JP6765803B2 - 遺伝子組換えカイコ作出方法 - Google Patents

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本発明は、休眠性系統カイコ由来の非休眠卵を生産する方法、及びその非休眠卵を用いた遺伝子組換えカイコの作出方法に関する。
生物の遺伝子組換え技術は、遺伝子の機能解析や有用タンパク質の生産上で不可欠である。従来、遺伝子組換えに用いる宿主生物には、主として大腸菌や酵母が利用されてきた。これらの宿主は、培養が容易で、短期間で大量増殖できるという利点を有している。しかし、タンパク質を大量に生産することが困難なため、有用タンパク質の生産系宿主としては不適であった。そこで、タンパク質の大量生産系に適した宿主生物の開発が進められてきた。
カイコ(Bombyx mori)は、古くから絹を生産するために産業上利用されてきた昆虫である。カイコの絹糸腺は、タンパク質である絹糸を大量かつ短期間に合成できる。それ故、カイコを有用タンパク質の大量生産系宿主として利用する技術が、近年脚光を浴びている。カイコを宿主とする場合、外来遺伝子を導入した形質転換体、すなわち遺伝子組換えカイコ(トランスジェニックカイコ)の作出技術が重要になる。一般に遺伝子組換えカイコの作出には、卵に所望の遺伝子を注射するマイクロインジェクション法が採用されている。カイコの卵は、産下後2時間以内に受精をし、その後、シンシチウムと呼ばれる細胞膜を持たない裸の核が1時間ごとに分裂を繰り返しながら卵の表面へと移動する。したがって、この期間内、具体的には産下後2〜8時間、好ましくは3〜6時間の卵にDNAを注射することで、導入されたDNAを核に取り込ませることができる。カイコのマイクロインジェクション法は、この原理を応用した遺伝子組換え技術である。
ところで、カイコの生活環には、1化性系統、2化性系統、多化性系統が存在する。1化性系統とは自然条件下で飼育した場合、年に1回成虫が発生する系統である。カイコの多くの系統は、この1化性系統である。1化性系統のカイコは、卵の段階で休眠状態に入ることが知られている。この性質は、卵へのマイクロインジェクション後も維持されることから、卵を休眠させることなく短期間に遺伝子組換えカイコを作出するために、通常は、休眠しない突然変異系統か、非休眠性系統である多化性系統が用いられる。しかし、これらの系統は実験系統であるため計量形質等において問題があり、カイコを大量生産系宿主として産業的に利用するためには休眠性系統である実用系統から非休眠卵を得る必要があった。
休眠性系統カイコから非休眠卵を得る方法には、外部からの物理的刺激により休眠卵を強制的に覚醒させる休眠解除法(休眠打破法)と、休眠性系統の親カイコを処理して非休眠卵を産下させる非休眠卵産下法がある。休眠解除法には浸酸法、DMSO浸漬法、遠心法及び高電圧処理法等が、また非休眠卵産下法には低温暗催青法が知られている。
浸酸法は、産下24時間後の休眠卵を塩酸溶液に浸漬することによって休眠からの強制解除を行う方法である。この方法で得られる非休眠卵は、マイクロインジェクションと併用する場合、酸による化学的ストレスに加えてマイクロインジェクションという物理的ストレスを付与するため、その後の孵化率が低いという問題がある。また、産下24時間後ではマイクロインジェクションの適期を徒過しているという問題もある。非特許文献1では、産下3時間後に浸酸方法を適用して休眠解除した卵にマイクロインジェクションを行い、遺伝子組換えカイコを作出する方法を開示しているが、処理後に得られる非休眠卵の孵化率が著しく低い。
DMSO浸漬法は、浸酸方法と同様に休眠卵をDMSO溶液に浸漬して休眠解除を行う方法であり、遠心法及び高電圧処理法は、それぞれ休眠卵に遠心力刺激及び高電圧刺激を付与する方法である。これらの方法も休眠卵に物理的ストレスを付与するため、浸酸法と同様に、処理後に得られる非休眠卵の孵化率が著しく低くなるというという問題があった。
低温暗催青法は、親卵の催青を低温暗条件で行い、羽化した親カイコに非休眠卵を産下させる方法である(非特許文献2及び非特許文献3)。低温暗催青法は、休眠性系統カイコから非休眠卵を得る方法としては、浸酸方法と並び一般的な方法である。例えば、非特許文献1では低温暗催青法処理した親カイコより得た非休眠卵にマイクロインジェクションを行い、遺伝子組換えカイコを得ている。また、特許文献1では、親卵を低温暗催青処理するだけでなく親幼虫を全明(24時間明期)下で飼育することによって非休眠卵を産下させ、その非休眠卵にマイクロインジェクションを行うことで組換えカイコを得ることに成功している。ところが、低温暗催青法は、カイコの系統によって非休眠卵の産卵数に著しい差異がみられ、時には全く非休眠を産卵しないという問題があった(特許文献1)。また、この方法で得られた非休眠卵にマイクロインジェクションを行った場合、浸酸法と同様に孵化率が極端に低下するという問題もあった。
上記のように従来法では休眠性系統カイコから非休眠卵を作出することはできても、その後のマイクロインジェクション処理により孵化率が著しく低下するという問題があった。遺伝子組換えは、マイクロインジェクションした一部の卵でしか発生しないことから、マイクロインジェクション後の孵化率が低い場合には、必然的に遺伝子組換えカイコの作出成功率も低くなる。遺伝子組換えカイコを効率的に作出するためには、非休眠卵を得るだけでなく、マイクロインジェクション後の孵化率を維持できる技術も産業効率上、重要となる。それ故に、マイクロインジェクション後の孵化率が高い休眠性系統カイコ由来の非休眠卵を生産する技術開発が強く求められていた。
特開2003-88274
Zhao A., et al., 2012, Insecta Science, 19: 172-182 小瀬川英一, 他, 2000, 日蚕雑, 69(6): 369-375 清水勇, 1991, 応動昆, 35: 81-91
本発明の課題は、マイクロインジェクション後も高い孵化率を維持できる休眠性系統カイコ由来の非休眠卵の生産方法、及びその非休眠卵を用いた遺伝子組換えカイコの作出方法を開発し、提供することである。
休眠性系統カイコから非休眠卵を得る非休眠卵産下方法には、低温暗催青法以外にも休眠ホルモン抗体注入法が知られている(Shiomi K, et al., 1994, J. Insect Physiol., 40(9):693-699)。この方法は、終齢幼虫〜蛹初期の親カイコに休眠ホルモンに対する中和抗体を注射し、羽化した雌親カイコの休眠ホルモンを機能的に阻害することで非休眠卵を産下させる方法である。ところが、1994年に公開された技術であるにもかかわらず、当該方法で得られた非休眠卵にマイクロインジェクションを適用した例は、公開から20年以上を経た2015年のZabelinaら(Zabelina V., et al., 2015, J. Insect Physiol., 81: 28-35)による一例しか知られていない。しかも、Zabelinaらによれば、単為発生系統カイコから得られた非休眠卵にマイクロインジェクションを行った場合、その後の孵化率の向上が認められないことが開示されている。
今回、本発明者らは、単為発生系統以外の休眠性系統カイコに抗休眠ホルモン抗体を注射した。得られた雌親カイコから非休眠卵を採取し、その非休眠卵にマイクロインジェクションを行って孵化率を確認したところ、マイクロインジェクション後であっても、また系統に関わらず、孵化率が浸酸法や低温暗催青法で得た非休眠卵と比較して著しく高くなることを見出した。本発明は、当該知見に基づくもので、以下を提供する。
(1)マイクロインジェクション法を用いる遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法であって、単為発生系統以外の休眠性系統の雌親カイコにおける幼虫又は蛹に配列番号1で示すアミノ酸配列からなる休眠ホルモンの機能を阻害又は抑制する休眠ホルモン阻害剤を導入する阻害剤導入工程、前記阻害剤導入工程によって得た雌親カイコを雄親カイコと交配させる交配工程、及び交配後の雌親カイコに産卵させて卵を得る卵取得工程、を含む前記産生方法。
(2)前記休眠ホルモン阻害剤が休眠ホルモン若しくは休眠ホルモン受容体を標的対象とするペプチド性阻害剤又は核酸性阻害剤である、(1)に記載の産生方法。
(3)前記ペプチド性阻害剤が抗休眠ホルモン抗体、抗休眠ホルモン受容体抗体、又はその断片である、(2)に記載の生産方法。
(4)前記抗休眠ホルモン抗体が配列番号2で示すアミノ酸配列をエピトープとして認識する、(3)に記載の生産方法。
(5)前記抗休眠ホルモン抗体が配列番号3で示すアミノ酸配列を含むペプチドを抗原として認識する、(3)に記載の生産方法。
(6)前記抗休眠ホルモン抗体が配列番号4で示すアミノ酸配列を含むペプチドを抗原として認識する、(3)に記載の生産方法。
(7)前記休眠ホルモンが配列番号5〜15のいずれか一で示すアミノ酸配列を含むペプチドを抗原として認識する、(3)に記載の生産方法。
(8)前記ペプチド性阻害剤が不活性型休眠ホルモンである、(2)に記載の生産方法。
(9)前記不活性型休眠ホルモンが、配列番号4で示すアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸配列の付加、欠失、置換、又はそれらの組み合わせを含むアミノ酸配列からなる、(8)に記載の生産方法。
(10)前記核酸性阻害剤が、核酸アプタマー、RNAi分子、アンチセンス核酸又はリボザイムである、(2)に記載の産生方法。
