粋な野生型ファージ432を表す。
次いで、個々のプラークは、緩衝液もしくは培地(例えば、100μL TMS)中に懸濁され得、アリコート(例えば、約5μL)が濁ったE. coli O157:H7培養物を含むウェルに添加され得、インキュベーション(例えば、37℃で約45分〜1時間)後にアッセイされ得る。陽性ウェルは、組換えファージの純粋培養物を含むと予測される。さらに、ある種の実施形態において、プラーク精製のさらなるラウンドを含むことは好ましいことであり得る。
従って、図4によって例示されるように、JG04での適切な組換えプラスミドの相同組換えによって生成される組換えファージは、合計のファージのうちの0.005%を含む混合物から単離され得る。単離後に、大規模生産を、上記E. coli O157:H7検出アッセイにおいて使用するために適した高力価ストックを得るために行い得る。例えば、本明細書中の実施例においてより詳細に記載されるように、塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離は、ファージ粒子を汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離して、バックグラウンドを低減するために使用され得る。
このようにして、および以下の実施例においてより詳細に記載されるように、上記環境に由来するバクテリオファージへと挿入された上記目的のルシフェラーゼ遺伝子(例えば、ホタル、OplophorusもしくはNANOLUC(登録商標)などの操作されたルシフェラーゼ)を有する組換えバクテリオファージが、生成され得る。
(微生物を検出するために感染性因子を使用する方法)
本明細書で注記されるように、ある種の実施形態において、本発明は、微生物を検出するための感染性粒子を使用するための方法を包含し得る。本発明の方法は、種々の方法で具現化され得る。
従って、本発明の方法は、シグナルを増幅し、それによってサンプルに存在する低レベルの微生物(例えば、単一微生物)を検出する手段として、目的の特定の微生物を認識しかつこれに結合する結合因子の高い特異度を利用する。例えば、感染性因子(例えば、バクテリオファージ)は、特定の微生物の表面レセプターを特異的に認識し、従って、それらの微生物に特異的に感染する。よって、これらの感染性因子は、目的の微生物を標的とするために適した結合因子であり得る。本発明のいくつかの実施形態は、感染させて、目的の微生物の検出を容易にするための迅速かつ高感度の標的化のために、感染性因子の結合の特異性および高レベルの遺伝子発現能を利用する。
従って、一実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物を検出するための方法を包含し得、上記方法は、上記サンプルを、上記目的の微生物に感染する感染性因子とともにインキュベートする工程であって、ここで上記感染性因子は、インジケーター遺伝子を含み、その結果、目的の微生物の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程;および、上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の微生物が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
種々の感染性因子が使用され得る。代替の実施形態において、バクテリオファージ、ファージ、マイコバクテリオファージ(例えば、TBおよびパラTBに関して)、マイコファージ(例えば、真菌に関して)、マイコプラズマファージ、および生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母、および他の顕微鏡レベルの生物に侵入し得る任意の他のウイルスは、目的の微生物を標的とするために使用され得る。例えば、一実施形態において、上記目的の微生物が細菌である場合、上記感染性因子は、バクテリオファージを含み得る。本明細書で考察されるように、このようなバクテリオファージは、数百もの子孫細菌を生成するために、上記細菌の内部で複製し得る。上記バクテリオファージに挿入された上記インジケーター遺伝子の検出は、上記サンプル中の細菌の尺度として使用され得る。例えば、E. coliの十分に研究されたファージとしては、T1、T2、T3、T4、T5、T7、およびラムダが挙げられる;ATCCコレクションの中で入手可能な他のE. coliファージとしては、例えば、phiX174、S13、Ox6、MS2、phiV1、fd、PR772、およびZIK1が挙げられる。あるいは、天然のバクテリオファージは、種々の環境的供給源から単離され得る。ファージ単離のための供給源は、目的の微生物が見いだされると予測される位置に基づいて選択され得る。従って、いくつかの実施形態において、上記インジケーターバクテリオファージは、インジケーター部分を含み、単一E. coli細胞の感染は、上記インジケーター部分を介して生成される増幅されたシグナルで検出され得る。従って、上記方法は、ファージ複製の間に生成されるインジケーター部分を検出する工程であって、ここで上記インジケーターの検出は上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含し得る。
一実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の細菌を検出するための方法を包含し得、上記方法は、上記サンプルを、上記目的の細菌に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。一実施形態において、および本明細書で詳細に記載されるように、検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプルに存在する目的の細菌の量に相当する。
一実施形態において、上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域である。本明細書でより詳細に記載されるように、上記後期クラスIII遺伝子領域への上記インジケーター遺伝子の挿入は、上記インジケーター遺伝子が上記細菌における複製の際に多量に発現されることを確実にし得る。
本発明の組成物に関して上記に記載されるように、上記バクテリオファージは、T7、T4、T4様、JG04バクテリオファージ、またはT7、T4もしくは他のT4様ファージと少なくとも90%の相同性を有するゲノムを有する別の天然のバクテリオファージに由来する。
また、ある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない。従って、ある種の実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。
種々のインジケーター部分が使用され得る。ある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードし得る。例えば、上記ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、もしくは操作されたルシフェラーゼのうちの1種であり得る。
本明細書でより詳細に記載されるように、本発明の方法およびシステムは、種々の感染多重度(MOI)を利用し得る。ある種の実施形態において、上記MOIは、標準的アッセイより高い(is higher that standard assays)。このような比較的高いMOIは、上記サンプル中に非常に少量で存在する微生物の感染を可能にし得る。例えば、ある種の実施形態において、上記インキュベートする工程のためのバクテリオファージの濃度は、1×107 PFU/mLより高い。
ある種の実施形態において、上記組換え感染性因子は、上記感染性因子ストックの生成の際に生成され得るいかなる残りのインジケータータンパク質も含まないように、精製され得る。従って、ある種の実施形態において、および本明細書でより詳細に記載されるように、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプルとともにインキュベートする前に、塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して精製され得る。上記感染性因子がバクテリオファージである場合、この精製は、DNAを有しないバクテリオファージ(すなわち、空のファージ)を除去するという追加の利点を有し得る。
以下でさらに記載されるように、ある種の実施形態において、上記方法は、上記目的の微生物が大体積のサンプルから濃縮もしくは捕捉されることによる工程を使用し得る。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、上記インキュベートする工程の前に、上記微生物を上記サンプルから固体支持体上に捕捉するための工程を包含し得る。
いくつかの実施形態において、上記方法は、固体支持体(例えば、磁性ビーズもしくはフィルター基材)上に捕捉された微生物と、複数の上記特異的感染性因子(例えば、インジケーターバクテリオファージ)とを接触させる工程および上記バクテリオファージが上記細菌を結合しかつ感染することを可能にする工程を包含し得る。他の実施形態において、上記微生物の捕捉は、検出に必須ではない。種々の固体支持体が使用され得る。ある種の実施形態において、上記固体支持体は、マルチウェルプレート、フィルター、ビーズ、またはラテラルフローストリップ、フィルターストリップ、フィルターディスク、もしくはフィルターペーパー、または細胞を培養するために設計された薄いフィルム(例えば、3MによるPetriFilm)を含み得る。他の固体支持体はまた、適切であり得る。
上記目的の微生物は、結合因子を使用することによって上記サンプルから精製され得る。例えば、ある種の実施形態において、上記捕捉する工程は、微生物を捕捉抗体と結合させる工程をさらに包含する。上記抗体は、上記固体支持体とともに使用され得る。例えば、ある種の実施形態において、上記捕捉抗体は、上記固体支持体への上記微生物の結合を促進する。
本発明の方法は、感度を増加させるための種々の工程を包含し得る。例えば、本明細書でより詳細に考察されるように、上記方法は、過剰な親バクテリオファージおよび/または上記バクテリオファージ調製物を汚染するルシフェラーゼもしくは他のレポータータンパク質を除去するために、上記バクテリオファージを添加した後であるが、インキュベートする前に、上記捕捉されかつ感染した微生物を洗浄する工程を包含し得る。
当該分野で公知のアッセイとは対照的に、上記目的の微生物の検出は、上記微生物の集団を増加させる方法として、上記サンプルを培養する必要性なしに完了し得る。従って、ある種の実施形態において、上記目的の微生物の検出は、富化のための培養を使用して、微生物の数を4倍もしくは10倍程度増加させるために必要とされる期間より短い時間で完了する。例えば、ある種の実施形態において、検出に必要とされる合計時間は、6.0時間未満、5.0時間、4.0時間、3.0時間、2.5時間、2.0時間、1.5時間、1.0時間、45分、もしくは30分未満である。
また、当該分野で公知のアッセイとは対照的に、本発明の方法は、個々の微生物を検出し得る。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルに存在する上記微生物の≦10個の細胞(すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個の微生物)を検出し得る。
従って、本発明の局面は、インジケーター部分を介して試験サンプル中の微生物の検出のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物が細菌である場合、上記インジケーター部分は、感染性因子(例えば、インジケーターバクテリオファージ)と関連づけられ得る。上記インジケーター部分は、基質と反応して、検出可能なシグナルを放射してもよいし、内因性のシグナル(例えば、蛍光タンパク質)を放射してもよい。いくつかの実施形態において、上記検出感度は、試験サンプル中の上記目的の微生物の50個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、もしくは2個程度の少なさの細胞の存在を明らかにし得る。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の実に1個の細胞が、検出可能なシグナルを生じ得る。
いくつかの実施形態において、上記感染性因子と関連付けられる上記インジケーター部分は、上記感染性因子の複製の間もしくは後に検出可能であり得る。インジケーター部分としての使用に適した検出可能な生体分子の多くの異なるタイプが、当該分野で公知であり、多くは市販されている。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、酵素を含み、これは上記インジケーター部分として働く。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージのゲノムは、可溶性タンパク質をコードするように改変される。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素をコードする。上記インジケーターは、光を放射し得る、および/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の操作されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素はまた、適切なインジケーター部分であり得る。
上記インジケーターを検出する工程は、光の放射を検出する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、ルミノメーターは、上記インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)を検出するために使用され得る。しかし、他の機械もしくはデバイスもまた、使用され得る。例えば、分光光度計、CCDカメラ、もしくはCMOSカメラが、色の変化および他の光の放射を検出し得る。