(11)単為発生系統以外の休眠性系統カイコを用いた遺伝子組換えカイコ作出方法であって、(1)〜(10)のいずれかに記載の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法で得られた非休眠卵に所望の核酸を導入する核酸導入工程、及び孵化したカイコから遺伝子組換えカイコを選択する選択工程を含む前記方法。
(12)単為発生系統以外の休眠性系統の雌親カイコにおける幼虫又は蛹に配列番号1で示すアミノ酸配列からなる休眠ホルモンの機能を阻害又は抑制する休眠ホルモン阻害剤を導入し、前記休眠ホルモン阻害剤の導入によって得た雌親カイコを雄親カイコと交配させ、交配後の雌親カイコに産卵させて卵を得る方法によって生産されるマイクロインジェクション法を用いる遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵。
本発明の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法によれば、マイクロインジェクション後の孵化率が顕著に高い非休眠卵を生産することができる。
本発明の遺伝子組換えカイコ作出方法によれば、本発明の生産方法で生産された非休眠卵を用いることで効率的に遺伝子組換えカイコを作出することが可能となる。また、それによって、タンパク質大量生産系としてのカイコの産業上の利用価値を向上させることができる。
本発明の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法フローを示す概念図である。 チョウ目昆虫における休眠ホルモンのアミノ酸配列をアラインメントした図である。12種中10種以上で共通するアミノ酸を太字で示し、またギャップをハイフンで示している。いずれの休眠ホルモンもC末端はアミド化(-NH2)されている。図中、B.mor-DHはBombyx mori(カイコ)の休眠ホルモンを、H.zea-DHはHelicoverpa zea(アメリカタバコガ)の休眠ホルモンを、H.arm-DHはHelicoverpa armigera(オオタバコガ)の休眠ホルモンを、H.ass-DHはHelicoverpa assulta(タバコガ)の休眠ホルモンを、H.vir-DHはHeliothis virescens(ニセアメリカタバコガ)の休眠ホルモンを、M.sex-DHはManduca sexta(タバコスズメガ)の休眠ホルモンを、S.ric-DHはSamia ricini(エリサン)の休眠ホルモンを、A.per-DHはAntheraea pernyi(サクサン)の休眠ホルモンを、S.lit-DHはSpodoptera littoralis(エジプトヨトウ)の休眠ホルモンを、S.exi-DHはSpodoptera exigua(シロイチモジヨトウ)の休眠ホルモンを、O.thy-DHはOrgyia thyellina(ヒメシロモンドクガ)の休眠ホルモンを、そしてC.ana-DHはClostera anastomosis(セグロシャチホコ)の休眠ホルモンを示す。 本発明の遺伝子組換えカイコ作出方法フローを示す概念図である。
1.遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法
1−1.概要
本発明の第1の態様は、遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法である。本発明は、遺伝子組換えカイコの作出において使用されるマイクロインジェクション用非休眠卵を生産する方法で、あらゆる休眠性系統カイコから非休眠卵を生産することができる。また、単為発生系統以外の休眠性系統カイコから当該生産方法で得られる非休眠卵は、マイクロインジェクション後も高い孵化率を維持できるので、遺伝子組換えカイコを効率的に作出することが可能となる。
1−2.定義
本明細書で頻用する以下の用語について定義する。
「遺伝子組換えカイコ」とは、遺伝子組換え技術を用いて作製した外来DNAを保有するカイコの遺伝子組換え体又はその後代をいう。本明細書の遺伝子組換えカイコは、特に、マイクロインジェクション法により外来DNAをカイコ卵に導入して得られる遺伝子組換え体を意味する。したがって、本発明の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法で得られる非休眠卵は、マイクロインジェクション法を用いた遺伝子組換えカイコの作出用であって、他の用途に使用されるものではない。
本明細書において「休眠(状態)」とは、生物が生活環の中で特定の時期に発生や成長、又は活動を一時的に停止して休止状態となることをいう。
本明細書において「系統」とは、同一種内において共通する特定の遺伝形質を有する個体集団をいう。「株(strain)」とほぼ同じ概念である。例えば、卵休眠性という特定の遺伝形質に関して、卵期に休眠状態に入る休眠卵を産卵する個体群は休眠性系統となり、卵期に休眠状態に入らない非休眠卵を産卵する個体群は非休眠性系統となる。異なる特定の遺伝形質に着目した場合、一個体は複数の系統に属し得る。例えば、休眠性系統において、単為発生という特定の遺伝形質に着目した場合、単為発生が可能な性質を有する系統は、休眠性系統であり、かつ単為発生系統でもある。特定の遺伝子に変異を有する変異体群や、形態又は性質が共通する品種も、本明細書では系統に包含される。
本明細書において「単為発生系統(カイコ)」とは、未受精卵に高温接触等の刺激を付与することで単為発生が誘導されるカイコ系統をいう。単為発生系統カイコの具体例としては、限定はしないが、例えば、PK1、P14、及びカンボージュ×日105の交雑種が挙げられる。
本明細書において「休眠性系統(カイコ)」とは、休眠卵を産卵するカイコ系統をいう。休眠性系統カイコは、原則として卵期に休眠状態に入る。休眠性系統カイコの具体例としては、限定はしないが、例えば、大造、日137号、支146号、日603号、日604号、中604号、中605号、中514号、中515号が挙げられる。
本明細書において「休眠卵」とは、休眠性系統カイコを通常の飼育条件下で産卵することにより得られる卵をいう。休眠卵は、通常、胚発生が胚子期で中断し、低温耐性状態となる。これはカイコが越年のために獲得した環境応答に基づく生活環制御現象の一つである。それ故に、一般に冬季が存在する温帯域に祖先系統を持つ派生系統では、その多くが休眠性系統である。一方、冬季が存在しない亜熱帯又は熱帯域に祖先系統を持つ派生系統では、その多くが1年に数世代を繰り返す多化性系統で休眠卵を産卵しない非休眠性系統である。
本明細書において「非休眠卵」とは、狭義には休眠状態に入らないカイコ卵をいうが、本来は休眠卵である卵に休眠解除処理を施し、強制的に覚醒させたカイコ卵も広義の非休眠卵として包含する。好ましくは狭義の非休眠卵である。前述の多化性系統から得られる非休眠卵、低温暗催青法で得られる非休眠卵、及び本発明の生産方法で得られる非休眠卵は狭義の非休眠卵である。なお、自然界で休眠は積算温度が一定温度に達することで解除される。
「休眠ホルモン」(diapause hormone(DH):本明細書ではしばしば「DH」と略称する。)とは、20〜30個ほどのアミノ酸から成る神経ペプチドである。本明細書においては、特に昆虫綱(Insecta)に属する種(以下、単に「昆虫」という)、好ましくはチョウ目(Lepidoptera)に属する種、より好ましくはカイコの休眠ホルモンを意味する。休眠ホルモンは、次世代卵の休眠性を制御する内分泌系の生理活性物質であり、カイコでは、雌親の食道下神経節において前駆体の状態で合成された後、プロセシングされ、成熟体の状態でアラタ体に貯蔵される。その後、雌親の蛹期にアラタ体から体液中に分泌され、発育中の卵巣に作用して次世代卵を休眠卵へと誘導することが知られている(清水勇, 1991, 応動昆, 35: 81-91)。
本発明の休眠ホルモンは、上述の配列番号1及び5〜15で示すアミノ酸配列において、C末端側の配列番号2で示すアミノ酸配列を除いた他の領域、好ましくは配列番号3で示すアミノ酸配列を除いた他の領域で、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1及び5〜15で示すアミノ酸配列において、C末端側の配列番号2で示すアミノ酸配列を除いた他の領域、好ましくは配列番号3で示すアミノ酸配列を除いた他の領域に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチドを含む。
本明細書において「数個」とは、2〜4個又は2〜3個をいう。また、「アミノ酸同一性」とは、2つのアミノ酸配列間のいずれか一方の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基数の割合(%)をいう。具体的には、2つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じて一方又は双方にギャップを挿入しながら2つのアミノ酸配列間のアミノ酸一致度が最大となるようにしたときに得られる同一アミノ酸残基数を、2つのアミノ酸配列のいずれか一方の全アミノ酸残基数、好ましくは比較対象ではなく評価対象の全アミノ酸残基数で除して算出される。
本明細書において「アミノ酸の置換」とは、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸間において、電荷、側鎖、極性、芳香族性等の性質の類似する保存的アミノ酸群内での置換をいう。例えば、低極性側鎖を有する無電荷極性アミノ酸群(Gly, Asn, Gln, Ser, Thr, Cys, Tyr)、分枝鎖アミノ酸群(Leu, Val, Ile)、中性アミノ酸群(Gly, Ile, Val, Leu, Ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸群(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr,Cys)、酸性アミノ酸群(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸群(Arg,Lys,His)、芳香族アミノ酸群(Phe,Tyr,Trp)内での置換が挙げられる。
1−3.生産方法
本発明は、図1に示すように阻害剤導入工程(S101)、交配工程(S102)、及び卵取得工程(S103)を必須工程として含む。以下、各工程について具体的に説明をする。
1−3−1.阻害剤導入工程
「阻害剤導入工程」(S101)とは、単為発生系統以外の休眠性系統の雌親カイコ幼虫又は蛹に、休眠ホルモンの機能を阻害又は抑制する休眠ホルモン阻害剤を導入する工程である。カイコの場合、卵期における休眠性は、胚子の形質ではなく、雌親の体内で卵細胞として発育している段階で環境要因等により決定される。つまり、カイコ卵の休眠性は雌親の形質であり、狭義の非休眠卵を得るためには休眠性系統の雌親カイコを処理して、非休眠卵を産卵するように調製する必要がある。本工程は、休眠ホルモン阻害剤を雌親カイコに導入することによって、雌親カイコが休眠卵を産卵できない状態にすることを目的とする。
本明細書において「休眠ホルモン阻害剤」(以下、しばしば「DH阻害剤」と表記する)とは、カイコ生体内における休眠ホルモンの機能を抑制又は阻害することのできる剤をいう。DH阻害剤は、標的対象に基づいて、休眠ホルモンを標的物質としてその活性や機能を直接的に阻害する直接阻害剤と、休眠ホルモンが結合する休眠ホルモン受容体(diapause hormone receptor;以下、しばしば「DHR」と表記する)等を標的物質として休眠ホルモンの活性や機能を間接的に阻害する間接阻害剤に大別できるが、本明細書のDH阻害剤は、どちらの阻害剤であってもよい。また、DH阻害剤は、作用機序に基づいて、標的物質の機能をタンパク質レベルで阻害するペプチド機能阻害剤と、標的物質をコードする遺伝子の発現を核酸レベルで抑制する遺伝子発現抑制剤が知られているが、これも本明細書のDH阻害剤の場合、どちらの阻害剤であってもよい。
本発明で使用するDH阻害剤には、その構成に基づいて、ペプチド性阻害剤、核酸性阻害剤、及び低分子化合物阻害剤が存在する。以下、それぞれの阻害剤について説明をする。
(1)ペプチド性阻害剤
本明細書において「ペプチド性阻害剤」とは、ペプチドで構成されるDH阻害剤である。ペプチド性阻害剤には、例えば、標的物質に対する抗体、その断片(抗体断片)、又は不活性型休眠ホルモンが挙げられる。以下、それぞれについて具体的に説明をする。
(1−1)抗体
本明細書において「標的物質に対する抗体」とは、標的物質に対して免疫応答性を示す抗体である。より好ましくは、標的物質に結合して、その機能を抑制又は阻害する中和抗体である。ここでいう標的物質には、休眠ホルモン又は休眠ホルモン受容体等が挙げられる。したがって、ここでいう抗体は、具体的には、抗休眠ホルモン抗体(抗DH抗体)、又は抗休眠ホルモン受容体抗体(抗DHR抗体)が該当する。
「抗DH抗体」は、休眠ホルモンに対して免疫応答性を示す抗体である。本明細書の抗DH抗体は、前述した休眠ホルモンのいずれかを抗原ペプチドとし、配列番号1で示すカイコの休眠ホルモンを認識して結合する抗体であればよい。例えば、配列番号2で示すアミノ酸配列をエピトープとして認識する抗DH抗体、配列番号3で示すアミノ酸配列に結合する抗DH抗体、及び配列番号4で示すアミノ酸配列に結合する抗DH抗体が挙げられる。
「抗DHR抗体」は、休眠ホルモン受容体に対して免疫応答性を示す抗体である。本明細書の抗DHR抗体は、配列番号16で示すカイコの休眠ホルモン受容体において、配列番号17、18、19、及び20で示す細胞外ドメインを認識して結合する抗体であればよい。
本発明で使用する抗体の由来生物種は、特に限定はしない。鳥類及び哺乳動物を使用すればよい。例えば、ニワトリ、ダチョウ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ロバ、ヒツジ、ラクダ、ウマ、又はヒト等が挙げられる。
本発明で使用する抗体は、前述の抗原ペプチドを認識し、免疫応答性を示す抗体である限り、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のいずれであってもよい。また、ポリクローナル抗体を包含する血清(抗血清)であってもよい。本明細書において「ポリクローナル抗体」とは、前述の抗原ペプチドに特異的に結合し、かつそれを認識することのできる異なる複数種の免疫グロブリン群をいう。また、本明細書において「モノクローナル抗体」とは、抗原に特異的に結合し、かつそれを認識することのできる単一種の免疫グロブリン、又は免疫グロブリンに含まれる少なくとも1組の軽鎖可変領域(VL領域)及び重鎖可変領域(VH領域)を包含する合成抗体又は組換え抗体をいう。
本発明で使用する抗体が免疫グロブリン分子で構成される場合、免疫グロブリンは任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgA、IgD及びIgY)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)とすることができる。
本明細書において「合成抗体」とは、化学的に、又は組換えDNA法を用いることによって合成した抗体をいう。例えば、組換えDNA法を用いて新たに合成された抗体が挙げられる。具体的には、例えば、scFv(single chain Fragment of variable region:単鎖抗体)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)又はテトラボディ(tetrabody)等が挙げられる。免疫グロブリン分子において、機能的な抗原結合部位を形成する一組の可変領域(軽鎖可変領域VL及び重鎖可変領域VH)は、軽鎖と重鎖という別々のポリペプチド鎖上に位置する。scFvは、免疫グロブリン分子において、VL及びVHを十分な長さの柔軟性リンカーによって連結し、1本のポリペプチド鎖に包含した構造を有する分子量約35kDa以下の合成抗体である。scFv内において1組の可変領域は、互いに自己集合して1つの機能的な抗原結合部位を形成することができる。scFvは、それをコードする組換えDNAを、公知技術を用いてベクターに組み込み、発現させることで得ることができる。ダイアボディは、scFvの二量体構造を有する分子である(Holliger et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448)。例えば、上記リンカーの長さが約12アミノ酸残基よりも短い場合、scFv内の2つの可変領域は自己集合できないが、2つのscFvを相互作用させてダイアボディを形成させることにより、一方のscFvのVLが他方のscFvのVHと集合可能となり、2つの機能的な抗原結合部位を形成することができる。さらに、scFvのC末端にシステイン残基を付加させることにより、2本のscFvどうしのジスルフィド結合が可能となり、安定的なダイアボディを形成させることもできる。このようにダイアボディは二価の抗体断片である。トリアボディ、及びテトラボディは、ダイアボディと同様にscFv構造を基本とした、その三量体、及び四量体構造を有する、それぞれ三価、及び四価の抗体である。ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディは、多重特異性抗体であってもよい。「多重特異性抗体」とは、多価抗体、すなわち抗原結合部位を一分子内に複数有する抗体において、それぞれの抗原結合部位が異なるエピトープと結合する抗体をいう。例えば、ダイアボディにおいて、それぞれの抗原結合部位が異なるエピトープと結合する二重特異性抗体(Bispecific抗体)が挙げられる。
本明細書において「組換え抗体」とは、キメラ抗体、又はヒト化抗体をいう。「キメラ抗体」とは、異なる動物由来の抗体のアミノ酸配列を組み合わせて作製される抗体で、ある抗体の定常領域(C領域)を他の抗体のC領域で置換した抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体のC領域をヒト抗体のC領域と置き換えた抗体が該当する。「ヒト化抗体」とは、ヒト抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域におけるCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)をヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス)に由来する抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域における対応するCDRと置換したモザイク抗体である。