いくつかの実施形態において、インジケーターファージは、上記ファージが特異的に認識しかつ感染する細菌の感染の際にのみ生成される酵素(例えば、ルシフェラーゼ)の遺伝子を含むように遺伝子操作される。いくつかの実施形態において、上記インジケーター部分は、ウイルス生活環において後期に発現される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載される場合、上記インジケーターは、可溶性タンパク質(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)であり、そのコピー数を制限するファージ構造タンパク質と融合されない。
本発明の方法の種々の実施形態において、上記微生物は、サンプルからの上記微生物のいかなる精製もなしに、検出され得る。例えば、ある種の実施形態において、1もしくは数個の目的の微生物を含むサンプルは、アッセイ容器(例えば、スピンカラム、マイクロタイターウェル、もしくはフィルター)に直接適用され得、上記アッセイは、そのアッセイ容器の中で行われる。このようなアッセイの種々の実施形態は、本明細書で開示される。
例えば、細菌を含む試験サンプルのアリコートを、スピンカラムに適用し得、そして組換えバクテリオファージでの感染および任意の過剰なバクテリオファージを除去するための最適な洗浄後に、検出される可溶性インジケーターの量は、感染した細菌によって生成されるバクテリオファージの量に比例する。実施例4は、このようなアッセイを記載する。
あるいは、試験サンプルのアリコートは、マルチウェルプレートのウェルへと直接分配され得、インジケーターファージが添加され得、そして感染のための十分な期間の後、溶解緩衝液は、上記インジケーター部分のための基質(例えば、ルシフェラーゼインジケーターのためのルシフェラーゼ基質)と同様に添加され得、上記インジケーターシグナルの検出のためにアッセイされ得る。実施例5〜6は、フィルタープレート上で行われる方法の実施形態を記載する。本明細書中の実施例7〜9は、「濃縮なしアッセイ」といわれるアッセイバリエーションを記載する。
例えば、多くの実施形態において、マルチウェルプレートは、上記アッセイを行うために使用される。プレート(もしくは検出する工程が行われ得る任意の他の容器)の選択は、上記検出する工程に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかのプレートは、光の放射の検出に影響を及ぼし得る、着色したもしくは白色のバックグラウンドを含み得る。概して、白色のプレートは、より高い感度を有するが、より高いバックグラウンドシグナルをも生じる。プレートの他の色は、より低いバックグラウンドシグナルを生成し得るが、わずかにより低い感度を有し得る。さらに、バックグラウンドシグナルに関する1つの理由は、1つのウェルから別の隣接するウェルへの光の漏れである。白色のウェルを有するいくつかのプレートがあるが、上記プレートの残りは黒色である。これは、上記ウェルの内部での高いシグナルを可能にするが、ウェルからウェルへの光の漏れを防止し、従って、バックグラウンドを低減し得る。従って、プレートもしくは他のアッセイ容器の選択は、上記アッセイのための感度およびバックグラウンドシグナルに影響を与え得る。
従って、インジケーターファージを利用するいくつかの実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、少なくとも1個のサンプル微生物を捕捉する工程;該少なくとも1個の微生物を、複数のインジケーターファージとともにインキュベートする工程;子孫ファージを生成し、可溶性インジケーター部分を発現するための、感染および複製の時間を与える工程;ならびに上記子孫ファージ、好ましくは上記インジケーターを検出する工程であって、ここで上記インジケーターの検出は、上記微生物が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
例えば、いくつかの実施形態において、上記試験サンプル微生物は、プレートの表面に結合することによって、または上記サンプルを細菌学的フィルター(例えば、0.45μm孔サイズのスピンフィルターもしくはプレートフィルター)を介してろ過することによって、捕捉され得る。一実施形態において、上記感染性因子(例えば、インジケーターファージ)は、最小限の体積で、上記フィルター上に直接捕捉されたサンプルに添加される。一実施形態において、上記フィルターもしくはプレート表面上に捕捉された微生物は、その後、過剰な結合されていない感染性因子を除去するために、1回以上洗浄される。一実施形態において、培地(例えば、本明細書でLBブロスともいわれるLuria−Bertani)は、ファージの複製および上記インジケーター部分をコードする遺伝子の高レベル発現を可能にするために、さらなるインキュベーション時間にわたり添加される。しかし、上記アッセイの実施形態の驚くべき局面は、上記インキュベーション工程が単一のファージ生活環にとって十分長いことが必要であることのみである。バクテリオファージを使用することの増幅力は、上記ファージが数サイクルにわたって複製するように、より時間を要すると以前は考えられていた。インジケーターファージの単一の複製が、本発明のいくつかの実施形態に従って高感度でかつ迅速検出を容易にするために十分である。
可溶性インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)は、上記細菌の溶解の際に周囲の液体へと放出され、これは次いで、測定および定量され得る。一実施形態において、上記溶液は、次いで、上記フィルターを通して遠心され、その濾液はアッセイのために収集され、上記インジケーター酵素のための基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)が添加される。上記濾液は、そのようにして上記捕捉固体支持体から除去され得、新たな入れ物において(例えば、ルミノメーターにおいて)分析され得るか、または上記インジケーターシグナルは、上記フィルター上で直接測定され得る。
種々の実施形態において、上記精製された親インジケーターファージは、上記検出可能なインジケーター自体を含まない。なぜなら上記親ファージは、これが試験サンプルとともにインキュベーションするために使用される前に精製され得るからである。後期(クラスIII)遺伝子の発現は、ウイルス生活環において後期に起こる。本発明のいくつかの実施形態において、親ファージは、いかなる存在するインジケータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)をも排除するために精製され得る。いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後の子孫バクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。従って、多くの実施形態において、上記検出工程において親ファージを子孫ファージから分離することは必須ではない。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記インジケーターファージは、バクテリオファージである。一実施形態において、上記インジケーター部分は、可溶性ルシフェラーゼであり、これは、上記宿主微生物の溶解の際に放出される。
従って、代替の一実施形態において、上記インジケーター基質は、フィルターに結合したままであるかまたはプレート表面に結合したままである上記サンプルの一部とともにインキュベートされ得る。よって、 いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、96ウェルフィルタープレート(もしくは通常の96ウェルプレート)であり、上記基質反応は、上記プレートを上記ルミノメーターの中に直接置くことによって検出され得る。
例えば、一実施形態において、本発明は、E. coli O157:H7を検出するための方法を包含し得、上記方法は、96ウェルフィルタープレート上に捕捉された細胞に、感染の際にルシフェラーゼを発現し得る複数の親インジケーターファージを感染させる工程;過剰なファージを洗い流す工程;LBブロスを添加し、ファージが複製しかつ上記特定のE. coli標的を溶解する時間を与える工程(例えば、30〜90分);およびルシフェラーゼ基質を添加し、上記96ウェルプレートにおいて直接、ルシフェラーゼ活性を測定することによって上記インジケータールシフェラーゼを検出する工程であって、ここでルシフェラーゼ活性の検出は、上記E. coli O157:H7が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
別の実施形態において、本発明は、E. coli O157:H7を検出するための方法を包含し得、上記方法は、96ウェルプレート中の液体溶液もしくは懸濁物中の細胞に、感染の際にルシフェラーゼを発現し得る複数の親インジケーターファージを感染させる工程;ファージが複製しかつ上記特定のE. coli標的を溶解する時間(例えば、30〜90分)を与える工程;およびルシフェラーゼ基質を添加し、上記96ウェルプレートにおいて直接、ルシフェラーゼ活性を測定することによって、上記インジケータールシフェラーゼを検出する工程であって、ここでルシフェラーゼ活性の検出は、上記E. coli O157:H7が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。このような実施形態において、捕捉する工程は、必須ではない。いくつかの実施形態において、上記液体溶液もしくは懸濁物は、消費可能な試験サンプル(例えば、野菜洗浄液)であり得る。いくつかの実施形態において、上記液体溶液もしくは懸濁物は、濃縮されたLBブロスもしくはNutrient Brothで強化された野菜洗浄液であり得る。いくつかの実施形態において、上記液体溶液もしくは懸濁物は、LBブロス中で希釈された細菌であり得る。
いくつかの実施形態において、上記微生物の溶解は、上記検出工程の前、その間、もしくはその後に起こり得る。実験は、感染した溶解されていない細胞が、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ基質の添加の際に検出可能であり得ることを示唆する。おそらくは、ルシフェラーゼは、完全な細胞溶解なしに、細胞から出ていき得る、および/またはルシフェラーゼ基質が細胞に入り得る。従って、スピンフィルターシステムを利用する実施形態のために、上記溶解物へと放出されルシフェラーゼのみ(かつルシフェラーゼはさらに無傷の細菌の中にない)が、上記ルミノメーターにおいて分析される場合、溶解は、検出のために必要とされる。しかし、溶液もしくは懸濁物のサンプルとともにフィルタープレートもしくは96ウェルプレートを利用する実施形態のために、無傷の細胞および溶解した細胞で満ちている元のプレートが上記ルミノメーターにおいて直接アッセイされる場合、溶解は、検出に必須ではない。
いくつかの実施形態において、インジケーター部分(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、30分以上にわたって続き得、種々の時点での検出は、感度を最適化するために望ましいことであり得る。例えば、上記固体支持体として96ウェルフィルタープレートを、および上記インジケーターとしてルシフェラーゼを使用する実施形態において、ルミノメーター読み取りは、最初に、および10分もしくは15分の間隔で、上記反応が完了するまで行われ得る。
驚くべきことに、試験サンプルに感染させるために利用される高濃度のファージ(すなわち、高いMOI)は、非常に短い時間枠で、標的微生物の非常に少数の検出を成功裏に達成した。ファージを試験サンプルとともにインキュベートすることは、いくつかの実施形態において、単一のファージ生活環にとって十分長いことのみを必要とする。いくつかの実施形態において、このインキュベートする工程のためのバクテリオファージの濃度は、7×106、8×106、9×106、1.0×107、1.1×107、1.2×107、1.3×107、1.4×107、1.5×107、1.6×107、1.7×107、1.8×107、1.9×107、2.0×107、3.0×107、4.0×107、5.0×107、6.0×107、7.0×107、8.0×107、9.0×107、もしくは1.0×108 PFU/mLより高い。
ファージのこのような高濃度での成功は驚くべきことである。なぜならファージの多数が、「非感染溶菌」と以前に関連しており、これは、標的細胞を死滅させ、それによって、より早期のファージアッセイからの有用なシグナルの生成を妨げたからである。本明細書で記載される調製されたファージストックの浄化(clean−up)は、この問題を軽減する助けとなると考えられる(例えば、塩化セシウム等密度密度勾配超遠心分離による浄化)。なぜなら上記ファージと関連付けられたいかなる汚染するルシフェラーゼをも除去する工程に加えて、この浄化はまた、ゴースト粒子(ghost particle)(DNAを失った粒子)を除去し得るからである。上記ゴースト粒子は、「非感染溶菌」を介して細菌細胞を溶解し得、上記細胞を早期に死滅させ、それによってインジケーターシグナルの生成を防止することができる。電子顕微鏡法は、粗製のJG04溶解物(すなわち、塩化セシウム浄化前)が50%より多いゴーストを有し得ることを明らかに示す。これらのゴースト粒子は、細胞膜に穴をあける多くのファージ粒子の作用を通じて、上記微生物の早期の死滅に寄与し得る。従って、ゴースト粒子は、高いPFU濃度が有害であると報告された以前の問題の一因であった可能腺がある。さらに、非常にきれいなファージ調製物は、上記アッセイが洗浄工程なしで行われることを可能にし、このことは、濃縮なしアッセイを可能にする。
(スピンカラムアッセイ)