本発明で使用する抗体は、必要に応じて修飾してもよい。ここでいう「修飾」とは、グリコシル化のような抗原特異的結合活性に必要な機能上の修飾や抗体検出に必要な標識上の修飾を含む。抗体上のグリコシル化修飾は、標的対象である抗原(例えば休眠ホルモン又は休眠ホルモン受容体)に対する抗体の親和性を調整するために行われる。具体的には、例えば、抗体可変領域のフレームワーク領域において、グリコシル化したアミノ酸残基を置換により除去する改変等が挙げられる。また、蛍光色素(FITC、ローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5)、蛍光タンパク質(例えば、PE、APC、GFP)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ)、放射性同位元素(例えば、3H、14C、35S)又はビオチン若しくは(ストレプト)アビジンを用いて、抗体を標識することができる。
本発明で使用する抗体は、抗原(例えば、休眠ホルモン又は休眠ホルモン受容体)との解離定数が、10-7M以下であることが好ましい。10-8M以下の高い親和性を有することが好ましく、より好ましくは10-9M以下、特に好ましくは10-10M以下である。上記解離定数は、当該分野で公知の技術を用いて測定することができる。例えば、Biacoreシステム(GE Healthcare社)により速度評価キットソフトウェアを用いて測定してもよい。
本発明で使用する抗体は単一種であってもよいし、複数種であってもよい。複数種の抗体を含む場合、例えば、一方を抗DH抗体、そして他方を抗DHR抗体とすることによって、休眠ホルモンの機能を直接的及び間接的に阻害する相乗的効果が期待できる。
本発明で使用する抗体は、当該分野の常法によって得ることができる。また、免疫原情報(休眠ホルモン又は休眠ホルモン受容体のアミノ酸配列における部分配列情報等)を各メーカーに提示して委託製造することも可能である。モノクローナル抗体は、その抗体を産生するハイブリドーマから得ることもできる。モノクローナル抗体のアミノ酸配列が明らかであれば、そのアミノ酸配列に基づいて、化学的合成法や組換えDNA技術を用いることによって調製してもよい。以下、当該分野での一般的な抗体作製方法を用いて抗DH抗体を作製する方法を例に挙げて簡単に説明する。
まず、免疫原(抗原)として休眠ホルモン断片を緩衝液に溶解して調製した免疫原溶液を、免疫動物である哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギ等に投与して免疫する。この際、効果的に免疫するために、必要に応じてアジュバントを添加してもよい。アジュバントは、市販の完全フロイントアジュバント(FCA)、不完全フロイントアジュバント(FIA)等を単独で又は混合して使用することができる。免疫原の投与方法としては、例えば、FIA又はFCAを用いた皮下注射、FIAを用いた腹腔内注射、又は塩化ナトリウムを用いた静脈注射が挙げられるが、この限りでない。免疫原の1回の投与量は、免疫動物の種類、投与経路等により適宜決定されるものであるが、動物1匹当たり約50〜200μgである。また、免疫の間隔は特に限定されず、初回免疫後、数日から数週間間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で、2〜6回、好ましくは3〜4回追加免疫を行う。初回免疫より後に、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)法等により行い、抗体価が充分な上昇を見せれば、免疫原を静脈内又は腹腔内に注射し、最終免疫とする。抗DHポリクローナル抗体を取得する場合には、最終免疫後に、免疫動物から全血を回収すれば、抗DHポリクローナル抗体を含む抗血清を得ることができる。
一方、抗DHモノクローナル抗体を取得する場合には、最終免疫の日から2〜5日後、好ましくは3日後に、抗体産生細胞を採取して、抗DHモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを調製すればよい。抗体産生細胞は、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が該当するが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
抗DHモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマは、免疫動物から得た抗体産生細胞とミエローマ細胞を細胞融合することによって作製できる。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞には、一般的に入手容易なマウス等由来の株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生育できる性質を有するものが好ましい。また、株化細胞は、免疫動物と同種系の動物に由来するものが好ましい。ミエローマ細胞は、例えば、BALB/cマウス由来のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損細胞株である、P3X62-Ag.8株(ATCCTIB9)、P3X63-Ag.8.U1株(JCRB9085)、P3/NSI/1-Ag4-1株(JCRB0009)、P3x63Ag8.653株(JCRB0028)又はSP2/0-Ag14株(JCRB0029)等を利用することができる。
細胞融合は、血清フリーのDMEM、RPMI1640培地等の動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞とミエローマ細胞を約1:1〜20:1の割合で混合し、細胞融合促進剤の存在下にて融合すればよい。細胞融合促進剤には、平均分子量1,5kDa〜4kDaのポリエチレングリコール(PEG)等の10〜80%溶液を使用すればよい。また、融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を併用することもできる。さらに、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることも可能である。
細胞融合処理後の細胞から目的とする抗DHモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選別するには、細胞懸濁液を、例えば、ウシ胎児血清含有RPMI1640培地等で適当に希釈後、96ウェルマイクロタイタープレート上に2×106個/ウェル程度で播種し、各ウェルに選択培地を加えて培養すればよい。培養温度は20〜40℃、好ましくは37℃である。ミエローマ細胞がHGPRT欠損株又はチミジンキナーゼ(TK)欠損株であれば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含む選択培地(HAT培地)で培養することで、抗体産生細胞とミエローマ細胞のハイブリドーマのみを選択的に生育、及び増殖させることができる。したがって、選択培地で培養開始後、約10日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして選択すればよい。次に、選択したハイブリドーマを産生する抗体の休眠ホルモンに対する結合活性を指標としてさらに選抜する。続いて、休眠ホルモンへの結合活性を持つ抗体については、交差性の試験を行い、許容できる抗体を産生するハイブリドーマを選択する。許容できる交差性とは、目的とする抗体の用途において、無視し得る程度の交差性を意味する。得られた抗DHモノクローナル抗体の休眠ホルモンへの反応特異性を確認するには、例えば、ELISA法を利用すればよい。
作製したハイブリドーマから抗DHモノクローナル抗体は、宿主動物を腹水化することで得ることができる。具体的には、ハイブリドーマを作製する際に使用した融合パートナー(例えば、脾臓細胞とミエローマ細胞)の由来細胞と同種の動物(例えばマウス)、又は免疫不全動物(例えばヌードマウス)の腹腔内に作製したハイブリドーマを接種し、腹水を適宜採取することにより、目的の抗DHモノクローナル抗体を含む腹水液を回収することができる。より具体的には、SP2/0細胞を融合パートナーとしたハイブリドーマを、プリスタン接種後10日間を経たBALB/cマウスの腹腔中に接種することにより、抗体を含む腹水液を回収できる。
また、本発明におけるハイブリドーマは、適した培地を用いて培養を行うことにより抗体生産に用いることが出来る。具体的にはハイブリドーマSFM培地(Gibco社)の中に1×10細胞/mLとなるようにハイブリドーマを接種し、37℃の5%CO2インキュベータにてハイブリドーマが死滅するまで培養することによって抗DHモノクローナル抗体を含む培養液上清を得ることもできる。
また、抗DHモノクローナル抗体のアミノ酸配列が明らかであれば、そのアミノ酸配列に基づいて(Kabat E.A., et al., 1991, Sequences of proteins of immunological interest, Vol.1, eds.5, NIH publication)、化学的合成法や組換えDNA技術を用いることによって調製してもよい。
(1−2)抗体断片
DH阻害剤は、前記抗体の一部からなり、かつその抗体と同様に抗原に対して免疫応答性を示す抗体断片であってもよい。そのような抗体断片として、例えば、Fab、F(ab')2、Fab'等が挙げられる。Fabは、IgG分子がパパインによってヒンジ部のジスルフィド結合よりもN末端側で切断されて生じる抗体断片であって、H鎖定常領域(重鎖定常領域:以下CHと表記する)を構成する3つのドメイン(CH1、CH2、CH3)のうちVHに隣接するCH1とVH、及び完全長のL鎖から構成される。F(ab')2は、IgG分子がペプシンによってヒンジ部のジスルフィド結合よりもC末端側で切断されて生じるFab'の二量体である。Fab'は、Fabよりもヒンジ部を含む分だけH鎖が若干長いが実質的にはFabと同等の構造を有する。Fab'は、F(ab')2をマイルドな条件下で還元し、ヒンジ領域のジスルフィド連結を切断することによって得ることができる。これらの抗体断片は、いずれも抗原結合部位を包含していることから、抗原エピトープと特異的に結合する能力を有している。
(1−3)不活性型休眠ホルモン
本明細書において「不活性型休眠ホルモン」(以下、しばしば「不活性型DH」と称する)とは、休眠ホルモン受容体(DHR)との結合性を保持し、かつ休眠ホルモン(DH)の活性が失われた変異型休眠ホルモン(変異型DH)をいう。不活性型DHは、DHRに結合することによってDHを競合的に阻害し、その結果、休眠ホルモンの機能を抑制することができる。すなわち、不活性型DHは、休眠ホルモンのアンタゴニストとして機能する。
本明細書の不活性型DHは、具体的には、前述したいずれかの休眠ホルモンの配列番号4で示すアミノ酸配列からなる領域において、好ましくはC末端側の配列番号3で示すアミノ酸配列からなる領域において、より好ましくは配列番号2で示すアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸配列の付加、欠失、置換、又はそれらの組み合わせによる変異が生じた変異型DHである。
不活性型DH遺伝子は、前記アミノ酸配列をコードする核酸情報に基づいた核酸合成法によって、又は野生型DH遺伝子にPCR等を用いて適当な変異を導入することによって、当該分野における公知技術により容易に入手することができる。不活性型DHは、前記不活性型DH遺伝子を用いた公知のタンパク質発現系により入手することができる。これらの具体的な方法については、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkを参考にすればよい。
(2)核酸性阻害剤
本明細書において「核酸性阻害剤」とは、核酸で構成されたDH阻害剤である。例えば、休眠ホルモン又は休眠ホルモン受容体を標的物質とする核酸アプタマー、RNAi分子、アンチセンス核酸、リボザイム等が該当する。核酸性阻害剤を構成する核酸には、DNA及び/又はRNAのような天然型核酸の他、非天然型核酸が含まれる。本明細書において「非天然型核酸」とは、天然型核酸に類似の構造及び/又は性質を有する人工的に構築された核酸類似体をいう。例えば、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)、ホスフェート基ペプチド核酸(PHONA)、架橋化核酸(BNA/LNA:Bridged Nucleic Acid/Locked Nucleic Acid)、モルホリノ核酸等が挙げられる。以下、各核酸性阻害剤について具体的に説明をする。
(2−1)核酸アプタマー
「アプタマー」とは、標的物質と特異的に結合する能力を持ったリガンド分子である。アプタマーは、自身の立体構造によって標的物質と強固、かつ特異的に結合し、標的物質の機能を特異的に抑制することができる。
本明細書において、「核酸アプタマー」とは、核酸で構成されるアプタマーであって、水素結合等を介した一本鎖核酸分子の二次構造、さらに三次構造に基づいて形成される立体構造によって標的物質と強固、かつ特異的に結合し、標的物質の生理活性等の機能を特異的に阻害又は抑制する能力を持つリガンド分子をいう。
核酸アプタマーは、RNAのみで構成されるRNAアプタマーとDNAのみで構成されるDNAアプタマーが知られているが、本明細書における核酸アプタマーを構成する核酸は、特に限定はしない。例えば、DNAアプタマー、RNAアプタマー、DNAとRNAの組み合わせで構成されるアプタマー等を含む。
本明細書における標的物質は、休眠ホルモンの活性を抑制又は阻害できる分子であれば特に制限はない。例えば、カイコDH、又はそのDHR(特にその細胞外領域)等のペプチド(しばしば「標的タンパク質」と表記する)、又はそれらをコードする遺伝子若しくはその転写産物(しばしば「標的遺伝子」と表記する)は、好適な標的物質となる。
核酸アプタマーを作製する場合、RNAアプタマーであれば、例えば、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法を用いて試験管内選別により作製することができる。SELEX法とは、ランダム配列領域とその両末端にプライマー結合領域を有するRNA分子で構成されるRNAプールから標的物質(例えば、カイコDH)に結合したRNA分子を選択し、回収後にRT-PCR反応によって増幅した後、得られたcDNA分子を鋳型として転写を行い、次のラウンドのRNAプールにするという一連のサイクルを数〜数十ラウンド繰り返して、標的物質に対してより結合力の強いRNAを選択する方法である。ランダム配列領域とプライマー結合領域の塩基配列長は特に限定はしない。通常、ランダム配列領域は20〜80塩基、プライマー結合領域は、それぞれ15〜40塩基の範囲である。標的物質への特異性を高めるためには、標的物質に類似する分子とRNAプールとを混合し、その分子と結合しなかったRNA分子からなるプールを用いればよい。このような方法によって最終的に得られたRNA分子をRNAアプタマーとして利用する。SELEX法は、公知の方法であり、具体的な方法は、例えば、Panら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., (1995) 92: 11509-11513)に準じて行えばよい。
(2−2)RNAi分子
「RNAi分子」とは、生体内においてRNA干渉(RNA inteference:RNAi)を誘導する物質をいう。RNA干渉とは、標的遺伝子の転写産物の分解を介してその遺伝子の発現を抑制する配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングである。本明細書におけるRNAi分子は、標的遺伝子の転写産物(例えば、カイコDH mRNA)に対して特異的なRNA干渉を誘導することのできるRNAで構成された分子であって、具体的にはsiRNA又はshRNAが挙げられる。RNA干渉については、例えば、Bass B.L., 2000, Cell, 101, 235-238;Sharp P.A., 2001, Genes Dev., 15 ,485-490;Zamore P.D., 2002, Science, 296, 1265-1269;Dernburg ,A.F. & Karpen, G.H., 2002, Cell, 111,159-162に詳述されている。以下、各RNAi分子について詳細に説明をする。
(i)siRNA
「siRNA」(短分子干渉RNA:small interference RNA)とは、標的遺伝子の一部に相当する塩基配列を有するセンス鎖(パッセンジャー鎖)、及びそのアンチセンス鎖(ガイド鎖)からなる小分子二本鎖RNAである。siRNAは、生体内又は細胞内へ導入することによって配列特異的な転写後遺伝子サイレンシング(いわゆる、RNA干渉)を誘導することができる(Fire A. et al.,1998,Nature,391, 806-811)。
siRNAは、標的遺伝子の塩基配列に基づいて公知の方法により設計すればよい。例えば、Ui-Teiらの方法(Nucleic Acids Res., 2004, 32:936-948)、Reynoldsらの方法(Nat. Biotechnol., 2004, 22:326-330)、Amarzguiouiらの方法(Biochem. Biophys. Res. Commun.,2004, 316: 1050-1058)の方法に基づいて、設計することができる。また、種々の研究機関や企業によって、siRNA設計が可能なウェブサイトが公開されており、有効なsiRNAをウェブ上で設計することが可能である。代表的なsiRNA設計ウェブサイトとしては、siDirect(http://design.RNAi.jp/)、siDESIGN Center(http://dharmacon.gelifesciences.com/design-center/)、siRNA Selection Server (http://jura.wi.mit.edu/bioc/siRNAext/)等が挙げられる。
siRNA設計の具体例を挙げると、カイコDH siRNAを設計する場合には、センス鎖の塩基配列として、配列番号3に示す塩基配列からなるカイコ遺伝子から15塩基以上24塩基以下、好ましくは18塩基以上23塩基以下の連続した塩基配列を選択領域として選択する。アンチセンス鎖の塩基配列は、選択した前記センス鎖の塩基配列に相補的な塩基配列とする。なお、siRNAの調製に際しては、センス鎖及びアンチセンス鎖共に選択領域内のT(チミン)塩基をU(ウラシル)塩基に変換しておく。
siRNAの一方の末端又は両末端には、標的遺伝子の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列とは関連しない一以上のDNA、RNA、及び/又は核酸類似体からなる塩基配列が存在していてもよい。このようなsiRNAの末端に存在する塩基数は、特に限定はしないが、1〜20個の範囲内であることが好ましい。具体的には、例えば、siRNAのセンス鎖側及びsiRNAアンチセンス鎖側の3’末端側にTT(チミン‐チミン)又はUU(ウラシル‐ウラシル)等を付加する場合が挙げられる(Tuschl T et al., 1999, Genes Dev, 13(24):3191-7)。
(ii)shRNA