図5は、本発明の一実施形態に従う可溶性ルシフェラーゼを生成するインジケーターファージを使用するというストラテジーを示す。この方法では、上記ファージ(例えば、T7、T4、もしくはJG04ファージ)は、上記ファージの複製の間に可溶性ルシフェラーゼを発現するように操作され得る。ルシフェラーゼの発現は、ウイルスカプシドプロモーター(例えば、上記バクテリオファージT7もしくはT4後期プロモーター)によって駆動され、高発現を生じる。親ファージは、ルシフェラーゼを含まないので、上記アッセイにおいて検出されるルシフェラーゼは、上記細菌細胞の感染の間の子孫ファージの複製に必ず由来する。従って、上記親ファージを上記子孫ファージから除去する必要性は一般にない。
これらの実験において、定量される予定のE. coli細菌502を含むサンプル500のうちの少なくとも一部は、スピンカラムフィルター中に置かれ、上記LBブロスを除去するために遠心分離され、可溶性ルシフェラーゼ503を発現するように、適切な多重度の、遺伝子操作されたT7ファージ504が添加される。上記感染した細胞は、子孫ファージの複製および細胞溶解が起こるために十分な時間(例えば、37℃で30〜90分)にわたってインキュベートされ得る。上記溶解物中の親504および子孫ファージ516と遊離ルシフェラーゼ503は、次いで、例えば、遠心分離によって収取され得、その濾液中のルシフェラーゼのレベルは、ルミノメーター518を使用して定量され得る。あるいは、ハイスループット法は、細菌サンプルが96ウェルフィルタープレートに適用される場合に使用され得、上記に列挙された全ての操作が行われた後、最終の遠心分離工程なしで元の96ウェルフィルタープレート中のルシフェラーゼについて直接アッセイされ得る。
本発明の実施形態の例示的実験からのデータは、図6〜9に示される。その結果は、インジケーターファージでの細菌の感染によって生成された可溶性ルシフェラーゼの検出を介してサンプル細菌をアッセイするための、インジケーターファージを利用する本発明の代替の実施形態を明らかに示す。相対的光単位(RLU)として計算されるインジケーター検出レベルは、標準的な一晩のコロニー形成単位(CFU)アッセイから決定されて「アッセイあたりの細胞」として表される細胞濃度に対してプロットされるので、類似の感度を明らかに示す。ルシフェラーゼシグナルの増加は、投入サンプル細胞の増加に相当し、用量依存性応答を明らかに示す。
図6に示されるように、本発明の方法は、スピンカラムフィルターとともにインジケーターファージを使用しての、標的細菌の検出に対して、高感度を明らかに示し得る。このアッセイでは、試験サンプルは、遠心分離によってスピンフィルター上に収集され得、可溶性ルシフェラーゼの遺伝子を含むインジケーターファージ(例えば、図1に示されるとおり)とともにインキュベートされ得る。感染に十分な時間(例えば、室温で10分)にわたるインキュベーション後に、上記フィルターは、過剰な投入ファージを除去するために洗浄および遠心され得る。培地(例えば、LBブロス)が添加され得、子孫ファージの複製および細菌の溶解を可能にするためにインキュベートされ得る(例えば、37℃で30分)。フィルターは、その濾液(これは、ルミノメータープレートに移され得る)を取り出すために再び遠心され得、ルシフェラーゼアッセイを行った(例えば、ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega, Inc.)の注入とともにPromega(登録商標)ルミノメーターを使用する)。細胞数は、並行するCFUアッセイにおけるコロニー数に従って較正され得る。
図6に示されるように、約1,700個の細菌細胞は、元のサンプル中で検出され得、段階希釈物のさらなるアッセイは、平均1.7個の細胞に至るまでの検出を明らかに示し得、これは、1もしくは2個の細胞の実際の検出に相当する。これは、1〜3個程度の少なさのE. coli細胞の感染が、ルシフェラーゼ活性を介して測定可能なシグナルを提供し得ることを示す。これはまた、バックグラウンドを超える実に単一細胞の存在もしくは非存在に関する統計的有意性を示す(p値=0.018)。
図7は、細胞数の広い範囲にわたる段階希釈物を使用して、図5のアッセイについて記載される同じ方法の非常に大きな検出範囲を明らかに示す。これは、検出が平均1.4個の細胞から1400万個の細胞までの範囲に及び得ることを示す。
(フィルタープレートアッセイ)
上記で注記されるように、ある種の実施形態において、上記アッセイは、マイクロタイターアッセイプレートのウェル中で直接行われ得る。例えば、図8により、捕捉および検出のために96ウェルフィルタープレートとともにインジケーターファージを使用することが明らかに示されている。上記方法は、アッセイ全体が、ルシフェラーゼ反応を含めて96ウェルフィルタープレート中で行われることを除いて、図5に関して上記に記載される方法と同じである。この実施形態は、上記スピンフィルター法と比較して操作および材料を減少させる。減少された操作および96ウェルフィルタープレートの使用は、ハイスループットアッセイ状況になじみやすく、本発明の実施形態に従う液体取り扱いロボットとともに使用するために適合され得る。図8は、この実施形態において、96ウェルフィルタープレートを使用して単一E. coli細胞(平均0.5細胞がアッセイされ、上記ウェルのうちの約1/2が単一細胞を受け入れたことが確認された)、5.4個および54個の細胞を検出し得ることを示す。
図9は、ある種の実施形態において、細胞濃度の非常に大きな検出範囲が、同じアッセイに関して、96ウェルシステムを使用して、アッセイあたり平均して1個未満の細胞(単一細胞)からアッセイあたり少なくとも1400万個の細胞まで達成され得ることを明らかに示す。上記ルシフェラーゼ基質の添加後の種々の時点での複数リードは、変化した感度を明らかに示し得る。<10個の細胞を検出するための感度を、15分のリードで達成した。そして単一細胞レベルに至るまでの感度を、30分のリードで達成し得る。従って、数十個の細胞またはそれ未満が検出される必要がなければ時間は節約され得る。シグナルが、両方の実験において投入サンプル細胞数の増加に応じて増加し、繰り返すと、用量依存性応答を明らかに示すことに注意のこと。
図10は、本発明の一実施形態に従う改変されたバクテリオファージを使用して目的の細菌を検出するためのフィルタープレートアッセイを示す。このアッセイを利用する実際の実験は、実施例6に記載される。簡潔には、目的の細菌1018を含むサンプル1016は、マルチウェルフィルタープレート1004のウェル1002に添加され得、上記サンプルから液体を除去することによって、上記サンプルを濃縮するために遠心され得る1006。遺伝的に改変されたファージ1020は、ウェルに添加され、吸着1008、続いて標的細菌の感染およびファージ生活環の進行1010に十分な時間(例えば、約45分)にわたって添加されるさらなる培地とともにインキュベートされる。最後に、ルシフェラーゼ基質が添加され、存在する任意のルシフェラーゼ1024と反応する。得られる放射は、ルシフェラーゼ活性1026を検出するルミノメーター1014において測定される。図11は、既知の細胞数を有するサンプル中のE. coli O157:H7細胞を検出するためにJG04−NANOLUC(登録商標)ファージを使用する、図10に記載されるとおりのフィルタープレートアッセイからの結果を示す。スチューデントのt検定は、アッセイあたり0個の細胞から1個の細胞の間で、0.034のp値を示し、これから、統計的有意性が明らかに示された。
ある種の実施形態において、上記アッセイは、上記捕捉表面上にもしくはその付近に上記細菌を濃縮することなく行われ得る。図12は、本発明の一実施形態に従う改変されたバクテリオファージを使用して目的の細菌を検出するための「濃縮なしアッセイ」を図示する。インジケーターファージ 1214のアリコートは、マルチウェルプレート1204の個々のウェル1202に分配され、次いで、細菌1212を含む試験サンプルアリコートが添加され、ファージが複製して可溶性インジケーター1216(例えば、ルシフェラーゼ)を生成するために十分な期間にわたってインキュベートされる1206(例えば、37℃で45分)。可溶性インジケーターおよびファージを含む上記プレートウェル1208は、次いで、上記プレート1218上で上記インジケーター活性を測定するためにアッセイされ得る1210(例えば、ルシフェラーゼアッセイ)。この方法を利用する実際の実験は、実施例7〜9に記載される。この実施形態において、上記試験サンプルは、濃縮されない(例えば、遠心分離によって)が、単純に、ある期間にわたってインジケーターファージとともに直接インキュベートされ、その後、ルシフェラーゼ活性についてアッセイされる。
図13は、少数範囲の既知の細胞数を有するサンプル(すなわち、非常に希釈された細胞サンプル)中のE. coli O157:H7細胞を検出するために、JG04−OpLucファージを使用する、図12に示されるとおりの濃縮なしアッセイタイプのアッセイからの結果を示す。この実験は、実施例7に記載されるように、統計的有意差は、アッセイあたり0個の細胞および1個の細胞からのシグナル間で認められ得ることを示し(ANOVA検定によってp値=0.0024)、このことから、単一細胞を検出する能力が明らかに示される。従って、上記アッセイは、驚くべきことに感度が高い。ウェルあたり1個より少ない細胞を有するサンプルは、上記バックグラウンドシグナルを上回るウェルの比例した数を示すようである。
図14は、非常に少数範囲から非常に多数範囲における既知の細胞数を有するサンプル(すなわち、アッセイあたり1個未満の細胞から数百万個の細胞を含むサンプル)中のE. coli O157:H7細胞を検出するためにJG04−OpLucファージを使用する濃縮なしアッセイからの結果を示す。この実験は、実施例8に記載されるように、アッセイあたり0個の細胞および1.1個の細胞に由来するシグナル間の統計的有意差を明らかに示し(スチューデントのt検定によってp値=0.000702)、単一細胞を検出する能力を実証する。アッセイあたりより多くの細菌細胞は、アッセイあたり少なくとも106個の細菌細胞までの、用量依存性様式でのシグナルの増加を示し、驚くべきことに、非常に広い検出範囲を明らかに示す。
図15は、実施例9に記載されるように、既知の細胞数を有する野菜洗浄液サンプル中のE. coli O157:H7細胞を検出するためにJG04−OpLucファージを使用する濃縮なしアッセイからの結果を示す。
上記野菜洗浄液を調製するために、野菜の葉(例えば、ホウレンソウもしくはレタス)は秤量され、きれいなプラスチックバッグに加えられ得る。LB(±0.01〜0.05% Tween20)のうちの1mLを、野菜の各グラム(g)あたりに添加した。葉および溶液を、数分間にわたって手動で混合する。次いで、液体を上記プラスチックバッグから抜き出し、「野菜洗浄液」として使用される。この方法を使用して、約100万個の細菌が、1枚のホウレンソウの葉(1〜2g)に存在することが見いだされた。
上記アッセイは、検出されるシグナルが、上記サンプル中の目的の微生物の量に比例するという点で定量的である。例えば、図15に示される実験において、既知数のE. coli O157:H7細胞を、病原性細菌を有する野菜の汚染をまねるために、野菜洗浄液サンプルに添加した。野菜洗浄液サンプルを使用する実験は、アッセイあたり0個の細胞および3個の細胞に由来するシグナル間の顕著な差異を明らかに示し、野菜洗浄液中の一桁の細胞数を検出する能力を実証する。アッセイあたりより多くの細菌細胞を使用することは、用量依存性様式でのシグナルの増加を示す。上記野菜洗浄液は、約106個の非標的細菌/mLを含み、このアッセイではサンプルあたり少なくとも105個の非標的細菌に相当する(0細胞E. coli O157:H7コントロールを含む)。3個程度の少なさの標的細菌細胞を105個の非標的細菌から識別する能力は驚くべきことであり、繰り返すと、上記アッセイの特異性を明らかに示す。
(感染性因子に曝露する前の微生物の捕捉)
いくつかの実施形態において、本発明は、微生物を捕捉するための工程を要しない方法およびシステムを含む。他の実施形態は、サンプルからの細菌細胞の物理的単離を可能にする。本明細書で記載される方法は、サンプルに存在する低レベルの微生物(例えば、単一微生物)の検出を容易にするための手段として働き得る。捕捉する工程は、特異的結合因子(例えば、上記目的の微生物を認識する抗体)に基づいてもよいし、上記微生物の他の特徴に関する選択(例えば、サイズ分画)に基づいてもよい。
いくつかの実施形態において、微生物は、分子特異性(例えば、サイズ)以外の物理的特徴に基づいて捕捉される。いくつかの実施形態において、本発明は、上記微生物の物理的サイズを利用して、上記微生物を固体支持体上に捕捉する。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、フィルターである。例えば、細菌学的フィルター(例えば、0.45μm孔サイズのスピンフィルター)を通してサンプルをろ過することは、無傷な細菌を保持しながら、より小さな物質を通過させる。あるいは、プレートフィルターが微生物を捕捉するために使用されてもよいし、種々の他のフィルターデバイスが使用されてもよい(例えば、96ウェルフィルタープレート)。
例えば、上記方法は、上記微生物を固体支持体上に収集する工程を包含し得る(例えば、サンプルを、細菌学的フィルターを通してろ過することによるなど)。サイズベースの捕捉後に、上記目的の微生物を特異的に標的とする任意の結合因子が使用されてもよい。例えば、感染性因子は、上記目的の微生物を特異的に標的とし同定するために、上記捕捉された微生物とともにインキュベートされ得る。上記サンプル中の微生物を単離する他の方法が使用されてもよい。いくつかの実施形態において、検出工程は、このような捕捉工程の前に、それと同時に、もしくはその後に行われ得る。
いくつかの実施形態において、目的の微生物に高特異性を有する結合因子は、サンプルに存在する低レベルの微生物(例えば、単一微生物)の特異的捕捉を容易にするための手段として使用され得る。いくつかの実施形態において、試験される予定の液体サンプルの大体積は、さらなる試験の前に効率的に濃縮される必要があり得る。
例えば、単一細菌(これは、約1立方マイクロメートルの体積を有し得る)は、1012立方マイクロメートルの体積を有する1ミリリットルサンプルから単離され得る。このような実施形態において、上記捕捉する工程は、上記サンプルと、複数の(過剰な)アフィニティー精製された捕捉抗体もしくは抗体フラグメントとを接触させる工程を包含し得る。
いくつかの実施形態は、目的の特異的微生物の表面上で見いだされる抗原性分子に対して生成された、アフィニティー精製されそして/または逆精製された表面特異的抗体もしくは抗体フラグメントを利用する。このような抗体もしくは抗体フラグメントは、捕捉目的もしくは検出目的もしくは両方のために、微生物を特異的に同定し得る。多種多様な細菌もしくは他の微生物上の表面抗原の特異的認識を明らかに示す抗体は、多くの供給源(例えば、Kirkegaard & Perry Laboratories, Inc. (KPL)もしくはAbcam)から市販されている。
本発明のいくつかの実施形態において、特定の微生物(例えば、E. coli O157:H7)の微生物表面抗原を認識する、アフィニティー精製され、そして/または逆精製された表面特異的抗体は、他の類似の微生物(例えば、E. coli B)を認識しない。いくつかの実施形態において、例えば、E. coli BもしくはE. coli O157:H7に特異的な抗体は、Salmonella typhimuriumもしくはStaphylococcus epidermidisの細胞を認識しない。これは、別の驚くべき発見を表す。なぜなら多くの細菌は、特に密接に関連した種の間で非常に類似していると以前は考えられていた、例えば、表面リポポリサッカリド(グラム陰性細菌)もしくはリポテイコ酸(グラム陽性細菌)分子を有するからである。
本明細書で開示される抗体ベースの捕捉のための方法は、他の微生物と交差反応しない表面特異的抗体が利用可能である、目的の任意の細菌もしくは他の微生物(例えば、病原性微生物)に適合され得る。
例えば、いくつかの実施形態において、本発明の捕捉する工程は、上記微生物の捕捉を容易にするために、上記微生物に特異的である捕捉抗体もしくは抗体フラグメントを使用し得る。いくつかの実施形態において、捕捉抗体は、固体支持体(例えば、ビーズもしくはプレート表面)に付着した別の結合因子と結合する化学部分に結合体化され得る。例えば、いくつかの実施形態において、上記捕捉抗体は、固体支持体に結合したストレプトアビジンへの結合を促進するためにビオチン化され得る。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、磁性ビーズを含む。他の実施形態において、固体支持体は、プレート表面もしくはマルチウェルプレート(例えば、ELISAプレート)の表面を含む。例えば、ELISAプレートは、上記目的の微生物を特異的に認識する抗体で被覆され得る。
ある種の実施形態において、上記微生物は、固体支持体にその後結合する遊離捕捉抗体もしくは抗体フラグメントへの上記微生物の結合を通じて、上記サンプルの他の構成要素から単離され得る。いくつかの実施形態において、上記捕捉抗体もしくは抗体フラグメントは、固体支持体に結合した第2の因子(例えば、ストレプトアビジン)に結合する結合因子(例えば、ビオチン)を含む。
いくつかの実施形態において、例えば、上記捕捉抗体がビオチンで標識される場合、上記方法は、上記サンプルと、複数の磁性ストレプトアビジン被覆ビーズとを接触させて、上記細菌−抗体複合体を結合する工程、および上記ビーズ−抗体−細菌複合体を磁石で隔離して、上記細菌を単離する工程をさらに包含し得る。あるいは、上記ビオチン−抗体:細菌複合体を精製する他の方法が使用され得る。このような実施形態を用いると、1ミリリットルサンプル中の細菌は、約1マイクロリットル(約1000倍)へと濃縮され得、本明細書で記載される方法によるさらなる検出および/もしくは定量を促進する。
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を包含し、ここでその捕捉工程は、上記微生物をサンプル中の他の構成要素から特異的に単離することを包含する。
あるいは、いくつかの実施形態において、上記捕捉する工程は、上記目的の微生物の他の特徴(例えば、サイズ)に基づき得る。サイズベースの捕捉を利用する実施形態において、上記固体支持体は、スピンカラムフィルターであり得る。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、96ウェルフィルタープレートを含む。あるいは、捕捉のための上記固体支持体は、アレイ上の位置、もしくは移動性の支持体(例えば、ビーズ)であり得る。
従って、いくつかの実施形態において、標的微生物は、上記で記載される方法を使用する検出の前に、大体積から捕捉および単離され得る。例えば、上記微生物は、捕捉抗体もしくは抗体フラグメントの属性を使用して特異的に単離され得る。いくつかの実施形態において、上記捕捉抗体は、磁性ストレプトアビジンビーズへの細胞−抗体複合体のその後の結合を促進するように、ビオチン化される。上記抗体上のビオチンは、上記磁性ビーズ上のストレプトアビジンに強固に結合し得る。あるいは上記捕捉抗体は、別のタンパク質もしくは他の分子(これは、ビーズもしくは別の固体支持体上での捕捉を容易にする)に結合体化され得る。このような実施形態は、特に、最初のサンプル体積が大きい場合、感度の増加を提供し得る。従って、上記方法は、 上記目的の微生物上の表面抗原(これは、それによって、捕捉固体支持体への結合を促進する)に特異的に結合し得る複数の結合因子を付着させる工程を包含し得る。
あるいは、上記抗細菌抗体を結合する別の化学的部分は、磁性ビーズを被覆するために使用され得る。例えば、上記抗細菌抗体を認識もしくは結合する二次抗体で被覆されたビーズが使用され得る。上記ビーズに結合した細菌は、次いで、単離され得る。一実施形態において、捕捉の効率は、上記ビーズに結合した細菌および結合していない上清画分をプレートし、得られたコロニー(CFU)を計数することによって定量され得る。他の実施形態において、基質(すなわち、上記インジケーター部分のための基質試薬)との反応によって生成されるシグナルは、検出のために測定される。
いくつかの実施形態において、抗体の特異性は、固体支持体上の特異的捕捉を使用して実証される。本発明の方法は、基材を上記微生物に特異的な結合因子とともに使用することによって、微生物(例えば、細菌)をサンプルから回収(retrieving)および濃縮する工程を包含し得る。一実施形態において、上記結合因子は、固体支持体(例えば、磁性ビーズ)上に固定されるか、または遊離であり、その後固体支持体上に固定される。次いで、上記固定された微生物は、上記サンプルから(例えば、吸引、デカンティング、磁力、もしくは他の適切な単離技術によって)取り出され得、種々の技術によって検出され得る。
図16は、無傷のE. coli O157:H7に対して生成される抗体の使用によって、サンプルからのE. coli O157:H7(しかしE. coli BでもS. typhimuriumでもない)の特異的捕捉の例示の実施形態を示す。従って、ある種の実施形態において、ストレプトアビジンで被覆された磁性ビーズを使用して、アフィニティー精製されかつ逆精製された、遊離のビオチン化ポリクローナル抗体(KPL)とともに予めインキュベートしたE. coli O157:H7を単離して、他の微生物種との交差反応性を最小限にし得る。ある種の実施形態において、上記E. coli O157:H7は、特異的E. coli O157:H7抗体を使用した場合にその捕捉された画分(すなわち、ビーズ画分)に存在するのみであり、その上清(結合されていない)画分中では、細菌は回収されない。ある種の実施形態において、E. coli B細胞およびS. typhimurium細胞は、E. coli O157:H7特異的抗体を使用する場合に、その上清画分中にのみ見いだされ、これにより、これら抗体の顕著な特異性が例証される。抗体の非存在下では、細菌の3タイプすべてが、その上清画分中に見いだされた。
(ハイブリッドイムノ−ファージ(HIP)アッセイ)
ある種の実施形態において、本発明の方法は、感染性因子での検出に加えて、目的の微生物を上記サンプルから精製および/もしくは濃縮するために、結合因子(例えば、抗体)の使用を組み合わせる。例えば、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、上記微生物を上記サンプルから、上記目的の微生物に特異的な捕捉抗体を使用して、先の支持体(prior support)上に捕捉する工程;上記サンプルを、上記目的の微生物に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は上記目的の微生物が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
例えば、図17は、本発明の一実施形態に従う改変されたバクテリオファージを使用して目的の細菌を検出するためのハイブリッドイムノ−ファージ(HIP)アッセイを示す。上記サンプルは、細菌特異的抗体で被覆されたマイクロタイタープレートウェルにまず適用される1702。次いで、上記プレートは、上記捕捉抗体への上記細菌の結合を促進するために遠心分離される1704。完全な細菌捕捉を可能にするために十分な時間の後、細菌特異的NANOLUC(登録商標)−ファージを含む溶液を、各サンプルに添加する1706。上記ファージとのインキュベーションは、上記捕捉された細菌への単一もしくは複数のファージの結合および付着を生じる1708。最後に、上記サンプルは、ファージ複製およびルシフェラーゼ発現を促進するためにインキュベートされ、このことは、細胞溶解および可溶性ルシフェラーゼの放出をもたらす1710。
図18は、実施例11で記載されるように、対数スケールで、既知の細胞数を有するサンプル中のE. coli O157:H7細胞を検出するためにJG04−NANOLUC(登録商標)ファージを使用する、HIPアッセイからの結果を示す。上記HIPアッセイは、約2×106 PFU JG04−NANOLUC(登録商標)ファージを有するLB培地中、100個および1,000個のE. coli O157:H7細胞を検出できた。細胞なしサンプルを超える平均シグナルは、上記100個の細胞サンプルに関しては約50倍から、上記1,000個の細胞サンプルに関しては1,000倍超までの範囲に及んだ。
いくつかの実施形態において、本明細書で記載される方法のインキュベートする工程は、7×106、8×106、9×106、1.0×107、1.1×107、1.2×107、1.3×107、1.4×107、1.5×107、1.6×107、1.7×107、1.8×107、1.9×107、2.0×107、3.0×107、4.0×107、5.0×107、6.0×107、7.0×107、8.0×107、9.0×107、もしくは1.0×108 PFU/mLより高いバクテリオファージの最終濃度を含む。この高いファージ濃度は、このようなアッセイに有害であると以前は主張されていたので、驚くべき結果を生じる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、目的の微生物の検出のために、3時間未満、2.5時間未満、2時間未満、1.5時間未満、もしくは1時間未満を要する。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記目的の微生物の100個、50個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、もしくは2個程度の少なさの細胞を検出し得る。これらは、以前に可能と考えられていたより短い時間枠である。いくつかの実施形態において、上記微生物の実に単一細胞が検出可能である。さらなる実施形態において、本発明は、本明細書で開示される方法を行う、および/もしくは本明細書で記載される改変された感染性因子を使用するための構成要素を含むシステム(例えば、コンピューターシステム、自動化システムもしくはキット)を含む。
(本発明のシステムおよびキット)
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書で開示される方法を行うための構成要素を含むシステム(例えば、自動化システムもしくはキット)を含む。本明細書で記載されるいくつかの実施形態は、上記方法を行うために必要とされる試薬および材料の最小限の量を考慮すると、自動化もしくはキットに特に適している。ある種の実施形態において、上記キットの構成要素の各々は、第1の部位から第2の部位へと送達可能である自己充足式ユニットを含み得る。
いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムもしくはキットを含む。上記システムもしくはキットは、ある種の実施形態において、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素、および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含み得る。本発明のシステムおよびキットの両方のいくつかの実施形態において、上記感染性因子は、上記目的の微生物に感染する組換えバクテリオファージであり、上記組換えバクテリオファージは、上記インジケーター部分として上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。いくつかのシステムは、上記目的の微生物を固体支持体上に捕捉するための構成要素をさらに含む。
ある種の実施形態において、上記システムおよび/もしくはキットは、上記捕捉された微生物サンプルを洗浄するための構成要素をさらに含み得る。さらにもしくは代わりに、上記システムおよび/もしくはキットは、上記インジケーター部分の量を決定するための構成要素をさらに含み得、ここで検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する。例えば、ある種の実施形態において、上記システムもしくはキットは、ルシフェラーゼ酵素活性を測定するための、ルミノメーターもしくは他のデバイスを含み得る。
いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、同じ構成要素は、複数工程(multiple steps)のために使用され得る。いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、上記工程は、ユーザーによってコンピューター入力を介して自動化もしくは制御され、そして/または液体取り扱いロボットが少なくとも1つの工程を行う。
従って、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムを包含し得、上記システムは、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素;上記微生物を上記サンプルから固体支持体上に捕捉するための構成要素;上記捕捉された微生物サンプルを洗浄して、結合されていない感染性因子を除去するための構成要素;および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含む。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、捕捉する工程および/またはインキュベートする工程および/または洗浄する工程のために使用され得る。いくつかの実施形態は、上記サンプル中の上記目的の微生物の量を決定するための構成要素であって、ここで検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する構成要素をさらに含む。このようなシステムは、微生物の迅速検出のための方法に関して上記に記載されるものに類似の種々の実施形態および下位実施形態を含み得る。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記感染性因子は、バクテリオファージである。コンピューター化システムにおいて、上記システムは、完全に自動化されていても、半自動化されていても、もしくはコンピューターを介してユーザーによって指示されてもよい(もしくはこれらのいくつかの組み合わせ)。
いくつかの実施形態において、上記システムは、上記サンプル中の他の構成要素から単離された上記目的の微生物のための構成要素を含み得る。
一実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための構成要素を含むシステムを包含し、上記システムは、少なくとも1種の微生物を、上記サンプル中の他の構成要素から単離するための構成要素;上記少なくとも1種の微生物に複数の親感染性因子を感染させるための構成要素;上記少なくとも1種の感染した微生物を溶解して、上記微生物に存在する子孫感染性因子を放出するための構成要素;および上記子孫感染性因子または上記子孫感染性因子の成分を検出するための構成要素であって、ここで該感染性因子または該感染性因子の成分は、上記微生物が上記サンプルに存在することを示す構成要素を含む。
上記システムは、子孫感染性因子の検出のために種々の構成要素を含み得る。例えば、一実施形態において、上記子孫感染性因子(例えば、バクテリオファージ)は、インジケーター部分を含み得る。一実施形態において、上記子孫感染性因子(例えば、バクテリオファージ)における上記インジケーター部分は、複製の間に発現される検出可能な部分(例えば、可溶性ルシフェラーゼタンパク質)であり得る。
他の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのキットを包含し得、上記システムは、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素;上記微生物を上記サンプルから固体支持体上に捕捉するための構成要素;上記捕捉された微生物サンプルを洗浄して、結合されていない感染性因子を除去するための構成要素;および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含む。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、捕捉する工程および/もしくはインキュベートする工程および/もしくは洗浄する工程のために使用され得る。いくつかの実施形態は、上記サンプル中の上記目的の微生物の量を決定するための構成要素をさらに含み、ここで検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する。このようなキットは、微生物の迅速検出の方法に関して上記で記載されるものに類似の種々の実施形態および下位実施形態を含み得る。一実施形態において、上記微生物は細菌であり、上記感染性因子はバクテリオファージである。
いくつかの実施形態において、上記キットは、上記サンプル中の他の構成要素から単離された上記目的の微生物のための構成要素を含み得る。
一実施形態において、本発明は目的の微生物を検出するための構成要素を含むキットを包含し、上記キットは、少なくとも1種の微生物を、上記サンプル中の他の構成要素から単離するための構成要素;上記少なくとも1種の微生物に複数の親感染性因子を感染させるための構成要素;上記少なくとも1種の感染した微生物を溶解して、上記微生物に存在する子孫感染性因子を放出するための構成要素;および上記子孫感染性因子もしくは上記子孫感染性因子の成分を検出するための構成要素であって、ここで該感染性因子もしくは該感染性因子の成分の検出は上記微生物が上記サンプルに存在することを示す構成要素を含む。
上記キットは、子孫感染性因子の検出のための種々の構成要素を含み得る。例えば、一実施形態において、上記子孫感染性因子(例えば、バクテリオファージ)は、インジケーター部分を含み得る。一実施形態において、上記子孫感染性因子(例えば、バクテリオファージ)における上記インジケーター部分は、複製の間に発現される検出可能な部分(例えば、可溶性ルシフェラーゼタンパク質)であり得る。
本発明のこれらのシステムおよびキットは、種々の構成要素を含む。本明細書で使用される場合、用語「構成要素」とは、広く定義され、記載される方法を実施するための任意の適した装置もしくは適した装置の集まりを含む。上記構成要素は、いかなる特定の方法においても互いに関して一体的に接続される必要も据え付けられる必要もない。本発明は、互いに関して上記構成要素の任意の適切な配置を含む。例えば、上記構成要素は、同じ空間の中に存在する必要はない。しかしいくつかの実施形態において、上記構成要素は、一体ユニットにおいて互いに接続される。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、複数機能を実行し得る。
(コンピューターシステムおよびコンピューター可読媒体)
上記システムは、現在の技術もしくはその構成要素のうちのいずれかにおいて記載されるように、コンピューターシステムの形態で具現化され得る。コンピューターシステムの代表例としては、汎用コンピューター、プログラムされたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラー、周辺集積回路素子、および本技術の方法を構成する工程を実装し得る他のデバイスもしくはデバイスの配置が挙げられる。
コンピューターシステムは、コンピューター、入力デバイス、ディスプレイユニット、および/もしくはインターネットを含み得る。上記コンピューターは、マイクロプロセッサをさらに含み得る。上記マイクロプロセッサは、通信バスへと接続され得る。上記コンピューターはまた、メモリを含み得る。上記メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリーメモリ(ROM)を含み得る。上記コンピューターシステムは、記憶デバイスをさらに含み得る。上記記憶デバイスは、ハードディスクドライブもしくはリムーバル記憶デバイス(例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光学ディスクドライブなど)であり得る。上記記憶デバイスはまた、コンピュータープログラムもしくは他の指示を上記コンピューターシステムへとロードするための他の類似の手段であり得る。上記コンピューターシステムはまた、通信ユニットを含み得る。上記通信ユニットは、I/Oインターフェイスを通じて、上記コンピューターが他のデータベースおよびインターネットに接続することを可能にする。上記通信ユニットは、他のデータベースへの転送、ならびに他のデータベースからのデータの受領を可能にする。上記通信ユニットは、モデム、Ethernet(登録商標)カード、もしくは上記コンピューターシステムをデータベースおよびネットワーク(例えば、LAN、MAN、WANおよびインターネット)に接続することを可能にする任意の類似のデバイスを含み得る。上記コンピューターシステムは、従って、I/Oインターフェイスを介して上記システムへとアクセス可能な入力デバイスを通じてユーザーからの入力を容易にし得る。
コンピューティングデバイスは、代表的には、そのコンピューティングデバイスの一般管理およびオペレーションのための実行可能なプログラム指示を提供するオペレーティングシステムを含み、代表的には、サーバーのプロセッサによって実行される場合に、上記コンピューティングデバイスにその意図された機能を行わせる指示を記憶するコンピューター可読記憶媒体(例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリなど)を含む。上記オペレーティングシステムに適した実装および上記コンピューティングデバイスの一般的な機能性は、公知であるかもしくは市販されており、当業者によって、特に本明細書の開示に鑑みて、容易に実装される。
上記コンピューターシステムは、入力データを処理するために、1以上の記憶素子の中に記憶される一群の指示を実行する。上記記憶素子はまた、記載されるとおりのデータもしくは他の情報を保持し得る。上記記憶素子は、処理機械に存在する情報ソースもしくは物理的メモリ素子の形態にあり得る。
環境は、上記で考察されるとおりの種々のデータストアならびに他のメモリおよび記憶媒体を含み得る。これらは、種々の位置に存在し得る(例えば、上記コンピューターのうちの1以上にローカルな(および/もしくは中に存在する)、またはネットワーク全体にわたって記コンピューターのうちのいずれかもしくはすべてから遠隔にある記憶媒体において)。実施形態の特定の一群において、情報は、当業者が精通しているストレージエリアネットワーク(「SAN」)に存在し得る。同様に、上記コンピューター、サーバー、もしくは他のネットワークデバイスに帰した機能を行うための任意の必須のファイルは、適切な場合、ローカルにおよび/もしくは遠隔に保存され得る。システムが、コンピューティングデバイスを含む場合、各々のこのようなデバイスは、バスを介して電気的に連結され得るハードウェア要素を含み得、上記要素は、例えば、少なくとも1つの中央処理装置(CPU)、少なくとも1つの入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラー、タッチスクリーン、もしくはキーパッド)、および少なくとも1つの出力デバイス(例えば、ディスプレイデバイス、プリンター、もしくはスピーカー)を含む。このようなシステムはまた、1つ以上の記憶デバイス(例えば、ディスクドライブ、光学記憶デバイス、およびソリッドステート記憶デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)もしくはリードオンリーメモリ(「ROM」)、ならびにリムーバブルメディアデバイス、メモリカード、フラッシュカードなどを含み得る。
このようなデバイスはまた、コンピューター可読記憶媒体リーダー、通信デバイス(例えば、モデム、ネットワークカード(無線もしくは有線)、赤外線通信デバイスなど)、および上記のとおりのワーキングメモリを含み得る。上記コンピューター可読記憶媒体リーダーは、遠隔、ローカル、固定、および/もしくはリムーバブル記憶デバイスを代表するコンピューター可読記憶媒体、ならびにコンピューター可読情報を一時的におよび/もしくはより恒久的に含む、記憶する、伝達する、および検索するための記憶媒体と接続され得るかまたはこれらを受容するように構成され得る。上記システムおよび種々のデバイスはまた、代表的には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム(例えば、クライアントアプリケーションもしくはウェブブラウザ)を含む、少なくとも1つのワーキングメモリデバイス内に位置した多くのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、もしくは他の要素を含む。代替の実施形態が、上記のものからの多くのバリエーションを有し得ることは認識されるべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアがまた使用され得る、および/または特定の要素が、ハードウェア、ソフトウェア(ポータブルソフトウェア(例えば、アプレット)を含む)、または両方において実装され得る。さらに、他のコンピューティングデバイス(例えば、ネットワーク入力/出力デバイス)への接続が使用され得る。
コード、もしくはコードの一部を含むための非一時的な記憶媒体およびコンピューター可読媒体としては、当該分野で公知であるかもしくは使用される任意の適切な媒体(記憶媒体および通信媒体(例えば、コンピューター可読の指示、データ構造、プログラムモジュール、もしくは他のデータなどの情報の記憶および/または伝達のための任意の方法または技術において実装される、揮発性および不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブルの媒体が挙げられるが、これらに限定されない)を含む)が挙げられ得、これらとしては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多目的ディスク(DVD)もしくは他の光学記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を記憶するために使用され得、上記システムデバイスによってアクセスされ得る任意の他の媒体が挙げられる。上記開示および本明細書に提供される教示に基づいて、当業者は、上記種々の実施形態を実装するための他のやり方および/または方法を認識する。