「shRNA」(short hairpin RNA)とは、前記siRNAを構成する二本鎖RNAの各一末端がスペーサ配列で連結されて一本鎖となったRNAi分子をいう。したがって、shRNAは、分子内でセンス領域とアンチセンス領域が互いに塩基対合してステム構造を形成し、さらにスペーサ配列がループ構造をとることによって、分子全体としてヘアピン型のステム−ループ構造を有する。shRNAが細胞内に導入されると、ループ構造部分が切断されて二本鎖RNA分子、すなわちsiRNAが生成される。生じたsiRNAは、前項で述べたsiRNAと同様のRNA干渉機構によって標的遺伝子の発現を抑制することができる。
shRNAの設計は、例えば、前記siRNAにおけるセンス領域の3’末端と前記アンチセンス鎖の5’末端(又はアンチセンス領域の3’末端とセンス鎖の5’末端)とをスペーサ配列で連結する。例えば、カイコDH shRNAを設計する場合には、カイコDH siRNAのセンス鎖の3’末端とアンチセンス領域の5’末端とを適当なスペーサ配列で連結すればよい。スペーサ配列は、通常3〜24塩基、好ましくは、4〜15塩基あればよい。スペーサ配列については、siRNAが塩基対合することができる配列であれば、特に制限はない。
(2−3)アンチセンス核酸
「アンチセンス核酸」とは、標的遺伝子の転写産物(例えば、カイコDH mRNA)を標的とし、その塩基配列の全部又は一部に対して相補的な塩基配列を有し、標的mRNAにハイブリダイズしてその翻訳を阻害する核酸分子である。核酸は、主としてDNAで構成されるが、例えば、PNAやLNAのような核酸類似体やRNAも含むことができる。アンチセンス核酸の塩基長は、特に限定はしないが、通常は15〜40塩基、好ましくは17〜25塩基の長さで足りる。
アンチセンス核酸は、当該分野における公知の核酸合成技術を用いて作製することができる。例えば、Green, M.R. and Sambrook, J.(2012:前述)を参考にすればよい。
(2−4)リボザイム
「リボザイム」は、核酸酵素とも呼ばれる触媒活性を有する核酸分子であって、標的遺伝子の転写産物(例えば、カイコDH mRNA)を基質として、その特定部位を切断する触媒機能を有する。核酸酵素には、DNAで構成されるデオキシリボザイム、及びリボ酵素とも呼ばれRNAで構成されるリボザイムが知られているが、本明細書における核酸酵素は、いずれであってもよい。デオキシリボザイム及びリボザイムは、いずれも構成塩基に化学修飾核酸、人工核酸及び/又は核酸類似体を一部に含むことができる。
(3)低分子化合物阻害剤
本明細書において「低分子化合物阻害剤」とは、分子量10000以下の低分子化合物で構成されたDH阻害剤である。主に休眠ホルモン受容体への結合を休眠ホルモンと競合するアンタゴニスト分子が挙げられる。
(4)DH阻害剤の導入方法
DH阻害剤の導入は、雌親カイコへのインジェクションによって行う。使用する雌親カイコの系統は、所望の遺伝子組み換えカイコを作出する上で必要な遺伝子、又は形質を有する系統であれば特に限定はしない。原則として、あらゆる系統を使用することができる。ただし、本発明の主旨を鑑みれば、休眠性系統のカイコを前提とすることが望ましい。また、単為発生系統は好ましくない。これは、Zabelinaら(2015年;前述)が示すように、単為発生系統の休眠性系統カイコを用いて本態様の方法により非休眠卵を作製しても、その非休眠卵にマイクロインジェクションを行った場合、本発明の効果である顕著に高い孵化率が期待できないためである。カイコの雌雄の区別は、幼虫期であれば脱皮直後の石渡腺の有無(雌では4個存在する)、蛹期であれば大きさ(一般に雌の方が一回り大きい)と腹板尾部の形状により可能である。
DH阻害剤の導入時期は、幼虫期又は蛹期、好ましくは4齢幼虫期〜蛹化後3日以内の蛹、より好ましくは5齢幼虫期〜蛹化後2日以内の蛹、さらに好ましくは前蛹期〜蛹化後2日以内の蛹、一層好ましくは蛹化直後〜蛹化後24時間以内の蛹である。導入箇所は限定しないが、胸部背側からが好ましい。インジェクションは、注射器(例えば、1mLシリンジ、及び25G〜27Gの注射針)を利用すればよい。
DH阻害剤の導入量は、DH阻害剤の構成成分(ペプチド性阻害剤、又は核酸性阻害剤等)、種類(抗体、又はアプタマー等)、標的物質(休眠ホルモン又は休眠ホルモン受容体等)、そして導入時期(幼虫期、又は蛹期)等の条件によって異なることから、それぞれの条件に応じて適宜定めればよい。例えば、抗DH抗体を含む抗DH血清であれば、個体あたり0.1μL〜80μL、好ましくは1μL〜50μL、より好ましくは5μL〜30μL導入すればDH阻害効果を得ることができる。導入後の個体は、幼虫であれば室温(例えば、25〜28℃)で給餌し、成虫になるまで引き続き飼育する。また、蛹であれば室温(例えば、23〜25℃)で羽化するまで保存すればよい。
1−3−2.交配工程
「交配工程」(S102)とは、休眠ホルモン阻害剤の導入によって得た雌親カイコ成虫と雄親カイコ成虫を交配させる工程である。雄親カイコの系統は、所望の遺伝子組み換えカイコを作出する上で必要な遺伝子、又は形質を有する系統であれば特に限定はなく、雌親カイコのように休眠性系統である必要もない。原則として、あらゆる系統を使用することができる。交尾は、常法に従って行えばよい。雌は、羽化して蛾尿を排泄した後に交尾が可能となる。交尾時間は、2〜3時間でよい。また、交尾回数は、同一ペアで数回行わせてもよい。
1−3−3.卵取得工程
「卵取得工程」(S103)とは、交配工程後の雌親カイコ成虫に産卵させて卵を得る工程である。
前記阻害剤導入工程を経た雌親カイコは、導入したDH阻害剤の作用により、休眠ホルモンが正常に機能しない。したがって、雌親カイコが休眠系統であっても、産下した卵は非休眠卵となる。
非休眠卵の取得方法は、当該分野の常法で行えばよい。交配工程後の雌親カイコに産卵台紙を与えることで産卵が開始される。産卵時の温度は、23〜28℃、好ましくは25℃前後である。
通常、雌カイコは交尾後、数時間で産卵を開始する。卵に導入したDNAを核内へ取り込ませるためには、産下後2〜8時間、好ましくは3〜6時間の期間内にマイクロインジェクションを行う必要がある。したがって、マイクロインジェクション用の非休眠卵を生産する場合、マイクロインジェクションを実施可能な時期に合わせて、雌親カイコに非休眠卵を産卵させる必要がある。これは、前記交配工程(S102)と本工程間で調整すればよい。一般に、交尾後の雌カイコを冷蔵庫等の低温下(0〜10℃、好ましくは5℃)に移すことで、産卵を抑制させ、かつ1〜2日間又は1〜4日間、最大で1〜7日間は雌親カイコを産卵可能な状態で維持することができる。この期間内でマイクロインジェクションの実施準備を行い、適当な時期に雌親カイコを低温下から室温(23〜28℃)に移すことで、産下直後の卵を得ることができる。
1−4.効果
本発明の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法によれば、従来方法で得られる非休眠卵には見られない、マイクロインジェクション後の孵化率が顕著に高い遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵を生産することができる。また、当該生産方法によれば、低温暗催青法のように系統を選ばす、原則としてあらゆる休眠性系統から非休眠卵を生産することができる。
2.遺伝子組換えカイコ作出方法
2−1.概要
本発明の第2の態様は、遺伝子組み換えカイコの作出方法である。本発明は、第1態様に記載の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法で得られた非休眠卵を用いて、マイクロインジェクションを用いた当該分野で公知の遺伝子組換えカイコ作出方法により目的の遺伝子組換えカイコを作出する方法である。本発明の作出方法を用いることで、休眠性系統からも遺伝子組換えカイコを短期間に、かつ効率的に得ることができる。
2−2.作出方法
本発明の遺伝子組換えカイコ作出方法は、図3で示すように阻害剤導入工程(S301)、交配工程(S302)、及び卵取得工程(S303)、核酸導入工程(S304)、及び遺伝子組換えカイコ選択工程(S305)を必須の工程として含む。しかし、阻害剤導入工程(S301)、交配工程(S302)、及び卵取得工程(S303)については、第1態様の対応する各工程と同一である。つまり、本発明の作出方法は、実質的に第1態様の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法を用いて非休眠卵を得た後、その非休眠卵に対して核酸導入工程以降の工程を実施する方法である。したがって、ここでは、本発明の作出方法に特有の核酸導入工程(S304)、及び遺伝子組換えカイコ選択工程(S305)のみを以下で具体的に説明する。
2−2−1.核酸導入工程
「核酸導入工程」(S304)とは、遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵産生方法で得られた非休眠卵に所望の核酸を導入する工程である。
本工程において「所望の核酸」とは、目的の遺伝子組換えカイコを作出するためにカイコに導入すべき核酸である。導入する核酸は、通常はDNAであり、好ましくは目的の遺伝子、それを含む発現ベクター、及び/又はヘルパープラスミドのような発現を調整するベクターである。遺伝子を導入する場合、遺伝子の種類は問わない。例えば、タンパク質や機能性核酸(RNAi分子等)をコードする遺伝子でよい。目的の形質を付与し得る所望の遺伝子を導入することができる。遺伝子の由来生物種も問わない。宿主であるカイコ由来であってもよいし、他種生物、例えばヒト由来の遺伝子であってもよい。一例として、遺伝子組換えカイコを用いてヒトインスリンを生産する場合には、当該外来DNAは、ヒトインスリン遺伝子とプロモーターやターミネーター等の遺伝子発現調節領域を含む発現単位とすることができる。
本工程は、外来遺伝子をカイコに導入する当該分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、発現ベクターが目的のDNAの両端にトランスポゾンの逆位末端反復配列(Handler AM. et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:7520-5)を有するプラスミドの場合であれば、Tamuraらの方法(Tamura T. et al., 2000, Nature Biotechnology, 18, 81-84)、Zhouらの方法(Zhou W. et al., 2012, Insect Science, 19: 172-182)Yamao M. et al., 1999を利用することができる。具体的には、発現ベクターが適当な濃度となるように水やバッファー等の溶媒によって溶解又は希釈して注射液を調製する。この時、注射液にはトランスポゾン転移酵素をコードするDNAを有するヘルパープラスミドを加えておく。前記ヘルパープラスミドとしては、例えば、pHA3PIGが挙げられる。続いて、遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵産生方法で得た産下後3〜6時間の受精卵にマイクロインジェクションをする。導入する核酸の量は、特に限定しない。核酸の種類、性質、目的に応じて適宜定めればよい。通常は50μL〜30μLで足りる。
核酸導入後のカイコ卵は、孵化するまで適当な条件下、例えば、25℃でインキュベートすればよい。
2−2−2.遺伝子組換えカイコ選択工程
「遺伝子組換えカイコ選択工程」(S305)とは、孵化したカイコから遺伝子組換えカイコを選択する工程である。
本工程も当該分野で公知の方法によって行えばよい。例えば、核酸導入に用いた発現ベクターが標識遺伝子を含む場合には、その標識遺伝子の発現に基づいて目的の遺伝子組換えカイコを容易に選抜することができる。
「標識遺伝子」とは、選抜マーカーとも呼ばれる標識タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
「標識タンパク質」とは、標識遺伝子の発現により宿主カイコにない新たな形質を付与し得るタンパク質で、酵素、蛍光タンパク質、色素合成タンパク質又は発光タンパク質等が含まれる。標識タンパク質の活性に基づいて、導入した核酸を保有している形質転換体を容易に判別することが可能となる。ここで「活性に基づいて」とは、活性の検出結果に基づいて、という意味である。活性の検出は、標識タンパク質の活性そのものを直接的に検出するものであってもよいし、色素のような標識タンパク質の活性によって発生する代謝物を介して間接的に検出するものであってもよい。検出は、化学的検出(酵素反応的検出を含む)、物理的検出(行動分析的検出を含む)、又は検出者の感覚的検出(視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚による検出を含む)のいずれであってもよい。
標識タンパク質の種類は、当該分野で公知の方法によってその活性を検出可能な限り、特に限定はしない。好ましくは検出に際して形質転換体判別マーカーを保有する宿主、すなわち形質転換体に対する侵襲性の低い標識タンパク質である。例えば、蛍光タンパク質、色素合成タンパク質、発光タンパク質、外部分泌タンパク質、外部形態を制御するタンパク質等が挙げられる。蛍光タンパク質、色素合成タンパク質、発光タンパク質、外部分泌タンパク質は、形質転換体の外部形態を変化させることなく特定の条件下で視覚的に検出可能なことから、形質転換体に対する侵襲性が非常に低く、また形質転換体の判別及び選抜が容易なことから特に好適である。
本明細書において「蛍光タンパク質」は、特定波長の励起光を照射したときに特定波長の蛍光を発するタンパク質をいう。天然型及び非天然型のいずれであってもよい。また、励起波長、蛍光波長も特に限定はしない。具体的には、例えば、CFP、RFP、DsRed(3xP3-DsRedのような派生物を含む)、YFP、PE、PerCP、APC、GFP(EGFP、3xP3-EGFP等の派生物を含む)等が挙げられる。
本明細書において「色素合成タンパク質」は、色素の生合成に関与するタンパク質であり、通常は酵素である。ここでいう「色素」とは、形質転換体に色素を付与することができる低分子化合物又はペプチドで、その種類は問わない。好ましくは個体の外部色彩として表れる色素である。例えば、メラニン系色素(ドーパミンメラニンを含む)、オモクローム系色素、又はプテリジン系色素が挙げられる。
本明細書において「発光タンパク質」とは、励起光を必要とすることなく発光することのできる基質タンパク質又はその基質タンパク質の発光を触媒する酵素をいう。例えば、基質タンパク質としてのルシフェリン又はイクオリン、酵素としてのルシフェラーゼが挙げられる。
本明細書において「外部分泌タンパク質」とは、細胞外又は体外に分泌されるタンパク質であり、外分泌性酵素の他、フィブロインのような繊維タンパク質やセリシンが該当する。外分泌性酵素には、ブラストサイジンのような薬剤の分解又は不活化に寄与し、宿主に薬剤耐性を付与する酵素の他、消化酵素が該当する。
上記標識遺伝子の発現等に基づいて選択されたカイコが、休眠性系統であり、かつ目的の核酸を有する遺伝子組換えカイコとなる。
2−3.効果
本発明の休眠性系統カイコを用いた遺伝子組換えカイコ作出方法によれば、遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法で生産された非休眠卵を用いることで、休眠性系統をベースとする場合であっても、効率的に遺伝子組換えカイコを作出することが可能となる。また、それによってタンパク質の大量生産系として、カイコの産業上の利用価値を向上させることができる。
本発明をより明確にするため、以下に実施例を挙げ手具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明の一実施形態を例示するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
<比較例1:低温暗催青法による非休眠卵の作製>
(目的)
休眠性系統のカイコから従来法の低温暗催青法を用いて非休眠卵を作製し、得られた卵の非休眠性を検証した。
(方法)
休眠性系統のカイコには、Kosetsu及びc515を用いた。掃立ては、10頭前後の同系統の雌カイコが産卵した卵を混合して15℃及び25℃に保持して孵化させた。孵化した幼虫は、羽箒を用いてカイコ卵台紙から蚕座である容器内に移した。1〜3齢の稚蚕幼虫時の飼育には、プラスチック製弁当箱(DX-HS8:222×143×35 mm;又はDX-HS10:256×189×35 mm;いずれも中央化学)又はスチロール製ケース内に防乾紙(パラフィン加工紙)を敷いた容器を用いた。餌は、シルクメイト原種1〜3齡S(日本農産工業)を防乾紙上に並べて与えた。餌の交換は、原則として1〜2齢では各1回、3齢では1〜3回行ったが、餌が不足した場合や乾燥した場合等は、適宜交換を行った。古い餌は食べ残しが多い場合には取り除いたが、僅かな場合にはそのままにして、新しい人工飼料を追加した。
4〜5齢の壮蚕幼虫時の飼育には、育苗箱園芸用2型(型番201206;三甲株式会社)内に蚕座紙(クラフト用紙)、防乾紙(パラフィン紙)又はその両方を重ねて敷いた容器を用いた。湿度や容器内の状態により、防乾紙、アクリル、又はメッシュのフタをした。4齢2日目以降に各容器内の頭数を調査し、容器の大きさに合わせて一容器あたり約80頭とした。餌は、稚カイコ幼虫期と同様、シルクメイト原種1〜3齡M(日本農産工業)を短冊状に切るか切削して与えた。餌の交換は、食べ残しの量や餌の乾燥状態によって異なるが、原則として1日に1回行った。食べ残しが僅かな場合には、古い餌を取り除かずにそのまま新しい人工飼料を切削で追加した。飼育温度は、1〜4齡は28℃、5齢は25℃とした。
5齢を上蔟(じょうぞく:幼虫を蔟[まぶし]に移すこと)して25℃下で、羽化まで保護し、羽化した雌親カイコを雄親カイコと約3時間交尾させた後、雌個体を取り出して糊付き産卵台紙に産卵させた。なお、雄親カイコの系統は、雌親カイコと同じものを用いた。
回収した卵が休眠卵及び非休眠卵の識別は、卵の着色と発生の進行度により行った。一般に、カイコ卵では非休眠化がうまくいった場合、卵の着色が認められなくなる。そこで、15℃処理区では、産後10目ごろに観察して、発生が進んだ卵を非休眠卵、進んでいない卵で、かつ着色が認められるものを休眠卵とした。また25℃処理区では、産後2日目には明瞭に着色することから、着色が認められない卵を非休眠卵、認められるものを休眠卵とした。非休眠卵のうち孵化した卵を孵化頭数として算出した。
(結果)
表1に結果を示す。
Figure 0006765803
一般に、低温暗催青法では、休眠性系統カイコであっても雌親カイコの卵期に15℃の低温下で約1ヶ月間保持し、発生をゆっくりと進めると、羽化した雌親カイコが産む卵は非休眠卵となる。
表1に示すように、雌親カイコの卵期を25℃下において羽化させた試験区では、その雌親カイコが産卵する卵は、両系統共にほぼ羽化率0%となり、休眠卵であることが示された。一方、低温暗催青法を行った15℃の試験区では、Kosetsu系統は約70%が非休眠卵になったが、c515系統は全て休眠卵のままであった。