コンピューター可読媒体は、プロセッサにコンピューター可読指示を提供することができる電子式、光学式、磁気、もしくは他の記憶デバイスを含み得るが、これらに限定されない。他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、SRAM、DRAM、連想メモリ(「CAM」)、DDR、フラッシュメモリ(例えば、NANDフラッシュもしくはNORフラッシュ、ASIC、構成されたプロセッサ、光学記憶媒体、磁気テープもしくは他の磁気記憶媒体、またはコンピュータープロセッサが指示を読み得る任意の他の媒体。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))の単一タイプを含み得る。他の実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ディスクドライブ、およびキャッシュ)のうちの2以上のタイプを含み得る。上記コンピューティングデバイスは、1以上の外付けのコンピューター可読媒体(例えば、外付けハードディスクドライブ、もしくは外付けDVDドライブ)と通信状態にあり得る。
上記で考察されるように、上記実施形態は、コンピューター実行可能なプログラム指示を実行および/またはメモリに記憶された情報にアクセスするように構成されているプロセッサを含む。上記指示は、任意の適切なコンピュータープログラミング言語(例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)、およびActionScript(Adobe Systems, Mountain View, Calif.)が挙げられる)で書かれたコードから、コンパイラおよび/もしくはインタープリターによって生成されたプロセッサ特異的指示を含み得る。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、単一のプロセッサを含む。他の実施形態において、上記デバイスは、2以上のプロセッサを含む。このようなプロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および状態機械を含み得る。このようなプロセッサは、プログラマブル電子デバイス(例えば、PLC)、プログラマブル割り込みコントローラー(PIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電子的にプログラム可能なリードオンリーメモリ(electronically programmable read-only memory)(EPROMもしくはEEPROM)、または他の類似のデバイスをさらに含み得る。
上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスを含む。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、有線もしくは無線の通信リンクを介して通信するように構成されている。例えば、上記ネットワークインターフェイスは、Ethernet(登録商標)、IEEE 802.11(Wi−Fi)、802.16(Wi−Max)、Bluetooth(登録商標)、赤外線などを介して、ネットワーク上での通信を可能にし得る。別の例として、ネットワークインターフェイスは、ネットワーク(例えば、CDMA、GSM(登録商標)、UMTS、もしくは他の携帯通信ネットワーク(cellular communication network))上での通信を可能にし得る。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、別のデバイスでの、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、1394 FireWire、シリアル接続もしくはパラレル接続、または類似のインターフェイスを介したポイントツーポイント接続を可能にし得る。適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、1以上のネットワーク上での通信のための2以上のネットワークインターフェイスを含み得る。いくつかの実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスに加えてもしくはその代わりに、データストアを含み得る。
適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、多くの外付けもしくは内部デバイス(例えば、マウス、CD−ROM、DVD、キーボード、ディスプレイ、オーディースピーカー、1以上のマイクロフォン、または任意の他の入力もしくは出力デバイス)を含み得るかまたはこれらと通信状態にあり得る。例えば、上記コンピューティングデバイスは、種々のユーザーインターフェイスデバイスおよびディスプレイと通信状態にあり得る。上記ディスプレイは、任意の適切な技術(LCD、LED、CRTなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用し得る。
上記コンピューターシステムによる実行のための指示セットは、特定のタスク(例えば、本技術の方法を構成する工程)を行うための処理機械を指示する種々のコマンドを含み得る。上記指示セットは、ソフトウェアプログラムの形態にあり得る。さらには、上記ソフトウェアは、本技術におけるように、別個のプログラムの集まり、より大きなプログラムを有するプログラムモジュールもしくはプログラムモジュールの一部の形態にあり得る。上記ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態でのモジュラープログラミングを含み得る。処理機械による入力データの処理は、ユーザーコマンド、以前の処理の結果、もしくは別の処理機械によって作成されたリクエストに応じ得る。
本発明は、ある種の実施形態を参照して開示されてきた一方で、記載される実施形態に対する多くの改変、変化および変更は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく可能である。よって、本発明は、上記記載される実施形態に限定されないことは意図されるが、以下の特許請求の範囲の文言およびその均等物によって定義される全範囲を有する。
本明細書で記載される技術の実施形態のうちのいくつかは、以下の番号付けされた段落のうちのいずれかに従って定義され得る:
(1)組換えバクテリオファージであって、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、そして必要に応じて上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域であり、そして必要に応じて上記インジケーター遺伝子の転写は、バクテリオファージクラスIIIもしくは「後期」プロモーターによって制御される、組換えバクテリオファージ。
(2)上記バクテリオファージは、T7、T4、T4様、JG04バクテリオファージ、またはT7、JG04、T4、もしくは他のT4様ファージと少なくとも90%の相同性を有するゲノムを有する別の天然のバクテリオファージに由来する;および/または検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプルに存在する上記目的の微生物の量に相当する、段落1に記載の組換えバクテリオファージ。
(3)上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない、および/または上記インジケーター遺伝子は、主要カプシド遺伝子に隣接し、必要に応じて、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる、段落1〜2のいずれかに記載のバクテリオファージ。
(4)上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードし、必要に応じて上記ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、もしくは操作されたルシフェラーゼのうちの1つである、段落1〜3のいずれかに記載の上記バクテリオファージ。
(5)サンプル中の目的の微生物を検出するための方法であって、上記方法は、上記サンプルを上記目的の微生物に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の微生物が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する方法。
(6)上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域であり、必要に応じて上記インジケーター遺伝子の転写は、バクテリオファージクラスIIIプロモーターによって制御される、段落5に記載の方法。
(7)上記バクテリオファージは、T7、T4、T4様、JG04バクテリオファージ、またはT7、T4もしくは他のT4様ファージと少なくとも90%の相同性を有するゲノムを有する別の天然のバクテリオファージに由来する、および/または検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプルに存在する上記目的の微生物の量に相当する、段落5または6に記載の方法。
(8)上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない、および/または上記インジケーター遺伝子は、主要カプシド遺伝子に隣接し、必要に応じて、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる、段落5〜7のいずれかに記載の方法。
(9)上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードし、必要に応じて、上記ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、もしくは操作されたルシフェラーゼのうちの1つである、段落5〜8のいずれかに記載の方法。
(10)上記インキュベートする工程のための上記バクテリオファージの濃度は、1×107 PFU/mLより高く、必要に応じて、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプルとのインキュベーションの前に、塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して精製される、段落5〜9のいずれかに記載の方法。
(11)上記インキュベートする工程の前に、上記微生物を上記サンプルから固体支持体上で捕捉する工程をさらに包含する;および必要に応じて、上記固体支持体は、マルチウェルプレートもしくはフィルターを含む;および必要に応じて、上記捕捉する工程は、微生物を捕捉抗体と結合させる工程をさらに包含する;および必要に応じて、上記捕捉抗体は、上記微生物の上記固体支持体への結合を促進する;および必要に応じて、上記方法は、上記バクテリオファージを添加した後であるがインキュベートする工程の前に、上記捕捉されかつ感染した微生物を洗浄して、過剰なバクテリオファージおよび/もしくは汚染するレポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)を除去する工程をさらに包含する、段落5〜10のいずれかに記載の方法。
(12)上記目的の微生物の検出は、富化のための培養を使用して、微生物の数を4倍もしくは10倍増加させるために必要とされる期間より短い期間で完了する;および必要に応じて、上記方法は、上記サンプル中の上記微生物の≦10個の細胞を検出し得る;および必要に応じて、検出に必要とされる合計時間は、2時間未満である、段落5〜11のいずれかに記載の方法。
(13)サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムであって、上記システムは、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素;および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含む;ならびに必要に応じて、上記サンプル中の上記目的の微生物の量を決定するための構成要素であって、ここで検出されるインジケーター部分の量は上記サンプル中の微生物の量に相当する構成要素をさらに含む;および必要に応じて、上記目的の微生物を固体支持体上に捕捉するための構成要素をさらに含む、ならびに/または上記捕捉された微生物サンプルを洗浄するための構成要素をさらに含み、必要に応じて、同じ構成要素は、複数工程のために使用され得る、システム。
(14)上記感染性因子は、上記目的の微生物に感染する組換えバクテリオファージであり、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記インジケーター部分として上記バクテリオファージの後期遺伝子領域へ挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる;および必要に応じて、上記工程は、自動化されるかまたはコンピューター入力を介してユーザーによって制御されるならびに/または液体取り扱いロボットが少なくとも1つの工程を行う;または上記システムはキットを含む、段落13に記載のシステム。
(15)段落5〜12のいずれかに記載の方法および/または段落13〜14のいずれかに記載のシステムとともに使用するための、非一時的なコンピューター可読媒体。
以下の実施例に示される結果を、実施例11を除いて、サンプル細胞の複製を達成するために、富化のための培養なしで、または上記サンプルのインキュベーションなしで得た。さらに、「濃縮なしアッセイ」において、上記細胞を濃縮することなくサンプルに直接添加したインジケーターファージは、少数の細胞、単一細菌でさえも、それに感染およびそれを検出できた。
(実施例1.インジケーターファージの作製)
インジケーターファージを、Millipore, IncのT7SELECT(登録商標)415−1ファージディスプレイシステムを使用して作製した。簡潔には、精製したT7SELECT(登録商標) DNAを購入し、DNA制限酵素EcoRIおよびHindIII(New England Biolabs)で消化し、その切断されたDNAを、その後精製した。野生型ホタルルシフェラーゼ(北アメリカホタル、Photinus pyralis由来)の遺伝子を、後期T7プロモーターを含むバクテリオファージT7上流領域とともに合成して、ルシフェラーゼ遺伝子の高レベルの発現を確実にした。
上記合成したルシフェラーゼ遺伝子を、配列番号1と示す。この遺伝子を、PCRによって増幅して、EcoRIおよびHindIIIに関して適合性の制限酵素認識部位を含めて、その新たな遺伝子を以下のプライマーを使用して、T7SELECT(登録商標)415−1ゲノムに挿入し得ることを確実にした:
さらに、3つ全てのリーディングフレームにおける終止コドンを、上記ルシフェラーゼ開始部位の上流に付加して、上記バクテリオファージ主要カプシドタンパク質(遺伝子10B生成物)の生成を終結させた。上記T7SELECT(登録商標)415−1ファージディスプレイシステムを、上記遺伝子10B主要カプシドタンパク質およびその下流に挿入された任意の小さなタンパク質の融合生成物を作製するように設計する。上記終止コドンの付加は、融合生成物が作られないことを確実にし、比較的大きなルシフェラーゼ遺伝子が可溶性形態で発現されることを可能にする。上記PCR生成物を、EcoR1およびHindIIIで消化し、精製し、T7SELECT(登録商標)415−1にライゲーションした。上記ライゲーション生成物を、MegaX DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の中にBioRad MicroPulserエレクトロポレーションシステムを使用して挿入し、その培養物を、E. coliにおけるプラークのためにプレートした。プラークを拾い上げ、ファージをE. coli DH10B中で増殖させ、インジケーターファージ、T7SELECT(登録商標)415−Lucとして使用するためにスクロース密度勾配遠心分離を介して精製した。
図1は、例示のインジケーターファージ、T7SELECT(登録商標)415−Lucのゲノム構造を示す。上記検出可能なインジケーター部分は、上記クラスIII遺伝子領域内に挿入されたホタルルシフェラーゼ遺伝子によってコードされ、ウイルス生活環において、および他のファージ遺伝子より高いレベルで後期に発現される。上記構築物は、ルシフェラーゼが天然の遺伝子生成物(例えば、カプシドタンパク質遺伝子10B)へと組み込まれない、従って、融合タンパク質でもないことを確実にするために終止コドンを含む。従って、この構築物は、子孫ファージが可溶性ホタルルシフェラーゼを検出される予定のインジケーターとして発現することを可能にする。
(実施例2.環境からE. coli O157:H7特異的バクテリオファージの単離および精製)
Hyperion下水処理プラントからのサンプルを、隣接するBallona湿地からの水サンプルとともに得た。上記サンプルを、粉末化Nutrient Broth(Gibco, Inc.)とともに1×へと混合し、3mLの濁った培養物からのE. coli O157:H7(ATCC 43888)を播種した。上記サンプルを、3時間、37℃で振盪しながらインキュベートして、E. coli O157:H7に感染するファージを富化し、120μL クロロホルムで溶解し、15秒間ボルテックスし、1mLサンプルを、2分間、6800gで遠心分離した。その上清をろ過し(0.45μmフィルター)、E. coli O157:H7におけるプラークのためにプレートした。このサンプルを、種々の希釈物におけるプラークアッセイでプレートから取り出し(plated out)して、十分に単離されたプラークを得た。個々のプラークを使い捨てピペットチップで突いて、100μL TMS緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4、10mM MgCl2、および100mM NaCl)中で再懸濁した。
再懸濁したプラークのうちの5μLのアリコートを、E. coli株O157:H7、B、およびDH10B上、ならびにSalmonellaの株上の重層寒天においてスポット試験した。O157:H7を消失させるのみのファージを、E. coli O157:H7において増幅し、その溶解物を遠心分離によって清澄にし、粒子を、ZEBA(登録商標)Buffer Exchangeカラムを使用して、TMS緩衝液の中に入れた。
8個の密接に関連したファージ単離物を、E. coli O157:H7で増殖させ、精製し、ゲノムを単離し、配列決定した。3種のゲノムタイプはすべて、T4様ファージRB69と98%の相同性を示した。その後期遺伝子を、この相同性に基づいてマッピングし、ファージJG04を、さらなる研究のために選択した。図2は、JG04を示し、JG04のゲノムを、配列番号4と示す。
(実施例3.組換えインジケーターファージの作製および精製)
配列分析および上記後期遺伝子領域の位置に基づいて、相同組換え配列を、図3に示されるように、種々のルシフェラーゼタンパク質からなる種々のレポーター遺伝子のための挿入物とともに合成した。具体的には、3種の構築物を使用した:ホタルルシフェラーゼ相同組換えプラスミドpUC57.HR.Fluc(配列番号5に相当);NANOLUC(登録商標)相同組換えプラスミドpUC57.HR.NANOLUC(登録商標)(配列番号6に相当);およびOplophorusルシフェラーゼ相同組換えプラスミドpUC19.HR.OpLuc.KanR(配列番号7に相当)。
ルシフェラーゼ遺伝子を、上流T4後期遺伝子プロモーターとともに挿入して、ウイルス後期ステージの間の発現を確実にした。いくつかの場合には、カナマイシン耐性マーカーをまた挿入して、カナマイシン抗生物質の下で感染細胞の選択を可能にした。これらの領域は、カプシドタンパク質gp23およびgp24とマッチする最大500bpの配列と隣接する。これらの合成した配列を、アンピシリン耐性pUC57もしくはpUC19プラスミドによって運んだ。
上記合成した配列を含むプラスミドを、エレクトロポレーションコンピテントE. coli O157:H7へと、BIORAD(登録商標) Gene Pulser IIエレクトロポレーターを使用して形質転換し、アンピシリンへの耐性を付与した。コロニーを、適切なルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼについてはD−ルシフェリン、Oplophorusルシフェラーゼについてはセレンテラジン、およびNANOLUC(登録商標)についてはセレンテラジンもしくはNANOGLO(登録商標)のいずれか)でアッセイすることによって、陽性の形質転換に関してスクリーニングした。
ファージJG04と相同な配列に挟まれているlucを有するプラスミドを有するE. coli O157:H7を、アンピシリン含有LBブロス中で増殖させ、細菌培養物を、アンピシリン含有LBブロス中で約107個の細胞/mLへと増殖させた。次いで、培養物に、1のMOIのファージJG04を感染させ、45分、37℃で振盪しながらインキュベートして、細胞を溶解させた。溶解物は、ほとんどの野生型ファージと、上記相同組換えプラスミドでの野生型ファージゲノムの相同組換えによって作製された少数の組換えファージとの混合物を含んだ。
組換えファージ 対 野生型ファージの比を決定するために、TCID50(50%組織培養感染用量)に基づく限界希釈アッセイを使用して、ともにウイルス粒子もしくはプラーク形成単位の数に類似して、感染単位の濃度(IU/mL)を決定し、ルシフェラーゼ形質導入単位(TU/mL)の数を決定した。これらのアッセイにおいて、上記サンプルを系列希釈し、各希釈物を、E. coli O157:H7細菌を有する複製ウェルへとアリコートした。ルシフェラーゼ活性を示す任意のウェルは、少なくとも1個の組換えファージに感染したはずである。細胞溶解を示す任意のウェルは、少なくとも1個のファージが感染していた。これらの場合のうちの各々が起こった最高希釈に基づいて、元の濃度を逆算した。形質転換した細胞からのこれらの最初のファージ混合物は、代表的には、各組換えファージTUに関して20,000 野生型IUの比を生じた。次いで、上記組換えファージを単離するおよび増幅する工程を行った。
図4で図示されるように、組換えファージを、合計のファージのうちの0.005%を含む混合物から単離した。上記ファージ混合物を、96ウェルプレートへと希釈して、プレートあたり平均3の組換えTUを得た。これは、ウェル当たり約625 IUの主に野生型ファージへと分解される(break down)。各ウェルは、50μLの濁ったE. coli O157:H7を含んだ。2時間の37℃でのインキュベーション後、ウェルからサンプル採取し、ルシフェラーゼの存在についてスクリーニングした。任意の陽性ウェルは、単一の組換えファージ、および約600 野生型ファージ(これは、元の20,000:1比を超える富化である)が播種されている可能性がある。この富化した培養物由来の子孫を、別の限界希釈アッセイに供して、比を確認し、組換えファージ 形質導入単位の実際の濃度を決定した。
繰り返すと、96ウェルプレートあたり3の組換えTUを、このストックからアリコートし、ウェル当たり約20の主に野生型ファージのおよその播種をもたらした。任意の陽性ルシフェラーゼウェルは、約20の野生型ファージとともに、単一の組換え体を播種した可能性があった。これらのウェルを、ルシフェラーゼ活性について分析し、任意の陽性ウェルを、限界希釈アッセイに供して、TU 対 IUの比を決定し、次いで、プラークアッセイを行って十分に単離されたプラークを得た。
この時点で、野生型ファージ 対 組換え体の予測比は、約20:1であった。48のプラークを個々に拾い上げ、ルシフェラーゼ形質導入能力についてスクリーニングし、約3の組換え体がスクリーニングされているプラークのミックス中に存在することを保証した。各プラークを、100μL TMSに懸濁し、5μLを濁ったE. coli O157:H7培養物を含むウェルに添加し、ウェルを、45分〜1時間、37℃でのインキュベーション後にアッセイした。
陽性ウェルは、組換えファージの純粋培養物を含むと予測されたが、プラーク精製のさらなるラウンドは、標準的手順であった。大規模生成を行って、E. coli O157:H7検出アッセイにおける使用に適切な高力価ストックを得た。塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して、ファージ粒子を汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離し、バックグラウンドを低下させた。
(実施例4.スピンカラムフィルターを使用するインジケーターファージを介しての細菌検出)
図5は、本発明の一実施形態に従って、細菌検出のためのインジケーターファージおよびスピンカラムフィルターの使用を図示する。例示的実験において、E. coli DH10Bを、37℃で振盪しながらLuria−Bertani培地(LB)中で増殖させた。T7SELECT(登録商標)415−Lucファージを、108 PFU/40μL(2.5×109 PFU/mL)へと希釈した。細胞を計数し、3000個の細胞/mL、300個の細胞/mL、30個の細胞/mLおよび3個の細胞/mLへと希釈した。CFUアッセイを、以下のルシフェラーゼアッセイと並行して行って、アッセイあたりの実際の投入細胞数を決定した。
各細胞希釈物に関して、0.1mLを、三連でフィルターに添加した。フィルターを、600gで1分間遠心した。次に、上記ファージ希釈物の各々からの40μLを各フィルターに添加し、続いて、室温で10分間インキュベートした。フィルターを、400μL PBST(0.05% Tween)を添加することによって2回洗浄し、続いて、600gで1分間遠心分離した。次に、50μL LBを添加し、続いて、37℃で30分間インキュベートした。フィルターを、6800gで2分間遠心した。次に、上記濾液のうちの30μLを、LUMITRAC(登録商標)200 96ウェルルミノメータープレートに移し、ルシフェラーゼアッセイを、100μL ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega, Inc.)を注入してPromegaルミノメーター内で行った。細胞数を、並行するCFUアッセイにおけるコロニー数に従って較正した。バックグラウンドに対するシグナルの比を、各ウェルのシグナルを、ゼロ細胞コントロールからのシグナルの平均で除算することによって得た。図6は、ルシフェラーゼ活性を介して、1〜3個程度の少なさのE. coli細胞を検出するためのアッセイの高感度を実証する結果を示す。図7は、出発細菌サンプルの系列希釈物を使用して、同じ方法の非常に大きな検出範囲を実証する結果を示す。このことは、1.4個の細胞から1400万個の細胞までの範囲からの検出を示す。
(実施例5.96ウェルフィルタープレートを使用するインジケーターファージを介しての細菌検出)
E. coli DH10Bを、LB中で振盪しながら37℃で増殖させた。T7SELECT(登録商標)415−Lucファージを、LB中4×107 PFU/20μL(2×109 PFU/mL)へと希釈した。細胞を計数し、500個、50個および5個の細胞/mLへと希釈した(0.1mLを、各ウェルに添加し、図5に示される約50個の細胞/mL、5個の細胞/mLおよび<1個の細胞を得た)。CFUアッセイを、以下のルシフェラーゼアッセイと並行して行って、アッセイあたりの実際の投入細胞数を決定した。