低温暗催青法は、浸酸法のように卵に物理的ダメージを付与することなく非休眠卵を得る点で優れているが、上記結果が示すように、系統によっては全く効果がないという従来の結果が再現された。
<実施例1:遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法による非休眠卵の作製>
(目的)
休眠性系統のカイコに対して本発明の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法を行い、得られる卵の非休眠性を検証した。
(方法)
休眠性系統のカイコには、実施例1と同じKosetsu及びc515を用いた。掃立てから上蔟までの基本操作は、比較例1に準じた。
本実施例では、雌5齢を上蔟して2〜3日後に前蛹個体を繭から取り出し、蛹化後24時間以内に、テルモシリンジ注射針付(SS-01T2525[ツベルクリン用];1mLシリンジ+25Gx1(0.5x25mm))を用いて蛹胸部の背側からDH阻害剤として抗DH抗体を含む抗DH血清(信州大学塩見邦博准教授より恵与)を7〜10μL注入した。本実施例で使用した抗DH血清については、Shiomiら(Shiomi K., et al., 1994, Journal of Insect Physiology, 40(8): 693-699)に詳細に記載されている。
抗体注入後の蛹は25℃下で、羽化まで保護し、羽化した雌親カイコを雄親カイコと約3時間交尾させた後、雌個体を取り出して糊付き産卵台紙に産卵させた。
回収した卵が受精卵か未受精卵かの識別、及び休眠卵か非休眠卵かの識別は、抗体未処理区(-)では、産後2日目以降に着色した卵を受精卵とし、受精卵のうち産後10日後に発生が進んだ卵を非休眠卵、進まなかった卵を休眠卵とした。非休眠卵のうち孵化した卵を孵化頭数として算出した。一方、抗体処理区(+)では、非休眠化がうまくいった場合には、産後2日目以降の卵の着色が生じないため、産後10日後に観察して発生が進んだものを非休眠卵、進まなかったものを休眠卵とし、非休眠卵のうち孵化した卵を孵化頭数として算出した。
(結果)
表2に結果を示す。
Figure 0006765803
本発明の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法により、抗DH抗体(抗DH血清)で処理した雌親カイコが産卵する卵は、Kosetsu系統のみならず、比較例1の低温暗催青法では非休眠卵を得ることができなかったc515系統であってもほとんどの卵が非休眠卵になった。この結果は、本発明の非休眠卵の生産方法は、低温暗催青法のように系統に左右されることなく休眠性系統カイコから非休眠卵を得ることができることを示唆している。
<比較例2:非休眠卵への核酸導入後の孵化率の検証>
(目的)
休眠性系統のカイコから従来法の低温暗催青法を用いて作製した非休眠卵に対して、遺伝子組換えカイコを作出するためのマイクロインジェクションを行い、その後の孵化率について検証した。
(方法)
休眠性系統のカイコとして、p50及びDH5を用いた。p50については低温暗催青法により非休眠卵を産卵することが知られている(Zhao A., et al., 2012, Insecta Science, 19: 172-182)。また、DH5についても、本発明者らが低温暗催青法により非休眠卵を産卵することを確認している(未発表)。掃立てから上蔟までの基本操作は、比較例1に準じた。低温暗催青法は、雌親卵を15℃の低温下で発生させることによって実行した。羽化した雌親カイコを交配用の同系統雄親カイコと3時間交尾させた。交尾後、雌親カイコを直ちに冷蔵庫(4℃)に保存し、その間、遺伝子組換えカイコを作出するための準備を行った。
マイクロインジェクション用の組換え遺伝子溶液は、HiSpeed Plasmid Midi Kit (25) (Qiagen)によって調製した。マイクロインジェクションの準備ができた段階で、雌親カイコを冷蔵庫から取り出し、糊付き産卵台紙に産卵させた。
産卵後2〜8時間のカイコ卵にp50にはG27-Talenを、またDH6にはG6-Talenを、それぞれ5〜30μLで、マイクロインジェクションにより導入した。マイクロインジェクション後の卵は、加湿状態、25℃で孵化するまでインキュベートした。その後、孵化した幼虫の数をカウントし、マイクロインジェクション卵数に対する孵化数から孵化率を算出した。
なお、マイクロインジェクションによる孵化率の影響を確認するために、上記低温暗催青法により非休眠卵を得た後、マイクロインジェクションを行わなかったときの孵化率を算出した。
(結果)
マイクロインジェクションを行った場合の結果を表3に、行わなかった場合の結果を表4に示す。
Figure 0006765803
Figure 0006765803
表4で示すように、低温暗催青法で得られた非休眠卵の孵化率自体は、両系統共に95%以上あった。ところが、表3で示すように、低温暗催青法で得られた非休眠卵にさらにマイクロインジェクションを行った場合、両系統共に孵化率が5%以下という非常に低い値に減少した。これらの結果から、低温暗催青法後の非休眠卵を用いた場合、遺伝子組換えカイコの作出効率が著しく低下することが確認された。
<実施例2:非休眠卵への核酸導入後の孵化率の検証>
(目的)
本発明の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法を用いて作製した非休眠卵に対して、遺伝子組換えカイコを作出するためのマイクロインジェクションを行い、その後の孵化率について検証した。
(方法)
休眠性系統のカイコとして、比較例2と同じp50及びDH5を用いた。両系統とも、掃立てからDH阻害剤注入までの基本操作は、実施例1に準じた。
抗体注入後の蛹を25℃下で、羽化まで保護し、羽化した雌親カイコを同系統の雄親カイコと約3時間交尾させた。交尾後、雌親カイコを直ちに冷蔵庫(4℃)に保存し、その間、遺伝子組換えカイコを作出するための準備を行った。
マイクロインジェクション用の組換え遺伝子溶液は、比較例2に準じて調製した。マイクロインジェクションの準備ができた段階で、雌親カイコを冷蔵庫から取り出し、糊付き産卵台紙に産卵させた。
産卵後2〜8時間のカイコ卵にpBac3xP3DsRed.afm(又は単に3xP3DsRed)遺伝子溶液5〜30μLをマイクロインジェクションにより導入した。マイクロインジェクション後の卵は、加湿状態、25℃で孵化するまでインキュベートした。その後、孵化した幼虫の数をカウントし、マイクロインジェクション卵数に対する孵化数から孵化率を算出した。
(結果)
表5に結果を示す。
Figure 0006765803
本発明の非休眠卵の生産方法であれば、得られた非休眠卵にマイクロインジェクションを行っても約70%以上の個体が孵化し、比較例1の結果と比較すると30倍以上という著しく高い孵化効率が得られることが明らかとなった。マイクロインジェクション後の高い孵化率は、遺伝子組換えカイコの作出効率を顕著に向上することが可能となる。

Claims (3)

  1. マイクロインジェクション法を用いる遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵の生産方法であって、
    単為発生系統以外の休眠性系統の雌親カイコにおける幼虫又は蛹に配列番号1で示すアミノ酸配列からなる休眠ホルモンの機能を阻害又は抑制する休眠ホルモン阻害剤を導入する阻害剤導入工程、
    前記阻害剤導入工程によって得た雌親カイコを雄親カイコと交配させる交配工程、及び
    交配後の雌親カイコに産卵させて卵を得る卵取得工程
    を含み、
    前記休眠ホルモン阻害剤が前記休眠ホルモン若しくは配列番号16で示すアミノ酸配列からなる休眠ホルモン受容体を標的対象とするペプチド性阻害剤又は核酸性阻害剤であり、
    前記ペプチド性阻害剤が抗休眠ホルモン抗体、抗休眠ホルモン受容体抗体、又は前記休眠ホルモン若しくは前記休眠ホルモン受容体に対して免疫応答性を示すその断片であり、
    前記核酸性阻害剤が核酸アプタマー、RNAi分子、アンチセンス核酸、又はリボザイムである、
    前記生産方法。
  2. 単為発生系統以外の休眠性系統カイコを用いた遺伝子組換えカイコ作出方法であって、
    請求項1記載の遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵生産方法で得られた非休眠卵に所望の核酸を導入する核酸導入工程、及び
    孵化したカイコから遺伝子組換えカイコを選択する選択工程
    を含む前記方法。
  3. 単為発生系統以外の休眠性系統の雌親カイコにおける幼虫又は蛹に配列番号1で示すアミノ酸配列からなる休眠ホルモンの機能を阻害又は抑制する休眠ホルモン阻害剤を導入し、前記休眠ホルモン阻害剤の導入によって得た雌親カイコを雄親カイコと交配させ、交配後の雌親カイコに産卵させて卵を得ることを含んでなる方法によって生産され
    前記休眠ホルモン阻害剤が前記休眠ホルモン若しくは配列番号16で示すアミノ酸配列からなる休眠ホルモン受容体を標的対象とするペプチド性阻害剤又は核酸性阻害剤であり、
    前記ペプチド性阻害剤が抗休眠ホルモン抗体、抗休眠ホルモン受容体抗体、又は前記休眠ホルモン若しくは前記休眠ホルモン受容体に対して免疫応答性を示すその断片であり、
    前記核酸性阻害剤が核酸アプタマー、RNAi分子、アンチセンス核酸、又はリボザイムである、
    マイクロインジェクション法を用いる遺伝子組換えカイコ作出用非休眠卵。
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