各細胞希釈のために、0.1mLを、96ウェルフィルタープレート中の複数のウェル:0.5個の細胞に関しては9個のウェルならびに50個の細胞、5個の細胞およびゼロ細胞コントロールに関しては3個のウェルに添加した。上記96ウェルフィルタープレートを、1200rpm(263 rcf)で3分遠心した。次に、上記ファージ希釈物のうちの20μLを、各フィルターに添加し、室温で10分間、続いて、37℃で30分間インキュベートした。上記ルシフェラーゼアッセイを、Promega Luminometerを使用して、100μL ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega, Inc.)を注入して元のフィルタープレート中で直接行い、プレートを、注入直後に読み取り、その後15分および30分で再度読み取った。細胞数を、並行するCFUアッセイにおいてコロニー数に従って較正した。バックグラウンドに対するシグナルの比を、各ウェルのシグナルを、ゼロ細胞コントロールからのシグナルの平均で除算することによって得た。
図8は、各ウェルにおいて単一E. coli細胞(平均して0.5個の細胞をアッセイし、その結果、上記ウェルのうちの約1/2が単一細胞を受け入れた)、ならびにウェルあたり5.4個および54個の細胞を検出するために、96ウェルフィルタープレートの使用を示す結果を明らかに示す。
図9は、96ウェルフィルタープレートシステムを使用して、平均してウェルあたり1個未満の細胞(単一細胞)からウェルあたり少なくとも1400万個の細胞まで、非常に大きな細胞検出範囲を実証する結果を示す。
(実施例6.JG04−NANOLUC(登録商標)インジケーターファージおよび低細胞濃度を使用するフィルタープレートアッセイ)
E. coli O157:H7細胞を、LB中で、37℃、220rpmで振盪しながら増殖させた。JG04−NANOLUC(登録商標)インジケーターファージを、106 PFU/20μLへと調製した。細胞を計数し、7290個の細胞/mL、2430個の細胞/mL、810個の細胞/mL、270個の細胞/mL、90個の細胞/mL、30個の細胞/mL、10個の細胞/mLおよび0個の細胞/mLに希釈した。各サンプルの100μLのアリコートを、反復して、PERKINELMER(登録商標)Optiplate 96−well Grey Luminometer 0.45μmフィルタープレートのウェルへと沈着させた。
図10に図示されるように、プレートを、スイング式バケット遠心分離機に載せ、2400rpmで3分間遠心した。JG04−NANOLUC(登録商標)ファージ希釈物の20μLを、各ウェルに添加し、最終濃度5×107 PFU/mLを得た。プレートを、室温で10分間インキュベートし、200μL PBSTを、各ウェルに添加し、プレートを、2400rpmで3分間遠沈して、過剰な親JG04−NANOLUC(登録商標)ファージを洗い流した。
次に、50μL LBを各ウェルに添加し、プレートを、37℃インキュベーター中で振盪なしで、45分間インキュベートした。10μL Promega Renillaルシフェラーゼ溶解緩衝液のアリコートをウェルに添加し、分析物を上記ウェルに移し、ルシフェラーゼアッセイを、50μL Promega NANOGLO(登録商標)試薬を注入して行った。細胞を有するサンプルを、0細胞コントロールと比較した。
図11で認められるように、NANOLUC(登録商標)フィルタープレートの結果は、アッセイあたり0個の細胞のシグナルと1個の細胞のシグナルとの間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定によりp値=0.034)。このことは、単一細胞を検出する能力を示す。アッセイあたり、より多くの細菌細胞は、用量依存性様式でシグナルの増加を実証する。
(実施例7.低細胞濃度での濃縮なしアッセイ)
模式的な図12に図示されるアッセイに類似する実験の用意において、E. coli O157:H7細胞を、LB中、37℃において220rpmで振盪しながら増殖させた。JG04−OpLucインジケーターファージを、1.2×107 PFU/20μLへと調製し、20μLアリコートを、PERKINELMER(登録商標)Optiplate 96−well Grey Luminometerプレートのウェルに分配した。細胞を計数し、10個の細胞/mL、3.3個の細胞/mL、1.1個の細胞/mLおよび0個の細胞/mLへと希釈した。各サンプルの100μLのアリコートを、反復して(アッセイあたり0.11個の細胞および0.33個の細胞については12×、およびアッセイあたり1個の細胞については5×)ウェルへと分配し、108 PFU/mLの最終ファージ濃度を得た。
プレートを、振盪なしで、37℃のインキュベーター中で45分間インキュベートした。最後に、10μL PROMEGA(登録商標)Renillaルシフェラーゼ溶解緩衝液を各ウェルに添加し、上記ルシフェラーゼアッセイを、50μL PROMEGA(登録商標)Renillaルシフェラーゼアッセイ試薬(セレンテラジン)を注入して行った。サンプルを、0細胞コントロールと比較した。
図13で認められるように、低細胞濃度サンプルでの上記濃縮なしアッセイの結果は、アッセイあたり0個の細胞のシグナルと1個の細胞のシグナルとの間の統計的有意差を示し(ANOVA検定によってp値=0.0024)、単一細胞を検出する能力を実証する。従って、上記アッセイは、驚くほど高感度である。ウェルあたり1個未満の細胞を有するサンプルは、バックグラウンドシグナルを上回るウェルに関して比例した数を示すようである。
(実施例8.広い細胞濃度範囲での濃縮なしアッセイ)
より高い細胞濃度での類似の実験において、E. coli O157:H7細胞を、LB中、37℃において220rpmで振盪しながら増殖させた。JG04−OpLucインジケーターファージを、1.2×107 PFU/20μLへと調製し、20μLアリコートを、PERKINELMER(登録商標)Optiplate 96−well Grey Luminometerプレートのウェルへと分配した。細胞を計数し、108個の細胞/mL、107個の細胞/mL、106個の細胞/mL、105個の細胞/mL、104個の細胞/mL、103個の細胞/mL、102個の細胞/mL、33個の細胞/mL、11個の細胞/mL、3.7個の細胞/mL、1.2個の細胞/mLおよび0個の細胞/mLへと希釈した。各サンプルの100μLのアリコートを、反復してウェルへと分配し、108 PFU/mLの最終ファージ濃度を得た。
プレートを、37℃のインキュベーター中で、振盪なしで45分間インキュベートした。10μL PROMEGA(登録商標)Renillaルシフェラーゼ溶解緩衝液を、各ウェルに添加し、ルシフェラーゼアッセイを、50μL PROMEGA(登録商標)Renillaルシフェラーゼアッセイ試薬(セレンテラジン)を注入して行た。サンプルを、0細胞コントロールと比較した。
図14で認められるように、細胞濃度の非常に広い範囲のサンプルでの濃縮なしアッセイの実験は、アッセイあたり0個の細胞のシグナルと1.1個の細胞の シグナルとの間の統計的有意差を示し(スチューデントのt検定によってp値=0.000702)、このことは、単一細胞を検出する能力を実証する。アッセイあたりより多くの細菌細胞は、用量依存性様式で(最大で少なくとも106個の細菌細胞/mLまで)シグナルの増加を示し、驚くべきことに、非常に広い範囲の検出を実証する。
(実施例9.野菜洗浄液サンプルでの濃縮なしアッセイ)
野菜洗浄液を調製するために、野菜の葉(例えば、ホウレンソウもしくはレタス)を秤量し、きれいなプラスチックバッグに加えた。1mLのLB(±0.01〜0.05% Tween20)を、野菜の各グラム(g)あたりに添加した。葉および溶液を、手動で数分間混合した。次いで、液体を、上記プラスチックバッグから引き抜き、「野菜洗浄液」として使用した。この方法を使用して、約100万個の細菌が、CFUで、1枚のホウレンソウの葉(1〜2g)上に存在することを見出した。
E. coli O157:H7細胞を、LB中、37℃において220rpmで振盪しながら増殖させた。JG04−OpLucインジケーターファージを、1.2×107 PFU/20μLへと調製し、20μLアリコートを、PERKINELMER(登録商標)Optiplate 96−well Grey Luminometerプレートのウェルへと分配した。細胞を計数し、120個の細胞/mL、60個の細胞/mL、30個の細胞/mL、および0個の細胞/mLの野菜洗浄液へと希釈した。各サンプルの100μLのアリコートを、反復してウェルへと分配し、108 PFU/mLの最終ファージ濃度を得た。
プレートを、振盪なしで、37℃のインキュベーター中で45分間インキュベートした。10μL PROMEGA(登録商標)Renillaルシフェラーゼ溶解緩衝液を各ウェルに添加し、ルシフェラーゼアッセイを、50μL PROMEGA(登録商標)Renillaルシフェラーゼアッセイ試薬(セレンテラジン)を注入して行った。サンプルを、0細胞コントロールと比較した。
図15で認められるように、野菜洗浄液サンプルを使用する濃縮なしアッセイの実験は、アッセイあたり0個の細胞のシグナルと3個の細胞のシグナルとの間の顕著な差異を示し、このことは、野菜洗浄液中の一桁の細胞数を検出する能力を実証する。アッセイあたりより多くの細菌細胞を使用することは、用量依存性様式でシグナルの増加を示す。上記野菜洗浄液は、約106個の非標的細菌/mLを含み、このアッセイにおいて約105個の非標的細菌(0細胞E. coli O157:H7コントロールを含む)に相当する。105個の非標的細菌からの3個程度の少なさの標的細菌細胞を識別する能力は驚くべきものであり、繰り返すと、上記アッセイの特異性を実証する。
(実施例10.抗体およびビーズを使用する、E. coli O157:H7の特異的かつ定量的捕捉)
図16は、E. coli O157:H7に対する抗体および磁性ストレプトアビジン被覆ビーズがサンプルから特異的にかつ定量的にE. coli O157:H7を捕捉したが、サンプル中のE. coli BもSalmonella typhimuriumも捕捉しなかったことを実証する例示的実験を示す。溶液から無傷で生存性の細菌細胞を捕捉することにおける特異性を実証するために、E. coli O157:H7の表面エピトープに対するポリクローナル抗体を、KPLから購入した(アフィニティー精製および逆精製して、交差反応性を最小限にした)。
E. coli種およびS. typhimurium両方の培養物を、LBブロス中で増殖させ、採取し、リン酸緩衝液(1.1mM KH2PO4、5.6mM Na2HPO4、154mM NaCl、pH 7.4)で洗浄した。次いで、上記洗浄した細胞を計数し、mLあたり5〜20個の細胞の間の濃度に希釈した。
E. coli O157:H7を含むサンプルを、BSAおよびビオチン結合体化抗体を含む溶液と混合した。KPLによって生成された約10ng ビオチン化ポリクローナル抗E. coli抗体(約4×1010 抗体分子に等しい)を、細胞懸濁物の各々に添加した。細胞懸濁物に抗体を添加しなかったコントロール実験をまた、並行して行った。BSA濃度は、約1%であり、合計のビオチン−抗体は、10ngであった。上記混合物を、転倒させて(end-over-end)1時間回転させた。
抗体とのインキュベーション後、4×107 ストレプトアビジン被覆磁性微小粒子(Invitrogen/Life Technologies)を、上記混合物に添加し、さらに30分間インキュベートした。次いで、上記細胞−抗体−ビーズ複合体を、磁性スタンドを使用して集め、その未結合画分(上清)を除去した。上記ビーズを、Tween−20を含むリン酸緩衝液(1.1 mM KH2PO4、5.6mM Na2HPO4、154mM NaCl、pH 7.4、0.05% Tween−20)で穏やかに洗浄した。次いで、上記上清および捕捉した細胞−ビーズ複合体の両方を、LBアガープレート上に拡げ、上記プレートを、37℃で一晩インキュベートして、CFUを決定した。抗O157:H7抗体でのE. coli O157:H7(しかし、E. coli BでもSalmonella typhimuriumでもない)の捕捉は、特異的かつ定量的であった。
(実施例11.ハイブリッドイムノ−ファージ(HIP)アッセイ)
模式的な図17で図示されるように、上記ハイブリッドイムノ−ファージもしくは「HIP」アッセイは、細菌特異的抗体捕捉の利益と、改変されたバクテリオファージの利益とを併せ持つ。上記サンプルを、まず、細菌特異的抗体で被覆したマイクロタイタープレートウェルに適用する(1702)。次いで、上記プレートを遠心分離して、上記捕捉抗体への細菌の結合を促進する(1704)。細菌の完全な捕捉を可能にする十分な時間の後、細菌特異的Luc−ファージを含む溶液を、各サンプルに添加する(1706)。上記ファージとのインキュベーションは上記捕捉された細菌への、単一もしくは複数のファージの結合および付着を生じる(1708)。最終的に、上記サンプルをインキュベートして、ファージ複製およびルシフェラーゼ発現を促進する。これは、細胞溶解および可溶性ルシフェラーゼの放出をもたらす(1710)。
HIPアッセイ実験において、白色の96ウェルELISAプレートを、室温において2〜3時間、上記目的の細菌に特異的なモノクローナル抗体300ng(100μL PBS中)で被覆した。ウェルを、PBSで洗浄し(200μ×3回の洗浄)、5% BSA/PBS(300μL)で室温において1〜1.5時間ブロッキングし、再び、300μL PBS×1で洗浄した。試験サンプル(100μL)を、上記ウェルに適用した。
上記ELISAプレートを、700×gで30分間遠心分離し、次いで、室温で1時間インキュベートした。JG04−NANOLUC(登録商標)ファージを、サンプルに添加し(10μL LB中2〜4×106 PFU)、室温において10分間インキュベートした。サンプルを、PBSで洗浄した(200μL×2回の洗浄)。LB培地をサンプルに添加し(100μL)、37℃で1.5時間インキュベートした。
NANOGLO(登録商標)基質(50μL)を、上記サンプルへと直接添加し、発光をルミノメーターにおいて測定した。図18で認められるように、上記HIPアッセイは、約2×106 PFU JG04−NANOLUC(登録商標)ファージを有するLB培地中、100個および1,000個のE.coli O157:H7細胞を検出できた。非細胞サンプルを超える平均シグナルを、対数スケールで示し、上記100個の細胞のサンプルについては約50倍から、上記1,000個の細胞のサンプルについては1,000倍超までの範囲に及んだ。